JP2010027258A - 有機el表示装置並びに該装置の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐熱性の高い被印刷基板を用いた、有機EL発光層を有する有機EL表示装置を提供することを目的とし、さらには、フレキソ印刷法によって隔壁を形成する際に、有機薄膜形成用インクに用いられる溶剤に対し十分な耐性を有し、正確なパターン形成が可能な有機EL表示装置を提供することを目的とする。また、本発明は、このような有機EL表示装置の製造方法を提供することをも目的とする。
【解決手段】被印刷基板上に有機発光層を有する有機EL表示装置において、被印刷基板がシリコーン系硬化体(a)とガラスクロス(b)とが複合した構造を有するシリコーン系ガラスクロス複合体シートよりなり、フレキソ印刷版により前記被印刷基板上に所定パターンの隔壁を形成した後、該隔壁により囲まれた領域に溶液化された有機EL材料を吐出配置することにより有機発光層を形成したことを特徴とする有機EL表示装置。
【選択図】なし

Description

本発明は、有機EL表示装置に関するものであり、更に詳しくは、被印刷基板上に有機発光層を有する有機EL表示装置および該有機EL表示装置の製造方法に関する。
近年、平面表示装置(フラットディスプレイ)が多くの分野、で使われており、情報化が進む中でますます重要性が高まっている。現在、フラットディスプレイの代表といえば、液晶ディスプレイ(LCD)であるが、LCDとは異なる表示原理に基づくフラットディスプレイとしては、有機EL、無機EL、プラズマディスプレイパネルなどの開発も活発に行われている。これらの新しいフラットパネルディスプレイはいずれも自発光型と呼ばれるもので、LCDとは次の点で大きく異なりLCDには無い優れた特徴を有している。
LCDは受光型と呼ばれ、液晶は自身では発光することはなく、外光を透過、遮断する、いわゆるシャッターとして動作し、表示装置を構成する。このため光源を必要とし、一般にバックライトが必要である。これに対して、自発光型は装置自身が発光するため、別光源が不要である。LCDの様な受光型では表示情報の様態に拘わらず、常にバックライトが点灯し、全表示状態とほぼ変わらない電力を消費することになる。これに対して自発光型は、表示情報に応じて点灯する必要のある箇所だけが電力を消費するだけなので、受光型表示装置に比較して、電力消費が少ないという利点が原理的にある。
従来、有機EL表示装置などに用いる基板としては、一般にガラス基板が用いられている。しかしながらガラス基板は、割れやすい、曲げられない、比重が大きくて軽量化に不向きなどの理由から、近年、その代替としてプラスチック基板が検討されている。例えば、特許文献1や特許文献2にはエポキシ樹脂、酸無水物硬化剤および硬化触媒を含むエポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化体からなる液晶表示素子用透明樹脂基板が記載されている。しかしながら、これらの樹脂単独材料は、ガラス板に比べ線膨張率が大きく、表示装置用基板の製造工程において反りやアルミ配線の断線などの問題が生じ、これらの用途への使用は困難である。従って、表示素子用基板、特にアクティブマトリックス表示素子用基板に要求される、透明性、耐熱性などを満足しつつ線膨張率の小さなプラスチック素材が求められている。線膨張率を低減するために、樹脂にガラス繊維等の無機フィラーを複合化することがよく行われているが、これらの樹脂と無機フィラーの複合化では、通常透明な複合材料は得られない。これは樹脂の屈折率と無機フィラーの屈折率が異なるため、樹脂と無機フィラーの界面で樹脂を透過した光が散乱することが主な原因である。このような問題を解決するため、樹脂の屈折率と無機フィラーの屈折率を一致させることで透明化することが種々検討されている。例えば、特許文献3や特許文献4には、環状オレフィン樹脂とガラス繊維との屈折率差を小さくすることで、透明な複合材料が得られることが示されている。しかしながら、ここで用いられる環状オレフィン樹脂は熱可塑性樹脂であり、熱による塑性変形などの耐熱性が不足することが懸念される。
さらに、無機フィラーとしてガラスクロスを用いて、樹脂とガラスクロスを複合化し、樹脂とガラスクロスの屈折率差を一致させて透明複合体組成物を得ることが行われている。
例えば、特許文献5や特許文献6には、ガラスクロスにエポキシ樹脂やアクリレート樹脂の硬化性樹脂を用い、屈折率差とアッベ数を一致させることによって、線膨張率が小さく透明性の高い複合材料が得られることが示されている。しかしながら、これらの樹脂と無機フィラー透明複合材料に用いられる樹脂は、汎用的な硬化性樹脂であるエポキシ樹脂やアクリレート樹脂であり、やはり耐熱性の不足が懸念され、特にガラス転移温度前後での貯蔵弾性率などの諸物性が変化することが懸念される。そのため表示素子製造プロセスにおける加熱によるシートの膨張、変形や物性の変化が生じ、得られる表示素子の性能に悪影響を及ぼすことが懸念される。
そこで、ガラス転移温度の前後で貯蔵弾性率等物性の変化が小さく、加熱によるシートの膨張や変形の度合いが小さい透明複合体シートが求められていた。
また一方では、有機EL表示装置は、二つの対向する電極の間に有機発光材料からなる有機発光層を形成し、有機発光層に電流を流すことで発光させるものであるが、効率よく発光させるには発光層の膜厚が重要であり、100nm程度の薄膜にする必要がある。さらに、これをディスプレイ化するには高詳細にパターニングする必要がある。
有機発光材料には、低分子材料と高分子材料があり、一般に低分子材料は抵抗加熱蒸着法等により薄膜形成し、この時に微細パターンのマスクを用いてパターニングするが、この方法では基板が大型化すればするほどパターニング精度が出にくいという問題がある。
そこで、最近では、有機発光材料に高分子材料を用い、有機発光材料を溶剤に溶かして塗工液にし、インクジェットの吐出装置を用いて、発光材料を吐出して発光層を形成することが知られている。(例えば特許文献7参照)
しかしながら、これらのインクジェット法においては、吐出されたインク状有機EL材料は、着弾の目標とされる画素形成部に正確に着弾せずに、隣接する画素形成部へ流出することがある。このような流出が生じるのは、液滴を形成するためにインクジェットヘッドと基板との間にある程度のギャップが空けられるためである。すなわち、インクジェットヘッドのノズルからインクを吐出させたとき、当該ノズルの尖端部に付着する汚れなどの影響によりインクの飛行曲がりなどが生じる結果、上記ギャップを経てインクの液滴が着弾する位置は、所望の目標位置に対してずれを生じることがある。
そこで、従来より、有機EL素子を作製するとき、撥水撥油性(以下撥液性という)を有するバンクにより各画素形成部を囲む方法が提案されている。(例えば特許文献8あるいは特許文献9参照)
この方法は、透明基板上に形成された電極に対して、所定のパターニングを施すことにより複数の画素電極として形成した後、形成された隣り合う画素電極間に隔壁として機能するバンクを形成し、さらに当該バンクにより囲まれた領域に有機EL材料(例えば電荷注入材料および/または発光材料)を液相で吐出配置した後に、加熱乾燥して有機EL層を形成し、さらにまたその上に上部電極を形成する方法である。
ここで上記バンクの厚みは一般的には1〜3μm程度であり、また通常、バンクの材料としては、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ノボラック系樹脂等の有機樹脂材料が使用されるが、パターニングを容易にするために感光性を付与されることが多い。またバンク表面は、撥液性を付与するため、インクに対し表面自由エネルギーが小さくなるようにする必要がある。このようにバンク表面に撥液性を付与するため、例えばフッ素を含む官能基やシリコンを含む添加剤を予めバンクの材料である有機樹脂に含ませる方法や、パターニング後に四フッ化炭素に代表されるフッ素系ガスを使用することによりバンク表面に対してプラズマ処理を施す方法などが採られる。
また、画素電極表面には、バンク表面に付与される撥液性とは相反する特性である親水親油性(以下親液性という)が付与される。画素電極の材料としては、透明電極となるITO(Indium Tin Oxide)が使用されることが多いが、例えば画素電極の表面に対して公知の洗浄処理方法であるUV/O3処理や酸素プラズマ処理を施すことにより有機(炭化水素)系の不純物を除去してその結果として画素電極表面の親液性を高める事もできる。有機EL素子の場合は上記処理によりITO表面のイオン化ポテンシャル(仕事関数)が上昇し、正孔注入効率が向上するという効果も期待できる。
以上のようにバンク表面に撥液性が付与され、かつ画素電極表面に親液性が付与されることにより、インクの一部がバンク表面の一部に着弾したとしても、このバンク表面に着弾したインクは、親液性を有する画素電極表面に引き込まれ、かつ画素電極表面に均一にパターニングされるため、着弾位置のずれをある程度許容(補償)することができる。このような手法によれば、隣接する画素電極表面にインクが着弾しない限り、隣接する画素形成部を他の種類のインクによって汚染することがないため、画素形成部内でのインクの混色が抑制される。
しかしながら、上記バンクを使用する従来の手法(例えば特許文献8を参照)では、バンクをパターニングする方法として、フォトレジスト工程を用いるため、感光性樹脂を塗布した後に、露光・現像・洗浄を行い、所望のパターンにする方法であるため、生産効率の点で大いに問題が残り解決が望まれていた。一方、印刷法により直接有機薄膜を形成する試みも行われており、当該方法によれば、有機薄膜を高効率で形成し得る。ただし、被印刷基材は、ガラス等の損傷しやすい材料である場合が多く、金属製等の硬い印刷版は基本的に使用不可能である。その点においては、柔軟な版であることを特徴とするフレキソ印刷版が好適であるが、従来のフレキソ印刷版材は、これらの有機薄膜形成用インクに用いられる溶剤に十分な耐性を有しないため、印刷を続けるうち膨潤し、正確なパターンを形成できないという問題があり、その解決が強く望まれている。
特開平6−337408号公報 特開平7−120740号公報 特開平6−256604号公報 特開平6−305077号公報 特開2004−231934号公報 特開2004−51960号公報 特開平10−12377号公報 特開平11−87062号公報 特開2004−4945号公報
本発明は、透明性が高く、線膨張率が小さく、温度変化における弾性率の変化が小さく、耐熱性の高い被印刷基板を用いた、有機EL発光層を有する有機EL表示装置を提供することを目的とし、さらには、フレキソ印刷法によって隔壁を形成する際に、有機薄膜形成用インクに用いられる溶剤に対し十分な耐性を有し、正確なパターン形成が可能な有機EL表示装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、このような有機EL表示装置の製造方法を提供することをも目的とするものである。
本発明者等は、上記問題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、被印刷基板として、屈折率をガラスクロスと一致させたシリコーン系硬化体とガラスクロスを複合化することによって、線膨張率が小さく、耐熱性の高い透明シートとすることができ、フレキソ印刷法により該被印刷基板上にパターン化された隔壁を形成する際に、特定の構造を有するポリカーボネートジオールを用いて製造されたポリマーを含有する樹脂組成物よりなるフレキソ印刷版を用いると生産効率が向上し、印刷精度や印刷耐久性も大幅に向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記の通りである。
1. 被印刷基板上に有機発光層を有する有機EL表示装置において、被印刷基板がシリコーン系硬化体(a)とガラスクロス(b)とが複合した構造を有するシリコーン系ガラスクロス複合体シートよりなり、フレキソ印刷版により前記被印刷基板上に所定パターンの隔壁を形成した後、該隔壁により囲まれた領域に溶液化された有機EL材料を吐出配置することにより有機発光層を形成したことを特徴とする有機EL表示装置。
2. 前記シリコーン系ガラスクロス複合体シートが下記の(i)および(ii)の条件を満足することを特徴とする1.に記載の有機EL表示装置。
(i)前記シリコーン系硬化体(a)が、反応性官能基を有するケイ素化合物(a−1)と(a−1)以外のエポキシ基含有の有機化合物(a−2)との架橋硬化反応により得られるものである
(ii)前記シリコーン系硬化体(a)の貯蔵弾性率の35℃〜290℃の温度範囲における動的粘弾性の温度依存性が以下の関係式を満足する
0'.35/E0'.290≦8
(ただし、
0'.35:動的粘弾性測定(引張りモード)による35℃におけるシリコーン系硬化体の
貯蔵弾性率、
0'.290:動的粘弾性測定(引張りモード)による290℃におけるシリコーン系硬化体
の貯蔵弾性率)
3. 前記フレキソ印刷版が、下記式(1)及び/又は式(2)で表される繰り返し単位からなり、両末端基が水酸基であり、かつ数平均分子量が300〜50,000であるポリカーボネートジオールを用いて製造されたポリマー(c)を含有する樹脂組成物であることを特徴とする1.または2.に記載の有機EL表示装置。
Figure 2010027258
(式中、R1は、各々独立して炭素数2〜50の直鎖及び/又は分岐した炭化水素基を表し、nは、2〜50の整数を表す。
Figure 2010027258
(式中、R2は、各々独立して炭素数10〜50の直鎖及び/又は分岐した炭化水素基を表す。)
4. 前記ポリマ−(c)を含有する樹脂組成物が無機系微粒子(d)をさらに含有する3.に記載の有機EL表示装置。
5. 前記フレキソ印刷版が、レーザー彫刻技術を用いてレリーフ画像を形成されたものであることを特徴とする1.〜4.のいずれかに記載の有機EL表示装置。
6. 被印刷基材上に、有機発光層を有する有機EL表示装置の製造方法において、被印刷基板がシリコーン系硬化体(a)とガラスクロス(b)とが複合した構造を有するシリコーン系ガラスクロス複合体シートよりなり、フレキソ印刷版により、前記被印刷基板上に所定パターンの隔壁を形成した後、該隔壁により囲まれた領域に溶液化された有機EL材料を吐出配置する工程により有機発光層を形成することを特徴とする有機EL表示装置の製造方法。
本発明のシリコーン系ガラスクロス複合体シートは、透明性が高く、線膨張率が小さく、温度変化における貯蔵弾性率の変化が小さい、耐熱性が高いという特性を有し、その結果として、加熱によるシートの膨張や変形が小さいため、有機EL表示装置の基板として使用した場合、有機EL表示装置の製造プロセスにおける加熱冷却においても再現性の高い高精彩な画素を得ることができ、更には、該有機EL表示装置使用時の加熱冷却においても色ずれなどの不具合を生じない。さらに該シリコーン系ガラスクロス複合体シートを被印刷基板として用い、かつ柔軟で、溶液化された隔壁形成材料に用いられる溶剤に対して膨潤や変形がない印刷版材を用いると、高精度の有機EL表示装置を提供することが可能となる。
また、本発明により、生産効率のよい、低コスト、高精細な有機EL表示装置の製造方法を提供することが可能となる。
以下、本発明について詳細に述べる。
本発明の有機EL表示装置の1画素分の構成としては、基板上の陽極電極、有機EL層、陰極電極と、隔壁層から構成される。また、コントラストの観点から、基板の外側には、偏向板が設けられていることが好ましく、また、信頼性の観点から陰極電極の上には、封止膜または封止基板を設けることが好ましい。
有機EL層には、正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層、電子注入層がこれに含まれる。有機ELは、電極間に電場を印加し、EL層に電流を通じることで発光する。従来は一重項励起状態から基底状態に戻る際の蛍光発光のみを利用していたが、最近の研究により三重項励起状態から基底状態に戻る際の燐光発光を有効に利用することが出来るようになり、効率が向上している。通常、ガラス基板やプラスチック基板といった透光性基板に透光性電極を形成してからEL層、対向電極の順に形成して製造される。一般には陽極がITOなどの透光性電極、陰極が金属で構成され非透光性電極であることが多い。有機EL素子は水分や酸素による特性劣化が著しいため、一般には素子が水分や酸素に触れない様に、不活性ガスを充満した上で、別基板を用いたり、薄膜蒸着により、いわゆる封止を行い、信頼性を確保している。
有機EL素子をディスプレイとして利用する場合、液晶ディスプレイと同様に電極構成と駆動方法により、パッシブマトリックス方式とアクティブマトリックス方式に大別することが出来る。パッシブマトリックス方式は、EL層を挟んで互いに交差する水平方向電極と垂直方向電極により一対の電極を構成するもので、構造が簡単であるが、画像を表示するためには、時分割走査により走査線の本数倍だけ瞬間輝度を高めなければならず、通常のVGA以上のディスプレイでは10000cd/m2を上回る有機ELの瞬間輝度が必要であり、ディスプレイとしては実用上多くの問題がある。
ただし、パッシブマトリックス方式でも、走査線数の少ない簡単なディスプレイであれば、構造の簡単さを活かして、実用的な装置を実現することは出来る。さらには、先に記載したように、従来の蛍光発光に比べ、燐光発光を利用することにより、発光効率が大幅に向上しており、これらの発光材料を利用することで、パッシブマトリックス方式の従来の問題が解決される可能性も出てきている。
アクティブマトリックス方式は、TFTなどを形成した基板に画素電極を形成し、EL層、対向電極を形成するもので、パッシブマトリックス方式に比べて構造は複雑であるが、発光輝度、消費電力、クロストークといった多くの点で、有機ELディスプレイとして有利である。さらに、多結晶シリコン(ポリシリコン)膜や連続粒界シリコン(CGシリコン)膜を用いたアクティブマトリックス方式ディスプレイでは、アモルファスシリコン膜よりも電荷移動度が高いので、TFTの大電流処理が可能であり、電流駆動素子である有機ELの駆動に適している。また、ポリシリコンTFT,CGシリコンTFTでは、高速動作が可能であることより、従来、外付けのICで処理していた各種制御回路を、ディスプレイ画素と同一基板上に形成し、表示装置の小型化、低コスト化、多機能化等多くのメリットがある。有機EL表示装置の回路構成、駆動方法としては、他にTFTの数を更に多くしたもの「Yumoto等の『Pixel−Driving Methods for Large Sized Poly−Si AM−OLED Displays』 Asia Display/IDW ‘01 P.1395〜1398」や時分割階調「Mizukami等の『6−bit Digital VGA OLED』 SID ‘00 P.912〜915」や面積分割階調「Miyashita 等の『Full Color Displays Fabricated by Ink−Jet Printing』 Asia Display/IDW ‘01 P.1399〜1402」などのデジタル階調駆動法などがあり、これらのどの技術を用いてもよい。
本発明においては、有機ELは、パッシブマトリックス方式あるいはアクティブマトリックス方式いずれの技術を用いてもよい。
本発明のシリコーン系ガラスクロス複合体シートは、反応性官能基を有するケイ素化合物(a−1)とエポキシ基含有の有機化合物(a−2)を原料として、それらの架橋硬化反応によって得られるシリコーン系硬化体(a)と、ガラスクロス(b)を複合化することによって製造することができる。
本発明に使用するシリコーン系硬化体(a)は、反応性官能基を有するケイ素化合物(a−1)に、あらかじめエポキシ基含有有機化合物(a−2)を必要に応じて適当な溶媒に溶解させるなどしてその共存下に合成した後、必要に応じて適当な硬化剤および/または硬化促進剤を添加して、加熱あるいは光線を照射することによって架橋硬化して得ることができる。あるいは、あらかじめ反応性官能基を有するケイ素化合物(a−1)による反応をさせておき、さらにエポキシ基含有有機化合物(a−2)とを必要に応じて溶媒を用いて溶解するなどして混合した後、同様の方法によって架橋硬化して得ることもできる。さらにまた、(a−1)を反応させて(a−2)との架橋硬化以前にあらかじめガラスクロス(b)に含浸させておくことによってガラスクロス複合体シートを得ることができる。
本発明に使用するシリコーン系硬化体(a)の原料成分となる、反応性官能基を有するケイ素化合物(a−1)とエポキシ基含有有機化合物(a−2)の組成比は、得られるシリコーン系硬化体(a)の温度変化における貯蔵弾性率の変化が小さい、耐熱性が高いなどの性能発現の観点から、5:95〜90:10(重量%)であり、好ましくは20:80〜80:20(重量%)であり、より好ましくは40:60〜60:40(重量%)であり、最も好ましくは45:55〜55:45である。
本発明の使用するシリコーン系硬化体(a)は、(a−1)と(a−2)との組合せによっては、その特徴の一つとして室温付近の低温領域と熱加工時の高温領域との剛性(弾性率)の差が小さくすることが重要である。このことを示す指標の一つとして、動的粘弾性測定における貯蔵弾性率の温度依存性を採用することができる。すなわち、該シリコーン系硬化体(a)の貯蔵弾性率の35〜290℃の温度範囲における動的粘弾性の温度依存性が以下の関係式を満足することが好ましい。
0'.35/E0 ' .290≦8
ただし、E0'.35は動的粘弾性測定(引張りモード)による35℃における該シリコーン系硬化体の貯蔵弾性率であり、またE0 ' .290は動的粘弾性測定(引張りモード)による290℃における該シリコーン系硬化体の貯蔵弾性率である。
反応性官能基を有するケイ素化合物(a−1)とエポキシ基含有有機化合物(a−2)との架橋硬化反応によって得られたシリコーン系硬化体(a)の貯蔵弾性率が上記の範囲にある場合、該シリコーン系硬化体(a)とガラスクロス(b)とが複合化した構造を有するシリコーン系ガラスクロス複合体シートにおいては、動的粘弾性測定における温度の貯蔵弾性率の関係が以下の式を満たす傾向にある。
1'.35/E1'.290≦1.5
ただし、E1'.35は動的粘弾性測定における35℃での該シリコーン系ガラスクロス複合体シートの貯蔵弾性率であり、E1'.290は、動的粘弾性測定における290℃でのガラスクロス複合体シートの貯蔵弾性率を表す。該シリコーン系ガラスクロス複合体シートの動的粘弾性が上の関係式であることは温度変化によるシートの強度の低下が小さいことを示す。その結果、加熱によるシートの膨張や変形の度合いが小さくなる。
本発明のシリコーン系ガラスクロス複合体シート平均線膨張係数は、50℃〜300℃の平均線膨張係数が40ppm/K以下であることが好ましく、より好ましくは30ppm/K以下、最も好ましくは20ppm/K以下である。この上限値を超えると、その製造工程において反りや均一な薄膜形成が不可能となる等、種々の問題が発生するおそれがある。
本発明に関るシリコーン系ガラスクロス複合体シートが呈する透明性とは、可視光線の波長領域での光線透過率が60%以上、好ましくは80%以上であることを意味する。本発明に関る可視光線の波長領域とは400nm〜800nmである。
本発明に用いられる反応性官能基を有するケイ素化合物(a−1)は、ケイ素、酸素、炭素、水素を必須構成元素として構成され、さらに、チタニウム、ジルコニウム、ゲルマニウム、アルミニウム、インジウムなどの金属を構成元素として含むことも可能である。
反応性官能基を有するケイ素化合物(a−1)の具体例としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン類、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のアリールトリアルコキシシラン類、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン等のジアルコキシシラン類を例示することができる。
さらに、本発明に使用する反応性官能基を有するケイ素化合物(a−1)として、前述の反応性官能基を有するケイ素化合物モノマーから選ばれる少なくとも一種以上のモノマーを用いて水、触媒の存在下に脱アルコール、脱水反応を行ういわゆるゾル・ゲル反応によって得られるオリゴマー乃至ポリマーを用いることもできる。
ゾル・ゲル反応の触媒としては、塩酸、硝酸、ギ酸、酢酸などの酸類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、トリエチルアミンなどの塩基類、ジブチルスズラウリレートなどの金属触媒を単独であるいは組み合わせて用いることが出来る。
本発明のシリコーン系硬化体(a)の特徴である、室温と高温時の弾性率の差が小さいことを達成するためには、反応性官能基を有するケイ素化合物(a−1)は、シリコーン系硬化体(a)が生成される架橋硬化の際に(a−1)と組み合わせるエポキシ基含有の有機化合物(a−2)との化学結合を形成する官能基を有することが好ましい。例えば、グリシドキシプロピル基、エポキシシクロヘキセニルエチル基等のエポキシ含有基、アミノ基等を有することが好ましく、特にエポキシ基を有することが好ましい。
即ち、本発明に使用する反応性官能基を有するケイ素化合物(a−1)は、下記化学式(3)および/または化学式(4)にて表される構造単位を有しているものが、シリコーン系硬化体(a)の温度変化における弾性率変化や耐熱性などの性能の観点から好ましい。
Figure 2010027258
Figure 2010027258
(ただし、Xは、下記化学式(5)〜化学式(9)にて表されるエポキシ含有基の群から選ばれるいずれかの基であり、Yは、水酸基、炭素数が1〜4のアルキル基および炭素数が1〜4のアルコキシ基の群から選ばれるいずれかの基である。)
Figure 2010027258
Figure 2010027258
Figure 2010027258
Figure 2010027258
Figure 2010027258
(ただし、mは1〜6の整数を表し、nは0〜6の整数を表す。)
特に、反応性官能基を有するケイ素化合物(a−1)としては、化学式(5)で表されるグリシドキシプロピル基を含有する化合物が、架橋硬化されたシリコーン系硬化体(a)の性能を考慮すると、より望ましい。
本発明に使用するエポキシ基含有有機化合物(a−2)とは、常温では液状、半固形状または固形状であって常温下あるいは加熱下で流動性を示す比較的低分子量の物質を意味する。これらは硬化剤、触媒、熱あるいは光の作用によって硬化反応や架橋反応を起こして分子量を増大させながら網目状の三次元構造を形成してなる不溶不融性の硬化性樹脂となりうる。
本発明において用いられるエポキシ基含有有機化合物(a−2)としては、反応性官能基を有するケイ素化合物(a−1)との架橋硬化によって得られるシリコーン系硬化体(a)が透明であればいずれも使用できる。例えば、エポキシ基含有有機化合物(a−2)としては、エポキシ樹脂、エポキシ基含有(メタ)アクリレート樹脂、エポキシ基含有熱硬化型ポリイミド樹脂、エポキシ基含有ユリア樹脂、エポキシ基含有メラミン樹脂、エポキシ基含有不飽和ポリエステル樹脂などが挙げられる。その中でも、エポキシ樹脂、エポキシ基含有(メタ)アクリレート樹脂が好ましく、さらに好ましくはエポキシ樹脂が好ましい。
エポキシ基含有有機化合物(a−2)であるエポキシ樹脂としては、芳香族グリシジルエーテル、芳香族グリシジルエーテルの芳香環を水素化して得られるグリシジルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも一つの化合物であるエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂やその他のエポキシ樹脂が挙げられる。
芳香族グリシジルエーテルであるエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、テトラフルオロビスフェノールA等のビスフェノール類をグリシジル化したビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等のその他の2価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4−(1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノール等のトリスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等のテトラキスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、臭素化フェノールノボラック、臭素化ビスフェノールAノボラック等のノボラック類をグリシジル化したノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
芳香族グリシジルエーテルの芳香環を水素化して得られるグリシジルエーテルは、上で例示した芳香族グリシジルエーテルをルテニウム触媒、ロジウム触媒等の触媒の存在下に芳香環を水素化することにより得られる。
脂環式エポキシ樹脂としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’、4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート等が例示される。
エポキシ基含有有機化合物(a−2)の基本構造単位が、脂環式エポキシ構造単位である場合には、それを成分として構成される該ガラスクロス複合体シートにとって最も好ましい組合せである。
ここで、化学式(10)で表される水素化ビスフェノールA型エポキシ系化合物がより好ましい水素化ビスフェノールA型エポキシ系化合物である。
Figure 2010027258
(ただし、式中のZは、その少なくとも一つが化学式(5)〜化学式(9)にて表されるエポキシ含有基の群から選ばれるいずれかであり、かつ、他のZは、水酸基、炭素数が1〜4のアルキル基および/またはアルコキシ基である。)
その他のエポキシ樹脂としては、ダイマー酸グリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル等のグリシジルエステル類、トリグリシジルイソシアヌレート等のグリシジルアミン類、エポキシ化大豆油、エポキシ化ポリブタジエン等の線状脂肪族エポキサイド等が例示される。
これらのエポキシ樹脂は、該シリコーン系硬化体(a)において単独で使用あるいは二種類以上併用してもよい。
次に、エポキシ樹脂用硬化剤は、例えば、エチレンジアミン、トリエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、ダイマー酸変性エチレンジアミン、N−エチルアミノピペラジン、イソホロンジアミン等の脂肪族アミン類、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4、4’−ジアミノジフェノルスルフォン、4、4’−ジアミノジフェノルメタン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4、4’−ジアミノジフェノルエーテル等の芳香族アミン類、メルカプトプロピオン酸エステル、エポキシ樹脂の末端メルカプト化合物等のメルカプタン類、ビスフェノールA、ビスフェノールF,ビスフェノールAD,ビスフェノールS,テトラメチルビスフェノールA,テトラメチルビスフェノールF,テトラメチルビスフェノールAD,テトラメチルビスフェノールS,テトラブロモビスフェノールA,テトラクロロビスフェノールA、テトラフルオロビスフェノールA,ビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4−(1−(4−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノール、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、臭素化フェノールノボラック、臭素化ビスフェノールAノボラック等のフェノール樹脂類、これらフェノール樹脂類の芳香環を水素化したポリオール類、ポリアゼライン酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物などの脂環式酸無水物類、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の芳香族酸無水物類、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類およびその塩類、上記脂肪族アミン類、芳香族アミン類、及び/またはイミダゾール類とエポキシ樹脂との反応により得られるアミンアダクト類、アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジン類、ジメチルベンジルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類、ジシアンジアミド、2−ブテニル−1、4−ブテン−スルフォニウムヘキサフルオロアンチマトのような潜在性カチオン発生剤等が挙げられる。
これらの硬化剤は単独で用いても、あるいは二種以上を併用してもよい。エポキシ樹脂用硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂100質量部に対して1〜200質量部である。より好ましくは2〜100質量部である。
さらに、硬化促進剤としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類およびその塩類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、トリフェニルホスホニウムブロマイド等のホスホニウム塩類、アミノトリアゾール類、オクチル酸錫、ジブチル錫ジラウレート等の錫系、オクチル酸亜鉛等の亜鉛系、アルミニウム、クロム、コバルト、ジルコニウム等のアセチルアセトナート等の金属触媒類等が用いられる。これらの硬化促進剤は単独で用いても、あるいは二種以上を併用してもよい。
本発明で使用するガラスクロスのガラス素材として、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、Tガラス、石英ガラス等が挙げられ、可視光領域に吸収のないガラス繊維が好ましく、中でも入手が容易なSガラス、Tガラス、NEガラス、Eガラスが好ましく、さらに実用的な特性からTガラスが特に好ましい。また、最終的にシリコーン系硬化体との複合化によってシート加工される場合に好適なシランカップリング剤や各種界面活性剤、無機酸による洗浄等によって表面処理をガラスクロスに施すことで、ガラスクロスと樹脂の界面での濡れ性、親和性、密着性を高めることができる。
ガラスクロスの厚み、織り密度、織り組織は、目的とするシリコーン・エポキシハイブリッド系ガラスクロス複合体シートに応じて選択される。また樹脂含浸性や表面凹凸を改良するために、ガラスクロスの糸束を物理的に開繊することは有効な手法である。
本発明の反応性官能基を有するケイ素化合物(a−1)は、29Si−NMRによって測定される二種類の構造単位T2(直鎖構造単位)およびT3(分岐構造単位)のモル比はT2/T3=50〜0.1の範囲であることが好ましく、より好ましくは25〜0.2であり、最も好ましい範囲は10〜0.75である。T2/T3が50を超えるような場合には結果として分岐構造が不足するため、該シリコーン系硬化体の寸法安定性や熱時剛性の観点からT2/T3は50以下が好ましく、また一方では、該シリコーン系硬化体としての可とう性の観点からT2/T3が0.1以上であることが好ましい。
本発明に関る反応性官能基を有するケイ素化合物(a−1)および(a−1)以外のエポキシ基含有有機化合物(a−2)の合計のエポキシ化率は100〜20,000であることが好ましく、より好ましくは150〜10,000であり、最も好ましい範囲としては180〜5,000である。該シリコーン系硬化体(a)およびガラスクロス(b)を複合化してなるシートの寸法安定性や熱時剛性、可とう性のバランスの観点からエポキシ化率は100以上が好ましく、また一方で、該シリコーン系硬化体のシートとしての加工性の観点から20,000以下が好ましい。
本発明に関るシリコーン系ガラスクロス複合体シートを構成するシリコーン系硬化体(a)は原料成分である反応性官能基を有するケイ素化合物(a−1)および(a−1)以外のエポキシ基含有有機化合物(a−2)を架橋硬化させて得られるが、該シリコーン系硬化体(a)中において(a−1)および(a−2)由来の成分が相分離構造を有することが得られるシートの透明性および、因果関係は不明であるが熱的安定性の観点から好ましい。ここに相分離構造とは、(a−1)および(a−2)由来の成分が均一に混合された状態にあるのではなく、局所的に(a−1)あるいは(a−2)由来の成分が存在する状態を意味する。
該シリコーン系硬化体(a)における(a−1)および(a−2)由来の成分が相分離構造を有することを定量的に表す指標として、X線小角散乱法(SAXS)によって測定される散乱プロファイルのギニエ(Guiner)プロットによって求められる相分離構造のサイズRg(平均値)は1nm〜50nmであることが好ましく、より好ましくは1nm〜30nm、さらにより好ましい範囲は1nm〜10nmである。得られるシートの透明性の観点から相分離構造のサイズは50nm以下であることが好ましく、相分離構造の効果発現の観点から相分離構造のサイズは1nm以上が好ましい。
本発明に関るシリコーン系ガラスクロス複合体シートにおける該シリコーン系硬化体(a)のアッベ数は40以上であることが、該シリコーン系ガラスクロス複合体シートの色収差を最小にするという観点から好ましい。ここに、アッベ数と色収差との関係は、該シリコーン系ガラスクロス複合体シートを構成する該シリコーン系硬化体(a)とガラスクロス(b)との屈折率の差によって生ずる光波長の分散性または分光性に起因するものであり、色収差が大きいほど該シリコーン系ガラスクロス複合体シートを通して見える像が「にじ色」になり表示基板としての性能を著しく低下させる。かかる色収差の程度の指標としてアッベ数が用いられる。アッベ数Vは以下の関係式によって表され、アッベ数が高い数値であるほど色収差が小さくなるという関係にある。
アッベ数: V=(n − 1)/(n −n
なお、n、n、nは材料の波長がそれぞれD−589.2nm、F−486.1nm、C−656.3nmの光に対する屈折率である。
本発明に関るシリコーン系ガラスクロス複合体シートは、有機EL表示装置用被印刷基板として用いる場合、実用性能の一つとして透明性に優れることが必要である。そのために、該シリコーン系硬化体(a)とガラスクロス(b)の屈折率の差が可能な限り小さいことが要求される。ここに屈折率とは、ナトリウムD像(波長589.2nm)を用いて測定された値(n)が用いられる。
該シリコーン系硬化体(a)とガラスクロス(b)の屈折率の差は、0.02以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.01以下であることが好ましい。屈折率の差が0.02より大きい場合、該シリコーン系硬化体(a)とガラスクロス(b)との界面において樹脂を透過した光の散乱により、ガラスクロス複合体シートは不透明になり、光線透過率の値も低下するため実用的な透明性が損なわれる。
ガラスクロスに用いられているガラスの屈折率(n)の範囲は一般的に1.47以上1.53未満であるため、上記理由により該シリコーン系硬化体(a)の屈折率(n)は1.45以上1.55未満であることがガラスクロス(b)との組合せによってなるシリコーン系ガラスクロス複合体シートの透明性の発現のためには必要であり、好ましい屈折率(n)の範囲は1.48以上1.53未満である。
本発明のシリコーン系ガラスクロス複合体シートの製造方法は特に限定されないが、例えば、該シリコーン系硬化体(a)の原料成分である反応性官能基を有するケイ素化合物(a−1)および(a−1)以外のエポキシ基含有有機化合物(a−2)とを硬化剤の存在下に室温で混合し、ガラスクロスに含浸させて必要な型枠に注型した後、加熱および/あるいは光線照射して架橋硬化する方法、反応性官能基を有するケイ素化合物(a−1)から合成される(a−1)由来の成分とエポキシ基含有有機化合物(a−2)とを、硬化剤存在下に溶剤で希釈して粘度調整したのちガラスクロスに含浸させ、溶剤を除去した後、加熱および/あるいは光線照射によって硬化させる方法などが挙げられる。その際の加熱加工方法としてはプレス成形機、真空プレス成形機あるいは加熱ロール成型などを用いることが硬化反応とシート成型反応を同時に行うことが可能であるので好ましい。
被印刷基板の厚みは、2〜5000μmが好ましく、さらに5〜2000μmが好適である。
本発明の有機EL表示装置においては、被印刷基板が無機薄膜からなるガスバリア層をさらに有していてもよい。水蒸気や酸素が有機EL表示装置内部に侵入した場合、該表示装置の寿命が短くなることが一般に知られており、該観点からこの被印刷基板において、水蒸気透過率が0.1g/(m2・24h)以下であることは好ましく、また酸素透過率が0.5ml/(m2・24h・atm)以下であることは好ましい。ここでガスバリア層として用いることができる無機薄膜の材質としては、Si,Al,In,Sn,Zn,Ti,Cu,Ce,Mg,La,Cr,Ca,Zr,Taから選ばれる1種以上を含む酸化物、窒化物、酸化窒素化物またはハロゲン化物を主成分とするものなどが挙げられ、バリア性能や製膜の容易さなどの観点からSi,Ta,Alから選ばれる1種以上を含む酸化物、窒化物または酸化窒素化物を主成分とするものが特に好ましい。また、無機バリア層は1層でも2層以上あってもよい。
また、無機層だけでは無くしきれない層構造の欠陥部分を高分子を主成分とする有機層で埋め、ガスバリア性を高める事も可能である。これらの例としては、アクリロイル基またはメタクリロイル基を有するモノマーを架橋させて得られる架橋反応による体積収縮率が10%より小さい高分子を主成分とするものを用いることが好ましい。
具体的には、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等のうち、2官能以上のアクリロイル基またはメタクリロイル基を有するモノマーを架橋させて得られる高分子を主成分とすることが好ましい。これらの2官能以上のアクリロイル基またはメタクリロイル基を有するモノマーは、2種類以上を混合して用いても、また、1官能(メタ)アクリレートを混合して用いてもよい。また、表示装置用途に要求される耐熱性、耐溶剤性の観点から、特に架橋度が高く、ガラス転移温度が200℃以上である、イソシアヌル酸アクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートを主成分とすることがさらに好ましい。
本発明に係るフレキソ印刷版は、以下に記す理由から前記式(1)及び/又は式(2)で表される繰り返し単位からなり、両末端基が水酸基であり、且つ数平均分子量が300〜50,000であるポリカーボネートジオールから製造されたポリマー(c)を含有する樹脂組成物であることが好ましい。
本発明において、ポリカーボネートジオールは、両末端が水酸基であることが好ましい。当該要件は、本発明のポリカーボネートジオールから高耐溶剤性の印刷原版などに好適な樹脂組成物の製造に際して、分岐構造などを持たず、2級水酸基を有しない分子鎖の両末端に水酸基を有する構造であることが好ましい。更に、本発明におけるポリカーボネートジオールは数平均分子量が300〜50,000であることが好ましく、1,000〜5,000が更に好ましい。得られるフレキソ印刷版の耐溶剤性の観点から数平均分子量は300以上であることが好ましく、当該ポリカーボネートジオールの工業的製造の観点から数平均分子量は50,000以下であることが好ましい。
本発明のフレキソ印刷版の隔壁形成用材料用溶剤に対する耐溶剤性の観点から、前記式(1)のR1は炭素数2以上の直鎖及び/又は分岐した炭化水素基が好ましく、nは2以上が好ましく、前記式(2)のR2は炭素数10以上の直鎖及び/又は分岐した炭化水素基が好ましい。また、ポリカーボネートジオールの分子量制御の観点からR1、R2は炭素数50以下の直鎖及び/又は分岐した炭化水素基が好ましく、nの値は、50以下が好ましい。
本発明に係る樹脂組成物において、ポリカーボネートジオールから製造されたポリマー(c)は、ポリカーボネートジオールの末端水酸基と他の化合物との間の化学結合の形成を伴って製造されたポリマーであって、且つ重合性不飽和基を含むポリマーであることが好ましい。ここで言う化学結合及び重合性不飽和基の種類に制限はないが、化学結合としては、ウレタン結合が好ましく、重合性不飽和基としては、二重結合が好ましい。重合性不飽和基を有すると、印刷原版などを製造するに際し、様々な分子と連結するのに好都合である。
より具体的な樹脂組成物は、ポリカーボネートジオールの末端水酸基と、当該ポリカーボネートジオールの末端水酸基の当量未満のイソシアネート基当量の多官能イソシアネート化合物及び/又はポリイソシアネート化合物と、イソシアネートアルキルアクリレート及び/又はイソシアネートアルキルメタクリレートと反応させることにより製造されたポリマー、及び/又は、前記ポリカーボネートジオールの末端水酸基と、当該ポリカーボネートジオールの末端水酸基の当量を超えるイソシアネート基当量の多官能イソシアネート化合物及び/又はポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシアルキルアクリレート及び/又はヒドロキシアルキルメタアクリレートとを反応させることにより製造されるポリマーであることが好ましい。
本発明で用いる多官能イソシアネート化合物及び/又はポリイソシアネート化合物としては、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物であれば特に制限は無いが、例えば、ジイソシアネート化合物を例示すると、芳香族ジイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネートなど;脂肪族又は脂環式ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネートなどが挙げられ、トリイソシアネート化合物例示すると、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリ(イソシアネートフェニル)トリホスフェートなどが挙げられる。さらに多官能ポリイソシアネートとしては、ポリメリック(ジフェニルメタンジイソシアネート)などが挙げられるが、耐溶剤性の観点から、ジイソシアネート化合物が好ましく、芳香族ジイソシアネートがより好ましく、トリレンジイソシアネートが最も好ましい。
また、樹脂組成物は、さらに重合性不飽和基を有する数平均分子量が5,000未満である有機化合物を含有することが好ましい。
ここで言う重合性不飽和基とは、ラジカル重合または付加反応に関与する不飽和基を意味する。ラジカル重合反応に関与する重合成不飽和基としては、アクリル基、メタクリル基が好ましく、付加反応に関与する重合性不飽和基としては、エポキシ基、オキセタン基、ビニルエーテル基などが好ましい。
該有機化合物の具体例としては、例えば、エチレン、プロピレン、スチレン、ジビニルベンゼンなどのオレフィン類;(メタ)アクリル酸及びその誘導体;ハロオレフィン類、アクリルニトリルなどの不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミド及びその誘導体;アリルアルコール、アリルイソシアネートなどのアリル化合物;無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸などの不飽和ジカルボン酸およびその誘導体;酢酸ビニル類;N−ビニルピロリドン;N−ビニルカルバゾールなどが挙げられるが、(メタ)アクリル酸又はその誘導体が好ましい。誘導体の例としては、シクロアルキル−、ビシクロアルキル−、シクロアルケン−、ビシクロアルケン−などの脂環式の骨格を有する化合物;ベンジル−、フェニル−、フェノキシ−、フルオレン−などの芳香族の骨格を有する化合物;アルキル−、ハロゲン化アルキル−、アルコキシアルキル−、ヒドロキシアルキル−、アミノアルキル−、テトラヒドロフルフリル−、アリル−、グリシジリル−、アルキレングリコール−、ポリオキシアルキレングリコール−、(アルキル/アリルオキシ)ポリアルキレングリコールやトリメチロールプロパンなどの多価アルコールのエステルなどが挙げられる。また、窒素、硫黄などをヘテロ原子として含有した複素芳香族化合物であってもかまわない。該有機化合物は、目的に応じて1種または2種以上を併用して用いることが出来る。
例えば、印刷版用の樹脂組成物においては、印刷インクの溶剤であるアルコールやエステルなどの有機溶剤による膨潤を抑えるために、該有機化合物が長鎖脂肪族、脂環式または芳香族の骨格を有する化合物を含むことが好ましい。また、特に硬さを必要とする用途においては、該有機化合物として、開環付加反応するエポキシ基を有する化合物を用いることが好ましい。開環付加反応するエポキシ基を有する化合物としては、種々のジオールやトリオールなどのポリオールにエピクロルヒドリンを反応させて得られる化合物、分子中のエチレン結合に過酸を反応させて得られるエポキシ化合物などを挙げることができる。
具体的には、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSプロピレンオキサイドジグリシジルエーテル、水添化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAにエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドが付加した化合物のジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリ(プロピレングリコールアジペート)ジオールジグリシジルエーテル、ポリ(エチレングリコールアジペート)ジオールジグリシジルエーテル、ポリ(カプロラクトン)ジオールジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、1−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−1’−メチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、アジピン酸ビス[1−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシル]エステル、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ポリブタジエンやポリイソプレンなどのポリジエンに過酢酸を反応させて得られるポリエポキシ化合物、エポキシ化大豆油などをあげる事が出来る。
本発明においては、該有機化合物の少なくとも20wt%、より好ましくは50〜100wt%が脂環式官能基および芳香族官能基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する化合物であることが好ましい。脂環式官能基及び/又は芳香族官能基を有する該有機化合物を用いることで、樹脂組成物の機械的強度及び耐溶剤性をより向上させることができる。
該有機化合物の有する脂環式官能基としては、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、シクロアルケン骨格およびビシクロアルケンなどが挙げられ、脂環式官能基を有する該有機化合物としては、シクロヘキシルメタクリレートなどが挙げられる。
該有機化合物の有する芳香族官能基としては、ベンジル基、フェニル基、フェノキシ基、フルオレン基などが挙げられ、芳香族官能基を有する該有機化合物としては、ベンジルメタクリレートやフェノキシエチルメタクリレートなどが挙げられる。
芳香族官能基を有する該有機化合物は、窒素、硫黄などをヘテロ原子として含有する芳香族化合物であってもかまわない。更に、印刷版の反発弾性を高めるためには、印刷版用感光性樹脂に関する公知の技術知見(例えば、特開平7−239548号公報などに記載されているメタクリレートモノマーなど)を利用して該有機化合物を適宜選択することが出来る。
前記樹脂組成物は、それを印刷原版にした場合、各種溶剤に対する優れた耐久性に加え、レーザーで直接レリーフ画像を形成する手法において重要な特性である、レーザー彫刻性に優れるという特徴を併せ持つが、レーザー彫刻性をより向上させるためには、更に無機系微粒子(d)を含有することが好ましい。該無機系微粒子(d)の材質、形態などに制限は無いが、粒子中に微小細孔または微小な空隙を有するものが好ましい。該無機系微粒子(d)は、本発明の樹脂組成物を印刷原版にした場合において、当該原版がレーザーによって分解されて発生する液状ガスを効果的に吸収除去する働きがあり、樹脂組成物に該無機系微粒子(d)を含有させることにより、レーザー彫刻によるレリーフ画像の精度が向上するのみならず、レーザー彫刻後の洗浄操作が極めて簡便になる。
該無機系微粒子(d)の大きさには制限はないが、数平均粒子径が0.01〜100μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜20μmであり、更に好ましくは1〜10μmである。該無機系微粒子(d)の平均細孔径に制限はないが、1〜1,000nmであり、より好ましくは2〜200nmであり、更に好ましくは2〜50nmである。該無機系微粒子(d)の細孔容積に制限は無いが、0.01〜10ml/gが好ましく、より好ましくは0.1〜5ml/gである。該無機系微粒子(d)の比表面積に制限は無いが、1〜1,500m2/gが好ましく、より好ましくは10〜800m2/gである。
該無機系微粒子(d)の形状に制限はなく、球状、扁平状、針状、無定形、あるいは表面に突起のある粒子などを使用することが出来る。また、粒子の内部が空洞になっている粒子、シリカスポンジなどの均一な細孔径を有する球状顆粒体なども使用することが出来る。例えば、多孔質シリカ、メソポーラスシリカ、シリカ−ジルコニア多孔質ゲル、メソポーラスモレキュラーシーブ、ポーラスアルミナ、多孔質ガラスなどを用いることが出来る。また、層状粘土化合物などのように、層間に数nm〜100nmの空隙が存在するものも該無機系微粒子として用いることが出来る。
本発明に係る樹脂組成物は、光重合開始剤を含有することが好ましい。該光重合開始剤は公知のものから適宜選択すればよく、例えば、高分子学会編「高分子データ・ハンドブック−基礎編」(1986年、培風館発行)に例示されているラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合の開始剤などを使用することが出来る。
本発明においては、光重合開始剤を用いて光重合により樹脂組成物の架橋を行うことは、貯蔵安定性を保ちながら、生産性よく印刷原版を生産する方法として有用である。
該光重合開始剤として使用することの出来る公知の重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類;2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、4’−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノンなどのアセトフェノン類;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、フェニルグリオキシル酸メチル、ベンゾフェノン、ベンジル、ジアセチル、ジフェニルスルフィド、エオシン、チオニン、アントラキノン類などの光ラジカル重合開始剤;光を吸収して酸を発生する芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩などの光カチオン重合開始剤;光を吸収して塩基を発生する重合開始剤などを例示することが出来る。
樹脂組成物の組成に制限は無いが、ポリカーボネートジオ―ルから製造されたポリマー(c)100重量部に対して、無機系微粒子(d)は1〜100重量部、重合性不飽和基を有する有機化合物は5〜200重量部、光重合開始剤は1〜100重量部であることが好ましい。
その他、樹脂組成物には、用途や目的に応じて重合禁止剤、紫外線吸収剤、染料、滑剤、界面活性剤、可塑剤、香料などを、添加することが出来る。その添加量は樹脂組成物に対して10重量%以下の範囲で添加することが好ましい。
樹脂組成物をシートあるいは円筒状に成形する方法に制限は無く、既存の樹脂の成形方法を用いることが出来る。例えば、ポンプや押し出し機などの機械で樹脂をノズルやダイスから押し出し、ブレードで厚みを合わせる方法(注型法);ロールによりカレンダー加工して厚みを合わせる方法などが例示できる。樹脂の性能を落とさない範囲で加熱しながら成形を行うことも可能である。また、必要に応じて圧延処理、研削処理などを施してもよい。通常は、PET(ポリエチレンテレフタレート)やニッケルなどの素材からなるバックフィルムと言われる下敷きの上に樹脂組成物を成形するが、印刷機のシリンダー上に直接成形することも出来る。その場合、継ぎ目の無いシームレススリーブを成形することが出来る。また、スリーブ成形・彫刻装置(液状の感光性樹脂組成物を円筒状支持体上に塗布し、光を照射して液状感光性樹脂組成物を架橋させる装置内に、レーザー彫刻用のレーザー光源を組み込んだもの)を用いて印刷版を成形することも出来る。このような装置を用いた場合、スリーブを成形した後に直ちにレーザー彫刻して印刷版を成形することが出来るので、成形加工に数週間の期間を必要としていた従来のゴムスリーブでは到底考えられない短時間加工が実現可能となる。
本発明において、有機発光層は、被印刷基板上に溶液化された有機EL材料を吐出配置することにより形成される。溶液化された有機EL材料(有機発光インク)は、特に制限されるものではなく、有機EL材料とバインダー成分、溶剤、その他必要に応じて添加される各種添加剤よりなるものを用いることができる。
有機EL材料としては、例えば、低分子型の有機EL材料と高分子型の有機EL材料に分けられるが、低分子型の有機EL材料は蒸着法といった真空プロセスによって形成されることが多く、形成された薄膜に微細パターンをパターニングするが、この方法では基板が大型化すればするほどパターニング精度が出難いという問題がある。また、真空中で成膜するためにスループットが悪いという問題もある。そこで、最近では高分子材料を溶剤にとかして塗工液にし、これをウエットコーティング法で薄膜形成する方法が試みられている。従って、本発明では高分子型の有機EL材料が好ましく用いられる。例えば、クマリン系、ペリレン系、ピラン系、アンスロン系、ポリフィレン系、キナクリドン系、N、N‘−ジアルキル置換キナクリドン系、ナフタルイミド系、N,N’−ジアリール置換ピロロピロール系、イリジウム錯体系等の発光性色素をポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾール等の高分子中に分散させたものや、ポリアリーレン系、ポリアリーレンビニリレン系やポリフルオレンといった高分子材料などが挙げられる。
また、溶剤としては、トルエン、キシレン、アセトン、アニソール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等の単独又はこれらの混合溶媒が挙げられる。中でも、トルエン、キシレン、アニソールといった芳香族有機溶剤が有機EL材料の溶解性の面から好適である。
なお、本発明の有機発光インクには、印刷品位、生産性、チキソトロピー性などの向上のために、必要に応じて、前記の有機EL材料、バインダー樹脂成分及び溶剤以外に、添加剤が含まれていてもよい。
溶剤系有機発光インク中の溶剤は、溶剤系有機発光インク中のポリマー成分の溶解性や印刷工程中での乾燥性などにより決定され、芳香族系溶剤の中から選ばれる少なくとも1種類の溶剤成分を、溶剤全体量の20wt%以上100wt%以下含有していることが好ましい。前記溶剤成分の含有量が20wt%以上100wt%以下であれば、有機発光インク用途で用いられる有機発光材料を十分に溶解あるいは分散することができる。
本発明で用いるインクが紫外線硬化型である場合、バインダー樹脂成分としては、ラジカル重合性の化合物に、紫外線照射により活性カチオン種を発生しうるカチオン重合開始剤を配合したものが、好適に用いられる。
溶液化された有機EL材料を吐出配置する方法としてはインクジェット法が挙げられる。
本発明の有機EL装置は、有機EL材料を吐出配置する工程の前に、前述のフレキソ印刷版により、被印刷基板上に所定のパターンの隔壁が形成されることが好ましい。
本発明の隔壁形成用材料としては、例えば、ノボラック系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリ6フッ化プロピレン、ポリ4フッ化エチレン、ポリ3フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリブタジエン、ポリスチレン、フッ素化ポリスチレン、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸メチル、パーフロロオクチルエチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリクロロプレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、6ナイロン、6−6ナイロン、7−7ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンアジパミドなどの有機材料やサイロライト、サイロホービック(富士シリシア化学社製)などの無機材料や、これら有機材料、無機材料をポジ型レジスト、ネガ型レジスト中に分散したもの等を使用することが出来る。ポリイミド系樹脂は、例えば、前駆体としてのポリアミック酸を加熱閉環イミド化することによって形成される。
隔壁形成用材料用溶剤としては、前記隔壁形成用の樹脂を溶解させるものであれば特に制限されないが、具体的には、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチロルピロリドンなどのアミド系溶剤、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトンなどのラクトン系極性溶剤、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホアミド、トルエン、キシレン、THFなどが挙げられる。
また、隔壁表面は撥液性を付与するため、有機EL層(例えば電荷注入層及び/または発光層)形成用液相に対し表面自由エネルギーが小さくなるようにする必要がある。このように隔壁表面に撥液性を付与する手法としては、撥液性を有しない有機系材料からなる隔壁形成材を用いて隔壁を形成した後、CF4(テトラフルオロメタン)やCHF3(トリフルオルメタン)等のフッ素系ガスを使用したプラズマ処理を行う方法がある。なお、隔壁形成用材料にフッ素やシリコン系添加物が含有されているため撥液性を有している場合には、上記処理を省略することができる。
本発明のフレキソ印刷版の隔壁形成用材料用溶剤に対する耐溶剤性は、溶剤浸漬膨潤テストにて評価し、前記溶剤への浸漬前後の膨潤率が50wt%以下であることが好ましく、30wt%以下であることがより好ましい。
本発明における溶剤浸漬膨潤テストは、テストサンプルを室温において24時間、溶剤に浸漬して実施される。膨潤率が50wt%以下であれば、フレキソ印刷版の寸法変化が小さく、微細なパターンの印刷や、薄膜の均一塗布も可能となるだけではなく、印刷版の寸法安定性を確保でき、印刷版の耐久性も良好となり、繰り返しの印刷工程に耐えることが出来る。
隔壁の膜厚は、0.5〜5μmほどであるが、1〜3μmの程度であることが好ましい。また、隔壁の形状は、小判型、円形、楕円形、矩形またはストライプなど、パターニングのために必要な形状であればどのような形状であってもよい。
本発明における正孔注入層、正孔輸送層に用いる正孔注入輸送材料としては、PEDOT/PSS(ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸)や、ポリアニリン、ポルフィン化合物、TPD,m−MTDATA,NPD、銅フタロシアニン、ポリビニルカルバゾール、カーボンなど正孔注入輸送能を有するものであればよい。
次に、本発明における有機EL表示装置およびその製造方法の一例を示す。有機発光層を形成するための被印刷基板は、基板の上に透明電極が形成されており、その上にフレキソ印刷版により隔壁を形成し、隔壁で囲まれた画素単位に高分子の正孔輸送層が形成されている。なお、基板は本発明のシリコーン系ガラスクロス複合体シートを用い、透明電極としてはインジウム−錫酸化物(ITO)膜を使用する。正孔輸送層としては,3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)を含有するコーティング液を用いた。透明電極の形成方法、正孔輸送層の形成方法はとしては各種形成方法が用いられるが、ここでは、透明電極の形成方法としてはスパッタ法、正孔輸送層の形成方法としてはインクジェット法を用いた。このようにして得られた透明電極および正孔輸送層が形成された基板上にインクジェット法により有機発光層を形成する。更にその上に蒸着法により、金属膜からなるAl等の陰極をパターン形成する。これらの有機EL素子は、ガラスキャップで密閉封止され、有機EL表示装置となる。
本発明を更に詳細に説明するために、以下に、実施例及び比較例を示すが、これらの実施例は本発明の説明及びそれによって得られる効果などを具体的に示すものであって、本発明の範囲をなんら限定するものではない。なお、以下の実施例及び比較例における諸特性は、下記の方法に従って測定した。
<測定方法>
1.29Si−NMRによるシリコーン系成分(a−1)中における構造組成(T2/T3)の定量方法
所定量の試料を重水素化クロロホルムに溶解する。該溶解液にクロムアセチルアセトナ−ト:Cr(acac)を試料に添加して溶解した溶液に、テトラメチルシラン(TMS)を更に添加してNMR測定溶液とする。該NMR測定溶液を用いて、プロトン完全デカップル条件における29Si−NMRの測定を積算回数10,000回(装置:日本分光社製α−400)にて行いスペクトルを得た。測定の結果得られたピークの面積をもとに、T2/T3比は、T2/T3比=(T2構造のピーク面積)/(T3構造のピーク面積)として求めた。
2.エポキシ化率の測定方法
エポキシ樹脂をベンジルアルコールとn−プロパノールで溶解する。この溶液にヨウ化カリウム水溶液を添加し、塩化水素(HCl)によってエポキシ基を開環させる。消費したHClの滴定量から下記の計算式からエポキシ化率が計算される。
Figure 2010027258
計算式:
エポキシ化率 = (106×W)/(U×N×F) (g/eq)
ここで、 W:試料の重量(g)
U:滴定量(ml)重量(g)
N:滴定に使用したHClのmol/m3
F:滴定に使用したHClのファクター
3.X線小角散乱法(SAXS)を用いた相分離構造サイズの測定
X線小角散乱測定装置は概略、小角分解能を達成するためのブロックコリメーター光学系、空気散乱を排除する全真空チャンバー、及び検出器にダイレクトビーム位置とサンプル透過後のビーム強度を同時に測定する半透過ビームストッパーなどから一般的には構成されるが、測定対象物およびその性状、測定対象スケールなどによって適宜選択される。
(測定データの扱い)
測定対象とするサンプルに対してX線が散乱した強度Fは存在する電子密度全てを積分することにより得られる。:(数1)
Figure 2010027258
ここでqはθを散乱角度とすると散乱ベクトルq=4πsin(θ/2)λであり、rは実空間での距離、粒子などに相分離領域部分の密度をδρ、平均密度ρaveとする。サンプルを充填、あるいは支持するキャピラリー、溶媒などX線を散乱する媒体となりうるため、あらかじめそれらをブランクとして測定し、吸収補正を行った後に散乱強度から差し引くことが必要である。(前式における右辺第一項を差し引くことに相当する)。例えば、サンプル濃度が1重量%以下という希薄な系では、サンプルの相分離間相互作用は考えてなくて良くあたかも相分離成分のみが真空中に分散している状態とみなすことができるため、理想的な散乱プロファイルと比較し相分離構造(形状)に対しての議論が可能である。
(データの解析方法 〜ギニエの法則)
本方法を用いると相分離構造の大きさを推定することが出来る。散乱体内部の密度均一性と形状(球体、ロッド状、板状など)及び相分離構造が単分散であるなどの仮定のもとに、得られたデータ(散乱プロファイル)の低角度部分に対する線形直線近似を行う。先に示した計算によって得られた散乱プロファイルに対してこの方法を適応すると近似された直線が得られ、その傾きから慣性半径(Rg)が計算される。実空間距離(r)と慣性半径(Rg)との間には相分離構造が球体であると仮定した場合には下記の関係式が成り立つ。
r = Rg×√(5/3)
4.重量平均分子量の測定
東ソー製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)HLC−8220を用いて、ポリスチレン換算により測定した。
5.屈折率の測定
アタゴ社製アッベ屈折率計DR−M2を用いて、23℃で波長589nmの屈折率を測定した。
6.熱的機械的特性測定
レオメトリック社製RSAIIを用いて、1分間に5℃の割合で30℃から300℃まで温度を上昇させ、サンプルの貯蔵弾性率E’を測定した。チャック間の距離は10mm、サンプル幅2mm、荷重10gにし引っ張りモードで測定した。
また、下記式に従い50℃と300℃との間での平均のサンプル長さの変化率△Lを平均線膨張係数とした。
△L=(L300−L50)/L50/(300−50)
なお、50℃でのサンプル長をL50、300℃でのサンプル長をL300とする。
7.ポリカーボネートジオールのOH価
無水酢酸12.5gをピリジン50mlでメスアップしアセチル化試薬を調製した。100mlナスフラスコに、サンプルを1.0g精秤した。アセチル化試薬2mlとトルエン4mlをホールピペットで添加後、冷却管を取り付けて、100℃で1時間撹拌加熱した。蒸留水1mlをホールピペットで添加、さらに10分間加熱撹拌した。
2〜3分間冷却後、エタノールを5ml添加し、指示薬として1%フェノールフタレイン/エタノール溶液を2〜3滴入れた後に、0.5mol/lエタノール性水酸化カリウムで滴定した。
空試験としてアセチル化試薬2ml、トルエン4ml、蒸留水1mlを100mlナスフラスコに入れ、10分間加熱撹拌した後、同様に滴定を行った。この結果をもとに、下記数式(i)を用いてOH価を計算した。
OH価(mg−KOH/g)={(b−a)×28.05×f}/e (i)
a:サンプルの滴定量(ml)
b:空試験の滴定量(ml)
e:サンプル重量(g)
f:滴定液のファクター
8.ポリカーボネートジオールの分子量
実施例、比較例中のポリカーボネートジオールの末端は、13C−NMR(270MHz)の測定により、実質的に全てがヒドロキシル基であった。また、ポリカーボネートジオール中の酸価をKOHによる滴定により測定したところ、実施例、比較例の全てが0.01以下であった。
そこで、得られたポリマーの数平均分子量を下式(ii)により求めた。
数平均分子量Mn=2/(OH価×10‐3/56.11) (ii)
9.ポリカーボネートジオールの共重合組成
本発明のポリカーボネートジオールの共重合組成は、以下のように測定した。
100mlのナスフラスコにサンプルを1g取り、エタノール30g、水酸化カリウム4gを入れて、100℃で1時間反応した。室温まで冷却後、指示薬として1%フェノールフタレイン/エタノール溶液を2〜3滴添加し、塩酸で中和した。冷蔵庫で1時間冷却後、沈殿した塩を濾過で除去し、ガスクロマトグラフィーにより分析を行った。ガスクロマトグラフィー分析は、カラムとしてDB−WAX(J&W製)をつけたガスクロマトグラフィーGC−14B(島津製作所製)を用い、ジエチレングリコールジエチルエステルを内標として、検出器をFIDとして行った。なお、カラムの昇温プロファイルは、60℃で5分保持した後、10℃/minで250℃まで昇温した。
10.印刷原版の膨潤率
溶剤に対する膨潤率については、印刷原版を1cm×2cmに切り、常温の各溶剤中に24hr浸漬させ、以下の式を用いて膨潤率を求めた。
膨潤率(%)={(浸漬後の重量−浸漬前の重量)/浸漬前の重量}×100(iii)
11.印刷原版のレーザー彫刻性
炭酸ガスレーザー彫刻機(出力12ワット、商標Laser Pro Venus、GCC社製)を用いて印刷原版のレーザー彫刻を行った。彫刻は、200μm幅の凸線による線画を含むパターンを作成して実施した。彫刻深さは0.7mmとした。レーザー彫刻による粘稠性液状カス発生の有無及び線画の鮮明性を目視判定した。
〔製造例1〕
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン50.0gと水11.44gとジブチル錫ジラウリレート0.535gとテトラハイドロフラン25.0gを200mlの2口フラスコに仕込み、80℃にて5時間反応させた。反応終了後、80℃1時間、減圧下で溶媒を除去することにより反応性官能基を有するケイ素化合物(以下SR−1とする)37.9gを得た。得られた化合物について、29Si−NMR測定によって得られた直鎖構造(T2)と分岐構造(T3)との構造組成率(T2/T3)は58/42であった。またゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって得られた重量平均分子量(Mw)は1300であり、エポキシ化率測定方法によって得られたエポキシ化率は188であった。
前記SR−1の0.96gと水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製エピクロンEXA−7015:前記化学式(10)において、Z=グリシドプロピル基)0.96gを室温で混合し、さらに4,4’−ジアミノジフェニルメタン(和光純薬工業株式会社製)0.48gを室温で素早く混合することによって得られた混合溶液(以下、RW−1)を、厚さ200μmのスペーサー内に挟み、プレス機内で圧力5MPaに維持しながら温度150℃で1時間、さらに温度200℃で1時間かけて熱硬化することによってシリコーン系硬化体を得た。得られたシリコーン系硬化体は、厚さ200μmで、屈折率は1.524であり、透明であった。
得られたシリコーン系硬化体のX線小角散乱法(SAXS)によって測定される散乱プロファイルのギニエ(Guiner)プロットによって求められる相分離構造のサイズRg(平均値)は3nmであった。
また、このシリコーン系硬化体の動的粘弾性を測定したところ、35℃での貯蔵弾性率E0'.35は1.36×109N/m2であり、290℃での貯蔵弾性率E0 ' .290は3.49×108N/m2であった。両温度における貯蔵弾性率の比率はE0'.35/E0 ' .290=3.9であった。
次に、得られたケイ素化合物とエポキシ樹脂と硬化剤の混合液(RW−1)を、Tガラス系ガラスクロス(日東紡製、ガラス繊維径:5μm、集束数:200本を、織密度:縦60本/25mm、横46本/25mmで平織りした厚さ100μm、開繊処理およびカチオン系シランカップリング処理したもの、屈折率1.520)に含浸し、プレス機内で圧力5MPaに維持しながら温度150℃で1時間、さらに温度200℃で1時間かけて熱硬化することによってシリコーン系ガラスクロス複合体シートIを得た。得られたシリコーン系ガラスクロス複合体シートは、厚さ100μmで、屈折率は1.524であり、透明であった。
また、このシリコーン系ガラスクロス複合体シートの動的粘弾性を測定したところ、35℃での貯蔵弾性率E1'.35は4.73×109N/m2であり、290℃での貯蔵弾性率E1'.290は17×109N/m2であった。両温度における貯蔵弾性率の比率はE1'.35/E1'.290=1.13であった。また、熱的機械的特性測定装置によって得られる熱膨張率から計算される平均線膨張係数は18ppm/Kであった。
〔製造例2〕
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン30.0gとフェニルメトキシシラン25.2gと水13.7gとギ酸2.34gとトルエン27.6gを200mlの2口フラスコに仕込み、80℃にて3時間反応させた。反応終了後、80℃で1時間、減圧下で溶媒を除去することにより反応性官能基含有ケイ素化合物(以下、SR−2とする)41.5gを得た。得られた化合物について、29Si−NMR測定によって得られた直鎖構造(T2)と分岐構造(T3)との構造組成率(T2/T3)は60.5/39.5であった。またゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって得られた重量平均分子量(Mw)は3,000であり、エポキシ化率測定方法によって得られたエポキシ化率は408であった。
前記SR−2の0.58gとビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製エピコート828、分子量約370)1.36gを室温で混合し、さらに4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン(和光純薬工業株式会社製)0.46gを室温で素早く混合することによって得られた混合溶液(以下、RW−2)を、厚さ200μmのスペーサー内に挟み込み、プレス機内で圧力5MPaに維持しながら温度150℃で1時間、さらに温度200℃で1時間かけて熱硬化することによってシリコーン系硬化体を得た。得られたシリコーン系硬化体は、厚さ200μmで、屈折率は1.563であり、透明であった。
得られたシリコーン系硬化体のX線小角散乱法(SAXS)によって測定される散乱プロファイルのギニエ(Guiner)プロットによって求められる相分離構造のサイズRg(平均値)は3nmであった。
また、このシリコーン系硬化体の動的粘弾性を測定したところ、35℃での貯蔵弾性率E0'.35は1.53×109N/m2であり、290℃での貯蔵弾性率E0 ' .290は3.27×108N/m2であった。両温度における貯蔵弾性率の比率はE0'.35/E0 ' .290=4.66であった。
次に、得られたケイ素化合物とエポキシ樹脂と硬化剤の混合液(RW−2)を、Eガラス系ガラスクロス(日東紡製、屈折率1.560)に含浸し、プレス機内で圧力5MPaに維持しながら温度150℃で1時間、さらに温度200℃で1時間かけて熱硬化することによってシリコーン系ガラスクロス複合体シートIIを得た。得られたシリコーン系ガラスクロス複合体シートは、厚さ100μmで、屈折率は1.563であり、透明であった。
また、このシリコーン系ガラスクロス複合体シートの動的粘弾性を測定したところ、35℃での貯蔵弾性率E1'.35は5.37×109N/m2であり、290℃での貯蔵弾性率E1'.290は4.17×109N/m2であった。両温度における貯蔵弾性率の比率はE1'.35/E1'.290=1.29であった。また、熱的機械的特性測定装置によって得られる熱膨張率から計算される平均線膨張係数は25ppm/Kであった。
〔製造例3〕
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン30.0gとフェニルメトキシシラン32.7gと水13.7gとギ酸3.14gとテトラヒドロフラン30gを300mlの2口フラスコに仕込み、70℃のオイルバスにて還流し3時間反応させた。反応終了後、減圧下で濃縮して反応性官能基を有するケイ素化合物(以下、SR−3とする)のテトラヒドロフラン溶液53.9gを得た。得られた化合物について、29Si−NMR測定によって得られた直鎖構造(T2)と分岐構造(T3)との構造組成率(T2/T3)は66/34であった。またゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって得られた重量平均分子量(Mw)は1,800であり、エポキシ化率測定方法によって得られたエポキシ化率は401であった。
前記SR−3のテトラヒドロフラン溶液の1.50gと水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製エピクロンEXA−7015)1.20gを室温で混合し、さらにカチオン重合触媒2−ブテニル−1、4−ブテン−スルフォニウムヘキサフルオロアンチマト(旭電化工業株式会社製アデカオプトンCP−66)1.32gを室温で素早く混合することによって得られた混合溶液(以下、RW−3)を、厚さ200μmのスペーサー内に挟み込み、100℃の乾燥機内で2時間乾燥した。その後、プレス機内で圧力5MPaに維持しながら温度150℃で1時間、さらに温度200℃で1時間かけて熱硬化することによってシリコーン系硬化体を得た。得られたシリコーン系硬化性樹脂硬化物は、厚さ200μmで、屈折率は1.522であり、透明であった。
得られたシリコーン系硬化体のX線小角散乱法(SAXS)によって測定される散乱プロファイルのギニエ(Guiner)プロットによって求められる相分離構造のサイズRg(平均値)は7nmであった。
また、このシリコーン系硬化体の動的粘弾性を測定したところ、35℃での貯蔵弾性率E0'.35は1.18×109N/m2であり、290℃での貯蔵弾性率E0 ' .290は1.26×108N/m2であった。両温度における貯蔵弾性率の比率はE0'.35/E0 ' .290=5.4であった。
次に、得られたケイ素化合物とエポキシ樹脂と硬化剤の混合液(RW−3)を、厚さ100μmのTガラス系ガラスクロス(日東紡製、屈折率1.520)に含浸し、100℃の乾燥機内で2時間乾燥した。その後、プレス機内で圧力5MPaに維持しながら温度150℃で1時間、さらに温度200℃で1時間かけて熱硬化することによってシリコーン系ガラスクロス複合体シートIIIを得た。得られたシリコーン系ガラスクロス複合体シートは、厚さ100μmで、屈折率は1.522であり、透明であった。
また、このシリコーン系ガラスクロス複合体シートの動的粘弾性を測定したところ、35℃での貯蔵弾性率E1'.35は6.95×109N/m2であり、290℃での貯蔵弾性率E1'.290は3.71×108N/m2であった。両温度における貯蔵弾性率の比率はE1'.35/E1'.290=1.9であった。また、熱的機械的特性測定装置によって得られる熱膨張率から計算される平均線膨張係数は13ppm/Kであった。
〔比較製造例1〕
水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製エピクロンEXA−7015)1.92gを室温で混合し、さらに4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン(和光純薬工業株式会社製)0.48gを室温で素早く混合することによって得られた混合溶液(以下、RW−4)を、厚さ200μmのスペーサー内に挟み込み、プレス機内で圧力5MPaに維持しながら温度150℃で1時間、さらに温度200℃で1時間かけて熱硬化することによってエポキシ樹脂硬化物を得た。得られたエポキシ樹脂硬化物は、厚さ210μmで、屈折率は1.523であり、透明であった。
得られたエポキシ樹脂硬化物のX線小角散乱法(SAXS)によって測定される散乱プロファイルのギニエ(Guiner)プロットによって求められる相分離構造のサイズRg(平均値)は10nmであった。
また、このエポキシ樹脂硬化物の動的粘弾性を測定したところ、35℃での貯蔵弾性率E0'.35は1.95×109N/m2であり、290℃での貯蔵弾性率E0 ' .290は3.36×104N/m2であった。両温度における貯蔵弾性率の比率はE0'.35/E0 ' .290=5.8×104であった。
次に、得られたエポキシ樹脂と硬化剤の混合液(RW−4)を、厚さ100μmのTガラス系ガラスクロス(日東紡製、屈折率1.520)に含浸し、プレス機内で圧力5MPaに維持しながら温度150℃で1時間、さらに温度200℃で1時間かけて熱硬化することによってガラスクロス複合化エポキシ樹脂シートを得た。得られたガラスクロス複合化エポキシ樹脂シートは、製造例1〜3と比較して貯蔵弾性率の変化が大きいことは明らかである。また、熱的機械的特性測定装置によって得られる熱膨張率から計算される平均線膨張係数は159ppm/Kであった。
〔合成例1〕
分留頭を備えた300ml四口フラスコに、1,20−エイコサンジオール100g(0.32mol)、エチレンカーボネート30g(0.34mol)を仕込み、70℃で撹拌溶解し、系内を窒素置換した後、触媒としてテトラブトキシチタンを0.062gを加えた。このフラスコを、フラスコの内温が150〜155℃、圧力が7〜8kPaとなるように、分留頭から還流液の一部を抜き出しながら、オイルバスで加熱し、11時間反応した。その後、エチレンカーボネート30g(0.34mol)を追加し、フラスコの内温155℃、圧力6〜7kPaで7時間反応した後、圧力を0.2kPaまで落として、フラスコ内に残ったエチレンカーボネートを留去した。その後さらに、エチレンカーボネート30g(0.34mol)を追加し、同様にしてフラスコの内温155℃、圧力5〜6kPaで5時間反応した後、圧力を0.2kPaまで落として、フラスコ内に残ったエチレンカーボネートを留去した。この反応により、室温で固体のポリカーボネートジオールが102g得られた。得られたポリカーボネートジオールのOH価は45.3(数平均分子量Mn=2476)であった。
撹拌機を備えた300mlのセパラブルフラスコにこのポリカーボネートジオール65.1g、リン酸モノブチル0.03gを入れ、80℃で3時間撹拌することにより、テトラブトキシチタンを失活させた。その後、トリレンジイソシアネート3.18g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.08g、アジピン酸0.01g、ジ−n−ブチルスズジラウレート0.002gを加えて、乾燥空気雰囲気で80℃で3時間撹拌した。その後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート2.77g、ジ−n−ブチルスズジラウレート0.001gを加えて、乾燥空気雰囲気で80℃で2時間撹拌した。この段階で、ポリカーボネートジオールの末端水酸基がウレタン結合により連結され、且つ二重結合を有するポリマーが得られたことを、赤外分光分析により確認した。その後、エチレングリコールフェニルエーテルメタクリレート23.61g、ジエチレングリコールブチルエーテルメタクリレート7.08g、トリメチロールプロパントリメタクリレート0.12g、シリカゲルC−1504(富士シリシア化学株式会社)5.43g、シリコーンオイルKF−410(信越化学工業株式会社)1.12g、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン0.71g、ベンゾフェノン1.19g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.71g、リン酸トリフェニル2.13g、サノールLS−785(三共株式会社)1.20gを加えて80℃で撹拌しながら、13kPaに減圧して脱泡し、室温で固体状の感光性樹脂組成物を得た。
〔合成例2〕
合成例1のエチレングリコールフェニルエーテルメタクリレートをラウリルメタクリレートに変更し、以下に示すような樹脂組成物を得た。
撹拌機を備えた300mlのセパラブルフラスコに合成例1で得られたポリカーボネートジオール34.5g、リン酸モノブチル0.02gを入れ、80℃で3時間撹拌することにより、テトラブトキシチタンを失活させた。その後、トリレンジイソシアネート1.61g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.04g、アジピン酸0.01g、ジ−n−ブチルスズジラウレート0.001gを加えて、乾燥空気雰囲気で80℃で3時間撹拌した。その後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート1.44g、ジ−n−ブチルスズジラウレート0.001gを加えて、乾燥空気雰囲気で80℃で2時間撹拌した。この段階で、ポリカーボネートジオールの末端水酸基がウレタン結合により連結され、且つ二重結合を有するポリマーが得られたことを、赤外分光分析により確認した。その後、ラウリルメタクリレート12.54g、ジエチレングリコールブチルエーテルメタクリレート3.59g、トリメチロールプロパントリメタクリレート0.07g、シリカゲルC−1504(富士シリシア化学株式会社)2.90g、シリコーンオイルKF−410(信越化学工業株式会社)0.63g、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン0.38g、ベンゾフェノン0.63g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.38g、リン酸トリフェニル1.13g、サノールLS−785(三共株式会社)0.63gを加えて80℃で撹拌しながら、13kPaに減圧して脱泡し、室温で固体状の感光性樹脂組成物を得た。
〔合成例3〕
規則充填物ヘリパックパッキンNo.3を充填した、充填高さ300mm、内径30mmの蒸留塔、及び分留頭を備えた500ml四口フラスコに、ジエチレングリコール232.1g(2.19mol)、エチレンカーボネート202.6g(2.30mol)を仕込み、80℃で撹拌溶解し、系内を窒素置換した後、触媒としてテトラブトキシチタン0.033gを加えた。このフラスコを、フラスコの内温が139〜145℃、圧力が2〜3kPaとなるように、分留頭から還流液の一部を抜き出しながらオイルバスで加熱し、計23時間反応した。その後、充填式蒸留塔を外して、単蒸留装置に取り替え、フラスコの内温145℃、圧力を1.5kPaにして、フラスコ内に残った、ジエチレングリコール、エチレンカーボネートを1時間かけて留去した。その後、フラスコの内温145〜185℃、圧力0.08〜0.3kPaで、さらに7.5時間反応した。この反応により、室温で液体状のポリカーボネートジオールが128g得られた。得られたポリカーボネートジオールのOH価は45.0(平均数分子量Mn=2493)であった。
撹拌機を備えた300mlのセパラブルフラスコにこのポリカーボネートジオール50.2g、リン酸モノブチル0.009gを入れ、80℃で3時間撹拌することにより、テトラブトキシチタンを失活させた。その後、トリレンジイソシアネート2.36g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.05g、アジピン酸0.01g、ジ−n−ブチルスズジラウレート0.001gを加えて、乾燥空気雰囲気で80℃で3時間撹拌した。その後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート2.09g、ジ−n−ブチルスズジラウレート0.001gを加えて、乾燥空気雰囲気で80℃で2時間撹拌した。その後、エチレングリコールフェニルエーテルメタクリレート18.22g、ジエチレングリコールブチルエーテルメタクリレート5.47g、トリメチロールプロパントリメタクリレート0.09g、シリカゲルC−1504(富士シリシア化学株式会社)4.19g、シリコーンオイルKF−410(信越化学工業株式会社)0.91g、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン0.55g、ベンゾフェノン0.91g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.55g、リン酸トリフェニル1.64g、サノールLS−785(三共株式会社)0.91g、顔料GreenAG(日本化薬株式会社)0.006gを加えて80℃で撹拌しながら、13kPaに減圧して脱泡し、室温で固体状の感光性樹脂組成物を得た。
(印刷原版の作製)
合成例1〜3で得られた樹脂組成物の各々を用いて、下記の方法で印刷原版を作製した。
12×11×0.3cmのガラス板にジエチレングリコールを薄く塗布した後、PETフィルムを乗せ、ヘラでこすり密着させた。そのフィルム上に両面シールにより固定させたスポンジ枠で作成した1辺10cmの四角枠と、その枠外の四隅に厚さ3mmのアルミスペーサーを置いた。この作成した治具を約90℃のホットプレート上に置いた。
治具の枠内に上記各樹脂組成物を注いだ後、ジエチレングリコールを塗布しPETフィルムを乗せたガラス板を、PETフィルム面が樹脂組成物に接触するようにかぶせた。その後に上下のガラス板をクリップで挟み固定した。
この治具について高圧水銀灯(HC−98、センエンジニアリング株式会社)を用いて、500mJ/cm2(照度33.7mW/cm2、時間14.8秒)露光した後、治具面を逆にし、更に500mJ/cm2露光した。これを両面もう一度ずつ行い、トータルで2000mJ/cm2露光して印刷原版を作成した。この際のレーザー彫刻性を表1に示す。
〔実施例1〕
(隔壁形成用塗布液の調整)
光硬化型ポリイミド“フォトニース”UR−3100(東レ(株)製) 13重量部
ポリフッ化ビニリデン 7重量部
N−メチルピロリドン 80重量部
(有機感光層形成用塗布液の調整)
ポリビニルカルバゾール 70重量部
オキサジアゾール化合物 30重量部
クマリン6(*蛍光色素) 1重量部
これらをテトラリン(溶媒)に0.5重量%で溶解させ、インクジェット用の有機感光層形成用塗布液を調整した。
蛍光色素がクマリン6の場合には501nmをピークに持つ緑色発光、ペリレンの場合は460〜470nmをピークに持つ青色発光、DCMの場合は570nmをピークに持つ赤色発光が得られ、これらを各色の発光材料として用いた。
(基板の作製)
1.ガスバリア層の成膜
製造例1で得た厚さ100μmのシリコ−ン系ガラスクロス複合体シートIを、ヒーターによる加熱処理が可能な前処理室を有するスパッタロールコート装置に装填し、真空中230℃で10分の加熱とスパッタ成膜とを連続して行った。スパッタ成膜は、RFスパッタでTa25をターゲットとして用いてアンダーコート上に膜厚50nmのTaOx(xは1.5〜2.5)の成膜を行って、これをガスバリア層とした。
2.陽極の成膜
上記で得られたガスバリア層を成膜したシリコ−ン系ガラスクロス複合体シートの表面に、真空蒸着法によって厚さ0.1μmのITO膜(陽極)をEL素子の画素に合わせてパターニングして形成した後、UV−オゾン洗浄を施し、有機物などの付着物を除去した。
(隔壁層の形成)
合成例1の感光性樹脂組成物から得られた印刷原版1にレーザー彫刻によりパターンを描画した印刷版1を用いて、溶液化された隔壁形成材を用いた隔壁パターンの印刷を実施した。印刷には卓上型校正機(英国、KR社製、商標「Flexiploofer100」)を用い、版胴上に前記印刷版1を、両面テープを用いて貼り付けた。被印刷体としては、前記、バリア層、ITO膜を成膜したシリコ−ン系ガラスクロス複合体シートのITO膜側の表面に印刷版1を用いて隔壁形成用塗布液を印刷した後、80℃で30分間プリベークを行った。次にケミカル灯で200mJ/cm2硬化し、150℃で30分アフターベークして、3.5μm厚みの隔壁を形成した。隔壁のパターン精度は、ITO電極のパターンの上に精度良く乗っており良好であった。
(有機EL層の形成と評価)
前記隔壁を形成した基板を洗浄後、隔壁により囲まれた領域に、インクジェット法により正孔輸送材料として、ポリエチレンジオキシチオフェンを含有するコーティング液(ポリエチレンジオキシチオフェン−ポリスチレンスルフォネート(PEDT/PSS)、バイエル社製、商品名「Baytron P」)を吐出配置し、160℃で乾燥させることにより80nm厚みとなるように正孔輸送層を作製した。得られた該基板を用いて、インクジェット法により上記R,G,Bの有機感光層形成用液をPEDOT/PSS上の画素開口部に連続して吐出、加熱乾燥することにより有機EL発光層を3色併設形成した。乾燥後の膜厚が100nmとなるようにインクジェット装置を調整し、加熱温度は100℃とした。
この有機EL層についてパターン精度を評価したところ、有機EL層のパターン精度は、ITO電極のパターンの上に精度良く乗っており、極めて良好であった。
(有機EL表示装置の作製)
続いてMgAg合金(Mg:Ag=10:1)を厚さ150nmになるように蒸着し、その上に保護層としてAgを200nmの厚みになるように蒸着し、陰電極を形成した。今回はTFT基板を用いたアクティブマトリックス表示装置を作製したので、陰電極は全面形成とした。
最後に、別に用意したガラス板とUV硬化シール材により封止し、有機EL表示装置を完成させた。
(有機EL表示装置の評価)
こうして作製した有機EL表示装置に制御回路を接続して、映像信号を入力し駆動したところ、全画面で均一で極めて鮮やかなカラー表示を行うことができた。
(膨潤率の測定)
印刷原版1から作製した試験サンプルを、上記溶液化された隔壁形成材で用いたN−メチルピロリドン中に、20℃、24時間浸漬後、表面に付着した液滴をふき取り、重量増加量を測定することにより、前記膨潤率測定法により膨潤率を求めた。結果を表1に示す。
〔実施例2〕
製造例2で得たシリコーン系ガラスクロス複合体シートIIならびに合成例2の感光性樹脂組成物から得られた印刷原版2を用いた以外は、実施例1と同様にして、隔壁並びに有機EL層を形成し、そのパターン精度を評価した。その結果、隔壁のパターンも有機EL層のパターンも、ITO電極のパターンの上に精度良く乗っており、極めて良好であった。
さらに、実施例1と同様にして有機EL表示装置を作製し、制御回路を接続して、映像信号を入力し駆動したところ、全画面で均一で極めて鮮やかなカラー表示を行うことができた。
〔実施例3〕
製造例3で得たシリコーン系ガラスクロス複合体シートIIIを用いた以外は、実施例1と同様にして、隔壁ならびに有機EL層を形成し、そのパターン精度を評価した。その結果、隔壁のパターンも有機EL層のパターンも、ITO電極のパターンの上に精度良く乗っており、極めて良好であった。
さらに、実施例1と同様にして有機EL表示装置を作製し、制御回路を接続して、映像信号を入力し駆動したところ、全画面で均一で極めて鮮やかなカラー表示を行うことができた。
〔実施例4〕
合成例3の感光性樹脂組成物から得られた印刷原版3にレーザー彫刻によりパターンを描画した印刷版3を用いた以外は、実施例1と同様にして、隔壁を形成した。その結果、隔壁のパターンも有機EL層のパターンも、ITO電極のパターンの上に比較的精度良く乗っており、良好であった。
さらに、実施例1と同様にして有機EL表示装置を作製し、制御回路を接続して、映像信号を入力し駆動したところ、全画面で均一で鮮やかなカラー表示を行うことができた。
(膨潤率の測定)
印刷原版3から作製した試験サンプルを、上記隔壁形成用塗布液で用いたN−メチルピロリドン中に、20℃、24時間浸漬後、表面に付着した液滴をふき取り、重量増加量を測定することにより、前記膨潤率測定法により膨潤率を求めた。結果を表1に示す。
〔比較例1〕
比較製造例1で得た厚さ100μmのガラスクロス複合化エポキシ樹脂シートを、ヒーターによる加熱処理が可能な前処理室を有するスパッタロールコート装置に装填し、真空中230℃で10分の加熱とスパッタ成膜とを連続して行った。スパッタ成膜は、RFスパッタでTa25をターゲットとして用いてアンダーコート上に膜厚50nmのTaOx(xは1.5〜2.5)の成膜を行って、これをガスバリア層とした。
得られたガスバリア層塗布ガラスクロス複合化エポキシ樹脂シートは、収縮して、表面は波打ち、隔壁の印刷ならびに有機EL層の形成が出来ない状態であった。
Figure 2010027258
本発明により、有機EL表示装置の更なる大型化、薄型化、軽量化が可能となり、さらに生産効率が大幅に向上する。

Claims (6)

  1. 被印刷基板上に有機発光層を有する有機EL表示装置において、被印刷基板がシリコーン系硬化体(a)とガラスクロス(b)とが複合した構造を有するシリコーン系ガラスクロス複合体シートよりなり、フレキソ印刷版により前記被印刷基板上に所定パターンの隔壁を形成した後、該隔壁により囲まれた領域に溶液化された有機EL材料を吐出配置することにより有機発光層を形成したことを特徴とする有機EL表示装置。
  2. 前記シリコーン系ガラスクロス複合体シートが下記の(i)および(ii)の条件を満足することを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
    (i)前記シリコーン系硬化体(a)が、反応性官能基を有するケイ素化合物(a−1)と(a−1)以外のエポキシ基含有の有機化合物(a−2)との架橋硬化反応により得られるものである
    (ii)前記シリコーン系硬化体(a)の貯蔵弾性率の35℃〜290℃の温度範囲における動的粘弾性の温度依存性が以下の関係式を満足する
    0'.35/E0'.290≦8
    (ただし、
    0'.35:動的粘弾性測定(引張りモード)による35℃におけるシリコーン系硬化体の
    貯蔵弾性率
    0'.290:動的粘弾性測定(引張りモード)による290℃におけるシリコーン系硬化体
    の貯蔵弾性率)
  3. 前記フレキソ印刷版が、下記式(1)及び/又は式(2)で表される繰り返し単位からなり、両末端基が水酸基であり、かつ数平均分子量が300〜50,000であるポリカーボネートジオールを用いて製造されたポリマー(c)を含有する樹脂組成物であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機EL表示装置。
    Figure 2010027258
    (式中、R1は、各々独立して炭素数2〜50の直鎖及び/又は分岐した炭化水素基を表し、nは、2〜50の整数を表す。)
    Figure 2010027258
    (式中、R2は、各々独立して炭素数10〜50の直鎖及び/又は分岐した炭化水素基を表す。)
  4. 前記ポリマー(c)を含有する樹脂組成物が無機系微粒子(d)をさらに含有する請求項3に記載の有機EL表示装置。
  5. 前記フレキソ印刷版が、レーザー彫刻技術を用いてレリーフ画像を形成されたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の有機EL表示装置。
  6. 被印刷基材上に、有機発光層を有する有機EL表示装置の製造方法において、被印刷基板がシリコーン系硬化体(a)とガラスクロス(b)とが複合した構造を有するシリコーン系ガラスクロス複合体シートよりなり、フレキソ印刷版により、前記被印刷基板上に所定パターンの隔壁を形成した後、該隔壁により囲まれた領域に溶液化された有機EL材料を吐出配置する工程により有機発光層を形成することを特徴とする有機EL表示装置の製造方法。
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