JP2010003326A - 変更色の生成及び表示装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 塗色の分光反射率を測定する分光光度計と;測定された分光反射率を入力し演算して、変更色の変更分光反射率を得るためのコンピュータと;変更色のコンピュータグラフィックを表示するモニターとを具備することを特徴とする変更色の表示装置。
【選択図】 図1
Description
自動車外板塗色の選定支援方法)これも感性のデータベースの検索であり色変更ではない。
分光光度計を用いて、元塗色の分光反射率を測定すること、
測定した分光反射率を変更して、変更色の変更分光反射率を得ること、及び
変更色のコンピユータグラフィックをモニターに表示することを含むことを特徴とするコンピユータグラフィックを用いた変更色の生成及び表示方法
が提供される。
塗色の分光反射率を測定する分光光度計と、
測定された分光反射率を変更して、変更色の変更分光反射率を得るための手段と、
変更色のコンピユータグラフィックを表示するモニターとを具備することを特徴とする変更色の生成及び表示装置
が提供される。
色を変更する最も確実な方法は、色の物理量である分光反射率を変更する方法である。多角度の分光光度計で測定した反射率を以下のようにあらわす。
R(x,λ)
ここで、Rは反射率 Relectanceであり、測定機付属の校正板で校正した反射率%で表す。xは受光角度であり、一般に、正反射光からの偏角で表す。λは波長であり、一般に、可視光範囲400−700nmの間を10nm間隔(波長数31個),20nm間隔(波長数16個)で表す。
正確には、この中にさらに入射角度の変数が必要であるが、ある測定系において入射角度は固定であり、測色学の規格から−45度を採用する機器がほとんどであるので、省略した。
xの受光角度が取りえる範囲は、測定機器の種類によって異なる。例えば村上色彩研究所製の変角分光光度計GCMSでは、入射角度と受光角度を1度間隔で任意に変えられる
。しかしメタリック塗色の測色では一般に入射角度を−45度、受光角度を正反射光からの偏角で表して、5度から110度まで最小1度(通常は5から10度)刻みで測定できる。X−Rite社の携帯型分光光度計MA68の場合は入射角度−45度、受光角度15,25,45,75,110度の5角度であり、通常のメタリック塗色ならばこの5角度測定でハイライト(15度、25度)から正面(45度)からシェード(75度、110度)まで必要かつ十分に測定できる。一般に以下のように表す。
x1,x2...xn (i=1,n) nが受光角度の数
波長λは400−700nmの間を10nm間隔(波長数31個),20nm間隔(波長数16個)で表し、一般に以下のように書く
λ1,λ2,,,,,λm(j=1,m) mが波長の数
以上をまとめると、メタリック色を多角度の分光光度計で測定した測定値は
R(xi,λj) i=1,n j=1,m
で表すことができる。本報告では、多角度分光光度計にMA68をモデルに採用し、以下の議論はn=5、m=16として式を展開する。すなわち、以下の記号となる。
x1=15度,x2=25度,x3=45度,x4=75度,x5=110度
λ1=400nm,λ2=420nm,,,,,λ16=700nm
2.1 全角度の反射率を一律、係数k倍する方法
元色の反射率Rを変更して、新しい色の反射率R’を得る方法として元の反射率R(x,λ)に正の実数係数kを乗じる方法が最も簡便である。正の実数ならば、反射率が0.0以下になることはなく、実際の色に適用できる。
R’(x,λ)=k*R(x,λ)
受光角度毎に乗じる係数を変える場合は
R’(xi,λj)=ki * R(xi,λj) i=1,5 j=1,16 ....式1
と表される。全角度の反射率を一律にk倍する方法はメタリック塗色の反射率を平行移動することであり、色彩科学的には三刺激値XYZでは明るさY値が、CIE Labでは明度L*値が変り、色相と彩度の変化は少ない結果になる。
メタリック塗色の色を変えるときに、ハイライトを強く変えたい、またはシェードの色だけを変えたい要望がある。この場合は、角度xiの係数kiだけを変えることは不適である。なぜならば、メタリック塗色ではある角度の反射率だけを変えることはできず、ハイライトからシェードまで、連続的に反射率が変るためである。そこで反射率に乗じる係数kを角度xに対する一次関数で近似する。つまり、ハイライトx1度における係数をk1,シェードx5度における係数をk5とすると、中間のk2,k3,k4は,まず、x1度とx5度の間の傾きsを求めた後
s=(k5 − k1)/(x5 − x1)..........式2
k2=k1 + s*(x2−x1)
k3=k1 + s*(x3−x1)
k4=k1 + s*(x4−x1)
一般にki=k1+(xi−x1)*(kn−k1)/(xn−x1)となる。この係数の値を1.0よりも大きくすると反射率は増大し、1.0よりも小さければ反射率は減少する。研究の結果、元色の色質感を損なわずに変更する範囲はk1,k5の変更域が0.1から2.0の間が、より好適には0.8から1.2の間が好ましい。あまり大きく変えると極端に色が変りすぎてしまう欠点がある。例えばx1=0.8,x5=1.2とすると、中間の値はx2=0.84,x3=0.93,x4=1.05となる。
3.1 陰影感を表すパラメータ
最も、基本的なメタリック塗色の質感のうち、ハイライトと正面の陰影感を表すパラメータを説明する。一般的にはIV、SV、FFとして知られている。MA68の5角度を用いて測定した場合は、MA68の測定値から求めたという意味でIV68,SV68,FF68の記号を用いる。陰影感とは、ハイライトの明るさと、正面からシェードの明るさの比である。ゆえに、分光反射率の演算では、ハイライト15度の反射率と、正面45度からシェード75度の反対率の演算と同じ事である。実際には、乗じる係数をハイライトが1.0以上、シェードが1.0以下にすると、ハイライトがアップしシェードがダウンするので、陰影感は増し、より金属感が強くなる。
IV68はハイライト側k1度(MA68なら15度)の三刺激値XYZの内、明るさを表すY値であるSV68は正面のk3度(MA68なら45度)の三刺激値XYZの内、明るさを表すY値であるFF68はIV68とSV68から下式を用いて計算できるパラメータである。
FF68=2×(IV68−SV68)/(IV68+SV68)
IV68はハイライト、つまり正反射光近傍の明るさであり、白の100を越えると目視では明度から輝度へと感じるパラメータであり、値が大きい程、より強い輝きが得られ、金属感が強く感じる。
SV68は正面の明るさであり、値が小さいほど、正面からシェードが暗く感じ、金属感が強く感じる。
FF68はハイライトと正面の明るさ比、つまりコントラストを表しているパラメータであり、とりうる値は0.0から2.0までである。値が大きい程、金属感が強くなる。一般に、方向性がない顔料だけを含んでいるソリッド塗色では0.0、アルミフレークを含むシルバーメタリック塗色で1.6から1.8である。なお、ここで用いている明るさYは三刺激値XYZは分光反射率をJIS Z8701を用いて計算できる。
ハイライトの明るさ(または輝度)IV68を増やす場合は、 k1=1.05,k5=1.0とし、式2から中間のk2,k3,k4を求める。x1度の新たな反射率R’は式1で求める。また、逆にIVを減らす場合は、k1=1/1.05=0.9523,k5=1/1.0=1.0として、ハイライトの係数倍率を1.0よりも小さくし、式2によって各角度のkiを求めて式1で計算する。こうすることによって、逆にIV68を減少させることができる。
k1,k5の値は、この値に限定するものではなく、0.5から1.5の間が適する範囲であるが、特にハイライトの輝度の変更は、目視で目立つので、1.05程度が妥当である。
実際に画面上で色を変えるときは、”IV68をup”のコマンドを実行すると、式1から変更色のR’を計算し、画面に各角度の色度値CIE Lab*,Lch*、さらにIV68,SV68,FF68を表示し、元の色との色差を計算して、各角度の色差ΔEを画面に表示するとともに、CS画像も表示する。
”IV68をup”を1回実行した後、効果が小さく、目的のハイライトの輝度に達していない場合は、更に、現在の変更色に対して、再度、”IV68をup”コマンドを実行することができる。この場合の係数はk1=1.05*1.05=1.1025となり、実行する度にIV68は増加する。
正面の明るさSV68を増加させる場合は、k1=1.0,k5=1.2とし、逆に減少させる場合はk1=1/1.0,k5=1/1.2とし式2で中間の角度の係数を計算する。
ハイライトとシェードの陰影感を増加させる場合はk1=1.05,k5=0.8とし、逆に減少させる場合はk1=1/1.05,k5=1/0.8とし、式2で中間の角度の係数を計算する。
彩度が高い色の反射率は赤なら赤、青なら青の主波長の反射率が大きく、それ以外は小さい色であり、反射率の山谷が急峻な曲線である。この操作を受光角度毎に反射率レベルで行うには以下の手順で行う
<彩度を増減する手順>
1)現在の反射率R(x,λ)におけるある角度xでの波長方向での反射率の最大値R(x,max)と最小値R(x,min)を得る。
2)R(x,max)とR(x,min)の中点を計算し、これをRc(x)とする
Rc(x)=[R(x,max)−R(x,min)]/2
3)Rcを0.0として、Rmax側を正、Rmin側を負として、山側が正、谷側が負の新たな反射率Rnを作成し、これに角度毎の係数kを乗じる。係数kが1.0よりも大きければ、山谷が広がり、より強い彩度が得られる。逆にkが1.0よりも小さい場合は山谷の間隔が狭まり、彩度が低下する。
Rn(x,λ)=k*[R(x,λ)−Rc(x)]
4)再度、RcをRnに足して、彩度変更後の反射率R’を得る。その際、kが1.0よりも大きい場合は、R’が負の場合があるので、その時は測定機が測定できる最小の反射率0.001%とする。
R’(x,λ)=Rn(x,λ) + Rc(x)
R’(x,λ)>=0.001 5)ここで、角度毎のkは以下のように設定する
ハイライトからシェードまで全角度の彩度を上げたい時は、k1=k2=k3=k4=k5=1.05とし、下げたいときはk1=k2=k3=k4=k5=1/1.05とする。
ハイライトの彩度を主に上げたいときはk1=1.05,k5=1.0として、式2で中間の係数k2,k3,k4を計算する。逆にハイライトの彩度を下げたいときはk1=1/1.05,k5=1.0とする。同様にシェードの彩度を上げたいときはk1=1.0,k5=1.2、下げたいときはk1=1.0,k5=1/1.2とする。
次に色相を変える方法として2つの方法を述べる。最初に紹介する方法は反射率の波長を長波長の赤味にシフトする方法(Red Shiftともいう)と短波長の青味にシフトする方法(Blue shiftと呼ぶ)である。現在、流通しているデジタル分光光度計は、波長範囲400−700nmの可視光領域を10nmか、20nm毎の離散的な波長で測定し、反射率を得る。波長をシフトさせるには、この測定機が測定する波長間隔でシフトさせると、色が極端に変るので、波長λ1番目とλ2番目の反射率R(λ1),R(λ2)の間を直線近似し、この間隔λ2−λ1をp分割して、測定波長よりも小さい単位で波長を動かす方式をとる。このように測定機の波長間隔Δλをpで割った値がシフトさせる波長単位dλ=Δλ/pとなる。この分割数pは整数でなくても任意の正の実数でもかまわない。
dλの値の範囲は、−20nmから+20nmの範囲が好ましい。これよりも大きいと、色相が極端に変ってしまい色修正とは言えない。より好適には−5nmから+5nmの範囲が適当である。
今、測定波長範囲が400−700nm、波長間隔が20nmで測定した16個の反射率があるとする。これを
R(λ) λ=1,16
とし、これを5分割し20/5=4nm毎に動かすとする。
R(λ)=R(λ)+[R(λ+1)−R(λ)]/5 λ=1,15 式3.1
最後のR(16)番目は長波長の端の700nmであり、R(16+1)=R(17)番目は存在しないので、この場合はR(16)は動かさない。
R(λ)=R(λ)+[R(λ−1)−R(λ)]/5 λ=2,16 式3.2
最初のR(1)は短波長の端の400nmであり、R(1−1)=R(0)番目は存在しないので、この場合は、R(1)は動かさない。
ここで、角度毎に色のシフトを変えたい場合は、分割数pを変えればよい。つまり分割数pが小さければ、大きく波長を動かし、結果として色のシフトが大きいなる。例えば、5角度の全角度を一律4nm毎波長をシフトさせる場合はx1角度の分割数p1,x2角度の分割数p2,,,,x5角度の分割数p5を同じ値に設定する。仮に波長間隔dLが20nmとすれば20nm/5=4nmであるから。
p1=p2=p3=p4=p5=5
ハイライトを主に変えたいときは、ハイライト側の角度の分割数を小さくし、シェード側の分割数を大きくし、その間の角度の波長の分割数は比例計算式2で求めておこなう。例えば、以下のように設定すると
p1=2,p5=10
波長間隔Δλ=20nmとするとハイライト側の角度x1は20nm/2=10nmシフトし、シェード側の角度x5では20/10=2nmシフトすることになる。同様にシェード側を主に変えたいときは、ハイライト側の角度の分割数を大きくし、シェード側の分割数を小さくする。例えば、以下のように設定すると
p1=10,p5=2
ハイライト側の角度x1では20nm/10=2nmシフトし、シェード側の角度x5では20/2=10nmシフトすることになる。
6.1 カラーフィルターを乗じる
色味を変えるもう一つの方法は、カラーフィルターを元の反射率に乗じる方法である。あらかじめ、赤、緑、青、黄色のr,g,b,yのカラーフィルターであるFr(λ),Fg(λ),Fb(λ),Fy(λ)を用意し、これに元の反射率R(λ)を乗じて、新しい色R’(λ)を得る。例えば、赤味にするためには以下のようにする。
R’(x,λ)=R(x,λ)*Fr(λ)
このカラーフィルターはあらかじめ以下のように作成しておく。
カラーフィルターの色は原理的にどんな色のものを作成してもかまわないが、色変更した後の反射率を後工程でCCMを用いて配合を計算するためには塗料で使う顔料で作成した方がよい。そこで、日塗工の色見本帳から、彩度が高く且つ明度が低い、つまり主波長の色純度が高い色を選ぶ。この反射率を元に、例えば赤なら、およそ600−700nmの主波長の範囲の係数を1.1、波長成分がない400−500nmの係数を0.9から1.0の値を持つ係数ベクトルを作成し、これをカラーフィルターとして用いる。色フィルターを作成するために用いた雛型の反射率は、どんな色票でもよいが、塗料で作成された、色見本帳(例えば日本塗料工業会発行の日塗工色見本帳、オートカラー見本帳)が適する。
このように、カラーフィルターの係数ベクトルの値は、雛型とした反射率を0.9−1.1の間に圧縮した形をとっている。これは、雛型の反射率をそのまま使用すると、主波長は反射率が高いが、それ以外は反射率が0.1%以下であり、この反射率を元の反射率に乗じると、元の色の反射率が極端に小さくなり、色変化が大きいためである。つまり、
元の色を殺さず、それに僅かに赤味を着色するために、主波長に1.0よりも高い係数を、それ以外に1.0よりも僅かに小さい係数、好適には0.9から1.1の範囲の係数ベクトルを乗じる方法が現実的である。
全角度の色味を変える場合は受光角度のよらず、カラーフィルターF(λ)を元の反射率R(x,λ)に乗じれば良いが、角度毎に着色度を変える場合には、前述した<彩度を増減する手順>を用いて、カラーフィルターF(λ)の係数の山谷を角度毎の係数でk倍に変えた(伸張した、または、圧縮した)新たなカラーフィルターを作成し、これを元の反射率R(x,λ)に乗じる方法を採用する。
7.1 反射率の混合方式
ある反射率に別の色の反射率を混色する方法は、単純に
R’(x,λ)=c1*R(x,λ) + c2*W(x,λ)
ここで濃度比率はc1+c2=1.0である。Wが混じる塗色の角度毎の反射率である。KS理論では色材のKS値での加法性はあるが反射率同士の加法性は無いことが知られている。しかしながら、反射率同士の配合比率による足し算でも比較的デザインイメージに合う色を変えることができ、この目的には十分である。例えば、シルバーメタリックの反射率に青ソリッドの反射率を混ずれば、ハイライトではアルミフレークからの高い輝度が、そしてシェードでは青顔料からの拡散光がみられ、デザインイメージは合っている。
受光角度毎に混色の強さを変えるには単純に、混合比率c2を係数kに応じて増減させることとであると考え、
R’(x,λ)=c1=R(x,λ)+ (c2*k)*W(x,λ)
ここで濃度比率はc1+kc2=1.0
上記の式でkが受光角度毎の重み付けで、ハイライトに沢山の混色を行いたければ
k1=1.1,k5=0.9 条件 k1>k5
とし、式*で中間の角度のおけるkを求める。
シェードに多くの混色を行いたい場合は
k1=0.9,k5=1.1 条件k5>k1
とする。
例えば、別の色の反射率をc2=0.2部加え、ハイライトに沢山加え、シェードに少し加えたい場合はk1=1.1,k5=0.9とすると、受光角度x1では0.2*1.1=0.22加え、受光角度x5では0.2*0.9=0.18加えることになる。
作成したメタリック塗色の色質感を変更するプログラムのメイン画面を図3に示した。左下部に色を変えるメニューがあり、左上部に変更後のIV68,SV68,FF68を表示し,その下にハイライト15度と正面45度の色相h*,彩度c*を表示し、その下に元色との受光角度毎の色差ΔEを表示し、その下に変更色を”色彩再現域の上限の表”でチェックした後、色域が越えている場合はエラー表示をする。右側には元色と変更後の色のCS画像を表示し、視覚的に同時に色質感の差を評価できるようになっている。
中粒径(平均粒径14μm)のアルミフレークにカーボンブラック顔料を加え、アルミフレーク15PHR(樹脂100に対する色材の重量)、カーボン5PHRの塗色を作成し、中塗り板の上に完全隠蔽になるまで塗装した後、ウエットオンウエットでクリヤー塗
料を塗装し、最後に140度、30分硬化させた塗板を得て、これを元色(記号C1)とした。尚、本検討は測色学をベースにした色質感の変更方法であるから、塗料は溶剤型でも水性型でも、焼き付け型でも常乾型でも適用は可能である。以後の塗色サンプルの作成も特に塗料の種類や硬化のタイプを指定せずに、単に色材の顔料濃度をPHRで記述する。
キナクリドンバイオレット顔料6.86PHR,カーボンブラック1.81PHR,着色干渉ゴールドマイカ10.08PHRを混合してダークレッドマイカ色の元色C2を作成した。
中粒径のアルミフレーク20PHRを含むシルバーメタリック色の元色C3を作成した。
日本塗料工業会作成の見本帳T版から以下の色を選び、X−Rite社のMA68で測色し、45度の反射率を採用した。波長方向に係数が0.9から1.1の範囲の色フィルターを作成しそれを図4に示した。赤フィルター(red)はT05−50Vを参考にし、赤の反射率曲線と同じような形になるように係数を決定した。緑フィルター(green)はT55−30Lを参考にし、青フィルター(blue)はT72−40Tを参考にし、黄フィルター(yellow)はT25−80Wを参考にして作成した(図4)。
以下の3色を用意し、その測色値を表2に示した。
フタロシアニンブルーとチタン白で作成した鮮明な青ソリッド色。
干渉青マイカ色を白素地に塗装したスケ色。
着色ゴールドマイカ色とカーボンブラックを混合した、ダークゴールドマイカ色
変更色が実際の工場で塗装可能か否かを判断するための、色再現域の上限の表を作成した。表3は塗色の作成工程が2C1B工程で、あるユーザーのA工場のラインで過去に塗装した塗色約3000色を解析して、発色の上限を調べた表である。表3−1は受光角度毎に取りうる最大の明度をY、L*として規定している。表3−2は、フリップフロップFF68を0.2段階づつに区切り、その中で最大のIV68を規定している。表3−3はハイライトx1=15度における色相h*を30度ずつに区切り、その中で取りうる最大の彩度を示している。彩度が高いと隠ぺい力が悪くなるので、この値は意匠性の彩度と塗色設計の技術とのせめぎあいで毎回問題になる重要な指標である。
米国X−Rite社の5角度分光光度計MA68で測定し得た5角度分光反射率に対して、<手順3>の方法でIV68,SV68,FF68の3つの質感パラメータを個別に増減する処理を行った。よって、受光角度と反射率に乗じる係数の記号は以下のように定義できる。
ハイライト x1= 15度 係数 k1(明るさをY値をIV68という)
ハイライト x2= 25度 係数 k2
正面 x3= 45度 係数 k3(明るさY値をSV68という)
シェード x4= 75度 係数 k4
シェード x5=110度 係数 k5
2*Rとなった。質感の計算結果は表1−1から
元色C1 IV68=36.6,SV68=7.7,FF68=1.31
変更色C1−1’IV68=44.5,SV68=8.8,FF68=1.34
またグラフを図5−1に示した。図より、変更後の色のIV68が優先的に増加している目的の質感が得られた。
元色C1 IV68=36.6,SV68=7.7,FF68=1.31
変更色C1−2’ IV68=36.6,SV68=9.8,FF68=1.15
またグラフを図5−2に示した。図より、変更後の色はIV値は同じで、SV値とシェード側のY値も増加して、FF68が小さくなった目的の質感が得られた。
元色C1 IV68=36.6,SV68=7.7,FF68=1.31
変更色C1−3’ IV68=44.5,SV68=6.8,FF68=1.47
またグラフを図3−3に示した。図より、変更後の色はIV値が増加し、SV値が減少し、FF値が増加している。
元色C2の全角度の彩度を増加させるため角度毎の倍率係数をk1=k2=k3=k4=k5=1.05とし、<彩度を増減させる手順>に従って変更色C2−1’を作成した。また、彩度を減少させるためにはk1=k2=k3=k4=k5=1/1.05として変更色C2−2’を作成した。以下に、ハイライトx1=15度のLch*を示す。色相h*はほぼ一定で、彩度c*だけが変化しているのが分かる。5角度の色度値を表1−2に示した。ハイライト15度で比べると、
元色C2 L*=24.5 c*=36.8 h*=8.6
変更色C2−1’ L*=22.0 c*=43.8 h*=9.4
変更色C2−2’ L*=26.4 c*=31.5 h*=9.2
またグラフを図6に示した。図より、彩度を増加させた色は反射率の山谷が拡大している。また彩度を減少させた色は反射率の山谷の幅が減少している。
波長をシフトして、色相を主に変えるために元色C2を用いた。全角度の波長をシフトさせるため角度毎の倍率係数をk1=k2=k3=k4=k5=1.0とし、長波長側に+4nmシフトさせ、より赤味を強くしたた変更色C2−3’と短波長側に−4nmシフトさせて青味にした変更色C2−4’を作成した。
元色C2 L*=24.5 c*=36.8 h*=8.6
変更色C2−3’ L*=27.1 c*=37.3 h*=18.1
変更色C2−4’ L*=22.8 c*=32.7 h*=3.2
またグラフを図7に示した。図より、波長が元色に対して長波長と短波長にずれている
ことが分かる。
元色C3のシルバーメタリック色に色フィルターを乗じて色を変更する実験を行った。色フィルターを元色C3に全角度同じ係数倍率k1=k2=k3=k4=k5=1.0として、元色に乗じて変更色をそれぞれC3−1’(red),C3−2’(green),C3−3’(blue),C3−4’(yellow)を作成した。以下にハイライトx1=15度のLch*を示す。彩度c*,色相h*が希望どおり変わっているのが分かる。5角度の色度値を表1−3に示した。ハイライト15度で比べると、
元色C3 L*=126.0 c*=0.7 h*=247.6
変更色C3−1’ L*=125.4 c*=5.2 h*=29.0
変更色C3−2’ L*=129.4 c*=5.8 h*=133.3
変更色C3−3’ L*=126.0 c*=7.8 h*=248.0
変更色C3−4’ L*=127.5 c*=7.4 h*=75.5
またグラフを図8に示した。図8−1が元色C3のシルバーメタリック色の5角度の分光反射率である。図8−2が赤フィルターを乗じたC3−1’の結果、同様に図8−3が緑フィルターを乗じたC3−2’の結果、図8−4が青フィルターを乗じたC3−3’の結果、図8−5が黄色フィルターを乗じたC3−4’の結果である。図より、変更後の各色の反射率は元色C3の無彩色のシルバーメタリック色にカラーフィルターを乗じた形状になっている。
混色を行うために、元色C3の分光反射率に対して混色用塗色W1,W2,W3の分光反射率を以下の比率0.2から0.5で混色した。
変更色C3−5’ = 0.8*C3 + 0.2*W1
変更色C3−6’ = 0.8*C3 + 0.2*W2
変更色C3−7’ = 0.5*C3 + 0.5*W3
5角度の色度値を表1−3に、グラフを図9に示した。図9−1が元色のC3の5角度の分光反射率である。図9−2がW1を混色したC3−5’、図9−3がW2を混色したC3−6’、図9−4がW3を混色したC−7’を示している。図より、変更後の各色の反射率は元色C3の無彩色のシルバーメタリック色に混色の色W1からW3を乗じた形状になっている。また、作成したCGも混色の結果を反映させる画像であった。
”色彩再現域の上限の表”を用いて、変更色が希望の塗装工程(2C1B,3コート等)と塗装ライン上で実現できるか否かを調べなくてはならない。そのために、”色彩再現域の上限の表”の作成方法の一例を示す。このような”色彩再現域の上限の表”を作成し、変更色を作成するたびに変更色がこの表の範囲内かを調べる。もしも、この範囲を越えた場合は、図3のプログラム実行画面の中で<警告>表示を行い、オペレーターに注意を喚起する。これにより、工業ラインで作成できないような非現実的な色を作成してしまう危険を防止している。
作成した、変更色を実際に作成するためにカラーライブラリーによる色の検索を行って、色差の小さい塗色を探すことができる。上記作成したC1−1’からC3−7’に対して近似色検索を行った結果を表4に示した。この表には、検索結果の15度、25度、45度、75度の4角度における色差で近似色の検索精度を表している。色差が小さい程、変更色に近い色質感の色が検索できたことを示している。一般に、意匠性を評価する世界では、ハイライトの色差が5程度、正面が3程度、シェードが2程度なら、デザイン的に近似色と言うことができる。よって、表から8割以上の変更色の近似色が検索できたこと
になり、その近似色の過去の配合を用いて変更色を作成することができる。色差が大きい変更色は次のCCMを用いて配合計算を行うこともできる。
メタリック塗色のCCMを行った結果を表4に示す。表ではハイライト25度、正面45度、シェード75度の予測色差を示した。この予測色差が小さい程、予測配合で作成した色が近いことを示している。予測色差が大きいものも、小さいものもあるが、前述の近似色検索を併用してより予測色差が小さいものを採用する。
102 フルカラーモニター
103 変更色のCG
104 元色のCG
105 メタリック塗色
106 多角度分光光度計
107 インターネット上のサーバー
108 インターネット網
Claims (2)
- (1) 塗色の分光反射率を測定する分光光度計と、
(2) 測定された分光反射率を入力し演算して、変更色の変更分光反射率を得るための
コンピュータと、
(3) 変更色のコンピュータグラフィックを表示するモニターと
を具備することを特徴とする変更色の表示装置。 - 変更色の変更分光反射率を得る際に、コンピュータが、元色の分光反射率に、
a) 明度を変更するときには、測定した分光反射率に係数を乗算し、
b) ハイライトの色又はシェードの色を変更するときには、測定した分光反射率に
角度に対する一次関数で近似した係数を乗算し、ここで、分光反射率測定時の入
射角度を45度、受光角度を15、25、45、75及び110度の5角度を測
定角度としたとき、受光角度が15又は25度の分光反射率をハイライトの色、
受光角度が45度の分光反射率を正面の色、受光角度が75又は110度の分光
反射率をシェードの色とし、
c) 彩度を変更するときには、測定した分光反射率の波長方向での最大値と最小値
を求め、該最大値と最小値から中点を計算し、該中点における反射率を0とし且
つ最大値側を正、最小値側を負とした波長方向における反射率を作成し、それに
角度の係数を乗算し、さらに該中点における反射率を足すこと
を含む演算によって変更色の分光反射率を得ることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
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