JP2010053465A - ゴム補強用ポリエステル繊維コード - Google Patents

ゴム補強用ポリエステル繊維コード Download PDF

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Abstract

【課題】
従来技術では達成できなかった、高弾性率を有し、かつ高温に曝された場合のポリエステル繊維とゴムとの耐熱接着性を改善し、かつ耐熱強力保持性を改善したゴム補強用ポリエステル繊維コードであって、特にラヂアルタイヤのキャッププライコードに好適なゴム補強用ポリエステル繊維コードおよびその製造方法を提供することである。
【解決手段】
ポリエステル繊維を、オキサゾリン基を含む化合物およびクロロ変性レゾルシンを含む第1処理剤皮膜で被覆し、次いでレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)を含む第2処理剤皮膜で被覆してなるゴム補強用ポリエステル繊維コードであって、下記物性を有するゴム補強用ポリエステル繊維コード。
(A)強度:5.0〜7.0cN/dTex
(B)2cN/dTex時伸度:2.0%〜4.0%
(C)150℃×30分乾熱収縮率:2.0%〜5.0%
【選択図】なし

Description

本発明は、タイヤ、ホースおよびベルトなどに使用されるゴム補強用ポリエステル繊維コードに関する。さらに詳しくは、高弾性率を有し、かつゴム加硫工程や製品使用中に、ゴム中で長時間高温に曝された時の耐熱接着性、耐熱強力保持性を著しく改善したゴム補強用ポリエステル繊維コードであって、特に、ラヂアルタイヤのキャッププライコード用として好適なゴム補強用ポリエステル繊維コードに関する。
ポリエステル繊維は、優れた強度、弾性率および熱寸法安定性を有するため、タイヤ、ホース、ベルトなどのゴム製品用補強材として従来から広く使用されている。ポリエステル繊維は補強材としてゴム製品中に埋め込まれて使用される時、その高温環境下では熱劣化する。その化学的熱劣化はゴム自身およびゴム中に配合されている種々の添加物の影響を受ける。ゴム中には、チウラム系、スルフェンアミド系あるいはグアニジン系などの加硫促進剤やアミン系老化防止剤などが配合されており、ゴム中で高温処理を受けたポリエステル繊維は、主にこれらのアミン系化合物やゴム自身の酸化劣化によって生じた低分子量化合物、水分子およびゴム中に含まれていた水分等によってアミン分解や加水分解される。かかるアミン分解およびまたは加水分解されたポリエステル繊維は接着性や強力等初期の特性を著しく低下させ使用に耐えられなくなるという問題があった。
ポリエステル繊維がアミン分解や加水分解すると、分子鎖切断に伴う強力低下やゴムと繊維層との接着性の低下を生じる。しかしながら、ポリエステル繊維をゴム補強用繊維として用いた場合にはかかる欠点を有するものの、高強力、高弾性率、熱寸法安定性に優れ、かつ耐疲労性や接着性の改良も進み、またタイヤ製造技術の向上と相まって、近年は殆どの乗用車ラヂアルタイヤのカーカス材として用いられている。しかしながら前記本質的な欠点を有しているため、タイヤ高速走行時に発熱した熱がこもりにくく化学劣化し難い、比較的小さなタイヤサイズの乗用車用カーカス材に限られて使用されているのが現状である。トラック、バス等の大型タイヤではごく一部に使用されているに過ぎない。一般には、トラック、バス用タイヤ、航空機用タイヤ、大型乗用車用タイヤおよびレーシングカータイヤ等にはポリエステル繊維コードは使用されていない。
しかも、近年益々高速走行に適した高性能タイヤが要求され、その要求を満たすために開発されたラヂアルタイヤは、高速走行時の遠心力によるタイヤの膨張と接地時の圧縮をスチールベルトの上からしっかりと抑えるため、キャッププライコードが用いられるようになった。該キャッププライコードは、カーカス部に比べ一段と発熱し高温となるため、従来のポリエステルコードでは使用に耐えず、高温時の接着性に優れたナイロン66繊維が用いられている。
しかしながら、該キャッププライコードの特性としては高弾性率が好ましいため、繊維素材としてはポリエステル繊維が好ましく、またポリエステル繊維は価格も安いこともあり、キャッププライ用として使用可能なポリエステル繊維コードの開発が強く要望されていた。その達成のためには第一に耐熱接着性の大幅な改善が、そして耐熱強力保持性の改善が必要である。
ポリエステル繊維の耐熱接着性の改善に関して、開示されている技術として特許文献1〜4がある。
特許文献1は、予めポリエポキシド化合物が付与されたポリエステル繊維に、ブロックドイソシアネート、エポキシ化合物、RFLの三者を含有する処理液により、1段または2段以上の多段処理を行う処理方法が開示されている。
特許文献2は、(A)キャリアーを含む処理液、(B)ブロックドイソシアネート水溶液を含む処理液でポリエステル繊維を処理した後、エポキシ化合物を含むRFLにて処理する手法が開示されている。
特許文献3は、熱可塑性重合体、熱反応型水性ウレタン、およびエポキシ化合物を含む処理液でポリエステル繊維を処理する手法が開示されている。
特許文献4は、熱可塑性重合体、水溶性高分子、極性官能基を有する芳香族類をメチレン結合した構造を有する化合物を含む処理液でポリエステル繊維を処理する手法が開示されている。
上記特許文献技術は、従来のポリエステル繊維の接着方法に比べれば、高温下での耐熱接着性および耐熱強力保持性の改善が認められるものの、ラヂアルタイヤのキャッププライ用コードとしては実用化できるレベルではなかった。
特開2006−274529号公報 特開2006−159984号公報 特開2001−63312号公報 特開2000−248254号公報
本発明の課題は、上述した従来技術では達成できなかった、高弾性率を有し、かつ高温に曝された場合のポリエステル繊維とゴムとの耐熱接着性を改善し、かつ耐熱強力保持性を改善したゴム補強用ポリエステル繊維コードであって、特にラヂアルタイヤのキャッププライコードに好適なゴム補強用ポリエステル繊維コードおよびその製造方法を提供することである。
かかる課題を解決するための本発明は、次の(1)〜(8)の構成を特徴とするものである。
(1)ポリエステル繊維を、オキサゾリン基を含む化合物およびクロロ変性レゾルシンを含む第1処理剤皮膜で被覆し、次いでレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)を含む第2処理剤皮膜で被覆してなるゴム補強用ポリエステル繊維コードであって、下記物性を有するゴム補強用ポリエステル繊維コード。
(A)強度:5.0〜7.0cN/dTex
(B)2cN/dTex時伸度:2.0%〜4.0%
(C)150℃×30分乾熱収縮率:2.0%〜5.0%
(2)前記RFLに、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジン−エチレン系不飽和酸単量体共重合ラテックスを含む(1)記載のゴム補強用ポリエステル繊維コード。
(3)前記RFLに、ガラス転移点(Tg)が、−20℃〜35℃であるスチレン−ブタジエン−エチレン系不飽和酸単量体共重合ラテックスを含む(1)または(2)に記載のゴム補強用ポリエステル繊維コード。
(4)前記RFLに、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジン−エチレン系不飽和酸単量体共重合ラテックス(A)と、ガラス転移点(Tg)が−20℃〜35℃であるスチレン−ブタジエン−エチレン系不飽和酸単量体共重合ラテックス(B)を含むゴム補強用ポリエステル繊維コードであって、(A)と(B)の混合比が、(A)/(B)=80/20〜20/80(乾燥重量比)である(1)に記載のゴム補強用ポリエステル繊維コード。
(5)前記第1処理剤皮膜に、ポリビニルアルコールを含む(1)〜(4)のいずれかに記載のゴム補強用ポリエステル繊維コード。
(6)前記第1処理剤皮膜に、エポキシ化合物、ゴムラテックス、ブロックドイソシアネート化合物からなる群から選択される少なくとも1種の成分を含む(1)〜(5)のいずれか記載のゴム補強用ポリエステル繊維コード。
(7)1浴目ホットストレッチ張力が0.71cN/dTex〜1.20cN/dTex、かつ2浴目ノルマライジング張力が、0.10cN/dTex〜0.70cN/dTexの張力で処理されてなる(1)〜(6)のいずれか記載のゴム補強用ポリエステル繊維コード。
(8)(1)〜(7)のいずれか記載のゴム補強用ポリエステル繊維コードをタイヤのキャッププライ部材に使用したタイヤ。
本発明によれば、高弾性率を有し、かつゴム加硫工程や製品使用中に、ゴム中で長時間高温に曝された時の耐熱接着性、耐熱強力保持性が著しく改善されたゴム補強用ポリエステル繊維コードが得られる。本発明によるポリエステル繊維コードで補強されたゴム製品は、タイヤ、ベルトおよびホースとして用いた時に長期間の過酷な使用に耐えることができる。特に、従来のポリエステル繊維コードでは適用できなかったラヂアルタイヤのキャッププライコードとして好適である。
本発明で用いるポリエステル繊維は、ジカルボン酸とグリコール成分とからなるポリエステルからなり、特にテレフタール酸とエチレングリコールからなるポリエチレンテレフタレートが好ましい。
本発明のゴム補強用ポリエステル繊維コードは、高強度、高タフネス、高弾性率、低収縮、高耐疲労性等の優れた機械的特性を有し、かつゴム中で高温に長時間曝されても優れた耐加水分解性や耐アミン分解性等の優れた化学的耐久性を有するため、本発明で用いるポリエステル繊維は、以下の特性を有することが好ましい。
(1)固有粘度(IV)=0.7〜1.2、より好ましくは0.8〜1.1
(2)カルボキシル末端基(COOH)=10〜30eq/t、より好ましくは12〜25eq/t
(3)ジエチレングリコール(DEG)=0.5〜1.5、好ましくは0.5〜1.2%
(4)強度(T)=6.0〜10.0cN/dtex、より好ましくは7.0〜9.0cN/dtex
(5)伸度(E)=8〜20%、より好ましくは10〜16%
(6)中間伸度(ME)=4.0〜6.5%、より好ましくは4.5〜6.0%
(7)乾熱収縮率(ΔS150℃)=2.0〜12.0%、より好ましくは3.0〜10.0%
本発明のゴム補強用ポリエステル繊維コードに用いるポリエステル繊維が特に化学的耐久性を有するためには、粘度が高く、カルボキシル末端基が少なく、ジエチレングリコールが少ないことが有利である。
本発明で用いるポリエステル繊維は、カルボキシ末端基を少なくするため、例えばカルボジイミド化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物およびオキサゾリン化合物などの末端カルボキシル基封鎖剤を用いて改質されていてもよい。
また、本発明のポリエステル繊維はあらかじめ製糸工程においてポリエポキシド化合物が付与されたものであってもよい。本発明で使用することのできるポリエポキシド化合物は、一分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を、該化合物100gあたり0.1g当量以上含有する化合物を挙げることができる。具体的には、ペンタエリスリトール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、ソルビトールなどの多価アルコール類とエピクロルヒドリンの如きハロゲン含有エポキシド類との反応生成物、過酸化または過酸化水素などで不飽和化合物を酸化して得られるポリエポキシド化合物、すなわち、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキセンカルボキリレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチル−シクロヘキシルメチル)アジペート、フェノールノボラック型、ハイドロキノン型、ビフェニル型、ビスフェノールS型、臭素化ノボラック型、キシレン変性ノボラック型、フェノールグリオキザール型、トリスオキシフェニルメタン型、トリスフェノールPA型、ビスフェノール型のポリエポキシド等の芳香族ポリエポキシド等が挙げられる。特に好ましいのは、ソルビトールグリシジルエーテル型やクレゾールノボラック型のポリエポキシドである。
これらの化合物は、通常は乳化液として使用されるが、乳化液、又は溶液にするには、該化合物をそのままか、もしくは必要に応じて少量の溶媒に溶解したものを公知の乳化剤、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、ジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物等を用いて乳化、又は溶解して用いる。
該ポリエポキシド化合物は、ポリエステル繊維の製糸工程において紡糸油剤と共に付与される。この際の該ポリエポキシド化合物の付着量は、0.1〜5重量%の範囲である。該ポリエポキシド化合物の付着量が0.1重量%未満では、ポリエポキシド化合物の効果が十分に発揮されず、ポリエステル繊維とゴムとの間で満足できる接着性が得られないおそれがある。一方、該ポリエポキシド化合物の付着量が5重量%を超えると繊維が非常に硬くなり、製糸工程において付与することが困難であるだけでなく、次工程以降で処理する処理剤の浸透性が低下する結果、接着性能が低下するので好ましくない。
本発明で用いるポリエステル繊維は、繊度、フィラメント数、断面形状等の制約を受けないが、通常、200〜5000dtex、30〜1000フィラメント、円断面糸が用いられ、250〜3000dtex、50〜500フィラメント、円断面糸が好ましい。
本発明のゴム補強用ポリエステル繊維コードは、上記ポリエステル繊維を撚糸して生コードとし、生コードそのまま、または生簾反に製織した後接着剤処理して得られる。通常のカーカス用タイヤコードに用いる生コードは、SまたはZ方向に下撚りした後、2本または3本の下撚りコードを合わせて下撚りと反対方向に通常同数の上撚りをかけ諸撚りコードとしたものである。次いで該生コードを経糸とし、緯糸に綿糸、またはポリエステル繊維に綿糸をカバリングして緯糸とし、生簾反に製織する。次に、該生簾反を接着剤処理してディップ反が得られる。
一方、ホースやベルト、およびキャッププライコードの場合には、下撚りをかけ、下撚りコードのまま、あるいは前記と同様、2本または3本合わせて下撚りと反対方向に通常同数の上撚りをかけて諸撚りコードとし、コード形態のまま接着剤処理してディップコードとする。
本発明において、処理剤皮膜が被覆されたゴム補強用ポリエステル繊維コードとは、上記ディップ反およびディップコードの両者を指す。
本発明のポリエステル繊維コードは、該コードの表層部に付着せしめたオキサゾリン基を含む化合物、およびクロロ変性レゾルシンを含む第1処理剤皮膜、更にその外層に付着せしめたレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物とゴムラテックス成分を含む第2処理剤皮膜を有することが本発明ゴム補強用ポリエステル繊維コードの特徴であり、それによって本発明効果を得ることができる。即ち、本発明のゴム補強用ポリエステル繊維コードは、ポリエステル繊維とレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物とゴムラテックスとの接着反応、およびレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物とゴムラテックスとゴムとの接着反応等を阻害することなく、低分子量アミン化合物や水分子のポリエステルコード内への浸透を抑え、その結果、耐熱接着性および耐熱強力保持性の向上が達成される。
本発明における第1処理剤は、オキサゾリン基を含む化合物およびクロロ変性レゾルシンを必須成分とするもので、このうちいずれかが欠けても本発明の効果が発現されない。
本発明で使用するオキサゾリン基を含む化合物とは、一般の有機化合物または有機ポリマー、オリゴマーを主骨格とした物質の末端または側鎖にオキサゾリン基(好ましくは2−オキサゾリン基)を含む化合物をいう。オキサゾリン基は、その骨格に1つまたは2つ以上持つことができるが、第1処理剤の接着性能の向上のためには反応性官能基であるオキサゾリン基を多く持つ方がより好ましい。オキサゾリン基含有物質の主鎖の骨格としては、炭化水素鎖、エチレングリコール鎖、ビスフェノールA等のビスフェノール類やフェノール樹脂、ノボラック樹脂、レゾール樹脂などの初期重合物が用いられ、それらの分子骨格中には芳香環や複素環を含む物質も使用される。さらに主成分モノマー及び/またはそれからなるポリマーやオリゴマーの末端や側鎖にオキサゾリン基を含有する物質も有用である。これらのモノマーとしては、スチレン、スチレン誘導体、アクリロニトリル、メタクリル酸エステル、メタクリル酸、エチレン、ブタジエン、アクリルアミドなどが用いられ、これらは単独のポリマー及び/またはオリゴマーとして、さらに共重合物質としても使用される。また、これらの混合物としても使用できる。オキサゾリン基を含む化合物の具体例としては、2−オキサゾリン基含有アクリル・スチレン系共重合体エマルジョン((株)日本触媒製“エポクロス”K2030E)などが挙げられる。
オキサゾリン基含有物質の形態としては、液状、溶融状、固体またはこれらを溶解しうる水や有機溶媒中での溶液状、さらに水などに分散した懸濁液状(エマルジョン粒子、ラテックス粒子状など)で使用される。例えばかかる化合物をそのままあるいは必要に応じて少量の溶媒に溶解したものを、公知の乳化剤、例えばアルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、ジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物等を用いて乳化又は溶解する方法を用いてもよい。
本発明で用いるクロロ変性レゾルシンとは、パラクロロフェノールとホルマリンおよびレゾルシンを縮合した化合物であり、下記一般式で表される化合物である。
Figure 2010053465
ただし、式中のWはCH、またはS、S−Sを、X、Yの少なくとも一部はClを示し、残りはBr、I、H、OHおよびC〜Cのアルキル基から選ばれた基を示し、mは1〜15の整数である。上記式で示されるクロロ変性レゾルシンは、ハロゲン化フェノール化合物とホルムアルデヒドとの初期縮合物、硫黄変性レゾルシンとホルムアルデヒドとの初期縮合粒またはハロゲン化硫黄変性レゾルシンとホルムアルデヒドとの初期縮合物である。
これらクロロ変性レゾルシンの調整方法は特に限定されないが、例えば、パラクロロフェノール、オルソクロロフェノール、パラブロモフェノール、パラヨウドフェノール、オルソクレゾール、パラクレゾール、パラターシャルブチルフェノールおよび2,5−ジメチルフェノールなどが出発原料として挙げられ、なかでもパラクロロフェノール、パラブロモフェノール、パラクレゾール、およびパラターシャルブチルフェノールが好ましく、とくにパラクロロフェノールがより好ましく用いられる。
このような出発原料をアルカリ触媒存在下にホルムアルデヒドと縮合させることによって、または、出発原料を予め酸触媒の存在下で反応させ得られた縮合物をアルカリ触媒の存在下でホルムアルデヒドと反応させることによって、フェノール系化合物を得ることができる。
クロロ変性レゾルシンの具体例としては、2,6−ビス(2’,4’−ジヒドロキシ−フェニルメチル)−4−クロロフェノール(トーマスワン(株)製“カサボンド”、ナガセケムテックス(株)製“デナボンド”など)が挙げられるが、なかでも特にベンゼン核を3以上有するクロロフェノール化合物を主成分とするものが接着性および工程通過性の点から好ましく用いられる。
本発明において、第1処理剤皮膜にはポリビニルアルコールが含まれることが好ましい。
本発明において用いられるポリビニルアルコールは、例えば、ビニルエステルを重合して得られたポリビニルエステルをけん化することにより製造される。また、ポリビニルアルコールの主鎖に不飽和カルボン酸またはその誘導体、不飽和スルホン酸またはその誘導体、炭素数2〜30のα−オレフィンなどを5モル%未満の割合でグラフト共重合した変性ポリビニルアルコールや、ビニルエステルと不飽和カルボン酸またはその誘導体、不飽和スルホン酸またはその誘導体、炭素数2〜30のα−オレフィンなどを15モル%未満の割合で共重合した変性ポリビニルエステルをけん化することにより製造される変性ポリビニルアルコールや、未変性または変性ポリビニルアルコールをホルマリン、ブチルアルデヒド、ベンズアルデヒドなどのアルデヒド類で水酸基の一部を架橋したいわゆるポリビニルアセタール樹脂などを挙げることができる。前記のビニルエステルとしては、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニルなどが例示される。これらの中でも特に、酢酸ビニルが好ましい。
変性ポリビニルアルコールに使用されるコモノマーは、主としてポリビニルアルコールの変性を目的に共重合させるもので、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテンなどのオレフィン類;アクリル酸およびその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシルなどのアクリル酸エステル類;メタクリル酸およびその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシルなどのメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩、N−メチロールアクリルアミドおよびその誘導体などのアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩、N−メチロールメタクリルアミドおよびその誘導体などのメタクリルアミド誘導体;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニルアミド類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル類;酢酸アリル、塩化アリルなどのアリル化合物;マレイン酸およびその塩またはそのエステル;イタコン酸およびその塩またはそのエステル;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニルなどを挙げることができる。これらの中でもα−オレフィンが好ましく、特にエチレンが好ましい。変性ポリビニルアルコールの変性量は15モル%未満であるのが好ましい。
本発明に用いるポリビニルアルコールは、けん化度が70〜90mol%であることが好ましく、さらに好ましくは70〜80mol%であることが良い。70mol%未満であると反応性官能基の不足から接着性が不十分となることがあり、90mol%を越えると溶解性が悪く、製造プロセス上不利になることや、湿熱時の接着性が悪化することがある。
前記けん化度とは、けん化によりビニルアルコール単位に変換されうる単位の中で、実際にビニルアルコール単位にけん化されている単位の割合を示したものである。なお、PVAのけん化度は、JIS記載の方法により測定を行った。
また、本発明のゴム補強用ポリエステル繊維コードの第1処理剤皮膜には、耐熱接着性向上の観点から、エポキシ化合物、ゴムラテックス、ブロックドイソシアネート化合物からなる群から選択される少なくとも1種の成分を含むことにより、効果をより向上させることができる。
本発明に使用できるエポキシ化合物は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものである。
分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物は、例えば、分子内に水酸基を有する化合物から得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、分子内にアミノ基を有する化合物から得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、分子内にカルボキシル基を有する化合物から得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、分子内に不飽和結合を有する化合物から得られる環式脂肪族エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアネートなどの複素環式エポキシ樹脂、あるいはこれらから選ばれる2種類以上のタイプが分子内に混在するエポキシ樹脂などである。
グリシジルエーテル型エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンのようなハロゲン含有エポキシド類との反応により得られるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールFと前記ハロゲン含有エポキシド類との反応により得られるビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニルと前記ハロゲン含有エポキシド類との反応により得られるビフェニル型エポキシ樹脂、レゾルシノールと前記ハロゲン含有エポキシド類との反応により得られるレゾルシノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールSと前記ハロゲン含有エポキシド類との反応により得られるビスフェノールS型エポキシ樹脂、多価アルコール類と前記ハロゲン含有エポキシド類との反応生成物であるポリエチレングリコール型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、ビス−(3,4−エポキシ−6−メチル−ジシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシシクロヘキセンエポキシドなどの不飽和結合部分を酸化して得られるエポキシ樹脂、その他ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、およびこれらのハロゲンあるいはアルキル置換体などを使用することができる。
中でも、ゴム補強用ポリエステル繊維コードの耐熱接着性を効果的に向上できるエポキシ化合物は、芳香族ポリエポキシド化合物である。該芳香族ポリエポキシド化合物は、前記のポリエポキシド化合物の内、分子中に少なくとも一個の芳香環と少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物である。このような芳香族ポリエポキシド化合物の具体例としては、多価フェノール類とエポクロルヒドリンの如きハロゲン含有エポキシド類との反応生成物、例えば、レゾルシン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルメタン、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂等とエピクロルヒドリンとの反応生成物、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応生成物である芳香族エポキシ樹脂等を挙げることができる。
本発明に使用できるゴムラテックスは、例えば、天然ゴムラテックス、ブタジエンゴムラテックス、スチレン・ブタジエン・ゴムラテックス、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンゴムラテックス、ニトリルゴムラテックス、水素化ニトリルゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックス、クロロスルホン化ゴムラテックス、エチレン・プロピレン・ジエンゴムラテックス等が挙げられ、これらを単独、又は併用して使用することが出来る。中でも、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンゴムラテックスを単独、又は他のものと併用して使用することが好ましい。さらに好ましくは、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンゴムラテックスに、エチレン系不飽和酸が共重合されてなる変性ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンゴムラテックスを単独、又は他のものと併用して使用することが好ましい。
ここで用いられるエチレン系不飽和酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、ブテントリカルボン酸などの不飽和カルボン酸、イタコン酸モノエチルエステル、フマル酸モノブチルエステル、マレイン酸モノブチルエステルなどの不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステル、およびアクリル酸スルホエチルナトリウム塩、メタクリル酸スルホプロピルナトリウム塩、アクリルアミドプロパンスルホン酸などの不飽和スルホン酸またはそのアルカリ塩などが挙げられ、これらは一種もしくは二種以上を組み合わせて使用することができる。
なお、カルボキシル基はエチレン性不飽和酸エステル単量体またはエチレン系不飽和酸無水物単量体を共重合した後に加水分解することによってラテックスに導入してもよい。エチレン系不飽和酸エステル単量体やエチレン系不飽和酸無水物単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、ブテントリカルボン酸などの不飽和カルボン酸のモノ、ジ、又はトリエステル、およびマレイン酸無水物などが例示され、これらの一種または二種以上を組み合わせて使用することができる。
また、本発明で用いられるブロックドポリイソシアネート化合物とは、ポリイソシアネート化合物とブロック化剤との付加化合物であり、加熱によりブロック化剤成分が遊離して活性なポリイソシアネート化合物を生ぜしめるものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えばトリレンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等のポリイソシアネート、あるいはこれらポリイソシアネートと活性水素原子を2個以上有する化合物、例えばトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等とをイソシアネート基(−NCO)とヒドロキシル基(−OH)の比が1を超えるモル比で反応させて得られる末端イソシアネート基含有のポリオールアダクトポリイソシアネート等が挙げられる。特にトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートの如き芳香族ポリイソシアネートが優れた性能を発現するので好ましい。
ブロック化剤としては、例えばフェノール、チオフェノール、クレゾール、レゾルシン等のフェノール類、ジフェニルアミン、キシリジン等の芳香族第2級アミン類、フタル酸イミド類、カプロラクタム、バレロラクタム等のラクタム類、アセトキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類および酸性亜硫酸ソーダ等がある。
かかるブロックドポリイソシアネート化合物は通常乳化液、分散液又は水溶液として使用される。乳化液又は分散液にするには、例えばかかるブロックドポリイソシアネートを、そのままあるいは必要に応じて少量の溶媒に溶解した後、公知の乳化剤、例えばアルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、ジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物等を用いて乳化又は分散すればよい。
本発明のゴム補強用ポリエステル繊維コードは、オキサゾリン基を含む化合物およびクロロ変性レゾルシンを含む第1処理剤皮膜が被覆されてなるが、第1処理剤の全固形分に対するオキサゾリン基を含む化合物の割合は、10〜50重量%であることが好ましく、より好ましくは20〜40重量%であることが良い。10重量%未満であると、接着力が不足することがあり、50重量%を超えると、コードが硬くなり、耐疲労性が悪化することがある。また、第1処理剤の全固形分に対するクロロ変性レゾルシンの割合は、10〜50重量%であることが好ましく、より好ましくは20〜40重量%であることが良い。10重量%未満であると、接着力が不足することがあり、50重量%を超えると、コードが硬くなり、耐疲労性が悪化することがある。また、オキサゾリン基を含む化合物と、クロロ変性レゾルシンの配合比は、固形分重量で、20:80〜80:20であることが好ましく、さらに好ましくは30:70〜70:30であるのが良い。この範囲をはずれると、耐熱接着性が不足することがある。
エポキシ化合物、ゴムラテックス、ブロックドイソシアネート化合物からなる群から選択される少なくとも1種の成分の配合量は、第1処理剤の全固形分に対し、5〜50重量%であることが好ましく、より好ましくは10〜40重量%であることが良い。この範囲であることが耐熱接着力向上の観点から好ましい。
ポリエステル繊維に対する第1処理剤皮膜の固形分付着量は、繊維重量に対して0.5〜10重量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜5重量%の範囲である。固形分付着量が低すぎると、接着性が低下し、一方固形分付着量が高すぎると、コードが硬くなり、耐疲労性が低下するため好ましくない。
本発明のゴム補強用ポリエステル繊維コードの第2処理剤皮膜の主成分は、レゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物とゴムラテックスからなる。該レゾルシン・ホルムアルデヒドは、特にアルカリ触媒下で初期縮合して得たレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物を用いて調製することが好ましい。例えば、水酸化ナトリウムなどのアルカリ性化合物を含むアルカリ性水溶液内に、レゾルシンとホルムアルデヒドを添加混合して、室温で数時間静置し、レゾルシンとホルムアルデヒドを初期縮合させた後、ゴムラテックスを加えて混合エマルジョンとする方法により調製される。
レゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物は、レゾルシンとホルムアルデヒドのモル比が1:0.3〜1:5、好ましくは1:0.75〜1:2.0の範囲のものを用いる。ホルムアルデヒドのモル比が前記範囲よりも少ないと、処理コードが粘着性を帯び、処理機の汚れを招くことがあり、一方、ホルムアルデヒドのモル比がこの範囲よりも多いと、接着性が不十分になる。
本発明のゴム補強用ポリエステル繊維コードにおける第2接着処理剤皮膜は、レゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物とゴムラテックスを主成分とするが、該接着処理剤皮膜は、レゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物と共に、前述したクロロ変性レゾルシンを含むことによって更にポリエステル繊維の劣化を抑制できるようになる。
レゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックスの調製に用いるゴムラテックスとしては、例えば、天然ゴムラテックス、ブタジエンゴムラテックス、スチレン−ブタジエン−ゴムラテックス、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジン−ゴムラテックス、ニトリルゴムラテックス、水素化ニトリルゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックス、クロロスルホン化ゴムラテックス、エチレン・プロピレン・ジエンゴムラテックス等が挙げられ、これらを単独、又は併用して使用することが出来る。中でも、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンゴムラテックスを単独、又は他のものと併用して使用することが好ましい。さらに好ましくは、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジン−ゴムラテックスに、エチレン系不飽和酸が共重合されてなるスチレン−ブタジエン−ビニルピリジン−エチレン系不飽和酸単量体共重合ラテックス(A)を単独、又は他のものと併用して使用することが好ましい。
ここで用いられるエチレン系不飽和酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、ブテントリカルボン酸などの不飽和カルボン酸、イタコン酸モノエチルエステル、フマル酸モノブチルエステル、マレイン酸モノブチルエステルなどの不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステル、およびアクリル酸スルホエチルナトリウム塩、メタクリル酸スルホプロピルナトリウム塩、アクリルアミドプロパンスルホン酸などの不飽和スルホン酸またはそのアルカリ塩などが挙げられ、これらは一種もしくは二種以上を組み合わせて使用することができる。
なお、カルボキシル基はエチレン性不飽和酸エステル単量体またはエチレン系不飽和酸無水物単量体を共重合した後に加水分解することによってラテックスに導入してもよい。エチレン系不飽和酸エステル単量体やエチレン系不飽和酸無水物単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、ブテントリカルボン酸などの不飽和カルボン酸のモノ、ジ、又はトリエステル、およびマレイン酸無水物などが例示され、これらの一種または二種以上を組み合わせて使用することができる。
さらに、本発明の第2処理剤皮膜には、ガラス転移点(Tg)が、−20℃〜35℃であるスチレン−ブタジエン−エチレン系不飽和酸単量体共重合ラテックス(B)、より好ましくは−10℃〜30℃であるスチレン−ブタジエン−エチレン系不飽和酸単量体共重合ラテックスが含まれていることが、耐熱接着性向上の観点から好ましい。
ガラス転移点(Tg)が、−20℃未満であると、ゴムとの接着力が不足することがあり、35℃を越えると、コードが硬く、耐屈曲疲労性が悪化することがある。
スチレン−ブタジエン−ビニルピリジン−エチレン系不飽和酸単量体共重合ラテックス(A)と、スチレン−ブタジエン−エチレン系不飽和酸単量体共重合ラテックス(B)を混合して使用する場合の好ましい混合比は、固形分重量比で、(A)/(B)=80/20〜20/80、より好ましくは25/75〜50/50である。スチレン−ブタジエン−ビニルピリジン−エチレン系不飽和酸単量体共重合ラテックス(B)が該範囲以上であると、工程通過性が悪化することがあり、また、スチレン−ブタジエン−エチレン系不飽和酸単量体共重合ラテックス(A)が、該範囲以上であると、接着性が低下することがある。
レゾルシン・ホルムアルデヒド・ゴムラテックスにおけるレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物とゴムラテックスの配合比率は、固形分重量比で1:3〜1:8であることが好ましく、1:4〜1:6の範囲であることがさらに好ましい。この範囲を外れると接着性が不十分になることがある。また、レゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックスと、上記不飽和酸単量体共重合ラテックスの配合比率は、固形分重量比で、10:1〜10:5であることが好ましく、より好ましくは10:2〜10:4であることが良い。この範囲を外れると接着性が不十分になることがある。
また、本発明のゴム補強用ポリエステル繊維コードの接着剤には、接着性をさらに向上させる観点から、ブロックドポリイソシアネート化合物、および/またはエチレンイミン化合物を含有させることができる。
本発明に使用できるブロックドポリイソシアネート化合物、および/またはエチレンイミン化合物としては、トリレンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートなどのポリイソシアネート化合物と、フェノール、クレゾール、レゾルシンなどのフェノール類、ε−カプロラクタム、バレロラクタムなどのラクタム類、アセトキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム類およびエチレンイミンなどのブロック化剤との反応物が挙げられる。これらの化合物のうち、特にε−カプロラクタムでブロックされた芳香族ポリイソシアネート化合物、およびジフェニルメタンジエチレン尿素などの芳香族エチレン尿素化合物が好ましく用いることができる。
本発明のポリエステル繊維コードにおいて、第2接着処理剤皮膜の固形分付着量は、1〜10重量%の範囲であり、好ましくは1.5〜5重量%の範囲である。固形分付着量が低すぎると、接着性が低下し、一方固形分付着量が高すぎると、コードが硬くなり、耐疲労性が低下したり、また、工程中のロールに固形分がガムアップし、操業安定性が悪化する。
また、前記ポリエステル繊維コードは、下撚り、および上撚りを施された撚糸コードであって、下撚り係数K1が、600≦K1≦2000であることが好ましく、より好ましくは900≦K1≦1900、さらに好ましくは1200≦K1≦1800であるのが良い。下撚り係数が好ましい範囲を外れると、高温暴露後の接着力が低下したり、ゴム中での耐疲労性が悪化することがある。また、上撚り係数K2は、800≦K2≦2500であることが好ましく、より好ましくは1200≦K2≦2400、さらに好ましくは1600≦K2≦2300であるのが良い。上撚り係数が好ましい範囲を外れると、高温暴露後の接着力が低下したり、ゴム中での耐疲労性が悪化することがある。(ただし、K=T×D1/2、T:単位長さあたりの撚り数(回/10cm)、D:表示デニール)
本発明のポリエステル繊維コードの強度は、5.0〜7.0cN/dTexであることが必要であり、好ましくは5.3〜6.7cN/dTexである。5.0cN/dTex未満であると、キャッププライ用途としてタイヤ周方向の応力を担うことができない。7cN/dTex以上のコードは原糸の生産安定性、コスト面から実用的なタイヤコードが得られない。ここで、コード強度とは、コード強力をコード構成上の基準繊度(例えば1100dTexの原糸を2本撚りあわせたものなら2200dTex)で割り返した値である。
また、タイヤコードの弾性率の指標として、2.0cN/dTex荷重時の伸度(以下、中間伸度と称する)を用い、本発明のポリエステル繊維コードは、2.0〜4.0%であることが必要である。好ましくは2.1〜3.8%、より好ましくは2.2〜3.6%である。中間伸度が2.0%未満であると、ゴム中での耐屈曲疲労性が悪化することがあり、4.0%を越えると、キャッププライ用コードとして用いた場合に、高速走行性、ロードノイズが悪化することがある。
さらに、本発明のポリエステル繊維コードの乾熱収縮率(150℃×30分処理、以下、乾収と称する)は、2.0〜5.0%であることが必要であり、好ましくは2.2〜4.8%、より好ましくは2.4〜4.6%であることが良い。乾収が2.0%未満であると、タイヤ整形時の熱によるコード収縮が小さく、キャッププライコードとしての締め付け性が悪化することがあり、走行中のコード剥離に繋がる可能性がある。乾収が5.0%以上であると、タイヤ整形時のコード収縮が大きく、ゴムへの食い込みが大きくなり、キャッププライ下部に配置されたベルト層と接触することがあり、耐疲労性が悪化することがある。
上記によって特徴づけられる本発明のポリエステル繊維コードは、ゴム加硫工程やゴム製品使用中、長時間高温に曝された時の耐熱接着性、耐熱強力保持性が著しく改善される。本発明によるポリエステル繊維コードで補強されたゴム製品は、タイヤ、ベルトおよびホースとして用いた時に長期間の過酷な使用に耐えることができる。特に、従来のポリエステル繊維コードでは適用できなかったラヂアルタイヤのキャッププライコードとして好適である。
次に、本発明のゴム補強用ポリエステル繊維コードの製造方法について述べる。本発明のゴム補強用ポリエステル繊維コードは、接着剤が付与されたゴム補強用ポリエステル繊維コードを2浴ディップ法によって製造する方法において、オキサゾリン基を含む化合物およびクロロ変性レゾルシンを含む第1処理剤を付与し、2浴目でレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物とゴムラテックスを含む第2処理剤を付与することによって得られる。
本発明のゴム補強用ポリエステル繊維コードの製造方法に用いられるポリエステル繊維は、前記した特性、即ち、(1)固有粘度(IV)、(2)カルボキシル末端基(COOH)、(3)ジエチレングリコ−ル(DEG)、(4)強度(T)=6.0〜10.0cN/dtex、(5)伸度(E)=8〜20%、(6)中間伸度(ME)、および(7)乾熱収縮率(ΔS150℃)を満足するものであることが好ましい。
該ポリエステル繊維は、次いで撚糸して前記した撚り係数の生コードとなし、次いで同様に簾織り用織機を用いてコード簾反とする。ホース、ベルトおよびキャッププライコードの場合には下撚りコードまたは諸糸コードのまま、製織することなく次のディッピング工程に供する。
また、本発明の製造方法においては、前記ポリエステル繊維コードは、下撚り、および上撚りを施された撚糸コードを使用することが好ましく、下撚り係数Kが、600≦K≦2000であることが好ましく、より好ましくは900≦K≦1100、さらに好ましくは1200≦K≦1800であるのが良い。下撚り係数が好ましい範囲を外れると、高温暴露後の接着力が低下したり、ゴム中での耐疲労性が悪化することがある。また、上撚り係数Kは、800≦K≦2500であることが好ましく、より好ましくは1200≦K≦2400、さらに好ましくは1600≦K≦2300であるのが良い。上撚り係数が好ましい範囲を外れると、高温暴露後の接着力が低下したり、ゴム中での耐疲労性が悪化することがある。(ただし、K=T×D1/2、T:単位長さあたりの撚り数(回/10cm)、D:表示デニール)。
本発明は2浴ディップ法によって製造することが可能で、1浴目でオキサゾリン基を含む化合物およびクロロ変性レゾルシンを含む第1処理剤を付与し、2浴目でレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物とゴムラテックスを含む第2処理剤を付与する。
1浴目で用いる、オキサゾリン基を含む化合物、クロロ変性レゾルシン、ポリビニルアルコール、エポキシ化合物、ゴムラテックス、ブロックドイソシアネート化合物は前記したものと同じものを用いることができる。
また、2浴目で用いるゴムラテックスは、前記したものと同じものを用いることができる。
1浴目でオキサゾリン基を含む化合物およびクロロ変性レゾルシンを含む第1処理剤を付与する方法は、該成分を含む接着剤を水溶液または水分散体として調整したディップ液に、ポリエステル繊維生コードまたは生コード簾を浸漬し、次いで乾燥、熱処理することによって行われる。該1浴目のディップ液の総固形分濃度は、2〜20重量%、好ましくは3〜15重量%の範囲で使用することがよい。該固形分濃度が低すぎると接着剤表面張力が増加し、ポリエステル繊維表面に対する均一付着性が低下すると共に、固形分付着量が低下することによって接着性が低下し、また、該固形分濃度が高すぎると固形分付着量が多くなり過ぎるため、コードが硬くなり、耐疲労性が低下することがあり、好ましくない。
また、1浴目のディップ液には分散剤、すなわち界面活性剤を該ディップ液の全固形分に対し、10重量%以下、好ましくは、5重量%以下で用いることが好ましい。10重量%を越えると接着性が低下する。
ポリエステル繊維に対する1浴目のディップ液の固形分付着量は、繊維重量に対して0.5〜10重量%の範囲であり、好ましくは1〜5重量%の範囲である。固形分付着量が低すぎると、接着性が低下し、一方固形分付着量が高すぎると、コードが硬くなり、耐疲労性が低下することがある。該ポリエステル繊維に対する固形分付着量を制御するためには、例えば、ディップ液に浸漬した後圧接ローラーによる絞り、スクレバー等によるかき落とし、圧力空気による飛ばし、吸引等の方法を使用することができる。また、付着量を多くするために、複数回付着させることもできる。
1浴目のディップ液を付与したポリエステル繊維コードは、70〜150℃で、0.5〜5分間乾燥後、200〜255℃で0.5〜5分間熱処理して繊維表面に接着剤皮膜を形成させるが、場合によっては乾燥を省略することもできる。
上記熱処理の温度が200℃未満では、繊維上への接着剤皮膜の形成およびゴムとの反応が不十分で、接着力が不十分となることがあり、一方、255℃を越える高温では、繊維上に形成された処理剤皮膜が劣化して接着力が低下したり、ポリエステル繊維が熱劣化し、強力が低下するため、好ましくない。
上記のように1浴目のディップ液を付与した後、引き続き、レゾルシン・ホルムアルデヒド・ゴムラテックスを含む第2処理剤を付着させる。
レゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックスを含む2浴目ディップ液は、固形分濃度が5〜30重量%であり、好ましくは10〜25重量%である。5重量%未満であると、2浴目のディップ液の固形分付着量が不十分となり、接着力が十分でないことがある。固形分濃度が30重量%を超えると、該ディップ液の保存安定性が悪くなり、固形分が凝集して濃度変化がおこり、ポリエステル繊維コード表面にディップ液を均一に付着させることが困難となる。
ポリエステル繊維コードに対する該2浴目の固形分付着量は、1.0重量%〜10重量%の範囲であり、好ましくは1.5重量%〜5重量%の範囲である。固形分付着量が低すぎると、接着性が低下することがあり、一方固形分付着量が高すぎると、コードが硬くなり、耐疲労性が低下することがあり、また、処理工程上でのロールに固形分のガムアップが生じ、操業安定性が悪化することがある。
該ポリエステル繊維に対する固形分付着量を制御するには、例えば、圧接ローラーによる絞り、スクレバー等によるかき落とし、圧空による吹き飛ばし、吸引等の方法を使用することができる。また、付着量を多くするために、複数回付着させてもよい。
2浴目ディップ液を付与したポリエステル繊維コードは、70〜150℃で、0.5〜5分間乾燥した後、200〜255℃で0.5〜5分間熱処理することによって、繊維表面に接着剤皮膜を形成できるが、場合によっては乾燥を省略することもできる。熱処理の温度が200℃未満では、繊維上への接着剤皮膜の形成およびゴムとの接着が不十分となることがあり、一方、255℃を越える高温では、繊維上に形成された処理剤皮膜が劣化して接着力が低下したり、ポリエステル繊維が熱劣化を起こし、強力低下するため、好ましくない。
上記ディップ処理は、ドライ処理、ホット処理、ノルマライズ処理等から構成され、本発明のゴム補強用ポリエステルコードの所定の中間伸度を得るには、1浴目処理時のホット処理時の張力(1浴目ホットストレッチ張力)が、0.71cN/dTex〜1.20cN/dTex、かつ2浴目処理時のノルマライズ処理時の張力(2浴目ノルマライジング張力)が、0.10cN/dTex〜0.70cN/dTexであることが好ましい。この張力未満であるとコードの弾性率を充分に向上させることが困難となる。またこの張力を超えると、コードのケバ立ちなどコード品位が悪化することがある。ただし、コードの高弾性化方法は、これに限られるものではなく、コードの低撚り化等他の方法であってもよい。
上記2浴ディップ法によって製造された本発明のゴム補強用ポリエステル繊維コードは、オキサゾリン基を含む化合物およびクロロ変性レゾルシンを含む第1処理剤層とレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物とゴムラテックスを含む第2処理剤層からなるゴム補強用ポリエステル繊維コードとなる。そして、耐熱接着性および耐熱強力保持性に優れ、従来のタイヤカーカス材、ホースおよびベルト等のゴム資材として用いたとき、長期間、過酷な使用に耐え、従来適用できなかったキャッププライコードとして好適に使用できる。
以下、実施例により本発明についてさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、本発明においてゴム補強用ポリエステル繊維コードの物性の測定方法、評価方法は以下に示すとおりである。
(1)RPU(樹脂付着量)
一定長さあたりの撚糸コードの重量を予め測定しておき、接着剤処理後の同一長さのコード重量を測定することで、差分としての樹脂付着量を計算した。
(2)コード物性(強力・強度・切断伸度・中間伸度)
JIS L−1017 8.5(2002)に従って、20℃、65%RHの温湿度管理された恒温室で24時間以上放置後、テンシロン引張試験機で強伸度を測定した。コードの中間伸度は、2.0cN/dtex応力時伸度とした。
(3)コード物性(乾熱収縮率)
JIS L1017(2002)8.10(B法)の方法で測定した。加熱処理は150℃で30分行った。
(4)繊度
JIS L−1017 8.3(2002)に従って、20℃、65%RHの温湿度管理された恒温室で24時間以上放置後、繊度を測定した。
(5)T−初期接着力およびT−耐熱接着力
処理コードとゴムとの接着力を示すものである。JIS L−1017(1983)の接着力−A法に準じて、処理コードを未加硫ゴムに埋め込み、加圧下で初期接着力は、150℃、30分、耐熱接着力は170℃、70分間プレス加硫を行い、放冷後、コードをゴムブロックから300mm/minの速度で引き抜き、その引き抜きに要した加重をN/cmで表示した。
なお、T−接着力の測定に使用したゴムコンパウンドの組成は下記のとおりである。
天然ゴム (RSS#1):80(重量部)
SBR(JSR1501):20(重量部)
RFカーボンブラック:50(重量部)
ステアリン酸:2(重量部)
硫黄:2(重量部)
亜鉛華:5(重量部)
2,2’−ジチオベンゾチアゾール:4(重量部)
ナフテン酸プロセスオイル:3(重量部)。
(6)ゴム中耐疲労性
JIS−L1017 附属書1 2.2.2(2002)のディスク疲労強さ(グッドリッチ法)により評価した。処理コード2本をタイヤ用ゴム中に埋め込み、150℃で30分間加硫して、ゴムコンポジットを作成する。この試験片を圧縮6.3%、伸張12.6%を1サイクルとする変形を2600サイクル/分で48時間与えた後、ゴムからコードを取り出して疲労後の破断強力を測定し、該疲労試験前後の保持率で表したものである。
(7)タイヤ高速耐久性
ドラム試験機により、JIS D4230に規定される高速耐久試験を終了した後、さらに30分毎に速度を10km/h単位で増加させてタイヤが破壊するまでの走行距離を測定した。評価は、従来キャッププライ用に使用されているナイロン66処理コード(ナイロン66、1400T/2、37×37(t/10cm)、2cN/dTex時伸度7.8%)をキャッププライに適用したタイヤの評価結果を100とする指数で示した。指数値が大きいほど高速耐久性に優れていることを意味する。
(8)タイヤロードノイズ
タイヤサイズが195/65R15で空気入りラジアルタイヤを製作し、以下の試験を行った。タイヤに空気圧200kPaを充填し、排気量2000ccの乗用車に装着し粗い路面を速度60km/hで走行したときの車内騒音(db)を測定した。評価は、従来キャッププライ用に使用されているナイロン66処理コード(ナイロン66、1400T/2、37×37(t/10cm)、2cN/dTex時伸度7.8%)をキャッププライに適用したタイヤの評価結果を100とする指数で示した。指数値が小さいほどロードノイズが低く、優れていることを示す。
(9)ガラス転移点(Tg)
示差走査熱量計装置(DSC−50:島津製作所製)を用いて測定した。予め、常温にて乾燥させたラテックス10mgを所定のアルミニウム−パンに封入し、−50℃から100℃まで速度5℃/minで昇温し、各ラテックスのガラス転移点を測定した。
(10)ホットストレッチ張力、ノルマライジング張力
1浴目ディップ処理のホット処理工程において、走行中のコードをデジタルテンションメーター(シンポ工業株式会社製、DTM10KB)を用いて張力を測定し、コードの繊度で除した値をホットストレッチ張力(単位cN/dTex)とした。また、ノルマライジング張力は、2浴目ディップ処理のノルマライジング処理工程において、同様の方法で張力を測定し、コードの繊度で除した値をノルマライジング張力(単位cN/dTex)とした。
(実施例1〜5、比較例1〜5)
(A)オキサゾリン基含有アクリル・スチレン系共重合体エマルジョン(“エポクロス”K2030E(株式会社日本触媒製))、(B)クロロ変性レゾルシン(“デナボンド”(ナガセケムテックス株式会社製))、(C)スチレン−ブタジエン−ビニルピリジン−エチレン系単量体共重合ラテックス(“ニッポール”2518FS(日本ゼオン株式会社製))、(D)ブロックイソシアネート化合物(“エラストロン”BN69(第一工業製薬株式会社))、(E)ポリビニルアルコール(“ポバール”PVA−403(株式会社クラレ製))を、それぞれ表1および表2に示す固形分重量比にて混合し、総固形分量5.0重量%の接着剤を得た(第1処理剤)。なお、表1および表2における記号内容は以下に示すとおりである。
A:オキサゾリン基含有アクリル・スチレン系共重合体エマルジョンの配合割合(重量部)
B:クロロ変性レゾルシンの配合割合(重量部)
C:スチレン−ブタジエン−ビニルピリジン−エチレン系単量体共重合ラテックスの配合割合(重量部)
D:ブロックイソシアネート化合物の配合割合(重量部)
E:ポリビニルアルコールの配合割合(重量部)
レゾルシン/ホルマリンのモル比を1/1.4の割合で、苛性ソーダの存在下混合し、固形分濃度が10%となるように調整し、2時間熟成することで、レゾルシン/ホルマリンの初期縮合物を得た。次にこの初期縮合物(RF)と、表1および表2に示すラテックスの混合物(L)を、RF/L=1/5(固形分重量比)の割合で混合し、24時間熟成した。ここで、表1および表2における記号内容は、以下のラテックス成分の固形分重量部を示す。
a:スチレン−ブタジエン−ビニルピリジン−エチレン系不飽和酸単量体共重合ラテックス(PYRATEX−LB(日本エイアンドエル社製))
b:スチレン−ブタジエン−ビニルピリジン−エチレン系単量体共重合ラテックス(“ニッポール”2518FS(日本ゼオン株式会社製))
c:スチレン−ブタジエン−エチレン系不飽和酸単量体共重合ラテックス(SR100(日本エイアンドエル社製))、ガラス転移温度:25℃
d:スチレン−ブタジエン−エチレン系単量体共重合ラテックス(“ニッポール”LX110(日本ゼオン株式会社製))、ガラス転移温度:−47℃
さらに、クロロ変性レゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物(“デナボンド−E”(ナガセ化成製))を、上記レゾルシン・ホルマリン・ラテックスの固形分重量100重量部に対し、20部混合させ、さらに20時間熟成した。この混合物を水で希釈し、固形分重量15%の接着剤を得た(第2処理剤)。
1100dTexのポリエステルマルチフィラメント糸(東レ(株)製“テトロン”1100−240−705M)2本を、表1および表2に示す撚り数で、下撚りおよび上撚りの撚糸を施し、諸撚りの未処理コードとした。
該未処理コードを、コンピュートリーター処理機(CAリッツラー株式会社製)を用いて、前記の第1処理剤に浸漬した後、120℃で2分間乾燥し(ドライ処理)、引き続き240℃で1分間の熱処理(ホット処理)を行った。続いて、第2処理剤に浸漬した後、120℃で2分間乾燥し(ドライ処理)、引き続き240℃で0.5分間熱処理(ホット処理)を行い、さらに、240℃で0.5分間熱処理(ノルマライズ処理)を行った。ここで、1浴目ホット処理時の張力(ホットストレッチ張力)、2浴目ノルマライズ処理時の張力(ノルマライジング張力)はそれぞれ表1および表2に示す数値にて処理を行った。(比較例5では、第2処理剤は使用せず、熱処理のみを施した。)
得られた処理コードの各種物性、及び、未加硫ゴムに埋め込み加硫を行った後、T−初期接着力、T−耐熱接着力をそれぞれ測定した。その結果を表1および表2に示す。
また、得られたコードでタイヤを作製し、タイヤ評価を行った結果をあわせて表1および表2に示す。
Figure 2010053465
Figure 2010053465
表1および表2の結果のように、本発明による実施例1〜5の場合、従来のゴム補強用ポリエステル繊維(比較例1〜5)よりも、ゴム中での耐熱接着性が良好であり、さらにタイヤキャッププライ材として高速耐久性、ロードノイズが良好でゴム中耐疲労性が高いことがわかる。

Claims (8)

  1. ポリエステル繊維を、オキサゾリン基を含む化合物およびクロロ変性レゾルシンを含む第1処理剤皮膜で被覆し、次いでレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)を含む第2処理剤皮膜で被覆してなるゴム補強用ポリエステル繊維コードであって、下記物性を有するゴム補強用ポリエステル繊維コード。
    (A)強度:5.0〜7.0cN/dTex
    (B)2cN/dTex時伸度:2.0%〜4.0%
    (C)150℃×30分乾熱収縮率:2.0%〜5.0%
  2. 前記RFLに、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジン−エチレン系不飽和酸単量体共重合ラテックスを含む請求項1記載のゴム補強用ポリエステル繊維コード。
  3. 前記RFLに、ガラス転移点(Tg)が、−20℃〜35℃であるスチレン−ブタジエン−エチレン系不飽和酸単量体共重合ラテックスを含む請求項1または2に記載のゴム補強用ポリエステル繊維コード。
  4. 前記RFLに、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジン−エチレン系不飽和酸単量体共重合ラテックス(A)と、ガラス転移点(Tg)が−20℃〜35℃であるスチレン−ブタジエン−エチレン系不飽和酸単量体共重合ラテックス(B)を含むゴム補強用ポリエステル繊維コードであって、(A)と(B)の混合比が、(A)/(B)=80/20〜20/80(乾燥重量比)である請求項1に記載のゴム補強用ポリエステル繊維コード。
  5. 前記第1処理剤皮膜に、ポリビニルアルコールを含む請求項1〜4のいずれかに記載のゴム補強用ポリエステル繊維コード。
  6. 前記第1処理剤皮膜に、エポキシ化合物、ゴムラテックス、ブロックドイソシアネート化合物からなる群から選択される少なくとも1種の成分を含む請求項1〜5のいずれか記載のゴム補強用ポリエステル繊維コード。
  7. 1浴目ホットストレッチ張力が0.71cN/dTex〜1.20cN/dTex、かつ2浴目ノルマライジング張力が、0.10cN/dTex〜0.70cN/dTexの張力で処理されてなる請求項1〜6のいずれか記載のゴム補強用ポリエステル繊維コード。
  8. 請求項1〜7のいずれか記載のゴム補強用ポリエステル繊維コードをタイヤのキャッププライ部材に使用したタイヤ。
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