JP2010014564A - 高分子膜の粒子捕捉の評価方法 - Google Patents

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Abstract


【課題】 高分子膜において、捕捉対象ウイルスのウイルス蛋白質およびそのウイルス核酸のいずれか一つ以上、ならびに透過対象蛋白質の到達位置を、一つの試料で同時に定量化する高分子膜の評価方法、さらにこの評価方法に基づくウイルス分離膜の設計方法を提供すること。
【解決手段】以下の(a)〜(h)の工程を順に含む高分子膜における微粒子到達位置の評価方法。
(a)膜の一次側からウイルスおよび透過対象蛋白質を含む溶液を二次側に送液、
(b)膜の断面切片を採取、
(c)一断面切片に存在する二種以上の微粒子を異なる蛍光色素で多重染色、
(d)二種以上の微粒子を各色素に応じて蛍光顕微鏡で観察、
(e)観察される各断面切片を画像データとし、ろ過方向と平行に等分割面に細分化、
(f)各等分割面の蛍光シグナルを各色素毎に数値化、
(g)各ヒストグラムを各色素毎に積分、
(h)微粒子の到達位置を判断。
【選択図】なし

Description

本発明は、高分子膜、特にウイルス分離膜において、捕捉対象ウイルスのウイルス蛋白質およびそのウイルス核酸のいずれか一つ以上、ならびに透過対象蛋白質の到達位置を、各対象物質の蛍光発色情報に基づいて定量的に評価する方法に関する。
血漿分画製剤やバイオ医薬品の製造工程において、ウイルス感染リスクを低減する手段の一つとして、平膜状または中空糸状のウイルス除去膜を内蔵したウイルス除去フィルターが利用されるようになっている。これらのウイルス除去膜においては、評価対象物質を含む水溶液を膜の一方から他方へ透過させ、透過前後の対象物質の濃度比に基づいて膜性能が評価されることが一般的である。具体的には、ウイルス除去膜は、製剤やバイオ医薬品に含まれる有用蛋白質を透過させる必要があるため、蛋白質の透過率や回収率という指標により蛋白透過性が評価されている。一方、ウイルスの除去性については、その感染リスク低減の観点から、透過前後の濃度比が非常に大きな領域で評価する必要がある。したがって、ウイルス除去能力の評価指標としては、蛋白質で用いられる百分率ではなく、対数除去値(LRV : Logarithmic Reduction Value)が用いられている。
しかしながら、上記の評価方法においては、たとえ百分率とLRVを使い分けたところで、膜が対象物質をどの程度透過あるいは阻止するかといった総括的な情報しか得られない。つまり、ある厚みのある膜の横断面で、対象物質がどのように挙動しているかという詳細情報は殆ど得られなかった。また、その他の評価方法として、高分解能電子顕微鏡によって膜の微細構造を解析することがあり、その結果から物質移動の機構を推定することもある。しかし、形態観察においても、厚みのある膜の横断面で何が起こっているかは全く分からず、何れにせよ膜がブラックボックス化してしまう傾向が見受けられた。
そこで、対象物質について、膜の横断面での透過や捕捉の機構を解明しようとする試み、具体的には、捕捉対象ウイルスのウイルス粒子の到達位置、または透過対象蛋白質の到達位置を可視化して、その機構を推定しようとする研究が成されている。例えば、非特許文献1では、専ら捕捉ウイルスの可視化に着目し、非特許文献2では蛋白質の透過や捕捉状態の可視化に着目して研究されている。
しかしながら、これらの方法は、前述の総括的な透過性とは対極的であり、有効膜面積が時として数平米にも達する膜の評価方法としては微視的過ぎる懸念があった。しかも、これらの研究から明らかなように、従来は対象物質毎に別々に実験され、評価されるのが常であった。その理由の一つとして、ウイルス除去に関心が高い場合は、ウイルスが膜のどの部位で動きを阻止されているのかが分かればよく、一方、蛋白質の透過性に関心が高い場合は、膜のどの部位で目詰まりが生じているのか等が分かればよいというように、研究目的によって捕捉対象物質か透過対象物質のいずれか一方に関心が傾きやすい点が挙げられる。また、これらの研究が、販売された膜の学術的関心や市場トラブルの原因解析の一環として行なわれることが多い点にも関係する。
Journal of Membrane Science 298(2007)99-109 日本膜学会第24年会講演要旨集P55 (2002年)
ウイルス分離膜は、同じ微粒子の範疇であっても、ウイルスに対しては透過を阻止する一方で、有用蛋白質に対しては透過を妨げてはならないものである。したがって、本来相反するこれらの特性を最大限両立するには、多面的かつ綿密に膜性能を評価し、その知見に基づいてより理想的な膜設計を展開していくことが重要となる。
しかしながら、前述のとおり、従来の性能評価方法によれば、対象物質の透過性や除去性という総括的な情報しか得られないから、これを膜構造に直接関連づけて議論することは必ずしも容易ではなかった。また、従来の可視化方法では微視的過ぎる点に加えて、捕捉対象ウイルスや透過対象蛋白質の到達位置や分布を別々に評価しているに過ぎず、透過を阻止すべき物質と透過を妨げてはならない物質の挙動を同じ土俵で客観的に評価するという、膜設計に重要な視点が欠落していた。
したがって、本発明の目的は、従来の膜の評価方法では不十分だった点を改善することであって、高分子膜、特にウイルス分離膜において、捕捉対象ウイルスのウイルス蛋白質およびそのウイルス核酸のいずれか一つ以上、ならびに透過対象蛋白質の到達位置を、一つの試料で同時に定量化する高分子膜の評価方法を提供することである。さらに、この評価方法に基づくウイルス分離膜の設計方法を提供することも目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために検討した結果、一つの試料において得られる複数の対象物質の発色情報を定量化することにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]以下の(a)〜(h)の工程を順に含む、高分子膜における微粒子到達位置の評価方法。
(a)高分子膜の一次側をウイルスおよび透過対象蛋白質を含む溶液で満たし、膜を介して該溶液を高分子膜の二次側に送液する工程。
(b)送液後の高分子膜の断面切片を採取する工程。
(c)採取後の一断面切片に存在する二種以上の微粒子を、異なる蛍光色素で多重染色する工程。
(d)染色後の一断面切片に存在する二種以上の微粒子を、各色素の蛍光波長に応じて蛍光顕微鏡で観察する工程。
(e)各色素毎に観察される各断面切片を画像データとし、該切片画像をろ過方向と平行に、二つ以上の等分割面に細分化する工程。
(f)各等分割面の蛍光シグナルを、各色素毎にデンシトメーターで読み取って数値化する工程。
(g)数値化により得られる膜厚方向の各ヒストグラムを、各色素毎に積分または平均化処理する工程。
(h)各色素毎に積分または平均化処理したヒストグラムにおいて、膜の最も二次側に検出される蛍光シグナルを微粒子の到達位置と判断する工程。
[2]前記(c)〜(h)の工程において、二種以上の微粒子が、ウイルス蛋白質およびウイルス核酸のいずれか一つ以上、ならびに透過対象蛋白質である前記[1]に記載の評価方法。
[3]前記(c)〜(h)の工程において、二種以上の微粒子が、ウイルス蛋白質、ウイルス核酸および透過対象蛋白質であり、(c)の工程において三重染色する前記[1]に記載の評価方法。
[4]高分子膜が中空糸膜である前記[1]〜[3]のいずれかに記載の評価方法であって、前記(d)の工程と(e)の工程と間に、画像解析によって円形の断面切片の少なくとも一部を直線状に加工する(d´)の工程を含む評価方法。
[5]前記[1]〜[4]のいずれかに記載の評価方法により得られる微粒子到達位置に、以下の判断基準を適用して行なうウイルス分離膜の設計方法。
ウイルス蛋白質および/またはウイルス核酸の到達位置Xが17〜72%で、かつ、透過対象蛋白質の到達位置Xが87%以上である膜を選択する。
[6]前記[5]に記載の設計方法を利用して得られるウイルス分離膜。
本発明によれば、高分子膜において、捕捉対象あるいは透過対象物質の到達位置が一つの試料で同時に可視化され、評価される。その結果、第一に、対象物質毎に実験して評価するという従来の煩雑な手間がなくなる。第二に、同一試料でしかも同一視野で評価されるのでバラツキの懸念が一掃される。すなわち、評価部位自体は微視的でありながらも、全く同じ土俵で、透過を阻止すべき物質と透過を妨げてはならない物質の到達位置を夫々可視化して定量評価するため、膜中にミクロンオーダーで存在し得る構造バラツキの影響を一切受けずに対象物質の挙動を評価できる。
そして、かかる評価方法により得られる結果に基づき、ウイルス蛋白質およびウイルス核酸のいずれか一つ以上、ならびに蛋白質の到達位置が特定範囲にある膜を選択することで、ウイルス分離に有効な膜を設計することが可能となる。
本発明でいう高分子膜とは、天然高分子または合成高分子を主体とする平膜状または中空糸状の分離膜である。高分子膜は、均質構造や多孔質構造あるいはこれらの複合構造であってもよく、複数の膜素材から複合化した膜でもよく、膜構造や膜素材については何ら限定されない。本発明では、高分子膜において溶液が供給される側を一次側と称し、膜を透過した溶液が回収される側を二次側と称する。したがって、中空糸膜においては、内圧ろ過に用いられる場合には内壁側が一次側となり、外圧ろ過に用いられる場合には内壁側が二次側となる。
前記高分子膜は、膜の機能分類上、精密ろ過膜または限外ろ過膜に位置付けられるものであり、蛋白質透過性を有するウイルス除去膜(ウイルス分離膜ともいわれる)であることが好ましい。例えば、ヒト免疫グロブリンIgGの透過性が70%以上あり、粒子径が18〜24nmであるヒトパルボウイルスB19のLRV=3以上の膜を挙げることができる。このようなウイルス除去膜の具体例として、ウイルス除去フィルターとして市販されている旭化成メディカル社の「Planova(登録商標)」、ミリポア社の「Viresolve (登録商標)」、ポール社の「Ultipore(登録商標)」およびザルトリウス社の「Virosart(登録商標)」等に内蔵された膜を挙げることができる。
本発明でいう微粒子とは、可視化のために蛍光染色される評価対象物質のことであり、具体的には、捕捉対象ウイルスのウイルス蛋白質、ウイルス核酸および透過対象蛋白質のいずれか一つ以上である。ここで、一般に、ウイルス核酸は微粒子と定義されることはないが、本発明では、便宜上、ウイルス核酸も微粒子と位置付ける。
前記ウイルスとは、血液製剤やバイオ医薬品に混入してはならないウイルスのことを言い、以下の1〜8のカテゴリーに属するウイルスを例示できる。すなわち、
1)マウス最小ウイルス(Minute Virus of Mice)、ブタパルボウイルス(Porcine Parvovirus)、ヒトパルボウイルス(B19)などのパルボウイルス科(Parvoviridae)のウイルス、
2)マウス白血病ウイルス(A-MuLV, X-MuLVなど)、HIVウイルスなどのレトロウイルス科(Retroviridae)のウイルス、
3)牛下痢症ウイルス(Bovine Viral Diarrhea Virus)、日本脳炎ウイルス(Japanese Encephalitis Virus)、C型肝炎ウイルス(Hepatitis C Virus)などのフラビウイルス科(Flaviviridae)のウイルス、
4)レオウイルス3型などのレオウイルス科(Reoviridae)科のウイルス、
5)パラインフルエンザウイルスなどのパラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)のウイルス、
6)単純ヘルペスウイルス、仮性狂犬病ウイルスなどのヘルペスウイルス科(Herpesviridae)のウイルス、
7)ポリオウイルスなどのピコルナウイルス科(Picornaviridae)のウイルス、
8)SV40ウイルスなどのパポーバウイルス科(Papovaviridae)のウイルスである。
前記ウイルスは、細胞外では、ウイルス核酸をキャプシド蛋白質が取り囲んだ形態を取っており、さらにエンベロープを有するものもある。一方、感染細胞内ではこの形態が破壊され、構成成分が散在していることもある。血液製剤やバイオ医薬品の生産工程では、これらのいずれの形態のウイルスも存在し得る。そこで、本発明では、形態の如何にかかわらず、蛍光染色されるキャプシド蛋白質やエンベロープに局在する蛋白質を総称してウイルス蛋白質と称し、蛍光染色されるウイルス核酸をウイルス核酸と称する。
前記の透過対象蛋白質とは、本発明の評価方法で透過性を確認するための蛋白質であり、一般的な蛋白質であれば限定されない。好ましくは血液製剤やバイオ医薬品の有用成分、あるいは有用成分に付随的に含まれる蛋白質のことをいう。例えば、血液凝固因子であるF-IX、F-XI、F-VIII、F-VII、フィブリノーゲン、トロンビン、アンチトロンビン-III、又はこれらの混合物、ヒト免疫グロブリンであるIgG、IgA、IgD、IgE又はIgM、アルブミン、α−1プロテアーゼインヒビター、トリプシンインヒビター、プロテアーゼインヒビター、ストレプトキナーゼ、アポリポ蛋白質、ポリペプチド、成長因子及等が選択できる。ポリペプチドは、例えば哺乳動物細胞で生産された遺伝子組み換えヒト成長ホルモン、牛組織由来プロテアーゼインヒビター等の生理活性ポリペプチドである。さらに、例えば、モノクローナル抗体、遺伝子組み換え医薬品、及びワクチン等が選択できる。
本発明においては、前記高分子膜における前記微粒子の到達位置を、(a)〜(h)の8段階の工程を順に経て評価する。
先ず、(a)の工程では、高分子膜の一次側をウイルスおよび透過対象蛋白質を含む溶液で満たし、膜を介して該溶液を高分子膜の二次側に送液する。本工程では、平膜や中空糸膜を、一次側から二次側へ液漏れなく送液(ろ過)できるように加工した高分子膜モジュールを予め準備しておく。該高分子膜モジュールの形状は、平膜の場合は市販のろ過ハウジングを利用すればよく、中空糸膜の場合は、一本の中空糸膜または複数本の中空糸膜束の両端部を、通液用にポッティング加工して用いればよい。微粒子含有溶液として、透過対象蛋白質溶液に対象ウイルスをスパイクした溶液(以下、ウイルス含有蛋白質溶液と称する)を準備する。該溶液の濃度、組成および溶媒種は限定されない。
ウイルス含有蛋白質溶液のろ過方法や条件も特に限定されず、定流あるいは定圧ポンプ等を用いて公知の方法でろ過すればよい。微粒子の到達位置に影響を及ぼさない限りは、ろ過に続いて溶媒で洗浄しても構わない。
(b)の工程では、送液後の高分子膜の断面切片を採取する。
本工程でいう断面とは、膜の一次側から二次側にわたって微粒子の到達位置を観察できる横断面のことをいう。例えば、平膜の場合は、ウイルス含有蛋白質溶液のろ過方向に沿って切断して得られる面であり、中空糸の場合は、円環断面または長軸方向に切断して得られる断面も含まれる。
本工程では、先ず、ろ過後の高分子膜モジュールから高分子膜を取り出す。取り出した高分子膜をパラホルムアルデヒト等の架橋剤で処理し、次工程で染色される蛋白質や核酸を予め固定化した後、リン酸緩衝液等で固定化試薬を洗浄する。次に、包埋剤を用いて凍結包埋を行なった後、高分子膜を薄切して観察用の断面切片を作製する。この包埋処理と薄切には凍結切片作成装置を利用すればよい。以降の処理は全て室温で実施できる。
(c)の工程では、採取後の一断面切片に存在する二種以上の微粒子を、異なる蛍光色素で多重染色する。
本工程でいう染色とは、高分子膜の一断面切片に存在する微粒子、すなわち、捕捉対象ウイルスのウイルス蛋白質およびそのウイルス核酸のいずれか一つ以上、ならびに透過対象蛋白質に色素を結合させることである。染色するにあたり、各微粒子の種類に応じて、アフィニティの差異や抗原抗体反応を利用して夫々染め分ける。
本発明では、特に、捕捉対象と透過対象という互いに相反する微粒子の挙動を同時に評価することに大きな意味があるので、少なくとも二種以上の微粒子を染め分ける二重染色が必要である。ウイルス粒子は壊れてしまう可能性がある。この場合、崩壊したウイルス蛋白質とウイルス核酸は、崩壊していないウイルスの挙動と一致しない可能性が高いと考えられ、ウイルス蛋白質とウイルス核酸のどちらの到達度がより大きくなるかは、容易には予測することができない。そこで、ウイルス蛋白質とウイルス核酸の到達度の大きい方の値をもって、ウイルスの到達度とすることで、ワーストケースの到達度を評価することができる。すなわち、ウイルス蛋白質とウイルス核酸の到達度を比較することで、ウイルス核酸を含むウイルス粒子を特定することが可能となるので、ウイルス粒子を異なる二種類以上の染色物質で染色することが好ましい。
色素は、検出感度の点から蛍光色素を用いるが、例えば、蛍光ラベルした抗体試薬を利用できる。各微粒子の種類に応じて染め分けるには、異なる色素を用いなくてはならず、吸収波長域や蛍光波長域の異なる色素を用いる。色素の種類、染色方法および条件は限定されない。
本工程では、先ず、前記(b)の工程で得られる断面切片をスライドグラスに載せ、ブロッキング溶液(例えば、human serum albumin in PBS(リン酸緩衝液))に浸漬してブロッキングする。ウイルス蛋白質を染色するには、例えば、前記のウイルス含有蛋白質溶液に含まれるウイルス蛋白質と結合する抗体(以下、一次抗体と称する)を前記ブロッキング溶液に溶かした溶液(以下、一次抗体溶液と称す)に浸漬し、さらに、適当な緩衝液(たとえば、PBS)で十分洗浄する。続いて、透過対象蛋白質を染色するには、例えば、一次抗体を認識する蛍光ラベルされた抗体(以下、二次抗体Aと称する)と透過対象蛋白質を認識する二次抗体Aとは別の蛍光色素でラベルされた抗体(以下、二次抗体Bと称する)を溶解した液(以下、二次抗体溶液と称す)に浸漬し、さらに、適当な緩衝液で十分洗浄する。これで二重染色になる。次に、ウイルス核酸を染色するには、例えば、核酸に親和性の高い蛍光ラベル剤(例えば、DAPI(4’,6-diamino-2-phenylindole)等が用いられる)の溶液に浸漬する。これで三重染色になる。その際、最後の染色工程では、染料を含む包埋剤に断面切片を浸漬し、染色と共にスライドグラスに包埋処理を行うことにより、蛍光顕微鏡観察用の試料を得ることができる。
以上は、膜の一断面切片を用いた三重染色の一例であるが、それぞれ用いた色素の蛍光波長が異なるので、続く(d)の工程において各微粒子を明確に見分けることができる。他の多重染色でも同様に行なえばよく、染色の順番や条件は限定されない。
(d)の工程では、染色後の一断面切片に存在する二種以上の微粒子を、各色素の蛍光波長に応じて蛍光顕微鏡で観察する。本工程では、前記(c)の工程で得られる多重染色した観察試料を蛍光顕微鏡で観察する。その際、各色素の最大蛍光波長に応じたバンドパスフィルター等を用いてフィルタリングを行なうと、同一試料において各色素を見分けることができる。すなわち本工程では、同一試料において、ウイルス蛋白質、ウイルス核酸および透過対象蛋白質等の各微粒子を観察できるため、各微粒子の膜断面における到達位置の可視化情報が一目瞭然となる。なお、透過対象蛋白質については、透過していることは勿論、膜の一次側表面や途中で捕捉されたいわゆる目詰まりについても明確に観察できる。
図1に、(d)の工程で観察される断面切片の蛍光画像の一例を示す。図中、暗部を背景に膜の断面が半円状に認められる。その断面の一部に認められる緑、青、赤の部分が、それぞれウイルス蛋白質、ウイルス核酸、透過対象蛋白質が発する蛍光である。図中、縦の列は、同一試料で同一視野である。
(e)の工程では、各色素毎に観察される各断面切片を画像データとし、該切片画像をろ過方向と平行に、二つ以上の等分割面に細分化する。本工程では、先ず、前記(d)の工程で観察される断面切片の蛍光画像をCCDカメラ等を用いて電子的な画像データとして取り込む。この時、蛍光画像と同一視野のまま、明視野像も取り込んでおく。明視野像は、最終工程(h)で微粒子の到達位置を求める際に、ベースとなる膜厚(一次側端と二次側端)を決定するのに用いる。
次に、画像処理装置を用いて、断面切片の画像を、ろ過方向と平行に二つ以上の等分割面に細分化する。画像処理装置や画像処理ソフトは特に限定されない。膜の横断面において、微粒子の移動状態は必ずしも均一ではなく、局所的にばらつくことが常であるから、このばらつきを相殺するために等分割面の数は多い方が好ましい。例えば10〜100面程度に当分割すればよい。明視野像も同様に細分化しておく。本発明では、以降の工程は、本工程同様に全て画像データの加工や処理により行なう。
(f)の工程では、各等分割面の蛍光シグナルを、各色素毎にデンシトメーターで読み取って数値化する工程である。本工程では、前記(e)の工程で細分化して得られる個々の等分割面の画像について、デンシトメーターを用いて蛍光シグナルの強度を読み取る。具体例を説明すると、前記(c)の工程に例示したウイルス核酸の場合、先ず、n等分に細分化したn枚の分割画像を一枚ずつデンシトメーターでろ過方向にスキャンする。次に、DAPI由来の蛍光シグナルの濃淡を数値化情報に変換する。そして、このn枚分の各数値化情報は、例えば横軸がろ過方向(膜厚方向)である蛍光強度のヒストグラムとして表示させればよい。同様の読み取り操作を透過対象蛋白質についても行なえば、二重染色相当の数値化情報が揃い、ウイルス蛋白質についても行なえば、三重染色相当の数値化情報が揃う。
図2に、(f)の工程で得られる細分化した等分割面の蛍光画像と、その蛍光ヒストグラムの一例を示す。図中、左側3枚の画像は中空糸膜の断面を直線状に延ばした画像であり、それぞれ発色している左側が膜の一次側、他方の白く細いラインが二次側である。3枚の画像は、同一試料で同一視野である。この断面をろ過方向に平行に等分割し(この例では10等分)、それぞれをデンシトメーターで読み取って蛍光強度を数値化したものが右側の蛍光ヒストグラムである。個々のヒストグラムでは、各色素の蛍光ヒストグラムが一グラフに合成されている。また個々のヒストグラムにおいて、緑ラインはB19、青ラインはB19核酸、赤ラインはIgGを表している。
(g)の工程では、数値化により得られる膜厚方向の各ヒストグラムを、各色素毎に積分または平均化処理する。本工程では、前記(f)の工程で、細分化した等分割面一枚ずつについて得られる多数の数値化情報(ヒストグラム)を、各色素毎に分けて積分または平均化処理することにより、膜中の局所的なばらつきが相殺された各微粒子の可視化情報が得られる。
積分または平均化処理したヒストグラムは、色素毎にラインを色分けする等して同一グラフ上に合成すると、捕捉対象物質と透過対象物質の膜厚方向での分布や量の大小が視覚的に一目瞭然となり、微粒子の分布の様子を比較しやすい。勿論、続く(h)の工程で、微粒子の到達距離が正確に算出できれば、色素毎に別々に表示しても構わない。
最終工程である(h)の工程では、各色素毎に積分または平均化処理したヒストグラムにおいて、膜の最も二次側に検出される蛍光シグナルを微粒子の到達位置と判断する。本工程では、先ず、ろ過方向に膜厚を数値化するにあたり、前記(e)の工程で得られる細分化された個々の明視野像において、膜の一次側端のX座標をXとし、二次側端のX座標をXとするとき、X−Xが膜厚となる。そして、この明視野像と一致するヒストグラムにおいて、各微粒子に対応するラインが検出される最も二次側のX座標をXとする時、下記式(1)で算出される百分率を評価対象微粒子の到達位置(X)と決定する。
到達位置(X)=100×X/(X−X) (1)
(h)の工程で用いられる積分または平均化処理した蛍光画像と、そのヒストグラムの一例を図3に示す。一連の説明および第3図から明らかなように、高分子膜の横断面において、捕捉対象物質あるいは透過対象物質の到達位置が一つの試料で同時に可視化され、定量的に評価できることが分かる。また、各微粒子の分布やその量の大小も一目瞭然であるので、透過対象蛋白質の目詰まりの様子や、目詰まり蛋白質とウイルスの捕捉位置との関係等が詳細に見て取れる。
以上、高分子膜の形状について特に限定せずに説明したが、本発明においては、高分子膜が中空糸膜の場合、前記(d)の工程と(e)の工程と間に、画像解析によって円形の断面切片の少なくとも一部を直線状に加工する(d´)の工程を含むことが好ましい。中空糸膜のうち特に円環断面切片を用いて評価する場合、続く(e)の工程でそのまま等分割面に細分化すると、膜が円形ゆえに各等分割面が放射状に向いてしまう結果、個々のヒストグラムを正確に積分または平均化処理できず、各微粒子の到達位置を正確に求め難くなる。
この問題を解消するために、画像処理ソフトの画像変形機能を利用することもできる。例えば、ImageJ等のプラグインソフト「straighten」を用いると、円周状のオブジェクトの外周側を縦方向に押し縮めることでオブジェクトを直線状に変形できる。勿論、中空糸膜を長軸方向に薄切して断面切片を採取する場合はこの限りではない。
(d´)の工程で中空糸の円環断面の一部を直線状に延ばした一例を図2に示す。図2は、図1で観察した円形の断面像を直線状に加工した画像である。
本発明では、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の評価方法により得られる微粒子到達位置に、以下の判断基準を適用して行なうウイルス分離膜の設計方法を提供する。
ウイルス蛋白質および/またはウイルス核酸の到達位置Xが17〜72%で、かつ、透過対象蛋白質の到達位置Xが87%以上である膜を選択する。
ウイルス分離膜は、ふるいわけ原理により、粒子の大きさに応じて分離操作を行う膜であるため、また、一般に、蛋白質はウイルスより大きさが小さいことから、ウイルス分離膜は、透過対象蛋白質は透過させ、ウイルスは膜内部に捕捉する必要がある。
到達位置Xは、捕捉されるウイルスの大きさに応じて、ウイルスが膜のどの部位で捕捉されているか、また、透過対象蛋白質が膜のどの部位で目詰まりが生じているかの情報を与えてくれる。
ウイルスは、一般に18nm〜150nmの大きさであることが知られており、捕捉するウイルスと膜の大きさの相対関係により、ウイルス蛋白質および/またはウイルス核酸の到達位置Xは変わってくる。また、膜は、完全に均質な孔径を持つことはなく、異なる大きさのウイルスの到達位置Xの解析により、膜の孔径や孔径分布、さらには、膜厚方向の膜構造ネットワークに関する情報を得ることが可能となる。
ウイルス分離膜がウイルス洩れを起こさないためには、ウイルス蛋白質および/またはウイルス核酸の到達位置Xは、膜のより一次側にあることが望ましい。本発明では、Xが17〜72%の膜を設計することが重要である。Xが72%より大きい場合、ウイルス除去の機能を発揮するウイルス捕捉層の領域が、膜厚方向において狭いことを意味する。このような膜構造では、ウイルス除去能力の持続性(ろ過量が増えてもウイルス除去性が変化しない現象)が低下しやすい。また、17%以上としている理由は、ウイルスや透過蛋白質以外の不純物を除去するのに有効な大きな孔径の層を持たせておくことが、膜全体の透過性向上に有効であるからである。つまり、膜厚方向のより一次側に、比較的目の粗いプレフィルター的機能を示す構造を設けておくことも持続性の観点で重要であり、この下限値が0%に近づく膜構造であるほど、目詰まりによってろ過速度が低下しやすい。
一方、透過対象蛋白質は、一般に、10〜15nm以下であるものが大半である。したがって、ウイルス分離膜では、ほぼ80%以上の透過率で膜を透過することが、産業上、重要となっている。すなわち、膜に可能な限り捕捉されないことが重要であることを意味する。本発明では、透過対象蛋白質の到達位置Xは87%以上であることが、重要である。
本発明における、膜の設計方法について、以下に記載する。
高分子膜を作製し、前記の(a)〜(h)の8段階の工程を順に経て、到達位置Xを評価する。並行して、以下に記載するウイルス除去の対数除去値(LRV)と透過対象蛋白質の透過率を別途、測定して、ウイルス分離膜の性能評価を行う。
ウイルス除去の対数除去値(LRV)は、以下の式(2)を用いて計算する。
LRV=log10(N0 /Nf) (2)
N0:濾過前の濾過元液中のウイルス濃度
Nf:濾過後の濾液中のウイルス濃度

透過対象蛋白質の透過率は、以下の式(3)を用いて計算する。
透過対象蛋白質の透過率(%)=100×Cf /C0 (3)
C0:濾過前(元液)の蛋白質の濃度
Cf:濾液後(濾液)の蛋白質の濃度
従来行われていたように、単に、ウイルス除去の対数除去値(LRV)と透過対象蛋白質の透過率を測定して、ウイルス分離膜の性能を評価するだけでは、評価した膜が、ウイルス分離膜として真に有効かどうかを判断することはできない。ウイルス分離膜としては、従来からウイルス除去の対数除去値LRVは3以上、透過対象蛋白質の透過率は80%以上が、目安となっている。しかしながら、これらの数字だけでは、ふるいわけ原理でウイルス分離膜として有効かどうかは不明である。なぜなら、例えば、ウイルスが膜に吸着している場合でもLRVが3以上になるからである。そのような吸着型の膜は、吸着容量を超えると直ちにウイルスの破瓜が生じて被精製物に混入するリスクがあるので、好ましくない。
本発明では、ウイルス蛋白質および/またはウイルス核酸の到達位置Xが17〜72%で、かつ、透過対象蛋白質の到達位置Xが87%以上である膜が、ふるいわけ原理に基づくウイルス分離膜として有効であることを見出し、これを膜の設計方法とすることができる。
本発明では、前記に記載の設計方法を利用して得られるウイルス分離膜を、提供することができる。
すなわち、本発明では、前記の(a)〜(h)の8段階の工程を順に経て、到達位置Xを評価する場合、大きさが異なるウイルスを用いて評価することで、ウイルス捕捉の定量情報をより有効に得ることが可能となる。例えば、ブタパルボウイルスと免疫グロブリンを含んだ溶液で評価し、さらに、別に、牛下痢症ウイルス(Bovine Viral Diarrhea Virus)と免疫グロブリンを含んだ溶液で評価する。この場合、前者では、小ウイルスであるブタパルボウイルスの捕捉に関する情報が、後者では、中型ウイルスである牛下痢症ウイルスの捕捉に関する情報を得ることができる。両者のウイルスにおいて、ウイルス蛋白質および/またはウイルス核酸の到達位置Xが17〜72%で、かつ、透過対象の免疫グロブリンの到達位置Xが87%以上である膜を選択することが、ウイルス分離膜としてより有効であることを見出した。
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
[実施例1〜3] [比較例1]
(1)高分子膜
高分子膜として、ウイルス除去フィルターPlanova(登録商標)15N、Planova20N、Planova35Nおよび、プレフィルターPlanova75N(いずれも、旭化成メディカル株式会社製、東京、日本)の構成中空糸膜である、BMM15、BMM20、BMM35およびBMM75を準備した。いずれも、高圧蒸気滅菌を実施していない未滅菌状態での中空糸膜である。この中空糸膜の両端をポッティング加工し、ろ過用モジュールとして、長さが1 cmの一本モジュールを作製した。ここで、実施例1はBMM15、実施例2はBMM20、実施例3はBMM35、比較例1はBMM75である。
(2)操作
100 mg/mlになるようにヒト免疫グロブリンを5%ソルビトール水溶液に溶かし、pH 4.15に調製した液(Veno-IH(R)、ベネシス社製、大阪、日本)に、総量が10〜11 LogコピーのヒトパルボウイルスB19(以下、B19と記す)をスパイクした。この溶液を、BMM15、BMM20、BMM35およびBMM75の1本モジュールで、中空糸膜の内壁側から外側に向かってろ過した。ろ過した溶液総量は2〜9 mlである。ろ過はすべてエアーポンプ(Vacuum/Pressure Station、バーナント社、 Illinois、 USA)を用いて50 kPaの圧力をかけて行った。
中空糸膜を、1本モジュールから切り離して100 mMリン酸緩衝液中 4% (w/v) パラホルムアルデヒド溶液pH 7.4 (RM102-5L、リン酸緩衝液 5、 三菱化学ヤトロン社、東京、 日本)に1時間浸し、続いて100 mM リン酸緩衝液pH 7.4で10分間浸して洗浄した。洗浄済みの中空糸膜はOCT compound (4583、 Tissue-Teck O.C.T Compound、 サクラ精機株式会社、東京、 日本)を満たした凍結用トレイに30分浸した後に−80℃で急凍した。凍結包埋以外の全ての工程は室温にて行った。凍結包埋した中空糸膜はクリオスタット(Miles Tissue-tek II 4553, Miles Tissue-Tek、Minnesota、USA)で6 mm厚に薄切してスライドグラスに乗せた。
薄切した中空紙膜をD-PBS(Dulbecco’s Phosphate-Buffered Salineダルベッコ リン酸緩衝塩、インビトロジェン社、California、USA)で3度洗った後に2% ヒト血清アルブミン (株式会社ベネシス、大阪、日本) in D-PBS (ブロッキングバッファー)で1時間ブロッキングした。次に、1% (v/v) ポリクロナールRabbit Anti-パルボウイルス B19 (B0091、 Daco Cytomationダコ・サイトメーション社、USA)を含むブロッキングバッファーで1時間一次抗体処理し、D-PBSで10回洗浄した。続いて、0.1% (v/v) ポリクロナールブタ Anti-Rabbit Immunoglobulins/FITC (F0205、Daco Cytomationダコ・サイトメーション社、USA)と0.1% ImmunoPure Texas Red Conjugated Goat Anti-Human IgG(H+L) (31943、Pierce Biotechnology、Inc.)を含むブロッキングバッファーで1時間二次抗体処理し、D-PBSで10回洗浄した。最後にDAPIを含む包埋剤(H-1200、ベクター・ラボトラリイー社、California、USA)と共にスライドグラスに包埋し、蛍光顕微鏡観察用の試料とした。
試料は蛍光顕微鏡(IX71、オリンパス株式会社、東京、日本)で観察し、得られた画像はCCDカメラ(VB6010、株式会社キーエンス、大阪、日本)で取り込んだ(図1を参照)。
取り込んだ円形の中空糸膜断面の画像は、ImageJ (version 1.36b) (http://rsb.info.nih.gov/ij/index.html)にて画像処理して分析した。円形の中空糸膜の同一視野の各蛍光画像と明視野像はImageJのプラグイン「straighten」(http://rsb.info.nih.gov/ij/plugins/straighten.html)を用いて同一のパラメーターで直線状に加工して縦方向を押し縮めて到達度を解析しやすくした。次に、この直線状の中空糸膜の画像を10等分して蛍光シグナルのデンシトメトリーをとり、そのうち実施例2の膜(BMM20)について図2に示す。左側3列は、図1で観察した円形の断面像を直線状に加工した画像であり、最右列は、直線状に加工した各画像を10等分し、B19キャプシド蛋白質(VP1/VP2)、B19核酸およびIgGの各蛍光シグナルをデンシトメーターで読み取り、数値化したヒストグラムである(図2を参照)。
各微粒子の到達位置は、蛍光シグナルの到達度として中空糸膜の膜厚を100%として内側から計測した。図3の左側3列は、実施例1〜3、比較例1の膜について、それぞれ10等分した画像から代表的な画像であり、最右列は、それぞれ10等分して得られた数値化情報を平均化したヒストグラムである(図3を参照)。
図3に示すヒストグラムから計測した、B19キャプシド蛋白質(VP1/VP2)、B19核酸およびIgGの到達位置Xを平均化処理したものを、中空糸膜の内壁を0%とした場合の数字として表1に示した。
実施例1〜3の中空糸膜は、B19ウイルス蛋白質、B19ウイルス核酸の到達位置Xが17〜72%、かつ透過対象蛋白質の到達位置Xが87%以上を満たしており、ウイルス分離膜の最適設計値を十分満たしていることがわかる。一方比較例1の中空糸膜は、B19ウイルス蛋白質の到達位置Xが17〜72%を満たしておらず、ウイルス分離膜の設計値を満たしていないことになり、分離膜として不適なことがわかる。また、比較例1においてのB19ウイルスの対数除去値LRVは、2.16であった。
本発明の評価方法は、ウイルス分離膜として、最適な膜か否かを容易に判断することができ、その選択も簡単である。また、捕捉対象物質と透過対象物質の到達位置だけでなく、分布状況が一つの試料で到達位置と同時に分かるため、分離膜開発の分野において、膜解析や膜設計に有用に活用できる。
本発明によれば、高分子膜の横断面において、捕捉対象物質と透過対象物質の到達位置や分布状況が一つの試料で同時に分かるため、分離膜開発の分野において、膜解析や膜設計に有用に活用できる。
実施例1〜3、比較例1において、試料を蛍光顕微鏡で観察した中空糸膜断面の写真である。 実施例2の膜(BMM20)について、図1で観察した円形の断面像を直線状に加工した画像と、直線状に加工した各画像を10等分し、B19キャプシド蛋白質(VP1/VP2)、B19核酸およびIgGの各蛍光シグナルをデンシトメーターで読み取り、数値化したヒストグラムである。 実施例1〜3、比較例1の膜について、それぞれ10等分した画像から代表的な画像と、それぞれ10等分して得られた数値化情報を平均化したヒストグラムである。

Claims (6)

  1. 以下の(a)〜(h)の工程を順に含む、高分子膜における微粒子到達位置の評価方法。
    (a)高分子膜の一次側をウイルスおよび透過対象蛋白質を含む溶液で満たし、膜を介して該溶液を高分子膜の二次側に送液する工程。
    (b)送液後の高分子膜の断面切片を採取する工程。
    (c)採取後の一断面切片に存在する二種以上の微粒子を、異なる蛍光色素で多重染色する工程。
    (d)染色後の一断面切片に存在する二種以上の微粒子を、各色素の蛍光波長に応じて蛍光顕微鏡で観察する工程。
    (e)各色素毎に観察される各断面切片を画像データとし、該切片画像をろ過方向と平行に、二つ以上の等分割面に細分化する工程。
    (f)各等分割面の蛍光シグナルを、各色素毎にデンシトメーターで読み取って数値化する工程。
    (g)数値化により得られる膜厚方向の各ヒストグラムを、各色素毎に積分または平均化処理する工程。
    (h)各色素毎に積分または平均化処理したヒストグラムにおいて、膜の最も二次側に検出される蛍光シグナルを微粒子の到達位置と判断する工程。
  2. 前記(c)〜(h)の工程において、二種以上の微粒子が、ウイルス蛋白質およびウイルス核酸のいずれか一つ以上、ならびに透過対象蛋白質である請求項1に記載の評価方法。
  3. 前記(c)〜(h)の工程において、二種以上の微粒子が、ウイルス蛋白質、ウイルス核酸および透過対象蛋白質であり、(c)の工程において三重染色する請求項1に記載の評価方法。
  4. 高分子膜が中空糸膜である請求項1〜3のいずれかに記載の評価方法であって、前記(d)の工程と(e)の工程と間に、画像解析によって円形の断面切片の少なくとも一部を直線状に加工する(d´)の工程を含む評価方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の評価方法により得られる微粒子到達位置に、以下の判断基準を適用して行なうウイルス分離膜の設計方法。
    ウイルス蛋白質および/またはウイルス核酸の到達位置Xが17〜72%で、かつ、透過対象蛋白質の到達位置Xが87%以上である膜を選択する。
  6. 請求項5に記載の設計方法を利用して得られるウイルス分離膜。
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