JP2010073534A - 絶縁被覆用組成物及びこれを用いた絶縁電線 - Google Patents

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Abstract

【課題】 耐熱性、機械的強度に優れた絶縁被膜を提供できる樹脂組成物を提供する。
【解決】 フェノキシ樹脂、ブロックイソシアネート、及びチタン系硬化剤を含有し、さらにポリサルファイドポリマーが含有されていることが好ましい。前記ポリサルファイドポリマーは、末端がSH基であり、主鎖が−R1−O−R2−O−R1−S−S−(式中、R、Rは炭素数1〜3のアルキレン基である)の繰り返し単位で構成されていることが好ましい。このような絶縁被覆用組成物をプライマーとして用いることで、耐熱性、機械的強度に優れた絶縁電線を提供できる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、マグネットワイヤなどの絶縁被覆用組成物、特に、機械的強度、密着性、耐軟化性に優れた絶縁被膜を提供できるプライマー用塗料として好適な絶縁被覆用組成物、及び当該組成物を用いて絶縁被覆した絶縁電線に関する。
各種電気機器のコイルを形成する絶縁電線において、導体を被覆する絶縁被膜には、優れた絶縁性を発揮する前提として、導体に対する密着性、高い耐熱性、機械的強度、耐薬品性も有することが要求されている。特に、捲線加工工程においては、自動化、高速化が進み、自動捲線機を使用した場合、加工される電線に強い張力が加わりながら、屈曲、摩擦等を受けて捲線されるため、捲線の絶縁被膜を損傷する可能性が高くなる。さらに、各種電気機器の高出力化、または小型化、省電力化への要請に伴い、高占積率化も進み、捲線に加えられる加工負荷が厳しくなっている。
このような過酷な捲線加工に対して、絶縁被膜が損傷することを防止するために、絶縁被膜の機械的強度、密着性、耐熱性の向上が求められている。
耐熱性に優れた絶縁被膜としては、ポリイミド、ポリエステルイミド等のポリイミド系被膜が広く用いられている。
しかしながら、ポリイミド系絶縁被膜は、一般に、導体との密着性が十分でない。ポリイミド系絶縁被膜の密着性改善のために、例えば、特許第3766447号(特許文献1)では、金属と錯化合物をつくることができる、アセチレン類、アルデヒド類、アミン類、メルカプタン類、およびチオ尿素類からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属不活性剤を添加することが提案されている。
特許第3766447号公報
しかしながら、捲線加工は、年々、過酷になっており、かかる捲線加工に対して十分耐えるためには、さらなる機械的強度、耐熱性の向上が求められる。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、機械的強度、耐熱性に優れた絶縁被膜を提供できる樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、導体上に、エポキシ樹脂と硬化剤とを反応させてなるプライマー層を、導体と絶縁被膜との間に介在させることにより、導体と絶縁被膜との密着性が向上することを見出し、先に出願した(特願2007−266405号)。本発明者らは、絶縁被膜のさらなる機械的強度、耐熱性の向上に寄与できるプライマー用塗料について検討し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の絶縁被覆用組成物は、フェノキシ樹脂、ブロックイソシアネート、及びチタン系硬化剤を含有する。さらに、ポリサルファイドポリマーが含有されていることが好ましい。
前記ポリサルファイドポリマーは、末端がSH基であり、主鎖が−R1−O−R2−O−R1−S−S−(式中、R、Rは炭素数1〜3のアルキレン基である)の繰り返し単位で構成されていることが好ましい。また、前記ポリサルファイドポリマーは、フェノキシ樹脂100質量部あたり、前記ポリサルファイドポリマーを0.5〜25質量部含有することが好ましい。前記チタン系硬化剤は、チタンアルコキシドであることが好ましい。
本発明の絶縁被覆用組成物は、絶縁被膜が2層以上で構成されている絶縁電線のプライマーに好適に用いられる。
本発明の絶縁電線は、導体;上記本発明の絶縁被覆用組成物の硬化物からなるプライマー層;及び該プライマー層上に形成した少なくとも1層の上塗り層を有するものである。
本発明の絶縁電線の前記上塗り層は、ポリイミド系樹脂、ポリエステルイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、およびTHEIC変性ポリエステルからなる群より選ばれる樹脂で構成されていることが好ましい。
本発明の絶縁被覆用組成物は、フェノキシ樹脂とブロックイソシアネートの組み合わせに、チタン系硬化剤、さらには、ポリサルファイドポリマーを含有することにより、機械的強度、耐熱性に優れた絶縁被膜層を提供できる。
本発明の絶縁電線は、導体と上塗り層との間に、本発明の絶縁被覆用組成物の硬化物で構成されるプライマー層が介在したもので、機械的強度、耐熱性に優れている。
以下に本発明の実施の形態を説明するが、今回、開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
〔絶縁被覆用組成物〕
本発明の絶縁被覆用組成物は、フェノキシ樹脂、ブロックイソシアネート、及びチタン系硬化剤を含有し、好ましくは、更にポリサルファイドポリマーを含有する。以下、各順に説明する。
<フェノキシ樹脂>
本発明で用いられるフェノキシ樹脂とは、フェノールが構成単位に組み込まれているエポキシ樹脂である。具体的には、ビスフェノールとエピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂、フェノールエポキシ樹脂とビスフェノールとを付加重合反応させることによって得られるフェノキシ樹脂などを用いることができる。
これらのフェノキシ樹脂は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらのうち、ビスフェノールとエピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂が好ましく、分子量が大きいフェノキシ樹脂がより好ましい。
ビスフェノールとしては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、3,4,5,6−ジベンゾ−1,2−オキサホスファン−2−オキサイドヒドロキノンなどが挙げられ、これらは、それぞれ単独又は2種以上混合して用いることができる。エピハロヒドリンの好適な代表例としては、エピクロロヒドリンが挙げられる。
好適なビスフェノールとエピハロヒドリンとから製造されるフェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールAとエピハロヒドリンとから製造されるビスフェノールA変性フェノキシ樹脂、ビスフェノールSとエピハロヒドリンとから製造されるビスフェノールS変性フェノキシ樹脂などが挙げられる。これらのフェノキシ樹脂は、いずれも商業的に入手しうる化合物であり、具体的には、東都化成(株)製、品番YP−50、YP50S、YP−55、YP−70、YPS007A30Aなどが挙げられるが、本発明はかかる例示に限定されるものではない。
本発明に用いられるフェノキシ樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、耐熱性及び密着性を高める観点から、好ましくは30000〜100000、より好ましくは5000〜80000である。
<ブロックイソシアネート>
ブロックイソシアネートは、フェノキシ樹脂の硬化剤として含有される。
上記ブロックイソシアネートとは、イソシアネート化合物のイソシアネート基をブロック剤で保護したものである。
イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、p−フェニレンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルへキサンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの炭素数3〜12の脂肪族ジイソシアネート;1,4−シクロへキサンジイソシアネート(CDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、メチルシクロへキサンジイソシアネート、イソプロピデンジシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアネート、1,3−ジイソシアナトメリルシクロへキサン(水添XDI)、水添TDI、2,5−ビス(イソシナートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(イソシナートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンなどの炭素数5〜18の脂環式ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)などの芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート;これらのジイソシアネートの変性物などが挙げられる。
これらのイソシアネート化合物のイソシアネート基をブロックするブロック剤としては、アルコール類、フェノール類、ε−カプロラクタム、ブチルセロソルブ類などが挙げられる。
ブロックイソシアネート化合物は、常温で安定であるが、その解離温度以上に加熱すると、遊離のイソシアネート基を再生するものである。イソシアネートの解離温度は、ブロック剤の種類によるが、好ましくは80〜160℃、より好ましくは90〜130℃である。
ブロックイソシアネート化合物は、フェノキシ樹脂中のエポキシ基、水酸基と反応して、フェノキシ樹脂分子鎖同士を架橋することができる。これにより、耐熱性、機械的強度に優れた被膜を形成することができる。
ブロックイソシアネートは、フェノキシ樹脂100質量部あたり5〜30質量部の割合で用いることが好ましい。
<チタン系硬化剤>
チタン系硬化剤としては、テトラプロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラヘキシルチタネート等のチタンアルコキシドが好ましく用いられる。これらのチタン系硬化剤は、その詳細は不明であるが、フェノキシ樹脂のエポキシ基、あるいは当該エポキシ基の開環により生じたOH基と反応することで、より機械的強度に優れた、架橋密度の高いフェノキシ樹脂硬化物を提供できるのではないかと考えられる。
<ポリサルファイドポリマー>
本発明で用いられるポリサルファイドポリマーとは、ジスルフィド結合(−S−S−)を主鎖中に有する液状ポリマーで、且つ末端がSH基のポリマーである。
好ましくは、主鎖が、−R−O−R−O−R−S−S−の繰り返し単位を有するポリマーで、ゴム弾性を有する。
上記繰り返し単位において、R、Rはメチレン、エチレン、プロピレン等の炭素数1〜4のアルキレン基であり、より好ましくは―C−O−CH−O−C−S−S−であり、HS−(C−O−CH−O−C−S−S)―C−O−CH−O−C−SHで表わされるポリサルファイドポリマーである。
本発明で用いられるポリサルファイドポリマーは、特に限定しないが、重量平均分子量400〜50000であることが好ましく、より好ましくは800〜10000、さらに好ましくは800〜8000である。
このようなポリサルファイドポリマーは、機構は明らかではないが、絶縁被膜の導体に対する密着強度、特に絶縁被膜がプライマー層及び該プライマー層上に形成した1層または2層以上の上塗り層からなる場合に、耐摩耗強度を向上させることができる。ポリサルファイドポリマーの末端のSH基が導体に対してキレート結合を形成し、他方の末端のSH基が、フェノキシ樹脂末端のエポキシ基と反応して結合を形成するのではないかと思われる。すなわち、導体と絶縁被膜を構成する樹脂との間を、ポリサルファイドポリマーが架橋するような状態となっているのではないかと考えられる。ポリサルファイドポリマーはゴム弾性を有しているので、捲き線加工時に加えられる外的ストレス、すなわち、絶縁被膜に負荷された摩擦力に対して、絶縁被膜(絶縁被膜が2層以上で構成される場合には、特に上塗り層)が相対的に移動するようなことがあっても、導体とフェノキシ樹脂との間に介在しているポリサルファイドポリマーが緩衝剤的役割をはたして、導体表面から絶縁被膜が剥離することを防止できるのではないかと考えられる。
ポリサルファイドポリマーは、絶縁被被覆用組成物に含まれるフェノキシ樹脂100質量部あたり、0.5〜25質量部程度含まれることが好ましく、より好ましくは1.0〜20質量部である。0.5質量部未満では、ポリサルファイドポリマーの添加効果が小さく、一方、多くなりすぎると、ポリサルファイドポリマーに含まれる硫黄により、導体、特に銅が硫化酸化されやすくなる。
<その他の成分>
本発明の絶縁被被覆用組成物には、フェノキシ樹脂;ブロックイソシアネート、チタン系硬化剤、及びポリサルファイドポリマーの他、ポリサルファイドポリマーの硬化剤が含まれていてもよい。ポリサルファイドポリマーの硬化剤としては、パラキノンジオキシム、過酸化亜鉛、二酸化鉛、二酸化マンガン、過酸化カルシウムなどが挙げられる。
また、本発明の絶縁被被覆用組成物には、本発明の目的が阻害されない範囲で、必要に応じて、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、炭化ケイ素、炭化チタン、タングステンカーバイド、窒化ホウ素、窒化ケイ素などのフィラー;酸化防止剤;硬化性改善剤;レベリング剤;接着助剤;潤滑剤などの各種添加剤が含有されていてもよい。
本発明の絶縁被覆用組成物は、通常、有機溶剤に分散または溶解して、電線用ワニスとして用いられる。
本発明で用いられる有機溶剤としては、フェノキシ樹脂を溶解できるものであればよく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ヘキサエチルリン酸トリアミド、γ−ブチロラクトンなどの極性有機溶媒をはじめ、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロへキサノンなどのケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、シュウ酸ジエチルなどのエステル類;ジエチルエステル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールメチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類;ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素化合物;ジクロロメタン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素化合物;クレゾール、クロルフェノールなどのフェノール類;ピリジンなどの第三級アミンなどが挙げられ、これらの有機溶媒は、それぞれ単独で又は2種以上混合して用いることができる。
本発明の絶縁被膜用塗料は、フェノキシ樹脂、ブロックイソシアネート、及びチタン系硬化剤、好ましくは更にポリサルファイドポリマーを配合し、さらに必要に応じてその他の添加剤を配合し、固形分含有率25〜60質量%程度となるように、有機溶剤で希釈することにより製造される。フェノキシ樹脂として、市販のフェノキシ樹脂系ワニスを用いる場合には、フェノキシ樹脂系ワニスに、ブロックイソシアネート、チタン系硬化剤、ポリサルファイドポリマー、および必要に応じて添加される添加剤を添加した後、固形分含有率25〜60質量%程度となるように、有機溶剤で調整することにより製造してもよい。
以上のような組成を有する本発明の絶縁被覆用組成物は、絶縁被膜としてだけでなく、ストレスが負荷した状態でも導体に対する密着性が優れているので、導体と絶縁被膜との間に形成されるプライマー層用として特に有用である。
以上のような組成を有する絶縁被覆用組成物を用いた絶縁被膜用塗料を、導体に直接塗布し、焼付けて硬化することにより、プライマー層が形成される。焼付温度としては、塗料に含まれる有機溶剤が揮発できる温度、さらにはエポキシ基が硬化剤と反応できる温度である。通常、フェノキシ樹脂硬化のための乾燥、硬化温度は、常温〜300℃であり、好ましくは200〜300℃である。
〔絶縁電線〕
本発明の絶縁電線は、導体表面に、上記本発明の絶縁被覆用組成物で形成されるプライマー層を有し、さらにプライマー層上に、上塗り層を有するものである。
導体としては、通常、電線導体に用いられる公知の導体で、銅線、アルミニウム線などの金属導体が用いられる。
本発明の絶縁被覆用組成物を塗布、焼付して形成されるプライマー層は、フェノキシ樹脂の硬化物で、チタン系硬化剤を含有し、好ましくは、さらにポリサルファイドポリマーを含有している。
プライマー層の厚みは、特に限定しないが、1〜20μmが好ましく、より好ましくは1〜10μmである。プライマー層としては、この程度の厚みで十分だからである。
本発明の電線用塗料プライマー層におけるポリサルファイドポリマーの含有率は、塗料の全固形分に対するポリサルファイドポリマーの含有率に該当し、0.49〜20質量%、好ましくは1〜17質量%である。
本発明の絶縁電線は、上記プライマー層上に、少なくとも1層以上の上塗り層を有している。
上塗り層は、従来より絶縁被膜として用いられる絶縁ワニスの塗布、焼付により形成されることが好ましく、具体的には、ポリイミド系樹脂膜、ポリエステルイミド系樹脂膜等のポリイミド系絶縁膜;ポリエステル系樹脂膜、THEIC変性ポリエステル樹脂膜;ポリアミド系樹脂膜、ポリアミドイミド系樹脂膜等が挙げられる。上塗り層が2層以上で構成される場合、例えば、プライマー層上にポリエステルイミド系樹脂層、ポリアミドイミド系樹脂層を順に積層する場合のように、異なる樹脂層の組み合わせであってもよい。
上塗り層には、ポリイミド系樹脂層が含まれていることが好ましく、より好ましくはポリエステルイミド系樹脂層が含まれていることが好ましい。ポリイミド系絶縁被膜は、耐熱性に優れているが、導体との密着性が低いという欠点がある。しかしながら、導体とポリイミド系絶縁膜との間に、本発明の組成物で構成されるプライマー層を介在させることにより、密着性を改善することができ、ポリイミド系絶縁膜が本来有している耐熱性が有効に発揮できるからである。
本発明を実施するための最良の形態を実施例により説明する。実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。
〔測定評価方法〕
はじめに、本実施例で行なった評価方法について説明する。
(1)密着性
(1−1)初期
JIS C3003「8.1a)急激伸張」に準じて、作製した絶縁電線を急激伸張することにより切断し、切断していない部分の膜浮の導体長さ(mm)及び切断部分において被覆が剥がれたことにより露出した導体長さ(mm)を、それぞれ測定した。測定値が小さいほど、急伸切断面においても、被覆層が剥がれていないことを示し、密着性に優れていることを示している。
各絶縁電線について、3本ずつ測定した結果の平均値を示す。
(1−2)加熱後密着性
作成した絶縁電線を、160℃で6時間保持した後、(1−1)と同様の方法にして、急激伸長後の膜浮導体長さ(mm)を測定した。これは、含浸ワニス処理後の密着性の指標となり、膜浮導体長さが小さいほど、加熱処理後の密着性に優れていることを示す。
なお、各絶縁電線について、3本ずつ測定した結果の平均値を示す。
(2)耐摩耗性
JIS C3003−1999に記載の耐摩耗試験に準拠し、一方向摩耗値(g)を測定した。どの程度の力が加わったときに被膜が破損するかを調べるもので、捲線加工時のストレスに対する被膜強度の指標となる。
なお、各絶縁電線について、9本ずつ測定した結果の平均値を示す。
(3)軟化温度
JIS C3003「エナメル銅線及びエナメルアルミニウム線試験方法」に準じて、軟化温度(℃)を測定した。JISに規定する荷重(700g)、2倍荷重(1400g)及び3倍荷重のそれぞれについて、電線が導通したときの温度(軟化温度)を測定した。
なお、各絶縁電線について、4本ずつ測定した結果の最大値と最小値の平均値を示す。
(4)絶縁破壊電圧
作製した絶縁電線2本を用いて撚り線を作成し、これをJIS C2002 10に準じて、絶縁破壊電圧(V)を測定し、10個のサンプルの測定値を平均して平均絶縁破壊電圧を求めた。
なお、各絶縁電線10本ずつ測定した結果の平均値を示す。
(5)可とう性
絶縁電線を、初期長さに対して20%伸長し、伸長後、JIS C3003 7.1.1可とう性試験に準拠して試験した。具体的には、絶縁電線の自己径(1d)を有する丸棒に沿って電線を、電線と電線とが接触するように30回巻き付けた後、亀裂の有無を観察し、亀裂個数を数えた。
巻きつける丸棒の径を絶縁電線の自己径の2倍(2d)についても同様にして巻きつけた後の亀裂個数を数えた。
(6)ヒートショック試験
絶縁電線を、初期長さに対して20%伸長し、伸長後、JIS C3003 20の耐衝撃試験に準拠して試験した。具体的には、240℃で1時間加熱した後、絶縁電線の自己径(1d)を有する丸棒に沿って電線を、電線と電線とが接触するように30回巻き付けた後、亀裂の有無を観察し、亀裂個数を数えた。
巻きつける丸棒の径を絶縁電線の自己径の2倍(2d)、3倍(3d)、4倍(4d)についても同様にして巻きつけた後の亀裂個数を数えた。
〔絶縁被覆用組成物及び絶縁電線の製造〕
No.1:
フェノキシ樹脂として、ビスフェノールA変性フェノキシ樹脂〔東部化成(株)、製品名:YP−50、フェノキシ樹脂をクレゾール/シクロヘキサノンに溶解させた溶液(固形分量:27質量%)〕を用いた。
ビスフェノールA変性フェノキシ樹脂100質量部に対して、ブロックイソシアネートとしてMS50(日本ポリウレタン工業社製)20質量部配合した(塗料における固形分量:4.5質量%)。
得られた絶縁被覆用塗料を、径0.898mmの銅線にで塗布、焼付け(焼付温度450℃)、厚み3μmのプライマー層(第1層目)を形成した。
次いで、汎用エステルイミド系ワニス(日立化成工業社のIsomid40SM45)を塗布、焼付て皮膜25μmの2層目を形成し、さらに汎用アミドイミドワニス(日立化成工業のHI−406E−34)を塗布、焼きつけて5μmの3層目を形成し、さらに高潤滑アミドイミド樹脂(住友電工ウィンテック)を塗布、焼きつけて2μmの4層目を形成し、皮膜総厚み0.034mm、仕上げ径0.967mmの絶縁電線を作成した。
作成した絶縁電線の密着性、可とう性、耐熱衝撃性、耐摩耗性、絶縁破壊電圧、軟化温度を、上記評価方法に従って測定評価した。結果を表1に示す。
No.2:
No.1の塗料に、さらにチタン系硬化剤(東京化成製のテトラブチルチタネート)を8質量部添加して、No.2の絶縁被覆用塗料を調製した。調製した絶縁被覆用塗料を用いて、導体径0.899mmの銅線に、塗料を塗布、焼付して、プライマー層を形成し、さらにNo.1と同様に、2層目、3層目、4層目を形成し、総厚み0.0345mmの絶縁皮膜を有する、仕上げ径0.968mmの絶縁電線を作製した。
作成した絶縁電線の密着性、可とう性、耐熱衝撃性、耐摩耗性、絶縁破壊電圧、軟化温度を、上記評価方法に従って測定評価した。結果を表1に示す。
No.3〜9:
No.2の塗料組成物に、さらに液状ポリサルファイドとして東レファインケミカル社のチオコールLP3(商品名)を表1に示す量だけ添加し、30℃で60分間混合して、No.3〜9の絶縁被覆用塗料を調製した。
調製した絶縁被覆用塗料を用いて、表1に示す導体径を有する銅線に塗布、焼付て厚み3μmのプライマー層を形成した以外は、No.1と同様にして、2層目、3層目、4層目を形成し、表1に示す皮膜厚みを有する絶縁電線を作製した。
作成した絶縁電線の密着性、可とう性、耐熱衝撃性、耐摩耗性、絶縁破壊電圧、軟化温度を、上記評価方法に従って測定評価した。結果を表1に示す。
Figure 2010073534
尚、表1中、ブロックイソシアネート、チタン系硬化剤、ポリサルファイドポリマーの配合量は、いずれもフェノキシ樹脂100質量部(YP−50の固形分100質量部)に対する添加量(phr)を示している。
表1において、No.1とNo.2との比較からわかるように、チタン系硬化剤を添加することにより、JIS荷重の2倍、3倍荷重下での耐軟化温度が向上した。しかしながら、耐摩耗性については、チタン系硬化剤を添加したNo.2の方が低かった。
No.2とNo.3〜No.9との比較から、ポリサルファイドポリマーの添加により、耐摩耗性の低下を抑制できることがわかる。また、耐軟化温度は400℃程度であることから、ポリサルファイドポリマーの添加効果は、チタン系硬化剤添加による耐軟化性の向上効果を損なうことなく、機械的強度の劣化を抑制できることがわかる。
ただし、ポリサルファイドポリマー20phr、30phr添加したNo.8、No.9では、耐摩耗性の改善効果が飽和して、10phr添加したNo.7よりも若干低下する傾向にある、さらに、ポリサルファイドポリマー30phr添加したNo.9では、ポリサルファイドポリマーを添加していないNo.1、2よりも加熱処理後の密着性が低下した。ポリサルファイドポリマーの添加は、フェノキシ樹脂100質量部あたり、0.5〜25質量部とすることが好ましく、より好ましくは1.0〜20質量部であることがわかる。
本発明の絶縁被被覆用組成物は、導体に対する密着性、耐摩耗性、耐熱性に優れているので、単独で絶縁電線の絶縁層を形成できるだけでなく、絶縁被膜のプライマー層として用いることで、上塗り層の導体密着性を改善でき、上塗り層の優れた特性が有効に発揮した絶縁電線を提供できる。

Claims (8)

  1. フェノキシ樹脂、ブロックイソシアネート、及びチタン系硬化剤を含有する絶縁被覆用組成物。
  2. さらに、ポリサルファイドポリマーが含有されている請求項1に記載の絶縁被覆用組成物。
  3. 前記ポリサルファイドポリマーは、末端がSH基であり、主鎖が−R1−O−R2−O−R1−S−S−(式中、R、Rは炭素数1〜3のアルキレン基である)の繰り返し単位で構成されている請求項2に記載の絶縁被覆用組成物。
  4. フェノキシ樹脂100質量部あたり、前記ポリサルファイドポリマーを0.5〜25質量部含有する請求項2または3に記載の絶縁被覆用組成物。
  5. 前記チタン系硬化剤は、チタンアルコキシドである請求項1〜4のいずれかに記載の絶縁被覆用組成物。
  6. 絶縁被膜が2層以上で構成されている絶縁電線のプライマーに用いる請求項1〜5のいずれかに記載の絶縁被覆用組成物。
  7. 導体;請求項1〜5のいずれか1項に記載の絶縁被覆用組成物の硬化物からなるプライマー層;及び該プライマー層上に形成した少なくとも1層の上塗り層を有する絶縁電線。
  8. 前記上塗り層は、ポリイミド系樹脂、ポリエステルイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、およびTHEIC変性ポリエステルからなる群より選ばれる樹脂で構成されている請求項7に記載の絶縁電線。
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WO2015121999A1 (ja) * 2014-02-17 2015-08-20 株式会社日立製作所 絶縁電線、回転電機及び絶縁電線の製造方法

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