以下、本発明の吸収体を、該吸収体を具備する本発明の吸収性物品と共に、その好ましい一実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本実施形態の吸収性物品の一実施形態である生理用ナプキンの斜視図が示されている。図2は図1におけるX−X線断面図である。
本実施形態の生理用ナプキン1(以下、ナプキン1ともいう)は、表面層、裏面層、及びこれら両層間に配置され吸水性材料を含有する吸収層を具備している。より具体的にはナプキン1は、図1に示すように一方向に長い形状をしており、液透過性の表面層としての表面シート2、液不透過性の裏面層としての裏面シート3、及び両シート2,3間に配置された液保持性の吸収層としての吸収体4を具備している。吸収体4は一方向に長い形状をしており、その長手方向をナプキン1の長手方向と一致させて、ナプキン1の幅方向中央部に配されている。
図2に示すように、表面シート2は、吸収体4の肌当接面の全域を被覆し、裏面シート3は、吸収体4の非肌当接面の全域を被覆している。表面シート2及び裏面シート3は、吸収体4の周縁部から外方に延出した延出部分において互いに接合されてエンドシール部6が形成されている。裏面シート3の非肌当接面上には粘着剤が塗布されて、ナプキン1をショーツ等に固定するための固定部(図示せず)が形成されている。表面シート2は、従来公知のものと同様の材料から構成することができ、例えば親水性の不織布や開孔フィルム等が用いられる。裏面シート3は、例えば液不透過性のフィルムシートから構成されており、この液不透過性のフィルムシートは水蒸気透過性を有していても良い。
尚、本明細書において、「長手方向」は、吸収性物品又はその構成部材の長辺方向に沿う方向であり、「幅方向」は、該長手方向と直交する方向である。また、「肌当接面」は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品着用時に着用者の肌側に向けられる面であり、「非肌当接面」は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品着用時に下着側(着用者の肌側とは反対側)に向けられる面である。
本実施形態の吸収体4は、吸水性ポリマー又は繊維を含有する薄型の吸収性シート4a,4bを含んで構成されている。より具体的には吸収体4は、2枚の吸収性シート4a,4aが重ね合わされて積層体とされ、更に該積層体の上下面それぞれに別の吸収性シート4b,4bが重ね合わされて構成されており、4枚の薄型の吸収性シートの積層体からなる。吸収性シート4aと吸収性シート4bとは、組成は同じで寸法のみが異なっており、吸収体4の厚み方向内方に位置する吸収性シート4aの方が、厚み方向外方に位置する吸収性シート4bよりも平面視における寸法(長手方向及び幅方向の長さ)が小さい。吸収体4が斯かる構成を有していることにより、製品中央部の吸収容量が高くなっていることで、経血がナプキン全体に広がりにくく、狭い範囲の洗浄で済む。また、ナプキンの着用中に吸収体4がヨレにくく、且つ、ナプキンの洗浄時に吸収体4が偏りにくく、絞り易い。尚、吸収性シート4aと吸収性シート4bとで組成が異なっていても良く、また、吸収性シート4a及び4bの前述した配置形態(積層の順番)を変更しても良い。
吸収体4は、その略全体が被覆シート(図示せず)で被覆されていても良い。吸収体の略全体が被覆シートで被覆されていると、吸収体の形状安定性の向上及び吸水性ポリマーの脱落防止に特に有効である。被覆シートによる吸収体の被覆形態は特に制限されないが、例えば、吸収体の上面(肌当接面)及び左右両側面が被覆シートで被覆されている形態、更にはこれらの面に加えて吸収体の下面(非肌当接面)が被覆シートで被覆されている形態が挙げられる。
吸収体4が被覆シートで被覆されていることにより、吸収性物品の着用中や洗浄中において、吸収体4中に含まれている吸水性ポリマーの極端な移動や脱落が効果的に防止される。更に、吸収体4全体としてのハンドリング性が良好になるので、それ単独で容易に搬送させることができる。また、所望の形状に容易に裁断あるいはくり抜くことができるようになるので、吸収性物品の形状に応じた吸収体を容易に製造できる。
また、吸収体4と被覆シートとの間は所定の手段によって接合されていても良い。両者が接合されていることにより、被覆シートで被覆された吸収体4全体としての剛性が高まり、それによってハンドリング性が一層良好になる。吸収体と被覆シートとの間を接合する手段としては、例えば接着剤による接着や熱融着の他、通常の生理用ナプキンで実施されているエンボス処理(被覆シートあるいは表面シート2上から吸収体4に至る厚み方向の溝を形成する)が挙げられる。
前記被覆シートとしては、吸水性ポリマーの脱落を防止し得るに足る強度を有し、且つ排泄された液の透過を妨げない素材のものが適宜用いられる。被覆シートとしては、例えば親水性の繊維シート、穿孔フィルム等が用いられ、この親水性の繊維シートとしては、例えばティッシュペーパー等の紙や各種不織布(スパンボンド不織布、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド不織布、スパンボンド−メルトブローン−メルトブローン−スパンボンド不織布、サーマルボンド不織布、ニードルパンチ不織布、スパンレース不織布、エアレイド不織布、アクリルやレーヨンなどの親水性繊維を含むスパンレース不織布等)を用いることができる。これらの不織布には、必要に応じて親水化処理や開孔処理を施しても良く、更にスリットを形成しても良く、あるいはエンボス加工を施す等して柔軟加工を施しても良い。これらの不織布の構成繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂を単独で用いた繊維、又はこれら複数の樹脂を用いた複合繊維等が挙げられる。また、これらの不織布には、レーヨン、コットン、リヨセル、テンセル、アセテート、天然パルプ等の親水性繊維を共存させることができる。
吸収性シート4a,4bとしては、例えば、特開平9−156014号公報の〔発明の実施の形態〕に記載された吸収性シートが挙げられる。また、薄い2枚の紙の間に粘着剤や湿潤時の吸水性ポリマーの粘着性によって該吸水性ポリマーを固定したシート(繊維集合体からなる複数の層を積層してなる積層構造を備え、該積層構造における層間のうちの1つの層間に吸水性ポリマーが介在されているシート);不織布製造時に吸水性ポリマーを散布して不織布化と同時に、あるいは予め製造した不織布に吸水性ポリマーを散布して該吸水性ポリマーを固定化したシート;公知のカード法等により作製した繊維集合体に直接吸水性ポリマーを重合・固定化したシート等が、薄型の吸収性シートとして好ましく用いられる。
また、吸収体4としては、前述した吸収性シート4a,4bを含んで構成されるものに制限されず、例えば従来用いられてきた吸水性ポリマーとパルプ繊維との混合積繊物あるいは吸水性ポリマーとパルプ繊維の積層物や下記吸収体A〜Cを用いることもできる。下記吸収体A〜Cは、何れも、繊維集合体からなる複数の層を積層してなる積層構造を備え、該積層構造における層間のうちの1つの層間に吸水性ポリマーが介在されている吸収体である。
吸収体A:吸水性ポリマー41が1枚の繊維シート40で包まれている吸収体(図3参照)。図3に示す吸収体Aは、平面視して長方形形状をしており、その長手方向をナプキン1の長手方向に一致させてナプキン1中に組み込まれる。吸収体Aの幅方向中央部には、吸水性ポリマー41の非存在域50が形成されている。非存在域50は、平面視してナプキン1の長手方向に延びる直線状をしており、吸収体Aの長手方向の略全長に亘っている。非存在域50は、吸収体Aの一面側が厚み方向に窪んだ凹部となっている。吸収体Aをナプキン1に組み込む際には、この凹部(窪み)をナプキン1の肌当接面側に向けても良く、非肌当接面側に向けても良い。吸収体Aは、例えば次のようにして作製することができる。縦長の繊維シートの一面に吸水性ポリマーをストライプ状に散布するなどして、該繊維シートの両側部に挟まれた中央領域に、前記非存在域50が形成されるように、吸水性ポリマーを散布する。そして、散布された吸水性ポリマーを、該繊維シートの両側部で包み込むことにより、吸収体Aが得られる。繊維シート40としては、パルプ繊維や合成繊維等を含むシートを用いることができ、例えば、紙、不織布等が挙げられる。また、繊維シート40としては、後述する親水性シートを用いることもできる。
吸収体Aの採用により、吸収体の有効利用による吸収性能の向上が図られると共に、洗浄水の排水性が高まり迅速な洗浄が可能となる。また吸収体Aは、幅方向中央部に吸水性ポリマーの非存在域が形成されており、幅方向中央部の剛性が他の部位に比して低くなっているので、装着性の向上が図られる。
吸収体B:2枚の繊維シート40,40間に、吸水性ポリマー41及び合成繊維不織布45が介在されている吸収体(図4参照)。図4に示す吸収体Bは、平面視して長方形形状をしており、その長手方向をナプキン1の長手方向に一致させてナプキン1中に組み込まれる。吸収体Bにおける吸水性ポリマー41は、不織布45に担持されている。即ち、吸水性ポリマー41は、不織布45の構成繊維(合成繊維)によって形成される空間内に入り込み、該不織布45に対して外部から応力が加わっても極端な移動や脱落が起こりにくくなっている。
吸収体Bの採用により、主として不織布の作用によって、吸水性ポリマーの移動が抑えられ、且つ着用中あるいは洗浄時にナプキンを絞ったときに発生する吸収体のヨレが抑えられ、安定した吸収特性が発現するようになると共に、洗浄水の置換が容易となる。
吸収体C:2枚の繊維シート40,40間に吸水性ポリマー41が介在されているポリマーシート46を備えた吸収体であって、ポリマーシート46の少なくとも一側部の全体に亘って吸水性ポリマー41が介在されておらず、前記ポリマーシート46が、前記一側部と略平行な折り線で折り曲げられ且つ該一側部が前記吸収体の幅方向中央部に位置している吸収体(図5参照。図6は、ポリマーシート46の長手方向と直交する幅方向の断面模式図)。図5に示す吸収体Cは、平面視して長方形形状をしており、その長手方向をナプキン1の長手方向に一致させてナプキン1中に組み込まれる。吸収体Cにおけるポリマーシート46は、その長手方向両側部46s,46sそれぞれの全体に亘って吸水性ポリマー41が介在されておらず、且つ図5に示すように幅方向の断面視においてC字状に折り曲げられ、長手方向両側部46s,46sがそれぞれ吸収体Cの幅方向中央部に位置している。長手方向両側部46s,46sは、図5に示すように突き合わされていても良く、あるいは一方を他方の上に重ね合わせても良い。また、吸収体Cをナプキン1に組み込む際には、突き合わされあるいは重ね合わされたポリマーシート46の長手方向両側部46s,46sをナプキン1の肌当接面側に向けても良く、非肌当接面側に向けても良い。
吸収体Cは、厚み方向への液の透過性が比較的高いため、吸収体Cの採用により、洗浄水の排水性が高まり迅速な洗浄が可能となる。
吸収体4のその他の実施形態としては、例えば特開2006−110329号公報や特開2007−283086号公報に記載されている如き吸収体(以下、吸収体Dともいう)が挙げられる。吸収体Dは、繊維ウエブに吸水性ポリマーが担持されている吸収体である。吸収体Dにおいては、繊維ウエブにおける長繊維あるいは該長繊維が切断されて短繊維となったものの繊維間隙に吸水性ポリマーが絡み合い、あるいは該繊維間隙にホットメルト等によって吸水性ポリマーが固定されている。吸収体Dにおいては、構成繊維(長繊維)の捲縮率(JIS L0208)が好ましくは10〜90%であり、より好ましくは10〜60%であり、更に好ましくは10〜50%である。長繊維が捲縮していることで、吸収体Dが全体的に柔軟に変形しやすいものとなり、吸収体Dが吸収性物品に組み込まれた場合、着用者に対するフィット性や、凹形状に変形させて防漏性を向上させる場合の凹形状への変形性を高めることができる。また吸収体Dの採用により、吸収性物品の洗浄中に手もみ操作を加えても、吸収体Dの構成繊維中に吸水性ポリマーが絡まりやすいため、洗浄中に吸水性ポリマーが物品外部に流出することが防止される。吸収体Dにおける長繊維及び短繊維の前記捲縮は、二次元的でも三次元的でも良い。尚、長繊維の前記捲縮率は、長繊維を引き伸ばしたときの長さAと引き伸ばす前の元の長繊維の長さBとの差の、該長さAに対する百分率で定義され、次式から算出される。 捲縮率(%)={(A−B)/A}×100 尚、測定は23±2℃、湿度50±5%で行い、測定の前に試料を同環境で24時間以上保存した上で測定する。
吸収体4には吸水性材料として、特定の吸水性ポリマー(以下、吸水性ポリマーAともいう)が含有されていることが好ましい。本実施形態の吸収体4あるいはナプキン1の主たる効果(水洗いが容易で、吸収した経血の赤みを除去できる)は、この吸水性ポリマーAの作用によるところが大きい。以下、この吸水性ポリマーAについて説明する。
尚、本発明の吸収体及び吸収性物品は、好ましくは後述する中和度及び遠心保持量がそれぞれ後述する特定範囲内にあり、且つ好ましくはこれら両特性に加えて後述する他の各種物性(ボルテックス法による吸水速度、DW法による吸水速度、かさ比重、2.0kPaでの加圧下通液速度、2.0kPaでの加圧下吸収量など)がそれぞれ後述する特定範囲内にある吸水性ポリマー(吸水性ポリマーA)を含有することが好ましい。本発明においてこの「吸水性ポリマーAを含有する」とは、吸収体あるいは吸収性物品の少なくとも所定部位における吸水性ポリマーについての中和度及び遠心保持量の測定値の平均が、それぞれ後述する特定範囲内にあることを意味する。所定部位における吸水性ポリマーについての中和度及び遠心保持量以外の後述する各種特性の測定値の平均が、それぞれ後述する特定範囲内にあれば、なお良い。ここで、「所定部位」としては、例えば吸収体あるいは吸収性物品における、吸収性物品着用者の排泄部に対向する部位(排泄部対向部)が挙げられる。特に、吸収体あるいは吸収性物品の所定部位(排泄部対向部)のみならずその全体における吸水性ポリマーについての中和度及び遠心保持量の測定値の平均が、それぞれ後述する特定範囲内にあることが好ましく、とりわけ、中和度及び遠心保持量を含めた後述する各種物性の測定値の平均が、それぞれ後述する特定範囲内にあることが好ましい。吸収体の所定部位において特定物性の吸水性ポリマーを少量含むが、吸収体の全体における吸水性ポリマーについての各種物性値(遠心保持量や中和度など)が後述する特定範囲から外れる場合には、本発明の効果を十分奏しない場合がある。
本発明に用いられる吸水性ポリマーAは、その構成単位にカルボキシ基及び/又はカルボキシレート基を有する吸水性樹脂である。このような吸水性ポリマーとしては、一般に、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合体又は共重合体があり、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリメタクリル酸及びその塩を例示することができる。ポリアクリル酸塩やポリメタクリル酸塩としては、ナトリウム塩を好ましく用いることができる。また、アクリル酸又はメタクリル酸にマレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又はスチレンスルホン酸等のコモノマーを吸水性ポリマーの性能を低下させない範囲で共重合せしめた共重合体も、吸水性ポリマーAとして好ましく使用し得る。
カルボキシ基及び/又はカルボキシレート基を有する吸水性ポリマーの具体例として、例えば、ポリアクリル酸架橋重合体及び共重合体、デンプン−アクリロニトリルグラフト重合体加水分解物、デンプン−アクリル酸グラフト架橋重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体ケン化物等が挙げられる。これらのポリアクリル酸系吸水性ポリマーは、アクリル酸単量体単位を少なくとも50モル%含み、水には実質的に不溶ではあるが、高度の膨潤性を有する重合体である。
吸水性ポリマーAを構成するカルボキシ基及び/又はカルボキシレート基を有する吸水性ポリマーとして特に好ましいものは、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合体である。吸水性ポリマーAが斯かる吸水性ポリマーから構成されていると、特に、吸水物性の制御と製造コスト、安全性等の点で有効である。
本発明に用いられる吸水性ポリマーAは、その中和度が好ましくは75モル%以上である。特に、吸水性ポリマーAがアクリル酸架橋重合体である場合、その中和度は75〜95モル%、とりわけ80〜90モル%であることが好ましい。本発明において、このようにカルボキシ基及び/又はカルボキシレート基を有する吸水性ポリマーの中和度を75モル%以上と高めに設定している理由は、主として、吸収体4が吸収した経血中の主たる赤色成分であるヘモグロビンが吸水性ポリマーに付着することを阻止するためである。即ち、吸収体4における経血等の血液を吸収した箇所は赤みを帯びるが、この赤みの主たる原因は血液中のヘモグロビンにある。従って、ナプキンの水洗いによってこの赤みが容易に除去されるようにするためには、ヘモグロビンの吸水性ポリマーに対する付着率あるいは付着強度を低下させることが有効である。本発明者らは、斯かる観点からヘモグロビンの等電点(電荷の総和がゼロになるpHの値)に注目して種々検討した結果、吸水性ポリマー、特にアクリル酸架橋重合体からなる吸水性ポリマーの中和度を75モル%以上に調整することによって、血液に起因するナプキンの赤みが水洗いで容易に除去できるようになることを見出した。中和度が75モル%以上の吸水性ポリマーとヘモグロビンとの間に起こる現象は定かではないが、アクリル酸架橋重合体からなる吸水性ポリマーの中和度を75モル%以上とすることで、吸収性物品の水洗い中において吸水性ポリマーの分子鎖近傍のpHがヘモグロビンの等電点(通常pH6.8〜7)よりも高いことにより、該吸水性ポリマーとヘモグロビンとの間に電気的な反発が発生し、これにより該吸水性ポリマーに対するヘモグロビンの付着率あるいは付着強度が低下する結果、ヘモグロビンが水洗いによって脱離しやすい状況になるものと推察される。吸水性ポリマーAの中和度が75モル%未満では、ナプキン1を水洗いしても血液に起因する赤みを十分に除去することはできない。前記中和度は、次のようにして測定される。
<中和度の測定方法>
初めに、吸水性ポリマーの主鎖ポリマーの中和滴定曲線を作成する。例えば、吸水性ポリマーがアクリル酸架橋重合体である場合、該吸水性ポリマーの主鎖ポリマーはポリアクリル酸である。以下に、吸水性ポリマーがアクリル酸架橋重合体である場合を例にとって説明する。ポリアクリル酸(和光純薬工業、平均分子量25万)のイオン交換水溶液に対して、水酸化ナトリウム溶液を適宜滴下し、pHメーターを用いて該溶液のpHを測定した。この時、ポリアクリル酸の分子量と添加した水酸化ナトリウムのモル数とから中和度を算出し、横軸に中和度、縦軸にpHをプロットし、中和滴定曲線を描いた。中和度は50〜100%の範囲で行った。pHメーターには、堀場pHイオンメーターD53、電極型式6583を用いた。次に、吸水性ポリマー0.1gをイオン交換水20ml中に投入し、10分攪拌後にこの攪拌した溶媒のpHを測定し、得られたpHの値から、前記中和滴定曲線を用いて目的とする中和度を算出した。尚、測定は23±2℃、湿度50±5%で行い、測定の前に試料を同環境で24時間以上保存した上で測定する。
尚、中和度の測定に関し、前記方法に代えて、吸水性ポリマー中のナトリウム量を元素分析により定量し、下記の理論構造式(1)(アクリル酸系の吸水性ポリマーに適用される理論構造式)に基づいて目的とする中和度を算出しても良い。また、前記方法に代えて、JIS K0113−1997に準拠する方法によって測定した値から、目的とする中和度を算出しても良い。JIS K0113−1997に準拠する方法は、0.1規定水酸化カリウム水溶液を滴定液として使用して電位差滴定を行い、変曲点法によって終点を決定する方法である。
吸水性ポリマーの中和度の調整は、例えば、吸水性ポリマーをアルカリ化合物で中和処理することによって行うことができる。この中和処理については後述する。
本発明に用いられる吸水性ポリマーAは、カルボキシ基及び/又はカルボキシレート基を有し且つ中和度が好ましくは75モル%以上であることに加えて更に、JIS K 7223に準拠した遠心保持量が好ましくは5〜20g/gである。吸水性ポリマーの遠心保持量は、吸水性ポリマーの吸水量(吸水倍率)に関連する特性であり、一般に、遠心保持量の値が大きい吸水性ポリマーは、吸水量(吸水倍率)が大きい。従って、吸収性物品における吸収体の吸収性能を高めるためには、該吸収体に含まれる吸水性ポリマーの遠心保持量の値を増大させることが有効であると言える。特に、吸収性物品の厚みを薄く設計する場合には、多量の吸水性ポリマーを高坪量で吸収体中に配合する方法が有効であるが、斯かる方法を吸収性物品に採用すると、該吸収性物品の水洗い時に吸水性ポリマーが洗浄水を大量に吸収することで、該吸収性物品が膨張・破裂するおそれがある。本発明者らは、斯かる問題を解消すべく種々検討した結果、吸水性ポリマーの吸水倍率を制御すること、さらに吸収速度を制御することで、水洗い中に吸収性物品が膨張し破裂することが抑えられ、吸収性物品のもみ洗いや絞り洗いの操作が容易になるとの知見を得た。これに対し特許文献1に記載されている吸水性ポリマーの中和度を高める目的は、得られる吸水性ポリマーの浸透圧を高くし、吸水速度を早め、あるいは(加圧下の)吸水倍率を高めるためである。
一方、本発明に特有の課題である、吸収した血液に起因する赤みの除去の観点からは、吸水性ポリマーの遠心保持量や吸水速度の増大は望ましくない影響を与える。即ち、吸水性ポリマーの遠心保持量が大きくなると、吸収した血液に起因する赤みが増してしまい、水洗いによって斯かる赤みを除去することが一層困難になる。また、吸水速度の増大は、吸収性物品を水洗いする際に洗浄水と共に血液中のヘモグロビンを吸収しやすくなるとともに、吸水性ポリマーの膨潤によって、短時間のうちに物品が膨張し、水洗いの際に吸収性物品に対して機械的な力がかけにくくなり、物品を構成する各種部材やパルプ、吸水性ポリマー間の汚れた水が抜けにくくなる。そこで本発明においては、吸収性能と赤み除去とのバランスの観点から、吸水性ポリマーAにおける橋架け密度を通常の吸水性ポリマーよりも極端に高めて、中和度を高めたことによるイオンの浸透圧の上昇効果を相殺している。このことは、共立出版の刊行物「高吸収性ポリマー」による以下の説明から理解しやすい。
「フローリィによれば、吸水力を付与する要因は、高分子電解質と水との親和力および可動イオン濃度がゲルの内側のほうが高いために発生する浸透圧、吸水力抑制意思としての網目構造に基づくゴム弾性力で決定される。
Q5/3(吸水力)={(1/2×i/Vu×1/S1/2)2+(1/2−X1)/V1}×V0/ν={(イオンの浸透圧)+(高分子電解質の水との親和性)}/橋架け密度
i/Vu:網目に固定された電荷濃度
1/S1/2:外部溶液の電解質のイオン強度
(1/2−X1)/V1:網目と水の親和力
V0/ν:橋架け密度」
吸水性ポリマーAのJIS K 7223に準拠した遠心保持量が5g/g未満では吸収性能が不充分となるおそれがあり、20g/gを越えると血液に起因する赤みを水洗いによって除去することが困難になるおそれがある。吸水性ポリマーAの遠心保持量は、更に好ましくは7〜15g/gである。前記遠心保持量は、次のようにして測定される。
<遠心保持量の測定方法>
遠心保持量の測定は、JIS K 7223(1996)に準拠して行う。ナイロン製の織布(メッシュ開き255、三力製作所販売、品名:ナイロン網、規格:250×メッシュ巾×30m)を幅10cm、長さ40cmの長方形に切断して長手方向中央で二つ折りにし、両端をヒートシールして幅10cm(内寸9cm)、長さ20cmのナイロン袋を作製する。測定試料である吸水性ポリマー1.00gを精秤し、作製したナイロン袋の底部に均一になるように入れる。試料の入ったナイロン袋を、25℃に調温した生理食塩水(0.9質量%塩化ナトリウム水)に浸漬させる。浸漬開始から30分後にナイロン袋を生理食塩水から取り出し、1時間垂直状態に吊るして水切りした後、遠心脱水器(コクサン(株)製、型式H−130C特型)を用いて脱水する。脱水条件は、143G(800rpm)で10分間とする。脱水後、試料の質量を測定し、次式に従って目的とする遠心保持量を算出する。
遠心保持量(g/g)=(a’−b−c)/c ;式中、a’は遠心脱水後の試料及びナイロン袋の総質量(g)、bはナイロン袋の吸水前(乾燥時)の質量(g)、cは試料の吸水前(乾燥時)の質量(g)を表す。測定は5回行い(n=5)、上下各1点の値を削除し、残る3点の平均値を測定値とした。尚、測定は23±2℃、湿度50±5%で行い、測定の前に試料を同環境で24時間以上保存した上で測定する。
吸水性ポリマーの遠心保持量の調整は、例えば、吸水性ポリマーの表面架橋度を調整することによって行うことができる。一般に、吸水性ポリマーの表面架橋度が高くなる(表面架橋処理が進む)と、遠心保持量(吸水倍率)は低くなる傾向がある。具体的には例えば、従来の方法によって製造された表面架橋処理済みの吸水性ポリマーに対して、再度表面架橋処理(後架橋処理)を施すことにより、遠心保持量を前記範囲に調整することが可能である。また、表面架橋を行う、行わずに関わらず、吸水性ポリマー全体の架橋度を高めることでも遠心保持量は調整可能である。尚、本発明に用いられる吸水性ポリマーAの架橋度(表面架橋度あるいは吸水性ポリマー全体の架橋度)は、通常の吸水性ポリマーの架橋度と比べても高いレベルにあり、このような高架橋度を実現するためには、架橋剤の量を増やしたり、反応温度を高める、あるいは反応時間を長く取るなどの方法をとることが好ましい。
本発明に用いられる吸水性ポリマーAは、ボルテックス(Vortex)法による吸水速度が30秒以上、特に40〜120秒であることが好ましい。尚、本発明においてはボルテックス法による吸水速度の評価を、時間を測定することで評価しているため、測定時間が長いほど吸水速度が遅いとみなされる。吸水性ポリマーAが、このような比較的吸水速度の遅い吸水性ポリマーであると、水洗い時に吸水性ポリマーが急激に膨潤することを防ぐことによって吸収体4(吸収性シート4a,4b)の破けの発生を防止することが可能となる。特に、吸水性ポリマーAの前記吸水速度が前記範囲にあると、着用中の経血の漏れが一層効果的に防止されると共に、水洗い時にナプキンに過度な力をかけなくてもナプキンの赤みが容易に除去されるようになることから、水洗い中のナプキンの破れが一層生じ難くなる。ボルテックス法による吸水速度が前記範囲にある吸水性ポリマーは、例えば吸水性ポリマーの粒子径、1次架橋密度、表面架橋度の調整(後架橋処理)、形状制御、各種界面活性剤や多価アルコール、親水性粉体などによる吸水性ポリマーの表面処理などによって得られる。ボルテックス法による吸水速度は、次のようにして測定される。
<ボルテックス法による吸水速度の測定方法>
100mLのガラスビーカーに、生理食塩水(0.9質量%塩化ナトリウム水)50mLとマグネチックスターラーチップ(中央部直径8mm、両端部直径7mm、長さ30mmで、表面がフッ素樹脂コーティングされているもの)を入れ、ビーカーをマグネチックスターラー(アズワン製HPS−100)に載せる。マグネチックスターラーの回転数を600±60rpmに調整し、生理食塩水を攪拌させる。測定試料である吸水性ポリマー2.0gを、攪拌中の食塩水の渦の中心部で液中に投入し、JIS K 7224(1996)に準拠して該吸水性ポリマーの吸水速度(秒)を測定する。具体的には、吸水性ポリマーのビーカーへの投入が完了した時点でストップウォッチをスタートさせ、スターラーチップが試験液に覆われた時点(渦が消え、液表面が平らになった時点)でストップウォッチを止め、その時間(秒)をボルテックス法による吸水速度として記録する。測定はn=5測定し、上下各1点の値を削除し、残る3点の平均値を測定値とした。尚、これらの測定は23±2℃、湿度50±5%で行い、測定の前に試料を同環境で24時間以上保存した上で測定する。
また、本発明に用いられる吸水性ポリマーAの吸水速度は、当該技術分野において一般に用いられているDW法の測定値によっても評価することができる。前記ボルテックス法による吸水速度が、吸水性ポリマーが一定の液量を固定するための指標として役立つのに対して、DW法による吸水速度は、吸水性ポリマーが液を吸い上げ、吸収する挙動を表現し、隣り合う吸水性ポリマーの間隙に存在する水の量を含む。DW法による吸水速度は、製造時及び液吸収後の吸収体の保形性、特に液吸収後の保形性の指標として役立つ。
DW法による吸水速度(単位:ml/0.3g・30sec)は、DW法を実施する装置として一般的に知られている装置(Demand Wettability Tester)を用いて測定される。具体的には、該装置において生理食塩水の液面をポリマー散布台〔70mmφ、No.2濾紙をガラスフィルターNo.1上に置いた台〕の表面と等水位にセットし、該ポリマー散布台の表面上に測定対象の吸水性ポリマーを0.3g散布する。吸水性ポリマーを散布した時点の吸水量を0とし、30秒後の吸水量を測定する。この吸水量は、生理食塩水の水位の低下量を示すビュレットの目盛りで測定される。得られた吸水量の値をDW法による吸水速度とする。DW法による吸水速度は吸水性ポリマーの形状、粒径、かさ比重、架橋度等によって設計することができる。尚、測定は23±2℃、湿度50±5%で行い、測定の前に試料を同環境で24時間以上保存した上で測定する。
例えば吸収体4が、含水状態の繊維ウエブ上に吸水性ポリマーを散布し、散布された該吸水性ポリマー上に別の繊維ウエブを重ね合わせることによって作製されるものである場合、該吸水性ポリマーのDW法による吸水速度が速すぎると、吸収体4内の含水率が高まり、乾燥不良を起こしやすくなる。一方、DW法による吸水速度が遅すぎると、吸水性ポリマーの粘着性が働かず、層間接着力が十分得られず、加工ラインあるいは液吸収後の着用者の動きによって吸収体4が層間剥離を起こし、吸水性ポリマーが吸収体4の外にもれる可能性がある。従って斯かる観点から、吸収体4が前述の如く作製されるものである場合において、該吸収体4に用いられる吸水性ポリマーのDW法による吸水速度は、2〜20ml/0.3g・30sec、特に4〜15ml/0.3g・30secの範囲にあることが好ましい。
また、本発明に用いられる吸水性ポリマーAは、かさ比重が0.5〜0.8g/cm3、特に0.55〜0.7g/cm3であることが好ましい。かさ比重は、吸水速度の制御、繰り返し吸水性の維持、吸収性物品洗浄時の血液及び洗浄液の排出のしやすさ等の吸水性ポリマーの諸特性の指標として役立ち、かさ比重が前記範囲にあることによってこれらの諸特性について良好な結果が得られる。かさ比重は、次のようにして測定される。
<かさ比重の測定方法>
JIS K6219−2 2005に準じてかさ比重の測定を行った。測定対象の吸水性ポリマーを、質量及び体積既知の円筒容器(直径100mmのステンレス製容器、容量1000ml)の中心部へ該容器の下端から50mm以下の高さから注ぎ込んだ。このとき、注ぎ込まれた吸水性ポリマーが円筒容器の上端よりも上方で三角錐を形成するように、十分な量の吸水性ポリマーを円筒容器内に注ぎ込んだ。そして、へらを用いて円筒容器の上端よりも上方にある余剰の吸水性ポリマーを払い落とし、この状態で該容器の質量を測定し、その測定値から容器の質量を差し引くことで、吸水性ポリマーの質量を求め、これを容器の体積で除して、目的とするかさ比重を算出した。尚、測定は23±2℃、湿度50±5%で行い、測定の前に試料を同環境で24時間以上保存した上で測定する。
ところで、生理用ナプキンや使い捨ておむつなどの吸収性物品において、尿や経血等の排泄液は表面層(表面シート)を通して吸収体内に取り込まれ、該吸収体内において、例えばパルプ等の繊維材料が形作る空間に一旦保持され、その後、該吸収体内の吸水性ポリマーによって固定されるという吸収メカニズムによって、吸収保持される。即ち、吸収性物品における液の吸収速度は、実際に吸水性ポリマーが液を固定する速度以外に、吸収体中の液の拡散・透過速度にも依存することになる。前述したボルテックス法による吸水速度やDW法による吸水速度は、主として前記「吸水性ポリマーが液を固定する速度」を評価するものであり、前記「吸収体中の液の拡散・透過速度」は、下記の加圧下通液速度によって評価することができる。下記の加圧下通液速度が遅い(加圧下通液速度の値が小さい)吸水性ポリマーは、特に液の繰り返し吸収において、ゲルブロッキングによる吸収体中での液の拡散阻害が起こりやすいため、仮に、該吸水性ポリマー自身の液を固定する速度(前述したボルテックス法やDW法により評価される吸水速度)が十分に速かったとしても、該吸水性ポリマーを用いた吸収性物品における液の吸収速度は十分ではなく、遅くなるおそれがある。
本発明に用いられる吸水性ポリマーAは、2.0kPaでの加圧下通液速度が150ml/min以上、特に200〜2000ml/min、とりわけ250〜1500ml/minであることが好ましい。ここで、2.0kPaという荷重は、吸収性物品を洗浄しているときに吸収体に加わる圧力にほぼ相当する。吸収性物品の洗浄性を高める、即ち、吸収性物品の水洗いによって血液由来の赤みを除去されやすくするためには、吸収性物品(吸収体)に用いられる吸水性ポリマー自身に付着あるいは吸収されたヘモグロビンを洗い流しやすくすることが有効であり、更にはこれに加えて、吸収性物品、特に吸収体の中から汚れた洗浄液を排出しやすくすることが有効である。前記通液速度は、このような観点から吸水性ポリマーを評価する指標として有効なものであり、吸水性ポリマーの前記通液速度が150ml/min未満の場合、吸液によって飽和膨潤した吸水性ポリマー同士が荷重下に付着し合って、液の通過を妨げてしまい、ゲルブロッキング発生が起こりやすく、洗浄水がナプキンから排水されにくくなるおそれがある。吸水性ポリマーの前記通液速度を150ml/min以上とすることで、ゲルブロッキング発生が起こり難くなると共に、吸収性物品から汚れた洗浄液が排泄されやすくなる。また、特に、血液の繰り返しの排出や、一度にたくさんの血液の排出が起こったときにも、あるいは着座時や閉脚時などのナプキンに圧力がかかった状態でも、吸収体への液の浸透性が良好となり(即ち、表面層を通してナプキン内部に排泄液が取り込まれる速度が速くなり)、肌への付着が起こりにくくなる、あるいはまた、液漏れが起こり難くなる。また、前記通液速度が前記範囲内にあると、吸水性ポリマーの吸収性に関わる性能全般の向上が期待でき、即ち尿あるいは軟便についても、前述した血液に対するものと同様の効果が期待できる。尚、前記「吸収体への液の浸透性」は、後述する<吸収時間の測定方法>によって評価することができる。
また、前記通液速度の値は大きければ大きい程、ゲルブロッキングの発生を防止する観点では好ましいが、2000ml/min以下であると、特に、パルプなどの親水性繊維が少ない、薄型の吸収体においては、該吸収体内で液が十分固定でき、該吸収体端部からのもれを効果的に抑制できる。また、立位状態での股下部やうつぶせ寝におけるおなか側や、あお向け寝における背側など、液の流れやすい部分で吸収性物品表面に液溜りが生じることを効果的に抑制できる。尚、ここでいう薄型の吸収体とは、パルプ坪量で概ね300g/m2以下(好ましくは250g/m2以下、更に好ましくは200g/m2以下)、及び無荷重下における厚みが4mm未満の少なくとも一方を満たす吸収体である。また、前記通液速度の範囲は、最も効率的に吸水性ポリマーを使用するための適切な範囲である。もちろん、通液速度が2000ml/minを超える吸水性ポリマーの場合であっても、該吸水性ポリマーと多量のパルプ等とを併用することにより吸収体として必要な性能は確保できるが、この場合、ゲルブロッキングの防止機能は多量のパルプによって担うことができるので、必ずしも吸水性ポリマー単独で担う必要がなくなる。
前記通液速度は、特開2003−235889号公報に記載されている測定方法及び測定装置を利用して測定される。具体的には以下の手順で2.0kPaでの加圧下通液速度を測定する。下記測定は23±2℃、相対湿度50±5%で行い、測定の前に試料を同環境で24時間以上保存した上で測定する。
<加圧下通液速度の測定方法>
100mLのガラスビーカーに、測定試料である吸水性ポリマー0.32±0.005gを膨潤するに十分な量の生理食塩水(0.9質量%塩化ナトリウム水)、例えば吸水性ポリマーの飽和吸収量の5倍以上の生理食塩水に浸して30分間放置する。別途、垂直に立てた円筒(内径25.4mm)の開口部の下端に、金網(目開き150μm、株式会社三商販売のバイオカラム焼結ステンレスフィルター30SUS)と、コック(内径2mm)付き細管(内径4mm、長さ8cm)とが備えられた濾過円筒管を用意し、コックを閉鎖した状態で該円筒管内に、膨潤した測定試料を含む前記ビーカーの内容物全てを投入する。次いで、目開きが150μmで直径が25mmである金網を先端に備えた直径2mmの円柱棒を濾過円筒管内に挿入して、該金網と測定試料とが接するようにし、更に測定試料に2.0kPaの荷重が加わるようおもりを載せる。この状態で1分間放置した後、コックを開いて液を流し、濾過円筒管内の液面が60mLの目盛り線から40mLの目盛り線に達する(つまり20mLの液が通過する)までの時間(T1)(秒)を計測する。計測された時間T1(秒)を用い、次式から2.0kPaでの通液速度を算出する。尚、式中、T0(秒)は、濾過円筒管内に測定試料を入れないで、生理食塩水20mlが金網を通過するのに要する時間を計測した値である。 通液速度(ml/min)=20×60/(T1−T0) 前記式で得られた値を円筒内の膨潤した吸水性ポリマー層の厚みで除して、20mmあたりの値に換算して加圧下通液速度とする。測定は5回行い(n=5)、上下各1点の値を削除し、残る3点の平均値を測定値とした。尚、加圧下通液速度の更に詳細な測定方法は、特開2003−235889号公報の段落〔0008〕及び段落〔0009〕に記載されており、また測定装置は、同公報の図1及び図2に記載されている。
本発明に用いられる吸水性ポリマーAは、2.0kPaでの加圧下吸収量が5〜20g/g、特に7〜15g/gであることが好ましい。加圧下吸収量は、吸収性物品の着用により吸収体に体圧等の圧力が加わっている状態において、該吸収体内の吸水性ポリマーが最大どのくらいまで液を吸収できるかを示す尺度となる。吸水性ポリマーの加圧下吸収量の値が高いほど吸収性能に優れるが、本発明に特有の目的である、吸収した血液に起因する赤みの除去の観点からは、該加圧下吸収量の増大は望ましくない影響を与える。即ち、吸水性ポリマーの加圧下吸収量が大きくなると、吸収した血液に起因する赤みが増してしまい、水洗いによって斯かる赤みを除去することが一層困難になる。そこで本発明においては、吸収性能と赤み除去とのバランスの観点から、吸水性ポリマーAの加圧下吸収量を前記特定範囲に設定することが好ましい。2.0kPaでの加圧下吸収量は次のようにして測定される。
<加圧下吸収量の測定方法>
加圧下吸収量は、特開2003−235889号公報に記載されている測定方法及び測定装置を利用して測定される。25±2℃、相対湿度50%±5%の環境で次のようにして測定する。即ち、目開き63μmのナイロン網(JIS Z8801−1:2000)を底面に貼った円筒プラスチックチューブ(内径30mm、高さ60mm)内に、試料(吸水性ポリマー)0.10gを秤量し、円筒プラスチックチューブを垂直にしてナイロン網上に試料がほぼ均一厚さになるように整え、2.0kPaの加圧が試料にかかるように外径29.5mm×厚さ22mmの分銅を円筒プラスチックチューブ内に挿入する。円筒プラスチックチューブと分銅の質量はあらかじめ測定しておく。次いで、生理食塩水60mlの入ったシャーレ(直径:120mm)の中に試料及び分銅の入った円筒プラスチックチューブをナイロン網側を下面にして垂直に浸す。この時、シャーレの底面ぎりぎりの深さまで、円筒プラスチックチューブが浸漬するようにする。60分後に試料及び分銅の入った円筒プラスチックチューブを水中から引き上げて質量を計量し、あらかじめ測定しておいた円筒プラスチックチューブと分銅の質量を差し引き、試料が吸収した生理食塩水の質量を算出する。この吸収した生理食塩水の質量を10倍した値を加圧下吸収量(g/g)とする。尚、測定は23±2℃、湿度50±5%で行い、測定の前に試料を同環境で24時間以上保存した上で測定する。
ところで、本発明に用いられる吸水性ポリマーAの液保持量(液吸収量)に関し、前述した2種類の特性(遠心保持量及び2.0kPaでの加圧下吸収量)の好ましい数値範囲は、何れも5〜20g/g、特に7〜15g/gであり、吸水性ポリマーAは、これら両特性の数値範囲が一致しているという特徴を有している。ここで、遠心保持量は無加圧での吸水性ポリマーの液吸収量を示すものであるから、遠心保持量と2.0kPaでの加圧下吸収量との数値範囲が一致する、即ち両者が略同じである吸水性ポリマーAは、圧力によらず、液吸収量が一定であるということになる。一般に、遠心保持量及び加圧下吸収量は吸水性ポリマーの架橋度(ゲル強度)と密接に関係しており、架橋度が低いほど(架橋がゆるいほど)、遠心保持量の値は高く、加圧下吸収量の値は低くなり、遠心保持量と加圧下吸収量とは概ね逆比例の関係を有している。吸水性ポリマーAのように、遠心保持量と加圧下吸収量とが略同じ値を示す吸水性ポリマーは、特に架橋がしっかりかかった、特殊な吸水性ポリマーであると考えられる。また一般に、ゲル強度が低い吸水性ポリマーは、架橋による高分子鎖の拘束が少ないために、無加圧下では膨潤しやすくなり、遠心保持量が高くなる一方、加圧下では吸水性ポリマーを構成するゲルが加圧に耐え切れず、加圧下吸収量が低くなる傾向にある。従って、このようなゲル強度が低い吸水性ポリマーを用いた場合、無加圧下で吸収された血液を水洗いによって十分に洗い落とすことは困難である。また例えば、特許文献1の実施例1〜10で使用された吸水性ポリマーの如き、加圧下吸水量が高い吸水性ポリマーを用いた場合、加圧下で吸収された血液を水洗いによって十分に洗い落とすことは困難である。また、比較例2のように、ゲル強度の低い吸水性ポリマーは遠心保持量が高いことが予想され、このような遠心保持量が高い吸水性ポリマーを用いた場合、無(低)加圧下で吸収された血液を水洗いによって十分に洗い落とすことは困難である。
本発明に用いられる吸水性ポリマーAは、例えば次のようにして製造することができる。以下に説明する吸水性ポリマーAの製造方法は、下記工程1〜3を有する。即ち、本発明で好ましく用いられる吸水性ポリマーAは、カルボキシ基及び/又はカルボキシレート基を有し且つ表面架橋処理された吸水性ポリマーに、更に表面架橋処理及び中和処理を順次施して製造されたものである。
工程1:カルボキシ基及び/又はカルボキシレート基を有する吸水性ポリマーを製造する工程。工程2:工程1で得られた吸水性ポリマーに表面架橋処理を施す工程。工程3:工程2で得られた吸水性ポリマーに中和処理を施す工程。
前記工程1は、従来公知のポリアクリル酸系吸水性ポリマーの製造方法を利用して行うことができる。工程1で利用可能な吸水性ポリマーの製造方法としては、例えば、(i)特許第2721658号公報に記載の陰イオン界面活性剤を分散剤として用いた逆相懸濁重合重合法、(ii)特開2003−235889号公報に記載の水溶液重合法が挙げられる。工程1で得られる吸水性ポリマー粒子の表面は、架橋剤によって架橋されていても良い。即ち、工程1で得られる吸水性ポリマーは、粒子表面が架橋処理された吸水性ポリマーであっても良い。
前記工程1で製造されるカルボキシ基及び/又はカルボキシレート基を有する吸水性ポリマーとしては、例えば後述する、工程Iで調製する(メタ)アクリル酸及び/又はそのアルカリ金属塩を含むモノマーの重合体が挙げられる。
前記工程1で得られる吸水性ポリマーの中和度は、吸水特性と架橋剤の反応効率の観点から、好ましくは50%以上、更に好ましくは65%以上75%未満である。該中和度は、前述した測定方法によって測定される。
前記工程2では、前記工程1で得られた吸水性ポリマーの粒子表面に架橋処理(後架橋処理)を施す。工程1で既に粒子表面の架橋処理を行っている場合、即ち工程2の出発物質が表面架橋処理済みの吸水性ポリマーである場合、工程2で得られる吸水性ポリマーは2度の表面架橋処理が施されたことになる。このような後架橋処理を施すことによって、後架橋処理を施さない場合に比して、吸水性ポリマーの表面付近の架橋度が高くなることによって、分子鎖の網目が細かくなり、吸水性ポリマーの深部にヘモグロビンが浸透することを防ぐと共に、吸水性ポリマーの遠心保持量が低下する。従って後架橋処理は、吸水性ポリマーのJIS K 7223に準拠した遠心保持量を前記特定範囲(5〜20g/g)に調整する方法として有効なものである。後架橋処理は、工程1で行う表面架橋処理と同様の方法で行うことができる。前記工程2で行う表面架橋処理に用いる架橋剤としては、例えば後述する、工程Iで用いられる架橋剤が挙げられる。
赤みの原因であるヘモグロビンの吸水性ポリマーの深部への浸透を抑える観点から、前記工程1で行う表面架橋処理に用いる架橋剤の添加量に比べて、前記工程2で行う表面架橋処理に用いる架橋剤の添加量を増やすことが好ましい。工程1や工程2で用いる架橋剤の種類は同一でも、異なっていても良い。
前記工程3では、前記工程2で得られた後架橋処理済みの吸水性ポリマーに塩基性化合物(中和剤)を用いて中和処理を施し、未中和のカルボキシ基あるいはカルボキシレート基の一部を中和する。この中和処理においては、最終的に得られる吸水性ポリマーの前記中和度が前述したように75モル%以上となるように、中和剤の使用量等の処理条件を調整する。工程3で行われる中和処理は、従来公知の吸水性ポリマーの中和処理と同様の手順で行うことができる。中和処理は水の存在下で行われる。中和処理における水の使用量は、吸水性ポリマー100質量部に対して、30〜600質量部である。前記工程3の中和処理における水の使用量(吸水性ポリマーの含水率)の特に好ましい範囲は、吸水性ポリマー100質量部に対して100質量部以上、とりわけ100〜500質量部である。
尚、本明細書において、「質量」は、特に断りがない限り、「乾燥時の質量」を意味する。吸収性物品及び吸収性物品の構成部材についての「乾燥時の質量」は、以下のようにして測定する。乾燥時の質量の測定方法:測定対象物を温度25℃、湿度30%の恒温恒湿状態の環境下に24時間放置した後、該環境下にて質量を測定し、その測定値を、測定対象物の「乾燥時の質量」とする。
前記工程3で用いられる塩基性化合物(中和剤)としては、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム等の水溶性炭酸化合物;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水ガラス等の水溶性水酸化化合物が挙げられる。これらの中和剤の中でも、特に炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムは、溶解して弱アルカリ性を示し、アルカリによる架橋の切断に伴う吸水倍率の増加を抑えるため、本発明で好ましく用いられる。もちろん、水酸化ナトリウムのような強塩基性化合物を中和剤として用いることもでき、この場合、中和を行う際に予め吸水性ポリマーの含水率を高めておく、あるいは低濃度の水溶液を徐々に添加する、反応温度をなるべく低温で行うなど、条件を適宜選択することによって、吸水倍率を低く抑えながら中和を施すことができる。
前記工程3における中和処理の方法としては、例えば、吸水性ポリマーに所定量の塩基性化合物を溶解した水溶液を添加する方法;吸水性ポリマーと所定量の粉末状の塩基性化合物とを混合し更に水を添加する方法等が挙げられる。また、反応槽の攪拌に必要な動力を抑える、あるいはまた、攪拌効率を高めて反応をできるだけ均一に行わせるために、予め所定の含水率に調整した吸水性ポリマーに所定量の塩基性化合物を溶解した水溶液を添加したり、粉末状の塩基性化合物を添加してもよい。予め吸水性ポリマーを含水させておく際は、吸水性ポリマー100質量部に対して、水を30〜200質量部添加して行う。また、所定量の塩基性化合物を溶解した水溶液を添加する場合は、アルカリ水溶液中に含まれる水を合算した水の量が前記中和処理における水の使用量とすることが、中和の均一性、架橋の耐加水分解性、吸水性ポリマーの乾燥効率の点から好ましい。
前記工程3における中和処理においては、反応槽の攪拌に必要な動力を抑える、あるいはまた、攪拌効率を高めて反応をできるだけ均一に行わせる観点から、中和剤に加えて分散剤を用いることができる。分散剤としては、例えば、シュガーエステル等を用いることができる。分散剤の使用量は、吸水性ポリマー100質量部に対して、通常、0.2〜5質量部である。
尚、前記工程2と前記工程3とは処理の順番を入れ替えて行ってもよい。また、前記工程1において吸水性ポリマーに十分に架橋をかけておくことで、前記工程2を省略することができる。
前記工程3の終了後、必要に応じ得られた吸水性ポリマーを洗浄して分散剤を除去し、更に水を乾燥し除去することにより、目的とする本発明に用いられる吸水性ポリマーAが得られる。こうして得られた吸水性ポリマーAは、必要に応じ粒径に応じて分級される。
また、本発明に用いられる吸水性ポリマーAは、下記工程I及びIIを有する製造方法によっても製造することができる。以下、この製造方法について説明する。
工程I:(メタ)アクリル酸及び/又はそのアルカリ金属塩を含むモノマーを重合してポリマーを得、該ポリマーを架橋剤により架橋処理して、又は(メタ)アクリル酸及び/又はそのアルカリ金属塩を含むモノマーを、架橋剤の存在下で重合して、JIS K 7223に準拠した遠心保持量が5〜20g/gのポリマーを調製する工程であって、該モノマーに対する架橋剤の質量比〔架橋剤/モノマー〕が0.15/100〜40/100である工程。
工程II:前記工程Iで得られたポリマーに塩基性化合物及び/又は水を接触させて、該ポリマーの中和度が75モル%以上となるように中和処理を施す工程。
前記工程Iは、(メタ)アクリル酸及び/又はそのアルカリ金属塩を含むモノマーと、架橋剤とを特定の質量比で用いて、特定の遠心保持量を有するポリマーを調製すること以外は、公知のポリアクリル酸系吸水性ポリマーの製造方法を利用して行うことができる。この公知の製造方法としては、前記(i)の逆相懸濁重合重合法及び前記(ii)の水溶液重合法等が挙げられる。尚、前記工程Iにおいて、(メタ)アクリル酸及び/又はそのアルカリ金属塩を含むモノマーを、架橋剤の存在下で重合して得られたポリマーは、更に架橋剤により架橋処理しても良い。
前記工程Iで調製する(メタ)アクリル酸及び/又はそのアルカリ金属塩を含むモノマーの重合体は、血液吸収性の制御、安全性、製造コスト等の観点から、(メタ)アクリル酸の単独重合体、その共重合体、又はそれらの架橋物である。(メタ)アクリル酸の単独重合体としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸が挙げられ、(メタ)アクリル酸の共重合体としては、アクリル酸又はメタクリル酸に、マレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、又はスチレンスルホン酸等のコモノマーを共重合せしめた共重合体、デンプン−アクリル酸グラフト共重合体等が挙げられる。該共重合体のコモノマー量は、血液吸収性能を低下させない範囲とすることが好ましい。また、(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩としては、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸等のナトリウム塩が好ましい。
これらの中では、(メタ)アクリル酸又はそのアルカリ金属塩の単独重合体又は共重合体の架橋物、デンプン−アクリル酸グラフト共重合体架橋物が好ましく、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の単独重合体の架橋物がより好ましい。これらのポリマーは、アクリル酸単量体単位を通常50モル%以上、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上含み、水には実質的に不溶であるが、高度の膨潤性を有する重合体である。
前記工程Iで用いられる架橋剤としては、分子中に2個以上の重合性不飽和基、又は分子中に2個以上のカルボキシ基及び/又はカルボキシレート基と反応しうる反応性基を有する化合物であればよく、例えば、分子中に2以上の水酸基を有する化合物、2以上の重合可能な二重結合を有する化合物、2以上のエポキシ基を有する化合物等が挙げられる。
分子中に2以上の水酸基を有する化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、ジエタノールアミ ン、ポリオキシプロピレン、ソルビタン脂肪酸エステル、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリット、1,3−プロパンジオール、ソルビトール等が挙げられる。
分子中に2以上の重合可能な二重結合を有する化合物としては、ビス(メタ)アクリルアミド、アリル(メタ)アクリルアミド、ポリオールによる(メタ)アクリル酸のジ−又はポリエステル(例えばジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート等)、C1−C10多価アルコールとヒドロキシル基につき2〜8個のC2−C4アルキレンオキシドとの反応から誘導される、ポリオールによる不飽和モノ−又はポリカルボン酸のジ−又はポリエステル(例えばエトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート等)等が挙げられる。
分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテルが挙げられる。
これらの架橋剤の中では、分子中に2以上の重合可能な二重結合を有する化合物、及び2以上のエポキシ基を有する化合物が好ましく、分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物がより好ましく、具体的にはエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルが特に好ましい。
前記工程Iにおいて、架橋剤の使用量は、血液吸収性能及び吸収した血液に起因する赤みの除去の観点から、〔架橋剤/モノマー〕の質量比で0.15/100〜40/100であり、0.2/100〜30/100が好ましく、0.3/100〜20/100がより好ましい。
前記工程IIでは、前記工程Iで得られたポリマーに塩基性化合物及び/又は水を接触させて、該ポリマーに中和処理を施す。この中和処理においては、最終的に得られる吸水性ポリマーの中和度が75モル%以上となるように、中和剤の使用量等の処理条件を調整する。
前記工程IIにおける中和処理は、公知の中和処理と同様の手順で、水の存在下で行うことができる。この中和処理における吸水性ポリマーの含水率は、前記工程Iで得られたポリマーに対して、好ましくは100質量%以上であり、より好ましくは100〜600質量%である。
前記工程IIで用いられる塩基性化合物としては、前記工程3で用いられる塩基性化合物(中和剤)と同様のものを用いることができる。特に、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等の水溶性炭酸化合物、あるいは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水ガラス等の水溶性水酸化化合物が好ましい。水溶性炭酸化合物及び水溶性水酸化化合物を併用しても良い。
本発明に用いられる吸水性ポリマーAの形状としては、粒子状、繊維状のもの等が挙げられる。粒子状の吸水性ポリマーには、その形状の違いから、不定形タイプ、塊状タイプ、俵状タイプ、球状凝集タイプ、球状タイプ等があるが、何れのタイプも用いることができる。
本発明に用いられる吸水性ポリマー(本発明の吸収体又は吸収性物品に用いられる吸水性ポリマーの総称であり、前述した吸水性ポリマーAを含む。以下、特に断らない限り同じ。)は、血液中の主たる赤色成分であるヘモグロビンとの関係において、次の特性を有していることが好ましい。即ち、本発明に用いられる吸水性ポリマーのイオン交換水中でのゼータ電位V1と、牛ヘモグロビンのイオン交換水中でのゼータ電位V2との差の絶対値ΔVは、30mV以下、特に5〜20mVであること好ましい。吸水性ポリマーと牛ヘモグロビンとの間のゼータ電位差の絶対値ΔVが斯かる範囲にあることにより、両者間に強い電荷反発が生じ、これにより吸収体が吸収した経血等の血液中のヘモグロビンが、該吸収体内の吸水性ポリマーに付着し難くなる。そのため、吸収した血液に起因する吸収体あるいは吸収性物品の赤みを、該吸収体あるいは該吸収性物品の水洗いで容易に除去することが可能となる。
本発明において、ゼータ電位は、電気泳動光散乱測定法(別名レーザードップラー法)の原理によって、イオン交換水中の吸水性ポリマー又は牛ヘモグロビンに外部から電場をかけた時にそれぞれの泳動速度から求められる電位を意味する。ゼータ電位の測定装置としては、例えば、大塚電子株式会社製の「ELSZ−2 ゼータ電位・粒径測定システム」等の電気泳動光散乱測定法の原理を用いた装置を用いることができる。ゼータ電位は、次のようにして測定される。
<ゼータ電位の測定方法>
pH7.0に調整されたイオン交換水10000質量部中に、測定対象の吸水性ポリマー又は牛ヘモグロビンを5質量部(イオン交換水中の濃度が0.05質量%となるように)分散させて、吸水性ポリマー分散液、牛ヘモグロビン分散液を調製する。牛ヘモグロビン分散液のゼータ電位の測定は、測定対象の吸水性ポリマー分散液とpHが等しくなるように、pHを調整して行う。イオン交換水及び牛ヘモグロビン分散液のpH調整には、必要に応じ塩酸あるいは水酸化ナトリウムを用い、pHの測定には市販のpHメーター(例えば堀場pHイオンメーターD53、電極型式6583)を用いることができる。測定対象の吸水性ポリマーは、目開き106μmのふるいを通過した粒子状のものを用いる。吸水性ポリマー粒子が大きくて測定できない場合(吸水性ポリマー粒子が大きすぎると、イオン交換水中で該吸水性ポリマーが沈降してしまい、ゼータ電位の測定が困難になる)には、測定可能となるように適宜篩い分けの目開きを調整し、測定に供する粒子の大きさを調整する。得られた分散液について、ゼータ電位の測定装置を用いて吸水性ポリマー又は牛ヘモグロビンのゼータ電位を測定する。ゼータ電位の測定中、分散液の水温23±2℃、測定室の湿度50±5%とする。測定は、1つの試料につき3回繰り返し行い、それらの平均値を当該試料のゼータ電位とする。
本発明に用いられる吸水性ポリマーの前記ゼータ電位V1は、好ましくは−40〜5mV、更に好ましくは−35〜−5mVである。一方、牛ヘモグロビンの前記ゼータ電位V2は、通常−15〜10mVの範囲(等電点より酸性側でプラスの電位、等電点よりもアルカリ側でマイナスの電位を示す)にある。
本発明に用いられる吸水性ポリマーは、ポリアクリル酸系吸水性ポリマーである、即ちアクリル酸系の樹脂を含んで構成されていることが好ましい。前記ゼータ電位V1が前記範囲にある(牛ヘモグロビンとの間のゼータ電位差の絶対値ΔVが前記範囲にある)吸水性ポリマーは、例えば、ポリアクリル酸系吸水性ポリマーに、必要に応じ下記の処理を施すことで得ることができる。ポリアクリル酸系吸水性ポリマーとしては、前述した(メタ)アクリル酸及び/又はそのアルカリ金属塩を含むモノマーの重合体が挙げられる。
前記ゼータ電位V1は、吸水性ポリマーの表面の電荷密度と相関があり、該電荷密度は、吸水性ポリマーの遠心保持量と密接な関係がある。即ち、吸水性ポリマーの遠心保持量が小さくなると、該吸水性ポリマーのゼータ電位V1の絶対値が低下する傾向がある。これを利用して、ゼータ電位V1を調整することができる。前述したように、吸水性ポリマーの遠心保持量は該吸水性ポリマーの表面架橋度によって調整できるので、吸水性ポリマーの表面架橋度を調整することによって、該吸水性ポリマーのゼータ電位V1を所望の範囲に調整することができる。例えば吸水性ポリマーの表面架橋度を高めると、遠心保持量が低下し、ゼータ電位V1の絶対値が低下する。
また、前記ゼータ電位V1は、例えば吸水性ポリマーの中和度を調整することによって調整可能である。吸水性ポリマーと牛ヘモグロビンとの間のゼータ電位差の絶対値ΔVを前記範囲にする観点から、吸水性ポリマーの中和度は、70〜95モル%、特に75〜90モル%、さらに80〜90モル%であることが好ましい。中和度に関しては、前述した吸水性ポリマーAにおける説明が適宜適用される。
また、前記ゼータ電位V1は、吸水性ポリマーの表面をカチオン性化合物で処理することによって調整することもできる。この吸水性ポリマーのカチオン性化合物による表面処理は、例えば、1)乾燥状態又は含水状態の吸水性ポリマーと、乾燥状態のカチオン性化合物とを混合する方法(ドライブレンド法)、あるいは2)乾燥状態の吸水性ポリマーに、カチオン性化合物の水溶液又は分散液を塗布する方法、等によって行うことができる。カチオン性化合物としては、例えば、カチオン化でんぷん、カチオン性ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、アミノアルキル(メタ)アクリレート・アクリルアミド共重合体等のカチオン性高分子化合物;酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物が挙げられる。前記表面処理におけるカチオン性化合物の使用量は、乾燥状態の吸水性ポリマーに対して0.01〜5質量%、特に0.02〜3重量%、とりわけ0.05〜2質量%とすることが好ましい。
前記ゼータ電位V1が前記範囲にある(牛ヘモグロビンとの間のゼータ電位差の絶対値ΔVが前記範囲にある)吸水性ポリマーの例としては、前述の「カルボキシ基及び/又はカルボキシレート基を有し且つ中和度75モル%以上、JIS K 7223に準拠した遠心保持量5〜20g/gの吸水性ポリマー」(吸水性ポリマーA)が挙げられる。
また、本発明に用いられる吸水性ポリマーは、粒子状のものであって、カルボキシ基及び/又はカルボキシレート基を有し、ナトリウム等のアルカリ金属を含む中和剤で中和処理されており、その中和度が75モル%以上、好ましくは75〜95モル%、更に好ましくは80〜90モル%であり、且つ該吸水性ポリマー全体に該アルカリ金属が一様に分布しているものが好ましい。前記中和剤としては、前述した吸水性ポリマーAの製造で使用可能な中和剤を用いることができる。斯かる特性を有する吸水性ポリマーを吸収体あるいは吸収性物品に用いることによって、吸収した血液に起因する吸収体あるいは吸収性物品の赤みを、該吸収体あるいは該吸収性物品の水洗いで容易に除去することが可能となる。前述の「カルボキシ基及び/又はカルボキシレート基を有し且つ中和度75モル%以上、JIS K 7223に準拠した遠心保持量5〜20g/gの吸水性ポリマー」(吸水性ポリマーA)は、斯かる特性を有している。
ここで、「吸水性ポリマー全体にアルカリ金属が一様に分布している」とは、吸水性ポリマー粒子の表面(当該吸水性ポリマー粒子において外部に露出している部分)及び内部(当該吸水性ポリマー粒子における該表面を除く部分)の全体に亘ってアルカリ金属の分布濃度が略同じである状態を意味し、より具体的には、下記<アルカリ金属の分布状態の測定方法>によって得られるアルカリ金属濃度比が1.3以内である状態を意味する。該アルカリ金属濃度比は、吸水性ポリマー粒子を、中心部とその外側に位置する表層部とに2分割し、該中心部の平均アルカリ金属濃度を1としたときの該表層部の平均アルカリ金属濃度である。
<アルカリ金属の分布状態の測定方法>
吸水性ポリマー粒子におけるアルカリ金属の分布状態は、走査型電子顕微鏡(SEM)に付随されるエネルギー分散型X線分析装置(EDX)を用い、吸水性ポリマー粒子の拡大断面画像に基づいて微小領域の元素分析を行うことで測定することができる。先ず、測定対象の吸水性ポリマー粒子を複数、粘着層を設けた基板(例えば、ステンレスや銅等の基板の一面に、ニチバナイスタック両面紙NW−15S等の両面テープを貼り付けたもの)の該粘着層上に、該粒子が互いに重ならないように散布する。次いで、吸水性ポリマー粒子全体を樹脂(例えばエポキシ樹脂、メタクリル酸樹脂、ポリエステル樹脂)で包埋し、樹脂層を形成する。該樹脂層を形成する樹脂の量は、吸水性ポリマー粒子全体を樹脂で包埋するのに最低限必要な量とし、過剰量の樹脂は使用しないようにする。次いで、ミクロトームを用いて、該樹脂層をその厚み方向に二分するように切断し、これにより該樹脂層中の吸水性ポリマー粒子を切断する。こうして得られた吸水性ポリマー粒子の切断面における長軸と短軸との交点を、該吸水性ポリマーの中心とする。次いで、得られた吸水性ポリマー粒子の切断面について、SEMで拡大しながらEDXにてアルカリ金属のマッピングを行う。EDXの操作において、X線取り出し角度30°、X線折込時間30分とし、またX線の検出には、Si(Li)半導体検出器を用いることができる。このアルカリ金属のマッピングでは、吸水性ポリマー粒子の中心と該粒子の表面の任意の一点との間を略2等分することで、該粒子を、該中心を含む中心部と、該中心部よりも外側に位置する表層部とに2分割し、これら2つの領域それぞれについて、アルカリ金属原子固有のX線の量をカウントし、アルカリ金属濃度を測定する。斯かる操作を5回繰り返し、中心部及び表層部それぞれの平均アルカリ金属濃度を算出し、次式によりアルカリ金属濃度比を算出する。 アルカリ金属濃度比=(表層部の平均アルカリ金属濃度/中心部の平均アルカリ金属濃度)
前記アルカリ金属濃度比は、好ましくは1〜1.3、より好ましくは1〜1.2、更に好ましくは1〜1.1である。
このような、ポリマー全体に亘ってアルカリ金属が一様に分布している吸水性ポリマー(前記アルカリ金属濃度比が1.3以内の吸水性ポリマー)は、例えば、吸水性ポリマー(カルボキシ基及び/又はカルボキシレート基を有する吸水性ポリマー)に、表面架橋処理、及び所定量の水の存在下でアルカリ金属を含む中和剤を用いての中和処理を順次施すこと(いわゆる後中和処理)によって得られる。該中和処理における水の使用量(吸水性ポリマーの含水率)は、前述した吸水性ポリマーAの製造方法(工程1〜3を有する製造方法、工程I及びIIを有する製造方法)における中和処理と同様に、吸水性ポリマーに対して100質量%以上、特に100〜600質量%に制御することが好ましい。
一般に、このような後中和処理(表面架橋処理後の中和処理)を吸水性ポリマー粒子に施すと、該粒子の表面及びその近傍部分(表層部)の方が、該粒子の中心部よりもアルカリ金属濃度が高くなる(前記アルカリ金属濃度比が1.3を超える)と予想されるが、所定量の水の存在下で後中和処理が施された、中和度が75モル%以上の吸水性ポリマー粒子は、前述したようにアルカリ金属の分布が一様であるという特徴を有している。
前述した本発明に用いられる吸水性ポリマーに関し、特に説明していない点は、前述した吸水性ポリマーAに関する説明が適宜適用される。
吸収体4中における吸水性ポリマーAの含有量は、生理用ナプキンの場合、吸収体4の全質量に対して、2〜90質量%、特に5〜70質量%とすることが、ナプキン1の着用中の柔らかさと吸収性能とのバランスの面で好ましい。特に、ナプキン1を、厚み(7g/cm2荷重下における厚み)が2.5mm以下の超薄型とする場合には、吸水性ポリマーAの前記含有量は、20〜90質量%、特に30〜70質量%とすることが、薄さと吸収性能とのバランスの面で好ましい。吸水性ポリマーA以外の吸水性ポリマーを吸収体4中に含有させる場合、吸収体4中における該吸水性ポリマーの含有量は、吸水性ポリマーAの含有量と同様にすることができる。また、吸収体4における吸水性ポリマー(吸水性ポリマーAを含む吸収体中の全ての吸水性ポリマー)の分布量は、好ましくは5〜250g/m2、更に好ましくは10〜200g/m2である。尚、本発明の吸水性ポリマーをおむつや尿取りパッドなどのように、尿を吸収させる物品に適用する際は、吸水性ポリマーや繊維の割合を適宜調整して用いることができる。
また、吸収速度の制御とざらつき、ごつごつ感などの風合い、洗浄後の見た目の赤みを抑制する観点から、あるいはまた本実施形態の吸収性シート4a,4bでは、繊維ウエブの破れに伴う吸水性ポリマーの脱落や吸収性シートの強度低下の観点から、吸収体4に含有されている吸水性ポリマーは、その平均粒径が200〜600μm、特に250〜450μm、とりわけ250〜400μmであることが好ましい。
また、吸収体4に含有されている全ての吸水性ポリマーのうち、粒径250μm未満の吸水性ポリマーの含有量は、20質量%未満、特に15質量%未満であることが、長時間の着用時においてナプキン1内への液の吸収時間が短く、漏れが生じにくくなると共に、赤みが除去されやすくなるので好ましい。また、粒径250μm未満の吸水性ポリマーの含有量が前記範囲にあることに加えて、更に、粒径150μm未満の吸水性ポリマーの含有量が5質量%未満、特に3質量%未満であると、前記効果がより確実に奏されるようになるので好ましい。
前記の「平均粒径」並びに「粒径250μm未満の吸水性ポリマーの含有量」及び「粒径150μm未満の吸水性ポリマーの含有量」は、それぞれ下記<粒径分布の測定方法>によって測定される。尚、下記測定方法から明らかなように、ここでいう、「粒径250μm未満あるいは150μm未満の吸水性ポリマー」は、球状あるいは球状に近い粒状の形状を有する吸水性ポリマーに限定されるものではなく、吸水性ポリマーの形状は問わない。
<粒径分布の測定方法>
吸収性物品、例えば、ナプキン1(吸収体4)に含有されている全ての吸水性ポリマー50gを、JIS Z 8801で規定された目開き850、600、500、355、300、250、150の標準篩(例えば東京スクリーン社製の標準篩)及び受け皿を用いて、振とう機(例えばレッチェ社製、AS200型)を用いて篩分けする。振とう条件50Hz、振幅0.5mm、振とう時間10分間とする。測定は3回行い、平均値をふるい上質量とした。得られた各ふるい上質量を50で除して相対頻度を求め、粒度累積曲線を描いた。累積曲線の中央累積値(50%)に相当する粒子径を平均粒径とした。篩い分け作業後、「粒径250μm以上の吸水性ポリマー」は目開き250の篩上に、「粒径250μm未満の吸水性ポリマー」は、目開き250の篩下、つまり、目開き150の篩上及びその下の受け皿上に、「粒径150μm未満の吸水性ポリマー」は目開き150の篩を通過して受け皿上にあるものをそれぞれ意味する。篩い分けは3回行い、3回の平均値を各篩上の質量とした。得られた各篩上の質量を全質量に対する質量百分率として計算し、各粒径の存在比率を算出した。尚、測定は23±2℃、湿度50±5%で行い、測定の前に試料を同環境で24時間以上保存した上で測定する。
ナプキン1は、前述した特定の吸水性ポリマーを含有していることにより、薄型にすることが可能である。ナプキン1の厚みは、1〜10mm、特に1〜7mm、更に1.5〜5.5mmであることが、着用中の漏れを防ぎながらも違和感がなく、携帯に便利であることから好ましい。ここでいうナプキンの厚みは、7g/cm2荷重下におけるナプキンの厚みを意味し、次の方法によって測定される。
<厚みの測定方法>
測定対象の製品(ナプキン)の全体を、表面シート側を上にして平らな場所にシワや折れ曲がりがないように載置し、吸収体が配されている領域の上面に、7g/cm2の荷重を掛け、その状態下での厚みを測定する。厚みの測定には、厚み計 PEACOCK DIAL UPRIGHT GAUGES R5-C(OZAKI MFG.CO.LTD.製)を用いる。このとき、厚み計の先端部と製品との間の測定部分にプレート(厚さ5mm程度のアクリル板)を配置して、荷重が7g/cm2となるようにプレートの大きさを調整する。プレートの形状は、円形又は正方形とする。尚、測定は23±2℃、湿度50±5%で行い、測定の前に試料を同環境で24時間以上保存した上で測定する。
吸収体4(吸収性シート4a,4b)には、前述した吸水性ポリマーに加えて繊維が含有されている。吸収体4に含有される繊維としては、当該技術分野において通常用いられているものを適宜用いることができる。例えば、針葉樹パルプや広葉樹パルプ等の木材パルプや植物パルプ等の天然繊維、キュプラやレーヨン等の再生繊維、アセテート等の半合成繊維、ポリオレフィン類、ポリアミド類、ポリエステル類等の合成繊維等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
ナプキンの水洗い時に、ナプキンに付着した血液が素早く流出しやすいという観点から、吸収体4に含有される繊維として、前記天然繊維に、架橋処理を施した改質パルプを含むことが好ましい。即ち吸収体4が、繊維集合体からなる複数の層を積層してなる積層構造を備え、該積層構造における相対向する層間に吸水性ポリマーが介在されており、該繊維集合体が、改質パルプ及び天然繊維(好ましくは針葉樹パルプ及び/又は広葉樹パルプ)を含むことが好ましい。改質パルプとしては、後述する架橋セルロース繊維やマーセル化処理パルプを用いることができる。
吸収体4に含有されている全繊維に占める前記改質パルプの割合は、好ましくは20〜100質量%、更に好ましくは35〜80質量%である。また、吸収体4に含有されている全繊維に占める針葉樹パルプ等の前記天然繊維の割合は、好ましくは0〜80質量%、更に好ましくは20〜55質量%である。
吸収体4中における繊維の含有量は、吸収体4の全質量に対して、好ましくは10〜98質量%、更に好ましくは30〜95質量%である。厚み(7g/cm2荷重下における厚み)2.5mm以下の超薄型ナプキンの場合には、10〜70質量%、特に30〜60質量%であることが好ましい。
吸収体4は、主に吸水性材料(本実施形態では吸水性ポリマー及び繊維)から構成される。吸水性材料は、そのもの自身が液保持する物だけでなく、間隙に液保持するものも含む。吸収体4中における吸水性材料の含有量は、吸収体4の全質量に対して、好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%である。
吸収体4中における吸水性材料の含有量は、吸水性能の点では100質量%であることが好ましいが、吸収体4には吸収性材料の他に、必要に応じ、吸湿剤、消臭剤等を含有させることが可能である。吸湿剤としてはシリカゲル等が挙げられ、消臭剤としては活性炭、活性白土、銀含有化合物等が挙げられる。
吸収体4の好ましい実施形態の1つとして、複数の親水性シート(繊維集合体からなる層)が重ね合わされ且つ重なり合う該親水性シートの間に吸水性ポリマーが挟み込まれた構造を有しているもの(繊維集合体からなる複数の層を積層してなる積層構造を備え、該積層構造における層間のうちの少なくとも1つの層間に吸水性ポリマーが介在されている吸収体)挙げられる。以下、斯かる構造を有する(親水性シートを用いた)吸収体について説明する。
前記親水性シートは、好ましくは嵩高性のセルロース繊維及び親水性の微細繊維を含む吸収紙である。この吸収紙(親水性シート)は、該吸収紙100質量部に対して、嵩高性のセルロース繊維を30質量部以上、特に40〜90質量部含有し、親水性の微細繊維を70質量部未満、特に103〜60質量部含有していることが好ましい。これら2種の繊維の親水性シート内での存在比率は、吸収体を構成する各層(親水性シート)ごとに異なっていても良い。
前記嵩高性のセルロース繊維としては、a)その平均繊維長が好ましくは0.8〜20mm、更に好ましくは1.5〜5mmであり、且つb)その分子内及び分子間が架橋されている(架橋セルロース繊維である)か、又はc)セルロース繊維のネットワークを形成したときに、繊維自身が嵩高である、即ち構造として太い、具体的には繊維粗度が好ましくは0.3mg/m以上、更に好ましくは0.3〜2mg/m、一層好ましくは0.32〜1mg/mであることが好ましい。特に好ましい嵩高性のセルロース繊維は、前記a)〜c)を全て具備しているものである。本明細書における平均繊維長及び繊維粗度は、次のようにして測定される。「繊維粗度」とは、木材パルプのように、繊維の太さが不均一な繊維において、繊維の太さを表す尺度として用いられるものである。
<平均繊維長及び繊維粗度の測定>
繊維粗度計FS−200(KAJAANI ELECTRONICS LTD.製)を用いて測定した。先ず、測定対象の繊維(セルロース繊維)の真の質量を求めるために、該繊維を真空乾燥機内にて100℃で1時間乾燥させ、繊維中に存在している水分を除去する。こうして乾燥させた繊維から1gを正確に量りとる(誤差±0.1mg)。次に、量り取った繊維を、該繊維に極力損傷を与えないように注意しつつ、前記繊維粗度計に付属のミキサーで150mlの水中に完全に離解させ、これを全量が5000mlになるまで水で薄めて希釈液を得た。得られた希釈液から50mlを正確に量りとってこれを繊維粗度測定溶液とし、前記繊維粗度計の操作手順に従って目的とする平均繊維長及び繊維粗度をそれぞれ算出した。尚、平均繊維長の算出には、前記操作手順に基づき下記式により計算された値を用いた。
前記a)及びb)を具備する嵩高性のセルロース繊維は、湿潤状態でもその嵩高構造を維持し得る。また、前記c)を具備する嵩高性のセルロース繊維、即ち繊維粗度が0.3mg/m以上の嵩高性のセルロース繊維は、嵩高な状態でセルロース繊維が集積するため、繊維ウエブ内に嵩高なネットワーク構造が形成され易いので好ましい。また、体液の移動抵抗が小さく、体液の通過速度が大きくなるので好ましい。繊維粗度が0.3mg/m以上の嵩高性のセルロース繊維の例としては、針葉樹クラフトパルプ(FederalPaper Board Co. 製の「ALBACEL 」(商品名)、及びPTInti Indorayon Utama 製の「INDORAYON 」(商品名))等が挙げられる。
前記b)のようにセルロース繊維を架橋するための方法(架橋セルロース繊維の製造方法)には特に制限はないが、例えば、架橋剤を用いた繊維の架橋方法が挙げられる。斯かる架橋剤の例としては、ジメチロールエチレン尿素及びジメチロールジヒドロキシエチレン尿素等のN−メチロール系化合物;クエン酸、トリカルバリル酸及びブタンテトラカルボン酸等のポリカルボン酸;ジメチルヒドロキシエチレン尿素等のポリオール;ポリグリシジルエーテル系化合物の架橋剤などが挙げられる。特に、架橋時に人体に有害なホルマリン等を発生しないポリカルボン酸やポリグリシジルエーテル系化合物の架橋剤が好ましい。
前記架橋剤の使用量は、セルロース繊維100質量部に対して、0.2〜20質量部とするのが好ましい。架橋剤の使用量が0.2質量部未満であると、セルロース繊維の架橋密度が低い為、湿潤時に弾性率が大きく低下してしまう場合があり、使用量が20質量部を超えるとセルロース繊維が剛直になり過ぎ、応力がかかった時にセルロース繊維が脆くなってしまう場合があるので、前記範囲とするのが好ましい。
前記架橋剤を用いてセルロース繊維を架橋するためには、例えば、1)前記架橋剤の水溶液に必要に応じて触媒を添加したものにセルロース繊維を含浸させ、架橋剤水溶液が設計付着量となるように該セルロース繊維を脱水し、次いで該セルロース繊維を架橋温度に加熱するか、又は2)スプレー等により架橋剤水溶液をセルロース繊維に設計付着量となるように散布し、その後、架橋温度に加熱し、架橋反応させる。なお、市販の架橋セルロース繊維としては、Weyerhaeuser Paper Co.製の「High Bulk Additive」等が挙げられる。
前記嵩高性のセルロース繊維は、前記a)並びに前記b)及び/又は前記c)に加えて更に、d)繊維の断面形状が丸い、具体的には、繊維断面の真円度が0.5〜1、特に0.55〜1であることが一層好ましい。繊維断面の真円度が0.5〜1である嵩高性のセルロース繊維は、体液の移動抵抗が小さく、体液の透過速度が大きくなるので好ましい。特に好ましい嵩高性のセルロース繊維は、前記a)〜d)を全て具備しているものである。繊維断面の真円度は、次のようにして測定される。
<繊維断面の真円度の測定>
測定対象の繊維を、その長さ方向と直交する断面方向にスライスする。スライスするときには、繊維の断面面積が極力変化しないように注意する。スライスして得られた繊維の断面を電子顕微鏡を用いて撮像し、その断面写真を画像解析装置(日本アビオニクス社製の「Avio EXCEL」(商品名))により解析し、下記に示す式を用いて目的とする繊維断面の真円度を求めた。尚、該真円度は、任意の繊維断面を100点測定し、その平均値とした。 (繊維断面の真円度)=4×π×(測定繊維の断面面積)/(測定繊維の断面面積の周囲長)2
前述したように嵩高性のセルロース繊維の繊維材料としては木材パルプを使用することが好ましいが、一般に木材パルプの断面は脱リグニン化処理により偏平であり、その殆どの真円度は0.5未満である。このような木材パルプの真円度を前記のように0.5以上とするためには、例えば、斯かる木材パルプをマーセル化処理して木材パルプの断面を膨潤させれば良い。本発明において用いることのできる市販のマーセル化パルプの例としては、ITT Rayonier Inc. 製の「FILTRANIER」(商品名)や同社製の「POROSANIER」(商品名)等が挙げられる。
前記親水性の極細繊維としては、フィブリル化パルプや特定の繊維径を有する親水性の再生、合成繊維が上げられる。フィブリル化パルプとしては、針葉樹(NBKP)、広葉樹(LBKP)パルプ、あるいは架橋パルプなどの化学処理パルプを叩解したものが挙げられる。また、親水性の繊維、例えば、レーヨンやリヨセル、テンセル等の再生セルロース繊維、アセテートやアクリルなどの合成繊維を用いることができる。再生繊維や合成繊維を用いる場合は、繊維をできるだけ細く、すなわち、1dtexを超えない範囲で細く成型したものや、分割繊維のように分割処理の結果、1dtexを超えない繊維を得るものを用いることが好ましい。その中でも、特に比較的簡単な装置で、容易に繊維をフィブリル化できる点でテンセルが好ましく、パルプと同様に叩解によって微細化することができる。
前記親水性の極細繊維は、全ての繊維が同一の細さを有する必要はなく、フィブリル化パルプのように、繊維の一部がささくれ立って細くなっているものや、分割繊維の一部が分割され、極細の繊維が含まれる場合を含む。前記親水性の極細繊維の平均繊維長は、0.3〜5mmが好ましく、0.5〜3mmが一層好ましく、直径(繊維幅)は、5〜100μmであることが好ましい。これらは、パルプ繊維長分布測定器(カヤーニ社製)を用いて測定することができる。
前記吸収紙(親水性シート)は、湿潤時においてもその構造を安定に保つことが好ましく、このような湿潤時における吸収紙の構造安定性を得るためには、該吸収紙に、前述した嵩高性のセルロース繊維及び親水性の微細繊維に加えて、熱溶融性接着繊維、紙力補強剤、通常のセルロース繊維(例えば木材パルプや非木材パルプ)等を配合するなどして、該吸収紙の湿潤強度を高めることが有効である。特に、熱溶融性接着繊維あるいは紙力補強剤の配合が有効である。
前記熱溶融性接着繊維としては、加熱により溶融し相互に接着する繊維を用いることができ、具体的には例えばポリエチレン、ポリプロピレン及びポリビニルアルコール等のポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維、ポリエチレン−ポリプロピレン複合繊維、ポリエチレン−ポリエステル複合繊維、低融点ポリエステル−ポリエステル複合繊維、繊維表面が親水性であるポリビニルアルコール−ポリプロピレン複合繊維、並びにポリビニルアルコール−ポリエステル複合繊維等を挙げることができる。複合繊維を用いる場合には、芯鞘型複合繊維及びサイド・バイ・サイド型複合繊維の何れをも用いることができる。これらの熱溶融性接着繊維は、各々単独で用いることもでき、又は2種以上を混合して用いることもできる。本発明において好ましく用いられる熱溶融性接着繊維としては、熱水で溶解するポリビニルアルコール繊維、芯鞘型のポリエステル繊維等を挙げることができる。
前記吸収紙(親水性シート)は、例えば次のようにして製造することができる。嵩高性のセルロース繊維の濃度が0.16質量%、親水性の微細繊維の濃度が0.05質量%、及び太さ1デニールで平均繊維長3mmのポリビニルアルコール繊維(熱溶融性接着繊維、以下、PVAと称する、クラレ(株)製)の濃度が0.01質量%になるように(スラリー全体として0.022質量%)、これらを水中に均一に分散させてスラリーを得た。このスラリーをワイヤー目開き径1.4mm(12メッシュ)の抄紙ワイヤー上に散布し、該抄紙ワイヤー上に紙層を形成させた。サクションボックスを用いて、この紙層を脱水した。脱水された水溶液中には、約0.02質量%の繊維が含まれており、そのほとんどが親水性の微細繊維であった。次いで、紙層をドライヤーで乾燥させた後に、クレープを10%付与して坪量80g/m2の吸収紙を得た。この吸収紙は、吸収紙100質量部に対して、嵩高性のセルロース繊維を80質量部、親水性の微細繊維を15質量部、PVA繊維を5質量部含有していた。また、この吸収紙は、その厚さ方向において親水性の微細繊維の存在割合に勾配を有していた。
吸収体4の他の実施形態の1つとして、繊維と吸水性ポリマーとの混合積繊体を有しているもの挙げられる。この混合積繊体は、例えば、繊維及び吸水性ポリマーを気流中で混合して得られる。この混合積繊体中における吸水性ポリマーは、混合積繊体全体に略均一に分布しており、前述した親水性シートを用いた吸収体における吸水性ポリマーのように、混合積繊体の一部の領域に偏在していない。以下、斯かる混合積繊体を有する吸収体について説明する。
前記混合積繊体を構成する繊維としては、木材パルプ等の天然パルプや合成繊維を用いることができる。該合成繊維としては、平均繊維長が好ましくは0.1〜30mm、更に好ましくは0.5〜25mm、一層好ましくは1.5〜15mmであって、一般に短繊維と呼ばれる範囲に属しているものを用いることができる。この短繊維の合成繊維の繊度は、好ましくは0.1〜7.8dtex、更に好ましくは0.5〜5.6dtex、一層好ましくは0.9〜3.4dtexである。
前記合成繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂を1種含む単独合成繊維、あるいはこれらの樹脂を2種以上含む複合合成繊維を用いることができる。これらの中でも特に、種々の公知の機能性を付与できる点、あるいは繊維同士の溶融接着性、混合積繊体(吸収体)の嵩高性を付与できる点で、複合合成繊維を用いることが好ましい。複合合成繊維としては芯鞘型、サイド・バイ・サイド型等が挙げられる。複合合成繊維の断面形状としては、円形、異形、C形、中空等が挙げられる。単独合成繊維を用いる場合、異形断面形状の単独合成繊維が好ましい。
前記合成繊維としては、合成パルプを用いることもできる。合成パルプとしては、例えばポリエチレン、変性ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を素材とするものが好適に用いられる。合成パルプは、その平均繊維長が、好ましくは0.1〜10mm、更に好ましくは0.5〜5mm、一層好ましくは0.9〜1.5mmであることが、木材パルプ等の天然パルプと同様に取り扱えるようになる点から好ましい。
前記天然パルプは一般に吸液性と拡散性が高い素材であるため、これを前記混合積繊体の主たる構成繊維として用いることで、該混合積繊体の液吸収容量を高めることができる。一方、前記合成繊維は所定温度に加熱することで溶融する性質を有する素材であるため、これを前記混合積繊体の主たる構成繊維として用いることで、混合積繊体の製造工程において該混合積繊体全体を加熱して合成繊維を溶融させる等の処理により、混合積繊体全体としての強度を高めることができる。前記混合積繊体の主たる構成繊維として合成繊維を用いた場合、該混合積繊体は、主としてエアレイド不織布等の不織布からなる。
前記混合積繊体には、前述の天然パルプ及び合成繊維に加えて、レーヨン、コットン、リヨセル、テンセル、アセテート、ポリビニルアルコール繊維、アクリル等の天然、又は(半)合成の親水性繊維の短繊維が含まれていても良い。また、前記混合積繊体は、大きさや組成等が異なる(例えば、平面視での大きさ、厚み、形状、繊維と吸水性ポリマーとの混合比等が異なる)複数の混合積繊体が積層されて形成されていても良く、任意の形に分割されていても良い。
本実施形態のナプキン1は、中和度や遠心保持量等の諸特性が特定範囲にある前述した吸水性ポリマーの作用によって、血液に起因する赤みを水洗いによって除去できるようになされており、実用上十分な被水洗能を有しているが、被水洗能を一層向上させるために、更にナプキン1に金属イオン捕捉剤を含有させても良い。以下、金属イオン捕捉剤について説明する。
金属イオン捕捉剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)四ナトリウム、ニトリロ三酢酸(NTA)三ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)五ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)三ナトリウム、L-グルタミン酸二酢酸(GLDA)四ナトリウム等のアミノカルボン酸塩系金属イオン捕捉剤;ヒドロキシエチリデンジホスホン酸(HEDP)四ナトリウム等のホスホン酸塩系金属イオン捕捉剤;トリポリリン酸ナトリウム(STPP)、ピロリン酸ナトリウム(TSPP)、ヘキサメタリン酸ナトリウム等の重合リン酸塩系金属イオン捕捉剤;ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸/マレイン酸コポリマー等の高分子系洗剤用ビルダー;クエン酸三ナトリウム、クエン酸アンモニウム等その他有機系金属イオン捕捉剤;ゼオライト(結晶性アルミノ珪酸塩)、ケイ酸ナトリウム等の無機系金属イオン捕捉剤等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中でもエチレンジアミン四酢酸(EDTA)四ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、アクリル酸ナトリウム、ゼオライトが好まく、特にクエン酸三ナトリウムは、水溶性が高いことから、洗浄作業中に経血存在箇所へ移動し易く赤み除去効果が高い上、生分解性に優れる。また、クエン酸三ナトリウムは、経血中に含まれるヘモグロビンと吸水性ポリマーの親和性を弱めるのに有効で、赤み除去効果が高いので好ましい。
金属イオン捕捉剤をナプキン1に含有させる方法としては、例えば、固体(粉体)として散布する方法;水等の適当な溶媒に金属イオン捕捉剤を溶解、又は分散させて水溶液を得、該水溶液をナプキン1の所定箇所(金属イオン捕捉剤を含有させたい箇所)に噴霧あるいは塗布する方法等が挙げられる。
金属イオン捕捉剤の存在箇所としては、経血の吸液と洗浄水中の金属イオンの捕捉を効率よく行う観点から、前述した吸収体4の内部及びその周辺部位が挙げられる。吸収体内部としては、吸水性ポリマーの表面及び周辺、並びに肌から最も遠い位置(裏面シート2に最も近い位置)に配された吸収性シート4bとその直上に位置する吸収性シート4aとの間が好ましい。吸収体4の内部に金属イオン捕捉剤を含有させる場合、金属イオン捕捉剤の含有量は、吸収体4の全質量に対して、好ましくは0.001〜30質量%、更に好ましくは0.01〜10質量%である。
また、金属イオン捕捉剤が散布されうる吸収体4の周辺部位としては、例えば、A)吸収体4よりも肌当接面側(例えば表面シート2と吸収体4との間)、B)吸収体4よりも非肌当接面側(例えば吸収体4と裏面シート3との間)、C)吸収体4の周縁に沿った一定幅(好ましくは3〜15mm幅)の領域、が含まれる。ナプキン1において、金属イオン捕捉剤は1箇所に存在していても良く、複数箇所に存在していても良い。
尚、吸収体4の略全体が被覆シート(図示せず)で被覆されている場合、金属イオン捕捉剤10は、該被覆シートの内側に配されていても良く、該被覆シートの外側に配されていても良い。即ち、金属イオン捕捉剤10は、吸収体4と共に被覆シートによって被覆されていても良く、吸収体4を被覆する被覆シートの外側に配されていても良い。
特に好ましい金属イオン捕捉剤の存在箇所は、吸水性ポリマーの表面及び周辺並びに前記B)吸収体4よりも非肌当接面側の部位である。この場合には吸収した経血等を水で最もきれいに洗い流すことができた。
図7には、金属イオン捕捉剤の存在箇所として前記B)を採用した場合の一実施形態が記載されている。図7に示す実施形態においては、金属イオン捕捉剤10は、吸収体4の非肌当接面に隣接配置された内部シート11と裏面シート3との間に存している。図7では、説明容易のため、金属イオン捕捉剤10が層を形成しているかのように記載されているが、実際には層を形成しているとは限らない。内部シート11の存在によって、吸収体4と金属イオン捕捉剤とが分け隔てられ、金属イオン捕捉剤が設計値以上に吸収体4内部へ侵入することが防止できる。内部シート11としては、前記被覆シートと同様のものを用いることができる。内部シート11の坪量は、好ましくは10〜20g/m2、厚みは、0.05〜0.15mmである。
ナプキン1において金属イオン捕捉剤を含有させる場合の含有量は、ナプキンから経血等をよりきれいに洗い流す観点から、ナプキン1に含有されている全吸水性ポリマー100質量部に対して、好ましくは0.01〜100質量部、更に好ましくは0.1〜50質量部、特に好ましくは0.5〜20質量部である。
本実施形態のナプキン1は、簡単な水洗いによって経血による赤みを除去することが可能である。赤み除去の程度は、下記手順1〜3に従って血液が注入され水洗いされた後の、ナプキンにおける血液によって赤色に染まった赤色部分の赤色度合いa*値で評価することが可能である。a*値が小さいほど、赤色部分の赤色の度合いが低く、血液が水洗いによってきれいに洗い流されていることを意味する。
手順1:生理用ナプキンの表面層側から該生理用ナプキンに血液12gを注入し、25℃の環境下で30分間放置後、水温25℃、硬度12°DHの水で該生理用ナプキンを3分間洗浄し、しかる後、該生理用ナプキンを手で絞り、ナプキン内部に含まれている水を可能な限り絞り出す。
手順2:前記手順1で得られた湿潤状態の生理用ナプキンの表面層側における、血液によって赤色に染まった赤色部分の最も赤みの強い点5箇所について、分光色差計を用いて赤色度合いa*値を測定する。
手順3:前記手順2で得られた5つの測定値から最大値及び最小値を除いた3つの測定値の平均を、生理用ナプキンの赤色度合いa*値とする。
前記手順1〜3に従って得られたa*値は、吸収性物品が有する被水洗能の優劣を評価する尺度となるものであり、a*値が小さいほど、赤色部分の赤色の度合いが低く、血液が洗浄によってきれいに洗い流されている(被水洗能に優れている)ことを意味する。前述の如き構成を有する本実施形態のナプキン1は、a*値が7以下、好ましくは5以下であり、実用上十分な被水洗能を有している。
前記手順1〜3において、ナプキンに注入する血液としては馬の血液を用いる。より具体的には、(株)日本バイオテスト研究所製の馬脱繊維血液を用いる。この馬脱繊維血液の粘性は、東機産業(株)製の(B型)粘度計TVB−10Mによる測定(測定温度25℃、ロータ Lアダプタ)で、15mPa・S未満である。
また、前記手順1〜3において、ナプキンの洗浄に用いる水としては、電気伝導度1μS/cm以下のイオン交換水に塩化カルシウムと塩化マグネシウムを溶解することにより調製される水で、カルシウムイオンとマグネシウムイオンとの含有比(カルシウムイオン:マグネシウムイオン)が7:3で且つドイツ硬度が12°DHの水を用いる。
尚、使用済みの生理用ナプキンを水洗する習慣がある国の一つである、インドネシアの生活用水は、地域によってその硬度が異なるが、前記手順1〜3で用いるドイツ硬度12°DHの水は、少なくともインドネシアの一部で使用されている生活用水と略同じである。
前記手順1において、血液を注入されたナプキンを洗浄前に30分間放置する環境は、気温25℃、湿度60%とする。
ナプキンの洗浄は、手で行ない、「一方の手で100g程度の水をナプキンにかけ、他方の手で該ナプキンを絞る動作」を10秒間に3回繰り返す。即ち、10秒間に行う動作は、「水をかける→ナプキンを絞る→水をかける→ナプキンを絞る→水をかける→ナプキンを絞る」である。従って、前記手順1においてナプキンの3分間洗浄に使用する水の量は、水をかける動作1回で使用する水の量が前述したようにおよそ100gであるので、およそ(100×3×6×3=)5400gである。前記式において、100×3は、10秒間に使用する水の量、100×3×6は、1分間に使用する水の量に相当する。
ナプキンに水をかけるときはビーカー等を利用し、水をかけている最中はナプキンを絞らないようにする。
手順1において、ナプキンを3分間洗浄した後で該ナプキンを手で絞るときの圧力、即ち、手の握力は、通常、10〜15kg程度である。
赤色部分の赤色度合いa*値を測定する際は、外光が入らないように、測定サンプルと分光色差計とを隙間なく密接させる。分光色差計としては、日本分光製の簡易型分光色差計「NF333」(ペン型検出器)を用いることができる。
以下、本実施形態のナプキン1について更に説明する。
ナプキン1の肌当接面側(表面シート2側)には、その長手方向左右両側部に、ナプキン1の長手方向へ延びる防漏溝5,5がそれぞれ形成されている。各防漏溝5は、表面シート2と吸収体4とが、表面シート2側からエンボス等の圧搾手段によって圧密化及び一体化されて形成されている。各防漏溝5は、ナプキン1の縦中心線に関してほぼ対称な形状になっている。各防漏溝5は、それらの前後端が互いに連結しており、これによって全体として閉じた形状をなしている。防漏溝5,5が形成されていることにより、ナプキン幅方向外方に流れる体液等が堰き止られ、ナプキン1の側部からの漏れ(横漏れ)が効果的に防止されると共に、洗浄時におけるナプキンの分解を抑えることができるため、洗浄操作がおこないやすく、血液の洗い流しが容易に行えるようになる。更に、防漏溝5,5が吸収体4の下部付近まで達していることが、洗浄時、吸収体全体に水がいきわたりやすく、且つ、吸収体が偏って血液が残留するのを防止するため好ましい。
ナプキン1の周縁部には、吸収体4の外方に離間した位置にエンドシール部6が形成されている。本実施形態におけるエンドシール部6は、表面シート2と裏面シート3を一体化して形成されている。より具体的には、本実施形態においては、表面シート2、裏面シート3は、吸収体4の周縁部から延出しており、その延出部分において互いに熱エンボス処理により接合されてエンドシール部6が形成されている。エンドシール部6は、ナプキン1の洗浄時(湿潤時)に吸収体4を構成する吸水性材料が流れ出すことを防止する効果がある。エンドシール部6には、吸収体4に用いられる水による膨潤等がおこる材料が配置されていないことが、洗浄時にエンドシール部の構成材料である各シート材料の分離をおこさない観点から好ましい。また、エンドシール部6は、シート材料の所定部位にホットメルト等の接着剤を配して熱エンボス処理によって形成されることが、シール部の柔軟性及び湿潤時のシール強度を向上・安定化させる観点からより好ましい。
本実施形態のナプキン1は、通常のこの種の生理用ナプキンと同様に下着に装着して使用する。本実施形態のナプキン1は、前述した特定の吸水性ポリマーを含有する吸収体4を具備しているため、実用上十分な吸収性能を有していながらも、水洗いが容易であり、使用後に該ナプキン1に付着した血液を水で洗い流すことが容易である。このため、使用後のナプキンを水で洗浄してから廃棄する習慣がある人々にとって好適に使用できる。また、本実施形態のナプキン1は、吸水性ポリマーを含有しているため、厚みを薄く設計することが可能であり、嵩張らず、携帯性も装着感も優れたものとすることができる。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば、本発明の吸収性物品(生理用ナプキン)は、前記実施形態が具備していた防漏溝5、粘着部(図示せず)、ウイング部、後部フラップ部等を具備していなくても良い。ウイング部及び後部フラップ部は、何れも吸収体4の長手方向両側縁それぞれからナプキン外方に延出する部分であり、通常、ウイング部はナプキン着用者の排泄部に対向配置される排泄部対向部に位置し、後部フラップ部は該ウイング部よりもナプキン長手方向の後方に位置する。
また本発明の吸収体が適用可能な吸収性物品、あるいは本発明の吸収性物品は、生理用ナプキンに制限されず、使い捨ておむつ、失禁パッド、尿取りパッド、ペット用おむつ、ペット用シーツ等にも適用できる。本発明に用いられる吸水性ポリマー(吸水性ポリマーA)は、遠心保持量が前記特定範囲に調整されていることで吸水倍率が抑えられており、更に2.0kPaでの加圧下通液速度が前記特定範囲に調整されている場合には加圧下の通液速度が高いものであるため、繰り返しあるいは圧力下での吸収速度が非常に速く、吸収体の細部まですばやく液を拡散することができ、また、膨らんでもいわゆるゲル感が少ないので、着用時の違和感の改善に繋がる。
前述した一の実施形態のみが有する部分は、すべて適宜相互に利用できる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではない。
以下に、本実施例で使用した吸水性ポリマーの合成方法を説明する。該合成方法は下記のように、吸水性ポリマーの合成(前記工程1に相当)、吸水性ポリマーの架橋処理(前記工程2に相当)、吸水性ポリマーの中和処理(前記工程3に相当)の順で進めた。
〔合成例1〕
〔吸水性ポリマーの合成〕
攪拌機、還流冷却管、モノマー滴下口、窒素ガス導入管、温度計を取り付けたSUS304製5L反応容器(アンカー翼使用)に分散剤としてポリオキシアルキレンエーテルリン酸エステル0.1%(対アクリル酸質量、有効成分量)を仕込み、ノルマルヘプタン1500mlを加えた。窒素ガスの雰囲気下に攪拌を行いながら90℃まで昇温した。一方、2L三つ口フラスコ中に、80%アクリル酸(東亞合成製、act.80.6%)とイオン交換水、48%苛性ソーダ水溶液(旭硝子製、act.49.7%)から、モノマー水溶液としてのアクリル酸ナトリウム(72%中和品)1000gを得た。このモノマー水溶液に、N−アシル化グルタミン酸ソーダ(味の素製、商品名アミソフトPS-11)0.25gをイオン交換水4.41gに溶解させたものを添加した後、550g(以下、モノマー水溶液Aという)、250g(以下、モノマー水溶液Bという)、250g(以下、モノマー水溶液Cという)に三分割した。
次いで、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド(和光純薬工業製、商品名V-50)0.05g、ポリエチレングリコール(花王製、K-PEG6000 LA)0.5g、クエン酸アンモニウム鉄(III)(関東化学製)4g、イオン交換水10gを混合溶解し、開始剤(A)溶液を調製した。また、過硫酸ナトリウム(和光純薬工業製)0.6gをイオン交換水10gに溶解し、開始剤(B)溶液を調製した。さらに、クエン酸チタン水溶液(50%クエン酸と7.6%(TiO2)硫酸チタニル水溶液を20/27の質量比で混合)を調製した。モノマー水溶液Aに、開始剤(A)溶液12gを加えてモノマーAを調製し、モノマー水溶液Bに、開始剤(B)溶液5gを加えてモノマーBを調製し、モノマー水溶液Cに、開始剤(B)溶液5gとクエン酸チタン水溶液(クエン酸/Tiのモル比=2、Ti量0.015%対アクリル酸質量)2gを加えてモノマーCを調製した。
次いで、前述の5L反応容器内に、モノマー滴下口からマイクロチューブポンプを用いて、5分以上静置したモノマーA、モノマーB、モノマーCの順で滴下し重合した。モノマー滴下終了後、脱水管を用いて共沸脱水を行い、吸水性ポリマー(ハイドロゲル)の含水率を調整した後、架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス製, 商品名デナコールEX-810)0.5gをイオン交換水10gに溶解したものを添加した。その後、60%1−ヒドロキシエチリデン−1,1'−ジホスホン酸水溶液(ローディア製、商品名ブリクエストADPA-60A)2gを添加した。冷却後、ノルマルヘプタンを除去・乾燥させることにより吸水性ポリマーを得た。
〔吸水性ポリマーの架橋処理〕
前記〔吸水性ポリマーの合成〕に用いたものと同様の反応容器(アンカー翼使用)に、前記〔吸水性ポリマーの合成〕で得られた吸水性ポリマー100gを仕込み、ノルマルヘプタン300mlを加えた。窒素雰囲気下、攪拌しながら、75℃まで昇温した。その後、滴下口から滴下ロートを用いて、イオン交換水60gを滴下し、続いて、イオン交換水10gに、架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス製、商品名デナコールEX-810)3.0gを溶解したものを添加した。1.5時間還流させた後、ノルマルヘプタンを除去乾燥させることにより、粒子表面が架橋処理された吸水性ポリマーを得た。
〔吸水性ポリマーの中和処理〕
前記〔吸水性ポリマーの合成〕に用いたものと同様の反応容器(アンカー翼使用)に、前記〔吸水性ポリマーの架橋処理〕で、得られた乾燥吸水性ポリマー100gに対して、分散剤としてショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ製、商品名リョートーシュガーエステルS-770)2%(対吸水性ポリマー質量、有効成分量)を仕込み、吸水性ポリマーの5倍量のイオン交換水に中和剤として炭酸水素ナトリウム(和光純薬製)12.5gを加え、徐々に滴下した。得られた吸水性ポリマーをイソプロパノールで洗浄し、分散剤を洗浄し、濾過、乾燥を行い、中和度が調整された吸水性ポリマーを得た。
〔合成例2〜5〕
前記の〔吸水性ポリマーの合成〕、〔吸水性ポリマーの架橋処理〕及び〔吸水性ポリマーの中和処理〕に従った合成例2〜5により、粒子表面が架橋処理された5種類の吸水性ポリマーを得た。合成例1〜5は前記〔吸水性ポリマーの架橋処理〕における架橋剤の使用量のみが異なっており、合成例2では5g、合成例3では1g、合成例4では0.2g、合成例5では0.05g用いた。
〔合成例6〜9〕
前記合成例1に従った合成例6〜8により、粒子表面が架橋処理された3種類の吸水性ポリマーを得た。合成例6〜8は前記〔吸水性ポリマーの中和処理〕における中和剤の使用量のみが異なっており、合成例6では7.7g、合成例7では17.5g、合成例8では26.8g用いた。また、〔吸水性ポリマーの架橋処理〕後に〔吸水性ポリマーの中和処理〕を行わなかった以外は合成例1と同様の手順で進めたものを合成例9とした。
〔合成例10〕
前記工程I及びIIを有する吸水性ポリマーの製造方法に従って、以下のようにして吸水性ポリマーを製造した。即ち、合成例1で用いたものと同様の5L反応容器(ファウドラ翼使用)に、分散剤としてショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ製、商品名リョートーシュガーエステルS-770)2%(対吸水性ポリマー質量、有効成分量)を仕込み、シクロヘキサン2000mlを加えた。窒素雰囲気下、攪拌しながら、73℃まで昇温した。一方、2L三つ口フラスコ中に、80%アクリル酸とイオン交換水、48%苛性ソーダ水溶液から、モノマー水溶液としてのアクリル酸ナトリウム(85%中和品、濃度47%)1000gを得た。このモノマー水溶液に、過硫酸ナトリウム1.1g、及び架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス製, 商品名デナコールEX-810)15g(モノマー(アクリル酸)質量に対して3.4%)を溶解した。次いで、前記の5L反応容器内に、モノマー溶液滴下口からマイクロチューブポンプを用いて、5分以上静置したモノマー溶液を滴下し重合した。1時間熟成の後、さらに滴下口から滴下ロートを用いて、イオン交換水625gに30%苛性ソーダ水溶液74g溶解したものを添加した。その後、含水率を35質量%まで脱水し冷却後、シクロヘキサンを除去・乾燥させることにより、中和処理された吸水性ポリマーを得た。
〔合成例11〕
前記〔吸水性ポリマーの合成〕に用いたものと同様の反応容器(アンカー翼使用)に、市販の使い捨ておむつ(メリーズMサイズ、花王(株)製)から取り出した吸水性ポリマー100gを仕込み、ノルマルヘプタン300mlを加えた。窒素雰囲気下、攪拌しながら、90℃まで昇温した。その後、滴下口から滴下ロートを用いて、イオン交換水60gを滴下し、続いて、イオン交換水10gに、架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス製、商品名デナコールEX-810) 5.0gを溶解したものを添加した。1.5時間還流させた後、ノルマルヘプタンを除去乾燥させることにより、粒子表面が架橋処理された吸水性ポリマーを得た。こうして得られた乾燥状態の吸水性ポリマー100gに対して、分散剤としてショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ製、商品名リョートーシュガーエステルS-770)2%(対吸水性ポリマー質量、有効成分量)を仕込み、吸水性ポリマーの5倍量のイオン交換水に中和剤として炭酸水素ナトリウム(和光純薬製)12.5gを加え、徐々に滴下した。得られた吸水性ポリマーをイソプロパノールで洗浄し、分散剤を洗浄し、濾過、乾燥を行い、中和処理された吸水性ポリマーを得た。
〔合成例12〕
水溶液重合法を用い、以下のようにして吸水性ポリマーを製造した。即ち、反応容器にアクリル酸81.8g、N,N’−メチレンビスアクリルアミド0.25g及び脱イオン水241gを仕込み、攪拌・混合しながら内容物の温度を1〜2℃に保った。次いで、内容物の液層中に窒素を流入し酸素濃度を0.02%未満にした後、密閉下、1%過酸化水素水溶液1g、0.2%アスコルビン酸水溶液1.2g及び2%の2,2’−アゾビスアミジノプロパンジハイドロクロライド水溶液2.8gを添加・混合して重合を開始させた(約5℃)。重合と共に温度が上昇し引き続き、密閉下で70〜80℃ に約8時間温度管理しながら重合して、架橋重合体を含む含水ゲルを得た。得られた架橋重合体を含む含水ゲルをインターナルミキサーで3〜7mm の大きさに細断して細断ゲルを得た後、この細断ゲル325.0gに48%の水酸化ナトリウム水溶液67.5gを添加してカルボキシル基の72当量%を中和して、中和細断ゲルを得た。次いで、縦20cm×横20cm×高さ10cmで、天板を有さず、底板に目開き4mmの金網を装着したステンレス製のトレイに、この中和細断ゲルを約5cmの厚さに積層し、150℃ 、風速2.0m/sの条件で、通気型バンド乾燥機(井上金属製)で乾燥して、乾燥体を得た。この乾燥体を粉砕した後、目開き150μmのふるいと同710μmのふるいを用いて篩い分けし、150〜710μmの粒度である吸水性ポリマーを得た。
次いで、合成例1で用いたものと同様の反応容器(アンカー翼使用)に、前記吸水性ポリマー100gを仕込み、ノルマルヘプタン300mlを加えた。窒素雰囲気下、攪拌しながら、90℃まで昇温した。その後、滴下口から滴下ロートを用いて、イオン交換水60gを滴下し、続いて、イオン交換水10gに、架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス製、商品名デナコールEX-810) 2.5gを溶解したものを添加した。1.5時間還流させた後、ノルマルヘプタンを除去乾燥させることにより、粒子表面が架橋処理された吸水性ポリマーを得た。こうして得られた乾燥状態の吸水性ポリマー100gに対して、分散剤としてショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ製、商品名リョートーシュガーエステルS-770)2%(対吸水性ポリマー質量、有効成分量)を仕込み、吸水性ポリマーの5倍量のイオン交換水に中和剤として炭酸水素ナトリウム(和光純薬製)12.5gを加え、徐々に滴下した。得られた吸水性ポリマーをイソプロパノールで洗浄し、分散剤を洗浄し、濾過、乾燥を行い、中和処理された吸水性ポリマーを得た。
〔合成例13〕
合成例9で得られた乾燥状態の吸水性ポリマー(カルボキシ基及び/又はカルボキシレート基を有し且つ中和度72モル%、JIS K 7223に準拠した遠心保持量10g/g)と、表面処理剤(カチオン性化合物)としての乾燥状態の酸化アルミニウム粉末(和光純薬製)とを混合し(ドライブレンド法)、前記ゼータ電位V1を所定範囲に調整した吸水性ポリマーを得た。酸化アルミニウム粉末の添加量は、吸水性ポリマーの質量に対して0.5質量%とした。
合成例1〜13で得られた吸水性ポリマーの中和度、遠心保持量、ボルテックス法による吸水速度、かさ比重、2.0kPaでの加圧下通液速度、2.0kPaでの加圧下吸収量を、それぞれ前述した測定方法に従って測定した。中和度の測定は、前述した中和滴定曲線を用いる方法により測定した。また、合成例1〜13で得られた吸水性ポリマーのうちの一部については、更に、DW法による吸水速度、ゼータ電位V1、吸水性ポリマーと牛ヘモグロビンとの間のゼータ電位差の絶対値ΔV、アルカリ金属濃度比を、それぞれ前述した測定方法に従って測定した。これらの結果を下記表1に示す。尚、前記ゼータ電位差の絶対値ΔVの測定に供した牛ヘモグロビンの前記ゼータ電位V2は、合成例9及び13ではそれぞれ+10mV、合成例6では−9mV、合成例1、7及び8〜12ではそれぞれ−12mVであった。
〔実施例1〕
繊維粗度0.32mg/m、繊維断面の真円度0.30の架橋処理パルプ(Weyerhauser Paper製「High Bulk Additive HBA−S」)70質量部、及び繊維粗度0.18、繊維断面の真円度0.32の針葉樹クラフトパルプ(Skeena Cellulose Co.製「SKEENA PRIME」)30質量部を水中に分散混合し、更に前記混合したパルプの乾燥質量100部に対し、紙力補強剤(ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂、日本PMC(株)製、カイメンWS−570)を樹脂成分で1質量部を水中に分散混合し、所定の濃度とした後、この分散混合液を湿式抄紙機のフォーミングパートで乾燥坪量が25g/m2になるように繊維ウエブを形成した。次いで、該繊維ウエブをサクションボックスにより、乾燥繊維ウエブ100質量部に基づき水分率100質量部になるまで、繊維ウエブを脱水した。次いで、プレスパート直前で、脱水後の湿潤した繊維ウエブ上に、前記合成例1の吸水性ポリマーを散布坪量30g/m2でほぼ均一に散布した。次いで、前記繊維ウエブの吸水性ポリマー散布面に、繊維集合体として、前記繊維ウエブと同様の配合組成を有する、予め抄紙しておいた吸収紙(坪量25g/m2)を重ね合わせ、かかる繊維ウエブと吸収紙との重ね合わせ体をドライヤーに導入し、130℃の温度にて乾燥、一体化することにより、内部に吸水性ポリマーが固定されている吸収性シートを得た。2枚の前記吸収性シート(長さ90mm、幅35mm)を重ね合わせた後、その上下に2枚の前記吸収性シート(長さ200mm、幅75mm)を配し、長手方向前後両端部を曲線状にカットして吸収体とした。
得られた吸収体の非肌当接面側に接着剤を塗布し、該接着剤を介して該吸収体の非肌当接面上に裏面シートを固定した。次いで、該吸収体の肌当接面の全面を表面シートで覆い、更に、該表面シートの肌当接面側に対して常法に従ってエンボス処理を施し、防漏溝を形成し、ナプキン前駆体を得た。こうして得られたナプキン前駆体の非肌当接面(裏面シートの外面)の所定箇所に粘着剤を塗布して粘着部を形成し、更に、表裏面シートそれぞれにおける吸収体の周縁部からの延出部分において常法に従ってエンドシールを施し、ナプキンを得た。このナプキンにおいて、表面シートは、エアスルー不織布(花王(株)製ロリエスーパースリムガードに使用の開孔シート)を使用し、裏面シートは厚み25μmのポリエチレン製フィルムを使用した。当該ナプキンは、概ね図1及び図2に示した構造である。こうして得られたナプキンを実施例1のサンプルとした。
実施例1のナプキンは、吸水性材料(吸水性ポリマー及び繊維)の含有量が吸収体の全質量に対して100質量%であり、また、該ナプキン(吸収体)に含有されている吸水性ポリマーの全てが前記吸水性ポリマーAであり、また、吸収体中における前記吸水性ポリマーAの含有量は、該吸収体の全質量に対して40質量%であった。実施例1のナプキンの厚み(7g/cm2荷重下における厚み)は、1.8mmであった。
〔実施例2〜4〕
実施例1において、吸水性ポリマーとして合成例2の吸水性ポリマーを用いた以外は実施例1と同様にしてナプキンを作製し、これを実施例2のサンプルとした。また、実施例1において、吸水性ポリマーとして合成例3の吸水性ポリマーを用いた以外は実施例1と同様にしてナプキンを作製し、これを実施例3のサンプルとした。また、実施例1において、吸水性ポリマーとして合成例4の吸水性ポリマーを用いた以外は実施例1と同様にしてナプキンを作製し、これを実施例4のサンプルとした。
〔実施例5〕
実施例2において、吸収体を以下のものに置換し、ナプキンの厚み(7g/cm2荷重下における厚み)を5.5mmとした以外は実施例2と同様にしてナプキンを作製し、これを実施例5のサンプルとした。
(実施例5の吸収体)
ホットメルト接着剤(東洋ペトロライト製P−618B)が塗布量5g/m2で塗布された坪量16g/m2のティッシュペーパー(上側被覆シート)の該接着剤の塗布面上に、別途作製したパルプ繊維の繊維ウエブ(坪量240g/m2、幅7cm、長さ17cm)を載置した。このティッシュペーパーは、繊維ウエブよりも寸法が大きい。次いで、繊維ウエブの上から、前記合成例2の吸水性ポリマー0.13gを該繊維ウエブ全体に均一に散布した。更に、繊維ウエブの吸水性ポリマー散布面に、該繊維ウエブと同サイズでホットメルト接着剤が塗布量5g/m2で塗布された下側被覆シートとしてのティッシュペーパー(坪量16g/m2)を、その接着剤の塗布面が該繊維ウエブと対向するように重ね、前記上側被覆シートにおける該繊維ウエブからの延出部分を該下側被覆シートの上面に巻き上げた後、該繊維ウエブの上下を反転させて、吸収体の略全体がティッシュペーパー(被覆シート)で被覆されてなる平面視において矩形形状の吸収体を得た。実施例5のナプキンの断面模式図(図2相当図)を図8に示す。図8中、符号4は吸収体、符号41は吸水性ポリマー、符号42は繊維ウエブ、符号43は上側被覆シート、符号44は下側被覆シートである。
〔実施例6〕
実施例3において、吸収体と裏面シートとの間に金属イオン捕捉剤としてクエン酸三ナトリウム1g(ナプキンに含有されている全吸水性ポリマー100質量部に対して94質量部)を散布した以外は実施例3と同様にしてナプキンを作製し、これを実施例6のサンプルとした。実施例6のナプキンの厚み(7g/cm2荷重下における厚み)は1.8mmであった。
〔実施例7〜9〕
実施例1において、吸水性ポリマーとして合成例6の吸水性ポリマーを用いた以外は実施例1と同様にしてナプキンを作製し、これを実施例7のサンプルとした。また、実施例1において、吸水性ポリマーとして合成例7の吸水性ポリマーを用いた以外は実施例1と同様にしてナプキンを作製し、これを実施例8のサンプルとした。また、実施例1において、吸水性ポリマーとして合成例8の吸水性ポリマーを用いた以外は実施例1と同様にしてナプキンを作製し、これを実施例9のサンプルとした。
〔実施例10〕
実施例1において、吸収体を以下のもの(混合積繊体)に置換した以外は実施例1と同様にしてナプキンを作製し、これを実施例10のサンプルとした。
(実施例10の吸収体)
解繊したパルプ(フラッフパルプ)100質量部と合成例1の吸水性ポリマー20質量部とを空気気流中に混合し、所定の寸法(幅7cm、長さ17cm)の型内に、型の下側に配した金属メッシュ内面から吸引を行いながら積繊した。こうして得られた混合積繊体の坪量は240g/m2であった。該混合積繊体をホットメルト粘着剤をスプレー塗工した坪量16g/m2のティッシュペーパーで包み込んで吸収体を得た。
〔実施例11〜13〕
実施例10において、混合積繊体に使用した吸水性ポリマーとして合成例10の吸水性ポリマーを用いた以外は実施例10と同様にしてナプキンを作製し、これを実施例11のサンプルとした。また、実施例10において、混合積繊体に使用した吸水性ポリマーとして合成例11の吸水性ポリマーを用いた以外は実施例10と同様にしてナプキンを作製し、これを実施例12のサンプルとした。また、実施例10において、混合積繊体に使用した吸水性ポリマーとして合成例12の吸水性ポリマーを用いた以外は実施例10と同様にしてナプキンを作製し、これを実施例13のサンプルとした。
〔実施例14〕
実施例1において、吸水性ポリマーとして合成例13の吸水性ポリマーを用いた以外は実施例1と同様にしてナプキンを作製し、これを実施例14のサンプルとした。
〔比較例1〕
実施例1において、吸水性ポリマーを市販の吸水性ポリマー(日本触媒製、商品名CAW4)に変更した以外は実施例1と同様にしてナプキンを作製し、これを比較例1のサンプルとした。比較例1で用いた市販の吸水性ポリマーの中和度及び遠心保持量等の各種特性を、それぞれ前述した測定方法に従って測定した。尚、比較例1で用いた市販の吸水性ポリマーに関し、前記ゼータ電位差の絶対値ΔVの測定に供した牛ヘモグロビンの前記ゼータ電位V2は、+10mVであった。
〔比較例2〜3〕
実施例1において、吸水性ポリマーとして合成例5の吸水性ポリマーを用いた以外は実施例1と同様にしてナプキンを作製し、これを比較例2のサンプルとした。また、実施例1において、吸水性ポリマーとして合成例9の吸水性ポリマーを用いた以外は実施例1と同様にしてナプキンを作製し、これを比較例3のサンプルとした。
〔比較例4〕
実施例1において、吸水性ポリマーを非イオン性の吸水性ポリマー(住友精化製、アクアコーク)に変更した以外は実施例1と同様にしてナプキンを作製し、これを比較例4のサンプルとした。比較例4で用いた非イオン性の吸水性ポリマーの遠心保持量等の各種特性を、それぞれ前述した測定方法に従って測定した。
〔参考例〕
インドネシアで市販されている生理用ナプキン「スーパーマキシ」(花王(株)製)を、参考例のサンプルとした。このスーパーマキシは、吸水性ポリマーを含有していない。
〔評価〕
実施例、比較例及び参考例の生理用ナプキンについて、前記測定方法に従って厚みを測定すると共に、前記手順1〜3に従って赤色度合いa*値を測定した。また、手順3の終了後のナプキンの状態を目視で観察し、水洗いに起因するナプキンの破れ(洗浄破れ)の有無を確認した。また、これらの生理用ナプキンの吸収性能の評価として、下記の方法により吸収時間及び液戻り量を測定した。これらの結果を下記表2に示す。下記表1には、各生理用ナプキンで用いた吸水性ポリマーの特性を示した。尚、赤色度合いa*値に関し、測定値が1以下であった場合、測定の誤差を考慮すると該測定値は実質的に0とみなせるので、下記表2において「≒0」とした。
<吸収時間の測定方法>
測定対象の生理用ナプキンを平面状に拡げ、表面シートを上に向けて水平面上に固定した状態で、吸収体の中心部における該表面シート上に、円筒状の注入部の付いたアクリル板をのせ、更にそのアクリル板上に錘をのせ、吸収体の中心部に対して、5g/m2の荷重を加える。アクリル板に設けられた注入部は、内径10mmの円筒状をなし、アクリル板には、長手方向及び幅方向の中心軸に、該円筒状注入部の中心軸線が一致し、該円筒状注入部の内部とアクリル板の表面シート対向面との間を連通する内径10mmの貫通孔が形成されている。次いで、円筒状注入部の中心軸が吸収体の平面視における中心部と一致するようにアクリル板を配置し、3gの血液を、円筒状注入部から注入し、生理用ナプキンに吸収させる。血液がナプキンの表面に到達した時点から3gの全量がナプキンに吸収されるまでの時間(秒)を計測し、これを1回目の吸収時間とした。また、最初の血液注入時から3分後に、前記手順を繰り返して3gの血液を更に注入(血液の注入量は合計6g)し、この再注入された血液の全量がナプキンに吸収されるまでの時間(秒)を計測し、これを2回目の吸収時間とした。これらの吸収時間の値が小さいほど、吸収速度が速く、高評価となる。下記表1には2回目(血液6g注入時)の吸収時間を示した。尚、1回目において、注入した血液の全量(3g)が吸収されるまでに3分を超えた場合は、全量を吸収後速やかに次の3gを注入した。
<液戻り量の測定方法>
前記<吸収時間の測定方法>において、3回目の血液注入時から3分後に、アクリル板と錘を取り除き、ナプキンの肌当接面上(表面シート上)に、7cm×15cmで坪量30g/m2の吸収紙(市販のティッシュペーパー)を10枚重ねて載置し、該吸収紙の上から68g/cm2の荷重を1分間かけた。荷重後、吸収紙10枚を取り除き、該吸収紙10枚の重さを測定した。この測定値と、予め求めておいた荷重前の吸収紙10枚の重さの測定値とから、吸収紙10枚に吸収された血液の質量(g)を求め、該質量を液戻り量とした。該液戻り量が少ないほど、ナプキンの吸収性能が高く、高評価となる。
表1及び2の結果から明らかなように、実施例1〜14の各ナプキンは、厚みが5.5mm以下と薄型であるにもかかわらず、実用上十分な吸収性能を有し且つ水洗いによって十分に赤みを除去することが可能なものである。これに対し、比較例1及び3のナプキンは、主として吸水性ポリマーの中和度が75モル%未満であるため、a*値が実施例に比して大きく、水洗いによって赤みを除去し難いものであることがわかる。また、比較例1は遠心保持量も25g/gと高いために、洗浄破れを起こした。また比較例2のナプキンは、a*値は実施例と略同レベルであるが、主として遠心保持量が20g/gを越えているため洗浄破れを起こしており、水洗いし難いものであることがわかる。また比較例4のナプキンは、主として非イオン性の吸水性ポリマーであり、部分的に中和されたカルボキシ基を有さないため、浸透圧による吸収力が十分ではないため、実施例に比して吸収性能に劣ることがわかる。また参考例は、吸水性ポリマーを含有していないが、吸収体の厚みが大きいため、実用上十分な吸収性能を有していることがわかる。
また、吸水性ポリマーについてゼータ電位差の絶対値ΔVを測定した例のうち、ΔVが30mVを超えている比較例1、2及び3は、他の例に比して洗浄性(a*値又は洗浄破れで評価される特性)が劣っていた。このことから、ΔVが洗浄性を評価する指標として有効であることがわかる。