JP3953399B2 - 不死化骨髄間葉系幹細胞 - Google Patents

不死化骨髄間葉系幹細胞 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、骨髄間葉系幹細胞に細胞増殖因子遺伝子を導入することによって得られる不死化骨髄間葉系幹細胞に関する。
【0002】
【従来の技術】
様々な研究者により、骨髄間葉系幹細胞が骨細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、筋細胞、腱細胞、心筋細胞へと分化するということが報告されている。したがって、骨髄間葉系幹細胞を、その多分化能を維持したままインビトロで大量に増殖させることができれば、得られた骨髄間葉系幹細胞は再生医療において非常に有用な手段となることが期待されている。
【0003】
従来、骨髄間葉系幹細胞以外の例として、BSMC、MDHFまたはRKCに癌遺伝子を導入してそれらの細胞を不死化することにより、適度な分化機能を保持した細胞株を産出できることが知られている(たとえば、非特許文献1参照)。この方法を用いればそれらの不死化細胞を大量に得ることは可能であったが、そのような不死化細胞株は、生体内に注入することにより、予期せぬ癌化の危険性に患者を曝す可能性があるという問題があった。したがって、このような問題を解決し得る安全性の高い骨髄間葉系幹細胞を、大量に得ることは困難であった。
【0004】
【非特許文献1】
ケイ エイ ウェスタマン(K. A. Westerman)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA.93巻、8971頁、1996年
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、無限に増殖可能であり、かつ癌化の可能性を回避するための手段を有する不死化骨髄間葉系幹細胞を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記実情に鑑み鋭意検討を重ねた結果、一対の部位特異的組換え配列に挟まれた正常細胞由来の細胞増殖因子遺伝子を骨髄間葉系幹細胞に導入することにより、癌化の危険性を回避するための手段を有し、かつ、大量増殖が可能な骨髄間葉系幹細胞を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、骨髄間葉系幹細胞に一対の部位特異的組換え配列に挟まれた細胞増殖因子遺伝子を導入することにより得られる不死化骨髄間葉系幹細胞を提供する。
【0008】
前記不死化骨髄間葉系幹細胞において、骨髄間葉系幹細胞はヒトの骨髄間葉系幹細胞であることが好ましい。
【0009】
前記不死化骨髄間葉系幹細胞において、細胞増殖因子遺伝子はhTERT(ヒトテロメラーゼ逆転写酵素)遺伝子であることが好ましい。
【0010】
前記不死化骨髄間葉系幹細胞において、一対の部位特異的組換え配列はLoxP配列であることが好ましい。
【0011】
さらに、該細胞増殖因子遺伝子はレトロウイルスベクターを用いて導入されることが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
本明細書に記載される「骨髄間葉系幹細胞」とは、未分化の状態で増殖し、骨細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、筋細胞、腱細胞または骨髄間質細胞への分化が可能な前駆細胞である。骨髄間葉系幹細胞を同定する手段の一例としては、たとえば表面抗原試験があり、該試験において、骨髄間葉系幹細胞はSH2、SH3、CD29およびCD44が陽性、CD14、CD34およびCD45が陰性である。
【0013】
骨髄間葉系幹細胞は、たとえば豚、猿、類人猿、ヒトの骨髄間葉系幹細胞などであり、好ましくはヒトの骨髄間葉系幹細胞であり、最も好ましくはヒトの成人骨髄間葉系幹細胞である。ヒトの胎児骨髄間葉系幹細胞に関しても応用可能である。
【0014】
本発明に使用される細胞増殖因子遺伝子は正常細胞由来の遺伝子であり、哺乳類の骨髄間葉系幹細胞に導入されることにより該骨髄間葉系幹細胞を不死化できるものである。該細胞増殖因子遺伝子の産物は、増殖因子として機能するもの、細胞膜に存在しチロシンキナーゼ活性を有するもの、細胞膜内側に存在しGTPと結合するもの、細胞質に存在しセリン/トレオニンキナーゼ活性を有するもの、核内に存在しDNAに結合能を有するものであり、正常細胞の細胞増殖、情報伝達に基本的に関与するものである。該細胞増殖因子遺伝子としては、ラス遺伝子、myc遺伝子、hTERT遺伝子などを使用することができる。この中でも、hTERT遺伝子が好ましい。なぜなら、hTERT遺伝子は、血液、皮膚、腸管粘膜、子宮内膜などの、生涯にわたり再生を繰り返している臓器の幹・前駆細胞、および特定の抗原に暴露するたびにクローン増殖しているリンパ球では自然と発現増強している遺伝子であるためである。
【0015】
本発明において、細胞増殖因子遺伝子を骨髄間葉系幹細胞に導入するためにレトロウイルスベクターが用いられる。レトロウイルスベクターは、動物細胞に対する外来遺伝子導入手段として利用される。レトロウイルスベクターによって導入された遺伝子は宿主細胞の染色体DNAに組み込まれるために、その遺伝子は確実に嬢細胞に受け継がれ、長期の安定した遺伝子発現が可能である。
【0016】
レトロウイルスベクターの導入方法としては、インビボでは静脈内投与、腹腔内投与、直接穿刺による投与、インビトロでは培養細胞への直接播種による方法などがあり、好ましくは直接穿刺による投与、培養細胞への直接播種による方法である。
【0017】
レトロウイルスベクターを培養細胞に直接播種して導入する方法としては、本発明の目的を達成するものであればどのような方法でもよい。たとえば、レトロウイルスベクター産生細胞を培養し、その培養上清を、別途培養中の骨髄間葉系幹細胞に播種することにより導入を達成することもできる。各細胞の培養条件および播種濃度など種々の条件は、当該技術分野における周知の方法にしたがって設定することができる。
【0018】
また、培養細胞への播種回数は、細胞への影響、たとえば染色体の安定性を考えると、1回のみが好ましい。しかしながら、該ベクターの導入効率を考慮すると、細胞への播種回数は多い方が好ましい。これらのことから、本発明では、培養細胞に4時間感染を1日に2回、計3日間実施する方法が最も好ましい。
【0019】
さらに本発明で用いられる細胞増殖因子遺伝子は、骨髄間葉系幹細胞に導入されたプロウイルス内で後に切り出し可能なように一対の部位特異的組換え配列に挟まれている。「部位特異的組換え配列」とは、部位特異的組換え酵素によって認識される特異的な塩基配列であり、この特異的な配列間でDNA鎖の切断、鎖の交換、および結合という相同組換えを行なう特異的配列である。部位特異的組換え配列としては、LoxP配列やFRT配列などがあり、中でもLoxP配列が好ましい。LoxP配列は、Cre組換え酵素単独により相同組換えを行うための「ATAACTTCGTATAGCATACATTATACGAAGTTAT」の34塩基からなる配列である。同一のDNA分子上に一対のLoxP配列が同方向で存在する場合は、その間に挟まれたDNA配列は切り出されて環状分子となる(切り出し反応)。
【0020】
さらに本発明において、細胞増殖因子遺伝子を哺乳類の骨髄間葉系幹細胞に導入する際には、常に同時にGFP遺伝子などの選択マーカーが、一対の部位特異的組換え配列間にコードされることが好ましい。「部位特異的組換え配列間」とは、一対の部位特異的組換え配列に挟まれた位置関係を示す。該GFP遺伝子は、レトロウイルスベクターが感染し、プロウイルスがゲノムに組み込まれた骨髄間葉系幹細胞をFACS(fluorescence activated cell sorter)にて選択的に同定するために用いられる。よって、プロウイルスがゲノムに組み込まれた骨髄間葉系幹細胞を選択的に同定できれば、GFP遺伝子の代わりに薬剤耐性遺伝子を用いてもよい。
【0021】
該薬剤耐性遺伝子の例としては、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、大腸菌gpt遺伝子などがあり、とくにこれらに限定されるものではない。
【0022】
本明細書に記載される「不死化骨髄間葉系幹細胞」とは、腫瘍原性が無く、正常骨髄間葉系幹細胞に近い形態を呈し、骨髄間葉系幹細胞の多分化能を維持し、特別な培養条件を必要とせず短期間に増殖する特徴を有する細胞を意味する。
【0023】
該不死化骨髄間葉系幹細胞の培養は、増殖速度を速める条件で実施するのが好ましい。しかしながら、使用する培養容器としては、取り扱いが容易であるという点からコラーゲンなどによる培養容器表面の特別なコーティングを有していない容器が好ましい。該不死化骨髄間葉系幹細胞の倍化時間は24〜72時間であり、好ましくは24〜48時間、さらに好ましくは24〜36時間である。該不死化骨髄間葉系幹細胞の培地としては、たとえば間葉系幹細胞増殖培地(製品番号PT−3001、三光純薬株式会社製)などの間葉系幹細胞培養培地が好ましく、CS−C培地などの無血清培地を使用するのがさらに好ましい。
【0024】
本発明の不死化骨髄間葉系幹細胞は、一対の部位特異的組換え配列を有する可逆的な不死化細胞である。すなわち、本発明の不死化骨髄間葉系幹細胞から、導入された細胞増殖因子遺伝子を部位特異的組換え酵素により除去することができる。したがって、本発明の不死化骨髄間葉系幹細胞を用いれば、生体内に移植する前に細胞増殖因子遺伝子を切り出すことができる。あるいは、不死化骨髄間葉系幹細胞の分化を誘導した後に、細胞から細胞増殖因子遺伝子を切り出すこともできる。細胞増殖因子遺伝子を切り出すことによって得られた骨髄間葉系幹細胞または骨髄間葉系幹細胞から分化した細胞は、癌化の危険性がなく安全であるため、再生医療において非常に有効である。
【0025】
前記部位特異的組換え酵素は、部位特異的組換え配列を特異的に認識し、切断、結合という相同組換えを単独で行う酵素である。部位特異的組換え酵素としては、たとえばCre組換え酵素やFLP組換え酵素などがあり、Cre組換え酵素が好ましい。Cre組換え酵素はLoxP配列を特異的に認識する組換え酵素である。該部位特異的組換え酵素はアデノウイルスによってコードされるのが好ましい。
【0026】
以下、実施例、製造例および試験例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
【実施例】
製造例1
レトロウイルスベクターSSR#197の製造
レトロウイルスベクターSSR#197(図1参照)は、従来の方法(ケイ エイ ウェスタマンら、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA.93巻、8971頁、1996年)にしたがい、具体的には以下の方法にて製造した。
1. LXSNレトロウイルスベクターをEcoR1とRsr2で消化し、バックボーンベクター由来のEcoR1を変異させたのち、制限部位(Not1、BamH1、Hind3、EcoR1、Hpa1、Sal1、Sfi1、Cla1およびRsr2)を含有するポリリンカーを挿入した。合成した511LoxP配列は、該ベクターのNot1/Hind3部位に挿入した。hTERT遺伝子はEcoR1/Sal1部位に挿入した。
2. IRES−GFP、511LoxPおよびB型肝炎転写後調節因子(ティー エス エン(T. S. Yen)、Mol Cell Biol.、1995年)を含有するカセットベクターを、以下のようにして製造した。
pUC19をEcoR1とHind3で消化し、バックボーンベクター由来のEcoR1を変異させたのち、制限部位(Xho1、Sal1、EcoRV、Not1、Hpa1、Hind3、EcoR1、Cla1、Sfi1およびHind3)を含有するポリリンカーを挿入した。合成した511LoxP配列は、該ベクターのNot1およびHind3部位に挿入した。ついで、pCITE−Novagen(ノバゲン社(Novagen)製)由来のIRESとEGFP遺伝子(クロンテク社(Clontech Inc)製)とがNco1部位で連結され、一方の末端がSal1部位、他方の末端が平滑Cla1部位である断片を製造し、この断片をバックボーンベクターのSal1および平滑Bgl2部位に挿入した。
3. 前記1で製造したベクターのSal1およびCla1部位に、前記2で製造したカセットベクター由来のXho1およびCla1断片を挿入し、SSR#197ベクターを完成させた。
【0028】
実施例1
不死化ヒト骨髄間葉系幹細胞株の樹立
レトロウイルスベクターSSR#197産生細胞であるCrip細胞(Crip細胞のレトロウイルスベクターSSR#197産生能力、すなわち、力価は1×105cfu/ml)を、T−75のフラスコに播種密度1×104細胞/cm2で播種し、15mlのDMEM+10%NCS(新生仔ウシ血清)培養液で培養した。細胞密度が約90%となった時点で、DMEM+10%NCS培養液15mlで培養液の交換を行なった。
【0029】
培養液交換24時間後に、レトロウイルスベクターを含有するCrip細胞上清15mlを0.45μmのフィルターで濾過し、得られた液に12μg/mlのポリブレン(polybrene、シグマ(Sigma)社製)を加えた。これを、別途培養中の継代数1の成人ヒト骨髄間葉系幹細胞(製品番号PT−2501、三光純薬株式会社製)1×106細胞個の培養液と交換し、4時間感染させた。同様な感染処置を1日に2回、計3日間施行した。各日の最終感染後は、培養液を新鮮な無血清のCS−C培養液に置き換えて骨髄間葉系幹細胞を培養した。
【0030】
最終感染後2日後に細胞をトリプシンにて処理し、回収した。FACS Calibur(ベクトンディッキンソン社(Becton Dickinson)製)を用いてGFP陽性細胞を回収した。96穴プレートおよび間葉系幹細胞増殖培地(製品番号PT−3001、三光純薬株式会社製)を用いた限界希釈法(1穴1/2個の細胞となるように播種)にて不死化ヒト骨髄間葉系幹細胞株を樹立した。該不死化ヒト骨髄間葉系幹細胞は蛍光顕微鏡で確認された(図2および図3参照)。該細胞株を独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に寄託した(受託番号FERM BP−8197)。
【0031】
FERM BP−8197は、親細胞に類似した形態を呈し、かつ、増殖が停止する危機(クライシス)もなく不死化し、無血清のCS−C培地において単層に増殖し、約48時間でその数が倍加した。
【0032】
試験例1
不死化ヒト骨髄間葉系幹細胞の増殖能の測定
FERM BP−8197の増殖能を測定するために、周知の方法にて、MTTアッセイを行った。本試験例においては、コントロール細胞として、hTERT遺伝子非導入骨髄間葉系幹細胞を用いた。
【0033】
96穴プレートに、2000細胞個/穴となるようにFERM BP−8197またはコントロール細胞を播種した。培養液としては、CS−C培地を用いた。播種から1日、3日、5日および7日後、20μg/mlの5−ジフェニル−2H−テトラゾリウムブロマイドを各穴の培養液に10μl添加し、4時間培養した。ついで、150μlのイソプロパノールを各穴の培地に添加し、10分間反応させた。そののち、Bio−Rad EIAリーダー(バイオラッド社(Bio-Rad)製、リッチモンド、CA)を用いて、570μmと630μmの吸光度の比率から細胞増殖曲線(図4)を作成した。
【0034】
本試験の結果、FERM BP−8197は、PDL(集団倍化レベル(population doubling level))150を超えても増殖することを確認した。一方、コントロール細胞は、PDL25前後で増殖が停止する複製不能細胞老化(replicative senescence)に陥った。
【0035】
試験例2
FERM BP−8197のhTERT遺伝子の発現
実施例1で得られたFERM BP−8197におけるhTERT遺伝子の発現を、RT−PCR法を用いて調べた。コントロール細胞としては、hTERT遺伝子非導入骨髄間葉系幹細胞を用いた。これらの細胞における遺伝子発現の陽性コントロールとして、β−アクチン遺伝子の発現を調べた。
【0036】
RT−PCR法においては、RNAzol(シンナ/バイオテックス社製、アメリカ合衆国テキサス州フレンズウッド)を用い、そのプロトコルにしたがってFERM BP−8197からRNAを抽出し、2μgの総RNAを22℃で10分間、さらに42℃で20分間、RNA逆転写酵素を用いて逆転写反応させた。
【0037】
得られた2μgの逆転写産物を、プライマー濃度各20pmol/mlで、AmpliTaq Goldキット(アプライドバイオシステムズ社製、アメリカ合衆国カルフォルニア州)を用い、そのプロトコルにしたがってPCRで増幅した。PCRは、最初に95℃で10分間インキュベーションしたのち、95℃で30秒、60℃で30秒および72℃で30秒を1サイクルとしてこれを35サイクル行ない、最後に72℃で7分間インキュベーションすることで実施した。hTERT遺伝子またはβ−アクチン遺伝子に対するプライマーには下記のものを使用した。
hTERT遺伝子
5′primer:CTGACCAGGGTCCTATTCCA
3′primer:TGGTTATCCCAAGCAAGAGG
β−アクチン遺伝子
5′primer:TGACGGGGTCACCCACACTGTGCCCATCTA
3′primer:CTAGAAGCATTTGCGGTGGACGATGGAGGG
【0038】
RT−PCRの結果を図5に示す。図5において、レーン1はコントロール細胞、レーン2はFERM BP−8197を用いたRT−PCRの結果を示す。FERM BP−8197においてはhTERT遺伝子およびβ−アクチン遺伝子の発現が認められた。一方、コントロール細胞においては、β−アクチン遺伝子の発現のみが認められた。これらの結果は、FERM BP−8197において、導入されたhTERT遺伝子が適切に発現していることを示す。
【0039】
試験例3
テロメラーゼ活性の測定
FERM BP−8197におけるhTERTのテロメラーゼ活性を調べるために、TRAPアッセイを行った。本試験例においては、コントロール細胞として、hTERT遺伝子非導入骨髄間葉系幹細胞を用いた。
【0040】
TRAPアッセイは、TRAP−easeテロメラーゼ検出キット(オンコー社(Oncor)製、MD、USA)を用い、そのプロトコルにしたがって実施した。その結果、テロメラーゼ活性は、FERM BP−8197では陽性、コントロール細胞では陰性であった。これらの結果は、FERM BP−8197において、導入されたhTERT遺伝子が発現した後、hTERTタンパク質が適切な活性を有していることを示す。
【0041】
試験例4
不死化ヒト骨髄間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化
実施例1にて樹立したFERM BP−8197を、プレップキット骨芽細胞分化用培地(製品番号CL PT−3002、三光純薬株式会社製)を用い、21日間培養した。培地は5日ごとに新しい培地と交換した。
【0042】
つぎに、従来の方法(「新染色法のすべて」、医歯薬出版株式会社、1999年発行)にしたがってコッサ染色を実施した。その結果、細胞内のカルシウムの沈着が存在した領域が黒褐色で点状に染色されたことから、骨芽細胞への分化を確認した(図6)。図6中、aは、黒褐色で点状に染色された、カルシウムの沈着が存在した領域を示す。
【0043】
試験例5
不死化ヒト骨髄間葉系幹細胞の脂肪細胞への分化
実施例1にて樹立したFERM BP−8197を、プレップキット脂肪細胞分化用培地(製品番号CL PT−3004、三光純薬株式会社製)を用い、21日間培養した。培地は5日ごとに新しい培地と交換した。
【0044】
つぎに、従来の方法(「新染色法のすべて」、医歯薬出版株式会社、1999年発行)にしたがってオイル赤染色を実施した。その結果、細胞内の脂肪滴が赤に染色されたことから、脂肪細胞への分化を確認した(図7)。図7中、bは赤く染色された脂肪滴を示す。
【0045】
【発明の効果】
本発明により、多分化能を維持したまま不死化した骨髄間葉系幹細胞株を得ることができる。本発明の不死化骨髄間葉系幹細胞株は、癌遺伝子ではなく正常細胞由来の細胞増殖因子遺伝子により不死化しているため、癌化の危険性を回避することができる。そのうえ、該細胞株から導入した細胞増殖因子遺伝子を切り出すこともできるため、安全性が非常に高い。すなわち、細胞増殖遺伝子を切り出して得られる細胞は、再生医療において極めて有用である。
【0046】
【配列表フリーテキスト】
配列番号1:LoxP配列
配列番号2:hTERT遺伝子を検出するためのポリメラーゼ連鎖反応用5′プライマー
配列番号3:hTERT遺伝子を検出するためのポリメラーゼ連鎖反応用3′プライマー
配列番号4:ヒトβ−アクチン遺伝子を検出するためのポリメラーゼ連鎖反応用5′プライマー
配列番号5:ヒトβ−アクチン遺伝子を検出するためのポリメラーゼ連鎖反応用3′プライマー
【0047】
【配列表】
Figure 0003953399
Figure 0003953399
Figure 0003953399

【図面の簡単な説明】
【図1】レトロウイルスベクターSSR#197を示す図である。ここで、ATGは開始コドン、Ψはパッケージングシグナル、LoxPはLoxP配列、hTERTはhTERT遺伝子、EGFPは増強GFP遺伝子、MoMLV LTRはモロニーマウス白血病ウイルス長い末端反復配列、IRESは脳心筋炎ウイルス内リボゾームエントリー部位をそれぞれ示す。
【図2】図2はFERM BP−8197の位相差顕微鏡像である。
【図3】図3は図2に示したFERM BP−8197の蛍光顕微鏡像である。
【図4】図4はFERM BP−8197およびコントロール細胞の増殖曲線を示すグラフである。
【図5】図5はFERM BP−8197およびコントロール細胞を用いて実施したRT−PCRの結果を示す図である。
【図6】図6はコッサ染色したFERM BP−8197の一部を示す図である。
【図7】図7はオイル赤染色したFERM BP−8197の一部を示す図である。
【符号の説明】
a カルシウムの沈着が存在した領域
b 脂肪滴

Claims (1)

  1. 死化ヒト骨髄間葉系幹細胞株 受託番号FERM BP−8197
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