JP2010026424A - 高分子フィルム、偏光板、及び液晶表示装置 - Google Patents

高分子フィルム、偏光板、及び液晶表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】光学補償フィルムとして有用な新規な高分子フィルム、ならびにそれを有する偏光板及び液晶表示装置の提供。
【解決手段】溶液製膜後に延伸処理されてなる高分子フィルムであって、該フィルムの屈折率異方性の波長依存性及び/又は屈折率異方性がフィルム表裏で異なることを特徴とする高分子フィルム、ならびにそれを有する偏光板及び液晶表示装置である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、液晶表示装置等の部材として有用な高分子フィルム、ならびにそれを用いた偏光板及び液晶表示装置に関する。
液晶表示装置は、消費電力の小さい省スペースの画像表示装置として年々その用途が広がっている。従来、画像の視野角依存性が大きいことが液晶表示装置の大きな欠点であった。しかし、VAモードやIPSモードによる高視野角液晶モードが実用化されており、これによってテレビ等の高品位の画像が要求される市場でも液晶表示装置の需要が急速に拡大しつつある。
これらのモードの液晶表示装置について、種々の光学補償機構が提案されている。
例えば、特許文献1には、二軸性の補償フィルムであって、面内レターデーションReについて逆分散性を示し、及び厚み方向のレターデーションRthについて順分散性を示す補償フィルムを用いるとVAモードの色味改良に有効であることが記載されている。しかしながら、レターデーションについて、逆分散性と順分散性という相反する性能を、一枚のフィルムで実現することは困難である。
また、特許文献2には、液晶表示装置、特にVAモードの液晶表示装置、の光学補償フィルムとして、ReとRthの比率Re/Rthが、フィルムの厚さ方向で変化している透明フィルムが提案されているが、フィルム表裏で屈折率異方性(Δn=nx−ny)が異なることを開示するものではなく、またその屈折率異方性の波長分散性については、なんら記載がない。
一方、膜厚方向に屈折率異方性を有する材料の濃度勾配を持たせる位相差フィルムが開示されている(特許文献3)。しかし、特許文献3は、位相差フィルムの偏光膜との接着性を向上させるために、屈折率異方性を有する材料に濃度勾配を持たせているのであって、そのことによる位相差フィルムの光学的な特徴に関する記載はない。
WO2004/068226号 特開2006−323152号 特開2006−221134号
本発明は、光学補償フィルムとして有用な新規な高分子フィルム、ならびにそれを有する偏光板及び液晶表示装置を提供することを課題とする。
また、本発明は、Re及びRthのみならず、フィルム表裏における屈折率異方性の波長分散性の差、及び/又はフィルム表裏における屈折率異方性の差を光学補償に利用する、新規な高分子フィルム及び偏光板、ならびにこれを有する液晶表示装置を提供することを課題とする。
また、本発明は、連続生産に適する、光学補償フィルムとして有用な新規な高分子フィルムを提供することを課題とする。
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 溶液製膜後に延伸処理されてなる高分子フィルムであって、該フィルムの屈折率異方性の波長依存性及び/又は屈折率異方性がフィルム表裏で異なることを特徴とする高分子フィルム。
[2] 膜厚方向に、屈折率異方性の波長分散性及び/又は屈折率異方性の勾配を持つことを特徴とする[1]の高分子フィルム。
[3] 波長430nm〜700nmの範囲において、長波長ほど面内レターデーション(Re)が大きい性質を有することを特徴とする[1]又は[2]の高分子フィルム。
[4] 一方のフィルム表面における屈折率異方性が、該フィルム膜厚方向中心点における屈折率異方性よりも大きいことを特徴とする[1]〜[3]のいずれかの高分子フィルム。
[5] 少なくとも一種類の、逆分散性材料を含有することを特徴とする[1]〜[4]のいずれかの高分子フィルム。
[6] 少なくとも一種の逆分散性材料と、少なくとも一種の順分散性材料とを含有することを特徴とする[1]〜[5]のいずれかの高分子フィルム。
[7] 少なくとも一種のセルロースアシレートを主成分として含むことを特徴とする[1]〜[6]のいずれかの高分子フィルム。
[8] 少なくとも二種類の置換基を有するセルロースアシレートを含むことを特徴とする[1]〜[7]のいずれかの高分子フィルム。
[9] 偏光膜と、該偏光膜の少なくとも一方の面上に、[1]〜[8]のいずれかの高分子フィルムを有することを特徴とする偏光板。
[10] 前記高分子フィルムが、少なくとも、屈折率異方性の波長依存性がフィルム表裏で異なる高分子フィルムであり、逆分散性が大きい方の面を偏光膜側にして配置されていることを特徴とする[9]の偏光板。
[11] [9]又は[10]の偏光板を少なくとも一枚含むことを特徴とした液晶表示装置。
[12] 垂直配向モードであることを特徴とした[11]の液晶表示装置。
[13] 水平配向モードであることを特徴とした[11]の液晶表示装置。
本発明によれば、光学補償フィルムとして有用な新規な高分子フィルム、ならびにそれを有する偏光板及び液晶表示装置を提供することができる。
また、本発明によれば、Re及びRthのみならず、フィルム表裏における屈折率異方性の波長分散性の差、及び/又はフィルム表裏における屈折率異方性の差を光学補償に利用する、新規な高分子フィルム及び偏光板、ならびにこれを有する液晶表示装置を提供することができる。
また、本発明によれば、連続生産に適する、光学補償フィルムとして有用な新規な高分子フィルムを提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
まず、本明細書で用いられる用語について、説明する。
(レターデーション、Re、Rth)
本明細書において、Re(λ)及びRth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーション(nm)及び厚さ方向のレターデーション(nm)を表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。
測定されるフィルムが1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(X)及び式(XI)よりRthを算出することもできる。
Figure 2010026424
注記:
上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。また、式中、nxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚を表す。
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:
セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
本発明において、位相差膜等の「遅相軸」は、屈折率が最大となる方向を意味する。また、「可視光領域」とは、380nm〜780nmのことをいう。さらに屈折率の測定波長は特別な記述がない限り、可視光域のλ=550nmでの値である。
また、本明細書において、位相差膜及び液晶層等の各部材の光学特性を示す数値、数値範囲、及び定性的な表現(例えば、「同等」、「等しい」等の表現)については、液晶表示装置やそれに用いられる部材について一般的に許容される誤差を含む数値、数値範囲及び性質を示していると解釈されるものとする。
また、フィルムのRe及びRthについて、順分散性とは、可視光域において、波長が短波長であるほど、その値が大きくなる性質をいい、及び逆分散性とは、可視光域において、波長が短波長であるほど、その値が小さくなる性質をいう。本明細書では、波長550nmにおける値と、波長450nmにおける値とで比較し、例えば、Reについては、Re(550)/Re(450)≧0.99を満足すれば順分散性とし、及びRe(550)/Re(450)≧1.01を満足すれば逆分散性とする。また、0.99<Re(550)/Re(450)<1.01については、Reについて波長分散性がないフィルムとする。
また、本明細書において、フィルム表面及び裏面の屈折率異方性は、以下の方法により求めた値をいうものとする。
まず、試料フィルムを、温度25℃、相対湿度60%の雰囲気下に24時間放置する。その後、プリズムカップラー(MODEL2010 Prism Coupler:Metricon製)を用い、温度25℃、相対湿度60%の雰囲気下において、532nmの固体レーザーを用いて、フィルム試料のフィルム平面方向の偏光により屈折率(nTE)を測定し、及びフィルム面法線方向の偏光により屈折率(nTM)を測定し、それらの値を下記式(XII)に代入し、平均屈折率(n)を算出する。
式(XII): n=(nTE×2+nTM)/3
[式中、nTEはフィルム平面方向の偏光で測定した屈折率であり、nTMはフィルム面法線方向の偏光で測定した屈折率である。]
次に、温度25℃、相対湿度60%の雰囲気下において、上記レーザーを用い、フィルム試料のフィルム平面方向の偏光により、遅相軸方向の屈折率nTE SAを測定し、及びフィルム試料のフィルム平面方向の偏光により、進相軸方向の屈折率nTE FAを測定し、それらの値を下記式(XIII)に代入して、フィルム表面及び裏面近傍の屈折率異方性Δnを求める。
式(XIII): Δn=nTE SA−nTE TFA
[式中、nTE SAはフィルム平面方向の偏光で測定した遅相軸方向の屈折率であり、nTE FAはフィルム平面方向の偏光で測定した進相軸方向の屈折率である。]
[高分子フィルム]
本発明の高分子フィルムは、屈折率異方性の波長分散性及び/又は屈折率異方性がフィルム表裏で異なることを特徴とする。本発明者が鋭意検討した結果、一枚の高分子フィルムの表裏に、屈折率異方性の波長分散性の差及び/又は屈折率異方性の差を持たせることで、フィルム表裏にこれらの性質に差がない従来の高分子フィルムとは、フィルム全体としてRe及びRthが等しくても、異なる光学補償作用を示すとの知見を得、本発明を完成するに至った。本発明では、複数のフィルムを積層することなく、従来、均一な一枚のフィルムでは実現が困難であった光学補償効果を達成している。
フィルム表裏における屈折率異方性の波長分散性の差(即ち、Re(550)/Re(450)の差)が、0.01以上であると、フィルム表裏において屈折率異方性の波長分散性に差がない従来のフィルムとは異なる光学補償作用を示すことができ、その差が、0.02以上であるのが好ましく、0.03以上であるのがより好ましい。
また、フィルム表裏における屈折率異方性の差が、0.0002以上であると、フィルム表裏において屈折率異方性に差がない従来のフィルムとは異なる光学補償作用を示すことができ、その差が、0.0002〜0.0020であるのが好ましく、0.0003〜0.0010であるのがより好ましい。
本発明の高分子フィルムの一実施形態は、一方の表面の屈折率異方性の波長分散性が厚み方向中央部の屈折率異方性の波長分散性と比較して、より逆分散性が強く、及び他方の表面の屈折率異方性の波長分散性が厚み方向中央部の屈折率異方性の波長分散性と比較してより順分散性が強い高分子フィルムである。即ち、屈折率異方性の波長分散性が厚み方向に勾配を持っている高分子フィルムである。この実施形態の高分子フィルムは、当該フィルムとRe及びRthが等しいが、屈折率異方性に差がない従来の高分子フィルムとは、異なる光学補償効果を達成することができる。
本実施形態について、フィルムの表裏に屈折率異方性の波長分散性に差を持たせることによってもたらされる作用について、ポアンカレ球を用いて説明する。図1に、高分子フィルムに、偏光膜を介して、光が入射する状態を模式的に示す。図1(1)〜(3)中の高分子フィルムは互いに、波長430nm〜700nmにおける面内レターデーション(Re)、膜厚方向レターデーションの波長分散は等しい(Rth)とする。例えば、KOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)で測定した波長430nm〜700nmにおけるRe、及び測定値より算出したRthは等しい。
図1(2)中の高分子フィルムは、フィルム表裏で屈折率異方性の波長分散性に差がなく、屈折率異方性の波長分散性が膜厚方向に均一な従来の高分子フィルムである。一方、図1(1)及び(3)中の高分子フィルムは、フィルム表裏で屈折率異方性の波長分散性に差がある本発明の高分子フィルムの一例である。図1(1)では、高分子フィルムの屈折率異方性の逆分散性がより強い面が偏光子側に配置され、図1(3)では、高分子フィルムの屈折率異方性の順分散性がより強い面が偏光子側に配置されている。このことを表現するために、及び説明を容易とするために、図1(1)及び(3)では、高分子フィルムを、屈折率異方性の逆分散性が大きい層と順分散性が大きい層との二層からなるものとして図示している。なお、高分子フィルムの面内遅相軸は、偏光子の吸収軸に対して直交しているものとする。
図1(1)〜(3)中の偏光子を通過した直線偏光が高分子フィルムを通過することによる偏光状態変化の軌跡を、ポアンカレ球上に実線で描いた模式図を、図2(1)〜(3)にそれぞれ示す。なお、観察方向は、極角60°方位角45°方向とする。また、図中の点Pinは、偏光子を通過した直線偏光の状態であり、点Poutは、消光点の偏光状態である。また、図2(1)及び(3)中の破線は、図1(1)及び(2)中に示す通り、高分子フィルムが屈折率異方性の波長分散性が異なる二層であると仮想し、各層を通過することによる偏光状態変化の軌跡を描いたものである。図2(1)及び(3)に示す通り、フィルム表裏に屈折率異方性の波長分散性に差がある高分子フィルムを通過することによる偏光状態変化の軌跡は、図2(2)に示す、膜厚方向で屈折率異方性の波長分散性が均一である従来の高分子フィルムを通過することによる偏光状態変化の軌跡と異なっている。図2から、本態様の高分子フィルムは、フィルム全体としてRe及びRthが等しくても、屈折率異方性の波長分散性が均一な従来の高分子フィルムとは異なる光学補償作用を示すことが理解できる。特に、図1(1)中に示す様に、本実施形態の高分子フィルムを、屈折率異方性の逆分散性がより強い面を偏光子側にして配置すると、図2(1)に示す通り、この一枚の高分子フィルムによって、Reについて逆分散性であり、且つRthについて順分散性の特徴を持つ高分子フィルムとほぼ等しい効果を実現することができる。図5に、参照のために、Reについて逆分散性であり、且つRthについて順分散性の特徴をもつフィルムに、直線偏光が通過することによる偏光状態変化の軌跡を、ポアンカレ球上に模式的に表した図を示す。
本発明の高分子フィルムの他の実施形態は、一方の表面の屈折率異方性が厚み方向中央部の屈折率異方性と比較してより大きく、及び他方の表面の屈折率異方性が厚み方向中央部の屈折率異方性と比較してより小さい高分子フィルムである。即ち、屈折率異方性が厚み方向に勾配を持っている高分子フィルムである。この実施形態の高分子フィルムは、当該フィルムとRe及びRthが等しいが、屈折率異方性に差がない従来の高分子フィルムとは、異なる光学補償効果を達成することができる。
本実施形態について、フィルムの表裏に屈折率異方性の差を持たせることによってもたらされる作用について、ポアンカレ球を用いて説明する。図3に、高分子フィルムに、偏光膜を介して、光が入射する状態を模式的に示す。図3(1)〜(3)中の高分子フィルムは互いに、面内レターデーション(Re)及び膜厚方向レターデーション(Rth)の値は等しいものとする。例えば、KOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)で測定したRe、及びその測定値より算出したRthの値は互いに等しいものとする。
図3(2)中の高分子フィルムは、フィルム表裏で屈折率異方性に差がなく、均一な従来の高分子フィルムである。一方、図3(1)及び(3)中の高分子フィルムは、フィルム表裏で屈折率異方性に差がある本発明の高分子フィルムの一例である。図3(1)では、高分子フィルムの屈折率異方性が大きい面が偏光子側に配置され、図3(3)では、高分子フィルムの屈折率異方性が小さい面が偏光子側に配置されている。このことを表現するために、及び説明を容易とするために、図3(1)及び(3)では、高分子フィルムを屈折率異方性が大きい層と小さい層との二層からなるものとして図示している。なお、高分子フィルムの面内遅相軸は、偏光子の吸収軸に対して直交しているものとする。
図3(1)〜(3)中の偏光子を通過した直線偏光が高分子フィルムを通過することによる偏光状態変化の軌跡を、ポアンカレ球上に実線で描いた模式図を、図4(1)〜(3)にそれぞれ示す。なお、観察方向は、極角60°方位角45°方向とする。また、図中の点Pinは、偏光子を通過した直線偏光の状態であり、点Poutは、消光点の偏光状態である。また、図4(1)及び(3)中の破線は、図3(1)及び(2)中に示す通り、高分子フィルムが屈折率異方性が異なる二層であると仮想し、各層を通過することによる偏光状態変化の軌跡を描いたものである。図4(1)及び(3)に示す通り、フィルム表裏に屈折率異方性の差がある高分子フィルムを通過することによる偏光状態変化の軌跡は、図4(2)に示す、膜厚方向で屈折率異方性が均一である従来の高分子フィルムを通過することによる偏光状態変化の軌跡と異なっている。図4から、本態様の高分子フィルムは、フィルム全体としてRe及びRthが等しくても、屈折率異方性が均一な従来の高分子フィルムとは異なる光学補償作用を示すことが理解できる。
次に、本発明の高分子フィルムの製造方法について説明する。
本発明の高分子フィルムは、溶液製膜法により成形された膜を延伸処理することで製造される。この方法によれば、製膜から延伸処理までを連続的に行うことができ、工業的な連続生産に適する。
本発明の高分子フィルムの材料は、光学性能、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などの観点で、種々のポリマー材料から選択される。その例には、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー等が挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、及び前記ポリマーを混合したポリマーが含まれる。
また、前記高分子フィルムの材料としては、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を好ましく用いることができる。熱可塑性ノルボルネン系樹脂としては、日本ゼオン(株)製のゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製のアートン等が挙げられる。
また、前記高分子フィルムの材料としては、従来偏光板の透明保護フィルムとして用いられてきたセルロース系ポリマー(以下、セルロースアシレートという)を特に好ましく用いることができる。なお、本明細書において、「セルロースアシレートフィルム」とは、セルロースアシレートを主原料として含有するフィルムをいうものとする。
以下、本発明に利用可能なセルロースアシレートフィルムについて説明する。
・セルロースアシレート:
前記高分子フィルムの材料として用いるセルロースアシレートの代表例としては、トリアセチルセルロースが挙げられる。セルロースアシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば、丸澤、宇田著、「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」日刊工業新聞社(1970年発行)や発明協会公開技報公技番号2001−1745号(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができ、前記セルロースアシレートフィルムに対しては特に限定されるものではない。
セルロースアシレートの置換度は、セルロースの構成単位((β)1,4−グリコシド結合しているグルコース)に存在している、3つの水酸基がアシル化されている割合を意味する。置換度(アシル化度)は、セルロースの構成単位質量当りの結合脂肪酸量を測定して算出することができる。測定方法は、「ASTM D817−91」に準じて実施する。
本発明の高分子フィルムの材料として用いるセルロースアシレートは、アセチル置換度が2.50〜3.00であるセルロースアセテートが好ましい。前記アセチル置換度は2.70〜2.97がさらに好ましい。また、前記セルロースアシレートは、アセチル基に代えて、又はアセチル基とともに、アセチル基以外のアシル基で置換されていてもよい。中でも、アセチル、プロピオニル及びブチリル基から選ばれる少なくとも一種のアシル基を有するセルロースアシレートが好ましく、及びアセチル、プロピオニル及びブチリル基から選ばれる少なくとも二種のアシル基を有するセルロースアシレートがより好ましい。
前記セルロースアシレートは、350〜800の質量平均重合度を有することが好ましく、370〜600の質量平均重合度を有することがさらに好ましい。また本発明で用いられるセルロースアシレートは、70000〜230000の数平均分子量を有することが好ましく、75000〜230000の数平均分子量を有することがさらに好ましく、78000〜120000の数平均分子量を有することがよりさらに好ましい。
前記セルロースアシレートは、アシル化剤として酸無水物や酸塩化物を用いて合成できる。工業的に最も一般的な合成方法では、綿花リンタや木材パルプなどから得たセルロースをアセチル基及び他のアシル基に対応する有機酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)又はそれらの酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)を含む混合有機酸成分でエステル化してセルロースエステルを合成する。
本発明の高分子フィルムは、溶液製膜法(ソルベントキャスト法)によって製膜されたフィルムである。ソルベントキャスト法では、ポリマーを有機溶媒に溶解して調製されたドープを、金属等からなる支持体の表面にキャストして、乾燥して製膜する。その後、膜を支持体面から剥ぎ取り、延伸処理することで製造される。後述する屈折率異方性材料を含有する高分子フィルムの製造では、このドープ中に、屈折率異方性材料を添加する。屈折率異方性材料等の添加剤は、ポリマー材料とともに添加してドープを調製してもよいし、ポリマー材料とは別に添加剤の溶液を別途調製し、ポリマー溶液と混合して、ドープを調製してもよい。
ソルベントキャスト法を利用したセルロースアシレートフィルムの製造例については、米国特許第2,336,310号、同2,367,603号、同2,492,078号、同2,492,977号、同2,492,978号、同2,607,704号、同2,739,069号及び同2,739,070号の各明細書、英国特許第640731号及び同736892号の各明細書、並びに特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号及び同62−115035号等の記載を参考にすることができる。
製膜後、フィルムに延伸処理を施す。延伸倍率は、3〜100%程度であることが好ましい。延伸処理は、テンターを用いて実施できる。また、ロール間にて縦延伸を行ってもよい。
延伸処理の方法及び条件については、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4−298310号、同11−48271号 等に記載の例を参考にすることができる。
本発明の高分子フィルムは、屈折率異方性の波長依存性及び/又は屈折率異方性がフィルム表裏で異なっている。この性質は、種々の方法により達成することができる。屈折率異方性の波長分散性が、主原料であるポリマーと比較して、逆分散性又は順分散性がより大きい屈折率異方性材料を含有するフィルムでは、その屈折率異方性材料の濃度がフィルム表裏で異なっていれば、屈折率異方性の波長分散性がフィルム表裏で異なる、本発明の高分子フィルムが得られる。また、添加剤として、逆分散性材料、及び順分散性材料の双方を含有するフィルムでは、これら材料の少なくとも一方の濃度がフィルム表裏で異なっていれば、屈折率異方性の波長分散性がフィルム表裏で異なる、本発明の高分子フィルムが得られる。ここで、「逆分散性材料」及び「順分散性材料」について定義する。対照フィルムとして、高分子のみからなる、Reについて波長分散性を持たない、即ち0.99<Re(450)/Re(550)<1.01を満足する、延伸フィルムを対照フィルムとして準備する。別途、ある材料を添加する以外は全く同一の条件で作製したサンプルフィルムを準備する。当該サンプルフィルムが、Reについて逆分散性を示す場合は、添加された当該材料は「逆分散性材料」であり、当該サンプルフィルムが、Reについて順分散性を示す場合は、当該材料は「順分散性材料」である。また、対照フィルムが、セルロースアシレートフィルム等、延伸されると、Reが逆分散性を示すフィルムである場合は、ある材料を添加した以外は同様にして作製したサンプルフィルムが、対照フィルムと比較して、Reの逆分散性が大きくなった場合は、当該材料は、「逆分散性材料」であり、逆分散性が小さくなった場合は、当該材料は、「順分散性材料」である。対照フィルムが、Reが順分散性を示すフィルムである場合も同様に、添加した材料が、「逆分散性材料」であるか、「順分散性材料」であるかを知ることができる。なお、ここで、「逆分散性が大きくなる」とは、Δn(550)/Δn(450)の値が0.01以上大きくなることを意味し、「順分散性が大きくなる」とは、Δn(550)/Δn(450)の値が0.01以上小さくなることを意味する。
例えば、逆分散性材料及び順分散性材料を選択する際に、主成分であるポリマーフィルムに対する親和性、ドープを調製する際に用いる有機溶媒に対する親和性、揮発性、等の観点で相違する組合せで選択し、ドープを支持体面にキャストして、乾燥する際の乾燥条件を調整することで、これら材料の濃度がフィルム表裏で異なっている高分子フィルムを作製することができる。より具体的には、逆分散性材料及び順分散性材料を選択する際に、ドープを調製する際に用いる有機溶媒に対する親和性が互いに異なる組合せで選択し、ドープを支持体面にキャストして、乾燥し、フィルムから溶剤を蒸発させる際に、溶剤濃度がフィルムの厚み方向において勾配している状態が、材料の溶剤に対する親和性の差に起因して、それらの濃度について厚み方向に勾配が生じるのに十分な時間保持されるように、乾燥条件を設定することで、これら材料の濃度がフィルム表裏で異なっている高分子フィルムを作製することができる。例えば、空気界面側のみ又は支持体界面側のみを急激に加熱する等により、溶媒濃度を厚み方向において勾配を持たせ、その状態をある程度の時間保持することで、逆分散性及び/又は順分散性材料の濃度についても、厚み方向において勾配を持たせることができる。この方法により、逆分散性材料及び順分散性材料の濃度が、フィルム表裏で異なっているのみならず、フィルムの厚み方向全体に、逆分散性材料及び順分散性材料の濃度に勾配のある高分子フィルムが製造できる。また、延伸処理時における残留溶剤量をフィルム膜厚方向に勾配を持たせることで、延伸後におけるポリマーの配向度に勾配を持たせることができる。延伸時のフィルム表裏面の残留溶媒量に差を持たせるには、先に述べた方法により剥離前のフィルム表裏面の残留溶媒量に差を持たせる方法、あるいは延伸時の表裏面にあたる乾燥風の速度差、温度差により表裏面の残留溶媒量に差を持たせる方法等が適用できる。
また、フィルムの主原料であるポリマーは、屈折率異方性があるので、このポリマーの密度が、フィルム表裏で異なっていれば、屈折率異方性がフィルム表裏で異なる、本発明の高分子フィルムが得られる。例えば、ドープを支持体面にキャストして、乾燥し、フィルムから溶剤を蒸発させる際に、溶剤濃度がフィルムの厚み方向において勾配している状態が、ポリマーの密度や配向度に影響を与えるのに十分な時間保持されるように、乾燥条件を設定することで、ポリマーの密度及び/又は配向度の違いによって、フィルム表裏の屈折率異方性が異なる高分子フィルムを作製することができる。この方法により、フィルム表裏で屈折率異方性が異なっているのみならず、フィルムの厚み方向全体に屈折率異方性が勾配しているフィルムを製造することができる。また、フィルムを厚み方向に分割し、分割した各層(例えば表層、中心層、裏層)に添加する逆分散性及び/又は順分散性材料等の添加剤の濃度を変更したドープを作成し、共流延法等により表裏面に添加剤の濃度勾配を持たせてもよい。
また、主原料であるポリマーとは異なる屈折率異方性材料をフィルム中に添加して、屈折率異方性がフィルム表裏で異なっている高分子フィルムを作製することもできる。例えば、主原料であるポリマーと比較して屈折率異方性がより大きい屈折率異方性材料を含有するフィルムでは、その濃度及び/又は配向度がフィルム表裏で異なっていれば、屈折率異方性がフィルム表裏で異なる、本発明の高分子フィルムが得られる。屈折率異方性材料の濃度を、厚み方向において勾配させる方法については、上記と同様である。
前記逆分散性材料の例には、下記一般式(A)で表される化合物が含まれる。この化合物は、液晶性を示すのが好ましい。
Figure 2010026424
式中、L1及びL2は各々独立に単結合又は二価の連結基を表し;A1及びA2は各々独立に、−O−、−NR−(Rは水素原子又は置換基を表す)、−S−及び−CO−からなる群から選ばれる基を表し;R1、R2及びR3は各々独立に置換基を表し;Xは第14〜16族の非金属原子を表し(ただし、Xには水素原子又は置換基が結合してもよい);nは0〜2までのいずれかの整数を表す。
前記一般式(A)で表される化合物の中でも、Re発現剤としては、下記一般式(B)で表される化合物が好ましい。
Figure 2010026424
一般式(B)中、L1及びL2は各々独立に単結合又は二価の連結基を表す。A1及びA2は各々独立に、−O−、−NR−(Rは水素原子又は置換基を表す。)、−S−及びCO−からなる群から選ばれる基を表す。R1、R2、R3、R4及びR5は各々独立に置換基を表す。nは0〜2の整数を表す。
一般式(A)又は(B)において、L1及びL2が表す二価の連結基としては、好ましくは下記の例が挙げられる。
Figure 2010026424
さらに好ましくは−O−、−COO−、−OCO−である。
一般式(A)又は(B)において、R1は置換基であり、複数存在する場合は同じでも異なっていてもよく、環を形成してもよい。置換基の例としては下記のものが適用できる。
ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換又は無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換又は無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル基)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換のアルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換又は無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル基)、ビシクロアルケニル基(置換又は無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5〜30の置換又は無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル基)、アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換又は無置換のアルキニル基、例えば、エチニル基、プロパルギル基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30の置換又は無置換のアリール基、例えばフェニル基、p−トリル基、ナフチル基)、ヘテロ環基(好ましくは5又は6員の置換又は無置換の、芳香族又は非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、さらに好ましくは、炭素数3〜30の5又は6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3〜20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジメチルシリルオキシ基)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換又は無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換又は無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換又は無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換又は無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、tert−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換又は無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基)、アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルアミノ基、炭素数6〜30の置換又は無置換のアニリノ基、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換又は無置換のアミノカルボニルアミノ基、例えば、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換又は無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0〜30の置換又は無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基)、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルスルホニルアミノ基、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールスルホニルアミノ基、例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、m−メトキシフェニルチオ基)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ基)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30の置換又は無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル基)、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルスルフィニル基、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p−メチルフェニルスルフィニル基)、アルキル及びアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルスルホニル基、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−メチルフェニルスルホニル基)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2〜30の置換又は無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換又は無置換のアリールカルボニル基、例えば、アセチル基、ピバロイルベンゾイル基)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7〜30の置換又は無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル基、o−クロロフェノキシカルボニル基、m−ニトロフェノキシカルボニル基、p−tert−ブチルフェノキシカルボニル基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換又は無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−オクタデシルオキシカルボニル基)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換又は無置換のカルバモイル基、例えば、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基)、アリール及びヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールアゾ基、炭素数3〜30の置換又は無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ基、p−クロロフェニルアゾ基、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ基)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換又は無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェノキシホスフィノ基)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換又は無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、ジエトキシホスフィニル基)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換又は無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換又は無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換又は無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基)を表わす。
上記の置換基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去りさらに上記の基で置換されていてもよい。そのような官能基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。その例としては、メチルスルホニルアミノカルボニル基、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル基、アセチルアミノスルホニル基、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。
1は好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、シアノ基、アミノ基であり、さらに好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、シアノ基、アルコキシ基である。
2、R3は各々独立に置換基を表す。例としては上記R1の例があげられる。好ましくは置換もしくは無置換のベンゼン環、置換もしくは無置換のシクロヘキサン環である。より好ましくは置換基を有するベンゼン環、置換基を有するシクロヘキサン環であり、さらに好ましくは4位に置換基を有するベンゼン環、4位に置換基を有するシクロヘキサン環である。
4、R5は各々独立に置換基を表す。例としては上記R1の例があげられる。好ましくは、ハメットの置換基定数σp値が0より大きい電子吸引性の置換基であることが好ましく、σp値が0〜1.5の電子吸引性の置換基を有していることがさらに好ましい。このような置換基としてはトリフルオロメチル基、シアノ基、カルボニル基、ニトロ基等が挙げられる。また、R4とR5とが結合して環を形成してもよい。
なお、ハメットの置換基定数のσp、σmに関しては、例えば、稲本直樹著「ハメット則−構造と反応性−」(丸善)、日本化学会編「新実験化学講座14 有機化合物の合成と反応V」2605頁(丸善)、仲谷忠雄著「理論有機化学解説」217頁(東京化学同人)、ケミカル レビュー,91巻,165〜195頁(1991年)等の成書に詳しく解説されている。
1及びA2は各々独立に、−O−、−NR−(Rは水素原子又は置換基)、−S−及びCO−からなる群から選ばれる基を表す。好ましくは−O−、−NR−(Rは置換基を表し、例としては上記R1の例が挙げられる)又はS−である。
Xは第14〜16族の非金属原子を表す。ただし、Xには水素原子又は置換基が結合してもよい。Xは=O、=S、=NR、=C(R)Rが好ましい(ここでRは置換基を表し、例としては上記R1の例が挙げられる)。
nは0〜2の整数を表し、好ましくは0、1である。
以下に、一般式(A)又は(B)で表される化合物の具体例を示すが、前記Re発現剤の例は以下の具体例に限定されるものではない。下記化合物に関しては、指定のない限り括弧( )内の数字にて例示化合物(X)と示す。
Figure 2010026424
Figure 2010026424
Figure 2010026424
Figure 2010026424
Figure 2010026424
Figure 2010026424
前記一般式(A)又は(B)で表される化合物の合成は、既知の方法を参照して行うことができる。例えば、例示化合物(1)は、下記スキームに従って合成することができる。
Figure 2010026424
前記スキーム中、化合物(1−A)から化合物(1−D)までの合成は、“Journal of Chemical Crystallography”(1997);27(9);p.515−526.に記載の方法を参照して行うことができる。
さらに、前記スキームに示したように、化合物(1−E)のテトラヒドロフラン溶液に、メタンスルホン酸クロライドを加え、N,N−ジイソプロピルエチルアミンを滴下し攪拌した後、N,N−ジイソプロピルエチルアミンを加え、化合物(1−D)のテトラヒドロフラン溶液を滴下し、その後、N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)のテトラヒドロフラン溶液を滴下することで、例示化合物(1)を得ることができる。
前記順分散性を示す化合物の例には、下記一般式(a)で表される棒状化合物が含まれる。この化合物は、液晶化合物であるのが好ましい。前記棒状化合物を用いると、液晶化合物がセルロースアシレートフィルム内で配向する際、互いに配向してレターデーションの発現に寄与するため、また前記液晶化合物をフィルム中へ溶解しやすくなる効果も期待できるため好ましい。
一般式(a):Ar1−L12−X−L13−Ar2
上記一般式(a)において、Ar1及びAr2はそれぞれ独立に、芳香族基であり;L12及びL13はそれぞれ独立に、−O−CO−又は−CO−O−基であり;Xは、1,4−シクロへキシレン基、ビニレン基又はエチニレン基である。
上記一般式(a)において、Ar1及びAr2は、それぞれ独立に、芳香族基であり、L2及びL3は、それぞれ独立に、−O−CO−又はCO−O−基より選ばれる二価の連結基であり、Xは、1,4−シクロへキシレン基、ビニレン基又はエチニレン基である。
本明細書において、芳香族基は、アリール基(芳香族性炭化水素基)、置換アリール基、芳香族性ヘテロ環基及び置換芳香族性ヘテロ環基を含む。
アリール基及び置換アリール基の方が、芳香族性ヘテロ環基及び置換芳香族性ヘテロ環基よりも好ましい。芳香族性へテロ環基のヘテロ環は、一般には不飽和である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環又は7員環であることが好ましく、5員環又は6員環であることがさらに好ましい。芳香族性へテロ環は一般に最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子が好ましく、窒素原子又は硫黄原子がさらに好ましい。
芳香族基の芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環及びピラジン環が好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。
置換アリール基及び置換芳香族性ヘテロ環基の置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、アルキルアミノ基(例、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ブチルアミノ基、ジメチルアミノ基)、ニトロ基、スルホ基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基(例、N−メチルカルバモイル基、N−エチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基)、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基(例、N−メチルスルファモイル基、N−エチルスルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基)、ウレイド基、アルキルウレイド基(例、N−メチルウレイド基、N,N−ジメチルウレイド基、N,N,N’−トリメチルウレイド基)、アルキル基(例、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、s−ブチル基、t−アミル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基)、アルケニル基(例、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基)、アルキニル基(例、エチニル基、ブチニル基)、アシル基(例、ホルミル基、アセチル基、ブチリル基、ヘキサノイル基、ラウリル基)、アシルオキシ基(例、アセトキシ基、ブチリルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、ラウリルオキシ基)、アルコキシ基(例、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基)、アリールオキシ基(例、フェノキシ基)、アルコキシカルボニル基(例、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(例、フェノキシカルボニル基)、アルコキシカルボニルアミノ基(例、ブトキシカルボニルアミノ基、ヘキシルオキシカルボニルアミノ基)、アルキルチオ基(例、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基)、アリールチオ基(例、フェニルチオ基)、アルキルスルホニル基(例、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、ペンチルスルホニル基、ヘプチルスルホニル基、オクチルスルホニル基)、アミド基(例、アセトアミド基、ブチルアミド基、ヘキシルアミド基、ラウリルアミド基)及び非芳香族性複素環基(例、モルホリル基、ピラジニル基)が含まれる。
置換アリール基及び置換芳香族性ヘテロ環基の置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、アルキル置換アミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基及びアルキル基が好ましい。
アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基及びアルキルチオ基のアルキル部分とアルキル基とは、さらに置換基を有していてもよい。アルキル部分及びアルキル基の置換基の例には、ハロゲン原子、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、アミノ、アルキルアミノ基、ニトロ、スルホ、カルバモイル、アルキルカルバモイル基、スルファモイル、アルキルスルファモイル基、ウレイド、アルキルウレイド基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アミド基及び非芳香族性複素環基が含まれる。アルキル部分及びアルキル基の置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニル基及びアルコキシ基が好ましい。
一般式(a)において、L12及びL13は、それぞれ独立に、−O−CO−又は−CO−O−及びそれらの組合せからなる基より選ばれる二価の連結基である。
一般式(a)において、Xは、1,4−シクロへキシレン基、ビニレン基又はエチニレン基である。
以下に、一般式(a)で表される化合物の具体例を示す。
Figure 2010026424
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具体例(1)〜(34)、(41)、(42)は、シクロヘキサン環の1位と4位とに二つの不斉炭素原子を有する。ただし、具体例(1)、(4)〜(34)、(41)、(42)は、対称なメソ型の分子構造を有するため光学異性体(光学活性)はなく、幾何異性体(トランス型とシス型)のみ存在する。具体例(1)のトランス型(1−trans)とシス型(1−cis)とを、以下に示す。
Figure 2010026424
前述したように、棒状化合物は直線的な分子構造を有することが好ましい。そのため、トランス型の方がシス型よりも好ましい。
具体例(2)及び(3)は、幾何異性体に加えて光学異性体(合計4種の異性体)を有する。幾何異性体については、同様にトランス型の方がシス型よりも好ましい。光学異性体については、特に優劣はなく、D、Lあるいはラセミ体のいずれでもよい。
具体例(43)〜(45)では、中心のビニレン結合にトランス型とシス型とがある。上記と同様の理由で、トランス型の方がシス型よりも好ましい。
また、前記順分散性材料の例には、下記一般式(I)で表される化合物が含まれる。
Figure 2010026424
式中、X1は、単結合、−NR4−、−O−又はS−であり;X2は、単結合、−NR5−、−O−又はS−であり;X3は、単結合、−NR6−、−O−又はS−である。また、R1、R2、及びR3は、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、芳香族環基又は複素環基であり;R4、R5及びR6は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基又は複素環基である。
以下に前記一般式(I)で表される化合物の好ましい例(I−(1)〜IV−(10))を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
Figure 2010026424
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前記逆分散性材料及び前記順分散性材料のフィルム中への添加量については、特に制限はなく、材料の種類やポリマーの種類、及び用途等に応じて、決定される。一般的には、ポリマー組成物の全質量に対して、0.1〜30質量%程度であるのが好ましく、0.5〜20質量%程度がさらに好ましく、1〜10質量%程度がよりさらに好ましい。
本発明の高分子フィルムには、機械的物性を改良するため、又は乾燥速度を向上するために、可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、リン酸エステル又はカルボン酸エステルが用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルホスフェート(TPP)及びトリクレジルホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステル及びクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)及びジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)及びO−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)が含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DPP、DEHP)が好ましく用いられる。DEP及びDPPが特に好ましい。
また、可塑剤の例には、国際公開を2007/125764号パンフレットの[0042]〜[0065]に記載のグルコース等の糖のOHの一部又は全部の水素原子がアシル基に置換された糖誘導体が含まれる。
可塑剤の添加量は、主成分であるポリマーの量の0.1〜25質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがさらに好ましく、3〜15質量%であることがよりさらに好ましい。
本発明の高分子フィルムには、本発明の効果を損なわない範囲で、他の添加剤、例えば、劣化防止剤(例、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)を含有していてもよい。劣化防止剤については、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号の各公報に記載がある。劣化防止剤の添加量は、調製する溶液(ドープ)の0.01〜1質量%であることが好ましく、0.01〜0.2質量%であることがさらに好ましい。添加量が0.01質量%未満であると、劣化防止剤の効果がほとんど認められない。添加量が1質量%を越えると、フィルム表面への劣化防止剤のブリードアウト(滲み出し)が認められる場合がある。特に好ましい劣化防止剤は、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)及びトリベンジルアミン(TBA)である。
本発明は、本発明の高分子フィルムと直線偏光膜(本明細書では、単に「偏光膜」という)とを少なくとも有する偏光板にも関する。本発明の高分子フィルムは、直線偏光膜の保護膜として利用されていてもよい。本発明の高分子フィルムの表裏面は、光学的特性に違いがある。屈折率異方性の波長分散性がフィルム表裏で異なる高分子フィルムを利用する態様では、図1(1)に示す通り、屈折率異方性の逆分散性が大きい側の面を、偏光膜側にして貼合すると、Reについて逆分散性であり、且つRthについて順分散性である位相差フィルムを偏光膜に貼合してなる偏光板と、同等の光学補償能のある偏光板が得られる。
直線偏光膜は、Optiva Inc.に代表される塗布型偏光膜、もしくはバインダーと、ヨウ素又は二色性色素からなる偏光膜が好ましい。偏光膜におけるヨウ素及び二色性色素は、バインダー中で配向することで偏光性能を発現する。ヨウ素及び二色性色素は、バインダー分子に沿って配向するか、もしくは二色性色素が液晶のような自己組織化により一方向に配向することが好ましい。現在、市販の偏光子は、延伸したポリマーを、浴槽中のヨウ素もしくは二色性色素の溶液に浸漬し、バインダー中にヨウ素、もしくは二色性色素をバインダー中に浸透させることで作製されるのが一般的である。
偏光膜の前記高分子フィルムを貼り付けた表面と反対側の表面には、ポリマーフィルムを配置する(位相差膜/偏光膜/ポリマーフィルムの配置とする)ことが好ましい。
ポリマーフィルムは、その最表面が防汚性及び耐擦傷性を有する反射防止膜を設けてなることも好ましい。反射防止膜は、従来公知のいずれのものも用いることができる。
本発明は、本発明の高分子フィルムを有する液晶表示装置にも関する。本発明の液晶表示装置の一例は、本発明の偏光板を少なくとも一枚有する液晶表示装置である。本発明の高分子フィルムは、液晶表示装置のモードに制限されることなく、種々のモードの液晶表示装置に対して、新たな光学補償作用により、表示特性の改善に寄与することが期待できる。具体的には、TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、OCB(Optically Compensatory Bend)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)等の種々の表示モードの液晶表示装置において、新たな光学補償作用により、表示特性の改善に寄与するであろう。特に、垂直配向モード及び水平配向モードの液晶表示装置の光学補償に利用するのが好ましい。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
1. 高分子フィルムの作製例
表1中に記載の割合となるように、各成分を混合して、セルロースアシレート溶液(ドープ)をそれぞれ調製した。各セルロースアシレート溶液をバンド流延機を用いて流延した。表1中、TD方向とは、方向を意味する。
乾燥:
本実施例では、フィルム表裏に屈折率異方性の差を持たせるために、ドープをバンド表面にキャストした後、以下2つの乾燥条件のいずれかにより、バンド上でドープを乾燥した。
[乾燥条件1]
乾燥風温度25℃(常温)で成り行き乾燥風速度(〜0.2m/s)で乾燥を行った。その際、フィルム表面に溶剤蒸気を滞留させ、乾燥時のフィルム膜厚方向の溶剤濃度が一定に保たれるようにした。
[乾燥条件2]
乾燥風温度130℃、10m/sの風をフィルム空気界面側に吹かせ乾燥を行った。
延伸:
乾燥後、ウェブをバンドから剥ぎ取り、表1中に記載の条件で延伸し、その後、さらに乾燥して、表1中に記載の厚みのセルロースアシレートフィルム1〜8をそれぞれ作製した。
評価:
作製したそれぞれのセルロースアシレートフィルムについて、上記方法により、フィルムの双方の面(表中A面及びB面)のΔn(450)、Δn(550)、及びΔn(650)を算出した。また、フィルム全体のRe及びRthについても、上記方法により測定及び算出した。結果を下記表に示す。
Figure 2010026424
表中の「添加量[%]」は、セルロースアシレートに対する質量%を意味する。
Figure 2010026424
Figure 2010026424
Figure 2010026424
Figure 2010026424
Figure 2010026424
Figure 2010026424
2. 高分子フィルムの作製例
延伸を行わなかった以外は、「1.高分子フィルムの作製例」と同様にして、高分子フィルムを作製した。乾燥は[乾燥条件1]で行った。得られた高分子フィルムの光学特性の測定結果を下記表に示す。
Figure 2010026424
3. 偏光板の作製
上記作製した各高分子フィルムの表面を、アルカリ鹸化処理した。1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に55℃で2分間浸漬し、室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。続いて、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ20μmの偏光膜を得た。ポリビニルアルコール(クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、前記のアルカリ鹸化処理した高分子フィルム1〜9と、同様のアルカリ鹸化処理したフジタックTD80UL(富士フイルム社製)を用意し、これらの鹸化した面が偏光膜側となるようにして偏光膜を間に挟んで貼り合わせ、各フィルムとTD80ULが偏光膜の保護フィルムとなっている偏光板をそれぞれ作製した。
なお、高分子フィルムNo.1〜8についてはフィルム遅相軸と偏光膜の吸収軸とを直交に貼合させ、高分子フィルムNo.9についてはフィルム遅相軸と偏光膜の吸収軸とを平行に貼合させた。
4.液晶表示装置No.1〜8の作製
上記作製した各偏光板を用いて、VA型液晶表示装置No.1〜8をそれぞれ作製した。具体的には、液晶セルとして、VAモード液晶セル(Δnd=300nm)を用い、各偏光板を表示面側及びバックライト側の偏光板として、下記表に示す組合せでそれぞれ組み込んで、液晶表示装置を作製した。
(液晶表示装置No.1〜8の評価)
上記作製したVAモードの液晶表示装置No.1〜No.8を測定機(EZ−Contrast XL88、ELDIM社製)を用いて、暗室内で黒表示および白表示の輝度および色度を測定し、黒表示におけるカラーシフトおよびコントラスト比を算出した。
(評価)
・黒表示時、白表示時の透過率
上記で作製した液晶表示装置No.1〜8について、黒表示時及び白表示の、正面方向(表示面に対する法線方向)及び斜め方向(極角45度・方位角60度方向)の透過率を測定することにより正面コントラスト及び斜め方向のコントラストを求めた。結果を下記表に示す。
・黒表示時のカラーシフト
上記で作製した液晶表示装置No.1〜8について、黒表示時の色味変化Δu’v’(=√(u’max−u’min)2+(v’max−v’min)2)をそれぞれ測定した。ここで、u’max(v’max)は0〜360度のうち最大のu’(v’)、u’min(v’min)は0〜360度のうち最小のu’(v’)である。結果を下記表に示す。
Figure 2010026424
本発明の高分子フィルムの例及び従来の高分子フィルムの例に偏光子を通過した直線偏光が入射する様子を示した概略図である。 図1の3種の高分子フィルムを直線偏光が通過することによる偏光状態変化の軌跡をポアンカレ球上に模式的に示した図である。 本発明の高分子フィルムの例及び従来の高分子フィルムの例に偏光子を通過した直線偏光が入射する様子を示した概略図である。 図3の3種の高分子フィルムを直線偏光が通過することによる偏光状態変化の軌跡をポアンカレ球上に模式的に示した図である。 参考例として、Reについて逆分散性で且つRthについて順分散性の光学補償フィルムを直線偏光が通過することによる偏光状態変化の軌跡をポアンカレ球状に模式的に示した図である。

Claims (13)

  1. 溶液製膜後に延伸処理されてなる高分子フィルムであって、該フィルムの屈折率異方性の波長依存性及び/又は屈折率異方性がフィルム表裏で異なることを特徴とする高分子フィルム。
  2. 膜厚方向に、屈折率異方性の波長分散性及び/又は屈折率異方性の勾配を持つことを特徴とする請求項1に記載の高分子フィルム。
  3. 波長430nm〜700nmの範囲において、長波長ほど面内レターデーション(Re)が大きい性質を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の高分子フィルム。
  4. 一方のフィルム表面における屈折率異方性が、該フィルム膜厚方向中心点における屈折率異方性よりも大きいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高分子フィルム。
  5. 少なくとも一種類の、逆分散性材料を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高分子フィルム。
  6. 少なくとも一種の逆分散性材料と、少なくとも一種の順分散性材料とを含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の高分子フィルム。
  7. 少なくとも一種のセルロースアシレートを主成分として含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の高分子フィルム。
  8. 少なくとも二種類の置換基を有するセルロースアシレートを含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の高分子フィルム。
  9. 偏光膜と、該偏光膜の少なくとも一方の面上に、請求項1〜8のいずれか1項に記載の高分子フィルムを有することを特徴とする偏光板。
  10. 前記高分子フィルムが、少なくとも、屈折率異方性の波長依存性がフィルム表裏で異なる高分子フィルムであり、逆分散性が大きい方の面を偏光膜側にして配置されていることを特徴とする請求項9に記載の偏光板。
  11. 請求項9又は10に記載の偏光板を少なくとも一枚含むことを特徴とした液晶表示装置。
  12. 垂直配向モードであることを特徴とした請求項11に記載の液晶表示装置。
  13. 水平配向モードであることを特徴とした請求項11に記載の液晶表示装置。
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