JP2010029126A - 核酸抽出方法と核酸抽出キット及び遺伝子検出方法と遺伝子検出キット - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の課題は、遺伝子型の検査のための細胞から核酸を抽出するための核酸抽出方法として、器具や操作が簡便でかつ核酸抽出効率が高く、さらに後のプロセスである核酸増幅の反応や遺伝子検出の反応を阻害することが少ない核酸含有溶液を得る核酸抽出方法を提供することである。さらに、該核酸抽出方法に用いることのできる核酸抽出キットを提供することと、さらに、該核酸検出方法により生成される核酸含有溶液を用いた遺伝子検出方法と該遺伝子検出方法に用いることのできる遺伝子キットを提供することである。
【解決手段】少なくとも細胞とアルカリ性の水溶液を混合した溶液に緩衝液を加えた溶液から核酸抽出溶液を得る核酸抽出方法において、ベタインを添加することを特徴とする核酸抽出方法と該核酸抽出方法に基づく核酸抽出キットと該核酸抽出溶液を用いる遺伝子検出方法と遺伝子検出キット。
【選択図】 図1
【解決手段】少なくとも細胞とアルカリ性の水溶液を混合した溶液に緩衝液を加えた溶液から核酸抽出溶液を得る核酸抽出方法において、ベタインを添加することを特徴とする核酸抽出方法と該核酸抽出方法に基づく核酸抽出キットと該核酸抽出溶液を用いる遺伝子検出方法と遺伝子検出キット。
【選択図】 図1
Description
本発明は遺伝子型の検査のための、細胞から核酸を抽出するための核酸抽出方法とその方法を実施するための核酸抽出キットと該核酸抽出方法によって生成される核酸含有溶液を用いる遺伝子検出方法と遺伝子検出キットに関する。
近年、遺伝子検出は、研究用途から体質検査やそれを用いた臨床応用へと拡大してきている。例えば、2007年8月16日にFDA(米国食品医療品局)により、抗血液凝固剤の一種であるワルファリンに関係する遺伝子多型の情報を盛り込んだ改定添付文書が承認されるに至っている。
ワルファリンは、心臓弁膜症の治療として、機械弁を用いた弁置換術の施術の後や、心房細動が原因となる脳塞栓症予防、あるいは深部静脈血栓症による肺塞栓症予防のためなどや、抗リン脂質抗体症候群での血栓症予防のためにしばしば処方される。
しかしながら、特定の遺伝子型を持つ患者では、ワルファリンの処方量が同一であっても、ワルファリンの処方量が不足となって十分な効果が出なかったり、逆にワルファリンの処方量が過剰となって、出血をきたしやすい患者が潜在的に存在する。
このため、同じ生物種の集団のなかで遺伝子型の異なる遺伝子配列またはDNA配列である遺伝子多型を調べることが有用となる。
ワルファリンの場合については、ワルファリンの薬物代謝酵素であるCYP2C9と血液凝固に関する酵素であるVKORC1の2つの酵素の遺伝子多型によって、ワルファリン代謝速度に違いが認められるため、この2つの酵素の遺伝子の多型により、抗凝固作用を得る投与量が異なるという臨床データが前記改定添付文書に掲載され、どの程度の投与量調整が必要かが明示されている。
このようなワルファリンの処方量に関係する遺伝子多型の情報のように、遺伝子型は治療法を選択するために有意な情報であり、治療に迅速性を要する場合、医療現場で遺伝子型を検査する必要がある。この遺伝子型の検査は、細胞中の核酸の解析により行われる。
従って、遺伝子型の検査の手順として、一般的には、まず、細胞から核酸抽出方法により核酸を抽出して核酸抽出溶液を生成する。次に、得られた核酸抽出溶液から遺伝子を検出する精度を向上させるために、特定の部分の核酸を増やして増幅させる核酸増幅反応を行う。さらにその特定の部分の遺伝子の検出を行い遺伝子多型の識別を行う。というプロセスを実施する必要がある。
核酸抽出方法の実施する際には、対象となる細胞から核酸を抽出するための一連の酵素や、薬剤などから成る核酸抽出キットを用いることもできる。
また、核酸増幅反応や、遺伝子の検出のための反応においても、それらの反応に必要な一連の酵素や、薬剤などから成るキットをそれぞれ用いることもできる。
核酸増幅反応としては、ポリメラーゼ連鎖反応すなわちPolymerase Chain Reaction(以下PCRと記載する)が用いられることが多い。この反応を用いた手法をPCR法という。
以上のように、遺伝子型の検査のためには、その反応に係わるキットと器具や装置の操作や運用といった取り扱い技術が必要となる。しかしながら、現状は、研究施設等とは異なり、一般の医療現場にこのような遺伝子型の検査のための前記取扱い技術を取得している作業者が必ずしも常にいるとは限らない状況となっている。従って、該取り扱い技術を簡便化し、医療現場へ遺伝子型の検査を導入しやすくすることが必要である。
細胞を得る手段としては、細胞を液体中に分散して含む血液が、遺伝子型の検査のための細胞を得る媒体としてよく用いられる。血液は、液体状態のときに、遺伝子検出のための他の薬剤や、酵素を用いた反応に便利なため、操作が容易となるためである。また、血液を精製せずに、全血を用いることができれば、精製の手順を必要としないため、より簡便であり望ましい。
一方、前記の遺伝子型の検査の手順に示したような、全血の細胞から核酸を精製してから核酸増幅反応を行うのではなく、直接全血を核酸増幅反応に用いる方法もある。
そのような方法として、反応促進剤としてポリアミンを用いる例がある(特許文献1及び非特許文献1)。しかし、反応組成が限定されるため、特定のポリメラーゼ酵素を用いる必要がある。また、制限酵素切断等、別の酵素反応を同一の反応組成で用いることが困難であり、汎用性が制限される。また、核酸増幅効率が低いため、各段階(変性、アニーリング、伸長)の時間を、精製核酸を用いた場合より長く設定する必要があり、遺伝子の解析に要する時間が核酸を精製する方法に比べてむしろ増すなど様々な問題があり、簡便であるとはいえない。
血液に含まれる核酸増幅反応への阻害成分に対して耐久性を示す特別な性質をもつポリメラーゼ酵素を用いたPCR(Polymerase Chain Reaction)に関しては、核酸増幅反応液中での血液の割合が、一定以下の場合は有効である(特許文献2参照)。この場合、抽出するのに特殊な前記酵素が比較的多量に必要で、コストが高くなるという課題がある。
一方、全血からゲノム核酸を精製するための一連の反応のための酵素や、薬剤をセットにしたキットも多く市販されている。例えばキアゲン社のDNeasy(登録商標) Blood & Tissue kit製品を用いると、全血100μlから高精製度の核酸が3〜6μg得られる(非特許文献2参照)。
しかし、分子生物学実験に熟練していない作業員には,このようなキットを使う際に必要となる分注や遠心、廃液等の操作が、必ずしも簡便であるとは言えない。従って、取り扱い技術に熟練を要するという課題がある。
しかし、分子生物学実験に熟練していない作業員には,このようなキットを使う際に必要となる分注や遠心、廃液等の操作が、必ずしも簡便であるとは言えない。従って、取り扱い技術に熟練を要するという課題がある。
また、PCR等の反応に用いる核酸抽出溶液を得るための方法として、前記キットを用いる場合のような、熟練を要する操作を必要としない方法として、たとえば、Klintscharらが2000年に報告したアルカリ性の水溶液を用いて血液の細胞を破壊変性した後に、pH7.5の緩衝液を加えて緩衝状態にする方法がある(非特許文献3)。
この方法は、取り扱い技術が簡便で、熟練を要せず、さらに薬液が廉価である、という特徴がある。
この方法は、取り扱い技術が簡便で、熟練を要せず、さらに薬液が廉価である、という特徴がある。
これは、まず、全血を0.2mol/lの水酸化ナトリウム水溶液と1:4の割合で混合して混合溶液として、攪拌操作を行った後、緩衝液をさらに混合する。緩衝液としては、トリスヒドロキシメチルアミノメタン(Tris)を塩酸(HCl)で中和した溶液であるTris-HCl緩衝液を用いる。このTris-HCLが0.2mol/lの濃度のTris-HCL緩衝液を加えて、強アルカリ性の混合溶液と混合させる。充分な量の該緩衝液を加えることにより、pHの値は、緩衝作用により該緩衝液の値と同等となる。生じる沈殿物を、遠心操作により除去して、上澄み液を核酸抽出溶液としてPCRに用いて核酸の増幅を行い、さらに、遺伝子の検出を行う。
この方法は、必要な器具等が少なく、操作も簡便で優れている。しかし、生成される核酸含有溶液中に血液中の核酸増幅反応を阻害するタンパク質等の反応阻害物質を含むため、精製された核酸を用いた場合に比べて核酸増幅反応の効率が低下する傾向を示すという問題がある。また、核酸抽出効率そのものが低いという問題がある。
これとは別に、核酸増幅反応であるPCRの効率を向上させる方法として、ベタイン(N,N,N-トリメチルグリシン)を添加すると効果のあることが知られている。
すなわち、グリシンベースの細胞内浸透圧調整物質の一つであるベタイン(N,N,N-トリメチルグリシン)の有効量をPCRの反応液に添加することで、PCRによる標的ヌクレオチド配列の増幅効率を改善できることが示されている(特許文献3参照)。ベタインなどの細胞内浸透圧調整物質は、遺伝子検出のための核酸増幅生成物中で「スタッターバンド」または「シャドウバンド」と呼ばれる核酸配列の解析が困難な部分を減らし、核酸配列における標的ヌクレオチド配列の検出を容易にする。その結果、遺伝子多型の検出に関わる標的ヌクレオチド配列の増幅効率が向上する。
ベタインが標的ヌクレオチド配列の増幅効率を向上させるという効果の原理に関しては、リース(Rees)らが、ベタインは、小さな分子量のテトラアルキルアンモニウムイオンとして水溶液中に存在しており、これがpHの中性近傍において双極性のイオンとして働き、DNAの二重螺旋構造が、加熱により一本鎖となるDNAの融解の後に、もともとの長いDNAの塩基対同士が再び対で組む傾向を、減らす、もしくはなくすという効果がある、ということを示して説明している。(非特許文献4参照)。
次に、抽出された核酸を含む核酸抽出溶液から、特定の遺伝子を検出する方法を示す。代表的な方法として、たとえば、Invader Plus法がある(非特許文献5参照)。
Invader Plus法は米国Third Wave Technology社の技術であり、核酸増幅の方法であるPCR法と遺伝子検出の方法であるInvader法を同一反応液で行うことができる。先にPCRにより標的の遺伝子断片の部分の核酸を増幅して、Invader法により特定の遺伝子を検出し、遺伝子多型の識別を行う。
InvaderPlus法では、同時に2種類の塩基配列の検出が可能で、2種類の多型を検出することによく用いられる。この場合、それぞれの塩基配列を認識し、異なる配列に対応する異なる蛍光色素を含む2種類の検出用物質であるDNAプローブが使用される。それぞれに対応した該DNAプローブは対応する塩基配列に反応し、反応後に蛍光色素を解離して標的部位の塩基に特異的な蛍光シグナルを生じるように設計されている。遺伝子の検出は、この蛍光シグナルの強度を測定して行われる。
前記Invader Plus法のように、遺伝子型の検査の手順のなかで、前記核酸増幅の方法と遺伝子検出の方法についてはすでに比較的簡便で有効な方法が提案されており、その方法に基づくキットや装置も商品化されている。しかしながら、前述のごとく、核酸抽出の方法と同キットおよび同装置については、すでに説明したような、様々な課題がある。
特開平8−9997号公報
特表2008−506417号公報
米国特許第5,545,539号明細書
ShimadzuBiotech社のAmpDirectウエブサイトhttp://www.shimadzu-biotech.jp/reagents/amp/ampdata2.pdf
キアゲン社の血液からDNAを精製する商品例のウエブサイトhttp://www1.qiagen.com/Products/GenomicDnaStabilizationPurification/QIAampSystem/QIAampDNABloodMiniKit.aspx
Klintschar M, Neuhuber F. J of Forensic Sci、2000年、45(3):669-673
Rees et al。 Biochemistry、 1993年、32:137-144
サードウエーブジャパン社、Invader技術説明ウエブサイトhttp://www.twt.co.jp/02.html
本発明の課題は、遺伝子型の検査のための細胞から核酸を抽出するための核酸抽出方法として、器具や操作が簡便でかつ核酸抽出効率が高く、さらに後のプロセスである核酸増幅の反応や遺伝子検出の反応を阻害することが少ない核酸含有溶液を得る核酸抽出方法を提供することである。さらに、該核酸抽出方法に用いることのできる核酸抽出キットを提供することと、さらに、該核酸検出方法により生成される核酸含有溶液を用いた遺伝子検出方法と該遺伝子検出方法に用いることのできる遺伝子キットを提供することである。
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、細胞から核酸を抽出するための核酸抽出方法において、少なくとも細胞とアルカリ性の水溶液を混合して混合溶液として、さらに該混合溶液に緩衝液を加えて成る混合緩衝溶液から核酸を抽出して核酸抽出溶液を得る核酸抽出方法において、少なくも該混合緩衝溶液、または該混合緩衝溶液となる前までのいずれかの段階で、ベタインを添加することを特徴とする核酸抽出方法である。
上記課題を解決するための請求項2に記載の発明は、前記細胞が、血液に含まれることを特徴とする請求項1に記載の核酸抽出方法である。
上記課題を解決するための請求項3に記載の発明は、前記核酸抽出溶液におけるベタインの濃度が0.1〜2.0mol/lであることを特徴とする請求項1または2に記載の核酸抽出方法である。
上記課題を解決するための請求項4に記載の発明は、前記アルカリ性の水溶液のpHの値が12以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の核酸抽出方法である。
上記課題を解決するための請求項5に記載の発明は、前記緩衝液のpHの値の範囲が、5〜9であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の核酸抽出方法である。
上記課題を解決するための請求項6に記載の発明は、前記核酸抽出溶液のpHの値の範囲が、5〜9であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の核酸抽出方法である。
上記課題を解決するための請求項7に記載の発明は、アルカリ性の水溶液と緩衝液とベタインとを少なくとも含むことを特徴とする核酸抽出キットである。
上記課題を解決するための請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の核酸抽出キットを用いることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の核酸抽出方法である。
請求項1〜6のいずれか1項に記載の核酸抽出方法または請求項8に記載の核酸抽出方法によって生成される核酸抽出溶液を用いることを特徴とする遺伝子検出方法である。
アルカリ性の水溶液と緩衝液とベタインとを少なくとも含むことを特徴とする遺伝子検出キットである。
請求項1に記載の本発明による核酸抽出方法によって、細胞から核酸を抽出するための核酸抽出方法において、少なくとも細胞とアルカリ性の水溶液を混合して混合溶液として、さらに該混合溶液に緩衝液を加えて成る混合緩衝溶液から核酸を抽出して核酸抽出溶液を得る核酸抽出方法において、少なくも該混合緩衝溶液、または該混合緩衝溶液となる前までのいずれかの段階において、ベタインを添加することにより、器具や操作が簡便でかつ核酸抽出効率が高く、さらに後のプロセスである核酸増幅反応や遺伝子検出反応を阻害することの少ない核酸抽出溶液を得ることができる。
請求項2に記載の本発明による核酸抽出方法によって、血液に含まれる細胞から、器具や操作が簡便でかつ核酸抽出効率が高く、さらに後のプロセスである核酸増幅反応や遺伝子検出反応を阻害することが少ない核酸含有溶液を得ることができる。
請求項3に記載の本発明による核酸抽出方法によって、ベタインの濃度が0.1〜2.0mol/lであることによって、核酸抽出効率を高くすることができ、さらに後のプロセスである核酸増幅反応や遺伝子検出反応を阻害することの少ない核酸抽出溶液を得ることができる。
請求項4に記載の本発明による核酸抽出方法によって、前記アルカリ性の水溶液のpHの値が12以上であることにより、細胞を変性させ破壊する効率を高くすることができ、器具や操作が簡便でかつ核酸抽出効率が高く、さらに後のプロセスである核酸増幅反応や遺伝子検出反応を阻害することの少ない核酸抽出溶液を得ることができる。
請求項5に記載の本発明による核酸抽出方法によって、前記緩衝液のpHの値の範囲が、5〜9であることにより、前記細胞とアルカリ性の水溶液を混合した溶液に前記緩衝液を加えた場合のpHの値を、5〜9の範囲にすることができる。これによって、核酸抽出効率が高く、さらに後のプロセスである核酸増幅反応や遺伝子検出反応を阻害することの少ない核酸抽出溶液を得ることができる
請求項6に記載の本発明による核酸抽出方法によって、前記核酸抽出溶液のpHの値の範囲を、5〜9とすることによって、核酸抽出効率が高く、さらに後のプロセスである核酸増幅反応や遺伝子検出反応を阻害することの少ない核酸抽出溶液を得ることができる。
請求項6に記載の本発明による核酸抽出方法によって、前記核酸抽出溶液のpHの値の範囲を、5〜9とすることによって、核酸抽出効率が高く、さらに後のプロセスである核酸増幅反応や遺伝子検出反応を阻害することの少ない核酸抽出溶液を得ることができる。
請求項7に記載の本発明による核酸抽出キットをもちいることによって、核酸抽出キットにアルカリ性の水溶液と緩衝液とベタインとを少なくとも含むことにより、器具や操作が簡便でかつ核酸抽出効率が高く、さらに後のプロセスである核酸増幅反応や遺伝子検出反応を阻害することが少ない核酸抽出溶液を得ることができる。
請求項8に記載の本発明による核酸抽出方法において、請求項7に記載の核酸抽出キットを用いることによって、該核酸抽出方法に必要な溶液を容易に得ることができ、器具や操作が簡便でかつ核酸抽出効率が高く、さらに後のプロセスである核酸増幅反応や遺伝子検出反応を阻害することが少ない核酸抽出溶液を得ることができる。
請求項9に記載の本発明による遺伝子検出方法において、請求項1〜6のいずれか1項
に記載の核酸抽出方法または請求項8に記載の核酸抽出方法によって生成される核酸抽出溶液を用いることにより、器具や操作が簡便でかつ核酸抽出効率が高く、さらに後のプロセスである核酸増幅反応や遺伝子検出反応を阻害することが少ない核酸抽出溶液とすることができ、遺伝子を検出する効率の高い遺伝子検出方法が可能となる。
に記載の核酸抽出方法または請求項8に記載の核酸抽出方法によって生成される核酸抽出溶液を用いることにより、器具や操作が簡便でかつ核酸抽出効率が高く、さらに後のプロセスである核酸増幅反応や遺伝子検出反応を阻害することが少ない核酸抽出溶液とすることができ、遺伝子を検出する効率の高い遺伝子検出方法が可能となる。
請求項10に記載の本発明による遺伝子検出キットにおいて、アルカリ性の水溶液と緩衝液とベタインとを少なくとも含むことにより、器具や操作が簡便でかつ核酸抽出効率が高く、さらに後のプロセスである核酸増幅反応や遺伝子検出反応を阻害することが少ない核酸抽出溶液とすることができ、遺伝子の検出時間を短くすることのできる遺伝子検出キットが可能となる。
まず、本発明による核酸抽出方法と、該核酸抽出方法に用いることのできる核酸抽出キットについて、その実施の形態の一例を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明を実施の形態の一例として、細胞として全血を用いた例を、次に説明するが本発明はこれに限定されるものではない。
本発明の核酸抽出方法の手順を図1に基づいて説明する。まず、全血aと、pHを調整したアルカリ性の水溶液bの適量とで混合プロセス1を行い、混合溶液gとする。
なお、図1において、プロセスの下に記載されている点線で結合された四角の枠はそれぞれのプロセス内で生成される物質を示す。以下同様とする。
次に該混合溶液gに対してボルテックス攪拌プロセス2を行い、血液細胞を破壊変性して混合攪拌溶液hとする。
次に、該混合攪拌溶液hを2〜5分の静置プロセス3を経た後、混合攪拌溶液iとして、該混合溶液iとpHを調整した緩衝液cとを混合する混合プロセス4を行い混合緩衝溶液jとする。加える緩衝液cの量は、強アルカリ性の該混合攪拌溶液hと該緩衝液cとが混合することによって、ほとんどpHが変動しないようにする緩衝液cの緩衝作用により、該混合緩衝溶液jのpHが該緩衝液cと同等のpHの値となるような充分な量とする。
核酸抽出方法の手順において、ここまでの手順である図1の点線で囲まれたAの区間のなかの段階においてベタインdを適量加える。
すなわち、ベタインdは、全血aとアルカリ性の水溶液bとを混合する前に、全血aに加えてもよい。
また、ベタインdは、全血aとアルカリ性の水溶液bとを混合する前に、アルカリ性の水溶液bに加えてもよい。
また、ベタインdは、全血aとアルカリ性の水溶液bとの混合プロセス1の際に加えてもよい。
またベタインdは、全血aとアルカリ性の水溶液bをボルテックス攪拌プロセス2の際にくわえてもよい。
またベタインdは、該混合攪拌溶液iを静置3する際に加えてもよい。
また、ベタインdは、緩衝液cに加えてもよい。
また、ベタインdは、緩衝液cを該混合攪拌溶液iとの混合プロセス4の際にくわえてもよい。
また、ベタインdは、該混合緩衝溶液jに加えてもよい。
このようにしてベタインdが添加された該混合緩衝溶液jを遠心分離装置に設置し、遠心分離プロセス5により沈殿物eを除去して上澄みを核酸抽出溶液fとする。場合によっては、この後に濾過をおこなってもよい。
また、本発明による核酸抽出キットには、前記アルカリ性の水溶液と前記緩衝液と前記ベタインとを少なくとも含む。
核酸抽出キットの一要素であるアルカリ性の水溶液bとしては、pHを調整したNaOH溶液を用いることができる。NaOHの濃度はpHが12以上となるように調製することが好ましいが、その限りではない。
核酸抽出キットの一要素である緩衝液cとしては、トリスヒドロキシメチルアミノメタン(Tris)を塩酸(HCl)で中和した溶液であるTris-HCLバッファーなどを用いることができる。Tris-HClバッファーのpHの値は5〜9の範囲となるように調製することが望ましいが、その限りではない。
核酸抽出キットの一要素であるベタインdの量は、前記核酸抽出溶液fにおいて、すべて溶液中に溶解した状態に換算して0.1〜2.0mol/lの濃度相当となるように調製して添加することが好ましい。
次に前記核酸抽出溶液fから遺伝子の検出を行う遺伝子検出方法と該遺伝子検出方法に用いることのできる遺伝子検出キットについてその実施の形態の一例を示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
遺伝子の検出を行う方法としては、前記核酸抽出溶液fとDNAマイクロアレイを組み合わせる方法や、リアルタイムPCR法や、Invader Plus法などと組み合わせて行う方法などがあるが、これらに限定されるものではない。
本発明の核酸抽出方法によって得られる核酸抽出溶液fを用いて、Invader Plus法により遺伝子の検出を行う方法について次に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
以下に、Invader Plus法により、ワルファリンの処方量に関係する血液凝固に関する酵素であるVKORC1、またはワルファリンの薬物代謝酵素であるCYP2C9の遺伝子多型に関する遺伝子検出の方法の例を示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
本発明によって得られた核酸抽出溶液fに、Invader Plus反応液であるInvader Plus bufferと、VKORC1に対応する遺伝子を検出するためのVKORC1オリゴミックスと、Enzyme Mixとを混合し、変性処理(95℃で5分加熱)してDNAの二重螺旋を一本鎖に融解させる。なお、VKORC1オリゴミックスは、PCR用プライマー、DNAプローブ、インベイディングオリゴ、FRETカセットから成る。
また、CYP2C9の遺伝子多型に関する遺伝子検出の場合では、CYP2C9に対応する遺伝子を検出するためのCYP2C9オリゴミックスを用いて同様にして操作を行う。なお、CYP2C9オリゴミックスは、PCR用プライマー、DNAプローブ、インベイディングオリゴ、FRETカセットから成る。
次に、PCR法(95℃5分、95℃30秒(変性)、72℃45秒(伸長))を35サイクル行ってVKORC1に相当する部分の核酸の増幅反応を行った後、Taq失活(99℃10分)を行いPCRすなわちポリメラーゼ連鎖反応を停止させる。
最後にInvader法(63℃2分)を実施して、VKORC1の遺伝子に対応する核酸配列に特異的に結合したDNAプローブを分解させて、さらにこの分解反応により生成されたDNAの加熱プローブの5’オリゴヌクレオチドが蛍光色素を持つFRETカセット結合し、さらに該FRETが分解されて蛍光色素が該FRETカセットから遊離し、蛍光を発光するようにして、VKORC1の遺伝子の検出を、蛍光の測定により間接的に測定できるようにする。
Invader法により解離された蛍光色素であるFAMの蛍光シグナル強度(励起波長 485nm, 発光波長 535nm)と同じく解離された蛍光色素であるREDの蛍光シグナル強度(励起波長 560nm, 発光波長 612nm)を、蛍光を測定する装置であるTECAN社Infinite F200で測光し評価する。このFAMの蛍光シグナル強度hが対応するVKORC1の遺伝子の検出量を示す。
通常、Third Wave Technology社のInvader Plus法においては、2種類のDNAプローブの反応を同時に行うことが可能である。蛍光測定装置は、2種類の蛍光シグナル強度を同時に測定することが可能であり、これを用いて、2種類の遺伝子の塩基配列の検出が可能である。このため、遺伝子多型の検出に用いられることが多い。また、この蛍光シグナル強度の値が目的の遺伝子検出量の値を示す。蛍光シグナル強度の値が高いと遺伝子検出量の値が高いことを示す。以下の実施例では、正常な反応が起きた場合は対応するFAMの蛍光シグナル強度が遺伝子の検出量に応じて高くなり、REDの蛍光シグナル強度は低く、バックグラウンドと同等の値となる例を示す。
本発明による遺伝子検出キットには、前記アルカリ性の水溶液と前記緩衝液と前記ベタインとを少なくとも含む。
遺伝子検出キットの一要素であるアルカリ性の水溶液bとしては、pHを調整したNaOH溶液を用いることができる。NaOHの濃度はpHが12以上となるように調製することが好ましいが、その限りではない。
遺伝子検出キットの一要素である緩衝液cとしては、トリスヒドロキシメチルアミノメタン(Tris)を塩酸(HCl)で中和した溶液であるTris-HCLバッファーなどを用いることができる。Tris-HClバッファーのpHの値は5〜9の範囲となるように調製することが望ましいが、その限りではない。
遺伝子検出キットの一要素であるベタインdの量は、前記核酸抽出溶液fにおいて、すべて溶液中に溶解した状態で0.1〜2.0mol/lの濃度相当となるように調製して添加することが好ましい。
次に、本発明による核酸抽出方法により具体的に核酸の抽出を行って核酸抽出溶液を得
た例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。また、次に、本発明による遺伝子検出方法により該核酸抽出溶液から特定の遺伝子の検出を行い、評価する例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
た例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。また、次に、本発明による遺伝子検出方法により該核酸抽出溶液から特定の遺伝子の検出を行い、評価する例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
まず、本発明による核酸抽出方法により、核酸の抽出を行った。図2に基づき各手順について説明を行う。
10μlの全血aと、100μlのNaOH 溶液b(0.2mol/l)とを混合プロセス1をして調製した混合溶液gを、ボルテックス攪拌プロセス2を10秒間行って混合攪拌溶液hとする。
ここで、静置プロセス3を2〜5分行う。このようにして、血液細胞を破壊変性する。
ここで、静置プロセス3を2〜5分行う。このようにして、血液細胞を破壊変性する。
次に、該混合攪拌溶液iに緩衝液c(21.16mmol/lのTris-HCl緩衝液 )を1890μl加えて混合プロセス4をして混合緩衝溶液jを調製する。該混合緩衝溶液jを遠心分離プロセス5(5000G、1分)により沈殿物eを除去して上澄みから核酸抽出溶液fを得た。
前記の手順において、ベタインdの添加の有無により、実施例1の試料と比較例1の試料をそれぞれ調製した。
図2においてBで示す領域は、本発明の核酸抽出方法の実施の形態の一例を示すプロセスフローである。
ベタインdの添加は、図2に示すように、該緩衝液cにベタインdを事前に添加しておくことで行った。
実施例1として、前記緩衝液cに、前記核酸抽出溶液f中におけるベタインdの濃度が、それぞれ、0.25,0.5,0.75,1mol/l(M)となるような相当量を、それぞれ添加して用いた。このようにして各々のベタインdの濃度の核酸抽出溶液fを4種類調製した。また、比較例1として、ベタインdを加えない場合を、0mol/l(M)、として同様にして試料を調製した。
次に、Invader Plus法により、該核酸抽出溶液fからの遺伝子の検出を行い、本発明による核酸抽出方法の評価を行った。ここでは、実施例1のベタインを添加した4種類と、比較例1のベタインを添加しない1種類の核酸抽出溶液についてワルファリンの処方量に関係する血液凝固に関する酵素であるVKORC1の遺伝子検出を行った。
前記により調製した実施例1の4種類と比較例1の1種類の核酸抽出溶液fを7.75μl、それぞれ用意し、10倍の濃度のInvader Plus buffer(k)を1μlと、10倍の濃度のVKORC1 オリゴミックス(l)を1μlと、40倍濃度のEnzyme Mix(k)を0.25μl、とをそれぞれ混合し、DNA変性処理(95℃で5分加熱)した後、PCR法(95℃5分、95℃30秒(変性)、72℃45秒(伸長))を35サイクル実施して核酸増幅を行った後、Taq失活(99℃10分)を行ってPCRを停止した。次に、Invader法(63℃2分)を実施して遺伝子の検出のための蛍光色素を遊離させ蛍光シグナルを発現させた。
Invader反応により解離された蛍光色素であるFAM( 励起波長 485nm,発光波長535nm)の蛍光シグナル強度と同じく解離された蛍光色素であるREDの蛍光シグナル強度(励起波長 560nm, 発光波長 612nm)をTECAN社Infinite F200で測光した。この蛍光シグナル強度の測定値は遺伝子の検出量を示す。
本実施例1と比較例1の測定結果を図3に示す。ここで、縦軸は、蛍光シグナル強度を示す相対的な値である。数字の大きい方が遺伝子の検出量の値が大きいことを示す。また、横軸は、ベタインdの濃度を示す。横軸の濃度の単位はmol/lである。また、NCは、反応液として核酸抽出溶液の代わりに水を用いた場合の値であり、測定装置のノイズによるものと推定される。すなわち、NCでの値が実質的に検出量が0であることを示す。
比較例1のベタインdの濃度が0の場合は、NCの場合とほぼ同じで、遺伝子がほとんど検出されなかった。実施例1のベタインを添加した場合はいずれも遺伝子が検出された。特にベタインdの濃度が0.5〜0.75Mの場合はVKORC1の遺伝子の検出量が多く、ベタインdの濃度に最適値があることを示す。また、本反応のバックグラウンドを示すREDの蛍光シグナル強度の上昇がみられなかった。
以上の結果から、本発明の核酸抽出方法に基づいて、ベタインdを核酸の抽出において混合緩衝溶液jに添加することにより得た核酸抽出溶液fにおいて、遺伝子の検出量が増加し、添加しない場合に比べ著しく遺伝子の検出の効率を向上させることが示された。
次に、本発明による核酸抽出方法により具体的に核酸の抽出を行って核酸抽出溶液を得た例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。また、次に本発明による遺伝子検出方法により該核酸抽出溶液から実施例1とは異なる遺伝子の検出を行い、評価する例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例2として、ベタインdを、図2に示すプロセスにおいて添加した場合と、比較例2として、ベタインを核酸抽出のプロセスではなくPCRの核酸増幅反応において添加した場合について、同じ遺伝子の検出を行い比較、評価した。
遺伝子の検出方法として、Invader Plus法を用いて、ワルファリンの薬物代謝酵素であるCYP2C9の遺伝子多型の一つであるCYP2C9*3の検出の方法の例を示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
まず、本発明による、核酸抽出方法に基づき、核酸の抽出を行って核酸抽出溶液fを作製した。図2に基づき説明する。
10μlの全血aと、100μlのNaOH 溶液b(0.2mol/l)とを混合プロセス1をして調製した混合溶液gを、ボルテックス攪拌プロセス2を10秒間行って混合攪拌溶液hとする。
ここで、静置プロセス3を2〜5分行う。このようにして、血液細胞を破壊変性する。
ここで、静置プロセス3を2〜5分行う。このようにして、血液細胞を破壊変性する。
次に、該混合攪拌溶液iに緩衝液c(21.16mmol/lのTris-HCl緩衝液 )1890μlを加えて混合プロセス4をして混合緩衝溶液jを調製する。該混合緩衝溶液jを遠心分離プロセス5(5000G、1分)により沈殿物eを除去して上澄みから核酸抽出溶液fを得た。
なお、実施例2として、前記緩衝液cに、この核酸抽出溶液f中において、ベタインdの濃度が、0.75,1.0,1.5mol/l(M)となるように、それぞれ添加して用いた。このようにして各々のベタインdの濃度の核酸抽出溶液を3種類調製した。また、比較例2として、ここまでのプロセスではベタインdを加えない場合を、0mol/l(M)、として3つの試料を同様にして調製した。
次に、Invader Plus法により、ベタイン添加の効果の検証を行った。ここでは、実施例2として、核酸の抽出において、ベタインdを前記各濃度で添加した核酸抽出溶液fの例を3種類と、比較例2として、ベタインを添加しないで調製した核酸抽出溶液に、ベタインをInvader Plus法におけるPCRの反応液に添加した例を3種類作製した。
比較例2においては、実施例2で作製した3種類の場合と遺伝子検出の際のベタインdの濃度をベタインdが溶液にすべて溶けている濃度相当とそれぞれ同じになるように対応させて3種類調製した。
ここでは、実施例2と比較例2のそれぞれにおいて、前記ワルファリンの薬物代謝酵素であるCYP2C9の遺伝子多型の一つであるCYP2C9*3の遺伝子の検出を行った。
次に、Invader Plus法によるCYP2C9*3の遺伝子の検出方法について記載するが、本発明は、これに限定されるものではない。
実施例2として、本発明の核酸抽出方法により得られたそれぞれのベタインdの濃度の核酸抽出溶液fの7.75μlを、1μlの10倍濃度のInvader Plus buffer(k)と1μlの10倍濃度のCYP2C9*3 オリゴミックス(m)と0.25μlの40倍濃度のEnzyme Mix(k)と混合し、変性処理(95℃5分)を行いDNAの融解をさせる。
次に、PCR法(95℃5分、95℃30秒(変性)、72℃45秒(伸長))を35サイクル実施しCYP2C9*3の遺伝子の核酸増幅を行った後、Taq失活(99℃10分)を行いPCRを停止させる。
次にInvader法(63℃2分)を行いCYP2C9*3に対応する遺伝子に相当する蛍光シグナルがでるようにした。
比較例2では、dを含まない核酸抽出溶液7.75μlを1μlの10倍濃度のInvader Plus
buffer(g)と1μlの10倍濃度のCYP2C9*3 オリゴミックス(i)と0.25μlの40倍濃度のEnzyme Mix(g)と混合し、変性処理(95℃5分)を行いDNAの融解をさせる。
buffer(g)と1μlの10倍濃度のCYP2C9*3 オリゴミックス(i)と0.25μlの40倍濃度のEnzyme Mix(g)と混合し、変性処理(95℃5分)を行いDNAの融解をさせる。
次に、PCR反応液に前記実施例2と同等の濃度となる量のベタインを添加して3種類用意してPCR法(95℃5分、95℃30秒(変性)、72℃45秒(伸長))を35サイクル実施しCYP2C9*3の遺伝子の核酸増幅を行った後、Taq失活(99℃10分)を行いPCRを停止させる。
次にInvader法(63℃2分)を行いCYP2C9*3に対応する遺伝子に相当する蛍光シグナルがでるようにして3種類作製した。
Invader反応により解離された蛍光色素であるFAM( 励起波長485nm, 発光波長535nm)と解離された蛍光色素であるRED(励起波長 560nm, 発光波長 612nm)のそれぞれの蛍光シグナル強度をTECAN社Infinite F200で測光した。この蛍光シグナル強度の測定値を遺伝子の検出量とした。
本実施例2の測定結果を図2(a)に示す。また比較例2の測定結果を図2(b)に示す。ここで、縦軸は、遺伝子の検出量を示す。また、横軸は、ベタインdの濃度を示す。横軸の濃度の単位はmol/lである。
本発明の核酸抽出方法によりベタインdを添加して作製した核酸抽出溶液fを用いたそれぞれの濃度の実施例2と、核酸抽出溶液fにはベタインdを添加せずに、PCRの反応液に実施例と同等量のベタインdを添加した比較例2の結果から、それぞれのすべての場合において、遺伝子を検出することができた。
また、実施例2と比較例2とを比べると、すべての各々の対応するベタインdの濃度において、実施例2で示した本発明の核酸抽出方法によって作製された核酸抽出溶液の遺伝子の検出量の値の方が大きく、遺伝子の検出の効率をより向上させることが示された。また、本反応のバックグラウンドを示すREDの蛍光シグナル強度の上昇がみられなかった。
前記のように、PCRにおいて、ベタインが核酸増幅反応の効率を向上させることがわかっている。従って、核酸抽出溶液にベタインが残存している場合、ベタイン添加の効果として、PCRの効率向上の効果と核酸抽出のプロセスの効率向上への効果との二つが想定される。
前記実施例における実施例2により、本発明の核酸抽出方法に基づいてベタインdを添加した場合では、比較例2で行った方法であるベタインdのPCRの効率向上の効果に基づく結果よりも高い遺伝子検出効率をしめすことから、本発明による遺伝子検出方法は、遺伝子の検出効率を従来の方法よりも向上させ、これは、本発明による核酸抽出方法が核酸抽出溶液の核酸を抽出する効率を向上させる効果があるためであることが示された。
1: 混合プロセス
2: ボルテックス攪拌プロセス
3: 混合攪拌溶液静置プロセス
4: 混合緩衝溶液混合プロセス
5: 遠心分離プロセス
a: 全血
b: アルカリ性の水溶液
c: 緩衝液
d: ベタイン
e: 沈殿物
f: 核酸抽出溶液
g: 混合溶液
h: 混合攪拌溶液
i: 混合攪拌溶液
j: 混合緩衝溶液
k: Universal Enzyme Mix & Buffer 、サードウエーブテクノロジース社型番97-019
l: VKORC1オリゴミックス、サードウエーブテクノロジース社型番95-435及び 95-437
m: CYP2C9*2*3 オリゴミックス、サードウエーブテクノロジース社型番95-436及び 95-434
A:本発明の核酸抽出方法においてベタインを添加する段階の範囲
B:本発明の核酸抽出方法のプロセスフローの例
2: ボルテックス攪拌プロセス
3: 混合攪拌溶液静置プロセス
4: 混合緩衝溶液混合プロセス
5: 遠心分離プロセス
a: 全血
b: アルカリ性の水溶液
c: 緩衝液
d: ベタイン
e: 沈殿物
f: 核酸抽出溶液
g: 混合溶液
h: 混合攪拌溶液
i: 混合攪拌溶液
j: 混合緩衝溶液
k: Universal Enzyme Mix & Buffer 、サードウエーブテクノロジース社型番97-019
l: VKORC1オリゴミックス、サードウエーブテクノロジース社型番95-435及び 95-437
m: CYP2C9*2*3 オリゴミックス、サードウエーブテクノロジース社型番95-436及び 95-434
A:本発明の核酸抽出方法においてベタインを添加する段階の範囲
B:本発明の核酸抽出方法のプロセスフローの例
Claims (10)
- 細胞から核酸を抽出するための核酸抽出方法において、少なくとも細胞とアルカリ性の水溶液を混合して混合溶液として、さらに該混合溶液に緩衝液を加えて成る混合緩衝溶液から核酸を抽出して核酸抽出溶液を得る核酸抽出方法において、少なくも該混合緩衝溶液、または該混合緩衝溶液となる前までのいずれかの段階で、ベタインを添加することを特徴とする核酸抽出方法。
- 前記細胞が、血液に含まれることを特徴とする請求項1に記載の核酸抽出方法。
- 前記核酸抽出溶液におけるベタインの濃度が0.1〜2.0mol/lであることを特徴とする請求項1または2に記載の核酸抽出方法。
- 前記アルカリ性の水溶液のpHの値が12以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の核酸抽出方法。
- 前記緩衝液のpHの値の範囲が、5〜9であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の核酸抽出方法。
- 前記核酸抽出溶液のpHの値の範囲が、5〜9であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の核酸抽出方法。
- アルカリ性の水溶液と緩衝液とベタインとを少なくとも含むことを特徴とする核酸抽出キット。
- 請求項7に記載の核酸抽出キットを用いることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の核酸抽出方法。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の核酸抽出方法または請求項8に記載の核酸抽出方法によって生成される核酸抽出溶液を用いることを特徴とする遺伝子検出方法。
- アルカリ性の水溶液と緩衝液とベタインとを少なくとも含むことを特徴とする遺伝子検出キット。
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---|---|---|---|
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010051255A (ja) * | 2008-08-28 | 2010-03-11 | Institute Of Physical & Chemical Research | 血液試料からの一塩基多型の迅速検出方法 |
WO2017043649A1 (ja) * | 2015-09-10 | 2017-03-16 | 株式会社カネカ | 核酸を含有する検体から核酸を分離する方法及びそのための装置 |
-
2008
- 2008-07-30 JP JP2008196111A patent/JP2010029126A/ja active Pending
Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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