JP2010046019A - ヒト羊膜由来間葉系細胞及びこれを用いた糖尿病治療薬 - Google Patents

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敏雄 二階堂
Yoshiko Yoshida
淑子 吉田
Motonori Okabe
素典 岡部
Satoru Kyo
哲 京
Toru Kiyono
透 清野
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Abstract

【課題】 血糖値低下効果の高いヒト羊膜由来間葉系細胞を提供し、糖尿病治療に有益な新規な糖尿病治療薬を提供する。
【解決手段】 外因性の不死化遺伝子(例えばTERT遺伝子やヒトパピローマウイルスのE6遺伝子、E7遺伝子等)を導入することで、ヒト羊膜由来間葉系細胞を不死化する。不死化されたヒト羊膜由来間葉系細胞は、顕著な血糖値低下作用を発現する。この不死化されたヒト羊膜由来間葉系細胞を糖尿病治療薬の有効成分として用いる。
【選択図】 図10

Description

本発明は、不死化したヒト羊膜由来間葉系細胞に関するものであり、さらには、その血糖値低下作用を利用した糖尿病治療薬に関する。
再生医療の分野においては、幹細胞に関する研究が進展しており、例えばヒト胚性幹細胞(ES細胞)の樹立等に関する研究が盛んに進められている。ただし、ES細胞を樹立するには、受精卵ないしは受精卵より発生が進んだ胚盤胞までの段階の初期胚等が必要になることから、ES細胞を含めた幹細胞の使用においては、倫理的問題の解決、免疫反応の回避、ドナー細胞の確保等が大きな問題となる。
このような状況から、本願発明者らは、ヒトES細胞のような多能性幹細胞を含む組織に関する検討を進め、分娩後に廃棄される胎盤付着物、特に羊膜に着目し、羊膜細胞を用いた再生医療の可能性について研究を進めている。羊膜は、胚体外組織の1つであり、胎児を形成する胚盤葉上層に由来する羊膜上皮、及び胚外中胚葉の一部(羊膜間葉組織)から構成されている。羊膜上皮細胞及び羊膜間葉系細胞について、遺伝子の発現をRT−PCRにより検討したところ、羊膜由来細胞には未分化な細胞群が含まれる可能性が示唆された。また、羊膜は、免疫学的にも特殊な性質を有しており、母体免疫システムから認識され難く、種々の免疫抑制因子を産生することで、免疫反応を抑制するシステムも有している。このことから、羊膜細胞は、たとえ移植時に組織適合性抗原HLAの一致が不十分な場合にも、レシピエントの免疫が比較的穏やかであると期待される。
これまで、羊膜細胞の生物学的特性を検討し、再生医療に利用すべく研究を推し進め、例えば、単離培養ヒト羊膜上皮細胞がインシュリン様の物質を分泌し、糖尿モデルマウスの血糖値を優位に低下させることを報告している。そして、これをもとに、ヒト羊膜由来上皮細胞の糖尿病治療薬としての利用、及びヒト羊膜由来間葉系細胞の軟骨及び骨の代謝異常治療薬としての利用を提案している(特許文献1を参照)。
前記特許文献1には、ヒト羊膜由来上皮細胞を有効成分とする医薬組成物、ヒト羊膜由来上皮細胞を有効成分とする糖尿病治療剤、ヒト羊膜由来上皮細胞を糖尿病患者に投与する糖尿病治療法、ヒト羊膜由来間葉系細胞を有効成分とする医薬組成物、ヒト羊膜由来間葉系細胞を有効成分とする骨代謝異常症治療剤、ヒト羊膜由来間葉系細胞を骨代謝異常症患者に投与する骨代謝異常症治療法が開示されている。
特開2003−231639号公報
ところで、本発明者らは、羊膜上皮細胞及び羊膜間葉系細胞の膵分化誘導を試み、膵分化マーカの発現について、RT−PCRによって検討を行ったが、その中で、羊膜上皮細胞にインスリン、羊膜間葉系細胞にグルカゴンの発現が確認されるという興味深い結果が得られている。
このように、羊膜細胞が膵内分泌細胞へ分化し得ることが示唆されたが、羊膜上皮細胞におけるインスリンの発現に着目し、糖尿病治療への応用を提案したのが特許文献1記載の発明である。一方、羊膜間葉系細胞に関しては、前記グルカゴンの発現は確認されたものの、糖尿病治療への応用はほとんど検討されていない。
本発明は、前述のような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、羊膜細胞の糖尿病治療への応用に関する研究をさらに進め、糖尿病治療に有効且つ有用なヒト羊膜由来間葉系細胞を提供することを目的とし、さらには新規な糖尿病治療薬を提供することを目的とする。
本発明者は、前述の目的を達成するために、種々の研究を重ねてきた。その結果、不死化したヒト羊膜由来間葉系細胞が、実験動物の生命維持に関し、血糖値を下げる効果を有すること、及び延命効果を示すことが確認された。また、本発明者らがヒト羊膜由来間葉系細胞の不死化を試みたところ、前述のヒト羊膜由来間葉系細胞が本来有する分化能に加えて、ヒト羊膜由来上皮細胞が持つ分化の方向性の一部を獲得しており、単なる不死化細胞やヒト羊膜由来上皮細胞を有効成分とする特許文献1記載の医薬組成物を越えるものとなっていることを見出した。
本発明は、これらの知見に基づいて案出されたものである。すなわち、本発明のヒト羊膜由来間葉系細胞は、外因性の不死化遺伝子が導入され、不死化されていることを特徴とするものであり、さらには、血糖値低下作用を発現することを特徴とする。また、本発明の糖尿病治療薬は、前記不死化されたヒト羊膜由来間葉系細胞を有効成分として含有することを特徴とするものである。
本発明によれば、倫理的問題や免疫反応を回避することができ、細胞の確保も容易で、血糖値低下効果の高いヒト羊膜由来間葉系細胞を提供することが可能である。また、本発明のヒト羊膜由来間葉系細胞を用いることで、糖尿病治療に有益な新規な糖尿病治療薬を提供することが可能である。
以下、本発明を適用したヒト羊膜由来間葉系細胞及び糖尿病治療薬について、詳細に説明する。
ヒト羊膜には、上皮細胞(ヒト羊膜由来上皮細胞)と間葉系細胞(ヒト羊膜由来間葉系細胞)とが含まれるが、本発明においては、ヒト羊膜由来間葉系細胞を利用する。ヒト羊膜由来間葉系細胞は、ヒト羊膜から得ることができるが、ヒト羊膜は、例えばインフォームドコンセントを得たヒト妊婦を帝王切開し、通常の外科的手法で得ることができる。あるいは、分娩後に廃棄される胎盤付着物として得ることも可能である。
ヒト羊膜から間葉系細胞を分離するには、ヒト羊膜から上皮細胞を取り除いた後、残存するヒト羊膜に対して分離操作を行えばよい。上皮細胞のヒト羊膜からの分離や、間葉系細胞のヒト羊膜からの分離は、例えば特開2003−231639号公報に記載される方法に準じて行えばよい。
具体的には、ヒト羊膜から上皮細胞を得るには、入手したヒト羊膜を滅菌したハサミ等を用いて断片化し、通常の動物細胞の培養に用いられる培養液に入れ、振盪する。この際、羊膜断片を個々の細胞に分散化するため、トリプシン等の蛋白質分解酵素を共存させることが望ましい。振盪後、遠心操作によって細胞を集め、上清を除去した後、蛋白質分解酵素が共存する培養液中で再度振盪する。この後、培養液を滅菌ガーゼ等のメッシュで漉し、上皮細胞を遠心操作によって分離する。
以上のようにして上皮細胞を分離した後、ガーゼ等のメッシュ上に残されたヒト羊膜残渣から間葉系細胞を分離する。間葉系細胞をヒト羊膜残渣から分離するには、ガーゼ等のメッシュ上に残されたヒト羊膜残渣に蛋白質分解酵素と核酸分解酵素を加えて振盪し、消化を行う。消化されたヒト羊膜をガーゼ等のメッシュで漉し、間葉系細胞を分離する。間葉系細胞は、通常、1枚の羊膜から5×10個程度得ることができる。
得られたヒト羊膜由来間葉系細胞は、そのまま不死化に用いてもよいし、培養したものを不死化してもよい。培養は、例えば血清を含む培養液を用い、COインキュベータ中で行えばよい。培養温度は例えば37℃、CO濃度は例えば5%である。
以上のようなヒト羊膜由来間葉系細胞を不死化するが、ヒト羊膜由来間葉系細胞を不死化するには、外因性の不死化遺伝子を導入すればよく、例えばテロメラーゼやヒトがん遺伝子EB1のホモログであるBmi−1をヒト羊膜由来間葉系細胞に発現させる方法、ウイルス由来の不死化遺伝子を用いる方法、さらにはこれらの組み合わせ等を採用することができる。
テロメラーゼをヒト羊膜由来間葉系細胞に発現させるには、例えばテロメラーゼの触媒サブユニットであるテロメラーゼ逆転写酵素(TERT:Telomerase Reverse Transcriptase)遺伝子をレトロウイルスベクターに導入し、当該ベクターをヒト羊膜由来間葉系細胞に導入すればよい。Bmi−1をヒト羊膜由来間葉系細胞に発現させるには、同様に、Bmi−1遺伝子をレトロウイルスベクターに導入し、当該ベクターをヒト羊膜由来間葉系細胞に導入すればよい。ウイルス由来の不死化遺伝子を用いる方法では、ヒトパピローマウイルス(HPV)のE6遺伝子、E7遺伝子を用い、これら遺伝子をレトロウイルスベクターあるいはプラスミドベクターに導入し、これらベクターをヒト羊膜由来間葉系細胞に導入すればよい。なお、前記TERT遺伝子やBmi−1遺伝子、ヒトパピローマウイルス(HPV)のE6遺伝子、E7遺伝子の導入は、ベクターを使用する方法の他、例えばエレクトロポーション法、マイクロインジェクション法等によって行うこともできる。
これら方法の中で、TERT遺伝子とヒトパピローマウイルス(HPV)のE6遺伝子、E7遺伝子を導入する方法は、確実にヒト羊膜由来間葉系細胞を不死化し得る好ましい方法である。ヒト羊膜由来間葉系細胞は、テロメア依存性の細胞老化の機構と、テロメア非依存性の早期細胞老化の機構の、2段階の老化機構を有するものと考えられる。ここで、ヒトパピローマウイルス(HPV)のE6遺伝子、E7遺伝子を導入すれば、テロメア非依存性の早期細胞老化を防止することができ、培養早期の増殖停止を乗り越えることができるものと考えられる。また、その後にテロメア短縮による細胞老化(テロメア依存性の細胞老化)が訪れるが、TERT遺伝子を導入することにより、これを乗り越えることができるものと考えられる。
このようにTERT遺伝子とヒトパピローマウイルス(HPV)のE6遺伝子、E7遺伝子を導入する場合には、不死化のための最初のステップとして、非テロメア依存性の細胞老化を乗り越えるためのE6遺伝子、E7遺伝子を導入し、その後にTERT遺伝子を導入することが望ましい。
以上の方法によりゲノムDNAへの遺伝子導入が行われ、同遺伝子を保持発現することにより細胞老化を乗り越えた細胞を選択し回収する。細胞の選択に際しては、導入した発現ベクター内に存在する選択マーカを利用し、薬剤に対する感受性の差による薬剤セレクション等の手段を併せ行うことができる。また、回収した細胞は、免疫組織学的染色の手法、RT−PCR法による遺伝子発現解析方法等を用いてヒト羊膜由来間葉系細胞であることを確認することができる。
前述の方法により作製し選択したヒト羊膜由来間葉系細胞は、半永久的に継代培養を行うことが可能であり、非癌性の形質を維持している。そして、特筆すべきは、この不死化されたヒト羊膜由来間葉系細胞が顕著な血糖値低下作用を有していることである。不死化されたヒト羊膜由来間葉系細胞が顕著な血糖値低下作用を有することは、本発明者らの実験によって確かめられた事実である。このように不死化されたヒト羊膜由来間葉系細胞が血糖値低下作用を有するのは、前記不死化によって、ヒト羊膜由来上皮細胞が持つ分化の方向性の一部を獲得した結果によるものと推測される。
したがって、本発明のヒト羊膜由来間葉系細胞(前記不死化されたヒト羊膜由来間葉系細胞)は、糖尿病治療に有効であると考えられ、糖尿病治療薬の有効成分として有用であり、これを用いることで治療効果の高い糖尿病治療薬を提供することが可能である。前記ヒト羊膜由来間葉系細胞は、増殖能に優れ、不死化によって半永久的に継代培養を行うことが可能であるので、通常のヒト羊膜由来上皮細胞等を用いる場合に比べて、供給の安定性、あるいは大量生産の点で遙かに有利である。また、ヒト羊膜由来間葉系細胞の形質を備えていることから、例えば免疫反応を回避し得る可能性も高く、さらにはヒト胚性幹細胞(ES細胞)を使用する場合に問題となるような倫理的な問題についても、これを回避することが可能である。
以下、本発明を適用した具体的な実施例について、実験結果に基づいて説明する。
ヒト羊膜由来間葉系細胞の分離及び培養
予め同意を得た妊婦の帝王切開分娩で排出された胎盤を生理食塩水で洗浄し、羊膜を採取した。得られた羊膜を滅菌処理した手術用のハサミで切断して断片化し、トリプシンを0.2%含む細胞培養液(ダルベッコ変法イーグル培地)と共に容量50mlのファルコンチューブに入れ、温度37℃に保ちながらシェーカーで80rpm、30分間振盪した。溶液を滅菌ガーゼで漉し、上皮細胞懸濁液を採取した。採取した懸濁液を遠心後、上清を除去し、上皮細胞を回収した。滅菌ガーゼに残された羊膜について、同様のトリプシン消化と細胞回収の操作を繰り返し、回収される細胞が1×10を下回るまで行った。
上皮細胞を完全に取り除いた後、滅菌ガーゼに残された羊膜をコラゲナーゼ(和光純薬社製)0.75mg/ml及びDNAアーゼ(シグマ社製)0.75mg/mlと共に温度37℃に保ちながらシェーカーで80rpm、30〜50分間振盪し、消化を行った。消化された羊膜を滅菌ガーゼで漉し、間葉系細胞(ヒト羊膜由来間葉系細胞:HAM)を分離した。
分離した間葉系細胞を遠心で集め、子牛胎児血清を10%含む細胞培養液(ダルベッコ変法イーグル培地)で1×10個/cmの密度で幡種し、温度37℃、5%CO下、抗生物質(ペニシリンG 100単位/ml、ストレプトマイシン 100μg/ml、アンフォテリシンB 0.25μg/ml)存在下で培養を行った。
異なる2人の患者から採取した羊膜について、それぞれ前述の操作を行ってヒト羊膜由来間葉系細胞を分離し、それぞれHAM3、及びHAM4と名付けた。
ヒト羊膜由来間葉系細胞の不死化
前述の操作によって得られたヒト羊膜由来間葉系細胞(HAM3及びHAM4)について、HPV16E6遺伝子、HPV16E7遺伝子、hTERT遺伝子、Bmi−1遺伝子のいずれか、あるいはこれらを組み合わせて導入した。これら遺伝子の導入は、レトロウイルスベクターあるいはレンチウイルスベクターにてウイルス感染法により行った。使用した細胞、培地、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターは、下記の通りである。
ヒト羊膜由来間葉系細胞:HAM3、HAM4
培地:ダルベッコ変法イーグル培地(high glucose)+10%FBS
レトロウイルスベクター:表1に示す。
レンチウイルスベクター(薬剤耐性マーカーなし):表2に示す。
Figure 2010046019
Figure 2010046019
<レトロウイルス調製法>
Naviauxらの方法[Naviaux,R.K., Costanzi, E., Hass, M. and Verma, I.M.V.(1996)The pCL vector system:rapid production of helper-free, high-titer, recombinant retroviruses. J.Virol. 70(8):5701-5]に基づき、10Alenvelopeを持つウイルスを調製した。タイターはヒーラ(Hela)細胞に対する薬事耐性コロニー形成能で調べ、10cfu/ml以上のものを用いた。
<レンチウイルス調製法>
三好らの方法[ Miyoshi, H.Gene delivery to hematopoietic stem cells using lentiviral vectors. Methods in Molecular Biology(HUMAN PRESS) Vol.246: 429-438 (2004)]により、VSV−Gシュードタイプレンチウイルスを作製した。
<ウイルス感染法>
8μg/ml polybrene(シグマ社製)の存在下に、前記各ウイルス液を加え、一晩インキュベートした。
<樹立細胞の説明>
樹立した不死化ヒト羊膜由来間葉系細胞は、iHAM1〜iHAM4の4種類である。
1.iHAM1:HAM3/542:CSII-CMV-16E6E7(@p1)
HAM3細胞に542:CSII-CMV-16E6E7ウイルスを継代数1で感染し、延命した細胞。
本細胞は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに受領番号FERM AP−21610(受領日:平成20年7月22日)、受領番号FERM AP21651(受領日:平成20年8月19日)として寄託されている。
2.iHAM2:HAM3/542:CSII-CMV-16E6E7(@p1)/344:MSCVpurohTERT(@p2)
HAM3細胞に542:CSII-CMV-16E6E7ウイルスを継代数1で感染した後、344:MSCVpurohTERTウイルスを継代数2で感染し、puromycin1μg/ml存在下で薬剤選択した延命細胞(不死化細胞)。
本細胞は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに受領番号FERM AP−21611(受領日:平成20年7月22日)、受領番号FERM AP21652(受領日:平成20年8月19日)として寄託されている。
3.iHAM3:HAM4/136:LXSN-hbmi1(@p4)/344:MSCVpurohTERT(@p4)
HAM4細胞に136:LXSN-hbmi1ウイルス及び344:MSCVpurohTERTウイルスを継代数4で導入し、G418 800μg/ml及びpuromycin1μg/ml存在下で薬剤選択した延命細胞(不死化細胞)。
本細胞は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに受領番号FERM AP−21612(受領日:平成20年7月22日)、受領番号FERM AP21653(受領日:平成20年8月19日)として寄託されている。
4.iHAM4:HAM4/344:MSCVpurohTERT(@p4)/96:LXSN-16E6E7(@p5)
HAM4細胞に344:MSCVpurohTERTウイルスを継代数4で導入し、puromycin1μg/ml存在下で薬剤選択した後、96:LXSN-16E6E7ウイルスを継代数5で導入し、G418 800μg/ml存在下で薬剤選択した延命細胞(不死化細胞)。
本細胞は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに受領番号FERM AP−21613(受領日:平成20年7月22日)、受領番号FERM AP21654(受領日:平成20年8月19日)として寄託されている。
細胞増殖(不死化)に関する確認試験
作製した不死化ヒト羊膜由来間葉系細胞iHAM1〜iHAM4について、増殖能を調べた。結果を図1に示す。図1には、不死化ヒト羊膜由来上皮細胞iHAEについての結果も併せて示す。不死化ヒト羊膜由来上皮細胞iHAEは、ヒト羊膜由来上皮細胞HAEに542:CSII-CMV-16E6E7ウイルスを継代数2で感染した後、1313:CSII-CMV-cdk4R24C-PGK-hTERTウイルスを継代数3で感染し、延命(不死化)した細胞である。
図1から明らかな通り、作製した不死化ヒト羊膜由来間葉系細胞iHAM1〜iHAM4は、いずれも同様の増殖パターンを示し、分裂回数が100回を越えてからも旺盛な分裂を繰り返した。したがって、作製された不死化ヒト羊膜由来間葉系細胞iHAM1〜iHAM4は、細胞老化を乗り越えて著しく延命化されたことが明らかであり、このことから不死化されたものと考えられる。
不死化ヒト羊膜由来間葉系細胞の性状解析1
免疫組織学的方法及びRT−PCRによって作製した不死化ヒト羊膜由来間葉系細胞iHAM1〜iHAM4の幹細胞マーカの発現の有無を調べた。図2にSSEA4染色結果を、図3にビメンチン(Vimentin)染色結果を、図4にRT−PCRによる解析結果を示す。なお、これら図面において、HAMfは羊膜から単離直後の間葉系細胞、HAM2Pは2継代後の間葉系細胞である。
これら解析結果より、作製した不死化ヒト羊膜由来間葉系細胞iHAM1〜iHAM4においては、幹細胞マーカであるoct3/4、sox2、nanog、klf4、SSEA4、c−myc、vimentin、nestinについて、それぞれ発現が見られた。
不死化ヒト羊膜由来間葉系細胞の性状解析2
作製した不死化ヒト羊膜由来間葉系細胞iHAM1〜iHAM4について、種々の抗体を用い、フローサイトメータで測定を行って表面抗原の解析を行った。結果を図5及び図6に示す。不死化ヒト羊膜由来間葉系細胞iHAM1〜iHAM4では、CD105、CD90、CD73、CD44については陽性であった。一方、CD34、CD45、HLA−DR、CD14については陰性であった。
不死化ヒト羊膜由来間葉系細胞の性状解析3
作製した不死化ヒト羊膜由来間葉系細胞iHAM1〜iHAM4について、Oil Red O、Alizarin Red S、Alkaline phosphatese activity (vector red)、Toluidine blueによる染色、及びRT−PCRを行い、脂肪細胞への分化能、骨分化能、軟骨分化能が維持されているか否かを調べた。
図7(a)はOil Red Oによる染色結果、図7(b)はPPAR2及びβ−アクチンについてのRT−PCR解析結果である。図8(a)はAlizarin Red Sによる染色結果、図8(b)はAlkaline phosphatese activity (vector red)による染色結果、図8(c)はALP(Alkaline phosphatese)、Osteopontin、β−アクチンについてのRT−PCR解析結果である。図9(a)はToluidine blueによる染色結果、図9(b)はCol2A1、Sox9、β−アクチンについてのRT−PCR解析結果である。いずれも分化誘導後(Induced)とコントロール(Uninduced)についての結果を示している。これらの解析結果から、作製した不死化ヒト羊膜由来間葉系細胞においては、脂肪細胞への分化能、骨分化能、軟骨分化能のいずれもが維持されていることがわかった。
血糖値低下作用に関する検討
生後7週の雄のマウスに、ストレプトゾトシンを250mg/kgの割合で静脈内投与し、I型糖尿病モデル動物を作製した。投与後、5日経過してから、尾静脈より採取した全血の血糖値を小型血糖測定器(アークレイファクトリー社製:商品名グルコカードダイアメータ)で測定した。
マウスを無処置群(control)と処置群に分け、処置群には作製した不死化ヒト羊膜由来間葉系細胞iHAM2を1×10個、脾臓内に投与した。その後、2日目に血糖値を測定し、経過観測した。結果を図10に示す。図10を見ると明らかなように、処置群、すなわち不死化ヒト羊膜由来間葉系細胞iHAM2を投与したマウス群において、血糖値の低下が見られた。
不死化したヒト羊膜由来間葉系細胞及びヒト羊膜由来上皮細胞について、培養日数(経過日数)と分裂回数の関係を示す特性図である。 SSEA4染色結果を示す顕微鏡写真である。 ビメンチン(Vimentin)染色結果を示す顕微鏡写真である。 各種細胞のRT−PCRによる解析結果を示す図である。 フローサイトメータでの測定による表面抗原の解析結果を示す図であり、CD105、CD90、CD73、CD44に関する解析結果を示すものである。 フローサイトメータでの測定による表面抗原の解析結果を示す図であり、CD34、CD45、HLA−DR、CD14に関する解析結果を示すものである。 (a)はOil Red Oによる染色結果、(b)はPPAR2及びβ−アクチンについてのRT−PCR解析結果である。 (a)はAlizarin Red Sによる染色結果、(b)はAlkaline phosphatese activity (vector red)による染色結果、(c)はALP、Osteopontin、β−アクチンについてのRT−PCR解析結果である。 (a)はToluidine blueによる染色結果、(b)はCol2A1、Sox9、β−アクチンについてのRT−PCR解析結果である。 不死化ヒト羊膜由来間葉系細胞の投与の有無による血糖値変化の相違を示す特性図である。

Claims (10)

  1. 外因性の不死化遺伝子が導入され、不死化されていることを特徴とするヒト羊膜由来間葉系細胞。
  2. 外因性の不死化遺伝子が、テロメラーゼ逆転写酵素遺伝子、Bmi−1遺伝子、ヒトパピローマウイルスのE6遺伝子およびE7遺伝子を組み合わせたものである請求項1記載のヒト羊膜由来間葉系細胞。
  3. 外因性の不死化遺伝子が、ヒトパピローマウイルスのE6遺伝子およびE7遺伝子である請求項2記載のヒト羊膜由来間葉系細胞。
  4. 独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに受領番号FERM AP−21610、受領番号FERM AP−21651として寄託されている請求項3に記載のヒト羊膜由来間葉系細胞。
  5. 外因性の不死化遺伝子が、ヒトパピローマウイルスのE6遺伝子およびE7遺伝子並びにテロメラーゼ逆転写酵素遺伝子である請求項2記載のヒト羊膜由来間葉系細胞。
  6. 独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに受領番号FERM AP−21611、受領番号FERM AP−21613、受領番号FERM AP−21652、受領番号FERM AP−21654として寄託されている請求項5記載のヒト羊膜由来間葉系細胞。
  7. 外因性の不死化遺伝子が、テロメラーゼ逆転写酵素遺伝子及びBmi−1遺伝子である請求項2記載のヒト羊膜由来間葉系細胞。
  8. 独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに受領番号FERM AP−21612、受領番号FERM AP−21653として寄託されている請求項6に記載のヒト羊膜由来間葉系細胞。
  9. 血糖値低下作用を発現することを特徴とする請求項1〜7記載のヒト羊膜由来間葉系細胞。
  10. 外因性の不死化遺伝子が導入され不死化されたヒト羊膜由来間葉系細胞を含有することを特徴とする糖尿病治療薬。
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