JP2010030141A - 液体噴射ヘッドの製造方法及び圧電素子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた圧電特性を示す圧電体膜を有する液体噴射ヘッドの製造方法及び圧電素子の製造方法を提供する。
【解決手段】流路形成基板上に第1電極を形成する第1電極形成工程と、前記第1電極上にペロブスカイト型結晶構造の圧電体膜の組成液を塗布する塗布工程200と、前記組成液を熱処理する熱処理工程201〜202が少なくとも2段階備えられ、塗布した前記組成液を非晶質の圧電体前駆体膜とする前駆体膜形成工程と、前記圧電体前駆体膜を結晶化させて前記圧電体膜を形成する結晶化工程203と、前記圧電体層の前記第1電極が形成された面とは反対側の面に第2電極を形成する第2電極形成工程と、を具備し、前記前駆体膜形成工程は、熱処理工程の後に降温させる降温工程210を備え、該降温工程210を相対湿度が60%RH以上の環境下で行う。
【選択図】 図10
【解決手段】流路形成基板上に第1電極を形成する第1電極形成工程と、前記第1電極上にペロブスカイト型結晶構造の圧電体膜の組成液を塗布する塗布工程200と、前記組成液を熱処理する熱処理工程201〜202が少なくとも2段階備えられ、塗布した前記組成液を非晶質の圧電体前駆体膜とする前駆体膜形成工程と、前記圧電体前駆体膜を結晶化させて前記圧電体膜を形成する結晶化工程203と、前記圧電体層の前記第1電極が形成された面とは反対側の面に第2電極を形成する第2電極形成工程と、を具備し、前記前駆体膜形成工程は、熱処理工程の後に降温させる降温工程210を備え、該降温工程210を相対湿度が60%RH以上の環境下で行う。
【選択図】 図10
Description
本発明は、ノズル開口から液体を噴射する液体噴射ヘッドの製造方法及び圧電素子の製造方法に関する。
液体噴射ヘッド等に用いられる圧電素子は、電気機械変換機能を呈する圧電材料からなる誘電体膜を2つの電極で挟んだ素子であり、誘電体膜は、例えば、結晶化した圧電性セラミックスにより構成されている。
このような圧電素子の製造方法としては、基板(流路形成基板)の一方面側に下電極膜をスパッタリング法等により形成した後、下電極膜上に圧電体層をゾル−ゲル法又はMOD法等により形成すると共に、圧電体層上に上電極膜をスパッタリング法により形成し、圧電体層及び上電極膜をパターニングすることで圧電素子を形成している(例えば、特許文献1参照)。
圧電体層を製造するゾル−ゲル法では、一般的に、金属アルコキシド等有機金属化合物をアルコールに溶解し、これに加水分解制御剤等を加えて得た溶液を下電極膜が形成された基板上に塗布した後、加熱により部分加水分解、脱アルコール重合、脱水重合の反応を連続的に進行させ、金属元素―酸素−金属元素の三次元ネットワークが形成され、ゾルはやがて流動性を失ってゲル化し、圧電体の前駆体膜を形成する。前記工程を少なくとも一回以上は実施し、その後、高温で熱処理して結晶化させる。そして、これらの工程を複数回繰り返し実施することで所定厚さの圧電体層(圧電体薄膜)を製造している。一方、MOD法では、下電極膜を形成した基板上に有機金属化合物の溶液を塗布して乾燥及び脱脂させて圧電体の前駆体膜を形成する工程を少なくとも一回以上実施し、その後、高温で熱処理して結晶化させる。そして、これらの工程を複数回繰り返し実施することで所定厚さの圧電体層(圧電体薄膜)を製造している。
また、圧電体層の製造において、塗布工程、乾燥工程、仮焼成工程、本焼成工程、冷却工程を具備し、塗布工程の相対湿度を60%RH以下、仮焼成工程の相対湿度を70〜100%RH、本焼成工程の相対湿度を70〜100%RH、冷却工程の相対湿度を70〜100%RHと規定したものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、圧電体膜の製造工程において、非晶質の前駆体膜を形成する際の加熱時の湿度を規定したものは従来からあるものの、加熱温度から加熱前の温度(室温)まで降温させる降温工程での湿度を規定したものはなく、降温工程の湿度が結晶化した圧電体膜の特性に影響を与えることは知られていない。
そして、降温工程での湿度が低いと、ペロブスカイト型結晶構造の圧電体膜のBサイトを構成する各組成同士の比率が、圧電体膜の厚さ方向で均一にならず、優れた圧電特性を得ることができないという問題がある。
本発明はこのような事情に鑑み、優れた圧電特性を示す圧電体膜を有する液体噴射ヘッドの製造方法及び圧電素子の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の態様は、液体を噴射するノズル開口に連通する液体流路が設けられた流路形成基板上に第1電極を形成する第1電極形成工程と、前記第1電極上にペロブスカイト型結晶構造の圧電体膜の組成液を塗布する塗布工程と、前記組成液を熱処理する熱処理工程が少なくとも2段階備えられ、塗布した前記組成液を非晶質の圧電体前駆体膜とする前駆体膜形成工程と、前記圧電体前駆体膜を結晶化させて前記圧電体膜を形成する結晶化工程と、前記圧電体層の前記第1電極が形成された面とは反対側の面に第2電極を形成する第2電極形成工程と、を具備し、前記前駆体膜形成工程は、熱処理工程の後に降温させる降温工程を備え、該降温工程を相対湿度が60%RH以上の環境下で行うことを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法にある。
かかる態様では、前駆体膜形成工程の熱処理工程の間の降温工程を高湿度の環境下で行うことで、結晶化した圧電体膜の特性を制御して変位特性(圧電特性)に優れた圧電体膜を形成することができる。ここで、「上」なる表現を用いているが、これは所定の部材上に直接形成されたものに限定されず、所定の部材の上に別の部材を介して形成されたものを含むことを付言する。
かかる態様では、前駆体膜形成工程の熱処理工程の間の降温工程を高湿度の環境下で行うことで、結晶化した圧電体膜の特性を制御して変位特性(圧電特性)に優れた圧電体膜を形成することができる。ここで、「上」なる表現を用いているが、これは所定の部材上に直接形成されたものに限定されず、所定の部材の上に別の部材を介して形成されたものを含むことを付言する。
ここで、前記前駆体膜形成工程の少なくとも2段階の熱処理工程を、相対湿度が60%RH以上の環境下で行うことが好ましい。これによれば、熱処理工程を高湿度の環境下で行うことで、さらに結晶化した圧電体膜の特性を制御して変位特性(圧電特性)に優れた圧電体膜を形成することができる。
また、前記前駆体膜形成工程が、前記組成液を乾燥させる乾燥工程、乾燥された前記圧電体前駆体膜を加熱して脱脂する脱脂工程を具備し、前記乾燥工程と前記脱脂工程との間の降温工程を相対湿度が60%RH以上の環境下で行うこともできる。
さらに、本発明の他の態様は、第1電極を形成する第1電極形成工程と、前記第1電極上にペロブスカイト型結晶構造の圧電体膜の組成液を塗布する塗布工程と、前記組成液を熱処理する熱処理工程が少なくも2段階備えられ、塗布された前記組成液を非晶質の圧電体前駆体膜とする前駆体膜形成工程と、前記圧電体前駆体膜を結晶化させて前記圧電体膜を形成する結晶化工程と、前記圧電体層の前記第1電極が形成された面とは反対側の面に第2電極を形成する第2電極形成工程と、を具備し、前記前駆体膜形成工程は、熱処理工程の後に降温させる降温工程を備え、該降温工程を相対湿度が60%RH以上の環境下で行うことを特徴とする圧電素子の製造方法にある。
かかる態様では、前駆体膜形成工程の熱処理工程の間の降温工程を高湿度の環境下で行うことで、結晶化した圧電体膜の特性を制御して変位特性(圧電特性)に優れた圧電体膜を形成することができる。
かかる態様では、前駆体膜形成工程の熱処理工程の間の降温工程を高湿度の環境下で行うことで、結晶化した圧電体膜の特性を制御して変位特性(圧電特性)に優れた圧電体膜を形成することができる。
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図であり、図2は、図1の平面図及びそのA−A′断面図である。本実施形態において、流路形成基板10は、シリコン単結晶基板からなり、その一方の面には二酸化シリコンからなる弾性膜50が形成されている。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図であり、図2は、図1の平面図及びそのA−A′断面図である。本実施形態において、流路形成基板10は、シリコン単結晶基板からなり、その一方の面には二酸化シリコンからなる弾性膜50が形成されている。
流路形成基板10には、複数の圧力発生室12がその幅方向に並設されている。また、流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向外側の領域には連通部13が形成され、連通部13と各圧力発生室12とが、各圧力発生室12毎に設けられたインク供給路14及び連通路15を介して連通されている。連通部13は、後述する保護基板のリザーバ部31と連通して各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバの一部を構成する。インク供給路14は、圧力発生室12よりも狭い幅で形成されており、連通部13から圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を一定に保持している。なお、本実施形態では、流路の幅を片側から絞ることでインク供給路14を形成したが、流路の幅を両側から絞ることでインク供給路を形成してもよい。また、流路の幅を絞るのではなく、厚さ方向から絞ることでインク供給路を形成してもよい。
なお、本実施形態では、流路形成基板10には、圧力発生室12、連通部13、インク供給路14及び連通路15からなる液体流路が設けられていることになる。
また、流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が、接着剤や熱溶着フィルム等によって固着されている。なお、ノズルプレート20は、例えば、ガラスセラミックス、シリコン単結晶基板、ステンレス鋼等からなる。
一方、このような流路形成基板10の開口面とは反対側には、上述したように弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、絶縁体膜55が形成されている。さらに、この絶縁体膜55上には、第1電極60と、圧電体層70と、第2電極80とが、後述するプロセスで積層形成されて、圧電素子300を構成している。ここで、圧電素子300は、第1電極60、圧電体層70及び第2電極80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。本実施形態では、第1電極60を圧電素子300の共通電極とし、第2電極80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。また、ここでは、圧電素子300と当該圧電素子300の駆動により変位が生じる振動板とを合わせてアクチュエータ装置と称する。なお、上述した例では、弾性膜50、絶縁体膜55及び第1電極60が振動板として作用するが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、弾性膜50及び絶縁体膜55を設けずに、第1電極60のみが振動板として作用するようにしてもよい。また、圧電素子300自体が実質的に振動板を兼ねるようにしてもよい。
圧電体層70は、第1電極60上に形成される電気機械変換作用を示す圧電材料、特に圧電材料の中でも一般式がABO3で表現されるペロブスカイト型結晶構造(Aサイトは任意の金属元素、Bサイトは任意の金属元素)を有し、金属としてPb、Zr、及びTiを含む強誘電体材料からなる。圧電体層70としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電体材料や、これに酸化ニオブ、酸化ニッケル又は酸化マグネシウム等の金属酸化物を添加したもの等が好適である。具体的には、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン((Pb,La)(Zr,Ti)O3)又は、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)(Mg,Nb)O3)等を用いることができる。
圧電体層70の厚さについては、製造工程でクラックが発生しない程度に厚さを抑え、且つ十分な変位特性を呈する程度に厚く形成する。例えば、本実施形態では、圧電体層70を1〜5μm前後の厚さで形成した。
また、圧電素子300の個別電極である各第2電極80には、インク供給路14側の端部近傍から引き出され、絶縁体膜55上にまで延設される、例えば、金(Au)等からなるリード電極90が接続されている。
このような圧電素子300が形成された流路形成基板10上、すなわち、第1電極60、絶縁体膜55及びリード電極90上には、リザーバ100の少なくとも一部を構成するリザーバ部31を有する保護基板30が接着剤35を介して接合されている。このリザーバ部31は、本実施形態では、保護基板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12の幅方向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板10の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバ100を構成している。また、流路形成基板10の連通部13を圧力発生室12毎に複数に分割して、リザーバ部31のみをリザーバとしてもよい。さらに、例えば、流路形成基板10に圧力発生室12のみを設け、流路形成基板10と保護基板30との間に介在する部材(例えば、弾性膜50、絶縁体膜55等)にリザーバと各圧力発生室12とを連通するインク供給路14を設けるようにしてもよい。
また、保護基板30の圧電素子300に対向する領域には、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電素子保持部32が設けられている。圧電素子保持部32は、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空間は密封されていても、密封されていなくてもよい。
このような保護基板30としては、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例えば、ガラス、セラミック材料等を用いることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成した。
また、保護基板30には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられている。そして、各圧電素子300から引き出されたリード電極90の端部近傍は、貫通孔33内に露出するように設けられている。
また、保護基板30上には、並設された圧電素子300を駆動するための駆動回路120が固定されている。この駆動回路120としては、例えば、回路基板や半導体集積回路(IC)等を用いることができる。そして、駆動回路120とリード電極90とは、ボンディングワイヤ等の導電性ワイヤからなる接続配線121を介して電気的に接続されている。
また、このような保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料からなり、この封止膜41によってリザーバ部31の一方面が封止されている。また、固定板42は、比較的硬質の材料で形成されている。この固定板42のリザーバ100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、リザーバ100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドでは、図示しない外部のインク供給手段と接続したインク導入口からインクを取り込み、リザーバ100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路120からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの第1電極60と第2電極80との間に電圧を印加し、弾性膜50、絶縁体膜55、第1電極60及び圧電体層70をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出する。
以下、このようなインクジェット式記録ヘッドの製造方法について、図3〜図10を参照して説明する。なお、図3〜図8は、本発明の実施形態に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの製造方法を示す圧力発生室の長手方向の断面図であり、図9は、加熱装置の概略平面図及びそのB−B′断面図であり、図10は、温度プロファイルを示すグラフである。また、圧電体層70として、チタン酸ジルコン酸鉛を用いて説明をするが、もちろん、この材料に限定されず、チタン酸ジルコン酸鉛に添加物を添加したものを含むことを付言する。
まず、図3(a)に示すように、シリコンウェハであり流路形成基板10が複数一体的に形成される流路形成基板用ウェハ110の表面に弾性膜50を構成する酸化膜51を形成する。
そして、図3(b)に示すように、弾性膜50(酸化膜51)上に、弾性膜50とは異なる材料の酸化膜からなる絶縁体膜55を形成する。
次いで、図3(c)に示すように、絶縁体膜55上の全面に第1電極60を形成すると共に、所定形状にパターニングする。この第1電極60の材料は、特に限定されないが、圧電体層70としてチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いる場合には、酸化鉛の拡散による導電性の変化が少ない材料であることが望ましい。このため、第1電極60の材料としては白金、イリジウム等が好適に用いられる。また、第1電極60は、例えば、スパッタリング法やPVD法(物理蒸着法)などにより形成することができる。
次に、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電体層70を形成する。ここで、本実施形態では、いわゆるゾル−ゲル法を用いて圧電体層70を形成している。なお、圧電体層70の製造方法は、ゾル−ゲル法に限定されず、MOD(Metal-Organic Decomposition)法を用いてもよい。
圧電体層70の具体的な作成手順を説明する。まず、図4(a)に示すように、第1電極60上に圧電体膜の組成液71を塗布する(塗布工程200;図10参照)。塗布工程200で塗布する組成液は、PZT前駆体膜を形成するための有機金属化合物を含むゾルのことである。
次いで、圧電体膜の組成液71を熱処理することで、図4(b)に示す非晶質の圧電体前駆体膜72を形成する前駆体膜形成工程を行う。
具体的には、圧電体膜の組成液71を所定温度に加熱して一定時間乾燥させて圧電体前駆体膜72を形成する(乾燥工程201;図10参照)。例えば、本実施形態の乾燥工程201では、流路形成基板用ウェハ110上に塗布された組成液71を150〜170℃で3〜30分保持することで乾燥することができる。
次に、乾燥工程201によって乾燥した圧電体前駆体膜72を所定温度に加熱して一定時間保持することによって脱脂する(脱脂工程202;図10参照)。本実施形態では、乾燥された圧電体前駆体膜72を300〜400℃に加熱して約3〜30分保持することで脱脂した。なお、ここで言う脱脂とは、圧電体前駆体膜72に含まれる有機成分を、例えば、NO2、CO2、H2O等として離脱させることであり、圧電体前駆体膜72が結晶化しない程度に、すなわち、非晶質の圧電体前駆体膜72を形成することを言う。
すなわち、本実施形態では、図10に示すように、非晶質の圧電体前駆体膜72を形成する前駆体膜形成工程は、乾燥工程201と脱脂工程202との2段階の熱処理工程を具備する。
ここで、本実施形態の前駆体膜形成工程は、図9に示す加熱装置によって行う。図9に示すように、加熱装置400は、内部に流路形成基板用ウェハ110が図示しない保持アーム等で保持された装置本体401と、装置本体401に連通してそれぞれホットプレート402A、402Bが設けられた2つの加熱チャンバー403A、403Bとを具備する。
2つのホットプレート402A、402Bは、乾燥工程201と脱脂工程202との異なる温度となるようにそれぞれ一定温度で加熱された状態で維持されており、図示しない保持アームによって、流路形成基板用ウェハ110をホットプレート402A、402B上に配置することで、流路形成基板用ウェハ110を異なる温度で加熱することができる。
このような加熱装置400を用いて流路形成基板用ウェハ110上に塗布された組成液71を熱処理すると、熱処理工程の間(乾燥工程201と脱脂工程202との間)に温度が降温される降温工程210が存在する。すなわち、乾燥工程201によって乾燥された圧電体前駆体膜72がホットプレート402Aから取り外されて、脱脂工程202で利用するホットプレート402B上に移動する間に圧電体前駆体膜72の温度が降温される(降温工程210;図10参照)。
なお、図10に示すように、脱脂工程202と詳しくは後述する焼成工程203との間、すなわち、脱脂工程202により圧電体前駆体膜72が加熱された後にも降温工程211が存在する。この降温工程211では、加熱する前の温度(室温:RT)まで冷却されるものであるが、降温工程210、211は、各工程の熱処理温度よりも低い温度まで降温させるものであればよく、室温(RT)まで降温されるものに限定されるものではない。
また、本実施形態では、乾燥工程201及び脱脂工程202は、室温(RT)などの低温側から所定温度まで達する途中(図10に示すプラスの傾き)と、所定温度に一定時間加熱している間とを言う。すなわち、所定温度で一定時間加熱した後、低温側に降下する工程(図10に示すマイナスの傾き)は、乾燥工程201、脱脂工程202とは言わず、降温工程210、211としている。
そして、本実施形態では、この降温工程210、211において、相対湿度が60%RH以上の環境となるようにしている。すなわち、降温工程210、211を相対湿度が60%RH以上の環境下で行っている。また、本実施形態では、乾燥工程201の開始から脱脂工程202の後の降温工程211が終了するまでの期間Tにおいて、相対湿度を60%RH以上となるように環境湿度を管理している。なお、上述した加熱装置400によれば、装置本体401内の環境湿度を相対湿度が60%RH以上となるようにすることで、乾燥工程201の開始から脱脂工程202の後の降温工程211が終了するまでの期間Tにおける環境湿度の管理を容易に行うことができる。
次に、図4(c)に示すように、圧電体前駆体膜72を所定温度に加熱して一定時間保持することによって結晶化させ、圧電体膜73を形成する{焼成工程203(結晶化工程);図10参照}。焼成工程203では、圧電体前駆体膜72を680〜900℃に加熱するのが好ましく、本実施形態では、740℃で5〜30分間加熱を行って圧電体前駆体膜72を焼成して圧電体膜73を形成した。なお、焼成工程203で用いられる加熱装置としては、例えば、上述したホットプレートや、赤外線ランプの照射により加熱するRTA(Rapid Thermal Annealing)装置などを用いることができる。焼成工程203では、脱脂工程202によって形成された圧電体前駆体膜72が加熱前の温度、すなわち室温(RT)まで冷却した後に行っている。また、焼成工程203の後は、加熱前の温度(室温:RT)まで冷却する冷却工程220を具備する。
ここで、降温工程210、211における湿度環境の違いにより形成される圧電体膜73の特性の違いを測定した。
(実施例)
上述した実施形態1の塗布工程200、乾燥工程201、脱脂工程202及び焼成工程203と同様の温度条件、時間条件で圧電体膜73を形成した。なお、実施例では、降温工程210、211を相対湿度が64%RHの環境下で行った。
上述した実施形態1の塗布工程200、乾燥工程201、脱脂工程202及び焼成工程203と同様の温度条件、時間条件で圧電体膜73を形成した。なお、実施例では、降温工程210、211を相対湿度が64%RHの環境下で行った。
(比較例)
降温工程210、211を相対湿度が41%RHの環境下で行った以外、実施例と同じ温度条件、時間条件とした。
降温工程210、211を相対湿度が41%RHの環境下で行った以外、実施例と同じ温度条件、時間条件とした。
(試験例)
上述した実施例と比較例とのそれぞれの圧電体膜において、X線回折広角法(XRD)によって(100)面の半価幅を測定した。この結果を図11に示す。なお、X線回折広角法によって圧電体膜73を測定すると、(100)面、(110)面及び(111)面等に相当する回折強度のピークが発生する。そして、「半価幅」とは、X線回折広角法により測定されたX線回折チャートで示される各結晶面に相当するピーク強度の半価での幅のことを言う。
上述した実施例と比較例とのそれぞれの圧電体膜において、X線回折広角法(XRD)によって(100)面の半価幅を測定した。この結果を図11に示す。なお、X線回折広角法によって圧電体膜73を測定すると、(100)面、(110)面及び(111)面等に相当する回折強度のピークが発生する。そして、「半価幅」とは、X線回折広角法により測定されたX線回折チャートで示される各結晶面に相当するピーク強度の半価での幅のことを言う。
図11に示すように、実施例の圧電体膜の(100)面の半価幅は面内の平均で0.218〜0.23度となり、比較例の圧電体膜の(100)面の半価幅は面内の平均で0.228〜0.234度となった。すなわち、降温工程210、211を高湿度にするほど、圧電体膜の(100)面の半価幅は狭くなることが判明した。
なお、圧電体膜の(100)面の半価幅は、圧電体膜73の厚さ方向の結晶格子のズレを示している。圧電体膜73の厚さ方向の結晶格子の大きさが揃っていた方が圧電体膜73の変位特性(圧電特性)は優れているため、圧電体膜73の結晶格子の大きさのズレを示す(100)面の半価幅はできるだけ狭くするのが好ましい。
したがって、前駆体膜形成工程の降温工程210、211を高湿度(60%RH以上)で行うことで、圧電体膜73の(100)面の半価幅を狭くして、優れた変位特性(圧電特性)の圧電体膜73を得ることができる。
なお、上述した実施例、比較例では、前駆体膜形成工程の降温工程210、211を含む全ての工程(乾燥工程201の開始から降温工程211の終了まで)において、湿度環境をそれぞれ64%RH、41%RHとなるようにした。ただし、ホットプレート402A、402Bは、湿度管理下に置かれているものの、加熱処理がなされているその場の雰囲気は熱によって周囲と一致しないと考えられるため、圧電体膜73の半価幅に実際に寄与しているのは、降温工程210、211の湿度であると考えられる。したがって、降温工程210、211の環境湿度を管理して、降温工程210、211を相対湿度が60%RH以上の環境下で行うことで、優れた変位特性の圧電体膜73を得ることができる。
次に、図5(a)に示すように、第1電極60上に1層目の圧電体膜73を形成した段階で、第1電極60及び1層目の圧電体膜73をそれらの側面が傾斜するように同時にパターニングする。これにより、2層目の圧電体膜73を形成する際に、第1電極60及び1層目の圧電体膜73が形成された部分とそれ以外の部分との境界近傍において、下地の違いによる2層目の圧電体膜73の結晶性への悪影響を小さく、すなわち、緩和することができる。これにより、第1電極とそれ以外の部分との境界近傍において、2層目の圧電体膜73の結晶成長が良好に進み、結晶性に優れた圧電体層70を形成することができる。また、第1電極60及び1層目の圧電体膜73の側面を傾斜させることで、2層目以降の圧電体膜73を形成する際の付き回りを向上することができる。これにより、密着性及び信頼性に優れた圧電体層70を形成することができる。なお、第1電極60及び1層目の圧電体膜73のパターニングは、例えば、イオンミリング等のドライエッチングにより行うことができる。
次に、図5(b)に示すように、1層目の圧電体膜73上を含む流路形成基板用ウェハ110上に、上述した塗布工程、乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程を順次繰り返し行うことにより、複数層の圧電体膜73が形成される。
次に、図6(a)に示すように、複数層の圧電体膜73からなる圧電体層70上に亘って、例えば、イリジウム(Ir)からなる第2電極80を形成する。そして、図6(b)に示すように、圧電体層70及び第2電極80を、各圧力発生室12に対向する領域にパターニングして圧電素子300を形成する。圧電体層70及び第2電極80のパターニング方法としては、例えば、反応性イオンエッチングやイオンミリング等のドライエッチングが挙げられる。
次に、リード電極90を形成する。具体的には、図6(c)に示すように、流路形成基板用ウェハ110の全面に亘って、例えば、金(Au)等からなるリード電極90を形成後、例えば、レジスト等からなるマスクパターン(図示なし)を介して各圧電素子300毎にパターニングすることで形成される。
次に、図7(a)に示すように、流路形成基板用ウェハ110の圧電素子300側に、シリコンウェハであり複数の保護基板30となる保護基板用ウェハ130を接合する。そして、図7(b)に示すように、流路形成基板用ウェハ110を所定の厚さにする。
次いで、図8(a)に示すように、流路形成基板用ウェハ110にマスク膜52を新たに形成し、所定形状にパターニングする。そして、図8(b)に示すように、流路形成基板用ウェハ110をマスク膜52を介してKOH等のアルカリ溶液を用いた異方性エッチング(ウェットエッチング)することにより、圧電素子300に対応する圧力発生室12、連通部13、インク供給路14及び連通路15等を形成する。
その後は、流路形成基板用ウェハ110及び保護基板用ウェハ130の外周縁部の不要部分を、例えば、ダイシング等により切断することによって除去する。そして、流路形成基板用ウェハ110の保護基板用ウェハ130とは反対側の面にノズル開口21が穿設されたノズルプレート20を接合すると共に、保護基板用ウェハ130にコンプライアンス基板40を接合し、流路形成基板用ウェハ110等を図1に示すような一つのチップサイズの流路形成基板10等に分割することによって、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドとする。
以上説明したように、本実施形態に係るインクジェット式記録ヘッドの製造方法では、第1電極60に圧電材料(本実施形態では、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電体材料)の組成液71を塗布し、少なくとも2段階の熱処理工程を有する前駆体膜形成工程によって圧電体前駆体膜72を形成し、その後、焼成して圧電体前駆体膜72を結晶化させて圧電体膜73を形成した。この前駆体膜形成工程における降温工程210、211において、相対湿度を60%RH以上とすることで、(100)面の半価幅が狭い圧電体膜73を得ることができ、優れた変位特性(圧電特性)を有する圧電体膜73を形成することができる。これにより、インク吐出特性(液体噴射特性)に優れたインクジェット式記録ヘッドを製造することができる。
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。
例えば、上述した実施形態1では、前駆体膜形成工程に、乾燥工程201と脱脂工程202との2つの熱処理工程を設けるようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、ゾルに含まれる溶媒の沸点よりも低い温度に加熱する第1乾燥工程と、溶媒の沸点よりも高い温度に加熱する第2乾燥工程と、脱脂工程との3段階の熱処理工程を有する前駆体膜形成工程としてもよい。この場合であっても、各熱処理工程の間の降温工程において、相対湿度を60%RH以上とすればよい。
また、上述した実施形態1では、前駆体膜形成工程で用いる加熱装置400として、ホットプレートを用いたものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、RTA装置を用いるようにしてもよい。
さらに、上述した実施形態1では、乾燥工程201と脱脂工程202との間に降温工程210を設けるようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、脱脂工程202を行う際に、乾燥工程201から温度を降温させることなく、脱脂工程202の温度まで加熱するようにしてもよい。すなわち、乾燥工程201と脱脂工程202との間に降温工程210を設けないようにしてもよい。この場合であっても、脱脂工程202の後には降温工程211が存在するので、この降温工程211において環境湿度を管理するようにすればよい。
また、上述した実施形態1では、流路形成基板10として、シリコン単結晶基板を例示したが、特にこれに限定されず、例えば、結晶面方位が(100)面、(110)面等のシリコン単結晶基板を用いるようにしてもよく、また、SOI基板、ガラス等の材料を用いるようにしてもよい。
なお、上述した実施形態1では、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを挙げて説明したが、本発明は広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンタ等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(電界放出ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
また、本発明は、インクジェット式記録ヘッドに代表される液体噴射ヘッドに搭載される圧電素子の製造方法に限られず、他の装置に搭載される圧電素子の製造方法にも適用することができる。
1 インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 10 流路形成基板、 12 圧力発生室、 13 連通部、 14 インク供給路、 15 連通路、 20 ノズルプレート、 21 ノズル開口、 30 保護基板(結晶基板)、 31 リザーバ部、 40 コンプライアンス基板、 50 弾性膜、 55 絶縁体膜、 60 第1電極、 70 圧電体層、 80 第2電極、 90 リード電極、 100 リザーバ、 120 駆動回路、 200 塗布工程、 201 乾燥工程、 202 脱脂工程、 203 焼成工程、 210,211 降温工程、 300 圧電素子、 400 加熱装置
Claims (4)
- 液体を噴射するノズル開口に連通する液体流路が設けられた流路形成基板上に第1電極を形成する第1電極形成工程と、
前記第1電極上にペロブスカイト型結晶構造の圧電体膜の組成液を塗布する塗布工程と、
前記組成液を熱処理する熱処理工程が少なくとも2段階備えられ、塗布した前記組成液を非晶質の圧電体前駆体膜とする前駆体膜形成工程と、
前記圧電体前駆体膜を結晶化させて前記圧電体膜を形成する結晶化工程と、
前記圧電体層の前記第1電極が形成された面とは反対側の面に第2電極を形成する第2電極形成工程と、を具備し、
前記前駆体膜形成工程は、熱処理工程の後に降温させる降温工程を備え、該降温工程を相対湿度が60%RH以上の環境下で行うことを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。 - 前記前駆体膜形成工程の少なくとも2段階の熱処理工程を、相対湿度が60%RH以上の環境下で行うことを特徴とする請求項1記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
- 前記前駆体膜形成工程が、前記組成液を乾燥させる乾燥工程、乾燥された前記圧電体前駆体膜を加熱して脱脂する脱脂工程を具備し、前記乾燥工程と前記脱脂工程との間の降温工程を相対湿度が60%RH以上の環境下で行うことを特徴とする請求項1又は2記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
- 第1電極を形成する第1電極形成工程と、
前記第1電極上にペロブスカイト型結晶構造の圧電体膜の組成液を塗布する塗布工程と、
前記組成液を熱処理する熱処理工程が少なくも2段階備えられ、塗布された前記組成液を非晶質の圧電体前駆体膜とする前駆体膜形成工程と、
前記圧電体前駆体膜を結晶化させて前記圧電体膜を形成する結晶化工程と、
前記圧電体層の前記第1電極が形成された面とは反対側の面に第2電極を形成する第2電極形成工程と、を具備し、
前記前駆体膜形成工程は、熱処理工程の後に降温させる降温工程を備え、該降温工程を相対湿度が60%RH以上の環境下で行うことを特徴とする圧電素子の製造方法。
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JP2008194499A JP2010030141A (ja) | 2008-07-29 | 2008-07-29 | 液体噴射ヘッドの製造方法及び圧電素子の製造方法 |
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