JP2010072350A - 光学面に微細パターンを有するプラスチック光学素子 - Google Patents
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Abstract
光学面に微細パターンを有するプラスチックレンズについて、金型メンテナンス回数が増えて射出成形のサイクルタイムが損なわれることがなく、高い形状精度で成形できるようにすることを目的とし、そのために、光学面の微細パターンの先端部のプラスチック材料が金型から完全に離型し、また、微細パターンの上記先端部が離形抵抗で変形することのないプラスチックレンズの形状を工夫すること。
【解決手段】
一方の光学面に微細パターンが形成されたプラスチック光学素子であって、光学面側端部の光束が透過もしくは反射しない領域で、微細パターンと光学面に隣接する光学素子側面とが交差して微細パターンの先端部が形成されているプラスチック光学素子において、上記微細パターンの全ての先端部の角度が45度以上であること。
【選択図】図7
Description
ビームスポットの小径化を左右するものの1つにレンズの特性がある。一般的に使用されるガラスレンズでは加工できる形状に限界があり、このため、レンズ面の形状は概ね単純な球面であるのが一般的である。したがって、このガラスレンズに特殊な機能を持たせることは困難であり、これにより、ビームスポットをさらに小径化するのは極めて困難である。
すなわち、プラスチックは線膨張係数が大きいため、ガラスレンズに比べて温度変化による曲率や寸法の変動が大きく、また、温度変化による屈折率変動も大きい。このような曲率、寸法、屈折率の変動はそのピント位置の変動を生じ、感光体上でのビームスポット径を増大させ、その結果、画像機器の品質を低下させてしまうことになるというデメリットである。
そして、上記課題を解決するための発明が特許文献1に記載されている。これはレンズ面に回折光学面を用いて光走査光学系を工夫したものであり、この光走査光学系を図2(特許文献1の図1と同じ)に示している。図2の光走査光学系10は、光源1、カップリングレンズ2、アパーチャ3、アナモルフィックレンズ4、ポリゴンミラー5、偏向器側走査レンズ6、画像側走査レンズ7、防塵ガラス8、像面9等によるものであり、レンズが全てプラスチック製で、カップリングレンズ2の光源側のレンズ面と、アナモフィックレンズ4の像面側レンズ面に回折光学面を用いている。
ところが、回折光学面を有するプラスチックレンズを製造するについては、下記に示すような製造上の問題(1)、(2)がある。
(1)離型抵抗による回折光学面の形状精度が低下する問題
プラスチックレンズの製造方法としては、大量生産に適していて製造コストが低い射出成形法を用いるのが一般的である。射出成形法は加熱溶融したプラスチック材料を一定温度に保持された成形金型のキャビティに射出して充填し、これを冷却固化させた後、金型から離型させて取り出すという方法である。成形金型の温度制御方法としては、ヒータにより金型温度を制御する方法や、金型に設けた流路内に油や水を循環させて制御する方法などがある。
ところで、プラスチックレンズを射出成形法で成形すれば大量生産が可能で、複雑な表面形状を備えた高性能プラスチックレンズを低コストで製造することができる。しかし、プラスチックレンズが回折光学面を有するレンズ(プラスチック回折レンズ)である場合は、回折光学面の微細パターンの先端部75の先端(又はエッジ)eの離型抵抗が大きく、また、先端部75の角度αが小さくて先端eが薄肉になっているとき(図3、図4参照)、この薄肉の部分の剛性が低い場合があり、この場合に、図6に示すように、回折光学面72の微細パターンの先端部75の先端eが完全に離型せずにその一部が剥離し、これが金型内面に付着してしまうことがある。このような現象が生じると、射出成形を継続することは不可能になり、金型を分解して上記プラスチック材料を除去し洗浄する必要がある。それゆえ、金型メンテナンスの回数が多くなって、サイクルタイムが大きく損なわれ、また、メンテナンスコストが高くなる。これが問題(2)である。
〔手段1〕
手段1は、一方の光学面に微細パターンが形成されたプラスチック光学素子であって、光学面側端部の光束が透過もしくは反射しない領域で、微細パターンと光学面に隣接する光学素子側面とが交差して微細パターンの先端部が形成されているプラスチック光学素子において、上記微細パターンの全ての先端部の角度が45度以上であることである。
手段2は、一方の光学面に微細パターンが形成されたプラスチック光学素子であって、光学面側端部の光束が透過もしくは反射しない領域で、微細パターンと光学面に隣接する光学素子側面とが交差して形成される微細パターンの先端部が、微細パターンから上方に突出したリブと一体になっていることである(請求項9)。
また、回折パターンを有する高精度のプラスチック回折レンズを光走査光学系に用いることにより、温度変動によるピント位置ずれが生じることはなく、したがって、ビームスポットを小径にした光走査光学系を実現することができる。
また、以上のように、ビームスポットを小径にした光走査光学系を用いた画像形成装置に用いることによって著しく高品質な画像が安定的に形成することができる。
実施形態1はプラスチック回折レンズについての実施形態であり、実施形態2はプラスチックフレネルレンズについての実施形態であり、実施形態3は反射防止機能付きプラスチックレンズについての実施形態である。
〔実施形態1の実施例1〕
実施形態1の実施例1を図7に示している。この実施例1は一方の光学面に、中心位置が同じ多数の楕円が階段状に形成された回折光学面72を有している。この実施例1における個々の楕円の微細パターンの段差(高さ)は1.2μmであり、各楕円状微細パターンの楕円形の長軸方向でのピッチは10−200μmである。
そしてこの実施例1では、回折光学面72に形成された微細パターン(微細パターン)と、回折光学面72に隣接する光学素子側面73とが交差して形成される先端部(微細パターンの先端部)75の先端(又はエッジ)eが光学素子側面73に略直角な平面74になっている。この平面74の高さhは1.2μm、幅wは3〜30μmである。高さhは微細パターンの段差に相当する。そして幅wは5μm以上が好ましく、この例では7μmである。
微細パターンと光学素子側面73とが交差して形成される微細パターンの先端部75の角度αと、その形状誤差との関係を調査した。その結果は図8(b)に示すとおりである。
なお、図8(a)に拡大して示す角度αは、微細パターンの先端の角度であり、この角度αは楕円の長軸と短軸の比率によって異なり、楕円よりも長軸/短軸比が1となる円の方が大きい。この実験結果は、1つのプラスチック回折レンズにおける多数の先端部75の内の7点について確認したものであり、その角度αは35度、40度、45度、90度、120度、140度、160度である。
この図8(b)の実験結果は、上記角度αが45度よりも小さくなると形状誤差が1μm以上になり、上記角度がこれよりも小さくなると形状誤差が急激に増大することを示している。また、上記角度αが30度以下では、上記先端部75の先端、すなわち、先端部75の先端eの薄肉の部分(図4参照)が剥離して金型内面に付着してしまう現象がみられる。上記先端eが剥離したあとの上記先端部75の様子を図6に誇張して示している。
そこで、実施例1はプラスチック回折レンズの微細パターンの先端部75の角度αが45度以下のものの先端を光学素子側面に垂直な平面74にして、先端の薄肉な部分(図4のe参照)をなくしている。
上記角度αが45度以下である微細パターンについてその先端の薄肉の部分をなくすればよいのであるが、実施例1では図示の全ての先端部75が45度以下であるからこれら全ての先端部75の先端を光学素子側面に垂直な平面74にしている。
この実施例1の利点は、金型の製作が容易であることである。
実施形態1の実施例2を図9に示している。この実施例2では回折光学面72の微細パターンと光学素子側面73とが交差して形成される微細パターンの全ての先端部75の先端が、光学面の長さ方向に凸状に屈曲した円弧面94になっており、これによって、先端部75の先端には薄肉の部分は無くなっている。
図9の実施例2のレンズでは光学面の微細パターンの先端部75の先端には薄肉の部分はないので、金型から離型する際の上記先端部75の先端の離型抵抗は大きくなく、上記先端部75が変形(プラスチック材料がめくれ上がる現象)することはない。したがって、回折光学面の先端部の形状精度が高いプラスチック回折レンズが製造される。また、金型メンテナンスの回数は少なく、メンテナンスコストも低い。
この実施例2の利点は、金型の微細パターン端部角の経時的劣化を抑え長寿命で高安定な成形が実施できることである。
実施形態1の実施例3を図10に示している。この実施例3では回折光学面に形成された微細パターンと光学素子側面73とが交差して形成される先端部75の先端が、微細パターンから光学素子の厚さ方向に凸状に屈曲した円弧面104になっている。
図10のレンズは、その微細パターンの先端部75の先端に薄肉の部分はないから、上記先端部75の離型抵抗は大きくなく、この離型抵抗による当該先端部75の変形(プラスチック材料がめくれ上がる現象)はない。したがって、微細パターンの先端部75の形状精度が高いプラスチック回折レンズが製造される。また、金型メンテナンスの回数は少なく、メンテナンスコストは低い。
この実施例3の利点は、実施例2と同様であるが,離型抵抗のさらなる低減が期待できることである。
実施形態1の実施例4を図11に示している。この実施例4では、回折光学面72に形成された微細パターンと光学素子側面73とが交差して形成される先端部75が微細パターンから上方(図面において上方)に突出したリブ114と一体になっている。この実施例4ではリブ114の厚さは1mm、高さは0.2mmであるが、厚さは0.5〜1.5mm、高さは光学面の総高さ(レンズではサグ量という)+0.1mmであればよい。厚さが0.2以下ではそれ自体が離型抵抗となり、2mm以上では素子が不要に大きくなるので不利である。
以上のとおりであるから、微細パターンの先端部75の形状精度が高いプラスチック回折レンズが製造され、また、金型メンテナンスの回数も少なく、メンテナンスコストも低い。
実施形態1の実施例5を図12に示している。この実施例5では回折光学面72に形成された微細パターンと光学素子側面73が交差して形成される先端部75の先端(又はエッジ)の形状がレンズ厚さ方向に傾斜した傾斜面124になっている。
図12のレンズは、微細パターンの先端部75がレンズ厚さ方向に傾斜した傾斜面であるので、金型の製作が容易であり、射出成形金型から離型する際の、上記先端部75の先端の離型抵抗は大きくなく、上記先端部75の変形(プラスチック材料がめくれ上がる現象)はない。したがって、プラスチックレンズの回折光学面の微細パターンの先端部の形状精度が高いプラスチック回折レンズが製造される。また、凸形状で90度以下となる角がないのであるから、上記先端部75が剥離して金型内面に付着してしまうことはなく、したがって、金型メンテナンスの回数は少なく、メンテナンスコストは低い。
この実施例5の利点は金型の製作が容易ことである。
図13に従来のプラスチックフレネルレンズ81が示されている。このプラスチックフレネルレンズ81の場合は、微細パターン(フルネルパターン)の先端部75の先端eがエッジになっていてその角度αが45度以下である場合があり、この部分が薄肉になっていることがある。このため、実施形態1のプラスチック回折レンズと同様に金型から離型する際に、その微小パターンの先端部75の先端eの離型抵抗が大きく、当該先端eが変形する現象(プラスチック材料がめくれ上がる現象)が生じることがある。
また、上記角度αが45度以下であるときその先端部75の先端eは剛性が小さく、このため、プラスチックフレネルレンズ81の光学面の微細パターンの先端部75の形状精度の低下が見られる。
実施形態2は上記のようなプラスチックフレネルレンズにこの発明を適用した実施形態である。
実施形態2の実施例1を図14に示している。この実施例1では、フレネル光学面82に形成された微細パターンと光学素子側面83とが交差して形成される微細パターンの先端部75の先端が光学素子側面83に直角な平面84になっている。
この実施例1では微細パターンの先端部75の先端は上記平面84になっているので薄肉の部分はないから、成形品を射出成形金型から離型する際の上記先端部75の先端の離型抵抗は大きくなく、また、同先端の剛性は低くない。したがって、上記先端部75の先端が変形(プラスチック材料がめくれ上がる現象)することはなく、先端部75の形状精度が高いプラスチックフレネルレンズが製造される。
この実施例1の利点は金型の製作が容易であることである。
実施形態2の実施例2を図15に示している。この実施例2では光学面に形成された微細パターンと光学素子側面とが交差して形成される微細パターンの先端部75が微細パターンから上方に突出したリブ204と一体になっている。
図15のプラスチックフレネルレンズは、微細パターンの先端部75の全てが上記リブ204と一体になっているので、射出成形金型から離型する際の微細パターンの先端部75の先端の離型抵抗は大きくなく、微細パターンの先端部の先端が変形(プラスチック材料がめくれ上がる現象)することはない。したがって、上記微細パターンの先端部75の形状誤差は大きくなく、形状精度が高いプラスチックフレネルレンズが製造される。また、金型メンテナンスの回数は少なく、メンテナンスコストは低い。
この実施例2の利点は、金型の微細パターン端部角の経時的劣化を抑え長寿命で高安定な成形が実施できることである。
この実施形態3は反射防止機能付きプラスチックレンズ91にこの発明を適用した実施形態である。
従来の反射防止機能付きプラスチックレンズ91が図16に示されている。この従来の反射防止機能付きプラスチックレンズは、一方の光学面が反射防止機能光学面92になっていて、その微細パターンは、透過する光束の波長より短い周期をもつ微細パターンである。
反射防止機能付きプラスチックレンズの場合は、上記微細パターンの先端部75の先端がエッジになっていてその角度が45度以下である場合があり、この部分は薄肉になっていることである。このため、実施形態1のプラスチック回折レンズ、実施形態2のプラスチックフレネルレンズと同様に、射出成形法によってこれを製造すると、冷却時に上記先端部の先端の薄肉の部分が高密度化する。そしてこの高密度化した部分の離型抵抗が大きく、当該部分で変形(プラスチック材料がめくれ上がる現象)が生じる。また、先端の薄肉の部分は剛性が低い。したがって、上記微細パターンの先端部75の先端の形状誤差が大きく、このためその形状精度が低いことがある。
実施形態3の実施例1を図17に示している。この実施例1では、反射防止機能光学面92に形成された微細パターンと光学素子側面93とが交差して形成される先端部75が微細パターンから上方に突出したリブ304と一体になっている。
この実施例1の利点は金型の製作が容易であることである。
72:回折光学面
73,83,93:光学素子側面
74:光学素子側面に垂直な平面
75:微細パターンの先端部
81:プラスチックフレネルレンズ
82:フレネル光学面
91:反射防止機能付きプラスチックレンズ
92:反射防止機能光学面
94:光学面の長さ方向に凸状に屈曲した円弧面
104:光学素子の厚さ方向に凸状に屈曲した円弧面
114:微細パターンから上方(図面において上方)に凸出したリブ
124:レンズ厚さ方向に傾斜した傾斜面124
204,304:リブ
e:先端(又はエッジ)
Claims (10)
- 一方の光学面に微細パターンが形成されたプラスチック光学素子であって、光学面側端部の光束が透過もしくは反射しない領域で、微細パターンと光学面に隣接する光学素子側面とが交差して微細パターンの先端部が形成されているプラスチック光学素子において、
上記微細パターンの全ての先端部の角度が45度以上であることを特徴とするプラスチック光学素子。 - 前記光学面に形成された微細パターンが、回折パターンであることを特徴とする請求項1記載のプラスチック光学素子。
- 前記光学面に形成された微細パターンが、フレネルパターンであることを特徴とする、請求項1記載のプラスチック光学素子。
- 前記光学面に形成された微細パターンが、透過する光束の波長より短い周期をもつ微細パターンであることを特徴とする、請求項1記載のプラスチック光学素子。
- 前記プラスチック光学素子の側面形状が、多面体であることを特徴とする、請求項1乃至請求項4記載のプラスチック光学素子。
- 前記プラスチック光学素子の側面形状が、平面でかつ輪郭が矩形であることを特徴とする、請求項1乃至請求項5記載のプラスチック光学素子。
- 前記光学面に形成された微細パターンと光学素子側面とが交差して形成される微細パターンの先端部の先端が、光学素子側面に垂直な平面であることを特徴とする、請求項1乃至請求項6記載のプラスチック光学素子。
- 前記光学面に形成された微細パターンと光学素子側面とが交差して形成される微細パターンの先端部の先端が、光学素子側面に垂直で光学面の長さ方向に凸状に屈曲した円弧面であることを特徴とする、請求項1乃至請求項7記載のプラスチック光学素子。
- 一方の光学面に微細パターンが形成されたプラスチック光学素子であって、光学面側端部の光束が透過もしくは反射しない領域で、微細パターンと光学面に隣接する光学素子側面とが交差して微細パターンの先端部が形成されているプラスチック光学素子において、
微細パターンの先端部が、微細パターンから上方に突出したリブと一体であることを特徴とする、プラスチック光学素子。 - 光学ハウジングにプラスチック光学素子が組み付けられている光走査光学系において、上記プラスチック光学素子が請求項1乃至請求項4のプラスチック光学素子であることを特徴とする光走査光学系。
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