以下、本発明の吸収性物品をその好ましい実施形態に基づき図面を参照して説明する。図1及び図2には、本発明の吸収性物品の一実施形態である使い捨ておむつ1が示されている。おむつ1は、吸水性ポリマーを含有する吸収性コア40を備える。
おむつ1は、図1に示すように、着用者の前後方向(着用者の腹側から股間部を介して背側に延びる方向)に対応する縦方向Xとこれに直交する横方向Yとを有し、また、着用者の腹側(前側)に配される腹側部F及び背側(後側)に配される背側部R並びにそれらの間に位置する股下部Mを縦方向Xに有する。股下部Mは、着用時に着用者のペニス等の排泄部に対向配置される図示しない排泄部対向部を含んでいる。
おむつ1は、図1に示す如き、各部の弾性部材を伸長させて平面状に拡げた展開且つ伸長状態での平面視において、縦方向Xに長い縦長の形状を有し、その長手方向が縦方向Xに一致し、幅方向が横方向Yに一致している。股下部Mを含む、おむつ1の縦方向Xの中央部は、その縦方向Xに沿う両側縁が内向きの円弧状に湾曲している。そのため、おむつ1は、図1に示す如き展開且つ伸長状態での平面視において、縦方向Xの中央部が内方に括れた砂時計状をなしている。
本実施形態のおむつ1は、吸収性コア40を有する吸収体4と、該吸収体4よりも着用者の肌から近い位置すなわち吸収体4の肌対向面側に配され、着用時に着用者の肌と接触し得る液透過性の表面シート2と、該吸収体4よりも着用者の肌から遠い位置すなわち吸収体4の非肌対向面側に配された液不透過性の裏面シート3とを具備する。つまり、吸収体4(吸収性コア40)は、表面シート2と裏面シート3との間に介在配置されている。なお、ここでいう、液不透過性とは、液難透過性も含む概念であり、裏面シート3が液を全く通さない場合の他、撥水性のシート等からなる場合等も含まれる。なお、本発明の吸収性物品は図1に示したおむつに限らず、尿取りパッドでもよい。その場合、必要に応じて、裏面シートには液透過性のシートを用いても良く、その場合の裏面シートは典型的には表面シートと同じ素材である。
本明細書において、「肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材(例えば吸収性コア40)における、吸収性物品の着用時に着用者の肌側に向けられる面、すなわち相対的に着用者の肌に近い側であり、「非肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品の着用時に肌側とは反対側、すなわち相対的に着用者の肌から遠い側に向けられる面である。なお、ここでいう「着用時」は、通常の適正な着用位置、すなわち当該吸収性物品の正しい着用位置が維持された状態を意味する。
表面シート2は、図2に示すように、吸収体4の肌対向面の全域を被覆している。本実施形態では、表面シート2の横方向の長さ(最大長さ)は吸収体4のそれと同じであり、表面シート2は吸収体4の縦方向Xに沿う両側縁4S,4S内に収まっている。一方、裏面シート3は、吸収体4の非肌対向面の全域を被覆し、更に吸収体4の両側縁4S,4Sから横方向Yの外方に延出し、後述するサイドシート5と共にサイドフラップ6を形成している。サイドフラップ6は、おむつ1における、吸収体4から横方向Yの外方に延出する部材からなる部分である。裏面シート3とサイドシート5とは、吸収体4の両側縁4S,4Sからの延出部において、接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合手段によって互いに接合されている。表面シート2及び裏面シート3それぞれと吸収体4との間は接着剤によって接合されていてもよい。表面シート2、裏面シート3としては、この種の吸収性物品に従来使用されている各種のものを特に制限なく用いることができる。例えば、表面シート2としては、単層又は多層構造の不織布や、開孔フィルム等を用いることができる。裏面シート3としては、透湿性の樹脂フィルム等を用いることができる。
吸収体4は、吸水性ポリマーを含有する液吸収性の吸収性コア40と、該吸収性コア40の肌対向面を被覆する液透過性の肌側コアラップシート41と、該吸収性コア40の非肌対向面を被覆する液透過性の非肌側コアラップシート42とを含んで構成されている。吸収体4(吸収性コア40)は、図2に示す如き平面視において縦方向Xに長い形状をなし、腹側部Fから背側部Rにわたって縦方向Xに延在している。吸収性コア40とコアラップシート41,42との間は、ホットメルト型接着剤等の公知の接合手段により接合されていてもよい。
本実施形態においては、図2に示すように、肌側コアラップシート41と非肌側コアラップシート42とは1枚のコアラップシートで構成されている。前記1枚のコアラップシートは、吸収性コア40の横方向Yの長さの2倍以上3倍以下の幅を有しており、吸収性コア40の肌対向面の全域を被覆し、且つ吸収性コア40の縦方向Xに沿う両側縁から横方向Yの外方に延出し、その延出部が、吸収性コア40の非肌対向面側に配されて、吸収性コア40の非肌対向面の全域を被覆している。前記1枚のコアラップシートにおいて、吸収性コア40の肌対向面を被覆している部分が肌側コアラップシート41であり、吸収性コア40の非肌対向面を被覆している部分が非肌側コアラップシート42である。コアラップシート41,42としては、例えば、紙、各種不織布、開孔フィルム等の液透過性シートを用いることができる。なお、コアラップシート41,42はそれぞれ別体のシートであってもよい。また、吸収体4はコアラップシート41,42を含んでいなくてもよい。
おむつ1は、腹側部F及び背側部Rの少なくとも一方(本実施形態では双方)に、吸収体4の縦方向端4aよりも縦方向Xの外方に配されたウエストフラップ7を有している。ウエストフラップ7は、おむつ1において、吸収体4の縦方向端4aを通って横方向Yに平行に延びる仮想直線VLよりも縦方向Xの外方に位置する部分であり、おむつ1の縦方向Xの端部で且つ吸収体4(吸収性材料)が配されていない部分である。ウエストフラップ7は、おむつ1の着用時に着用者の腰周りに対応する。ウエストフラップ7の横方向Yの両側部は、サイドフラップ6の縦方向Xの前後端部でもある。
腹側部F及び背側部Rそれぞれのウエスト部、すなわち縦方向Xの端部における表面シート2と裏面シート3との間には、糸状の弾性部材11が横方向Yに沿って伸長状態で固定されており、これにより、おむつ1の着用時における該ウエスト部には、弾性部材11の収縮によりウエストギャザーが形成される。また、おむつ1の表面シート2側における縦方向Xに沿う左右両側には、それぞれサイドシート(防漏カフ形成用シート)5が配されている。サイドシート5は、縦方向Xに沿う内側縁部と、該内側縁部よりも横方向Yの外方に位置して縦方向Xに沿う外側縁部とを有し、図1に示す如き平面視において、該内側縁部は吸収体4と重なり、該外側縁部は吸収体4の縦方向Xに沿う側縁から横方向Yの外方に延出し裏面シート3と接合されている。着用者の脚周りに配される左右のレッグ部におけるサイドシート5と裏面シート3との間には、糸状の弾性部材12が縦方向Xに沿って伸長状態で固定されており、これにより、おむつ1の着用時におけるレッグ部には、弾性部材12の収縮により一対の防漏カフが形成される。また、サイドシート5の内側縁部には、糸状の弾性部材13が縦方向Xに沿って伸長状態で固定されており、これにより、おむつ1の着用時には弾性部材13の収縮により少なくとも股下部Mに、起立点を起点として着用者の肌側に向かって起立する防漏カフが形成される。このサイドシート5が防漏カフを形成する際の「起立点」は、典型的には、サイドシート5と他の部材との接合部における横方向Yの最内方に位置する部分であり、本実施形態においては、サイドシート5と裏面シート3との接合部における横方向Yの最内方に位置する部分であり、該部分は、表面シート2及び吸収体4の横方向Yの端部よりも横方向Yの外方に位置する。言い換えれば、本実施形態においては、表面シート2及び吸収体4の横方向Yの端部は、横方向Yにおいて防漏カフの起立点の内側に位置する。表面シート2、裏面シート3、吸収体4、各弾性部材11,12,13及びサイドシート5は、ホットメルト型接着剤等の公知の接合手段により互いに接合されている。
おむつ1はいわゆる展開型の使い捨ておむつであり、図1に示すように、おむつ1の背側部Rの縦方向Xに沿う両側縁部に止着部材14が設けられていると共に、腹側部Fの非肌対向面に止着部材14が止着可能な止着領域16が設けられている。おむつ1を着用するには、止着部材14を止着領域16に止着させることで、腹側部Fと背側部Rとを止着部材14で係合させればよい。止着部材14には、機械的面ファスナーのオス部材からなる止着部15が取り付けられている。止着領域16は、腹側部Fの非肌対向面を形成する裏面シート3の非肌対向面に、機械的面ファスナーのメス部材を公知の接合手段、例えば接着剤やヒートシール等で接合固定して形成されており、止着部材14の止着部15を着脱自在に止着可能になされている。なお、止着部15は機械的面ファスナーのオス部材に限定されず、例えば粘着剤でもよい。
おむつ1は、これを水洗トイレに落としてしまって排水路に詰まった場合でも容易に取り除くことができる、すなわち易回収性を有するように工夫されている。具体的には、この種の吸収性物品が水洗トイレの排水路に詰まった場合にこれを取り除くことが困難となる理由の1つが、吸収性コア(吸収体)に含まれる多量の吸水性ポリマーの吸水による過剰膨潤であることから、おむつ1では、吸収性コア40に含まれる吸水性ポリマーとして、水に対する最大膨潤倍率が従来この種の吸収性物品で多用されている通常の吸水性ポリマーのそれに比して低い、低膨潤性吸水性ポリマーを用いることで、おむつ1に易回収性を付与している。
本発明で用いる低膨潤性吸水性ポリマーは、ドイツ硬度4°dHの水の飽和吸収量が特定範囲にあるとともに、JIS K 7223に準拠した生理食塩水の飽和吸収量が特定範囲にある点で特徴付けられる。吸水性ポリマーの飽和吸収量は、該吸水性ポリマーの膨潤倍率と正の相関があり、飽和吸収量が低下すると膨潤倍率(最大膨潤倍率)も低下する。したがって、吸水性ポリマーの飽和吸収量が特定範囲に規定されていることは、該吸水性ポリマーの膨潤倍率が特定範囲に規定されていることと同義である。また本発明では、低膨潤性吸水性ポリマーの飽和吸収量(膨潤倍率)を規定するに当たり、これが吸収する液体として、この種の吸収性物品用途の吸水性ポリマーの飽和吸収量の測定で通常採用されている生理食塩水の他に、ドイツ硬度4°dHの水を採用しているところ、これは日本国内の水洗トイレで使用される水(下水)を想定したものである。ドイツ硬度4°dHの水の飽和吸収量が低い吸水性ポリマーは、日本国内の水洗トイレに落としても膨潤しにくいため、これを含有する吸収性コア延いては吸収性物品は、水洗トイレの排水路からの易回収性に優れる。また、本発明で用いる低膨潤性吸水性ポリマーは、飽和吸収量が意図的に抑えられているとはいえ、体液の吸収機能を有する吸収性コアの形成材料として使用されるものであるから、一定レベル以上の体液吸収能を有する必要がある。そこで本発明では、低膨潤性吸水性ポリマーに実用上十分な体液吸収能を付与する観点から、その生理食塩水の飽和吸収量が特定範囲にあることも規定している。尤も、ドイツ硬度4°dHの水の飽和吸収量と生理食塩水の飽和吸収量とは相互に密接に関連しており、前者が水洗トイレの排水路からの易回収性の指標、後者が体液吸収性の指標、というように完全に分けられるものではないので、本発明では、その点も考慮して、これらの範囲を下記の特定範囲に設定している。
本発明において、ドイツ硬度(°dH)とは、水中におけるカルシウム及びマグネシウムの濃度を、CaCO2換算濃度で1mg/L(ppm)=約0.056°dH(1°dH=17.8ppm)で表したものを指す。本発明に係る「ドイツ硬度4°dHの水」は、例えば、脱イオン水に、最終的にドイツ硬度が4°dHとなるように、カルシウムイオン及び/又はマグネシウムイオンを添加する(カルシウム塩及び/又はマグネシウム塩を溶解させる)ことで調製できる。ドイツ硬度の具体的な測定方法を下記に示す。
<水のドイツ硬度の測定方法>
〔試薬〕
・0.01mol/L EDTA・2Na溶液:エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムの0.01mol/L水溶液(滴定用溶液、0.01M EDTA・Na2、シグマアルドリッチ社製)
・Universal BT指示薬(製品名:Universal BT、株式会社同仁化学研究所製)
・硬度測定用アンモニア緩衝液(塩化アンモニウム67.5gを28w/v%アンモニア水570mLに溶解し、脱イオン水で全量を1000mLとした溶液)
〔ドイツ硬度の測定〕
(1)試料となる水20mLをホールピペットでコニカルビーカーに採取する。
(2)硬度測定用アンモニア緩衝液2mL添加する。
(3)Universal BT指示薬を0.5mL添加する。添加後の溶液が赤紫色であることを確認する。
(4)コニカルビーカーをよく振り混ぜながら、ビュレットから0.01mol/L EDTA・2Na溶液を滴下し、試料となる水が青色に変色した時点を滴定の終点とする。
(5)全硬度は下記の算出式で求める。
硬度(°dH)=T×0.01×F×56.0774×100/A
T:0.01mol/L EDTA・2Na溶液の滴定量(mL)
A:サンプル容量(20mL、試料となる水の容量)
F:0.01mol/L EDTA・2Na溶液のファクター
本発明で用いる低膨潤性吸水性ポリマーのドイツ硬度4°dHの水の飽和吸収量は、90g/g以上、より好ましくは95g/g以上、更に好ましくは100g/g以上、そして、140g/g以下、より好ましくは110g/g以下、更に好ましくは105g/g以下である。
また、本発明で用いる低膨潤性吸水性ポリマーのJIS K 7223に準拠した生理食塩水の飽和吸収量は、20g/g以上、より好ましくは25g/g以上、更に好ましくは30g/g以上、そして、50g/g以下、より好ましくは45g/g以下、更に好ましくは40g/g以下である。
吸水性ポリマーの飽和吸収量は以下の方法により測定される。
<飽和吸収量の測定方法>
飽和吸収量の測定は、JISK7223(1996)に準拠して行う。ナイロン製の織布(メッシュ開き250、三力製作所販売、品名:ナイロン網、規格:250×メッシュ巾×30m)を幅10cm、長さ40cmの長方形に切断して長手方向中央で二つ折りにし、両端をヒートシールして幅10cm(内寸9cm)、長さ20cmのナイロン袋を作製する。測定試料である吸水性ポリマー又はその粉砕物1.00gを精秤し、作製したナイロン袋の底部に均一になるように入れる。試料の入ったナイロン袋を試験液に1時間浸漬させる。試験液は、ドイツ硬度4°dHの水又は生理食塩水(0.9質量%塩化ナトリウム水)である。1時間後、ナイロン袋を試験液から取り出し、1時間垂直状態に吊るして液切りした後、該ナイロン袋の重量を測定する。目的とする飽和吸収量は次式から算出される。
試験液(ドイツ硬度4°dHの水又は生理食塩水)の飽和吸収量(g/g)=(a-b-c)/c;式中、aは吸液後の試料及びナイロン袋の総重量(g)、bはナイロン袋の吸液前(乾燥時)の重量(g)、cは試料の吸液前(乾燥時)の重量(g)を表す。測定は5回行い(n=5)、上下各1点の値を削除し、残る3点の平均値を測定値とする。
なお、市販の吸収性物品などから測定対象の吸水性ポリマーを採取する場合、例えば以下の方法を採用する。まず、吸収性物品から、吸水性ポリマーを含む吸収体(吸収性コアとその外面を被覆するコアラップシートとの複合体)を取り出し、次いで、該吸収体の端部をハサミ等の切断手段で切断して切断端部を形成する。そして、吸収体の切断端部が下方を向くように、該吸収体を配置するとともに、該吸収体の下方にビニール袋などの回収容器を配置し、該切断端部から落下する吸水性ポリマーを該回収容器で受けて回収する。回収容器に吸水性ポリマー以外の部材(例えばパルプ)が入ってしまった場合は、ピンセットなどで回収容器から該部材を取り除く。吸収体の切断端部を下方に向けただけでは吸水性ポリマーが落下し難い場合は、吸収体に手などで適宜振動を与えるなどして、吸収体から吸水性ポリマーを振るい落とす。それでも吸収体から吸水性ポリマーが落下し難い場合は、吸収体に切断端部を形成する前に、該吸収体全体を、該吸収体において吸水性ポリマーを他の吸収体構成部材(例えばパルプ)に固定するのに使用されている接着剤等を溶かす溶剤中に一定時間浸漬し、吸水性ポリマーの固定を解除し、しかる後、該吸収体に切断端部を形成して、前述と同様の方法で吸水性ポリマーを回収する。
ドイツ硬度4°dHの水の飽和吸収量が140g/g以下であり、且つ生理食塩水の飽和吸収量が50g/g以下である吸水性ポリマーは、低膨潤性であると言え、これを吸収性コアの形成材料として用いることで、水洗トイレの排水路からの易回収性の向上が実現できる。また、吸収性コアに含有される吸水性ポリマーのドイツ硬度4°dHの水の飽和吸収量が90g/g以上であり、且つ生理食塩水の飽和吸収量20g/g以上であると、体液吸収能が担保できる。
ちなみに、水洗トイレの排水路からの易回収性を考慮していない通常の吸収性物品の吸収性コアに使用される吸水性ポリマーは、ドイツ硬度4°dHの水の飽和吸収量が140g/g以上200g/g以下程度、JIS K 7223に準拠した生理食塩水の飽和吸収量が50g/g以上80g/g以下程度である。
また、特許文献1記載の吸収体、すなわち水洗いによって経血に起因する赤みを除去可能な吸収体で使用される吸水性ポリマーは、ドイツ硬度4°dHの水の飽和吸収量が10g/g以上40g/g以下程度、JIS K 7223に準拠した生理食塩水の飽和吸収量が10g/g以上20g/g以下程度である。
本発明で用いる低膨潤性吸水性ポリマーは、ドイツ硬度4°dHの水の飽和吸収量及び生理食塩水の飽和吸収量がそれぞれ前記特定範囲にあることに加えて更に、2.0kPaでの加圧下通液速度が大きいことが好ましい。低膨潤性吸水性ポリマーが斯かる物性を有することで、これが吸水し膨潤したゲル化状態で水洗トイレの排水路に詰まっても、その詰まった部分(膨潤ゲル)における吸水性ポリマーどうしの間隙を水が抜けることが可能となる。そのため、膨潤ゲルが水圧によって排水路の奥(便器からより離れた位置)に押し込まれることが無く、排水路が閉塞して便器から水があふれ出す等の不都合も生じにくい。これにより水洗トイレの詰まりを早期に復旧させることが可能となる。
以上の観点から、本発明で用いる低膨潤性吸水性ポリマーの2.0kPaでの加圧下通液速度は、好ましくは80mL/分以上、より好ましくは85mL/分以上である。低膨潤性吸水性ポリマーの2.0kPaでの加圧下通液速度の上限については、水洗トイレの詰まり対策の点では特に制限は無いが、体液吸収能などの吸収性物品の基本性能の向上の観点から、好ましくは200mL/分以下、より好ましくは150mL/分以下である。低膨潤性吸水性ポリマーの2.0kPaでの加圧下通液速度が200mL/分以下であると、特に、パルプなどの吸水性繊維が少ない、薄型の吸収性コアにおいては、吸収性コア内で液を十分に固定することが可能となり、吸収性コアの端部からの漏れを効果的に抑制できる。また、立位状態での股下部やうつぶせ寝におけるおなか側や、あお向け寝における背側など、液の流れやすい部分で吸収性物品表面に液溜りが生じることを効果的に抑制できる。
吸水性ポリマーの2.0kPaでの加圧下通液速度は、特開2003-235889号公報に記載されている測定方法及び測定装置を利用して測定される。具体的には以下の手順で2.0kPaでの加圧下通液速度を測定する。下記測定は23±2℃、相対湿度50±5%で行い、測定の前に試料を同環境で24時間以上保存した上で測定する。
<加圧下通液速度の測定方法>
100mLのガラスビーカーに、測定試料である吸水性ポリマー0.32±0.005gを膨潤するに十分な量の生理食塩水、例えば吸水性ポリマーの飽和吸収量の5倍以上の生理食塩水に浸して30分間放置する。別途、垂直に立てた円筒(内径25.4mm)の開口部の下端に、金網(目開き150μm、株式会社三商販売のバイオカラム焼結ステンレスフィルター30SUS)と、コック(内径2mm)付き細管(内径4mm、長さ8cm)とが備えられた濾過円筒管を用意し、コックを閉鎖した状態で該円筒管内に、膨潤した測定試料を含む前記ビーカーの内容物全てを投入する。次いで、目開きが150μmで直径が25mmである金網を先端に備えた直径2mmの円柱棒を濾過円筒管内に挿入して、該金網と測定試料とが接するようにし、更に測定試料に2.0kPaの荷重が加わるよう錘を載せる。この状態で1分間放置した後、コックを開いて液を流し、濾過円筒管内の液面が60mLの目盛り線から40mLの目盛り線に達する(つまり20mLの液が通過する)までの時間(T1)(秒)を計測する。計測された時間T1(秒)を用い、下記式から2.0kPaでの通液速度を算出する。なお、式中、T0(秒)は、濾過円筒管内に測定試料を入れないで、生理食塩水20mLが金網を通過するのに要する時間を計測した値である。
通液速度(mL/min)=20×60/(T1-T0)
前記式で得られた値を円筒内の膨潤した吸水性ポリマー層の厚みで除して、20mmあたりの値に換算して加圧下通液速度とする。測定は5回行い(n=5)、上下各1点の値を削除し、残る3点の平均値を測定値とする。なお、加圧下通液速度の更に詳細な測定方法は、特開2003-235889号公報の段落〔0008〕及び段落〔0009〕に記載されており、また測定装置は、同公報の図1及び図2に記載されている。
本発明で用いる低膨潤性吸水性ポリマーは、例えば次のようにして製造することができる。以下に説明する低膨潤性吸水性ポリマーの製造方法は、下記工程1~3を有する。すなわち、本発明で好ましく用いられる低膨潤性吸水性ポリマーは、カルボキシ基及び/又はカルボキシレート基を有し且つ表面架橋処理された吸水性ポリマーに、更に表面架橋処理及び中和処理を順次施して製造されたものである。
工程1:カルボキシ基及び/又はカルボキシレート基を有する吸水性ポリマーを製造する工程。工程2:工程1で得られた吸水性ポリマーに表面架橋処理を施す工程。工程3:工程2で得られた吸水性ポリマーに中和処理を施す工程。
前記工程1は、従来公知のポリアクリル酸系吸水性ポリマーの製造方法を利用して行うことができる。工程1で利用可能な吸水性ポリマーの製造方法としては、例えば、(i)特開平08-319304号公報に記載の陰イオン界面活性剤を分散剤として用いた逆相懸濁重合重合法、(ii)特開2003-235889号公報に記載の水溶液重合法が挙げられる。工程1で得られる吸水性ポリマー粒子の表面は、架橋剤によって架橋されていても良い。すなわち、工程1で得られる吸水性ポリマーは、粒子表面が架橋処理された吸水性ポリマーであっても良い。
前記工程1で製造されるカルボキシ基及び/又はカルボキシレート基を有する吸水性ポリマーとしては、例えば後述する、工程Iで調製する(メタ)アクリル酸及び/又はそのアルカリ金属塩を含むモノマーの重合体が挙げられる。
前記工程1で得られる吸水性ポリマーの中和度は、吸水特性と架橋剤の反応効率の観点から、好ましくは50%以上、更に好ましくは65%以上75%未満である。該中和度は、前述した測定方法によって測定される。
前記工程2では、前記工程1で得られた吸水性ポリマーの粒子表面に架橋処理(後架橋処理)を施す。このような後架橋処理を施すことによって、後架橋処理を施さない場合に比して、吸水性ポリマーの表面付近の架橋度が高くなることによって、吸水性ポリマーのドイツ硬度4°dHの水に対する飽和吸収量(最大膨潤倍率)が低下する。したがって後架橋処理は、吸水性ポリマーのドイツ硬度4°dHの水及びJIS K 7223に準拠した生理食塩水それぞれの飽和吸収量を前記特定範囲に調整する方法として有効なものである。後架橋処理は、工程1で行う表面架橋処理と同様の方法で行うことができる。前記工程2で行う表面架橋処理に用いる架橋剤としては、例えば後述する、工程Iで用いられる架橋剤が挙げられる。
さらに後架橋処理により吸水性ポリマー表面の架橋度が高まると、吸水により膨潤した吸水性ポリマーの粒子同士の粘着性が低くなり、粒子同士の融合を抑えることができる。それによって粒子同士がバラバラになりやすく、水洗トイレの排水路からの易回収性が向上する。ここでいう「粒子同士の融合」とは、吸水性ポリマーの粒子が吸水により表面が一部可溶化したゲルとなり、そのゲルとなった粒子同士がくっついてより大きな塊状となる現象であり、膨潤後のゲル同士の融合とも言える。粒子同士の融合(膨潤後のゲル同士の融合)は、吸水性ポリマーの表面の架橋度が低いと起こりやすい傾向がある。
膨潤後のゲル同士の融合は、吸収性物品使用時の性能にも影響を及ぼす。後架橋することにより、例えば、繰り返しの吸収性に優れる、あるいは、肌対向面からの液の吸収速度が速いために着用者の肌をドライに保ち、肌トラブルを防ぐ、あるいは、座位や就寝時など、圧力がかかる状態でも排泄物の吸収性に優れる。
ドイツ硬度4°dHの水(硬水)の吸水性ポリマーの深部への浸透を抑え、硬水による吸水性ポリマーの膨潤を抑える観点から、前記工程1で行う表面架橋処理に用いる架橋剤の添加量に比べて、前記工程2で行う表面架橋処理に用いる架橋剤の添加量を増やすことが好ましい。工程1や工程2で用いる架橋剤の種類は同一でも、異なっていてもよい。
前記工程3では、前記工程2で得られた後架橋処理済みの吸水性ポリマーに塩基性化合物(中和剤)を用いて中和処理を施し、未中和のカルボキシ基あるいはカルボキシレート基の一部を中和する。工程3で行われる中和処理は、従来公知の吸水性ポリマーの中和処理と同様の手順で行うことができる。中和処理は水の存在下で行われる。中和処理における水の使用量(吸水性ポリマーの含水率)は、吸水性ポリマー100質量部に対して、30質量部以上であり、好ましくは100質量部以上であり、また、600質量部以下であり、好ましくは500質量部以下であり、具体的には30質量部以上600質量部以下、好ましく100質量部以上500質量部以下である。
なお、本明細書において、「質量」は、特に断りがない限り、「乾燥時の質量」を意味する。吸収性物品及び吸収性物品の構成部材についての「乾燥時の質量」は、以下のようにして測定する。乾燥時の質量の測定方法:測定対象物を温度25℃、湿度30%の恒温恒湿状態の環境下に24時間放置した後、該環境下にて質量を測定し、その測定値を、測定対象物の「乾燥時の質量」とする。
前記工程3で用いられる塩基性化合物(中和剤)としては、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム等の水溶性炭酸化合物;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水ガラス等の水溶性水酸化化合物が挙げられる。これらの中和剤の中でも、特に炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムは、溶解して弱アルカリ性を示し、アルカリによる架橋の切断に伴う吸水倍率の増加を抑えるため、本発明で好ましく用いられる。もちろん、水酸化ナトリウムのような強塩基性化合物を中和剤として用いることもでき、この場合、中和を行う際に予め吸水性ポリマーの含水率を高めておく、あるいは低濃度の水溶液を徐々に添加する、反応温度をなるべく低温で行うなど、条件を適宜選択することによって、吸水倍率を低く抑えながら中和を施すことができる。
前記工程3における中和処理の方法としては、例えば、吸水性ポリマーに所定量の塩基性化合物を溶解した水溶液を添加する方法;吸水性ポリマーと所定量の粉末状の塩基性化合物とを混合し更に水を添加する方法等が挙げられる。また、反応槽の攪拌に必要な動力を抑える、あるいはまた、攪拌効率を高めて反応をできるだけ均一に行わせるために、予め所定の含水率に調整した吸水性ポリマーに所定量の塩基性化合物を溶解した水溶液を添加したり、粉末状の塩基性化合物を添加してもよい。予め吸水性ポリマーを含水させておく際は、吸水性ポリマー100質量部に対して、水を30質量部以上200質量部以下添加して行う。また、所定量の塩基性化合物を溶解した水溶液を添加する場合は、アルカリ水溶液中に含まれる水を合算した水の量が前記中和処理における水の使用量とすることが、中和の均一性、架橋の耐加水分解性、吸水性ポリマーの乾燥効率の点から好ましい。
前記工程3における中和処理においては、反応槽の攪拌に必要な動力を抑える、あるいはまた、攪拌効率を高めて反応をできるだけ均一に行わせる観点から、中和剤に加えて分散剤を用いることができる。分散剤としては、例えば、シュガーエステル等を用いることができる。分散剤の使用量は、吸水性ポリマー100質量部に対して、通常、0.2質量部以上5質量部以下である。
なお、前記工程2と前記工程3とは処理の順番を入れ替えて行ってもよい。また、前記工程1において吸水性ポリマーに十分に架橋をかけておくことで、前記工程2を省略することができる。
前記工程3の終了後、必要に応じ得られた吸水性ポリマーを洗浄して分散剤を除去し、更に水を乾燥し除去することにより、目的とする低膨潤性吸水性ポリマーが得られる。こうして得られた低膨潤性吸水性ポリマーは、必要に応じ粒径に応じて分級される。
また、本発明で用いる低膨潤性吸水性ポリマーは、下記工程I及びIIを有する製造方法によっても製造することができる。以下、この製造方法について説明する。
工程I:(メタ)アクリル酸及び/又はそのアルカリ金属塩を含むモノマーを重合してポリマーを得、該ポリマーを架橋剤により架橋処理して、又は(メタ)アクリル酸及び/又はそのアルカリ金属塩を含むモノマーを、架橋剤の存在下で重合して、JIS K 7223に準拠した遠心保持量が20g/g以上50g/g以下のポリマーを調製する工程であって、該モノマーに対する架橋剤の質量比〔架橋剤/モノマー〕が0.0015以上0.4以下である工程。
工程II:前記工程Iで得られたポリマーに塩基性化合物及び/又は水を接触させて、該ポリマーの中和度が50%以上、好ましくは65%以上80%未満となるように中和処理を施す工程。
前記工程Iは、(メタ)アクリル酸及び/又はそのアルカリ金属塩を含むモノマーと、架橋剤とを特定の質量比で用いて、特定の遠心保持量を有するポリマーを調製すること以外は、公知のポリアクリル酸系吸水性ポリマーの製造方法を利用して行うことができる。この公知の製造方法としては、前記(i)の逆相懸濁重合重合法及び前記(ii)の水溶液重合法等が挙げられる。なお、前記工程Iにおいて、(メタ)アクリル酸及び/又はそのアルカリ金属塩を含むモノマーを、架橋剤の存在下で重合して得られたポリマーは、更に架橋剤により架橋処理してもよい。
前記工程Iで調製する(メタ)アクリル酸及び/又はそのアルカリ金属塩を含むモノマーの重合体は、血液吸収性の制御、安全性、製造コスト等の観点から、(メタ)アクリル酸の単独重合体、その共重合体、又はそれらの架橋物である。(メタ)アクリル酸の単独重合体としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸が挙げられ、(メタ)アクリル酸の共重合体としては、アクリル酸又はメタクリル酸に、マレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、又はスチレンスルホン酸等のコモノマーを共重合せしめた共重合体、デンプン-アクリル酸グラフト共重合体等が挙げられる。該共重合体のコモノマー量は、血液吸収性能を低下させない範囲とすることが好ましい。また、(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩としては、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸等のナトリウム塩が好ましい。
これらの中では、(メタ)アクリル酸又はそのアルカリ金属塩の単独重合体又は共重合体の架橋物、デンプン-アクリル酸グラフト共重合体架橋物が好ましく、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の単独重合体の架橋物がより好ましい。これらのポリマーは、アクリル酸単量体単位を通常50モル%以上、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上含み、水には実質的に不溶であるが、高度の膨潤性を有する重合体である。
前記工程Iで用いられる架橋剤としては、分子中に2個以上の重合性不飽和基、又は分子中に2個以上のカルボキシ基及び/又はカルボキシレート基と反応しうる反応性基を有する化合物であればよく、例えば、分子中に2以上の水酸基を有する化合物、2以上の重合可能な二重結合を有する化合物、2以上のエポキシ基を有する化合物等が挙げられる。
分子中に2以上の水酸基を有する化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、ジエタノールアミ ン、ポリオキシプロピレン、ソルビタン脂肪酸エステル、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリット、1,3-プロパンジオール、ソルビトール等が挙げられる。
分子中に2以上の重合可能な二重結合を有する化合物としては、ビス(メタ)アクリルアミド、アリル(メタ)アクリルアミド、ポリオールによる(メタ)アクリル酸のジ-又はポリエステル(例えばジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート等)、C1-C10多価アルコールとヒドロキシル基につき2~8個のC2-C4アルキレンオキシドとの反応から誘導される、ポリオールによる不飽和モノ-又はポリカルボン酸のジ-又はポリエステル(例えばエトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート等)等が挙げられる。
分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテルが挙げられる。
これらの架橋剤の中では、分子中に2以上の重合可能な二重結合を有する化合物、及び2以上のエポキシ基を有する化合物が好ましく、分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物がより好ましく、具体的にはエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルが特に好ましい。
前記工程Iにおいて、架橋剤の使用量は、硬水及び生理食塩水の吸収性能の観点から、〔架橋剤/モノマー〕の質量比で0.0015以上であり、好ましくは0.002以上であり、より好ましくは0.003以上であり、また、0.4以下であり、好ましくは0.3以下であり、より好ましくは0.2以下であり、具体的には、0.0015以上0.4以下であり、0.002以上0.3以下が好ましく、0.003以上0.2以下がより好ましい。
前記工程IIでは、前記工程Iで得られたポリマーに塩基性化合物及び/又は水を接触させて、該ポリマーに中和処理を施す。この中和処理においては、最終的に得られる吸水性ポリマーの中和度が50%以上、好ましくは65%以上80%未満となるように、中和剤の使用量等の処理条件を調整する。
前記工程IIにおける中和処理は、公知の中和処理と同様の手順で、水の存在下で行うことができる。この中和処理における吸水性ポリマーの含水率は、前記工程Iで得られたポリマーに対して、好ましくは100質量%以上であり、より好ましくは100質量%以上600質量%以下である。
前記工程IIで用いられる塩基性化合物としては、前記工程3で用いられる塩基性化合物(中和剤)と同様のものを用いることができる。特に、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等の水溶性炭酸化合物、あるいは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水ガラス等の水溶性水酸化化合物が好ましい。水溶性炭酸化合物及び水溶性水酸化化合物を併用しても良い。
本発明で用いる低膨潤性吸水性ポリマーの形状としては、粒子状、繊維状のもの等が挙げられる。粒子状の吸水性ポリマーには、その形状の違いから、不定形タイプ、塊状タイプ、俵状タイプ、球状凝集タイプ、球状タイプ等があるが、何れのタイプも用いることができる。
吸収性コア40に含有される吸水性ポリマーは、その全部が低膨潤性吸水性ポリマーであることが好ましいが、他の吸水性ポリマーを含有してもよい。その場合、吸収性コア40における低膨潤性吸水性ポリマー以外の他の吸水性ポリマーの含有量は、吸収性コア40中の全ての吸水性ポリマーの50質量%以下とすることが好ましい。
吸収性コア40における吸水性ポリマー(低膨潤性吸水性ポリマー及びそれ以外の他の吸水性ポリマーの総称を意味する。以下、特に断らない限り同じ。)の単位面積当たりの質量(坪量)は、好ましくは100g/m2以上、より好ましくは200g/m2以上、そして、好ましくは350g/m2以下、より好ましくは300g/m2以下である。この下限以上とすることで、おむつ1の吸液性能を担保することができ、この上限以下とすることで、おむつ1が水洗トイレの詰まりの原因となった場合の取り除きやすさを向上し、また、おむつ1の着用感の改善等の効果を得ることができる。
吸収性コア40は、吸水性ポリマーのみを含有してもよく、他の材料を更に含有してもよい。他の材料の一例として、吸水性繊維が挙げられる。吸水性繊維としては、この種の吸収性物品の吸収性コアの形成材料として従来使用されているものを特に制限無く使用することができ、例えば、針葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)に代表される針葉樹由来のパルプや広葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)に代表される広葉樹由来のパルプ等の木材パルプ、綿パルプや麻パルプ等の非木材パルプ等の天然繊維;カチオン化パルプ、マーセル化パルプ等の変性パルプ;キュプラ、レーヨン等の再生繊維等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。また、吸水性繊維としては、ポリオレフィン類、ポリアミド類、ポリエステル類等の合成繊維を公知の方法により親水化したものを用いることもできる。吸水性繊維は、綿状に解繊された状態のいわゆるフラッフパルプが好ましい。
吸収性コア40の主体をなす吸水性ポリマーは、飽和吸収量が意図的に低減された低膨潤性吸水性ポリマーであることから、おむつ1の用途等によっては、吸収性コア40の体液吸収能が不十分となることが懸念される。斯かる懸念を払拭する観点から、吸収性コア40は、LBKPなどの広葉樹由来のパルプを含有することが好ましい。LBKPは、NBKPと比較して、解繊後の繊維が細く、短いことが知られている。吸収性コア40の形成材料として低膨潤性吸水性ポリマーと広葉樹由来のパルプとを併用することで、吸収性コア40の体液吸収能の向上が図られる。また、本発明者らの知見によれば、LBKPは、NBKPと比較して、大量の水の存在下でバラバラになりやすく、また、ポリマーとともに排水路に詰まった場合にその詰まり部分である膨潤ゲルが密になりにくいという特性を有している。したがって、吸収性コア40に含有される繊維材料が広葉樹由来のパルプであると、吸収性コア40を水洗トイレに落としてしまっても排水路に詰まりにくく、また、万一排水路に吸水性ポリマーとともに詰まった場合でも、その詰まった部分(膨潤ゲル)を水が通過することができるようになり、前述した、低膨潤性吸水性ポリマーの2.0kPaでの加圧下通液速度が特定範囲にあることによる効果と相俟って、水洗トイレの詰まりを早期に復旧することが可能となり得る。
吸収性コア40が広葉樹由来のパルプを含有する場合において、該パルプの含有量は、該吸収性コア40の全質量に対して、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下である。また、吸収性コア40における広葉樹由来のパルプの単位面積当たりの質量(坪量)は、好ましくは150g/m2以上、より好ましくは200g/m2以上、そして、好ましくは400g/m2以下、より好ましくは350g/m2以下である。
吸収性コア40は、吸水性繊維等の繊維材料の積繊体に粒子状の吸水性ポリマーが担持された積繊構造体であり得る。前記積繊構造体の吸収性コア40において、粒子状の吸水性ポリマーは、吸収性コア40全体に均一に分布していてもよく、あるいは吸収性コア40の一部(例えば肌対向面側又は非肌対向面側)に偏在していてもよい。
また、吸収性コア40は、吸水性ポリマー層と繊維層との積層構造体であり得る。前記吸水性ポリマー層は、典型的には、多数の粒子状の吸水性ポリマーの集合体であり、繊維材料を含まない。前記繊維層は、典型的には、吸水性繊維等の繊維材料を主体とする繊維シート(例えば不織布、紙など)であり、吸水性ポリマーを含まない。前記積層構造体は、例えば、2層の前記繊維層の間に前記吸水性ポリマー層が介在された構成を採り得る。前記積層構造体の吸収性コア40の具体例として、湿潤状態の吸水性ポリマーに生じる粘着力や別に添加した接着剤や接着性繊維等のバインダーを介して、構成繊維間や構成繊維と吸水性ポリマーとの間を結合させてシート状とした吸収性シートが挙げられる。
吸収性コア40の坪量は、特に制限されないが、好ましくは300g/m2以上、より好ましくは400g/m2以上、そして、好ましくは700g/m2以下、より好ましくは600g/m2以下である。
本発明においては、吸収性物品を、水洗トイレに落としてしまって排水路に詰まった場合でも容易に取り除くことができるものとするための工夫として、前述した低膨潤性吸水性ポリマーを吸収性コアに使用することに加えて更に、別の工夫を採用することができる。この別の工夫として、吸収性物品を複数の部分に細分化可能に構成することが考えられる。例えば、おむつ1が複数の部分に細分化可能に構成されていれば、おむつ1が水洗トイレの排水路に詰まった場合でも、該排水路内でおむつ1を細分化して一部ずつ回収することが可能となり、水洗トイレの詰まりを速やかに復旧することが可能となる。
吸収性物品を複数の部分に細分化可能に構成する方法の一例として、吸収性物品に分離誘導線を設け、該分離誘導線を挟んで一方側と他方側とで分離可能に構成する方法が挙げられる。すなわちおむつ1は、分離誘導線を有し、該分離誘導線を挟んで一方側と他方側とで分離可能になされていてもよい。分離誘導線は、吸収性物品を細分化する際の起点となる他、吸収性物品の使用時において屈曲点として作用し得るため、吸収性物品に分離誘導線を設けることは、吸収性物品の柔軟性、フィット性の向上にも繋がり得る。
分離誘導線として、例えば、平面視線状の熱融着部、平面視線状の接着剤塗布部が挙げられる。吸収性物品に平面視線状の熱融着部が設けられていると、該熱融着部とその周辺部(非熱融着部)との境界で材料破壊が起こりやすいため、該熱融着部に沿って吸収性物品を破断しやすくなる。これは、吸収性物品に平面視線状の接着剤塗布部が設けた場合にも当てはまる。ここでいう「線状」は、平面視において直線状でも曲線状でもよく、また、連続線状でも不連続線状でもよい。分離誘導線としての熱融着部は、例えば、ヒートシール、超音波シール、高周波シール等の公知の熱融着方法によって形成することができる。
分離誘導線は、その周辺部に比して坪量が低い部分であり得る。具体的には例えば、ミシン目である。ミシン目は周知のとおり、坪量ゼロの部分(貫通孔)が一方向に間欠配置されたものであり、分離誘導線として機能し得る。また、分離誘導線は、歯溝加工が施された部分を含んで構成され得る。前記歯溝加工は、例えば、歯と歯底とが周方向に交互に形成された一対の歯溝ロール間に、不織布などの被加工物を通すことで行うことができ、その際、被加工物における、一方の歯溝ロールの歯と他方の歯溝ロールの歯底とで押圧された部分(加工部)は、薄膜化されるなどして、該部分以外の部分(非加工部)に比して強度が低下する。
分離誘導線の平面視形状、具体的には、前述した熱融着部、接着剤塗布部、ミシン目の貫通孔、歯溝加工等が施された加工部それぞれの平面視形状は特に制限されず、例えば、三角形形状、長方形形状、正方形形状、菱形形状、五角形形状以上の多角形形状、ハート形状などとすることができる。
吸収性物品において分離誘導線の位置及び数は特に制限されず、適宜設定することができる。例えばおむつ1において、分離誘導線が吸収体4(吸収性コア40)を包囲するように配置されていてもよく、その場合おむつ1は、吸収体4(吸収性コア40)とそれ以外の部分(サイドフラップ6及びウエストフラップ7)とに分離可能である(図1参照)。また、吸収体4(吸収性コア40)に分離誘導線を設けて、吸収体4を複数の部分に細分化可能に構成してもよい。
図3には、分離誘導線を有する吸収性物品の一実施形態である使い捨ておむつ1Aが示されている。なお、後述する他の実施形態については、前述したおむつ1と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、おむつ1についての説明が適宜適用される。
おむつ1Aにおいては、図3(a)に示すように、縦方向Xに延びる2本の分離誘導線SLx,SLxと、横方向Yに延びる2本の分離誘導線SLy,SLyとが、吸収体4(吸収性コア40)を包囲するように配置されている。2本の分離誘導線SLx,SLxは、それぞれ、吸収体4の縦方向Xに沿う側縁4Sの近傍に側縁4Sに沿って配置されている。また、2本の分離誘導線SLy,SLyのうち、腹側部Fの分離誘導線SLyは、止着領域16よりも縦方向Xの外方に配置され、背側部Rの分離誘導線SLyは、一対の止着部材14,14よりも縦方向Xの外方に配置されている。図3(b)には、おむつ1Aを、1本の分離誘導線SLxを挟んで一方のサイドフラップ6側と、それ以外の部分とに分離した状態が示されている。他の分離誘導線でも、図3(b)と同様に、おむつ1Aを、該他の分離誘導線を挟んで一方側と他方側とに分離することが可能である。
おむつ1Aの周縁部における分離誘導線SLxの延長線上には、おむつ1Aの構成部材の非存在部(空間部)である切欠き部9が設けられている。より具体的には、おむつ1Aの腹側部F側の縦方向Xの端部における、2本の分離誘導線SLx,SLxそれぞれの延長線上に切欠き部9が設けられているとともに、おむつ1Aの背側部R側の縦方向Xの端部における、2本の分離誘導線SLx,SLxそれぞれの延長線上に切欠き部9が設けられており、一対の切欠き部9,9間にわたって1本の分離誘導線SLxが配置されている。一対の切欠き部9,9それぞれと分離誘導線SLxとは繋がっている。おむつ1Aには、このような1本の分離誘導線SLxと一対の切欠き部9,9との組み合わせが、吸収体4を挟んで横方向Yの両側に一対設けられている。図3の形態では、切欠き部9は平面視三角形形状をなしているが、切欠き部9の平面視形状はこれに制限されず、その機能を損ねない範囲で任意の形状を選択し得る。
このように、分離誘導線SLxの端部に切欠き部9を設けることで、分離誘導線SLxに沿っておむつ1Aを一方側と他方側とに分離する操作の際に、切欠き部9に連なる分離誘導線SLxの先端に応力が集中するようになるため、分離誘導線SLxでの分離操作を容易にすることができる。また、おむつ1Aの周縁部に切欠き部9を設けることで、切欠き部9が分離誘導線SLxの目印として機能し得るため、例えば、おむつ1Aが水洗トイレの排水路に詰まった場合において、該排水路内でおむつ1Aを分離誘導線SLxによって細分化して一部ずつ回収する際の分離誘導線SLxの視認性の向上が図られる。切欠き部9は、横方向Yに延びる分離誘導線SLyの延長線上に設けてもよい。また、分離誘導線の目印としては切欠き部に限定されず、印刷による表示としてもよい。
図4には、本発明の吸収性物品における吸収体の一実施形態が示されている。図4に示す吸収体4Aにおいては、吸収性コア40が、吸収体4の面方向に間欠配置された複数の吸収小体40Pを含んで構成されている。そして、吸収体4Aにおける吸収小体40Pの非配置部(隣り合う2個の吸収小体40Pどうしの間隔に対応する部分)にて、肌側コアラップシート41と非肌側コアラップシート42とが接合されてコアラップシート接合部43が形成されている。コアラップシート接合部43は、ヒートシール、超音波シール、高周波シール、接着剤等の公知の接合手段によって形成することができる。
図4に示す形態では、縦方向X及び横方向Yの双方において、複数の吸収小体40Pが等間隔に間欠配置され、各吸収小体40Pはコアラップシート接合部43に包囲されている。つまり、コアラップシート接合部43は、吸収体4Aの平面視において格子状に配置されている。また、図4に示す形態では、コアラップシート接合部43の形成位置に分離誘導線SLが設けられており、各吸収小体40Pは、コアラップシート接合部43と、それよりも外側に位置する分離誘導線SLとに包囲されている。
吸収体4Aは、吸収性コア40が予め複数の吸収小体40Pに細分化されているため、万一水洗トイレの排水路に吸収体4Aが詰まってしまっても、排水路内で吸収体4Aを吸収小体40P単位に複数に分割して少しずつ回収することができる。また、分割された吸収小体40Pはコアラップシート接合部43で包囲されていて、コアラップシート41,42によって個包装されているのと同じ状態であるため、吸収小体40Pの回収作業中にこれに含有されている吸水性ポリマーや繊維材料などが外部に漏れ出す不都合が起こり難い。吸収体から排水路に吸水性ポリマーや繊維材料が漏れ出すと、それらが排水路を詰まらせる新たな要因となり得るし、また、排水路の掃除が大変になるという問題が生じる。吸収体4Aにおいて、コアラップシート接合部43の形成位置に分離誘導線SLは設けられていなくてもよいが、これが設けられていることで吸収小体40Pの分離が一層容易になり、水洗トイレの詰まりを一層速やかに復旧させることが可能となる。
また、前述したように、吸収性物品の使用時における吸収性コア40の端部からの漏れは、低膨潤性吸水性ポリマーの2.0kPaでの加圧下通液速度を前記特定範囲に調整することによって抑制され得るが、コアラップシート接合部43を利用して液の拡散経路を制御することによっても抑制され得る。例えば、図4(a)に示す形態では、コアラップシート接合部43の平面視形状は、縦方向Xに延びる直線状のコアラップシート接合部43と横方向Yに延びる直線状のコアラップシート接合部43とが互い直交する、格子状をなしているが、このような格子状に代えて、「屈曲部を有する線状部」を含む平面視形状とすることで、平面視格子状のコアラップシート接合部43に比して、液の平面方向での拡散性が低下し、それによって吸収性コア40の端部からの漏れが抑制され得る。前記の屈曲部を有する線状部としては、例えば、ジグザグに延びる線状のコアラップシート接合部43を例示できる。このような平面視ジグザグのコアラップシート接合部43は、例えば、縦方向X又は横方向Yに隣り合う吸収小体40Pの列どうしにおいて、各列における吸収小体40Pのピッチ(隣り合う吸収小体40P,40Pどうしの中心間の距離)を異ならせることで得られる。また、複数の吸収小体40Pの平面方向の面積や厚みはすべてが同一でなくてもよく、本発明では、面積や圧縮密度、坪量の異なる吸収小体の組み合わせが可能である。
図5に示すように、分離誘導線SLを有する吸収体4Aとその非肌対向面側に配された裏面シート3とが接着剤8を介して接合されている場合、分離誘導線SLと接着剤8との位置関係によっては、吸収体4Aから吸収小体40Pを分離するときに裏面シート3も一緒に分離することが可能となる。図5(a)に示す形態では、吸収体4Aから分離しようとしている吸収小体40Pを包囲する分離誘導線SLよりも外方に、吸収体4Aと裏面シート3との接合部を形成する接着剤8が位置し、且つ裏面シート3に分離誘導線SLが設けられていないため、該分離誘導線SLを利用して吸収体4Aから該吸収小体40Pを分離したときには、該吸収小体40Pと裏面シート3とが分離する。これに対し、図5(b)に示す形態では、吸収体4Aから分離しようとしている吸収小体40Pを包囲する分離誘導線SLよりも内方、より具体的には、該吸収小体40Pと平面視において重なる位置(該吸収小体40Pの非肌対向面側)に接着剤8が位置し、且つ裏面シート3に分離誘導線SLが設けられている、換言すれば、吸収体4A及び裏面シート3に分離誘導線SLが一体的に設けられているため、該分離誘導線SLを利用して吸収体4Aから該吸収小体40Pを分離したときには、裏面シート3における該吸収小体40Pに接着剤8を介して接合している部分が、裏面シート3から分離する。
このように、図5(b)に示す形態、すなわち、吸収性コア40及びこれを被覆するコアラップシート41,42を有する吸収体4Aと、該吸収体4Aの非肌対向面側に配された裏面シート3とに分離誘導線SLが一体的に設けられ、且つ該分離誘導線SLで包囲された領域において該吸収体4Aと該裏面シート3とが接着剤8を介して接合されている形態は、これが水洗トイレの排水路に詰まった場合に、分離誘導線SLで包囲された領域(図示の形態では吸収小体40Pを含む領域)を該分離誘導線SLにて吸収性物品から分離する作業を1回行うことで、吸収体4Aと裏面シート3とを一体的に排水路から回収することが可能となるため、回収作業の効率が向上し得る。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明の吸収性物品は前記実施形態に何ら制限されるものではなく、適宜変更可能である。
本発明の吸収性物品は、人体から排出される体液(尿、経血、軟便、汗等)の吸収に用いられる物品を広く包含し、その適用範囲は前記実施形態の如き展開型使い捨ておむつに限定されず、パンツ型使い捨ておむつ、尿取りパッド、生理用ナプキン(ショーツ型の商品を含む)、軽失禁パッドなどにも適用することができる。
前述した本発明の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
<1>
吸水性ポリマーを含有する吸収性コアを備えた吸収性物品であって、
前記吸水性ポリマーは、ドイツ硬度4°dHの水の飽和吸収量が90g/g以上140g/g以下、JIS K 7223に準拠した生理食塩水の飽和吸収量が20g/g以上50g/g以下である吸収性物品。
<2>
前記吸水性ポリマーのドイツ硬度4°dHの水の飽和吸収量は、好ましくは95g/g以上、より好ましくは100g/g以上、そして、好ましくは110g/g以下、より好ましくは105g/g以下である前記<1>に記載の吸収性物品。
<3>
前記吸水性ポリマーのドイツ硬度4°dHの水の飽和吸収量は、95g/g以上110g/g以下である前記<1>又は<2>に記載の吸収性物品。
<4>
前記吸水性ポリマーのドイツ硬度4°dHの水の飽和吸収量は、100g/g以上105g/g以下である前記<1>~<3>の何れか1項に記載の吸収性物品。
<5>
前記吸水性ポリマーのJIS K 7223に準拠した生理食塩水の飽和吸収量は、好ましくは25g/g以上、より好ましくは30g/g以上、そして、好ましくは45g/g以下、より好ましくは40g/g以下である前記<1>~<4>の何れか1項に記載の吸収性物品。
<6>
前記吸水性ポリマーのJIS K 7223に準拠した生理食塩水の飽和吸収量は、25g/g以上45g/g以下である前記<1>~<5>の何れか1項に記載の吸収性物品。
<7>
前記吸水性ポリマーのJIS K 7223に準拠した生理食塩水の飽和吸収量は、30g/g以上40g/g以下である前記<1>~<6>の何れか1項に記載の吸収性物品。
<8>
前記吸水性ポリマーは、2.0kPaでの加圧下通液速度が80mL/分以上である前記<1>~<7>の何れか1項に記載の吸収性物品。
<9>
前記吸水性ポリマーの2.0kPaでの加圧下通液速度は、好ましくは85mL/分以上、また、好ましくは200mL/分以下、より好ましくは150mL/分以下である前記<1>~<8>の何れか1項に記載の吸収性物品。
<10>
前記吸水性ポリマーの2.0kPaでの加圧下通液速度は、好ましくは80mL/分以上200mL/分以下である前記<1>~<9>の何れか1項に記載の吸収性物品。
<11>
前記吸水性ポリマーの2.0kPaでの加圧下通液速度は、好ましくは85mL/分以上150mL/分以下である前記<1>~<10>の何れか1項に記載の吸収性物品。
<12>
前記吸収性コアにおける前記吸水性ポリマー以外の他の吸水性ポリマーの含有量は、該吸収性コア中の全ての吸水性ポリマーの50質量%以下である前記<1>~<11>の何れか1項に記載の吸収性物品。
<13>
前記吸収性コアは、広葉樹由来のパルプを含有する前記<1>~<12>の何れか1項に記載の吸収性物品。
<14>
前記吸収性コアにおける前記広葉樹由来のパルプの含有量は、該吸収性コアの全質量に対して、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下である前記<13>に記載の吸収性物品。
<15>
前記吸収性コアにおける前記広葉樹由来のパルプの含有量は、該吸収性コアの全質量に対して、40質量%以上60質量%以下である前記<13>又は<14>に記載の吸収性物品。
<16>
前記吸収性コアにおける前記広葉樹由来のパルプの含有量は、該吸収性コアの全質量に対して、50質量%以上55質量%以下である前記<13>~<15>の何れか1項に記載の吸収性物品。
<17>
前記吸収性コアにおける前記広葉樹由来のパルプの単位面積当たりの質量(坪量)は、好ましくは150g/m2以上、より好ましくは200g/m2以上、そして、好ましくは400g/m2以下、より好ましくは350g/m2以下である前記<13>~<16>の何れか1項に記載の吸収性物品。
<18>
前記吸収性コアにおける前記広葉樹由来のパルプの単位面積当たりの質量(坪量)は、150g/m2以上400g/m2以下である前記<13>~<17>の何れか1項に記載の吸収性物品。
<19>
前記吸収性コアにおける前記広葉樹由来のパルプの単位面積当たりの質量(坪量)は、200g/m2以上350g/m2以下である前記<13>~<18>の何れか1項に記載の吸収性物品。
<20>
複数の部分に細分化可能に構成されている前記<1>~<19>の何れか1項に記載の吸収性物品。
<21>
前記吸収性コアと、該吸収性コアの肌対向面を被覆する肌側コアラップシートと、該吸収性コアの非肌対向面を被覆する非肌側コアラップシートとを有する吸収体を備え、
前記吸収性コアは、前記吸収体の面方向に間欠配置された複数の吸収小体を含み、
前記吸収体における前記吸収小体の非配置部にて、前記肌側コアラップシートと前記非肌側コアラップシートとが接合されている前記<1>~<20>の何れか1項に記載の吸収性物品。
<22>
着用者の前後方向に対応する縦方向とこれに直交する横方向とを有し、縦方向及び横方向の双方において、複数の前記吸収小体が等間隔に間欠配置され、各該吸収小体は、前記肌側コアラップシートと前記非肌側コアラップシートとの接合部に包囲されている前記<21>に記載の吸収性物品。
<23>
分離誘導線を有し、該分離誘導線を挟んで一方側と他方側とで分離可能になされている前記<1>~<22>の何れか1項に記載の吸収性物品。
<24>
前記分離誘導線は、前記吸収性コア又は前記吸収体を包囲するように配置されている前記<23>に記載の吸収性物品。
<25>
前記分離誘導線は、平面視線状の熱融着部又は平面視線状の接着剤塗布部を含む前記<23>又は<24>に記載の吸収性物品。
<26>
前記分離誘導線は、坪量ゼロの部分(貫通孔)が一方向に間欠配置された部分を含む前記<23>~<25>の何れか1項に記載の吸収性物品。
<27>
前記吸収体の非肌対向面側に配された裏面シート3を備え、該吸収体と該裏面シートとに前記分離誘導線が一体的に設けられている前記<23>~<26>の何れか1項に記載の吸収性物品。
<28>
着用者の前後方向に対応する縦方向とこれに直交する横方向とを有し、前記吸収性コアと該吸収性コアの外面を被覆するコアラップシートとを有する吸収体と、該吸収体の肌対向面側に配された表面シートとを備え、該表面シートは該吸収体の縦方向に沿う両側縁内に収まっている前記<1>~<27>の何れか1項に記載の吸収性物品。
<29>
前記表面シートの縦方向に沿う左右両側に、使用時に起立点を起点として着用者の肌側に向かって起立する一対の防漏カフを備え、前記表面シート及び前記吸収体それぞれの横方向端部は、横方向において該起立点の内側に位置する前記<28>に記載の吸収性物品。
<30>
展開型使い捨ておむつ、パンツ型使い捨ておむつ、尿取りパッド、生理用ナプキン、生理用ショーツ又は軽失禁パッドである前記<1>~<29>の何れか1項に記載の吸収性物品。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではない。
以下に、本実施例で使用した吸水性ポリマーの合成方法を説明する。該合成方法は下記のように、吸水性ポリマーの合成(前記工程1に相当)、吸水性ポリマーの架橋処理(前記工程2に相当)、吸水性ポリマーの中和処理(前記工程3に相当)の順で進めた。
〔合成例1〕
〔吸水性ポリマーの合成〕
攪拌機、還流冷却管、モノマー滴下口、窒素ガス導入管、温度計を取り付けたSUS304製5L反応容器(アンカー翼使用)に分散剤としてポリオキシアルキレンエーテルリン酸エステル0.1%(対アクリル酸質量、有効成分量)を仕込み、ノルマルヘプタン1500mLを加えた。窒素ガスの雰囲気下に攪拌を行いながら90℃まで昇温した。一方、2L三つ口フラスコ中に、80%アクリル酸(東亞合成株式会社製、act.80.6%)と脱イオン水、48%苛性ソーダ水溶液(旭硝子株式会社製、act.49.7%)から、モノマー水溶液としてのアクリル酸ナトリウム(72%中和品)1000gを得た。このモノマー水溶液に、N-アシル化グルタミン酸ソーダ(味の素株式会社製、商品名アミソフトPS-11)0.25gを脱イオン水4.41gに溶解させたものを添加した後、550g(以下、モノマー水溶液Aという)、250g(以下、モノマー水溶液Bという)、250g(以下、モノマー水溶液Cという)に三分割した。
次いで、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリド(富士フイルム和光純薬株式会社製、商品名V-50)0.05g、ポリエチレングリコール(花王株式会社製、K-PEG6000LA)0.5g、クエン酸アンモニウム鉄(III)(関東化学関東化学製)4g、脱イオン水10gを混合溶解し、開始剤(A)溶液を調製した。また、過硫酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)0.6gを脱イオン水10gに溶解し、開始剤(B)溶液を調製した。更に、クエン酸チタン水溶液(50%クエン酸と7.6%(TiO2)硫酸チタニル水溶液を20/27の質量比で混合)を調製した。モノマー水溶液Aに、開始剤(A)溶液12gを加えてモノマーAを調製し、モノマー水溶液Bに、開始剤(B)溶液5gを加えてモノマーBを調製し、モノマー水溶液Cに、開始剤(B)溶液5gとクエン酸チタン水溶液(クエン酸/Tiのモル比=2、Ti量0.015%対アクリル酸質量)2gを加えてモノマーCを調製した。
次いで、前述の5L反応容器内に、モノマー滴下口からマイクロチューブポンプを用いて、5分以上静置したモノマーA、モノマーB、モノマーCの順で滴下し重合した。モノマー滴下終了後、脱水管を用いて共沸脱水を行い、吸水性ポリマー(ハイドロゲル)の含水率を調整した後、架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、商品名デナコールEX-810)0.5gを脱イオン水10gに溶解したものを添加した。その後、60%の1-ヒドロキシエチリデン-1,1’-ジホスホン酸水溶液(ソルベイジャパン株式会社製、商品名ブリクエストADPA-60A)2gを添加した。冷却後、ノルマルヘプタンを除去・乾燥させることにより吸水性ポリマーを得た。
〔吸水性ポリマーの架橋処理〕
前記〔吸水性ポリマーの合成〕に用いたものと同様の反応容器(アンカー翼使用)に、前記〔吸水性ポリマーの合成〕で得られた吸水性ポリマー100gを仕込み、ノルマルヘプタン300mLを加えた。窒素雰囲気下、攪拌しながら、75℃まで昇温した。その後、滴下口から滴下ロートを用いて、脱イオン水60gを滴下し、続いて、脱イオン水10gに、架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、商品名デナコールEX-810)0.15gを溶解したものを添加した。1.5時間還流させた後、ノルマルヘプタンを除去乾燥させることにより、粒子表面が架橋処理された吸水性ポリマーを得た。
〔吸水性ポリマーの中和処理〕
前記〔吸水性ポリマーの合成〕に用いたものと同様の反応容器(アンカー翼使用)に、前記〔吸水性ポリマーの架橋処理〕で、得られた乾燥吸水性ポリマー100gに対して、分散剤としてショ糖脂肪酸エステル(三菱ケミカルフーズ株式会社製、商品名リョートーシュガーエステルS-770)2%(対吸水性ポリマー質量、有効成分量)を仕込み、吸水性ポリマーの5倍量の脱イオン水に中和剤として炭酸水素ナトリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)12.5gを加え、徐々に滴下した。得られた吸水性ポリマーをイソプロパノールで洗浄し、分散剤を洗浄し、濾過、乾燥を行い、中和度が調整された吸水性ポリマーを得た。
〔合成例2~4〕
前記の〔吸水性ポリマーの合成〕、〔吸水性ポリマーの架橋処理〕及び〔吸水性ポリマーの中和処理〕に従った合成例2~4により、粒子表面が架橋処理された3種類の吸水性ポリマーを得た。合成例2~4は前記〔吸水性ポリマーの架橋処理〕における架橋剤の使用量のみが異なっており、合成例2では0.19g、合成例3では0.10g、合成例4では0.07g用いた。
前記合成例1~4で得られた吸水性ポリマーは、何れも本発明で用いる低膨潤性吸水性ポリマーに相当するものであり、本発明の実施例である。これらの実施例とは別に、比較例として、下記の吸水性ポリマー(本発明で用いる低膨潤性吸水性ポリマーではない吸水性ポリマー)を用意した。
・比較例1:花王株式会社製、商品名「ロリエ 肌きれいガード ふつうの日用 羽なし」2018年製造
・比較例2:花王株式会社製、商品名「メリーズ テープタイプ Mサイズ」2018年製造
・比較例3:前記合成例1において、前記〔吸水性ポリマーの架橋処理〕における架橋剤(エチレングリコールジグリシジルエーテル)の使用量を3.0gとした以外は前記合成例1と同様にして得られた吸水性ポリマー
各実施例及び比較例の吸水性ポリマーについて、ドイツ硬度4°dHの水の飽和吸収量、生理食塩水の飽和吸収量、2.0kPaでの加圧下通液速度を、それぞれ前記方法により測定するとともに、膨潤ゲルの管外への取り出しやすさを下記方法により測定した。結果を下記表1に示す。膨潤ゲルの管外への取り出しやすさは、当該吸水性ポリマーを含有する吸収性コア延いては吸収性物品の、水洗トイレの排水路からの易回収性の指標となるものである。
<膨潤ゲルの管外への取り出しやすさの測定方法>
トイレの排水管内で膨潤したゲルの管外への取り出し易さを、膨潤ゲルを一定の条件まで平面で押し込んだときに得られる反発力(応力)で評価した。具体的には、AGCテクノグラス株式会社製の50mLビーカーに、ドイツ硬度4°dHの水(硬水)を25g注ぎ、更に該硬水に、測定対象の吸水性ポリマーを0.3g投入し軽くビーカーを揺らして、該硬水中に吸水性ポリマーを均一に分散させた。その後ビーカーを30分間静置した。この静置期間中に、ビーカー内の吸水性ポリマーは硬水を吸収して膨潤ゲルとなる。静置期間終了後に、市販のガラス製シャーレの蓋(外径36mm)を、該蓋の天板の外面を下方に向けて、膨潤ゲルの入ったビーカー内に入れて膨潤ゲルの上に置いた。そして、シャーレの蓋の上(蓋の天板の内面側)からデジタルフォースゲージ(アイコーエンジニアリング株式会社製RZ‐5)で、膨潤ゲルの厚みが18mmになるまで加圧した。そのときにゲージが示す力(N)を測定し、シャーレの蓋の面積から圧力(N/m2)を算出して、該膨潤ゲル(硬水で膨潤した吸水性ポリマー)の応力とした。斯かる膨潤ゲルの応力が小さいほど、該膨潤ゲルの基となった吸水性ポリマーを含有する吸収性物品は、水洗トイレの排水路からの易回収性に優れ、高評価となる。