JP2010031411A - 波状ヘム付き編地 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明にかかる波状ヘム付き編地は、単位編地の端線が波状となっている波状ヘム付き編地であって、複数ウェールにわたって大きく蛇行しながら挿入されている仕掛け弾性糸の収縮に追随することにより、前記端線の波状が形成されていることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
そこで、単位編地間に抜き糸を設けるとともに、各単位編地と抜き糸を連結する弾性連結組織を設けるようにし、抜き糸を抜き去ったときに弾性連結組織が各単位編地に引き込まれるようにすることで、単位編地ごとに分離するようにし、当て布や別生地の縫い合わせを行うことなく解れを防止する方法も知られている。
例えば、非弾性糸および/または弾性糸の振りの異なる組織を交互に形成された波形ヘム部と、身生地部を有する編地が知られており、この技術によれば、縫い目のごろつきがなく、良好な着用感を有するとともに、審美性に優れる波形ヘム部を有する編地が得られるとされている(特許文献1参照)。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、インナー衣料として着用したときにアウター衣料から単位編地の端線が目立ちにくく、着用感にも優れ、かつ、自由度の高い波状を形成することで意匠性に極めて優れ、その形態安定性も高い波状ヘム付き編地を提供することである。
すなわち、本発明にかかる波状ヘム付き編地は、単位編地の端線が波状となっている波状ヘム付き編地であって、複数ウェールにわたって大きく蛇行しながら挿入されている仕掛け弾性糸の収縮に追随することにより、前記端線の波状が形成されていることを特徴とする。
〔波状ヘム付き編地〕
本発明にかかる波状ヘム付き編地は、複数ウェールにわたって大きく蛇行しながら挿入されている仕掛け弾性糸の収縮に追随することにより、前記端線の波状が形成されている。
さらに、仕掛け弾性糸により波状となっているパワー切替部をも有していてよい。このようにして、パワー切替部においても、その形状を波状とすることによって、アウター衣料から目立ちにくくすることができるとともに、意匠性、形態安定性を高めることができる。
本発明にかかる編地は、例えば、図1に示す実施形態では、両側の単位編地10が抜き糸20と弾性連結組織30を介して連結されており、単位編地10には、非パワー切替部11、パワー切替部12が設けられるとともに、大きく蛇行する仕掛け弾性糸13が挿入されている。前記仕掛け弾性糸13の収縮に追随して、単位編地の端線14が波状となっている様子が示されている。
なお、本発明において「パワー」とは、以下の測定方法により得られる値とする。
2.5cm×16.0cmの試験片を、タテ、ヨコ方向にそれぞれ採取して、これらの試験片を、上部つかみ2.5cm、下部つかみ3.5cm、つかみ間隔10.0cmとして、定速伸長型引張試験機に取り付け、30±2cm/minの速度で機械を操作し、3回繰り返し引っ張り、3回目の伸長時において、伸度80%まで引っ張るのに要する荷重をパワー(g)とした。
また、図1に示す例では、仕掛け弾性糸13が、端線14に隣接する位置のみならず、パワー切替部12a、12b中にも挿入されている。このように、仕掛け弾性糸13は、端線14に隣接する位置のほかに、波状を形成したい所望の位置に挿入して良く、パワー切替部12a、12bの全範囲にわたって仕掛け弾性糸13が挿入されている図1の実施形態によれば、パワー切替部12a、12bの全範囲にわたって均質に波状を形成したり、段階的に波状を緩めたりといった制御が可能となる。ただし、本発明はこの形態に限らず、例えば、仕掛け弾性糸13がパワー切替部12a,12bから境界線15a、15bを超えて非パワー切替部11にまで拡がって挿入されていてもよいし、非パワー切替部の内部のみに挿入されていてもよい。
図1に示す分離前の編地においては、弾性連結組織30が抜き糸20とその両側の単位編地の端線14を連結している。1つの抜き糸20に対しては、その両側の単位編地10との間にそれぞれ弾性連結組織30を配置しておく。このとき、両方の弾性連結組織30は、互いに独立した組織であって、抜き糸20を解いたときに、それぞれの弾性連結組織30が両側の単位編地10に分かれて引き寄せられるような編成組織を採用する。
抜き糸20と弾性連結組織30も、通常採用されているもので良い。これらは、図1では1箇所にしか示されていないが、通常、単位編地の用途などに応じた所望の間隔で複数設けられる。
抜き糸20は、通常、非弾性糸からなり、その太さとしては、例えば、33〜200dtexが好ましい。
また、前記端線14を形成する糸も、通常、非弾性糸からなり、その太さとしては、例えば、15〜55dtexが好ましい。
弾性連結組織30としては、通常の分離構造を有する編地と同様の構造が採用できる。例えば、両単位編地10と抜き糸20とを数コース毎に移行するように挿入された組織が採用できる。前記弾性連結組織30として、具体的には、例えば、22/00/22/11/33/11//、33/22/33/00/11/00//などの繰り返し単位を有する編成組織が採用できる。
前記した編地には、目的に応じて、例えば、非弾性糸あるいは弾性糸による柄や模様となる編成組織を組み合わせることができる。
〔仕掛け弾性糸〕
次に、本発明にかかる波状ヘム付き編地において必須に用いられる、複数ウェールにわたって大きく蛇行しながら挿入されている仕掛け弾性糸13について詳述する。
前記仕掛け弾性糸13は、単位編地の端線14に対して複数ウェールにわたって接近または離反するように振られて挿入されている形態が好ましく例示できる。前記「複数ウェールにわたって」とは、同一ウェール上で振られる場合を含まないという意味である。
前記端線14は、前記仕掛け弾性糸13の収縮に追随することにより波状となるものであることから、前記仕掛け弾性糸13は、前記波状を生じさせるに足る充分な収縮力を有することが好ましい。
充分な収縮力を得るためには、例えば、前記仕掛け弾性糸13として、1本または複数本が帯状にまたは引き揃えて挿入される仕掛け弾性糸を用い、前記仕掛け弾性糸13の1本の太さまたは複数本合計の太さを117dtex以上とすることが好ましい。より好ましくは260dtex以上であり、さらに好ましくは780dtexである。このように、仕掛け弾性糸の本数や繊度を適宜に設定することで、仕掛け弾性糸13に充分な収縮性を付与することができる。
前記仕掛け弾性糸13は、前記端線14への最離反部では、該仕掛け弾性糸13と前記端線14との間隔bが15〜56ウェールの範囲となるまで離反するものであることが好ましい。15ウェール以上の間隔であれば仕掛け弾性糸13の収縮に追随することによる波状の形成が充分に行われて優れた外観が得られるからであり、56ウェール以下の間隔であれば仕掛け弾性糸13の収縮力を端線14に充分に伝えることができるからである。
以上では、単位編地の端線14との関係において仕掛け弾性糸13を説明したが、所望のウェールとの関係において同様に仕掛け弾性糸13を配置することにより、所望のウェールを波状に変形させることができる。これにより、例えば、波状のパワー切替部を形成させることもできるのである。
図4〜8は、仕掛け弾性糸13の大きな蛇行に応じて、端線の波状がいかに形成されるかを、様々な形状を例にとって模式的に表したものである。
図4〜8は、単位編地の端線14が波状となっている例を示すものであるが、簡単のために、抜き糸20および弾性連結組織30の図示を省略している。
図4は湾曲形状を採用したもので、各弧が全て同一の大きさである例を表している。
図4(a)は仕掛け弾性糸13が収縮する前の状態であり、図4(a)に矢印で示す方向に仕掛け弾性糸13の各部が伸縮することで、図4(b)の状態になる。図4(b)では、仕掛け弾性糸13の収縮に追随して端線14も湾曲状に変形されている。図4(b)に示す状態から抜き糸を抜き去れば、図4(c)に示す状態となり、端線14が湾曲状となっている波状ヘム付き編地の単位編地10が得られる。これらのことは、図5〜8における(a)〜(c)についても共通することであるので、以下ではそれらの説明を省略する。
図6は波状として台形状を採用したものである。上記湾曲形状と異なり、角度を持って屈曲している。このように角度を有する形状では、実際には、変形後にやや丸みを帯びる傾向にある。後述の図7,8に示す形態においても同様である。
図7は波状として三角形状を採用したものである。斜辺の長さに変化を持たせることで、独特な外観を呈している。
本発明にかかる波状ヘム付き編地における波状としては、例えば、上記湾曲形状、台形状、三角形状を相互に組み合わせたり、弧の曲率を様々に変えたり、というように様々な形状を例示することができ、極めて自由度が高い。
なお、図4〜8では、抜き糸20を挟む2つの端線14のうち、両側の端線14に対して接近または離反する仕掛け弾性糸13が図示されているが、片側だけであってもよい。ただし、両側の端線14に対して接近または離反する仕掛け弾性糸13を挿入する図4〜8に示す形態のほうが、両側で仕掛け弾性糸13の収縮力が作用するので、左右からバランス良く力が作用する点で好ましい。
図4〜8では単位編地の端線14が波状となっている例を示したが、端線14以外の変形も同様になされる。その説明は上記と重複するため省略する。
上記本発明にかかる波状ヘム付き編地に使用される編成糸としては、従来公知のものを用いることができる。編成糸は、非弾性糸と弾性糸に分けることができる。
本発明にかかる波状ヘム付き編地に使用される非弾性糸は、基本的には通常の編地と同様の糸材料が使用できる。
非弾性糸は、全く弾性の無い糸だけではなく、弾性糸に比べて弾性あるいは伸縮性の少ない糸であればよい。具体的には、本明細書において、非弾性糸とは、伸度100%未満の糸を意味する。好ましくは、伸度60%未満の糸である。
非弾性糸の太さは、使用する目的に応じて適宜設定すれば良く、各目的における具体的な好適範囲は、上述したとおりである。基本的には、編地の表面に弾性糸が露出しないように覆い隠せる程度の太さを有することが好ましい。その上で、出来るだけ細くて強度を有していれば、薄地の編地を製造し易くなる。非弾性糸が太過ぎると、生地の伸縮性が悪くなり、表面質感や肌触りも悪くなり、ホツレも生じ易くなる。
弾性糸の材料は、通常の編地で使用されている弾性糸と同様のものが採用できる。例えば、ポリウレタン弾性糸が使用できる。スパンデックスとして知られる高弾性ポリウレタン糸が使用できる。弾性糸に非弾性糸を被覆した被覆弾性糸も使用できる。
弾性糸としては、伸度200%以上のものが使用できる。好ましくは、伸度400%以上である。
弾性糸の太さは、使用する目的に応じて適宜設定すれば良く、各目的における具体的な好適範囲は、上述したとおりである。基本的には、弾性糸が太いほど、伸縮性は強くなるが、弾性糸が太過ぎると、生地が分厚くなったり外観品質が低下したりする。
編成は、基本的には、通常の編地と共通する編成装置および編成方法が適用できる。
編機としては、トリコット編機、ラッセル編機、さらにはジャガード機構付き編機などが使用できる。
編成された編地は、セット加工や精練処理、染色処理などの、通常の編地に行われている処理工程を経て、編地製品となる。
特に、セット加工により、弾性糸が、糸同士の交差部分や編目部分で熱融着を起こして接合されることで、引き裂きに対する抵抗性が高まり、破裂強度が向上する。セット加工の処理条件は、使用する非弾性糸および弾性糸の種類や特性によっても異なるが、通常、180〜195℃の熱セット加工が採用される。
通常の編地が使用される用途に使用できる。特に、外観性や着用感の良い編地が必要とされる各種の衣料品などに好適である。生地の端線やパワー切替部がアウター衣料から認識されにくいので、ファンデーション衣料などのインナー衣料に特に好適である。
編成装置としては、カールマイヤー社製のRSE6ELを用いた。
図9、図10は編地の単位編地10と抜き糸20と弾性連結組織30を構成する各糸の個別の編成組織を模式的に示している。
図9は、地組織を構成する編成組織A〜Cと、抜き糸20および抜き糸の左右に形成される単位編地の端線14を構成する編成組織Xと、抜き糸20と端線14とを連結する弾性連結組織30の編成組織Yを示し、図10は、複数ウェールにわたって大きく蛇行しながら挿入されている仕掛け弾性糸13による編成組織Zを示している。
筬〔G1〕
(編成組織A):ナイロン33−26−2M94(東レ社製)
筬〔G2〕
(編成組織B):ナイロン33−26−2M94(東レ社製)
筬〔G3〕
(編成組織X)
抜き糸:ナイロン66、56//2T−17セミダル(東レ社製)
単位編地の端線:ナイロン66、ウーリー33T−26セミダル(東レ社製)
筬〔G4〕
(編成組織C)
非パワー切替部:ライクラ156−127C(オペロンテックス社製)
パワー切替部:ライクラ156−127C(2本持1本持の繰返し)(オペロン テックス社製)
(編成組織Y):ライクラ156−127C(オペロンテックス社製)
筬〔G5〕、筬〔G6〕
(編成組織Z):ライクラ117−127C//2(2本引き揃え)(オペロンテ ックス社製)
編成組織Aは編成装置の第1の筬〔G1〕で編成される非弾性糸の組織であり、編成組織Bは第2の筬〔G2〕で編成される非弾性糸の組織である。編成組織A,Bはハーフセットで編成される。
編成組織Xは第3の筬〔G3〕で編成される非弾性糸の組織である。
編成組織Yは第4の筬〔G4〕で編成される弾性糸の組織である。
編成組織Zは第5の筬〔G5〕、第6の筬〔G6〕で編成される仕掛け弾性糸の組織である。
図9において、筬〔G1〕で編成される非弾性糸の編成組織A、筬〔G2〕で編成される非弾性糸の編成組織Bは、いずれも、12/21/12/10/01/10//の繰り返し単位からなる。
筬〔G4〕で編成される弾性糸の編成組織Cおよび編成組織Yは22/11/33/11/22/00//の繰り返し単位からなる。
筬〔G5〕、筬〔G6〕で編成される仕掛け弾性糸の編成組織Zは、引き揃えられた2本の仕掛け弾性糸が隣接して9箇所に帯状に糸通しされてなる(合計18本)ものである。編成組織Zを構成する仕掛け弾性糸の動きは図2に示すとおりであり、図10は、図2に示す仕掛け弾性糸の動きの一部を詳細に図示したものである。この編成組織Zにおいて、筬〔G6〕で編成される仕掛け弾性糸は、筬〔G5〕で編成される仕掛け弾性糸とは間隔を空けて編成されており、その間隔は11ウェールである。そして、筬〔G5〕の仕掛け弾性糸と〔G6〕の仕掛け弾性糸とは、それぞれ、図10から分かるように、1ウェールまたは2ウェールの振り幅で小さく蛇行しながら、全体としても大きく蛇行している。
以上のようにして形成された波状ヘム付き編地で作成した衣類は、意匠性に優れ、アウター衣料から単位編地の端線が目立たないものであった。また、波状のパワー切替部についても、所望のパワーを有しながら、アウター衣料からは目立ちにくいものであった。
11 パワー切替部
12 非パワー切替部
13 大きく蛇行する仕掛け弾性糸
14 単位編地の端線
15 パワー切替部と非パワー切替部の境界線
20 抜き糸
30 弾性連結組織
G1〜G6 筬
A〜C、X〜Z 編成組織
Claims (12)
- 単位編地の端線が波状となっている波状ヘム付き編地であって、複数ウェールにわたって大きく蛇行しながら挿入されている仕掛け弾性糸の収縮に追随することにより、前記端線の波状が形成されていることを特徴とする、波状ヘム付き編地。
- 前記仕掛け弾性糸が複数本、ウェールごとに離れて挿入されている、請求項1に記載の波状ヘム付き編地。
- 前記仕掛け弾性糸は、前記大きな蛇行の中に小さな蛇行を有し、この小さな蛇行の1回の振り幅が3ウェール以内であり、コース飛び数が3コース以内である、請求項1または2に記載の波状ヘム付き編地。
- 前記仕掛け弾性糸が、1本または複数本が帯状にまたは引き揃えて挿入される前記弾性糸の、1本の太さまたは複数本合計の太さが260dtex以上である、請求項1から3までのいずれかに記載の波状ヘム付き編地。
- 隣り合う単位編地の端線が抜き糸を介して連結されてなる、請求項1から4までのいずれかに記載の波状ヘム付き編地。
- 前記仕掛け弾性糸は、前記端線への接近ごとの最接近部では、前記最接近部における該弾性糸と前記端線との間隔が1〜10ウェールの範囲となるまで接近している、請求項1から5までのいずれかに記載の波状ヘム付き編地。
- 前記仕掛け弾性糸は、前記端線への離反ごとの最離反部では、前記最離反部における該弾性糸と前記端線との間隔が15〜56ウェールの範囲となるまで離反している、請求項1から6までのいずれかに記載の波状ヘム付き編地。
- 前記仕掛け弾性糸は、最接近部と最離反部の隣り合う間隔が、最も間隔の狭いところで、6コース以上である、請求項1から7までのいずれかに記載の波状ヘム付き編地。
- 単位編地内に、前記仕掛け弾性糸により波状となっているパワー切替部をも有する、請求項1から8までのいずれかに記載の波状ヘム付き編地。
- 前記パワー切替部の少なくとも一部が、単位編地の端線と連設し、その幅が1〜7cmであり、前記端線と連設するパワー切替部のパワーが非パワー切替部に対して3倍以内である、請求項9に記載の波状ヘム付き編地。
- 前記パワー切替部の少なくとも一部が、単位編地の端線と連設し、その幅が1〜7cmであり、前記端線と連設するパワー切替部のパワーが非パワー切替部に対して1/3倍以上である、請求項9に記載の波状ヘム付き編地。
- 前記パワー切替部の少なくとも一部が、単位編地の端線と連設し、その幅が1〜7cmであり、前記端線と連設するパワー切替部のパワーが非パワー切替部に対して1/3倍以上3倍以内の範囲で段階的に変化している、請求項9に記載の波状ヘム付き編地。
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