JP2010057473A - 生海藻およびその保存方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】長期保存を行っても、生の海藻の味・風味・歯ごたえを維持し、かつ変色をおこさず鮮度を維持することができ、低コストで安定的に供給することができる生海藻を提供する。
【解決手段】塩化ナトリウム8〜30%および塩化カルシウム0.5〜5%含有することを特徴とする生海藻。
本発明の生海藻の保存方法は、生海藻に対して、少なくとも塩化ナトリウムおよび塩化カルシウムを添加混合して、生海藻に含まれる塩化ナトリウムの含有量を8〜30%および塩化カルシウムの含有量を0.5〜5%に調整してなることを特徴とする。
【選択図】なし
【解決手段】塩化ナトリウム8〜30%および塩化カルシウム0.5〜5%含有することを特徴とする生海藻。
本発明の生海藻の保存方法は、生海藻に対して、少なくとも塩化ナトリウムおよび塩化カルシウムを添加混合して、生海藻に含まれる塩化ナトリウムの含有量を8〜30%および塩化カルシウムの含有量を0.5〜5%に調整してなることを特徴とする。
【選択図】なし
Description
本発明は、食することのできる生海藻およびその保存方法に関する。
食用生海藻の代表的なものとして、モズク・ワカメ・海苔等が挙げられる。これらの海藻は、腐敗しやすいため、生での流通が確立されていない。
特に、摘採されたモズクは、腐敗しやすいためにモズクに対して25%以上の塩を添加し、脱水後−5℃以下の冷凍にて保存する方法が採用されている。保存中のカビの発生・変色・腐敗・軟化等を防止し鮮度を維持する方法として、現在では最良の方法とされている。
しかし、塩蔵し冷凍保存しても数ヶ月で、品質が低下してしまうため、商品としての価値が低下してしまう。もちろん、品質を劣化させることなく冷蔵で保存する方法は確立されていないのが現状である。
特に、摘採されたモズクは、腐敗しやすいためにモズクに対して25%以上の塩を添加し、脱水後−5℃以下の冷凍にて保存する方法が採用されている。保存中のカビの発生・変色・腐敗・軟化等を防止し鮮度を維持する方法として、現在では最良の方法とされている。
しかし、塩蔵し冷凍保存しても数ヶ月で、品質が低下してしまうため、商品としての価値が低下してしまう。もちろん、品質を劣化させることなく冷蔵で保存する方法は確立されていないのが現状である。
モズクの塩蔵・冷凍保存における問題点を下記〔1〕〜〔6〕に示す。
〔1〕塩蔵時の作業において、塩分を25%以上にするために5日間以上の日数を必要とし、作業性が悪い。
〔2〕塩蔵を行う段階で、浸透圧の作用によりモズク中のミネラル等の栄養成分が溶出し、色・味が低下する。
〔3〕塩蔵し冷凍保管しているときに、時間の経過と共に、歯ごたえ・味・風味が低下する。
〔4〕塩蔵し冷凍保管しているときに、褐色のモズクが緑色に変色し、見た目の品質が低下する。
〔5〕モズクを製品として販売する時には、塩蔵モズクを冷凍庫から取り出し、塩抜きをして最終製品とせねばならない。この工程においても塩化ナトリウムと共に味が抜けてしまう。
〔6〕塩蔵し冷凍庫に保管していても、鮮度を維持したまま長期保存ができないため、商品として販売できなくなるものが発生し損失が大きい。
本来、モズクの消費拡大には、本来の品質を保った鮮度の高いモズクを安価に提供することが重要である。そのため、モズクを含めたワカメ・海苔等の生海藻を1年以上長期保存しても、品質が低下しない保存方法の開発が望まれているのである。
〔1〕塩蔵時の作業において、塩分を25%以上にするために5日間以上の日数を必要とし、作業性が悪い。
〔2〕塩蔵を行う段階で、浸透圧の作用によりモズク中のミネラル等の栄養成分が溶出し、色・味が低下する。
〔3〕塩蔵し冷凍保管しているときに、時間の経過と共に、歯ごたえ・味・風味が低下する。
〔4〕塩蔵し冷凍保管しているときに、褐色のモズクが緑色に変色し、見た目の品質が低下する。
〔5〕モズクを製品として販売する時には、塩蔵モズクを冷凍庫から取り出し、塩抜きをして最終製品とせねばならない。この工程においても塩化ナトリウムと共に味が抜けてしまう。
〔6〕塩蔵し冷凍庫に保管していても、鮮度を維持したまま長期保存ができないため、商品として販売できなくなるものが発生し損失が大きい。
本来、モズクの消費拡大には、本来の品質を保った鮮度の高いモズクを安価に提供することが重要である。そのため、モズクを含めたワカメ・海苔等の生海藻を1年以上長期保存しても、品質が低下しない保存方法の開発が望まれているのである。
従来における海藻の保存方法に関する先行技術には、次のようなものが知られている。
例えば、特許文献1には、「吸水性を有し且つ水に不溶性の粉末を海苔葉体に接触させて、前記海苔葉体表面上の付着水分を吸水し、しかるに後に冷凍することを特徴とする海苔の冷凍保存方法」が開示されている。
この技術は、海苔網を冷凍保存するときに、種網を一旦遠心脱水機にて脱水した後、炭酸カルシウム・タルク・活性炭等の水不溶性の粉末を散布し余分な水分を吸収し水分含量を20〜40%に調整した後、冷凍保存するという種網を製造する時の方法であり、長さは1〜5cmという幼芽が網に付着した状態での保存方法に関するものである。この海苔幼芽サイズにおいても、1〜3ヶ月の短期的な冷凍保存には適しているが、6ヶ月以上の長期冷凍保存では鮮度維持効果を発揮しないものである。また、生産時期の30〜60cmサイズに成長した本来の生海苔を長期保存することはできない点にも課題がある。
例えば、特許文献1には、「吸水性を有し且つ水に不溶性の粉末を海苔葉体に接触させて、前記海苔葉体表面上の付着水分を吸水し、しかるに後に冷凍することを特徴とする海苔の冷凍保存方法」が開示されている。
この技術は、海苔網を冷凍保存するときに、種網を一旦遠心脱水機にて脱水した後、炭酸カルシウム・タルク・活性炭等の水不溶性の粉末を散布し余分な水分を吸収し水分含量を20〜40%に調整した後、冷凍保存するという種網を製造する時の方法であり、長さは1〜5cmという幼芽が網に付着した状態での保存方法に関するものである。この海苔幼芽サイズにおいても、1〜3ヶ月の短期的な冷凍保存には適しているが、6ヶ月以上の長期冷凍保存では鮮度維持効果を発揮しないものである。また、生産時期の30〜60cmサイズに成長した本来の生海苔を長期保存することはできない点にも課題がある。
特許文献2には、「キトサンを主成分とする生海苔及び生海苔の付着した海苔網の冷凍保存剤」が開示されている。これも食用サイズではない幼芽での保存方法であり、食用の成葉での長期保存では効果がない点に課題がある。
特許文献3には、「モズク専用の船内に−3℃〜15℃の冷却倉庫を設置し、海中より収穫したモズク原藻を雑物除去後、冷却保管することを特徴とする活・モズク原藻の収穫保存方法」が開示されている。この保存方法は、モズク専用の船内で冷凍保存するため迅速な作業性が要求されると共に、長期保存では食感や品質の低下が生じるなどの課題がある。
特許文献4には、「海藻を保存するに際し、活性炭粉末を海藻に塗布した後保存することを特徴とする海藻の保存方法」が開示されている。この保存方法によっても長期保存では、食感や品質の低下が生じるなどの課題がある。
特許文献5には、「殺菌したもずく60〜80重量%を、海水40〜20重量%とともに遮光した密閉容器に収容し、温度0〜15℃で保存することを特徴とするもずくの鮮度保持方法」が開示されている。この技術は、短期間におけるもずくの鮮度保持方法であり、長期保存では食感や品質の低下が生じるなどの課題がある。
特許文献6には、「有機カルシウム塩と無機カルシウム塩のカルシウム比が、重量%比で有機カルシウム/無機カルシウム=0.1〜10であって、カルシウムを0.2〜10重量%含有する、わかめ加工用の食用塩」が開示されると共に、その実施例には「乳酸カルシウム2.5〜9.7重量%、塩化カルシウムを0.7〜2.5重量%、塩化ナトリウム87.8〜96.8重量%のわかめ加工用の食用塩」が開示されている。
しかしながら、この「わかめ加工用の食用塩」は、段落0007に記載されるように、従来における塩蔵わかめの課題である歯ごたえ、軟化防止に着目し、従来の食塩(塩化ナトリウム)によるわかめ塩蔵技術に、歯ごたえ、軟化防止の付加価値をつけるために、カルシウム塩(一定の配合比となる有機カルシウム塩および無機カルシウム塩)を配合したものであり、当該カルシウム塩の配合は、わかめ保存を目的にしてなされたものではなく、ワカメの軟化防止(硬さ調整)のみを目的とするものであり、実施例1〜4における当該食用塩の効果の判定は3日間の短期保存後の硬さ中心の評価となっており、本願発明とはその目的、課題が相違するものである。また、この特許文献6には、塩化カルシウム自体の保存能力については何等記載されておらず、本願発明とはその技術思想が相違するものである。
しかしながら、この「わかめ加工用の食用塩」は、段落0007に記載されるように、従来における塩蔵わかめの課題である歯ごたえ、軟化防止に着目し、従来の食塩(塩化ナトリウム)によるわかめ塩蔵技術に、歯ごたえ、軟化防止の付加価値をつけるために、カルシウム塩(一定の配合比となる有機カルシウム塩および無機カルシウム塩)を配合したものであり、当該カルシウム塩の配合は、わかめ保存を目的にしてなされたものではなく、ワカメの軟化防止(硬さ調整)のみを目的とするものであり、実施例1〜4における当該食用塩の効果の判定は3日間の短期保存後の硬さ中心の評価となっており、本願発明とはその目的、課題が相違するものである。また、この特許文献6には、塩化カルシウム自体の保存能力については何等記載されておらず、本願発明とはその技術思想が相違するものである。
一方、本発明者は、塩化カルシウムを生海藻に添加する方法により、生海藻を長期保存することができることを見いだし、海藻1kgに対して、塩化カルシウムを0.01kg以上(好ましくは0.1〜10kg)添加する生海藻の鮮度保持方法を出願(例えば、特許文献7参照)すると共に、特許文献8では、生苔原藻に塩化カルシウムを5〜30%含有するように調整した生海苔原藻の製造方法、並びに、特許文献9では、生海藻に塩化カルシウムを添加混合した後、塩化ナトリウム水溶液にて洗浄することを特徴とする保存海藻の処理方法を出願している。
上記特許文献7および8に記載の技術では、明細書中に記載されているように、生海藻の長期保存できるのであるが、用いる塩化カルシウムは苦み・えぐ味が強いため、そのまま食することはできない。そのため、洗浄を十分に行わないといけないため、作業性が悪くなるなどの点で若干の課題がある。また、上記特許文献9の技術では、海藻に付着又は浸透している塩化カルシウムを除去できるが、保存期間が1年程度が限度であり、更なる長期の保存期間の向上、更なる洗浄作業性等の向上が切望されているのが現状である。
特開昭64−071463号公報(特許請求の範囲等)
特開平11−046731号公報(特許請求の範囲等)
特開2001−103940号公報(特許請求の範囲等)
特開2002−125630号公報(特許請求の範囲等)
特開2001−161320号公報(特許請求の範囲等)
特開2002−125617号公報(特許請求の範囲等)
特開2005−224196号公報(特許請求の範囲等)
特開2007−43994号公報(特許請求の範囲等)
特開2007−174976号公報(特許請求の範囲等)
上記特許文献7および8に記載の技術では、明細書中に記載されているように、生海藻の長期保存できるのであるが、用いる塩化カルシウムは苦み・えぐ味が強いため、そのまま食することはできない。そのため、洗浄を十分に行わないといけないため、作業性が悪くなるなどの点で若干の課題がある。また、上記特許文献9の技術では、海藻に付着又は浸透している塩化カルシウムを除去できるが、保存期間が1年程度が限度であり、更なる長期の保存期間の向上、更なる洗浄作業性等の向上が切望されているのが現状である。
本発明の目的は、上記従来の課題、現状等に鑑み、これを解消するためになされたものであり、生の海藻の食品としての本来の食感、品質を失わず、且つ低コストで作業性に優れ、長期間にわたり冷凍又は冷蔵することができる生海藻およびその保存方法を提供することにある。
本発明者は、上記従来の課題及び現状等について、鋭意検討した結果、生海苔等の海藻を生の状態で保存する時に、保存する生海藻に対して、塩化カルシウムおよび塩化ナトリウムの各含有量を一定の範囲となるように調整、混合することにより、1年以上の長期保存が可能で、かつ、苦み・えぐ味も感じない生海藻およびその保存方法を提供できることを見い出すことにより、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は次の(1)〜(3)のとおりである。
(1) 塩化ナトリウム8〜30%および塩化カルシウム0.5〜3%含有することを特徴とする生海藻。
(2) 生海藻に対して、少なくとも塩化ナトリウムおよび塩化カルシウムを添加混合して、生海藻に含まれる塩化ナトリウムの含有量を8〜30%および塩化カルシウムの含有量を0.5〜5%に調整してなることを特徴とする生海藻の保存方法。
(3) 冷蔵又は冷凍で保存することを特徴とする上記(2)記載の生海藻の保存方法。
(1) 塩化ナトリウム8〜30%および塩化カルシウム0.5〜3%含有することを特徴とする生海藻。
(2) 生海藻に対して、少なくとも塩化ナトリウムおよび塩化カルシウムを添加混合して、生海藻に含まれる塩化ナトリウムの含有量を8〜30%および塩化カルシウムの含有量を0.5〜5%に調整してなることを特徴とする生海藻の保存方法。
(3) 冷蔵又は冷凍で保存することを特徴とする上記(2)記載の生海藻の保存方法。
本発明によれば、長期保存を行っても、生の海藻の味・風味・歯ごたえを維持し、かつ変色をおこさず鮮度を維持することができ、低コストで安定的に供給することができる生海藻およびその保存方法が提供される。
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
本発明の生海藻は、塩化ナトリウム8〜30%および塩化カルシウム0.5〜3%含有することを特徴とするものであり、また、本発明の生海藻の保存方法は、生海藻に対して、少なくとも塩化ナトリウムおよび塩化カルシウムを添加混合して、生海藻に含まれる塩化ナトリウムの含有量を8〜30%および塩化カルシウムの含有量を0.5〜5%に調整してなることを特徴とするものである。
本発明の生海藻は、塩化ナトリウム8〜30%および塩化カルシウム0.5〜3%含有することを特徴とするものであり、また、本発明の生海藻の保存方法は、生海藻に対して、少なくとも塩化ナトリウムおよび塩化カルシウムを添加混合して、生海藻に含まれる塩化ナトリウムの含有量を8〜30%および塩化カルシウムの含有量を0.5〜5%に調整してなることを特徴とするものである。
本発明において、用いることができる海藻としては、摘採したモズク、ワカメ、生海苔などの食用可能となる海藻であれば、いずれも使用でき、その種類、養殖法等は特に限定されるものではない。好ましくは、長期保存しても、更に風味豊かで色、歯ごたえ、味のすべてが満足のいくものを得る点から、良質な生海藻を用いることが望ましい。
本発明の生海藻は、上記摘採した生海藻、好ましくは、摘採した上記良質な生海藻に、塩化カルシウムおよび塩化ナトリウムを添加混合して生海藻中に含まれる塩化カルシウムの含有量を8〜30%および塩化カルシウム0.5〜5%に調整してなるものであれば、その製造方法は特に限定されない。
好ましくは、長期保存を行っても、生の海藻の味・風味・歯ごたえを維持し、かつ変色をおこさず鮮度を更に維持する点から、生海藻中に含有する塩化カルシウムの含有量は1〜4%および塩化ナトリウムの含有量を10〜25%としてなるものが望ましい。
なお、本発明(実施例等を含む)において、「生海藻中に含まれる塩化カルシウムおよび塩化ナトリウムの含有量」とは、生海藻の内部の塩化カルシウムおよび塩化ナトリウムの量及びその外周にまで付着する塩化カルシウムおよび塩化ナトリウムの量を合わせた合計量をいう。その測定法は、生海藻をイオン交換水中で1時間撹拌させ、生海藻内部及び外周より該イオン交換水中に溶け出したカルシウム濃度およびナトリウム濃度を原子吸光法で測定し、塩化カルシウム、塩化ナトリウムの量に換算することにより求めることができる。
好ましくは、長期保存を行っても、生の海藻の味・風味・歯ごたえを維持し、かつ変色をおこさず鮮度を更に維持する点から、生海藻中に含有する塩化カルシウムの含有量は1〜4%および塩化ナトリウムの含有量を10〜25%としてなるものが望ましい。
なお、本発明(実施例等を含む)において、「生海藻中に含まれる塩化カルシウムおよび塩化ナトリウムの含有量」とは、生海藻の内部の塩化カルシウムおよび塩化ナトリウムの量及びその外周にまで付着する塩化カルシウムおよび塩化ナトリウムの量を合わせた合計量をいう。その測定法は、生海藻をイオン交換水中で1時間撹拌させ、生海藻内部及び外周より該イオン交換水中に溶け出したカルシウム濃度およびナトリウム濃度を原子吸光法で測定し、塩化カルシウム、塩化ナトリウムの量に換算することにより求めることができる。
本発明において、生海藻中に含まれる塩化カルシウムの含有量が0.5%未満であると、長期保存すると色・味が変化し、香りが減少する。一方、5%を越えると、海藻の苦みがひどくなり、好ましくない。
また、塩化ナトリウムの含有量が8%未満であると、長期保存効果が無くなり、色・味・香り・歯ごたえ全てにおいて低下してしまう。一方、30%を越えると、塩味が強くて食材として不適当であり、塩抜きの洗浄も困難となり、好ましくない。
なお、摘採したモズク、ワカメ、海苔等の生海藻には、天然海水由来の塩化カルシウムが少なくとも0.1%程度、また、天然海水由来の塩化ナトリウムが3.5%程度含まれているが、これらの含有量では長期保存することができるものではない。
また、塩化ナトリウムの含有量が8%未満であると、長期保存効果が無くなり、色・味・香り・歯ごたえ全てにおいて低下してしまう。一方、30%を越えると、塩味が強くて食材として不適当であり、塩抜きの洗浄も困難となり、好ましくない。
なお、摘採したモズク、ワカメ、海苔等の生海藻には、天然海水由来の塩化カルシウムが少なくとも0.1%程度、また、天然海水由来の塩化ナトリウムが3.5%程度含まれているが、これらの含有量では長期保存することができるものではない。
本発明で使用する塩化カルシウム、塩化ナトリウムは、食品添加物規格の塩化カルシウム、塩化ナトリウムを用いるものが好ましい。使用する塩化カルシウム、塩化ナトリウムの粒径は、粉末でも粒状でもいずれでも良い。
用いる塩化ナトリウムおよび塩化カルシウムは、混合してから生海藻に添加しても良いし、別々に生海藻に添加しても良い。
なお、塩化ナトリウム8〜30%および塩化カルシウム0.5〜5%含有する生海藻とするためには、海藻種、採取場所、処理温度等により変動するので、生海藻種に対して、塩化カルシウムおよび塩化ナトリウムの各単独又は混合物を上記諸条件などを勘案して添加することにより好適に調整することができる。
用いる塩化ナトリウムおよび塩化カルシウムは、混合してから生海藻に添加しても良いし、別々に生海藻に添加しても良い。
なお、塩化ナトリウム8〜30%および塩化カルシウム0.5〜5%含有する生海藻とするためには、海藻種、採取場所、処理温度等により変動するので、生海藻種に対して、塩化カルシウムおよび塩化ナトリウムの各単独又は混合物を上記諸条件などを勘案して添加することにより好適に調整することができる。
本発明は、生海藻をそのまま食することができるように検討したものであるが、塩化ナトリウムと塩化カルシウムとを生海藻中に一定の範囲になるように含有せしめることにより、塩分を除去する洗浄作業も簡単に行うことができるようになった。先行技術として本出願人が開発した塩化カルシウムのみで生海藻の鮮度保持等する方法では、カルシウムが海藻の粘質物と強固に結合しており、それを除去する洗浄に時間がかかりすぎるという欠点や、1年以上の長期保存後でも安定した品質の維持、洗浄作業性等に若干の課題などがあったが、本発明により、これらの課題を一挙に解決して、目的の良質な生海藻が得られるものとなった。
以下に、例えば、生モズク、生海苔、生ワカメを長期保存するための、本発明の手順について説明する。
生モズクの場合は、まず、生モズクを水切りした後、生モズクに対して塩化カルシウムおよび塩化ナトリウムを添加し、良く混合攪拌して均一にする。脱水され発生してくる水分を濾過し、除去する。得られた塩化ナトリウム8〜30%および塩化カルシウム0.5〜3%含有する生モズクを梱包(20kg缶)し、冷凍庫又は冷蔵庫に入庫し保管する。
生海苔の場合は、生海苔を水切りした後、生海苔に対して塩化カルシウムおよび塩化ナトリウムを添加し、良く混合攪拌して均一にする。脱水され発生してくる水分を濾過し、除去する。得られた塩化ナトリウム8〜30%および塩化カルシウム0.5〜3%含有する生海苔を梱包(20kg缶)し、冷凍庫又は冷蔵庫に入庫し保管する。
生ワカメの場合は、採取した生ワカメを湯通し処理した後、塩化カルシウムおよび塩化ナトリウムを添加し、良く混合撹拌し均一にする。脱水され発生してくる水分を濾過し除去する。得られた塩化ナトリウム8〜30%および塩化カルシウム0.5〜3%含有する生ワカメを梱包し、冷凍庫又は冷蔵庫に保管する。
ワカメの場合は塩化ナトリウムのみで塩蔵処理し冷凍保管し、出荷する際に塩化カルシウムを添加して、本発明の濃度になるように調整した方が好ましい。
生モズクの場合は、まず、生モズクを水切りした後、生モズクに対して塩化カルシウムおよび塩化ナトリウムを添加し、良く混合攪拌して均一にする。脱水され発生してくる水分を濾過し、除去する。得られた塩化ナトリウム8〜30%および塩化カルシウム0.5〜3%含有する生モズクを梱包(20kg缶)し、冷凍庫又は冷蔵庫に入庫し保管する。
生海苔の場合は、生海苔を水切りした後、生海苔に対して塩化カルシウムおよび塩化ナトリウムを添加し、良く混合攪拌して均一にする。脱水され発生してくる水分を濾過し、除去する。得られた塩化ナトリウム8〜30%および塩化カルシウム0.5〜3%含有する生海苔を梱包(20kg缶)し、冷凍庫又は冷蔵庫に入庫し保管する。
生ワカメの場合は、採取した生ワカメを湯通し処理した後、塩化カルシウムおよび塩化ナトリウムを添加し、良く混合撹拌し均一にする。脱水され発生してくる水分を濾過し除去する。得られた塩化ナトリウム8〜30%および塩化カルシウム0.5〜3%含有する生ワカメを梱包し、冷凍庫又は冷蔵庫に保管する。
ワカメの場合は塩化ナトリウムのみで塩蔵処理し冷凍保管し、出荷する際に塩化カルシウムを添加して、本発明の濃度になるように調整した方が好ましい。
本発明において、具体的な保存(保管)方法としては、例えば、上記方法等により得られた生原藻を梱包(20kg缶)し、冷凍庫又は冷蔵庫に入庫し冷凍又は冷蔵で保存することが挙げられる。保存する時の温度は、5℃以下の冷蔵又は冷凍であることが好ましい。更に、好ましくは、0℃以下、より好ましくは、−5℃以下に冷凍することが好ましく、−20℃より低くしても効果は変わらず、コスト、作業性の点から、−5℃〜−20℃とすることが特に望ましい。
また、本発明による保存後の生海藻を食する際には、水洗、例えば、保存後の生海藻100gを流水(水道水)で1〜5分間洗うことで、簡単に水洗作業を行うことができ、1年以上の長期保存後でも安定した品質(色、歯ごたえ、味、香り)を維持した生海藻を食することができるものとなる。
また、本発明による保存後の生海藻を食する際には、水洗、例えば、保存後の生海藻100gを流水(水道水)で1〜5分間洗うことで、簡単に水洗作業を行うことができ、1年以上の長期保存後でも安定した品質(色、歯ごたえ、味、香り)を維持した生海藻を食することができるものとなる。
このように構成される本発明では、1年以上の長期保存を行っても、生海藻の味・風味・歯ごたえを維持し、かつ変色を起こさず生の状態と同様な鮮度を維持することができ、低コストで安定的に生海藻を供給することができる生海藻およびその保存方法が得られることとなる。
次に、本発明を試験例1および2(実施例及び比較例)に基づき説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
(試験例1:実施例1〜12および比較例1〜9)
採取した生海苔を脱水し、食品添加物規格の塩化ナトリウムおよび塩化カルシウムを添加し、さらに脱水を行い、冷凍(−20℃)にて保存した。最終製品の生海苔に含有する塩化ナトリウムおよび塩化カルシウム濃度は、下記表1および2に示す各濃度になるように調整した。
各濃度に調整、保存された生海苔を6ヶ月後、12ヶ月後、15ヶ月後に取り出し、下記方法により水洗した後、下記評価方法により生海苔の経時的な状態(色、歯ごたえ、味、香り)を下記評価基準により官能評価した。
これらの結果を下記表1〜2に示す。
採取した生海苔を脱水し、食品添加物規格の塩化ナトリウムおよび塩化カルシウムを添加し、さらに脱水を行い、冷凍(−20℃)にて保存した。最終製品の生海苔に含有する塩化ナトリウムおよび塩化カルシウム濃度は、下記表1および2に示す各濃度になるように調整した。
各濃度に調整、保存された生海苔を6ヶ月後、12ヶ月後、15ヶ月後に取り出し、下記方法により水洗した後、下記評価方法により生海苔の経時的な状態(色、歯ごたえ、味、香り)を下記評価基準により官能評価した。
これらの結果を下記表1〜2に示す。
(水洗方法)
各保存期間後の生海藻20gを、流水(水道水)で30秒間洗うことにより水洗作業を行った。
各保存期間後の生海藻20gを、流水(水道水)で30秒間洗うことにより水洗作業を行った。
色の評価基準:
◎:変化なし
○:僅かに変色
△:少し変色
×:かなり変色
歯ごたえの評価基準:
◎:変化なし
○:僅かに低下した
△:少し低下した
×:かなり低下した
◎:変化なし
○:僅かに変色
△:少し変色
×:かなり変色
歯ごたえの評価基準:
◎:変化なし
○:僅かに低下した
△:少し低下した
×:かなり低下した
味の評価基準:
◎:苦味がなく、採取後の生海藻と同様の風味豊かな味
○:苦み・塩味がなく、程よい味
△:苦み又は塩味が少しする
×:苦みがひどい、又は塩辛い
香りの評価基準:
◎:変化なし
○:海藻の香りが少し減少した
△:海藻の香りが変質した
×:異なる香りに変化した
◎:苦味がなく、採取後の生海藻と同様の風味豊かな味
○:苦み・塩味がなく、程よい味
△:苦み又は塩味が少しする
×:苦みがひどい、又は塩辛い
香りの評価基準:
◎:変化なし
○:海藻の香りが少し減少した
△:海藻の香りが変質した
×:異なる香りに変化した
上記表1の実施例1〜6、比較例3および7は、塩化ナトリウム濃度を20%に固定して、塩化カルシウム濃度を変化させたこの試験により、塩化カルシウム含有濃度が0.1%以下になると生海苔の保存効果がないとことがわかり、また、塩化カルシウム含有濃度が6.0%であると塩化カルシウムの苦み・えぐ味が感じられ、そのまま食べることは好ましくなかった。
また、比較例1および2の塩化カルシウム単独の0.1%及び塩化ナトリウム単独の20%では、保存中に海苔の細胞が破壊され、海苔の変色と軟化が起こり、味・香りも悪くなった。更に、比較例4〜6の濃度が1.0%。3.0%、5.0%の各濃度となる塩化カルシウム単独では、苦みが強くて食することができず、長期保存する効果もなかった。
また、比較例1および2の塩化カルシウム単独の0.1%及び塩化ナトリウム単独の20%では、保存中に海苔の細胞が破壊され、海苔の変色と軟化が起こり、味・香りも悪くなった。更に、比較例4〜6の濃度が1.0%。3.0%、5.0%の各濃度となる塩化カルシウム単独では、苦みが強くて食することができず、長期保存する効果もなかった。
上記表2の実施例7〜12、比較例8および9は、塩化カルシウム3%に固定して、塩化ナトリウム濃度を変化させたこの試験により、塩化ナトリウム濃度が5%であると生海苔の保存効果がないとことがわかり、塩化ナトリウムを35%であると塩辛すぎて食べられないことがわかった。
上記表1および2の結果などを総合的に勘案すると、製品である生海藻に対して、塩化カルシウム0.5〜5%、塩化ナトリウム8〜30%含有するように添加することにより、冷凍又は冷蔵による長期保存を行っても、品質の劣化がなく、苦みもなく、そのまま食することのできる生海藻を提供できることが判明した。
上記表1および2の結果などを総合的に勘案すると、製品である生海藻に対して、塩化カルシウム0.5〜5%、塩化ナトリウム8〜30%含有するように添加することにより、冷凍又は冷蔵による長期保存を行っても、品質の劣化がなく、苦みもなく、そのまま食することのできる生海藻を提供できることが判明した。
(試験例2:実施例13〜18)
生海藻中に、塩化カルシウム2.5%および塩化ナトリウム17%になるように最終製品を製造した。試験法、評価は、試験例1と同様に行った。
これらの結果を下記表3に示す。
生海藻中に、塩化カルシウム2.5%および塩化ナトリウム17%になるように最終製品を製造した。試験法、評価は、試験例1と同様に行った。
これらの結果を下記表3に示す。
上記表3の結果から明らかなように、実施例13〜18の5℃、−20℃で冷蔵又は冷凍した生海藻(ワカメ、海苔、モズク)を6ヶ月後、12ヶ月後、15ヶ月後であっても、色、歯ごたえ、味、香りに優れ、長期保存後であっても生の海藻の味・風味・歯ごたえを維持し、かつ変色をおこさず鮮度を維持することができ、低コストで安定的に供給することができることが判った。
長期保存後であっても、色、歯ごたえ、味、香りに優れた生の海藻を、食品並びにその素材として年間を通じて流通させること可能となる。
Claims (3)
- 塩化ナトリウム8〜30%および塩化カルシウム0.5〜5%含有することを特徴とする生海藻。
- 生海藻に対して、少なくとも塩化ナトリウムおよび塩化カルシウムを添加混合して、生海藻に含まれる塩化ナトリウムの含有量を8〜30%および塩化カルシウムの含有量を0.5〜5%に調整してなることを特徴とする生海藻の保存方法。
- 冷蔵又は冷凍で保存することを特徴とする請求項2記載の生海藻の保存方法。
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- 2008-11-25 JP JP2008299548A patent/JP2010057473A/ja active Pending
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