JP7424928B2 - 吸収性物品 - Google Patents

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Description

本発明は、吸収性物品に関する。
一般に、吸収性物品は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に配置された吸収体と、を備える。尿等の体液は、トップシートを通って吸収体に吸収される。吸収性物品には、成人用又は幼児用を問わず、テープタイプの紙おむつ、パンツタイプの紙おむつ、尿取りパッド、軽失禁パッド等、用途に応じて様々な種類が存在する。
吸収性物品中の吸収体としては、フラッフパルプと高吸収性ポリマー(Super Absorbent Polymer、以下「SAP」ともいう)とを併用することが一般的である。一方、着用感、外観、肌触り、及び尿の逆戻り防止性等のさらなる向上を目指して、別形態の吸収体として、基体となる不織布と高吸収性ポリマーとからなる高吸収性シート(以下「SAPシート」ともいう)が種々提案されている。
特許文献1には、それぞれ一方の面が接着剤塗布面である第1、第2シートと、第1、第2シートの各接着剤塗布面の間に長手方向に延びてストライプ状に配置された複数のSAP層と、を備え、第2シートの接着剤塗布面におけるSAP層との対面領域では接着剤が間欠的に塗布され、かつSAP層の幅方向両側でSAP層を介さずに直接対面する第1、第2シートの各接着剤塗布面には接着剤が長手方向に連続的に塗布された高吸収性シートが開示されている。
特許文献2には、トップシートとバックシートとの間において、幅方向の一方及び他方にそれぞれ配置されかつSAPを含む第1、第2吸収体を備え、第1、第2吸収体は2枚の不織布とその間に配置されたSAPとからなり、第1、第2吸収体はそれぞれ長手方向に延びる第1、第2の折り目を有し、第1、第2の折り目が対向する、所定構造の高吸収性シートが開示されている。さらに、特許文献2には、2枚の不織布とその間に配置されたSAP粒子とを含む第3吸収体を更に備え、第3吸収体が第1、第2吸収体の上側に配置された吸収性物品が開示されている。
特開2006-158676号公報 特開2013-042882号公報
従来のSAPシートでは、2枚の不織布の層間に、体液吸収成分としてのSAP粒子がホットメルト接着剤で固着担持され、SAP粒子が高密度で存在するのが一般的である。SAPの、体液を吸収して膨潤するという特性上、体液吸収にはSAP粒子を膨潤可能にする空間が必要である。しかしながら、SAPシートでは前述のようにSAP粒子が高密度で存在し、SAP粒子の周囲には接着剤の硬化体も存在することから、SAP粒子を膨潤させる空間は多くない。従って、従来のSAPシートでは、SAP粒子の膨潤速度は不十分であり、結果として、体液吸収速度が遅くなり、排出直後の体液を素早く吸収し切れず、液戻りが発生するといった問題が生じやすい。
また、従来のSAPシートは、厚み方向の圧縮性に乏しく、その内部には前述のようにSAP粒子が高密度で存在することから、着用者がSAP粒子の膨潤体やホットメルト接着剤の硬化体のゴツゴツした硬い感触を肌で感じ易く、着用感、フィット感が大きく低下し、着用時の違和感が大きくなるという問題を有している。
特許文献1及び特許文献2のSAPシートを吸収体として備える吸収性物品は、吸収性及び着用感を高水準で併せ持つものではない。
本発明の目的は、高吸収性シートを吸収体とし、液戻りを防止し、着用感に優れ、体液の繰り返し吸収性も良好な吸収性物品を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、高吸収性シートにおいて、高吸収性ポリマーとして通液速度の異なる2種以上の高吸収性ポリマーを用い、これらを混合することなく、所定の構造で厚み方向に層状に配置することにより、所望の吸収性物品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、下記の吸収性物品に係る。
(1)液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された、フラップパルプを含有しない吸収体と、を備える吸収性物品であって、
前記吸収体は、肌側に位置する上層不織布としての液透過性の親水性不織布と、非肌側に位置する下層不織布としてのパルプ含有不織布と、前記上層不織布と前記下層不織布との間に位置する中間層不織布としての基体不織布と、前記基体不織布の肌側面の一部を覆うカバー不織布と、を含み、
前記親水性不織布と前記基体不織布との間に、相対的に通液速度が高い、高通液タイプの高吸収性ポリマーが固着担持され、
前記基体不織布と前記パルプ含有不織布との間に、相対的に通液速度が低い、低通液タイプの高吸収性ポリマーが固着担持され、
前記基体不織布は、肌側面が複数の起毛繊維を立設した起毛面であり、非肌側面が非起毛面であり、
前記基体不織布の前記起毛面には、複数の前記起毛繊維間に前記高通液タイプの前記高吸収性ポリマーが固着担持された存在領域と、前記高通液タイプの前記高吸収性ポリマーが固着担持されていない非存在領域と、があり、
前記カバー不織布は、前記基体不織布の幅方向略中央部を長手方向に延びる前記非存在領域と厚み方向に重なるように配置され、
前記カバー不織布の幅方向寸法が、前記基体不織布の幅方向寸法の5%以上50%以下であることを特徴とする、吸収性物品。
(2)前記高通液タイプの前記高吸収性ポリマーは、荷重下での通液速度が50ml/分以上であり、荷重下での体液吸収量が22g/g以上である、上記(1)の吸収性物品。
(3)前記低通液タイプの前記高吸収性ポリマーは、荷重下での通液速度が15ml/分以下であり、荷重下での体液吸収量が15g/g以上である、上記(1)又は(2)の吸収性物品。
(4)前記パルプ含有不織布の坪量が40g/m以上80g/mである、上記(1)~(3)のいずれかの吸収性物品。
(5)前記カバー不織布がエアスルー不織布であり、厚さが0.1mm以上3.0mm以下であり、坪量が10g/m以上60g/m以下である、上記(1)~(4)のいずれかの吸収性物品。
(6)前記基体不織布は、荷重下厚さが0.5mm以上3mm以下であり、無荷重厚さが1.5mm以上5mm以下である、上記(1)~(5)のいずれかの吸収性物品。
(7)前記高通液タイプの前記高吸収性ポリマーの坪量が50g/m以上300g/m以下であり、前記低通液タイプの前記高吸収性ポリマーの坪量が100g/m以上700g/m以下である、上記(1)~(6)のいずれかの吸収性物品。
本発明によれば、高吸収性シートを吸収体とし、液戻りを防止し、着用感に優れ、さらに体液の繰り返し吸収性も良好な吸収性物品が提供される。
本発明の第1実施形態に係る吸収性物品の構成を模式的に示す平面図である。 図1に示すX-X切断線における幅方向の模式断面図である。 図1に示す吸収性物品の要部(吸収体)の構成を拡大して示す模式断面図である。 吸収体中の基体不織布の構成を模式的に示す斜視図である。 吸収体中の基体不織布とカバー不織布との配置関係を模式的に示す斜視図である。 吸収体中の基体不織布とカバー不織布との配置関係を模式的に示す幅方向断面図である。
本明細書において、吸収性物品の着用とは、体液の吸収前後を問わず、吸収性物品を身体に装着した状態―をいう。吸収性物品において、長手方向とは吸収性物品を身体に着用したときに着用者の股間部を介して身体の前後に亘る、図中Yで示す方向であり、幅方向とは長手方向に対して直交する、図中Xで示す方向であり、厚み方向とは各構成部材を積層する、図中Zで示す方向である。肌側面とは、吸収性物品を着用したときに、着用者の肌に当接する表面及び肌を臨む表面であり、非肌側面とは、着用者の衣服に接触する表面又は衣服を臨む表面である。体液とは、尿や血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。
<吸収性物品(第1実施形態)>
以下、図面を参照しつつ、本実施形態の吸収性物品50について説明する。図1及び図2は、第1実施形態に係る吸収性物品50を示す。図3は吸収体20の構成を拡大して示す。図4及び図5は基体不織布12とカバー不織布14との位置関係を示す。これらの図面は吸収性物品50中の各構成部材の形状や寸法、大小関係等を規定するものではない。
本実施形態の吸収性物品50は、ベビー用又は成人用を問わず種々の吸収性物品として使用できるが、代表的には、軽失禁パッド、尿吸収パッド、パンツ型紙おむつ、テープ止め紙おむつ等が挙げられる。アウターとしての各種紙おむつと、インナーとしての吸収性物品50とを組み合わせてもよい。吸収性物品50の、長手方向の寸法、及び幅方向の寸法はいずれも特に限定されないが、例えば、100mm以上800mm以下の範囲、及び50mm以上500mm以下の範囲である。吸収性物品50の寸法を前記の範囲に調整することで、種々の用途の吸収性物品を容易に得ることができる。
吸収性物品50は、図1及び図2に示すように、これを着用したときに相対的に肌側に位置する、液透過性のトップシート10と、トップシート10に対向して配置され、吸収性物品50を着用したときに相対的に非肌側に位置する液不透過性のバックシート30と、トップシート10とバックシート30との間に配置され、フラッフパルプを含有しない吸収体20と、トップシート10の肌側表面に設けられた一対の立体ギャザー40と、を備える。吸収体20はトップシート10とバックシート30との間に挟まれた構造となり、尿等の体液はトップシート10を通して吸収体20に吸収及び保持される。吸収性物品50の用途やタイプに応じて、レッグギャザー、ウエストギャザー、サイドフラップ等を適宜設けることができる。
本実施形態の吸収体20は、フラッフパルプを含有せず、吸収成分として、高通液タイプの高吸収性ポリマー15と、低通液タイプの高吸収性ポリマー16とを用いたSAPシートの一種である。しかしながら、吸収体20は、上層不織布としての親水性不織布11と、中間層不織布としての基体不織布12と、基体不織布12の肌側面(起毛面12a)の一部を覆うカバー不織布14と、下層不織布としてのパルプ含有不織布13とを用い、高通液タイプの高吸収性ポリマー15を親水性不織布11と基体不織布12との間の第1の中間層21に配し、低通液タイプの高吸収性ポリマー16を基体不織布12とパルプ含有不織布13との間の第2の中間層22に配し、さらに、基体不織布12の起毛面12aに高吸収性ポリマー15が固着されていない非存在領域を幅方向略中央部から長手方向に延びるように設け、その肌側にカバー不織布14を配して形成されたスリット空間17を有する点で、従来のSAPシートとは異なるものである。
本実施形態の吸収体20によれば、第1に、親水性不織布11、起毛面12aを有する比較的厚手の基体不織布12及びパルプ含有不織布13の3層構造とすることで、クッション性や復元性が生じ、着用感やフィット感、特に体液を吸収する前の着用感やフィット感が良好になり、体液拡散性の向上にもつながる。
第2に、第1の中間層21に高通液タイプの高吸収性ポリマー15を配し、この高通液タイプの高吸収性ポリマー15を、起毛面12aを有する比較的厚手の基体不織布12で支持し、かつスリット空間17を設けることで、高吸収性ポリマー15が膨潤可能な空間を確保しつつ、優れた体液拡散性を使用終期まで維持し、高い吸収速度や、液戻り(ウエットバック)防止性の良好な吸収体20となる。また、第2の中間層22に低通液タイプの高吸収性ポリマー16を配することで、体液吸収量を大容量化することができ、繰返し吸収にも十分に対応できる。なお、第2の中間層22中の高吸収性ポリマー16が膨潤しても、着用者との間には比較的厚手でクッション性に富む基体不織布12が介在することから、そのゴツゴツ感は着用者に伝わりにくい。
第3に、高通液タイプの高吸収性ポリマー15と低通液タイプの高吸収性ポリマー16との組み合わせにより種々の効果を得ることができ、例えば、高吸収性ポリマー15、16を共に通液量とは別に荷重下での体液吸収量が大きいものにすることで、体液を吸収して膨潤した後もスリット空間17が維持され、この点でも、体液拡散性等を高水準に維持し、体液排出直後の液戻りが防止される。
第4に、体液排出直後に、第2の中間層22やパルプ含有不織布13等に一時的に体液を保持することで、つたいモレが防止されるとともに、吸収体20全体としての剛性が付与され、よれが防止される。
以下、シート状又は板状の各構成部材について、トップシート10、吸収体20、バックシート30及び立体ギャザー40の順でさらに詳しく説明する。なお、これらの構成部材は、シート状及び板状以外の立体構造を有していてもよい。
(トップシート)
トップシート10は、吸収体20に向けて体液を速やかに通過させる液透過性のシート状部材であり、吸収体20を挟んで、バックシート30に対向して配置される。トップシート10は、着用者の肌に当接する場合があることから、柔らかな感触で、肌に刺激を与えないような性質を有する基材が好ましい。該基材としては、例えば、親水性シート、同種又は異種の親水性シートの積層体である複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム等が挙げられる。親水性シートは、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等の合成樹脂からなる合成繊維、レーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維等の1種又は2種以上を用いて、エアスルー法、サーマルボンド法、スパンレース法、スパンボンド法等の公知の方法で加工することにより得られる。
トップシート10には、液透過性を向上させる観点から、公知の方法に従ってエンボス加工や穿孔加工を表面に施してもよい。また、肌への刺激を低減させる観点から、トップシート10には、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等の1種又は2種以上を含有させてもよい。強度、加工性及び液戻り量の観点から、トップシート10の坪量は、例えば、15g/m以上40g/m以下の範囲である。トップシート10の形状は特に制限されず、漏れがないように体液を吸収体20へと誘導するために必要とされる、吸収体20の肌側面の一部又は全部を覆う形状であればよい。
(吸収体)
本実施形態の吸収体20は、図2~図3に示すように、トップシート10とバックシート30との間に配置され、フラッフパルプを含有せず、吸収成分として通液性の異なる高吸収性ポリマー15、16を用いた高吸収性シートの一種である。本実施形態の吸収体20は、その長手方向の寸法が、例えば、100mm以上800mm以下の範囲、又は150mm以上500mm以下の範囲である。また、吸収体20の幅方向の寸法は、例えば、50mm以上500mm以下の範囲、又は60mm以上400mm以下の範囲である。吸収体20の全面又は一部にエンボス加工を施してもよい。
吸収体20の平面視形状は特に限定されないが、例えば、矩形状(長方形状)、砂時計状、I字状、長方形の4角が丸まった角丸四角形状、長円状、一方向に長い楕円形状等が挙げられる。なお、幅が150mm以上になる場合には、砂時計状のように股間の部分の幅を狭くすることで、着用者が足を動かしやすくすることがより望ましい。その場合、一番幅が狭い部分の寸法は例えば80mm以上120mm以下の範囲である。吸収体20の厚みは、吸収体20の形態や材質等に応じて適宜選択される。また、体液の吸収性、保持性や、吸収体20の形状保持性、SAPの脱落防止等の観点から、必要に応じて吸収体20全体をティシュー等の親水性シートで被覆してもよい。
本実施形態の吸収体20は、肌側に位置する上層不織布としての液透過性の親水性不織布11と、非肌側に位置する下層不織布としてのパルプ含有不織布13と、上層不織布と下層不織布との間に位置する中間層不織布としての基体不織布12と、基体不織布12の肌側面の一部を覆うカバー不織布14と、を含み、第1の中間層21には、相対的に通液速度が高い、高通液タイプの高吸収性ポリマー(以下単に「高通液タイプの高吸収性ポリマー」ともいう)15が固着担持され、第2の中間層22には、相対的に通液速度が低い、低通液タイプの高吸収性ポリマー(以下単に「低通液タイプの高吸収性ポリマー」ともいう)16が固着担持されたものである。
基体不織布12は、肌側面が複数の起毛繊維12xを立設した起毛面12aであり、非肌側面が非起毛面12bであり、起毛面12aには、複数の起毛繊維12x間に高通液タイプの高吸収性ポリマー15が固着担持された存在領域と、高通液タイプの高吸収性ポリマー15が固着担持されていない非存在領域と、がある。非存在領域は、基体不織布12の起毛面12aの幅方向略中央部を長手方向に延びるように形成されている。カバー不織布14は、基体不織布12の非存在領域と厚み方向に重なるように配置され、スリット空間17を形成する。また、カバー不織布14の幅方向寸法が、基体不織布12の幅方向寸法の5%以上50%以下である。
吸収体20を構成する親水性不織布11、基体不織布12、カバー不織布14、パルプ含有不織布13、及び高吸収性ポリマー15、16は、詳しくは次の通りである。
(親水性不織布)
本実施形態の吸収体20において、親水性不織布11は上層不織布として吸収体20の最も肌側に位置し、例えば、トップシート10を通過してきた体液を効率的に集めることができる。また、親水性不織布11は、基体不織布12の起毛面12a及びカバー不織布14の肌側面と対面する。起毛面12aは複数の起毛繊維12x間に多数の空隙を有し、また、起毛繊維12x自体が伸縮性や柔軟性を有するものであることから、親水性不織布11の表面に高通液タイプの高吸収性ポリマー15を固着担持させても、体液を吸収して膨潤する空間が十分に確保されるので、体液吸収初期の吸収遅れによる液戻りが防止される。また、体液を繰り返し吸収するときでも、吸収速度や吸収量が低下しにくい。
親水性不織布11としては、この分野で常用されるものをいずれも使用でき、例えば、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、エアレイド不織布、エアスルー不織布等が挙げられる。これらの中でも、入手性やコスト等の観点から、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布等が好ましい。親水性不織布11の坪量は、例えば7g/m以上45g/m以下の範囲又は13g/m以上50g/m以下の範囲である。なお、一実施形態では、親水性不織布11は、基体不織布12よりも厚みの薄いものが使用される。
(基体不織布)
本実施形態の吸収体20において、基体不織布12は、上層不織布である親水性不織布11と、下層不織布であるパルプ含有不織布13と、の間に位置する中間層不織布として機能し、例えば、吸収体20全体としての体液拡散性を向上させる。本実施形態の基体不織布12は、図4に示すように、親水性不織布11と対向する肌側(トップシート10側)表面が、基体不織布12を構成する繊維を起毛させることにより、複数の起毛繊維12xが立設された起毛面12aになる。そのため、不織布本来の嵩高さに加えて、吸収体20に適度な厚みと柔らかさが付与され、適度なクッション性が発生し、着用時の着用感やフィット感を向上させ得る。また、起毛繊維12xの作用により、吸収体20全体に復元性が付与される。また、基体不織布12を上記のように起毛させると、基体不織布12の起毛繊維12x間に、膨潤可能な空隙を確保しつつ、高通液タイプの高吸収性ポリマー15を分散させて固着担持させることができる。基体不織布12の一方の表面を起毛させる方法としては、回転ノコ刃、ニードルパンチ等を用いる方法が挙げられ、インラインでの生産性やコストの観点から回転ノコ刃を用いる方法が好ましい。
本実施形態における起毛の状態は特に限定されず、目視で起毛状態が確認できればそれでよいが、より具体的には、基体不織布12の起毛率は5%以上90%以下が好ましく、8%以上80%以下であることがより好ましい。なお、起毛率とは、起毛加工による基体不織布12の厚さの増加率を意味する。例えば、起毛前の基体不織布12の厚さをT1、起毛後の基体不織布12の厚さをT2としたとき、起毛率(%)は、[(T2―T1)/T1]×100で表すことができる。上記厚さは、ハイトゲージ((株)ミツトヨ製)を用いて無荷重下の厚さを測定することで求められる。なお、基体不織布12の他方の表面は、本実施形態では非起毛面12bであるが、これに限定されず、繊維を起毛させてもよい。
また、本実施形態の基体不織布12の起毛面12aには、図5及び図6に示すように、高通液タイプの高吸収性ポリマー15を固着担持させた存在領域と、高通液タイプの高吸収性ポリマー15が固着担持されていない非存在領域と、がある。非存在領域は、基体不織布12の幅方向略中央部を長手方向に延びるように形成されている。非存在領域の肌側に後述するカバー不織布14を配置することにより、スリット空間17が形成される。
基体不織布12としては、例えば、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布等の不織布や、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布を積層した複合不織布等が挙げられる。これらの不織布の中でも、嵩を高くする観点等から、エアスルー不織布が好ましい。
基体不織布12の厚さは特に限定されないが、着用感及び吸収性能のバランスの観点から、荷重下(35g/m荷重下)厚さは0.5mm以上3.0mm以下の範囲又は0.5mm以上2.0mm以下の範囲であり、無荷重厚さは1.5mm以上5mm以下の範囲である。荷重下厚さ及び無荷重厚さは、後述の方法で測定される。また、基体不織布12の坪量は特に限定されないが、例えば、20g/m以上200g/m以下の範囲、20g/m以上160g/m以下の範囲、又は20g/m以上80g/m以下の範囲である。
基体不織布12としてエアスルー不織布を用いる場合、エアスルー不織布の坪量が20g/m以上80g/m以下の範囲であり、エアスルー不織布を構成する繊維の太さが1.6dtex以上14dtex以下の範囲、1.8dtex以上9.0dtex以下の範囲又は2.0dtex以上6.0dtex以下の範囲である。エアスルー不織布を構成する繊維の太さを上述の範囲に調整することにより、エアスルー不織布の起毛繊維12x間に高通液タイプの高吸収性ポリマー15を分散させて固着担持させやすくなり、起毛面12aにおける高通液タイプの高吸収性ポリマー15の均一分散性が向上し、膨潤可能な空隙を確保しやすくなる。
(カバー不織布)
カバー不織布14は、図5及び図6に示すように、基体不織布12の長手方向に沿って起毛面12aの一部を覆うように、配置される。カバー不織布14があることで、中空上のスリット空間17が形成される。基体不織布12の、カバー不織布14と厚さ方向で重なる起毛面12aは、高吸収性ポリマー15の非存在領域である。非存在領域に高吸収性ポリマー15が固着担持されていないことで、中空部であるスリット空間17がスリットと同様の機能を示し、吸収体20における体液拡散性を向上させ、液戻りのない素早い吸収を実現できる。本実施形態に限定されず、基体不織布12の長手方向に延びる帯状の複数のカバー不織布14を、基体不織布12の幅方向にほぼ平行に配置してもよい。カバー不織布14の基材は、体液の拡散速度が速く、素早く拡散できるものであればよく、例えば、親水性不織布が挙げられ、その中でも、エアスルー不織布が好ましい。カバー不織布14は、例えば、ホットメルト接着剤により、基体不織布12の起毛面12aにおける非存在領域に接着される。
本実施形態のカバー不織布14は、図6に示すように、基体不織布12の幅方向中央部において、基体不織布12の長手方向の一方の縁辺から他方の縁辺まで延びるように配置されているが、本実施形態に限定されず、基体不織布12の長手方向途中部から一方又は他方の縁辺まで延びるように配置されていてもよい。基体不織布12の幅方向寸法Bに対するカバー不織布14の幅方向寸法Aの比率は、例えば、5%以上50%以下の範囲又は8%以上47%以下の範囲である。比率が50%を超えると、基体不織布12の高吸収性ポリマー15の固着担持量が減少し、吸収性能が低下する傾向がある。比率が5%未満であると、体液を受液する位置の高吸収性ポリマー15が吸液により膨潤し、ゲルブロッキングが生じる可能性がある。
カバー不織布14の厚さは、例えば、0.1mm以上3.0mm以下の範囲である。カバー不織布14の坪量は、例えば、10g/m以上60g/m以下の範囲、又は15g/m以上40g/m以下の範囲である。厚さが0.1mm未満、又は坪量が10g/m未満若しくは60g/mより大きいと、基体不織布12に固着担持された高吸収性ポリマー15全体への体液の拡散が不十分になる傾向がある。厚さが3.0mmより厚い場合、製品にしたとき硬さが出てしまい、着用時に違和感が出てしまう傾向がある
(パルプ含有不織布)
本実施形態の吸収体20において、パルプ含有不織布13は下層吸収体として最も非肌側に位置し、例えば、一時的に体液を保持することで、液戻りや漏れを防止する。本実施形態のパルプ含有不織布13は、スパンボンド不織布と、スパンボンド不織布の少なくとも一方の表面に一体化されたパルプ繊維ウェブと、を含む。ここで、一体化とは、吸収性物品50の使用が終了するまでの間に、パルプ含有不織布13の機能が損なわれるほどに、スパンボンド不織布とパルプ繊維ウェブとが剥離しないことを意味する。本実施形態では、例えば、吸収体20中の体液拡散性や保液性等に寄与するパルプ繊維ウェブが基体不織布12の非起毛面12bに対向し、例えば吸収体20への強度付与等に寄与するスパンボンド不織布が外方を臨むように、パルプ含有不織布が配置されることが好ましい。スパンボンド不織布の坪量は例えば7g/m以上30g/m以下の範囲であり、パルプ繊維ウェブの坪量は例えば30g/m以上50g/m以下の範囲である。スパンボンド不織布及びパルプ繊維ウェブの各坪量を前記範囲とすることにより、パルプ含有不織布の坪量を後述する適切な範囲に調整することが容易になる。
パルプ含有不織布13の中でも、水流交絡による一体化物が好ましい。該一体化物は、例えば、スパンボンド不織布の表面に、バインダーを用いることなく、パルプ繊維をウォータージェットで交絡し、一体化してパルプ繊維ウェブを設けたパルプ含有不織布である。このようなパルプ含有不織布13では、スパンボンド不織布の一方の表面においてスパンボンド不織布を構成する繊維とパルプ繊維とが絡み合ってパルプ繊維ウェブが一体化されると共に、パルプ繊維の一部がスパンボンド不織布を厚み方向に突き抜けて他方の面に露出した状態になっており、スパンボンド不織布とパルプ繊維ウェブとが極めて強固に結合している。
パルプ繊維としては特に限定されないが、例えば、ラジアータパイン、スラッシュパイン、サザンパイン、ロッジポールパイン、スプルースおよびダグラスファー等の針葉樹晒クラフトパルプ(以下「NBKP」ともいう)が挙げられる。NBKPは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。パルプ繊維ウェブを一体化するスパンボンド不織布としては特に限定されないが、パルプ繊維ウェブに対する支持性、パルプ含有不織布13全体の強度、保液性や柔らかさ、風合い等の観点から、合成樹脂製繊維としてポリプロピレン繊維を含むスパンボンド不織布が好ましく、ポリプロピレン繊維からなるスパンボンド不織布がより好ましい。
パルプ含有不織布13において、スパンボンド不織布とパルプ繊維ウェブとの重量割合(スパンボンド不織布/パルプ繊維ウェブ)は、例えば40/60重量%以上10/90重量%以下の範囲である。パルプ繊維ウェブの含有量が60質量%未満であると、パルプ含有不織布13が風合いや体液の吸収に乏しく蒸れやすくなる傾向があり、90質量%を超えるとパルプ含有不織布13が硬くなる傾向がある。
パルプ含有不織布13の坪量は、製品の厚みや強度等の観点から、例えば、40g/m以上80g/m以下の範囲又は40g/m以上60g/mの範囲である。40g/m未満では,パルプ含有不織布13が柔らかくなり過ぎて製造歩留まりが低下するとともに、体液吸収後に破れ易くなる傾向があり、80g/mを超えるとパルプ含有不織布13が硬さや厚みを増すことで、吸収体20が硬くなり装着時の快適性を損なう傾向がある。
(高吸収性ポリマー)
本実施形態の吸収体20において、通液速度が相対的に高い高通液タイプの高吸収性ポリマー15を第1の中間層(親水性不織布11と基体不織布12との層間)に固着担持させ、通液速度が相対的に低い低通液タイプの高吸収性ポリマー16を第2の中間層(基体不織布12とパルプ含有不織布13との層間)22に固着担持させる。高通液タイプの高吸収性ポリマー15は、例えば、親水性不織布11の基体不織布12との対向面、及び基体不織布12の起毛面12aの存在領域に固着担持される。低通液タイプの高吸収性ポリマー16は、例えば、基体不織布12の非起毛面12b(パルプ含有不織布13との対向面)及びパルプ含有不織布13の基体不織布12との対向面に固着担持される。
高通液タイプの高吸収性ポリマー15は、低通液タイプの高吸収性ポリマー16よりも通液速度が高ければよいが、高通液タイプの高吸収性ポリマー15の通液速度(0.3psi加下圧)は、例えば、50ml/分以上の範囲である。一方、低通液タイプの高吸収性ポリマー16は高通液タイプの高吸収性ポリマー15よりも通液速度が低ければよいが、低通液タイプの高吸収性ポリマー16の通液速度(0.3psi加下圧)は、例えば、15mi/分以下の範囲である。通液速度を前述の範囲に設定することにより、第1の中間層21での体液の均一拡散性が向上し、体液排出直後の液戻りや、繰返し吸収時の吸収速度の低下が防止される。ここで、通液速度とは、予め大過剰の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液中にて膨潤させた高吸収性ポリマー15、16のゲル間を、0.3psiの加圧状態で通過する0.9質量%塩化ナトリウム水溶液の通液速度(単位ml/分)である。SAPの通液速度のより詳しい測定方法は、例えば、特開2017-70497号公報の段落0037、特開2003-235889号公報の段落0008及び段落0009等に記載されている。
高吸収性ポリマー15、16の好ましい実施形態では、吸収倍率が、高通液タイプの高吸収性ポリマー15よりも低通液タイプの高吸収性ポリマー16の方が高く設定される。このような吸収倍率の設定により、第1の中間層21の優れた体液均一拡散性が吸収性物品50の使用終期まで維持され、吸収速度が高水準に維持される。高通液タイプの高吸収性ポリマー15の吸収倍率は、例えば、55g/g以上65g/g以下の範囲であり、低通液タイプの高吸収性ポリマー16の吸収倍率は、例えば、65g/g以上75g/g以下の範囲である。吸収倍率の測定方法は、後述の方法に従う。
高吸収性ポリマー15、16の好ましい別の実施形態では、荷重下吸収量は、高通液タイプの高吸収性ポリマー15の方が低通液タイプの高吸収性ポリマー16よりも高く設定される。このような設定により、例えば、吸収性物品50に着用者の体重が負荷された状態でも、第1の中間層21の均一な体液拡散性が維持されるとともに、第1の中間層21及び第2の中間層22で偏りなく体液が吸収され、体液吸収後でも高吸収性ポリマー15、16の膨潤によるゴツゴツ感を感じにくくなる。荷重下吸収量は、荷重下での、高吸収性ポリマー15、16の1g当たりの体液吸収量(g)である。高通液タイプの高吸収性ポリマー15の荷重下吸収量は、例えば、22g/g以上の範囲である。低通液タイプの高吸収性ポリマー16の荷重下吸収量は、例えば、15g/g以上の範囲である。荷重下吸収量の測定方法は、後述の方法に従う。
高吸収性ポリマー15、16の好ましい他の実施形態では、生理食塩水吸収速度は、高通液タイプの高吸収性ポリマー15よりも低通液タイプの高吸収性ポリマー16の方が高く設定される。このような設定により、高吸収性ポリマー15が体液を吸収する前に高吸収性ポリマー16が体液を吸収することで第1の中間層21における高吸収性ポリマー15のゲルブロッキング現象を防ぎ、体液拡散性が維持される効果が得られる。高通液タイプの高吸収性ポリマー15の生理食塩水吸収速度は、例えば、25秒以上の範囲である。低通液タイプの高吸収性ポリマー16の生理食塩水吸収速度は、例えば、30秒以上の範囲である。生理食塩水吸収速度の測定方法は、後述の方法に従う。
また、第1の中間層21において、高通液タイプの高吸収性ポリマーの坪量は、例えば、50g/m以上300g/m以下の範囲であり、第2の中間層22において、低通液タイプの高吸収性ポリマー16の坪量は、例えば、100g/m以上700g/m以下の範囲である。
高吸収性ポリマー15、16に使用される高吸水性ポリマー(以下単に「SAP」ともいう)としては、体液を吸収しかつ逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸塩、ポリアスパラギン酸塩、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等が挙げられる。これらの中でも、重量あたりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸塩が好ましく、ポリアクリル酸ナトリウムがより好ましい。SAPは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。SAPは、同じ物質であっても、製造過程の違い等により、通液速度その他の特性の異なるものが種々市販されている。したがって、種々のSAPの中から、高通液タイプであって、その他付随する特性を有する高吸収性ポリマー15と、低通液タイプであって、その他付随する特性を有する高吸収性ポリマー16と、を適宜選択して使用できる。
また、粉末形態の高吸収性ポリマー15、16を用いる場合、その粒子径は特に限定されず、広い範囲から適宜選択できるが、中位粒子径として、例えば、50μm以上600μm以下の範囲又は100μm以上500μm以下の範囲にあるものを好ましく使用できる。この範囲の粉末を用いると、体液の吸収に関する基本性能を高めることができる。また、体液を吸収して膨潤する高吸収性ポリマー15、16のゴツゴツ感が現れ難くなり、着用感が向上する。
高吸収性ポリマー15、16は、ホットメルト接着剤により、前述した所定の位置又は領域に固着担持されている。なお、高吸収性ポリマー15、16の吸収性を阻害せず、かつ、着用時の肌触りを損なわないという観点から、ホットメルト接着剤の含有量は例えば10g/m以下の範囲である。ホットメルト接着剤としては融点が100℃以上180℃以下のものを特に限定なく使用でき、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレン系共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン系共重合体等の合成ゴム系ホットメルト接着剤、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のオレフィン系ホットメルト接着剤等が挙げられる。ホットメルト接着剤の塗布方法としては、ノズルから溶融状態のホットメルト接着剤を非接触式で塗布するカーテンコート法やスパイラル法、接触式で塗布するスロット法等、公知の方法が利用できる。
<吸収体の製造方法>
吸収体20の製造方法としては、特に制限はないが、以下の方法が一例として挙げられる。まず、親水性不織布11の基体不織布12との対向面に高吸収性ポリマー15を固着担持させ、パルプ含有不織布13の基体不織布12との対向面に高吸収性ポリマー16を固着担持させる。次に、基体不織布12の片側表面を回転ノコ刃又はニードルパンチを用いて起毛させ、起毛面12aを形成する。起毛面12aの幅方向略中央部から長手方向の延びる非存在領域を残して、起毛繊維12x間に高吸収性ポリマー15を固着担持させ、非存在領域にカバー不織布14を固着した後、非起毛面12bには高吸収性ポリマー16を固着担持させる。そして、親水性不織布11、基体不織布12、及びパルプ含有不織布13を、第1の中間層21に高吸収性ポリマー15が固着担持され、第2の中間層22に高吸収性ポリマー16が固着担持されるように積層し、必要に応じて、縁辺の全部又は一部をホットメルト接着剤やエンボス加工により固定することにより、本実施形態の吸収体20が得られる。
(バックシート)
バックシート30は、吸収体20が保持している体液が衣類を濡らさないような液不透過性を備えた基材を用いて形成されればよく、該基材としては、例えば、樹脂フィルム、樹脂フィルムと不織布との積層体である複合シート等が挙げられる。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布の積層体である複合不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布の積層体である複合不織布、これらの2種以上の積層体である複合材料等が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン等のフィルム、ポリエチレンとポリプロピレンとの複合フィルム等が挙げられる。
バックシート30の坪量は、例えば強度及び加工性の点から、15g/m以上40g/m以下の範囲である。また、装着時の蒸れを防止する観点から、通気性を有するバックシート30が好ましい。バックシート30に通気性を付与するには、例えば、樹脂フィルムにフィラーを配合する方法、バックシート30に穿孔のためにエンボス加工を施す方法等を利用できる。ここで、フィラーとしては炭酸カルシウムが挙げられ、フィラーを公知の方法に従って配合できる。
(立体ギャザー)
吸収性物品50は、図1に示すように、例えば、使用者の排泄した体液の横漏れを防止するため、吸収性物品50の長手方向に沿って、トップシート10の肌側面の両側端部付近に、一対の立体ギャザー40を備えている。本実施形態の立体ギャザー40は、幅方向一端がバックシート30の肌側面の両側端部付近に固定され、幅方向途中部がトップシート10の肌側面の両側端部付近に固定され、その幅方向他端40aはトップシート10に固定されない自由端40aである。自由端40a付近には弾性伸縮部材(不図示)が長手方向に沿って配設され、自由端40aに起立性を付与し、着用者の体型に合わせて変形可能なものとなる。
立体ギャザー40の幅方向一端の固定位置は、本実施形態に限定されず、例えば、バックシート30の非肌側面の幅方向両端付近、トップシート10とバックシート30との各縁辺を部分的又は全体的に接合し、内部に吸収体20を収納する袋体の幅方向両端付近、トップシート10の肌側面の幅方向両端付近等が挙げられる。なお、本実施形態の吸収性物品50は、立体ギャザー40を含まない実施形態をも包含する。
立体ギャザー40を構成するシート部材としては、疎水性繊維にて形成された撥水性及び/又は液不透過性の不織布を特に限定なく使用でき、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布の積層体である複合不織布等が挙げられる。弾性伸縮部材としては、この分野での常用品を特に限定なく使用でき、例えば、ポリウレタン糸、帯状のポリウレタンフィルム、糸状又は帯状の天然ゴム等が挙げられる。
<吸収性物品の製造方法>
吸収性物品50は、公知の製造方法により製造できるが、例えば、吸収体20をトップシート10とバックシート30との間に配置する工程と、トップシート10とバックシート30とを一部又は全周に亘ってホットメルト接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を用いて固定する工程と、バックシート30及びトップシート10の所定位置に立体ギャザー40を設置する工程と、を含む製造方法が挙げられる。そして、吸収性物品50が尿取りパッドや軽失禁パッドである場合は、これを包装体に個別包装した後、長手方向に3つ折りにして折りたためばよい。また、レッグギャザー、ウエストギャザー、サイドフラップ等を必要に応じて設けることができる。
以上、本発明を、実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の発明の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
以下、本実施形態について、実施例及び比較例を挙げて詳細に説明する。なお、本実施形態は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
上層不織布(親水性不織布)としてエアスルー不織布(坪量20g/m、長手方向の寸法400mm、幅方向の寸法60mm)、中間層不織布(基体不織布)としてエアスルー不織布(坪量20g/m、無荷重厚さ2mm、長手方向の寸法400mm、幅方向の寸法60mm)、下層不織布としてパルプ含有複合型不織布(坪量40g/m、長手方向の寸法400mm、幅方向の寸法60mm)、及びカバー不織布として、エアスルー不織布(坪量15g/m、幅方向の寸法6mm、長手方向の寸法400mm)をそれぞれ用い、また、高通液タイプとして坪量70g/m、吸収倍率60g/g、通液速度50ml/分、荷重下吸収量25g/gのSAPと、低通液タイプとして坪量310g/m、吸収倍率70g/g、通液速度15ml/分、荷重下吸収量25g/gのSAPと、を表1に示す割合で用い、図3に示す構成を有し、長手方向寸法400mm、幅方向寸法60mm、無荷重厚さ4mm、荷重下厚さ2mmである、実施例1の吸収体を作製した。なお、第1の中間層において、高通液タイプでスリット空間の幅方向両側に2つのSAP固着担持層(長さ400mm×幅27mm、SAP坪量70g/m)を形成し、第2の中間層において、低通液タイプでSAP固着担持層(長さ400mm×幅60mm、SAP坪量310g/m)を形成した。また、基体不織布の幅方向寸法に対するカバー不織布の幅方向寸法の割合は10%であった。
さらに、上記で得られた吸収体の親水性不織布側にトップシート(坪量25g/m、幅70mm、長手400mm)を配し、パルプ含有不織布側に通気性ポリエチレンフィルム(坪量23g/m、幅70mm、長手400mm)を配し、ホットメルト接着剤で接着し、実施例1の吸収性物品を作製した。
(実施例2)
第1の中間層の2つのSAP固着担持層の各SAP坪量を90g/mに変更し、第2の中間層のSAP坪量を290g/mに変更する以外は、実施例1と同様にして吸収性物品を作製した。
(比較例1)
基体不織布(中間層不織布)として無荷重厚さ1mmのエアスルー不織布を使用し、第1の中間層及び第2の中間層に固着担持されたSAPをいずれも高通液タイプのSAPとし、かつカバー不織布を配置しない以外は、実施例1と同様にして、比較例1の吸収性物品を作製した。
(比較例2)
基体不織布(中間層不織布)として無荷重厚さ1mmのエアスルー不織布を使用し、第1の中間層及び第2の中間層に固着担持されたSAPをいずれも低通液タイプのSAPとし、かつカバー不織布を配置しない以外は、実施例1と同様にして、比較例1の吸収性物品を作製した。
(比較例3)
基体不織布(中間層不織布)として無荷重厚さ1mmのエアスルー不織布を使用し、カバー不織布を配置しない以外は、実施例2と同様にして、比較例3の吸収性物品を作製した。
SAPの各物性は、次のようにして測定した。
(吸収倍率)
吸収倍率は、所定重量のSAPを無加圧下で大過剰の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液中に30分間浸漬して自由膨張させ、その後遠心分離機を用いて150Gにて脱水した後に、体液を吸収して膨潤したSAPの重量を測定し、元の重量で除した値を、吸収倍率(g/g)とした
(通液速度)
SAPを0.32±0.005g計り取り、100mL容ビーカーに投入し、更に大過剰量(例えばSAPの飽和吸収量の5倍以上)の生理食塩水(0.9質量%塩化ナトリウム水溶液)を入れて30分間放置し、測定試料を調製した。得られた測定試料を、金網(目開き150μm、商品名:バイオカラム焼結ステンレスフィルター30SUS、(株)三商)と、コック(内径2mm)付き細管(内径4mm、長さ8cm)とを備えた濾過円筒管に、コックを閉鎖した状態で、投入した。次いで、目開き150μm、直径25mmの金網を先端に備えた直径2mmの円柱棒を濾過円筒管内に該金網と測定試料とが接するよう挿入し、更に測定試料に錘を載せて2.0kPaの荷重を加えた。この状態で1分間放置した後、コックを開いて測定試料20mLが該金網を通過して流れるまでの時間T1(秒)を計測した。また、ブランクとして、濾過円筒管内に測定試料に代えて整理食塩水を入れ、T1を測定するときと同じ条件で、生理食塩水の20mlが金網を通過するのに要する時間T0(秒)を測定した。得られた時間T1(秒)及びT0(秒)を用い、及び下記式から2.0kPa加圧下での通液速度を算出した。
通液速度(ml/分)=20×60/(T1-T0)
なお、測定は5回行い(n=5)、上下各1点の値を削除し、残る3点の平均値を測定値とした。また、測定は23±2℃、湿度50±5%で行い、測定の前にSAPを同環境で24時間以上保存した上で測定した。
(荷重下吸収量)
目開き63μm(JISZ8801-1:2006)のナイロン網を底面に貼った円筒型プラスチックチューブ(内径:25mm、高さ:34mm)内に、30メッシュふるいと60メッシュふるいを用いて250~500μmの範囲にふるい分けした測定試料0.16gを秤量し、円筒型プラスチックチューブを垂直にしてナイロン網上に測定試料がほぼ均一厚さになるように整えた後、この測定試料の上に分銅(重量:200g、外径:24.5mm)を乗せた。この円筒型プラスチックチューブ全体の重量(M1)を計量した後、生理食塩水(食塩濃度0.9%)60mlの入ったシャーレ(直径:12cm)の中に測定試料及び分銅の入った円筒型プラスチックチューブを垂直に立ててナイロン網側を下面にして浸し、60分静置した。60分後に、円筒型プラスチックチューブをシャーレから引き上げ、これを斜めに傾けて底部に付着した水を一箇所に集めて水滴として垂らすことで余分な水を除去した後、測定試料及び分銅の入った円筒型プラスチックチューブ全体の重量(M2)を計量し、次式から加圧下吸収量を求めた。なお、使用した生理食塩水及び測定雰囲気の温度は25℃±2℃であった。
荷重下吸収量(g/g)={(M2)-(M1)}/0.16
(SAPの吸収速度)
SAPの吸収速度(秒)は、例えば、Vortex法による生理食塩水の吸収速度であり、回転子(8mmφ×30mmのリング無し)を入れた100mlのビーカーに、0.9%生理食塩水を50±0.1g加え、600rpmの撹拌下に渦を発生させる。SAPの2.0±0.002gを攪拌渦中に投入する。SAPの添加直後から液面の渦が収束する時点までの時間(秒)を測定し、SAPの吸収速度とする。吸収時間が小さいほど吸収速度が大きいことを示す。
実施例1、2及び比較例1~3の各吸収性物品について、次の性能試験を実施した。結果を表1に示す。
(吸収速度)
実施例1、2及び比較例1~3の吸収体に、46g/cmの圧力をかけた状態で、内径30mmの筒より、40mlの0.9質量%生理食塩水(37℃)を注水し、生理食塩水が吸収体表面へ吸収されるまでの時間(秒)を吸収速度1回目として計測した。3分経過後、再度40mlの0.9質量%生理食塩水(37℃)を注水し、生理食塩水が吸収体表面へ吸収されるまでの時間(秒)を吸収速度2回目として計測した。数値が小さいほど、吸収性に優れることを意味する。
(液戻り性)
実施例1、2及び比較例1~3の吸収体に、生理食塩水200mlを注水し、注水してから10分後に35gf/cmの荷重でろ紙を吸収体表面に圧着させ、1分間でろ紙に逆戻りした水分量を測定した。逆戻り量が少ないほど、吸収体がドライな状態であることを示す。
(吸収体の厚さ)
実施例1、2及び比較例1~3の吸収体に、圧力を加えないときと、所定の圧力(ここでは35g/cm)を付与したときの厚さを測定した。35g/cmの荷重下での厚さは、吸収性物品におもりを乗せた状態のおもりの所定位置の高さから、おもり自体における同所定位置の高さを引いた値として求められる。
(官能評価)
8人のパネラーの協力の下、実施例1、2及び比較例1~3の各吸収体を用いたテープ止めタイプの吸収性物品を着用した場合の、着用感(フィット感、やわらかさ)について、「良い」又は「悪い」の2択で官能評価を行った。着用者は8時間使用し、日常動作における評価を行い、その結果を表1に示した。
〇:「良い」を選んだ着用者が6人以上8人以下のとき
△:「良い」を選んだ着用者が3人以上5人以下のとき
×:「良い」を選んだ着用者が1人若しくは2人のとき、又は「良い」を選んだ着用者が1人もいないとき
Figure 0007424928000001
10 トップシート
11 親水性不織布(上層不織布)
12 基体不織布(中間層不織布)
12a 起毛面
12b 非起毛面
12x 起毛繊維
13 パルプ含有不織布(下層不織布)
14 カバー不織布
15、16 高吸収性ポリマー
17 スリット空間
20 吸収体
21 第1の中間層
22 第2の中間層
30 バックシート
40 立体ギャザー
40a 自由端
50 吸収性物品

Claims (7)

  1. 液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された、フラップパルプを含有しない吸収体と、を備える吸収性物品であって、
    前記吸収体は、肌側に位置する上層不織布としての液透過性の親水性不織布と、非肌側に位置する下層不織布としてのパルプ含有不織布と、前記上層不織布と前記下層不織布との間に位置する中間層不織布としての基体不織布と、前記基体不織布の肌側面の一部を覆うカバー不織布と、を含み、
    前記親水性不織布と前記基体不織布との間に、相対的に通液速度が高い、高通液タイプの高吸収性ポリマーが固着担持され、
    前記基体不織布と前記パルプ含有不織布との間に、相対的に通液速度が低い、低通液タイプの高吸収性ポリマーが固着担持され、
    前記基体不織布は、肌側面が複数の起毛繊維を立設した起毛面であり、非肌側面が非起毛面であり、
    前記基体不織布の前記起毛面には、複数の前記起毛繊維間に前記高通液タイプの前記高吸収性ポリマーが固着担持された存在領域と、前記高通液タイプの前記高吸収性ポリマーが固着担持されていない非存在領域と、があり、
    前記カバー不織布は、前記基体不織布の幅方向略中央部を長手方向に延びる前記非存在領域と厚み方向に重なるように配置され、
    前記カバー不織布の幅方向寸法が、前記基体不織布の幅方向寸法の5%以上50%以下であることを特徴とする、吸収性物品。
  2. 前記高通液タイプの前記高吸収性ポリマーは、荷重下での通液速度が50ml/分以上であり、荷重下での体液吸収量が22g/g以上である、請求項1に記載の吸収性物品。
  3. 前記低通液タイプの前記高吸収性ポリマーは、荷重下での通液速度が15ml/分以下であり、荷重下での体液吸収量が15g/g以上である、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
  4. 前記パルプ含有不織布の坪量が40g/m以上80g/mである、請求項1~3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
  5. 前記カバー不織布がエアスルー不織布であり、厚さが0.1mm以上3.0mm以下であり、坪量が10g/m以上60g/m以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
  6. 前記基体不織布は、荷重下厚さが0.5mm以上3mm以下であり、無荷重厚さが1.5mm以上5mm以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
  7. 前記高通液タイプの前記高吸収性ポリマーの坪量が50g/m以上300g/m以下であり、前記低通液タイプの前記高吸収性ポリマーの坪量が100g/m以上700g/m以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の吸収性物品。
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