JP2010077529A - 摺動部品およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】金属基材と、該金属基材の表面に形成されたニッケル−タングステン合金めっき皮膜またはニッケル−モリブデン合金めっき皮膜と、該皮膜上に形成されたフッ化ニッケル膜からなる最表面層とを有する金属材料からなることを特徴とする摺動部品、および金属基材にニッケル−タングステン合金めっき処理またはニッケル−モリブデン合金めっき処理を行いニッケル−タングステン合金めっき皮膜またはニッケル−モリブデン合金めっき皮膜を形成させ、次いで該皮膜の表面層をフッ素化してフッ化ニッケル膜を形成させることを特徴とする摺動部品の製造方法。
【選択図】なし
Description
すなわち、本発明は以下の要件から構成される。
[1]金属基材と、該金属基材の表面に形成されたニッケル−タングステン合金めっき皮膜またはニッケル−モリブデン合金めっき皮膜と、該皮膜上に形成されたフッ化ニッケル膜からなる最表面層とを有する金属材料からなることを特徴とする摺動部品。
[2]前記金属基材が、アルミニウムおよびアルミニウム合金から選択される金属からなることを特徴とする[1]に記載の摺動部品。
[3]前記金属基材が、金属基材本体と、該金属基材本体表面上に形成された無電解ニッ
ケル−リン合金めっき皮膜とを有することを特徴とする[1]に記載の摺動部品。
[4]前記金属基材本体が、アルミニウムおよびアルミニウム合金から選択される金属からなることを特徴とする[3]に記載の摺動部品。
[5]金属基材にニッケル−タングステン合金めっき処理またはニッケル−モリブデン合金めっき処理を行いニッケル−タングステン合金めっき皮膜またはニッケル−モリブデン合金めっき皮膜を形成させ、次いで該皮膜の表面層をフッ素化してフッ化ニッケル膜を形成させることを特徴とする摺動部品の製造方法。
[6]前記金属基材が、アルミニウムおよびアルミニウム合金から選択される金属からなることを特徴とする[5]に記載の摺動部品の製造方法。
[7]金属基材本体に無電解ニッケル−リン合金めっき処理を行って金属基材を作製し、該金属基材にニッケル−タングステン合金めっき処理またはニッケル−モリブデン合金めっき処理を行いニッケル−タングステン合金めっき皮膜またはニッケル−モリブデン合金めっき皮膜を形成させ、次いで該皮膜の表面層をフッ素化してフッ化ニッケル膜を形成させることを特徴とする摺動部品の製造方法。
[8]前記金属基材本体が、アルミニウムおよびアルミニウム合金から選択される金属からなることを特徴とする[7]に記載の摺動部品の製造方法。
[基材]
本発明の摺動部品に用いられる基材は、金属基材である。前記金属としては、たとえば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、ステンレス鋼、銅および銅合金が好ましく、熱の影響を受けやすいアルミニウム、アルミニウム合金、銅および銅合金がより好適である。
(無電解ニッケル−リン合金めっき皮膜)
金属基材は、その表面に現れる溶接部の凹凸を修復したり、基材の表面粗度を低下させ
たりするため、その表面層に無電解ニッケル−リンめっき皮膜を有していてもよい。金属基材が無電解ニッケル−リンめっき皮膜を有する場合には、金属基材は、金属基材本体と、該金属基材本体表面上に形成された無電解ニッケル−リン合金めっき皮膜とを有してなる。金属基材が無電解ニッケル−リンめっき皮膜を有すると、摺動部品においてベースとなる金属基材の表面粗度、すなわち凹凸の影響によりフッ化ニッケル膜で発生するピンホールや欠陥等の不具合を抑制することができる。
[ニッケル−タングステン合金めっき皮膜またはニッケル−モリブデン合金めっき皮膜]
本発明の摺動部品は、上記金属基材表面上にニッケル−タングステン合金めっき皮膜またはニッケル−モリブデン合金めっき皮膜を有する。タングステンまたはモリブデンを含有するニッケル合金めっき皮膜を形成することによって、このめっき皮膜をフッ素と反応させる際に高熱量を得ることができ、フッ素化反応部分、すなわち該めっき皮膜の最表面層のみを高温にすることができるので、金属基材などの他の部分に熱の影響を与えずに最表面層をフッ素化処理することができる。
、モリブデンを含有するニッケル合金を用いた場合は、めっき温度が25℃、電流密度が2A/dm2、pH10である。
するWF6およびMoF6の標準生成エンタルピーが大きいため、フッ素化反応の際に発生する熱量が多くなるので、下地金属皮膜および基材への熱移動を抑制して熱の影響を低減する必要性から、膜厚は1〜5μmが好ましい。
[フッ化ニッケル膜]
本発明の摺動部品は、最表面層にフッ化ニッケル膜を有する。金属基材の表面にニッケル−タングステン合金めっき皮膜またはニッケル−モリブデン合金めっき皮膜を形成してなる金属材料のめっき皮膜表面をフッ素化処理することにより、該金属材料の最表面層にフッ化ニッケル膜を形成することができる。つまり、前記ニッケル合金めっき皮膜の表層部のみをフッ素化することにより、フッ化ニッケル膜が形成される。
め常温でも容易に熱量を得ることができ、その熱量を利用してニッケル−タングステン合金めっき皮膜中またはニッケル−モリブデン合金めっき皮膜中のニッケルをフッ素化することができる。
lF3)およびフッ化窒素(NF3)からなる群から選択される少なくとも1種のガス、あるいはこれらのガスを不活性ガスで希釈したガスが挙げられる。
膜をフッ素化して得られるフッ化ニッケル膜は、実質的にフッ化ニッケルからなる第1の層と、この下層にフッ素が拡散した第2の層とからなる。
[摺動部品]
本願において摺動部品とは、他の部品または材料等に対して相対的に滑りながら動く部品を意味する。つまり、本願の摺動部品は、それ自体が他の部品または材料等に対して滑りながら動くか、またはそれ自体は動かず、これに接触する他の部品または材料等が滑りながら動くか、本願の摺動部品が他の部品または材料等とともに相互に滑りながら動く。
(空圧バルブの摺動シャフト部品)
本発明の摺動部品の利用例としては、例えば、時効温度以上熱を加えたときに機械的強度が激しく下がるアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる空圧バルブの摺動シャフト部品が挙げられる。図1および図2は、一般的な空圧バルブの模式図である。この空圧バルブは、空圧部1と、空圧部1の下部に設けられた摺動部品であるシャフト2と、シャフト2の上下運動により開閉するバルブ本体3とを有する。図1は、シャフト2が下方に移動して、バルブ本体3が閉ざされ、ガスが流通しない状態を示している。図2は、シャフト2が上方に移動して、バルブ本体3が開いて、ガスが流通する状態を示している。このような空圧バルブでは、バルブの開閉毎にシャフトが摺動するため磨耗により寿命が短くなることが問題となっていたが、このシャフトに本発明の摺動部品を用いることによりシャフトの寿命を延ばすことができる。また、シャフトの空間部には流通するガスが接触するため、腐食性ガスを扱う場合には、シャフトには耐食性と耐磨耗性の両方が要求される。
(自動車の吸気系内燃燃焼機関部品)
また、本発明の摺動部品は、アルミニウム鋳物等で構成されている自動車の吸気系内燃機関部品など、給気接触面が排気中の硫化物、窒化物等により腐食されたり、煤などの炭化物を含む高速気流によりその表面が侵食されたりする部品に好適に適用することができる。
(その他の摺動部品)
その他、本発明の摺動部品は、高速回転が要求されるため基材の機械的強度を下げられない塗装部品に好適に適用される。例えば、塗装部品の塗装噴霧口は、塗装を均一にする
ため、如雨露の口のように沢山小さな穴があいており、ここから高速で塗装液がでてくるので、耐食耐磨耗性が要求される。また塗装を均一にするために高速で塗装噴霧口部分(ノズルと称する)が回転する。このため塗装噴霧口部分(ノズル)の素材にはアルミニウム合金(#5000及び#7000)が使用されている。この塗装噴霧口部分(ノズル)は高速回転するため、その機械強度を下げられない。この塗装噴霧口部分(ノズル)が本発明の摺動部品であると、長期間にわたる好適な運転が可能になる。
(本発明の摺動部品の製造方法の利用)
本発明の摺動部品の製造方法は、寸法変化防止のため低温(200℃以下)でしか熱処理ができないプリハードン鋼を基材とした摺動部品の製造に好適に適用することができる。プリハードン鋼は、金型等の加工製品のモデルチェンジなどの際、超硬合金より切削加工が容易で、コストが低いため、一般的に多く使用されている材料である。このプリハードン鋼は機械加工ができる程度の硬さ(40HRC位)まで焼入れを済ましたものであるが、プリハードン鋼からなる基材に一般表面処理を施工し、硬度を得るため高温で熱処理した場合に、基材と処理膜との線膨張率の差で処理膜にクラックが発生してしまう。本発明の摺動部品の製造方法によれば、低温(150℃以下)処理でも耐磨耗性が得られるため、このようなクラックの発生がなく、プリハードン鋼を基材として優れた摺動部品を得ることができる。
[実施例]
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、この実施例により何ら限定されるものではない。
[比較サンプル製造例1]
2種類の無電解ニッケルーリンめっき薬剤(商品名:ニムデンNSXおよびニムデンHDX、いずれも上村工業(株)製)を使用し、所定の方法(条件:めっき温度90℃、pH=4.5〜4.8、時間70分)に従って、予め脱脂と活性化処理、酸洗および亜鉛置換を施したアルミニウム合金(A5052、30w×50L×2t)の表面に無電解ニッケル
ーリン合金めっき皮膜(膜厚:20μm)を形成させサンプルAを作製した。
[比較サンプル製造例2]
主成分としてNi源であるNi(NH2SO3)2・4H2O(スルファミン酸ニッケル(II)水和物0.1M、タングステン源であるNa2WO4・2H2O(タングステン
酸ナトリウム)0.1M、錯化剤、抗酸化剤、pH調整剤で構成されるニッケルータングステン電解合金めっき液を調整した。
液に浸漬し、電流密度10A/dm2で電気めっきして、無電解ニッケルーリン合金めっ
き皮膜上にニッケルータングステン合金めっき皮膜(膜厚:10μm)を形成させサンプルBを作製した。
[サンプル製造例1]
常圧気相流通式反応炉の内部に、サンプルB(比較サンプル製造例2で製造した、表面
にニッケルータングステン合金めっき皮膜を有するアルミニウム合金)を装着し、150℃まで昇温させた。その後、窒素ガスで反応炉の内部を置換した後、10%F2ガス(窒
素希釈)を導入した。反応炉の内部が完全にフッ素ガスで置換された後、その状態を3時間保持し、上記ニッケルータングステン合金めっき皮膜の表面をフッ素化してフッ化ニッケル膜を形成させた。この処理によりニッケルータングステン合金めっき皮膜の表面層の色相がフッ化ニッケル膜特有の色になり、またテスターによる導通試験により導通が認められなかったことから、ニッケル−タングステン合金めっき皮膜上にフッ化ニッケル膜が形成されていることが確認された。このようにしてフッ化ニッケル膜を形成させることにより得られた試験用摺動部品をサンプルCとした。
[サンプル製造例2]
常圧気相流通式反応炉の内部にサンプルBを装着し、10%F2ガス(窒素希釈)で反
応炉の内部が完全に置換された状態を6時間保持したこと以外はサンプル製造例1と同様にしてフッ化ニッケル膜を形成させ、これをサンプルDとした。
[サンプル製造例3]
常圧気相流通式反応炉の内部にサンプルBを装着し、10%F2ガス(窒素希釈)で反
応炉の内部が完全に置換された状態を12時間保持したこと以外はサンプル製造例1と同様にしてフッ化ニッケル膜を形成させて試験用摺動部品を作製した。これをサンプルEと
した。
[サンプル製造例4]
常圧気相流通式反応炉の内部にサンプルBを装着し、150℃まで昇温させた。その後、窒素ガスで反応炉の内部を置換した後、10%F2ガス(窒素希釈)を0.05MPaGまで導入した。反応炉の内部が完全にフッ素ガスで置換された後、その状態を3時間保持し、上記ニッケルータングステン合金めっき皮膜の表面をフッ素化してフッ化ニッケル膜を形成させた。このようにしてフッ化ニッケル膜を形成させることにより得られた試験用摺動部品をサンプルFとした。
[比較サンプル製造例3〜5]
常圧気相流通式反応炉の内部に、サンプルA(比較サンプル製造例1で製造した、表面にニッケルーリン合金めっき皮膜を有するアルミニウム合金)を装着し、サンプル製造例1と同様の条件で上記ニッケルーリン合金めっき皮膜の表面をフッ素化してフッ化ニッケル膜を形成させた。このようにしてフッ化ニッケル膜を形成させることにより得られた試験用摺動部品をサンプルGとした。また、サンプルAにサンプル製造例2と同様にしてフッ化ニッケル膜を形成させることにより得られた試験用摺動部品をサンプルH、サンプルAにサンプル製造例3と同様にしてフッ化ニッケル膜を形成させることにより得られた試験用摺動部品をサンプルIとした。
[効果例1]
比較サンプル製造例3〜5およびサンプル製造例1〜3で得られた、最表面層がフッ化ニッケル膜である金属材料(サンプルG〜IおよびサンプルC〜E)について、島津製作所製HMV−2000を用い、荷重10gf、保持時間10秒でビッカス硬度[HmV]を測定した。その結果を表1に示す。また図4で、サンプルB〜サンプルEのビッカス硬度[HmV]を比較した。
サンプル製造例4で作製したサンプルFのビッカス硬度[HmV]を効果例1と同様に測定した結果を表2に示す。
[参考例1]
2種類の無電解ニッケルーリンめっき薬剤(商品名:ニムデンNSXおよびニムデンHDX、いずれも上村工業(株)製)を使用し、所定の方法(めっき温度90℃、pH=4.5~4.8、
時間70分)に従って、予め脱脂と酸洗およびニッケルストライクを施したSUS316Lの表面に無電解ニッケルーリン合金めっき皮膜(膜厚20μm)を形成させた。
まで2時間掛けて昇温し、2時間保持した後、常温まで2時間掛けて降温させた。
[参考例2]
アルミニウムA5056とアルミニウムA7075の素材を真空炉で、150℃にて36時間、200℃にて36時間、250℃にて36時間、それぞれ熱処理を行った。
[効果例3]
サンプル製造例1で得られたサンプルCについて、スガ式磨耗試験機(NUS−ISO−3型)において研磨紙#320、加重10(g)、往復運動の回数100(ds)の条件で磨耗特性(WR)を測定した結果を図6に示す。図6の縦軸は、サンプルを1μm削るのに要した研磨紙(#320)の往復回数を示す。
施し、無電解ニッケル−ボロンめっき膜(30μm)を有するサンプル(サンプルJ)を作製した。
30μm)を有するサンプル(サンプルK)を作製した。
0μm)を有するサンプルKについて、効果例3と同条件で磨耗特性(WR)を測定した結果を図6に示す。
[効果例4]
サンプルC、サンプルAおよびサンプルKについて、試験装置FRICTION PLAYER FPR−2000において、相手材φ5mmSUJ超硬球、回転半径10mm、荷重200g、線速度0.17cm/sec、試験時間1800secの条件で動摩擦係数を測定した結果を図7に示す。
[効果例5]
サンプルCおよびサンプルAについて、試験装置:噴射磨耗試験機JD−3型スガ試験機において、研削材炭化珪素質研削材C100番、研削材の自然落下量25.2〜25.4g/min、供給空気圧7.5kgPa、噴射時間3分の条件で試験前後の体積変化量を測定した結果を表4に示す。
2 シャフト
3 バルブ本体
Claims (8)
- 金属基材と、該金属基材の表面に形成されたニッケル−タングステン合金めっき皮膜またはニッケル−モリブデン合金めっき皮膜と、該皮膜上に形成されたフッ化ニッケル膜からなる最表面層とを有する金属材料からなることを特徴とする摺動部品。
- 前記金属基材が、アルミニウムおよびアルミニウム合金から選択される金属からなることを特徴とする請求項1に記載の摺動部品。
- 前記金属基材が、金属基材本体と、該金属基材本体表面上に形成された無電解ニッケル−リン合金めっき皮膜とを有することを特徴とする請求項1に記載の摺動部品。
- 前記金属基材本体が、アルミニウムおよびアルミニウム合金から選択される金属からなることを特徴とする請求項3に記載の摺動部品。
- 金属基材にニッケル−タングステン合金めっき処理またはニッケル−モリブデン合金めっき処理を行いニッケル−タングステン合金めっき皮膜またはニッケル−モリブデン合金めっき皮膜を形成させ、次いで該皮膜の表面層をフッ素化してフッ化ニッケル膜を形成させることを特徴とする摺動部品の製造方法。
- 前記金属基材が、アルミニウムおよびアルミニウム合金から選択される金属からなることを特徴とする請求項5に記載の摺動部品の製造方法。
- 金属基材本体に無電解ニッケル−リン合金めっき処理を行って金属基材を作製し、該金属基材にニッケル−タングステン合金めっき処理またはニッケル−モリブデン合金めっき処理を行いニッケル−タングステン合金めっき皮膜またはニッケル−モリブデン合金めっき皮膜を形成させ、次いで該皮膜の表面層をフッ素化してフッ化ニッケル膜を形成させることを特徴とする摺動部品の製造方法。
- 前記金属基材本体が、アルミニウムおよびアルミニウム合金から選択される金属からなることを特徴とする請求項7に記載の摺動部品の製造方法。
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2009
- 2009-08-25 JP JP2009194026A patent/JP2010077529A/ja active Pending
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