本発明は、連続鋳造用鋳型及び鋼の連続鋳造方法に係り、特に、厚みが100mm以上、500mm以下の、一般的に中厚スラブから普通厚スラブと呼ばれる厚みのスラブ(鋳片)を鋳造する際に用いるのに好適な、連続鋳造用鋳型、及び、これを用いた鋼の連続鋳造方法に関する。
自動車用鋼板、特に自動車用製品の外板部となる箇所に使用される鋼板や、飲料缶等に使用される鋼板では、表面の美麗さや塗装性、ラミネート性等が求められる。自動車用鋼板や飲料缶用鋼板として使用される極低炭素アルミキルド鋼、乃至、低炭素アルミキルド鋼は、その精錬過程で酸素を使用して溶鋼中の炭素を酸化除去する工程が不可欠であるため、この工程で溶鋼中に溶存した酸素を、更にアルミニウム等の脱酸剤で脱酸する工程が必要となる。この脱酸工程において、溶鋼中の溶存酸素が前記脱酸剤と結合して、脱酸生成物であるアルミナ等を生じ、これが溶鋼中に非金属介在物として残存する。
このような非金属介在物がスラブの表面近傍に存在すると、スラブを熱間圧延及び冷間圧延して薄鋼板とした場合に、鋼板の表面にヘゲや膨れ等の欠陥を生じるので好ましくない。又、脱酸生成物以外にも、連続鋳造時に、図1に例示する鋳型(モールド)30内の溶鋼表面に添加するモールドパウダや、タンディッシュ20から鋳型30内に溶鋼を供給するための浸漬ノズル22の詰まり防止のために供給されるアルゴンガス等の気泡が溶鋼中に巻き込まれたものが、気泡単独、あるいは、脱酸生成物と合体した気泡として溶鋼中に残存しても、上記の脱酸生成物と同様な表面欠陥をもたらすことが知られている。図において、9はスラブ、9aは凝固シェル、9bは未凝固相、42はサポートロール、44はガイドロール、46はピンチロール、48は下部矯正ロールである。
従って、自動車用鋼板や飲料缶用鋼板として使用するスラブでは、スラブ中への非金属介在物やモールドパウダ等の捕捉を大幅に減少させる必要がある。
又、前述したアルミナを主体とした脱酸生成物は、タンディッシュ20から鋳型30へ溶鋼を供給する際に用いる耐火物製の浸漬ノズル22に付着し、溶鋼流動を阻害して、スラブ品質の低下を引き起こすことも知られている。そこで、浸漬ノズル22へのアルミナ付着を防止するために様々な対策が採られているが充分ではない。
そのため、薄スラブ連続鋳造プロセスのように、浸漬ノズル22の内径、外径や吐出穴を小さくしなければならない場合には、浸漬ノズル22へのアルミナ付着を防止するために、鋼中にカルシウム等を添加している。薄スラブ連続鋳造プロセスで使用する浸漬ノズル22の内径、外径が小さいのは、厚みの小さい鋳型30にノズルを挿入するためである。カルシウム添加鋼は、鋼中に存在する介在物を粗大化したり、鋼の材質特性(延びや絞り性)を悪化させるために、自動車用鋼板として用いることができない。
又、薄スラブ連続鋳造プロセスでは、鋳型の断面積が普通厚連続鋳造プロセスに比べて小さいために、介在物の浮遊する空間が狭く、気泡や介在物が凝固シェルに捕捉され易く、表面厳格材の品質要求に応えられない。
更に、薄スラブ連続鋳造プロセスは、普通厚連続鋳造プロセスに比べて、鋳造速度は概ね速いものの、製造されるスラブの厚みが薄いために、鋼の重量を基準とした生産性を比較すると劣っている。
これに対して、全体を厚くすると、冷却が追い付かないため鋳造速度が速められず、スラブの厚みが増えると後工程の圧延でも困ってしまう。
そこで特許文献1、2には、浸漬ノズル22の吐出口を扁平形状とし、浸漬ノズル22と鋳型壁面の間隔を50mm以上確保することが提案されている。
上記のように薄スラブ連続鋳造プロセスは、普通厚連続鋳造プロセスで必要となる分塊工程や熱間圧延工程が不要になるという利点は有るものの、製造可能な鋼種も限定され、本発明の主目的である自動車用外板用途向けのスラブを製造できないのが現状である。よって、品質上も、生産性の観点からも、有利なプロセスとは言えなかった。
これに対して普通厚連続鋳造プロセスでは、スラブを製造する段階で、上記したような鋼板の表面欠陥の原因となるスラブ表層欠陥の発生を防止する試みが、これまでになされてきた。以下に例を挙げる。
(1)鋳型内での溶鋼中からの脱酸生成物、モールドパウダあるいは気泡等の浮上・分離を促進すべく、垂直部を有する連鋳機で鋳造する。
(2)モールドパウダの粘度を大きくして、溶鋼中へのモールドパウダの巻き込みを減少させる。
(3)電磁力により、メニスカス近傍に水平方向の流れを付与し、溶鋼内に浮遊する異物が凝固シェルに捕捉されるのを防止する(溶鋼流動による洗浄効果)(特許文献3等)。
一方、石油輸送用及び天然ガス輸送用のラインパイプ材においては、サワーガスの作用により、残留したパウダー・気泡・介在物を起点として水素誘起割れが発生することが知られている。
鋳型内での溶鋼中からの介在物ならびにモールドパウダあるいは気泡等の浮上・分離を促進するためには、垂直部を有する連鋳機で鋳造することが有利といわれている。
又、鋼の凝固過程における最終凝固部では、炭素、燐、硫黄等の溶質元素が初期濃度に比べて格段に高濃度となり、鋳片中心に成分偏析部(中心偏析)が形成される場合がある。
中心偏析の発生メカニズムは、鋼が凝固すると体積収縮が起こり、この凝固収縮に伴い、連続鋳造の場合には鋳片の引き抜き方向へ溶鋼が吸引されて流動する。連続鋳造鋳片の凝固末期の未凝固相には十分な量の溶鋼が存在しないので、凝固収縮に伴い最終凝固部であるデンドライト樹間の濃化溶鋼が流動をおこし、それが鋳片中心部に集積して凝固し、所謂中心偏析が生成される。
この中心偏析は鋼製品の品質を劣化させる。例えば、石油輸送用及び天然ガス輸送用のラインパイプ材においては、サワーガスの作用により中心偏析を起点として水素誘起割れが発生し、又、飲料水用の缶製品に用いられる深絞り材においては、成分の偏析により加工性に異方性が出現する。そのため、鋳造工程から圧延工程に至るまで、中心偏析を低減する対策が多数提案されている。
そのなかで、安価に且つ効果的に鋳片の中心偏析を低減する手段として、例えば、特許文献4や5に開示されるように、未凝固鋳片を複数対のロールで圧下する(以下「軽圧下」と呼ぶ)方法が提案されている。この軽圧下方法は、鋳片の凝固収縮量に見合った圧下速度で鋳片を徐々に圧下して未凝固相の体積を減少させ、デンドライト樹間の濃化溶鋼の流動を起こさないようにして中心偏析を防止することを目的としている。
特開平5−285614号公報
特開2003−164947号公報
特開平6−226409号公報
特開平8−132203号公報
特開平8−192256号公報
しかしながら、特許文献1や2に記載の技術では、特殊な扁平形状の浸漬ノズルを用いる必要があり、浸漬ノズルから鋳型内ヘの溶鋼流入が円滑で無くなる可能性がある。
又、上記の従来技術(1)〜(3)は、次に述べるような問題を残していた。
(1)のように、垂直部を有する連鋳機で生産したスラブは、垂直曲げの連鋳機に比べて気泡や介在物等が上昇分離しやすいが、近年ますます厳しくなっている表面厳格材の品質要求に応えることのできる品質レベルには達せられない。
(2)のように、モールドパウダの粘性を大きくした場合、モールドパウダが鋳型の潤滑に充分に寄与できず、鋳型内でのシェル拘束、更にはブレークアウト発生等の危険が高まってしまい、望ましくない。
(3)のように、メニスカス近傍で溶鋼流動を与えて介在物を洗浄しようとした場合、場合によっては、逆にメニスカスでのモールドパウダ巻き込みを増加させる懸念が生じる。又、凝固シェルへの熱伝達が促進されるため、凝固シェルの成長が阻害される。その結果、鋳型出口近傍では溶鋼静圧によるスラブ短辺バルジングが顕著になり、甚だしい場合には、シェル再溶解によるブレークアウトの発生に繋がり、鋳造の安定操業が阻害されるという問題があった。又、水平方向の流れを付与する場合、鋳型内に設置される浸漬ノズルと鋳型長辺面との距離が狭くなり易く、旋回流を阻害し、均一な流れを付与することが困難であり、幅方向均一で十分な洗浄効果が得られない場合があった。
上記のように、従来の技術では、鋼板の表面欠陥の原因となるスラブ表層欠陥の発生を完全に防止できていないのが実状である。
又、気泡や介在物等は、垂直部を有する連鋳機では垂直曲げの連鋳機に比べて、浮上分離しやすいが、近年ますます厳しくなっている品質要求に応えることのできる品質レベルを達成できていないのが実状である。
気泡や介在物等は、浮上面積である鋳型の断面積を大きくすることで浮上しやすくなるが、スラブを厚くすると、冷却が追い付かないため鋳造速度が速められず、スラブの厚みが増えると後工程の圧延でも、生産性が低下する場合がある。
また、中心偏析の低減手段である軽圧下方法では、鋳片の凝固殻はロールにより曲げ変形を受けるため、凝固殻の固液界面には引張り応力が作用する。固液界面に割れが発生する限界の引張り歪み量は1%前後であり、従って、軽圧下量が多すぎると固液界面に割れが発生し、この割れ部にデンドライト樹間の濃化溶鋼が吸い込まれて、偏析度の大きい偏析を形成する。更に軽圧下量を多くすると、デンドライト樹間の濃化溶鋼は鋳造方向とは逆方向に絞り出されて、鋳片中心部には炭素、燐、硫黄等の溶質元素濃度が少ない偏析(この場合は負偏析という)が生成する。一方、軽圧下量が少なすぎると、凝固に伴う体積収縮によって溶鋼は吸引されるため、デンドライト樹間の濃化溶鋼の流動を抑制できずに中心偏析が生成する。
中心偏析を防止するためには、濃化溶鋼の絞り出しが発生しない程度まで軽圧下量を多くすることが好ましいが、従来、引張り歪みによる固液界面の割れを防止するために軽圧下量の上限が制限されており、この観点からは軽圧下による鋳片偏析防止対策は未だ充分とは云い難い。
更に、連続鋳造では鋳片の支持を複数対のロールで行っており、鋳片はロールとロールの間では支持されておらず、そのため、凝固殻に作用する溶鋼静圧によりロール間では凝固殻の膨れ(以下「バルジング」と記す)が発生する。このバルジングによる未凝固相の体積変化に伴い溶鋼が流動し、そのため、ロール間で発生するバルジングも中心偏析の原因の1つとなっている。軽圧下方法では、ロールを用いているためにロール間ではバルジングが発生し、このバルジングによる中心偏析を防ぎきれないという問題点もある。
一方、需要家からの鋼材品質に対する要求は厳格化を増し、中心偏析の更なる低減化が望まれている。
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、中厚スラブから普通厚スラブにおけるスラブ表層欠陥の発生を防止することを第1の課題とする。
本発明は、又、生産性を低下させずにスラブ中の気泡や介在物を低減でき、凝固末期では軽圧下方法により連続鋳造鋳片の中心偏析を低減する際に、鋳片の固液界面に割れを発生させることなく、濃化溶鋼の絞り出しが発生しない限界まで軽圧下量を大きくすることが可能であり、中心偏析の大幅な低減が達成され、近年の厳しい品質要求にも対処可能な鋳片を製造することのできる連続鋳造方法を提供することを第2の課題とする。
上記のような問題を解決するため、本発明は、スラブ中の介在物(脱酸生成物、モールドパウダ、気泡等)を浮上除去する機会を多くするために、普通厚の鋳型において、鋳型中央部の厚みを増加すること、及び、必要に応じて、浸漬ノズルから前記鋳型内に注入される溶鋼の、鋳型幅4分の1の鋳型短辺寄りの位置における流速を、前記鋳型短辺から前記浸漬ノズルに向けた溶鋼流を正で表わし、そして、前記浸漬ノズルから前記鋳型短辺に向けた溶鋼流を負で表わしたときに、−0.07m/秒から0.05m/秒の範囲内に維持することで、鋳型内のスラブ表面側から、スラブ内部へ進行する凝固シェルに捕捉される介在物の個数を減少させることが可能となる。又、凝固シェルの凝固収縮量以上の変形を凝固シェルに与えない構造とすることで、凝固シェルへの負荷が増大して、凝固シェルの座屈、変形、あるいは凝固中の溶鋼の漏洩(いわゆるブレークアウト)等を避けることができる。又、鋳型の下端部の厚みを上端部よりも減少させるため、鋳型を通過した後の2次冷却帯における連鋳機内の冷却能は相対的に低下しない。更に、鋳型下端厚みと同様の冷却が実現できるため、スラブの生産性は確保される。結果として、下工程に搬送するスラブの厚みが増加しないため、熱延加熱炉工程、厚板加熱炉工程での燃料原単価負荷も増大しない。
鋳型内の肉厚部の形状は、メニスカス位置における長辺面線長L1と長辺鋳型間距離の縮小が終了する位置の長辺面線長L2の比と、鋳造する鋼の固相線温度での密度ρ1と長辺鋳型間距離の縮小が終了する位置の鋳片凝固シェルの密度ρ2の比が、次の関係式
1.00<L1/L2≦(ρ2/ρ1)(1/3)
を満足し、この関係を満たす範囲で、鋳型と凝固シェル間の摩擦が少ないように、その湾曲曲線を構成することが望ましい。又、湾曲した鋳型の内部でも凝固シェルの発達が均一に進行するように、鋳型表面から、鋳型の冷却水水路までの距離が一定になるように、湾曲曲線に追従していることが望ましい。
このように湾曲した形状であると、鋳型内で成長した凝固シェル界面における溶鋼の流動の方向が、凝固シェルと平行な方向に流れ易くなるために、鋼中介在物の捕捉を、より低減することが可能になる。
L1/L2≦溶鋼密度差から線膨張率に換算した式とするのは、凝固シェルに座屈させるような応力を与えないためである。座屈が発生すると、スラブ品質は低下し、甚だしい場合には、鋳込み作業そのものの中止を余儀なくされる。
又、鋳型内に電磁界を利用した鋳型内流動制御を適用するに関し、鋳型上部での移動磁場による水平攪拌流を付与する場合、鋳型幅中央部の厚みを増大させると、浸漬ノズルとの干渉が大幅に低減し、幅方向均一な溶鋼流動の付与が可能となる。
又、鋳型下部に静磁場を印加すると吐出流が制動され、鋳型短辺に衝突することによる鋳型上方への反転流が抑制され、上記の鋳型上部の水平攪拌流との干渉が抑えられ、幅方向均一な溶鋼流動の付与が可能となることが分かった。
本発明は、上記のような研究結果に基づいてなされたもので、請求項1に係る発明は、一対の長辺面と一対の短辺面で形成され、溶鋼の入口側及び出口側が開放されている連続鋳造用鋳型において、入口側の断面積が出口側の断面積より大きく、長辺鋳型間距離が鋳造方向に縮小し、メニスカス位置における外側にふくらんだ長辺面線長L1と長辺鋳型間距離の縮小が終了する位置の長辺面線長L2の比と、鋳造する鋼の固相線温度での密度ρ1と長辺鋳型間距離の縮小が終了する位置の鋳片凝固シェルの密度ρ2の比が、次の関係式
1.00<L1/L2≦(ρ2/ρ1)(1/3)
を満足し、出口側は矩形形状であり、出口側の相対する長辺鋳型間距離T2が150mm以上、500mm以下であり、入口側の相対する長辺鋳型間距離が、出口側の相対する長辺鋳型間距離T2と同じか、大とされていることを特徴とする連続鋳造用鋳型である。
ここで、メニスカス位置における長辺面を外側にふくらませるのは、浸漬ノズルの吐出口より上部(メニスカス位置側)では、介在物を浮遊する空間を大とするために、下部側に対し大きくする必要があるためである。
又、請求項2に係る発明は、入口側の相対する長辺鋳型間距離の最大距離T1が180mm以上、望ましくは330mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の連続鋳造用鋳型である。
又、請求項3に係る発明は、鋳型内の厚肉部の形状が、湾曲曲線を構成していることを特徴とする請求項1又は2に記載の連続鋳造用鋳型である。
又、請求項4に係る発明は、前記鋳型の長さDが、垂直方向下方へ鋳型入口側から鋳型出口側まで600mm〜1500mmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の連続鋳造用鋳型である。
又、請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の連続鋳造用鋳型を用いることを特徴とする鋼の連続鋳造方法である。
又、請求項6に係る発明は、請求項5に記載の連続鋳造方法において、鋳型内の溶鋼中に浸漬された浸漬ノズルを通して鋳型内に注入される溶鋼の、鋳型幅4分の1の鋳型短辺よりの位置における流速を、前記鋳型短辺から前記浸漬ノズルに向けた溶鋼流を正で表わし、そして、前記浸漬ノズルから前記鋳型短辺に向けた溶鋼流を負で表わしたときに、−0.07m/秒から0.05m/秒の範囲内に維持することを特徴とする鋼の連続鋳造方法である。
又、請求項7に係る発明は、浸漬ノズルから鋳型内に注入される溶鋼の流速を、請求項6に規定した範囲内に維持するために、前記鋳型の外側にその幅方向に設けられたリニア移動磁場型電磁攪拌装置を利用して、前記溶鋼の流速を抑制することを特徴とする鋼の連続鋳造方法である。
又、請求項8に係る発明は、請求項5に記載の鋼の連続鋳造方法において、浸漬ノズルの吐出孔より上側と下側に鋳型長辺を挟み対向する上下2段の磁極を鋳型長辺背面に配置し、これら磁極にて磁界を印加して鋳型内溶鋼の流動を制御するに際し、上側に配置した磁極にて印加する磁界が交流移動磁界であり、且つ、下側に配置した磁極にて印加する磁界が直流静磁界であることを特徴とする鋼の連続鋳造方法である。
又、請求項9に係る発明は、請求項5に記載の鋼の連続鋳造方法において、浸漬ノズルの吐出孔より上側と下側に鋳型長辺を挟み対向する上下2段の磁極を鋳型長辺背面に配置し、これら磁極にて磁界を印加して鋳型内溶鋼の流動を制御するに際し、上側に配置した磁極にて印加する磁界が直流静磁界と交流移動磁界とが重畳された磁界であり、且つ、下側に配置した磁極にて印加する磁界が直流静磁界であることを特徴とする鋼の連続鋳造方法である。
直流静磁界中を溶鋼が移動すると溶鋼中に渦電流が発生し、この渦電流と直流静磁界とにより溶鋼の移動方向と逆方向に電磁気力が作用して溶鋼流が減速される。本発明の一側面においては、浸漬ノズル吐出孔より下側に対向して配置した下部磁極に直流静磁界が溶鋼に印加される。直流静磁界は対向する磁極間、即ち鋳型長辺を貫通して溶鋼に印加されるので、この直流静磁界中を移動する吐出流が制動され減速する。そのため吐出流から分岐する下降流は減速されて鋳片の未凝固層深くまで侵入することがなく、鋳片内層部には脱酸生成物であるアルミナを主体とする酸化物の無い清浄な鋳片を得ることができる。又、吐出流から分岐する上昇流も減速されて、メニスカスにおける渦や盛り上がり等の流れの乱れが防止される。
又、本発明の一側面において、鋳型上部磁極には交流磁界、又は、交流磁界と静磁界を印加する。
交流移動磁界の場合、鋳型内の溶鋼は強制的に水平方向に回転攪拌される。そのため、鋳片表層部に相当する位置の溶鋼が回転移動し、この溶鋼の移動により凝固シェル界面における非金属介在物の洗浄効果が確保され、鋳片表層部へのアルミナ等脱酸生成物及びガス気泡の捕捉が防止でき、鋳片表層部の清浄性が向上する。本発明では、幅中央部の鋳型厚みが拡大しているため、回転攪拌流は浸漬ノズルによる干渉影響が少なく、均一な攪拌流が得られるのである。
直流静磁界と交流移動磁界とが重畳された磁界を印加した場合、重畳された磁界のうちの直流静磁界により、メニスカスでの溶鋼流が安定して、渦や盛り上がり等の溶鋼流の乱れが防止され、モールドパウダの鋳片への巻き込みが防止される。重畳された磁界のうち交流移動磁界は、前述したように溶鋼を水平方向に回転攪拌させ、溶鋼流による凝固シェル界面の非金属介在物の洗浄効果を高めることで、鋳片表層部の非金属介在物を低減することができる。即ち、直流静磁界と交流移動磁界とが重畳された磁界を用いた場合には、直流静磁界と交流移動磁界の両方の効果が期待できるのである。
又、請求項10に係る発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の連続鋳造用鋳型を経て造形された内部に未凝固相を有する鋳片を複数対の案内ロールによって案内して連続鋳造を行うに当り、クレーターエンド近傍で該鋳片に圧下を加えることを特徴とする鋼の連続鋳造方法である。
又、請求項11に係る発明は、少なくとも軽圧下開始時から軽圧下終了時までの期間、鋳片の表面温度と固液界面温度との温度差を800℃以上に保持して軽圧下することを特徴とする、請求項10に記載の鋼の連続鋳造方法である。
又、請求項12に係る発明は、請求項10又は11に記載の鋼の連続鋳造方法において、0.8〜1.6mm/minの圧下速度の範囲で鋳片を軽圧下することを特徴とするものである。
又、請求項13に係る発明は、請求項10乃至12のいずれかに記載の鋼の連続鋳造方法において、鋳片厚み方向中心部の固相率が0.4以下の時点から軽圧下を開始し、鋳片厚み方向中心部が凝固完了するまで軽圧下を継続することを特徴とするものである。
又、請求項14に係る発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の連続鋳造用鋳型を経て造形された内部に未凝固相を有する鋳片を複数対の案内ロールによって案内して連続鋳造を行うに当り、鋳型内の溶鋼中に浸漬された浸漬ノズルを通して鋳型内に注入される溶鋼の、鋳型幅4分の1の鋳型短辺よりの位置における流速を、前記鋳型短辺から前記浸漬ノズルに向けた溶鋼流を正で表わし、そして、前記浸漬ノズルから前記鋳型短辺に向けた溶鋼流を負で表わしたときに、−0.07m/秒から0.05m/秒の範囲内に維持すると共に、クレーターエンド近傍で該鋳片に圧下を加えることを特徴とするものである。
又、請求項15に係る発明は、浸漬ノズルから鋳型内に注入される溶鋼の流速を、請求項14に規定した範囲内に維持するために、前記鋳型の外側にその幅方向に設けられたリニア移動磁場型電磁攪拌装置を利用して、前記溶鋼の流速を抑制することを特徴とするものである。
又、請求項16に係る発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の連続鋳造用鋳型を経て造形された内部に未凝固相を有する鋳片を複数対の案内ロールによって案内して連続鋳造を行うに当り、浸漬ノズルの吐出孔より上側と下側に鋳型長辺を挟み対向する上下2段の磁極を鋳型長辺背面に配置し、これら磁極にて磁界を印加して鋳型内溶鋼の流動を制御するに際し、上側に配置した磁極にて印加する磁界が交流移動磁界であり、且つ、下側に配置した磁極にて印加する磁界が直流静磁界であると共に、クレーターエンド近傍で該鋳片に圧下を加えることを特徴とするものである。
又、請求項17に係る発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の連続鋳造用鋳型を経て造形された内部に未凝固相を有する鋳片を複数対の案内ロールによって案内して連続鋳造を行うに当り、浸漬ノズルの吐出孔より上側と下側に鋳型長辺を挟み対向する上下2段の磁極を鋳型長辺背面に配置し、これら磁極にて磁界を印加して鋳型内溶鋼の流動を制御するに際し、上側に配置した磁極にて印加する磁界が直流静磁界と交流移動磁界とが重畳された磁界であり、且つ、下側に配置した磁極にて印加する磁界が直流静磁界であると共に、クレーターエンド近傍で該鋳片に圧下を加えることを特徴とするものである。
又、請求項18に係る発明は、請求項14乃至17のいずれかに記載の鋼の連続鋳造方法において、少なくとも軽圧下開始時から軽圧下終了時までの期間、鋳片の表面温度と固液界面温度との温度差を800℃以上に保持して軽圧下することを特徴とするものである。
又、請求項19に係る発明は、請求項14乃至17のいずれかに記載の鋼の連続鋳造方法において、0.8〜1.6mm/minの圧下速度の範囲で鋳片を圧下することを特徴とするものである。
又、請求項20に係る発明は、請求項14乃至17のいずれかに記載の鋼の連続鋳造方法において、鋳片厚み方向中心部の固相率が0.4以下の時点から軽圧下を開始し、鋳片厚み方向中心部が凝固完了するまで圧下を継続することを特徴とするものである。
鋳片表面を急冷して鋳片表面と固相界面との温度差を大きくすると、鋳片表面には引張り応力、固液界面には圧縮が作用する。ここで鋳片表面温度と固相界面温度との温度差をΔTとし、温度差(ΔT)により発生する応力を図2を参照して説明する。尚、図2は凝固シェル9aの温度勾配と温度勾配により生ずる応力を模式的に示す図であり、(a)が温度勾配を示し、(b)が応力分布を示している。
従来、鋳片表面温度を900℃以上に制御して軽圧下することが一般的であった。この場合には、固液界面9dの温度(TL )と鋳片表面9cの温度(TS )との温度差(ΔT)は400〜500℃程度である。この温度分布を図2(a)では破線で示している。それに対して、例えば表面温度を600℃程度まで低下させて温度差(ΔT)を800℃以上とした場合(図2では表面温度を600℃としている)を実線で示している。ここで、固液界面9dの温度(TL )は、通常固相線温度に等しい。
図2(b)は、この温度分布から凝固シェル9aに作用する応力分布を算出した結果であり、破線は温度差(ΔT)が400〜500℃の場合を示し、実線は温度差(ΔT)が800℃以上の場合を示している。図2(b)に示すように、温度差(ΔT)が400〜500℃であっても固液界面9dには圧縮力が作用するが、温度差(ΔT)を800℃以上とすることで固液界面9dには大きな圧縮力が作用する。これは、鋳片表面9cは温度降下により収縮しようとするが、凝固シェル9aの内部はそれほど温度が降下しないために収縮の抵抗となり、鋳片表面9c側に引張り力が作用し、固液界面9d側に圧縮力が作用するからである。
固液界面に圧縮力を付与しつつ軽圧下を行えば、軽圧下により凝固殻に作用する引張り力は打ち消される。前述したように固液界面に割れが発生する限界の引張り歪み量は1%前後であるが、本発明では圧縮力が作用しているので、軽圧下による引張り力で凝固殻に割れを生じさせるまでには、従来の軽圧下量の限界値をはるかに越える軽圧下量を加えることが可能となる。尚、本発明の軽圧下量とは、ロールの絞り込み勾配に等しく、又、軽圧下鋳造とは、各ロールの絞り込み勾配、即ち軽圧下量を鋳片の引き抜き方向1m当たり鋳片厚みの0.2〜2.0%として圧下しつつ鋳造することである。
定性的には鋳片表面温度を下げるほど固液界面に圧縮力が作用するが、その大きさを精度よく計算することは困難である。その理由は、鋼の凝固点近傍の機械的性質の正確なデータがないためである。そこで、表面冷却と軽圧下量即ち軽圧下ロールのロール間隔の絞り込み勾配(mm/m)を変更した実験を行い、固液界面割れの発生限界軽圧下量を調査した。
実験では、後述する実施例で用いたスラブ連続鋳造機を用い、鋳片の引き抜き速度(Vc)を1.3m/minの一定にし、軽圧下帯直前の二次冷却を調整して鋳片表面温度と固液界面温度との温度差(ΔT)を400〜1050℃の範囲で変更すると共に、軽圧下量即ち軽圧下ロールのロール間隔の絞り込み勾配(mm/m)を0.3〜1.6mm/mの範囲で変更した。そして、得られたスラブ鋳片のマクロ組織から固液界面割れの有無を判定した。その調査結果を図3に示す。軽圧下ロールの直径は280mmで、分割ロールを用いている。
図3に示すように、鋳片の表面温度と固液界面との温度差(ΔT)が大きくなるほど、固液界面割れ発生の限界軽圧下量は大きくなり、固液界面割れが起り難くなることが分かる。そして、この温度差(ΔT)を800℃以上にすると、限界軽圧下量は温度差(ΔT)が400〜500℃の場合よりも格段に大きくなり、軽圧下量が0.9〜1.2mm/mの範囲まで軽圧下することができる。
従って、本発明の一側面では少なくとも軽圧下開始時から軽圧下終了時までの期間、鋳片表面温度と固液界面温度との温度差(ΔT)を800℃以上に保持して、軽圧下することとした。なお、スラグ割れの問題及び後出図17の中心偏析度が飽和するので、ΔTは1100℃以下とすることが望ましい。
又、圧下速度を0.8〜1.6mm/minの範囲に制御することが好ましい。圧下速度が0.8mm/min未満では、凝固収縮に伴う濃化溶鋼の流動を十分に阻止することができず、一方、圧下速度が1.6mm/minを越えると、濃化溶鋼は鋳造方向とは逆方向に絞り出され、鋳片中心部には負偏析が生成されることがあるからである。圧下速度は、鋳片引き抜き速度と、軽圧下ロールのロール間隔の絞り込み勾配(mm/m)即ち軽圧下量との乗算値である。
更に、鋳片厚み方向中心部の固相率が0.4以下の時点から軽圧下を開始し、鋳片厚み方向中心部が凝固完了するまで軽圧下を継続することが好ましい。鋳片厚み方向中心部の固相率が0.4を越えてから軽圧下を開始しても、すでに濃化溶鋼の移動が発生しており、中心偏析の低減効果が少なく、又、凝固途中で軽圧下を停止すると、同様に中心偏析の低減効果が少ない。
本発明を用いることにより、浮上除去する鋳型内気泡・介在物除去によって、自動車用鋼板や、飲料缶等に使用される品質厳格材の表面品質を向上することが可能となる。又、製造されるスラブ厚みは従来の厚みのままであり、次工程の圧延能率を低下させず、生産性を阻害することがない。
又、鋳型内での気泡・介在物が浮上除去され、鋳型から出てきた鋳片に対して、鋳片の固液界面に圧縮力を与えて鋳片を軽圧下するようにした場合は、鋳片の固液界面に割れを発生させることなく、濃化溶鋼の絞り出しが発生しない限界まで軽圧下量を大きくすることが可能となる。又、鋳片表面温度を低下させるので鋳片強度が高くなり、ロール間バルジングも抑制される。そのため、中心偏析を大幅に低減させることが可能となり、近年の厳しい品質要求にも対処可能な鋳片を安定して製造することができる。
以下図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本発明が適用される連続鋳造機は、図1に例示した如く、浸漬ノズル22を備えたタンディッシュ20と、本発明に係る鋳型30と、サポートロール42と、ガイドロール44と、ピンチロール46とを主に備えている。
浸漬ノズル22を介して鋳型30内に鋳造された溶鋼は、鋳型30内で冷却されて凝固シェル9aを形成し、内部に未凝固相9bを有する鋳片9として、鋳型30の下方に設けたサポートロール42、ガイドロール44、及びピンチロール46に支持されつつ、ピンチロール46の駆動力により鋳型30の下方に連続的に引き抜かれる。鋳片9は、これらのロールを通過する間、水スプレー又はエアーミストスプレーから構成される二次冷却帯(図示せず)で冷却され、凝固シェル9aの厚みを増大して、やがて内部までの凝固を完了する。
前記鋳型30は、図4に示す如く、一対の長辺(30a)面と一対の短辺(30b)面で形成され、溶鋼の入口側(図4(B)参照)及び図4(D)に示す出口側が開放されており、図4(B)に示すメニスカス位置における太線部線長L1と、図4(C)に示す長辺鋳型間距離の縮小が終了する位置の太線部線長L2の比と、固相線温度での密度ρ1と長辺鋳型間距離の縮小が終了する位置の鋳片密度ρ2の比が、次の関係式を満足し、
1.00<L1/L2≦(ρ2/ρ1)(1/3) …(1)
出口側は図4(D)に示す如く、長方形形状であり、出口側の相対する長辺鋳型間距離T2が150mm以上、500mm以下とされている。図4(E)は、鋳型中心部の縦断面図である。
ここでL1/L2>1.00は、長辺面がふくらむための要件である。なお、内側にふくらんだ場合は、気泡や介在物が浮遊する空間が小となり、凝固シェルに捕捉されやすくなる。
又、図4(B)に示すメニスカス位置の相対する長辺鋳型間距離の最大距離T1と、図4(D)に示す出口側の相対する長辺鋳型間距離T2は、次式を満たすことが望ましい。
T1>T2 …(2)
更に、メニスカス位置の相対する長辺鋳型間距離の最大距離T1は180mm以上、望ましくは330mm以上であることが望ましい。これは、浸漬ノズル直径が150mm程度であり、浸漬ノズルと鋳型長辺間の距離が小であると、気泡又は非金属介在物が凝固シェルに捕捉され易くなるためである。通常の矩形鋳型では、T1が大になる程、品質評価は良くなる。
鋳型内の厚肉部の形状は、図4(B)に示す如く、湾曲曲線を構成していることが望ましい。ここで、幅変更に対応できるように平行とした両端部近傍の範囲を除く厚肉部の幅(湾曲形状の長さ)B1(図4(B)参照)は、スラブの最小幅とすることができる。
鋳型内の縮小が終了する位置は、鋳型出口の何れの位置でも良いが、矩形となった後のスラブの表面性状が安定するために、鋳型出口より若干上が良く、鋳型出口より20mm〜30mmが望ましい。
又、図4(A)に示す鋳型の長さDは、鋳型内でのスラブがブレークアウトしない凝固シェル厚を確保するために鋳型入口側から鋳型出口側まで600mm以上であることが望ましく、1500mm超えでは冷却効率が劣る。即ち、鋳型冷却後、2次冷却を行うが、2次冷却の方が冷却効率は良く、ブレークアウトしない凝固シェルが形成されれば、それ以上の鋳型長さは不要である。
前記鋳型30は、図1に示した如く、連鋳機に組み込まれて、スラブ9の連続鋳造に用いられる。
鋳型幅4分の1の鋳型短辺寄りの位置における流速は、図5に示すような方法によって測定した。即ち、鋳型30の中央に配置されている浸漬ノズル22から、一方の鋳型短辺30b寄りの1/4幅位置に、浸漬棒3をその下端部を鋳型30内の溶鋼中に浸漬させた状態で、その上端付近を支点とし、鋳型30の幅方向に回動可能に支持させて取り付けた。浸漬棒3の下端からメニスカス(湯面とも称する)8aまでの距離、即ち、浸漬棒3の溶鋼8内における浸漬深さEは、約100mmである。
このように鋳型30内の溶鋼中に浸漬棒3を浸漬すると、浸漬棒3の浸漬部分は、メニスカス直下の溶鋼流によって、その上端付近の支点を中心として回動し、浸漬棒3に働く重力と、メニスカス直下の溶鋼流による力とがつりあったところで停止する。このときの、浸漬棒3の軸線方向と鉛直方向とがなす角度θを測定し、浸漬棒3に働く重力とメニスカス直下の溶鋼流とによる力のつりあい計算によって、メニスカス直下の溶鋼流速を求めることができる。
実際の鋳造において、1/4幅位置におけるメニスカス直下の溶鋼の流速を、上記適正範囲内に維持するためには、スラブ断面積に対する鋳造速度、浸漬ノズルの形状、タンディッシュからモールドへのアルゴンガス吹込み量等の条件を適正に設定し、且つ、リニア移動磁場型電磁攪拌装置を使用して、1/4幅位置におけるメニスカス直下溶鋼流速を、上記範囲内となるように制御する。なお、前述した1/4幅位置におけるメニスカス直下溶鋼流速と表面欠陥発生率との関係を調査するための鋳造においても、このリニア移動磁場型電磁攪拌装置を使用した。
図6は、リニア移動磁場型電磁攪拌装置により発生したリニア移動磁場によって、浸漬ノズルからの溶鋼吐出流に制動力が付加された状態を示す、鋳型の幅方向概略断面図であり、図7はその概略平面図である。図6及び図7に示すように、鋳型30の両長辺30a、30aに沿ってリニア移動磁場型電磁攪拌コイル38a、38b、38a´、38b´が設けられており、発生した磁場が、スラブの幅方向に平行に且つ水平に、鋳型30の両短辺30b、30bから浸漬ノズル22に向けて移動するようになっている。これによって、浸漬ノズル22からの溶鋼吐出流の方向と磁場の方向とが相対するため、電磁力によって、溶鋼吐出流に対し制動力が作用する。表1に上記リニア移動磁場型電磁攪拌装置の仕様を示す。
図8は、リニア移動磁場型電磁攪拌装置の電流値と、鋳型内における1/4幅位置のメニスカス直下溶鋼流の流速との関係を示す図である。1/4幅位置におけるメニスカス直下の溶鋼流速は、前述した浸漬棒3を使用して測定した。図8から明らかなように、リニア移動磁場型電磁攪拌装置に対する印加電流を、0から2160Aまで増すと、1/4幅位置におけるメニスカス直下の溶鋼流速は単調減少し、印加電流に応じた溶鋼流速が得られる。
この例の鋳造条件においては、1/4幅位置におけるメニスカス直下の溶鋼流速を、−0.07m/秒から0.05m/秒の範囲内に維持するためには、リニア移動磁場型電磁攪拌装置に、約1100Aから約1400Aの電流を通電すれば良いことが分かる。
図9は、リニア移動磁場型電磁攪拌装置によって、鋳型内における1/4幅位置のメニスカス直下溶鋼流の流速を−0.07m/秒から0.05m/秒の範囲内に制御したときの鋳型内における溶鋼の流動状態を示す図である。
又、本発明の別の実施の形態では、上記のような幅中央部が拡大した鋳型30に対して、図10〜12に示すような電磁界印加装置を設置する。
図10は、本発明を適用した電磁界印加装置を含む連続鋳造鋳型部の正面断面の概要図であり、図11は側面断面の概要図、図12は図11のXII−XII面の部分断面の概要図である。
図において、相対する鋳型長辺30aと、該鋳型長辺30a内に内装された相対する鋳型短辺30bとから鋳型30が構成されている。鋳型30の上方に、溶鋼8を収納した図示せぬタンディッシュが配置されており、タンディッシュ内の溶鋼8は、タンディッシュの底部に配置された浸漬ノズル22を介し、該浸漬ノズル22の下部に設けられ、且つ鋳型30内の溶鋼8に浸漬した吐出孔22aから、吐出流24を鋳型短辺30bに向けて鋳型30内に注入される。そして、溶鋼8は鋳型30内で冷却されて凝固シェル9aを形成し、鋳型30の下方に連続的に引き抜かれ鋳片となる。鋳型30内のメニスカス8a上には、溶鋼8の保温剤及び凝固シェル9aと鋳型30との潤滑剤として、モールドパウダ32が添加されている。
鋳型長辺30aの背面上部には、吐出孔22aより上側に鋳造方向の中心を位置させて、上部磁極50、50が、鋳型長辺30aを挟みメニスカス8aを含む位置に、対向して配置されており、上部磁極50、50はリターンヨーク52にて鋳型短辺30bの背面で連結されている。又、鋳型長辺30aの背面下部には、吐出孔22aより下側に鋳造方向の中心を位置させて、下部磁極54、54が、鋳型長辺30aを挟んで対向して配置されており、下部磁極54は鋳型短辺30bの背面でリターンヨーク52にて連結されている。これら上部磁極50の鋳型長辺30a側には、鋳型30の幅方向で櫛の歯形状に複数の凸部56が設けられており、この凸部56の全てに直流交流兼用コイル58が巻かれている。又、上部磁極50及び下部磁極54の基部に相当する位置には直流用コイル60が巻かれている。
この直流交流兼用コイル58に直流電流DCと交流電流ACとを重畳して(DC+AC)印加すれば、直流静磁界と交流移動磁界とが重畳した磁界が鋳型30内に発生する。なお、直流交流兼用コイル58と交流電源とは、図12に矢印Aで示す如く、溶鋼8が鋳型30内で水平方向に一方向回転するような移動磁界を形成するように結線する。印加する交流電流は、周波数が0.1Hz〜100Hzの3相交流、又は位相を90度とした2相交流を用いることが好ましい。周波数が0.1Hz以下では攪拌力が弱く、又、100Hzを超えると銅製の鋳型30での磁束の減衰が大きくなって鋳型30内の磁束密度を確保し難くなるためであり、又、溶鋼を水平回転攪拌する容易さから、位相を90度とした2相交流が好ましい。
又、直流交流兼用コイル58には交流電流ACのみ印加され、直流電流DCは直流用コイル60に独自に印加すれば、重畳された直流静磁界の磁束密度と交流移動磁界の磁束密度とを自由に決めることができるので好ましい。
なお、直流交流兼用コイル58又は直流用コイル60に直流電流DCのみ印加すれば、鋳型30を挟み対向する磁極間で直流静磁界のみが得られ、直流交流兼用コイル58に交流電流ACのみ印加すれば交流移動磁界のみが得られる。
そして鋳造に当たり、直流静磁界の鋳型30厚みの中心における磁束密度を0.1テスラ以上、交流移動磁界の鋳型30内壁近傍の磁束密度を0.005テスラ〜0.2テスラとなるように電流又は電圧を調整する。これは、直流静磁界の磁束密度が0.1テスラ未満、及び交流移動磁界の磁束密度が0.005テスラ未満では、共に溶鋼8に作用する電磁気力が弱く、溶鋼流動の制御が不可能となるためであり、又、交流移動磁界の磁束密度が0.2テスラを超えると、攪拌力が強過ぎてメニスカス8aの溶鋼流が速くなり、モールドパウダ32の巻き込みの虞があるためである。
なお、交流移動磁界による溶鋼に作用する電磁気力は、周波数と磁束密度の二乗との積に比例する。鋳造に当たり、交流移動磁界に印加する周波数と交流移動磁界の磁束密度の二乗との積が、2.5×10−3〜1.5×10−1(Hz・テスラ2)の範囲を目標とすれば、交流移動磁界により溶鋼は十分に攪拌される。
又、図13は本発明の別の実施の形態を示した連続鋳造機の側面断面の概要図であり、上部磁極50と下部磁極54とがリターンヨーク52にて鋳型長辺30aの背面で連結されている。この場合には、上下磁極50、54の片方でのみ直流静磁界を印加することができないが、設備を小型化できるので、設備費用的には有利である。
本発明の更に別の実施の形態において、連続鋳造機の引き抜き方向下流側には、図1に示す如く、複数対の軽圧下ロール82からなる軽圧下帯80が設置されており、又、軽圧下帯80と下部矯正ロール48との間には鋳片9を強冷却可能な水スプレー70が配置されている。図1に示すように、鋳片9を強冷却可能な水スプレー70の設置位置は、下部矯正ロール48の下流側とすることが好ましい。下部矯正ロール48の上流側で鋳片9を強冷却すると、下部矯正ロール48を通過する際の鋳片表面温度が低下し過ぎ、鋳片9に矯正歪みによる横割れが発生することがあるが、水スプレー70の設置位置を下部矯正ロール48の下流側とすることで、これを未然に防止することができる。
種々の鋳造条件において予め伝熱計算等により凝固シェル9aの厚み及び鋳片厚み方向中心部の固相率を求めておき、軽圧下帯80内で凝固が完了するように、鋳片引き抜き速度及び二次冷却強度等の鋳造条件を調整する。そして、調整した鋳造条件で鋳造しつつ鋳片9を軽圧下する。
その際、下部矯正ロール48を通過した鋳片9を水スプレー70により急速に冷却し、軽圧下帯80に入る時の鋳片表面温度(TS )と固液界面温度(TL )との温度差(ΔT)を800℃以上とし、軽圧下帯80ではその状態を保ちつつ鋳片9を冷却する。
具体的には、例えば下部矯正ロール48を通過する時の鋳片表面温度を900℃以上とし、その後、水スプレー70により急冷して軽圧下する時の鋳片表面温度を500〜700℃程度まで低下させ、軽圧下帯80の通過中はこの温度に保持する。このように鋳片9を急速に冷却するためには、水スプレー70は、その設置長さにも関係するが、鋳片表面1m2 当たりの1分間の冷却水量が100〜2000l(以下「l/m2・min」と記す)の範囲であることが必要である。
尚、鋳片9を急速に冷却する手段は水スプレー70に限るものではなく、例えば鋳片表面に層流の冷却水を流すような冷却方法としても良い。
又、下部矯正ロール48における横割れ感受性の低い鋼種であれば、軽圧下帯80に入る時の鋳片表面温度(TS )と固液界面温度(TL )との温度差(ΔT)が800℃以上となるように、水スプレー70を設置せずに、鋳型直下の二次冷却帯から二次冷却強度を調整しても良い。
圧下速度は、好ましくは0.8〜1.6mm/minの範囲に制御して鋳片9を軽圧下する。圧下速度は、鋳片引き抜き速度と軽圧下ロール82のロール間隔の絞り込み勾配(mm/m)即ち軽圧下量との乗算値であるので、鋳造条件として決めた引き抜き速度に基づき、絞り込み勾配(mm/m)を設定すれば良い。更に、鋳片厚み方向中心部の固相率が0.4以下の時点から軽圧下を開始することが好ましい。この場合には、軽圧下帯80の入り口で鋳片厚み方向中心部の固相率が0.4以下になり、且つ、軽圧下帯80内で凝固が完了するに充分な長さの軽圧下帯80が必要である。
このようにして鋳造することで、鋳片9の固液界面には圧縮力が付与され、鋳片9の固液界面に割れを発生させることなく、濃化溶鋼の絞り出しが発生しない限界まで軽圧下量を多くすることが可能となり、その結果、鋳片9の凝固収縮に伴う濃化溶鋼の流動が阻止され、鋳片9の中心偏析を大幅に低減することができる。又、鋳片表面温度と固液界面温度との温度差(ΔT)を800℃以上としているので、凝固シェル9aの強度が高くなって、軽圧下帯80におけるロール間バルジングが低減し、ロール間バルジングに起因する中心偏析も低減させることができる。
鋳型長さD=0.95m、垂直部長さ2.5m、湾曲半径8.0mである垂直曲げ型連鋳機を用いて、鋳造試験を行なった。連鋳機(鋳型先端から機端まで)の長さは42mである。引き抜き速度を2.0〜5.0m/分の間で変更した。鋼種は、極低炭素鋼(C:0.002%、Si:0.03%、Mn:0.2%、P:0.01%、S:0.01%)、低炭素鋼(C:0.04%、Si:0.2%、Mn:0.2%、P:0.01%、S:0.01%)、一部中炭素鋼(C:0.10%、Si:0.3%、Mn:1.4%、P:0.01%、S:0.004%)にて試験を行なった。
極低炭素鋼を200トン/ヒートで1ヒートのみ鋳型のメニスカス部の厚み(図4(B)中T1)を変更することで、メニスカス位置における線長L1を変更して鋳造した。鋳型の全幅(図4(D)中W3)が1600mm、鋳型上端厚肉部の幅(図4(B)中B1)が1000mm、メニスカス位置薄肉部の厚み(図4(B)中A1)が220mm、鋳型下端薄肉部の厚み(図4(D)中T2)が220mm、長辺鋳型間距離の縮小が終了する位置の線長L2が1600mmである。
長辺鋳型間距離の縮小が終了する位置の凝固シェルの温度は、電熱計算プログラムより算出した。なお、鋳型に埋め込んだ熱電対も同様な値を示した。
予め測定した各温度での密度から、鋳造するメニスカス位置での鋼の固相線温度での密度ρ1は7.2g/cm3、長辺鋳型間距離の縮小が終了する位置の長辺凝固シェルの密度ρ2は7.4g/cm3である。鋳造の結果を表2に示す。
式(1)を満足する鋳型では、全ての鋼種において、問題なく鋳造することができた。
式(1)を満足する鋳型(表2のB)を用いて、極低炭素鋼及び低炭素鋼については、200トン/ヒートで1ヒートのみ鋳造後、引き抜き開始時、乃至引き抜き終了時に鋳造したスラブを避け、鋳造条件が一定であると見做せるスラブのみを熱間圧延、冷間圧延、表面処理を施すことでスラブ品質の調査を行なった。結果を表3に示す。表3の通常鋳型は、図4におけるメニスカス位置の長辺鋳型間距離T1、出口の長辺鋳型間距離T2は共に220mmで、他の条件は本発明鋳型と同じである。
表3において、表面処理鋼板の製鋼性起因表面欠陥指数は、本実施例で得たスラブから製造した表面処理コイルの表面欠陥の個数を指数化して示す。
表面欠陥指数は、表面処理鋼板の表面を偏光光学式欠陥検査計にて検査して、コイル100m当たりの検出欠陥個数を表わしたもので、極低炭素鋼を通常鋳型で製造した場合の欠陥個数を1.0として指数化したものである。
表面処理鋼板の製鋼性起因表面欠陥評価は、0.3未満の条件を○、0.3以上の条件を×として表わした。この○と×は、表面厳格材を製造して出荷し、客先での評価が良好であったスラブから経験的に決定した。
中炭素鋼のスラブについては、表面処理後のスラブ品質調査は行なわなかったが、本実施例の鋳型を用いても、溶鋼のブレークアウトが発生することなく、200トンを完全に鋳造することができた。
又、式(1)を満足する鋳型(表2のB)を用いて、図6及び図7に示したリニア移動磁場型電磁攪拌装置により、1/4幅位置におけるメニスカス直下の溶鋼流速を制御し、鋳造後、引き抜き開始時、乃至引き抜き終了時に鋳造したスラブを避け、鋳造条件が一定であると見做せるスラブのみを熱間圧延、冷間圧延、表面処理を施すことでスラブ品質の調査を行なった。結果を図14に示す。
図14において、表面処理鋼板の製鋼性起因表面欠陥指数は、本実施例で得たスラブから製造した表面処理コイルの表面欠陥の個数を指数化して示す。
表面欠陥指数は、表面処理鋼板の表面を偏光光学式欠陥検査計にて検査して、コイル100m当たりの検出欠陥個数を表わしたもので、極低炭素鋼を通常鋳型で製造した場合の欠陥個数を1.0として指数化したものである。
浸漬ノズルから鋳型内に注入される溶鋼の、鋳型幅4分の1の鋳型短辺寄りの位置における流速を、鋳型短辺から浸漬ノズルに向けた溶鋼流を正で表わし、そして、浸漬ノズルから鋳型短辺に向けた溶鋼流を負で表わしたときに、−0.07m/秒から0.05m/秒の範囲内に維持されるように、リニア移動磁場型電磁攪拌装置により制御したことにより、薄鋼板の表面欠陥発生率が顕著に低減している。
中炭素鋼のスラブについては、表面処理後のスラブ品質調査は行なわなかったが、本実施例の鋳型を用いても、溶鋼のブレークアウトが発生することなく、200トンを完全に鋳造することができた。
又、式(1)を満足する前記の鋳型形状(表2のB)を用いて、図10〜12に示した電磁界印加装置による鋳造を行なった。鋼種は、極低炭素鋼アルミキルド鋼(C:0.002%、Si:0.03%、Mn:0.2%、P:0.01%、S:0.01%)であり、鋳片引き抜き速度2.5m/minで鋳造した。使用した浸漬ノズルは、吐出孔径が85mm、吐出孔角度が下向き25度で、浸漬ノズルの浸漬深さ(メニスカスから吐出孔上端までの距離)は230mmである。又、メニスカス位置は鋳型上端から120mmの位置で、鋳型長さは950mmである。
上部磁極は、鋳造方向の長さが240mm、鋳型幅方向の長さが1950mmであり、メニスカス位置が上部磁極の鋳造方向の上端から100mmの位置となるように配置した。又、下部磁極は、鋳造方向の長さが240mm、鋳型幅方向の長さが1950mmであり、鋳造方向の中心位置を吐出孔下端から250mmの位置として配置した。この位置は吐出流が鋳型短辺側の凝固シェルに衝突する点より鋳造方向の上側である。そして、上部磁極の直流交流兼用コイルを巻く凸部の幅を225mmとし、凸部を各磁極に6つずつ配置した。
交流電流は、周波数が3.5Hzを用い、本実施例では直流静磁界と交流移動磁界とが重畳された磁界を形成する方法として、直流交流兼用コイルに交流電流のみを印加し、その後方の直流静磁界に直流電流を印加する方法を用いた。
直流静磁界の磁束密度の目標を鋳型厚み中心で0.25テスラとしたが、直流電流と交流電流とを重畳して印加した場合には、直流静磁界又は交流移動磁界の影響を受け、0.20テスラ程度まで低下することがあった。又、交流移動磁界の磁束密度を鋳型内壁で0.01テスラ〜0.1テスラの範囲で変化させ、直流静磁界との整合がとれる条件下でメニスカスの溶鋼流が乱れない範囲で最大値となるように調整した。そして上部磁極と下部磁極の磁界を表4に示す組合せで印加した。又、比較のため、鋳型厚み220mmの通常矩形鋳型においても、同じ磁場印加水準の実験を行った。
表4において、実施例1は比較例2、3より品質評価が劣る結果となっているが、同じ電磁界条件の比較例1に比べれば良好であることがわかる。
得られた鋳片を薄鋼板に圧延し、冷間圧延後の最終製品検査ラインにおいてコイルの表面欠陥を目視検査し、欠陥サンプルを採取後、欠陥部を分析することによってモールドフラックス及びブローホール起因による欠陥個数を調査し、表層欠陥の評価とした。
更に、内部介在物の評価として、鋳片の1/4厚みの位置からスライム抽出法によって介在物を抽出後、質量を測定した。表層欠陥及び内部介在物とも、指数化に際しては、全条件のうち、最も悪かったものを10とし、それに対する線形な比で表示した。それらの結果も表4に合わせて示した。
表4から分かるように、通常矩形鋳型においても、電磁界印加の効果は表層欠陥及び内部介在物の改善効果が認められるものの十分ではない。一方、本発明の幅中央部を拡大した鋳型を用いた場合は、著しい品質改善効果が得られた。
次に、鋳型直下に2.8mの垂直部を有し、それに続く湾曲部の半径が10mである垂直曲げ型のスラブ連続鋳造機を用いて、軽圧下帯を鋳型内溶鋼湯面から20〜32mの範囲に設置し、炭素濃度が0.04〜0.2mass%の中炭素鋼を、厚み250mm、幅2100mmの鋳片として引き抜き速度1.3m/minで鋳造した。そして、鋳片厚み方向中心部の固相の晶出開始位置が鋳型内溶鋼湯面から約22mとなり、鋳片厚み方向中心部の完全凝固位置が鋳型内溶鋼湯面から約28mとなるように、軽圧下帯に入る以前の二次冷却強度を調整した。又、軽圧下帯の直前に設置した水スプレーから鋳片上面側に200〜600l/m2・min、下面側に300〜1200l/m2・minの冷却水を噴霧して強冷却し、鋳片表面温度を変化させ、温度差(ΔT)の中心偏析に及ぼす影響を調査した。
鋳型のメニスカス部の厚み(図4(B)中T1)を変更することで、メニスカス位置における線長L1を変更して鋳造した。鋳型の全幅(図4(D)中W3)が2100mm、鋳型上端厚肉部の幅(図4(B)中B1)が1500mm、メニスカス位置薄肉部の厚み(図4(B)中A1)が250mm、鋳型下端薄肉部の厚み(図4(D)中T2)が250mm、長辺鋳型間距離の縮小が終了する位置の線長L2が2100mmである。
長辺鋳型間距離の縮小が終了する位置の凝固シェルの温度は、伝熱計算プログラムより算出した。なお、鋳型に埋め込んだ熱電対も同様な値を示した。
予め測定した各温度での密度から、鋳造するメニスカス位置での鋼の固相線温度での密度ρ1は7.2g/cm3、長辺鋳型間距離の縮小が終了する位置の長辺凝固シェルの密度ρ2は7.4g/cm3である。鋳造の結果を表5に示す。
式(1)を満足する鋳型では問題なく鋳造することができた。
中心偏析は、スラブ厚さ中心部を厚さ方向に30mmの範囲に渡って1mmのスライス試料を採取して炭素の分析を行い、炭素濃度の最大値Cmaxと溶鋼の炭素濃度C0との比(Cmax/C0)を中心偏析度として評価する方法で行った。この場合、中心偏析度が1に近づくほど中心偏析は軽減することになる。
図15は、軽圧下量を1.0mm/m、表面と固液界面との温度差(ΔT)を950℃として、鋳片厚み中心部の計算固相率が0未満〜0.6となる時点から完全凝固するまで軽圧下した時の、軽圧下開始時期と中心偏析との関係を調査した結果を示す図である。図15の横軸は軽圧下開始時の鋳片厚さ中心部の固相率(計算値)及び液相厚み(計算値)である。この場合、各々の試験において、軽圧下帯では鋳片厚み方向中心部の計算固相率が前記所定値となるまでは軽圧下せずに鋳片を支持するのみとした。図15に示すように鋳片厚み方向中心部の固相率が0.4以下で軽圧下を開始した場合には中心偏析の低減効果があるが、0.4を越える固相率で軽圧下を開始した場合には中心偏析の改善効果は少なかった。
図16は、表面と固液界面との温度差(ΔT)を950℃とし、軽圧下開始時期を鋳片厚み方向中心部の固相率が0.3の時点として、圧下速度(=軽圧下量×引き抜き速度)を変更して、鋳片が完全に凝固するまで軽圧下した時の中心偏析に及ぼす圧下速度の影響を調査した結果を示す図である。図16に示すように、中心偏析は圧下速度が0.8〜1.6mm/minの範囲で改善されることが判明した。
図17は、軽圧下量を0.8mm/m、軽圧下開始時期を鋳片厚み方向中心部の固相率が0.3の時点とし、表面と固液界面との温度差(ΔT)を400〜1050℃の範囲に変化させて完全凝固するまで軽圧下した時の、温度差(ΔT)と中心偏析との関係を調査した結果を示す図である。図17に示すように、温度差(ΔT)を大きくするほど中心偏析は軽減し、温度差(ΔT)を800℃以上とすることで、中心偏析を安定して低減させることができた。
本発明が適用された連続鋳造機の構成を示す図
凝固殻の(a)温度勾配と(b)温度勾配により生ずる応力分布を模式的に示す図
鋳片表面温度と固液界面温度との温度差と、固液界面での割れ発生限界軽圧下量との関係を調査した結果を示す図
本発明に係る鋳型の実施形態の形状を示す、(A)鋳型全体図、(B)メニスカス位置での鋳型形状を示す横断面図、(C)長辺鋳型間距離の縮小が終了する位置での鋳型形状を示す横断面図、(D)出口側での鋳型形状を示す横断面図、(E)中央部の縦断面形状を示す縦断面図
鋳型内における1/4幅位置のメニスカス直下溶鋼流速の測定方法を示す図
リニア移動磁場型電磁攪拌装置により発生したリニア移動磁場によって、浸漬ノズルからの溶鋼吐出流に制動力が付加された状態を示す、鋳型の幅方向概略断面図
図6の概略平面図
リニア移動磁場型電磁攪拌装置の電流値と、鋳型内における1/4幅位置のメニスカス直下溶鋼流の流速との関係を示す図
リニア移動磁場型電磁攪拌装置によって、鋳型内における1/4幅位置のメニスカス直下溶鋼流の流速を−0.07m/秒から0.05m/秒の範囲内に制御したときの鋳型内における溶鋼の流動状態を示す図
本発明を適用した電磁界印加装置を含む連続鋳造鋳型部の正面断面の概要図
同じく側面断面の概要図
図11のXII−XII面の部分断面の概要図
本発明の別の実施の形態を示した連続鋳造機の側面断面の概要図
鋳型内における1/4幅位置のメニスカス直下溶鋼流速と冷間圧延コイルの表面欠陥発生率との関係を示す図
軽圧下開始時期と中心偏析との関係を調査した結果を示す図
圧下速度と中心偏析との関係を調査した結果を示す図
表面と固液界面温度との温度差と、中心偏析との関係を調査した結果を示す図
符号の説明
8…溶鋼
8a…メニスカス
9…鋳片
9a…凝固シェル
9b…未凝固相
22…浸漬ノズル
22a…吐出孔
30…鋳型
30a…長辺
30b…短辺
32…モールドパウダ
38…リニア移動磁場型電磁攪拌コイル
42…サポートロール
44…ガイドロール
46…ピンチロール
48…下部矯正ロール
50…上部磁極
52…リターンヨーク
54…下部磁極
58…直流交流兼用コイル
60…直流用コイル
70…水スプレー
80…軽圧下帯
82…軽圧下ロール