JP2010024308A - 人工大理石用樹脂組成物又は人工大理石用樹脂成形体 - Google Patents
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Abstract
【課題】防汚性、耐水性、耐熱性及び成形時における成形型からの成形体の脱型が容易な人工大理石用樹脂成形体又はこの成形体を成形する為の材料である人工大理石用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】人工大理石用の主樹脂と、水酸基又は窒素含有基を有する親水性アクリル樹脂と、極性基部分の親水性の官能基として1価又は2価以上水酸基を有し、疎水基部分のアルキル主鎖の炭素数が18〜22個の直鎖状アルキル主鎖を含有している親水性の離型剤を少なくとも0.05%以上含有した混合組成物を所定の成形型内に充填して加熱硬化させた人工大理石用樹脂成形体又はこの成形体を成形する為の材料である人工大理石用樹脂組成物。
【選択図】なし
【解決手段】人工大理石用の主樹脂と、水酸基又は窒素含有基を有する親水性アクリル樹脂と、極性基部分の親水性の官能基として1価又は2価以上水酸基を有し、疎水基部分のアルキル主鎖の炭素数が18〜22個の直鎖状アルキル主鎖を含有している親水性の離型剤を少なくとも0.05%以上含有した混合組成物を所定の成形型内に充填して加熱硬化させた人工大理石用樹脂成形体又はこの成形体を成形する為の材料である人工大理石用樹脂組成物。
【選択図】なし
Description
本発明は、浴槽、洗面カウンター、洗面ボール、キッチンカウンター等に好適の人工大理石用樹脂成形体及びこの成形体を成形する樹脂材料である人工大理石用樹脂組成物に関するものである。
従来から、人工大理石用樹脂成形体は、熱硬化性樹脂(アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリエステル樹脂など)に無機充填剤、硬化剤などを配合した混合組成物を所定の成形型内に注入充填し、加熱等して硬化させて成形されている。特に、アクリル系の人工大理石用樹脂成形体は、強度、耐熱性、耐水性などに優れ、天然大理石に近い外観で高級感があるため、浴槽、洗面カウンター、洗面ボール、キッチンカウンターなどの水回り分野の用途に使用されている。この人工大理石用樹脂成形体が水回り分野の用途に使用される場合、その成形体の表面に汚れや油脂成分を含んだ水が付着するため、洗浄剤などでその汚れを取り除いているが、その汚れを完全に取り除くことができなかった。
例えば、アクリル系の人工大理石用樹脂成形体からなる浴槽の場合、特に、浴槽の内壁面のうちの水面に接する喫水線域に汚れがこびり付き易い。この汚れの原因は、汚れ成分の組成や汚れ付着のメカニズムが複雑であるために十分に解明されていないが、一般的には油脂や石鹸カスによる汚れなどが挙げられる。このような汚れが浴槽に付着すると、浴槽の美観を損ねるだけでなく衛生面からも問題があり、これらの汚れは清掃しても取りにくく清掃に手間がかかる場合が多い。
上記問題点を解決すべく、近年、熱硬化性樹脂と、親水性のアクリル樹脂とを含有した人工大理石用樹脂組成物が提案されている。この人工大理石用組成物を加熱硬化させて成形した人工大理石用樹脂成形体の表面は強い親水性となるため、成形体の表面に油脂や石鹸カス等が付着しても、表面に付着した油脂や石鹸カスと表面との隙間に水が浸入して、随時流動する水の影響により油脂や石鹸カス等の汚れ付着を防止できる。
ところで、従来から、人工大理石用樹脂成形体の成形時において成形型内からの樹脂成形体の脱型を容易にするため、混合組成物にはシリコーン油等の撥水性の離型剤が添加されている。特許文献1には、アクリル樹脂と、無機充填剤と、重合開始剤と、撥水性の離型剤として界面活性剤や脂肪酸の金属塩等を所定量配合した人工大理石用樹脂組成物が開示されている。この人工大理石用樹脂組成物を加熱硬化させると、表面が撥水性の人工大理石用樹脂成形体が成形される。
特開2000−327389号公報
親水性のアクリル樹脂を含有した人工大理石用樹脂組成物に、撥水性の離型剤を所定量配合した場合、加熱硬化後の樹脂成形体の表面に離型剤が広く分布し、撥水性の表面になるため、成形型内から樹脂成形体を容易に脱型できる。
しかし、撥水性の離型剤により親水性アクリル樹脂の親水性の官能基による成形体の表面の親水効果が損なわれるので、表面の親水性を良好に確保できなくなる。そのため、油脂や石鹸カス等による汚れが付着して、その汚れ付着を完全に防止できないという問題が生じると考えられる。また、特許文献1についても同様の問題が生じる。
本発明の目的は、防汚性、耐水性、耐熱性及び成形時における成形型からの成形体の脱型が容易な人工大理石用樹脂成形体又はこの成形体を成形する為の材料である人工大理石用樹脂組成物を提供することである。
請求項1の人工大理石用樹脂組成物は、人工大理石用の主樹脂と、水酸基又は窒素含有基を有する親水性アクリル樹脂とを含む人工大理石用樹脂組成物であって、親水性の官能基を有する離型剤が含有されていることを特徴としている。
この人工大理石用樹脂組成物においては、水酸基又は窒素含有基を有する親水性アクリル樹脂と、親水性の官能基を有する離型剤とを含むので、この組成物を加熱硬化して成形品を製作した場合、親水性の離型剤が成形体の表面に広く分布するので、親水性、防汚性能、脱型性能に優れた人工大理石用樹脂成形体を成形するための樹脂組成物となる。
ここで、人工大理石用の主樹脂として、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、メラミン樹脂、スチレン樹脂などを採用することができる。また、水酸基又は窒素含有基を有する親水性のアクリル樹脂として、アミド基、メチロール基、メタアクリルアミド基などを有するアクリル樹脂を採用することができる。
また、親水性の官能基を有する離型剤として、水酸基、カルボキシレート基、カルボキシル基、ナトリウム、カリウム、カルシウム等の各種イオン性基、エーテル基などを有する離型剤を採用することができる。
請求項2の人工大理石用樹脂組成物は、請求項1の発明において、離型剤の親水性の官能基が水酸基であることを特徴としている。
請求項3の人工大理石用樹脂組成物は、請求項2の発明において、離型剤の主鎖がアルキル鎖であり、その炭素数が18〜22個であることを特徴としている。
請求項4の人工大理石用樹脂組成物は、請求項2又は3の発明において、離型剤の含有量が0.05%以上であることを特徴としている。
請求項3の人工大理石用樹脂組成物は、請求項2の発明において、離型剤の主鎖がアルキル鎖であり、その炭素数が18〜22個であることを特徴としている。
請求項4の人工大理石用樹脂組成物は、請求項2又は3の発明において、離型剤の含有量が0.05%以上であることを特徴としている。
請求項5の人工大理石用樹脂成形体は、人工大理石用の主樹脂と、水酸基又は窒素含有基を有する親水性アクリル樹脂と、親水性の官能基を有する離型剤との混合組成物を所定の成形型内に充填して加熱硬化させたことを特徴としている。
この人工大理石用樹脂成形体においては、人工大理石用の主樹脂と親水性アクリル樹脂と親水性の官能基を有する離型剤とを混合させた混合組成物が所定の成形型内に充填されて加熱硬化により成形されると、その成形時に主樹脂と親水性アクリル樹脂とが共重合反応により三次元網目構造の共重合体になり、人工大理石に相応しいものとなる。
また、加熱硬化により、親水性の官能基を有する離型剤が共重合体の周囲に分布し且つ成形体の表面に広く分布することになるので、親水性が一層向上した防汚性能及び脱型性能に優れた表面となる。
請求項6の人工大理石用樹脂成形体は、請求項5の発明において、離型剤の親水性の官能基が水酸基であることを特徴としている。
請求項7の人工大理石用樹脂成形体は、請求項6の発明において、離型剤の主鎖がアルキル鎖であり、その炭素数が18〜22個であることを特徴としている。
請求項8の人工大理石用樹脂成形体は、請求項6又は7の発明において、離型剤の含有量が0.05%以上であることを特徴としている。
請求項7の人工大理石用樹脂成形体は、請求項6の発明において、離型剤の主鎖がアルキル鎖であり、その炭素数が18〜22個であることを特徴としている。
請求項8の人工大理石用樹脂成形体は、請求項6又は7の発明において、離型剤の含有量が0.05%以上であることを特徴としている。
請求項1の発明によれば、人工大理石用樹脂組成物は、水酸基又は窒素含有基を有する親水性アクリル樹脂を含むので、加熱硬化後の成形体の表面側にアクリル樹脂の親水基が分布し、表面が親水性と防汚性能に優れる人工大理石用樹脂成形体の樹脂材料に適した人工大理石用樹脂組成物が得られる。
しかも、人工大理石用樹脂組成物は、親水性の官能基を有する離型剤を含有するので、加熱硬化後の成形体の表面に親水性の官能基を有する離型剤が広く分布するため、この親水性の離型剤により成形体表面の親水効果が一層向上して防汚性能及び脱型性能に優れる人工大理石用樹脂成形体の樹脂材料に適した人工大理石用樹脂組成物が得られる。
また、この樹脂組成物は、加熱硬化により、高密度の三次元網目構造を有し、耐水性、耐熱性に優れる人工大理石用樹脂成形体を成形するのに好適の樹脂組成物となる。
請求項2の発明によれば、離型剤の親水性の官能基が水酸基であるので、表面の親水効果をより一層高めた人工大理石用樹脂成形体の樹脂材料に適した人工大理石用樹脂組成物が得られる。
請求項3の発明によれば、離型剤がアルキル鎖であり、その炭素数が18〜22個であるので、良好な離型性能が得られる。
アルキル鎖の炭素数が17個以下の場合には、炭素数18個以上のものに比べて、離型性能が格段に低下する。また、アルキル鎖の炭素数が23個以上の場合、その主鎖の直鎖状態を維持できず折れ易くなるので、離型性能が低下する。
アルキル鎖の炭素数が17個以下の場合には、炭素数18個以上のものに比べて、離型性能が格段に低下する。また、アルキル鎖の炭素数が23個以上の場合、その主鎖の直鎖状態を維持できず折れ易くなるので、離型性能が低下する。
請求項4の発明によれば、離型剤の含有量が0.05%以上であるので、樹脂との相溶性がよく、防汚性能を維持しつつ良好な離型性能が得られる。
請求項5の発明によれば、人工大理石用の主樹脂と親水性アクリル樹脂との混合組成物が所定の成形型内に充填されて成形されると、その成形時に主樹脂と親水性アクリル樹脂とが共重合反応により三次元網目構造の共重合体になり、成形体の表面側にアクリル樹脂の親水基が分布し、表面が強い親水性で防汚性能に優れる人工大理石用樹脂成形体を得ることができる。
しかも、混合組成物は、親水性の官能基を有する離型剤を含むので、加熱硬化後の成形体の表面に親水性の官能基を有する離型剤が広く分布するため、この親水性の離型剤により表面の親水効果が一層向上した防汚性能及び脱型性能に優れる人工大理石用樹脂成形体を得ることができる。
また、加熱硬化により、高密度の三次元網目構造を有し、強度、親水性、防汚性能、耐水性、耐熱性に優れる人工大理石用樹脂成形体が得られる。
請求項6の発明によれば、離型剤の親水性の官能基が水酸基であるので、表面の親水効果をより一層高めた人工大理石用樹脂成形体が得られる。
請求項7の発明によれば、離型剤の主鎖がアルキル鎖であり、その炭素数が18〜22個であるので、防汚性能及び離型性能の高い人工大理石用樹脂成形体が得られる。
アルキル鎖の炭素数が17個以下の場合には、炭素数18個以上のものに比べて、成形体の離型性能が格段に低下する。また、アルキル鎖の炭素数が23個以上の場合、そのアルキル主鎖の直鎖状態を維持できず折れ易くなるので、成形体の離型性能が低下する。
アルキル鎖の炭素数が17個以下の場合には、炭素数18個以上のものに比べて、成形体の離型性能が格段に低下する。また、アルキル鎖の炭素数が23個以上の場合、そのアルキル主鎖の直鎖状態を維持できず折れ易くなるので、成形体の離型性能が低下する。
請求項8の発明によれば、離型剤の含有量が0.05%以上であるので、樹脂との相溶性もよく防汚性能を維持しつつ良好な離型性能を有する人工大理石用樹脂成形体を得ることができる。
以下、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
本発明の人工大理石用樹脂組成物は、人工大理石用の主樹脂と、水酸基又は窒素含有基を有する親水性アクリル樹脂と、親水性の官能基を有する離型剤とを含有する組成物である。
本発明の人工大理石用樹脂組成物は、人工大理石用の主樹脂と、水酸基又は窒素含有基を有する親水性アクリル樹脂と、親水性の官能基を有する離型剤とを含有する組成物である。
本発明の人工大理石用樹脂成形体は、人工大理石用の主樹脂と、水酸基又は窒素含有基を有する親水性アクリル樹脂と、親水性の官能基を有する離型剤との混合組成物を所定の成形型内に充填して加熱硬化させて成形された人工大理石用樹脂成形体である。
上記の人工大理石用の主樹脂は、浴槽、洗面カウンター、洗面ボール、キッチンカウンターなどを成形するための人工大理石用の主樹脂であり、一般的に使用される熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂であればよい。この主樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、メラミン樹脂、スチレン樹脂などを使用することができる。これらは単独又は2種以上組み合わせて使用することができ、目的や用途に応じて適宜選択することができる。
上記人工大理石用の主樹脂に適用するアクリル樹脂としては、メタクリル酸メチル(MMA)モノマー又はヒドロキシエチルメチルアクリレート(HEMA)モノマーなどに、多官能のアクリルモノマー、プレポリマー、ポリマーのうちの2種類以上を混合したアクリルシラップ溶液を用いるが、その形態は特に限定されるものではない。
上記人工大理石用の主樹脂に適用するポリエステル樹脂としては、無水マレイン酸のような不飽和二塩基酸及び無水フタル酸のような飽和二塩基酸と、グリコール類とを縮合反応させて合成され、分子内に不飽和結合とエステル結合を有するものを用いる。通常、この樹脂には架橋剤としてスチレンモノマー、アクリルモノマーなどが配合され、不飽和ポリエステル樹脂と称され、その形態は特に限定されるものではない。
親水性のアクリル樹脂を構成する、水酸基を有するアクリルモノマーとしては、メチロール基[−CH2 OH]を有するアクリルモノマーを適用でき、この場合、親水性アクリル樹脂は、メチロール基を有するアクリルモノマーが重合した重合体である。
親水性のアクリル樹脂を構成する、窒素含有基を有する親水性のアクリルモノマーとしては、アミド基[−NHX ]を有するアクリルモノマー、メタクリルアミド基[−COONHCH2 OH]を有するアクリルモノマーを適用できる。この場合、親水性アクリル樹脂は、アミド基を有するアクリルモノマーやメタクリルアミド基を有するアクリルモノマーが重合した重合体である。
親水性のアクリル樹脂を構成する、窒素含有基を有する親水性のアクリルモノマーとしては、アミド基[−NHX ]を有するアクリルモノマー、メタクリルアミド基[−COONHCH2 OH]を有するアクリルモノマーを適用できる。この場合、親水性アクリル樹脂は、アミド基を有するアクリルモノマーやメタクリルアミド基を有するアクリルモノマーが重合した重合体である。
上記親水性の離型剤は、一般的に、原料組成物に配合される内部離型剤であり、離型性能を担う炭化水素主鎖(アルキル主鎖)に、親水性の官能基を付加することで離型剤自体を親水化したものである。この親水性の離型剤においては、疎水基(非極性基)部分のアルキル主鎖の炭素数は、16〜22個、特に好ましくは18〜22個のものを適用する。一般的な傾向として、アルキル主鎖の炭素数が15個以下の場合には、炭素数が16個以上のものに比べて、成形体の離型性能が格段に低下する。また、アルキル主鎖の炭素数が23個以上の場合、アルキル主鎖の直鎖状態を維持できず折れ易くなるので、成形体の離型性能が低下する。
極性基部分の親水性の官能基としては、1価、好ましくは2価以上の水酸基、カルボキシレート基、カルボキシル基、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン等の各種イオン性基やエーテル基等が好ましい。なお、カルボキシレート基、カルボキシル基は、非極性基部分のアルキル主鎖の炭素数が小さいものに付加するのが望ましい。また、エーテル基は連続したエーテル基の方が、親水性が向上するので望ましい。
特に、水酸基は、上記の種々の親水性の官能基の中で親水性能が最も高く、樹脂との相溶性も良好であり、防汚性能を維持しつつ高い離型性能を発揮する。1価又は2価水酸基を付加した親水性の離型剤としては、セトステアリルアルコール(アルキル主鎖の炭素数が18個で1価の水酸基を付加したもの)、ラウリルアルコール(アルキル主鎖の炭素数が22個で1価の水酸基を付加したもの)、モノグリセライト(アルキル主鎖の炭素数が18個で2価の水酸基を付加したもの)等を適用できる。
人工大理石用樹脂組成物の組成について、親水性アクリル樹脂の添加重量比率を10%以上にすることが必要であり、好ましくは、30%以上にすることが望ましい。主樹脂に対するアクリル樹脂の相溶性は高く、上記の組成重量比率の増大に応じて、成形体の表面側に分布するアクリル樹脂の親水性官能基の量が増大する。親水性アクリル樹脂の添加重量比率の上限値としては、75%よりも大きな値にし得ると考えられる。尚、添加重量比率75%までの組成物から製作した成形体の防汚性能を実験により確認している。
また、親水性の離型剤の添加重量比率は、0.05%以上、好ましくは2.4%以上が望ましい。離型剤は、樹脂表面に高濃度で分布する性質を有しており、上記の添加重量比率の増大に応じて、成形体の表面に分布する離型剤の量が増加する。
この人工大理石用樹脂組成物においては、人工大理石用樹脂成形体に適宜用途に応じて石目調人工大理石の風合いを出すために、粗粉砕物、表面処理した無機充填粒子(無機充填剤)、硬化剤などを適当量添加する。上記の粗粉砕物としては、天然物シリカ、寒水石、珪石、樹脂硬化物などを採用することができる。無機充填粒子としては、硝子フリット、シリカ、アルミ粉、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルクなどを採用することができる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、目的や用途に応じて適宜選択することができる。
上記の無機充填粒子の表面には、主樹脂などとよく相溶するように適当な表面処理方法でカップリング処理することが好ましい。カップリング処理には、一般的に使用されるシラン系、チタネート系などのカップリング処理剤を使用し、乾式法、湿式法など一般的に使用される方法で処理すればよい。
上記の硬化剤としては、日油(株)製の「パーロイルTCP」(商品名)や化薬アクゾ(株)製の「パーカドックス16」(商品名)や「トリゴノックス121」(商品名)を適当量使用し、日本ポリウレタン工業(株)製のイソシアネート硬化剤「コロネートHX」(商品名)などを随時適当量使用すればよい。これら硬化剤を使用することにより、人工大理石用樹脂成形体の高密度の三次元網目構造が強化され、成形体の強度が一層向上する。
人工大理石用樹脂組成物を調合する際には、上述の組成重量比率となるように調合された主樹脂と親水性アクリル樹脂の混合組成物に無機充填粒子や硬化剤などを添加し、その混合組成物を均一に攪拌して無機充填粒子と硬化剤を均一に分散させた後、親水性の離型剤を添加して攪拌する。
主樹脂及び親水性アクリル樹脂に無機充填粒子と硬化剤を攪拌して均一に分散させる方法としては、ディスパーミキサー、ヘンシェルミキサー、プラネタリミキサー、ボールミル、ビーズミル、オムニミキサー、振動・遠心力などを利用する非メディア系の分散・攪拌装置を使用し、適当な時間均一に攪拌すればよい。
上記のように調合した人工大理石用樹脂組成物を所定形状の注型用成形型に加圧充填し、成形型の温度を50〜100℃程度に保持すると、主樹脂と親水性アクリル樹脂とが共重合して高密度の三次元網目構造を形成する。
成形型を50〜100℃程度に保持すると、少なくとも成形型の付近においては、親水性アクリル樹脂の粘性を低くして流動性を高め、親水性アクリル樹脂を混合しやすくし、少なくとも樹脂成形体の表層部に上記の親水性の官能基を確実に分布させることができるうえ、加熱硬化により、三次元網目構造を強化することができる。尚、親水性アクリル樹脂の粘度は、例えば、1cp〜5000cp(25℃)の範囲が必要であり、好ましくは50〜1000cp(25℃)の範囲が望ましい。
また、成形型を50〜100℃程度に保持すると、主樹脂や親水性のアクリル樹脂に比べて分子量が小さい親水性の離型剤が熱により分散し、成形型近傍に向かって流動するので、親水性の離型剤を樹脂成形体の表層面に分布させることができる。
前記の所定形状の成形型として、浴槽成形用の成形型、洗面カウンター成形用の成形型、洗面ボール成形用の成形型、キッチンカウンター成形用の成形型などを採用して、浴槽、洗面カウンター、洗面ボール、キッチンカウンターなどの水回り部材、給湯器外壁部材、住居用外壁部材などの成形体を製作することができる。尚、この人工大理石用樹脂成形体は、他の樹脂成形品や芯材の表面に塗布又は成形して表面保護層としても用いることができる。
成形方法としては、注型用成形型を用いて成形する方法の他に、射出成形による成形方法、プレス成形による方法などを採用可能である。また、ゲルコートなどのコーティングとして樹脂成形品や芯材の表面に人工大理石用樹脂成形体を付加してもよい。
人工大理石用樹脂成形体においては、この樹脂成形体の表面側には、親水性アクリル樹脂の親水性の官能基が十分な密度で分布しているため、この樹脂成形体の表面は高い親水性を有するうえ、加熱硬化で形成された強固な三次元網目構造故に、強度、親水性、耐水性、耐熱性に優れる。表面の親水性が高いため汚れが付着しにくく防汚性に優れる。特に、浴槽の場合には、その内壁面の喫水線域に油脂や石鹸カス等の汚れがほとんど付着しなくなる。また、汚れが付着した場合でも、その汚れを容易に取り除くことができる。
さらに、人工大理石用樹脂成形体においては、樹脂成形体の表面に親水性の離型剤が広く分布しているので、親水性アクリル樹脂の親水性の官能基による樹脂成形体の表面の親水効果が損なわれることなく、親水性の離型剤により親水効果が一層向上して防汚性能及び脱型性能に優れた表面になる。成形時における注型用成形型内からの樹脂成形体の脱型が容易になるので、樹脂成形体の生産性が向上する。
以下、本発明の実施例について説明する。
比較例1〜5と実施例1〜5の人工大理石用樹脂組成物(以下、サンプル樹脂という)を製作し、それらサンプル品についての対水接触角、対オレイン酸接触角、防汚性能と離型性能を評価した。
比較例1〜5と実施例1〜5の人工大理石用樹脂組成物(以下、サンプル樹脂という)を製作し、それらサンプル品についての対水接触角、対オレイン酸接触角、防汚性能と離型性能を評価した。
比較例1〜5と実施例1〜5のサンプル樹脂には、人工大理石用の主樹脂として、日本ユピカ(株)製「8900」の「アクリルシラップ溶液」(メタクリル酸メチルを溶解させたアクリル系の樹脂)を用いた。親水性アクリル樹脂として、新中村化学工業(株)製「701a」を用いた。
また、比較例1〜5と実施例1〜5のサンプル樹脂には、適当量のカップリング処理済みの無機粒子(カップリング処理済み)として、キンセイマテック(株)製「SQ−7」、適当量の硬化剤として日油(株)製「パーロイルTCP」を夫々添加し、これらを所定時間分散及び攪拌することにより、粒子含有サンプル樹脂を得た。さらに、比較例1を除いて、この粒子含有サンプル樹脂に、撥水性の離型剤又は日油(株)や信越化学工業(株)製の親水性の官能基を有する離型剤を表1に従って夫々添加し、所定時間攪拌することにより最終の粒子含有サンプル樹脂を得た。
表1に示すように、比較例2〜5及び実施例1〜5のサンプル樹脂は、比較例1の離型剤未使用のサンプル樹脂に、撥水性又は親水性の離型剤を添加したものである。離型剤の種類と組成重量比率は、比較例2,3では、撥水性の離型剤としてステアリン酸亜鉛を0.10%、0.50%、比較例4では親水性の離型剤としてモノステアレートを0.80%、比較例5では親水性の離型剤としてジステアレートを0.80%、実施例1では親水性の離型剤としてセトステアリルアルコールを0.80%、実施例2では親水性の離型剤としてラウリルアルコールを0.80%、実施例3〜5では親水性の離型剤としてモノグリセライトを0.05%、0.80%、2.40%である。
上記のように準備した粒子含有サンプル樹脂を、縦横の寸法が各々10cmで厚みが約5mmの成形キャビティを有する注型用成形型内に加圧充填し、金型温度(50〜100℃)と硬化時間(30分〜60分)を調整し、上記サイズのサンプル品を成形した。
上記のように得られた比較例1〜5と実施例1〜5のサンプル品を用いて、対水接触角値、対オレイン酸接触角値、防汚性能、離型性能を評価した(表1参照)。
上記のように得られた比較例1〜5と実施例1〜5のサンプル品を用いて、対水接触角値、対オレイン酸接触角値、防汚性能、離型性能を評価した(表1参照)。
対水接触角は、各サンプル品の表面に水滴を付着させ、Tantec社製のcontact angle meter 「CA−MM」を用いて対水接触角を測定した。表1に示す対水接触角値は、サンプル品の表面上でランダムに10箇所測定した全ての平均値である。この平均値から対水接触角の評価を3段階にレベル分けした。対水接触角値が55°以下の場合には、表面の親水性が高いため表1では「○」で表示した。また、対水接触角値が55°より大きく65°以下の場合には、表面の親水性が比較的高いため表1では「○△」で表示した。対水接触角値が66°以上の場合には、表面の親水性が低いため表1では「△」で表示した。
一方、対オレイン酸接触角は、各サンプル品の表面にオレイン酸の液滴を付着させ、Tantec社製のcontact angle meter 「CA−MM」を用いて対オレイン酸接触角を測定した。表1に示す対オレイン酸触角値は、サンプル品の表面上でランダムに10箇所測定した全ての平均値である。この平均値から対オレイン酸接触角は2段階にレベル分けした。対オレイン酸接触角値が25°以下の場合には、表面の対油脂防汚性能が高いため表1では「○」で表示した。また、対オレイン酸接触角値が26°以上30°未満の場合には、表面の対油脂防汚性能が比較的高いため表1では「○△」で表示した。
各サンプル品の防汚性能については、これまで蓄積した防汚性能実験データにて確認された対水接触角値及び対オレイン酸接触角値と防汚性能との間には強い相関性があることに考慮して、その防汚評価を4段階にレベル分けした。サンプル品の表面の防汚性能が良好である場合には表示1では「○」で表示した。サンプル品の表面の防汚性能が比較的良好である場合には表示1では「○△」で表示した。サンプル品の表面の防汚性能があまり良好でない場合には表示1では「△」で表示した。サンプル品の表面の防汚性能が不良である場合には表示1では「△×」で表示した。
サンプル品の離型性能については、成形時における注型用成形型内からのサンプル品の取り出し易さを5段階にレベル分けした。取り出し易かった場合にはサンプル品の表面の離型性能が良好であるので表1では「○」で表示した。比較的取り出し易かった場合にはサンプル品の表面の離型性能がほぼ良好であるので表1では「○△」で表示した。比較的取り出し難かった場合にはサンプル品の表面の離型性能が良好ではないので表1では「△」で表示した。取り出し難かった場合にはサンプル品の表面の離型性能がほぼ不良であるので表1では「△×」で表示した。サンプル品が成形型内に張りついて取り出すことができなかった場合にはサンプル品の表面の離型性能が不良であるので表1では「×」で表示した。
表1に示す評価結果から分かるように、実施例1〜5のサンプル品において、離型剤の親水性の官能基が1価又は2価の水酸基の場合、対水接触角値がほぼ55°以下となり、良好な親水性と防汚性能と離型性能が得られた。特に、実施例5のサンプル品において、離型剤の親水性の官能基が2価の水酸基で、添加重量比率が2.4%の場合には、対水接触角値が50°以下となり、比較例1の離型剤を添加しなかった場合に比べて、より一層優れた親水性及び防汚性能が得られると同時に、優れた離型性能が得られた。
これに対して、比較例3においては、撥水性の離型剤の場合、実施例5と同等の離型性能を得ることができるが、撥水性の離型剤により表面の親水効果が損なわれ、対水接触角値が70°となり、親水性、防汚性能が不良であった。比較例4,5においては、親水性の官能基をエステル鎖とする親水性の離型剤の場合、十分な親水性、防汚性能、離型性能が得られなかった。
上記評価結果から、対水接触角値が55°以下、対オレイン酸接触角値が25°以下である人工大理石用樹脂組成物を加熱硬化して人工大理石用樹脂成形体を成形する際、防汚性能な良好な前記接触角測定範囲条件を維持し、且つ高い離型性能を付与する為に、親水性の官能基として少なくとも水酸基を1価、好ましくは2価以上、疎水基部分のアルキル主鎖の炭素数が18〜22個の直鎖状アルキル主鎖を含有している親水性の離型剤を少なくとも0.05%以上、特に好ましくは2.4%以上の重量比率で添加することにより、防汚性能を損なうことのない離型性能に優れた人工大理石用樹脂成形体が得られることが確認できた。
このように、人工大理石用の主樹脂に、水酸基又は窒素含有基を有する親水性アクリル樹脂と、親水性の官能基として水酸基を有する離型剤を混合させた混合組成物を注型用成形型内に充填して加熱硬化させて成形した人工大理石用樹脂成形体においては、樹脂成形体の表面に親水性の離型剤が分布するため、この親水性の離型剤により表面の親水効果が一層向上した防汚性能及び脱型性能に優れる成形体が得られる。
Claims (8)
- 人工大理石用の主樹脂と、水酸基又は窒素含有基を有する親水性アクリル樹脂とを含む人工大理石用樹脂組成物であって、親水性の官能基を有する離型剤が含有されていることを特徴とする人工大理石用樹脂組成物。
- 前記離型剤の親水性の官能基が水酸基であることを特徴とする請求項1に記載の人工大理石用樹脂組成物。
- 前記離型剤の主鎖がアルキル鎖であり、その炭素数が18〜22個であることを特徴とする請求項2に記載の人工大理石用樹脂組成物。
- 前記離型剤の含有量が0.05%以上であることを特徴とする請求項2又は3に記載の人工大理石用樹脂組成物。
- 人工大理石用の主樹脂と、水酸基又は窒素含有基を有する親水性アクリル樹脂と、親水性の官能基を有する離型剤との混合組成物を所定の成形型内に充填して加熱硬化させたことを特徴とする人工大理石用樹脂成形体。
- 前記離型剤の親水性の官能基が水酸基であることを特徴とする請求項5に記載の人工大理石用樹脂成形体。
- 前記離型剤の主鎖がアルキル鎖であり、その炭素数が18〜22個であることを特徴とする請求項6に記載の人工大理石用樹脂成形体。
- 前記離型剤の含有量が0.05%以上であることを特徴とする請求項6又は7に記載の人工大理石用樹脂成形体。
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2008
- 2008-07-17 JP JP2008185643A patent/JP2010024308A/ja active Pending
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