JP2010053374A - 金属溶射皮膜用の封孔処理剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】金属溶射皮膜上に、バインダー樹脂及び顔料を含む封孔処理剤であって、前記バインダー樹脂が、水溶性アミン樹脂硬化剤及び疎水性液状エポキシ樹脂からなり、顔料が、タルクからなり、タルクが、封孔処理剤組成物中5〜20質量%で含有される封孔処理剤にて封孔処理する。
【選択図】なし
Description
この傾向は溶射皮膜の膜厚が大きい程、顕著であり、その結果、浮き上がった溶射皮膜が剥離しやすくなるといった問題点があった。そこで、自己封孔されるまで金属溶射皮膜が海水等に濡れないようにすればよいが、自己封孔されるまで長い時間がかかるため、実用的でない。そこで、金属溶射皮膜上を塗料等で封孔処理させることが有効である。
水系化した防食塗料として、A)自己乳化型エポキシ樹脂、B)活性水素当量が60〜250g/当量であるポリアミン系硬化剤、C)常温で液状の炭化水素樹脂を必須成分として用い、上記のA成分に含まれるエポキシ基1当量に対する上記B成分に含まれる活性水素を0.7〜1.5当量とし、かつ上記のA成分とB成分との合計量100質量部に対する上記C成分の使用量を20〜200質量部とする水希釈性防食塗料組成物がある(特許文献1)。
本発明の封孔処理剤は、バインダー樹脂として、水溶性アミン樹脂硬化剤及び疎水性液状エポキシ樹脂とを有する。
疎水性液状エポキシ樹脂は、疎水性であり、かつ液状のものである。ここで、疎水性とは、水に対して溶解しない又は親水性を有さないことを意味する。水中に分散している乳化型エポキシ樹脂とは異なるエポキシ樹脂である。例えば、水に対する溶解性(25℃)として、3%以下、特に、1%以下の溶解性を示すものをいう。液状とは、常温(20〜25℃)で液状のエポキシ樹脂である。
本発明の疎水性液状エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂や、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、アルキルモノグリシジルエーテル、アルキルモノグリシジルエステル、アルキルジグリシジルエーテル、アルキルジグリシジルエステル、アルキルフェノールモノグリシジルエーテル、ポリグリコールモノグリシジルエーテル、ポリグリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここで、アルキルモノグリシジルエーテル等におけるアルキル基は、例えば、炭素数3〜15のアルキル基が好適である。このようなアルキル基としては、例えば、ネオペンチル基や、2−エチルヘキシル基などのアルキル基が好適に挙げられる。
本発明の封孔処理剤で使用される水溶性アミン樹脂硬化剤は、水溶性で、かつ疎水性液状エポキシ樹脂と反応し、硬化反応を生じる。本来、疎水性エポキシ樹脂は、水とはなじまないため、疎水性物質同士が集まろうとして、分離し易いが、水溶性アミン樹脂硬化剤が、疎水性液状エポキシ樹脂に対する乳化剤的な役割を果たし、液状の疎水性エポキシ樹脂を分子レベルで取り巻き、粒子を形成(エマルション化)する。このため、疎水性液状エポキシ樹脂を使用しても、均一に水溶性アミン樹脂と混和させることができる。
水溶性アミン樹脂硬化剤としては、例えば、具体的な商品名として現在上市されているフジキュアーFXH−927(富士化成工業(株)製)や、フジキュアーFXI−919(富士化成工業(株)製)、アデカハードナーEH−4163X(旭電化(株)製)、ベッコポックスEH613W/80WA(サーフェース・スペシャリティージャパン社製)、ベッコポックスEH623W/80WA(サーフェース・スペシャリティージャパン社製)等が好適に挙げられる。
水溶性アミン樹脂硬化剤は、疎水性液状エポキシ樹脂のエポキシ当量に対し、当量比で、例えば、0.50〜1.50、好ましくは、0.70〜1.30で使用することが好適である。
また、水溶性アミン樹脂は、23℃において加熱残分(以下、NVという)50%未満、好ましくは、NV40%以下でエマルションの形態に変化するものであることが好適である。NVの測定は、JIS K 5601−1−2に基づく方法で実施される。
本発明の封孔処理剤は、タルク物を含む。タルクは、本発明の封孔処理剤の質量に基づいて、例えば、5〜50質量%で含有されることが適切である。タルクの量が、5質量%未満では、耐水性が不良となり易く、一方、50質量%を超えると、塗装作業性が低下し易くなり、好ましくない。タルクの好ましい配合量は、10〜40質量%程度である。
好ましくは、タルクと併用して、沈降性硫酸バリウムを使用してもよい。これにより、良好な作業性が得られ易いなどの利点がある。
沈降性硫酸バリウムは、封孔処理剤の質量に基づいて、例えば、0〜40質量%、好ましくは、5〜30質量%で含まれることが好適である。更に、沈降性硫酸バリウムとタルクとの質量比率は、例えば、50:50〜0:100、好ましくは、1:0.5〜0:1であることが好適である。この範囲内において、防食塗膜としての優れた耐水性が得られる。
本発明の封孔処理剤は、被溶射基材(以下単に「基材」ともいう)に対して、金属溶射皮膜を形成した後の封孔処理に使用することが好ましい。
基材としては、例えば、ブリキ板や、ダル鋼板、みがき鋼板、黒皮鋼板、ケレンした錆鋼板、溶接鋼板、鋳物等の鉄素材;アルミニウム、亜鉛等の非鉄金属;ABS、PPO、塩化ビニル等のプラスチックス;スレート板、硅酸カルシウム板、セメント等の無機材料;其の他ガラス、木材、合板、あるいはこれら基材を塗料にて塗装したもの等、各種のものが各種挙げられる。
基材表面の粗面化は、従来から広く採用されているサンドブラストや、グリットブラストなどのブラスト処理により行ってもよいが、粉塵発生により作業環境が悪くなる等の問題点がある。従って、本発明では、特公平2−54422号公報等に記載されているように不溶性固体粒子を含有するプライマー組成物を基材表面に塗付することにより、多孔質のプライマー層を形成し、該表面を粗面化するのが好ましい。
固体粒子の例を挙げると、鋼や、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、鉄、珪素などの金属もしくはこれらの合金、又は酸化物、窒化物、炭化物等があり、更に具体的な例を挙げると、酸化アルミニウムや、酸化珪素(珪砂)、酸化鉄、炭化珪素、窒化硼素等がある。
該固体粒子の粒子径は、例えば、5〜200μm、特に30〜100μmとするのが好ましい。該固体粒子は、バインダー樹脂100容量部に対して、例えば、25〜400容量部〔顔料容積濃度(PVC)にして20〜80%〕、好ましくは、65〜150容量部〔顔料容積濃度(PVC)にして40〜60%〕の割合で混合するのが好ましい。
このプライマー組成物には、必要に応じて、該樹脂を溶解又は分散させるための有機溶剤、水等や、染料、顔料や分散剤、発泡防止剤、ダレ防止剤(チキソトロピック性付与剤)等の添加剤)等の各種添加剤等を配合してもよい。
プライマー組成物の形態としては、無溶剤系や、溶剤系、水溶性系、水分分散系、溶剤分散系等の如きいずれの形態でもよい。
金属溶射方法としては、例えば、ガスフレーム溶射方法や、電気アーク溶射方法、減圧内アーク溶射機による低温溶射方法等があり、いずれの方法でもよいが、特に比較的低い温度で溶射出来る低温溶射方法が好ましい。
前記低温溶射方法とは、アーク点の周辺より噴射される低温の空気流を利用して、減圧させた環境下で、連続的に金属線材を電気的にアーク溶融させ、同時に前方の噴射気流中に吸引し、粉砕させ、常温近くまで急冷却させ、液状の過冷却状態で溶融金属粒子を基材上に付着せしめる方法からなるものである。従って、該方法の場合には、単位時間の溶射量を比較多くし、溶射膜厚を厚くすることが可能である。
金属溶射皮膜上に塗装された封孔処理剤は、例えば、エアースプレー、ハケなどによって、被覆することができる。
被覆の量は、例えば、50〜500g/m2、好ましくは、150〜250g/m2であることが好適である。
次いで、被覆した封孔処理剤は、自然乾燥又は強制乾燥などにより、皮膜とされる、その際の乾燥条件は特に限定されない。例えば、室温にて1〜20時間自然乾燥する方法や、40℃〜120℃で10〜120分間強制乾燥させる方法がある。
エポキシ樹脂(エピクロン4051 DIC社製 エポキシ当量950)100部に、キシレン80部、メチルエチルケトン60部、ブタノール25部を加えて溶解した後、ポリアミド樹脂(エピキュアー892 セラニーズ製 活性水素当量133)10部を添加して得た、固形分40%のエポキシ−ポリアミド樹脂275部(樹脂固形分容量100)と、平均粒径48μmの炭化ケイ素(緑色炭化ケイ素CG320名古屋研磨材工業製 比重3.16)221部とを充分に攪拌し、プライマー1を調整した。
<プライマー2の調整>
水道水25部、分散剤3部、消泡剤1部にアミン樹脂(フジキュアーFXI−919 富士化成工業社製)10部を徐々に加え、攪拌した。次に平均粒径48μmの炭化ケイ素(緑色炭化ケイ素CG320名古屋研磨材工業製 比重3.16)45部を加え、攪拌した。次にエポキシ樹脂(エピコート828 ジャパン・エポキシレジン社製)5部、エポキシ樹脂(カージュラーE10P シェル社製)5部を加えて攪拌し、プライマー2を調整した。
封孔処理剤を以下の表1に示す配合にて調製し、封孔処理剤1〜4を作成した。なお、主剤と硬化剤の混合物を均一化するために、動力攪拌機にて攪拌した。
13.2×70×150mmの錆鋼板表面をディスクサンダーにてSIS−St3に素地調製し、該表面に前記プライマー1の塗料をエアースプレーによって40g/m2の割合で塗付し、24時間自然乾燥させ、十点平均表面粗さ(Rz)が90μm、表面の凹凸の平均間隙(Sm)とRzの比(Sm/Rz)が2.2のプライマー層を形成させた。
次いで、減圧内アーク溶射方法により、Zn−Al擬合金溶射を平均膜厚が80μmになるように溶射を行った。なお、Zn−Al擬合金溶射の条件は、サンメタ社のアーク溶射機SX200Sにて、直径1.3mmφの純亜鉛線材と純アルミニウム線材を各1本ずつ使用して、搬線速度10m/分、電圧15V、電流130A、空気圧0.6MPaで行い、金属溶射皮膜板1を調整した。
<金属溶射皮膜板2の調整>
13.2×70×150mmの錆鋼板表面をディスクサンダーにてSIS−St3に素地調製し、該表面に前記プライマー2の塗料をエアースプレーによって40g/m2の割合で塗付し、24時間自然乾燥させ、十点平均表面粗さ(Rz)が90μm、表面の凹凸の平均間隙(Sm)とRzの比(Sm/Rz)が2.2のプライマー層を形成させた。
次いで、減圧内アーク溶射方法により、Zn−Al擬合金溶射を平均膜厚が80μmになるように溶射を行った。なお、Zn−Al擬合金溶射の条件は、パンアートクラフト社のアーク溶射機PA100にて、直径1.3mmφの純亜鉛線材と純アルミニウム線材を各1本ずつ使用して、搬線速度5m/分、電圧15V、電流130A、空気圧6kg/cm2 で行い、金属溶射皮膜板2を調整した
前記金属溶射皮膜板1に封孔処理剤1(実施例1)をエアースプレーによって250g/m2の割合で塗装し、24時間自然乾燥させ、溶射試験板を作成した。
[実施例2、比較例1及び2]
前記金属溶射試験板1に、更に封孔処理剤2(実施例2)、又は封孔処理剤3及び4(比較例1及び2)をエアースプレーによって250g/m2の割合で塗装し、24時間自然乾燥させ、溶射試験板を作成した。
[実施例3]
金属溶射試験板2に、更に封孔処理剤2(実施例2)をエアースプレーによって250g/m2の割合で塗装し、24時間自然乾燥させ、溶射試験板を作成した。
実施例1〜3及び比較例1及び2より得られた金属溶射試験板について、防食性、付着性及び耐水性を下記の方法で評価、測定した。
23℃の環境下で、30日間、水道水に全浸漬し、30日後の塗膜外観を以下の基準で評価した。
○:異常なし
×:封孔処理膜に膨れが発生
付着性試験方法は、カッターナイフを用いて、2mmの碁盤目を25個作製し、セロハンテープ剥離試験後、以下の基準で目視評価した。
(評価基準)
○:どの格子の目にもはがれがない。
×:切り傷の両側と交点とにはがれが生じている。
耐複合サイクル試験を2000時間行った後の塗膜外観を、以下の基準で目視評価した。
(評価基準)
○:異常なし
×:膨れの発生
1)エピコート828:エポキシ当量190g/eq(ジャパン・エポキシレジン社製)
疎水性で、常温で液状。水への溶解性0g(25℃)。
2)カージュラE10P:エポキシ当量245g/eq(シェル社製)
疎水性で、常温で液状。水への溶解性0g(25℃)。
3)エピレッツYL7208:エポキシ当量195g/eq(ジャパン・エポキシレジン社製)
常温で液状、乳化型エポキシ樹脂(エマルション状態)。
4)フジキュアーFXI−919:変性ポリアミン樹脂(富士化成工業社製)
水溶性。23℃においてNV40%以下でエマルションの形態に変化。
5)Disperbyk-190(ビックケミー・ジャパン社製)
6)アデカネートB-940(アデカ社製)
7)テキサノール
8)KBM-403 3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製)
Claims (6)
- バインダー樹脂及び顔料を含む金属溶射皮膜用封孔処理剤であって、前記バインダー樹脂が、水溶性アミン樹脂硬化剤及び疎水性液状エポキシ樹脂からなり、前記顔料が、タルクからなり、タルクが、封孔処理剤組成物中5〜20質量%で含有されていることを特徴とする封孔処理剤。
- 更に、沈降性硫酸バリウムを含み、前記沈降性硫酸バリウムと前記タルクとの質量比率が、1:1〜0:1である請求項1に記載の封孔処理剤。
- 前記水溶性アミン樹脂が、23℃において加熱残分(NV)40%以下でエマルションの形態に変化する請求項1〜2のいずれかに記載の封孔処理剤。
- 前記疎水性液状エポキシ樹脂のエポキシ樹脂当量が、100〜300g/eqである請求項1〜3のいずれかに記載の封孔処理剤。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の封孔処理剤にて封孔処理することを特徴とする金属溶射皮膜の作成方法。
- 請求項5に記載の方法によって形成された金属溶射皮膜。
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