JP2010022974A - 排ガス処理方法及び排ガス処理装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】石炭焚きボイラBから排出される排ガス中に含まれる水銀を除去する排ガス処理方法であって、遷移金属であるバナジウムの酸化物及びバナジウム以外の遷移金属の酸化物を担体上に担持して成る脱硝触媒のうちのバナジウム酸化物の一部を該バナジウム以外の酸化還元能力を有する遷移金属酸化物と置き換えた置換触媒9を形成し、置換触媒9を石炭焚きボイラBからの煙道Rに設置した脱硝部3に位置させて、排ガス中に含まれる金属水銀の酸化反応を促進させる。
【選択図】図1
Description
この水銀を排ガスから除去する排ガス処理装置としては、例えば、石炭焚きボイラから煙突に至るまでの煙道に、脱硝部、脱塵部及び脱硫部を順次配置して成るものがある。
大気中に放出された金属水銀Hg0は、環境中でより有害な有機水銀(メチル水銀)に変換されるので、この有機水銀が魚貝類などの食用生物に蓄積されて、これが食物連鎖を経て人体内へ入り込むことが懸念されている。
そこで、米国では、石炭焚きボイラなどの燃焼装置から排出される排ガス中の水銀を除去する技術として、煤塵を除去する電気集じん器やバグフィルタなどの脱塵部の上流に、活性炭などの水銀吸着剤を吹き込み、この吸着剤表面に水銀を吸着させて除去する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
ここで、排ガス中に含まれる金属水銀Hg0は、水銀と同じく石炭に含まれる塩素に起因する塩化水素(HCl)によって、反応式(1)に示すように、脱硝触媒や石炭灰や未燃焼分炭素の表面上で酸化される。この脱硝触媒としては、通常、バナジウム(V)とタングステン(W)の各酸化物、又は、バナジウム(V)とモリブデン(Mo)の各酸化物を酸化チタン(TiO2)に担持させたものを原料とするハニカム構造体が用いられる。
但し、2価水銀Hg2+はHgCl2である。
この反応は、平衡上低温になればなる程進行し、HCl濃度が高い程高温で2価水銀Hg2+が安定して生成される。
上記脱硝触媒において、水銀酸化反応が進行するので、この脱硝触媒の下流側の排ガス中では、2価水銀Hg2+の割合が高くなる。生成した2価水銀Hg2+は、金属水銀Hg0に比べて吸着性が強いことから、まず、脱塵部において灰の表面に吸着して粒子状水銀HgPとして捕集され、一方、この脱塵部で捕集されなかった2価水銀Hg2+は、湿式の脱硫部において脱硫排水中に捕集される。
このような脱硝触媒上での水銀酸化を利用した排ガス中微量有害物質の除去装置及びその運転方法(例えば、特許文献2参照)や、同じく脱硝触媒での水銀酸化反応を利用して湿式脱硫部で水銀を捕集する排ガス処理装置および排ガス処理方法(例えば、特許文献3参照)が提案されているが、これらの水銀除去技術では、水銀を酸化して除去する手立てとしては有効であるものの、脱硝触媒上での水銀酸化反応は、図3に示すように、脱硝反応用として煙道に噴霧されるアンモニア(NH3)によって阻害されるため、それ程高い効果を期待することができないのが実情である。
一方、上記した従来における脱硝触媒の他の脱硝触媒として、水銀酸化反応に高い活性を示す種々の触媒を採用する水銀除去方法が提案されており、この水銀除去方法では、TiO2,SiO2,ZrO2のうちの少なくとも一つの酸化物及び/又はゼオライトを担体として使用し、この担体にPt,Ru,Rh,Pd,Ir,V,W,Mo,Ni,Co,Fe,Cr,Cu,Mnのうちの少なくとも一つの金属を担持させて成る触媒を用いて、脱硝反応及び水銀酸化反応を行わせるようにしている(例えば、特許文献4参照)。
しかしながら、石炭焚きボイラなどの燃焼装置から排出される排ガス中のNOxを処理する脱硝触媒では、例えば、バナジウム(V)とタングステン(W)の各酸化物(V2O5,WO3)や、バナジウム(V)とモリブデン(Mo)の各酸化物(V2O5,MoO3)を酸化チタン(TiO2)に担持させた脱硝触媒では、V2O5の担持量が1重量%以下に抑えられ、WO3やMoO3の担持量が10重量%以下に抑えられている。
この二酸化硫黄(SO2)は、反応式(2)に示すようにして酸化され、この酸化反応により生成される三酸化硫黄(SO3)は、脱硝触媒よりも下流において、未反応のアンモニアと反応して硫酸アンモニウムを生成したり、排ガス中の水分が凝縮する温度域で硫酸となって腐食の原因になったりすることから、その生成量を極めて低く制御する必要がある。
つまり、水銀の酸化反応を促進するために、脱硝触媒の活性成分であるV2O5をはじめとするWO3やMoO3の担持量を増加させるということは、図4に示す脱硝触媒における水銀酸化率とバナジウム酸化物(V2O5)の担持量との関係、及び、図5に示す二酸化硫黄(SO2)の酸化速度とバナジウム酸化物(V2O5)の担持量との関係からも判るように、水銀酸化率の向上を図ることができるものの、二酸化硫黄(SO2)の酸化速度が増して、三酸化硫黄(SO3)の生成量も増加してしまうことになるので好ましくない。
本発明は、上記した課題を解決するためになされたもので、例えば、石炭を石炭焚きボイラ(燃焼装置)によって燃焼させる際に、二酸化硫黄(SO2)の酸化を低く抑えると共に高い脱硝率を維持したうえで、石炭焚きボイラから排出される排ガス中の水銀を高効率で且つ低コストで除去することが可能な排ガス処理方法及び排ガス処理装置を提供することを目的としている。
ここで、バナジウム酸化物の一部を該バナジウム以外の酸化還元能力を有する遷移金属酸化物と置き換えて置換触媒を形成する場合、バナジウム酸化物の酸化還元能力を有する遷移金属酸化物、例えば、クロムとの置き換え率が少ない10%未満では、二酸化硫黄(SO2)の酸化活性を低く抑えるというクロム置換による効果がほとんど期待できず、一方、バナジウム酸化物のクロムとの置き換え率を多くして90%を超えるようにすると、脱硝反応に活性なバナジウム酸化物の量が少なくなって、脱硝性能が低下してしまう。
このように、バナジウム酸化物の10〜90%を該バナジウム以外の酸化還元能力を有する遷移金属酸化物と置き換えた場合、バナジウム酸化物の酸化還元能力を有する遷移金属酸化物、例えば、クロムとの置き換え率が30%程度では、クロム置換による効果が期待できるものの十分とは言えず、一方、バナジウム酸化物のクロムとの置き換え率が70%程度においても、少ないとは言え脱硝性能の低下が見られる。
そして、より一層好ましい実施態様として本発明の請求項4に係る排ガス処理方法では、前記脱硝触媒のうちの前記バナジウム酸化物の45〜55%を該バナジウム以外の酸化還元能力を有する遷移金属酸化物と置き換えて置換触媒を形成する構成としており、このような構成を採用した場合には、二酸化硫黄の酸化活性を低く抑えつつ、且つ、脱硝性能の低下をも招くことなく、水銀酸化性能を向上させ得ることとなる。
一方、本発明の請求項6に係る発明は、石炭焚きボイラなどの燃焼装置から排出される排ガス中に含まれる水銀を除去する排ガス処理装置であって、前記燃焼装置からの煙道に設置した脱硝部に、遷移金属であるバナジウムの酸化物及び前記バナジウム以外の遷移金属の酸化物を担体上に担持して成る脱硝触媒のうちの前記バナジウム酸化物の一部を該バナジウム以外の酸化還元能力を有する遷移金属酸化物と置き換えて形成した置換触媒を配置した構成としたことを特徴としており、この排ガス処理装置の構成を前述した従来の課題を解決するための手段としている。
さらに、本発明の請求項8に係る排ガス処理装置において、前記置換触媒は、前記脱硝触媒のうちの前記バナジウム酸化物の30〜70%を該バナジウム以外の酸化還元能力を有する遷移金属酸化物と置き換えて成っている構成とし、本発明の請求項9に係る排ガス処理装置において、前記置換触媒は、前記脱硝触媒のうちの前記バナジウム酸化物の45〜55%を該バナジウム以外の酸化還元能力を有する遷移金属酸化物と置き換えて成っている構成としている。
図1は、本発明の一実施形態による排ガス処理装置を示しており、この実施形態では、本発明の排ガス処理方法及び排ガス処理装置を石炭焚きボイラ(燃焼装置)から排出される排ガスの処理に適用した場合を例に挙げて説明する。
図1に示すように、この排ガス処理装置1は、石炭焚きボイラBから煙突2に至るまでの煙道Rに順次配置した脱硝部3、エアヒータ4、脱塵部5、熱交換器6、脱硫部7及び熱交換器8を備えており、脱硝部3には、石炭焚きボイラBから排出される排ガス中に含まれる金属水銀の酸化反応を促進させる置換触媒9が配置してある。
この際、Vについてはバナジウム酸アンモニウム(NH4VO3)を出発原料として用い、Wについてはパラタングステン酸アンモニウム((NH4)10W12O41・5H2O)を出発原料として用い、Crについては硝酸クロム(Cr(NO3)3・9H2O)を出発原料として用いた。
a. 1wt%V2O5+10wt%WO3/TiO2
b. 0.5wt%V2O5+0.5wt%Cr2O3+10wt%WO3/TiO2
c. 1wt%Cr2O3+10wt%WO3/TiO2
これらの酸化チタン粉末を含浸させた水溶液をスターラで攪拌しつつ、徐々に蒸発させて余分な水分を除去した後、120℃にセットした乾燥器中で乾燥させて余分な水分を完全に取り除き、この十分に乾燥させた触媒担体を空気中において400℃で3時間焼成させることによって、3種類の組成の金属酸化物担持酸化チタン触媒、すなわち、この実施形態で置換触媒9として用いる触媒b及び比較用の触媒a,cを調製した。
まず、石炭を燃焼させた際の排ガスを模した混合ガス[NO(200ppm),SO2(200ppm),O2(2%),CO2(10%),H2O(10%)(N2バランス)]に、金属水銀Hg0を10μg/m3、塩化水素HClを10ppm添加し、触媒試料の前後における金属水銀Hg0及び2価水銀Hg2+の各濃度を分析した。触媒試料に供給したガスの総流量は、約1800cc/minであり、触媒試料の出入り口の各水銀濃度は、形態別連続水銀分析計を用いて計測した。
水銀酸化率(%)=(入口Hg0濃度−出口Hg0濃度)/入口Hg0濃度
また、脱硝反応の還元剤であるNH3をNOに対してモル比で0.33添加し、触媒の前後におけるNO濃度を分析し、これに基づいて脱硝率を以下のようにして求めた。
脱硝率(%)=(入口NO濃度−出口NO濃度)/入口NO濃度×100
なお、NO濃度は、化学発光方式(Chemiluminescence)により決定した。
SO2酸化率∝TOF(V2O5)×触媒中のV担持量+TOF(Cr2O3)×触媒中のCr担持量
ここで、TOF(Turn Over Frequency)は、担持した酸化物における活性元素1mol当たりの水銀酸化反応速度であり、TOF(V2O5)及びTOF(Cr2O3)は、バナジウム(V)及びクロム(Cr)1mol当たりに換算したSO2の反応速度で定義され、SO2酸化率は、触媒中の活性金属のSO2酸化速度(TOF)に比例すると見なすことができる。
その結果、図2から判るように、V2O5の一部をCr2O3で置き換えた組成の触媒bを置換触媒9として用いることで、SO2酸化率を低減しつつも、高い水銀酸化率が得られることが実証できた。また、脱硝率がやや低下するものの、それ以上にSO2酸化率を低減させることができ、特に、この効果は、運用上に起こり得る350℃以上の温度で、より顕著に認められる。
そして、湿式脱硫部7では、上記脱塵部5を通過した2価水銀Hg2+(HgCl2)を液相で吸収して汚泥中に取り込んで捕集し、この後、水銀を含んだ汚泥を回収処理するようにしている。
3 脱硝部
9 置換触媒
B 石炭焚きボイラ(燃焼装置)
R 煙道
Claims (10)
- 石炭焚きボイラなどの燃焼装置から排出される排ガス中に含まれる水銀を除去する排ガス処理方法であって、
遷移金属であるバナジウムの酸化物及び前記バナジウム以外の遷移金属の酸化物を担体上に担持して成る脱硝触媒のうちの前記バナジウム酸化物の一部を該バナジウム以外の酸化還元能力を有する遷移金属酸化物と置き換えた置換触媒を形成し、
この置換触媒を前記燃焼装置からの煙道に設置した脱硝部に位置させて、前記排ガス中に含まれる金属水銀の酸化反応を促進させる
ことを特徴とする排ガス処理方法。 - 前記脱硝触媒のうちの前記バナジウム酸化物の10〜90%を該バナジウム以外の酸化還元能力を有する遷移金属酸化物と置き換えて置換触媒を形成する請求項1に記載の排ガス処理方法。
- 前記脱硝触媒のうちの前記バナジウム酸化物の30〜70%を該バナジウム以外の酸化還元能力を有する遷移金属酸化物と置き換えて置換触媒を形成する請求項1に記載の排ガス処理方法。
- 前記脱硝触媒のうちの前記バナジウム酸化物の45〜55%を該バナジウム以外の酸化還元能力を有する遷移金属酸化物と置き換えて置換触媒を形成する請求項1に記載の排ガス処理方法。
- 前記バナジウム以外の酸化還元能力を有する遷移金属酸化物としてCr2O3を用いた請求項1〜4のいずれか一つの項に記載の排ガス処理方法。
- 石炭焚きボイラなどの燃焼装置から排出される排ガス中に含まれる水銀を除去する排ガス処理装置であって、
前記燃焼装置からの煙道に設置した脱硝部に、遷移金属であるバナジウムの酸化物及び前記バナジウム以外の遷移金属の酸化物を担体上に担持して成る脱硝触媒のうちの前記バナジウム酸化物の一部を該バナジウム以外の酸化還元能力を有する遷移金属酸化物と置き換えて形成した置換触媒を配置した
ことを特徴とする排ガス処理装置。 - 前記置換触媒は、前記脱硝触媒のうちの前記バナジウム酸化物の10〜90%を該バナジウム以外の酸化還元能力を有する遷移金属酸化物と置き換えて成っている請求項6に記載の排ガス処理装置。
- 前記置換触媒は、前記脱硝触媒のうちの前記バナジウム酸化物の30〜70%を該バナジウム以外の酸化還元能力を有する遷移金属酸化物と置き換えて成っている請求項6に記載の排ガス処理装置。
- 前記置換触媒は、前記脱硝触媒のうちの前記バナジウム酸化物の45〜55%を該バナジウム以外の酸化還元能力を有する遷移金属酸化物と置き換えて成っている請求項6に記載の排ガス処理装置。
- 前記バナジウム以外の酸化還元能力を有する遷移金属酸化物をCr2O3とした請求項6〜9のいずれか一つの項に記載の排ガス処理装置。
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Citations (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH06182202A (ja) * | 1992-12-21 | 1994-07-05 | Mitsubishi Heavy Ind Ltd | 低温脱硝触媒 |
WO2008035773A1 (en) * | 2006-09-22 | 2008-03-27 | Babcock-Hitachi Kabushiki Kaisha | Catalyst for oxidation of metal mercury |
-
2008
- 2008-07-23 JP JP2008189735A patent/JP2010022974A/ja active Pending
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