JP2006175596A - 被覆工具 - Google Patents

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Abstract

【課題】ジルコニウム含有膜内の結晶粒界の強度と上層膜との膜密着性を高めることにより、従来に比して格段に切削耐久特性が優れる被覆工具を提供する。
【解決手段】基体表面に周期律表の4、5、6族並びにアルミニウムの炭化物、窒化物、酸化物、炭窒化物、炭酸化物、窒酸化物、炭窒酸化物のいずれか一種の単層皮膜または二種以上の多層皮膜を有し、前記皮膜の少なくとも一層がジルコニウムおよびチタンを含有し、該ジルコニウムおよびチタンを含有する皮膜が、チタンの炭窒化膜の表面に被覆されており、且つ、該ジルコニウムおよびチタンを含有する皮膜が双晶構造を持った結晶粒を含有することを特徴とする被覆工具である。
【選択図】図1

Description

本発明は被覆工具に関し、特にジルコニウムを含有する皮膜を被覆した工具に関する。
一般に、被覆工具は超硬質合金、高速度鋼、特殊鋼からなる基体表面に硬質皮膜を化学蒸着法や、物理蒸着法により成膜して作製される。このような被覆工具は皮膜の耐摩耗性と基体の強靭性とを兼ね備えており、広く実用に供されている。一般に、切削液を用いることなく(以下、乾式切削と呼ぶ。)高硬度材を高速で切削する場合、切削工具の刃先温度は1000℃前後にまで上がる。切削工具は、このような高温環境下において被削材との接触による摩耗や断続切削等による機械的衝撃に耐える必要があり、耐摩耗性と強靭性とを兼ね備えた被覆工具が重宝されている。上記の硬質皮膜には、耐摩耗性と靭性とが優れる周期律表4、5、6族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、炭酸化物、窒酸化物、炭窒酸化物からなる膜と、耐酸化性に優れる酸化アルミニウム膜が単層あるいは多層膜として被覆された被覆工具が一般に用いられている。また、上記の周期律表4、5、6族金属にはチタン、特にその炭化物(TiC)、窒化物(TiN)、炭窒化物(TiCN)が主に用いられている。このため、以降は、煩雑を避けるため周期律表4、5、6族金属の代表としてチタンを用いて具体的に詳述する。
これらTiC、TiN、TiCN膜は、常温でのビッカース硬度Hvが約3200、2100、2700と非常に硬く、常温での耐摩耗性は優れている。しかし、これらの膜の硬度は温度が上昇するにつれて急激に低下するため、刃先の温度が1000℃前後に達するような乾式切削では、耐摩耗性が急激に低下するという問題がある。これら硬質膜の耐摩耗性を改善するために、炭窒化チタンジルコニウム等の膜を工具基体上に被覆する方法(特表平11−510856号公報)が提案されている。この方法は、少なくとも2種の金属元素を含む炭窒化物膜を、CN化合物ガスを用いてCVD法で被覆する方法であるが、本発明者等が該公報記載の技術に従い再現検討した結果では、得られた炭窒化チタンジルコニウム膜は結晶粒径が大きく、工具としての耐摩耗性や耐チッピング性が必ずしも満足できるものではなかった。
特開2001−9604号公報 本発明者らは、上記従来技術における被覆工具の欠点を解決するために、鋭意研究した結果、金属成分としてジルコニウムとチタン等を含有する硬質膜、例えば(Ti、Zr)CN膜や(Ti、Zr)CNO膜等において、特定の条件を満たした場合には、高温においても膜硬度が急激に低下せず、膜の密着性と耐摩耗性が優れた膜を実現できることを見いだし、先に特開2001−11632号や特開2001−170804号、特願2000−394137号、特願2000−396568号、特願2001−3044号、特願2001−3060号、特願2001−23821号として出願し、当該技術を開示した。尚、ジルコニウムとチタンの両者を含有する硬質皮膜を被覆した工具として、粒状結晶組織を有する炭窒化チタン結晶粒と炭窒化ジルコニウム結晶粒の混合層を被覆した切削工具(特許文献1)が最近提案されているが、上記混合層ではTiCNとZrCNとが個別に結晶粒を形成しておりTi、Zr、C、Nが一体となった結晶粒からは形成されていない。このためTiCN結晶粒の高温での膜硬度低下とZrCN結晶粒の常温での膜硬度不足の欠点が解決していないあるいはこれら結晶粒間の結合力が充分でないためか、切削工具として使用時に得られる耐摩耗性や耐チッピング性が必ずしも満足できるものではなかった。
本発明は、本願発明者らが先に提案した上記の発明、すなわち、金属成分としてジルコニウムおよびチタン等を含有する硬質膜に係る発明を更に発展させ、ジルコニウム含有膜内の結晶粒界の強度(双晶)と上層膜との膜密着性(双晶が連続)を高めることにより、従来に比して格段に切削耐久特性が優れる被覆工具を提供することである。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究してきた結果、ジルコニウム含有膜を構成する少なくとも一部の結晶粒に双晶構造を持たせることによりジルコニウム含有膜内の結晶粒界の強度が高まるとともに、上層膜にも双晶構造を持たせ、両者の双晶境界部を連続して形成させることにより上層膜自身の粒界強度と膜密着性が高まり、更に優れた切削耐久特性を有する工具が得られることを見出し、本発明に到達した。すなわち本発明は、基体表面に周期律表の4、5、6族並びにアルミニウムの炭化物、窒化物、酸化物、炭窒化物、炭酸化物、窒酸化物、炭窒酸化物のいずれか一種の単層皮膜または二種以上の多層皮膜を有し、前記皮膜の少なくとも一層がジルコニウムおよびチタンを含有し、該ジルコニウムおよびチタンを含有する皮膜が、チタンの炭窒化膜の表面に被覆されており、且つ、該ジルコニウムおよびチタンを含有する皮膜が双晶構造を持った結晶粒を含有することを特徴とする被覆工具である。本発明の被覆工具は、ジルコニウム含有膜が双晶構造を持っているため結晶粒界の強度が高く、良好な切削耐久特性が実現されている。
上述のように、本発明を適用することにより、ジルコニウム含有膜の結晶粒界の強度や上層膜との密着性が優れ、優れた切削耐久特性を持つ有用なジルコニウム含有膜被覆工具を実現することができる。
本発明の被覆工具は、ジルコニウム含有膜の上に双晶構造を持った結晶粒を含有する層が形成されていることが好ましい。上層が双晶構造を持った結晶粒を含有することにより上層内の粒界強度が高くなり、更に優れた切削耐久特性が実現される。また、本発明の被覆工具は、ジルコニウム含有膜の上に形成された層の双晶境界部が前記ジルコニウム含有膜の双晶境界部から連続していることが好ましい。双晶境界部が連続していることにより、ジルコニウム含有膜とその上に形成されている層との間が結晶格子面レベルで連続的に成膜されており両層間に高い密着性が実現されるとともに、両層が双晶構造を有しているため各層自身の結晶粒界の強度も高く、更に優れた切削耐久特性が実現される。この効果は特に、二層以上のジルコニウ含有膜が多層膜状で形成されているときに強く現れる。また、本発明の被覆工具は、前記双晶構造を構成する双晶境界部(双晶面)が{111}面から成っていることが好ましい。前記双晶構造を構成する双晶境界部が格子点の多い{111}面から成っていることにより、双晶境界部が緻密に形成され、双晶境界部を境にして接する結晶粒間の粒界強度が更に高められ、更に優れた切削耐久特性が得られるものと判断される。
また、本発明の被覆工具は、ジルコニウム含有膜の上に形成された膜がジルコニウム含有膜からエピタキシャルに成長していることが好ましい。こうすることにより両層間に優れた密着性が得られ、更に優れた切削耐久特性が得られる。本発明の被覆工具において、チタンは周期律表の4、5、6族金属の代表として表記したものであり、他の同族金属、例えばZr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、Wのいずれかであっても略同様の効果が得られる。また、ジルコニウム含有膜はTiZrCNやTiZrCNO膜に限るものではなくTiZrC、TiZrCO、TiZrN、TiZrNO膜でも良い。また、TiZrCN膜やTiZrCNO膜はCH3CNとTiCl4或いはCH3CNとTiCl4と酸化ガス(例えば、CO2あるいはCOの単独ガス、または、CO2とCOの混合ガス)を反応させて成膜するものに限るものではなく、CH4、N2、TiCl4やCH4、N2、TiCl4と酸化ガスとを反応させて成膜するTiZrCN膜やTiZrCNO膜でもよい。また、ジルコニウム含有膜は上記の膜に限るものではなく、上記の膜に例えばCr、Hf、Ta、Nb、Mg、Y、Si、B、W、Mo、Sの一種または二種以上を0.3〜10質量%添加した膜でも良い。0.3質量%未満ではこれらを添加する効果が現れず、10質量%を超えると上記膜の耐摩耗や高靭性の効果が低くなる欠点が現れる。
本発明の被覆工具を構成可能なジルコニウム含有膜や、炭化チタン層、炭窒化チタン層、炭酸化チタン層、酸化アルミニウム膜は必ずしも最外層である必要はない。例えばさらにその上に少なくとも一層のチタンやジルコニウム、ハフニウムの化合物(例えばTiN、ZrN、HfN、TiCN層、ZrCN、HfCNあるいはこれらを組み合わせた多層膜等)を被覆してもよい。また、上記膜には本発明の被覆工具の切削耐久特性を劣化させない範囲で不可避の添加物、不純物を例えば数質量%程度まで含むことが許容される。本発明の被覆工具の製作は既知の成膜方法を採用できる。例えば、通常の化学蒸着法(熱CVD)、プラズマを付加した化学蒸着法(PACVD)、イオンプレーティング法等を用いることができる。用途は切削工具に限るものではなく、硬質皮膜を被覆した耐摩耗材や金型、溶湯部品等でもよい。次に、本発明の被覆工具を実施例により具体的に説明するが、それら実施例により本発明が限定されるものではない。
(実施例1)
WC:80質量%、TiC:5質量%、(Ta、Nb)C:6質量%、Co:9質量%の組成よりなる超硬合金製スローアウェイチップ上に、熱CVD法により成膜温度900℃で厚さ0.4μmの窒化チタン膜をまず形成した。続いて、成膜温度850℃、原料ガスをTiCl4ガス:1.5vol%、CH3CNガス:1.0vol%、N2ガス:45vol%、残りH2キャリヤーガスで構成された原料ガスを毎分6000mlだけCVD炉内に流し、成膜圧力:5.0kPaで厚さ1μmの炭窒化チタン膜を成膜した。次に、TiCl4ガス1.5vol%、ZrCl4ガス1.5vol%、CH3CNガス1vol%、COガスを1vol%、N2ガス45vol%、残H2キャリヤーガスで構成された原料ガスを毎分6000mlだけCVD炉内に流し、成膜圧力5kPa、成膜温度850℃で反応させることによりTiとZr、C、N、Oからなる炭窒酸化チタンジルコニウム膜を成膜した。続いて、ZrCl4ガス:1.5vol%、CH3CNガス:1.0vol%、N2ガス:45vol%、残りH2キャリヤーガスで構成された原料ガスを毎分6000mlだけCVD炉内に流し、上記と同じ成膜温度850℃、成膜圧力5kPaで炭窒化ジルコニウム層を成膜した。この炭窒酸化チタンジルコニウム層と炭窒化ジルコニウム層とを一組とする複層構造を単位層として、16組の複層構造単位層を積層することにより炭窒酸化チタンジルコニウム層と炭窒化ジルコニウム層とからなる全厚が9μmの多層膜を成膜した。
このようにして作製した本発明例1の多層膜の断面を透過型電子顕微鏡(TEM、日立製作所製、H−800、200kV)により撮影した写真を図1に示す。図2は、図1中の中央右上部近傍の暗STEM像である。これは透過した散乱電子を像化したもので、原子番号効果が強調され通常のSEM像と同様の像が撮影されている。即ち、明るい縞模様に撮影されている層がZrCN膜、その上下で暗く撮影されている縞模様層がTiZrCNO膜である。図3は図2近傍の領域に於けるTiの分布、図4はZrの分布を分析したものである。この元素マップはTEM装置に内蔵したエネルギー分散形X線分析装置(EDX、NORAN社製)により分析した。図1〜4より、TiZrCNO膜とZrCN膜とが多層膜状に高密度に成膜されていることがわかる。各膜間や結晶粒間に空孔は観察されていない。また、例えば図2の右下から左上にかけてのように、多数の結晶粒界が一直線に多層膜間を貫通していることがわかる。尚、図1において、特に暗く撮影されている部分が数箇所存在するが、これは、この部分の結晶の格子面が電子線の入射に整合しブラッグ反射のため電子線が回折されたため、入射電子線の透過能が低くなったためである。膜中にクラックや空孔があるためではない。
図5は図2中央部の高分解能像(日立製作所製HF−2100、200kVを使用)である。図5上半分にZrCN膜、下半分にTiZrCNO膜が撮影され、右下から左上にかけて結晶粒界a−bが撮影されている。図5より、結晶粒界a−bと平行にTiZrCNO膜とZrCN膜の両格子縞が一直線に連続して形成されており、しかも結晶粒界a−bを境界にして左右に対称であることがわかる。すなわち、TiZrCNO膜とZrCN膜の両者が双晶構造を有しており結晶粒界a−bが双晶面であること、しかもこの双晶面がTiZrCNO膜からZrCN膜まで一直線に連続していることがわかる。図5の格子像をフーリエ変換した結果、ZrCN膜とTiZrCNO膜とはともに結晶格子が面心立方晶であり、格子縞a−bは{111}面であることが判明した。また、図5において、TiZrCNO膜とZrCN膜の格子縞が界面(図5中央部付近にある)を越えて一直線に連続していることから両者がエピタキシャルに成長していることがわかる。
尚、図1〜5の透過型電子顕微鏡写真は成膜面の断面を厚さ20μm以下に研磨した後、更にイオンミリングにより厚さを薄くした膜断面の微少領域に、電子線を透過させて撮影したものである。このため、ジルコニウム含有膜やその上に成膜されている層に含有されている双晶部分が実際に観察される確率は低いと考えられる。したがって、図5のように、微少領域のTEN写真中に双晶部分が観測されるということはかなりの頻度でジルコニウム含有膜やその上層膜中に双晶部分が存在していると判断できる。また、観察試料の膜厚が厚い等、試料の条件が悪い時には、電子線回折像では双晶関係が確認されないことがある。この場合も試料を再加工し格子像を観察することにより、上記のような双晶関係が確認されることがあるので注意を要する。
本発明例1の条件で製作した切削工具5個を以下の条件で断続切削し、刃先先端の欠け状況を倍率50倍の実体顕微鏡で観察し、刃先にチッピングや膜剥離が生じるまでの断続切削回数を求めた。
被削材:SCM435材(四つ溝入)
工具形状:CNMG433
切削条件:200m/分
送り:0.3mm/rev
切り込み:1.5mm
切削液:使用せず(乾式切削)
その結果、本発明品は8000回迄断続切削後も刃先が健全でチッピングや剥離が見られず、膜の結晶粒界強度と膜間の密着性が優れており、切削工具として断続切削時の耐久性が優れていることがわかった。
(実施例2)
比較例2として、ジルコニウム含有膜に双晶構造が存在する場合としない場合の切削特性への影響を明確にするために、以下の比較例2を作製した。実施例1と同様の組成を持つ超硬合金製基板の表面に実施例1と同様の方法によりTiNとTiCNO膜とを成膜した後、次に、TiCl4ガス1.5vol%、ZrCl4ガス1vol%、CH3CNガス0.5vol%、CO2ガス1vol%、N2ガス45vol%、残H2キャリヤーガスで構成された原料ガスを毎分6000mlだけCVD炉内に流し、成膜圧力10kPa、成膜温度750℃でTiとZr、C、N、Oからなる炭窒酸化チタンジルコニウム膜を成膜した。続いて、原料ガスをZrCl4ガス:1.5vol%、CH3CNガス:0.5vol%、N2ガス:45vol%、残りH2キャリヤーガスで構成された原料ガスを毎分6000mlだけCVD炉内に流し、成膜温度950℃、成膜圧力10kPaで炭窒化ジルコニウム層を成膜した。この炭窒酸化チタンジルコニウム層と炭窒化ジルコニウム層とを一組とする複層構造を単位層として、16組の複層構造単位層を積層することにより炭窒酸化チタンジルコニウム層と炭窒化ジルコニウム層とからなる全厚が9μmの多層膜を成膜することにより、比較例2を作製した。
この比較例2のジルコニウム含有膜近傍を実施例1と同様にして透過型電子顕微鏡で観察したが、ジルコニウム含有膜に双晶構造部は見られなかった。次に、比較例2の条件で作製した切削工具5個を用いて実施例1と同一の条件で断続切削試験を行い、刃先先端の欠け状況を倍率50倍の実体顕微鏡で観察した結果、5000回衝撃切削後にいずれにも刃先にチッピングが発生し切削工具として劣っていることが判明した。また、この断続切削試験で膜剥離や欠けを発生した部分をミクロ観察したところ、膜剥離がジルコニウム含有膜から発生しており、これが原因でチッピングが発生していることがわかった。
(実施例3)
本発明例3として、WC:80質量%、TiC:5質量%、(Ta、Nb)C:6質量%、Co:9質量%の組成よりなる超硬合金製スローアウェイチップ上に、実施例1と同じ条件で厚さ0.4μmの窒化チタン膜と厚さ1μmの炭窒化チタン膜を成膜した。次に、TiCl4ガス1.5vol%、ZrCl4ガス1.5vol%、CH3CNガス2.0vol%、N2ガス45vol%、残H2キャリヤーガスで構成された原料ガスを毎分6000mlだけCVD炉内に流し、成膜圧力5kPa、成膜温度850℃で反応させることによりTiとZr、C、Nからなる炭窒化チタンジルコニウム膜を成膜した。続いて、ZrCl4ガス1.5vol%、CH3CNガス1.0vol%、N2ガス45vol%、残H2キャリヤーガスで構成された原料ガスを毎分6000mlだけCVD炉内に流し、上記と同じ成膜温度850℃、成膜圧力:5kPaで炭窒化ジルコニウム層を成膜した。この炭窒化チタンジルコニウム層と炭窒化ジルコニウム層とを一組とする複層構造を単位層として、12組の複層構造単位層を積層することにより炭窒化チタンジルコニウム層と炭窒化ジルコニウム層とからなる全厚が7μmの多層膜を成膜した。その後、TiCl4ガスとCH4ガスとH2キャリヤーガスで構成された原料ガス2、200ml/分を30分間流し、そのまま連続して本構成の原料ガスにさらに20ml/分のCO2ガスを追加して30分間流すことにより、成膜温度950℃で、チタンの炭化物とチタンの炭酸化物からなる層(結合膜)を作製した。続いてAl金属小片を詰め350℃に保温した小筒中にH2ガス310ml/分とHClガス130ml/分とを流すことにより発生させたAlCl3ガスとH2ガス2l/分とCO2ガス100ml/分とをCVD炉内に流し、1010℃で反応させることにより2μm厚さのα型酸化アルミニウム膜を成膜した後、更に成膜温度1010℃で厚さ0.8μmの窒化チタン膜することにより本発明例3の被覆工具を得た。
本発明例3を理学電気(株)製のX線回折装置(RU−200BH)でX線源にCuKα1線(λ=0.15405nm)を用いて2θ−θ走査法によりX線回折図形を測定した後、実施例1と同様に、本発明品の多層膜の断面を透過型電子顕微鏡(TEM、日立製作所製、H−800、200kV)とエネルギー分散形X線分析装置(EDX、NORAN社製)によりミクロ解析した結果、超硬合金製基体の表面にTiNとTiCN膜を経てTiZrCNとZrCNとから成る多層膜が高密度に成膜されており、その上に結合膜を経てα型酸化アルミニウムとTiN膜が成膜されていることが確認された。そして、多層膜部分にはTiZrCN結晶粒とZrCN結晶粒の両者が双晶構造を有しており、しかも両結晶粒間で双晶面が直線的に連続していることが確認された。
上記のようにして得られた本発明の被覆工具を用いて、以下の条件で断続切削を行い、刃先の損傷状況を倍率50倍の工具顕微鏡で観察した。
被削材:SCM435(四つ溝入り)
工具形状:CNMG433
切削速度:220m/分
送り:0.20mm/rev
切り込み:1.5mm
切削液:使用せず(乾式切削)
この切削テストの結果、本発明品は、いずれも、断続切削回数が7000回迄断続切削後も刃先にジルコニウム含有膜やアルミナ膜にチッピングや剥離が見られず、本発明例3の膜の結晶粒界強度と膜間の密着性が優れており、工具寿命が長いことが判明した。
(実施例4)
比較例4として、ジルコニウム含有膜が双晶構造を有する場合と有しない場合との差を明確にするために以下の比較例4を作製した。実施例3と同様の組成を持つ超硬合金製基板の表面に実施例3と同様の方法によりTiNとTiCN膜とを成膜した後、次に、TiCl4ガス1.5vol%、ZrCl4ガス0.5vol%、CH3CNガス0.5vol%、N2ガス45vol%、残H2キャリヤーガスで構成された原料ガスを毎分6000mlだけCVD炉内に流し、成膜圧力15kPa、成膜温度750℃でTiとZr、C、N、からなる炭窒化チタンジルコニウム膜を成膜した。続いて、成膜温度950℃、原料ガスをZrCl4ガス:1.5vol%、CH3CNガス:0.5vol%、N2ガス:45vol%、残りH2キャリヤーガスで構成された原料ガスを毎分6000mlだけCVD炉内に流し、成膜圧力:15kPaで炭窒化ジルコニウム層を成膜した。この炭窒化チタンジルコニウム層と炭窒化ジルコニウム層とを一組とする複層構造を単位層として、12組の複層構造単位層を積層することにより炭窒化チタンジルコニウム層と炭窒化ジルコニウム層とからなる全厚が7μmの多層膜を成膜した。そして更に、実施例2と同じ条件でチタンの炭化物とチタンの炭酸化物からなる層(結合膜)を作製し、更に厚さ2μmのα型酸化アルミニウム膜と厚さ0.8μmの窒化チタン膜を成膜することにより比較例4の被覆工具を作製した。
比較例4のジルコニウム含有膜近傍を実施例3と同様にして透過型電子顕微鏡で観察したが、ジルコニウム含有膜に双晶構造部は見られなかった。次に、比較例4の条件で作製した切削工具5個を用いて実施例3と同じ条件で断続切削試験を行い、刃先先端のチッピング発生状況を倍率50倍の実体顕微鏡で観察した結果、4500回衝撃切削後にいずれにもチッピングや膜剥離が発生しており切削工具として劣っていることが判明した。また、この断続切削試験で膜剥離や欠けを発生した部分をミクロ観察したところ、チッピングや膜剥離がジルコニウム含有膜中で発生しており、これが原因で欠けが発生していると考えられることがわかった。
図1は、本発明例の被覆工具の多層膜の断面を透過型電子顕微鏡で観察した組織写真を示す。 図2は、図1中の中央右上部近傍の暗STEM像を示す。 図3は、図2近傍の領域に於けるTiの分布を示す。 図4は、図2近傍の領域におけるZrの分布を示す。 図5は、図2の中央部の高分解能像で、図5上半分にZrCN膜、下半分にTiZrCNO膜が撮影され、右下から左上にかけて結晶粒界a−bを撮影したSTEM像を示す。

Claims (7)

  1. 基体表面に周期律表の4、5、6族並びにアルミニウムの炭化物、窒化物、酸化物、炭窒化物、炭酸化物、窒酸化物、炭窒酸化物のいずれか一種の単層皮膜または二種以上の多層皮膜を有し、前記皮膜の少なくとも一層がジルコニウムおよびチタンを含有し、該ジルコニウムおよびチタンを含有する皮膜が、チタンの炭窒化膜の表面に被覆されており、且つ、該ジルコニウムおよびチタンを含有する皮膜が双晶構造を持った結晶粒を含有することを特徴とする被覆工具。
  2. 請求項1に記載の被覆工具において、前記ジルコニウムおよびチタンを含有する皮膜の上に双晶構造を持った結晶粒を含有する膜が形成されていることを特徴とする被覆工具。
  3. 請求項2記載の被覆工具において、前記ジルコニウムおよびチタンを含有する皮膜の上に形成された膜の双晶境界部が前記ジルコニウムおよびチタンを含有する皮膜の双晶境界部から連続していることを特徴とする被覆工具。
  4. 請求項1乃至3記載の被覆工具において、前記双晶構造を構成する双晶境界部が{111}面から成っていることを特徴とする被覆工具。
  5. 請求項1乃至4記載の被覆工具において、前記ジルコニウムおよびチタンを含有する皮膜の上に形成された層が、前記ジルコニウムおよびチタンを含有する皮膜の上にエピタキシャルに成長していることを特徴とする被覆工具。
  6. 請求項1乃至5記載の被覆工具において、前記ジルコニウムおよびチタンを含有する皮膜がTi、Zr、C、Nから成ることを特徴とする被覆工具。
  7. 請求項1乃至6記載の被覆工具において、前記ジルコニウムおよびチタンを含有する皮膜がTi、Zr、C、N、Oから成ることを特徴とする被覆工具。
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JP2010046757A (ja) * 2008-08-21 2010-03-04 Sumitomo Electric Hardmetal Corp 切削工具およびその製造方法
CN116162918A (zh) * 2023-04-26 2023-05-26 赣州澳克泰工具技术有限公司 一种高硬度高韧性的刀具涂层及制备方法

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