JP2008155328A - 表面被覆工具 - Google Patents
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Abstract
【課題】 耐摩耗性が高く、かつ高い耐欠損性を有する表面被覆工具を提供する。
【解決手段】 基体の表面に、Ti1−a−bAlaMb(CxN1−x)(ただし、MはTiを除く周期表4、5、6族元素、希土類元素およびSiから選ばれる1種以上であり、0.4≦a≦0.65、0≦b≦0.3、0≦x≦1である。)からなる被覆層1を被覆して、被覆層1は基体10の表面に対して垂直に伸びる柱状結晶2を主体とした組織からなるとともに、内部に粒状結晶3が分散し、上側に一端が扇状に広がった形状の扇状結晶4が成長してなる表面被覆工具であり、被覆層のクラック対する抵抗力が高くなる結果、耐チッピング性が向上する。
【選択図】 図1
【解決手段】 基体の表面に、Ti1−a−bAlaMb(CxN1−x)(ただし、MはTiを除く周期表4、5、6族元素、希土類元素およびSiから選ばれる1種以上であり、0.4≦a≦0.65、0≦b≦0.3、0≦x≦1である。)からなる被覆層1を被覆して、被覆層1は基体10の表面に対して垂直に伸びる柱状結晶2を主体とした組織からなるとともに、内部に粒状結晶3が分散し、上側に一端が扇状に広がった形状の扇状結晶4が成長してなる表面被覆工具であり、被覆層のクラック対する抵抗力が高くなる結果、耐チッピング性が向上する。
【選択図】 図1
Description
本発明は基体の表面に被覆層を成膜してなる表面被覆工具に関する。
現在、切削工具や耐摩部材、摺動部材といった耐摩耗性や摺動性、耐欠損性を必要とする表面被覆工具では、WC基超硬合金、TiCN基サーメット等の硬質材料の表面に様々な被覆層を成膜して耐摩耗性、摺動性、耐欠損性を向上させる手法が使われている。
かかる被覆層として、TiCN層やTiAlN層が一般的に広く採用されているが、より高い耐摩耗性と耐欠損性の向上を目的として種々な被覆層が開発されつつある。
例えば、特許文献1では、成膜条件を調整してTiAlN系の硬質被膜中に存在する膜厚以上の大きさを持った粗大粒子を低減することによって、被削材の耐溶着性や耐摩耗性が改善されることが開示されている。また、特許文献2では、TiAlN系硬質膜中に膜の素地と組成の異なるTiAlN複合窒化物分散粒子を分散強化した複合硬質膜が記載され、素地と分散粒子が同種の結晶構造であるために特性向上のシナジー効果を発揮させることができて切削性能が向上することが開示されている。さらに、特許文献3では、TiAlN系硬質被覆層を成膜した後に加熱酸化処理を施して、TiAlN系の素地中にTi酸化物やAl酸化物等が分散分布した組織とすることによって、被覆層の耐摩耗性が向上することが開示されている。
特開2002−346812号公報
特開2002−129306号公報
特開平10−251831号公報
しかしながら、上記特許文献1のような粗大粒子を低減した被覆層では被覆層表面の平滑性が高くなって被削材の溶着抑制や耐摩耗性向上の効果はあるものの、被覆層の耐欠損性が低くなってしまうという問題があった。また、特許文献2や特許文献3のように、単に被覆層内を分散粒子で分散強化しただけの被覆層では、被覆層の耐欠損性は向上するものの充分でなく、さらに耐欠損性を高める必要があった。
そこで、本発明の表面被覆工具は、上記問題を解決するためのものであり、その目的は、耐摩耗性が高く、かつ高い耐欠損性を有する表面被覆工具を提供することである。
本発明の表面被覆工具は、基体の表面に、Ti1−a−bAlaMb(CxN1−x)(ただし、MはTiを除く周期表4、5、6族元素、希土類元素およびSiから選ばれる1種以上であり、0.4≦a≦0.65、0≦b≦0.3、0≦x≦1である。)からなる被覆層を被覆して、前記被覆層は前記基体の表面に対して垂直に伸びる柱状結晶を主体とした組織からなるとともに、内部に粒状結晶が分散し、該粒状結晶の上側に一端が扇状に広がった扇状結晶が成長してなることを特徴とする。
ここで、上記構成において、前記扇状に広がった形状の前記扇状結晶の頂部が、前記被覆層の表面から突出しているとともに、突出した部分の結晶幅が前記被覆層全体についての柱状結晶の平均結晶幅よりも広いことが望ましい。
また、上記構成において、前記突出した部分の結晶幅が1μm以下であることが望ましい。
さらに、上記構成において、前記被覆層全体についてのTiの含有量に比べて、前記突出した部分におけるTiの含有量が多いことが望ましい。
また、上記構成において、前記柱状結晶の平均結晶幅が0.05〜0.5μmであることが望ましい。
さらに、上記構成において、上側に一端が扇状に広がった扇状結晶が成長している前記粒状結晶は、平均粒径が0.2〜1μmであるとともに、少なくとも、Alの含有量が前記被覆層の全体における含有量より多いAl系粒状結晶と、M(ただし、MはTiを除く周期表4、5、6族元素、希土類元素およびSiから選ばれる1種以上である。)の含有量が前記被覆層の全体における含有量より多いM系粒状結晶とを含むことが望ましい。
また、上記構成において、前記粒状結晶の下側に、酸素含有量が前記粒状結晶の内部における酸素含有量より多い領域が存在することが望ましい。
本発明の表面被覆工具によれば、被覆層が特定の組成からなるとともに、前記基体の表面に対して垂直な方向に成長した柱状結晶を主体として構成されるとともに、内部に粒状結晶が分散し、上側に一端が扇状に広がった形状の前記柱状結晶が成長していることが大きな特徴である。これによって、クラックが発生して被覆層内を進展する際に扇状結晶においては正常部の柱状結晶とは異なる方向に粒界が形成されているために、クラックの進展方向が偏向される。また、扇状結晶の存在によって扇状結晶の下方に位置する柱状結晶は基体表面に垂直な方向に対して斜めに傾いた方向に成長することになるために、この下方に位置する柱状結晶は細幅の柱状結晶が複数本積層された組織となる。この斜めに伸びた柱状結晶はクラックの進展を抑制する効果があるので、被覆層のクラック対する抵抗力が高くなる結果、耐チッピング性が向上する。
ここで、上記構成において、前記扇状に広がった形状の前記扇状結晶の頂部が、前記被覆層の表面から突出しているとともに、突出した部分の結晶幅が前記被覆層全体についての柱状結晶の平均結晶幅よりも広いことが、突起部が比較的早期に摩耗して被覆層の表面が平滑になる点で望ましい。
また、上記構成において、前記突出した部分の結晶幅が1μm以下であることが、加工面の面粗度をさほど低下させることがない点で望ましい。
さらに、上記構成において、前記被覆層全体についてのTiの含有量に比べて、前記突出した部分におけるTiの含有量が多い構成とすると、突起部の硬度が低下して突出した部分が比較的早期に摩耗して被覆層の表面が平滑になる。
また、上記構成において、前記柱状結晶の平均結晶幅が0.05〜0.5μmであることが望ましい。
さらに、上記構成において、上側に一端が扇状に広がった扇状結晶が成長している前記粒状結晶は、平均粒径が0.2〜1μmであるとともに、少なくとも、Alの含有量が前記被覆層の全体における含有量より多いAl系粒状結晶と、M(ただし、MはTiを除く周期表4、5、6族元素、希土類元素およびSiから選ばれる1種以上である。)の含有量が前記被覆層の全体における含有量より多いM系粒状結晶とを含むことが望ましい。これによって、被覆層の硬度と靭性のバランスを図ることができる。
また、上記構成において、前記粒状結晶の下側に、酸素含有量が前記粒状結晶の内部における酸素含有量より多い酸素富化領域が存在することが望ましい。この酸素富化領域は、粒状結晶の上部の前記扇状に広がった前記柱状結晶の頂部に集中して衝撃が加わった場合であっても、粒状結晶にかかる衝撃を吸収してチッピングや欠損が発生するのを防止する効果がある。
本発明の表面被覆工具の好適例である表面被覆切削工具の一例について説明する。
本発明の表面被覆切削工具(以下、単に工具と略す)は、すくい面と逃げ面との交差稜線が切刃である形状をなし、かつ基体の表面に被覆層を成膜した構成となっている。被覆層1は、基体の表面に、Ti1−a−bAlaMb(CxN1−x)(ただし、MはTiを除く周期表4、5、6族元素、希土類元素およびSiから選ばれる1種以上であり、0.4≦a≦0.65、0≦b≦0.3、0≦x≦1である。)からなる被覆層を被覆してなる。
そして、本発明によれば、図1の被覆層の要部についての透過型電子顕微鏡(TEM)写真に示すように、被覆層1は、基体10の表面に対して垂直な方向に成長した柱状結晶2を主体として構成されるとともに、内部に粒状結晶3が分散し、上側に一端が扇状に広がった形状の柱状結晶(以下、扇形柱状結晶と略す。)4が成長していることが大きな特徴であり、これによって、クラックが発生して進展する際にクラックの進展方向を偏向し、かつ進展を抑制する効果があるので、被覆層1のクラック対する抵抗力が高くなる結果、耐チッピング性が向上する。
しかも、上記構成によって、被覆層1の内部に発生する残留応力を低減できて被覆層1の厚みを厚くしても自己破壊することなく安定した成膜が可能であるとともに、被覆層1の靭性が高くて耐欠損性が向上する。そのため、上記被覆層1は厚膜化しても被覆層1がチッピングしにくく、被覆層1の膜厚が0.5〜6μmであっても、被覆層1が剥離やチッピングすることを防止できて十分な耐摩耗性を維持することができる。
なお、被覆層1の組成については、上記組成の中でも、Ti1−a−b−c−dAlaMbWcSid(CxN1−x)(ただし、MはNb、Mo、Ta、Hf、Yから選ばれる1種以上、0.45≦a≦0.55、0.01≦b≦0.1、0.01≦c≦0.1、0.01≦d≦0.05、0≦x≦1)からなることが望ましく、この組成領域では、酸化開始温度が高くなって耐酸化性が高くて切削時の耐摩耗性が向上するとともに切刃先端に発生しやすいチッピングが抑制できて耐欠損性が高いものとなる。また、金属MはNb、Mo、Ta、Hf、Yから選ばれる1種以上であるが、中でもNbまたはMoを含有することが耐摩耗性・耐酸化性に最も優れる点があるから望ましい。
さらに、被覆層1の非金属成分であるC、Nは切削工具に必要な硬度および靭性に優れたものであり、被覆層1表面に発生するドロップレットの過剰な発生を抑制するために、x(N含有量)の特に望ましい範囲は0≦x≦0.5である。ここで、本発明によれば、被覆層1の組成はエネルギー分散型X線分析法(EDX)またはX線光電子分光分析法(XPS)にて測定できる。
ここで、扇状結晶4の頂部は被覆層1の表面から突出しているとともに、突出した部分(以下、突起部と略す。)5の結晶幅が柱状結晶2を主体とした組織の平均結晶幅よりも広いことが望ましい。これによって、突起部5は硬度の低いものとなり、突起部5が比較的早期に摩耗して被覆層1の表面が平滑になる。
また、突起部5の結晶幅が1μm以下であることが、加工面の面粗度をさほど低下させることがない点で望ましい。
さらに、被覆層1全体についてのTiの含有量に比べて、突起部5におけるTiの含有量が多い構成とすると、突起部5の硬度が低下する傾向にあり、これによって、突起部5が比較的早期に摩耗して被覆層1の表面が平滑になる傾向にある。なお、本発明においては、組成分析の精度を考慮して、突起部5の3箇所以上についての組成を測定し、その平均値を被覆層1全体の組成と比較する。
また、柱状結晶2の平均結晶幅が0.05〜0.5μmであることが、被覆層1の硬度と靭性を両立させるために望ましい。
さらに、上方に扇状結晶4が成長している粒状結晶3は、AlまたはMを主成分とし、平均粒径が200〜1000nmであることが、上方に扇状結晶4が形成されやすい点で望ましい。特に、粒状結晶3は、少なくともAlの含有量が前記被覆層の全体における含有量より多いAl系粒状結晶3Alと、M(ただし、MはTiを除く周期表4、5、6族元素、希土類元素およびSiから選ばれる1種以上である。)の含有量が被覆層1の全体における含有量より多いM系粒状結晶3Mとを含むことが望ましい。これによって、異なった硬度および靭性を有する粒状結晶3が存在し、これらの粒状結晶3の分散状態を制御することによって、被覆層1の耐摩耗性および耐欠損性のバランスを調整ことができる。なお、M(ただし、MはTiを除く周期表4、5、6族元素、希土類元素およびSiから選ばれる1種以上である。)元素としては、特にW、Nb、Mo、Siが上方に扇状結晶4が形成しやすい大きさの粒状結晶3を形成する点で望ましい。
また、粒状結晶3の下側には、酸素含有量が粒状結晶3の内部における酸素含有量より多い酸素富化領域6が存在することが望ましい。この酸素富化領域6は、粒状結晶3の上部の扇状結晶4の頂部である突起部5に集中して衝撃が加わった場合であっても、粒状結晶3にかかる衝撃を吸収して被覆層1にチッピングや欠損が発生するのを防止する効果がある。
そして、柱状結晶2の平均幅が50〜500nmであることが、被覆層1の硬度および強度を高めて耐摩耗性を向上させるために望ましい。また、粒状結晶3の平均粒径が5〜200nmであることが、被覆層1の靭性を高めることができる点で望ましい。
さらに、断面組織観察における粒状結晶3の存在比率は1〜30面積%であることが、被覆層1の耐欠損性を高めることができるとともに、被覆層1の耐摩耗性を維持できる点で望ましい。
なお、基体10としては、炭化タングステンや、炭窒化チタンを主成分とする硬質相とコバルト、ニッケル等の鉄族金属を主成分とする結合相とからなる超硬合金やサーメットの他、窒化ケイ素や、酸化アルミニウムを主成分とするセラミック、多結晶ダイヤモンドや立方晶窒化ホウ素からなる硬質相と、セラミックや鉄族金属等の結合相とを超高圧下で焼成する超高圧焼結体等の硬質材料が好適に使用される。
(製造方法)
次に、本発明の表面被覆工具の一例である表面被覆切削工具の製造方法について説明する。
次に、本発明の表面被覆工具の一例である表面被覆切削工具の製造方法について説明する。
まず、工具形状の基体10を従来公知の方法を用いて作製する。次に、基体10表面に、被覆層1を成膜する。被覆層1の成膜方法として、イオンプレーティング法やスパッタリング法等の物理蒸着(PVD)法が好適に適応可能である。成膜方法の一例についての詳細について説明すると、被覆層1をイオンプレーティング法で作製する場合には、金属チタン(Ti)、金属アルミニウム(Al)、金属タングステン(W)、金属シリコン(Si)、金属M(MはNb、Mo、Ta、Hf、Yから選ばれる1種以上)をそれぞれ独立に含有する金属ターゲットまたは複合化した合金ターゲットに用い、アーク放電やグロー放電などにより金属源を蒸発させイオン化すると同時に、窒素源の窒素(N2)ガスや炭素源のメタン(CH4)/アセチレン(C2H2)ガスと反応させて成膜する。このとき、ターゲット中に0.05〜0.3質量%の酸素を含有するように調整したターゲットを用いて、窒素に対するアルゴンガス流量が1:9〜4:6の割合の窒素(N2)ガスとアルゴン(Ar)ガスの混合ガスを用いて、イオンプレーティング法またはスパッタリング法?によって被覆層1を成膜する。これによって、ターゲット中の各金属元素が蒸発して基体10の表面に付着するが、蒸気圧の低いAlやM元素は大きな球状の塊として蒸発してそのまま基体10の表面に、いわゆるドロップレットとして付着する。本発明によれば、粒状結晶となるドロップレットの表面がターゲットに存在する酸素によって酸化された状態で被覆層内に取り込まれる。このとき、粒状結晶は上側表面が凸状をなした粒径0.1〜1μmであるが、粒状結晶を起点として成長する柱状結晶は粒状結晶の表面に対して垂直に成長するので、粒状結晶を起点として成長する柱状結晶は基体10の表面に対して垂直な方向のみではなく、斜めに傾いた方向、例えば、基体10の表面に対して垂直な方向から45度以内の角度で傾いた方向に成長する。その結果、上述した組織の被覆層1を作製することができる。
なお、イオンプレーティング法やスパッタリング法で上記被覆層1を成膜する際には、被覆層1の結晶構造および配向性を制御して高硬度な被覆層1を作製できるとともに基体10との密着性を高めるために30〜200Vのバイアス電圧を印加することが好ましい。
平均粒径0.5μmの炭化タングステン(WC)粉末に対して、金属コバルト(Co)粉末を10質量%、炭化バナジウム(VC)粉末と炭化クロム(Cr3C2)粉末を合計で1質量%の割合で添加、混合し、エンドミル形状に成型して焼成した。そして、研削工程を経た後、アルカリ、酸、蒸留水の順によって表面を洗浄して、外径16mmの4枚刃エンドミル基体を作製した。
そして、表1に示すターゲットを装着したアークイオンプレーティング装置またはスパッタリング装置内に上記基体をセットし550℃に加熱した後、表1に示す被覆層を成膜した。なお、成膜条件は窒素ガスとアルゴンガスの混合ガスを総圧力4Paの雰囲気中、アーク電流150A、バイアス電圧50V、加熱温度550℃とした。
得られたエンドミルについて、キーエンス社製走査型電子顕微鏡(VE8800)を用いて倍率500倍にて観察を行い、同装置に付随のEDAXアナライザ(AMETEK EDAX-VE9800)を用いて加速電圧15kVにてエネルギー分散型X線分光分析(EDX)法の一種であるZAF法により被覆層の組成の定量分析を行った。また、この方法で測定できなかった元素については、PHI社製X線光電子分光分析装置(Quantum2000)を用い、X線源はモノクロAlK(200μm、35W、15kV)を測定領域約200μmに照射して測定を行った。結果は表1に示した。
さらに、被覆層を透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察して分散粒子の有無を確認し、さらに分散粒子についてはエネルギー分散分光分析法(EDS)によって中心部と外周部の組成を定量した。また、1μm×5μmの任意領域3箇所について分散粒子の存在割合を算出した。
次に、得られた硬質被膜被覆エンドミルを用いて以下の切削条件にて切削試験を行った。結果は表2に記載した。
切削方法:ダウンカット
被削材 :SCM440
切削速度:80m/min
送り :0.08mm/刃
切り込み:切り込み深さd=18mm×横切込みw=1.5mm
切削状態:エアブロー
評価方法:90分間切削後のチッピングの有無、逃げ面摩耗幅測定
被削材 :SCM440
切削速度:80m/min
送り :0.08mm/刃
切り込み:切り込み深さd=18mm×横切込みw=1.5mm
切削状態:エアブロー
評価方法:90分間切削後のチッピングの有無、逃げ面摩耗幅測定
表1、2より、粒状結晶が分散しない試料No.12では、切刃にチッピングが発生して早期に欠損に至った。また、粒状結晶の上側に扇状結晶が見られず被覆層の他の部分と同じ柱状結晶が成長した試料No.11およびNo.13でも、耐欠損性が悪く工具寿命の短いものであった。
これに対し、前記基体の表面に対して垂直に伸びる柱状結晶を主体とした組織からなるとともに、内部に粒状結晶が分散し、上側に扇状結晶が成長していることが観察された試料No.1〜10では、耐欠損性と耐摩耗性が良くて切削性能に優れたものであった。
1 被覆層
2 柱状結晶
2a 下側柱状結晶
2b 上側柱状結晶
3 粒状結晶
3Al Al系粒状結晶
3M M系粒状結晶
4 扇状結晶
5 突起部
6 酸素富化領域
10 基体
2 柱状結晶
2a 下側柱状結晶
2b 上側柱状結晶
3 粒状結晶
3Al Al系粒状結晶
3M M系粒状結晶
4 扇状結晶
5 突起部
6 酸素富化領域
10 基体
Claims (7)
- 基体の表面に、Ti1−a−bAlaMb(CxN1−x)(ただし、MはTiを除く周期表4、5、6族元素、希土類元素およびSiから選ばれる1種以上であり、0.4≦a≦0.65、0≦b≦0.3、0≦x≦1である。)からなる被覆層を被覆した表面被覆工具であって、前記被覆層は前記基体の表面に対して垂直に伸びる柱状結晶を主体とした組織からなるとともに、内部に粒状結晶が分散し、該粒状結晶の上側に一端が扇状に広がった扇状結晶が成長してなることを特徴とする表面被覆工具。
- 前記扇状に広がった形状の前記扇状結晶の頂部が、前記被覆層の表面から突出しているとともに、突出した部分の結晶幅が前記被覆層全体についての柱状結晶の平均結晶幅よりも広いことを特徴とする請求項1記載の表面被覆工具。
- 前記突出した部分の結晶幅が1μm以下であることを特徴とする請求項2記載の表面被覆工具。
- 前記被覆層全体についてのTiの含有量に比べて、前記突出した部分におけるTiの含有量が多いことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の表面被覆工具。
- 前記柱状結晶の平均結晶幅が0.05〜0.5μmであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の表面被覆工具。
- 上側に一端が扇状に広がった扇状結晶が成長している前記粒状結晶は、平均粒径が0.2〜1μmであるとともに、少なくとも、Alの含有量が前記被覆層の全体における含有量より多いAl系粒状結晶と、M(ただし、MはTiを除く周期表4、5、6族元素、希土類元素およびSiから選ばれる1種以上である。)の含有量が前記被覆層の全体における含有量より多いM系粒状結晶とを含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載の表面被覆工具。
- 前記粒状結晶の下側に、酸素含有量が前記粒状結晶の内部における酸素含有量より多い領域が存在することを特徴とする請求項6記載の表面被覆工具。
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