JP2010066135A - 担体およびバイオセンサー - Google Patents
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Abstract
【課題】生理活性物質を中性下において安定かつ高速で固定化する。
【解決手段】基板と、基板表面上に結合されたリガンドと、リガンドに固定された金属イオンと、金属イオンに固定された生理活性物質とを備えた担体であって、生理活性物質が金属イオンに配位結合するタグを有し、このタグが2以上のシステインを含むシステインユニットであり、システインユニットを介して生理活性物質が金属イオンに固定される。
【選択図】図1
【解決手段】基板と、基板表面上に結合されたリガンドと、リガンドに固定された金属イオンと、金属イオンに固定された生理活性物質とを備えた担体であって、生理活性物質が金属イオンに配位結合するタグを有し、このタグが2以上のシステインを含むシステインユニットであり、システインユニットを介して生理活性物質が金属イオンに固定される。
【選択図】図1
Description
本発明は、生理活性物質を固定するのに好適な担体およびその担体を備えたバイオセンサーに関するものである。
現在、臨床検査等で免疫反応など分子間相互作用を利用した測定が数多く行われているが、中でも煩雑な操作や標識物質を必要とせず、測定物質の結合量変化を高感度に検出することのできるいくつかの技術が使用されている。例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)測定技術、水晶発振子マイクロバランス(QCM)測定技術、金のコロイド粒子から超微粒子までの機能化表面を使用した測定技術である。これらの技術においては、いずれの場合も、生理活性物質を固定化する表面が重要である。以下、表面プラズモン共鳴(SPR)を例にとって説明する。
一般に生理活性物質を測定するために使用される測定チップは、透明基板(例えば、ガラス)上に、蒸着された金属膜、タンパク質等の生理活性物質を固定化できる官能基を有する薄膜を順に有し、官能基を介して金属表面に生理活性物質が固定化されている。そして、生理活性物質と検体物質間の特異的な結合反応を測定することによって、生体分子間の相互作用を分析する。
測定チップに生理活性物質を固定化するためのいくつかの手法が知られている。生理活性物質としてタンパク質を例にとった場合、測定チップとタンパク質を共有結合により固定化するための手法として、タンパク質のチオール基と測定チップ上のカルボキシル基とを結合させる方法(マイケル付加法)が知られている。例えば非特許文献1にはマレイミド膜とシステインが6個結合したシステインタグ(遺伝子改変により人工的に合成されたタンパク質のN末端あるいはC末端に導入されたTag)とをマイケル付加によって結合する方法が記載されている。
具体的には、マレイミド膜に中性下でシステインタグを長時間(3時間程度)接触させて固定したり、あるいはEDCやNHSといった活性化剤で荷電濃縮(酸性条件あるいはアルカリ性条件)をかけながら固定するといった方法がとられている。また、シアノシステイン残基を介したアミド結合形成反応を利用して、蛋白質のカルボキシル末端のカルボキシルを介して担体に固定化する技術として、システイン残基をシアノ化後、荷電濃縮をかけながら固定するといった技術も知られている(特許文献1)。
しかし、非特許文献1や特許文献1に記載された方法では、酸性条件あるいはアルカリ性条件で変性するタンパク質の場合には、活性を維持したまま固定化することができないという問題がある。また非特許文献1では、中性下で固定する方法も記載されているが、固定化に長時間を要するため実用的ではない。また、EDCやNHSといった活性化剤を用いた固定化法は、タンパク質表面の任意のアミノ基も固定されることになるため、固定化されるタンパク質の配向が一定にならない場合や、固定されるアミノ基の位置によってタンパク質と基質との結合が阻害されてタンパク質の活性が低下する場合がある。
一方、中性条件下で測定チップ上にタンパク質を固定化する手法が開発されている。その代表例として、His-tagを用いた固定化技術が挙げられる。この技術は、遺伝子組換えによって発現させたHis-tagタンパク質を精製するためのアフィニティーカラム用として開発されたものであるが、タンパク質を一定の配向性を持たせた状態で固体表面に固定化させる目的にも用いられている。
特に、NTA(Nitrilotriacetic acid)とNi(II)イオンとによるNTA-Ni(II)錯体を用いたHis-tagタンパク質の固定化では、錯体中の2つの配位座に配位した水分子がHis-tagタンパク質のオリゴヒスチジン残基の2つのイミダゾール基の窒素原子と置換することによって、His-tagタンパク質が特異的かつ一定方向に固体表面に結合する(非特許文献2)。このNTA-Ni(II)錯体を用いるHis-tagタンパク質の固定化では、酸性条件下でプレコンセントレーションを行う必要がないため、生理的条件の緩衝液(PBSなど)を用いてHis-tagタンパク質の固定化が可能となり、タンパク質のアミノ基と測定チップ上のカルボキシル基とを結合させるアミンカップリングの有する問題を解消することが可能である。
Jounal of proteome 2006,5,2144-2151 特許3047020号公報
Anal.Chem.2006,78,3072-3079
Jounal of proteome 2006,5,2144-2151
しかし、非特許文献2に記載されているHis-tagタンパク質とNTA-Ni(II)錯体との結合は充分に強固ではなく、測定チップ上にNTA-Ni(II)錯体を介して固定化されたHis-tagタンパク質は、例えば酸やキレート剤であるEDTAといった洗浄によって容易に解離してしまうという問題がある。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、中性条件下で生理活性物質を安定かつ高速で固定化することが可能な担体およびこの担体を備えたバイオセンサーを提供することを目的とするものである。
本発明の担体は、基板と、該基板表面上に結合されたリガンドと、該リガンドに固定された金属イオンと、該金属イオンに固定された生理活性物質とを備えた担体であって、前記生理活性物質が金属イオンに配位結合するタグを有し、該タグが2以上のシステインを含むシステインユニットであり、該システインユニットを介して前記生理活性物質が金属イオンに固定されていることを特徴とするものである。
前記システインユニットはヒスチジンを含むものであることが好ましい。
前記システインユニットはヒスチジンを含むものであることが好ましい。
前記リガンドはニトリロトリ酢酸誘導体であることが好ましい。
基板表面上に高分子膜が結合されており、該高分子膜に前記ニトリロトリ酢酸誘導体が結合していることが好ましい。
前記金属イオンは遷移金属イオンであることが、さらに好ましくはCu(II)イオンであることが好ましい。
前記担体は、バイオセンサー用の担体として好適に用いられる。
基板表面上に高分子膜が結合されており、該高分子膜に前記ニトリロトリ酢酸誘導体が結合していることが好ましい。
前記金属イオンは遷移金属イオンであることが、さらに好ましくはCu(II)イオンであることが好ましい。
前記担体は、バイオセンサー用の担体として好適に用いられる。
本発明の担体は、基板と、この基板表面上に結合されたリガンドと、このリガンドに固定された金属イオンと、この金属イオンに固定された生理活性物質とを備えた担体であって、生理活性物質が金属イオンに配位結合するタグを有し、このタグが2以上のシステインを含むシステインユニットであり、このシステインユニットを介して生理活性物質が金属イオンに固定されているので、中性下で生理活性物質を安定かつ高速で固定化することが可能である。
本発明の担体を図1を参照して説明する。図1は本発明の担体の一実施の形態を示す一部拡大模式図である(なお、図1では金属イオンおよび生理活性物質の結合および固定をわかりやすくするために、リガンドおよびタグの一部を拡大して示している)。
本発明の担体は、図1に示すように、基板(なお、図1では基板上に金属膜が配置されている態様を示している)と、この基板表面上に結合された高分子膜の一種であるSAMと、この高分子膜に結合されたリガンド(図1では後述するNTAで示している)と、このリガンドに固定された金属イオン(図1ではCu(II)で示している)と、この金属イオンに固定された生理活性物質とを備えた担体であって、生理活性物質が金属イオンに配位結合するタグを有し、このタグが2以上のシステインを含むシステインユニットであり、このシステインユニットを介して生理活性物質が金属イオンに固定されている。
以下、本発明の担体の各構成およびその構成の形成方法(活性化)について説明し、次に、本発明の担体を製造する工程を説明し、最後にバイオセンサーやバイオリアクターに適用する場合について説明する。
(1)基板
本発明の担体における基板は、表面プラズモン共鳴バイオセンサー用を考えた場合、一般的にはBK7等の光学ガラス、あるいは合成樹脂、具体的にはポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマーなどのレーザー光に対して透明な材料からなるものが使用できる。このような基板は、好ましくは、偏光に対して異方性を示さずかつ加工性の優れた材料が望ましい。
本発明の担体における基板は、表面プラズモン共鳴バイオセンサー用を考えた場合、一般的にはBK7等の光学ガラス、あるいは合成樹脂、具体的にはポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマーなどのレーザー光に対して透明な材料からなるものが使用できる。このような基板は、好ましくは、偏光に対して異方性を示さずかつ加工性の優れた材料が望ましい。
基板上には金属膜が配置されることが好ましい。ここで、基板上に配置されるとは、金属膜が基板上に直接接触するように配置されている場合のほか、金属膜が基板に直接接触することなく、他の層を介して配置されている場合をも含む意味である。金属膜を構成する金属としては、例えば、表面プラズモン共鳴バイオセンサー用を考えた場合、表面プラズモン共鳴が生じ得るようなものであれば特に限定されない。好ましくは金、銀、銅、アルミニウム、白金等の自由電子金属が挙げられ、特に金が好ましい。それらの金属は単独又は組み合わせて使用することができる。また、上記基板への付着性を考慮して、基板と金属からなる層との間にはクロム等からなる介在層を設けてもよい。
金属膜の膜厚は任意であるが、例えば、表面プラズモン共鳴バイオセンサー用を考えた場合、0.1nm以上500nm以下であることが好ましく、特に1nm以上200nm以下であることが好ましい。500nmを超えると、媒質の表面プラズモン現象を十分検出することができない。クロム等からなる介在層を設ける場合、その介在層の厚さは、0.1nm以上10nm以下であることが好ましい。
また、その他のバイオセンサー(電気化学的バイオセンサーやELISA法、ISFETセンサーなど)や、バイオリアクター用を考えた場合、基板は、ガラス、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、インジウムスズ酸化物(ITO)等の金属酸化物、窒化ケイ素、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、窒化インジウム等の金属窒化物、あるいは合成樹脂、具体的にはセファロース、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリメチル(メタ)クリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマーなどを用いることができる。このような基板は好ましくは、バイオリアクターを使用する条件で安定性の高い材料が望ましい。
金属膜は必ずしも必要とはならないが、必要な場合には上記表面プラズモン共鳴バイオセンサーと同様の金属を用いることができ、0.1nm以上1μm以下であることが好ましく、特には1nm以上100nm以下が好ましい。また、上記バイオセンサーと同様にクロム等からなる介在層を設けてもよく、その介在層の厚さは、0.1nm以上10nm以下であることが好ましい。
(2)リガンド固定層
金属膜が形成された基板上には、ヒドロゲル、自己組織化膜、シランカップリング層、疎水性ポリマー膜、無機物多孔性膜、有機無機ハイブリッド膜などのリガンド固定層を有することが好ましい。また、その組み合わせとして、基材表面に自己組織化膜やシランカップリング層を形成させる態様や、形成させた自己組織化膜やシランカップリング層を介してヒドロゲルや疎水性ポリマー膜をさらに形成させる態様としてもよい。特に好ましい態様によれば、金属膜が形成された基板上に、自己組織化膜形成分子と親水性ポリマーの組み合わせから構成することができる。
金属膜が形成された基板上には、ヒドロゲル、自己組織化膜、シランカップリング層、疎水性ポリマー膜、無機物多孔性膜、有機無機ハイブリッド膜などのリガンド固定層を有することが好ましい。また、その組み合わせとして、基材表面に自己組織化膜やシランカップリング層を形成させる態様や、形成させた自己組織化膜やシランカップリング層を介してヒドロゲルや疎水性ポリマー膜をさらに形成させる態様としてもよい。特に好ましい態様によれば、金属膜が形成された基板上に、自己組織化膜形成分子と親水性ポリマーの組み合わせから構成することができる。
(2−1)自己組織化膜形成分子
自己組織化膜とは、外からの細かい制御を加えていない状態で、膜材料そのものがもつ機構によって形成される一定の秩序をもつ組織をもった単分子膜やLB膜などの超薄膜のことを言う。この自己組織化により、非平衡な状況で長距離にわたって秩序がある構造やパターンが形成される。
自己組織化膜とは、外からの細かい制御を加えていない状態で、膜材料そのものがもつ機構によって形成される一定の秩序をもつ組織をもった単分子膜やLB膜などの超薄膜のことを言う。この自己組織化により、非平衡な状況で長距離にわたって秩序がある構造やパターンが形成される。
自己組織化膜(SAMs)を用いた金属膜の被覆法は、ハーバード大のWhitesides教授らにより精力的に展開されており、その詳細は例えばChemical Review, 105, 1103-1169 (2005)に報告されている。金属として金を用いた場合、有機層形成化合物として一般式A-1(一般式A-1において、nは3から20の整数を示し、Xは官能基を示す)に示すアルカンチオール誘導体を用いることにより、Au-S結合とアルキル鎖同士のvan der Waals力に基づき、配向性を持つ単分子膜が自己組織的に形成される。自己組織化膜は、アルカンチオール誘導体の溶液中に金基板を浸漬するという極めて簡便な手法で作製される。一般式A-1においてX=NH2である化合物を用いて自己組織化膜を形成させることで、アミノ基を有する有機層で金表面を被覆することが可能となる。
自己組織化膜形成化合物として具体的には、6-アミノ-1-ヘキサンチオール、11-アミノ-1-ウンデカンチオール、10-カルボキシ-1-デカンチオール、7−カルボキシ−1−へプタンチオール、16-カルボキシ-1-メルカプトヘキサデカンチオール、11-ヒドロキシ-1-ウンデカンチオールなどが挙げられる。自己組織化膜は、アルカンチオール誘導体の溶液中に金基板を浸漬するという極めて簡便な手法で作製される。一般式A-1において例えばX=NH2である化合物を用いて自己組織化膜を形成させることで、アミノ基を有する有機層で金表面を被覆することが可能となる。
別の例として、シリカ、窒化ケイ素などの金属酸化物や窒化物あるいはその薄膜を有する基材に対しては、シランカップリング剤により形成されたシランカップリング層を介して結合することもできる。シランカップリング剤として一般式A-2(一般式A-2において、Xは官能基を示し、Lは直鎖、分岐鎖、環状鎖の炭素鎖を含むリンカー部位を示し、Rは水素、もしくは炭素数1〜6のアルキル基を示し、Yは加水分解基を示す。また、m,nはそれぞれ0〜3の整数を示しm+n=3とする。)に示すケイ素含有化合物を利用することにより、金属酸化物や窒化物との間に金属(ケイ素)−酸素−ケイ素−炭素といった共有結合を形成させることにより、基材表面を官能基で被覆することができる。
ここで、加水分解基(Y)とは、アルコキシ基、ハロゲン、アシロキシ基などが挙げられ、より具体的にはメトキシ基、エトキシ基、塩素などが挙げられる。シランカップリング剤として具体的には、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。シランカップリング剤の反応方法としては一般的な方法に従えば良く、例えば書籍、シランカップリング剤の効果と使用法(サイエンス&テクノロジー社)に記載の方法を利用することができる。
また、自己組織化膜形成化合物やシランカップリング剤などが有する官能基(X)としては、生理活性物質と結合すれば特に限定はされず、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルデヒド基、チオール基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、シアノ基、ヒドラジノ基、ヒドラジド基、ビニルスルホン基、ビニル基など任意の官能基とその組み合わせやその誘導体を利用することができる。
末端にアミノ基を有するアルカンチオールは、アルキル鎖を介してチオール基とアミノ基が連結している化合物(一般式A-3)(一般式A-3において、nは3から20の整数を示す)でもよく、末端にカルボキシル基を有するアルカンチオール(一般式A-4、A-5)(一般式A-4においてnは3から20の整数を示し、一般式A-5においてnはそれぞれ独立に1から20の整数を示す)と大過剰のヒドラジドまたはジアミンを反応させた化合物でもよい。末端にカルボキシル基を有するアルカンチオールと大過剰のヒドラジドまたはジアミンとの反応は、溶液状態で行ってもよく、また、末端にカルボキシル基を有するアルカンチオールを基板表面に結合した後、大過剰のヒドラジドまたはジアミンを反応させてもよい。
A-3〜A-5のアルキル基の繰返し数は、3以上20以下が好ましく、さらに3以上16以下が好ましく、4以上8以下が最も好ましい。アルキル鎖が短いと自己組織化膜を形成しにくく、アルキル鎖が長いと水溶性が低下し、ハンドリングが困難になる。
本発明に用いるポリアミンとしては、任意の化合物を用いることが可能であるが、バイオセンサー表面またはバイオリアクター表面に用いる場合、水溶性ポリアミンが好ましい。水溶性ポリアミンとしては具体的に、エチレンジアミン、テトラエチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ピペラジン、トリエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、ジヘキサメチレントリアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン等の脂肪族ジアミン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、パラキシリレンジアミン、メタキシリレンジアミン、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン酸等の芳香族ジアミンが挙げられる。バイオセンサー表面またはバイオリアクター表面の親水性を向上させるという観点から、2つのアミノ基をエチレングリコールユニットで連結した化合物を用いることも可能である。本発明に用いるジアミンとしては、好ましくはエチレンジアミンまたは一般式A-6(一般式A-6において、n及びmは、それぞれ独立に1から20の整数を示す)で表される化合物であり、より好ましくは、エチレンジアミンまたは1,2−ビス(アミノエトキシ)エタン(一般式A-6において、n=2,m=1)である。
アミノ基を有するアルカンチオールは、単独で自己組織化膜を形成することも可能であり、また、他のアルカンチオールと混合して自己組織化膜を形成することも可能である。バイオセンサー表面に用いる場合、他のアルカンチオールとしては、生理活性物質の非特異吸着を抑制可能な化合物を用いることが好ましい。生理活性物質の非特異吸着を抑制可能な自己組織化膜に関しては、前述のWhitesides教授らにより詳細に検討されており、親水性基を有するアルカンチオールから形成された自己組織化膜が非特異吸着抑制に有効であることが報告されている(Langmuir,17,2841-2850, 5605-5620, 6336-6343 (2001))。
本発明において、アミノ基を有するアルカンチオールと混合単分子膜を形成するアルカンチオールは、前記論文に記載された化合物を好ましく用いることが可能である。非特異吸着抑制能に優れ、入手が容易であることから、アミノ基を有するアルカンチオールと混合単分子膜を形成するアルカンチオールとしては、水酸基を有するアルカンチオール(一般式A-7)あるいはエチレングルコールユニットを有するアルカンチオール(一般式A-8)(一般式A-7において、nは3から20の整数を示し、一般式A-8において、n及びmは、それぞれ独立に1から20の整数を示す)を用いることが好ましい。好ましくは、一般式A-7において、nは5以上であり、10以上であることがさらに好ましく、10〜30がさらに好ましく、最も好ましくは10〜16である。
アミノ基を有するアルカンチオールを他のアルカンチオールと混合して自己組織化膜を形成する場合、A-3〜A-5のアルキル基の繰返し数は、4以上20以下が好ましく、さらに4以上16以下が好ましく、4以上10以下が最も好ましい。また、A-7,A-8のアルキル基の繰返し数は、3以上16以下が好ましく、さらに3以上12以下が好ましく、3以上8以下が最も好ましい。
本発明において、アミノ基を有するアルカンチオールと水酸基を有するアルカンチオールは、任意の割合で混合することが可能であるが、アミノ基を有するアルカンチオールの割合が少ない場合には後述する親水性ポリマーの結合量が低下し、水酸基を有するアルカンチオールの割合が少ない場合には非特異吸着抑制能が減少する。それゆえ、アミノ基を有するアルカンチオールと水酸基を有するアルカンチオールの混合比は、1/1〜1/1,000,000の範囲であることが好ましく、1〜1/1,000の範囲であることがより好ましく、1〜1/10の範囲であることがさらに好ましい。活性エステル化されたカルボキシル基を含有するポリマーと反応する場合の立体障害低減の観点から、アミノ基を有するアルカンチオールの分子長は、水酸基を有するアルカンチオールの分子長よりも長いことが好ましい。
本発明で用いるアルカンチオールは、Northwestern大学のGrzybowski教授らによる総説(Curr. Org. Chem., 8, 1763-1797(2004).)およびその引用文献に基づいて合成された化合物を用いても良く、また市販の化合物を用いてもよい。これらの化合物は、同仁化学(株)、Aldrich社、SensoPath Technologies社、Frontier Scientific Inc.社等から購入可能である。本発明においてアルカンチオールの酸化生成物であるジスルフィド化合物は、アルカンチオールと同様に用いることが可能である。
(2−2)親水性ポリマー
本発明で用いることができる親水性ポリマーとしては、ゼラチン、アガロース、キトサン、デキストラン、カラゲナン、アルギン酸、澱粉、セルロース、又はこれらの誘導体、例えばカルボキシメチル誘導体、又は水膨潤性有機ポリマー、例えばポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール又はこれらの誘導体などを挙げることができる。
本発明で用いることができる親水性ポリマーとしては、ゼラチン、アガロース、キトサン、デキストラン、カラゲナン、アルギン酸、澱粉、セルロース、又はこれらの誘導体、例えばカルボキシメチル誘導体、又は水膨潤性有機ポリマー、例えばポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール又はこれらの誘導体などを挙げることができる。
本発明で用いる親水性ポリマーとしてはさらに、カルボキシル基含有合成ポリマーおよびカルボキシル基含有多糖類を用いることが可能である。カルボキシル基含有合成ポリマーとしては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、およびこれらの共重合体、例えば特開昭59-53836号明細書3頁20行〜6頁49行、特開昭59-71048号明細書3頁41行〜7ページ54行明細書に記載されているようなメタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合、水酸基を有するポリマーに酸無水物を付加させたものなどが挙げられる。カルボキシル基含有多糖類は、天然植物からの抽出物、微生物発酵の生産物、酵素による合成物、または化学合成物の何れであってもよく、具体的には、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、デルマタン酸硫酸、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、セロウロン酸、カルボキシメチルキチン、カルボキシメチルデキストラン、カルボキシメチルデンプン等が挙げられる。カルボキシル基含有多糖類は、市販の化合物を用いることが可能であり、具体的には、カルボキシメチルデキストランであるCMD、CMD-L、CMD-D40(名糖産業社製)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(和光純薬社製)、アルギン酸ナトリウム(和光純薬社製)、等を挙げることができる。
本発明で用いる親水性ポリマーの分子量は特に限定されないが、一般的には2×102以上5×106以下であることが好ましい。さらに好ましい親水性ポリマーの分子量は1×104以上2×106以下である。
上記したような親水性ポリマーは、本明細書中以下に説明するような自己組織化膜又は疎水性ポリマーを介して基板に結合させてもよいし、あるいはモノマーを含む溶液から直接基板上に形成させることもできる。さらに、上記した親水性ポリマーは架橋することもできる。親水性ポリマーの架橋は当業者に自明である。
センサー表面またはバイオリアクター表面に結合する親水性ポリマーは、水溶液中の膜厚が0.5nm以上0.5mm以下であることが好ましく、より好ましくは1nm以上1μm以下であることが望ましい。膜厚が薄いと生理活性物質固定量が減少し、被検体物質との相互作用が起こりにくくなる。一方、膜厚が厚いと被検体物質が膜内に拡散するため好ましくない。水溶液中の親水性ポリマー膜厚はAFM、エリプソメトリーなどで評価することができる。
(2−3)親水性ポリマーの活性化
親水性ポリマーとしてカルボキシル基を含有するポリマーを使用する場合、カルボキシル基を活性化することによって、自己組織化膜で被覆された基板に結合することができる。カルボキシル基を含有するポリマーを活性化する方法としては、公知の手法、例えば、水溶性カルボジイミドである1-(3-Dimethylaminopropyl)-3 ethylcarbodiimide(EDC)とN-Hydroxysuccinimide(NHS)により活性化する方法、又はEDC単独により活性化する方法を好ましく用いることができる。この手法で活性化されたカルボキシル基を含有するポリマーを、アミノ基を有する基板と反応させることで、基板上に親水性ポリマーを結合させることが可能となる。
親水性ポリマーとしてカルボキシル基を含有するポリマーを使用する場合、カルボキシル基を活性化することによって、自己組織化膜で被覆された基板に結合することができる。カルボキシル基を含有するポリマーを活性化する方法としては、公知の手法、例えば、水溶性カルボジイミドである1-(3-Dimethylaminopropyl)-3 ethylcarbodiimide(EDC)とN-Hydroxysuccinimide(NHS)により活性化する方法、又はEDC単独により活性化する方法を好ましく用いることができる。この手法で活性化されたカルボキシル基を含有するポリマーを、アミノ基を有する基板と反応させることで、基板上に親水性ポリマーを結合させることが可能となる。
また、カルボキシル基を含有するポリマーを活性化する方法として含窒素化合物を用いる方法があり、具体的には、下記一般式(Ia)又は(Ib)(式中、R1及びR2は、互いに独立して電子吸引性基(例えばカルボニル基、芳香環、窒素原子など)を表し、R1及びR2は結合により5〜6員環を形成しても良く、Aは置換基を有する炭素原子またはリン原子を表し、Mは(n-1)価の元素を表し、Xはハロゲン原子を表す)に示される含窒素化合物を用いることもできる。
ここで、R1及びR2は、互いに独立して置換基を有しても良いカルボニル基、炭素原子、窒素原子を表すが、好ましくはR1及びR2は結合により5〜6員環を形成する。特に好ましくは、ヒドロキシコハク酸、ヒドロキシフタル酸、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、3,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン、及びその誘導体が提供される。
また好ましくは、含窒素化合物としては、下記一般式(II)(式中、Aは置換基を有する炭素原子またはリン原子を表し、Y及びZは、互いに独立してCH、または窒素原子を表し、Mは(n-1)価の元素を表し、Xはハロゲン原子を表す)を用いることもできる。
ここで、Aで表される炭素原子またはリン原子の置換基としては、置換基を有するアミノ基が好ましく、ジメチルアミノ基やピロリジノ基の様なジアルキルアミノ基が好ましい。Mで表される(n-1)価の元素は、リン原子、ホウ素原子、ヒ素原子などが挙げられるが、好ましくはリン原子があげられる。Xで表されるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられるが、好ましくはフッ素原子が挙げられる。
また、カルボキシル基を含有するポリマーを活性化する方法として、電子吸引性基を有するフェノール誘導体を使用することも好ましく、更に電子吸引性基のσ値が0.3以上であることが好ましい。具体的には、下記化合物などを用いることができる。
更に、カルボキシル基を含有するポリマーを活性化する方法では、別にカルボジイミド誘導体物を併用することができ、好ましくは、水溶性カルボジイミド誘導体を併用することができ、更に好ましくは下記の化合物、(1-Ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide, hydrochloride)を併用することができる。
上記のカルボジイミド誘導体及び、含窒素化合物、またはフェノール誘導体は併用して使用するだけではなく、所望により、夫々、単独で用いることもできる。好ましくはカルボジイミド誘導体と含窒素化合物との併用である。
また、カルボキシル基を含有するポリマーを活性化する方法として、下記化合物を用いることもできる。該化合物は単独で用いることもできるが、カルボジイミド誘導体、含窒素化合物、フェノール誘導体と併用してもよい。
さらに、カルボキシル基を含有するポリマーにおけるカルボン酸を活性化する手法としては、特開2006-58071号公報「0011」〜「0022」に記載の方法(即ち、基板の表面に存在するカルボキシル基を特定の構造を有するウロニウム塩、ホスホニウム塩、又はトリアジン誘導体のいずれかの化合物を用いて活性化することによりカルボン酸アミド基を形成する方法)、並びに特開2006-90781号公報「0011」〜「0019」に記載の方法(即ち、基板の表面に存在するカルボキシル基を、カルボジイミド誘導体又はその塩で活性化し、水酸基を有する含窒素ヘテロ芳香族化合物、電子吸引性基を有するフェノール誘導体又はチオール基を有する芳香族化合物のいずれかの化合物でエステルとした後、アミンと反応させることによりカルボン酸アミド基を形成する方法)を好ましく用いることもできる。
なお、上記した特開2006-58071号公報における特定の構造を有するウロニウム塩、ホスホニウム塩、又はトリアジン誘導体とは、下記一般式1で表されるウロニウム塩、下記一般式2で表されるホスホニウム塩、又は下記一般式3で表されるトリアジン誘導体である。
(一般式1において、R1とR2はそれぞれ独立に炭素数1から6のアルキル基を示すか、又は互いに一緒になって炭素数2から6のアルキレン基を形成してN原子と共に環を形成し、R3は炭素数6から20の芳香環基又は少なくとも1以上のヘテロ原子を含むヘテロ環基を示し、X-はアニオンを示す。一般式2において、R4とR5はそれぞれ独立に炭素数1から6のアルキル基を示すか、又は互いに一緒になって炭素数2から6のアルキレン基を形成してN原子と共に環を形成し、R6は炭素数6から20の芳香環基又は少なくとも1以上のヘテロ原子を含むヘテロ環基を示し、X-はアニオンを示す。一般式3において、R7はオニウム基を示し、R8及びR9はそれぞれ独立に電子供与基を示す。)
(2−4)親水性ポリマーの基板への塗布
本発明において活性エステル化されたカルボキシル基を含有するポリマーは、溶液として基板と反応させてもよく、また、スピンコート等の手法を用いて基板上の薄膜を形成させた状態で反応させてもよい。好ましくは、薄膜を形成させた状態での反応である。
(2−4)親水性ポリマーの基板への塗布
本発明において活性エステル化されたカルボキシル基を含有するポリマーは、溶液として基板と反応させてもよく、また、スピンコート等の手法を用いて基板上の薄膜を形成させた状態で反応させてもよい。好ましくは、薄膜を形成させた状態での反応である。
上記の通り、本発明において活性エステル化されたカルボキシル基を含有するポリマーは、薄膜状態で基板と反応させることが好ましい。基板上に薄膜を形成させる方法は、公知の方法を用いることが可能であるが、具体的には、エクストルージョンコート法、カーテンコート法、キャスティング法、スクリーン印刷法、スピンコート法、スプレーコート法、スライドビードコート法、スリットアンドスピン方式、スリットコート方式、ダイコート法、ディップコート法、ナイフコート法、ブレードコート法、フローコート法、ロールコート法、ワイヤバーコート方式、転写印刷法、等を用いることが可能である。これらの薄膜形成法については、「コーティング技術の進歩」原崎勇次著、総合技術センター(1988)、「コーティング技術」技術情報協会(1999)、「水性コーティングの技術」シーエムシー(2001)、「進化する有機薄膜 成膜編」住べテクノリサーチ(2004)、「高分子表面加工学」岩森暁著、技報堂出版(2005)、等に説明されている。膜厚制御された塗布膜を簡便に作製可能であることから、本発明において基板上に薄膜を形成させる方法としては、スプレーコート法またはスピンコート法が好ましく、スピンコート法がさらに好ましい。
(3)リガンド
高分子膜にはリガンドが結合される。リガンドとなる化合物としては、各種キレート剤を用いることができ、ニトリロトリ酢酸(NTA)、イミノジ酢酸(IDA)、フェナンスロリン、テルピリジン、ビピリジン、トリエチレンテトラアミン、ジエチレントリアミン、トリス(カルボキシメチル)エチレンジアミン、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、ポリピラゾリルホウ酸、1,4,7−トリアゾシクロノナン、ジメチルグリオキシム、ジフェニルグリオキシム等の多座配位子およびその誘導体を好ましくあげることができる。この中でも、ニトリロトリ酢酸、イミノジ酢酸、又はそれらの誘導体であることがさらに好ましい。リガンドの結合は、例えば、高分子膜が、カルボキシル基を有する親水性ポリマーから構成されている場合には、このカルボキシル基を活性化した後に、リガンドとなる化合物を反応させることによって、リガンドを親水性ポリマーに結合することができる。
高分子膜にはリガンドが結合される。リガンドとなる化合物としては、各種キレート剤を用いることができ、ニトリロトリ酢酸(NTA)、イミノジ酢酸(IDA)、フェナンスロリン、テルピリジン、ビピリジン、トリエチレンテトラアミン、ジエチレントリアミン、トリス(カルボキシメチル)エチレンジアミン、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、ポリピラゾリルホウ酸、1,4,7−トリアゾシクロノナン、ジメチルグリオキシム、ジフェニルグリオキシム等の多座配位子およびその誘導体を好ましくあげることができる。この中でも、ニトリロトリ酢酸、イミノジ酢酸、又はそれらの誘導体であることがさらに好ましい。リガンドの結合は、例えば、高分子膜が、カルボキシル基を有する親水性ポリマーから構成されている場合には、このカルボキシル基を活性化した後に、リガンドとなる化合物を反応させることによって、リガンドを親水性ポリマーに結合することができる。
多点で生理活性物質を固定するためには、リガンドは高密度であることがより好ましく、1.0×1016個/mm3以上3.3×1018個/mm3以下、より好ましくは1.0×1016個/mm3以上1.8×1017個/mm3以下、さらは3.6×1016個/mm3以上1.8×1017個/mm3以下が好ましい。ただし、膜密度が高くなるほど、生理活性物質は膜内に進入しにくくなることがあるため、リガンドは多ければ多いほどよいというわけではない。リガンドの結合の際には有機溶剤を用いることが好ましい。有機溶剤を用いることによってリガンドを上記のような高密度で高分子膜に結合することができる。リガンド結合の際のリガンド溶液濃度は0.1mM以上1M以下であることが望ましく、より好ましくは1mM以上500mM以下、さらには10mM以上300mM以下であることが好ましい。
有機溶剤としては、ジメチルスルホキサイド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、ブチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、ジグライム等を好ましくあげることができ、リガンドの溶解性および副反応の抑制の観点からはジメチルスルホキサイドあるいはN、N−ジメチルホルムアミドを用いることがより好ましい。
このリガンドの結合の際には添加剤として塩基を用いることが好ましい。塩基を用いることにより、リガンドの結合率をより高めることができる。この塩基の例としては、DBU(1,8-diazabicyclo[5,4,0]undec-7-ene)、DBN(1,5-diazabicyclo[4,3,0]non-5-ene)、イミダゾール、メチルイミダゾール、ピリミジン、ピリジン、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン、ピコリン、2,6-ルチジンキノリン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジメチルフェニルアミン、DABCO(1,4-diazabicyclo[2.2.2]octane)、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等が好ましく挙げられ、用いる有機溶媒によって適宜選択することができる。
用いる塩基の量としては結合リガンド量に対して0.1モル%以上10000モル%以下が好ましく、より好ましくは100モル%以上1000モル%以下、さらには300モル%以上500モル%以下であることが好ましい。
なお、上記リガンド密度は以下のようにして求めることができる。実際に測定を行って求める場合は、支持体上にリガンドを結合した後、金属イオンを付与し、支持体上に固定された金属イオンの数をICP分析装置などで求め、この金属イオンの数とリガンドが結合している部分の支持体の面積から、単位面積あたりのリガンドの数を求めることができる。計算によって求める場合は、リガンドの体積をCHEM3D(CambridgeSoft社製)などの計算ソフトを使用して求めることで、単位面積あたりのリガンドの数を求めることができる。リガンドの体積を計算ソフトで求めた場合、例えばNTAであれば0.3nm3程度と見積もられるので3.3×1018個/mm3よりも高い密度では理論上リガンドを結合することは困難である。なお、リガンド密度は固定化した生理活性物質を除去後、金属イオンの数を測定することによって求めることもできる。
(4)金属イオン
金属イオンは、不飽和金属錯体を形成する金属イオンであればよく、得られる金属錯体の安定性の観点からは遷移金属イオンが好ましく、具体的には、Ni(II)、Cu(I)、Cu(II)、Co(II)、Co(III)、Fe(II)、Fe(III)、Ga(III)のいずれかのイオンであり、リガンドの種類に応じて適宜選択することができる。中でも好ましくは、Ni(II)、Cu(II)、Co(III)、Fe(III)であり、さらに好ましくは、Cu(II)である。金属イオンは、価数によって結合力が異なるが、Co(II)、Fe(II)の場合は、特開平6-157600 号の[0037]、[0038]に記載されている酸化還元方法で、金属イオンの酸化数を変化させ、結合力を変えることが可能である。
金属イオンとリガンド密度の組み合わせとしては、金属イオンがCu(II)の場合、リガンド密度は1.7×1016以上であることが好ましい。
金属イオンは、不飽和金属錯体を形成する金属イオンであればよく、得られる金属錯体の安定性の観点からは遷移金属イオンが好ましく、具体的には、Ni(II)、Cu(I)、Cu(II)、Co(II)、Co(III)、Fe(II)、Fe(III)、Ga(III)のいずれかのイオンであり、リガンドの種類に応じて適宜選択することができる。中でも好ましくは、Ni(II)、Cu(II)、Co(III)、Fe(III)であり、さらに好ましくは、Cu(II)である。金属イオンは、価数によって結合力が異なるが、Co(II)、Fe(II)の場合は、特開平6-157600 号の[0037]、[0038]に記載されている酸化還元方法で、金属イオンの酸化数を変化させ、結合力を変えることが可能である。
金属イオンとリガンド密度の組み合わせとしては、金属イオンがCu(II)の場合、リガンド密度は1.7×1016以上であることが好ましい。
金属イオンはリガンドの密度に合わせて適宜添加することができるが、多量に添加しても差し支えない。添加後に余分な金属イオンは洗浄することが望ましい。金属イオンの溶媒は水や各種バッファーを用いることができ、洗浄も水や各種バッファーで行うことができる。
(5)生理活性物質
生理活性物質はタグを有し、このタグが2以上のシステインを含むシステインユニットである。生理活性物質は、例えば免疫蛋白質、酵素、微生物、核酸、低分子有機化合物、非免疫蛋白質、免疫グロブリン結合性蛋白質、糖結合性蛋白質、糖を認識する糖鎖、脂肪酸もしくは脂肪酸エステル、あるいは配位子結合能を有するポリペプチドもしくはオリゴペプチドなどが挙げられる。これらの生理活性物質は、金属イオンへの配位結合により基板上に固定されるものであり、金属イオンに対して配位可能な官能基を有する、即ち、金属配位能を有するものであればよい。このような金属配位能は、強い配位力を持つ配位子を共有結合することによって容易に付与することができる。
生理活性物質はタグを有し、このタグが2以上のシステインを含むシステインユニットである。生理活性物質は、例えば免疫蛋白質、酵素、微生物、核酸、低分子有機化合物、非免疫蛋白質、免疫グロブリン結合性蛋白質、糖結合性蛋白質、糖を認識する糖鎖、脂肪酸もしくは脂肪酸エステル、あるいは配位子結合能を有するポリペプチドもしくはオリゴペプチドなどが挙げられる。これらの生理活性物質は、金属イオンへの配位結合により基板上に固定されるものであり、金属イオンに対して配位可能な官能基を有する、即ち、金属配位能を有するものであればよい。このような金属配位能は、強い配位力を持つ配位子を共有結合することによって容易に付与することができる。
官能基としては、含窒素複素環を有し、金属イオンと共に金属錯体を形成可能なものであればよい。含窒素複素環としては、窒素原子を含む3員環から7員環の単環及び縮合環構造のいずれであってもよく、環中の窒素原子は単数でも複数であってもよい。好ましくは、5員環から6員環のものを挙げることができる。このような含窒素複素環を有する配位子として具体的には、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、1,3,4−チアジアゾ−ル、テトラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4,5−テトラジン、アゼピン、アゾニン、キノリン、アクリジン、フェナンスリジン、インドール、イソインドール、カルバゾール、ベンズイミダゾール、1,8−ナフチリジン、プリン、プテリジン、ベンゾトリアゾール、キノキサリン、キナゾリン、ペリミジン、シンノリン、フタラジン、1,10−フェナンスロリン、フェノキサジン、フェノチアジン、フェナジン、8−ヒドロキシキノリン、8−メルカプトキノリン、2,2’−ビピリジン、2,2’−ジピリジルアミン、ジ(2−ピコリルアミン)、2,2’,2”−ターピリジン、ポルフィリン、フタロシアニン、およびそれらの誘導体が挙げられる。得られる金属錯体の安定性の観点から好ましくはピロール、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、ピリジン、およびそれらの誘導体が好ましい。
官能基としてはシステイン残基(SH基)を含み、さらに、アミノ酸自動合成装置を用いた導入、あるいは遺伝子操作による導入が容易であることからイミダゾール基を有する官能基が好ましい。システイン残基を含むシステイン(Cys=C)を機能性部位として導入したいわゆるシステインユニットは長い方が好ましく、ユニット全体の長さとしては、6〜120個が好ましく、より好ましくは6〜40個、さらには6〜20個が好ましく、システインユニット中のシステインは2以上、好ましくは2〜100個、より好ましくは2〜20個、さらには4〜10個であることが望ましい。タグは、Cys-Cys-Cys-Cysのようにシステインが連続していてもよいし、例えば、Cys-Cys-○−Cys-Cys、Cys-○−Cys-○-Cys-○のように間に別な構造を有していてもよい。○は水溶性の観点からイミダゾール基を含むヒスチジン(His)であることが好ましい。また、タグの荷電の偏りを抑制するという観点からは、Cys-○−Cys-○-Cys-○のように交互であることがより好ましい。
本明細書において「多点で生理活性物質を固定する」とは、リガンドとシステインユニット中のシステイン残基、含窒素基や含窒素複素環基(以下、含窒素基や含窒素複素環基をまとめて含窒素基と称す)が複数の金属イオンと結合していることを指し、単位面積あたりのリガンドの密度を高くすること、及び/又は、リシンユニットを長くすることによって複数の金属イオンと結合させることができる。
タグの導入は、一般的な遺伝子操作によるもの、あるいは酵素等を用いて生理活性物質に導入する方法等があるが、生理活性物質の失活を抑制する等の観点からは遺伝子操作によることが好ましい。
タグの導入は、一般的な遺伝子操作によるもの、あるいは酵素等を用いて生理活性物質に導入する方法等があるが、生理活性物質の失活を抑制する等の観点からは遺伝子操作によることが好ましい。
(6)生理活性物質の固定化
生理活性物質の固定化は、生理活性物質を含む溶液を塗布することによって行う。本発明において、「塗布」とは、浸漬する方法も含む。生理活性物質のタグがシステイン残基、含窒素基を有する場合、生理活性物質のタグのシステイン残基、含窒素基が金属イオンに配位結合し、錯体を形成することによって固定化される。
生理活性物質の固定化は、生理活性物質を含む溶液を塗布することによって行う。本発明において、「塗布」とは、浸漬する方法も含む。生理活性物質のタグがシステイン残基、含窒素基を有する場合、生理活性物質のタグのシステイン残基、含窒素基が金属イオンに配位結合し、錯体を形成することによって固定化される。
支持体に結合したリガンドに対して、金属イオンと、2以上のシステインを含むシステインユニットを有する生理活性物質と、を付与すると、金属イオンに、(1)リガンドと、(2)生理活性物質のタグのシステイン残基、含窒素基と、(3)水分子または水酸化イオンと、が配位し、錯体を形成する。
例えば、リガンドとしてNTAを使用し、6配位可能な金属イオンを付与した場合、6配位部位中4つの配位部位を、(1)NTAが保有する3つのカルボキシル基と1つの窒素原子が占有し、残りの2つの配位部位は、(2)生理活性物質のタグのシステイン残基、含窒素基と、(3)水分子または水酸化イオンなどと、が占有することにより、6配位の錯体を形成する。
リガンドとして、イミノジ酢酸を使用し、6配位可能な金属イオンを付与した場合は、6配位部位中3つの配位部位を、(1)イミノジ酢酸が保有する2つのカルボキシル基と1つの窒素原子が占有し、残りの3つの配位部位は、(2)生理活性物質のタグのシステイン残基、含窒素基と、(3)水分子または水酸化イオンなどと、が占有することにより、6配位の錯体を形成する。
ここでは、金属イオンは、6配位可能な金属イオンを例に挙げて説明したが、配位数については7配位以上でもよく、5配位以下でもよい。また、錯体を形成するカルボキシル基は、1つのリガンドから供給されずともよく、複数のリガンドから供給され、錯体を形成してもよい。
(7)担体の製造
以下、本発明の一実施の形態を示す担体を製造する工程を説明する。
まず基板上に金属膜を形成する。金属膜の形成は常法によって行えばよく、例えば、スパッタ法、蒸着法、イオンプレーティング法、電気めっき法、無電解めっき法等によって行うことができる。なお、上記で説明したように、基板と金属膜との間にクロム等からなる介在層を設けてもよい。次ぎに金属膜上にSAMを形成する。SAMの形成は、上述したようにアルカンチオール誘導体等の溶液中に金属膜が形成された基板を浸漬することにより行うことができる。
以下、本発明の一実施の形態を示す担体を製造する工程を説明する。
まず基板上に金属膜を形成する。金属膜の形成は常法によって行えばよく、例えば、スパッタ法、蒸着法、イオンプレーティング法、電気めっき法、無電解めっき法等によって行うことができる。なお、上記で説明したように、基板と金属膜との間にクロム等からなる介在層を設けてもよい。次ぎに金属膜上にSAMを形成する。SAMの形成は、上述したようにアルカンチオール誘導体等の溶液中に金属膜が形成された基板を浸漬することにより行うことができる。
続いて、SAM上に高分子膜を形成する。基板表面はSAMのアミノ基により被覆されているので、高分子膜としてカルボキシル基を含有する親水性ポリマーを使用する場合には、このカルボキシル基を活性化することによって、SAMで被覆された基板に高分子膜を固定化することができる。なお高分子膜を介さずに、SAM上にリガンドを結合させる場合には、例えば、SAMの末端の官能基を介して、アミノ基を持ったリガンド誘導体をアミンカップリング反応等により導入することによりSAMに固定化することができる。
次ぎに、高分子膜にリガンドを結合させる。リガンドの結合は、例えば、高分子膜が、カルボキシル基を有する親水性ポリマーから構成されている場合には、このカルボキシル基を活性化した後に、リガンドとなる化合物を水溶液中もしくは有機溶媒中で反応させることによって、リガンドを親水性ポリマーに固定化することができる。
リガンドとしてNTAを例にとると、高分子膜のカルボキシル基1つは3つのカルボキシル基へと置換されることになる。ここにCu(II)を加えてNTAのカルボキシル基と錯形成させる。ここでCu (II)の配位座はNTAによっては完全には満たされない状態である。このNTA−Cu (II)にシステインユニットを有する生理活性物質を加えると、システインユニットのシステイン残基(SH基)がCu (II)に配位する。Cu(II)にタンパクを固定後、バッファやイミダゾール溶液等で洗浄することが好ましい。
(8)本発明の担体の適用
本発明の担体は、バイオセンサーやバイオリアクター(例えばバイオリアクター技術、1988年、(株)シーエムシー、バイオチップとバイオセンサー、2006年、共立出版(株))に適用することができる。バイオリアクターとは、酵素、菌体、細胞、オルガネラなどの生体触媒による生化学的反応を利用して、有用物質の生産、エネルギーの発生、環境汚染物質の分解などに応用する反応器であり、バイオセンサーとは最も広義に解釈され、生体分子間の相互作用を電気的信号等の信号に変換して、対象となる物質を測定・検出するセンサーを意味する。以下、それぞれについての適用について説明する。
本発明の担体は、バイオセンサーやバイオリアクター(例えばバイオリアクター技術、1988年、(株)シーエムシー、バイオチップとバイオセンサー、2006年、共立出版(株))に適用することができる。バイオリアクターとは、酵素、菌体、細胞、オルガネラなどの生体触媒による生化学的反応を利用して、有用物質の生産、エネルギーの発生、環境汚染物質の分解などに応用する反応器であり、バイオセンサーとは最も広義に解釈され、生体分子間の相互作用を電気的信号等の信号に変換して、対象となる物質を測定・検出するセンサーを意味する。以下、それぞれについての適用について説明する。
(8−1)バイオリアクターへの適用
酵素を固定化した不溶性担体を用いて有用物質の生成、反応等を行うことが可能なバイオリアクター(例えば実公平4-18398号、実公平4-18399号等)においては、上記不溶性担体として、本発明の担体、例えば基板(例えばセラミックやポリスルホン等の多孔質体)と、この基板表面上に結合された高分子膜と、この高分子膜に結合されたリガンドと、このリガンドに固定した金属イオンと、この金属イオンに固定した酵素とを備えた担体を適用することができる。
酵素を固定化した不溶性担体を用いて有用物質の生成、反応等を行うことが可能なバイオリアクター(例えば実公平4-18398号、実公平4-18399号等)においては、上記不溶性担体として、本発明の担体、例えば基板(例えばセラミックやポリスルホン等の多孔質体)と、この基板表面上に結合された高分子膜と、この高分子膜に結合されたリガンドと、このリガンドに固定した金属イオンと、この金属イオンに固定した酵素とを備えた担体を適用することができる。
(8−2)バイオセンサーへの適用
通常のバイオセンサーは、検出対象とする化学物質を認識するレセプター部位と、そこに発生する物理的変化又は化学的変化を電気信号に変換するトランスデューサー部位とから構成される。生体内には、互いに親和性のある物質として、酵素/基質、酵素/補酵素、抗原/抗体、ホルモン/レセプターなどがある。バイオセンサーでは、これら互いに親和性のある物質の一方を基板に固定化して分子認識物質として用いることによって、対応させるもう一方の物質を選択的に計測するという原理を利用している。
通常のバイオセンサーは、検出対象とする化学物質を認識するレセプター部位と、そこに発生する物理的変化又は化学的変化を電気信号に変換するトランスデューサー部位とから構成される。生体内には、互いに親和性のある物質として、酵素/基質、酵素/補酵素、抗原/抗体、ホルモン/レセプターなどがある。バイオセンサーでは、これら互いに親和性のある物質の一方を基板に固定化して分子認識物質として用いることによって、対応させるもう一方の物質を選択的に計測するという原理を利用している。
例えば、表面プラズモン共鳴バイオセンサーは、センサーより照射された光を透過及び反射する部分、並びに生理活性物質を固定する部分とを含む部材からなるが、本発明の担体は生理活性物質を固定する部分を含む部材として用いることができる。
表面プラズモン共鳴の現象は、ガラス等の光学的に透明な物質と金属薄膜層との境界から反射された単色光の強度が、金属の出射側にある試料の屈折率に依存することによるものであり、従って、反射された単色光の強度を測定することにより、試料を分析することができる。
表面プラズモンが光波によって励起される現象を利用して、被測定物質の特性を分析する表面プラズモン測定装置としては、Kretschmann配置と称される系を用いるものが挙げられる(例えば特開平6-167443号公報参照)。上記の系を用いる表面プラズモン測定装置は基本的に、例えばプリズム状に形成された誘電体ブロックと、この誘電体ブロックの一面に形成されて試料液などの被測定物質に接触させられる金属膜と、光ビームを発生させる光源と、上記光ビームを誘電体ブロックに対して、該誘電体ブロックと金属膜との界面で全反射条件が得られるように種々の角度で入射させる光学系と、上記界面で全反射した光ビームの強度を測定して表面プラズモン共鳴の状態、つまり全反射減衰の状態を検出する光検出手段とを備えてなるものである。
なお上述のように種々の入射角を得るためには、比較的細い光ビームを入射角を変化させて上記界面に入射させてもよいし、あるいは光ビームに種々の角度で入射する成分が含まれるように、比較的太い光ビームを上記界面に収束光状態であるいは発散光状態で入射させてもよい。前者の場合は、入射した光ビームの入射角の変化に従って、反射角が変化する光ビームを、上記反射角の変化に同期して移動する小さな光検出器によって検出したり、反射角の変化方向に沿って延びるエリアセンサによって検出することができる。一方後者の場合は、種々の反射角で反射した各光ビームを全て受光できる方向に延びるエリアセンサによって検出することができる。
上記構成の表面プラズモン測定装置において、光ビームを金属膜に対して全反射角以上の特定入射角で入射させると、該金属膜に接している被測定物質中に電界分布をもつエバネッセント波が生じ、このエバネッセント波によって金属膜と被測定物質との界面に表面プラズモンが励起される。エバネッセント光の波数ベクトルが表面プラズモンの波数と等しくて波数整合が成立しているとき、両者は共鳴状態となり、光のエネルギーが表面プラズモンに移行するので、誘電体ブロックと金属膜との界面で全反射した光の強度が鋭く低下する。この光強度の低下は、一般に上記光検出手段により暗線として検出される。なお上記の共鳴は、入射ビームがp偏光のときにだけ生じる。したがって、光ビームがp偏光で入射するように予め設定しておく必要がある。
この全反射減衰(ATR)が生じる入射角、すなわち全反射減衰角(θSP)より表面プラズモンの波数が分かると、被測定物質の誘電率が求められる。この種の表面プラズモン測定装置においては、全反射減衰角(θSP)を精度良く、しかも大きなダイナミックレンジで測定することを目的として、特開平11-326194号公報に示されるように、アレイ状の光検出手段を用いることが考えられている。この光検出手段は、複数の受光素子が所定方向に配設されてなり、前記界面において種々の反射角で全反射した光ビームの成分をそれぞれ異なる受光素子が受光する向きにして配設されたものである。
そしてその場合は、上記アレイ状の光検出手段の各受光素子が出力する光検出信号を、該受光素子の配設方向に関して微分する微分手段が設けられ、この微分手段が出力する微分値に基づいて全反射減衰角(θSP)を特定し、被測定物質の屈折率に関連する特性を求めることが多い。
また、全反射減衰(ATR)を利用する類似の測定装置として、例えば「分光研究」第47巻 第1号(1998)の第21〜23頁および第26〜27頁に記載がある漏洩モード測定装置も知られている。この漏洩モード測定装置は基本的に、例えばプリズム状に形成された誘電体ブロックと、この誘電体ブロックの一面に形成されたクラッド層と、このクラッド層の上に形成されて、試料液に接触させられる光導波層と、光ビームを発生させる光源と、上記光ビームを上記誘電体ブロックに対して、該誘電体ブロックとクラッド層との界面で全反射条件が得られるように種々の角度で入射させる光学系と、上記界面で全反射した光ビームの強度を測定して導波モードの励起状態、つまり全反射減衰状態を検出する光検出手段とを備えてなるものである。
上記構成の漏洩モード測定装置において、光ビームを誘電体ブロックを通してクラッド層に対して全反射角以上の入射角で入射させると、このクラッド層を透過した後に光導波層においては、ある特定の波数を有する特定入射角の光のみが導波モードで伝搬するようになる。こうして導波モードが励起されると、入射光のほとんどが光導波層に取り込まれるので、上記界面で全反射する光の強度が鋭く低下する全反射減衰が生じる。そして導波光の波数は光導波層の上の被測定物質の屈折率に依存するので、全反射減衰が生じる上記特定入射角を知ることによって、被測定物質の屈折率や、それに関連する被測定物質の特性を分析することができる。
なおこの漏洩モード測定装置においても、全反射減衰によって反射光に生じる暗線の位置を検出するために、前述したアレイ状の光検出手段を用いることができ、またそれと併せて前述の微分手段が適用されることも多い。
また、上述した表面プラズモン測定装置や漏洩モード測定装置は、創薬研究分野等において、所望のセンシング物質に結合する特定物質を見いだすランダムスクリーニングへ使用されることがあり、この場合には前記薄膜層(表面プラズモン測定装置の場合は金属膜であり、漏洩モード測定装置の場合はクラッド層および光導波層)上に上記被測定物質としてセンシング物質を固定し、該センシング物質上に種々の被検体が溶媒に溶かされた試料液を添加し、所定時間が経過する毎に前述の全反射減衰角(θSP)の角度を測定している。
試料液中の被検体が、センシング物質と結合するものであれば、この結合によりセンシング物質の屈折率が時間経過に伴って変化する。したがって、所定時間経過毎に上記全反射減衰角(θSP)を測定し、該全反射減衰角(θSP)の角度に変化が生じているか否か測定することにより、被検体とセンシング物質の結合状態を測定し、その結果に基づいて被検体がセンシング物質と結合する特定物質であるか否かを判定することができる。このような特定物質とセンシング物質との組み合わせとしては、例えば抗原と抗体、あるいは抗体と抗体が挙げられる。具体的には、ウサギ抗ヒトIgG抗体をセンシング物質として薄膜層の表面に固定し、ヒトIgG抗体を特定物質として用いることができる。
なお、被検体とセンシング物質の結合状態を測定するためには、全反射減衰(θSP)の角度そのものを必ずしも検出する必要はない。例えばセンシング物質に試料液を添加し、その後の全反射減衰角(θSP)の角度変化量を測定して、その角度変化量の大小に基づいて結合状態を測定することもできる。前述したアレイ状の光検出手段と微分手段を全反射減衰を利用した測定装置に適用する場合であれば、微分値の変化量は、全反射減衰角(θSP)の角度変化量を反映しているため、微分値の変化量に基づいて、センシング物質と被検体との結合状態を測定することができる(本出願人による特開2003-172694号参照)。このような全反射減衰を利用した測定方法および装置においては、底面に予め成された薄膜層上にセンシング物質が固定されたカップ状あるいはシャーレ状の測定チップに、溶媒と被検体からなる試料液を滴下供給して、上述した全反射減衰角(θSP)の角度変化量の測定を行っている。
さらに、ターンテーブル等に搭載された複数個の測定チップの測定を順次行うことにより、多数の試料についての測定を短時間で行うことができる全反射減衰を利用した測定装置が、特開2001-330560号公報に記載されている。
本発明の担体を表面プラズモン共鳴分析に使用する場合、上記したような各種の表面プラズモン測定装置の一部として適用することができる。
本発明の担体を表面プラズモン共鳴分析に使用する場合、上記したような各種の表面プラズモン測定装置の一部として適用することができる。
また、本発明の担体は、例えば基板表面に導波路構造を保持した、屈折率変化を導波路を用いて検出するバイオセンサーのチップとして用いることができる。この場合、基板表面の導波構造物は、回折格子と場合によっては付加層とを有している、この導波構造物は、薄い誘電層からなる平面的な導波体から成る。導波体に集光された光線は全反射によりこの薄い層内に導かれる。この導かれる光波(以降モードと呼ぶ)の伝播速度は、C/Nの値をとる。ここでCは、真空中での光速であり、Nは導波体内を導かれるモードの有効屈折率である。有効屈折率Nは、一面では導波体の構成により、他面では薄い導波層に隣接する媒体の屈折率により決まる。光波の伝導は、薄い平面層内のみでなく、別の導波構造物、特にストリップ状の導波体によっても行われる。その場合は、導波構造物はストリップ状のフィルムの形状にされる。有効屈折率Nの変化は、導波層に隣接する媒体の変化と導波層自身もしくは導波層に隣接する付加層の屈折率および厚さの変化とにより生じることがバイオセンサーにとって重要な要素である。
この方式のバイオセンサーの構成については、例えば特公平6-27703号公報4ページ48行目から14ページ15行目および第1図から第8図、米国特許第 6,829,073号のcolumn6の31行目からcolumn7の47行目および第9図A,Bに記載されている。
例えば、一つの実施形態として、薄層が平面状の導波路層が基材(たとえばパイレックス(登録商標)ガラス)上に設けられている構造がある。導波路層と基材とは、一緒にいわゆる導波体を形成する。導波路層は、たとえば酸化物層(SiO2,SnO2、Ta2O5,TiO2,TiO2-SiO2,HfO2,ZrO2,Al2O3,Si3N4,HfON,SiON,酸化スカンジウムまたはこれらの混合物)、プラスチック層(例えばポリスチレン、ポリエチレン、ポリカーボネートなど)、など多層の積層体が可能である。光線が全反射により導波路層内を伝播するには、導波路層の屈折率が隣接媒体(たとえば基材や後述の付加層)の屈折率より大でなければならない。基材もしくは測定物質に向いた導波路層表面もしくは導波路層体積内には、回折格子が配置されている。回折格子は、型押し、ホログラフィまたはその他の方法によって基板内に形成することができる。次いでより高い屈折率を有する薄い導波路膜を回折格子の上表面に被覆する。回折格子は導波路層への入射光線を集束したり、既に導波路層内を導かれているモードを放出したり、そのモードの一部を進行方向へ透過させ、一部を反射させたりする機能を持つ。導波路層は、格子域を付加層でカバーしておく。付加層は必要に応じて多層膜とすることができる。この付加層は、測定物質に含まれている物質の選択的検知を可能にする機能を持たせることができる。好ましい態様として付加層の最表面に、検知機能を持つ層を設けることができる。このような検知機能を持つ層として、生理活性物質を固定化し得る層を用いることができる。
別の実施形態として、回折格子導波路のアレイがマイクロプレートのウェル内に組み込まれる形態も可能である(特表2007-501432号)。すなわち回折格子導波路がマイクロプレートのウェル底面にアレイ状に配列されていれば、スループットの高い薬物または化学物質のスクリーニングを可能にすることができる。
回折格子導波路は、回折格子導波路の上層(検知領域)上の生理活性物質検出を可能にするために、入射光線、および反射光を検出して屈折特性の変化を検出する。この目的のため、1つまたはそれより多くの光源(例えば、レーザ、ダイオード)及び1つまたはそれより多くの検出器(例えば、分光計、CCDカメラまたはその他の光検出器)を用いることができる。屈折率変化を測定するための方法として、2つの異なる動作モード−分光法、及び角度法がある。分光法においては、入射光として広帯域ビームが回折格子導波路に送られ、反射光が集められて、例えば分光計で測定される。共鳴波長(ピーク)のスペクトル位置を観測することにより、回折格子導波路の表面またはその近傍での屈折率変化すなわち結合を測定することができる。また、角度法においては、公称上単一波長の光がある範囲の照射角を生じるように集束されて、回折格子導波路内に向けられる。反射光がCCDカメラまたはその他の光検出器によって測定される。回折格子導波路によって反射された共鳴角の位置を測定することにより、回折格子導波路の表面またはその近傍での屈折率変化すなわち結合を測定することができる。
以下に本発明の担体についての実施例を示す。
以下に本発明の担体についての実施例を示す。
(実施例1)
(システイン残基の固定)
市販のNTAchip(Biacore社製)をBiacore社製の表面プラズモン共鳴装置であるBiacore3000にセットし、SPR用HEPES緩衝液(20mM HEPES-HCl, 150mM NaCl, pH7.4)を10μl/minの流速で安定させ1mMのCuCl2水溶液を10μl添加した後に、HBS-Nバッファで10分間洗浄し、さらに50μM CCCCCCペプチド(Cはシステインを表し、システインが6個繋がったもの:オペロン社製)を5分間添加し、共鳴プラズモン測定を行った。
(実施例2)
CCCCCCペプチドの代わりにCCHHHHペプチド(Cはシステインを表し、Hはヒスチジンを表す。:オペロン社製)を用いた以外は実施例1と同様にして共鳴プラズモン測定を行った。
(システイン残基の固定)
市販のNTAchip(Biacore社製)をBiacore社製の表面プラズモン共鳴装置であるBiacore3000にセットし、SPR用HEPES緩衝液(20mM HEPES-HCl, 150mM NaCl, pH7.4)を10μl/minの流速で安定させ1mMのCuCl2水溶液を10μl添加した後に、HBS-Nバッファで10分間洗浄し、さらに50μM CCCCCCペプチド(Cはシステインを表し、システインが6個繋がったもの:オペロン社製)を5分間添加し、共鳴プラズモン測定を行った。
(実施例2)
CCCCCCペプチドの代わりにCCHHHHペプチド(Cはシステインを表し、Hはヒスチジンを表す。:オペロン社製)を用いた以外は実施例1と同様にして共鳴プラズモン測定を行った。
(実施例3)
CCCCCCペプチドの代わりにCCSSSSペプチド(Cはシステインを表し、Sはセリンを表す。:オペロン社製)を用いた以外は実施例1と同様にして共鳴プラズモン測定を行った。
CCCCCCペプチドの代わりにCCSSSSペプチド(Cはシステインを表し、Sはセリンを表す。:オペロン社製)を用いた以外は実施例1と同様にして共鳴プラズモン測定を行った。
(実施例4)
CCCCCCペプチドの代わりにCHCHCHCHCHCHペプチド(Cはシステインを表し、Hはヒスチジンを表す。CHCHCHCHCHCH はシステインとヒスチジンが結合したCHが6個繋がったもの:オペロン社製)を用いた以外は実施例1と同様にして共鳴プラズモン測定を行った。
CCCCCCペプチドの代わりにCHCHCHCHCHCHペプチド(Cはシステインを表し、Hはヒスチジンを表す。CHCHCHCHCHCH はシステインとヒスチジンが結合したCHが6個繋がったもの:オペロン社製)を用いた以外は実施例1と同様にして共鳴プラズモン測定を行った。
(実施例5)
CCCCCCペプチドの代わりにCHCHCHCHCHCHペプチド(Cはシステインを表し、Hはヒスチジンを表す。CHCHCHCHCHCH はシステインとヒスチジンが結合したCHが6個繋がったもの:オペロン社製)を用い、固定化膜としてNTAchipの代わりに下記の手順により作製したNTA修飾膜を用いた以外は実施例1と同様にして共鳴プラズモン測定を行った。
NTA膜作製方法を以下に示す。なお、以下の手順により作製したNTA修飾膜のNTA密度は2.7×1016個/mm3であった。
CCCCCCペプチドの代わりにCHCHCHCHCHCHペプチド(Cはシステインを表し、Hはヒスチジンを表す。CHCHCHCHCHCH はシステインとヒスチジンが結合したCHが6個繋がったもの:オペロン社製)を用い、固定化膜としてNTAchipの代わりに下記の手順により作製したNTA修飾膜を用いた以外は実施例1と同様にして共鳴プラズモン測定を行った。
NTA膜作製方法を以下に示す。なお、以下の手順により作製したNTA修飾膜のNTA密度は2.7×1016個/mm3であった。
(アミノ基を有する自己組織化膜修飾基板の作製)
センサーチップ上に金膜のみが形成されているBiacore社センサーチップAuを12分間、UVオゾン処理を行った後、10mlの超純水に10μmol の6-aminohexanethiol(Aldrich製)を溶解させた溶液と金膜を40℃で20時間反応させて、金膜上にアミノ基を形成し、超純水で数回洗浄した。
センサーチップ上に金膜のみが形成されているBiacore社センサーチップAuを12分間、UVオゾン処理を行った後、10mlの超純水に10μmol の6-aminohexanethiol(Aldrich製)を溶解させた溶液と金膜を40℃で20時間反応させて、金膜上にアミノ基を形成し、超純水で数回洗浄した。
(CMDの活性エステル化)
超純水に0.5重量%となるようにCMD(名糖産業製:分子量100万)を溶解した後、全量反応した場合にカルボキシル基の2%が活性化される計算量の0.4MのEDC(1-(3-Dimethylaminopropyl)-3-ethylcarbodiimide)および0.1MのNHS(N-Hydroxysuccinimide)混合溶液を加え、室温で5分間攪拌した。
超純水に0.5重量%となるようにCMD(名糖産業製:分子量100万)を溶解した後、全量反応した場合にカルボキシル基の2%が活性化される計算量の0.4MのEDC(1-(3-Dimethylaminopropyl)-3-ethylcarbodiimide)および0.1MのNHS(N-Hydroxysuccinimide)混合溶液を加え、室温で5分間攪拌した。
(CMD膜の作製)
上記アミノ基を形成した金膜上に、活性エステル化したCMD溶液を滴下し30秒後に除去することで、アミノ基を有する基板上に活性エステル化されたカルボキシメチルデキストラン薄膜を形成させた。室温で1 時間反応させた後、0.1N NaOHで1回、超純水で1回洗浄した。
上記アミノ基を形成した金膜上に、活性エステル化したCMD溶液を滴下し30秒後に除去することで、アミノ基を有する基板上に活性エステル化されたカルボキシメチルデキストラン薄膜を形成させた。室温で1 時間反応させた後、0.1N NaOHで1回、超純水で1回洗浄した。
(AB-NTA膜の作製)
上記CMD膜に1mmolのEDCと0.2mmolのNHSをDMSO1mlに添加した溶液を50μl加え、30分間室温で反応させた。溶液を除去、DMSOで1回洗浄し、0.05mmolのAB-NTA(同仁化学製)をDBU(ジアザビシクロウンデセン、東京化成社製) 60μlと DMSO 0.94mlに溶解した液で2時間反応させた。溶液を除去、超純水で数回洗浄した。
上記CMD膜に1mmolのEDCと0.2mmolのNHSをDMSO1mlに添加した溶液を50μl加え、30分間室温で反応させた。溶液を除去、DMSOで1回洗浄し、0.05mmolのAB-NTA(同仁化学製)をDBU(ジアザビシクロウンデセン、東京化成社製) 60μlと DMSO 0.94mlに溶解した液で2時間反応させた。溶液を除去、超純水で数回洗浄した。
(比較例1)
CCCCCCペプチドの代わりにHHHHHHペプチド(Hはヒスチジンを表す。HHHHHHはヒスチジンが6個繋がったもの:オペロン社製)を用いた以外は実施例1と同様にして共鳴プラズモン測定を行った。
CCCCCCペプチドの代わりにHHHHHHペプチド(Hはヒスチジンを表す。HHHHHHはヒスチジンが6個繋がったもの:オペロン社製)を用いた以外は実施例1と同様にして共鳴プラズモン測定を行った。
(比較例2)
CCCCCCペプチドの代わりにL-システイン(和光純薬社製)を用いた以外は実施例1と同様にして共鳴プラズモン測定を行った。
CCCCCCペプチドの代わりにL-システイン(和光純薬社製)を用いた以外は実施例1と同様にして共鳴プラズモン測定を行った。
(比較例3)
固定化膜としてNTAchipの代わりに下記の手順により作製したマレイミド修飾膜を用いた以外は実施例1と同様にして共鳴プラズモン測定を行った。
マレイミド膜の作製方法は以下の通りである。
固定化膜としてNTAchipの代わりに下記の手順により作製したマレイミド修飾膜を用いた以外は実施例1と同様にして共鳴プラズモン測定を行った。
マレイミド膜の作製方法は以下の通りである。
(アミノ基を有する自己組織化膜修飾基板の作製)
センサーチップ上に金膜のみが形成されているBiacore社センサーチップAuを12分間、UVオゾン処理を行った後、10mlの超純水に10μmol の6-aminohexanethiol(Aldrich製)を溶解させた溶液と金膜を40℃で20時間反応させて、金膜上にアミノ基を形成し、超純水で数回洗浄した。
センサーチップ上に金膜のみが形成されているBiacore社センサーチップAuを12分間、UVオゾン処理を行った後、10mlの超純水に10μmol の6-aminohexanethiol(Aldrich製)を溶解させた溶液と金膜を40℃で20時間反応させて、金膜上にアミノ基を形成し、超純水で数回洗浄した。
(CMDの活性エステル化)
超純水に0.5重量%となるようにCMD(名糖産業製:分子量100万)を溶解した後、全量反応した場合にカルボキシル基の2%が活性化される計算量の0.4MのEDC(1-(3-Dimethylaminopropyl)-3-ethylcarbodiimide)および0.1MのNHS(N-Hydroxysuccinimide)混合溶液を加え、室温で5分間攪拌した。
超純水に0.5重量%となるようにCMD(名糖産業製:分子量100万)を溶解した後、全量反応した場合にカルボキシル基の2%が活性化される計算量の0.4MのEDC(1-(3-Dimethylaminopropyl)-3-ethylcarbodiimide)および0.1MのNHS(N-Hydroxysuccinimide)混合溶液を加え、室温で5分間攪拌した。
(CMD膜の作製)
上記アミノ基を形成した金膜上に、活性エステル化したCMD溶液を滴下し30秒後に除去することで、アミノ基を有する基板上に活性エステル化されたカルボキシメチルデキストラン薄膜を形成させた。室温で1 時間反応させた後、0.1N NaOHで1回、超純水で1回洗浄した。
上記アミノ基を形成した金膜上に、活性エステル化したCMD溶液を滴下し30秒後に除去することで、アミノ基を有する基板上に活性エステル化されたカルボキシメチルデキストラン薄膜を形成させた。室温で1 時間反応させた後、0.1N NaOHで1回、超純水で1回洗浄した。
(マレイミド膜の作製)
上記CMD膜に2.8mM HODhbt(3,4-Dihydro-3-hydroxy-4-oxo-1,2,3-benzotriazine 東京化成社製)の0.4M EDCを50μlずつ混合し、CMD膜に100μl滴下し、室温で10分間反応させた。溶液を除去後、超純水で洗浄し、真空乾燥機で10分間乾燥させた。乾燥後、エチレンジアミンを80μl滴下し、10分間反応させた。反応後、超純水で洗浄した。処理後、10mM SSMCC(スルホコハク酸イミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート PIERCE社製)を300μlし、室温で30分間反応させた。反応後、超純水で攪拌洗浄を行い、マレイミド膜を作製した。
上記CMD膜に2.8mM HODhbt(3,4-Dihydro-3-hydroxy-4-oxo-1,2,3-benzotriazine 東京化成社製)の0.4M EDCを50μlずつ混合し、CMD膜に100μl滴下し、室温で10分間反応させた。溶液を除去後、超純水で洗浄し、真空乾燥機で10分間乾燥させた。乾燥後、エチレンジアミンを80μl滴下し、10分間反応させた。反応後、超純水で洗浄した。処理後、10mM SSMCC(スルホコハク酸イミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート PIERCE社製)を300μlし、室温で30分間反応させた。反応後、超純水で攪拌洗浄を行い、マレイミド膜を作製した。
(ペプチド固定量の測定)
実施例1〜5、比較例1〜3の共鳴プラズモン測定において、上記操作後、Biacore3000装置内において、0.5MのEDTA水溶液(pH8 バッファー ニッポンジーン製)で1分間洗浄し、洗浄後のペプチド固定量を測定した。結果を表1に示す。表1のペプチド固定量は比較例3の固定量を1としたときの実施例1〜5、比較例1〜2の固定量を算出した相対値である。
実施例1〜5、比較例1〜3の共鳴プラズモン測定において、上記操作後、Biacore3000装置内において、0.5MのEDTA水溶液(pH8 バッファー ニッポンジーン製)で1分間洗浄し、洗浄後のペプチド固定量を測定した。結果を表1に示す。表1のペプチド固定量は比較例3の固定量を1としたときの実施例1〜5、比較例1〜2の固定量を算出した相対値である。
(固定速度の測定)
実施例1〜5、比較例1〜3の上記ペプチド固定量の測定において固定速度を測定した。結果を表1に示す。表1の固定速度は比較例3の固定速度を1としたときの実施例1〜5、比較例1〜2の固定速度を算出した相対値である。
実施例1〜5、比較例1〜3の上記ペプチド固定量の測定において固定速度を測定した。結果を表1に示す。表1の固定速度は比較例3の固定速度を1としたときの実施例1〜5、比較例1〜2の固定速度を算出した相対値である。
表1から明らかなように実施例1〜5では比較例3に比べて、顕著に結合が強固であって、その結合速度も有意に早いのに対し、比較例1では結合速度は早いものの、EDTA洗浄により、固定物が脱離してしまい固定化ができておらず、比較例2および3では固定化ができていない上に結合速度も遅く、中性条件において高速に固定化できないことがわかる。なお、実施例4で用いているNTAchipはカルボキシメチルデキストラン(ポリマー)を介してNTAが固定されており、膜厚は100nm程度と推定される。SPR測定可能な膜厚は300nm以下であることから、実施例4で用いているNTAchipのNTA密度は、実施例5で作製したNTA密度よりも低密度であることは明かである。そして、このNTA密度の相違によって、NTA密度の高い実施例5では固定量が20倍以上多い上、さらに固定速度も早いことがわかる。
以上から、タグが2以上のシステインを含むシステインユニット(システイン残基を2以上)を金属イオンで配向固定することで固定力が強固であって、かつ高速に固定化できることがわかる。
以上から、タグが2以上のシステインを含むシステインユニット(システイン残基を2以上)を金属イオンで配向固定することで固定力が強固であって、かつ高速に固定化できることがわかる。
Claims (7)
- 基板と、該基板表面上に結合されたリガンドと、該リガンドに固定された金属イオンと、該金属イオンに固定された生理活性物質とを備えた担体であって、
前記生理活性物質が金属イオンに配位結合するタグを有し、該タグが2以上のシステインを含むシステインユニットであり、該システインユニットを介して前記生理活性物質が金属イオンに固定されていることを特徴とする担体。 - 前記システインユニットがヒスチジンを含むことを特徴とする請求項1記載の担体。
- 前記リガンドがニトリロトリ酢酸誘導体であることを特徴とする請求項1または2記載の担体。
- 基板表面上に高分子膜が結合されており、該高分子膜に前記ニトリロトリ酢酸誘導体が結合していることを特徴とする請求項3記載の担体。
- 前記金属イオンが遷移金属イオンであることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の担体。
- 前記金属イオンがCu(II)イオンであることを特徴とする請求項5記載の担体。
- 請求項1〜6記載の担体を備えていることを特徴とするバイオセンサー。
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2008
- 2008-09-11 JP JP2008232842A patent/JP2010066135A/ja not_active Withdrawn
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