JP2010071660A - 分光分析用液体セル - Google Patents
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Abstract
【解決手段】液体セル10は、テラヘルツパルス光を透過する2枚の透光性基材20,37が重ね合わされて貼着され、透光性基材の界面に液体が注入される液体流路20Aを有する。液体流路は、透光性基材20の一方の面に、テラヘルツパルス光の集光エリアCAを包含する領域に形成された直線流路部20a、曲線流路部20b、流出流路部20cより成る一本の流路であり、透光性基材37の一方の面上に形成された液体流路の入口37aおよび液体流路の出口37bに連通する導液口および流出口には、液クロマトグラフィーなどに接続するマイクロチューブ4が取付けられている。この液体セル10は、液体流路内に試料溶液を注入して、分光計測装置を用いて振動電場の時間波形などを測定する。
【選択図】図6
Description
THz−TDS法は、テラヘルツパルス分光計測装置を用い、テラヘルツ光(パルス状の電磁波)の時間に依存した試料の電場強度を測定し、その時間に依存した時系列データをフーリエ変換処理することにより、そのパルスを形成する電場強度や位相などの周波数依存性を得ることができる(例えば、特許文献1参照)。
こうした不具合を解決するために、Si基板上にコプレーナストリップライン構造をした伝送線路およびアンテナが形成されたチップ表面に検査物体を塗布して、伝送線路を伝搬するTHz電磁波との相互作用を、空気中に染み出しているエバネッセント波を用いた反射測定法で、検査物体の物性などをセンシングするセンシング装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
本適用例に係る分光分析用液体セルは、液体の分光分析に用いられる分光分析用液体セルであって、前記分光分析用液体セルは、テラヘルツ光を透過する透光性基材が積層された積層体を含み、前記積層体の透光性基材の界面に沿って形成された液体流路を備え、前記液体流路は、直線流路部と屈折流路部、または前記直線流路部と曲線流路部を備え、前記屈折流路部は前記直線流路部に屈折して接続された直線の流路を有し、前記曲線流路部は前記直線流路部に接続された曲線の流路を有し、前記屈折流路部または前記曲線流路部の流路領域内に、前記テラヘルツ光の集光スポットを照射して用いることを特徴とする。
上記適用例に係る分光分析用液体セルにおいて、前記屈折流路部の流路が互いに屈折して接続する折れ角θ(°)が、次の一般式(1)で表わされることが好ましい。
上記適用例に係る分光分析用液体セルにおいて、前記分光分析用液体セルは前記液体を導入する導液口を有し、前記導液口に前記液体流路の入口が接続され、前記液体流路の入口より前記屈折流路部が屈折する屈折点までの流路長、または前記液体流路の入口より前記曲線流路部が屈曲する屈曲点までの流路長が、0(ゼロ)〜55mmであることが好ましい。
上記適用例に係る分光分析用液体セルにおいて、前記直線流路部と、前記直線流路部に接続する前記屈折流路部または前記曲線流路部とが、実用上同じ断面形状の凹部を有する一本の流路を備え、前記流路の幅が1mm〜5mm、深さが30μm〜1mmであることが好ましい。
なお、本実施形態の分光分析用液体セルは、LC分析(液体クロマトグラフィー分析)などの際に、透過測定法を用いて試料溶液の周波数依存性などの解析を行うための液体セルであり、流路構造に屈折流路部または曲線流路部を設けることにより層流(パラボリックフロー)を打破し、栓流で液置換性のタイムラグを解消させてダイナミック計測の精度を弱めるのを防止した液体セルを得ることを目的とする。
また、直線流路部2a(以後、直線部2aと表す)および屈折流路部2b(以後、屈折部2bと表す)は、幅αの凹部(溝)で形成されている。凹部の幅αは、例えば略3mmである。
テラヘルツ波長域を含む広い周波数領域に対応する反射防止構造としては、底面形状が多角錐台より成る台形状の多数の微細構造の突起が、テラヘルツ波長以下の周期でアレイ状に配列して形成されたモスアイ構造を挙げることができる。突起のアスペクト比(周期に対する多角錐台の底面から頂点までの高さの比)は1.5以上であるのが好ましい。また、反射防止構造は、少なくとも集光エリアCAとなる領域に形成されていれば良い。
先ず、広く一般的に用いられている直線構造の流路(直線流路)の場合の流速分布について説明する。
図2において、マイクロ流路におけるレイノズル数Reは1以下であり、円管流路の流速分布v(y)(単位:m/sec)は下記の一般式(2)に示すStokesの近似式を適用することができる。
このStokesの近似式(一般式(2))に基づいて、t秒後における断面形状x(y,t)は、下記の一般式(3)で表すことができる。
なお、断面形状の分析領域は、図中に二点鎖線で示す円形D(中心が管中心軸上の入口からx方向流路長2mmに位置する直径2mmの円)内領域である。
図4は、屈折流路における流速分布を説明する模式図である。
なお、一般式(4)および以後に説明する一般式(1),(5)におけるそれぞれの数式符号は、前記一般式(3)に示したものと同じ内容であり、数式符号の説明は省略する。
例えば、0.5秒後に液体(純水)が進んだ距離(x=2.5mm)における折れ角θは39°である。同様に1秒後に液体が進んだ距離(x=5mm)での折れ角θは22°、2秒後に液体が進んだ距離(x=10mm)での折れ角θは11°、10秒後に液体が進んだ距離(x=56mm)での折れ角θは2°である。こうしたとき、屈折流路を進む液体のパラボリックフロー(層流)を打破することができる。
なお、これらの値は、y=±0.5mm(流路中心から距離0.5mm)の断面位置における演算値である。
図5に示す経過時間毎の断面形状は、前記図3の場合と同様に、流路の断面をグラフ的に示し、横軸は流路の屈折点A1からの液体が進んだ流路長β(mm)、縦軸は流路幅(mm)を表す。したがって横軸の0(ゼロ)は屈折点A1の位置であり、縦軸の0(ゼロ)は流路の中心を示す。
なお、断面形状の分析領域は、図3の場合と同様に図中に二点鎖線で示す円形D(中心が管中心軸上の屈折点A1から液体が進んだ流路長βが2mmに位置する直径2mmの円)内領域である。
図6は、曲線流路を備えた分光分析用液体セルの構成を模式的に示す説明図であり、(a)は正面図、(b)は断面図である。
なお、図6に示す液体セル10は、液体流路の正面形状以外の基本構成などは、図1に示す液体セル1と同じであり、液体流路以外の説明は省略または簡略化する。
透光性基材20,37は、共にZ板水晶より成り、外形形状が長方形の平板状を成している。例えば、平面サイズ(外形サイズ)は略10mm×17mm、板厚は略1.35mmである。
なお、液体流路20A(直線部20a、曲線部20b、流出部20c)を形成する凹部の幅αは例えば略3mmであり、直線部20aにおける液体流路の入口37aの奥壁から曲線部20bの開始中心点(屈曲点)A2までの距離は、例えば略55mmである。
図7は、別の曲線流路を備えた分光分析用液体セルの構成を模式的に示す正面図である。なお、図7に示す液体セルは、透光性基材の外形サイズおよび液体流路の正面形状以外の基本構成などは、図6に示す液体セル10と同様であり、説明は省略または簡略化する。
図8は液体セルの液交換性能を透過率時間変動で示すグラフである。図9および図10は、共に図8における部分拡大グラフであり、図9は第1液注入時における液体セルの透過率時間変動を示すグラフであり、図10は第2液注入時における液体セルの透過率時間変動を示すグラフである。
また、液交換性能は、第1液として純水(透過率:5%)、第2液としてエタノール(透過率:50%)を用い、分光計測装置により透過率時間変動を測定した。
図8〜図10において、線図d1は、直線流路を備えた液体セルにおける集光エリアCAでの透過率時間変動を示し、線図d2は屈折流路を備えた液体セル1、線図d3は曲線流路を備えた液体セル10における集光エリアCAでの透過率時間変動を示す。また、各線図は、横軸の0(ゼロ)sec時点で各液体流路内に第1液(純水)を注入し、10sec経過時点で第2液(エタノール)を注入した場合の透過率時間変動を示す。
一方、図8および図10に示すように、各液体セルの液体流路内に第1液が注入された状態で第2液を注入すると、これも注入後1sec〜2sec程度で第2液(エタノール)の透過率50%の値を正確に示す。
図11は、液体セルの製造方法を説明するための液体セルの正面模式図である。なお、図11には、液体セル1の透光性基材2の界面における態様を実線で示し、透光性基材3の界面における態様を二点鎖線で示す。また、マイクロチューブ4などの図示は省力する。したがって、液体セル1の製造方法は、図1を参照しながら図11に従って説明する。
そして準備した水晶板は、溝加工工程に移行する。
形成される溝は、1枚の水晶板(第1の水晶板)の一方面上に液体流路2A(直線部2a、屈折部2b)となる凹部が形成される。また、他の1枚の水晶板(第2の水晶板)の一方面上に液体流路の入口3aおよび液体流路の出口3bとなる凹部が形成される。
マスキング工程は、第1の水晶板の表面に感光性ドライフィルムをラミネートする。そして、感光性ドライフィルムの上面に、予め作製した液体流路2A以外の領域を除去するように形成されたマスクを重ね合わせて、感光性ドライフィルムの露光を行う。露光は、露光装置を用いて、マスク上に紫外線が照射される。第1の水晶板の表面に形成する液体流路2Aの幅は、略300μmである。
そして、酸性水溶液によるリンスおよび乾燥を行った後、ブラスト工程に移行する。
ブラスト加工は、マイクロブラスト装置を用いて、感光性ドライフィルムが現像された第1の水晶板および第2の水晶板の表面に、ブラストノズルから圧縮空気と共に研磨剤を噴射して、残存する感光性ドライフィルム以外の領域の水晶板を脆性破壊原理により除去する。研磨剤としては、炭化ケイ素、アルミナ、ガラスビーズあるいはステンレスパウダーなどが挙げられる。また、研磨剤の粒度は、JIS1998に規定された#600〜#6000(粒子径:4μm〜25μm)程度の微粉を用いるのが好ましい。
一方、第2の水晶板に対しては、水晶板の表面に、0.35MP程度の噴射圧力で研磨剤を噴射しながら、移動速度50mm/sec程度で、30パスの加工を行って、深さ700μm程度の液体流路の入口3aおよび液体流路の出口3bが形成される。
マスク剥離工程では、ブラスト加工された第1の水晶板および第2の水晶板を25℃から50℃位の水温の水中に一時間放置し、感光性ドライフィルムを除去する。これにより、透光性基材2および透光性基材3が完成する。
そして、透光性基材接合工程に移行する。
接着固定は、透光性基材2の液体流路2Aが形成された面に、例えばスクリーン印刷法を用いて、熱硬化性接着剤を塗布する。そして、透光性基材2の熱硬化性接着剤が塗布された面に、透光性基材3の外形形状を略一致させて、液体流路の入口3aおよび液体流路の出口3bが形成された面を重ね合わせる。
そして、マイクロチューブ取付け工程に移行する。
これにより、液体セル1が完成する。
図12は、テラヘルツパルス分光計測装置の概略構成を示す模式図である。なお、テラヘルツパルス分光計測装置100には液体セル1がセットされた態様で示す。
ビームスプリッタ31は、レーザ発生装置30より放射されるパルス光L1をポンプ光L2とプローブ光L11に分割する。
半導体基板33aは、低温成長ガリウムヒ素などから成る基板上に、合金製の平行伝送線路間に微少ギャップ33cを有する光伝導アンテナが形成されており、平行伝送線路(微少ギャップ33c)間に数10Vの電圧(33d)を印加することにより、集光レンズ34を介して微少ギャップ33cに集束入射するポンプ光L2からテラヘルツ光を発生させる機能を有する。超半球レンズ33bは、半導体基板33aで発生したテラヘルツパルス光をコリメートする機能を有する。
軸外し放物面鏡35は、テラヘルツ光発生素子33から発したテラヘルツ光L3(パルス状)を反射して、液体セル1に向かって集束して照射する機能を有する。軸外し放物面鏡36は、液体セル1を透過したテラヘルツ光L4を反射して、テラヘルツ光検出素子47に集束して照射する機能を有する。
半導体基板47aは、ガリウムヒ素などから成る基板上に、合金製の平行伝送線路間に微少ギャップ(光伝導アンテナ)47cが形成されており、平行伝送線路(微少ギャップ47c)間に微少電流計47dが接続されている。
ロックインアンプ51は、電流増幅器50において増幅された振動電場の時間波形のノイズ成分を減少させるために、光チョッパーの変調をかけて同期検波を行う。
ホルダー60に保持固定された液体セル1は、液体流路の入口3aに取付けられたマイクロチューブ4a(図1参照)が、例えば、液クロマトグラフィー61に接続され、液体流路の出口3bに取付けられたマイクロチューブ4b(図1参照)が廃液容器(図示せず)に接続されている。
そして、レーザ発生装置30から放射(射出)されたフェムト秒パルスレーザのパルス光L1は、ビームスプリッタ31に入射する。ビームスプリッタ31では、入射するパルス光L1が、ポンプ光L2とプローブ光L11に分割される。
軸外し放物面鏡35では、回転放物面を有する2つの凹面鏡によって、テラヘルツ光発生素子33から発したテラヘルツ光L3を反射して、ホルダー60に保持固定された液体セル1に向かって集束して照射する。
そして、液体セル1を透過したテラヘルツ光L4は、軸外し放物面鏡36に入射する。
時間遅延装置42では、移動装置を稼動して可動ステージ42aを図中に矢印で示すβ方向に移動して、折り返しミラー42bに入射するプローブ光L11に時間遅延を付与したプローブ光L12を反射する。この時間遅延装置42において付与される時間遅延は、プローブ光L11の繰り返し周期が10MHzであることから、入射光の光路長の0.3mmの変化が、1ピコ秒の変化に相当する。
ロックインアンプ51では、電流増幅器50において増幅された振動電場の時間波形のノイズ成分を減少させるために、光チョッパーで数KHzの変調をかけて同期検波が行われる。この数KHzの変調に対してテラヘルツ光L4の繰り返し周期が10MHzであることによって、同期検波されたテラヘルツ光L4の時間波形は、連続波形として扱うことができる。
コンピュータ52では、ロックインアンプ51において同期検波されたテラヘルツ光L4の振動電場の時間波形をフーリエ変換することによって、テラヘルツ光L4の電場強度の周波数特性、分光透過率や吸収率などの周波数依存性などデータ、すなわち、試料溶液の特性情報が得られる。この後、これらの得られた周波数特性や周波数依存性などを解析することにより、試料溶液の物理的、化学的な性質を探求することができる。
Claims (4)
- 液体の分光分析に用いられる分光分析用液体セルであって、
前記分光分析用液体セルはテラヘルツ光を透過する透光性基材が積層された積層体を含み、前記積層体の透光性基材の界面に沿って形成された液体流路を備え、
前記液体流路は、直線流路部と屈折流路部、または前記直線流路部と曲線流路部を備え、
前記屈折流路部は前記直線流路部に屈折して接続された直線の流路を有し、
前記曲線流路部は前記直線流路部に接続された曲線の流路を有し、
前記屈折流路部または前記曲線流路部の流路領域内に、前記テラヘルツ光の集光スポットを照射して用いることを特徴とする分光分析用液体セル。 - 請求項1または請求項2に記載の分光分析用液体セルであって、
前記分光分析用液体セルは前記液体を注入する導液口を有し、
前記導液口に前記液体流路の入口が接続され、
前記液体流路の入口より前記屈折流路部が屈折する屈折点までの流路長、または前記液体流路の入口より前記曲線流路部が屈曲する屈曲点までの流路長が、0(ゼロ)〜55mmの範囲内であることを特徴とする分光分析用液体セル。 - 請求項1または請求項2に記載の分光分析用液体セルであって、
前記直線流路部と、前記直線流路部に接続する前記屈折流路部または前記曲線流路部とが、実用上同じ断面形状の凹部を有する一本の流路を備え、
前記流路の幅が1mm〜5mm、深さが30μm〜1mmであることを特徴とする分光分析用液体セル。
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2008
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