JP2010037797A - コンクリート堤体の構築方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】大規模ダムをはじめとする堤体の建設において、工期の短縮化、水和熱冷却コストの低減、および環境負荷の低減を一挙に実現することが可能な技術を提供する。
【解決手段】水結合材比60〜100%、粗骨材最大寸法50〜200mm、単位結合材量100〜170kg/m3、単位細骨材量600〜800kg/m3、単位粗骨材量1400〜1700kg/m3の超硬練り配合において、結合材に占める高炉スラグ微粉末量を71〜96質量%好ましくは85〜96%とした、材齢91日の圧縮強度が7〜35N/mm2となる性質を有するゼロスランプコンクリートを、堤体内部の構成材料として、RCD工法を適用するコンクリート堤体の構築方法。この場合、RCD工法における1層あたりのリフト高さを1.2m以上とすることが効果的である。
【選択図】なし

Description

本発明は、RCD(Roller Compacted Dam−concrete)工法を用いた堤体の構築方法に関する。
コンクリート堤体の合理的な構築方法としてRCD工法が知られている。RCD工法は、単位結合材量が少ない貧配合の超硬練りゼロスランプコンクリートをダンプトラック等で打設現場に搬送し、ブルドーザー等で敷き均し、その後、振動ローラーで締め固める工法である。その際、堤体の外周部を有スランプコンクリートによる枠組み構造とし、その内部に上記の超硬練りコンクリートを1層あたり0.5〜1m程度の厚さ(リフト高さ)に敷設して、各リフト毎に締固めを行い、層状に積み上げていく。RCD工法は中・大規模ダムの建設で主流になっている。
従来、RCD工法に適用するコンクリート(以下「RCDコンクリート」ということがある)は、水和熱を低減するために単位結合材量を120〜130kg/m3程度とし、セメントの30%程度をフライアッシュで置換した配合のものが多くの大規模ダムにおいて採用されている。
特開2001−192254号公報 特開平9−41346号公報 特開平2−239144号公報 特許第3608911号公報
ダムコンクリートはマスコンクリートであるため、温度応力ひび割れの対策が極めて重要である。従来、RCDコンクリートには上記のような貧配合のコンクリートを採用しているが、内部の発熱が過大にならないように、1層あたりのリフト厚さは通常1m以内に制限される。このため、大規模ダムでは何十層ものリフトを繰り返す必要があり、これが工期の長期化を招く要因となっている。また夏期には、内部コンクリートの温度が過大とならないように高価なチラー設備などを用いてコンクリートの冷却を行っており、ダム建設のコストを押し上げている。
一方、最近では産業界において環境負荷低減の要請が高まっている。ダム建設には大量のセメントが使用されるが、セメント1tを製造すると約200kgのCO2が排出されるとされ、今後はダム建設においてもできるだけ環境負荷の小さい材料に切り替えていく対策が望まれる。
本発明は、大規模ダムをはじめとする堤体の建設において、工期の短縮化、水和熱冷却コストの低減、および環境負荷の低減を一挙に実現することが可能な技術を提供しようというものである。
上記目的は、水結合材比60〜100%、粗骨材最大寸法50〜200mm、単位結合材量100〜170kg/m3、単位細骨材量600〜800kg/m3、単位粗骨材量1400〜1700kg/m3の超硬練りコンクリート配合において、結合材に占める高炉スラグ微粉末量を71〜96質量%好ましくは85〜96%とした、材齢91日の圧縮強度が7〜35N/mm2となる性質を有するゼロスランプコンクリートを、堤体内部の構成材料として、RCD工法を適用するコンクリート堤体の構築方法によって達成される。RCD工法における1層あたりのリフト高さを1.2m以上とすることが効果的である。
ここで、材齢は打設時を基準にした日数である。圧縮強度はJIS A1132:2006に準拠して、40mmの網ふるいで40mmを超える粗骨材粒子を除去した試料により定めることができる。ゼロスランプコンクリートとは、スランプ試験においてスランプが0cmとなるコンクリートである。
本発明によれば、以下のようなメリットが得られる。
(i)従来のRCDコンクリートと比べ水和熱が大幅に低減されるので温度応力ひび割れ発生の感受性が小さくなり、1層あたりのリフト高さを増大させることができる。これにより堤体の建設工期が短縮化し、特に大規模ダムの建設において大きな工期短縮効果が期待される。
(ii)従来、温度応力ひび割れの発生を抑制するために採用されていた対策を大幅に軽減することが可能になる。
(iii)高炉スラグは高炉メーカーで不可避的に発生する副産物であり、セメントの大部分をこれに置換すると、セメントクリンカー焼成時の石灰石の脱炭酸や、焼成に必要な燃料の燃焼による、CO2の発生量が大幅に削減できる。特に大規模ダムの建設においてその効果は極めて大きい。
セメントの一部を高炉スラグで置換したコンクリートは知られているが、70%を超えるような多量の高炉スラグで置換すると種々の弊害が生じることから、一般的にそのようなコンクリートは採用されない。発明者らはその弊害について詳細に検討した結果、RCDコンクリートのセメントを高炉スラグで多量置換することの可能性について以下のような知見を得た。
(1)一般に高炉スラグはアルカリの刺激によって硬化する潜在水硬性を有しているが、セメントを高炉スラグで多量に置換すると、コンクリート中のアルカリの絶対量が不足し、ブリーディングの影響によってアルカリが均質に分布しない状況あるいはレイタンスとして失われる状況が生じると、コンクリートが硬化しない恐れがある。
RCDコンクリートでは単位水量を例えば80〜110kg/m3と少なくすることが可能であり、これによってブリーディングはほとんど発生しないため、硬化しない状況は回避できる。
(2)一般にセメントを高炉スラグで多量に置換すると、自己収縮ひずみが大きくなるため、ひび割れが発生しやすくなる。
しかしRCDコンクリートでは上記のように単位水量を少なくすることが可能であり、自己収縮ひずみの問題は回避される。
(3)一般にセメントを高炉スラグで多量に置換すると、初期の強度発現が小さく、型枠の脱型時期が遅くなる。また、グリーンカットの時期が遅くなる。
しかしRCDコンクリートは振動ローラによる転圧で自立するため、初期の強度発現は問題とならない。また通常のコンクリートとは施工方法が異なり、グリーンカットの時期が問題となることもない。
(4)一般にセメントを高炉スラグで多量に置換すると、特に材齢28日強度が低くなる。
しかしRCDコンクリートの強度保証材齢は従来一般に91日とされている。発明者らの検討によれば、セメントを高炉スラグで多量に置換(例えば置換率85〜96%)した場合、材齢28日強度は低下するものの、材齢28日から91日にかけて強度が着実に増大することがわかった。そして、材齢91日の圧縮強度は15〜35N/mm2となり、十分な強度を呈する堤体が構築できることが明らかになった。
(5)一般にセメントを高炉スラグで多量に置換すると、中性化の進行が早くなる傾向がある。
しかしRCD工法の堤体内部には鉄筋が配置されないので、中性化の問題は生じない。
以下、本発明をより具体的に説明する。
発明者らの検討によれば、高炉スラグでセメントの大部分を置換する本発明のRCDコンクリートにおいても、水結合材比、粗骨材最大寸法、単位水量、単位結合材量、単位細骨材量、単位粗骨材量などについては、従来から実績のあるRCDコンクリートの基本的な配合を適用することができる。
すなわち、水結合材比は60〜100%の範囲とすることができ、65〜90%であることがより好ましい。単位水量は80〜110kg/m3とすることが好ましく、80〜100kg/m3とすることが一層好ましい。単位結合材量は100〜170kg/m3とすることができ、110〜150kg/m3あるいは110〜140kg/m3に管理しても構わない。単位細骨材量は600〜800kg/m3の範囲で調整することができる。単位粗骨材量は1400〜1700kg/m3で調整することができる。
粗骨材最大寸法は50〜200mmの範囲とすることができ、50〜170mmとすることがより好ましい。50〜100mmの範囲としても構わない。粗骨材最大寸法が50mmを下回ると、堤体の構造にとって必要な強度が安定して得られない場合がある。ただし、粗骨材は篩い分けされた複数種類の異なる最大寸法を有するものをブレンドすることが望ましい。粗骨材の粒度分布を例示すると、最大寸法80mm超え〜200mmのもの(例えばG150):0〜400kg、最大寸法40mm超え〜80mmのもの(G80):350〜550kg/m3、最大寸法20mm超え〜40mmのもの(G40):350〜550kg/m3、最大寸法20mm以下のもの(例えばG20):350〜700kg/m3の粗骨材配合を採用することができる。細骨材率s/aは35%以下とすることが望ましく、31%以下に管理しても構わない。例えば20〜31%と低くすることができる。
前述のように高炉スラグ微粉末はセメントのアルカリ分の刺激を受けて硬化する。特にセメントの大部分を高炉スラグで置換したコンクリートでは、アルカリ分が不足すると硬化不良が生じる危険性がある。このようなことからJISにおいても高炉スラグの混入率は70%以下に規定されている。アルカリ分が不足する要因として、一般のコンクリート、すなわち有スランプ(スランプ2〜21cm程度)の場合、高アルカリのブリーディング水が打設後数時間で発生することが挙げられる。また、高炉スラグ微粉末の添加量が過度に多くなると凝結時間が大幅に長くなり、側圧が大きくなる、脱型時間が長くなるなど、施工上大きな問題となる。
これに対し、本発明で対象とするコンクリートは超硬練りであるため、ブリーディングはほとんど発生しない。また、ローラーで振動締固めするだけで自立するため、初期の強度は必要なく、高炉スラグ微粉末を多量に含有させたことにより凝結時間が遅くなっても全く問題ないのである。発明者らの検討の結果、結合材に占める高炉スラグ微粉末量を71質量%以上と極めて大きくしても、所望の特性を十分に満たす堤体が構築できることを見出した。これにより堤体の建設に伴って排出されるCO2の量を大幅に削減することが可能になる。
さらに発明者らの詳細な検討によれば、結合材に占める高炉スラグ微粉末量を概ね80質量%以上に大きくしていくと、水和反応に伴う発熱量が急激に低減することを見出した。特に結合材に占める高炉スラグ微粉末量が85質量%以上のものは発熱量の低減効果が非常に大きい。一方、結合材に占める高炉スラグ微粉末量が過度に高くなるとアルカリ刺激剤を添加しないと所定の強度が発現しないようになる。種々検討の結果、本発明では結合材に占める高炉スラグ微粉末量は96質量%まで許容される。なお、結合材にはフライアッシュ等の微粉末が含まれていても構わないが、結合材に占めるセメント量は4質量%以上を確保することが望ましい。
堤体のRCDコンクリートとしては、材齢91日の圧縮強度が15〜35N/mm2となる性質を有していることが望ましい。材齢91日の圧縮強度が20±5N/mm2の範囲になるように管理してもよい。上記のコンクリート配合の範囲においてそのような性質を持たせることができる。なお、材齢28日の圧縮強度は概ね8〜20N/mm2程度となる。
混和剤は従来のRCDコンクリートに添加されるものや、高炉スラグを添加したコンクリートに添加される公知のものが適宜利用できる。例えばブリーディング抑制をより一層確実に行うために、MC、HEC、ウエランガム等の水溶性高分子を少量添加しても構わない。アルカリ刺激剤は特に添加する必要はない。
上記のコンクリートを適用したRCD工法の施工は、基本的には従来と同様に行えばよい。ただし、高炉スラグを多量に配合した上記のコンクリートは水和熱の発生が低く抑えられるので、RCD工法における1層あたりのリフト高さを大きくすることができる。従来、RCD工法では温度応力ひび割れの観点から1層あたりのリフト高さを1mを超える高さとすることが難しかった。本発明によればリフト高さを1.2m以上とすることが可能である。従来と同様の冷却設備を適用すれば、3m程度のリフト高さを実現することも可能と考えられる。ただし、締固めの作業性等を考慮すると2.5m以下あるいは2m以下とすることが好都合である。一方、夏期において堤体の冷却設備を設置しない施工を実施することは堤体建設コストの低減に極めて有効である。その場合、外気温が例えば25℃以上となる時期に、堤体の冷却設備を設置することなく、1層あたりのリフト高さを1.2〜2mあるいは1.2〜1.6mとしてRCD工法の打設を行う堤体の構築方法が実現できる。また、従来は堤体のRCD工法においては温度応力ひび割れを抑制するために打上がり速度、打込み温度、目地切り間隔などの規制が設けられているが、本発明によればこれらの規制を緩和することができる。
表1に示す配合の超硬練りゼロスランプコンクリートを想定し、硬化時に発生する水和熱の相対比較試験、および材齢91日の圧縮試験を行った。これらの試験では表1の配合から粗骨材G80およびG150を除いたコンクリートを用いた。粉体材料としては以下のものを使用した。
・セメント: 普通ポルトランドセメント、ブレーン比表面積3400cm2/g
・高炉スラグ微粉末: ブレーン比表面積約4000cm2/g、SiO2;33%、Al23;16%、Fe23;1%、CaO;43%、MgO;6%
・フライアッシュ: JIS A6201、II種相当品
〔水和熱の相対比較試験〕
各コンクリート混練物を500mm×500mm×500mmの型枠内に打設し、コンクリート試験体を作製した。型枠の外側を断熱材で囲んだ。試験体中央部に設置した熱電対により硬化時の温度変化をモニターした。打込み温度は21〜24℃、硬化中の外気温は23〜27℃であった。表1中に、打設からの材齢が2.5日時点および10日時点における内部温度を例示する。各配合のコンクリートについて同一条件で断熱材を使用していることから、「水和熱の発生量」に及ぼす「結合材に占める高炉スラグ微粉末量」(以下「高炉スラグ置換量」という)の影響を相対的に比較することができる。表1に見られるように、従来のRCDコンクリートの標準的な配合(フライアッシュ置換率30%)である試料No.1に比べ、高炉スラグ置換量が71%以上のものは水和熱の発生が少なく、高炉スラグ置換量が80%以上になると水和熱の発生が急激に低減することがわかる。
〔材齢91日圧縮強度〕
各コンクリート混練物の硬化体について、JIS A1132:2006に準拠して材齢91日の圧縮強度を測定した。アルカリ刺激剤は使用していない。結果を表1中に示す。いずれの試験体も、高炉スラグ微粉末を多量に配合したことによるコンクリートの硬化不良は見られず、材齢91日圧縮強度は15〜35N/mm2の範囲に収まっていた。セメントの大部分を高炉スラグ微粉末で置換した超硬練りゼロスランプコンクリートはRCDコンクリートとして適用できるものであることが確認された。粗骨材の配合を表1のように調整したRCDコンクリートが大規模ダムの構造材料として十分な強度特性を有することは過去の実績からも実証されている。
Figure 2010037797

Claims (3)

  1. 水結合材比60〜100%、粗骨材最大寸法50〜200mm、単位結合材量100〜170kg/m3、単位細骨材量600〜800kg/m3、単位粗骨材量1400〜1700kg/m3の超硬練りコンクリート配合において、結合材に占める高炉スラグ微粉末量を71〜96質量%とした、材齢91日の圧縮強度が7〜35N/mm2となる性質を有するゼロスランプコンクリートを、堤体内部の構成材料として、RCD工法を適用するコンクリート堤体の構築方法。
  2. 前記コンクリートは結合材に占める高炉スラグ微粉末量を85〜96質量%としたものである請求項1に記載のコンクリート堤体の構築方法。
  3. RCD工法における1層あたりのリフト高さを1.2m以上とする請求項1または2に記載のコンクリート堤体の構築方法。
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