JPH08221560A - メタリック粒子感を精度よく再現する方法 - Google Patents

メタリック粒子感を精度よく再現する方法

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JPH08221560A
JPH08221560A JP2990395A JP2990395A JPH08221560A JP H08221560 A JPH08221560 A JP H08221560A JP 2990395 A JP2990395 A JP 2990395A JP 2990395 A JP2990395 A JP 2990395A JP H08221560 A JPH08221560 A JP H08221560A
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angle
color
texture
reflectance
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JP2990395A
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English (en)
Inventor
Takamitsu Sawamura
隆光 沢村
Masato Ishiguro
政人 石黒
Ichiro Tabuchi
一郎 田淵
Yutaka Masuda
豊 増田
Kenichi Sata
謙一 狭田
Toru Ozeki
徹 大関
Hiroshi Hattori
寛 服部
Takashi Wada
隆志 和田
Yuji Uchiyama
祐司 内山
Toshikazu Ishihara
利員 石原
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Kansai Paint Co Ltd
Toyota Motor Corp
Toyota Central R&D Labs Inc
Original Assignee
Kansai Paint Co Ltd
Toyota Motor Corp
Toyota Central R&D Labs Inc
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 コンピュータ上において意図する色に忠実な
塗装色を再現する。 【構成】 外板色塗板の変角分光反射率を変角分光測定
機によって実測する(S1)。実測された変角分光反射
率から変角に関する特徴量と波長に関する特徴量を抽出
する(S2)。抽出された特徴量を用いて元の変角分光
反射率を再現する又は抽出した特徴量を変更することに
より外板色の質感を変更や色を変更し、変角分光反射率
を再構成する(S3)。再構成された変角分光反射率を
用い塗装色の画像を表示する(S4)。このようにして
色や質感を容易に制御できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、コンピュータグラフィ
ックス装置を用いて、メタリック粒子感を精度よく再現
する方法にかかわり、特に、カラー印刷やカラー表示等
をする際にコンピュータ上でデザイナー等のオペレータ
が意図する所定のメタリック感を精度よく再現する方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】コンピュータグラフィクスの分野では、
レンダリングで知られているように様々な色を伴った模
様や図形等の画像をコンピュータ上で表示させたり、表
示させた画像をカラー印刷させたりすることが行われて
いる。このコンピュータ上で、色を伴う物体の画像を表
示させようとする場合には、光の反射原理をモデル化
し、光の輝度等によって物体を表現するが、物体の材質
感等の感覚的な色の表現が充分ではなく、物体の実質的
な色をコンピュータ上で簡単な入力操作によって表現す
ることが困難であった。
【0003】このため、物体の材質感をリアルに表現す
るコンピュータグラフィクス装置がある(特開平4−1
95480号公報、特開平5−40833号公報参
照)。このコンピュータグラフィクス装置では、物体の
反射係数や透過係数を検出し、物体からの反射光を鏡面
反射成分と拡散反射成分に分離して取り扱うことによっ
て、物体の材質感をリアルに表現しようとしている。
【0004】また、出願人等は先に、被塗装物からの反
射光を受光する受光角を変化させた変角毎の分光反射率
として変角分光反射率を計測する計測手段と、前記計測
手段で計測した変角分光反射率を用いて分光波長に依存
する第1の特徴量と、前記変角に依存する第2の特徴量
を演算する特徴量演算手段と、前記特徴量演算手段で求
めた第1の特徴量と第2の特徴量との積または和を用い
て変角毎の分光反射率を構成し、前記被塗装物の塗装色
を再現する再現手段と、を備えたコンピュータグラフィ
クス装置に関して出願したが、さらに研究を重ねたとこ
ろ、光輝材を含有するメタリック塗膜のメタリック感の
再現性の精度が十分でないという課題を有していること
が判明した。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、物体
は、その組成や物性、及び物体固有の表面形状によって
透過率や反射率が大きく異なることがある。例えば、車
両のボデー等の物体面は、塗料等を塗布したことによる
塗装色を有する塗装面により形成されるが、ユーザやデ
ザイナー等が意図する所望の塗装色の塗装面を得るため
には、複数の顔料等の混合による色材を含む塗料等を想
定しなければならない。このような塗装面の反射率は、
塗装面の反射光を受光するときの受光角を正反射方向か
ら変化させた角度(以下、変角という。)に応じて変動
する変角特性を有することが知られている。従って、こ
の変角特性は、物体の材質感に影響する。
【0006】従って、従来のコンピュータグラフィクス
装置のように、物体からの反射光を鏡面反射成分と拡散
反射成分とを分離したのみでは変角特性により物体の材
質感が変動することがあり、忠実な塗装色を再現するこ
とができないことがある。
【0007】また、自動車などの車両のボデー等の物体
面(特に外板部)の塗装仕上げにはソリッドカラー仕上
げ及びメタリック仕上げがあり、特に後者は前者に比べ
て意匠性にすぐれているので多く採用されているが、希
望するメタリック感の塗膜を精度よく再現できる効率的
な手段が開発されていなかった。
【0008】本発明は、上記事実を考慮して、コンピュ
ータ上において意図する色に忠実な塗装色を精度よく再
現することができる、コンピュータ装置を用いたメタリ
ック粒子感を精度よく再現する方法に関する。特に本発
明は、画像処理を用いてメタリック塗膜における光輝材
テクスチュアに関する解析を行なうことで、光強度の変
化率と光輝材特性との関係から、メタリック系塗膜の反
射光特性を推定することが可能になった。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は上記課題を解決
したメタリック塗膜のメタリック粒子感を精度よく再現
する方法であり、先に出願したコンピュータグラフィク
ス装置における前記の第2の特徴量に、画像解析装置を
用いて測定される変角毎の光輝材の反射率より光輝材粒
子面積および輝度の算出を行ない、光輝材粒子面積率の
角度に依存する特徴量と輝度の角度に依存する特徴量と
角度に依存しない特徴量を付加して、メタリック粒子感
を精度よく再現する方法に関する。
【0010】すなわち本発明は、被塗装物からの反射光
を受光する受光角を変化させた変角毎の分光反射率とし
て変角分光反射率を計測する計測手段と、前記計測手段
で計測した変角分光反射率を用いて分光波長に依存する
第1の特徴量と、前記変角に依存する第2の特徴量を演
算する特徴量演算手段と、前記特徴量演算手段で求めた
第1の特徴量と第2の特徴量との積または和を用いて変
角毎の分光反射率を構成し、前記被塗装物の塗装色を再
現する再現手段と、を備えたコンピュータグラフィック
ス装置において、前記の第2の特徴量に、画像解析装置
を用いて測定される偏角毎の光輝材の反射率より光輝材
粒子面積および輝度の算出を行ない、光輝材粒子面積率
の角度に依存する特徴量と輝度の角度に依存する特徴量
と角度に依存しない特徴量を付加してメタリック粒子感
を精度よく再現することを特徴とするメタリック粒子感
を精度よく再現する。
【0011】
【作用】本発明の方法では、計測手段によって、被塗装
物からの反射光を受光する受光角を変化させた変角毎の
分光反射率として変角分光反射率を計測する。この計測
によって、被塗装物の塗装面に含まれる顔料や光輝材
(メタリック顔料など)などの材料が所有する固有の変
角特性を得ることができる。このため、塗装色は各変角
・各波長での反射率、すなわち変角分光反射率で表現す
ることができる。特徴量演算手段は、計測した変角分光
反射率を用いて分光反射率で表現することができる。特
徴量演算手段は、計測した変角分光反射率を用いて分光
波長に依存する第1の特徴量と変角に依存する第2の特
徴量を演算する。再現手段は、求めた第1の特徴量と第
2の特徴量との積または和を用いて変角毎の分光反射率
を構成し、被塗装物の塗装色を再現する。さらに本発明
では、前記の第2の特徴量に、画像解析装置を用いて測
定される光輝材粒子面積率の角度に依存する特徴量と輝
度の角度に依存する特徴量と角度に依存しない特徴量を
付加することによって、メタリック塗膜における光輝材
テクスチュアに関する解析ができ、メタリック塗膜の反
射特性を推定することができた。その結果、本発明のメ
タリック粒子感の再現手段が得られたのである。
【0012】このように、分光波長に依存する第1の特
徴量と変角に依存する第2の特徴量とを用いているの
で、塗装色について波長依存性が高いことが想定される
色と、角度依存性が高いことが想定される質感(メタリ
ック粒子感も含む)とを独立して扱うことができ、色と
質感を考慮した被塗装物の塗装色を再現することができ
る。
【0013】また、第1の特徴量及び上記光輝材テクス
チュアに関する解析を含む第2の特徴量の少なくとも一
方の変更によって色および質感を独立かつ任意に変更可
能である。
【0014】
【実施例】以下、図面を参照して、本発明の実施例を詳
細に説明する。本実施例は、自動車の外装等の塗装色
(外板色)をデザインするときの色再現に本発明を適用
したものである。
【0015】図3に示すように塗装色を再現するための
コンピュータグラフィクス装置は、パーソナルコンピュ
ータ16を備えている。このパーソナルコンピュータ1
6は、色データ等を入力するためのキーボード10、予
め記憶されたプログラムに従って所望の塗装色を生成す
るための関連したデータを演算するコンピュータ本体1
2、及びコンピュータ本体12の演算結果である塗装色
等を表示するCRT14から構成されている。コンピュ
ータ本体12は、CPU,ROM,RAMを含んで構成
されており、また、後述する特徴量を記憶するためのメ
モリを有している。
【0016】自動車の外板色は、着色顔料を主成分とす
るソリッド塗料と、着色顔料と、光輝材を主成分とする
メタリック系塗料に大別される。ソリッド塗料は、光を
照射する方向や見る方向に依存せず、略一定の色を呈す
る。一方、メタリック系塗料は、光を照射する方向や見
る方向によって呈する色(特に明るさ)が変化すること
が特徴であり、この方向による色の変化の挙動が塗料の
重要な(デザイン上の)特性となる。近年では、新規な
光輝材の開発により、方向による色の変化の挙動のバリ
エーションが増加しつつあり、又、自動車市場おいても
メタリック系塗料の比率は増加している。
【0017】ソリッド塗料の場合には、方向による色の
変化が無いため、塗料と色との間には1対1の関係が成
立する。従って、塗料が定まれば、塗装色が定まり、塗
装色の指示や再現は、比較的容易であった。
【0018】しかし、メタリック系塗料においては、1
つの塗料が方向によって複数の色を呈し、又、塗装色変
化の挙動も重要な特性であるため、その塗料の色の指示
や再現は非常な困難であった。
【0019】デザイン現場において、新規なメタリック
系塗料を作成する場合には、予め用意したサンプル塗料
を元に、変更すべき方向をデザイナーの言葉やサンプル
物(例えば、鳥 羽)、イメージ写真で指示し、塗料を
試作し、修正するという試行錯誤を行なっていた。この
方法は、多大な時間と費用を必要とする。
【0020】このため、メタリック系塗料の塗装色を容
易に再現したり変更したりする方法の開発が望まれてい
た。従来方法では、メタリック系塗料の塗装色の再現に
ついては、多量のデータが必要であり、また色の変更に
ついては、限定された光輝材についてのみ可能であり、
さらに質感の変更は不可能であった。
【0021】本実施例のコンピュータグラフィクス装置
は、塗装物体(メタリック系塗装)の色や質感をCRT
上に正確に再現(表示)したり、色及び質感を独立かつ
任意に変更する方法を提供し、塗装のデザインや塗装材
の開発を支援することができる。
【0022】先ず、塗装物体の塗装質感を材料から考え
ると、塗装物体の質感には塗膜に含まれる光輝材(アル
ミ粉、酸化鉄等)が強く影響しており、光輝材の種類毎
に質感が感じられる。
【0023】また、塗装物体の塗装質感を光学特性から
考えると、塗装物体の(見えの)質感は、塗膜の光反射
特性(変角分光反射率)で定まり、それは鏡面反射成分
と層内拡散反射成分に分けることができる。このうち、
鏡面反射成分は塗膜表面のクリア(プラスチック)層の
表面形状や屈折率により決まり光輝材の種類には依存し
ない。従って、この成分は塗装物に共通な質感には関係
するが、光輝材毎の微妙な質感には関与しない。一方、
本発明者等は、層内拡散反射成分を各種光輝材について
測定した結果、各光輝材毎に特有の反射特性を示してお
り、これが各光輝材固有の質感を形成しているという知
見を得た。
【0024】このように、光輝材毎の質感を再現するに
は、塗膜の層内拡散反射特性を正確に把握する必要があ
り、さらに、色および質感を独立かつ任意に変更するこ
には、変更したい因子をパラメータとする数式モデルが
必要になる。この数式モデルを想定しないと、例えば単
に色だけを変更しようとしても質感をも変更される等、
デザイナーが意図する変更をすることができない。
【0025】ここで、本実施例では、塗装色を再現する
ために、その塗装色を扱うための物理量をとして、物体
表面の分光反射率を用いる。なお、この分光反射率は、
複雑な形状の試料、例えば繊維やメタリック塗装等の面
では計測器の受光方向によって異なる値で計測されるこ
とがあるため、本実施例では、試料への入射角及び試料
で反射された光を受光する受光素子への受光角等を変角
することによる立体的な分光反射率である分光立体角反
射率を用いる。
【0026】表面がフラットな試料の分光反射率は通常
ゴニオ・スペクトロ・フォトメータ(Gonio Spectro Pho
tometer 、以下、ゴニオという。)24で測定(測色)
することができ、この測定した分光反射率を分光立体角
反射率(Spectral ReferenceFactor) 、または変角分光
反射率という。この分光立体角反射率を、以下、単に反
射率Rという。
【0027】図4に示したように、ゴニオ24は、光源
28と測定部である受光器26を有している。ゴニオ2
4では、光源28から試料30の測定点Obに向かう光
の入射光軸32と、測定点Obにおいて入射光軸32の
光が正反射したときの正反射方向の反射光軸34と、を
含む平面を入射平面D1 と定めている。このゴニオ24
では、受光器26と測定点Obとを結ぶ軸を測定光軸3
6として、この測定光軸36が入射面D1 内に含まれる
ように受光器26が立体的に動く機構(図示省略)とな
っている。すなわち、最も一般的なゴニオは、測定点を
中心として光源部と受光部が入射面内を動く機構となっ
ている。
【0028】反射率Rは、反射光軸34と測定光軸36
とのなす角度x、すなわち受光部の正反射方向からの反
射角x(単位 deg、以下、変角xという。)、及び光の
波長λ(単位nm)の関数であり、以下の式(1)で表す
ことができる。
【0029】R(x,λ) ・・・(1) 但し、変角xは、反射光軸34と測定光軸36とが一致
するときが0°であると共に、正反射方向から光源部へ
向かい時計方向(図4で変角xを示した矢印方向)に回
転した受光部26の位置から得る変角xの符号を正符号
とする。
【0030】図5に示すように、変角xは、入射面等に
よる直角座標系において定めることができる。すなわ
ち、試料30の法線方向$N、試料30と光源28との
方位である入射方向$L、試料30から受光器26へ向
かう受光方向$R、試料30で正反射する光の正反射方
向$Pを定め、法線方向$N及び正反射方向$Pを含む
面を入射面D1 、法線方向$Nと受光方向$Rを含む面
を受光面D2 と定める。これにより、法線方向$Nと入
射方向$Lとのなす角度θ1 、法線方向$Nと受光方向
$Rとのなす角度θ2 、入射面D1 と受光面D2 とのな
す角度θ3 が定まる。また、試料30の表面に方向性が
ある場合(例えば、織物、ブラシ仕上げ面等)は、測定
点Obを中心として試料面(塗装面)の基準方向(図5
では方向$A)が、入射面D1 から離れる角度を角度θ
4 とする。従って、上記式(1)の反射率Rは、一般式
として以下の式(2)で表せる。
【0031】 R(λ,θ1234) ・・・(2) 但し、 θ1 :光源の入射角(deg) θ2 :受光角 (deg) θ3 :方位角 (deg) θ4 :回転角 (deg)
【0032】上記式(2)はθ1 、θ2 、θ3 、θ4
表記した4つの角度パラメータを持つが、一般のペイン
ト塗装面における反射光の強度分布(反射光の強さを、
照射点を中心として距離で表した分布)は、入射光の入
射角θ1 に関係なく、正反射方向$Pを軸として常に相
似形のスフェリカルシンメトリ(Spherical Symmetry)
であることが知られている。従って、反射率は、方向$
P、$Rの間の変角xのみで表わされる。
【0033】従って、ペイント塗装面の反射率は、正反
射方向$Pと受光方向$Rとの間の変角xの関数とし
て、上記の式(1)に示したように反射率R(x,λ)
と表わすことができる。例えば、受光角θ2 以外の角度
条件を所定値(θ1 =60°、θ3 =0°、θ4 =0
°)に固定し、変角xを0°〜90°(この場合、x=
θ 1 −θ2 )で変化させたときの、反射率R(x,λ)
をゴニオで測定すれば反射率R(x,λ)は0°<x<
90°の角度範囲で求まる。
【0034】また、反射率R(x,λ)を以下の〔角度
条件〕で定めれば、−30°<x<150°の角度範囲
において、反射率R(x,λ)を決定できる。
【0035】 〔角度条件〕 R(x,λ) = R( −x,λ) (−30°<x< 0°) = R(90°,λ) ( 90°<x<150°)
【0036】なお、以下の説明では、上記角度条件(θ
1 =60°、θ3 =0°、θ4 =0°)以外の場合でも
正反射方向$P、受光方向$Rの関係から変角xを演算
した反射率R(x,λ)を用いる。
【0037】[変角分光反射率の測定]塗装面の反射率
は、変角x及び波長λの連続特性からなる反射率である
が、次のように、近似的に扱うことができる。
【0038】先ず、変角x(0°〜90°)を境界値x
j (j=1,2,・・・n,0°=x1 <x2 <・・・
<xn =90°)により[n+1]個に等間隔または反
射率の変化が急激な範囲を細分割する等、適度な分割
(以下、適度な分割という)を行う(図6(A)参
照)。なお、この適度な分割は、1°〜5°の間隔によ
り19個〜91個のデータ数を得ることができるように
設定することが好ましい。
【0039】また、波長λも同様に、例えば可視波長を
380(nm)≦λ≦720(nm)の波長域として考え、この
可視の波長域を境界波長λk (k=1,2,・・・m,
380nm=λ1 <λ2 ・・・<λm =720nm)により
[m+1]個に適度に分割する(図6(B)参照)。な
お、波長域の適度な分割は、10〜20nmの間隔により
18個〜35個のデータ数を得ることができるように設
定することが好ましい。
【0040】従って、塗装面の反射率R(x,λ)は、
離散的である反射率R(x1 ,λ1)、R(x2 ,λ
1 )、・・・、R(xn ,λm )から近似することがで
きる。すなわち、図6(C)に示すように、反射率R
(x、λ)と変角xと波長λとから各々を軸とする3次
元座標系において、反射率R(x、λ)は連続的な曲面
等の面(以下、連続面という。)70になる。反射率R
(x、λ)を表す連続面70は、この連続面70上に含
まれる離散的な複数の点から補間により求めることがで
きる。
【0041】図7(a)〜(c)に示したように、表面
が塗装された試料の塗装面は、色を決める有色顔料、メ
タル、パールマイカ等の光輝材、表面のクリアー等の種
々の物質によって構成される。
【0042】図7(a)に示すように、メタリック塗装
が施された塗装面は、クリアコート層40、メタリック
ベース層42、中塗り層44、電着層46から構成され
る。このメタリックベース層42には顔料54及びアル
ミニウム56が含まれている。図7(b)に示すよう
に、パールマイカ塗装が施された塗装面は、クリアコー
ト層40、マイカベース層48、カラーベース層50、
中塗り層44、電着層46から構成される。このマイカ
ベース層48にはチタンコートマイカ顔料58が含まれ
ている。図7(c)に示すように、ソリッド塗装による
塗装面は、上塗り層52、中塗り層44、電着層46か
ら構成される。この上塗り層52には、着色顔料60が
含まれている。
【0043】これらの光輝材及び種々の物質による塗装
の違いにより、反射率R(x,λ)の連続面の面形状も
異なるものとなる。なお、反射率R(x,λ)は、顔
料、光輝材の種類や量によって左右される。
【0044】次に、各構成物による光学的効果を説明す
る。外板色塗装板の構成物は、一般顔料のような光吸収
性材料、アルミ片の様な光反射性材料、マイカ片のよう
な光透過・干渉性材料に大別できる。外板色から反射さ
れる光は、これらの材料の相互作用および塗膜表面での
正反射の結果である。これらの材料毎の変角特性の概略
を次に示した。
【0045】<光反射性材料>個々の材料片は、正反射
方向についてのみある分光反射率を示す。塗装層中で
は、個々の材料片は、それぞれ傾きを持って存在するた
め、複数の材料片を総合した挙動(巨視的な変角特性)
は、ある一定の分光反射率R1 (λ)と、変角の関数で
ある係数k1 (x)との積として、次の式(4)で表せ
る。なお、以下の式では乗算記号として*を用いる。
【0046】 R(x,λ)=R1 (λ)*k1 (x) ・・・(4)
【0047】<光透過・干渉性材料>図8(A)に示す
ように、透過については、個々の材料片自体が、材料片
中の光路長によって定まる分光透過率を有すると考えら
れる。光路長は、材料片への入射角によって定まるか
ら、材料片の分光透過率tは入射角の関数である。従っ
て、次の式(5)で表せる。
【0048】
【数1】
【0049】但し、t(x1 ,λ):材料片への入射角
1 の光線に対する材料片の分光透過率 τ(λ):単位光路長あたりの分光透過率 d :材料片の厚さ x1 :材料片への入射角
【0050】一方、図8(B)に示すように、干渉につ
いては、個々の材料片は、反射性材料と同じように正反
射方向についてのみ、ある分光反射率(ただし、これは
光干渉が起きた結果である。)を示す。反射性材料と大
きく異なる点は、この分光反射率が、入射角により変化
する点である。
【0051】すなわち、屈折率n0 の空間中に屈折率n
1 のバインダーを塗布した塗板が存在し、そのバインダ
ー中に屈折率n2 の干渉性光輝材が存在する場合を考え
ると、各入射角と屈折率の関係は、 n0 *sin(x0 )=n1 *sin(x1 )=n2 *sin(x2 ) である。
【0052】一方、干渉性材料中の光路長の1/2は、 p=n2 *d/(1.0−sin(x22)1/2 であり、先の式を利用して書き直すと、 p=n2 *d/(1.0−n0 2/n2 2*sin(x02)1/2 となる。空間の屈折率n0 を1.0(空気)と考える
と、 p=n2 *d/(1.0−1.0/n2 2*sin(x22)1/2 である。
【0053】干渉性材料に入射した光線は、同材料の表
面で反射した光線に比べ、2pだけ長い光路長を経るこ
とになる。一方、同材料の表面で反射する光線は、その
反射面において角度πだけ位相が変化するので、2つの
光線の位相差は、 △=2p/λ*2π+π である。従って、2つの光線の合成は、 sin(x)+sin(x+△) =2cos(−△/2)*sin(x+△/2) となり、光線の強さが k=2cos(−△/2) だけ変調されることになる。△は、波長λと光路長pの
関数であり、さらに光路長pは入射角x0 の関数である
から、△をdlt(x0 ,λ)と書き替え、干渉性材料
の干渉現象を反射率として表現すると、1.0以上の値
となり得るx0 ,λの関数i(x0 ,λ)となる。
【0054】 i(x0 ,λ)=2cos(−dlt(x0 ,λ)/2) 塗装層中では、個々の材料片はそれぞれ傾きを持って存
在し、透過と干渉が複雑に繰り返される。その結果生じ
る巨視的な挙動は、入射角x0 、変角xおよび波長の関
数と考えることができる。便宜上、入射角をx0 =60
°の定数と考えると、次の式(6)で表せる。
【0055】 R(x,λ)=R2 (x,λ) ・・・(6)
【0056】また、塗膜表面からの正反射光は、正反射
方向のみに存在し、塗膜の表面状態(平滑度等)および
塗膜表層の屈折率の関数である。
【0057】実際の外板色塗板では、これらの材料間の
相互作用(例えば、メタリック塗板では、アルミ片から
の反射光がさらに一般顔料に反射してから塗板外に出射
する等)が考えられ、その挙動は複雑である。
【0058】従って、これらの塗料構成物の各々の挙動
から、その塗料の変角分光反射率を求めることは、極め
て困難であるが、塗料構成物によって特徴付けられる変
角分光反射率を解折し、その特徴を抽出することは可能
である。
【0059】上述のように、外板色は各変角・各波長で
の反射率(即ち、変角分光反射率)で表現することがで
きる。しかしながら、そのデータ量は多く、又、色や質
感を変更することも困難である。このため、データ量の
削減を図り、かつ、色や質感の制御を容易にする方法が
必要になる。本実施例は、外板色の特性に基づき、変角
分光反射率を変角に依存する成分(以下、変角に関する
特徴量)と分光波長に依存する成分(以下、波長に関す
る特徴量)に分離したモデル式(詳細後述)を用いて、
色や質感の制御を容易にしたものである。
【0060】[概要]本実施例における色や質感の制御
を容易にする方法は、図1に示すように、先ず、段階S
1として、外板色塗板の変角分光反射率を上記のゴニオ
によって実測する。この1つの実測された変角分光反射
率から、次の段階S2において、変角に関する特徴量
(1つあるいは複数の変数または関数)と波長に関する
特徴量(1組の分光反射率)を抽出する。
【0061】この抽出された変角分光反射率は、全て記
憶するのではなく、変角に関する特徴量と波長に関する
特徴量を記憶することによって、次の段階S3におい
て、元の変角分光反射率を再現することができ、記憶し
なければならないデータ量を削減することができる。ま
た、この段階S3では、抽出した変角に関する特徴量を
変更することにより外板色の色を維持した状態で質感を
変更することや、波長に関する特徴量を変更することに
よって外板色の質感を維持した状態で色を変更すること
が可能になる。さらに、段階S3では、変角に関する特
徴量を、他の外板色の変角分光反射率から抽出された変
角に関する特徴量に置き換えることや、波長に関する特
徴量について、同様のことを行なうことにより、色を維
持して質感のみを他の材質のものと入れ換えることや、
質感を維持して色のみを入れ換えることができる。
【0062】また、干渉等による色相変化の強い光輝材
を含んだ塗料に関しては、変角に関する特徴量、波長に
関する特徴量に加え、色相変化を表わす特徴量(変角と
波長の関数)のモデル式に加え、色相変化効果を維持し
た状態での色や質感の変更や、色相変化効果の強弱の調
整、他の材質の色相変化効果との入れ換えを可能にす
る。この色相変化効果を表わす特徴量も1つの実測され
た変角分光反射率から抽出することが可能であるが、こ
の色相変化効果を表わす特徴量を導入した場合には、先
に述べたデータ量削減の効果が減ずることがあるので、
必要に応じて選択的に用いることが好ましい。
【0063】上記色変更や質感変更、色相変化効果変更
を行った場合、その変更内容によっては、変角分光反射
率を実測する際の測定誤差(バラツキ)が増幅され、変
更方向での色変化が不連続になることがある。それを防
止するために、実測した変角分光反射率データに対し
て、測定バラツキを低減する処理(ノイズ除去)を行
う。このノイズ除去の基本はスムージング処理である
が、反射率の大きさによって、その処理を実施するか否
かを制御することにより、効果が高く、しかも、変角分
光反射率の本来の特性を損なわないように処理すること
ができる。
【0064】上記段階S3において新規な変角分光反射
率または再構成された変角分光反射率を用いて、次の段
階S4ではCADのフレーム画像の面データ等として、
得られる変角分光反射率に基づいた塗装色の画像を表示
する。
【0065】[色変更、質感変更]上記のように外板色
は各変角・各波長での反射率(即ち、変角分光反射率)
で表現可能であるので、デザイナがその外板色を変更す
るためには、変角分光反射率の1点1点の反射率を変更
すれば良い。しかし、そのデータ量は膨大になるので、
変角分光反射率の1点1点の変更という操作は事実上不
可能である。このため、デザイナの要求する変更を迅速
に、かつ的確に行なう方法が必要である。
【0066】外板色の主要な特性は、色と質感である。
デサイナが外板色を変更する場合、これらの特性を各々
変更することを想起する。例えば、銀色のアルミメタリ
ックの外板色を変更する場合には、「アルミメタリック
の質感はそのままで、銀色に少し赤みを加える」とか、
「銀色はそのままで、メタリック感を強める」といった
抽象概念で提示されることが多い。従って、色に関する
変更方法と質感に関する変更方法を確立し、これらの方
法によって変角分光反射率全体を変更することが望まし
い。色に関する変更は、塗料の中の着色顔料の種類や量
を変更することに相当し、又、質感に関する変更は、塗
料の中の光輝材の種類や量を変更することに相当する。
【0067】外板色の質感は維持して色を変更する場
合、例えば、デザイナはある変角での色を変更するとい
う操作を行なう。この操作をその変角にだけ反映したの
では、その結果はデザイナの望む物にはならない。デザ
イナは、ある変角での色の変更を通して塗料の中の着色
顔料の変更を意図しており、その場合には、その変角の
色だけでなく、全ての変角について色が変化しなければ
ならない。その際、デザイナが変更を実施した変角以外
の角度について、色の変更をどのように行なうかが問題
となる。質感を維持し、かつ、色を変更するためには、
変角分光反射率から質感の情報と色の情報を分離し、色
の情報を変更した後、再び、質感の情報と合成しなけれ
ばならない。
【0068】また、逆に、外板色の色は維持して質感を
変更する場合、例えば、デザイナは「ハイライト部とシ
ェード部の明暗差を大きくする」というような操作を行
う。この操作のデザイナ意図は光輝材の変更であり、変
角全体の変角分光反射率を変更しなければならない。そ
の際、着色顔料の変更は意図されていないから、明暗を
除く色の変化が起こることは望ましくない。従って、こ
の場合にも、変角分光反射率から質感の情報と色の情報
を分離し、質感の情報を変更した後、再び、色の情報と
合成しなければならない。
【0069】さらに、色は維持し、質感を他の光輝材の
ものと置き換える様な変更も行われる。例えば、赤色メ
タリックの外板色を元にし、材質をマイカに変更する様
な場合である。その場合には、赤色メタリックの変角分
光反射率から質感の情報と色の情報を分離すると同時
に、マイカの変角分光反射率からもその質感の情報を得
て、赤色メタリックの質感の情報と入れ換える必要があ
る。
【0070】従って、図2の段階S2に示すように、上
記図1の段階S2において抽出する特徴量として変角に
関する特徴量を質感に関する特徴量として扱うと共に、
波長に関する特徴量を外板色の質感を維持した状態の色
に関する特徴量として扱い、各々の特徴量を独立または
相互に関係するように変更する処理を行えば、色変更、
質感変更を行うことができる。
【0071】[色の情報の分離と変更]色の情報は、一
般的に分光反射率で表現される。変角分光反射率の場
合、変角毎に、分光反射率が定まるが、ある変角での分
光反射率か又は複数の変角の分光反射率から求められた
分光反射率で、変角分光反射率の色情報を代表させるこ
とができる(但し、色相変化効果を有する場合を除
く)。
【0072】色情報の変更については、例えば、グラフ
ィックイコライザを使って各波長の反射率を変更する方
法や、三刺激値やマンセル値を変化させ、その結果を分
光反射率に反映させる方法がある。結果的に分光反射率
が変更されるような方法であれば、色情報の変更方法の
内容は問わない。
【0073】また、変角分光反射率がモデル式化されて
いれば、色情報を代表させる分光反射率の変角と、色変
更の操作を行なう変角とは一致している必要はない。す
なわち、任意の変角での色変更が可能である。
【0074】[質感の情報の分離と変更]質感の情報の
表現方法については、一般的な方法は存在しない。例え
ば、変角毎の視感反射率Yを使って、外板色の質感を表
示する場合もあるが、当然のことながらY値には色依存
性があり、同じ質感であっても、赤色の場合と青色の場
合とでは、そのY値は異なったものになる。従って、変
角毎のY値を使って質感の情報を表現したのでは、先に
述べたような光輝材の量の変更や種類の変更を意図した
質感のみの変更が困難になるばかりでなく、色変更に伴
なって質感の情報も変更する必要が生じ、処理が非常に
煩雑になる。
【0075】従って、色に依存しない質感情報を抽出す
ることが技術上のポイントとなり、本方法では、基準と
なる分光反射率に掛ける係数(および、本発明のある方
法では、基準となる分光反射率に加える係数の双方)を
変角の関数とし、それを質感情報としている。これらの
関数は、色に依存せず、光輝材の挙動を示しているか
ら、先に述べた様な質感のみ変更が可能であり、又、色
変更の際にも特に処理を必要としない。
【0076】また、光輝材の中には、干渉により反射角
度に依存して色を呈するものや光輝材自体が着色されて
いるものがある。これらの光輝材によって呈される色
は、外板色の色を決定する主要な要因となる着色顔料が
呈する色とは異なるものであり、変角分光反射率の色情
報としてでなく、質感情報の一部として取り扱う必要が
ある。本方法では、上記基準となる分光反射率への操作
(変角毎の係数を掛け、さらに、別の係数を加える)に
よって再構成される変角分光反射率と実測した変角分光
反射率との差をこの特性を表す質感情報としている。
【0077】質感の変更は、その質感の強める/弱める
という意図に対応し、質感情報である各特徴量に係数を
掛けることによって行う。又、これらの特徴量を、他の
光輝材の特徴量に置き換えることにより、光輝材の変更
を実現することができる。
【0078】次に、外板色の特性に基づき、変角分光反
射率を、変角に関する特徴量と波長に関する特徴量に分
離したモデル式の一例を次の式(7)に示す。 R(x,λ)=S(x,λ)+α(x)*b(λ)+β(x)+T(x,λ) ・・・(7) 但し、R(x,λ):変角分光反射率(測定値) S(x,λ):0≦x≦1において、 S(x,λ)=R(x,λ)−R(2,λ) 1<xにおいて、 S(x,λ)=0 b(λ) :ある変角x0 における分光反射率R(x
0 ,λ) α(x) :0≦x≦1において、 α(x)=α(2) 1<xにおいて、b(λ)を説明変数、R(x,λ)を
目的変数とし、1次回帰を行なった場合の傾き β(x) :0≦x≦1において、 β(x)=β(2) 1<xにおいて、b(λ)を説明変数、R(x,λ)を
目的変数とし、1次回帰を行なった場合の切片 T(x,λ):0≦x≦1において、 T(x,λ)=T(2,λ) 1<xにおいて、 T(x,λ)=R(x,λ) −(α(x)*b(λ)+β(x))
【0079】上記式(7)から理解できるように、この
モデルは可逆性を有する。すなわち、右辺の各項を変更
しない限り、元データである反射率R(x,λ)を復元
することが可能である。
【0080】この式(7)によるモデル式の各項は、次
のように考えることができる。 S(x) :塗膜表面からの反射光 α(x)*b(λ)+β(x):光吸収性および反射性材料による反射率 T(x,λ) :光透過・干渉性材料による反射率
【0081】また、デザイン上の観点からは、 b(λ) :色味に関するパラメータ α(x),β(x) :フリップフロップ性に関するパラメータ T(x,λ) :カラーフロップ性に関するパラメータ と見なすこともできる。
【0082】上記の式(7)において、S(x,λ)の
値が0になる領域を1<xとしたのは、変角分光測定機
(ゴニオ24)の測定開き角を考慮したためである。
【0083】また、ある変角x0 は、x0 =40とし
た。これは、干渉性材料の特性を考えると、変角が大き
い程、干渉の影響は少なくなると考えられる。従って、
0=「測定した最大の変角」とした方が残差成分T
(x,λ)において干渉性成分をより良く表現できる。
しかし、実際には、大きい変角での測定データは、測定
光量不足による信頼性低下(バラツキの増加)が問題と
なり、上式のb(λ)とすることには疑問が感じられる
ため、あえて、x0 =40とした。
【0084】色制御は、式(7)のb(λ)をb'(λ)
に変更することで表現する。すなわち、 R'(x,λ)=S(x,λ)+α(x)*b'(λ)+β(x)+T(x,λ) で得られるR'(x,λ)が、色制御後の変角分光反射率
となる。
【0085】また、α(x)、β(x)、T(x,λ)
を変更することにより、見かけ上の変角特性を変えるこ
とができる。例えば、フリップフロップ性およびカラー
フロップ性の強さを制御する係数ka,kb,ktを導
入し、 α'(x) =ka*α(x) β'(x) =kb*β(x) T'(x,λ)=kt*T(x,λ) として、 R'(x,λ)=S(x,λ)+α'(x)*b'(λ)+β'(x)+T'(x,λ) を求めることにより、色および変角特性を変えた変角分
光反射率を得る。
【0086】次に、色制御及び材質制御を行って塗装色
を再構成する処理を図9のフローチャートと共に説明す
る。
【0087】パーソナルコンピュータ16を含んで構成
されるコンピュータグラフィクス装置の図示しない電源
スイッチがオンされ、塗装色を再現するための処理へ移
行すると、図9の処理ルーチンが実行される。
【0088】ステップ102では、ゴニオ24によって
外板色塗板の変角分光反射率Rが測定される。次に、ス
テップ104において測定データのノイズを除去した後
に、次のステップ106において特徴量を抽出する。こ
のステップ104では、測定データ中のノイズ成分を選
択的平滑化処理により除去する。また、ステップ106
では、S(x,λ),α(x),β(x),b(λ),
T(x,λ)を算出する。次のステップ108では抽出
された特徴量を用いて色制御及び材質制御の少なくとも
一方を行い、次のステップ110において変角分光反射
率が再構成される。このステップ108では、α'
(x),β'(x),b'(λ),T'(x, λ)を決定す
る。また、ステップ110では、S(x,λ),α'
(x),β'(x),b'(λ),T'(x, λ) からR'
(x,λ)を算出する。次のステップ112では再構成
された変角分光反射率に基づいた塗装色の画像を表示す
る。次のステップ114では、キーボード10の判定指
示入力(OK/NG)によって表示された画像の塗装色
が意図する塗装色であるか否かが判断され、意図する塗
装色になるまでステップ108からステップ112を繰
り返し実行する。このように、ステップ104における
測定データのスムージング及びステップ106の特徴量
の抽出は、元となる測定データにつき、1回のみ行えば
良い。
【0089】(特徴量の抽出)次に、上記ステップ10
6の詳細を説明する。
【0090】変角xが2°以上の範囲でのα(x),β
(x),T(x,λ)の特徴量は、R(x,λ)を目的
変数、b(λ)を説明変数として、各変角毎に1次回帰
を行うことにより求められる。すなわち、1次回帰結果
の傾きがα(x),切片がβ(x),残差がT(x,
λ)である。この際、b(λ)は、変角40°での分光
反射率R(40,λ)とする。また、この範囲内でのS
(x,λ)は、0とする。
【0091】R(x,λ)、b(λ)に関する1次回帰
とは、次に説明するように、ある波長λ1 に関するR
(x,λ1)の値とb(λ1)の値を1つのデータ組と考
え、測定を行った波長の数だけのデータ組から2つの測
定値群(R(x,λ)とb(λ))の関係を求める処理
である。
【0092】 <R(x,λ)とb(λ)に関する1次回帰>ある変角
xについて、次に示す表1を想定する。
【0093】
【表1】
【0094】図10(A)には、横軸に説明変数xを、
縦軸に目的変数yを設定した2次元座標上に上記表1の
データをプロットしたデータ分布を示した。1次回帰と
は、この図10(A)のデータ分布に最も相関がある
(当てはまる)直線を求める操作である(図10(B)
参照)。すなわち、傾きαおよび切片βを求めることで
ある。
【0095】変角xが0°から1°の範囲では、S
(x,λ)は、これらの変角での分光反射率R(x,
λ)と変角2°での分光反射率R(2,λ)との差で求
められる。本実施例のモデル式では、変角2°での分光
反射率R(2,λ)もα(x),β(x),b(x),
T(x,λ)の特徴量で表さなければならないので、こ
の変角範囲でのα(x),β(x),T(x,λ)は、
各々α(2),β(2),T(2,λ)となる。
【0096】すなわち、0<x`<=1について、 S(x’,λ)=R(x’,λ)−R(2,λ) であり、 R(2,λ)=α(2)*b(λ)+β(2)+T(2,λ) であるから、 S(x’,λ)=R(x’,λ) −(α(2)*b(λ)+β(2)+T(2,λ)) となる。変角毎の分光反射率を表す形に書き直すと、 R(x’,λ)=S(x’,λ) +(α(2)*b(λ)+β(2)+T(2,λ)) であるから、変角xの値に制限のない一般形である、 R(x,λ)=S(x,λ) +α(x)*b(λ)+β(x)+T(x,λ) と比較すると、 α(x’) =α(2) β(x’) =β(2) T(x’,λ)=T(2,λ) となる。
【0097】以上説明した特徴量抽出処理の詳細を図1
1のフローチャートを参照し更に説明する。図11のス
テップ202では、変角40°での分光反射率R(4
0,λ)、すなわちb(λ)を測定した波長毎の離散的
な値D[i](1≦i≦35、すなわち390nm〜73
0nmにおいて10nm毎のデータに対応する)を想定し、
その平均値Davgを次の式(10)を用いて求める。
【0098】
【数2】
【0099】次のステップ204では、D[i]の分散
Dsxxを次の式(11)を用いて求める。
【0100】
【数3】
【0101】次に、ステップ206において2<x≦9
0の各変角xについて、変角xでの分光反射率R(x,
λ)を測定した波長毎の離散的な値R[x](i:1≦
i≦35)と考え、その平均値Ravg[x]を次の式
(12)を用いて求める。
【0102】
【数4】
【0103】次のステップ208では、D[i]とR
[x][i]の共分散Rsxyを次の式(13)を用い
て求める。
【0104】
【数5】
【0105】次のステップ210では、傾きα[x]を
次の式(14)を用いて求める。 α[x]=Rsxy[x]/Dsxx ・・・(14)
【0106】次のステップ212では、切片b[x]を
次の式(15)を用いて求める。 β[x]=Ravg[x]−α[x]*Davg ・・・(15)
【0107】次のステップ214では、残差成分T
[x][i]を次の式(16)を用いて求める。
【0108】 T[x][i]=R[x][i]−(α[x]*D[i]+β[x]) ・・・(16)
【0109】次に、ステップ216においてS[x]
[i]を0にセットし(S[x][i]=0.0)、次
のステップ218において、0≦x≦1の各変角xにつ
いて、S[x][i]を次の式(17)を用いて求め
る。
【0110】 S[x][i]=R[x][i]−R[2][i] ・・・(17)
【0111】次のステップ220では、以上のようにし
て演算された各値をα[x]、β[x]、T[x]
[i]にセットする。
【0112】 α[x] =α[2] β[x] =β[2] T[x][i]=T[2][i]
【0113】次に、上記ステップ108において、色制
御を行う場合、b(λ)を別のb'(λ)に入れ換えるこ
とにより実現される。b(λ)をb'(λ)に変換する方
法(色制御マンマシンインターフェース)は、省略す
る。後述する実験では、別の塗板のb(λ)をb'(λ)
とした。
【0114】また、材質制御(見かけ上)を行う場合に
は、、α[λ]、β[λ]、T[x,λ]の一部あるい
は、全てを、別のα'[λ]、β'[λ]、T'[x,λ]に
入れ換えることにより実現される。上記の色制御の場合
と同様、その変換方法は省略する。後述する実験では、
α[λ]、β[λ]、T[x,λ]にそれぞれka,k
b,ktの各係数を掛けてα'[λ]、β'[λ]、T'
[x,λ]を得ている。
【0115】次に、上記ステップ110の再構成では、
色制御、材質制御を行った後の変角分光反射率は、モデ
ル式に従ってR’( x,λ)を計算することにより求め
る。
【0116】次に、光輝材種毎に得られた各種特徴量を
図12及び図13に示した。この各光輝材毎のα
(x)、β(x)、及びT(x,λ)の関係を次の表2
に示す。
【0117】
【表2】
【0118】図12及び図13から次の特徴〜を得
ることができる。 特徴:ソリッドについて、α(x)は、1.0、β
(x).T(x,λ)とも0.0でほぼ一定である。こ
れは、周知のソリッド特性(光吸収性材料のみであるた
め、正反射領域以外ではほぼ均一の分光反射率になる)
に一致する(図12(A),(B)参照)。
【0119】特徴:マイカ、マイカメタリックについ
て、T(x,λ)が非0であり、変角が小さい程、その
振幅が大きい。これは、光輝材の干渉性を示している
(図12(F),(H)参照)。
【0120】特徴:MIOについて、T(x,λ)が
ソリッドと略同様に小さい(図13(B)参照)。
【0121】特徴:ホワイトパールマイカについて、
その光輝材の干渉性がT(x,λ)に良く再現されてい
る(図13(D)参照)。なお、変角40°を境にT
(x,λ)り極性が逆転しているのは、b(λ)として
変角40°の分光反射率を使用したためであり、変角9
0°の分光反射率を使用すれば極性の逆転は無くなると
考えられる。
【0122】(色制御、材質制御)次に、色制御、材質
制御について行った実験結果を図14乃至図16に示
す。この図14乃至図16は、色制御、材質制御を行っ
た塗板及び制御結果の色度図を示すものである。この実
験では、次の表3に示す同種光輝材で似通った色の塗板
の2枚を1組とする計4組について、塗板1を元に制御
を行ない、塗板2を作成することに相当する。すなわ
ち、塗板1の反射率R1(x,λ)からS1(x,
λ),α1(x)、β1(x)、b1(λ)、T1
(x,λ)を求めて特徴量を抽出すると共に、塗板2の
反射率R2(x,λ)からS2(x,λ),α2
(x)、β2(x)、b2(λ)、T2(x,λ)を求
めて特徴量を抽出する。この抽出された特徴量のうち、
塗板1のS1(x,λ),α1(x)、β1(x)、T
1(x,λ)、及び塗板2のb2(λ)を用いて、新規
な塗装色の反射率R1’(x,λ)を上述のようにして
再構成したものである。
【0123】
【表3】
【0124】図14(A)〜(F)は、表3の組1であ
る、3K4の塗板1と3K3の塗板2の色度図、及び色
制御、材質制御を行った制御結果の色度を示すものであ
る。図14(A)には3K4の塗板1(点線)と3K3
の塗板2(実線)について変角毎のL*を示し、図14
(B)には変角毎の各a*、b*を示した。図14
(C)には3K3の塗板2の変角毎のL*を実線で、3
K4の塗板1に色制御を行った結果のL*を点線で示し
た。図14(D)には3K3の塗板2の変角毎のa*、
b*と、3K4の塗板1に色制御を行った結果のa*、
b*とを示した。また、図14(E)には3K3の塗板
2の変角毎のL*を実線で、3K4の塗板1に色・材質
制御を行った結果のL*を点線で示した。図14(F)
には3K3の塗板2の変角毎のa*、b*と、3K4の
塗板1に色・材質制御を行った結果のa*、b*とを示
した。
【0125】図15(A)〜(F)は、表3の組2であ
る、8E3の塗板1と8J4の塗板2の色度図、及び色
制御、材質制御を行った制御結果の色度図を示すもので
ある。図15(A)には8E3の塗板1(点線)と8J
4の塗板2(実線)について変角毎のL*を示し、図1
5(B)には変角毎の各a*、b*を示した。図15
(C)には8J4の塗板2の変角毎のL*を実線で、8
E3の塗板1に色制御を行った結果のL*を点線で示し
た。図15(D)には8J4の塗板2の変角毎のa*、
b*と、8E3の塗板1に色制御を行った結果のa*、
b*とを示した。また、図15(E)には8J4の塗板
2の変角毎のL*を実線で、8E3の塗板1に色・材質
制御を行った結果のL*を点線で示した。図15(F)
には8J4の塗板2の変角毎のa*、b*と、8E3の
塗板1に色・材質制御を行った結果のa*、b*とを示
した。
【0126】図16(A)〜(H)は、表3の組3及び
組4である、4K9の塗板1と4L5の塗板2及び8G
2の塗板1と8J6の塗板2の色度図、及び色制御、材
質制御を行った制御結果の色度図を示すものである。図
16(A)には4K9の塗板1(点線)と4L5の塗板
2(実線)について変角毎のL*を示し、図16(B)
には変角毎の各a*、b*を示した。図16(C)には
4L5の塗板2の変角毎のL*を実線で、4K9の塗板
1に色制御を行った結果のL*を点線で示した。図16
(D)には4L5の塗板2の変角毎のa*、b*と、4
K9の塗板1に色制御を行った結果のa*、b*とを示
した。また、図16(E)には8G2の塗板1(点線)
と8J6の塗板2(実線)について変角毎のL*を示
し、図16(F)には変角毎の各a*、b*を示した。
図16(G)には8J6の塗板2の変角毎のL*を実線
で、8G2の塗板1に色制御を行った結果のL*を点線
で示した。図16(H)には8J6の塗板2の変角毎の
a*、b*と、8G2の塗板1に色制御を行った結果の
a*、b*とを示した。
【0127】これらの図から理解されるように、色制
御、及び材質制御について良好な結果を得た。
【0128】以上説明したように、外板色は各変角・各
波長での反射率(変角分光反射率)で表現することがで
きる。上記では色や質感の制御を容易にするための、変
角に関する特徴量と波長に関する特徴量とに分離したモ
デル式を例示したが、本発明は、上記のモデル式に限定
されるものではなく、以下に示すモデル式及び色や質感
の制御を容易にする方法の構成を含むものである。
【0129】なお、以下の説明では、次の定義を有する
ものである。 [定義] x:反射光角度 X:基準となる特定の変角 λ:波長 R(x,λ):実測による変角分光反射率 R'(x,λ):モデル式による変角分光成分 R''( x,λ):モデル式による変角分光成分
【0130】
【数6】
【0131】[構成1]モデル式を、次の式(18)で
表し、
【0132】
【数7】
【0133】この式(18)について、
【0134】
【数8】
【0135】とした時に、各波長λについて、次の式
(19)の値が、
【0136】
【数9】
【0137】最小となるようなmi(λ)x 、b(λ)を
特徴量とする方法。
【0138】[構成2]前記構成1において、N=1で
あることを特徴とした方法。
【0139】[構成3]モデル式を、次の式(20)で
表し、
【0140】
【数10】
【0141】この式(20)について、
【0142】
【数11】
【0143】とした時に、次の式(21)の値が、
【0144】
【数12】
【0145】最小となるようなb(λ)を特徴量とする
方法。
【0146】[構成4]前記構成3において、N=1で
あることを特徴とした方法。
【0147】[構成5]モデル式を、次の式(23)で
表し、 R'(x,λ)=α(x)* b(λ)+β(x) ・・・(23) この式(23)における、 b(λ)=R(X,λ) を第1の特徴量とし、各xについて、次の式(24)の
値が、
【0148】
【数13】
【0149】最小となるようなα(x)、β(x)を第
2、第3の特徴量とする方法。
【0150】[構成6]前記構成1乃至構成5の何れか
1つの方法において、 T(x,λ)=R(x,λ)−R'(x,λ) ・・・(25) であるようなT(x,λ)を更に1つの特徴量とし、 R''( x,λ)=R'(x,λ)+T(x,λ) ・・・(26) をモデル式とする方法。
【0151】[構成7]前記構成1乃至構成6の何れか
1つの方法において、b(λ)以外の特徴量を光輝材種
毎に予め求めておき、任意の光輝材種の特徴量と任意の
b(λ)と組合せることにより、新規の塗装色を作成す
る方法。
【0152】[構成8]前記構成1乃至構成6の何れか
1つの方法において、b(λ)を変更することにより、
塗装色の質感は保持し、色のみを変更処理する方法。
【0153】[構成9]前記構成1又は2において、m
i( λ)を変更することにより、塗装色の色は保持し、
質感のみを変更処理する方法。
【0154】[構成10]前記構成1又は2において、
モデル式を、次の式(27)に変更し、
【0155】
【数14】
【0156】kの値を調整することにより、塗装色の色
は保持し、質感のみを変更処理する方法。
【0157】[構成11]前記構成3又は4において、
Miを変更することにより、塗装色の色は保持し、質感
のみを変更処理する方法。
【0158】[構成12]前記構成3又は4において、
モデル式を、次の式(28)に変更し、
【0159】
【数15】
【0160】kの値を調整することにより、塗装色の色
は保持し、質感のみを変更処理する方法。
【0161】[構成13]前記構成5において、モデル
式を、次の式(29)に変更し、 R'(x,λ)=kα* α (x)* b(λ)+kβ* β (x) ・・・(29) kα、kβの値を調整することにより、塗装色の色は保
持し、質感のみを変更処理する方法。
【0162】[構成14]前記構成6において、モデル
式を、次の式(30)に変更し、 R''( x,λ)=R'(x,λ)+kT * T(x,λ) ・・・(30) kT の値を調整することにより、塗装色の色は保持し、
質感(主に干渉光成分)のみを変更処理する方法。
【0163】[構成15]測定した変角分光反射率デー
タのノイズ除去処理に於いて、波長方向と変角方向に2
方向について同時に平滑化処理を行い、かつ、この処理
を変角分光反射率の低い部分についてのみ行なう方法。
【0164】[上記構成1〜構成15の作用]構成1乃
至構成4によれば、塗装に含まれる光輝材種毎の変角分
光反射特性に関するモデル式を用いることにより、変角
方向について、少ないデータや測定の手間で色・質感の
正確な表示や検査ができる。
【0165】構成1または構成2によれば、波長の関数
である
【0166】
【数16】
【0167】を特徴量とするため、実測データとモデル
式によるデータとの乖離が少ない。
【0168】構成5によれば、変角の関数であるα
(x)β (x)を特徴量とするため、実測データとモデ
ル式によるデータとの乖離が少ない。
【0169】構成6によれば、主に干渉光成分を表すT
(x,λ)を特徴量とするため、実測データとモデル式
によるデータとの乖離が皆無である。
【0170】構成8によれば、特徴量の1つである分光
反射率b(λ)を変更することにより、色を保持した状
態で質感のみを変更することができる。
【0171】構成7乃至構成13によれば、b(λ)以
外の特徴量を変更または置換することにより、質感を保
持した状態で色のみを変更することができる。
【0172】構成14によれば、特徴量T(x,λ)を
変更することにより、干渉効果の強度を変更することが
できる。
【0173】上記で説明した構成1乃至構成6とこの構
成による作用の対応を次の表4に示した。ただし、構成
1乃至構成6のものに対しては、メタリック粒子感の表
現を考慮していない。
【0174】
【表4】
【0175】図17には、上記の構成1、2の方法を用
いて、種々の光輝材を含む4種類の塗装面を測定した複
数波長(図17では、5波長)の変角分光反射率を変角
分布として示した。図から理解されるように、(拡散反
射成分に関する)変角分光反射率の対数は、波長の関数
(log mi (λ))を係数とする変角(x)の多項式
(構成2では、1次式)で精度よく近似できるという知
見を得て、構成1、2においてR(x、λ)に対する変
角xと波長λの寄与を構成1に示すモデル式で定式化す
るとともに、変角xの係数となるmi (λ)、b(λ)
を定めるという方法を提示した。すなわち、モデル式は
一般的な統計処理から導出したのではなく、塗装の光学
特性を的確に反映できるように定めた。
【0176】このモデル式により各種光輝材を含む塗装
面の変角分光反射率を精度良く近似できる。構成2は構
成1に比べ近似の精度は低下するが、係数の数が減少し
取扱が簡便となる。従って、分光反射率の対数の角度依
存性が直線に近くなる光輝材(チタングラファイト、グ
リーンマイカ等)のモデル式として有効である。
【0177】構成3、4の方法の構成1、2に対する相
違点は、変角(x)の係数を、波長の関数(log m
i (λ))ではなく、定数(Mi )としたことである。
すなわち、「変角分光反射率R(x、λ)の角度依存性
が波長(λ)に依らず一定である」という仮定の成立す
る光輝材(図17で波長毎の曲線の形状が相似形なも
の、例えば、図17(b)のチタングラファイト、図1
7(d)のMIO) について、構成1、2と比べより
簡単なモデルを提供するものである。
【0178】上記のように「変角分光反射率(R(x、
λ))の角度依存性が波長(λ)に依らず一定である」
ことを仮定しているため、チタングラファイト、MIO
等の光輝材に限られ、適応範囲がせまい(その他の場合
に適応すると、図18に示すように、誤差が大きくな
り、色、質感の再現精度が低下する)。しかし、色を示
すパラメータ(b(λ))と質感を示すパラメータ(M
i )が完全に分離され、かつ、質感を示すパラメータの
数が少ないため(構成3ではN個、構成4では1個)、
質感の変更を極めて容易に行なうことができる。従っ
て、上記の仮定が成り立つ光輝材について、各々の質感
をパラメータ(Mi )により簡便に表現することがで
き、かつ、色、質感を変更できる。但し、変更の自由度
が狭いことと、上記の仮定が成り立たない光輝材を考慮
する質感への変更はできない。
【0179】図18には、各モデル式と実測データの誤
差を色差(CIE1976(L* ** )表色系、J
IS Z8730)で示した。光輝材は図18(a)に
示すホワイトマイカ(顔料は赤)、チタングラファイト
(顔料は青)、および、MIO(顔料は青)である。ど
の光輝材についても再現精度(色差の小ささ)は、構成
1、構成2、構成4の順に優れている。2次(構成1で
N=2)のモデルの場合、変角15°以上の拡散反射領
域で誤差は色差2以下となっており。どの光輝材につい
ても、ほぼ実物と同様の色、質感を再現することができ
る。図18(b)に示すチタングラファイト、図18
(d)に示すMIOについてもモデルによる再現精度の
違いは見られるものの、構成4の場合でも色差は1以下
となっており、構成4のモデルを適用可能である。ま
た、構成2の適用例としては、図18(c)に示すグリ
ーンマイカを挙げることができる。
【0180】次に、上記構成9の特徴について説明す
る。上記の構成1、2において、b(λ)は変角に依存
しない分光反射率を与える項であり、その変更により塗
装面像全体の色の変更処理ができるのに対し、m
i (λ)は分光反射率の角度依存性を与える項で、上記
のように光輝材に特有の質感(光輝材の光干渉による角
度に依存した色の変化も含め)を反映する特徴量であ
る。従って、b(λ)を保ったまま、mi (λ)を変更
することにより、塗装色の平均的な色(着色顔料の呈す
る色に対応)を保持しつつ、質感の変更ができる。この
変更処理の具体的な方法としては以下の(A)〜(C)
がある。
【0181】(A) 光輝材毎にmi ( λ)のデータベ
ースを作成しておき、変更前mi (λ)を任意の光輝材
のmi ( λ )’に置換する。これは光輝材の置換に対応
するので変更後の色・質感をもつ塗装物の製作が比較的
容易となる。
【0182】(B) mi ( λ)を一定値(△mi )だ
け変化させ明度の角度依存性を変化させる。明度の角度
依存性は質感と密接に関係している。特徴としては、波
長λに関係なく一定値(△mi )だけ変化させればよい
ため、変更処理が容易なこと、実在の塗装の特性に拘束
されない任意の変更が可能ことである。また、変更後の
色・質感をもつ塗装物の製作が現存の材料(光輝材)で
は不可能な場合も生じるが、この操作により視覚的に好
ましい色・質感を探索し、そのときのモデルのパラメー
タ(特徴量)から、その色・質感に対応する反射特性を
得ることにより、新規光輝材の開発を支援することがで
きる。
【0183】(C) 光輝材毎のmi ( λ)(モデルの
次元はN次とする)を波長λの多項式(M次とする)で
近似し、その係数のデータベースを作成しておき、それ
らの係数を(N×M次元空間上で)任意に変化させ、質
感の変更を行う。各光輝材の特性はN×M次元空間上の
点で表わされ、変更はそれを参考にして行なうこともで
きる。なお、それらの点上のみに変更先を制約した場合
が(A)に相当する。この変更法は(B)を拡張し、明
度に加え、色相や彩度の角度依存性をも可能にしたので
あり、利用法や特徴は上記(B)の説明と同様である。
【0184】上記構成11の特徴は、分光反射率が角度
依存性を持たない場合(光輝材に対する制約は構成3ま
たは構成4について説明したのと同様)の質感制御であ
り、内容的には上記で説明した方法(B)と同様であ
り、その特徴としても同様のことがいえる。但し、変更
後のmi として実在の光輝材が値のみを選択すれば、光
輝材の入れ替えに相当する。
【0185】次に、上記構成5、6、7、8、13、1
4、15におけるモデル式と特徴量について説明する。
ここでは、ある変角での分光反射率を基準とし、その変
角での分光反射率がどのように変化するかを考える。
【0186】ソリッド塗料の場合、正反射角以外におい
て、その分光反射率は概略一定である。正反射は、正反
射角(及び変角分光測定機(ゴニオ24)の測定開き角
を加えた角度範囲)においてのみ生じ、反射の強度が極
めて大きく、塗装内部の顔料の特性や量には依存しな
い。従って、上述の反射角度(または角度範囲)におけ
る反射は全て正反射であると考え、色変更や材質変更の
影響を受けない特徴量として取り扱うことができる。
【0187】一方、干渉等の色相変化効果の少ない光輝
材を含む塗料においては、変角に応じて分光反射率が変
化する。本発明者等は、色相変化効果の少ない光輝材を
含む塗料の変角分光反射率を解析し、正反射角以外の変
角において、その分光反射率がほぼ相似形であることに
着目した。この現象は、変角に応じてその塗装に照射す
る光の量が変化することに類似している。ある物体にあ
る光を照射した時の物体の見え方がその物体の反射率と
光の強さの積で求められることに基づき、光輝材の効果
を光の強さの変化と考えることを検討した結果、基準と
なる分光反射率に変角の関数である係数を乗算する方法
で、変角に応じて変化する分光反射率の概略を再現する
ことができた。又、各変角の分光反射率の間には、相似
的な変化の他に、反射率方向への平行移動的な変化もあ
ることに着目し、基準となる分光反射率に変角の関数で
ある係数を乗算した後、これに変角の関数である別の係
数を乗算する方法を検討し、これにより変角に応じて変
化する分光反射率をより正確に再現することを確認し
た。さらに、ソリッド塗料の場合と同様に、正反射角に
おいては正反射特性のみであるとすることにより、ある
基準となる分光反射率を基に、その他の変角での分光反
射率を再現することができた。
【0188】この方法は、基準となる分光反射率の変調
と捉えることもできる。即ち、基準となる分光反射率に
乗算する係数は、この分光反射率に対する増幅率であ
り、加える係数はバイアスである。変角の関数である増
幅とバイアスを、その塗料の特徴量と考えることができ
る。
【0189】さらに、干渉等の色相変化効果を有する光
輝材を含む塗料について考える。これらの効果は、先に
述べた様に、変角に応じてその光輝材固有の分光反射率
を生じるものである。先の干渉等の色相変化効果のない
光輝材を含む塗料の場合には、各変角での分光反射率は
基準となる分光反射率を変調することによって得られた
が、干渉等の色相変化効果を有する光輝材による分光反
射率は基準となる分光反射率とは別の分光反射率であ
り、変調によって再現されるものではない。逆に、先の
基準となる分光反射率の変調では再現できなかった成分
は、光輝材そのものの色や干渉の効果、すなわち、色相
変化効果と考えることができる。従って、元の変角分光
反射率と基準となる分光反射率の変調によって得られた
変角分光反射率との差を、変角と波長の関数である色相
変化の特徴量と考えることができる。
【0190】このように、本方法は、個々に実測された
変角分光反射率から特徴量を抽出するものであり、光輝
材毎の定数や特徴量を予め準備する必要が一切ないた
め、あらゆる光輝材にすぐに適用可能である。又、色相
変化の特徴量を導入することにより、実測した変角分光
反射率と各特徴量から再構成された変角分光反射率とは
完全に一致し、実測した外板色からのスムーズな色変
更、質感変更が可能である。
【0191】次に、構成5、6によるデータ量削減の効
果を説明する。本モデル式によれば、ソリッド塗料およ
び色相変化効果を有しない光輝材を含む塗料について、
その特徴量は少ないデータ量で表現することが可能であ
り、変角分光反射率を再現するためのデータ量を削減す
ることができる。
【0192】例えば、変角分光反射率を変角0から90
度(1度刻み)、分光反射率390から730nm(1
0nm刻み)で測定した場合、そのデータ数は91*3
5=3185個の実数(反射率)となる。しかし、本方
法によれば、基準となる分光反射率1つ(35個)、お
よび、変角の関数である増幅率とバイアス(91個*
2)のみで合計217個の実数であり、データ量を元の
約6.8%に削減することが可能である。
【0193】一方、色相変化効果を有する光輝材を含む
塗料の場合、色相変化の特徴量が必要であり、データ量
を削減することはできない。しかしながら、実際には、
元の変角分光反射率から色相変化の特徴量を求め、その
値が無視出来ない程に大きい場合にのみ、この特徴量を
保存すれば良く、多数の塗装色の変角分光反射率を記憶
する場合には、本方法によるデータ削減の効果が得られ
る。
【0194】次に、構成5、6の方法における特徴量の
抽出方法について説明する。まず、元になる外板色を塗
装した平塗板を変角分光光度計にかけ、変角分光反射率
を計測する。この計測は、例えば、光の入射角が塗板の
法線に対し60度、光の受光角(すなわち、変角)が0
(正反射)から90度で1度きざみ、各変角について3
90から730nmまで10nm毎に反射率を求めれば
良い。この処理の手順は、各変角について、その変角の
分光反射率から視感反射率Yを求め、この視感反射率Y
が予め定められた値より小さい場合に、その変角の分光
反射率データに対し変角方向および波長方向へのスムー
ジング処理を行う。この場合には、スムージング処理を
行うか行わないかの判定に視感反射率Yを利用したが、
変角分光光度計の受光器に入射する光の量に関連する値
であれば他の値を利用することも可能であり、例えば、
変角毎の分光反射率について、各波長の反射率の合計を
利用しても良い。
【0195】変角40度の分光反射率を基準の分光反射
率とする。この基準の分光反射率を色に関する特徴量と
する。この場合には、変角40度の分光反射率を利用し
たが、他の変角の分光反射率でも構わない。この基準の
分光反射率は、光輝材の影響が少ないものが望ましく、
その観点から、なるべく、大きい変角での分光反射率で
あることが望ましい。しかし、一方、大きい変角では反
射率が非常に低くなり、十分な測定精度が得られないこ
とが多い。したがって、現状では、十分な測定精度が得
られる範囲でできるだけ大きな変角の分光反射率が使用
されるべきであり、測定機の精度向上に伴い。より大き
な変角の分光反射率を利用すべきである。
【0196】その後、正反射領域に関する処理を行う。
即ち、変角0度および1度の分光反射率について、変角
2度の分光反射率との差が求められ、それぞれの角度
(0度と1度)での正反射光成分とする。この場合、0
度および1度について、この処理を行ったが、正反射光
は、原理的には正反射角(すなわち、0度)のみで生じ
るものであり、1度でもこの処理を行ったのは変角分光
測定機の測定開き角を考慮したためである。仮に、理想
的な測定機を使用した場合には、この処理は、変角0度
の分光反射率との1度の分光反射率との差を求める処理
で良い。
【0197】その後、質感に関する特徴量が求められ
る。2度以上の各変角について、各波長の反射率を目的
変数とし、また、基準の分光反射率の各波長の反射率を
説明変数し、一次回帰を行い、その結果の傾きと切片
を、その変角における質感の特徴量とする。この傾き
は、基準の分光反射率に掛ける係数、切片は、基準の分
光反射率に先の係数を掛けた後に加える係数である。各
変角について、傾きと切片を求め、それぞれを変角の関
数とし、質感に関する第1の特徴量、第2の特徴量とす
る。又、変角0度及び1度のこれらの値については、変
角2度を値を代入する。
【0198】さらに、2度以上の各変角について、質感
に関する第1、第2の特徴量と色に関する特徴量から分
光反射率を再構成し、その値と元の(実測した)その変
角の分光反射率との差を各波長毎に求め、その値をその
変角、その波長での質感に関する第3の特徴量とする。
この処理を2度以上の各変角、各波長について行うこと
により、この特徴量を変角および波長の関数とする。
又、変角0度及び1度のこれらの値については、変角2
度を値を代入する。
【0199】質感に関する第3の特徴量が、全ての変
角、全ての波長において、予め定められた値より小さい
場合には、この特徴量を省き、色に関する特徴量および
質感に関する第1、第2の特徴量のみを記憶し、元の変
角分光反射率をおよそ再現することが可能である。
【0200】次に、構成5、6、8の方法のよる色変更
の方法を説明する。前記の方法により、特徴量の抽出が
完了しているものとする。
【0201】色変更は、色に関する特徴量(この場合、
変角40度の分光反射率)を変更することによって実現
される。変更後の色に関する特徴量は、各変角と各波長
について、質感に関する第1の特徴量(変角の関数)を
乗算し、質感に関する第2の特徴量(変角の関数)と同
第3の特徴量(変角と波長の関数)を加え、特に、1度
以下の変角については、さらに、正反射成分(変角と波
長の関数)を加えることにより、質感は維持し色変更を
行った変角分光反射率が得られる。
【0202】本発明において、上記の構成だけではメタ
リック粒子感の再現性の精度が十分でないので、以下に
説明する光輝材テクスチュアーに関する解析を考慮し
て、その再現性を向上させる必要がある。
【0203】光輝材の光干渉による角度に依存した色の
変化を含む質感は、構成1、2、5、6によりすでに折
り込まれている。そこで、メタリック粒子感の再現は、
メタリック粒子の角度依存性が波長に依らず一定である
ことを基本的考え方とし、再現精度向上を図ることとす
る。
【0204】本発明では、画像解析装置を用いて、被塗
装物中の光輝材からの反射光を光輝材粒子面積率と輝度
を光輝材テクスチャーの物理量として取り扱う。
【0205】構成1〜6に於いて、質感を示すパラメー
タは光輝材種により変動し、各光輝材種を表す値があ
る。よって、質感を示すパラメータと、前記物理量との
関係を解析し、メタリック粒子感の付与を考慮する。
【0206】本解析は、上記基本的考え方に基づき構成
1〜6の中で、変角分光反射率の角度依存性が波長に依
らず一定であるときの構成である構成4により実施す
る。
【0207】以下に、構成4における質感パラメータ
を、光輝材粒子面積及び輝度により表す導入方法を示
す。
【0208】1.輝度分布の測定方法 画像解析装置を用いて塗膜面における輝度分布を測定す
る。具体的には、例えば図19に示したように、画像解
析装置(株式会社ニレコ製、LUZEX−III)に接続
されているビデオカメラを垂直方向に設置し、人工太陽
光を該ビデオカメラの垂線に対して45°方向から照射
するようになっている。また、メタリック塗膜が水平線
に対して−15°〜0°の範囲内で、5°間隔に変化で
きるようにしておくと、ビデオカメラで観察される像は
偏角が15°〜45°のときの像が得られるので好まし
い。
【0209】2.3次元輝度分布 観察された上記の像の明るさを256階調レベルとして
取扱い、このデータより観察された範囲の3次元輝度分
布による可視化を行う。観察された3次元輝度分布の一
例を図20に示した。
【0210】ブルーマイカを含んだ塗膜は偏角15°で
塗面全体で輝き、かつ輝度レベルのピークが存在し、偏
角の増加に伴い輝いていない部分(以下、背景光とい
う)が現れる。銀メッキガラスフレークを含んだ塗膜は
偏角15°で背景光のなかに輝度レベルのピークが存在
し、偏角の増加に伴い背景光のみで輝度レベルのピーク
がなくなる。
【0211】3.面積率の算出 観察された像を任意の輝度レベルより大きいか小さいか
により2値化し、観察した全面積に占める光輝材粒子面
積の比率を算出し、それを面積率とする。
【0212】 面積率=観察された光輝材面積の総和/測定面積 反射率の角度依存性は、塗膜中で光っている光輝材の数
に対応すると考え、面積率と変角との関係を調べた結果
が図21である。すなわち、ブルーマイカおよび銀メッ
キガラスフレークのそれぞれについて、縦軸に面積率の
対数、横軸に偏角をとったグラフであって、これによ
り、面積率の対数は偏角に対して直線的に減少している
ことが判明した。
【0213】4.輝度の定義 図20の3次元輝度分布を2次元的に示したものが図2
2であり、この図により、破線で示した輝度レベル以上
の面積(輝度レベル×画素)の総和を光輝材輝度
(S)、その破線以下の面積の総和を背景光輝度(D)
とする。背景光の輝度レベルは偏角を変えても変化せ
ず、つまり光輝材以外の輝度と考えられ、これを除いた
輝度の全ての光輝材輝度とする。
【0214】5.光輝材の面積率と輝度を用いた質感パ
ラメータへの表現導入方法 構成4より R'(x,λ)=b(λ)*Mx 両辺を偏角xで微分する LnM=∂LnR'(x,λ)/∂x ・・・(31) 光輝材粒子面積率(f)の対数と偏角の関係より、回帰
直線の傾きをLnpとすると、(図21参照) Lnp=∂Lnf/∂x ・・・(32) となる。
【0215】単位面積あたりの輝度をIとすると、 I∝R ・・・(33) また、Iを角度に依存する成分(光輝材輝度:S)と角
度に依存しない成分(背景光輝度:D)に分けると(図
22参照) I=S+D ・・・(34) このとき LnM=∂LnR'(x,λ)/∂x=∂LnI/∂x =(1/I)*∂I/∂x ={(1/(S+D)}*∂S/∂x ここで、S=γf(図23参照)とすると、(32)式
より
【0216】従って、 LnM={S/(S+D)}*Lnp ∴M=pA ・・・(35) A=S/(S+D) つまり、質感パラメータ(M)は、光輝材の面積率の角
度変化率(p)と光輝材の輝度の割合{S/(S+
D)}で表現可能である。
【0217】6.(35)式の検討結果 構成4における光輝材毎の質感パラメータと、面積率の
角度変化率と輝度で表した数式により得られる値の相関
解析結果を、図24に示す。
【0218】以上より、質感パラメータと光輝材粒子面
積率及び輝度との関係が明らかになったことで、質感パ
ラメータと光輝材テクスチャーの関係づけが図れる。よ
って光輝材の面積率と輝度は光輝材で決まるものであ
り、実際の塗板の反射率からもまたモデル式による計算
で求まる反射率からも、求めることが可能となる。つま
り、質感パラメータ(M)が決まればpA を求めること
ができることにより、質感パラメータ(M)に連動して
A の情報をコンピュータグラフィックス画像上に畳重
させることで、実際のメタリック粒子感の再現が可能と
なる。
【0219】本発明は、構成4における質感パラメータ
への適用だけではなく、他の構成における質感パラメー
タへの適用も、簡便な変換により容易に行うことができ
る。
【0220】本実施例は、色に関する特徴量の変更手段
を問うものではなく、いかなる手段を用いても、結果的
に色に関する特徴量が変更されれば良い。例えば、各波
長毎の反射率をグラフィクイコライザで増減させても良
く、又、この特徴量を3刺激値やマンセル値に変換し、
それらの値について変更操作を行った後、既に知られて
いるニューラルネットワークの利用等により、変更され
た3刺激値やマンセル値から変更された色に関する特徴
量を求めても良い。
【0221】又、色に関する特徴量を変更するのではな
く、他の塗装色から抽出された色に関する特徴量に置き
換えることも可能であり、さらには、塗装色以外の物体
を測定して求められた分光反射率や、計算的に生成され
た分光反射率を色に関する特徴量とすることも可能であ
る。
【0222】さらに、色変更の操作対象とする分光反射
率は、各特徴量が求められている変角の何れでも良く、
例えば、変角40度の分光反射率を色に変更する特徴量
とする場合に変角20度の分光反射率について色変更を
行うことも可能である。この場合、変角20度での分光
反射率が指定の(色変更後の)分光反射率になるよう
な、色に関する特徴量(すなわち、変角40度の分光反
射率)を算出すれば良い。勿論、その時、各質感に関す
る特徴量は変更しない。
【0223】これらの色変更の操作は、変更の対象とな
る変角分光反射率を元に作成されたR塗版や自動車の画
像を見ながら行っても良く、その場合には、色変更の操
作後、すぐに変更後の変角分光反射率を再構成し、イン
タラクティブに変更の結果を確認しながら、操作を行う
ことが望ましい。
【0224】次に、質感変更の方法を説明する。前記の
方法により、特徴量の抽出が完了しているものとする。
【0225】質感変更は、3つの質感に関する特徴量を
それぞれ変更することによって実現される。変更後、色
に関する特徴量は、各反射角と各波長について、変更さ
れた質感に関する第2の特徴量(変角の関数)と変更さ
れた第3の特徴量(変角と波長の関数)が加算され、特
に、1度以下の変角については、さらに、正反射成分
(変角と波長の関数)が加算されることにより、色は維
持し質感変更を行った変角分光反射率が得られる。勿
論、3つの質感に関する特徴量のいずれか1つあるいは
2つのみを変更しても良い。
【0226】本発明の一部は、3つの質感に関する特徴
量の変更方法を与えるものであり、例えば、変角の変化
に伴う彩度・明暗差(フリップフロップ感)を強める場
合には変角に依存しない一定の係数を質感に関する第1
の特徴量に乗算することにより、その特徴量を変更すれ
ば良く、又、明暗差のみを強める場合には変角に依存し
ない一定の係数を質感に関する第2の特徴量に乗算する
ことにより、その特徴量を変更すれば良く、さらに、変
角の変化に伴う色相変化の効果を強めるには変角、波長
に依存しない一定の係数を質感に関する第3の特徴量に
乗算することにより、その特徴量を変更すれば良い。こ
れらの方法は、質感変更のための質感に関する特徴量の
変更の最も簡単かつ効果的な一方法であるが、本発明全
体は、質感に関する特徴量の変更手段を問うものではな
く、いかなる手段を用いても、結果的に質感に関する特
徴量が変更されれば良い。例えば、各変角毎の質感に関
する第1の特徴量をグラフィクイコライザで増減させて
も良く、又、特に、質感に関する第3の特徴量について
は、各変角度毎の波長方向への成分を分光反射率と考
え、その分光反射率から各変角毎の3刺激値やマンセル
値に相当する値を求め、これらの値を、横軸を変角とし
たグラフに表示し、変角毎にグラフィクイコライザで増
減させても良い。変更したマンセル値から分光反射率を
求める方法は、先に色に関する特徴量の変更で述べた方
法が適用可能である。さらに、変角の関数である様な係
数をこれらの質感に関する特徴量に掛ける方法もあり、
その場合には、例えば、正反射に近い領域ではフリップ
フロップ感を強め、正反射から遠い領域ではその効果を
弱めるといった質感変更が可能になる。
【0227】又、質感に関する特徴量を変更するのでは
なく、他の塗装色から抽出された質感に関する特徴量に
置き換えることも可能であり、その場合には、3つの質
感に関する特徴量全てを置き換えることにより全ての質
感が交換され、また、例えば、質感に関する第3の特徴
量だけを置換することにより、色相変化の効果のみを他
の塗料のものに置換することが可能である。さらには、
計算的に生成された値を質感に関する特徴量とすること
も可能である。
【0228】これらの質感変更の操作は、変更の対象と
なる変角分光反射率を元に作成されたR塗板や自動車の
画像を見ながら行っても良く、その場合には、質感変更
の操作後、すぐに変更後の変角分光反射率を再構成し、
インタラクティブに変更の結果を確認しながら、操作を
行うことが望ましい。
【0229】なお、上記実施例では、新規または再構成
された変角分光反射率を用いて画像を表示する場合につ
いて説明したが、本発明は画像の表示に限定されるもの
ではない。例えば、熟練を要する顔料の混合比の設定等
である配合をクベルカ・ムンク理論に従った基本色材料
(顔料等の着色剤)の配合としてコンピュータ演算によ
り求めるコンピュータカラーマッチング(CCM)へ適
用することが可能である。このCCMは、分光光度計等
により計測された色見本の反射率に一致するように反射
率が既知の複数の顔料の混合比等をコンピュータの演算
により求めるものである。また、他例としてデザイナー
やユーザーが意図する塗装色を再現するために、CCM
を用いて着色剤の調合割合等を決定する場合への適用も
可能である。
【0230】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、分
光波長に依存する第1の特徴量と変角に依存する第2の
特徴量とを用いているので、塗装色について波長依存性
が高いことが想定される色と、角度依存性が高いことが
想定される質感(メタリック粒子感も含む)とを独立し
て扱うことができ、色と質感を考慮した被塗装物の塗装
色を再現することができる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例における色や質感の制御方法の段階を
概念的に示したイメージ図である。
【図2】色変更、質感変更の概念を説明するためのイメ
ージ図である。
【図3】本実施例のパーソナルコンピュータを含む塗装
色を再現するためのコンピュータグラフィクス装置の概
略構成図である。
【図4】ゴニオの構成を説明するための概念図である。
【図5】本実施例に用いる変角を説明するための座標系
を示す線図である。
【図6】反射率を近似的に扱うことを説明するための説
明図である。
【図7】塗装面の構成を示すイメージ図であり、(a)
はメタリック塗装面、(b)はパールマイカ塗装面、
(c)はソリッド塗装面を示している。
【図8】光透過・干渉性材料による光の挙動を説明する
ための説明図である。
【図9】塗装色を再構成する処理の流れを示すフローチ
ャートである。
【図10】1次回帰を説明するために用いる線図であ
る。
【図11】特徴量抽出処理の詳細を示すフローチャート
である。
【図12】光輝材種毎に得られた各種特徴量を示す線図
である。
【図13】光輝材種毎に得られた各種特徴量を示す線図
である。
【図14】3K4の塗板と3K3の塗板の色度図を示す
線図である。
【図15】8E3の塗板と8J4の塗板の色度図を示す
線図である。
【図16】(A)〜(D)は4K4の塗板と4L5の塗
板の色度図を示す線図であり、(E)〜(H)は8G2
の塗板と8J6の塗板の色度図を示す線図である。
【図17】塗装面を測定した複数波長の変角分光反射率
を変角分布を示す線図である。
【図18】モデル式による変角と実測データの誤差を色
差の関係を示す線図である。
【図19】画像解析装置の概略構成図である。
【図20】3次元輝度分布を示すイメージ図である。
【図21】面積率と変角の関係を示す特性図である。
【図22】光輝材輝度と背景光輝度の関係を示す特性図
である。
【図23】面積率と光輝材輝度の関係を示す特性図であ
る。
【図24】変角と光強度の減少率の関係を示す特性図で
ある。
【符号の説明】
16 パーソナルコンピュータ 24 ゴニオ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 沢村 隆光 神奈川県横須賀市田浦港町無番地 関東自 動車工業株式会社内 (72)発明者 石黒 政人 神奈川県横須賀市田浦港町無番地 関東自 動車工業株式会社内 (72)発明者 田淵 一郎 神奈川県平塚市東八幡4丁目17番1号 関 西ペイント株式会社内 (72)発明者 増田 豊 神奈川県平塚市東八幡4丁目17番1号 関 西ペイント株式会社内 (72)発明者 狭田 謙一 愛知県西加茂郡三好町大字莇生字平地1 関西ペイント株式会社内 (72)発明者 大関 徹 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 服部 寛 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 和田 隆志 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 内山 祐司 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 石原 利員 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1株式会社豊田中央研究所内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 被塗装物からの反射光を受光する受光角
    を変化させた変角毎の分光反射率として変角分光反射率
    を計測する計測手段と、 前記計測手段で計測した変角分光反射率を用いて分光波
    長に依存する第1の特徴量と、前記変角に依存する第2
    の特徴量を演算する特徴量演算手段と、 前記特徴量演算手段で求めた第1の特徴量と第2の特徴
    量との積または和を用いて変角毎の分光反射率を構成
    し、前記被塗装物の塗装色を再現する再現手段とを備え
    たコンピュータグラフィクス装置において、前記の第2
    の特徴量に、画像解析装置を用いて測定される偏角毎の
    光輝材の反射率より光輝材粒子面積および輝度の算出を
    行ない、光輝材粒子面積率の角度に依存する特徴量と輝
    度の角度に依存する特徴量と角度に依存しない特徴量を
    付加してメタリック粒子感を精度よく再現することを特
    徴とするメタリック粒子感を精度よく再現する方法。
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