JP2010007907A - 空調システム - Google Patents

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山 武 横
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Abstract

【課題】太陽熱集熱パネルで回収された太陽熱が過剰となった場合に、冷水温度或いは空調温度を降下し過ぎてしまうことなく、太陽熱により過度に昇温された熱媒が保有する熱量を吸収冷凍機で冷却することができる空調システムの提供。
【解決手段】吸収冷凍機(20)と、太陽熱回路(30)と、吸収冷凍機(20)の蒸発器(5)と冷房負荷とを連通する冷水ライン(Li)を流れる冷水の蒸発器出口温度(T1)或いは蒸発器(5)の液相冷媒温度(T1)を計測する第1の温度計測装置(温度センサSt1)と、凝縮器(4)又は蒸発器(5)の液相冷媒を再生器(2、3)内の吸収溶液又は希溶液ライン(La)を流れる希溶液に混合する混合用経路(Lm4、Lm5、Lm6)と、混合用経路(Lm4、Lm5、Lm6)に介装された開閉弁(V4、V5、V6)と、制御装置(10)とを備えている。
【選択図】図1

Description

本発明は太陽熱を空調に利用する技術に関し、より詳細には、吸収冷凍機による冷房運転に太陽熱を利用した空調システムに関する。
熱源により冷熱を得る技術として、吸収冷凍機が広く普及している(例えば特許文献1参照)。
そして、吸収冷凍機と太陽熱集熱装置(太陽熱集熱パネル)とを組み合わせ、太陽熱で得られる比較的低温(30℃〜120℃)の熱を利用する技術が提案されている(例えば特許文献2参照)。
吸収冷凍機と太陽熱集熱パネルとを組み合わせた従来技術(特許文献2)においては、太陽熱集熱パネルを介装し且つ吸収冷凍機の希溶液ラインと熱的に連通する太陽熱回路を構成し、太陽熱回路を循環する熱媒を太陽熱集熱パネルで加熱し、加熱された熱媒の保有する熱量を吸収冷凍機の希溶液ラインを流れる吸収溶液に投入している。この場合、太陽熱集熱パネルで回収される太陽熱は、二重効用吸収冷凍機における低温再生器或いは当該低温再生器と同レベル圧力となる排熱専用再生器程度の作用効果を奏する。そして、熱媒が保有する熱量を吸収冷凍機側で消費することにより、熱媒が吸収冷凍機により冷却される。
ここで、太陽熱集熱装置により回収される熱量は一定せず、太陽熱集熱装置により回収される熱量は、冷房負荷とは全く連動していない。
例えば、冷房負荷が比較的小さい時期において日射が強ければ、太陽熱集熱パネルにおいて熱媒の温度が昇温し過ぎてしまう。熱媒の温度が昇温し過ぎてしまうと、熱媒が保有する熱量が投入される吸収冷凍機側では、例えば吸収溶液である臭化リチウム水溶液が再生器で晶析する、或いは蒸発器で冷媒や冷水が凍結する、という問題が生じ、吸収冷凍機の運転に重大な障害を及ぼす。
吸収冷凍機における晶析や凍結を防止するために、冷房負荷が小さい場合に熱媒の温度が所定値以上に昇温した場合に、太陽熱回路と吸収冷凍機とを熱的に遮断して、熱媒が保有する熱量が吸収溶液の希溶液ラインに投入されないようにすることも可能である。
しかし、太陽熱回路と吸収冷凍機とを熱的に遮断してしまうと、太陽熱回路を循環する熱媒が保有する熱量がどこにも投入されなくなり、熱媒が過熱されて、沸騰してしまう恐れがある。そして、熱媒が過熱、沸騰してしまうと、太陽熱集熱パネルを介装している太陽熱回路内の圧力が急上昇して、太陽熱回路を破壊してしまう恐れがある。
また、熱媒が沸騰して気化してしまうと、太陽熱回路内で熱媒を循環させるための熱媒ポンプがキャビテーションにより破損してしまう。
係る問題について、引用文献1、引用文献2は全く考慮がされていない。
従来技術において、吸収冷凍機と太陽熱集熱装置とを組み合わせたシステムにおいて、上述した吸収冷凍機における晶析や凍結を防止する技術も存在する(例えば、特許文献3参照)。
係る従来技術(特許文献3)では、太陽熱回路を循環する熱媒が過熱状態になった場合に貯湯タンク内の温水を排水し、或いは、太陽熱回路を循環する熱媒を冷却塔(或いは空冷放熱器)で冷却している。
しかし、貯湯タンク内の温水を排水することは、いわゆる「水の無駄使い」であり、不経済である。また、冷却塔で熱媒を冷却するためには、冷却塔(或いは空冷放熱器)を追加して設備しなければならず、設備費が増大してしまうという問題がある。
さらに、熱媒が循環する太陽熱回路に熱媒貯留槽を介装し、熱媒が加熱した場合に太陽熱回路内を循環する全ての熱媒を熱媒貯留槽に回収して、太陽熱回路内では熱媒が循環しないようにする技術も提案されている。
しかし、熱媒を熱媒貯留槽に回収している間に太陽熱集熱パネルの温度は非常に高くなり、熱媒を太陽熱回路内で再度循環する場合には、太陽熱集熱パネルの温度が熱媒の沸騰温度以下に降温するまで待機しなければならない。太陽熱集熱パネルの温度が熱媒の沸騰温度よりも高温であると、太陽熱回路内で熱媒を再度循環させた際に、太陽熱集熱パネルに流入した熱媒が瞬時に気化して太陽熱回路内の圧力が瞬時に昇圧されてしまい、太陽熱回路が破損されてしまうからである。
そのため、必要なときに直ちに太陽熱を冷熱の発生に利用することが出来ない、という問題を有している。
それに加えて、蓄熱槽を空調システムに介装し、冷熱を蓄熱することも考えられる。
しかし、蓄熱槽における冷熱の蓄熱量は、当該蓄熱槽を設置してみなければ判らない場合が多いため、蓄熱槽設置による効果を把握することが出来ない。
太陽熱集熱パネルで回収された太陽熱が過剰となり、熱媒が昇温され過ぎた場合に、熱媒が保有する熱量を吸収冷凍機側で消費することができれば、上述した各種問題を解消することが可能である。
しかし、冷房負荷が小さい場合に、過剰に昇温された熱媒の熱量を吸収冷凍機側で消費した場合には、冷水温度が降下し過ぎてしまい、冷房温度が下がりすぎてしまうので、空調システムとして不適当である、という問題が存在する。
吸収冷凍機による冷房運転に太陽熱を利用した空調システムであって、上述した種々の問題を解消することが出来る様な空調システムは、現時点では提案されていない。
特開平7−218017号公報 特開昭58−195763号公報 特開昭58−142159号公報
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、吸収冷凍機による冷房運転に太陽熱を利用した空調システムであって、冷房負荷が小さく且つ太陽熱集熱パネルで回収された太陽熱が過剰となった場合に、冷水温度或いは空調温度を降下し過ぎてしまうことなく、太陽熱により過度に昇温された熱媒が保有する熱量を吸収冷凍機で消費することができる様な空調システムの提供を目的としている。
本発明の空調システムは、吸収冷凍機(20)と、太陽熱集熱装置(太陽熱集熱パネル8)と、太陽熱集熱装置(8)を介装しており且つ吸収冷凍機(20)と熱的に連通している太陽熱回路(30)と、吸収冷凍機(20)の蒸発器(5)と冷房負荷とを連通する冷水ライン(Li)を流れる冷水の蒸発器出口温度或いは蒸発器(5)の液相冷媒温度を計測する第1の温度計測装置(温度センサSt1)と、凝縮器(4)又は蒸発器(5)の液相冷媒を再生器(2、3)内の吸収溶液又は希溶液ライン(La)を流れる希溶液に混合する混合用経路(Lm4、Lm5、Lm6)と、混合用経路(Lm4、Lm5、Lm6)に介装された開閉弁(V4、V5、V6)と、制御装置(10)とを備え、制御装置(10)は、第1の温度計測装置(St1)で計測された温度(T1:冷水の蒸発器出口温度或いは蒸発器5の液相冷媒温度)が第1のしきい値(しきい値K1)以下となった場合に蒸発器(5)の液相冷媒を冷水ライン(Li)に散布する液媒ポンプ(冷媒ポンプPg)の作動を停止し、第1の温度計測装置(St1)で計測された温度(T1)が第1のしきい値(しきい値K1)よりも低温な第2のしきい値(しきい値K2)以下となった場合には混合用経路(Lm4、Lm5、Lm6)に介装された開閉弁(V4、V5、V6)を開放して、凝縮器(4)又は蒸発器(5)の液相冷媒を吸収器(1)内の吸収溶液又は希溶液ライン(La)を流れる希溶液に混合する機能を有することを特徴としている(請求項1)。
ここで、太陽熱回路(30)が吸収冷凍機(20)と熱的に連通する態様としては、例えば、太陽熱回路(30)を流れる熱媒体が保有する熱量が、熱交換器(太陽熱投入熱交換器9)を介して、吸収冷凍機(20)の希溶液ライン(La)を流れる吸収溶液(希溶液)に投入されるように構成することが出来る。或いは、希溶液ライン(La)に再生器(太陽熱再生器WE9)を介装し、太陽熱回路(30)を流れる熱媒体が保有する熱量により冷媒蒸気(気相冷媒)を再生しても良い。さらに、熱交換器(太陽熱投入熱交換器9)と再生器(太陽熱再生器WE9)を、吸収冷凍機(20)の希溶液ライン(La)に介装しても良い。
本発明の実施に際して、吸収冷凍機(20)は、単効用タイプでも、二重効用タイプでも、一重二重効用タイプでも、三重効用以上の多重効用タイプであっても良い。
ここで、前記混合用経路は、蒸発器(5)の底部と液相冷媒を散布する散布管(51)とを連通し且つ液媒ポンプ(冷媒ポンプPg)が介装されている液相冷媒ライン(Lg)から分岐(Bg)されて吸収器(1)に連通する液相冷媒ライン(Lm4)であり、前記開閉弁は当該液相冷媒ライン(Lm4)に介装された開閉弁(V4)であるのが好ましい。
また、前記混合用経路は、凝縮器(4)と吸収器(1)を連通する液相冷媒ライン(Lm5)であり、前記開閉弁は当該液相冷媒ライン(Lm5)に介装された開閉弁(V5)であるのが好ましい。
或いは、前記混合用経路は、吸収冷凍機(20)の吸収器(1)と再生器(2)を連通する希溶液ライン(La)の吸収溶液用ポンプ(Pa)吸込口側の領域と蒸発器(5)とを連通する液相冷媒ライン(Lm6)であり、前記開閉弁は当該液相冷媒ライン(Lm6)に介装された開閉弁(V6)であるのが好ましい。
本発明の空調システムにおいて、前記制御装置(10)は、第1の温度計測装置(St1)で計測された温度(T1:冷水の蒸発器出口温度或いは蒸発器の液相冷媒温度)が第2のしきい値(しきい値K2)以下の状態から第1のしきい値(しきい値K1)より高温のしきい値(K1A=K1+ΔK1)を上回った(しきい値K1Aよりも高温となった)場合に、先ず、前記混合用経路(Lm4、Lm5、Lm6)に介装された開閉弁(V4、V5、V6)を閉鎖して、凝縮器(4)又は蒸発器(5)の液相冷媒が吸収器(1)内の吸収溶液又は希溶液ライン(La)を流れる希溶液と混合するのを停止し、次に、液媒ポンプ(Pg)を作動して蒸発器(5)の液相冷媒を冷水ライン(Li)に散布する機能を有するのが好ましい(請求項2)。
また本発明において、前記太陽熱回路内(30)には熱媒が循環しており、太陽熱集熱装置(太陽熱集熱パネル8)を流過した直後の熱媒の温度或いは太陽熱集熱装置(8)の表面温度を計測する第2の温度計測装置(第2の温度センサ、或いは過熱防止センサSt2)を有し、前記制御装置(10)は、第2の温度計測装置(St2)で計測された温度(T2:太陽熱集熱装置を流過した直後の熱媒の温度或いは太陽熱集熱装置の表面温度)が第3のしきい値(しきい値K3)よりも高温となった場合に冷水の蒸発器出口温度の設定温度(冷水の蒸発器出口温度がそれ以下に降温した場合には吸収冷凍機の運転を停止する温度)を、通常状態(第2の温度計測装置St2で計測された温度が第3のしきい値K3以下の状態)における冷水の蒸発器出口温度の設定温度よりも低く設定する機能を有しているのが好ましい(請求項3)。
ここで(第1の温度計測装置(St1)で計測された温度(T1:冷水の蒸発器出口温度或いは蒸発器の液相冷媒温度)が第2のしきい値(しきい値K2)以下の状態から)、前記制御装置(10)は、第2の温度計測装置(St2)で計測された温度(T2)が第3のしきい値(しきい値K3)より低温のしきい値(K3A=K3−ΔK3)を下回った場合には、前記混合用経路(Lm4、Lm5、Lm6)に介装された開閉弁(V4、V5、V6)を閉鎖して、凝縮器(4)又は蒸発器(5)の液相冷媒が吸収器(1)内の吸収溶液又は希溶液ライン(La)を流れる希溶液と混合するのを停止し、そして液媒ポンプ(冷媒ポンプPg)を作動して蒸発器(5)の液相冷媒を冷水ライン(Li)に散布した後に、冷水の蒸発器出口温度の設定温度を通常状態(第2の温度計測装置St2で計測された温度T2が第3のしきい値K3以下の状態)における冷水の蒸発器出口温度の設定温度に復帰させる機能を有するのが好ましい(請求項4)。
本発明において、吸収冷凍機(20)の吸収器(1)と再生器(2)を連通する希溶液ライン(La)の吸収溶液用ポンプ(Pa)吐出口側の領域から分岐して蒸発器(5)に連通する吸収溶液ライン(Lm3)と、該吸収溶液ライン(Lm3)に介装された第2の開閉弁(V3)を有し、前記制御装置(10)は、第2の温度計測装置(St2)で計測された温度(T2:太陽熱集熱装置を流過した直後の熱媒の温度或いは太陽熱集熱装置の表面温度)が第3のしきい値(しきい値K3)以下となり、且つ、第1の温度計測装置(St1)で計測された温度(T1:冷水の蒸発器出口温度或いは蒸発器の液相冷媒温度)が第2のしきい値(しきい値K2)よりも低温な第4のしきい値(しきい値K4)以下となった場合に、前記第2の開閉弁(V3)を開放して、前記吸収溶液ライン(Lm3)を介して希溶液ライン(La)を流れる吸収溶液(希溶液)を蒸発器(5)の液相冷媒に混合する機能を有するのが好ましい(請求項5)。
本発明の空調システム(請求項5の空調システム)において、前記制御装置(10)は、第2の温度計測装置(St2)で計測された温度(T2)が第4のしきい値(K4)よりも高温のしきい値(K4A)を上回った場合に、前記第2の開閉弁(V3)を閉鎖し、且つ、混合用経路(Lm4及び/又はLm6)に介装された開閉弁(V4及び/又はV6)を一定時間(Tr)開放する機能を有するのが好ましい(請求項6)。
本発明は、吸収冷凍機(20)と、太陽熱集熱装置(太陽熱集熱パネル8)と、太陽熱集熱装置を介装しており且つ吸収冷凍機(20)と熱的に連通している太陽熱回路(30)と、吸収冷凍機(20)の蒸発器(5)と冷房負荷とを連通する冷水ライン(Li)を流れる冷水の蒸発器出口温度或いは蒸発器の液相冷媒温度を計測する第1の温度計測装置(温度センサSt1)と、凝縮器(4)又は蒸発器(5)の液相冷媒を再生器(2、3)内の吸収溶液又は希溶液ライン(La)を流れる希溶液に混合する混合用経路(Lm4、Lm5、Lm6)と、混合用経路に介装された開閉弁(V4、V5、V6)と、制御装置(10)とを備える空調システムの制御方法であって、第1の温度計測装置(St1)で計測された温度(T1:冷水の蒸発器出口温度或いは蒸発器の液相冷媒温度)が第1のしきい値(しきい値K1)以下となった場合に蒸発器(5)の液相冷媒を冷水ライン(Li)に散布する液媒ポンプ(Pg)の作動を停止する工程(S13、S66)と、第1の温度計測装置(St1)で計測された温度(T1)が第1のしきい値(しきい値K1)よりも低温な第2のしきい値(しきい値K2)以下となった場合には混合用経路(Lm4、Lm5、Lm6)に介装された開閉弁(V4、V5、V6)を開放して、凝縮器(4)又は蒸発器(5)の液相冷媒を吸収器(1)内の吸収溶液又は希溶液ライン(La)を流れる希溶液に混合する工程(S33、S43、S53、S69)とを有する制御方法を包含する。
ここで、凝縮器(4)又は蒸発器(5)の液相冷媒を吸収器(1)内の吸収溶液又は希溶液ライン(La)を流れる希溶液に混合する工程(S33、S69)は、蒸発器(5)の底部と液相冷媒を散布する散布管(51)とを連通し且つ液媒ポンプ(Pg)が介装されている液相冷媒ライン(Lg)から分岐(Bg)されて吸収器(1)に連通する液相冷媒ライン(Lm4)に介装された開閉弁(V4)を開放することにより行なわれるのが好ましい。
また、凝縮器(4)又は蒸発器(5)の液相冷媒を吸収器(1)内の吸収溶液又は希溶液ライン(La)を流れる希溶液に混合する工程(S43)は、凝縮器(4)と吸収器(1)を連通する液相冷媒ライン(Lm5)に介装された開閉弁(V5)を開放することにより行なわれるのが好ましい。
或いは、凝縮器(4)又は蒸発器(5)の液相冷媒を吸収器(1)内の吸収溶液又は希溶液ライン(La)を流れる希溶液に混合する工程(S53)は、吸収冷凍機(100)の吸収器(1)と再生器(2)を連通する希溶液ライン(La)の吸収溶液用ポンプ(Pa)吸込口側の領域と蒸発器(5)とを連通する液相冷媒ライン(Lm6)に介装された開閉弁(V6)を開放することにより行なわれるのが好ましい。
係る空調システムの制御方法において、第1の温度計測装置(St1)で計測された温度(T1:冷水の蒸発器出口温度或いは蒸発器の液相冷媒温度)が第2のしきい値(しきい値K2)以下の状態から第1のしきい値(しきい値K1)よりも高温のしきい値(K1A=K1+ΔK1)を上回った場合に、前記混合用経路(Lm4、Lm5、Lm6)に介装された開閉弁(V4、V5、V6)を閉鎖して、凝縮器(4)又は蒸発器(5)の液相冷媒が吸収器(1)内の吸収溶液又は希溶液ライン(La)を流れる希溶液と混合するのを停止する混合停止工程(S34、S44、S54、S77)を行い、当該混合停止工程(S34、S44、S54、S77)の後に、液媒ポンプ(Pg)を作動して蒸発器(5)の液相冷媒を冷水ライン(Li)に散布する工程(S76)を行なうのが好ましい。
また上述の空調システムの制御方法において、前記太陽熱回路(30)内には熱媒が循環しており、空調システムには、太陽熱集熱装置(8)を流過した直後の熱媒の温度或いは太陽熱集熱装置(8)の表面温度を計測する第2の温度計測装置(第2の温度センサSt2)が設けられており、第2の温度計測装置(St2)で計測された温度(T2:太陽熱集熱装置を流過した直後の熱媒の温度或いは太陽熱集熱装置の表面温度)が第3のしきい値(しきい値K3)よりも高温となった場合に冷水の蒸発器出口温度の設定温度を、通常状態(第2の温度計測装置St2で計測された温度T2が第3のしきい値以下の状態)における冷水の蒸発器出口温度の設定温度よりも低く設定するのが好ましい。
ここで、(第1の温度計測装置(St1)で計測された温度(T1:冷水の蒸発器出口温度或いは蒸発器の液相冷媒温度)が第2のしきい値(しきい値K2)以下の状態から)、第2の温度計測装置(St2)で計測された温度(T2)が第3のしきい値(しきい値K3)より低温のしきい値(K3A=K3−ΔK3)を下回った場合には、凝縮器(4)又は蒸発器(5)の液相冷媒が吸収器(1)内の吸収溶液又は希溶液ライン(La)を流れる希溶液と混合するのを停止し、そして液媒ポンプ(Pg)を作動して蒸発器(5)の液相冷媒を冷水ライン(Li)に散布した後に、冷水の蒸発器出口温度の設定温度を通常状態(第2の温度計測装置St2で計測された温度T2が第3のしきい値K3以下の状態)における冷水の蒸発器出口温度の設定温度に復帰させるのが好ましい。
そして、上述した空調システムの制御方法は、吸収冷凍機(20)の吸収器(1)と再生器(2)を連通する希溶液ライン(La)の吸収溶液用ポンプ吐出口側の領域から分岐(Ba)して蒸発器(5)に連通する吸収溶液ライン(Lm3)と、該吸収溶液ライン(Lm3)に介装された第2の開閉弁(V3)とを有しており、上述した制御方法は、第2の温度計測装置(St2)で計測された温度(T2:太陽熱集熱装置を流過した直後の熱媒の温度或いは太陽熱集熱装置の表面温度)が第3のしきい値(しきい値K3)以下となり、且つ、第1の温度計測装置(St1)で計測された温度(T1:冷水の蒸発器出口温度或いは蒸発器の液相冷媒温度)が第2のしきい値(しきい値K2)よりも低温な第4のしきい値(しきい値K4)以下となった場合に、前記第2の開閉弁(V3)を開放して、前記吸収溶液ライン(Lm3)を介して希溶液ライン(La)を流れる吸収溶液(希溶液)を蒸発器(5)の液相冷媒に混合するのが好ましい。
係る空調システムの制御方法では、第2の温度計測装置(St2)で計測された温度(T2)が第4のしきい値(K4)よりも高温のしきい値(K4A)を上回った場合に、前記第2の開閉弁(V3)を閉鎖し、且つ、混合用経路(Lm4及び/又はLm6)に介装された開閉弁(V4及び/又はV6)を一定時間(Tr)開放するのが好ましい。
上述する構成を具備する本発明によれば、冷房負荷が小さく且つ太陽熱集熱パネル(8)で回収された太陽熱が過剰となり、太陽熱回路(30)を循環する熱媒が昇温された場合には、熱媒が保有する熱量が吸収冷凍機(20)の再生器(2)に向かう吸収溶液を加熱して、再生器(2、3)で大量の気相冷媒を再生して、蒸発器(4)で蒸発する液相冷媒が増加するので、冷水の蒸発器出口温度(T1)或いは蒸発器の液相冷媒温度(T1)が低下してしまう。従って、第1の温度計測装置(温度センサSt1)で計測された冷水の蒸発器出口温度(T1)或いは蒸発器の液相冷媒温度(T1)が第1のしきい値(しきい値K1)以下となった場合には、太陽熱回路(30)を循環する熱媒が昇温されたと判断することができる。
本発明によれば、第1の温度計測装置(温度センサSt1)で計測された冷水の蒸発器出口温度(T1)或いは蒸発器(5)の液相冷媒温度(T1)が第1のしきい値(しきい値K1)以下となった場合に、蒸発器(5)の液相冷媒を冷水ライン(Li)に散布する液媒ポンプ(Pg)の作動を停止しており、液媒ポンプ(Pg)の作動を停止すれば液相冷媒が冷水ライン(Li)に散布されなくなり、液相冷媒が蒸発して冷水から気化熱を奪うことが停止されるので、冷水温度の低下が抑制される。
その結果、吸収冷凍機(20)で熱媒から投入される熱量を消費して熱媒を冷却しても、冷房負荷に供給される冷水温度が必要以上に低下することがなくなり、空調温度が低下してしまうことはない。
さらに冷媒の温度が上昇して、再生器(2、3)で多量の冷媒が発生すると、多量の液相冷媒が蒸発するため、第1の温度計測装置(St1)で計測された温度(T1:冷水の蒸発器出口温度或いは蒸発器の液相冷媒温度)が第1のしきい値(しきい値K1)よりも低温な第2のしきい値(しきい値K2)以下となる。その様な場合に、混合用経路(Lm4、Lm5、Lm6)に介装された開閉弁(V4、V5、V6)を開放して、凝縮器(4)又は蒸発器(5)の液相冷媒を吸収器(1)内の吸収溶液又は希溶液ライン(La)を流れる希溶液に混合することにより、液相冷媒は蒸発器(5)で冷水ライン(Li)を流れる冷水から蒸発熱を奪うことなく、吸収器(1)内又は希溶液ライン(La)に投入される。その結果、冷水ライン(Li)を流れる冷水は蒸発熱を奪われず、冷水温度が過度に降温させることなく、冷房負荷に供給される。
すなわち、吸収冷凍機(20)で熱媒を冷却しても、蒸発器(5)で蒸発する液相冷媒が減少するので、冷房負荷に供給される冷水温度が必要以上に低下せず、空調温度が下がり過ぎてしまうことがない。
本発明によれば、熱媒が太陽熱により過熱してしまっても、その過熱の程度に応じて、段階毎に、蒸発器(5)における液相冷媒の蒸発量を減少させて、冷房負荷に供給される冷水の温度が必要以上に降温しない様に制御している。そのため、冷房負荷と同期しない太陽熱による熱媒の加熱量に対応して、空調温度を好適な温度に保ちつつ、吸収冷凍機において過熱した熱媒を冷却することができるのである。
冷房負荷の増大や日射量の減少等に起因して過熱した熱媒の温度が通常レベルまで低下すれば、再生器(2、3)における冷媒蒸気の再生量も通常レベルまで減少し、吸収冷凍機(20)の冷凍能力も通常レベルに復帰する。その結果、第1の温度計測装置(St1)で計測された温度(T1:冷水の蒸発器出口温度或いは蒸発器の液相冷媒温度)は、熱媒が過熱している場合には第2のしきい値(しきい値K2)以下の温度であったものが、第1のしきい値(しきい値K1)よりも高温となる。
その様な場合に、先ず、前記混合用経路(Lm4、Lm5、Lm6)に介装された開閉弁(V4、V5、V6)を閉鎖して、凝縮器(4)又は蒸発器(5)の液相冷媒が吸収器(1)内の吸収溶液又は希溶液ライン(La)を流れる希溶液と混合するのを停止し、次に、液媒ポンプ(Pg)を作動して蒸発器(5)の液相冷媒を冷水ライン(Li)に散布するように構成すれば(請求項2)、熱媒が過熱している状態から通常の温度まで降温した際にも、蒸発器(5)における液相冷媒蒸発量を適切に調節して、吸収冷凍機(20)において熱媒を冷却しつつ、空調温度を好適な温度に保つことが可能となる。
また本発明において、第2の温度計測装置(St2)で計測された温度(T2:太陽熱集熱装置を流過した直後の熱媒の温度或いは太陽熱集熱装置の表面温度)が第3のしきい値(しきい値K3)よりも高温となった場合に冷水の蒸発器出口温度(T1)の設定温度を、通常状態(第2の温度計測装置St2で計測された温度T2が第3のしきい値K3以下の状態)における冷水の蒸発器出口温度(T1)の設定温度よりも低く設定するように構成すれば(請求項3)、太陽熱回路(30)を循環する熱媒が過熱して、吸収冷凍機(20)の再生器(2、3)における冷媒蒸気の再生量が増加して蒸発器(5)において蒸発する液相冷媒の蒸発量が増加して、冷水の温度が低下しても、冷水の蒸発器出口温度(T1)における設定温度が低下しているので、吸収冷凍機(20)は停止しない。
吸収冷凍機(20)が停止せずに作動し続けているため、吸収冷凍機(20)における吸収溶液(希溶液)は加熱され続け、太陽熱回路を循環する熱媒は吸収冷凍機(20)により冷却され続ける。そのため、冷媒が過熱し、沸騰することによる太陽熱回路(30)の破損が防止される。
この場合において、太陽熱回路(30)を循環する熱媒が過熱された状態ではなくなり、太陽熱集熱装置(8)を流過した直後の熱媒の温度或いは太陽熱集熱装置の表面温度(T2)が第3のしきい値(しきい値K3)以下となっても、前記混合用経路(Lm4、Lm5、Lm6)に介装された開閉弁(V4、V5、V6)を閉鎖して、凝縮器(4)又は蒸発器(5)の液相冷媒が吸収器(1)内の吸収溶液又は希溶液ライン(La)を流れる希溶液と混合するのを停止し、そして液媒ポンプ(Pg)を作動して蒸発器(5)の液相冷媒を冷水ライン(Li)に散布した後でなければ、冷水の蒸発器出口温度(T1)の設定温度を通常状態(第2の温度計測装置St2で計測された温度T2が第3のしきい値K3以下の状態)における冷水の蒸発器出口温度(T1)の設定温度に復帰させない様に構成すれば(請求項4)、熱媒が過熱している状態から通常の温度レベルまで降温した際に、蒸発器(5)における液相冷媒蒸発量を適切に調節して、吸収冷凍機(20)において熱媒を冷却しつつ、空調温度を好適な温度に保つことが出来る。
さらに本発明において、太陽熱回路(30)を循環する熱媒がさらに過熱して、第2の温度計測装置(St2)で計測された温度(T2:太陽熱集熱装置を流過した直後の熱媒の温度或いは太陽熱集熱装置の表面温度)が第3のしきい値(しきい値K3)以下となり、且つ、第1の温度計測装置(St1)で計測された温度(T1(冷水の蒸発器出口温度或いは蒸発器の液相冷媒温度))が第2のしきい値(しきい値K2)よりも低温な第4のしきい値(しきい値K4)以下となった場合に、第2の開閉弁(V3)を開放して、希溶液ライン(La)を流れる吸収溶液(希溶液)を蒸発器(5)の液相冷媒に混合するように構成すれば(請求項5)、蒸発器(5)において冷水ライン(Li)に散布される液体は吸収溶液と液相冷媒の混合液となり、蒸発が抑制され、吸収冷凍機(20)は冷房能力を発揮しなくなる。そのため、冷水温度が低下してしまうことはない。
この状態においても、吸収溶液と液相冷媒の混合液は蒸発器(5)と吸収器(1)との間を循環し続けるので、吸収冷凍機(20)を運転し続けることが出来る。そのため、熱媒が保有する熱量は吸収溶液に投入され続け、熱媒は冷却され続ける。そのため、太陽熱回路(30)を破損することなく、しかも空調温度が低下し過ぎることが無い。
第2の開閉弁(V3)を開放した後、第2の温度計測装置(St2)で計測された温度(T2)が第4のしきい値(K4)よりも高温のしきい値(K4A)を上回った場合に、前記第2の開閉弁(V3)を閉鎖し、且つ、混合用経路(Lm4及び/又はLm6)に介装された開閉弁(V4及び/又はV6)を一定時間(Tr)開放すれば(請求項6)、第2の開閉弁(V3)を閉鎖することにより吸収溶液は蒸発器(5)内に流入しなくなり、開閉弁(V4及び/又はV6)を一定時間(Tr)開放することにより、蒸発器(5)内の吸収溶液と液相冷媒との混合液は吸収器(1)内に送り出され(V4を開放した場合)、或いは、希溶液ライン(La)に送り出される(V6を開放した場合)。そして、再生器(2、3)で再生された気相冷媒が蒸発器(5)に戻るので、所定時間(Tr)が経過すれば、蒸発器(5)内から吸収溶液は送出され、冷媒のみが蒸発器(5)内に存在することになる。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
最初に、図1〜図9を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
図1において、全体を符号100で示す太陽熱を利用した空調システムは、吸収冷凍機20と、太陽熱回路30とを有している。太陽熱回路30は、太陽熱集熱パネル8と、熱媒ラインLhとで構成されている。熱媒ラインLhは、太陽熱集熱パネル8で得られた熱量を、吸収冷凍機20の吸収溶液ライン(希溶液ライン)Laを流れる吸収溶液に投入する第3の熱交換器(太陽熱投入熱交換器)9に連通する。
ここで、図1および後述する図10〜図14において、流体ラインの各々に付した矢印は、流体の流れ方向を示している。
吸収冷凍機20は、吸収器1、高温再生器2、低温再生器3、凝縮器4、蒸発器5および制御手段であるコントロールユニット10を備えている。
吸収冷凍機20における吸収溶液としては、例えば臭化リチウム(LiBr)溶液が用いられる。そして冷媒としては、例えば水(HO)が用いられる。
吸収器1と蒸発器5とは、一体に構成された密閉容器150に配置されており、蒸発器5における液相冷媒貯留部(冷媒溜め)5Cの方が、吸収器1における吸収溶液貯留部1Cよりも上方に位置するように構成されている。後述する開閉弁V6を開放した際に、蒸発器5における液相冷媒貯留部5Cから希溶液ラインLaに向かって液相冷媒が流れ、希溶液ラインLaから吸収溶液が蒸発器5側に逆流することがないようにするためである。
吸収器1の吸収溶液貯留部1Cには、吸収溶液(臭化リチウム溶液)が貯留され、蒸発器5の液相冷媒貯留部5Cには液相冷媒が貯留される。ただし、後述する弁V3の開放制御を行った場合には、蒸発器5には吸収溶液と液相冷媒との混合物、すなわち希釈された吸収溶液が貯留される。係る制御については、図4及び図9において後述する。
蒸発器5における液相冷媒貯留部5Cの壁面は堰15を構成しており、堰15の高さは、蒸発器5側の冷媒(液相冷媒)の量が増加して所定量を超えた場合には、蒸発器5側の冷媒が液相冷媒貯留部5Cの堰15を越えて吸収器1へ溢れ出す様に設定されている。換言すれば、係る液相冷媒貯留部5Cの壁面(堰15)の高さは、空調負荷が小さく、太陽熱集熱パネル8により集熱される熱量が大きい場合に、蒸発器5側の液相冷媒貯留部5Cに溜まった冷媒が堰15を越えて吸収器1へ溢れ出す様に設定されている。
高温再生器2には、高温再生器2内の吸収溶液を加熱するためのガスバーナ12が装備され、ガスバーナ12には高質燃料(例えば都市ガス等)の供給ラインLfgが接続されている。
都市ガス供給ラインLfgには流量制御弁V1が介装され、ガスバーナ12に供給する高質燃料の供給・供給停止の制御や、高質燃料供給量の制御が可能なように構成されている。
吸収器1と高温再生器2とは、吸収溶液ポンプPaを介装した希溶液ラインLaで接続され、吸収溶液ポンプPaによって吸収器1から高温再生器2に希溶液が圧送される。
高温再生器2と低温再生器3とは、第1の吸収溶液戻りラインLbで接続され、高温再生器2で蒸気を再生して濃度の高まった吸収溶液が低温再生器3に送られる。
低温再生器3と吸収器1とは、第2の吸収溶液戻りラインLcで接続され、低温再生器3で蒸気を再生して濃度の高まった吸収溶液が吸収器1に戻される。
また、高温再生器2は、冷媒ラインLdにより凝縮器4と接続され、冷媒ラインLdは低温再生器3の液相部32を経由して凝縮器に連通している。高温再生器2で再生された蒸気(気相冷媒)は、低温再生器3内の吸収溶液に熱を投与し、液相冷媒になって凝縮器4に流入する。
低温再生器3と凝縮器4とは気相冷媒ラインLeで接続され、低温再生器3で再生した蒸気(気相冷媒)は凝縮器4に流入する。凝縮器4と蒸発器5とは液相冷媒ラインLfで接続され、凝縮器4で凝縮した液相冷媒は蒸発器5に流入する。
吸収器1と凝縮器4には冷却水ラインLwが通っており、冷却水ラインLwには、図示しない冷却塔と、吸収器1と、凝縮器4と、冷却水ポンプPwが介装されている。そして、冷却水ラインLwは、吸収器1内で吸収熱を奪い、凝縮器4内で凝縮熱を奪う様に構成されている。
蒸発器5の底部に貯留した液相冷媒は、液媒ポンプ(冷媒ポンプ)Pgを介装した冷媒汲み上げラインLgによって、蒸発器5内の散布管51に接続されている。冷媒ポンプPgは、制御信号ラインSoによってコントロールユニット10と接続している。
蒸発器5には、図示しない冷房負荷と蒸発器5を循環する冷水ラインLiが配置されている。蒸発器5の散布管51から散布された液相冷媒が冷水ラインLiに接触して気化した際に、冷水ラインLi内を流れる冷水から気化熱(潜熱)を奪うことにより、冷水ラインLi内を流れる冷水は冷却される。
冷水ラインLiには冷水ポンプPiが介装されており、矢印方向に冷水を循環させている。
希溶液ラインLaにおける吸収溶液ポンプPa吐出側の分岐点Baと、蒸発器5とは、吸収溶液ラインLm3(混合用経路)によって接続されている。吸収溶液ラインLm3には、開閉弁V3が介装されており、その開閉弁V3は、制御信号ラインSoを介して、コントロールユニット10と接続されている。
開放弁V3を開放すると、吸収溶液ポンプPaから吐出された吸収溶液(希溶液)は、分岐点Baと吸収溶液ラインLm3を介して、蒸発器5内に流入する。吸収溶液(希溶液)が吸収溶液ラインLm3を介して蒸発器5内に流入すれば、吸収溶液と液相冷媒との混合液体(希釈された吸収溶液)は蒸発器5では蒸発が抑制され、以って冷媒能力は抑制され、冷水の凍結が防止される。
開放弁V3を開放して、吸収溶液を蒸発器5の液相冷媒に混合しても、吸収液と液相冷媒の混合液体(希釈された吸収溶液)は蒸発器5と吸収器1との間を循環し続け、吸収冷凍機20は停止しない。
そして、図9を参照して後述する制御を行なえば、蒸発器5に流入した吸収溶液は吸収器1及び/又は希溶液ラインLaに送出され、蒸発器5内を冷媒のみが存在する状態に戻すことが出来る。
なお、開閉弁V3の開閉制御に関しては図4及び図9で詳述する。
冷媒汲み上げラインLgに介装された冷媒ポンプPgと散布管51との間の領域における分岐点Bgと、吸収器1とは、混合用経路である液相冷媒ラインLm4で接続されている。液相冷媒ラインLm4には、開閉弁V4が介装されており、開閉弁V4は制御信号ラインLoによってコントロールユニット10と接続されている。
開放弁V4を開放すると、蒸発器5の液相冷媒貯留部5Cに貯留している冷媒(液相冷媒)が、分岐点Bg、液相冷媒ラインLm4を介して、吸収器1に流入する。蒸発器5の液相冷媒が吸収器1に流入すれば、冷水ラインLiから気化熱を奪って蒸発する液相冷媒が減少し、冷房能力が抑制され、以って冷水の凍結が防止される。
なお、開閉弁V4の開閉制御に関しては、図5、図9で後述する。
凝縮器4と吸収器1とは、混合用経路である液相冷媒ラインLm5で接続されており、液相冷媒ラインLm5は開閉弁V5を介装している。開閉弁V5は、制御信号ラインSoを介して、コントロールユニット10と接続されている。
開放弁V5を開放すると、凝縮器4内の液相冷媒は、液相冷媒ラインLm5を介して吸収器1側に流入する。凝縮器4内の液相冷媒が液相冷媒ラインLm5を介して吸収器1側に流入すれば、その分だけ蒸発器5に送られる液相冷媒が減少し、蒸発器5における液相冷媒の蒸発が抑えられ、冷房能力が抑制されて、冷水の凍結も抑制される。
開閉弁V5の開閉制御に関しては、図6、図9で後述する。
蒸発器5の液相冷媒貯留部5Cと、希溶液ラインLaにおける吸収溶液ポンプPa吸込側の合流点Gaとは、混合用経路である液相冷媒ラインLm6で接続され、液相冷媒ラインLm6には開閉弁V6が介装されている。開閉弁V6は、制御信号ラインSoを介してコントロールユニット10と接続されている。
開放弁V6を開放すると、蒸発器5の液相冷媒貯留部5Cに貯留している液相冷媒が、液相冷媒ラインLm6及び合流点Gaを介して、希溶液ラインLaに流入する。上述したように、蒸発器5の液相冷媒貯留部5Cは、吸収器1の吸収溶液貯留部1Cよりも上方に配置されているので、開閉弁V6を開放した際に、蒸発器5における液相冷媒貯留部5Cから希溶液ラインLaに向かって液相冷媒が流下し、希溶液ラインLaから吸収溶液が蒸発器5側に逆流することはない。
蒸発器5内の冷媒が(液相冷媒ラインLm6及び合流点Gaを介して)希溶液ラインLaに流入すれば、その分だけ蒸発器5内の液相冷媒が減少し、蒸発して冷水ラインLiを流れる冷水から気化熱を奪うことが抑えられ、冷房能力が抑制されて、冷水の凍結も抑制することができる。
開閉弁V6の制御に関しては、図7、図9で後述する。
図1では明確には示していないが、第2の吸収溶液戻りラインLcを流れる濃度が高い吸収溶液は、吸収器1内を滴下して気相冷媒(水蒸気)を吸収する。
液相冷媒ラインLm5を流れる液相冷媒は、吸収器1内の吸収溶液と混合して、その濃度を低下せしめる(希溶液となる)。
希溶液ラインLaと第1の吸収溶液戻りラインLbには第1の熱交換器6が介装され、ラインLbを流れる高温の吸収溶液から希溶液ラインLaを流れる希溶液に熱が投与される。また、希溶液ラインLaと第2の吸収溶液戻りラインLcには第2の熱交換器7が介装され、ラインLcを流れる吸収溶液が保有する熱量が希溶液ラインLaを流れる希溶液に投与される。
太陽熱回路30を構成する熱媒ラインLhには、熱媒ポンプPhと、太陽熱投入用切換バルブ(三方弁)V2が介装されている。三方弁V2は、熱媒ラインLhにおける熱媒ポンプPhの吸入側の領域に配置されている。
三方弁V2と太陽熱集熱パネル8の出口側(図1における太陽熱集熱パネル8の上方)との間の領域には分岐点Bhが形成され、分岐点Bhと三方弁V2の一つのポートとがバイパスラインLhbによって接続されている。
太陽熱回路30のバイパスラインLhbと、吸収冷凍機20の希溶液ラインLaにおける第1の熱交換器6と第2の熱交換器7との間の領域には、第3の熱交換器(太陽熱投入熱交換器)9が介装されている。
前述したように、吸収冷凍機20における吸収溶液としては例えば臭化リチウム(LiBr)溶液が用いられ、冷媒としては例えば水(HO)が用いられる。しかし、吸収溶液及び冷媒は、LiBr水溶液及び水に限定されるものではなく、その他の吸収溶液や冷媒を使用することも可能である。
同様に、太陽熱回路30を循環する熱媒についても、特に限定される訳ではなく、公知の熱媒であれば適用可能である。例えば、不凍液を混合した水を熱バイトして用いることが可能である。
吸収冷凍機20には、冷房負荷に用いる冷水の温度を計測するための第1の温度計測装置(以下、第1の温度センサと言う)St1が装備されている。そして、第1の温度センサSt1は、入力信号ラインSiによってコントロールユニット10と接続されている。
ここで、第1の温度センサSt1を、蒸発器5の液相冷媒槽内に設置して、蒸発器5内の液相冷媒の温度を計測するように構成しても良い。
太陽熱回路30には、太陽熱集熱パネル8を流過した直後の熱媒の温度、或いは、太陽熱集熱パネル8の表面温度を計測するための第2の温度計測装置(第2の温度センサ)St2が装備されている。
第2のセンサSt2は、太陽熱集熱パネル8の過熱を防止するための過熱防止センサとしても機能する。図2及び図8で述べるように、第2のセンサSt2で太陽熱集熱パネル8の過熱を検知した場合、太陽熱回路30を循環する熱媒が保有する熱量が多過ぎると判断して、設定冷水温度(例えば、吸収冷凍機20の蒸発器5における冷水の出口温度であって、その温度よりも冷水温度が低下すると吸収冷凍機20の運転を停止する温度)を下げるように設定することが出来る。
第2のセンサSt2は、入力信号ラインSiによってコントロールユニット10と接続されている。
上述した様に、例えば冷房負荷が比較的小さいが、日射が強い状態では、太陽熱集熱パネル8において熱媒の温度が昇温し過ぎてしまう。
その様な事態が生じると、熱媒が保有する熱量が投入される吸収冷凍機20側では、吸収溶液である臭化リチウム水溶液が高温再生器2で晶析したり、或いは、蒸発器5で液相冷媒または冷水が凍結してしまうという問題が生じ、吸収冷凍機20の運転に重大な障害を及ぼしてしまう。
吸収冷凍機20における係る晶析や凍結を防止するために、冷房負荷が小さく且つ熱媒の温度が所定値以上に昇温した場合には、三方弁V2を制御して、熱媒が保有する熱量が吸収溶液の希溶液ラインLaに投入されないようにすることも可能である。しかし、その様に制御すると、太陽熱回路30を循環する熱媒が過熱されて、沸騰してしまう恐れがある。そして、熱媒が過熱、沸騰してしまうと、太陽熱回路30内の圧力が急上昇して、回路30を破壊してしまう恐れがある。また、熱媒が沸騰して気化してしまうと、太陽熱回路30に介装された熱媒ポンプPhがキャビテーションにより破損してしまう。
吸収冷凍機20の運転に重大な障害を及ぼすことなく、しかも熱媒が過熱、沸騰して太陽熱回路30の機器を破損することを防止するために、熱媒が保有する過剰な熱量(太陽熱)を吸収冷凍機20側で消費する必要がある。
そのため、図示の第1実施形態では、図2〜図9を参照して説明する制御を行なっている。
以下、図2〜図9を参照して、第1実施形態における各種制御について説明する。
最初に、図2で示す制御を説明する。図2で示す制御は、太陽熱回路30の収集熱量によって、吸収冷凍機20における冷水ラインLiを流れる冷水における設定冷水温度を変更する制御である。係る制御によれば、太陽熱集熱パネル8における集熱量が大きくても、太陽熱回路30を循環する熱媒が保有する熱量を吸収冷凍機20において、確実に消費することが出来る。
図2において、ステップS1では、第2のセンサSt2により太陽熱収集パネル8の出口熱媒温度(或いは、太陽熱集熱パネル8の表面温度)T2を計測する。
そしてステップS2では、計測温度T2が第3のしきい値K3(例えば、95℃程度)を超えたか否かを判断する。計測温度T2が第3のしきい値K3を超えていれば(ステップS2がYES)、太陽熱収集パネル8が過熱状態、すなわち、冷房負荷に対して集熱量(太陽熱の熱量)が過大な状態であると判断する。
通常、吸収冷凍機20においては、冷房負荷が小さい場合には、当該冷房負荷に対応して、冷媒蒸気の再生量が減少する。
これに対して、太陽熱集熱パネル8における集熱量が多く、太陽熱回路30を循環する熱媒温度が上昇すると、昇温した熱媒が保有する熱量は、第3の熱交換器9を介して、吸収冷凍機20を循環する吸収溶液(希溶液)に投入されるので、高温再生器2における冷媒再生量が増加して、必要とされる冷房負荷以上の冷凍能力を発揮してしまう。
上述したように、冷房負荷が小さく、太陽熱集熱パネル8における集熱量が多い場合に、太陽熱回路30を流れる熱媒が第3の熱交換器9をバイパスする様に三方弁V2を切り換え、吸収冷凍機20における冷媒再生量の増加と冷凍能力の増大とを防止すると、太陽熱回路30における機器の破損の恐れがある。
そこで、図2で示す制御では、計測温度T2が第3のしきい値K3を超えている場合(ステップS2がYES)、すなわち、冷房負荷が小さく、太陽熱集熱パネル8における集熱量が多いと判断される場合には、設定冷水温度を通常より降温して(低下して)吸収冷凍機20を運転する(ステップS3)。
この場合、「設定冷水温度」とは、吸収冷凍機20の冷水ラインLiを流れる冷水の温度、例えば蒸発器5の出口における冷水温度T1(第1の温度センサSt1で計測される冷水温度)がそれ以下に降温した場合には、吸収冷凍機20の運転を停止する、という温度を意味している。
太陽熱回路30を流れる熱媒温度が上昇し、第3の熱交換器9を介して吸収冷凍機20を循環する希溶液に大量の熱量が投入されて、冷媒蒸気の再生量が増大しても、設定冷水温度を通常より降温すれば、吸収冷凍機20は停止されずに運転を続行する。そして、吸収冷凍機20が運転し続ければ、昇温した熱媒は第3の熱交換器9で冷却されるので、太陽熱回路30内の機器が破損することも防止される。
ステップS2において、計測温度T2(太陽熱収集パネル8の出口熱媒温度、或いは、太陽熱集熱パネル8の表面温度)が第3のしきい値K3以下であれば(ステップS2がNO)、冷媒負荷に対して集熱量(太陽熱量)は過大ではないと判断して、設定冷水温度を通常通りにして運転する(ステップS4)。
ステップS3或いはステップS4を実行した後、ステップS1以降を繰り返す。
次に、図3の制御を説明する。
図3で示す制御は、第1のセンサSt1で温度T1、すなわち冷水出口温度(蒸発器5を出た直後における冷水ラインLi内の冷水温度)、或いは、蒸発器5における液相冷媒温度を計測し、計測温度T1が所定値(第1のしきい値)K1以下となった場合に、吸収冷凍機20の冷房能力が冷房負荷に対して過剰になったと判断して、冷媒ポンプPgを停止する制御である。
図3において、ステップS11では、第1の温度センサSt1で、冷水出口温度(或いは蒸発器5内の液相冷媒温度)T1を計測する。
次のステップS12では、コントロールユニット10は、計測された温度T1が所定値、すなわち第1のしきい値K1(例えば、6℃)以下であるか否かを判断する。
計測温度T1が第1のしきい値K1以下であれば(ステップS12がYES)、冷房負荷に対して吸収冷凍機20の冷凍能力が大き過ぎると判断して、冷媒ポンプPgを停止させる(ステップS13)。
冷媒ポンプPgを停止することにより、蒸発器5で貯留した液相冷媒が冷水ラインLiに散布されなくなるので、液相冷媒は冷水ラインLi内の冷水から気化熱を奪って蒸発することが出来ない。そして、蒸発器5内に貯留した液相冷媒が蒸発しなくなれば、太陽熱回路30内を循環する熱媒が昇温して、第3の熱交換器9を介して大量の熱が吸収冷凍機20を循環する吸収溶液(希溶液)に投入されて冷媒再生量が増加しても、吸収冷凍機20の冷房能力は増加しない。
ここで、蒸発器5内で液相冷媒が蒸発しなければ、気相冷媒が吸収器1側に戻らないので、吸収器1側の吸収溶液(臭化リチウム液)が濃縮したまま高温再生器2に送られてしまい、晶析する恐れがある。しかし、液相冷媒が蒸発器5内で一定以上貯留されると、液相冷媒貯留部5Cの側壁(堰15)を越えて吸収器1側に溢れ出て、吸収器1内の吸収溶液貯留部1Cで吸収溶液と混合される。その結果、吸収器1内における吸収溶液の濃度は低下し、高温再生器2における晶析の恐れも無くなる。
一方、計測温度T1が第1のしきい値K1を越えていれば(ステップS12がNO)、冷房負荷に対する吸収冷凍機20の冷凍能力は適正であると判断して、冷媒ポンプPgを作動する(ステップS14)。
ステップS13或いはステップS14を実行した後、再びステップS11以降を繰り返す。
次に、図4の制御を説明する。
図4で示す制御では、第2の温度センサ(過熱防止センサ)St2により太陽熱回路30の過熱状態を検知し、且つ、第1の温度センサSt1により温度T1(冷水出口温度、或いは蒸発器5内の液相冷媒温度)を計測し、St1で計測された温度とSt2で計測された温度により、吸収溶液ラインLm3に介装した開閉弁V3を開閉制御している。
図4において、ステップS21では、第2の温度センサSt2により、太陽熱集熱パネル8の出口温度(或いは、パネル8の表面温度)T2を計測する。そして、計測された温度T2が、第3のしきい値K3よりも高温であるか否かを判断する(ステップS22)。
計測温度T2が第3のしきい値K3よりも高温であれば(ステップS22がYES)ステップS23に進み、計測温度T2が第3のしきい値K3以下であれば(ステップS22がNO)ステップS26に進む。
ステップS23(計測温度T2が第3のしきい値K3を超えている場合:ステップS22がYES)では、第1のセンサSt1で温度T1(冷水出口温度、或いは蒸発器5の液相冷媒温度)を計測する。そして、計測された温度T1が第4のしきい値K4(例えば、5℃)以下か否かを判断する(ステップS24)。
計測温度T1が第4のしきい値K4以下であれば(ステップS24がYES)ステップS25に進み、しきい値K4よりも高温であれば(ステップS24がNO)ステップS26に進む。
ステップS25(計測温度T1が第4のしきい値K4以下:ステップS24がYES)では開閉弁V3を開放する。
ここで、第4のしきい値K4は、図2、図3、図5〜図7に示す各制御におけるしきい値K1〜K3よりも低温であり、温度T1(冷水出口温度、或いは蒸発器5の液相冷媒温度)が第4のしきい値K4以下であるということは、非常事態としての意味合いを有している。
開閉弁V3を開放すれば、吸収器1内の吸収溶液が、吸収溶液ラインLm3を介して蒸発器5液相冷媒に混合する。吸収溶液と液相冷媒とが混合した混合溶液(希釈された吸収溶液)は液相冷媒に比較して沸点が上昇するので、冷水ラインLi内の冷水の温度では気化しない。そのため、蒸発器5において冷水ラインLi内の冷水から気化熱は奪われず、その結果として吸収冷凍機20における冷房能力は抑制される。
図4の制御を行ない、蒸発器5で吸収溶液と液相冷媒とが混合した後であっても、吸収冷凍機20をそのまま運転することができる。蒸発器5内では、吸収溶液と液相冷媒とが混合した混合溶液(希釈された吸収溶液)は蒸発しないが、運転を継続すると当該混合溶液が増加して、液相冷媒貯留部5Cの側壁(堰1)を越えて吸収器1側に溢れ出る。そのため、吸収溶液は吸収器1、高温再生器2、低温再生器3間を循環し、高温再生器2と低温再生器3とで冷媒蒸気の再生が続行される。
換言すれば、開閉弁V3を開閉すれば、吸収冷凍機20は停止することなく、冷媒蒸気の再生を続行するが、蒸発器5における液相冷媒の蒸発量は抑制される。そのため、第3の熱交換器9を介して、太陽熱回路30を流れる熱媒が保有する熱量を吸収冷凍機20に投入しても、冷房負荷が冷房されすぎてしまうことは無い。
ステップS26(ステップS22がNO、或いは、ステップS24がNOの場合)では開閉弁V3を閉鎖する。ステップS25或いはステップS26の後、ステップS21以降を繰り返す。
ステップS25で開閉弁V3を開放した後、図9で後述する制御を行なえば、蒸発器5内の吸収溶液を吸収器1及び/又は希溶液ラインLaに送り出して、蒸発器5内を冷媒のみの状態に復帰させることが出来る。
次に、図5で示す制御を説明する。
この制御は、第1のセンサSt1によって冷水出口温度或いは蒸発器5の液相冷媒温度T1が第2のしきい値K2以下に下がったか否かを検知した場合の制御であり、液相冷媒ラインLm4に介装した開閉弁V4の開閉制御である。
図5では図示されていないが、図5の制御は、第2の温度センサSt2によって太陽熱回路30の過熱を検知したことが前提となる。第2の温度センサSt2によって太陽熱回路30の過熱を検知した後、ステップS31で、第1のセンサSt1により、冷水出口温度或いは蒸発器5の液相冷媒温度T1を計測する。そして、計測した温度T1が第2のしきい値K2(例えば、5.5℃)以下か否かを判断する(ステップS32)。
ここで、第2のしきい値K2(例えば、5.5℃)は、図4で説明した第4のしきい値K4(例えば、5℃)よりも高温に設定されている。
計測した温度T1が第2のしきい値K2以下であれば(ステップS32がYES)ステップS33に進み、第2のしきい値K2よりも高温であれば(ステップS32がNO)ステップS34に進む。
ステップS33(計測した温度T1が第2のしきい値K2以下:ステップS32がYES)では開閉弁V4を開放する。
開閉弁V4を開放し、液媒ポンプPgの吐出側と吸収器1とを液相冷媒ラインLm4で連通(バイパス)させることにより、液相冷媒は散布管51には送られず、吸収器1内で吸収溶液と混合する。液相冷媒ラインLm4を経由して吸収器1に送られた液相冷媒は、冷水ラインLiを流れる冷水から蒸発熱を奪うことが無いので、当該液相冷媒の分だけ、吸収冷凍機20は冷房能力を発揮しない。そのため、第3の熱交換器9を介して太陽熱回路30を流れる熱媒が保有する熱量が吸収冷凍機20を循環する吸収溶液(希溶液)に投入されても、吸収冷凍機20により冷房負荷側を過剰に冷却してしまうことが防止される。
ステップS34(計測した温度T1が第2のしきい値K2よりも高温:ステップS32がNO)では、開閉弁V4を閉鎖する。
ステップS33或いはステップS34を実行した後、再びステップS31以降を繰り返す。
次に、図6で示す制御について説明する。
図6の制御では、第1の温度センサSt1によって、温度T1(冷水出口温度或いは蒸発器5の液相冷媒温度)と第2のしきい値K2とを比較して、液相冷媒ラインLm5に介装した開閉弁V5を開閉制御している。
図6で示す制御も、第2のセンサSt2によって、太陽熱回路30の過熱を検知した後に行なわれる。第2のセンサSt2によって、太陽熱回路30の過熱を検知したならば、図6のステップS41において、第1のセンサSt1により、温度T1(冷水出口温度、或いは、蒸発器5の液相冷媒温度)を計測する。そして、計測した温度T1が第2のしきい値K2(5.5℃)以下か否かを判断する(ステップS42)。
計測した温度T1が第2のしきい値K2以下であれば(ステップS42がYES)ステップS43に進み、第2のしきい値K2よりも高温であれば(ステップS42がNO)ステップS44に進む。
ステップS43(計測した温度T1が第2のしきい値K2以下:ステップS42がYES)では、開閉弁V5を開放する。
開閉弁V5を開放すると、凝縮器4の液相冷媒は、液相冷媒ラインLm5を介して吸収器1に流入する。換言すれば、液相冷媒ラインLm5を介して吸収器1に流入した液相冷媒は、蒸発器5において冷水ラインLiを流れる冷水から気化熱を奪って蒸発することが無いので、当該液相冷媒の分だけ、吸収冷凍機20は冷房能力を発揮することなく運転される。
そのため、太陽熱回路30内を流れる熱媒が昇温して、その保有する熱量が吸収冷凍機20に投入されても、吸収冷凍機20は冷房負荷を過剰に冷却してしまうことが無い。
ステップS44(計測した温度T1が第2のしきい値K2よりも高温:ステップS42がNO)では開閉弁V5を閉鎖する。
ステップS43或いはステップS44を実行した後、ステップS41以降を繰り返す。
次に、図7の制御を説明する。
図7で示す制御は、第1のセンサSt1によって温度T1(冷水出口温度、或いは蒸発器5の液相冷媒温度)を計測し、計測された温度T1と第2のしきい値K2とを比較して、液相冷媒ラインLm6に介装した開閉弁V6の開閉制御している。
図7で示す制御も、第2のセンサSt2によって、太陽熱回路30の過熱を検知した後に行なわれる。第2のセンサSt2によって、太陽熱回路30の過熱を検知したならば、図7のステップS51において、第1のセンサSt1により温度T1(冷水出口温度、或いは蒸発器5の液相冷媒温度)を計測する。そして、計測した温度T1が第2のしきい値K2(5.5℃)以下か否かを判断する(ステップS52)。
計測した温度T1が第2のしきい値K2以下であれば(ステップS52がYES)ステップS53に進み、第2のしきい値K2よりも高温であれば(ステップS52がNO)ステップS54に進む。
ステップS53(計測した温度T1が第2のしきい値K2以下:ステップS52がYES)では、開閉弁V6を開放する。
開閉弁V6を開放すると、蒸発器5の液相冷媒は、液相冷媒ラインLm6を介して、吸収器1と高温再生器2とを接続する希溶液ラインLaにおける吸収溶液ポンプPaの吸込側の領域に合流して、希溶液ラインLaを流れる吸収溶液と合流して、混合する。液相冷媒ラインLm6を介して希溶液ラインLaと合流する液相冷媒は、蒸発器5において冷水ラインLiを流れる冷水から気化熱を奪って蒸発することは無く、当該液相冷媒の分だけ、吸収冷凍機20は冷房能力を発揮することなく運転される。従って、太陽熱回路30を流れる熱媒が昇温して、第3の熱交換器9を介して吸収冷凍機20に熱(太陽熱)を投入しても、吸収冷凍機20が冷房負荷を過剰に冷却してしまうことが防止される。
ステップS54(計測した温度T1が第2のしきい値K2よりも高温:ステップS52がNO)では、開閉弁V6を閉鎖する。
ステップS53或いはステップS54を実行した後、再びステップS51以降を繰り返す。
なお、図5で示す制御(V4の開放)、図6で示す制御(V5の開放)、図7で示す制御(V6の開放)は、制御としては等価であり、開放弁V4〜V6の開放は各々単独で行なっても良いが、開放弁V4〜V6を複数同時に開放することも可能である。換言すれば、図5〜図7の制御を複数組み合わせて実行しても良い。
次に、図8及び図9を参照して、上述した図2〜図7で示す制御の全てを実施した場合について説明する。
図8において、ステップS61では、第2の温度センサSt2によって温度T2(太陽熱収集パネル8の出口熱媒温度、或いは、パネル表面の温度)を計測する。そしてステップS62では、計測された温度T2が第3のしきい値K3よりも高温であるか否かを判断する。計測温度T2が第3のしきい値K3よりも高温であれば(ステップS62がYES)、太陽熱収集パネル8が過熱された状態であり、冷房負荷に比較して太陽熱が過大な状態であると判断する。そして、設定冷水温度を通常時よりも降温(低下)して運転するように設定する(ステップS63)。そして、ステップS64に進む。
一方、計測温度T2が第3のしきい値K3以下であれば(ステップS62がNO)、ステップS741で、その制御サイクルにおいては、設定冷水温度が通常時(冷房負荷に対して、太陽熱集熱量が適正な場合)の数値となっているか否かを判断する。
当該制御サイクルにおいて、設定冷水温度が通常時の数値であれば(ステップS741がYES)、ステップS61に戻る。
すでにステップS63の制御を行なっており、当該制御サイクルにおいて設定冷水温度が通常時の数値よりも低い場合には(ステップS741がNO)、ステップS61で計測された温度T2と、第3のしきい値K3よりも低温のしきい値K3A(=K3−ΔK3)とを比較する。温度T2がしきい値K3A(=K3−ΔK3)よりも低温であれば(ステップS742がYES)、冷房負荷に比較して太陽熱が過大な状態ではなくなったと判定して、設定冷水温度を通常時の数値にして(ステップS75)、ステップS61に戻る。温度T2がしきい値K3A(=K3−ΔK3)以上であれば(ステップS742がNO)、設定冷水温度を通常時の数値にすることなく、ステップS61に戻る。
設定冷水温度が通常時の数値よりも低温に設定されている状態から、設定冷水温度が通常時の数値に戻すか否かを判断する(ステップS742)のに際して、ステップS62と同一のしきい値K3を用いる場合には、設定冷水温度を低い数値に設定する制御と、通常時の値に戻す制御とが頻繁に繰り返されて、いわゆる「ハンチング状態」になってしまう恐れがある。
そのためステップS742では、第3のしきい値K3よりも低温のしきい値K3A(=K3−ΔK3)と温度T2とを比較し、以って、ハンチング状態となってしまうことを防止している。
ここで、温度ΔK3は、設定冷水温度が通常時よりも低温に設定する制御と、設定冷水温度を通常時の数値に戻す制御とが、いわゆる「ハンチング状態」とならないような数値として設定されている。
ステップS61〜S63、S741、S742、S75の制御は、図2で示す制御に対応している。従って、係る制御の作用効果は、図2を参照して説明したのと同様である。
ステップS64では、温度センサSt1により温度T1(冷水出口温度、或いは蒸発器5の液相冷媒温度)を計測する。次のステップS65では、コントロールユニット10は、計測温度T1が所定値(第1のしきい値K1:例えば6℃)以下であるか否かを判断する。計測温度T1が第1のしきい値K1以下であれば(ステップS65がYES)、冷房負荷に対して吸収冷凍機20の冷却能力が過剰であると判断して、冷媒ポンプPgを停止させる(ステップS66)。そして、ステップS67に進む。
一方、計測温度T1が第1のしきい値K1(6℃)よりも高温であれば(ステS65がNO)、ステップS762において、その制御サイクルでは冷媒ポンプPgが作動しているか否かを判断する。
当該制御サイクルにおいて、冷媒ポンプPgが作動中であれば(ステップS761がYES)、ステップS61に戻る。
すでにステップS66の制御を行なっており、当該制御サイクルにおいては冷媒ポンプPgが停止していれば(ステップS761がNO)、ステップS64で計測された温度T1と、第1のしきい値K1よりも高温のしきい値K1A(=K1+ΔK1)とを比較する。温度T1がしきい値K1A(=K1+ΔK1)よりも高温であれば(ステップS762がYES)、冷房負荷に比較して太陽熱が過大な状態ではなくなったと判定して、冷媒ポンプPgを作動して(ステップS763)、ステップS61に戻る。
温度T1がしきい値K1A以下であれば(ステップS762がNO)、冷媒ポンプPgを停止したまま、ステップS61に戻る。
冷媒ポンプPgが停止した状態から、冷媒ポンプPgを作動するか否かを判断する(ステップS742)に際して、ステップS65と同一のしきい値K1を用いる場合には、冷媒ポンプPgの作動と停止とが頻繁に繰り返されてしまう可能性が高い。
そのため、冷媒ポンプPgが停止した状態から、冷媒ポンプPgを作動するか否かを判断する(ステップS742)に際しては、第1のしきい値K1よりも低温のしきい値K1A(=K1−ΔK1)と温度T1とを比較し、以って、冷媒ポンプPgの作動と停止とが頻繁に繰り返されてしまうことを防止している。
ここで、温度ΔK1は、冷媒ポンプPgを停止する工程(ステップS66)と冷媒ポンプPgを作動する工程(ステップS763)とが頻繁に繰り返されないような数値として設定されている。
ステップS64〜S66、S761〜S763で示す制御は、図3で示す制御に対応しており、その作用効果も、図3で説明したのと同様である。
ステップS67では、ステップS64と同様に、第2の温度センサSt2によって温度T2(太陽熱収集パネル8の出口熱媒温度、或いは、パネル表面の温度)を計測する。次のステップS68では、計測温度T1が所定値(第2のしきい値K2:例えば5.5℃)以下であるか否かを判断する。
計測温度T1が第2のしきい値K2(5.5℃)以下であれば(ステップS68がYES)、冷房負荷に対して吸収冷凍機20の冷却能力が過剰であると判断して、開閉弁V4〜V6の何れか或いは全てを開放して(ステップS69)、ステップS70に進む。上述したように、V4〜V6の開放は制御としては等価であり、開放弁V4〜V6を各々単独で開放しても良いが、開放弁V4〜V6を複数同時に開放することも可能である。
一方、計測温度T1が第2のしきい値K2(5.5℃)よりも高温であれば(ステップS68がNO)、ステップS771で、その制御サイクルにおいては、開閉弁V4〜V6の何れかが開放されているか否かを判断する。
当該制御サイクルにおいて、開閉弁V4〜V6が全て閉鎖されていれば(ステップS771がNO)、ステップS64に戻る。
すでにステップS69の制御を行なっており、当該制御サイクルにおいて開閉弁V4〜V6の何れかが開放されている場合には(ステップS771がYES)、ステップS67で計測された温度T1と、第2のしきい値K2よりも高温のしきい値K2A(=K2+ΔK2)とを比較する。温度T1がしきい値K2A(=K2+ΔK2)よりも高温であれば(ステップS772がYES)、冷房負荷に比較して太陽熱が過大な状態ではなくなったと判定して、開閉弁V4〜V6を全て閉鎖して(ステップS773)、ステップS64に戻る。
温度T1がしきい値K2A以下ならば(ステップS772がNO)、開閉弁V4〜V6を全て閉鎖することなく、ステップS64に戻る。
開閉弁V4〜V6の何れかが開放されている状態から、開閉弁V4〜V6を全て閉鎖するか否かを判断する(ステップS772)のに際して、ステップS68と同一のしきい値K2を用いる場合には、開閉弁V4〜V6の何れかを開放する制御と、開閉弁V4〜V6を全て閉鎖する制御とが頻繁に繰り返されてしまう可能性が高い。
そのためステップS772では、第2のしきい値K2よりも高温のしきい値K2A(=K2+ΔK2)と温度T1とを比較し、以って、開閉弁V4〜V6の頻繁な開閉を防止している。
ここで、温度ΔK2は、開閉弁V4〜V6の開閉が頻繁とはならないような数値として設定されている。そして、しきい値K2A(=K2+ΔK2)は第1のしきい値K1以下の温度に設定される。
ステップS67〜S69、S771〜S773の制御は、図5〜図7で説明した制御と対応しており、その作用効果も、図5〜図7で説明したのと同様である。
ここで、計測温度T1が第2のしきい値K2(5.5℃)よりも高温の場合(ステップS68がNO)には、ステップS771〜ステップS773の制御を実行してから、いきなりステップS61に戻って、ステップS61〜S63、S75の制御(図2に対応する制御)を行なうのではなく、ステップS64に戻り、ステップS64〜S67、S761〜S763の制御を行なっている。
S64〜S67、S761〜S763の制御(図3に対応する制御)を行なう段階の方が、ステップS61〜S63、S741、S742、S75の制御(図2に対応する制御)を行なう段階に比較して、冷房負荷に対して吸収冷凍機20の冷却能力がより過剰な状態となっており、制御そのものが臨界或いは限界に近い状態となっている。そのため、先ず、臨界或いは限界に近い制御に(図3に対応する制御)を行ない、液媒ポンプPgを停止する制御(図3に対応する制御)を行なう必要がなくなった後(ステップS65がNOになってから)、臨界或いは限界から遠い状態の制御(ステップS61〜S63、S741、S742、S75の制御)を行なっている。
その結果、熱媒が過熱している状態から通常の温度レベルまで降温した際に、蒸発器5における液相冷媒蒸発量を適切に調節して、吸収冷凍機20において(太陽熱回路30を循環する)熱媒を冷却しつつ、空調温度を好適な温度に保つことが出来る。
ステップS70では、ステップS64、S68と同様に、温度T1(冷水出口温度、或いは蒸発器5の液相冷媒温度)を計測する。そして、次のステップS71で、計測温度T1が第4のしきい値K4(例えば5℃)以下であるか否かを判断する。
ここで、第4のしきい値K4は第2のしきい値K2よりも低温に設定されており、吸収冷凍機20の運転を続行するか否かの臨界値或いは限界値である。
計測温度T1が第4のしきい値K4(5℃)以下であれば(ステップS71がYES)、冷房負荷に対して吸収冷凍機20の冷却能力が過剰であると判断して、吸収溶液ラインLm3の開閉弁V3を開放し(ステップS72)、ステップS73に進む。
ステップS73では、コントロールユニット10は、空調システム100の運転を停止するか否かを判断する。空調システム100の運転を停止するのであれば(ステップS73がYES)、停止・再起動ルーチンに進む。空調システム100の運転を続行するのであれば(ステップS73がNO)、ステップS70以下を繰り返す(ステップS73がNOのループ)。
一方、計測温度T1が第4のしきい値K4(5℃)よりも高温であれば(ステップS71がNO)、ステップS781で、その制御サイクルにおいて開閉弁V3が開放しているか否かを判断する。
当該制御サイクルにおいて、開閉弁V3が閉鎖されていれば(ステップS781がNO)、ステップS67に戻る。
既にステップS72の制御を行なっており、当該制御サイクルにおいて開閉弁V3が開放されている場合には(ステップS781がYES)、ステップS70で計測された温度T1と、第4のしきい値K4よりも高温のしきい値K4A(=K4+ΔK4)とを比較する。温度T1がしきい値K4A(=K4+ΔK4)よりも高温であれば(ステップS782がYES)、冷房負荷に比較して太陽熱が過大で吸収冷凍機20の運転が限界を超えた状態ではなくなったと判定して、開閉弁V3を閉鎖して(ステップS783)、ステップS784に進む。
温度T1がしきい値K4A以下ならば(ステップS772がNO)、開閉弁V3を閉鎖することなく、ステップS67に戻る。
開閉弁V3が開放されている状態から、開閉弁V3を閉鎖するか否かを判断する(ステップS782)のに際して、ステップS71と同一のしきい値K4を用いる場合には、開閉弁V3を開放する制御と閉鎖する制御とが頻繁に繰り返されてしまう可能性が高い。
そのためステップS782では、第4のしきい値K4よりも高温のしきい値K4A(=K4+ΔK4)と温度T1とを比較し、以って、開閉弁V3の頻繁な開閉を防止している。
ここで、温度ΔK4は、開閉弁V3の開閉が頻繁とはならないような数値として設定されている。そして、しきい値K4A(=K4+ΔK4)は第2のしきい値K2以下の温度に設定される。
ステップS784(温度T1がしきい値K4Aよりも高温で、開閉弁V3を閉鎖した状態)は、開閉弁V3が開放されている(ステップS781がYESの場合)であるのが前提である。係る場合においては、開閉弁V3を経由して吸収溶液が蒸発器5内に流入し、吸収溶液と液相冷媒が既に混合しているので、開閉弁V3を閉鎖しても、蒸発器5における冷水の冷却能力は回復しない。
そのため、ステップS784〜S786で、蒸発器5から吸収溶液を流出して、液相冷媒のみ存在する状態に復帰させている。
ステップS784では開閉弁V4及び/又はV6を開放し、開放後の時間を計測する。
開閉弁V4を開放することにより、蒸発器5に存在する吸収溶液と液相冷媒との混合液(希溶液)は、ラインLm4を介して吸収器1内に流入する。それと共に/或いは、開閉弁V6を開放することにより、蒸発器5に存在する吸収溶液と液相冷媒との混合液(希溶液)は、ラインLm6を介して希溶液ラインLaに送られる。
その後、吸収溶液と液相冷媒との混合液(希溶液)は高温再生器2、低温再生器1で冷媒蒸気を再生し、濃縮されて吸収器1に戻る。再生した冷媒蒸気は凝縮器4で凝縮して、蒸発器5に戻る。その様なサイクルを一定時間Tr繰り返せば、吸収溶液は蒸発器5から全て流出し、蒸発器5には冷媒のみが存在する状態に復帰するのである。
ステップS785では、当該一定時間Tr(吸収溶液が蒸発器5から全て流出するのに十分な時間)が経過したか判定し、一定時間Trが経過したならば(ステップS785がYES)、開閉弁V4及び/又はV6を閉鎖して、弁V4、V6開放後の時間計測を終了する(ステップS786)。
図9では開閉弁V4及び/又はV6を開放した後、一定時間Trが経過した後に開閉弁V4及び/又はV6を閉鎖しているが(ステップS784〜S786)、開閉弁V4及び/又はV6を閉鎖するタイミングについては、その他の手法により決定することが可能である。
例えば、蒸発器5の液相冷媒貯溜部5Cに液面計(図示せず)を設置し、当該液面計により液相冷媒貯溜部5Cから液相冷媒が無くなったことを検知した後に、開閉弁V4及び/又はV6を閉鎖しても良い。
ステップS70からステップS72、ステップS781〜S783の制御は、図4で示す制御に対応しており、その作用効果も図4で説明したのと同様である。
ここで、計測温度T1が第4のしきい値K4(5℃)よりも高温の場合(ステップS71がNO)には、ステップS781〜S786の制御を行なってから、いきなりステップS64に戻り、ステップS64〜S66、S761〜S763の制御(図3に対応する制御)を行なうのではなく、ステップS67に戻り、ステップS67〜S69、S771〜S773の制御(図5〜図7に対応する制御)を行なっている。
ステップS67〜S69、S771〜S773の制御(図5〜図7に対応する制御)を行なう段階の方が、S64〜S67、S761〜S763の制御(図3に対応する制御)やステップS61〜S63、S741、S742、S75の制御(図2に対応する制御)を行なう段階に比較して、制御そのものが臨界或いは限界に近い制御となっている。そのため、先ず、臨界或いは限界に近い制御に(ステップS67〜S69、S771〜S773の制御:図5〜図7に対応する制御)を行ない、係る制御(図5〜図7に対応する制御)をする必要がなくなった後(ステップS68がNOになってから)、臨界或いは限界から遠い状態の制御(S64〜S67、S761〜S763の制御:図3に対応する制御)を行なっている。
そして、熱媒が過熱している状態から通常の温度レベルまで降温した際に、蒸発器5における液相冷媒蒸発量を適切に調節して、吸収冷凍機20において(太陽熱回路30を循環する)熱媒を冷却しつつ、空調温度を好適な温度に保っている。
図8及び図9で示す制御においては、図2で示す制御と対応する制御(ステップS61〜S63、S75)、図3で示す制御と対応する制御(ステップS64〜S66、S76)、図5〜図7で示す制御と対応する制御(ステップS67〜S69、S77)、図4で示す制御と対応する制御(ステップS70〜S73、S78)の順番に行なわれる。そして、ステップS68、ステップS71において、しきい値よりも高温であれば(吸収冷凍機20の能力が冷房負荷に対して過剰ではない状態に遷移すると)、後で実行された制御を優先的に解除している。
次に、図10を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。
第1実施形態において、図5で示す制御、図6で示す制御、図7で示す制御は、制御としては等価であり、パラレルに実行可能である旨を説明した。
図10で示す第2実施形態の空調システム102では、第1実施形態から、図6で示す制御を行なうための構成と、図7で示す制御を行なうための構成を削除して、図5で示す制御を行なうための構成のみを残存させている。
ここで、図5で示す制御を行うための構成とは、冷媒ポンプPgの吐出側から分岐(Bg)して吸収器1の底部に連通する液相冷媒ラインLm4と、ラインLm4に介装された開閉弁V4である。
図10の第2実施形態における制御については、図6、図7の制御を行なわない点と、図9において開閉弁V5、V6については開閉制御を行なわない点が、第1実施形態の制御とは異なっている。
図10の第2実施形態におけるその他の構成及び作用効果については、図1〜図9の第1実施形態と同様である。
次に、図11を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。
図11で示す第3実施形態では、図5で示す制御、図7で示す制御は行なわずに、図6で示す制御を実行するように構成されている。そして、図11で示す第3実施形態の空調システム103では、図1で示す空調システム100から、図5で示す制御を行なうための構成と、図7で示す制御を行なうための構成を削除して、図6で示す制御を行なうための構成のみを残存させている。
ここで、図6で示す制御を行うための構成とは、凝縮器4から吸収器1に連通する液相冷媒ラインLm5と、ラインLm5に介装された開閉弁V5である。
図11の第3実施形態における制御は、図5の制御と図7の制御を行なわない点と、図9において開閉弁V4、V6の開閉制御は行なわない点では、図2〜図9の第1実施形態における制御とは異なっている。
図11の第3実施形態におけるその他の構成及び作用効果については、図1〜図9の第1実施形態と同様である。
次に、図12を参照して、本発明の第4実施形態について説明する。
図12で示す第4実施形態では、図5で示す制御、図6で示す制御は行わず、図7で示す制御を実行するように構成されている。そして、図12で示す第4実施形態に係る空調システム104では、第1実施形態に係る空調システム100から、図5で示す制御を行なうための構成と、図6で示す制御を行なうための構成を削除して、図7で示す制御を行なうための構成のみを残存させている。ここで、図7で示す制御を行うための構成とは、蒸発器5から吸収器1に連通する液相冷媒ラインLm6と、ラインLm6に介装された開閉弁V6である。
図12の第4実施形態における制御は、図5で示す制御と図6で示す制御を行なわない点と、図9において開閉弁V4、V5の開閉制御を行なわない点が、図1〜図8の第1実施形態における制御と相違している。
図12の第4実施形態におけるその他の構成及び作用効果については、図1〜図9の第1実施形態と同様である。
図1〜図12の第1実施形態〜第4実施形態では、太陽熱回路30が吸収冷凍機20と熱的に連通する態様として、吸収冷凍機20の希溶液ラインLaに太陽熱投入熱交換器9を介装して、太陽熱投入熱交換器9で太陽熱回路30を流れる熱媒体と吸収冷凍機20を循環する吸収溶液(希溶液)とで熱交換を行なっている。
しかし、太陽熱回路30が吸収冷凍機20と熱的に連通する態様としては、太陽熱熱交換器9によるものに限定されない。
例えば、図13の第5実施形態で示すように、太陽熱再生器WE9を設け、太陽熱回路30を流れる熱媒体が保有する熱量により、太陽熱再生器WE9内の吸収溶液を加熱して、冷媒蒸気(気相冷媒)を再生しても良い。図13では、太陽熱再生器WE9は、吸収冷凍機20において、希溶液ラインLaの低温溶液熱交換器7と高温溶液熱交換器6との間の領域における分岐点WBから分岐した希溶液ラインLabに連通している。
太陽熱再生器WE9で再生した気相冷媒は、冷媒ラインLWを経由して凝縮器4に流入する。また、太陽熱再生器WE9で気相冷媒を再生した後の吸収溶液(濃溶液)は、濃溶液ラインLcbを流れ、低温再生器3と低温溶液熱交換器7との間の領域における合流点WGで濃溶液ラインLcと合流する。
なお、太陽熱再生器WE9を介装する位置については、吸収冷凍機20における溶液サイクル(例えばシリーズフロー、パラレルフロー、リバースフロー)や太陽熱回路30側の熱媒温度等諸条件等により、適宜、設定されるべきであり、図13で示す位置には限定されない。
図13の第5実施形態におけるその他の構成及び作用効果については、図1〜図12の各実施形態と同様である。
また、図14の第6実施形態で示すように、太陽熱投入熱交換器9と太陽熱再生器WE9とを設けることも出来る。図14では、太陽熱投入熱交換器9は、吸収冷凍機20の希溶液ラインLaの低温溶液熱交換器7と高温溶液熱交換器6との間の領域に介装されている。そして太陽熱再生器WE9は希溶液ラインLabに連通しており、希溶液ラインLabは、太陽熱投入熱交換器9と高温溶液熱交換器6との間の領域における分岐点WBで、希溶液ラインLaから分岐している。そして太陽熱回路30の熱媒ラインLhにおける分岐点Bhから分岐しているバイパスラインLhbは、太陽熱再生器WE9を経由して、太陽熱投入熱交換器9を経由してから、熱媒ラインLhと合流している。
ここで、太陽熱投入熱交換器9と太陽熱再生器WE9の位置は、図14で示す構成に限定されるものではなく、吸収冷凍機20における溶液サイクル(例えばシリーズフロー、パラレルフロー、リバースフロー)や太陽熱回路30側の熱媒温度等諸条件等により、適宜、設定される。
図14の第6実施形態におけるその他の構成及び作用効果については、図1〜図13の各実施形態と同様である。
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない旨を付記する。
例えば、図示の実施形態では、吸収冷凍機20はいわゆる「シリーズフロー」タイプに形成されているが、それ以外のタイプ(いわゆる「パラレルフロー」タイプ、「リバースフロー」タイプ、その他)であっても良い。
太陽熱回路30が吸収冷凍機20と熱的に連通する態様についても、太陽熱熱交換器9や、太陽熱再生器WE9に限定される訳ではない。
本発明の第1実施形態のブロック図。 第1実施形態で行なわれる制御の1例を示すフローチャート。 第1実施形態で行なわれる図2とは異なる制御を示すフローチャート。 第1実施形態で行なわれる図2、図3とは異なる制御を示すフローチャート。 第1実施形態で行なわれる図2〜図4とは異なる制御を示すフローチャート。 図5で示す制御と等価な制御であって、図5の制御と選択的に或いは同時に行なわれる制御を示すフローチャート。 図5、図6で示す制御と等価な制御であって、図5、図6の制御と選択的に或いは同時に行なわれる制御を示すフローチャート。 図2〜図7で示す制御を全て実行する制御の一部を示すフローチャート。 図8の制御の他の部分を示すフローチャート。 本発明の第2実施形態のブロック図。 本発明の第3実施形態のブロック図。 本発明の第4実施形態のブロック図。 本発明の第5実施形態のブロック図。 本発明の第6実施形態のブロック図。
符号の説明
1・・・吸収器
2・・・高温再生器
3・・・低温再生器
4・・・凝縮器
5・・・蒸発器
6・・・第1の熱交換器
7・・・第2の熱交換器
8・・・太陽熱集熱パネル
9・・・第3の熱交換器/太陽熱投入熱交換器
10・・・制御手段/コントロールユニット
12・・・ガスバーナ
15・・・堰
20・・・吸収冷凍機
30・・・太陽熱回路
51・・・散布管
100・・・空調システム
K1・・・第1のしきい値
K2・・・第2のしきい値
K3・・・第3のしきい値
K4・・・第4のしきい値
La・・・吸収溶液ライン/希溶液ライン
Lb・・・吸収溶液の第1の戻りライン
Lc・・・吸収溶液の第2の戻りライン
Ld、Le・・・気相冷媒ライン
Lf・・・液相冷媒ライン
Lg・・・冷媒汲み上げライン
Lh・・・熱媒ライン
Li・・・冷水ライン
Lm3・・・吸収溶液ライン
Lm4、Lm5、Lm6・・・混合用経路/液相冷媒ライン
Lw・・・冷却水ライン
Pa・・・吸収溶液ポンプ
Pg・・・液媒ポンプ/冷媒ポンプ
Pw・・・冷却水ポンプ
St1・・・第1の温度計測装置/第1の温度センサ
St2・・・第2の温度計測装置/第2の温度センサ(過熱防止センサ)

Claims (6)

  1. 吸収冷凍機(20)と、太陽熱集熱装置(8)と、太陽熱集熱装置を介装しており且つ吸収冷凍機(20)と熱的に連通している太陽熱回路(30)と、吸収冷凍機(20)の蒸発器(5)と冷房負荷とを連通する冷水ライン(Li)を流れる冷水の蒸発器出口温度或いは蒸発器の液相冷媒温度を計測する第1の温度計測装置(St1)と、凝縮器(4)又は蒸発器(5)の液相冷媒を再生器(2、3)内の吸収溶液又は希溶液ライン(La)を流れる希溶液に混合する混合用経路(Lm4、Lm5、Lm6)と、混合用経路(Lm4、Lm5、Lm6)に介装された開閉弁(V4、V5、V6)と、制御装置(10)とを備え、制御装置(10)は、第1の温度計測装置(St1)で計測された温度(T1)が第1のしきい値(K1)以下となった場合に蒸発器(5)の液相冷媒を冷水ライン(Li)に散布する液媒ポンプ(Pg)の作動を停止し、第1の温度計測装置(St1)で計測された温度(T1)が第1のしきい値(K1)よりも低温な第2のしきい値(K2)以下となった場合には混合用経路(Lm4、Lm5、Lm6)に介装された開閉弁(V4、V5、V6)を開放して、凝縮器(4)又は蒸発器(5)の液相冷媒を吸収器(1)内の吸収溶液又は希溶液ライン(La)を流れる希溶液に混合する機能を有することを特徴とする空調システム。
  2. 前記制御装置(10)は、第1の温度計測装置(St1)で計測された温度(T1)が第2のしきい値(K2)以下の状態から第1のしきい値(K1)よりも高温のしきい値(K1A)を上回った場合に、先ず、前記混合用経路(Lm4、Lm5、Lm6)に介装された開閉弁(V4、V5、V6)を閉鎖して、凝縮器(4)又は蒸発器(5)の液相冷媒が吸収器(1)内の吸収溶液又は希溶液ライン(La)を流れる希溶液と混合するのを停止し、次に、液媒ポンプ(Pg)を作動して蒸発器(5)の液相冷媒を冷水ライン(Li)に散布する機能を有する請求項1の空調システム。
  3. 前記太陽熱回路(30)内には熱媒が循環しており、太陽熱集熱装置(8)を流過した直後の熱媒の温度或いは太陽熱集熱装置(8)の表面温度を計測する第2の温度計測装置(St2)を有し、前記制御装置(10)は、第2の温度計測装置(St2)で計測された温度(T2)が第3のしきい値(K3)よりも高温となった場合に冷水の蒸発器出口温度の設定温度を、通常状態における冷水の蒸発器出口温度の設定温度よりも低く設定する機能を有している請求項1または請求項2の空調システム。
  4. 前記制御装置(10)は、第2の温度計測装置(St2)で計測された温度(T2)が第3のしきい値(K3)より低温のしきい値(K3A)を下回った場合には、前記混合用経路(Lm4、Lm5、Lm6)に介装された開閉弁(V4、V5、V6)を閉鎖して、凝縮器(4)又は蒸発器(5)の液相冷媒が吸収器(1)内の吸収溶液又は希溶液ライン(La)を流れる希溶液と混合するのを停止し、そして液媒ポンプ(Pg)を作動して蒸発器(5)の液相冷媒を冷水ライン(Li)に散布した後に、冷水の蒸発器出口温度の設定温度を通常状態における冷水の蒸発器出口温度の設定温度に復帰させる機能を有する請求項3の空調システム。
  5. 吸収冷凍機(20)の吸収器(1)と再生器(2)を連通する希溶液ライン(La)の吸収溶液用ポンプ(Pa)吐出口側の領域から分岐して蒸発器(5)に連通する吸収溶液ライン(Lm3)と、該吸収溶液ライン(Lm3)に介装された第2の開閉弁(V3)を有し、前記制御装置(10)は、第2の温度計測装置(St2)で計測された温度(T2)が第3のしきい値(K3)以下となり、且つ、第1の温度計測装置(St1)で計測された温度(T1)が第2のしきい値(K2)よりも低温な第4のしきい値(K4)以下となった場合に、前記第2の開閉弁(V3)を開放して、前記吸収溶液ライン(Lm3)を介して希溶液ライン(La)を流れる吸収溶液(希溶液)を蒸発器(5)の液相冷媒に混合する機能を有する請求項3または請求項4の空調システム。
  6. 前記制御装置(10)は、第2の温度計測装置(St2)で計測された温度(T2)が第4のしきい値(K4)よりも高温のしきい値(K4A)を上回った場合に、前記第2の開閉弁(V3)を閉鎖し、且つ、混合用経路(Lm4及び/又はLm6)に介装された開閉弁(V4及び/又はV6)を開放する機能を有する請求項5の空調システム。
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