JP2010012218A - 超音波医療装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、体内留置型カテーテル等の医療機器における細菌感染等の問題を解決する。
【解決手段】本発明は、酸化チタン材料(酸化チタン単独または酸化チタン複合材料)で被覆された医療機器(酸化チタンコート医療機器10)と、超音波照射手段20とからなる超音波医療装置に関する。医療機器の表面に存在する酸化チタン材料に超音波を照射することによって、当該医療機器表面において抗菌性、血管新生の促進、並びに血栓およびバイオフィルム分解などの優れた効果を発揮する。
【選択図】図1

Description

本発明は、酸化チタン材料(酸化チタン単独または酸化チタン複合材料)で被覆された医療機器と、超音波照射手段とからなる超音波医療装置に関する。医療機器の表面に存在する酸化チタン材料(酸化チタン単独または酸化チタン複合材料)に超音波を照射することによって、医療機器表面において抗菌性、血管新生の促進、並びに血栓およびバイオフィルム分解などの優れた作用を発揮する。
二酸化チタンを光触媒として用い、これに紫外線を照射することによって強い酸化力を有するヒドロキシラジカル(OHラジカル)が発生することが知られており、有機化合物や細菌などの有機物質の除去に利用されている。紫外線以外の二酸化チタン励起源としては紫外線以外に超音波の利用が注目されており、低周波超音波を用いた場合に紫外線と同様の殺菌効果が報告されている(非特許文献1を参照のこと)。
上記は専ら環境分野において応用されており、二酸化チタンに超音波を照射することによって水質改善や水中微生物除去などを行う技術が知られている。例えば、特許文献1には、流体の殺菌処理効果が高く、簡単な構造からなる殺菌装置及び殺菌方法の提供を目的として、流体が通過する流路体と超音波振動子と超音波反応拡散体とを備えることを特徴とした流体の殺菌装置および殺菌方法が開示されている。特許文献1に開示されている技術では、上記超音波反応拡散体として超音波照射下にて光触媒作用を示す物質(例えば二酸化チタン)が用いられ、当該超音波反応拡散体に対して超音波を照射することにより流体を殺菌処理している。
また、出力200W、周波数39kHzの超音波照射により二酸化チタンを励起した際に大腸菌の濃度が減少したことから、二酸化チタンに超音波照射することによる殺菌効果が確認されている(非特許文献1を参照のこと)。
また特許文献2には、二酸化チタン粒子が存在する水中に、超音波照射することによってヒドロキシラジカルを製造する方法が開示されている。
また特許文献3には、水中の有機物、特に難分解性の有害有機化合物を容易に分解し、かつ水中の病原性微生物を短時間に無害化することを目的として、二酸化チタンの存在する水中に超音波を照射しつつ、被処理水中に過酸化水素などの酸化剤を添加する水処理方法、および当該水処理方法に用いられる装置が開示されている。
また特許文献4には、有機物質処理方法の提供を目的として、有機物質と有機物質処理剤の共存下に超音波を照射する方法が開示されている。上記有機物質としては例えば菌、バクテリア、ウイルスが挙げられ、上記有機物質処理剤としては酸素欠陥を有する酸化チタンが挙げられる。
また特許文献5には、酸化チタン複合木質炭化物と過酸化水素との存在化において、有機物を含む被処理液に超音波を照射して、前記有機物を分解することを特徴とする液体の処理法が開示されている。
上記の他、超音波と酸化チタンとを利用した技術としては次のものが挙げられる。例えば特許文献6には、ヒドロキシラジカルによるラジカル反応による有機汚染物質を酸化的分解による、有機汚染物質を含有する排水の処理方法及び装置が開示されている。ここでのヒドロキシラジカルは二酸化チタンを正極として用いて電気的に発生させている。また超音波は、処理中の廃水が多量の浮遊性懸濁物を含有しているとこれらの粒子を帯電させるためにエネルギーを著しく消費するという不利、および多量の粒子が金属酸化物電極の空孔部中に堆積してラジカル発生反応が大幅に低下するという不利を克服するために利用されている。
また特許文献7には、酸化チタン製ヘッドまたは金属プレートを通過して超音波と遠赤外線を同時に発生する美容器について開示されている。実施例が示されておらず、原理及びメカニズムは不明であるが、超音波出力が酸化チタンプレートを通過することにより活性化し、マッサージ効果を促進すると、特許文献7には言及されている。
ところで、体内留置型カテーテル、胃ろうカテーテル、気管切開用チューブなどの医療機器の皮膚出口部の汚染による細菌感染が問題となっている。体内留置型カテーテル等を生体内に埋植した場合、生体組織が、上記体内留置型カテーテル等を異物と認識してしまう。そして、上記生体組織と上記医療機器とが密着しないため、例えば経皮カテーテルの場合、表皮がカテーテルに沿って内側に落ち込む、いわゆるダウングロース(上皮組織がカテーテル表面に沿って内部へ陥入していく現象)が生じることとなる。そして、このダウングロースが深くなると消毒が行き届かず、細菌の感染経路を形成することとなり、皮膚の炎症などを引き起こしてしまう。そして、最終的には上記体内留置型医療機器を引き抜かなければならない状態を生じてしまうという問題がある。そこで、このような問題点を解決するために、生体への密着性を付与した様々な体内留置型医療機器が提案されている。
例えば、腹腔内留置カテーテルや中心静脈カテーテルは、細菌感染防止やカテーテルを生体内に固定するためのダクロン製不織布からなるカフ部材(ダクロンカフ)を備えている(例えば特許文献8参照のこと)。上記ダフロンカフの部分を皮下に埋め込むことにより、皮下の結合組織が増生し強固に固定され、カテーテルの固定が確実となり事故抜去の可能性が減少する。しかしながら、上記カテーテルの場合であっても、上記ダクロンカフと生体組織とが接着しておらず、完全に細菌感染を防止することはできない。
また、その他の体内留置型医療機器として、生体親和性の高いハイドロキシアパタイトセラミックスからなる経皮端子が提案されている(非特許文献2参照)。上記非特許文献2に開示の構成では、ハイドロキシアパタイトセラミックスのみで経皮端子が構成されている。ハイドロキシアパタイトは、歯の成分であり優れた軟組織に対する親和性を示すが、ハイドロキシアパタイトセラミックスは、硬くて脆い性質がある。よって上記経皮端子は硬く、生体内に埋植した場合にハイドロキシアパタイトセラミックスと生体組織との間に隙間ができる場合があり、生体との密着性が悪いと問題点がある。さらに、ハイドロキシアパタイトセラミックスのみで経皮端子を製造する場合には、当該経皮端子のサイズが大きくなってしまうという問題点もある。よって、上記非特許文献2に開示の構成では、上記経皮端子が破損し易く、また、上記経皮端子を生体内に埋植した場合には、患者が当該経皮端子端子の固さにより違和感を生じてしまうという種々の問題点がある。
特開2007−275842号公報(公開日:平成19年10月25日(2007.10.25)) 特開2003−26406号公報(公開日:平成15年1月29日(2003.1.29)) 特開2004−351331号公報(公開日:平成16年12月16日(2004.12.16)) 特開2008−30031号公報(公開日:平成20年2月14日(2008.2.14)) 特開2005−288302号公報(公開日:平成17年10月20日(2005.10.20)) 特表2002−538960号公報(公表日:平成14年11月19日(2002.11.19)) 特開2003−19177号公報(公開日:平成15年1月21日(2003.1.21)) 特開平8−206193号公報(公開日:平成8年8月13日(1996.8.13) 清水宣明、萩野千秋、M. F. Dadjour:超音波と二酸化チタンを用いた有害微生物の殺菌、超音波利用技術集成、NTS、115-125、2005. H. AOKI, in"Medical Applications of Hydroxyapatite" (Ishiyaku EuroAmerica, Inc., 1994) p.133-155
上記のごとく、体内留置型カテーテル、胃ろうカテーテル、気管切開用チューブなどの医療機器の皮膚出口部の汚染による細菌感染が問題となっているが、これに対する有効な解決手段は未だに見出されていない。そこで本発明は、上記課題を解決するためになされたものである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、超音波によって酸化チタンを励起することによる殺菌効果を医療機器に応用することによって、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明にかかる超音波医療装置は、上記課題を解決するために、酸化チタン材料で表面が被覆された医療機器と、当該医療機器に対して超音波を照射するための超音波照射手段とを備え、当該酸化チタン材料が、酸化チタンのみからなる材料、または高分子基材の表面に酸化チタンが被覆されてなる酸化チタン複合材料であることを特徴としている。
本発明にかかる超音波医療装置において、上記超音波照射手段は、生体安全基準内の出力の超音波を照射することができる手段であってもよい。
本発明にかかる超音波医療装置において、上記超音波照射手段は、超音波の出力が調整可能となっていてもよい。
本発明にかかる超音波医療装置において、上記超音波照射手段は、連続波、パルス波、バースト波、および定在波からなる群から選択される1種類以上の超音波を発生することができる手段であってもよい。
本発明にかかる超音波医療装置において、上記超音波照射手段は、超音波を集束させて照射することができる手段であってもよい。
本発明にかかる超音波医療装置において、上記超音波照射手段は、カプラを備えていてもよい。
本発明にかかる超音波医療装置において、上記超音波照射手段を構成する振動子は、電気機械結合係数が10%以上の圧電体からなるものであってもよい。
本発明にかかる超音波医療装置において、上記超音波照射手段を構成する振動子が、水晶、水溶性結晶、圧電セラミックス、高結合圧電結晶、高分子圧電材料、複合圧電材料、電着圧電膜のいずれか一つの圧電体、または上記材料のいずれかを組み合わせた圧電体からなるものであってもよい。
本発明にかかる超音波医療装置において、上記超音波照射手段は、150kHz以上の周波数の超音波を発生することができる手段であってもよい。
本発明にかかる超音波医療装置において、上記超音波照射手段は、単一送信において高調波または多周波を含む超音波を発生することができる手段であってもよい。
本発明にかかる超音波医療装置において、上記酸化チタン複合材料は、活性基を有する高分子基材と、当該活性基と反応可能な反応性官能基を有する酸化チタンとからなり、上記活性基と反応性官能基とが化学結合してなるものであってもよい。
本発明にかかる超音波医療装置において、上記酸化チタン複合材料は、活性基を有する高分子基材と、アミノ基を有する酸化チタンとからなり、上記活性基とアミノ基とが化学結合してなるものであってもよい。
本発明にかかる超音波医療装置において、上記酸化チタン複合材料は、酸化チタンが有する水酸基と、高分子基材が有し且つ当該水酸基と化学結合可能な官能基とが、化学結合してなるものであってもよい。
本発明にかかる超音波医療装置において、上記酸化チタン複合材料が、以下の(i)および(ii)のいずれか一方または両方を満たすものであってもよい:
(i)活性基を有する高分子基材と、アミノ基を有する酸化チタンとからなり、上記活性基とアミノ基とが化学結合してなる;
(ii)酸化チタンが有する水酸基と、高分子基材が有し且つ当該水酸基と化学結合可能な官能基とが、化学結合してなる。
本発明にかかる超音波医療装置において、上記医療機器は、酸化チタン材料で表面がフロック加工により被覆された医療機器であってもよい。
本発明にかかる超音波医療装置において、上記医療機器は、体内埋設型医療機器、体内外連結用医療機器、または体表面接触型医療機器であってもよい。
なお、超音波を酸化チタンに照射することによる殺菌に関する技術は、上述のごとく、専ら環境分野における水質改善や水中微生物除去などを行う技術として応用されており、医療機器の分野に応用することは開示も示唆もされていない。
本発明にかかる超音波医療装置は、酸化チタン材料(酸化チタンのみからなる材料、または高分子基材の表面に酸化チタンが被覆されてなる酸化チタン複合材料)で表面が被覆された医療機器と、当該医療機器に対して超音波を照射するための超音波照射手段とを組み合わせられてなる。そして医療機器表面に存在する酸化チタンに超音波を照射することによって酸化チタンを励起しOHラジカルを発生させる。その結果、医療機器の表面に殺菌作用や抗菌作用を生じさせることができる。それゆえ、体内留置型カテーテル、胃ろうカテーテル、気管切開用チューブなどの医療機器における細菌感染の問題を解決することができる(抗感染性効果)。
さらに驚くべきことに、本発明にかかる超音波医療装置によれば、超音波照射された医療機器の周囲組織から分泌されるサイトカイン(例えばTNFα)により誘導される血管新生が促進されるという、例え当業者であっても予想することができない顕著かつ有利な効果を享受できる。血管新生が促進されることによって、組織治癒効果や抗感染性効果を享受することができる。また本発明の技術は、再生医療においても奏効することが期待される。血管新生促進は、酸化チタンへの超音波照射によって発生したOHラジカルやスーパーオキシドラジカルが、医療機器の周囲細胞を刺激し、血管新生促進因子であるサイトカインTNFαなどが産生されることによって起こると発明者らは考える。なお、分泌される血管新生促進因子はVEGF、 TVPF、PD−ECGF、 ESAF、Angiotropin、Angiogenin、FGF、IL−8、IGF−1、TGF−α、TGF−β、PDGF、HGF、GCSF、Proliferin、Substance P、Prostaglandinなど、公知の血管新生促進因子であってもよい。
また本発明にかかる超音波医療装置によれば、超音波照射された医療機器の表面において血栓およびバイオフィルムの分解が促進されるという、例え当業者であっても予想することができない顕著かつ有利な効果を享受できる。血栓およびバイオフィルム分解によって、抗感染性を高めることができる。バイオフィルムは、カテーテル感染を引き起こす原因の一つである。遠隔部位に感染巣がある場合、血流に乗って細菌が運ばれ、血管内に留置されているカテーテル表面に定着し、バイオフィルムを形成する(「高野八百子、カテーテル感染、日医雑誌、第127巻、第3号、第381-384頁(2002)」を参照のこと)。またカテーテル表面に付着した血栓は細菌定着の足場となり易く、バイオフィルム形成の原因になる。血管内に留置され、血液に直接曝されているカテーテル部位の血栓およびバイオフィルムの分解によって、細菌が繁殖する足場が除去されるため、結果的に抗感染性を高めることができる。また本発明の技術をステントなどに応用することによって、血管内の閉塞を防止することができる。なお血栓およびバイオフィルムの分解は、OHラジカルが血栓成分であるフィブリンなど血栓形成タンパク質の分解し、およびバイオフィルムを形成する細菌や細菌が分泌する細胞外多糖の分解を促進することによって起こると発明者らは考える。
本発明の実施の一形態について説明すれば、以下のとおりである。なお、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本明細書中に記載された非特許文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。また本明細書中の「〜」は「以上、以下」を意味し、例えば明細書中で「★〜☆」と記載されていれば「★以上、☆以下」を示す。
本発明の超音波医療装置は、(1)酸化チタン材料で表面が被覆された医療機器(以下「酸化チタンコート医療機器」という)と、(2)当該医療機器に対して超音波を照射するための超音波照射手段とを備える。
<1.酸化チタンコート医療機器>
本発明の超音波医療装置を構成する「酸化チタンコート医療機器」は、酸化チタン材料で表面が被覆された医療機器である。
(1−1.酸化チタン材料)
ここで「酸化チタン材料」とは、酸化チタンのみからなる材料(すなわち酸化チタン)、または高分子基材の表面に酸化チタンが被覆されてなる酸化チタン複合材料を意味する。ここで上記酸化チタンとしては、特に限定されるものではなく、岩波 理化学辞典 第4版(岩波書店)に記載されている酸化チタンが利用可能である。例えば、化学式 TiOで表される二酸化チタン等が本発明において利用可能である。なお、上記二酸化チタンTiOであれば、その表面に水酸基を有している。具体的に説明すると、上記TiOの場合、酸化チタンの表面を最も多く占めている結晶面、すなわち、アナターゼ型の(001)面とルチル型の(110)面とには、2種類の水酸基が存在している。その1つは、Ti4+と結合しているターミナルOH基であり、もう1つは、2個のTi4+と結合しているブリッジOH基である(清野学著、酸化チタン 物性と応用、技法堂出版、2000を参照のこと)。
また本発明において使用する酸化チタンの形状は特に限定されるものではないが、医療機器または高分子基材の表面へ被覆させるために、粒子状であることがより好ましい。粒子状である場合、酸化チタン粒子の形状および粒子径としては、上記酸化チタンを医療機器または高分子基材の表面へ被覆させることができる程度の粒子の形状および粒子径であればよい。具体的には、上記粒子径の下限値としては、0.001μm以上がより好ましく、0.01μm以上がさらに好ましい。一方、上記粒子径の上限値としては、1000μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましい。
また酸化チタンのみからなる材料(すなわち酸化チタン)を医療機器の表面に被覆させる方法、または高分子基材の表面に酸化チタンが被覆されて酸化チタン複合材料を得る方法、さらに酸化チタン複合材料を医療機器の表面に被覆させる方法としては特に限定されるものではないが、例えば、ディップ法、スピンコート法、スプレー法、スクリーン印刷法等、酸化チタンまたは酸化チタン複合材料を、医療機器または高分子基材の表面に物理的に吸着させる方法が適用され得る。酸化チタンまたは酸化チタン複合材料を、医療機器または高分子基材の表面に物理的に吸着させる際に接着剤等を介して吸着させてもよい。なお上記方法は、例えば(1)「橋本和仁、藤嶋昭監修、図解 光触媒のすべて、工業調査会、p.176-203(2003)」、(2)「藤嶋昭、橋本和仁、渡部俊也著、光触媒のしくみ、日本実業出版社、p.142-143(2001)」、(3)「野坂芳雄、野坂篤子、入門光触媒、東京図書、p.145-172(2004)」などが参照される。
また酸化チタンを、高分子基材の表面に強固かつ安定的に吸着させることができるという理由から、酸化チタンを高分子基材に表面に化学結合により被覆させてもよい。上記のように化学結合を利用して、酸化チタンを高分子基材に表面に被覆させる態様としては、例えば活性基を有する高分子基材と、当該活性基と反応可能な反応性官能基(例えばアミノ基)を有する酸化チタンとからなり、上記活性基と反応性官能基とを化学結合させてなる態様(態様(i))が挙げられる。また上記したように二酸化チタン(TiO)の表面に有する水酸基と、高分子基材が有し且つ当該水酸基と化学結合可能な官能基とが、化学結合してなる態様(態様(ii))であってもよい。本発明の一実施形態においては、上記態様(i)および(ii)のいずれか一方または両方の態様により酸化チタンが高分子基材の表面に化学結合を介して被覆されていればよい。
上記のように酸化チタンを高分子基材の表面に化学結合を介して被覆させる方法は、例えば国際公開2005/019317号パンフレット(国際公開日:2005年3月3日)や、「M. Okada, S. Yasuda, T. Kimura, M. Iwasaki, S. Ito, A. Kishida, T. Furuzono, J. Biomed. Mater. Res., 76A : 95-101, 2006.」に記載されている方法が参照される。より具体的には、下記のとおりである。
本発明に用いられる高分子基材としては、医療用高分子材料がより好ましく、有機高分子がさらに好ましい。上記高分子基材としては、具体的には、例えば、シリコーンポリマー(シリコーンゴムであっても良い)、ポリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスルフォン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、ポリアミン、ポリウレア、ポリイミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル等の合成高分子;セルロース、アミロース、アミロペクチン、キチン、キトサン等の多糖類、コラーゲン等のポリペプチド、ヒアルロン酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸等のムコ多糖類等、シルクフィブロイン等の天然高分子等が挙げられる。上記例示の高分子基材のうち、長期安定性、強度および柔軟性等の特性が優れている点で、シリコーンポリマー、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、または、シルクフィブロインが好適に使用される。また、上記高分子基材の形状としては、例えば、シート状、繊維状、チューブ状または、多孔体でもよく、用途に応じて適宜選択すればよい。
次に、酸化チタンを高分子基材の表面に化学結合を介して被覆させる方法(特に上記態様(i)を形成する方法)を説明する。この方法は、酸化チタンが、高分子基材に化学結合してなる酸化チタン複合材料の製造方法であって、上記高分子基材に活性基を導入する活性基導入工程と、酸化チタンに該活性基と反応可能な反応性官能基を導入する反応性官能基導入工程と、上記活性基と反応性官能基とを反応させる反応工程とを含む方法である。
より具体的には、例えば、活性基を有する高分子基材として表面にカルボキシル基を有するビニル系重合性単量体をグラフト重合させたシリコーンゴムと、表面に反応性官能基を導入した酸化チタンの粒子としてアミノ基を導入した酸化チタンとを用い、両者を反応させることにより、酸化チタンを高分子基材の表面に化学結合を介して被覆させる例について説明する。この方法では、活性基と反応性官能基とを反応させることにより、上記酸化チタンと高分子基材とを結合する化学結合が形成されることとなる。
上記酸化チタンと高分子基材とを結合する化学結合としては、酸化チタン−高分子基材間の結合強度が十分に得られるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、酸化チタン−高分子基材間の化学結合がアミド基である場合について具体的に説明する。アミド結合は、アミノ基と、カルボキシル基、アジドカルボニル基、クロロカルボニル基、N−ヒドロキシスクシンイミドカルボン酸エステルまたは酸無水物との反応;カルボキシル基と、N−アセチルアミノ基またはN−トリメチルシリルアミノ基との反応;イソシアナート基とカルボキシル基との反応;等により得られる。適切な反応条件は、それぞれの組み合わせによって異なり、反応が進むのであれば、反応条件は特に限定されるものではない。
例えば、アミノ基とカルボキシル基との組み合わせの場合、まず、溶媒中に酸化チタンを加え、攪拌して、この酸化チタンを分散させた後、この中に、高分子基材を浸漬する。そして、上記高分子基材を溶媒から引き上げた後に、洗浄して、特定の反応条件にて高分子基材が有する活性基と酸化チタンが有する反応性官能基とを反応(縮合反応)させる。このとき、酸化チタンの使用量の下限値は、活性基を有する高分子基材1重量部に対して、0.001重量部以上がより好ましく、0.01重量部以上がさらに好ましい。一方、酸化チタンの使用量の上限値は、活性基を有する高分子基材1重量部に対して、100重量部以下がより好ましく、50重量部以下がさらに好ましい。また、酸化チタンを分散させる溶媒としては、具体的には、例えば、水;トルエン、ヘキサン等の炭化水素系溶媒;アルコール類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;等が挙げられる。上記溶媒の使用量の下限値としては、上記高分子基材1重量部に対して、0.1重量部以上がより好ましく、1.0重量部以上がさらに好ましい。一方、上記溶媒の使用量の上限値としては、上記高分子基材1重量部に対して、1000重量部以下がより好ましく、500重量部以下がさらに好ましい。
そして、高分子基材を溶媒から引き上げた後、高分子基材が有する活性基と酸化チタンが有する反応性官能基と反応させる反応温度の下限値としては、120℃以上がより好ましく、140℃以上がさらに好ましく、160℃以上が特に好ましい。一方、上記反応温度の上限値としは、200℃以下がより好ましく、180℃以下がさらに好ましい。
また、上記縮合反応は減圧下で行うことがより好ましい。上記減圧度の下限値としては、0.01mmHg(1.33Pa)以上がより好ましく、0.1mmHg(13.3Pa)以上がさらに好ましい。一方、上記減圧度の上限値としては、10mmHg(1.33kPa)以下がより好ましく、5.0mmHg(0.665kPa)以下がさらに好ましい。また、アミノ基とカルボキシル基とでアミド結合を形成する場合には、縮合剤、例えば、カルボジイミド等を用いることで低温にて合成することができる。具体的には、例えば、4℃〜室温(25℃)にて、1〜6時間反応させることで上記アミド結合が形成される。
次に高分子基材に活性基を導入する工程(活性基導入工程)について説明する。高分子基材に活性基を導入する方法としては、例えば、高分子基材の表面に、例えば、酸・アルカリ処理、コロナ放電および/またはプラズマ照射を施した後、表面グラフト重合法等を行うことにより導入する等の方法が挙げられる。なお、上記活性基は、高分子基材の表面の高分子が元来有する活性基であってもよい。
ここで、表面グラフト重合法を用い、高分子基材としてポリジメチルシクロヘキサン系シリコーンゴムを用いる場合における、活性基の導入方法の例について説明する。高分子基材であるポリジメチルシロキサン系シリコーンゴムに、グラフト重合により、活性基を導入する場合、まず、高分子基材の表面をコロナ処理またはプラズマ照射により処理した後、この処理された高分子基材と上記活性基を有する重合性単量体とを溶媒に投入し、不活性ガス雰囲気下、かつ、減圧下で重合する。
上記溶媒としては、例えば、水;トルエン、ヘキサン等の炭化水素系溶媒;アルコール類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;等が挙げられる。上記溶媒の使用量の下限値としては、上記処理された高分子基材1重量部に対して、0.1重量部以上がより好ましく、1.0重量部以上がさらに好ましい。一方、上記溶媒の使用量の上限値としては、上記処理された高分子基材1重量部に対して、1000重量部以下がより好ましく、500重量部以下がさらに好ましい。
また、上記グラフト重合に用いる重合性単量体としては、酸化チタン粒子の表面の反応性官能基と反応して化学結合を形成する活性基を末端(または側鎖)に有していれば特に限定されるものではない。上記重合性単量体としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸、アコニット酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、フマル酸、マレイン酸、ビニルスルホン酸、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、および、これらの各種金属塩またはハロゲン化物;(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸モノグリセロール、N−〔トリス(ヒドロキシメチル)メチル〕アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−(メタ)アクリロイルピロリドン、アクリロイルモルホリン、マレイン酸イミド、無水マレイン酸;アミノスチレン、カルボキシスチレン等のスチレン系単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、ビニルベンジルアミン等が挙げられる。
上記重合性単量体の添加量の下限値としては、酸化チタン粒子1重量部に対して、0.001重量部以上がより好ましく、0.01重量部以上がさらに好ましい。一方、上記重合性単量体の添加量の上限値としては、酸化チタン粒子1重量部に対して、100重量部以下がより好ましく、50重量部以下がさらに好ましい。
また、上記高分子基材と重合性単量体とを重合させる重合温度の下限値としては、40℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましい。一方、重合温度の上限値としては、100℃以下がより好ましく、80℃以下がさらに好ましい。
また、高分子基材に活性基として、例えば、ビニル基を導入するには、高分子基材と、活性基含有化合物とを、触媒、重合禁止剤および溶媒の混合溶液中で反応させればよい。上記活性基含有化合物としては、具体的には、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。上記溶媒としては、極性溶媒が好ましく、例えば、脱水ジメチルスルフォキシド、脱水ジメチルフォルムアミド等が好適に使用される。重合禁止剤は、高分子基材に導入された活性基同士、および、活性基含有化合物同士が重合しないために添加する。上記重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン等が挙げられる。触媒としては、例えば、ジブチルチン(IV)ジラウレート等が挙げられる。
上記活性基含有化合物の添加量の下限値としては、高分子基材に対して、10重量%以上がより好ましく、50重量%以上がさらに好ましく、100重量%以上が特に好ましい。一方、上記添加量の上限値としては、高分子基材に対して、500重量%以下がより好ましく、400重量%以下がさらに好ましく、300重量%以下が特に好ましい。
そして、反応温度の下限値としては、30℃以上がより好ましく、40℃以上がさらに好ましく、45℃以上が特に好ましい。一方、反応温度の上限値としては、100℃以下がより好ましく、80℃以下がさらに好ましく、60℃以下が特に好ましい。なお、反応時間は、反応温度等により適宜設定すればよい。以上のような条件で反応させることにより、高分子基材に活性基を簡単に導入することができる。
高分子基材に対する活性基の導入率(重量%)の下限値としては、0.1重量%以上がより好ましく、1.0重量%以上がさらに好ましく、2.0重量%以上が特に好ましい。一方、導入率の上限値としては、30重量%以下がより好ましく、25重量%以下がさらに好ましく、20重量%以下が特に好ましい。上記導入率が30重量%よりも多いと、高分子基材に導入された活性基の数が多くなり、この活性基同士が反応する場合がある。
次に、酸化チタンに反応性官能基を導入する工程(反応性官能基導入工程)について説明する。酸化チタンに反応性官能基を導入する方法としては、具体的には、例えば、反応性官能基を有するシランカップリング剤と酸化チタンとを反応させればよい。
ここで、上記シランカップリング剤について説明する。シランカップリング剤は、以下の化学式に示すような化学構造をしている。
Z−Si−(OR)
上記Zは、各種合成樹脂等の有機材料(高分子基材または高分子基材が有する活性基)と化学結合することができる反応性官能基であればよく、具体的には、例えば、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、(メタ)アクリロキシ基、メルカプト基等が挙げられる。すなわち、本実施の形態で使用されるシランカップリング剤は、少なくとも反応性官能基を有している。また、上記Si−(OR)は、酸化チタンと化学結合することができる官能基であればよく、具体的には、ORとしては、例えば、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。また、上記化学式中の反応性官能基Zと、Siとは、高分子鎖で結合されていてもよく、低分子鎖で結合されていてもよく、直接結合されていてもよい。また、上記3つのORは、同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。すなわち、上記3つのORのうちの少なくとも1つが酸化チタンと化学結合することができる官能基であればよい。
すなわち、上記シランカップリング剤としては、具体的には、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル系シランカップリング剤;β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ系シランカップリング剤;p−スチリルトリメトキシシラン等のスチリル系シランカップリング剤;γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリロキシ系シランカップリング剤;γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリロキシ系シランカップリング剤;N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−トリエトキシ−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、特殊アミノシラン等のアミノ系シランカップリング剤;γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド系シランカップリング剤;γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等のクロロプロピル系シランカップリング剤;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のメルカプト系シランカップリング剤;ビス(トリエトキシプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド系シランカップリング剤;γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート系シランカップリング剤等が挙げられる。上記例示のシランカップリング剤のうち、重合性モノマーであるという点で、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランがより好ましい。上記シランカップリング剤は、高分子基材の種類、および、高分子基材が有する活性基の種類等によって適宜選択すればよい。
上述したように、シランカップリング剤は、一方の端に反応性官能基を有しており、他方の端に官能基を有しているので好適に使用することができる。なお、上記反応性官能基とは、活性基と反応することができるものである。また、官能基とは、酸化チタンと反応することができるものである。また、以下の説明では、シランカップリング剤を用いて酸化チタンに活性基を導入する例について説明する。
上記反応性官能基を有するシランカップリング剤と酸化チタンとを反応させる際の反応条件としては、反応の種類、用いるシランカップリング剤の種類等によって異なり、特に限定されるものではない。また、上記反応の種類としては、例えば、乾式法や湿式法等が好適である。
乾式法の場合には、高速攪拌機中に酸化チタンの粒子を投入して、そこに、一端に官能基、他端に反応性官能基を有するシランカップリング剤を滴下、または、スプレーにより添加し均一に攪拌した後に乾燥させるようになっている。このとき、シランカップリング剤の添加量としては、酸化チタン粒子1重量部に対して0.0001〜10重量部の範囲内がより好ましい。
一方、湿式法の場合には、有機溶媒中に、酸化チタンの粒子とシランカップリング剤とを添加して、攪拌しながら、室温〜150℃の温度範囲内で、10分〜10日間反応させた後、溶媒および未反応のシランカップリング剤を除去して、乾燥させるようになっている。
このとき、用いる有機溶媒としては、例えば、トルエン、ヘキサン等の炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;等が挙げられる。上記有機溶媒の使用量の下限値としては、酸化チタン粒子(酸化チタンの粒子)1重量部に対して、0.1重量部以上がより好ましく、0.5重量部以上がさらに好ましい。一方、上記有機溶媒の使用量の上限値としては、酸化チタン粒子1重量部に対して、1000重量部以下がより好ましく、50重量部以下がさらに好ましい。
シランカップリング剤の添加量の下限値としては、酸化チタン粒子1重量部に対して、0.0001重量部以上がより好ましく、0.001重量部以上がさらに好ましい。一方、シランカップリング剤の添加量の上限値としては、酸化チタン粒子1重量部に対して、10重量部以下がより好ましく、5重量部以下がさらに好ましい。なお、この理由については、上記乾式法の場合も同様である。
また、反応温度の下限値としては、室温(25℃)以上がより好ましい。一方、反応温度の上限値としては、150℃以下がより好ましく、100℃以下がさらに好ましい。なお反応性官能基導入工程によって、反応性官能基が導入された酸化チタンの光触媒活性を長時間持続させるためには、上記反応温度は、80℃程度が好ましい。
次に、上記活性基導入工程により高分子基材に導入された活性基と、反応性官能基導入工程により酸化チタンに導入された反応性官能基とを反応させる。具体的には、上記酸化チタンを分散させた分散液に、上記高分子基材を浸漬することにより、高分子基材の表面に酸化チタンを吸着させる。そして、上記反応性官能基と上記活性基とを反応させる。なお、以下の説明では、高分子基材にシリコーンゴムを用い、上記高分子基材と酸化チタンとをアミド結合により結合させる例について説明する。
上記酸化チタンを分散させる分散媒としては、具体的には、例えば、水;トルエン、ヘキサン等の炭化水素系溶媒;アルコール類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;等の有機溶媒が挙げられる。上記例示の溶媒のうち、酸化チタンを良好に分散させる点で、水、アルコール類が好適に使用される。また、例えば、ヘキサンやトルエン等の炭化水素系溶媒を用いる場合、酸化チタンを良好に分散させるためには、例えば、スターラー等の攪拌装置で強力に攪拌する、超音波装置を用いて分散させる、上記攪拌装置および超音波装置を併用する、等の方法を用いればよい。
上記分散液の調製において、酸化チタンの添加量の下限値としては、上記分散媒に対して、0.1重量%以上がより好ましく、0.2重量%以上がさらに好ましく、0.5重量%以上が特に好ましい。一方、上記酸化チタンの添加量の上限値としては、上記分散媒に対して、5.0重量%以下がより好ましく、4.0重量%以下がさらに好ましく、3.0重量%以下が特に好ましい。
上記高分子基材の表面に吸着した酸化チタンの反応性官能基と上記活性基とを反応させる反応温度の下限値としては、25℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましく、80℃以上が特に好ましい。一方、上記反応温度の上限値としては、200℃以下がより好ましく、175℃以下がさらに好ましく、150℃以下が特に好ましい。
なお、上記分散液に高分子基材を浸漬した後、反応させる前に、上記分散媒と同じ溶媒で、高分子基材を洗浄することがより好ましい。上記高分子基材を浸漬した後の高分子基材の表面には、酸化チタンが積層されており、洗浄しないで反応させると、酸化チタンが積層された状態のまま、複合化するため、高分子基材の物性を損なわせたり、強度が不十分になったりする場合がある。
また、必要に応じて、真空条件下で反応させてもよい。真空条件下で酸化チタンの反応性官能基と高分子基材の活性基とを反応させることにより、より早く酸化チタン複合材料を製造することができる。なお、真空条件下で反応させる場合、反応を行う圧力としては、0.01mmHg(1.33Pa)〜10mmHg(1.33kPa)の範囲内が好ましい。
なお、高分子基材の種類、反応性官能基および/または活性基の種類によって、上記反応工程の反応条件や溶媒の種類等は適宜変更すればよい。
次に、酸化チタンを高分子基材の表面に化学結合を介して被覆させる方法(特に上記態様(ii)を形成する方法)を説明する。この方法は、酸化チタンが、酸化チタンが有する水酸基と、高分子基材が有し且つ当該水酸基と化学結合可能な官能基とが化学結合してなる酸化チタン複合材料の製造方法であって、上記高分子基材に、酸化チタンが有する水酸基と化学結合可能な官能基を導入する導入工程を行い、上記高分子基材の官能基と上記酸化チタンが有する水酸基とを反応させる官能基反応工程とを含む方法である。
上記官能基としては、具体的には、例えば、アルコキシシリル基およびイソシアネート基等からなる群より選ばれる少なくとも1種類の官能基が挙げられる。上記高分子基材表面の官能基は、基材表面の高分子が有する官能基であってもよく、また、基材表面を、例えば、酸・アルカリ処理、コロナ放電、プラズマ照射、表面グラフト重合等の公知の手段によって、上記高分子基材を改質することにより導入されたものであってもよい。
上記導入工程では、高分子基材に、酸化チタンが有する水酸基と化学結合可能な官能基を導入する。なお、以下の説明では、高分子基材に、酸化チタンが有する水酸基と化学結合可能な官能基としてアルコキシシリル基を導入する場合について説明する。
上記高分子基材に、官能基を導入する方法、すなわち、導入工程としては、公知の方法により行えばよく、特に限定されるものではないが、例えば、分子末端に、官能基を有するシランカップリング剤等を用いることにより、高分子基材に上記官能基を導入することができる。
ここで、高分子基材にアルコキシシリル基を導入する方法の1つとして、シランカップッリング剤を用いて導入する方法について説明する。なお、高分子基材にアルコキシシリル基を導入する方法は、この方法に限定されるものではなく、種々の方法を採用することができる。
上記シランカップリング剤を用いて、高分子基材にアルコキシシリル基を導入する方法としては、具体的には、例えば、コロナ処理を施した高分子基材に、末端に官能基を有するシランカップリング剤を直接導入してもよい。また、界面活性剤と過酸化系開始剤とを用いて高分子基材からプロトン(水素原子)を引き抜いてラジカルを発生させることにより、上記官能基を有する非水溶性モノマーを高分子基材に、直接、グラフト重合させることができる。この方法を用いることにより、高分子基材に酸化チタンと化学結合可能な官能基を、直接、導入することができる。
また、高分子基材にアルコキシシリル基を導入する方法としては、例えば、高分子基材に予め、上記シランカップリング剤が有する反応性官能基と反応することができる活性基を導入しておき、この活性基とシランカップリング剤の反応性官能基とを反応させることにより、高分子基材にアルコキシシリル基を導入してもよい。なお、上記活性基とは、具体的には、例えば、ビニル基、アミノ基等が挙げられるが、特に限定されるものではなく、上記シランカップリング剤の反応性官能基(上記化学式のZ)の種類に応じて、適宜設定すればよい。従って、本実施の形態で使用するシランカップリング剤は、少なくとも官能基を有していればよく、官能基と反応性官能基とを有していることがより好ましい。なお、上記官能基とは、酸化チタン自身(酸化チタンが有する水酸基)と化学結合可能なものであり、反応性官能基とは、上記活性基または高分子基材自身と化学結合可能なものである。
ここで、高分子基材としてシルクフィブロインを用い、このシルクフィブロインに、活性基であるビニル基を導入しておき、このビニル基とシランカップリング剤の反応性官能基とを反応させることにより、高分子基材にアルコキシシリル基(Si−OR)を導入する方法の具体的条件について説明する。
上記高分子基材に活性基を導入する工程については、既述の活性基導入工程と同じであり、詳細な説明は省略する。次に、高分子基材に導入された活性基と、それぞれの末端に反応性官能基と官能基とを有するシランカップリング剤とを重合することにより、高分子基材に官能基であるアルコキシシリル基を導入する。
上記シランカップリング剤としては、官能基を有し、かつ、末端の反応性官能基が、高分子基材に導入された活性基と重合することができるものであればよく、特に限定されるものではないが、活性基としてビニル基を導入した場合には、上記メタクリロキシ系シランカップリング剤である例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が好適に使用することができる。そして、上記シランカップリング剤と活性基が導入された高分子基材とを、重合開始剤、溶媒の存在下で重合させることにより、高分子基材に官能基であるアルコキシシリル基を導入することができる。
上記溶媒としては、トルエン、ヘキサン等の炭化水素系溶媒等の無極性の有機溶媒が好適に使用される。また、重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル等を用いればよい。
上記シランカップリング剤の使用量(添加量)の下限値としては、上記活性基が導入された高分子基材に対して、10重量%以上がより好ましく、50重量%以上がさらに好ましく、100重量%以上が特に好ましい。一方、上記使用量の上限値としては、500重量%以下がより好ましく、400重量%以下がさらに好ましく、300重量%以下が特に好ましい。
また、重合は、窒素雰囲気下で行うことがより好ましい。重合温度の下限値としては、40℃以上がより好ましく、45℃以上がさらに好ましく、50℃以上が特に好ましい。一方、重合温度の上限値としては、80℃以下がより好ましく、75℃以下がさらに好ましく、70℃以下が特に好ましい。なお、重合時間としては、所望の導入率(高分子基材に官能基が導入される割合)となるように適宜設定すればよい。
また、高分子基材に対する上記官能基の導入率(重量%)の下限値としては、0.1重量%以上がより好ましく、1重量%以上がさらに好ましい。ここで、導入率とは、高分子基材の単位重量あたりに導入されたシランカップリング剤の重量の割合である。上記導入率が0.1重量%以上であれば、上記高分子基材に、生体適合性を発現することができる十分な量の、酸化チタンを結合させることができる。一方、上記導入率の上限値としては、特に限定されるものではないが、上記導入率が100重量%よりも高いと、高分子基材に結合する酸化チタンの量が多くなりすぎ、経済的でない場合がある。
なお、高分子基材に、アルコキシシリル基を導入する方法としては、上記説明の方法に限定されるものではなく、種々の方法を用いることができる。また、上記反応条件については、高分子基材、活性基含有化合物およびシランカップリング剤の種類等によって、適宜設定されるものであり、特に限定されるものではない。このようにして、高分子基材の表面に官能基を導入することができる。
なお、上記官能基がイソシアネート基である場合であり、かつ、イソシアネート基を末端に有するモノマーを高分子基材と重合することにより、高分子基材にイソシアネート基を導入する場合には、イソシアネート基が反応溶媒中の活性水素と反応して失活する恐れがあるため、脱水ジメチルスルフォキシド、脱水ジメチルフォルムアミド等の脱水溶媒中で反応させることが好ましい。
また、活性水素を有する、水またはアルコール中で、末端にイソシアネート基有するモノマーを高分子基材と反応(重合)させる場合には、上記イソシアネート基が上記活性水素と反応するため、イソシアネート基を保護する必要がある。具体的には、例えば、上記イソシアネート基を、フェノール、イミダゾール、オキシム、N−ヒドロキシイミド、アルコール、ラクタム、活性メチレン複合体等のブロック剤を用いて、保護することにより重合を行うことができる。イソシアネート基を保護している上記ブロック剤は、加熱することにより脱離させることができる。従って、イソシアネート基をブロック剤で保護しておき、他端に存在しているモノマーと高分子基材と重合させた後に、加熱することにより、高分子基材にイソシアネート基を導入することができる。つまり、表面にイソシアネート基を有している高分子基材を得ることができる。
上記ブロック剤として、例えば、フェノールを用いた場合、110〜120℃の範囲内で加熱することにより、イソシアネート基を保護しているブロック剤を脱離させることができる。また、ブロック剤として、例えば、イミダゾールを用いた場合には110〜130℃の範囲内、オキシムを用いた場合には130〜150℃の範囲内で加熱することにより、上記ブロック剤を脱離させることができる。上記ブロック剤としては、具体的には、例えば、メチルサリチレート、メチル−p−ヒドロキシベンゾエート等のフェノール含有化合物;イミダゾール;メチルエチルケトキシム、アセトンオキシム等のオキシム含有化合物等が挙げられる。また、高分子基材の種類によっては、例えば、N−ヒドロキシフタルイミド、N−ヒドロキシスクシンイミド等のN−ヒドロキシイミド含有化合物;メトキシプロパノール、エチルヘキサノール、ペントール、エチルラクテート等のアルコール含有化合物;カプロラクタム、ピロリジノン等のラクタム含有化合物;エチルアセトアセテート等の活性メチレン化合物等を使用してもよい。
なお、上記官能基としてイソシアネートを用いた場合における、その他の反応条件(例えば、高分子基材に対する添加量)等については、上記官能基がアルコキシシリル基の場合と同様であり、詳細な説明は省略する。
上記官能基反応工程では、上記高分子基材に導入された官能基(例えば、イソシアネート基、アルコキシシリル基)と上記酸化チタンが有する水酸基とを反応させる。この官能基反応工程は、既述の反応工程と同様の条件で行えばよく、詳細な説明は省略する。
なお、本発明において利用される酸化チタン複合材料には、上記で説示した高分子基材の表面に酸化チタンが被覆されてなる酸化チタン複合材料の上に、さらに他の化合物が積層されてなるものも含まれる。例えば、高分子基材の表面に酸化チタンが被覆されてなる酸化チタン複合材料の上に、さらにハイドロキシアパタイトをはじめとするリン酸カルシウム系の化合物が積層されていてもよい。リン酸カルシウム系の化合物は、生体安定性に優れているため、酸化チタン複合材料に積層させることにより、生体適合性がさらに向上する。
上記高分子基材の表面に酸化チタンが被覆されてなる酸化チタン複合材料の上に、さらにリン酸カルシウム系の化合物を積層させる方法としては、具体的には、例えば、(1)重合性単量体とリン酸カルシウム系の化合物からなる混合物の粒子を、上記酸化チタン複合材料、すなわち、高分子基材の表面に酸化チタンが被覆されてなる酸化チタン複合材料の酸化チタンが存在する面の上に塗布して、その後、熱、光、または放射線等により重合性単量体を重合させて固化させる方法、(2)上記高分子基材の表面に酸化チタンが被覆されてなる酸化チタン複合材料をカルシウムイオンとリン酸イオンとを含む溶液に浸漬して、リン酸カルシウム系の化合物を析出させる方法、(3)上記高分子基材の表面に酸化チタンが被覆されてなる酸化チタン複合材料を、カルシウムイオンを含む溶液とリン酸イオンを含む溶液とに交互に浸漬して、リン酸カルシウム系の化合物を析出させる方法等が挙げられる。また、上記(1)の方法の場合には、適当な形状の型を用いることで、リン酸カルシウム系の化合物を所望の形状に積層させることができる。
(1−2.酸化チタン材料が被覆される医療機器)
上記酸化チタン材料がその表面に被覆される医療機器としては、例えば体内埋設型医療機器、体内外連結用医療機器、または体表面接触型医療機器などが挙げられる。体内埋設型医療機器は体内に埋設される医療機器であり、例えば、人工心臓、ペースメーカー、埋め込み型除細動器、人工弁、人工弁輪、人工血管、ステント、人工関節、人工骨頭、内固定材、ミニ・マイクロプレートシステム、創外固定器、脊椎固定システム、人工靱帯、人工骨、人工鼻、人工喉頭、人工肛門、人工膀胱、人工内耳などが挙げられる。また体内外連結用医療機器は、体内と体外を連結するための医療機器であり、例えば、カテーテル、チューブ、カテーテルアクセスポート、胃ろう、シャントバルブ、脳外用ドレナージ、ブラッドアクセスなどが挙げられる。また体表面接触型医療機器とは、体表面と接触させて使用する医療機器であり、例えば創傷被覆材などが挙げられる。上記の他、輸液フィルターなどの医療機器も本発明において適用され得る。
体内埋設型医療機器、体内外連結用医療機器の表面に酸化チタン材料を被覆し、これに超音波を照射して殺菌作用を発動させることによって、体内に医療機器を埋設する際の細菌感染を防止することができる。また医療機器埋設後に、医療機器表面付近に細菌感染による炎症が生じた場合であっても、体外から超音波を照射することによって殺菌作用を発動させることができるため、当該医療機器を取り出すことなく殺菌することができる。また、超音波照射された医療機器の表面において血管新生が促進されるという効果が得られるため、医療機器表面における治癒促進効果も得られる。超音波照射された医療機器の表面において血栓およびバイオフィルムの分解が促進されるという効果も得られる。
また体表面接触型医療機器についても、上記と同様に殺菌効果と治癒促進効果が得られる。また輸液フィルターなどの体と直接接触しない医療機器についても、超音波照射することによって除菌、抗菌、殺菌を行うことができる。特に点滴中であっても輸液フィルターを除菌することができる。また構造上の理由で除菌処理のしにくい医療機器であっても分解することなく、殺菌することができる。
医療機器の表面を酸化チタン材料で被覆する方法については既述のとおりであるが、例えば医療機器をシリコーン等の高分子でコートした後に、酸化チタンを高分子の表面に物理的に吸着または化学的に結合させてもよい。さらに上記医療機器は、酸化チタン材料で表面がフロック加工により被覆された医療機器であることが好ましい。酸化チタン材料で表面がフロック加工により被覆された医療機器においては、酸化チタン材料(特に粒子状、短繊維状)が医療機器の表面上で起毛した形で被覆されている。それゆえ、超音波照射によって殺菌作用、血管新生促進作用が発動する酸化チタン材料が、より高密度かつ高い表面積をもって医療機器上に被覆されるため、酸化チタン材料が平面状に被覆されている場合に比してさらに高い有利な効果(殺菌効果、血管新生促進効果等)が得られる。
酸化チタン材料を医療機器の表面にフロック加工する方法としては、従来公知のフロック加工法が適宜利用され得る。例えば、「新高分子文庫17 フロック加工の実際、著者:飯沼憲政、出版社:株式会社高分子刊行会、発行日:昭和54年8月1日」、「特開平7−116557号公報(公開日:平成7年(1995)5月9日)」、「特表2000−505845号公報(公開日:2000年5月16日)」、「特開平6−141926号公報(公開日:平成6年(1994)5月24日)」、「特開2003−38596号公報(公開日:2003年2月12日)」などに記載された方法を応用することにより、酸化チタン材料を医療機器の表面にフロック加工すればよい。
特に国際公開2007/061100号パンフレット(国際公開日:2007年5月31日)に記載されている方法および装置によれば、酸化チタン材料を医療機器の表面に効率よくフロック加工することができるためにより好ましいといえる。国際公開2007/061100号パンフレットには、第1電極板と第2電極板との間へ、表面に接着剤が塗布された医療機器の基体を配置する工程、第2電極板上に酸化チタン材料からなる短繊維を載置する工程、医療機器の基体を回転させる工程、および第1電極板と第2電極板に電圧を印加する工程、を含み、当該第1電極板と医療機器の基体とが電気的に接続されていることを特徴とする方法が記載されている。上記方法によれば、クーロン力によって、上記第2電極板上の酸化チタン材料からなる短繊維が、第1電極板へ向かって飛翔する。この時、上記外2電極板と第1電極板の間に存在し、かつ表面に接着剤が塗布された医療機器の基体の表面に、上記酸化チタン材料からなる短繊維が接着する。また上記第1電極板と医療機器の基体とが電気的に接続されていることによって、医療機器の基体表面上の酸化チタン材料からなる短繊維に起電力が発生し、当該酸化チタン材料からなる短繊維が起毛する。このようにして、酸化チタン材料を医療機器の表面に効率よくフロック加工することができる。なお、上記方法において、上記酸化チタンからなる短繊維はその長軸方向の長さが1μm以上1cm未満(好ましくは5μm以上5mm未満、最も好ましくは50μm以上1mm未満)の範囲内であり、短軸方向の長さが1nm以上1mm未満(好ましくは10nm以上0.5mm未満、最も好ましくは100nm以上0.1mm未満)の範囲内の柱状または球状であることが好ましい。
なお、本発明の超音波医療装置における「酸化チタンコート医療機器」には、酸化チタン自体、または酸化チタン複合材料自体も含まれる。さらに本発明の超音波医療装置およびそれを構成する医療機器はヒトのみを対象とするものではなく、ヒト以外の哺乳動物(サル、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、マウス、ラット、ウサギ等)を対象とするものも含まれる。
図1に本発明の一実施形態にかかる超音波治療装置の構成を一例として示す。なお本発明はこれに限定されるものではない。図1において酸化チタンコート医療機器(10)は、カテーテル(12)と経皮デバイス(11)とから構成されている。そして本実施形態においては経皮デバイス(11)の表面が酸化チタン材料で被覆されている。図1に示されている経皮デバイス(11)は、生体内に挿入されるカテーテル(12)を当該カテーテル(12)の挿入位置で固定するための経皮端子などが意図される。そして、経皮デバイス(11)は皮膚(30)の下(すなわち体内)に埋設されている。この経皮デバイス(11)に超音波が照射されることによって殺菌作用や血管新生促進作用が発動する。
なお図1に示されている超音波医療装置(100)における酸化チタンコート医療機器(10)は、これを構成する経皮デバイス(11)のみの表面が酸化チタン材料で被覆されているものを示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、経皮デバイス(11)のみならずカテーテル(12)についても酸化チタンで被覆されていてもよい。すなわち本発明の超音波医療装置の酸化チタンコート医療機器は、その表面全体が酸化チタン材料で被覆されていてもよいが必ずしもその必要はなく、超音波照射によって殺菌作用や血管新生促進作用を発動させたい構成のみが酸化チタン材料で被覆されていてもよい。
<2.超音波照射手段>
本発明の超音波医療装置を構成する「超音波照射手段」は、上述の酸化チタンコート医療機器に対して超音波を照射するための手段である。当該超音波照射手段は、上述の酸化チタンコート医療機器に対して殺菌作用、血管新生促進作用、並びに血栓およびバイオフィルム分解作用などを発動させ得る超音波を発生させることができ、当該超音波を酸化チタンコート医療機器に対して照射することができるように構成されているものであれば、特に限定されるものではない。換言すれば、超音波照射手段は、酸化チタンコート医療機器に対して殺菌作用、血管新生促進作用、並びに血栓およびバイオフィルム分解作用などを発動させ得る出力の超音波を発生させることができるものであればよい。上記出力は、照射される酸化チタンコート医療機器の酸化チタン材料の種類、酸化チタン材料による被覆率、酸化チタンコート医療機器の設置の状態、設置場所によって種々異なるため、適宜最適な出力を検討のうえ、採用すればよい。特に限定されるものではないが、上記出力は焦点音響強度ISPTAが1W/cm2以下であることが好ましく、0.2W/cm2程度であることがさらに好ましい。
また超音波照射手段は、人体をはじめとする生体に対して超音波を照射するものであるため、生体安全基準内の出力の超音波を照射することができる手段であることが好ましい。ここで上記「生体安全基準」とは、生体に対して超音波が照射された場合に安全であると保証される程度の出力のことを意味する。この生体安全基準内の超音波出力は照射される生体によって異なるために限定されるものではない。なお、人体に対する超音波の生体安全基準は、たとえば社団法人 日本超音波医学会で定められており、連続波の場合、焦点音響強度ISPTAが1W/cm2である。上記音響焦点強度は、「超音波便覧」(超音波便覧編集委員会編、丸善株式会社、1999、pp.41-46.(ISBN 4-621-04633-0))に記載の方法(放射圧法あるいはハイドロホン法)によって測定することができる。なお、超音波照射手段は、出力が固定式であっても調整可能となっていてもよい。ただし後者の方が、照射される対象の安全基準に応じて出力を調整することができるためにより好ましいといえる。
また本発明者らの検討によれば、酸化チタンに照射する出力を高くすれば殺菌効果、抗菌効果が得られ易くなる傾向があり、出力を比較的低くすれば血管新生促進効果が得られ易くなる傾向がある。上記出力の閾値は、照射される酸化チタンコート医療機器の酸化チタン材料の種類、酸化チタン材料による被覆率、酸化チタンコート医療機器の設置の状態、設置場所によって種々異なるため、適宜最適な出力を検討のうえ、採用すればよい。特に限定されるものではないが、上記出力の閾値は例えば焦点音響強度ISPTAが0.4W/cm2である。
また上記超音波照射手段は、連続波、パルス波、バースト波、および定在波からなる群から選択される1種類以上の超音波を発生することができる手段であることが好ましい。連続波を照射することで、時間連続的に酸化チタンを励起することができるために、酸化チタンコート医療機器における殺菌作用、血管新生促進作用、並びに、血栓およびバイオフィルム分解作用などを発動させるのに必要な超音波照射時間を著しく短縮することができる。パルス波またはバースト波によれば、ある程度高い出力の超音波を間歇的に照射することができる(すなわち、Duty比を調節することにより、超音波を照射する時間と超音波の照射を休止する時間を1照射サイクル中に適度な割合で混在させ、繰り返し照射することができる)ために、連続波を用いれば生体表面の温度上昇が危惧される場合にあっても、超音波照射による生体表面の温度上昇を抑制しつつ、酸化チタンコート医療機器において殺菌作用、血管新生促進作用、並びに、血栓およびバイオフィルム分解作用などを発動させることができる。超音波照射手段によって酸化チタンコート医療機器近傍に定在波を発生させることで空間的に固定化された位置で腹と節が生じ、腹では全て同じ時間で超音波振幅が最大になると同時に完全な定在波においては入射超音波振幅の2倍の振幅を示すようになるため、照射位置の固定化と超音波出力強度の半減化という効果が得られる。
上記超音波照射手段は、単一送信において高調波または多周波を含む超音波を発生することができる手段であることが好ましい。単一送信において高調波または多周波を混在させて照射することで、酸化チタンコート医療機器の共振特性に基づき酸化チタンコート医療機器近傍での音響強度増強を促進することができ、その効果を利用して、酸化チタンコート医療機器における殺菌作用、血管新生促進作用、並びに、血栓およびバイオフィルム分解作用などを発動させることができる。
また上記「単一送信において多周波を含む超音波を発生させることができる手段」は、一つ以上の酸化チタン励起用周波数成分を持つ超音波信号S1を、生体内伝搬用の低周波超音波信号S2に加算(S1+S2)あるいは乗算(S1×S2)して振幅変調を行い、この結果として生成された多周波(S1とS2)を含む超音波信号の単一送信を可能にする。これにより、生体内の超音波減衰が大きく、S1単独では、深部に存在する酸化チタンコート医療機器に超音波を到達させることができない場合であっても、多周波(S1とS2)を含む超音波を照射すれば、低周波成分を持つが故に生体内超音波減衰が小さいS2成分が深部の酸化チタンコート医療機器まで到達するのに牽引されて、S1成分も該医療機器まで到達することができるようになり、その結果、該酸化チタンコート医療機器における殺菌作用、血管新生促進作用、並びに、血栓およびバイオフィルム分解作用などを発動することができる。
なお上記超音波照射手段は、上記連続波、パルス波、バースト波、および定在波からなる群から選択される1種類の超音波を発生し得る手段であればよいが、種々の超音波を切り替えて出力できる手段であることが好ましい。また単一送信において高調波または多周波を含む超音波を切り替えて発生し得る手段であってもよい。超音波照射する目的や、超音波照射される対象に応じて超音波の種類を適宜変更させることができることは、本発明の超音波医療装置を使用する上で好都合である。
本発明の超音波医療装置において、超音波照射手段は超音波を集束させて照射することができる手段となっていることが好ましい。照射すべき酸化チタンの局所領域に超音波を集束させることにより、照射すべき酸化チタンのみを励起し得ると同時に、局所的に超音波の出力を密集化することができるために、低電圧印加で生体安全性を確保しつつ、効率的にOHラジカル発生による殺菌作用、血管新生促進作用等の発動を可能とする。本発明は、上記のごとく超音波を集束させて照射することができるように構成されていれば、その具体的な構成については限定されるものではない。たとえば、図1に示すごとく、超音波プローブ(21)の振動素子(27)の表面が、焦点位置(31)で最も音響出力密度が高くなるように設計された曲率を有している構成が挙げられる。その曲率については、焦点距離に応じて適宜設定すればよい。また上記の他に、超音波プローブ(21)の振動素子(27)の表面が平面である場合、曲率を有する音響レンズを使用して屈折の効果により超音波を集束させてもよい。この曲率については、所望の焦点距離、音響レンズ材料の音速、及び音響レンズ表面に接する例えば皮膚やカプラの音速に応じて適宜設定すればよい。なお、本発明の超音波医療装置は、本発明の効果を奏するものであれば、必ずしも超音波を集束させて照射することができるように構成されていなくてもよい。
また本発明の超音波医療装置において、皮膚を経由して生体内に効率よく超音波は入射させることができるように超音波照射手段はカプラ(「音響整合カプラ」ともいう)を備えていることが好ましい。図1に示す超音波医療装置(100)においては、超音波プローブ(21)には、皮膚(30)を経由して生体内に効率よく超音波は入射させることができるように、カプラ(22)が設置されている。カプラの材質としては、例えばシリコーン等が好適に利用され得る。図1に示す超音波医療装置(100)においては、さらにカプラ(22)と振動素子(27)との隙間(28)は、カプラ(22)における皮膚(30)と接する面に超音波をロスなく伝達するために脱気水で満たされている。脱気水が用いられているのは、脱気水への超音波照射による気泡発生を防ぐためである。なお本発明において、カプラ内に充填される液体は脱気水に限定されるものではなく、例えばシリコーンやウレタンなど超音波プローブの振動素子と生体との間の超音波伝搬媒体として適切な材料で充実されたカプラを使用してもよい。
また本発明の超音波医療装置において、超音波照射手段を構成する振動子は、特に限定されるものではないが、電気音響変換特性が優れた圧電体からなることが好ましい。ここで「電気音響変換特性が優れた圧電体」とは特に限定されるものではないが、例えば電気機械結合係数が10%以上(より好ましくは30%以上、さらに好ましくは60%以上)の圧電体である。上記電気機械結合係数が10%以上の圧電体としては、例えば水晶(電気機械結合係数11%)、水溶性結晶(電気機械結合係数38%、硫酸リチウムの場合)、圧電セラミックス(電気機械結合係数45〜70%)、高結合圧電結晶(電気機械結合係数55%)、高分子圧電材料(電気機械結合係数30%)、複合圧電材料(電気機械結合係数45〜70%)、電着圧電膜材料(電気機械結合係数31〜37%)が挙げられる(参考文献:改訂 医用超音波機器ハンドブック)、(社)日本電子機械工業会編、株式会社コロナ社、1997、pp.24.(ISBN 4-339-07067-X))。ここで上記「圧電セラミックス」としては、例えばBaTiO、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)、PCM(参考文献:「改訂 医用超音波機器ハンドブック」、(社)日本電子機械工業会編、株式会社コロナ社、1997、pp.24.(ISBN 4-339-07067-X))、PLZT(チタン酸ジルコン酸ランタン鉛)等が挙げられる。また上記「高結合圧電結晶」としては、例えばLoNbO、LiTaO、LiGaO等が挙げられる。また上記「水溶性結晶」としては、例えば、ADP(リン酸二水素アンモニウム)、KDP(リン酸二水素カリウム)、EDT(酒石酸エチレンジアミン)、DKT(酒石酸ジカリウム)、LH(硫酸リチウム)等が挙げられる。また上記「電着圧電膜材料」としては、例えばCdS、ZnO、GaAs等が挙げられる。また上記「高分子圧電材料」としては、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)等が挙げられる。本発明の超音波医療装置における好ましい振動子は、上記のいずれか一つの圧電体からなるものであっても、またいずれかを組み合わせた圧電体からなるものであってもよい。
また本発明の超音波医療装置において、超音波照射手段は、150kHz以上(好ましくは500kHz以上)の周波数の超音波(高周波)を発生することができる手段であることが好ましい。上記のごとく高周波の超音波を利用すると、低周波の超音波を使用したときに比べ、超音波音場における指向性が向上して超音波ビーム幅を細くすることができ、結果的に局在する酸化チタンのみに超音波照射を行うことが可能となる。よって、例えば酸化チタンが存在しないような照射不要領域への過照射が抑制され、生体安全性及び照射効率が向上するという効果が得られる。
図1に本発明の一実施形態にかかる超音波治療装置の構成を一例として示す。なお本発明はこれに限定されるものではない。図1において、超音波照射手段(20)は、超音波プローブ(21)、カプラ(22)、波形発生器(23)、RF信号増幅器(24)、中継ケーブル(25)、および伝送ケーブル(26)から構成されている。
なお、図1に示される超音波治療装置(100)の超音波照射手段(20)は、超音波プローブ(21)、カプラ(22)、波形発生器(23)、RF信号増幅器(24)、中継ケーブル(25)、および伝送ケーブル(26)がそれぞれ別体として構成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく上記超音波プローブ(21)、カプラ(22)、波形発生器(23)、RF信号増幅器(24)、中継ケーブル(25)、および伝送ケーブル(26)の全部または一部が一体となっていてもよい。さらに本発明の超音波医療装置は上記の構成の他の構成が含まれていてもよい。なおもし波形発生器(23)単体で効果発現に必要十分な電圧出力能を有する場合は、RF信号増幅器(24)を省略してもよい。
超音波プローブ(21)は、体内に埋設された酸化チタンコート医療機器(10)に超音波を照射するための部材である。波形発生器(23)で超音波プローブ(21)に印加すべき連続波、パルス波またはバースト波の電気信号を生成し、生成された連続波、パルス波またはバースト波等の電気信号が中継ケーブル(25)を経てRF信号増幅器(24)に入力され、そこで増幅された電気信号が伝送ケーブル(26)を経て、超音波プローブ(21)に入力される。入力された電気信号は超音波プローブ(21)内の振動素子(27)の表面で音波に変換され、超音波として出力される。
上記プロセスを経て、体内に埋設された酸化チタンコート医療機器(10)の酸化チタン材料で被覆された経皮デバイス(11)全体に対して超音波照射し、抗菌効果、周囲組織により分泌されたサイトカインにより誘導された血管新生促進とそれによる抗感染効果、もしくは血栓およびバイオフィルムの分解による抗感染効果、並びに治癒効果など得ることができる。
なお本発明における超音波照射手段は、医療用として通常用いられている超音波装置が適用可能である。例えば、効果発現に必要十分な音響出力能を有するものであれば、医療用の超音波診断装置が利用可能である。
<3.本発明の超音波医療装置の使用方法>
本発明の超音波医療装置の使用方法は、体内に埋設された酸化チタンコート医療機器に対して、超音波照射手段を用いて超音波を照射すればよい。照射される超音波の出力、周波数、照射時間、超音波の種類(連続波、パルス波、バースト波、および定在波)等の詳細な条件については特に限定されるものではなく、目的や対象となる生体に応じて最適な条件を検討の上、採用すればよい。
人工心臓、ペースメーカー、埋め込み型除細動器、人工弁、人工弁輪、人工血管、ステント、人工関節、人工骨頭、内固定材、ミニ・マイクロプレートシステム、創外固定器、脊椎固定システム、人工靱帯、人工骨、人工鼻、人工喉頭、人工肛門、人工膀胱、人工内耳などの体内埋設型医療機器、または、カテーテル、チューブ、カテーテルアクセスポート、胃ろう、シャントバルブ、脳外用ドレナージ、ブラッドアクセスなど体内外連結用医療機器を酸化チタンコート医療機器として用いた場合、当該酸化チタンコート医療機器を体内に埋設した後に、当該酸化チタンコート医療機器表面付近に細菌感染によるものと思われる炎症が生じた場合に、当該酸化チタンコート医療機器に対して体外から超音波を照射することによって殺菌作用を発動させればよい。そうすることによって、当該酸化チタンコート医療機器を取り出すことなく殺菌することができる。
また、患部に酸化チタン材料で被覆された創傷被覆材を貼り、これに対して超音波照射することによって、患部付近において血管新生が促進されるという効果が得られるため、治癒促進効果も得られる。
酸化チタン材料で被覆された輸液フィルターに対して超音波照射することによって、点滴中であっても除菌を行うことができる。
また構造上の理由で除菌処理のしにくい医療機器であっても酸化チタン材料で被覆し、これに対して超音波照射することによって、医療機器を分解することなく、除菌や殺菌を行うことができる。
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。
〔実施例1〕
<方法>
酸化チタン複合材料への超音波照射によるOHラジカル発生を評価するため、共振周波数500kHz、開口素子直径40mm、曲率半径(焦点距離)30mmを持つ、チタン酸ジルコン酸鉛(「PZT」)製の焦点型超音波プローブを製作した(その構成については、図1の超音波プローブ(21)を参照のこと)。超音波プローブ設計の際は、必要な音響出力強度と焦点域でのビーム幅を考慮し、圧電材特性を考慮した数値シミュレーションにより、周波数と開口直径を決定した。また焦点距離については、照射領域が皮膚浅部であることを考慮して選定した。製作された超音波プローブの音場特性として、中心軸上音圧レベルよりも6dB低下した半値幅で定義されるビーム幅を感圧紙法(「超音波便覧」、超音波便覧編集委員会編、丸善株式会社、1999、pp.471.(ISBN 4-621-04633-0))で調べた結果、ビーム幅は5.8mmであり、ほぼ設計通りであることを確認した。
製作された超音波プローブを用いて、OHラジカル発生を評価するために構築した実験システムの概略図を図2に示す。本実施例では酸化チタン複合材料として「特開2004−143417号公報(平成16年5月20日公開)」の実施例に記載されている酸化チタン複合体のシート(以下「酸化チタン複合体シート」という)を用いた。酸化チタン複合体シートは、下記のようにして製造された。
(酸化チタン複合体シートの製造方法)
酸化チタン粒子(粒子径200〜300nm、アナタース型、比表面積5m/g、石原産業株式会社製)を120℃で24時間乾燥させた後、300ml容の3口フラスコに上記酸化チタン粒子5.0gと、無水トルエン150ml、γ−アミノプロピルトリエチルシラン(信越シリコーン株式会社製、品番:KBE-903)5.0mlを入れ、120℃で、6時間還流することにより酸化チタンにアミノ基を導入したアミノ化酸化チタンを得た。得られたアミノ化酸化チタンを多量のトルエンにて遠沈法にて精製して、60℃で1昼夜乾燥した。
一方、高分子基材としての、厚さ0.3mmのシリコーンゴムシートの表面をコロナ放電により処理した。そして重合管中に、上記シリコーンゴムと10重量%のアクリル酸水溶液25mlとを入れ、減圧下で脱気した後、封緘して60℃で1時間重合させることにより、アクリル酸をシリコーンゴム表面にグラフト重合させた。これにより、シリコーンゴムの表面にカルボキシル基を導入したシリコーンゴムシート(カルボキシル基導入シリコーンゴムシート)を得た。
そして、上記アミノ基を導入したアミノ化酸化チタン粒子40mgを蒸留水20mlによく分散させて分散液とした後、1.5cmの円形にくり抜いたカルボキシル基導入シリコーンゴムシートを上記分散液に浸漬させて1時間静置することにより、カルボキシル基導入シリコーンゴムシートの表面に酸化チタン粒子を吸着させた。その後、酸化チタン粒子が吸着したカルボキシル基導入シリコーンゴムシートを取り出し、流水中で長時間洗浄した。次に、上記洗浄したカルボキシル基導入シリコーンゴムシートを180℃、1mmHgの減圧下、6時間加熱して、アミド結合を形成させることにより、酸化チタン複合体シートを得た。
(色素脱色試験)
図2に示す実験システムを用い、OHラジカルによる酸化分解力を定量的に評価するため色素脱色試験を行った。色素脱色試験を行うにあたり、「岡田健吾、工藤信樹、山本克之:第80回日本超音波医学会講演抄録集、pp.333、2007」を参考にした。色素脱色試験には、希釈したメチレンブルー溶液を色素水溶液として用いた。酸化チタン複合体シートは、直径30mmの円筒形試料槽の下面に貼り付けて固定された。試料槽中にはメチレンブルー溶液を入れ、シート上に色素が十分吸着するまで放置した後、超音波照射を行って色素分解能を評価した。超音波照射条件は周波数500kHz、電圧10V、音響出力強度0.6W/cm2の連続波にて行われた。なお、この音響強度は、日本超音波医学会で定められる連続波超音波出力の安全基準(1W/cm2)を十分に満たしている。照射時間は最大で240分までとした。
この際、超音波プローブの表面から酸化チタン複合体シートの表面までは脱気水で満たされている。長時間の断続的な超音波照射による超音波プローブ表面への気泡付着による音響出力損失を避けるため、便宜上、超音波プローブを重力方向に対して上向きに配置した。また、脱気水およびメチレンブルー溶液の温度上昇による色素分解への影響の可能性を排除するため、恒温水槽から温水を循環させて、照射槽内の脱気水水温がほぼ37℃で一定となるように制御した。なお、メチレンブルー溶液にも脱気処理を行った。
OHラジカル発生による色素分解に伴い、メチレンブルー溶液の透明度が増す。この現象を、分光光度計(日本分光、VT650ST)を用いて計測した。超音波照射中に約10分間隔で試料槽中のメチレンブルー溶液から微量サンプルを分光光度計内に吸い込み、吸光度計測を行った後、試料槽内に還流するプロセスを自動的に行うようにシステムを構成して実験を行った。これにより、メチレンブルー溶液の吸光度の経時変化を連続的に追跡できることになる。
色素脱色試験において、超音波照射(「US」)の有無と酸化チタン複合体シート(「AmTiO2」)の有無との組み合わせから、(1)US(-)AmTiO2(-)、(2)US(+)AmTiO2(-)、(3)US(-)AmTiO2(+)、(4)US(+)AmTiO2(+)の4パターンにおける吸光度の経時変化を追跡し、OHラジカル発生能を評価した。なお(+)は有、(-)は無を意味する。またAmTiO2(-)は、酸化チタンで被覆されていない未処理のシリコーンシートを指す。(1)US(-)AmTiO2(-)はメチレンブルー溶液をそのまま放置することを意味するため、吸光度変化はないものとして扱った。
<結果>
色素脱色試験の結果を図3に示す。図3において、上記4パターンの結果を、それぞれ(1)US(-)AmTiO2(-)、(2)US(+)AmTiO2(-)、(3)US(-)AmTiO2(+)、(4)US(+)AmTiO2(+)で表記した。図3の縦軸の吸光度変化は、測定開始時を起点として、色素分解による吸光度の減少分を表しており、この変化分がOHラジカル発生量と正の相関があると見なして評価した。図3から、超音波のみを照射したUS(+)AmTiO2(-)の場合、および酸化チタン複合体シートに超音波を照射しなかった場合ではOHラジカルが若干増加したのに対し、酸化チタン複合体シートに超音波を照射したUS(+)AmTiO2(+)の場合において、吸光度は顕著に変化しOHラジカルが顕著に増加したことが確認された。よって、酸化チタン複合体シートに超音波照射することによって、OHラジカルが発生し、殺菌作用や抗菌作用を酸化チタン複合体シート上に発動させ得ることを示している。
また、図3の曲線における傾きをみると、超音波照射開始直後でUS(+)AmTiO2(+)の場合のOHラジカル発生速度が最も速くなっていることが分かる。これは、酸化チタン複合体シートに超音波照射することによる殺菌作用の発動や抗菌作用の発動の即効性をも示唆していると考えられる。よって、酸化チタン複合体シートを超音波で励起する際に、生体に対して安全な比較的低い音響出力を用いた場合でも十分なOHラジカル発生が可能であることがわかる。
〔実施例2〕
<方法>
酸化チタン複合体シートに対する超音波照射による血管新生促進効果を確認すべく、超音波照射(US)の有無と酸化チタン複合体シート(AmTiO2)の有無との組み合わせ((1)US(-)AmTiO2(-)、(2)US(+)AmTiO2(-)、(3)US(-)AmTiO2(+)、(4)US(+)AmTiO2(+))の4パターンにおける腫瘍壊死因子(TNFα)産生量を定量した。なおTNFαは、脂肪細胞、マクロファージ、リンパ球などから産生され、血管内皮細胞増殖因子を誘導する間接的な血管新生促進因子として知られている(参考文献:P. Reher, et al., CYTOKINE, 11, 416-423(1999). A.L. Harris, Lancet, 349(suppl II), 13-15(1997).)。さらに上記4パターンにおける細胞生存数も同時に評価した。
(細胞培養)
ヒト骨髄由来単核細胞(Lot. No 070912B, Lonza Walkersville, Inc., MD, USA)を使用し、10% fetal bovine serum、penicilin/streptomycin(GIBCO)を添加したRPMI1640(GIBCO)培地にて37℃、5% CO2下で培養した。
(超音波照射)
図2に示された超音波プローブを組み込んだ実験システムを用い、周波数0.5MHz、出力114mW/cm2、連続波5分の至適条件にてサンプルに対して超音波を照射した。
(細胞培養液上清中のTNFαの測定)
細胞培養管内で、1×106cells/mLに調整された細胞をサンプルシート(直径15mm)上に播種し、24時間培養した。細胞培養管を、図2に示された実験システムの照射槽中に漬けることによって、培養後のサンプルシートに対して、37℃下、5分間超音波照射した。その後、細胞培養管を照射槽から取り出し、さらにインキュベーター内で2時間培養を行った。その後、細胞培養管から細胞培養液を分離し、2000×g、5分間遠心分離に供して上清を採取した。Tumour Necrosis Factor Alpha Human, Biotrak ELISA System(GE Healthcare UK)を使用し、ウェルプレートの各ウェルに検体およびビオチン化TNFα抗体を入れ、室温で2時間インキュベートした。洗浄液で3回洗浄し、各ウェルにHRP標識ストレプトアビジン100μLを加え、さらに室温で30分間インキュベートした。再度、洗浄液で洗浄後、発光基質溶解液を100μL加え、暗視下、30分間インキュベートし、450nmの吸光度を測定した。その後、検量線から細胞培養液上清中のTNFαの量を算出した。
(細胞生存数の測定)
超音波照射後の、それぞれの細胞培養管にcell counting Kit8(sanko junyaku, Tokyo, Japan)を入れ、37℃、CO2 5%のインキュベーター内で3時間染色を行った。その後、450nmの吸光度を測定することによって、細胞生存数を測定した。超音波照射による細胞への影響を調べるためである。
<結果>
図4に細胞培養液上清中のTNFαを測定した結果を示す。図4中「*」はスチューデントT検定の有意差検定(n=4)において5%の危険率で有意差があったことを示し、「**」は1%の危険率で有意差があったことを示し、「ns」は有意差がなかったことを示す。
図4の結果によれば、超音波照射によって細胞からのTNFα産生が有意に促進されることがわかった。さらに、酸化チタン複合体シートに超音波照射した細胞からのTNFα産生量は、未処理のシリコーンシートに超音波照射した場合のそれに比して有意かつ顕著に高いということがわかった。すなわち酸化チタン複合体シートに超音波照射することによって、酸化チタン複合体シートと接している細胞からのTNFα産生を有意に促進されることが確認され、その細胞付近での血管新生促進効果が得られることが示された。
超音波照射した場合(US(+)AmTiO2(+))および超音波照射しなかった場合(US(-)AmTiO2(+))の細胞生存数を調べた結果を図5に示す。図5の結果によれば、超音波照射した場合(US(+)AmTiO2(+))の細胞生存数と、超音波照射しなかった場合(US(-)AmTiO2(+))の細胞生存数との間に有意差はなかったため、超音波照射による細胞への悪影響は特に見られないと判断される。なお図5中「ns」は図4のそれと同様の意味である。
〔実施例3〕
<方法>
(細胞培養)
ヒト骨髄由来単核細胞(Lot.No 071853A, Lonza Walkersville, Inc., MD, USA)を使用し、RPMI medium 1640(GIBCO)、FBS (-)にて37℃、5% CO2下で培養した。
(超音波照射)
図2に示された超音波プローブを組み込んだ実験システムを用い、周波数493.8kHz、出力225mW/cm2、連続波5分の条件にてサンプルに対して超音波を照射した。
(細胞培養液上清中の血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の測定)
細胞培養管内で、1×106cells/mLに調製された細胞懸濁液をサンプルシート(直径15mmのポリエステル(PET)シート)上に播種し、24時間培養した。細胞培養管を、図2に示された実験システムの照射槽中に漬けることによって、培養後のサンプルシートに対して、37℃下、5分間超音波照射した。その後、細胞培養管を照射槽から取り出し、さらにインキュベーター内で24時間培養を行った。その後、細胞培養管から細胞培養液を採取し、2000×g、5分間遠心分離を行うことで細胞上清を採取した。Amersham Biotrak Vascular Endthelial Growth Factor, Human ELISA System(GE healthcare UK)を使用し、ウェルプレートの各ウェルに検体と希釈液を入れ、室温で2時間インキュベートした。各ウェルの反応液を取り除き3回洗浄液で洗浄した。各ウェルにビオチン化VEGF2次抗体を100μL入れ、室温で1時間インキュベートした。洗浄液で3回洗浄し、各ウェルにHRP標識ストレプトアビジン100μL加え、さらに室温で30分間インキュベートした。再度、洗浄液で洗浄後、発光基質溶解液を100μL加え、暗視下30分後、450nmの吸光度を測定した。その後、検量線から細胞上清中のVEGFの量を算出した。
なお本実施例で使用したサンプルシートは、PETシートにアミノ化酸化チタン粒子を化学結合させて作製された酸化チタン複合体シートである。かかる酸化チタン複合体PETシートの製造に用いたアミノ化酸化チタンの製造法は、酸化チタン粒子(粒子径35nm、アナタース型、比表面積9.66m/g、石原産業株式会社製)を120℃で24時間乾燥させた後、300ml容の3口フラスコに上記酸化チタン粒子5.0gと、無水トルエン100ml、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン株式会社製、品番:KBM-903)0.5mlを入れ、30℃で、5分還流することにより酸化チタンにアミノ基を導入したアミノ化酸化チタンを得た。得られたアミノ化酸化チタンを多量のトルエンにて遠沈法にて精製して、60℃で1昼夜乾燥した。
PETシート600mgをオゾン水処理装置(岩谷産業株式会社製)へ入れ、オゾン濃度14ppmのオゾン水を20分間作用させた。オゾン水処理を施したPETシートを試験管に移し、蒸留水18mL、非イオン性界面活性剤であるペンタエチレングリコールドデシルエーテル35mgとメタクリロキシプロピルトリエチルシラン(信越化学工業株式会社製、品番KBE-503;以下、「KBE」と称す)500mgと試験管に加え混合した。次に、上記試験管内を十分に脱気および窒素ガス充填を繰り返した後、封緘した。そして、50℃で1時間反応させることにより、末端にアルコキシシリル基を有する高分子鎖をグラフト重合させたPETシート(以下、「KBE-PET」と称する)を得た。
さらに、粒子表面にシランカップリング剤を用いてアミノ基を導入したアミノ化ナノ酸化チタン(導入量:2〜4分子/nm2、)をエタノール中に1mg/mlの割合で分散させ、上記のKBE-PETを浸漬させた。そして、浸漬後のKBE-PETを取り出して、エタノールにて十分洗浄した後で、80℃、2時間、カップリング反応を行った。反応後、得られた反応物を蒸留水に浸漬して、プローブ型超音波発生装置にて、出力20kHz、35Wの条件で3分間処理して、未反応のアミノ化ナノ酸化チタンを除去することにより、本実施例で使用したサンプルシート(酸化チタン複合体シート)を得た。
<結果>
図6に細胞上清中のVEGFを測定した結果を示す。図6中「*」はスチューデントT検定の有意差検定(n=3)において5%の危険率で有意差があったことを示し、「**」は1%の危険率で有意差があったことを示す。
図6の結果によれば、酸化チタン複合体シートに超音波照射した細胞からのVEGF産生量は、酸化チタン複合シートに超音波照射なし(図6中「US(-)AmTiO2(+)」で表される)、未処理のPETシートに超音波照射あり(図6中「US(+)AmTiO2(-)」で表される)、未処理のPETシートの超音波なし(図6中「US(-)AmTiO2(-)」で表される)の群に比較して、有意かつ顕著に高いということがわかった。すなわち酸化チタン複合体シートに超音波照射することによって、酸化チタン複合体シートと接している細胞からのVEGF産生を有意に促進させることが確認され、その細胞付近での血管新生促進効果が得られることが示された。
なお、本実施例で血管新生の指標として測定したVEGFは直接的な血管新生刺激因子であることが知られている。一方、実施例2で血管新生の指標として測定したTNFαは間接的な血管新生刺激因子として知られている。
また実施例2ではシリコーンゴムシートを用いたが、本実施例ではPETシートを用いた。これはPETシートの方が織物状であるためフィルム状より表面積が広く、より接着細胞数が多いためである。
〔実施例4〕
<方法>
(動物種)
Japanese whiteウサギ、オス、体重約2.5kgを動物実験に使用した。
(埋植試験)
セルシン(武田薬品工業株式会社)0.6mL、バイトリル(バイエル株式会社)0.4mLをウサギの皮下に注射し、ウサギ固定器にて固定した。人工呼吸器にて吸入麻酔を行い、麻酔確認後、毛刈りを行った。耳介をサージカルテープで固定し、消毒用エタノールとヒビスクラブ消毒液4%(大日本住友製薬株式会社、登録商標)にて消毒、さらにイソジン(明治製菓株式会社、登録商標)で術部の消毒を行った。フェザーメスNo.11にて耳介表皮を約5mm切開、皮下ポケットを形成し、両耳介の近位側に直径5mmサンプル(未処理ポリエステル)、遠位側にサンプル(PETシートにアミノ化酸化チタン粒子を化学結合させて作製された酸化チタン複合体シート)をそれぞれ埋植した。サンプルが完全に埋植されたのを確認後、6.0ナイロン糸で1針縫合、閉創を行った。
(超音波照射条件)
図1に示される超音波プローブ21を用い、周波数493.8kHz、出力10V(694mW/cm2)、連続波1分の条件にて、サンプル埋植日から2週間連続でサンプルが埋植された箇所に超音波照射を行った。さらに第1回目照射終了日から8日後、周波数500.0kHz、出力5V(81.3mW/cm2)、連続波5分の至適条件にて、サンプルに対して2週間連続で超音波照射した。
(評価方法)
ソムノペンチル(共立製薬株式会社)の静脈内投与によりウサギを犠牲死させ、検体を採取し10%(w/v)ホルマリンで固定を行った。パラフィン切片を作製し、ヘマトキシリン−エオジン(HE)染色にて評価した。
<結果>
図7にHE染色した検体の写真を示す。図7(a)は酸化チタン複合体シートを用い且つ超音波照射なしの結果(US(-)AmTiO2(+))を示し、図7(b)は酸化チタン複合体シートを用い且つ超音波照射ありの結果(US(+)AmTiO2(+))を示し、図7(c)は未処理のPETシートを用い且つ超音波無しの結果(US(-)AmTiO2(-))を示し、図7(d)は未処理のPETシートを用い且つ超音波照射ありの結果(US(+)AmTiO2(-))の結果をそれぞれ示す。
図7の結果によれば、酸化チタン複合体シートに超音波照射した周辺組織において、確かな血管新生が確認された(図7(b)中の矢印を参照のこと)。酸化チタン複合体シートに超音波照射した結果は、酸化チタン複合シートに超音波照射なしの結果(図7(a)を参照のこと)、未処理のPETシートに超音波照射ありの結果(図7(d)を参照のこと)、未処理のPETシートの超音波なしの結果(図7(c)を参照のこと)の群に比較して、血管新生促進効果が顕著に高いということがわかった。すなわち酸化チタン複合体シートに超音波照射することによって、酸化チタン複合体シートと接している組織に血管新生が促進させることが確認され、その組織付近での血管新生促進効果が得られることが動物実験においても示された。
本発明は、医療機器の表面に存在する酸化チタン材料(酸化チタン単独または酸化チタン複合材料)に超音波を照射することによって、医療機器表面において抗菌性、血管新生の促進、並びに血栓およびバイオフィルム分解などの優れた効果を発揮する。
それゆえ、本発明は医療および医療機器産業の全般において利用され得る。
本発明の一実施形態にかかる超音波治療装置の構成を示す模式図である。 実施例において使用した実験装置の模式図である。 実施例1における色素脱色試験の結果を示すグラフであり、同図中「US(-)AmTiO2(-)」は未処理のシリコーンシートを用い且つ超音波照射なしの結果、「US(+)AmTiO2(-)」は未処理のシリコーンシートを用い且つ超音波照射ありの結果、「US(-)AmTiO2(+)」は酸化チタン複合体シートを用い且つ超音波照射なしの結果、「US(+)AmTiO2(+)」は酸化チタン複合体シートを用い且つ超音波照射ありの結果をそれぞれ示す。 実施例2において、細胞上清中のTNFαを測定した結果を示すグラフであり、同図中「US(-)AmTiO2(-)」は未処理のシリコーンシートを用い且つ超音波照射なしの結果、「US(+)AmTiO2(-)」は未処理のシリコーンシートを用い且つ超音波照射ありの結果、「US(-)AmTiO2(+)」は酸化チタン複合体シートを用い且つ超音波照射なしの結果、「US(+)AmTiO2(+)」は酸化チタン複合体シートを用い且つ超音波照射ありの結果をそれぞれ示す。 実施例2において、超音波照射した場合(US(+)AmTiO2(+))および超音波照射しなかった場合(US(-)AmTiO2(+))の細胞生存数を調べた結果を示すグラフである。 実施例3において、細胞上清中のVEGFを測定した結果を示すグラフであり、同図中「US(-)AmTiO2(-)」は未処理のポリエステル(PET)シートを用い且つ超音波無しの結果、「US(+)AmTiO2(-)」は未処理のポリエステル(PET)シートを用い且つ超音波照射ありの結果、「US(-)AmTiO2(+)」は酸化チタン複合体シートを用い且つ超音波照射なしの結果、「US(+)AmTiO2(+)」は酸化チタン複合体シートを用い且つ超音波照射ありの結果をそれぞれ示す。 実施例4においてHE染色した各検体の写真であり、(a)は酸化チタン複合体シートを用い且つ超音波照射なしの検体の写真(US(-)AmTiO2(+))であり、(b)は酸化チタン複合体シートを用い且つ超音波照射ありの検体の写真(US(+)AmTiO2(+))であり、(c)は未処理のポリエステル(PET)シートを用い且つ超音波無しの検体の写真(US(-)AmTiO2(-))であり、(d)は未処理のポリエステル(PET)シートを用い且つ超音波照射ありの検体の写真(US(+)AmTiO2(-))である。
符号の説明
10 酸化チタンコート医療機器
11 カテーテル
12 経皮デバイス
20 超音波照射手段
21 超音波プローブ
22 カプラ
23 波形発生器
24 RF信号増幅器
25 中継ケーブル
26 伝送ケーブル
27 振動素子
28 隙間
30 皮膚
31 焦点位置
100 超音波医療装置

Claims (16)

  1. 酸化チタン材料で表面が被覆された医療機器と、当該医療機器に対して超音波を照射するための超音波照射手段とを備え、
    当該酸化チタン材料が、酸化チタンのみからなる材料、または高分子基材の表面に酸化チタンが被覆されてなる酸化チタン複合材料であることを特徴とする超音波医療装置。
  2. 上記超音波照射手段は、生体安全基準内の出力の超音波を照射することができる手段である、請求項1に記載の超音波医療装置。
  3. 上記超音波照射手段は、超音波の出力が調整可能となっている、請求項1または2に記載の超音波医療装置。
  4. 上記超音波照射手段は、連続波、パルス波、バースト波、および定在波からなる群から選択される1種類以上の超音波を発生することができる手段である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の超音波医療装置。
  5. 上記超音波照射手段は、超音波を集束させて照射することができる手段である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の超音波医療装置。
  6. 上記超音波照射手段は、カプラを備える、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の超音波医療装置。
  7. 上記超音波照射手段を構成する振動子は、電気機械結合係数が10%以上の圧電体からなる、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の超音波医療装置。
  8. 上記超音波照射手段を構成する振動子が、水晶、水溶性結晶、圧電セラミックス、高結合圧電結晶、高分子圧電材料、複合圧電材料、電着圧電膜材料のいずれか一つの圧電体、または上記材料のいずれかを組み合わせた圧電体からなる、請求項7に記載の超音波医療装置。
  9. 上記超音波照射手段は、150kHz以上の周波数の超音波を発生することができる手段である、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の超音波医療装置。
  10. 上記超音波照射手段は、単一送信において高調波または多周波を含む超音波を発生することができる手段である、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の超音波医療装置。
  11. 上記酸化チタン複合材料は、活性基を有する高分子基材と、当該活性基と反応可能な反応性官能基を有する酸化チタンとからなり、上記活性基と反応性官能基とが化学結合してなることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の超音波医療装置。
  12. 上記酸化チタン複合材料は、活性基を有する高分子基材と、アミノ基を有する酸化チタンとからなり、上記活性基とアミノ基とが化学結合してなることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の超音波医療装置。
  13. 上記酸化チタン複合材料は、酸化チタンが有する水酸基と、高分子基材が有し且つ当該水酸基と化学結合可能な官能基とが、化学結合してなることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の超音波医療装置。
  14. 上記酸化チタン複合材料が、以下の(i)および(ii)のいずれか一方または両方を満たすものである、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の超音波医療装置:
    (i)活性基を有する高分子基材と、アミノ基を有する酸化チタンとからなり、上記活性基とアミノ基とが化学結合してなる;
    (ii)酸化チタンが有する水酸基と、高分子基材が有し且つ当該水酸基と化学結合可能な官能基とが、化学結合してなる。
  15. 上記医療機器は、酸化チタン材料で表面がフロック加工により被覆された医療機器である、請求項1ないし14のいずれか1項に記載の超音波医療装置。
  16. 上記医療機器は、体内埋設型医療機器、体内外連結用医療機器、または体表面接触型医療機器である、請求項1ないし15のいずれか1項に記載の超音波医療装置。
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