JP2010043385A - ポリエステルモノフィラメント糸 - Google Patents

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Abstract

【課題】マイクロタッチな風合いを有すると共に品位にも優れた、従来にない薄地織物を得るのに好適なポリエステルモノフィラメント糸を提供する。
【解決手段】単糸繊度が3.0〜30.0dtexであり、かつ熱水収縮率が15%以下である複合ポリエステルモノフィラメント糸をアルカリ割繊して得たポリエステルモノフィラメント糸aであって、単糸繊度が0.1〜3.0dtexであり、かつクリンプを有さないポリエステルモノフィラメント糸a。織物においてこれまでに表現できなかった、マイクロタッチなソフト風合いが具現でき、しかもストレート分繊糸にありがちなパーンビケによる織物欠点を大幅に抑制することができる。
【選択図】図2

Description

本発明は、クリンプのない所謂ストレート分繊糸に関するものであり、詳しくはアルカリ割繊して得る、極細化されたモノフィラメント糸に関するものである。
モノフィラメント糸には、紡糸、延伸を経ることにより直接的に得るモノフィラメント糸と、一旦マルチフィラメント糸を得た後、これを1本ずつ分繊して得る、所謂ストレート分繊糸と呼ばれるものがある。これらは、主にカーテン分野やブライダル分野などに使用され、特に、軽くて張り感のあるオーガンジー用薄地織物として好ましく使用される。
ストレート分繊糸の例として、例えば特許文献1には、カルシウム原子とリン原子とを含有し、断面形状として三葉断面をなしたポリエステルモノフィラメント糸が開示されており、この糸を用いることで光沢性や透明性などを持つオーガンジー用薄地織物を得ることができる。
また、特許文献2には、金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分を含み、異型断面となした改質ポリエステルモノフィラメント糸が開示されている。この糸もオーガンジー用薄地織物を構成する糸として好適であり、発色性、鮮明性、強度などの向上に資するところが大きい。
特開平9−241923号公報 特開平9−268432号公報
一般に、ストレート分繊糸は、紡糸性や分繊操業性の観点から、単糸繊度の細いものは製造することが困難とされており、このため、現在のところ上市されているストレート分繊糸は比較的太い糸に限られている。太い糸を使用すると、一般に製品の風合いは硬くなる傾向にあるが、糸を太くしたとあっても機能まで低下するわけではないので、これまでの研究は、もっぱら機能面の改善に重点が置かれ、風合い改善の研究はなされていなかった。
ところが、消費者のニーズが多様化する昨今、カーテン分野やブライダル分野などに属する製品であってもマイクロタッチな風合いを有すると共に品位に優れるものが好まれるようになり、オーガンジー用薄地織物でも同様の要望がされるに至っている。しかし、現在のところ、この要望を実現できるだけオーガンジー用薄地織物は提供されておらず、勿論、そのためのストレート分繊糸も提供されていないのが実情である。
本発明は、このような従来技術の欠点を解消するものであり、マイクロタッチな風合いを有すると共に品位にも優れた、従来にない薄地織物を得るのに好適なポリエステルモノフィラメント糸を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、複合モノフィラメント糸を用いて一旦織物となした後、この複合モノフィラメント糸をアルカリ割繊すれば、織物が極細糸から構成される結果、マイクロタッチな風合いが実現でき、同時にパーンビケなどによる品位低下を抑制できることを知見し、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は、単糸繊度が3.0〜30.0dtexであり、かつ熱水収縮率が15%以下である複合ポリエステルモノフィラメント糸をアルカリ割繊して得たポリエステルモノフィラメント糸であって、単糸繊度が0.1〜3.0dtexであり、かつクリンプを有さないことを特徴とするポリエステルモノフィラメント糸を要旨とするものである。
本発明のモノフィラメント糸を使用することにより、織物においてこれまでに表現できなかった、マイクロタッチなソフト風合いが具現できる。しかも、極細化することによって、光の屈折率も変化するから、ストレート分繊糸にありがちなパーンビケによる織物欠点を大幅に抑制することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、アルカリ割繊して得る極細化されたポリエステルモノフィラメント糸を対象とするものであり、本発明では特に、クリンプを有さず直線的な糸条形態をなした、所謂ストレート分繊糸を対象とする。
本発明のモノフィラメント糸としては、例えば、図2に示すようなくさび型の断面形状をなしたモノフィラメント糸などがあげられる。図1は、ポリエステル系接合剤(b)を介在させてモノフィラメント(a)を8本接合した複合ポリエステルモノフィラメント糸の断面を図示したものであり、これをアルカリ割繊したものが本発明のモノフィラメント糸である。アルカリ割繊とは、アルカリ水溶液によってポリエステル系接合剤(b)を溶解、除去することをいい、図2に示すように複数のモノフィラメント(a)を同時に得ることができる。なお、糸の断面形状として、図1では丸断面、図2くさび型が例示されているが、本発明はこれらに限定されるものでなく、目的に応じて任意の断面形状を採用してもよいことはいうまでもない。
上記複合ポリエステルモノフィラメント糸を構成する(a)、(b)はいずれもポリエステルからなり、基本的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はPETを主成分とする共重合ポリエステル(PET系共重合ポリエステル)が好ましく適用できる。
ただ、アルカリ水溶液に対する溶解速度は、モノフィラメント糸(a)より接合剤(b)が速く、この点から両者を構成するポリエステルとしては異なる組成のものを採用することが好ましい。溶解速度の差としては、一般に(b)は(a)に対し2〜20倍程度速いことが好ましい。このような速度差を実現するには、例えば、(a)には対してPETを適用する一方、接合剤(b)には、重量平均分子量2000〜10000のポリエチレングリコール10〜30質量%と、5−ナトリウムスルホイソフタル酸1〜3モル%とを共重合成分として含むPET系共重合ポリエステルを適用するのが好ましい。
本発明のポリエステルモノフィラメント糸は、このように特定の複合ポリエステルモノフィラメント糸をアルカリ割繊して得ることができ、かかる複合ポリエステルモノフィラメント糸として、単糸繊度3.0〜30.0dtex、熱水収縮率15%以下の糸を使用する。単糸繊度が3.0dtex未満になると、織物準備工程や製織工程において糸を取り扱うことが困難となるばかりか、得られるモノフィラメント糸の繊度も細くなり過ぎ実用面で問題が残る。一方、30.0dtexを超えると、紡糸時の冷却効果が乏しくなる結果、糸間で融着が発生し易くなるなど操業面で問題が発生することがあるばかりか、分繊操業性においても問題が残ることがある。さらに、熱水収縮率については、15%を超えると、織物の収縮力が強くなり過ぎる結果、モノフィラメント糸の繊度が太くなって織物の風合いが損なわれる他、織物の寸法安定性も低下する。熱水収縮率としては、特に5〜10%が好ましい。
本発明における複合モノフィラメント糸を得るには、コストの点を考慮すれば直接的に紡糸、延伸して得ることが好ましいともいえるが、まずマルチフィラメント糸を得、しかる後にこれを1本ずつ分繊して目的の糸となすことが、品質や紡糸性の点からはむしろ好ましく、本発明では通常後者を採用する。
かかるマルチフィラメント糸としては、スピンドロー糸などの一工程糸の他、UDY(未延伸糸)やPOY(高配向未延伸糸)などを延伸して得る二工程糸のいずれもが採用可能である。マルチフィラメント糸のフィラメント数としては、6〜16本が好ましく、8〜12本がより好ましい。フィラメント数が6本未満になると、採取できる複合モノフィラメント糸の本数が減るので、生産効率の点から好ましくない。一方、16本を超えると、マルチフィラメント糸が開繊し難くなり、分繊操業性の点で不利となる傾向にあり好ましくない。
マルチフィラメント糸の総繊度としては、50〜480dtexが好ましく、100〜300dtexがより好ましい。
本発明のモノフィラメント糸は、主としてオーガンジー用薄地織物などに用いられるものであり、一般には、上記複合モノフィラメント糸を用いて織物となした後、織物中の複合モノフィラメント糸をアルカリ割繊して得る。勿論、織物となすことなく単に複合モノフィラメント糸を割繊さえすれば、目的のモノフィラメント糸を得ることも可能である。しかしながら、このような手段を採用した場合、モノフィラメント糸がばらばらになり易く、織物準備工程や製織工程などにおいて様々なトラブルの要因となることがある。
かくして得られたモノフィラメント糸は、単糸繊度として0.1〜3.0dtexの範囲にあり、糸条形態としてクリンプを有さず直線的な糸条形態をなす。当該モノフィラメント糸のこのような構成により、織物においてこれまでに表現できなかったマイクロタッチなソフト風合いを具現できる。そして、糸の極細化によって織物に入射した光の屈折率を変化させることができるから、分繊糸にありがちなパーンビケなどの欠点をも抑制することができる。
ここで、モノフィラメント糸の単糸繊度について付言すると、0.1dtex未満になると、それに伴い複合モノフィラメント糸の繊度も細くなるため、糸の取り扱いにおいて支障を来たすことがある。また、織物風合いにおいて張り腰感が失われる。一方、3.0dtexを超えると、織物においてマイクロタッチな風合いを具現できなくなる。
次に、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、各物性値の測定は以下に準じた。
(1)複合ポリエステルモノフィラメント糸の単糸繊度
まず、枠周1.125mの検尺機を用いて、複合モノフィラメント糸を0.05±0.01cN/dtexの張力下で、約200m(枠周×178回)巻取り、カセサンプルとする。次に、コンマ以下5桁のグラム数を計測できる天秤(研精工業(株)製電子天秤)を使用してカセサンプルの質量を測定し、得られた数値を下記式(1)に代入する。測定並びに計算は、5本のパッケージについて各1回行い、計算値の平均を求めるべき単糸繊度(dtex)とする。
(2)複合ポリエステルモノフィラメント糸の熱水収縮率
JIS L1013 8.18.1かせ収縮法(A法)に準拠して測定する。
(3)ポリエステルモノフィラメント糸の単糸繊度
まず、枠周1.125mの検尺機を用いて、複合モノフィラメント糸を0.05±0.01cN/dtexの張力下で、約200m(枠周×178回)巻取り、カセサンプルとする。次に、市販のフレーク苛性ソーダを用いて20g/Lに調製したアルカリ水溶液中に浴比1:50の割合でカセサンプルを投入し、98℃で30分間アルカリ割繊し、一昼夜乾燥する。そして、コンマ以下5桁のグラム数を計測できる天秤(研精工業(株)製電子天秤)を使用して得られたモノフィラメント糸の質量を測定し、得られた数値を下記式(2)に代入する。測定並びに計算は、5本のパッケージについて各1回行い、計算値の平均を求めるべき単糸繊度(dtex)とする。
(実施例1)
複合ポリエステルモノフィラメント糸を構成するポリエステルとして、モノフィラメント(a)にはPETを、接合剤(b)には分子量6000のポリエチレングリコール13.3質量%及び5−ナトリウムスルホイソフタル酸2.5モル%を共重合成分として含むPET系共重合PETを適用した。
そして、両ポリエステルを通常の手段を準用して複合紡糸し、120dtex10fのポリエステルマルチフィラメント延伸糸を得た。このとき、マルチフィラメント糸を構成する複合モノフィラメント糸は、断面形状として、図1に示すような、接合剤(b)を介して8本のモノフィラメント(a)が接合した形態をなし、両者の質量割合は(a):(b)=4:1であった。
続いて、得られたマルチフィラメント糸を市販の分繊装置に仕掛け、分繊速度600m/分、送り出し張力0.9cN/dtex、捲取り時引き取り張力1.1cN/dtexなる条件で分繊し、10本の複合ポリエステルモノフィラメント糸を得た。
得られた複合ポリエステルモノフィラメント糸の単糸繊度は12.0dtexであり、熱水収縮率は8.5%であった。
次に、この複合モノフィラメント糸を経緯糸に用い、経緯密度とも126本/2.54cmとして平織物を製織し、精練後アルカリ割繊し、さらに黒色染料にて高圧染色し、オーガンジー用薄地織物を得た。
得られた織物は、モノフィラメント糸から構成され、マイクロタッチなソフト風合いを有するものであり、織物表面にはパーンビケなどの欠点も見当たらなかった。また、当該モノフィラメント糸の単糸繊度は1.2dtexであり、糸条形態を観察するため、織物から糸を取り出し光学顕微鏡で観察したところ、クリンプを有さず直線的な形態をなしていたのが確認できた。
(比較例1)
繊度を120dtex10fに代えて185dtex5fとする以外は、実施例1と同様にしてポリエステルマルチフィラメント延伸糸を得た。そして、このマルチフィラメント糸を分繊し、複合ポリエステルモノフィラメント糸となした。この複合モノフィラメント糸の単糸繊度は37.0dtex、熱水収縮率は9.2%であった。
その後、これを経緯糸に用いて、経緯密度とも75本/2.54cmとして平織物を製織し、精練、アルカリ割繊を経て、黒色染料にて高圧染色し、織物を得た。この織物は、実施例1の場合と同様、モノフィラメント糸から構成されているものの、当該糸条の単糸繊度が3.7dtexと太く、風合いとしてマイクロタッチなソフト風合いを発現するものではなかった。また、わずかではあるが、織物表面にパーンビケなどの欠点が確認できた。
(比較例2)
複合モノフィラメント糸におけるモノフィラメント(a)の本数を8本に代えて30本とし、繊度を120dtex10fに代えて30dtex10fとする以外は、実施例1と同様にしてポリエステルマルチフィラメント延伸糸を得た。そして、このマルチフィラメント糸を分繊し、複合ポリエステルモノフィラメント糸となした。この複合モノフィラメント糸の単糸繊度は3.0dtex、熱水収縮率は8.5%であった。
その後、これを経緯糸に用いて、経緯密度とも250本/2.54cmとして平織物を製織したが、製織工程だけでなく準備段階から糸切れなどがやや多く、工程通過性の点で多少問題が残った。
製織後、これを精練、アルカリ割繊し、黒色染料にて高圧染色して織物を得た。この織物は、実施例1の場合と同様、モノフィラメント糸から構成されているものの、当該糸条の単糸繊度が0.08dtexと細く、風合いとして張り腰感に欠けるものであった。また、織物表面において、パーンビケに起因する欠点は確認できなかったが、織物工程でのトラブルに起因する欠点はいくつか確認できた。
本発明に用いる複合ポリエステルモノフィラメント糸の断面形状の一例を示す模式図である。 本発明のポリエステルモノフィラメント糸の断面形状の一例を示す模式図である。
符号の説明
a モノフィラメント
b ポリエステル系接合剤

Claims (1)

  1. 単糸繊度が3.0〜30.0dtexであり、かつ熱水収縮率が15%以下である複合ポリエステルモノフィラメント糸をアルカリ割繊して得たポリエステルモノフィラメント糸であって、単糸繊度が0.1〜3.0dtexであり、かつクリンプを有さないことを特徴とするポリエステルモノフィラメント糸。
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