JP2010046757A - 切削工具およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐摩耗性と耐欠損性との両方に優れた切削工具およびその製造方法を提供する。
【解決手段】切削工具は、基体1と被覆層2とを備えている。基体1は、硬質化合物よりなる複数の硬質相と、硬質相同士を結合する結合相とを有している。被覆層2は、基体1の表面1aに形成されたセラミックスからなっている。被覆層2は、基体1の表面1aの法線に沿った断面において、幅が50nm以上200nm以下であり、かつ間隔が30μm以上100μm以下であり、かつ構成領域の幅が5.0μm以上10.0μm以下である亀裂11および12を有している。
【選択図】図1

Description

本発明は切削工具およびその製造方法に関し、より特定的には、基体表面に形成されたセラミックスからなる被覆層の耐欠損性を高めることができる切削工具およびその製造方法に関する。
従来、一般の鋼や鋳物の切削加工には、WC−Co合金もしくはWC−Co合金にTiやTa、Nbの炭窒化物を添加した合金からなる超硬合金が用いられてきた。しかし、切削工具の刃先は切削加工の際に800℃以上の高温となるので、これらの超硬合金よりなる切削工具は、切削加工時に熱により塑性変形しやすかった。そして、その結果逃げ面摩耗が激しくなりやすかった。
そこで、高温での切削工具の切削特性を改善するために、上記超硬合金母材の表面に、周期律表のIVa族金属の炭化物、窒化物、または炭窒化物(TiC、TiN、またはTiCNなど)、あるいはAl23等といった硬質セラミックスの単一層、またはこれらの硬質セラミックスの複合層からなる被覆層を形成した被覆切削工具が使用されている。これらの被覆層の形成には、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などの化学的蒸着法や、イオンプレーティング法やイオンスパッタリング法などの物理的蒸着法が用いられる。
これらの方法で形成された被覆層のうち、特に化学的蒸着法により形成した被覆層は、超硬合金母材との密着強度が非常に強く、耐摩耗性が非常に優れている。近年、切削の高速化および高能率化の要望から被覆層はますます厚くなる傾向にあるため、超硬合金母材と被覆層との密着強度は重要である。
しかし一方で、化学的蒸着法の際には、被覆層の温度が約1000℃と高温となるため、被覆層形成後に室温まで冷却すると、超硬合金母材と被覆層との熱膨張係数の差により被覆層に引張応力が残留する。その結果、切削加工時に被覆層の表面を起点として亀裂が発生すると、引張応力により亀裂が伝播し、被覆層の脱落やチッピングが発生する。具体的には、超硬合金母材の熱膨張係数は約5.1×10-6-1程度であるのに対し、被覆層の熱膨張係数は、たとえばTiNの場合約9.2×10-6-1であり、TiCの場合約7.6×10-6-1であり、Al23の場合約8.5×10-6-1である。現在一般に使用されている切削工具の被覆層の厚みが約数μmから約10数μmの範囲であるのは、被覆層の厚みを厚くするほど耐摩耗性が向上するものの、上記の理由から厚い被覆層ほど耐欠損性が低下することが原因である。
そこで、被覆層の特性を改善するための様々な技術が提案されている。特開平7−216549号公報(特許文献1)には、Al23層成膜後の冷却時に発生するクラックを無くすことで、切削工具の切削寿命を向上する技術が記載されている。
また、特開2005−212047号公報(特許文献2)には、基体表面に対して垂直に伸びた筋状組織を有する炭窒化チタン層を基体表面に形成することにより、チッピングや層剥離の発生を抑え、耐摩耗性および耐欠損性を高めることができることが記載されている。
特開平7−216549号公報 特開2005−212047号公報
しかしながら、特許文献1および2に開示された被覆層であっても、被覆層中には依然として引張り応力が残留しているため、高速加工および高能率加工で断続的に切削を行なう場合には、耐欠損性が依然として低いという問題があった。また、被覆層の摩耗に乱れが生じ、耐摩耗性が低下するという問題があった。これらの問題は、切削工具全般における問題であるが、フライス加工や溝付き材の旋削加工などの切削加工に用いられる切削工具において特に顕著な問題であった。上記の用途の切削工具では、断続的な荷重が負荷されることによって刃先の欠損が極めて起こりやすかった。
したがって、本発明は、耐摩耗性と耐欠損性との両方に優れた切削工具およびその製造方法を提供することである。
本発明の切削工具は、基体と被覆層とを備えている。基体は、硬質化合物よりなる複数の硬質相と、硬質相同士を結合する結合相とを有している。被覆層は、基体表面に形成されたセラミックスからなっている。被覆層は亀裂を有している。この亀裂は、基体表面の法線に沿った断面において、幅が50nm以上200nm以下であり、かつ間隔が30μm以上100μm以下であり、かつ構成領域の幅が5.0μm以上10.0μm以下である。
本発明の切削工具によれば、被覆層に所定の大きさの亀裂を予め強制的に発生させておくことで、被覆層中の引張応力を解放することができる。また、切削加工時に被覆層の表面を起点とした亀裂が新たに発生したとしても、元々存在する亀裂のアンカー効果によって、新たに発生した亀裂の伝搬が抑制される。その結果、被覆層によって耐摩耗性を向上しつつ、被覆層の脱落やチッピングを防ぐことができ、耐摩耗性と耐欠損性との両方に優れた切削工具を得ることができる。
本発明の切削工具によれば、亀裂の幅を50nm以上200nm以下とすることにより、亀裂によるアンカー効果を得ることができる。亀裂の幅が200nmを超えると、亀裂自体のアンカー効果が低減し、被覆層にチッピングが発生しやすくなる。また、亀裂の間隔を30μm以上とすることにより、亀裂による耐摩耗性を低下することができ、亀裂の間隔を100μm以下とすることにより、被覆層の引張応力を十分に開放することができる。さらに、亀裂の構成領域の幅を5.0以上10.0μm以下とすることにより、亀裂によるアンカー効果を得ることができる。亀裂の構成領域の幅が10.0μmを超えると、切削加工時に新たに発生した亀裂が被覆層表面に対して平行に伝播してしまい、新たに発生した亀裂とともに被覆層の脱落やチッピングを引き起こすおそれがある。
本発明の切削工具において好ましくは、硬質相は、炭化タングステンと、IVa族、Va族、またはVIa族の元素の炭化物、これらの元素の窒化物、およびこれらの元素の炭窒化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の物質とよりなっている。
本発明の切削工具において好ましくは、硬質相は炭化タングステンよりなっている。
これらの材料よりなる硬質相は、硬質であり、耐磨耗性に優れている。また、高温時の硬度低下も小さい。このため、切削工具の材料として適している。
本発明の切削工具において好ましくは、結合相は、鉄、コバルト、およびニッケルよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素よりなっている。
これらの材料は、金属炭化物よりなる硬質相同士の結合を強化する性質を有しているので、結合相として適している。
本発明の切削工具において好ましくは、被覆層は、IVa族、Va族、VIa族、アルミニウム、またはシリコンの元素の炭化物、上記元素の窒化物、上記元素の炭窒化物、上記元素の酸化物、上記元素の炭酸化物、上記元素の炭酸窒化物、上記元素のホウ窒化物、および上記元素のホウ炭窒化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の物質よりなっている。
これにより、基体表面が硬質セラミックス膜で構成されるため、耐摩耗性を向上することができる。
本発明の切削工具において好ましくは、被覆層の引張応力が開放されている。
これにより、切削加工時に発生する亀裂の伝搬が抑制され、耐摩耗性を向上することができる。
本発明の切削工具において好ましくは、被覆層は3μm以上20μm以下の厚みを有する。
被覆層の厚みを3μm以上とすることにより、被覆層の耐摩耗性向上の効果を得ることができ、被覆層が厚いほど耐摩耗性は向上するが、被覆層の厚みを20μm以下とすることにより、被覆層の耐欠損性を確保することができる。
本発明の切削工具において好ましくは、被覆層は、イオンミリングによって研磨した後の断面において、幅が50nm以上200nm以下であり、かつ間隔が30μm以上100μm以下であり、かつ構成領域の幅が5.0μm以上10.0μm以下である亀裂を有している。
被覆層中の亀裂を観察する際には、イオンミリングによって断面を研磨することで、研磨時に被覆層に与えるダメージを低減させることができ、成膜時の亀裂をそのまま観察することができる。
本発明の切削工具の製造方法は、上記の切削工具の製造方法であって、好ましくは気相合成法によって800℃以上1100℃以下の温度で被覆層を成膜する。
800℃以上で成膜することにより、被覆層を基体に容易に成膜することができ、1100℃以下で成膜することにより、冷却時に被覆層に発生する引張応力を低減することができる。
本発明の切削工具の製造方法は、上記の切削工具の製造方法であって、好ましくはチャンバ内で被覆層を成膜する工程と、被覆層を成膜する工程の後で、チャンバ内を0.1MPaの加圧雰囲気に保った状態で10.0℃/min以上15.0℃/min以下の速度で被覆層を冷却する工程とを備えている。
これにより、基体表面の法線に沿った断面において、幅が50nm以上200nm以下であり、かつ間隔が30μm以上100μm以下であり、かつ構成領域の幅が5.0μm以上10.0μm以下である亀裂を被覆層に容易に発生させることができる。
本発明の切削工具およびその製造方法によれば、耐摩耗性と耐欠損性との両方に優れた切削工具を得ることができる。
以下、本発明の一実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施の形態における切削工具の構成を模式的に示す要部断面図である。なお、図1は被覆層表面の法線に沿った断面図である。図1を参照して、本実施の形態における切削工具(被覆切削工具)は、基体1と被覆層2とを備えている。被覆層2は基体1の表面1aに形成されている。被覆層2は、蛇行した多数の亀裂11および12を有している。
基体1は、マトリックスとしての複数の硬質相と、硬質相同士を結合する結合相とを有している。基体1は、硬質の金属炭化物の粉末を焼結して作られる超硬合金であることが好ましい。
硬質相は硬質化合物よりなっており、たとえば炭化タングステンと、IVa族、Va族、またはVIa族の元素の炭化物、これらの元素の窒化物、およびこれらの元素の炭窒化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の物質とよりなっている。具体的には、TiC、TiN、TaC、NbC、ZrCN、Cr32、ZrC、ZrN、またはTiCNなどが挙げられる。また、硬質相は上記の材料の代わりに、サーメットや、炭化タングステン単体などよりなっていてもよい。
結合相は、硬質相同士を結合する役割を果たすものであり、たとえば鉄系金属、言い換えれば鉄、コバルト、およびニッケルよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素よりなっている。硬質相がサーメットよりなっている場合、結合相はコバルト、ニッケル、またはコバルトとニッケルとの合金であることが特に好ましい。
被覆層2はセラミックス(硬質セラミックス)からなっており、たとえばIVa族、Va族、VIa族、アルミニウム、またはシリコンの元素の炭化物、これらの元素の窒化物、これらの元素の炭窒化物、これらの元素の酸化物、これらの元素の炭酸化物、これらの元素の炭酸窒化物、これらの元素のホウ窒化物、およびこれらの元素のホウ炭窒化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の物質よりなっている。具体的には、TiC、TiN、TiCN、またはAl23などが挙げられる。また被覆層2は単一層であってもよいし、複合層であってもよい。また、被覆層2は、たとえば3μm以上20μm以下の厚みを有している。
本実施の形態においては、被覆層2は、表面2aの法線に沿った断面において、幅が50nm以上200nm以下であり、かつ間隔が30μm以上100μm以下であり、かつ構成領域の幅が5.0μm以上10.0μm以下である亀裂11および12を有している。このような亀裂を発生させることにより、被覆層の引張応力が開放される。
ここで、亀裂の幅は以下の方法で得られる。任意の亀裂11に着目し、その厚み方向(図中縦方向)の長さlを4等分し、l/4の位置において基体1の表面1aに平行にそれぞれ3本の仮想線20a〜20cを引く。次に、仮想線20a〜20cの各々と亀裂11との交点において、亀裂11の溝の幅W1a〜W1cの各々を測定し、幅W1a〜W1cの平均値W1を計算する。この平均値W1が1本の亀裂11の幅とされる。同様にして50本分の亀裂の各々の幅W1〜W50を測定および計算し、50本分の亀裂の幅W1〜W50の平均値Wを計算する。この平均値Wが亀裂の幅とされる。
また、亀裂の間隔は、基体1の表面1aに沿った(図中横方向)1.5mmの範囲の領域に含まれる亀裂の本数を数え、その領域に存在する亀裂の本数で領域の幅(1.5mm)を割ることによって得られる。
さらに、亀裂の構成領域の幅は以下の方法で得られる。任意の亀裂12に着目し、亀裂12が伝搬している被覆層2の領域を特定する。そして、その領域における基体1の表面1aに沿った幅R1を測定する。同様にして50本分の亀裂の構成領域の各々における幅R1〜R50を測定し、50本分の亀裂の構成領域における幅R1〜R50の平均値Rを計算する。この平均値Rが亀裂の構成領域の幅とされる。
被覆層2中の亀裂の観察方法は任意であるが、イオンミリングによって断面を研磨した後で観察することが好ましい。イオンミリングとは、断面にイオンビームを照射することで鏡面研磨する手法である。
続いて、本実施の形態における切削工具の製造方法について説明する。
始めに、硬質化合物よりなる複数の硬質相と、硬質相同士を結合する結合相とを有する基体1を準備する。続いて、基体1の表面1aに被覆層2を形成する。被覆層2は、たとえばチャンバ内に基体1を配置し、CVD法などの気相合成法を用いて、800℃以上1100℃以下の温度で基体1上に成膜される。特にCVD法により形成した被覆層2は、基体1との密着強度が非常に強い。その結果、被覆層2を厚くすることができ、耐摩耗性を向上することができる。また、CVD法の代わりに、イオンプレーティング法やイオンスパッタリング法などの物理的蒸着法を用いてもよい。
次に、チャンバ内において被覆層2を冷却する。被覆層2は、たとえばチャンバ内を0.1MPaの加圧雰囲気に保った状態で10.0℃/min以上15.0℃/min以下の速度で冷却される。特にCVD法などにより硬質セラミックスの被覆層2を形成した場合には、被覆層2に引張応力が生じることが知られている。上記の条件で被覆層2を冷却することにより、被覆層2に所望のサイズの亀裂を発生させることができ、被覆層2に生じる引張応力を開放することができる。
ここで、数μm〜10数μmの厚みの被覆層を成膜して、成膜後に冷却速度を上述の範囲に制御せず、自然冷却する場合には、冷却時に被覆層に発生する引張応力が被覆層の破断強度を越え、被覆層に平均100〜400μmの間隔で亀裂が自然に発生する。これにより、引張応力の一部が解放される。しかし、この場合には被覆層に0.5〜1.0GPa程度の弾性歪みが残る。その結果、耐欠損性を向上することができない。被覆層中の残留応力は、たとえばsin2Ψ法より測定可能である。
なお、上記の条件で被覆層2を冷却する以外の方法を用いても、被覆層2に所望の亀裂を発生させることができる。たとえばショットピーニングを用いて微粒子を被覆層2に衝突させる方法を用いてもよい。以上の方法により、本実施の形態における切削工具が得られる。
本実施の形態における切削工具は、基体1と被覆層2とを備えている。基体1は、硬質化合物よりなる複数の硬質相と、硬質相同士を結合する結合相とを有している。被覆層2は、基体1の表面1aに形成されたセラミックスからなっている。被覆層2は、基体1の表面1aの法線に沿った断面において、幅Wが50nm以上200nm以下であり、かつ間隔が30μm以上100μm以下であり、かつ構成領域の幅Rが5.0μm以上10.0μm以下である亀裂11および12を有している。
本実施の形態における切削工具によれば、被覆層2に所定の大きさの亀裂11および12を予め強制的に発生させておくことで、被覆層2内の引張応力を解放することができる。また、切削加工時に被覆層2の表面2aを起点とした亀裂が新たに発生したとしても、元々存在する亀裂11および12のアンカー効果によって、新たに発生した亀裂の伝搬が抑制される。その結果、被覆層2によって耐摩耗性を向上しつつ、被覆層2の脱落やチッピングを防ぐことができ、耐摩耗性と耐欠損性との両方に優れた切削工具を得ることができる。
JIS(Japanese Industrial Standard)に規定されるJIS B 4120(1998)CNMG120408の切削工具形状を有する超硬合金母材(基体)を用意した。超硬合金母材は、試料A1〜A4の各々について3個ずつ準備した。この母材は、87.0wt%のWCと、7.0wt%のCOと、3.0wt%のTiCと、3.0wt%のNbCとよりなっている。そして、この母材の表面上に、CVD法で7μmの厚みを有するMT(moderate temperature)−TiCNと、4μmの厚みを有するAl23とをこの順序に成膜することにより、被覆層を形成した。被覆層成膜後の冷却時には、50リットル/minの速度で水素ガスをチャンバ内に送り込むことによってチャンバ内を0.1MPaの加圧雰囲気にした上で、各試料において冷却速度をそれぞれ5.0℃/min(試料A1)、10.0℃/min(試料A2)、15.0℃/min(試料A3)、および20.0℃/min(試料A4)に制御した。これにより、亀裂を被覆層に強制的に導入し、それにより被覆層の引張応力を解放した。こうして得られた3個ずつの試料A1〜A4のうち1個の試料A1〜A4を、被覆層表面の法線に沿った断面で切断し、イオンミリングによって鏡面研磨した。そして電子顕微鏡を用いてこの断面を観察し、亀裂の幅、亀裂の間隔、および亀裂の構成領域の幅を測定した。また、3個ずつの試料A1〜A4のうち別の1個を用いて耐摩耗性を評価した。さらに、また、3個ずつの試料A1〜A4のうち残りの1個を用いて耐チッピング性を評価した。耐摩耗性および耐チッピング性の評価方法をそれぞれ以下の表1および2に示し、耐摩耗性および耐チッピング性の評価結果を表3に示す。また、試料A3の断面の顕微鏡写真を図2に示す。
図2および表1〜表3を参照して、本発明の切削工具である試料A2およびA3は、試料A1と同等の逃げ面摩耗量の結果が得られている一方で、試料A1およびA4よりも衝撃時間が飛躍的に長くなっている。
本実施例の結果から、本発明の切削工具によれば、耐摩耗性と耐欠損性との両方に優れた切削工具を得ることができる。
実施例1と同じ材料を準備し、CVD法で7μmの厚みを有するMT−TiCNと、4μmの厚みを有するAl23とをこの順序に成膜することにより、被覆層を形成した。被覆層成膜後の冷却時には、水素ガスをチャンバ内に送り込むことによって各試料においてチャンバ内の圧力をそれぞれ0(<0.05MPa、試料B1)、0.05MPa(試料B2)、および0.1MPa(試料B3)に設定した上で、冷却速度を15.0℃/minに制御した。これにより、亀裂を被覆層に強制的に導入し、それにより被覆層の引張応力を解放した。こうして得られた3個ずつの試料B1〜B3のうち1個の試料B1〜B3を用いて、実施例1と同様の方法で亀裂の幅、亀裂の間隔、および亀裂の構成領域の幅を測定した。また、3個ずつの試料B1〜B3のうち残りの2個を用いて、実施例1と同様の方法で耐摩耗性および耐チッピング性を評価した。耐摩耗性および耐チッピング性の評価結果を表4に示す。
表4を参照して、本発明の切削工具である試料B2およびB3は、試料B1と同等の逃げ面摩耗量の結果が得られている一方で、試料B1よりも衝撃時間が飛躍的に長くなっている。
試料B1では冷却時のチャンバ内圧力を0MPaに設定したため、亀裂の構成領域の幅が狭い、すなわち直線に近い亀裂となったために被覆層の耐チッピング性が悪化している。これに対して、試料B2およびB3では、亀裂の構成領域が広い、すなわち蛇行した亀裂となったために、優れた逃げ面耐摩耗性を維持しつつ、耐チッピング性が大幅に向上している。
また、チャンバ内圧力を0.1MPaにすることで蛇行した亀裂を形成することができる理由は、チャンバ内が加圧状態となっていることによって、被覆層に作用する外部からの圧力(チャンバ内の圧力)と、被覆層に残留する引張応力との合力が被覆層の表面に対して平行に作用するのではなく、斜め方向に作用するためであると推測される。
本実施例の結果から、本発明の切削工具によれば、耐摩耗性と耐欠損性との両方に優れた切削工具を得ることができる。
以上に開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態および実施例ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正や変形を含むものと意図される。
本発明の切削工具は、フライス加工や溝付き材の旋削加工などの、断続的な荷重が負荷される切削加工に特に適している。
本発明の一実施の形態における切削工具の構成を模式的に示す要部断面図である。 本発明の実施例1における試料A3の顕微鏡写真である。
符号の説明
1 基体、1a 基体表面、2 被覆層、2a 被覆層表面、11,12 亀裂、20a〜20c 仮想線。

Claims (10)

  1. 硬質化合物よりなる複数の硬質相と、前記硬質相同士を結合する結合相とを有する基体と、
    前記基体表面に形成されたセラミックスからなる被覆層とを備え、
    前記被覆層は、前記被覆層表面の法線に沿った断面において、幅が50nm以上200nm以下であり、かつ間隔が30μm以上100μm以下であり、かつ構成領域の幅が5.0μm以上10.0μm以下である亀裂を有する、切削工具。
  2. 前記硬質相は、炭化タングステンと、IVa族、Va族、またはVIa族の元素の炭化物、前記元素の窒化物、および前記元素の炭窒化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の物質とよりなる、請求項1に記載の切削工具。
  3. 前記硬質相は炭化タングステンよりなる、請求項1に記載の切削工具。
  4. 前記結合相は、鉄、コバルト、およびニッケルよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素よりなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の切削工具。
  5. 前記被覆層は、IVa族、Va族、VIa族、アルミニウム、またはシリコンの元素の炭化物、前記元素の窒化物、前記元素の炭窒化物、前記元素の酸化物、前記元素の炭酸化物、前記元素の炭酸窒化物、前記元素のホウ窒化物、および前記元素のホウ炭窒化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の物質よりなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の切削工具。
  6. 前記被覆層の引張応力が開放されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の切削工具。
  7. 前記被覆層は3μm以上20μm以下の厚みを有する、請求項1〜6のいずれかに記載の切削工具。
  8. 前記被覆層は、イオンミリングによって研磨した後の前記断面において、幅が50nm以上200nm以下であり、かつ間隔が30μm以上100μm以下であり、かつ構成領域の幅が5.0μm以上10.0μm以下である前記亀裂を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の切削工具。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の切削工具の製造方法であって、
    気相合成法によって800℃以上1100℃以下の温度で前記被覆層を成膜する工程を備える、切削工具の製造方法。
  10. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の切削工具の製造方法であって、
    チャンバ内で前記被覆層を成膜する工程と、
    前記被覆層を成膜する工程の後で、前記チャンバ内を0.1MPaの加圧雰囲気に保った状態で10.0℃/min以上15.0℃/min以下の速度で前記被覆層を冷却する工程とを備える、切削工具の製造方法。
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