JP2010077554A - 難燃性合成皮革用基布及び難燃性合成皮革 - Google Patents

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Abstract

【課題】非ハロゲン系の含燐難燃性付与剤を使用して形成される基布であって、難燃性合成皮革用の基布として十分な難燃性を示し、且つ、合成皮革製品全体に与える難燃性寄与率が高く、また経済性に優れた難燃性合成皮革用基布およびこれを用いた難燃性合成皮革を提供する。
【解決手段】限界酸素指数が25以上の非ハロゲン系含燐難燃性ポリエステル繊維と、非難燃性ポリエスエル繊維とを併用して構成される編み物であって、上記編み物が、多層編み組織で構成された多層編物であり、且つ、上記多層編物を構成するポリエステル繊維の重量比率(%)が、非ハロゲン系含燐難燃性ポリエステル繊維:非難燃性ポリエステル繊維=0.8:99.2〜50:50であり、上記多層編物自体の限界酸素指数が25以上である多層編物自体により難燃性合成皮革用基布を構成する。
【選択図】なし

Description

本発明は、難燃性合成皮革用の基布として用いることのできる難燃性の基布、およびこれを用いた難燃性合成皮革に関する。より詳しくは、難燃性ポリエステル繊維と非難燃性ポリエステル繊維よりなる編物であって、特に基本編み組織が多層編み組織であって、且つ上記難燃性ポリエステル繊維が非ハロゲン系の含燐難燃剤付与剤を用いて形成される、難燃性合成皮革用基布に関する。
従来、難燃性合成皮革用に用いられるポリエステル繊維製の基布としては、基布を分散染料で染色後、ヘキサブロモシクロドデカン等のハロゲン元素を含む化合物である難燃剤を、分散染料を用いた染色と同様の方法で、高圧、高温下のもと、基布を構成するポリエステル繊維内に取り込むことにより難燃性が付与された基布が使用されていた。
しかしながら、上記ハロゲン系の難燃剤により難燃性を付与された基布は、燃焼時にハロゲン化ガスを発生するといったことから環境上の問題があった。またポリエステル繊維に、染色方法と同様の方法で難燃剤を付与する後加工方法では、繊維内への難燃剤の取り込み(吸尽)が、繊維表面における染料分子の分布や濃度勾配に影響されるため、加工条件設定に大きく影響される上、吸尽率は60〜85%程度であり、吸尽されずに廃水中に存在するハロゲン系難燃剤を無毒化することは技術的に困難であるという問題もあった。
そこで、近年は、非ハロゲン系の難燃剤の使用が課題となっており、特に非ハロゲン系であって燐含有の難燃剤の使用が種々試みられている(例えば、下記特許文献1または2)。
特開2007−51394号公報 特開2007−51384号公報
しかしながら、非ハロゲン系の難燃剤は、ハロゲン系難燃剤に比べて一般的に難燃効果が低いという問題があった。これに対し、非ハロゲン系の難燃剤の使用によっても高い難燃性を得ようとした場合には、特殊な難燃剤の使用や、難燃剤の使用量の増加などが考えられるが、いずれもコストがかかり、製品の価格を高く設定せざるを得なかった。あるいは、ポリエステル繊維などに難燃性を付与した後、さらに難燃性化合物を用いて後加工して、所望の難燃性を得る方法もあるが、かかる方法では後加工を必要とすることから、工程数およびコストが増加するという問題があった。
しかしながら、難燃性合成皮革の用途分野の例として挙げられる車輌用分野や家具用分野は、特に低コストの製品の提供が望まれており、特に車輌用資材では、国際競争力の追及が必須であることから、経済的に有利な生産使用の確立が要求されている。
また合成皮革は、基布以外にも表皮や接着層といった他の構成部材を必要とする複合材料であるが、これらの構成部材のうち、任意の1つ以上の部材に難燃性を付与した場合に、その難燃性が付与された部材の該難燃性と、その難燃性が合成皮革全体に与える難燃性寄与率とは、相関関係にない場合が多い。したがって、合成皮革用基布においても、難燃性の高い基布であって、且つ、当該難燃性の基布を用いて合成皮革を製造した場合に、その合成皮革製品自体の難燃性に良好に寄与する基布の提供が求められていた。
本発明は、上記問題を鑑みなされたものであり、環境への負担が軽減されるとともに、難燃性及び経済性に優れた難燃性合成皮革用基布を提供することを目的とするものである。より詳しくは、非ハロゲン系の含燐難燃性付与剤を使用して形成される基布であって、難燃性合成皮革用の基布として十分な難燃性を示し、且つ、合成皮革製品全体に与える難燃性寄与率が高く、また経済性に優れた難燃性合成皮革用基布およびこれを用いた難燃性合成皮革を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、多層編物であって、非ハロゲン系の含燐難燃性剤により難燃性が付与された難燃繊維を含有し、且つ、上記多層編物を構成する繊維のうち難燃繊維の重量比率が50%以下である多層編物によれば、難燃繊維の使用率が低いにもかかわらず、良好な難燃性が示される基布として使用可能であることを見出し、本発明を完成させた。
即ち本発明は、
(1)限界酸素指数が25以上の非ハロゲン系含燐難燃性ポリエステル繊維と、非難燃性ポリエスエル繊維とを併用して構成される編み物よりなる難燃性合成皮革用基布であって、上記編み物が、多層編み組織で構成された多層編物であり、且つ、上記多層編物を構成するポリエステル繊維の重量比率(%)が、非ハロゲン系含燐難燃性ポリエステル繊維:非難燃性ポリエステル繊維=0.8:99.2〜50:50であり、上記多層編物自体の限界酸素指数が25以上である、ことを特徴とする難燃性合成皮革用基布、
(2)上記非ハロゲン系含燐難燃性ポリエステル繊維および非難燃性ポリエステル繊維が仮撚加工されて捲縮されたマルチフィラメントであることを特徴とする上記(1)に記載の難燃性合成皮革用基布、
(3)上記非ハロゲン系含燐難燃性ポリエステル繊維が、エステル繊維紡糸材料樹脂であるポリエステル樹脂に、非ハロゲン系含燐難燃性付与材料が共重合されたものを用いて紡糸されたものであることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の難燃性合成皮革用基布、
(4)上記非ハロゲン系含燐難燃性ポリエステル繊維が、エステル繊維紡糸材料樹脂であるポリエステル樹脂に、非ハロゲン系含燐難燃性付与材料が添加された樹脂組成物を用いて紡糸されたものであることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の難燃性合成皮革用基布、
(5)上記多層編物の多層編み組織が、モックロディアまたはポンチ・ローマであることを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれか1つに記載の難燃性合成皮革用基布、
(6)上記(1)乃至(5)に記載の難燃性合成皮革用基布を使用することを特徴とする難燃性合成皮革、
を要旨とするものである。
尚、本発明において「ポリエステル繊維」とは、ポリエステルの紡績糸またはフィラメント糸のいずれも含む。また、フィラメント糸はモノフィラメント糸またはモノフィラメント糸を数本以上合わせて1本の糸にするマルチフィラメント糸のいずれも含む。そして「非ハロゲン系含燐難燃性ポリエステル繊維」とは、
・非ハロゲン系含燐難燃性付与剤の使用により難燃性が付与されたモノフィラメント(以下、単に「繊維1」という場合がある)であって、限界酸素指数が25以上のもの、
・上記繊維1であるモノフィラメントを用いて作成されたマルチフィラメント(以下、単に「繊維2」という場合がある)であって、限界酸素指数が25以上のもの、
・非ハロゲン系含燐難燃性付与剤の使用により難燃性が付与された材料より紡糸されたポリエステル紡績糸(以下、単に「繊維3」という場合がある)であって、限界酸素指数が25以上のもの、
のいずれも含む。ただし、複数本のモノフィラメントのうちの一部が、上記繊維1のモノフィラメントであるマルチフィラメント(以下、単に「繊維4」という場合がある)の場合には、当該モノフィラメント(繊維1)を指して非ハロゲン系含燐難燃性ポリエステル繊維という。
一方、本発明において「非難燃性ポリエスエル糸」とは、何ら難燃性が付与されていないポリエステル繊維、あるいは何ら難燃性が付与されていないポリエステル繊維の複合撚糸のいずれも含む。
したがって、多層編物を構成するポリエステル繊維の総重量に対する非ハロゲン系含燐難燃性ポリエステル繊維の重量比率は、上述する繊維1乃至3と非難燃性ポリエステル糸から構成される基布の場合には、当該基布を構成するポリエステル繊維の総重量に対する繊維1乃至3のいずれかの重量の比率より求められる。一方、上記繊維4と非難燃性ポリエステル糸から構成される基布の場合には、当該基布を構成するポリエステル繊維の総重量に対する、繊維4における難燃性のモノフィラメントの重量の比率より求められる。
本発明は、非ハロゲン系の含燐難燃性付与剤を使用するため、従来のハロゲン系の難燃性付与剤を用いて製造された基布と比較し、環境への配慮がなされたものである。
特に、エステル繊維紡糸材料樹脂であるポリエステル樹脂に、非ハロゲン系含燐難燃性付与材料が共重合されたものを用いて紡糸された非ハロゲン系含燐難燃性ポリエステル繊維、あるいはエステル繊維紡糸材料樹脂であるポリエステル樹脂に、非ハロゲン系含燐難燃性付与材料が添加された樹脂組成物を用いて紡糸された非ハロゲン系含燐難燃性ポリエステル繊維を使用する本発明では、環境への配慮という点でさらに優れている。すなわち、非ハロゲン系含燐難燃性付与剤を使用した場合であっても、染色方法と同様の方法で、繊維内に難燃剤を取り込ませようとすると、その吸尽率は、一般的に40〜60%程度であり、取り込まれなかった難燃剤が廃水中に存在する結果となる。したがってそのままの状態で廃水すれば、環境への負荷が大きく、一方、廃水中に存在する燐を環境に負荷がない程度まで処理するためには、廃水処理装置が必要であり、また、製造コストも増大する。しかしながら、特に、ポリエステル樹脂に難燃性付与剤を共重合あるいは添加して紡糸した非ハロゲン系含燐難燃性ポリエステル繊維を使用する本発明では、このような廃水処理の問題がなく、したがって、環境への負担がないうえ、廃水処理にかかるコストも削減することができる。
また、本発明の難燃性合成皮革用基布は、ポリエステル繊維を用いているため、安価で、耐熱性及び寸法安定性に優れる上、その構造が、多層編物であるため、単層の織物や編物に比べて多層編物は縦横の伸びが均等で柔軟性があるため、合成皮革の基布として非常に好ましいなどの有利な点を備える。
しかも、多層編物である本発明の難燃性合成皮革用基布は、多層編み組織において、非ハロゲン系含燐難燃性ポリエステル繊維が含有されており、基布全体として、非ハロゲン系含燐難燃性ポリエステル繊維の重量比率(使用率)が50%以下であるため、高価な非ハロゲン系含燐難燃性ポリエステル繊維の使用率が低く、経済的に優れている。その上、驚くべきことに、非ハロゲン系含燐難燃性ポリエステル繊維の使用率が100%の多層編み構造と比較しても、同等の難燃性の効果が発揮される。
また本発明の難燃性合成皮革用基布は、それ自体の難燃性に優れるだけではなく、難燃性の再現性が良好であり、且つ、合成皮革の基布として用いた場合に、該合成皮革に対する難燃性寄与率においても優れている。したがって、本発明の難燃性合成皮革用基布を用いて製造された難燃性合成皮革は、高い難燃性が発揮される上、難燃性の再現性に優れるため製品の信頼性が高く、経済的にも優れる。
以下に、本発明の難燃性合成皮革用基布及びこれを用いた難燃性合成皮革について、最良の形態を説明する。
[ポリエステル繊維]
本発明の難燃性合成皮革用基布(以下、単に「本発明の基布」ともいう)は、非ハロゲン系含燐難燃性ポリエステル繊維(以下、単に「含燐難燃性ポリエステル繊維」ともいう)と、非難燃性ポリエステル繊維とから構成される。上記含燐難燃性ポリエステル繊維あるいは非難燃性ポリエステル繊維として用いられるポリエステル繊維は、特に限定されないが、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどを例示として挙げることができる。また本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記エチレン系ポリマー中に、アジピン酸、イソフタル酸などの酸成分、あるいはブタンジオール、ジエチレングリコールなどのジオールが含まれていてもよい。特に、ポリエチレンテレフタレートは、その汎用性や強度などの有利な物性を有することから、本発明において良好に用いることができる。また、含燐難燃性ポリエステル繊維と、非難燃性ポリエステル繊維とは、同一のポリエステル繊維から構成されていてもよいし、異なるポリエステル繊維から構成されたものを用いてもよい。また、1つの基布を作成する場合において用いられる含燐難燃性ポリエステル繊維は、同一のポリエステル繊維が使用されてもよいし、異なるポリエステル繊維の組み合わせであってもよい。非難燃性ポリエステル繊維においても同様である。
本発明に用いられる含燐難燃性ポリエステル繊維及び、非難燃性ポリエステル繊維の原糸の太さは特に限定されず、後述する多層編み構造により形成される基布において求められる諸条件により適宜決定することができる。一般的には、24〜100f(フィラメント)からなる75〜300d(デニール)のポリエステル繊維が主として経済的な観点から汎用される。特に、48fからなる150dのポリエステル繊維が好ましく使用される。
また本発明の基布を構成するためのポリエステル繊維としては、原糸を使用してもよいが、好ましくは撚糸が用いられる。特に、仮撚加工(ウーリー加工)されて捲縮されたマルチフィラメントであれば、糸に弾力性を与えることができるため、得られる基布に伸縮性を与えることができ、好ましい。また、本発明は多層編み構造の基布であるが、上述のように用いる繊維がマルチフィラメント糸である場合には、基布のかさ高さが十分に確保され、基布にクッション性を与えることができる点でも好ましい。さらに、フィラメント糸は連続糸であるため紡績糸のような瘤状物のようなものが存在せず、表面が平滑であり、合成皮革に使用した場合に耐摩耗性を損ねることがなく、好ましい。
[難燃性付与剤]
本発明における含燐難燃性ポリエステル繊維において用いられる難燃性付与剤は、公知の非ハロゲン系含燐難燃性付与剤であれば、適宜選択して使用することができる。より具体的には、例えば、非ハロゲン含燐グルコール化合物、非ハロゲン燐酸エステル、あるいは縮合型非ハロゲン燐酸エステルなどが好ましく用いられる。より具体的には、非ハロゲン含燐グルコール化合物としては、オキサホスフォラングリコールエステル、オキサホスフォラングリコールジエステルなどが挙げられ、非ハロゲン燐酸エステルとしてはトリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジル2,6−キシレニルホスフェート、トリス(t−ブチル化フェニル)ホスフェート、トリス(i−プロピル化フェニル)ホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェートなどが得られ、また縮合型非ハロゲン燐酸エステルとしては、1,3−フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、1,3−フェニレンビス(ジキシレニル)ホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)等の芳香族縮合燐酸エステルが挙げられる。また市販品では、非ハロゲン系含燐グルコール化合物としてはクラリアントジャパン株式会社製エクソリットPE100が、縮合型非ハロゲン燐酸エステルとしては大八化学工業株式会社製PX200、CR741などが入手可能であり、本発明において良好に使用される。
[難燃性付与方法]
上記含燐難燃性ポリエステル繊維を製造する方法としては、紡糸段階において含燐難燃性付与剤を用いて原着させ、難燃性原着糸を製造する方法(以下、単に「原着方法」ともいう)と、先にポリエステル繊維を製造し、その後に含燐難燃性付与剤を用いて吸尽させる方法(以下、単に「後加工方法」ともいう)とに大別される。本発明の含燐難燃性ポリエステル繊維は、上記原着方法あるいは上記後加工方法のいずれの方法からでも製造し得る。ただし、後加工方法では、原着剤である含燐難燃性付与剤の吸尽率が40〜60%であるため、廃水中の燐の処理を行わなくてはならない。したがって、このような処理の必要がなく、含燐難燃性付与剤も適切な使用量だけ用いればよく、安価な汎用ポリエステル樹脂を使用できる原着方法の方が有利である。
上記原着方法は、さらに繊維を製造する段階で、繊維を構成する樹脂に含燐難燃性付与剤を共重合される方法(以下、「共重合方式」ともいう)と、繊維を構成する樹脂中に含燐難燃性付与剤を添加する方法(以下、「添加方式」ともいう)とに区別される。上記方法は、いずれも有利な方法であるが、特に、上記共重合方式で製造された難燃性繊維は、非常に優れた難燃性と再現性を発揮する。一方、上記添加方式は、共重合方式と比較して低コストで難燃性繊維を製造することができるという有利な点を有する。
上記共重合方式によって含燐難燃性ポリエステル繊維を製造する場合に用いられる含燐難燃性付与剤は限定されないが、特に、オキサホスフォラングリコールエステルまたはオキサフォスフォラングリコールジエステルなどの非ハロゲン含燐グリコール化合物が好ましく用いられる。また上記添加方式を採用する場合であって含燐難燃性ポリエステル繊維を製造する場合に用いられる含燐難燃性付与剤は限定されないが、特に、縮合型燐酸エステルが好ましく用いられる。
上記原着方法においては、共重合方式及び添加方式のいずれにおいても、含燐難燃性ポリエステル繊維における含燐濃度(燐原子濃度)が5000〜10000ppm程度に調整されることが難燃性及び経済性等の観点から望ましく、特に5000〜7000ppm程度に調整されることがより望ましい。含燐濃度が5000ppmを下回ると、望ましい難燃性が発揮されない虞があり、10000ppm以下に調整することにより、使用される含燐難燃性付与剤の量に対して望ましい難燃性効果が発揮されるため経済的であり、またさらに7000ppm以下に調整されることによって、経済的な観点から特に優れる上、紡糸製造装置の燐による腐食の影響を最小限に抑えることができるため、装置のメンテナンスの観点からも有利である。本発明の難燃性合成皮革用基布は、上述のような好ましい含燐濃度を示す非ハロゲン系難燃性繊維が、基布全体における重量比率で、0.8%以上50%以下となるよう使用されることによって、特に優れた難燃性が発揮されるため好ましい。
尚、上記原着方法は、一般的に繊維の着色方法として知られる原液着色方法の応用と理解することができ、上記原着方法により含燐難燃性付与剤を、繊維構成樹脂に共重合させるか、あるいは添加する際に、繊維の着色も同時に行ってもよい。このとき、染着に関する原着剤として、無機顔料であって酸化作用を有しないものを使用することが、本発明の趣旨を勘案した場合に望ましい。またその他の添加剤としても、鉛、クロム等の重金属を含有しないことが環境上、望ましい。即ち、有機化合物系の染料などを用いることは、得られた製品中においてマイグレーションを起こし、当該製品においてブリードアウトを起こす可能性があるばかりでなく、それ自体が可燃成分でもあることから、上述のとおり無機顔料などを使用することが望ましい。
[含燐難燃剤による消火機構について]
含燐難燃性ポリエステル繊維による難燃作用としては、一般的には、燃焼する際に揮発する燐化合物によるラジカル補足効果及び、燐化合物による脱水作用及び炭化作用が知られる。ここで、多層編み構造のうちの含燐難燃性ポリエステル繊維の基布全体における重量比率が0.8重量%以上50重量%以下となるよう設計された本発明の基布が、驚くべきことに、含燐難燃性ポリエステル繊維を100%用いて形成された多層編み構造を有する基布と同等の難燃性を示すことについての作用は明らかではない。しかしながら、本発明者らは、燃焼時において、本発明の基布中の含燐難燃性ポリエステル繊維が、非難燃性ポリエステル繊維に先んじて熱融解し始め、すばやく基布全体を覆うような挙動を示すことにより、多層編み構造である基布の複合化が進行し、基布全体が一体化されて、その結果、良好な難燃性が示されるものと推察する。特に、本発明において、極めて安定した難燃効果が示される多層編み構造の例としては、モックロディア及びポンチ・ローマが挙げられる。
なお、含燐難燃性ポエステル繊維は難燃性が付与されていないポリエステル繊維との複合撚糸も使用可能であるが、複合撚糸を形成するのは作業が煩雑であるため、生産性を考慮すると、含燐難燃性ポリエステル繊維は難燃性が付与されたポリエステル繊維単独で形成されることが好ましい。例えば基布が60本の繊維から構成される場合においては、1本以上が難燃性の付与されたポリエステル繊維単独で形成された含燐難燃性ポリエステル繊維からなることが好ましく、このときの含燐難燃性ポリエステル繊維の基布全体における重量比率は1.7重量%以上となる。
さらに生産性を考慮した場合においては、多層編み構造の任意の1層あるいは2層以上を含燐難燃性ポリエステル繊維のみから構成することが好ましい。
[基布の多層編み構造について]
本発明の基布は、含燐難燃性ポリエステル繊維と非難燃性ポリエステル繊維を用いて多層に編みたてされる多層編物である。多層編み組織としては、基布の面に対して垂直な断面を拡大したときに、3層以上の層より構成される構造であれば、特に限定されない。たとえば、種々の多層編み組織により製造される本発明の基布の例としては、図1Aに示す8段構成のウエルト・リップル編み組織で作成される基布1、図1Bに示す8段構成のタックリップル編み組織で作成される基布2、図1Cに示す6段構成のポンチ・ローマ編み組織で作成される基布3、図1Dに示す6段構成のクロスミス・インターロック編み組織で作成される基布4、図1Eに示す6段構成のモックロディア編み組織で作成される基布5、図1Fに示す6段構成のピケット編み組織で作成される基布6、図1Gに示す6段構成のテクシイ・ピケ編み組織で作成される基布7、図1Hに示す6段構成のシングル・ピケ編み組織で作成される基布8などが挙げられる。中でも、本発明の基布の多層編み組織としては、得られる基布において、縦方向と横方向の伸びが均一な点、平滑な表面を形成し易い点、および編み機の汎用性などの点から、特に図1Cに示すポンチ・ローマあるいは図1Eに示すモックロディアが好ましく実施される。尚、図1A〜Hに示す多層編み組織は、公知の多層編み組織において最もポピュラーな態様を示したが、本発明の多層編物の態様を限定する趣旨ではない。本発明の基布である多層編物は、3段以上の段数で編たてのパターンが一循するものであればよい。また本明細書において、基布の縦方向とは、基布の製造時における成形方向であって、ロールに巻き取られたときの該ロールの長軸に対して垂直な方向を意味し、一方、基布の横方向とは、基布の製造時における幅方向を意味し、ロールに巻き取られたときの該ロールの長軸に対して平行な方向を意味する。
以下に、図1Eに示すモックロディア構造で製造された基布5を例にさらに本発明の多層編み構造を説明する。基布5は、図1Eに示されるとおり第一層9、第二層10、第三層11、第四層12、第五層13、第六層14の6段から構成され、第一層9及び第四層12が、他の層に比べて密に編まれている。基布における各層の重量比率は、第一層9及び第四層12が25重量%、その他の層が12.5重量%で構成されている。
ここで、基布5において含燐難燃性ポリエステル繊維は基布を構成するポリエステル繊維の総重量に対し、0.8重量%以上50重量%以下含有される。このとき含燐難燃性ポリエステル繊維は基布全体に均一に含有されていてもよく、任意の一段または二段以上に含有されていてもよい。
生産性を考慮すると、第一層9乃至第六層14のいずれかの任意の一段、あるいはいずれかの任意の二段以上が含燐難燃性ポリエステル繊維100%から構成される態様が好ましい。以下、上記態様について詳細に記す。
上記基布5は、6段構成の多層編物であって、そのうちの一層あるいは任意の組合せの層のみが、含燐難燃性ポリエステル繊維で編まれ、その他の層は、非難燃性ポリエステル繊維によって編まれることによって構成された場合、基布における繊維の重量比率(重量%)は、含燐難燃性ポリエステル繊維:非難燃性ポリエステル=12.5:87.5〜50:50である。基布5において、含燐難燃性ポリステル繊維の重量比率が12.5重量%未満とすることも可能であるが、かかる場合には、含燐難燃性ポリエステル繊維と非難燃性ポリエステル繊維が混合した層が形成されることとなり、このような層を生成するためには繊維のセットが煩雑であるため、生産性の観点からは望ましくない場合がある。一方、基布において含燐難燃性ポリエステル繊維の重量比率が50重量%を上回った場合でも、難燃性の点で阻害的に働くものではないが、経済的に不利益が生じる虞がある。換言すると、本発明の基布は、含燐難燃性ポリエステル繊維が50重量%を上回る基布と、同等の難燃性を示すことが可能であるため、経済的に非常に優れている。
たとえば、第二層10、第三層11、第五層13のいずれか1層を含燐難燃性ポリエステル繊維を用いて難燃性層として編み、その他の層を非難燃性ポリエステル繊維を用いて非難燃性層として編んでもよく、この場合には、基布5において使用される繊維の重量比率(重量%)は、含燐難燃性ポリエステル繊維:非難燃性ポリエステル繊維=12.5:87.5となる。
また最表面(最下面)である第六層14を含燐難燃性ポリエステル繊維を用いて難燃性層として編み、その他の層を非難燃性ポリエステル繊維を用いて非難燃性層として編んでもよく、かかる場合にも、基布5における繊維の使用率は、上述と同様である。
あるいは別の態様として、第一層9あるいは第四層12のいずれか1層を含燐難燃性ポリエステル繊維を用いて難燃性層として編み、その他の層を非難燃性ポリエステル繊維を用いて非難燃性層として編んでよく、この場合には、基布5において使用される繊維の重量比率(重量%)は、含燐難燃性ポリエステル繊維:非難燃性ポリエステル繊維=25:75となる。
さらに、含燐難燃性ポリエステル繊維の重量比率が50重量%以内となるような条件で、第一層9乃至第六層14の任意の組み合わせの層を、含燐難燃性ポリエステル繊維で編んでもよい。
上述のような多層編み構造で編まれた基布は、通常、編みあげ後、形状安定化及び難燃性を低下させる因子となりうる編み立て用油剤除去のために水洗、精錬、ヒートセット処理が順次、施される。
上記本発明の基布は、難燃性合成皮革用の基布であるため、その用途に合わせた物性や特徴を有していることが望ましい。たとえば、本発明の基布は、車輛用、あるいは家具用の難燃性合成皮革用の基布として好ましく用いられるが、車輛用、あるいは家具用に用いる際には、特に繰り返し負荷がかかることが想定されるため、繰り返しの負荷に対しても優れた復元性を示すことが要求される。また引き裂き強度や引っ張り強度にも優れていることが望ましい。車輛用あるいは家具用に用いる場合には、引き裂き強度は、15N以上であることが好ましい。15N未満では縫製強度が脆弱となりメイン材料として好ましくない。
本発明の基布は、上述のとおり多層編物であって、繊維重量が1m当たり200g以上500g以下となるよう製造され、より好ましくは1m当たり220g以上450g以下となるよう製造される。単位当たりの繊維重量が200g未満であると、基布を構成する繊維間に酸素が多く存在することにより、引火時の燃焼活動が活発になる虞があり、難燃性が望ましく発揮されない虞がある。また500gを上回ると、布地の風合いが悪く柔軟性が不足する上、経済的にも不利になる場合がある。また本発明の基布の厚みは、用途によって異なり、適宜設計することができるが、上述する諸条件を満たす範囲で、600〜1200μm程度あることが好ましい。
[繊維及び基布の難燃性評価]
本発明においては、用いられる含燐難燃性ポリエステル繊維及び基布自体の難燃性は、いずれも限界酸素指数で評価し、特に、限界酸素指数が25以上であるとき難燃性が付与されていると判断する。限界酸素指数は大きいほど、難燃効果が高いと判断される。そして、本発明の基布においては、限界酸素指数25以上の含燐難燃性ポリエステル繊維が、基布を構成するポリエステル繊維の総重量に対し0.8重量%以上含有されていることにより、基布自体においても充分に高い難燃性が示されることが重要である。
即ち、本発明では、上記0.8重量%以上の含燐難燃性ポリエステル繊維が、基布全体に均一に含有されている基布であっても、あるいは多層編物構造のうち、含燐難燃性ポリエステル繊維のみからなる層を1以上備える基布であっても、基布自体において限界酸素指数が25以上という高い難燃性が示される。
繊維自体の限界酸素指数を測定することはできないので、本発明における非ハロゲン系含燐難燃性ポリエステル繊維の限界酸素指数は、非ハロゲン系含燐難燃性ポリエステル繊維(150d/48f)を作成し、200g/mのモックロディア構造に編み立てた基布の限界酸素指数のことをいう。なお、限界酸素指数はJIS K7201に準じて測定した。
また本発明において基布の限界酸素指数の測定は、上述と同様にJIS K7201に準じて実施される。
[難燃性合成皮革]
次に、本発明の難燃性合成皮革について説明する。本発明の難燃性合成皮革は、上述する本発明の基布を用い、良好に難燃性が示されるものであれば、特に限定されるものではない。中でも、基布と、接着層と、表皮層とをこの順で備える合成皮革の該基布として、本発明の難燃性合成皮革用基布は良好に使用され、且つ合成皮革自体に優れた難燃性を付与することが可能である。また接着層と表皮層との間に、任意の構成の中間層が存在するものであってもよい。
本発明の難燃性合成皮革における表皮層としては、合成皮革用の表皮層として知られる合成樹脂からなる層であれば、いずれのものを選択してもよく、例えばポリウレタン系、ポリ塩化ビニル系あるいはアクリル系の表皮層が知られる。特にポリウレタン系の表皮層は、加工性や風合いの良さから、良好に使用される。
上記ポリウレタン系の表皮層としては、ポリカーボネート系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエステル/ポリエーテル系ポリウレタン、ラクトン系ポリウレタン等の公知の合成皮革用表皮のいずれもが使用可能である。中でも、ポリカーボネート系ポリウレタンは、耐久性や耐熱性において優れており、車輛用あるいは家具用の合成皮革の表皮として好適に使用される。また発泡ポリウレタンも好適に使用される。さらに、上記ポリウレタンに加えて、天然ゴム、クロロプレン、SBR、アクリル系樹脂、シリコーン樹脂、塩化ビニル等の高分子重合体が併用されてもよい。本発明において表皮層の厚みは特に限定されないが、一般的には20〜200μm程度が好ましく実施される。
上記表皮層を構成する樹脂中には、さらに必要に応じて成膜助剤、着色剤、充填剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、撥水・撥油剤等の各種添加剤を混入することができる。
本発明の難燃性合成皮革における接着層は、表皮層と基布、あるいは基布と表皮層との間にさらに中間層が存在する場合には、当該中間層と基布とを良好に接着することができるものであれば、特に限定されるものではない。一般的には、乾式法により得られる合成皮革の接着層を構成する樹脂としては、ウレタン系樹脂が使用される。
本発明の難燃性合成皮革は、離型紙上に表皮層を形成するための樹脂組成物を塗布して乾燥させ、表皮層用塗膜を形成し、一方、上記含燐難燃性基布を形成し、上記表皮層用塗膜の離型紙とは反対側面あるいは、基布表面、あるいはその両方に、接着層を構成する樹脂組成物を塗布した後、基布と表紙とを重ね合わせて、熱圧着等の公知の圧着方法によって圧着させ、接着層を構成する樹脂を硬化させて製造することが一般的である。得られた合成皮革において、接着層の厚みは、一般的には、20〜200μmであるが、これに限定されるものではない。
本発明の難燃性合成皮革は、少なくとも、本発明の含燐難燃性基布を使用することにより、難燃性が発揮される。しかしながら、さらに高い難燃性を得るためには、上述する接着層、および/または表皮層に、公知の手段により難燃性を付与してもよい。
たとえば、接着層あるいは表皮層に難燃性を付与するためには、接着層あるいは表皮層を構成する樹脂組成物に、難燃剤を添加するか、あるいは接着層を構成する樹脂に難燃剤を共重合させる方法が挙げられる。このとき使用される難燃剤とは、特に限定されるものではないが、本発明の趣旨を勘案すれば、非ハロゲン系の難燃剤を用いることが好ましく、基布に難燃性を付与するために用いられる難燃剤として上述する燐系難燃剤が、接着層あるいは表皮層においても好ましく使用することができる。
[合成皮革の難燃性評価]
上記本発明の難燃性合成皮革の難燃性は、米国自動車安全規格であるFMVSS−302(水平式燃焼試験)により評価される。本試験は、試験体の燃焼速度を求める試験であり、得られる数値が小さいほど、燃え難いことを示す。本発明の難燃性合成皮革の難燃性は、その用途、および目的に応じて決定される。また本発明の難燃性の基布を用いる以外にも、上記接着層や上記表皮層においても難燃性を付与することにより、合成皮革としてより高い難燃性を示すことが可能である。例えば、車輛用あるいは、家具用に使用する場合には、45mm/min以下であることが望ましく、かかる難燃性は、合成皮革を構成する他の層がいずれも非難燃であっても、本発明の難燃性の基布にのみ依存して発揮される。
以下、実施例、及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
[基布の作成]
オキサホスフォランジグリコールエステル(クラリアント製 Exolit PE 100)を共重合したポリエステル繊維150d/48f(仮撚加工)であって、限界酸素指数34.1、燐含有量6500ppmである含燐難燃性ポリエステル繊維を準備した。また非難燃性ポリエステル繊維150d/48f(仮撚加工)を準備した。そして図1Eに示す6層のモックロディアの多層編み構造において、第四層12を形成する繊維として上記含燐難燃性ポリエステル繊維を用い、他の層を形成する繊維として、上記非難燃性ポリエステル繊維を用い編みたてて、基布における繊維の重量比率(重量%)を、含燐難燃性ポリエステル繊維:非難燃性ポリエステル繊維=25:75、繊維の単位面積当たりの重量が300g/mである筒状の多層編物を得た。
次いで、上記筒状の編物を編み方向に切断して切開し、水洗した後、150cm幅でヒートセット(セット温度180℃、セットスピード22m/分)し、本発明の基布を得て、これを実施例1とした。実施例1の限界酸素指数を測定したところ、縦:32.2、横:31.4であった。
(実施例2)
[表皮層の作成]
ポリウレタン材料(クリスボンMP120 大日本インキ化学工業(株)製)をメチルエチルケトン及び酢酸プロピルで20%溶液となるよう調整して、表皮層形成用樹脂組成物溶液を得た。そして、離型紙(DE73 大日本印刷株式会社製)に上記表皮層形成用樹脂組成物溶液を150g/mとなるよう塗布して、乾燥後の平均膜厚が30μmである塗膜を作成した。次いで、ポリウレタン材料(クリスボンMP120 大日本インキ化学工業(株)製)を不揮発分25%にとなるように調整し、これを上記塗膜表面に200g/mとなるよう塗布して乾燥させて、厚み50μmの表皮層用塗膜を得た。
[接着層形成用樹脂組成物の調製]
2種類のポリウレタン材料(クリスボン4010、およびクリスボン4070、いずれも大日本インキ化学工業(株)製)を用い、その他の添加剤として、イソシアネート系架橋剤(コロネートHX 日本ポリウレタン工業(株)製)、非ハロゲン系含燐難燃付与剤(PX200 大八化学工業株式会社製)、架橋促進剤(クリスボンアクセル 大日本インキ化学工業(株)製))、酢酸プロピルを用いて接着層形成用樹脂組成物を得た。クリスボン4010、クリスボン4070、コロネートHX、PX200、クリスボンアクセル及び酢酸プロピルの添加比率は、順に、70重量部、30重量部、12重量部、14重量部、3重量部、20重量部として調整した。
上記接着層形成用樹脂組成物を、上記表皮層用塗膜の離型紙とは反対側面に、160g/mとなるよう塗布し、110℃、3分間で乾燥させた後、上記実施例1である本発明の基布を、接着層側に重ね、その状態で基布側から60℃の加熱ロールで熱圧着した。その後、40℃で3日間熟成して接着剤の硬化を完了させ、離型紙を剥離して、基布及び接着層に難燃性が付与された難燃性合成皮革を完成させて、これを実施例2とした。
上記実施例2である難燃性合成皮革の難燃性を、FMVSS−302に準拠して測定したところ、41mm/minであった。
(実施例3及び4)
基布における繊維の重量比率(重量%)を、含燐難燃性ポリエステル繊維:非難燃性ポリエステル繊維=12.5:87.5としたこと以外は、実施例1と同様に基布を作成し、実施例3とした。そして実施例3の限界酸素指数を測定したところ、縦:30.2、横:31.9であった。次いで、実施例3を用いたこと以外には実施例2と同様に難燃性合成皮革を作成し、実施例4とした。実施例4の難燃性合成皮革について、実施例2と同様に難燃性を測定したところ、41mm/minであった。
(実施例5及び6)
基布における繊維の重量比率(重量%)を、含燐難燃性ポリエステル繊維:非難燃性ポリエステル繊維=50:50としたこと以外は、実施例1と同様に基布を作成し、実施例5とした。そして実施例5の限界酸素指数を測定したところ、縦:32.8、横:32.5であった。次いで、実施例5を用いたこと以外には実施例2と同様に難燃性合成皮革を作成し、実施例6とした。実施例6の難燃性合成皮革について、実施例2と同様に難燃性を測定したところ、36mm/minであった。
(実施例7)
基布における繊維の重量比率(重量%)を、含燐難燃性ポリエステル繊維:非難燃性ポリエステル繊維=0.8:99.2としたこと以外は、実施例1と同様に基布を作成し、実施例7とした。そして実施例7の限界酸素指数を測定したところ、縦:28.3、横:27.5であった。
(実施例8)
基布における繊維の重量比率(重量%)を、含燐難燃性ポリエステル繊維:非難燃性ポリエステル繊維=2.5:97.5としたこと以外は、実施例1と同様に基布を作成し、実施例8とした。そして実施例8の限界酸素指数を測定したところ、縦:28.1、横:28.3であった。
(実施例9)
基布における繊維の重量比率(重量%)を、含燐難燃性ポリエステル繊維:非難燃性ポリエステル繊維=10:90としたこと以外は、実施例1と同様に基布を作成し、実施例9とした。そして実施例9の限界酸素指数を測定したところ、縦:28.4、横:29.7であった。
(比較例1及び2)
基布における繊維の重量比率(重量%)を、含燐難燃性ポリエステル繊維:非難燃性ポリエステル繊維=0:100としたこと以外は、実施例1と同様に基布を作成し、比較例1とした。そして比較例1の限界酸素指数を測定したところ、縦:22.5、横:23.2であった。次いで、比較例1を用いたこと以外には実施例2と同様に難燃性合成皮革を作成し、比較例2とした。比較例2の難燃性合成皮革について、実施例2と同様に難燃性を測定したところ、58mm/minであった。
(参考例1及び2)
基布における繊維の重量比率(重量%)を、含燐難燃性ポリエステル繊維:非難燃性ポリエステル繊維=100:0としたこと以外は、実施例1と同様に基布を作成し、参考例1とした。そして比較例1の限界酸素指数を測定したところ、縦:34.1、横:33.7であった。次いで、参考例1を用いたこと以外には実施例2と同様に難燃性合成皮革を作成し、参考例2とした。参考例2の難燃性合成皮革について、実施例2と同様に難燃性を測定したところ、35mm/minであった。
Figure 2010077554
図1A乃至図1Hは、本発明の基布の多層編み構造の編み組織のパターン例を示す説明図である。
符号の説明
1乃至8 基布
9 第一層
10 第二層
11 第三層
12 第四層
13 第五層
14 第六層

Claims (6)

  1. 限界酸素指数が25以上の非ハロゲン系含燐難燃性ポリエステル繊維と、非難燃性ポリエスエル繊維とを併用して構成される編み物よりなる難燃性合成皮革用基布であって、
    上記編み物が、多層編み組織で構成された多層編物であり、且つ、
    上記多層編物を構成するポリエステル繊維の重量比率(%)が、非ハロゲン系含燐難燃性ポリエステル繊維:非難燃性ポリエステル繊維=0.8:99.2〜50:50であり、
    上記多層編物自体の限界酸素指数が25以上である、
    ことを特徴とする難燃性合成皮革用基布。
  2. 上記非ハロゲン系含燐難燃性ポリエステル繊維および非難燃性ポリエステル繊維が仮撚加工されて捲縮されたマルチフィラメントであることを特徴とする請求項1に記載の難燃性合成皮革用基布。
  3. 上記非ハロゲン系含燐難燃性ポリエステル繊維が、エステル繊維紡糸材料樹脂であるポリエステル樹脂に、非ハロゲン系含燐難燃性付与材料が共重合されたものを用いて紡糸されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の難燃性合成皮革用基布。
  4. 上記非ハロゲン系含燐難燃性ポリエステル繊維が、エステル繊維紡糸材料樹脂であるポリエステル樹脂に、非ハロゲン系含燐難燃性付与材料が添加された樹脂組成物を用いて紡糸されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の難燃性合成皮革用基布。
  5. 上記多層編物の多層編み組織が、モックロディアまたはポンチ・ローマであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の難燃性合成皮革用基布。
  6. 請求項1乃至5に記載の難燃性合成皮革用基布を使用することを特徴とする難燃性合成皮革。
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