図1は、本発明の第1の実施の形態に係るパターン形成システム100の構成を示す図である。パターン形成システム100は、フィルム状の対象物9上に配線パターンを形成する装置である。対象物9は、可撓性を有するフレキシブル基板(すなわち、フィルム基板)であり、フィルム状の絶縁性基材、および、絶縁性基材の一の主面全体に形成された比抵抗が10−6Ω・cm以上103Ω・cm以下の導電層(本実施の形態では、銅箔(Cu))を備える。パターン形成システム100では、対象物9上に銅による配線パターンを形成することにより、複数のフレキシブル回路基板が連続したシート状部材である回路基板シートが形成される。
図1に示すように、パターン形成システム100は、対象物9の導電層の表面上にトナー画像を転写(すなわち、形成)し、当該トナー画像を導電層上に定着させてレジストパターンとする画像形成装置1、導電層のレジストパターンから露出している部位(すなわち、トナー画像により被覆されていない部位)にエッチング液を付与することによりエッチングを施して当該部位を絶縁性基材上から除去するエッチング装置61、エッチングが終了した対象物9を洗浄する第1洗浄装置62、対象物9上からレジストパターン(すなわち、トナー画像)を剥離して除去する画像除去装置63、および、レジストパターンが除去された対象物9を洗浄する第2洗浄装置64を備える。以下の説明では、画像形成装置1によりトナー画像が転写される対象物9の導電層の表面91を「被転写面91」という。
図2は、画像形成装置1を拡大して示す図である。図2に示すように、画像形成装置1は、絶縁性基材93および導電層94を有する対象物9を保持するとともに被転写面91に沿う移動方向である(+Y)方向に移動する移動機構2、電子写真法にて感光ドラム31上にトナー画像を形成するプロセスユニット3、当該トナー画像上から感光ドラム31の外周面に所定の電位を付与する第1電位付与部4、対象物9に接触して被転写面91に所定の電位を付与する第2電位付与部5、および、プロセスユニット3により形成されるトナー画像のパターンデータが格納されるデータ処理部7を備える。データ処理部7は、トナー画像の設計パターンデータがラスタライズされた元パターンデータを記憶する元パターンデータ記憶部71、および、元パターンデータを補正して補正済パターンデータを生成するデータ補正部72を備える。
プロセスユニット3は、減速機を介してモータ(図示省略)に接続される感光ドラム31を備え、感光ドラム31は、図2中のX方向に平行な回転軸310を中心として図2中における時計回りに回転可能とされる。感光ドラム31は、アルミニウム等の金属により形成されるとともに回転軸310を中心とするドラム本体311を有し、ドラム本体311は電気的に接地される。ドラム本体311の外周面には、例えば、フタロシアニン顔料を有する単層型有機感光体(以下、単に「感光体312」という。)が一様に塗布される(または、蒸着される)。なお、感光体312は、フタロシアニン顔料を有する単層型有機感光体以外に、例えば、アモルファスシリコン等の無機感光体により形成されてもよい。
プロセスユニット3は、また、感光ドラム31の(+Z)側において感光ドラム31に対向して設けられて感光体312を帯電させる帯電器32、帯電された感光体312の外周面に画像形成用の光を照射して静電潜像を形成する潜像形成部33、エッチング耐性を有する液体トナー(例えば、イソパラフィン系の絶縁性の溶媒(キャリア液)に分散している湿式トナー)を感光体312上の静電潜像に付与することにより当該静電潜像を現像して感光体312の外周面上に転写前のトナー画像を形成する現像部34、感光体312の表面をクリーニングするクリーナ35、および、光を出射して感光体312を除電する除電器36を備える。
プロセスユニット3では、帯電器32から感光ドラム31の回転方向(すなわち、図1中の時計回り)に沿って潜像形成部33、現像部34、クリーナ35および除電器36が、感光ドラム31の周囲に配置されており、現像部34には、現像液である液体トナーを供給するトナー供給部(図示省略)が接続されている。また、画像形成装置1では、第1電位付与部4も、現像部34とクリーナ35との間において感光ドラム31の周囲に配置されている。
第1電位付与部4は、コロナ放電によりイオンを発生させ、当該イオンを感光体312に付与することにより感光体312を帯電させるコロナ帯電機構であり、本実施の形態では、第1電位付与部4としてスコロトロンが利用されて感光体312に電位(以下、「第1電位」という。)が付与される。また、プロセスユニット3の帯電器32も、第1電位付与部4と同様、コロナ放電により感光体312を帯電させるコロナ帯電機構である。
第2電位付与部5は2つの接触子51を備え、接触子51は、導電性材料にて形成されるブラシ(例えば、カーボンブラシや導電性毛ブラシ)を有する。各接触子51は図示省略の支持部材により支持されており、対象物9の導電性の被転写面91に直接当接する。各接触子51の電極は電気的に接地されているため、対象物9の被転写面91も電気的に接地される。換言すれば、第2電位付与部5の接触子51により、対象物9の被転写面91に接地電位である電位(以下、「第2電位」という。)が付与される。
画像形成装置1では、感光ドラム31の(−Z)側において、移動機構2により感光ドラム31に対向して移動する対象物9の被転写面91が、第1電位付与部4とクリーナ35との間にて感光ドラム31の外周面に最も接近する。そして、第1電位付与部4および第2電位付与部5による電位の付与により、感光ドラム31と対象物9とが最も接近する位置において、感光ドラム31と対象物9の被転写面91との間に所定の転写電圧が作用し、感光ドラム31の外周面上のトナー画像が対象物9の被転写面91上に転写される。以下の説明では、感光ドラム31の外周面と対象物9の被転写面91とが最も接近する位置を「転写位置」と呼ぶ。転写位置は、プロセスユニット3に対して相対的に固定された位置となる。画像形成装置1では、第1電位付与部4および第2電位付与部5が、転写位置において感光ドラム31と対象物9の被転写面91との間に所定の転写電圧を作用させてトナー画像を対象物9に転写するトナー画像転写部となっている。
画像形成装置1は、移動機構2による対象物9の移動方向において上記転写位置よりも下流側(すなわち、(+Y)側)に配置されて対象物9の被転写面91に転写されたトナー画像を被転写面91に定着させる定着部52をさらに備える。画像形成装置1では、定着部52により対象物9の被転写面91を非接触にて加熱することにより、トナー画像が被転写面91に定着されてレジストパターンとなる。
移動機構2は、トナー画像が転写される前のロール状の対象物9を保持するとともに対象物9を転写位置へと供給する対象物供給部203、転写位置において対象物9を下面側(すなわち、被転写面91とは反対側)である(−Z)側から支持する転写ローラ204、および、移動機構2による対象物9の移動方向において定着部52よりも下流側(すなわち、(+Y)側)に配置されるとともに定着部52によりトナー画像が定着された対象物9を巻き取って回収する対象物回収部205を備える。図2では、定着部52と対象物回収部205との間に配置されるエッチング装置61等の他の装置の図示を省略している。
図1に示すように、パターン形成システム100では、移動機構2による対象物9の移動方向において、エッチング装置61、第1洗浄装置62、画像除去装置63および第2洗浄装置64が、画像形成装置1の定着部52と対象物回収部205との間に順に配置されており、対象物9上の一の部位に注目すると、当該部位は、移動機構2により一の装置から他の装置へと順に搬送される。換言すれば、対象物9を移動する移動機構2は、画像形成装置1、エッチング装置61、第1洗浄装置62、画像除去装置63および第2洗浄装置64により共有される対象物搬送機構となっている。
エッチング装置61は、塩化鉄(FeCl3)や塩化銅(CuCl2)等を主成分とするエッチング液を、トナー画像が形成された対象物9の被転写面91に向けて噴射する複数のスプレー611を備え、第1洗浄装置62は、純水等の洗浄液を対象物9の被転写面91に向けて噴射する複数のスプレー621を備える。また、画像除去装置63は、対象物9からトナー画像を剥離する剥離液を対象物9の被転写面91に向けて噴射する複数のスプレー631を備え、第2洗浄装置64は、第1洗浄装置62と同様に、純水等の洗浄液を対象物9の被転写面91に向けて噴射する複数のスプレー641を備える。
次に、画像形成装置1のデータ処理部7における補正済パターンデータの生成について説明する。図3は、トナー画像の設計パターンデータが示す画像81(以下、単に「設計パターンデータ81」という。)の一部を示す図であり、図4は、設計パターンデータ81をラスタライズした元パターンデータが示す2値画像である画像82(以下、単に「元パターンデータ82」という。)のうち図3に対応する一部を示す図である。図3および図4では、図の理解を容易にするために図形要素に平行斜線を付して示す(図5、図8、図9、図11、図12、図14.Aないし図14.D、並びに、図15.Aないし図15.Dにおいても同様)。
ここで、データ処理部の元パターンデータ記憶部に記憶されている元パターンデータに基づいてトナー画像を形成する画像形成装置を想定すると、このような画像形成装置(以下、「比較例の画像形成装置」という。)では、元パターンデータ82がプロセスユニットの潜像形成部に出力され、元パターンデータ82に基づいて感光ドラムの感光体に静電潜像が形成されて現像部により現像された後に対象物に転写される。
図5は、比較例の画像形成装置により形成された対象物上のトナー画像984の一部を示す図である。図5に示すように、トナー画像984では、元パターンデータ82が示す画像中の図形要素群に含まれる線状図形要素801の線幅が、図5の中心から離れるに従って漸次増大してしまう。線幅の増大は、線状図形要素801の静電潜像のエッジ近傍において他の領域よりも電界が強くなるエッジ効果によるものである。具体的に説明すると、エッジ効果により線状図形要素801のエッジ部に他の部位よりも多くのトナーが付着した状態(すなわち、エッジ部にトナーが過剰付着した状態)の転写前のトナー画像が、感光体から対象物9に対して転写されることにより、過剰付着したトナーが対象物上に広がって線状図形要素801の線幅増大が生じる。
図6は、比較例の画像形成装置において、複数の線状図形要素が等ピッチにてストライプ状に配列されている図形要素群のトナー画像を対象物上に形成した場合におけるエッジ効果の影響を示す図である。図6中の横軸は、隣接する2つの線状図形要素の間に存在する領域(すなわち、線状図形要素に含まれない背景領域)の幅を示し、縦軸は、対象物上に形成されたトナー画像における各線状図形要素の線幅を示す。図6中の実線891および破線892はそれぞれ設計線幅が異なる線状図形要素のトナー画像における線幅を示す。図6では、背景領域の幅が0μmである場合の実線891および破線892の値が、それぞれが示す線状図形要素の設計線幅を示す。
エッジ効果は、感光体上において、図形要素の静電潜像と当該静電潜像に隣接する静電潜像以外の領域(以下、「非潜像領域」という。)との間における電界等により静電潜像のエッジ近傍の電界が強くなることにより発生するため、図6に示すように、図形要素(静電潜像)に隣接する図形要素以外の領域(非潜像領域)が大きくなるに従って(すなわち、図形要素と他の図形要素との間の距離が大きくなるに従って)エッジ効果が強くなり、図形要素間の距離がある程度以上大きくなるとエッジ効果は一定となる。したがって、図5中の線状図形要素801のエッジのうち、他の図形要素から大きく離れている部位ほどエッジ効果が強く発生して線幅の増大の程度も大きくなる。なお、図5では示されていないが、エッジのうち他の図形要素からある程度以上大きく離れた部位では線幅の増大の程度はほぼ等しくなる。
そこで、本実施の形態に係る画像形成装置1では、トナー画像の形成に際して、エッジ効果による線状図形要素の線幅の増大を防止(または抑制)するために、図1に示すデータ補正部72により、元パターンデータ記憶部71に記憶されている元パターンデータ82(図4参照)が補正される。図7.Aおよび図7.Bは、画像形成装置1によるトナー画像の形成の流れを示す図である。なお、ステップS13〜S17は感光体312の一部に注目した処理の流れを示しており、感光体312全体に対しては実際にはこれらのステップは時間的にほぼ並行して行われる。また、ステップS18〜S22は対象物9の一部に注目した処理の流れを示しており、対象物9全体に対しては実際にはこれらのステップは時間的にほぼ並行して行われる。
画像形成装置1では、まず、元パターンデータ82が示す2値画像中の図形要素群に含まれる複数の線状図形要素が抽出され、データ補正部72により各線状図形要素に所定の補正ルールが適用される。データ補正部72では、線状図形要素のエッジ部に含まれる一の画素を注目画素とした場合、注目画素を中心とする注目画素の周囲の所定領域内において図形要素に含まれる画素であって、かつ、注目画素との間に図形要素に含まれない画素(以下、「背景画素」という。)が存在する離間画素が存在するか否か(すなわち、離間画素の有無)に基づいて、注目画素が感光体312上に描画されるか否か(すなわち、注目画素に対する光の照射がONとされるかOFFとされるか)が決定される。なお、線状図形要素のエッジ部では、一の画素の4近傍のうちのいずれかの画素が図形要素に含まれていない(すなわち、背景画素である)場合に、当該一の画素が注目画素とされる。また、離間画素は、注目画素と同一の線状図形要素に含まれる画素であってもよい。
本実施の形態では、注目画素に最も近接する離間画素と注目画素との間の距離に基づいて注目画素のON/OFFが決定される。具体的には、元パターンデータ82(図4参照)において、各線状図形要素のエッジ部の注目画素を中心とする半径10画素の円形領域内に離間画素が存在しない場合には注目画素がOFFとされ、上記円形領域内に離間画素が存在する場合には注目画素がONとされる。
例えば、図8中の線状図形要素801の画素8011(図8中において太実線にて囲んで示す。)が注目画素とされた場合、注目画素8011を中心とする半径10画素の円形領域8021内には離間画素は存在しないため、注目画素8011はOFFとされる。また、画素8012(図8中において太実線にて囲んで示す。)が注目画素とされた場合、注目画素8012を中心とする半径10画素の円形領域8022内には離間画素8051が存在するため、注目画素8012はONとされる。本実施の形態では、離間画素の画素中心が上記円形領域内に位置する場合に、当該離間画素が円形領域内に存在するものとする。
データ補正部72では、図8に示す元パターンデータ82において、複数の線状図形要素のうち線状図形要素801の左上の部位にてエッジ部の画素がOFFとされることにより、図9に示すように、線状図形要素801が部分的に細らされた補正済パターンデータ83が生成される(ステップS11)。補正済パターンデータ83が示す画像は元パターンデータ82と同様に2値画像であり、補正済パターンデータ83は、図2に示すデータ処理部7からプロセスユニット3の潜像形成部33へと送られる(ステップS12)。
画像形成装置1では、まず、感光ドラム31が回転軸310を中心として図2中における時計回りに一定の回転速度にて回転を開始するとともに、移動機構2において対象物供給部203および対象物回収部205がそれぞれ反時計回りに回転することにより、対象物9の(+Y)方向への移動が一定の速度にて開始される。プロセスユニット3では感光ドラム31の回転により、回転軸310を中心とする円筒ドラム状の環状部材である感光ドラム31が、周囲に配置された各周辺構成(すなわち、帯電器32、潜像形成部33、現像部34、第1電位付与部4、クリーナ35および除電器36)に対して外周面に沿って連続的に循環移動し、これらの周辺構成による感光体312に対する処理が開始される。
帯電器32では、対向する位置へと到達する感光体312の一部(以下、「対象部位」と呼ぶ。)に電荷が順次付与され、対象部位の表面を、例えば、+700V(ボルト)にて一様に帯電させる(ステップS13)。帯電後の対象部位は潜像形成部33の光の照射位置へと連続的に移動する。
潜像形成部33は、所定の波長の光を出射する複数の発光ダイオード(LED)が配列されたLEDアレイを光源として有する。潜像形成部33では、データ処理部7から送られた補正済パターンデータに基づいて画像形成用の光が感光体312に向けて出射される。感光体312の対象部位において光が照射された部位では、表面の電荷が感光体312内に移動することにより、表面電位が+100Vまで低減される。また、光が照射されない部位は帯電状態がそのまま維持されるため、感光体312上には電荷の分布による画像(すなわち、静電潜像)が形成される(ステップS14)。潜像形成部33の光源は、必ずしもLEDである必要はなく、例えば、半導体レーザや、ランプと液晶シャッタとを組み合わせたものであってもよい。
感光ドラム31において静電潜像が形成された部分(対象部位)は現像部34に対向する位置へと移動する。現像部34では、現像ローラ341が現像バイアス電源343に接続されており、現像バイアス電源343により、+500Vの電位が付与されている。そして、現像ローラ341と静電潜像との間のバイアス電圧により、液体トナー中においてプラスに帯電している湿式トナー(すなわち、液体トナーの溶媒中に分散されるとともに感光体312の表面と同じ極性に帯電している湿式トナー)が静電潜像に付与される(ステップS15)。本実施の形態では、湿式トナーとして、粒径が0.1μm以上2μm以下(より好ましくは、0.1μm以上0.5μm以下)のものが使用される。
図10.Aないし図10.Cは、現像部34(図2参照)により湿式トナー92が付与された感光体312表面の電位分布を概念的に示す図である。図10.Aないし図10.Cでは、感光体312表面の電位を実線301にて描いており、実線301が感光体312表面からドラム本体311とは反対側に位置する場合をプラスとする。また、実線301と感光体312表面との間の上下方向の距離は、電位の大きさを表す。
図10.Aに示すように、感光体312の表面と同じ極性であるプラスに帯電している湿式トナー92は、感光体312上の対象部位において、潜像形成部33(図2参照)により表面電位が低減された部位にのみ付着し、これにより、静電潜像が現像される。すなわち、感光体312の外周面上の対象部位に、湿式トナー92による転写前のトナー画像が形成される。図2に示す画像形成装置1では、感光ドラム31およびドラム回転用のモータが、感光体312の外周面に転写前のトナー画像を保持するとともに感光体312を循環移動するトナー画像保持部となっている。
現像部34では、対象部位上の不要な液体トナーは、現像ローラ341の(−Z)側(すなわち、感光ドラム31の循環移動の下流側)に位置するスキージローラ342により掻き取られて現像部34へと戻される。スキージローラ342はスキージ用電源344に接続されており、スキージ用電源344により、+500Vの電位が付与されている。そして、スキージローラ342が図1中の時計回りに回転して液体トナーを掻き取ることにより、感光体312上の余剰の液体トナー(すなわち、潜像形成部33により表面電位が低減された部位上に過剰に付与された液体トナー、および、表面電位が低減されなかった部位であるバックグラウンド上に付与された液体トナー)が回収される。
次に、感光ドラム31の循環移動において転写位置よりも手前に配置された第1電位付与部4により、感光体312上に現像されたトナー画像上から、感光体312の外周面に湿式トナーの帯電極性と同じ極性であるプラスの第1電位が付与される(ステップS16)。これにより、図10.Bに示すように、感光体312の外周面の対象部位全体が、帯電器32による帯電と同程度、または、絶対値において大きい電位(本実施の形態では、約+800V)まで帯電する。なお、対象部位では、湿式トナー92の付着領域における電位と非付着領域における電位とが僅かに異なっているが、この程度の電位差は後述する湿式トナー92の転写にはほとんど影響しない。また、当該電位差は、第1電位付与部4による第1電位の付与時間を長くすることにより解消される。
図2に示す第1電位付与部4による第1電位の付与が終了すると、感光ドラム31の対象部位は、感光ドラム31の回転に同期して移動する対象物9の被転写面91に最も接近する転写位置へと到達し、転写位置では対象部位は感光ドラム31の回転速度に応じた速度(すなわち、感光ドラム31の外周面の回転軸310に垂直な断面における接線方向の速度)にて正確に(+Y)方向へと移動する。また、対象物9は、移動機構2により、転写位置における感光体312の対象部位と同じ速度にて、対象部位の進行方向と同じ(+Y)方向を移動方向として移動する。これにより、転写位置の極近傍において対象物9(の対象部位に対向する部位)の位置が対象部位に対して相対的に固定される。
このとき、対象物9は、転写位置の(+Y)側および(−Y)側にそれぞれ配置される第2電位付与部5の2つの接触子51を介して電気的に接地されており(換言すれば、第2電位付与部5により、対象物9の被転写面91に接地電位が付与されており)、転写位置における対象物9の被転写面91と感光体312の対象部位との間に所定の転写電圧が作用する。すなわち、対象部位から被転写面91へと向かう電界が発生し、図10.Cに示すように、感光体312から対象物9の被転写面91へと向かう方向(すなわち、図10.C中の符号302を付す矢印が向く方向)の力が湿式トナー92に作用する。これにより、感光体312の対象部位上に付着したプラスに帯電したトナー画像が、対象物9の被転写面91に順次転写される(ステップS17)。
画像形成装置1では、元パターンデータから補正済パターンデータが生成される際に、図9中の線状図形要素801の左上の部位が部分的に細らされており、細らされた部位にエッジ効果により過剰付着した湿式トナーが、転写時に対象物9の被転写面91上にて広がる。これにより、図11に示すように、線幅が均一な線状図形要素801を含むトナー画像84が対象物9上に形成される。
湿式トナーの転写後の感光体312の対象部位は、図2に示すクリーナ35の位置へと続けて移動する。クリーナ35では、スプレーノズル351により対象部位に洗浄液が付与されることにより、対象物9に転写されずに対象部位に残留した湿式トナー等の不要物(以下、「残トナー」という。)が湿らされる。これにより、対象部位に固着している残トナーが膨潤し、残トナーの感光体312に対する固着力が低減される。
続いて、図2中における時計回り(すなわち、感光ドラム31の回転方向と同じ方向)に回転するスポンジローラ352,353,354により感光体312の対象部位が擦られることにより、残トナーがこれらのスポンジローラに付着して感光体312上から除去される。スポンジローラに付着した残トナーは吸引ノズルにより洗浄液と共に吸引されてスポンジローラ上から除去される。
クリーナ35により感光体312の表面がクリーニングされて感光体312が機械的に初期状態に戻されると、ランプとフィルタとの組合せ、あるいは、LED等を有する除電器36により対象部位に光が照射されて感光体312が除電され、電気的に初期状態に戻される。
上述のように、ステップS13〜S17の処理は感光体312上の各部位に対してほぼ並行して行われ、転写位置へと順次到達する感光体312の各部位に対して連続的に処理が行われる。このため、感光体312の外周面上のトナー画像全体が転写位置において対象物9上に転写され、これが繰り返されることにより、最終的に複数のフレキシブル回路基板となる対象物9上に、複数のフレキシブル回路基板の配線パターンに対応するトナー画像が形成される。
画像形成装置1では、対象物9のトナー画像が形成された部位が、移動機構2により転写位置から(+Y)側へと移動されて定着部52の下方を通過することにより、被転写面91および被転写面91上のトナー画像が定着部52により加熱され、トナー画像が被転写面91に定着されてレジストパターンとなる(ステップS18)。
対象物9のトナー画像が定着された部位は、図1に示す移動機構2により画像形成装置1からエッチング装置61へと移動し、エッチング装置61においてエッチング液が付与されることにより、導電層94(図2参照)のトナー画像(すなわち、レジストパターン)から露出している部位にエッチングが施されて当該部位が絶縁性基材93(図2参照)上から除去される(ステップS19)。これにより、銅にて形成された導電層94のうちトナー画像により被覆された部分のみが絶縁性基材93上に残置され、フレキシブル回路基板の配線パターン(すなわち、銅電極および銅配線)となる。
対象物9のエッチングが施された部位は、移動機構2によりエッチング装置61から第1洗浄装置62へと移動し、第1洗浄装置62において純水が噴射されることにより、対象物9が洗浄されて対象物9上のエッチング液が除去される(ステップS20)。
対象物9の洗浄が終了した部位は、移動機構2により第1洗浄装置62から画像除去装置63へと移動し、画像除去装置63において剥離液が付与されることにより、対象物9上のトナー画像(すなわち、絶縁性基材93上に形成された配線パターン上のレジストパターン)が配線パターンから剥離されて除去される(ステップS21)。これにより、絶縁性基材93および絶縁性基材93上に銅にて形成された配線パターンを有するフレキシブル回路基板が形成される。
対象物9のトナー画像が剥離された部位は、移動機構2により画像除去装置63から第2洗浄装置64へと移動し、第2洗浄装置64において純水が噴射されることにより、対象物9が洗浄されて対象物9上の剥離液が除去される(ステップS22)。そして、対象物9の洗浄が終了した部位は、移動機構2により第2洗浄装置64から搬出され、必要に応じて加熱や送風等により乾燥された後、移動機構2の対象物回収部205により巻き取られて回収される。これにより、複数のフレキシブル回路基板が連続した回路基板シートが形成される。
以上に説明したように、パターン形成システム100の画像形成装置1では、データ補正部72により元パターンデータ82の線状図形要素801(図4参照)に所定の(予め定められた)補正ルールを適用して部分的に細らせることにより補正済パターンデータ83(図9参照)が生成され、補正済パターンデータに基づいて感光体312上に形成された静電潜像が現像され、形成されたトナー画像が対象物9に転写される。これにより、図11に示すように、エッジ効果による線状図形要素の幅の増大を補正(すなわち、防止または抑制)し、対象物9上のトナー画像84における線状図形要素の幅を所望の幅とすることができる。その結果、パターン形成システム100にて形成される回路基板シートの配線パターンにおける配線の幅を所望の幅とすることができる。
また、データ補正部72では、線状図形要素のエッジ部の各画素に最も近接する離間画素と各画素との間の距離に基づいて(すなわち、各画素を中心とする所定の領域内における離間画素の有無、および、離間画素と各画素との位置関係に基づいて)線状図形要素を細らせることにより、線状図形要素の幅の補正を容易に行うことができる。換言すれば、エッジ部の各画素の周囲における離間画素の密度が低い場合に各画素がOFFとされて線状図形要素を細らせることにより、線状図形要素の幅の補正を容易に行うことができる。
ところで、湿式トナーは乾式トナーに比べて流動性が高いため、静電潜像の現像の際にエッジ効果によるエッジ部への過剰付着が生じやすく、データ補正部72による元パターンデータの補正が仮に行われないとすると、線状図形要素の幅が大きく増大してしまうおそれがある。上述のように、画像形成装置1では、データ補正部72により元パターンデータの線状図形要素を部分的に細らせて補正済パターンデータを生成することにより、エッジ効果による線状図形要素の幅の増大を補正することができるため、画像形成装置1は、エッジ効果が顕著に表れる湿式トナーを利用したトナー画像の形成に特に適している(後述する第2ないし第4の実施の形態に係る画像形成装置においても同様)。
上記説明では、図4中の元パターンデータ82および図9中の補正済パターンデータ83がそれぞれ示す画像が2値画像であるとしているが、画像形成装置1では、補正済パターンデータが示す画像が多値画像とされてもよい。この場合、データ補正部72による細らせ処理の対象となる線状図形要素のエッジ部に含まれる注目画素の値(画素値)が、注目画素に最も近接する離間画素と注目画素との間の距離に基づいて補正され、当該線状図形要素のエッジ部以外の画素の値(以下、「基準画素値」という。)よりも低い値とされる。基準画素値よりも低い値とは、図形要素に含まれない画素の値である背景画素値と基準画素値との間の値を意味する。
注目画素の画素値は、例えば、離間画素(すなわち、注目画素の周囲の所定領域内において図形要素に含まれる画素であって注目画素との間に背景画素が存在する画素)が存在しない場合には背景画素値に等しい値とされ、離間画素が存在する場合には、注目画素に最も近接する離間画素と注目画素との間の距離が小さくなるに従って背景画素から基準画素値に近づく(すなわち、高くなる)ように変更され、当該距離が所定距離よりも小さくなると基準画素値に等しい値とされる。
このように、データ補正部72により、線状図形要素のエッジ部に含まれる各画素について、離間画素の有無、および、各画素と離間画素との位置関係に基づく画素値の変更が行われ、線状図形要素に対して(部分的に)細らせ処理が行われた補正済パターンデータが生成される。そして、プロセスユニット3において、潜像形成部33から帯電された感光体312に照射される光の強度が、補正済パターンデータが示す画像の画素値に従って変更される(すなわち、階調制御が行われる)ことにより、対象物9上に形成されるトナー画像において、エッジ効果による線状図形要素の幅の増大を補正し、線状図形要素の幅をより高精度に制御することができる。
次に、本発明の第2の実施の形態に係る画像形成装置について説明する。第2の実施の形態に係る画像形成装置の構成は、図2に示す画像形成装置1と同様であり、以下の説明において対応する構成に同符号を付す。第2の実施の形態に係る画像形成装置では、データ補正部72による元パターンデータの補正方法が第1の実施の形態と異なる点を除き、第1の実施の形態と同様の工程によりトナー画像が形成される。
第2の実施の形態に係る画像形成装置による元パターンデータの補正では、第1の実施の形態と同様に、線状図形要素のエッジ部に含まれる各画素を注目画素として、注目画素を中心とする注目画素の周囲の所定領域内における離間画素の有無、および、注目画素と離間画素との位置関係に基づいて注目画素に対する光の照射のON/OFFが決定され、2値画像を示す補正済パターンデータが生成される。
具体的には、図12に示すように、注目画素8013(図12中において太実線にて囲んで示す。)を中心とする半径5画素の円形領域8031、および、円形領域8031と同心の幅5画素の(すなわち、外径と内径との差が10画素である)2つの円環領域8032,8033が設定され、円形領域8031および円環領域8032,8033の各領域における離間画素8052の占有率p1〜p3(すなわち、各領域における離間画素の印字率)と、各領域に設定された注目画素8013から離れた領域ほど小さくなる係数α1〜α3との積を加算した値β(=α1p1+α2p2+α3p3)が、予め定められた閾値よりも小さい場合に、注目画素8013の周囲における離間画素8052の密度が低いと判断されて注目画素8013がOFFとされる。また、値βが上記閾値よりも大きい場合には、注目画素8013の周囲における離間画素の密度が高いと判断されて注目画素がONとされる。本実施の形態では、離間画素8052の画素中心が円形領域8031および円環領域8032,8033の各領域内に位置する場合に、当該離間画素が各領域内に存在するものとする。
データ補正部72(図2参照)では、元パターンデータ82(図8参照)において、複数の線状図形要素のうち線状図形要素801の左上の部位にてエッジ部の各画素がOFFとされることにより、線状図形要素801が部分的に細らされた補正済パターンデータ83(図9参照)が生成される。そして、補正済パターンデータに基づいて感光体312(図2参照)上に形成された静電潜像が現像され、形成されたトナー画像が対象物9に転写される。これにより、第1の実施の形態と同様に、エッジ効果による線状図形要素の幅の増大を補正し、対象物9上のトナー画像における線状図形要素の幅を所望の幅とすることができる。
第2の実施の形態に係る画像形成装置では、線状図形要素のエッジ部の各画素を中心とする円形領域8031および円環領域8032,8033の各領域における離間画素の占有率p1〜p3と、各領域に設定された係数α1〜α3との積を加算した値であるβに基づいて線状図形要素を細らせることにより、エッジ部の各画素の周囲における離間画素の密度を考慮して各画素のON/OFFを決定することができるため、線状図形要素の幅をより高精度に制御することができる。
第2の実施の形態に係る画像形成装置では、注目画素の周囲の円形領域8031および円環領域8032,8033の大きさは適宜変更されてよく、また、円環領域の個数も適宜増減されてよい。例えば、円形領域8031の半径を1画素とし、円形領域8031の周囲に幅1画素の同心の円環領域を複数設定した場合、上述の値βの算出において各領域の離間画素の占有率piと各領域に設定された係数αiとの積を求める演算は、各領域に含まれる画素の総数をNiとすると、αi/Niを円形領域8031および円形領域8031の周囲の複数の円環領域に含まれる全ての離間画素に関して取得して加算した値を求める演算に等しい。
αiは注目画素から離れるに従って小さくなり、Niは注目画素から離れるに従って大きくなるため、上記演算は、注目画素を中心とする注目画素の周囲の所定領域(すなわち、最も外側の円環領域の外周縁よりも内側の領域)において、注目画素と離間画素との間の距離が大きいほど小さく設定される値を全ての離間画素に関して取得して加算した値を求めることに等しい。この場合も、図12の場合と同様に、エッジ効果による線状図形要素の幅の増大を補正し、線状図形要素の幅をより高精度に制御することができる。
なお、図12に示す円形領域8031および円環領域8032,8033の各領域における離間画素の占有率p1〜p3と、各領域に設定された係数α1〜α3との積を加算した値βを求める演算は、注目画素を中心とする注目画素の周囲の所定領域(すなわち、最も外側の円環領域8033の外周縁よりも内側の領域)において、注目画素と離間画素との間の距離が大きいほど小さく設定される値(すなわち、一の離間画素が位置する幅1画素の円環領域に含まれる画素の総数をNとした場合、αi/N(ただし、i=1〜3))を全ての離間画素に関して取得して加算した値を求めることに実質的に等しい。
第2の実施の形態に係る画像形成装置では、第1の実施の形態と同様に、補正済パターンデータが示す画像が多値画像とされてもよい。この場合、データ補正部72による細らせ処理の対象となる線状図形要素のエッジ部に含まれる注目画素の値(画素値)が上述の値βに基づいて補正される。注目画素の画素値は、値βが所定の第1閾値よりも小さい場合には背景画素値に等しい値とされ、値βが第1閾値よりも大きい場合には、値βが大きくなるに従って背景画素値から基準画素値に近づく(すなわち、高くなる)ように変更され、値βが所定の第2閾値よりも大きくなると基準画素値に等しい値とされる。
このように、データ補正部72により、線状図形要素のエッジ部に含まれる各画素について、離間画素の有無、および、各画素と離間画素との位置関係に基づく画素値の変更が行われて補正済パターンデータが生成され、潜像形成部33からの光の強度が補正済パターンデータが示す画像の画素値に従って変更される(すなわち、階調制御が行われる)ことにより、第1の実施の形態と同様に、対象物9上に形成されるトナー画像において、エッジ効果による線状図形要素の幅の増大を補正し、線状図形要素の幅をより高精度に制御することができる。
次に、本発明の第3の実施の形態に係る画像形成装置について説明する。第3の実施の形態に係る画像形成装置では、図2に示す画像形成装置1のデータ処理部7に、図13に示すようにデータベース記憶部73が設けられる。その他の構成は、図2に示す画像形成装置1と同様であり、以下の説明において対応する構成に同符号を付す。第3の実施の形態に係る画像形成装置では、データ補正部72による元パターンデータの補正方法が第1の実施の形態と異なる点を除き、第1の実施の形態と同様の工程によりトナー画像が形成される。
第3の実施の形態に係る画像形成装置による元パターンデータの補正では、線状図形要素のエッジ部に含まれる各画素を注目画素として、注目画素を中心とする注目画素の周囲の所定領域内における注目画素と離間画素との位置関係に基づいて注目画素に対する光の照射のON/OFFが決定され、2値画像を示す補正済パターンデータが生成される。
具体的に説明すると、第3の実施の形態に係る画像形成装置では、注目画素を中心とする所定の領域における離間画素の分布と注目画素のON/OFF情報との関係(すなわち、所定の領域における離間画素の分布と注目画素の位置における線状図形要素の細らせ処理との関係)を示すデータ要素の集合であるデータベースが、データベース記憶部73に記憶されている。データ補正部72では、線状図形要素のエッジ部の各画素を注目画素とし、各注目画素の周囲の所定領域における離間画素の分布を検索キーとして上記データベースが検索され、各注目画素の周囲の所定領域における離間画素の分布に最も近い分布を含むデータ要素が抽出される。そして、抽出されたデータ要素に含まれる注目画素のON/OFF情報を参照し、線状図形要素のエッジ部の画素がOFFとされることにより、線状図形要素を部分的に細らせる処理が実現される。
図14.Aないし図14.Dはそれぞれ、上記データベースのデータ要素に含まれる離間画素の分布の例を示す図である。本実施の形態では、図14.Aないし図14.Dに示す線状図形要素801a〜801dのエッジ部の注目画素8014(図14.Aないし図14.D中において太実線にて囲んで示す。)を中心とする1辺の長さが21画素の正方形領域8041における離間画素8053の分布が、データベースのデータ要素の検索キーとされる。
図14.Aでは、注目画素の下側に隣接する画素および左側に隣接する画素が、注目画素と同一の図形要素に含まれており(図14.Bないし図14.Dにおいても同様)、正方形領域8041の上側の辺の全長に亘って離間画素8053が配置されており、正方形領域8041の右側の辺には離間画素が配置されていない(ただし、角部の1画素を除く。)。この場合は、注目画素8014の右側に存在する多数の背景画素の影響により、注目画素8014をONとすると注目画素8014に過剰の湿式トナーが付着するため、注目画素8014はOFFとされる。
図14.Bでは、正方形領域8041の上側の辺および右側の辺のそれぞれの全長に亘って離間画素8053が配置される。この場合は、注目画素8014の上側および右側に存在する離間画素8053により注目画素8014の周囲の背景画素の影響が抑制され、注目画素8014に対するトナーの過剰付着が問題にならない程度まで抑制(または防止)されるため、注目画素8014はONとされる。なお、本実施の形態では、正方形領域8041の上側の辺の半分以上の長さ、および、右側の辺の半分以上の長さに亘って離間画素8053が配置されている場合は、図14.Bの例と同様に、注目画素8014はONとされる。また、注目画素8014の上側および右側の離間画素8053が、図14.Bに示す状態よりも注目画素8014に近接する場合は、当然、注目画素8014はONとされる。
図14.Cでは、正方形領域8041の上側の辺および右側の辺において、各辺の半分未満の長さに亘ってのみ離間画素8053が配置されており、各辺の半分以上の長さに亘って背景画素が配置されている。また、正方形領域8041の右上の頂点近傍には、36個の離間画素8053が配置されている。この場合、正方形領域8041の右上の頂点近傍に配置された36個の離間画素8053により注目画素8014の周囲の背景画素の影響が抑制され、注目画素8014に対するトナーの過剰付着が問題にならない程度まで抑制(または防止)されるため、注目画素8014はONとされる。なお、本実施の形態では、正方形領域8041の右上の頂点近傍に25個以上の離間画素8053が配置されている場合は、図14.Cの例と同様に、注目画素8014はONとされる。また、注目画素8014の右上の頂点近傍に配置される離間画素8053が、図14.Cに示す状態よりも注目画素8014に近接する場合は、当然、注目画素8014はONとされる。
図14.Dでは、図14.Cと同様に、正方形領域8041の上側の辺および右側の辺において、各辺の半分未満の長さに亘ってのみ離間画素8053が配置されており、各辺の半分以上の長さに亘って背景画素が配置されている。また、正方形領域8041の右上の頂点近傍には、6個のの離間画素8053が配置されている。この場合は、注目画素8014の周囲(図中の右側および上側)に存在する多数の背景画素の影響により、注目画素8014をONとすると注目画素8014に過剰の湿式トナーが付着するため、注目画素8014はOFFとされる。
図13に示すデータ補正部72では、上述のように、図14.Aないし図14.Dに示す線状図形要素801a〜801dの上側の部位にてエッジ部の各画素が必要に応じてOFFとされ、また、線状図形要素801a〜801dの下側の部位にてエッジ部の各画素がOFFとされる。これにより、図15.Aないし図15.Dに示すように、線状図形要素801a〜801dが部分的に細らされた補正済パターンデータが生成され、補正済パターンデータに基づいて形成されたトナー画像が対象物9に転写される。その結果、第1の実施の形態と同様に、エッジ効果による線状図形要素の幅の増大を補正し、対象物9上のトナー画像における線状図形要素の幅を所望の幅とすることができる。なお、図15.Aないし図15.Dでは、細らせ処理が施される前の線状図形要素801a〜801dの輪郭を参考のために二点鎖線にて示す。
第3の実施の形態に係る画像形成装置では、注目画素を中心とする所定の領域における離間画素の分布と注目画素の位置における線状図形要素の細らせ処理との関係を示すデータ要素の集合であるデータベースから、各注目画素の周囲の所定領域における離間画素の分布に最も近い分布を含むデータ要素が抽出され、抽出されたデータ要素に含まれる注目画素のON/OFF情報に基づいて線状図形要素を部分的に細らせる処理が実現される。これにより、線状図形要素の細らせ処理にかかる補正ルールの決定を簡素化することができる。
第3の実施の形態に係る画像形成装置では、注目画素の周囲の正方形領域8041の大きさは適宜変更されてよく、また、当該領域の形状は正方形以外(例えば、長方形や円形)とされてもよい。
第3の実施の形態に係る画像形成装置では、第1の実施の形態と同様に、補正済パターンデータが示す画像が多値画像とされてもよい。この場合、上述のデータベースの各データ要素では、注目画素を中心とする所定の領域における離間画素の分布と注目画素の画素値の補正に関する補正ルールが関連付けられており、データ補正部72による細らせ処理の対象となる線状図形要素のエッジ部に含まれる注目画素の画素値が、データベースから抽出されたデータ要素に含まれる注目画素の画素値に関する補正ルールに基づいて変更される。注目画素の画素値は、注目画素の周囲の領域において注目画素近傍における離間画素の分布密度が低い場合には背景画素値に等しい値とされ、注目画素近傍における分布密度が高くなるに従って背景画素値から基準画素値に近づく(すなわち、高くなる)ように変更される。
このように、データ補正部72により、線状図形要素のエッジ部に含まれる各画素について、離間画素の有無、および、各画素と離間画素との位置関係に基づく画素値の変更が行われて補正済パターンデータが生成され、潜像形成部33からの光の階調制御が行われることにより、第1の実施の形態と同様に、対象物9上に形成されるトナー画像において、エッジ効果による線状図形要素の幅の増大を補正し、線状図形要素の幅をより高精度に制御することができる。
次に、本発明の第4の実施の形態に係る画像形成装置について説明する。図16は、第4の実施の形態に係る画像形成装置1aを示す図である。画像形成装置1aでは、中間転写体251を有する中間転写部25が設けられ、感光ドラム31上のトナー画像は中間転写体251を介して間接的に対象物9上に転写される。その他の構成は、図2に示す画像形成装置1と同様であり、以下の説明において同符号を付す。なお、図16では、図示の都合上、定着部52の図示を省略している。
図16に示すように、中間転写体251は、誘電材料にて形成される平ベルト状の環状部材とされ、2つのローラ252a,252bに外接して設けられる。一方のローラ252aにはモータが接続され、モータが駆動されることにより、感光ドラム31上のトナー画像に当接しつつ中間転写体251が外周面に沿って循環移動する。また、他方のローラ252bには直流電源253が接続される。また、図2の画像形成装置1と比べて、第1電位付与部4が中間転写体の251の転写位置の直前に設けられ、中間転写体251に対向する対象物9の移動方向が反対向き((−Y)方向)になるという点でさらに相違している。
画像形成装置1aでは、プロセスユニット3の帯電器32、潜像形成部33、現像部34等により感光体312上に形成されたトナー画像が、ローラ252bを介して中間転写体251に付与される電位により、中間転写体251上に転写される。すなわち、中間転写体251や中間転写体251を循環移動する機構を含む中間転写部25は、中間転写体251の外周面上に転写前のトナー画像を間接的に形成して保持するトナー画像保持部となっている。また、画像形成装置1aでは、中間転写体251の外周面と対象物9とが最も近接する転写位置の直前において、第1電位付与部4により、トナー画像上から所定の電位が中間転写体251の外周面におよそ均一に付与され、電位が付与された対象部位は対象物9に向かって送られる。
画像形成装置1aでは、図2の画像形成装置1と同様に、対象物9の転写位置の部位が中間転写体251の転写位置の部位と同じ速度で同じ方向に移動する。そして、第2電位付与部5の接触子51により対象物9の被転写面91に接地電位が付与されることにより、転写位置において、湿式トナーに対象物9に向かう電気的力が作用し、中間転写体251上のトナー画像が対象物9上に高い精度にて転写される。画像形成装置1aでも、第1の実施の形態と同様に、第1電位付与部4および第2電位付与部5が、転写位置においてトナー画像を対象物9に転写するトナー画像転写部となっている。
画像形成装置1aのデータ補正部72では、第1の実施の形態と同様に、元パターンデータ82の線状図形要素801(図4参照)に所定の補正ルールを適用して部分的に細らせることにより補正済パターンデータ83(図9参照)が生成される。そして、補正済パターンデータ83に基づいて感光体312上に形成された静電潜像が現像され、形成されたトナー画像が中間転写体251を介して対象物9に転写される。これにより、第1の実施の形態と同様に、エッジ効果による線状図形要素の幅の増大を補正(すなわち、防止または抑制)し、対象物9上のトナー画像における線状図形要素の幅を所望の幅とすることができる。なお、画像形成装置1aのデータ補正部72では、第2の実施の形態に係る画像形成装置、または、第3の実施の形態に係る画像形成装置と同様の細らせ処理が線状図形要素に施されてもよい。
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態に係る画像形成装置では、線状図形要素のエッジ部の最外縁に位置する画素について、当該画素のON/OFFや画素値の変更が行われるが、最外縁に位置する画素に加えてエッジ部の最外縁よりも内側に位置する画素についても、当該画素のON/OFFや画素値の変更が行われてもよい。一方、線状図形要素が細らせ処理により分断されることを防止するためには、線状図形要素の幅方向に複数の画素が配列されている場合、当該複数の画素のうち1つ以上の画素はON(または、背景画素よりも高い値)とされる必要がある。また、線状図形要素の幅方向において1つの画素に隣接する他の画素が存在しない場合は、当該1つの画素はON(または、背景画素よりも高い値)とされる必要がある。
上述の画像形成装置において細らせ処理の対象となる線状図形要素は、様々な形状の部位が組み合わされた図形要素の一部である線状の部位も含む。
潜像形成部33により形成される静電潜像は、ネガ型であってもポジ型であってもよい。また、プロセスユニット3では、感光体312に対するイオンフローにより、直接的に静電潜像が形成されてもよい。現像部34では、マイナスに帯電した湿式トナーを含む液体トナーが感光体312に付与されてもよく、この場合、帯電器32および第1電位付与部4により感光体312(または、中間転写体251)に付与される電位も同極性のマイナスとされる。また、現像部34では、湿式トナーに代えて乾式トナーにより静電潜像が現像されてもよい。
第1ないし第3の実施の形態に係る画像形成装置では、感光ドラム31から対象物9へのトナー画像の転写は、必ずしも転写電圧を利用した静電転写には限定されず、例えば、感光ドラム31上に熱溶融トナーにより形成されたトナー画像を加熱し、溶融状態のトナー画像を対象物9に向けて押圧する熱溶融転写によりトナー画像が転写されてもよい。第4の実施の形態に係る画像形成装置1aでも同様に、中間転写体251から対象物9へのトナー画像の転写は、熱溶融転写等の他の方法により行われてもよい。
上記実施の形態に係る画像形成装置では、フィルム状のフレキシブル基板以外にも、板状のガラス基板等、様々な対象物に対するトナー画像の形成が行われてよく、対象物上に転写されるトナーも、平面表示装置用のカラーフィルタの画素形成材料等、様々な材料のトナーが対象物上に転写されてよい。ただし、上述の画像形成装置では、エッジ効果による線状図形要素の幅の増大を高精度に補正することができるため、画像形成装置は、上述のプリント基板の配線パターン等の微細パターンの形成に特に適している。