JP2009544688A - 虚血性疾患の緩和及び治療のための医薬組成物並びにそれを伝達するための方法 - Google Patents

虚血性疾患の緩和及び治療のための医薬組成物並びにそれを伝達するための方法 Download PDF

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Abstract

【課題】虚血によって惹起される疾患及び疾病を治療するための医薬組成物並びにそれを伝達するための方法を提供する。
【解決手段】本発明の医薬組成物は、ホスホリパーゼ(PL)ポリペプチド及びタンパク質導入ドメイン(PTD)の結合体を含んでいる。PCL−δは、細胞質内カルシウムのレベル調節において主要な役割を果たす。心筋虚血時に、細胞質内カルシウムの蓄積は、病原性の変化を媒介する。本発明によれば、心臓及び脳のような組織で低酸素症を惹起する虚血性疾患又は疾病が、PTD−PL結合体の投与によって予防又は緩和され得る。

Description

本発明は ホスホリパーゼポリペプチドのような重要な分子及びタンパク質導入ドメイン(protein transduction domain,PTD)の結合体を含む、虚血治療のための新規の医薬組成物、及びこれを伝達するための方法に関する。
一般的に、身体は、血液をポンピングする心臓に決定的に依存している。健康な心臓は、酸素と栄養分の伝達及び代謝の有害産物を除去するため、体全体に血液をポンピングする。虚血は、心筋の代謝並びに心臓及び細胞の損傷において急速な変化を引き起こす。損傷の程度は、虚血の重症度及び適切な治療の適時性によって異なってくる。虚血の持続は、数時間以内に全組織のネクローシスを惹起しうる。
再灌流は、一般的に有効であると考えられているが、いくつかのメカニズムによって組織の損傷を惹起する。臨床上、開心手術、心臓移植及び心臓疾患の逆転において、虚血再灌流による損傷に対する心筋の保護が最大の臨床的関心を引く問題である。再灌流による酸素化(再酸素化)の回復後、低酸素症の損傷の悪化は、他のタイプの臓器移植において、並びに肝臓、腸、脳、腎臓及びその他の虚血性症候群において、細胞損傷の重要なメカニズムである。
虚血及び擬似性(simulated)の虚血性疾患は、活性酸素種の増加及びカルシウムイオン(Ca2+)の過負荷を惹起する(非特許文献1)。細胞質内のカルシウムの蓄積は、心筋の虚血時に起こる病理学的変化の媒介因子として提案されている(非特許文献2)。細胞内のカルシウムの増加は、ミトコンドリア透過転移細孔(mPTP)の開放を惹起する。また、細胞内のカルシウム増加は、他のmPTPの開放を増大させ、更に多くの細胞質内のタンパク質、例えばホスホリパーゼ、プロテインキナーゼ、プロテアーゼ及びエンドヌクレアーゼを活性化させる(非特許文献1)。mPTPの抑制剤であるシクロスポリンA及びサングリフェリンAを用いた治療を虚血後再灌流で行う場合、細胞質機能の回復及び細胞の生存率が各々約20%及び62%増加することが報告されている(非特許文献3)。
ホスホリパーゼC(PLC)のようなホスホリパーゼは、カルシウムのホメオスタシス調節に重要な役割を果たす。今まで、11の哺乳類のPLCの同位酵素が確認されている。これらは、次の4つのタイプに分類することができる:PLC−β、PLC−γ、PLC−δ及びPLC−ε。PLCδ1及びγ1が、正常な心臓細胞において優勢な形態である(非特許文献4)。
全てのPLC同位酵素は、Ca2+の活性化に敏感なC2領域を含んでいる(非特許文献5)。PLCアイソフォームの内、PLC−δ1が細胞内のCa2+による活性化に最も敏感である(非特許文献5)。
PLCは、膜りん脂質であるホスファチジルイノシトール4,5−ビスホスフェート(PIP2)を加水分解し、ジアシルグリセロール(DAG)及びイノシトール1,4,5−トリホスフェートを生成する(非特許文献5)。DAG及びIP3は、プロテインキナーゼC(PKC)の活性及び細胞内の貯蔵所から細胞質へのカルシウムイオンの放出を刺激する(非特許文献5)。PLCの活性化メカニズムは、Gタンパク質結合受容体、チロシンキナーゼ型受容体及びras経路によって各々活性化されるPLC−βを通してよく知られている(非特許文献6)。
最近の研究に基づいて、過量のカルシウムが細胞質に存在する場合、肝細胞のミトコンドリア膜に存在するPLC−δ1が、はカルシウムの流入を抑制する作用をするものとして報告されている(非特許文献5)。又、PLC−δ1は他の同位元素より7倍もの多くの量が正常心筋細胞に存在し、虚血状態においてPLC−δ1の量は、試験管内及び生体内の何れにおいても減少することが明らかになっている(非特許文献5)。カルパイン抑制剤、カルパスタチン及びカスパーゼ抑制剤zVAD−fmkで治療する際、PLC−δ1の分解が抑制された(非特許文献5)。また、PLC−δ1が心筋細胞で過発現する場合、虚血性疾患によって誘導された細胞内Ca2+の過負荷が著しく減少した(非特許文献5)。
このような結果は、PLC−δ1が、正常な心臓における細胞質内カルシウムのホメオタシス及び心筋梗塞後のカルシウム均衡に対するその影響において重要な役割を果たしていることを立証するものである。明らかに、PLC−δ1を、生きた細胞の細胞質及び核内に形質導入し、有害な副作用を伴うことなく、虚血又は虚血性疾患を治療或いは予防する効果的な方法が必要である。
タンパク質導入ドメイン(PTD)は、生物学的に活性である分子の伝達のために用いられてきた(非特許文献7)。PTDは、生理学的に活性である分子を細胞内に浸透させるのに用いられてきた低分子量のぺプチドである。しかし、今まで生体内でホスホリパーゼCを伝達させる方法としてPTDを用いるための試みがなされたことはない。
Bolli,R.,et al.,Physiol.Rev.,79:609−634,1999 Moraru,I.I.,et al.,Biochim.Biophys.Acta,1268:1−8,1995 Javadov,S.A.et al.,J.Physiol.,549:513−524,2003 Hansen,C.A.,et al.,J.Mol.Cell.Cardiol.,27:471−484,1995;and Schnabel,P.,et al.,J.Mol.Cell.Cardiol.,28:2419−2427,1996 Hwang,K.C.,et al.,J.Steroid Biochem.,91:131−138,2004 Rhee,S.G.,et al.,Annu.Rev.Biochm.,70:281−312,2001 Viehl C.T.,et al.,Ann Surg.Oncol.,12:517−525,2005;Noguchi H.,et al.,Nat.Med.,10:305−309,2004; and Fu A.L.,et al.,Neurosci.Lett.,368:258−262,2004
本発明の課題は、タンパク質導入ドメイン(PTD)を用い、生体内でポリペプチドを伝達することによって、虚血性疾患及び疾病を効果的に治療することにある。
上記課題を解決するため、本発明はPTD及びホスホリパーゼ(PL)ポリペプチド(PTD−PL)との結合体を提供する。上記結合体は、PTD暗号化の遺伝子をホスホリパーゼ遺伝子と融合させ、当該分野において熟練した者に公知の標準クローニング技術及び通常の方法を用い、試験管内又は生体内で融合タンパク質を発現させて分離することによって調製することができる。本発明によるPTD−PL結合体は、細胞への伝達のために、PTDの細胞内透過及び伝達効果によって容易に膜を通過する。
本発明の一態様は、虚血又は再灌流によって惹起される細胞内カルシウムの過負荷を治療、減少又は予防するためのPTD−PL結合体の用途である。
又、他の態様は、細胞からフリーカルシウムの濃度を減少させるためのPTD−PL結合体の用途である。
本発明は、又、低酸素症又は虚血によって惹起される心臓の損傷(例えば、心不全及び心筋梗塞)を軽減、治療、予防又は除去するためにPTD−PL結合体を利用する方法を含む。
本発明は、又、心血管疾患、心筋低酸素症又は虚血性損傷を予防し/するか又は治療するためにPTD−PL結合体を利用する方法を含む。
本発明は、又、心不全時の脳卒中を予防するためにPTD−PL結合体を利用する方法を含む。
又、他の態様は、低体温症を患っている対象において虚血再灌流障害を予防又は軽減するためのPTD−PL結合体の用途である。
又、他の態様は、臓器又は組織の移植時に臓器又は組織の損傷を予防するためのPTD−PL結合体の用途である。好ましくは、心臓移植のためのPTD−PL−δの用途である。
本発明の他の態様は、一つ以上の治療化合物又は構造物を組み合わせたPTD−PL結合体の用途である。
上記態様の何れにおいても、PTDと、PLの一つ以上の断片、誘導体又は類似体との融合もまた考慮される。
本発明は、局所投与経路によるPTD−PL結合体の投与を可能にし、全身の副作用を最小化又は排除することができる。
カルシウム及びフリーラジカルは、急性の外傷、例えば虚血や脊髄損傷において心臓及び神経の損傷を誘導するために共に作用している。本発明は、細胞、例えば心筋細胞において虚血又は再灌流誘導の虚血をPTD−PL結合体を用い治療又は予防する方法を含んでいる。
本発明の一態様は、カルシウムの過負荷を治療、減少又は予防し、心臓、心血管又は神経の細胞死(例えば、筋細胞、ニューロン)を減少或いは抑制するためのPTD−PL結合体の用途である。カルシウムの過負荷は、例えば低酸素症、虚血、再灌流、心血管(心臓)の疾患又は損傷、例えば心筋梗塞、又は神経学的(脳)疾患又は損傷、例えば虚血性又は出血性の脳卒中によって惹起され得る。カルシウムの過負荷は、脳、脊髄、心臓、移植された臓器又は移植された四肢を含め(これに限らない)、様々な身体部位又は臓器で起きる可能性があり、これらの身体部位のうち一つに制限することができる。好ましい様態は、カルシウムの過負荷を治療又は減少或いは予防するためのPTD−PL−δ結合体の用途である。
又、他の態様は、細胞に有効量のPTD−PLを投与することによって、細胞からフリーカルシウムイオンの濃度を減少させるためのPTD−PL結合体の用途である。
本発明は、又、対象において、低酸素症又は虚血によって惹起されるような心筋の酸化ストレスを、治療、予防又は最小化する方法に関するものである。上記の方法は、酸化ストレスの標的である心筋細胞が細胞死から保護されるように心筋酸化ストレスを調節するPTD−PLの治療有効量を、それを必要とする対象に投与することによって行われる。細胞死は、例えばネクローシス又はアポトーシスに起因され得る。
本発明のその他の態様は、心血管又は神経の細胞死を減少或いは抑制するためのPTD−PL−δ結合体の用途である。心血管細胞は、例えば心臓の筋細胞、心室の筋細胞、心房の筋細胞、心臓の幹細胞、内皮細胞、血管平滑筋細胞、ペースメーカー細胞、筋繊維芽細胞又は繊維芽細胞であり得る。神経細胞は、例えばニューロンであり得る。
本発明は、又、対象者において、低酸素症又は虚血によって惹起される心臓又は神経の損傷を治療、予防、減少又は除去する方法を含み、低酸素症又は虚血関連の損傷が治療、予防、減少又は除去されるよう、PTD−PLを、それを必要とする対象に投与する。
本発明の方法及び組成物によって治療、予防、減少又は除去され得る心臓の損傷としては、低酸素症及び/又は虚血によって惹起若しくは誘発される全ての心臓損傷が含まれる。上記損傷には、心臓の虚血後再灌流、うっ血性心不全、心筋梗塞、薬物(例えばドキソルビシン)のような化合物によって惹起される心臓毒性、感染(例えば梅毒、慢性のクルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)感染)による心臓の損傷、突発性心臓アミロイド症、心臓手術、心臓移植及び外傷性心臓損傷(例えば、貫通性又は鈍器損傷、又は大動脈弁破裂)が含まれるが、これに限らない。連結している血管及び/又は組織、例えば心膜を含め、心臓全体又は一部が損傷され得る。本発明の化合物の投与は、臨床的に必要又は好ましい場合に、例えば虚血後再灌流より前、虚血後再灌流の開始時、或いは虚血後再灌流中に行うことができる。
本発明の方法及び組成物によって治療、予防、減少又は除去され得る神経の損傷としては、低酸素症及び/又は虚血によって惹起若しくは誘発される全ての神経損傷が含まれる。上記損傷には、虚血再灌流障害、薬物のような化合物によって惹起される神経毒性、及び寄生虫感染による神経損傷が含まれるが、これに限らない。
本発明はまた、心血管の疾患、心筋の低酸素症又は虚血性損傷を予防及び/又は治療するためにPTD−PL結合体を用いる方法を含んでいる。
本発明はまた、臓器又は組織の除去前、或いはそれと同時にドナーにPTD−PLを投与し、上記臓器又は組織の再灌流によって惹起される損傷を減少若しくは予防することによって、臓器又は組織の移植時の上記臓器又は組織の損傷を予防する方法を含んでいる。特に、本発明は、低体温症を患っている対象を、タンパク質導入ドメイン(PTD)及びホスホリパーゼポリペプチドを含有する融合ポリペプチドの治療有効量によって予め治療する、低体温症を患っている対象において虚血性再灌流障害を予防する方法を含んでいる。
好ましい様態において、移植される臓器または組織は、心臓又は心臓組織である。PTD−PLは又、ドナーからの臓器又は組織の手術的除去後に、臓器又は組織と接触し得る。一部の様態において、PTD−PLは、公知の臓器又は組織の保存液、例えばウィスコンシン大学溶液又はセルシオ(Celsior)溶液(例えば、文献「Thabut et al.,Am.J.Respir.Crit.Care Med.,164:1204−1208,2001;及びFaenza et al.,Transplantation,72:1274−1277,2001」参照)以外に添加される。
本発明は又、心不全を患っている対象(例えば,ヒト)をPTD−PL及び薬理学的に許容される担体によって治療することによって、上記対象において、脳卒中又は脳卒中の開始を予防する方法を含んでいる。PTD−PLは、患者において脳卒中の可能性を増加させ得る手術の処置の前又はそれと同時に投与されうる。ある態様において、上記処置は、バルーン血管形成術である。他の処置としては、冠状動脈バイパス術及び弁膜交換手術が含まれる。PTD−PLは、血栓形成防止剤(例えば、クマジン)より前に、又は同時に或いはその後に投与されうる。
本発明は、PTD−PLを単独又は一つ以上の付加的な治療化合物と共に投与することによって、対象において心不全を治療する方法を含んでいる。一部の態様において、上記付加的な治療化合物には抗血小板薬物、抗凝固薬物及び抗血栓薬物、又はその混合物が含まれるが、それに限らない。
本発明は又、低体温症を患っている対象を、PTD−PL及び薬理学的に許容される担体により治療することによって、低体温症を患っている対象(例えば、ヒト)から再灌流障害を予防する方法を含んでいる。上記対象は、当該分野で一般的に知られているように、低体温症を患っている対象を治療するための標準再加温処置より前、又はそれと同時にPTD−PLで治療され得る。
<タンパク質導入ドメイン(PTD)>
PTDは、全身又は局所投与によって、生体内および試験管内で、細胞内への問題のタンパク質、ペプチド及び重要な科学的化合物の伝達又は吸収を効果的に可能にする。投与経路には、特に筋肉内、腹腔内、静脈内,経口,鼻、皮下、皮内、粘膜及び吸入経路が含まれる。従ってPTDがタンパク質、ペプチド及び/又は化合物との結合体として提供される場合、PTDはタンパク質、ペプチド及び/又は化合物を局所部位、たとえば皮膚、眼球又は気道に伝達することができる。
本発明において、PTDとして使用するために、本発明者等は固体合成方法を用いて様々なペプチドを構成したが、目的とする伝達部位及び使用されるリンカーの種類に応じて他の種類のPTDを使用することができる旨を周知しなければならない。PTDは3乃至30個のアミノ酸、好ましくは5乃至15個のアミノ酸からなり、その内の10乃至30%以上は、アルギニン残基が好ましい。しかし、どのアルギニン残基も有していないPTDもまた含まれる。
ある態様は、ヒト(及びマウス)転写因子1HPH−1からのPTDであるHph−1−PTD(YARVRRRGPRR)(配列番号:1)の使用を含んでいる。又、他の態様は、Sim−2のPTD(AKAARQAAR)(配列番号:2) の使用をんでいる。
他の様態には、HIV−1ウイルスタンパク質TatのPTD(YGRKKRRQRRR)(配列番号:3),ドロソフィラ(Drosophila)のアンテナペディア(Antennapedia) タンパク質(Antp)(RQIKIWFQNRRMKWKK)(配列番号:4),HSV−1 構造タンパク質Vp22(DAATATRGRSAASRPTERPRAPARSASRRRRPVE)(配列番号:5),R7を信号伝達するGタンパク質の調節因子(RRRRRRR)(配列番号:6),MTS(膜透過配列)(AAVALLPAVLLALLAPAAADQNQLMP)(配列番号:7),及び短い両親媒性ペプチドのキャリアPep−1(KETWWETWWTEWSQPKKKRKV)(配列番号:8)及びPep−2(KETWFETWFTEWSQPKKKRKV)(配列番号:9)が含まれるが、これに限らない。
<ホスホリパラーゼ(PL)>
上記目的を達成するため、本発明は、PTD及びポリペプチド、例えば酵素ホスホリパーゼ、特にホスホリパーゼC(PLC)の結合体を提供する。PLC酵素の4つの主要タイプが存在する:PLC−β(ベータ)、PLC−γ(ガンマ)、PLC−δ(デルタ)、PLC−ε(イプシロン)及びPLC−ζ(ゼータ)。各々のPLCタイプはまた、様々なサブタイプ、例えばβ1、β3、β4、δ1、δ3から構成されている。
ある態様は、PTDとホスホリパーゼC−デルタ1(PLC−δ1)の結合体である。PLC−δ1は、低酸素症の心筋細胞において過発現する際、虚血性状態によって誘導された細胞内Ca2+の過負荷を排除する。
PLC−δ1のヌクレオチド配列(配列番号:10)を以下[表1]に示す。
(配列番号:10)
PLC−δ1のアミノ酸配列(配列番号:11)を以下[表2]に示す。
(配列番号:11)
又、他の態様はPTDとホスホリパーゼCデルタ3(PLC−δ3)との結合体である。ヒトPLC−δ3は789個のアミノ酸の長さを有している。
PLC−δ3のヌクレオチド配列(配列番号:12)を以下[表3]に示す。
(配列番号:12)
PLC−δ3のアミノ酸配列(配列番号:13) を以下[表4]に示す。
(配列番号:13)
また、他の態様はPTDとホスホリパーゼCデルタ4(PLC−δ4)との結合体である。PLC−δ4はまた、PLC−δ2とも呼ばれている。ヒトPLC−δ4は、762個のアミノ酸の長さを有している。
PLC−δ4のヌクレオチド配列(配列番号:14)を以下[表5]に示す。
(配列番号:14)
PLC−δ4のアミノ酸配列(配列番号:15)を以下[表6]に示す。
(配列番号:15)
PLC−δ5を含んでいるが、これに限らない、また別のPLC−δもやはり本発明の一部に含まれている。PLC−δ5のヌクレオチド及びアミノ酸の配列は、本願で参考引用した米国特許第6,958,152号に記載されている。
また、PLC−β1(ベータ1)、PLC−β2(ベータ2)、PLC−β3(ベータ3)、PLC−β4(ベータ4)、PLC−γ1(ガンマ1)、PLC−γ2(ガンマ2)、PLC−ε1a(イプシロン1a)、PLC−ε1b(イプシロン1b)及びPLC−ζ(ゼータ)を含んでいるが、これに限らない他のPLC酵素もやはり本発明の一部に含まれている。
PLC−β1のアミノ酸配列(配列番号:16)を以下[表7]に示す。
(配列番号:16)
PLC−β2のアミノ酸配列(配列番号:17)を以下[表8]に示す。
(配列番号:17)
PLC−β3のアミノ酸配列(配列番号:18)を以下[表9]に示す。
(配列番号:18)
PLC−β4のアミノ酸配列(配列番号:19)を以下[表10]に示す。
(配列番号:19)
PLC−γ1のアミノ酸配列(配列番号:20)を以下[表11]に示す。
(配列番号:20)
PLC−γ2のアミノ酸配列(配列番号:21)を以下[表12]に示す。
(配列番号:21)
PLC−ε1aのアミノ酸配列(配列番号:22)を以下[表13]に示す。
(配列番号:22)
PLC−ε1bのアミノ酸配列(配列番号:23)を以下[表14]に示す。
(配列番号:23)
PLC−ζのアミノ酸配列(配列番号:24)を以下[表15]に示す。
(配列番号:24)
本発明は又、PTD、及びPLの断片、誘導体又は類似体との結合体を提供する。具体的には、PTDとPLのカルシウム結合領域との結合体が含まれる。PLのカルシウム結合領域、C2は、Ca2+の活性化に敏感である。PLC酵素のC2領域は、以下のアミノ酸領域において又は上記領域付近において探すことができる:
配列番号:11(PLC−δ1)の630乃至755番目のアミノ酸(配列番号:25)、
配列番号:13(PLC−δ3)の661乃至787番目のアミノ酸(配列番号:26)、
配列番号:15(PLC−δ4)の628乃至754番目のアミノ酸(配列番号:27)、
配列番号:16(PLC−β1)の677乃至794番目のアミノ酸(配列番号:28)、
配列番号:17(PLC−β2)の679乃至797番目のアミノ酸(配列番号:29)、
配列番号:18(PLC−β3)の728乃至843番目のアミノ酸(配列番号:30)、
配列番号:19(PLC−β4)の702乃至818番目のアミノ酸(配列番号:31)、
配列番号:20(PLC−γ1)の1092乃至1212番目のアミノ酸(配列番号:32)、
配列番号:21(PLC−γ2)の1062乃至1187番目のアミノ酸(配列番号:33)、
配列番号:22(PLC−ε1a)の734乃至855番目のアミノ酸(配列番号:34)、
配列番号:23(PLC−ε1b)の734乃至855番目のアミノ酸(配列番号:35)、及び
配列番号:24(PLC−ζ)の483乃至606番目のアミノ酸(配列番号:36)。C2以外に、PLの他のカルシウム結合領域もやはり考慮される。
本発明のペプチド結合体は、PTD暗号化遺伝子をPL遺伝子と融合させて、当該分野において通常の技術を有する者に公知の標準的なクローニング技術及び通常の方法を用い、試験管内及び生体内で上記融合タンパク質を発現させることによって調製することができる。
PTD−PL結合体は、直接共有結合、ペプチド結合、又はリンカーによって互いに連結することができる。特に、PTD−PL結合体は、特定酵素によって特異的に切断される領域を含有するリンカーによって互いに連結されうる。ある態様において、リンカーDNAは、プロテアーゼ認識配列を暗号化し、PTDとPLの結合部での切断を可能にする。例えばリンカーDNAは、カスパーゼ−3の認識配列(例えば、DEVDを含むアミノ酸配列(配列番号:37))を暗号化することができる。切断部位を有していないリンカー(非切断リンカー)もやはり使用することができる。リンカーの長さは典型的に1乃至10個のアミノ酸、好ましくは1乃至5個のアミノ酸である。リンカーはアミノ酸Gly,Gly−Gly,又はGly−Gly−Glyを含んでいても良い。
本発明によるPTD−PL結合体は、PTDの細胞内透過及び伝達効果によって容易に細胞膜を通過して細胞内へ移動する。
上記に示した何れにとっても、PTD−PLmRNAの使用もまた、考慮される。
また、他の態様は、生体内に投与される場合のPTD−PLの分解を防ぐ抑制剤の使用を含んでいる。虚血性の心臓及び低酸素症の新生児の心筋細胞において、PLC−δ1が選択的に分解される。PLC−δ1の分解は、カルパイン抑制剤、カルパスタチン及びカスパーゼ抑制剤zVAD−fmkによって完全に抑制される。従って、本発明の他の態様は、PLの分解を防止し、虚血状態によって誘導された細胞内Ca2+の過負荷を排除するためのPTD−カルペイン−、又はPTD−カスパーゼ−抑制剤の用途である。上記PTD抑制剤は、単独若しくは本発明のPTD−PL融合タンパク質及び/又は他の化合物と共に投与され得る。
<定義>
便宜上、明細書、実施例及び添付の請求の範囲に用いる特定の用語をここに集める。特に断りのない限り、本願で用いられる全ての技術及び科学用語は、本発明に関連する分野において通常の技術を有する者によって、通常の周知のものと同じ意味を有する。
本願で用いるように、用語“低酸素症”は、血液又は組織において不十分な酸素レベル(例えば、心筋梗塞)を意味する。低酸素症は、例えば血管閉塞によって惹起される血液供給不足の結果であり得る。
本願で用いるように、用語“虚血”は、血液を供給する血管の収縮、閉塞又は遮断によって惹起される、身体部位への不適切な血液の流入又は不足を意味する。虚血は、組織の低酸素症を惹起する。低酸素症又は虚血関連の損傷は、心臓の損傷を含んでいる。
本願で用いるように、用語“再灌流”は、心臓発作又は脳卒中以後のように、血液供給が遮断されている、すでに虚血性である組織又は臓器への血液流の復元を意味する。
本願で用いるように、用語“ネクローシス”は、特に心臓の筋肉のような身体の局所部位において、損傷又は疾患を介した細胞又は組織の死滅を意味する。
本願で用いるように、用語“アポトーシス”は、計画された細胞死を意味する。
本願で用いるように、“心臓損傷”は、虚血再灌流障害、うっ血性心不全、心臓麻痺、心筋梗塞、薬物(例えばドキソルビシン、ハーセプチン、チオリタジン及びシサプリド)のような化合物によって引き起こされる心臓毒性、寄生虫感染、細菌、真菌、リケッチア又はウイルス(例えば梅毒、慢性のクルーズトリパノソーマ感染)による心臓の損傷、突発性心臓アミロイド症、心臓手術、心臓移植、及び外傷性の心臓損傷(例えば、貫通性又は鈍器の心臓損傷、又は大動脈弁破裂)を含むが、これに限らず、心臓及び/又は連結組織(例えば、心膜、大動脈及び他の連結血管)を伴う任意の慢性又は急性の病理状態を含んでいる。
本願で用いるように、用語“神経損傷”は、虚血再灌流障害、薬物のような化合物によって惹起される神経毒性及び寄生虫感染による神経損傷を含むが、これに限らず、脳、脊髄、神経及び/又は連結組織を伴う任意の慢性又は急性の病理学的状態を含むものである。
本願で用いるように、用語“ポリペプチド”は、単一“ポリペプチド”だけではなく多数の“ポリペプチド”を含むものであり、ペプチド結合によって互いに結合された一つ以上のアミノ酸鎖又は鎖を含んでいる。従って、本願で用いるように、“ペプチド、”“ジペプチド”、“トリペプチド”、“タンパク質”、“アミノ酸鎖”、“オリゴペプチド”、“オリゴマー”又は二つ以上のアミノ酸鎖又は鎖を言及するために使用された任意の他の用語を含むが、これに限定されない用語が“ポリペプチド”の定義に含まれており、用語“ポリペプチド”は、任意の前記用語の代わりに又はそれと相互互換的に用いることができる。前記用語はまた、解毒後の変形、例えばグリシコール化,アセチル化、リン酸化、アミド化、公知の保護/遮断基による誘導体化、タンパク質分解の切断、又は非天然のアミノ酸による変形を有するポリペプチドを含んでいる。用語“タンパク質”はまた、基準のタンパク質と本質的に同じ生物活性又は機能を保有している、タンパク質の断片、類似体及び誘導体を含むものである。
タンパク質の“断片、誘導体又は類似体”は、(i)一つ以上のアミノ酸残基が保存性又は非保存性のアミノ酸残基(好ましくは保存性のアミノ酸残基)に置換され、上記置換されたアミノ酸残基が、遺伝コードによって暗号化されたもの又はされていないもの、(ii)一つ以上のアミノ酸残基が置換基を含んでいるもの、(iii)成熟ポリペプチドが、更に異なる化合物、例えばポリペプチドの半減期を増加させるための化合物(例えば、ポリエチレングリコール)と融合しているもの、(iv)その他のアミノ酸が成熟ポリペプチド、例えばポリペプチドの精製に用いられるリーダー又は分泌配列と融合されたものでありうる。上記断片、誘導体及び類似体は、本願の教示内容から、当業者の範囲に属するものであると思われる。
複数個、例えば5乃至10個、1乃至5個、1乃至3個、2個又は1個のアミノ酸残基が任意の組み合わせで置換、欠失、或いは付加されたタンパク質のアミノ酸配列を持つ変異体、類似体、誘導体及び断片が特に好ましい。これらの内、本発明のタンパク質の性質及び活性を変化させないサイレント置換、付加及び欠失が特に好ましい。これに関連し、保存的置換がやはり特に好ましい。
本発明の変異体の一例は、一つ以上のアミノ酸が一つ以上の他のアミノ酸に置換されたもの以外に、上記で定義したような融合タンパク質である。当業者であれば、多様なアミノ酸が類似した性質を持つことを認識するであろう。物質の一つ以上の上記アミノ酸は、しばしば、上記物質の好ましい活性を排除せずに一つ以上の他の上記アミノ酸に置換することができる。
従って、アミノ酸グリシン、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシンは、しばしば互いに置換され得る(脂肪族鎖を持つアミノ酸)。これらの可能な置換の内、グリシン及びアラニンが、相互置換するために使われ(これらは比較的短い側鎖を持っているので)、バリン、ロイシン及びイソロイシンが、相互置換するために使われる(これらは、疎水性で、より長い脂肪族の側鎖を持っているため)のが望ましい。しばしば相互置換され得る他のアミノ酸として、以下のものが含まれる:フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファン(芳香族側鎖を持つアミノ酸)、リジン、アルギニン及びヒスチジン(塩基性側鎖を持つアミノ酸)、アスパルギン酸塩、グルタミン酸塩(酸性側鎖を持つアミノ酸)、アスパラギン及びグルタミン(アミド側鎖を持つアミノ酸)、及びシステイン及びメチオニン(硫黄含有側鎖を持つアミノ酸)。上記特性の置換は、しばしば“保存的”或いは“非保存的”アミノ酸置換と称される。
本願で用いるように、用語“融合タンパク質”、“融合ポリペプチド”、“キメラタンパク質”及び“キメラポリペプチド”は相互互換的であり、問題のポリペプチド又はタンパク質及びタンパク質導入ドメイン(PTD)を含むポリペプチド及びタンパク質を意味する。
本願で用いるように、用語PTD−PL“結合体”は、PTDタンパク質とPLタンパク質との融合、及びPTD暗号化遺伝子とPL遺伝子構造物との融合の両方を意味する。
本願で用いるように、用語“問題のタンパク質”、“目的ポリペプチド”、“目的タンパク質”、又は“標的タンパク質”は相互互換的であり、全体のタンパク質分子又はその一部を意味する。ポリペプチド又はタンパク質の他の部分は細胞反応を誘導することができる。
本願で用いるように、用語“治療剤”は、対象に伝達される際、上記対象において、該当する疾患又は疾病(例えば、虚血又は低酸素症)の症状を治療、即ち、治癒、改善又は軽減するか、或いは末期の疾患又は疾病の進行を遅延させることによって対象の寿命を延ばすタンパク質、脂質、炭水化物、核酸又は化合物のような分子を意味する。
本願で用いるように、用語“治療融合ポリペプチド”は、対象に伝達される際、上記対象において、該当する疾患又は疾病(例えば、虚血又は低酸素症)の症状を治療、即ち、治癒、改善又は軽減するか、或いは末期の疾患又は疾病の進行を遅らせることによって対象の寿命を延ばすポリペプチドを意味する。
<ポリペプチド>
本発明のポリペプチドは、ホスホリパーゼC(PLC)ポリペプチドを含むが、これに限定されることのないホスホリパーゼタンパク質(PL)である。PLCは、広範囲に4種類:β,γ、δ及びεに分類され、総11個の同位酵素として存在している。PLC−δ1は、
ミトコンドリア透過転移細孔(mPTP)の開放、カルシウムイオンによって活性化されたプロテアーゼの標的化、及び細胞内カルシウムのホメオスタシスを調節することによって、虚血及びアポトーシスにおいて主な役割を果たしている。
本発明のポリペプチドとして、虚血又は低酸素症の状態及び/又は神経損傷を治療、即ち、治癒又は改善或いはその重症度を軽減するか、若しくは予防又は減少させるために使用される上記ポリペプチドの断片、誘導体、類似体又は変異体及びその任意の組み合わせも更に含まれる。
本発明のその他の態様は、上述のポリペプチドの任意のアミノ酸配列と95%以上同じであり、より好ましくは96%、97%、98%又は99%以上同じアミノ酸配列を含んでいるポリペプチドを含む。
実際問題として、任意の特定ポリペプチドが、例えば配列番号:10に示すアミノ酸配列と95%、96%、97%、98%又は99%以上同じであるか否かは、通常、ベストフィット(Bestfit)プログラム(ウィスコンシン配列分析パッケージ、ユニックス用ヴァージョン8(Wisconsin Sequence Analysis Package,Version 8 for Unix)、ジェネティックスコンピュータグループ(Genetics Computer Group)、ウィスコンシン州53711、マジソン、ユニバーシティリサーチパーク575 サイエンスドライブ)のような公知のコンピュータプログラムを用い決定することができる。ベストフィットは、二つの配列間の相同性(homology)の最も優れた切片を探すため、スミスとウォーターマンの局所相同性アルゴリズム「Smith and Waterman,Advances in Applied Mathematics,2:482−489,1981」を用いる。特定の配列が、本発明による基準配列と、例えば95%同じであるか否かを決定するためにベストフィット又は任意の他の配列整列プログラムを用いる場合、同一性のパーセンテージが基準アミノ酸配列の全長(full length)に対して計算され、基準配列のアミノ酸総数の5%以下の相同性の差が許容されるようにパラメーターが設定されるのは言うまでもない。
<ポリヌクレオチド>
また、本発明は、融合タンパク質又はキメラタンパク質、組み換え発現ベクター,プラスミド及びこれを含有する他のポリヌクレオチド構造物(総称として“発現ベクター”と称す)を暗号化するポリヌクレオチド、これら発現ベクターに形質転換された微生物、及びこれらポリヌクレオチドを獲得する方法、及び上記ベクターを用いて形質転換された細胞に関するものである。適合する宿主を発現ベクターによって形質転換することができる。
本願で用いるように、用語“発現ベクター”は、遺伝物質(即ち核酸)からなる構造物を意味する。典型的に、発現ベクターは、細菌宿主細胞、例えば大腸菌(Escherichia coli)で機能する複製起点、及び発現ベクターを含む細菌宿主細胞を検出するための選択性マーカーを含有している。本発明の発現ベクターは、プロモータ配列を含有し、挿入された暗号化配列が真核細胞において転写及び翻訳が可能なように配列された、本願に記述したような遺伝要素を含んでいる。本願に記述した、ある態様において発現ベクターは、閉鎖された環状DNA分子である。
用語“発現”は、暗号化の配列によって暗号化された産物の生物学的生成を意味する。ほとんどの場合、暗号化の配列を含むDNA配列は転写され、メッセンジャーRNA(mRNA)を生成する。次に、メッセンジャーRNAは翻訳され、適切な生物活性を持つポリペプチド生成物を生成する。又、発現過程は転写のRNA産物への追加の処理段階、例えばイントロンを除去するための接合、及び/又はポリペプチド生成物の翻訳後の過程を含むことができる。
本発明の融合タンパク質又はキメラタンパク質は、組み換えDNAの方法によって調製することができる。本発明によれば、目的タンパク質を暗号化する遺伝子配列を、分離して合成するか或いは別の方法で獲得し、PTDペプチドを暗号化するDNA配列に作用可能に連結させる。PTDペプチドを暗号化するDNA配列に作用可能に連結された目的タンパク質に対する遺伝子を含有するハイブリッド遺伝子は、キメラ遺伝子と呼ばれる。選択的に、目的タンパク質を暗号化する遺伝子配列は、リンカー配列を介してPTDペプチドを暗号化するDNA配列に作用可能に連結されうる。
用語“リンカーペプチド”は、好ましくは、発現したタンパク質に含有されている場合に親水性領域を提供するアミノ酸残基の任意の配列を定義するものである。上記親水性領域は、タンパク質分解の切断部位において酵素による切断を促進することができる。
キメラタンパク質は、発現ベクター内に挿入され、適度な形質転換宿主において、目的とするキメラタンパク質の発現を可能にする。発現ベクターは、挿入されたキメラ遺伝子に、適度に形質転換された宿主において、発現を調節するための必須の調節配列を提供する。
核酸構造物はベクター,例えば発現ベクターの形態である場合もあり、特に染色体、エピソーム及びウイルス由来のベクター、例えば細菌プラスミドから、バクテリオファージから、トランスポゾンから、酵母エピソームから、挿入要素から、酵母染色体要素から、バキュロウイルスから、パポバウイルスから、例えばSV40、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルス及びレトロウイルスのようなウイルスから由来したベクター,及びその組み合わせから由来したベクター,例えばプラスミド及びバクテリアファージ遺伝要素、例えばコスミド及びファージミドから由来したベクターを含むことができる。一般的に、これと関連し、宿主でポリペプチドを発現する核酸を維持、増殖又は発現するために適した任意のベクターを発現に用いることができる。
本発明の融合タンパク質の発現を調節する調節要素は、プロモーター領域、5`未翻訳領域、信号配列、キメラ暗号化配列、3`未翻訳領域、及び転写終結部位を含む。宿主から培地内へ分泌される融合タンパク質もまた信号配列を含有している。・
同様に、多様な翻訳調節要素が、当該分野で通常の技術を持つ者達に公知されている。これらにはリボソーム結合部位、並びに翻訳開始及び終止コドンが含まれるが、これに限定されない。
組み換えベクターを調製し、これを用いて宿主細胞を形質転換させ、宿主細胞でベクターを複製して生物学的に活性の外来ポリペプチド及びタンパク質を発現させるための方法及び物質は、本願で参考引用した文献「Principles of Gene Manipulation,by Old and Primrose,2nd edition,1981;and Sambrook et al.,Molecular Cloning,3rd edition Cold Spring Harbor Labolatory,2001」に記述されている。
本願で用いるように、用語“DNAポリヌクレオチド”は、環状又は線形化プラスミド、或いは非感染性及び非統合性(即ち、脊椎動物の細胞のゲノム内に統合されない)であり得る他の線形DNAである場合がある。線形化プラスミドは、以前は環状であったが、例えば制限エンドヌクレアーゼによって切断されて線形化したプラスミドである。線形DNAは、例えば二つとも本願に参考引用された文献「Cherng,J.Y.,et al.,J.Control.Release,60:343−353,1999;and Chen,Z.Y.,et al.,Mol.Ther.,3:403−410,2001」で論議されたように、特定の状況において有利であり得る。
本発明の、また他の様態は、前述のキメラ遺伝子を含むベクターの任意のヌクレオチド配列と95%以上同じであり、より好ましくは96%、97%、98%又は99%以上同じヌクレオチド配列を含むキメラ遺伝子を含有するベクターを含んでいる。
本発明の他の様態は、前述のキメラ遺伝子の任意のヌクレオチド配列と95%以上同じであり、より好ましくは96%、97%、98%又は99%以上同じヌクレオチド配列を含むキメラ遺伝子を含んでいる。
実際問題として、任意の特定ベクター又はキメラ遺伝子が、本発明によるヌクレオチド配列に95%、96%、97%、98%又は99%以上同じであるか否かは、通常ベストフィットプログラム(ウィスコンシン配列分析パッケージ、ユニックス用ヴァージョン8、ジェネティックスコンピュータグループ、ウィスコンシン州53711、マジソン、ユニバーシティリサーチパーク575 サイエンスドライブ)のような公知のコンピュータプログラムを用い決定することができる。ベストフィットは、二つの配列間の相同性の最も優れた切片を探すため、スミスとウォーターマンの局所相同性アルゴリズム[Smith and Waterman,Advances in Applied Mathematics,2:482−489,1981]を用いる。特定の配列が、本発明による基準配列と、例えば95%同じであるか否かを決定するためにベストフィット又は任意の他の配列整列プログラムを用いる場合、同一性のパーセンテージが基準ヌクレオチド配列の全長に対して計算され、基準配列のヌクレオチド総数の5%以下の相同性の差が許容されるようにパラメーターが設定されるのは言うまでもない。
<コドンの最適化>
“コドンの最適化”は、天然の配列の一つ以上、或いは一つより多いか又は相当数のコドンを、対象の遺伝子において、より頻繁に又は最も頻繁に使用されるコドンに置き換えることによって、問題の対象、例えばヒトの細胞で増大した発現のために核酸配列を調節するものとして定義される。多様な種が、特定アミノ酸の特定コドンに対して特別な偏りを示す。
ある態様において、本発明は、ポリヌクレオチド発現構造物又はベクター、並びに治療ポリペプチド及びその断片、変異体又は誘導体を暗号化するコドン最適化の暗号化領域の核酸断片を含む宿主細胞、及び対象において疾患を治療又は予防するためポリヌクレオチド発現構造物、ベクター、宿主細胞を用いる多様な方法に関する。
本願で用いるように、用語“コドン最適化の暗号化領域”は、コドンの一つ以上、又は一つを超えるか、或いは相当数のコドンを、対象の遺伝子において最も頻繁に使用される一つ以上のコドンに置き換えることによって、該当する対象の細胞における発現に適合化した核酸の暗号化領域を意味する。
任意のポリペプチド鎖のアミノ酸を暗号化するコドンを含むヌクレオチド配列における偏差は、遺伝子を暗号化する配列での変異を許容する。各々のコドンは3個のヌクレオチドからなり、DNAを含むヌクレオチドは4個の特定塩基に限定されるため、64個の可能なヌクレオチドの組み合わせが存在し、これらの内の61個はアミノ酸を暗号化する(残り3個のコドンは翻訳を終了する信号を暗号化する)。多くのアミノ酸が、1個以上のコドンによって表示される。例えば、アミノ酸アラニン及びプロリンは、4個のコドンによって暗号化され、セリン及びアルギニンは6個のコドンによって暗号化されるのに対し、トリプトファンとメチオニンはたった1個のコドンによって暗号化される。このような退化は、DNAによって暗号化されるタンパク質のアミノ酸配列は変化させずにDNA塩基の組成を広範囲に変化させる。
<共通配列(Consensus Sequence)>
本発明は又、特定の共通配列を持つ治療融合タンパク質、並びにその断片、誘導体及び変異体を発現するキメラ遺伝子を含有する発現プラスミドに関する。“共通配列”は、例えば互いに比較される2個以上の配列の各々の位置で最も多く存在するアミノ酸を示す理想化された配列である。共通配列は、各々のアミノ酸が、自然に存在する異なる配列のその部位において最も頻繁に存在するアミノ酸である、理論上の代表的なアミノ酸配列である。上記用語はまた、理論上の共通配列と近い実際の配列を言う。共通配列は、例えば共有している機能的または構造的目的を持つ配列からも誘導され得る。上記配列は、相同性を最大化するため、特定の構造的または機能的領域の公知の例を、できるだけ多く整列させることによって定義され得る。配列は、一般的に各々の特定アミノ酸がその位置で合理的に優勢である場合に共通配列として認められ、比較基準を構成する配列のほとんどはむしろ若干の置換、例えば0乃至約100個の置換による共通配列と関連している。一般的に、野生型の比較配列は、共通配列と約50%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%以上同じである。従って、本発明のポリペプチドは、共通配列と約50%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同じである。
“共通アミノ酸”は、共通タンパク質で該当位置を占めるために選ばれたアミノ酸である。共通アミノ酸を選択するために構成されるシステムは、コンピュータプログラム、或いは一つ以上のコンピュータプログラムと“手動”分析及び計算の組み合わせであり得る。共通アミノ酸が、整列したアミノ酸配列の各位置に対して獲得されると、これら共通アミノ酸は、共通タンパク質のアミノ酸配列を獲得するために“一列に整列する”。
<治療的用途>
虚血性疾患又は疾病及び/又は神経損傷の緩和及び治療のための薬剤の調製において、上述した治療融合タンパク質の用途が含まれる。心臓及び脳において低酸素症を誘発する虚血性疾患又は疾病はPTD−PLC融合タンパク質の投与によって効果的に緩和され得る。
一般的に、虚血状態中のカルシウムイオン流入は、ミトコンドリア細孔の開放を惹起し、カルシウムの細胞内濃度を更に増加させて多くの細胞質タンパク質、例えばプロテアーゼ及びエンドヌクレアーゼを活性化させる。カルシウム活性化されたプロテアーゼは、通常、細胞内のカルシクムレベルを調節するタンパク質を分解し、タンパク質とカルシウムとの反応性を減少させる。これは、心筋肥大、心不全、アポトーシス又はネクローシスを引き起こす。PLC−δ1は、過量のカルシウムが細胞質に存在する場合、カルシウムの流入を抑制する作用をする。
本発明の治療融合タンパク質は、一つ以上の化合物または構造物と一緒に共投与しても良い。他の化合物としては、抗血小板薬物、抗凝固薬物又は抗血栓薬物が含まれるが、これに限らない。他の構造物としては、PLCの分解を防ぐPTDカルパイン又はPTDカスパーゼ抑制剤が含まれるが、これに限らない。
本発明の治療融合タンパク質は、心筋細胞、例えば心臓の筋細胞、脳室筋細胞、心房筋細胞、心臓幹細胞、内皮細胞、血管平滑筋細胞、ペースメーカー細胞、筋繊維芽細胞又は繊維芽細胞、及び神経細胞、例えばニューロン(神経細胞又はニューロサイト(neurocyte)とも称される)のような細胞若しくは細胞のタイプに標的化され得る。
<方法及び投与>
本発明は、一つ以上の薬理学的に許容される担体或いは賦形剤と共に治療融合ポリペプチド、又はその断片、変異体或いは誘導体を伝達するための方法を提供する。治療融合ポリペプチドは、本願に記述したような組成物の投与時、対象において治療反応が惹起されるよう、本願記述の一つ以上の組成物を対象に投与することを含む、組み替えタンパク質、特に融合タンパク質、又は精製されたサブユニットとして提供される。上記伝達は、例えば皮膚、鼻、目を通して筋肉、脳、又は心臓に、或いは静脈内注射によって起こりうる。
用語“対象”は、ヒト、サル、雌牛(cow)、ヒツジ、ウマ、ブタ、ウシ(cattle)、ヤギ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、これらから培養された細胞及びその遺伝子導入種のような、生きた有機体を含むものである。好ましい様態で、対象はヒトである。
用語“脊椎動物”は、単一“脊椎動物”及び多数の“脊椎動物”を含んでおり、哺乳類及び鳥類、並びに魚類、爬虫類及び両生類も含む。
用語“哺乳類”は、単一“哺乳類”及び多数の“哺乳類”を含んでおり、ヒト;霊長類、例えば類人猿、サル(例えば、フクロウ、リス、オマキザル(cebus)、アカゲザル(rhesus)、アフリカミドリサル(African green)、パタスモンキー(patas)、カニクイザル(cynomolgus)及びオナガザル(cercopithecus))、オランウータン、ヒヒ、テナガザル及びチンパンジー;イヌ科、例えばイヌ及びオオカミ;ネコ科、例えばネコ、ライオン及びトラ;ウマ科、例えばウマ、ドンキー及びゼブラ;食用動物、例えばウシ、ブタ、及び羊;有蹄動物、例えばシカ及びキリン;クマ類、例えばクマ;及びその他の動物、例えばウサギ、マウス、ケナガイタチ、アシカ、クジラが含まれるが、これに限らない。特に哺乳類はヒト対象、食用動物又は伴侶動物であり得る。
用語“鳥類”は、単一“鳥類”及び多数の“鳥類”を含んでおり、アヒル、ガチョウ、アジサシ、ミズナキドリ及びカモメのような野生鳥類;及び七面鳥、鶏、ウズラ、キジ、ガチョウ及びアヒルのような家禽類種が含まれるが、これに限定されない。用語“鳥類”はまた、ムクドリ及びインコのようなスズメ鳥類も含まれる。
本発明はまた、ヒトに、本願で記述した一つ以上の組成物を投与することを含む、治療反応を誘発又は増大或いは調節するための方法を提供する。上記方法で、組成物は一つ以上のポリペプチド、又はその断片、変異体或いは誘導体を含むことができ、この時のタンパク質は組み替えタンパク質、特に融合タンパク質又は精製されたサブユニットとして提供される。
本願で用いるように、“治療反応”は、対象に伝達する際、本願に開示されたような組成物に対し、陽性反応を誘導する対象の能力をいう。
上記で述べたように、本発明の組成物は疾患又は疾患の状態を治療して予防するために使用されうる。本願で定義したように“治療”は、対象から疾患又は疾患症状の重症度を予防、治療、阻止、減少させ/させたり、疾患の悪化を惹起させないための本発明の一以上の組成物の使用をいう。
本発明の一部と見なされる、虚血/低酸素症によって惹起されるか或いはこれを誘発する疾患又は疾患状態には、カルシウムの過負荷、心臓の低酸素症、心臓低酸素症の再酸素化、心臓の虚血再灌流障害、虚血性心疾患、心不全、心臓肥大、心臓手術、外傷性心臓損傷、冠動脈造影術、血管の欠損又は閉塞(血流の閉塞)、先天性心臓疾患、鬱血性心不全、心筋細胞再生、化学療法誘導の心筋症、心筋梗塞、心臓麻痺、心臓毒性、寄生虫感染による心臓損傷、突発性心臓アミロイド症、心臓移植、及び外傷性の心臓損傷が含まれるが、これに限らない。
本発明の一部と見なされる、虚血/低酸素症によって惹起されるか或いはこれを誘発する他の疾患又は疾患状態には、外傷性脳疾患、神経学的疾患または損傷、神経疾患又は損傷(例えば、脊髄),凍傷、虚血性又は出血性の脳卒中、頭蓋内出血(クモ膜下出血、血栓溶解剤誘導の出血等)、血餅、低酸素症誘導のアポトーシス、及び虚血再灌流後の組織損傷が含まれるが、これに限らない。
用語“予防”は、治療反応を惹起するための本発明の一つ以上の組成物の用途をいう。本発明の任意の組成物が全ての疾患症状を完全に治療又は除去する必要はない。
ある態様において、本発明の一以上の組成物は、本願に記述した方法によって対象に伝達され、効果的な治療反応を達成する。特に本発明の組成物は、皮膚、筋肉、脳組織、肺組織、肝組織、脾臓組織、骨髄組織、胸腺組織、心臓組織、例えば心筋、心内膜及び心膜、リンパ組織、血液組織、骨組織、すい臓組織、腎臓組織、胆嚢組織、胃組織、腸組織、精巣組織、卵巣組織、子宮組織、膣組織、直腸組織、神経系組織、眼の組織、腺組織、舌組織、及び結合組織、例えば軟骨を含むが、これに限らず、対象の任意の組織に投与することができる。好ましい組織は、心臓及び脳の組織である。
また、本発明の組成物は、肺、口、鼻腔、胃、腹腔、腸、任意の心室、静脈、動脈,毛細管、リンパ腔、子宮腔、膣腔、直腸腔、関節腔、脳室、脊髄内脊柱管、眼球腔、唾液腺または肝臓の導管の内腔を含むが、これに限定されることのない、対象の任意の内腔に投与されうる。本発明の組成物を唾液腺又は肝臓の導管の内腔に投与する場合、目的ポリペプチドは唾液腺又は肝臓で発現し、目的ポリペプチドは唾液腺又は肝臓各々から対象の血流内に伝達される。血流内に目的ポリペプチドを放出するため唾液腺、肝臓及びすい臓を利用し、胃腸系の分泌器官に投与するための特定方式は、本願にそのまま参考引用した米国特許第5,837,693号及び第6,004,944号に開示されている。
開示された方法によれば、本発明の組成物は、注射、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)皮下(s.c.)又は肺内経路によって投与されうる。他の適した投与経路としては、気管支内滴下、桂皮、眼内、鼻内、吸入、腔内、管内(例えば、すい臓内に)及び脳実質内(即ち、任意の組織内に)の投与が含まれるが、これに限らない。静脈内投与の場合、適切な薬理学的に許容される担体、例えばリン酸塩緩衝食塩水、食塩水、又は薬物の静脈内投与に用いられる他の物質を用いることができる。経皮の伝達は、皮内(例えば、皮膚又は表皮内に)、経皮(例えば、経皮的)及び経粘膜投与(即ち、皮膚又は粘膜組織内に、或いはそれを通って) が含まれるが、これに限らない。腔内投与には、経口、膣、直腸、鼻、腹膜又は腸内腔、及び包膜内(即ち、脊椎管内に)、室内(即ち、脳室又は心室内に)、動脈内(即ち、心臓動脈内に)及びクモ膜下(即ち、脳のクモ膜下空間内に)の投与が含まれるが、これに限らない。
投与方式が目的ペプチド又はタンパク質の伝達或いは発現を目的とする組織において、治療反応が必要なヒトの疾患状態に対する治療反応を惹起するのに十分な量で惹起する限り、どのような投与方式も使用されうる。
本発明の投与手段は、針注射(例えば、滅菌水性分散液で、好ましくは等張性)、経皮、カテーテル注入、バイオリスティック(biolistic)注射器、粒子加速器(例えば、“遺伝子銃”又は空圧式“無針”注射器)Med−E−ジェット[Vahlsing,H.,et al.,J.Immunol.Methods,171:11−22,1994]、ピグジェット(Pigjet)[Schrijver,R.,et al.,Vaccine,15:1908−1916,1997]、バイオジェクター(Biojector)[Davis,H.,et al.,Vaccine,12:1503−1509,1994;Gramzinski,R.,et al.,Mol.Med.,4:109−118,1998]、アドバンタジェット(AdvantaJet)[Linmayer,I.,et al.,Diabetes Care,9:294−297,1986]、メディジェクター(Medi−Jector)[Martins,J.,and Roedl,E.J.,Occup.Med.,21:821−824,1979]、ゲルフォームスポンジデポ剤、その他市販のデポ物質(例えば、ハイドロゲル)、浸透圧ポンプ(例えば、アルザ(Alza)ミニポンプ)、経口又は座薬の固形製剤、例えば錠剤、丸剤、軟性及び硬性のカプセル、リキッド、懸濁液、シロップ,顆粒及びエリクサー剤(elixers)、局所用皮膚クリーム又はゲル、及びデカント、ポリヌクレオチドコート縫合糸の使用[Qin,Y.,et al.,Life Sciences,65:2193−2203,1999]または手術時の局所適用が含まれる。
ある投与方式は、筋内への針基剤注射及びカテーテル注入を介した肺の適用である。エネルギー補助プラスミド伝達(EAPD)方法もやはり本発明の組成物を投与するために使用されうる。上記方法の一つは、よく知られている処置である電気穿孔法(electroporation)であり、注入された組織に短時間の電気パルスを適用することを含む(一般的に、文献[Mir,L.M.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci USA,96:4262−4267,1999;Hartikka,J.,et al.,Mol.Ther.,4:407−415,2001; Mathiesen,I.,Gene Ther.,6:508−514,1999;Rizzuto G.,et al.,Hum.Gen.Ther.,11:1891−1900,2000]参照)。このパラグラフで引用した参考文献は各々本願でそのまま参考引用する。
本発明の一以上の組成物の有効量を決定するのは、例えば、発現したり直接投与する融合ポリペプチド、その変異体または誘導体、対象の年齢、体重及び性別、治療が必要な正確な状態及びその重症度、投与経路、融合ポリペプチドの生体内半減期、吸収効率、及び治療される部位を含め、多くの要因によって異なる。治療は、患者の反応に照らし合わせて臨床判断を基準に、必要なだけ繰り返すことができる。
“薬理学的有効量”又は“治療有効量”は、疾患の状態に対する治療または臨床反応を惹起するのに十分な量である。用語“薬理学的有効量” 又は“治療有効量”は、相互互換的である。上記要因を基に、正確な量、用量の数及び投与の時期を決定するのは、当該分野で通常の技術に属する主治医または獣医によって容易に決定されるであろう。
哺乳類、特に人間に投与する場合、活性物質の一日の投与量は0.01mg/kg体重、典型的に約1mg/kgであるものと予想される。上記投与量は、平均的な場合の例である。ピコモル及びナノモル濃度を含め,より高い又は低い投与量が有利な場合があり得るのはいうまでもなく、上記の場合も、本発明の範囲に属する。
本発明は又、本願に開示しているような融合ポリペプチド及びその他の薬理学的活性物質を含む組成物に関する。融合ポリペプチド及び関連した薬理学的活性物質は、薬理学的に許容される一以上の担体または賦形剤と共に使用され得る。上記担体には、希釈剤(例えば、乳糖、ブドウ糖、ショ糖、マンニトール、ソルビトール、セルロース及び/又はグリシン)、潤滑剤(例えば、シリカ、タルク、ステアリン酸及びオリエチレングリコール)、結合剤(例えば、マグネシウムアルミニウムケイ酸塩、でん粉ペースト、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース及び/又はポリビニルピロリドン)、及び崩壊剤、例えばデンプン、寒天、アルギン酸又はそのナトリウム塩、及び/又は吸収剤、着色剤、香料及び甘味剤、食塩水、緩衝食塩水、リポソーム、水、グリセロール、エタノール及びその混合物が含まれ得るが、これに限らない。
本発明の組成物は、任意の多様な緩衝剤に可溶化されうる。ふさわしい緩衝剤としては、例えばリン酸塩緩衝食塩水(PBS)、一般食塩水、トリス緩衝液及びリン酸ナトリウム(例えば、150mMのリン酸ナトリウム)が含まれる。不溶性のポリヌクレオチドは、弱酸又は弱塩基に可溶化された後、緩衝剤で目的の容量に希釈され得る。緩衝剤のpHは、適切に調整されうる。又、薬理学的に許容される添加剤を用い、適切な容量オスモル濃度を提供することができる。上記添加剤は、当該分野における熟練者の権限に属している。生体内で用いられる水性組成物の場合、滅菌ピロゲンフリー水を用いることができる。上記製剤は、ヒトに投与するのに適切な、薬理学的に許容される組成物を調製するため、適量の水溶液と共に有効量のポリヌクレオチドを含有している。
本発明の組成物は、公知の方法によって製剤化され得る。適合する調製方法は、例えば本願にそのまま参考引用されている文献[Remington`s Pharmaceutical Sciences,16th Edition,A.Osol,ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA,1980;and Remington`s Pharmaceutical Sciences,19th Edition,A.R.Gennaro,ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA,1995]に記述されている。組成物は、水溶液として投与することができるが、乳化液、ゲル、溶液、懸濁液、凍結乾燥形態、又は当該分野で公知の任意の他の形態においても製剤化することができる。
−実施例−
下記の実施例は、本質的に例示に過ぎず、本発明の請求の範囲の制限を意図するものではない。実施例で引用される全ての参考文献は、本願でそのまま参考引用される。
(実施例1)
PTD−PLC−δ1を含有している発現ベクターの調製
HSP−70を暗号化する塩基配列を、ヒト転写因子Hph−1(ジーンバンク(GenBank)受託番号:U63386)のN−末端から858番目のアミノ酸チロシンから868番目のアミノ酸までのペプチド領域を暗号化する塩基配列と結合させるため、下記の塩基配列を持つプライマーを合成した:
Hph−1のN−末端から858番目のアミノ酸チロシンから868番目のアミノ酸アルギニンまでの塩基配列を持つpET28B(+)ベクター内へクローニングするための制限酵素BamHIに相応する塩基配列;及び上記塩基配列の5`−末端及びPTD−PLC−δ1の3`−末端に相応する配列を用いクローニングするための制限酵素HindIIIに相応する塩基配列。PCRは、上記プライマー、鋳型としてPTD−PLC−δ1タンパク質の全体遺伝子を含有するpRSベクター(インビトロジェン(Invitrogen)社)、及びpfuターボDNAポリメラーゼ(ストラタジーン(Stratagene), cat.#600252−51)を用い、行った。
PCR反応生成物は、制限酵素EcoRI及びHindIIIよって切断され、キアクイック(Quiaquick)社のPCR精製キット(キアゲン(QIAGEN)社、cat.# 28104)により精製した。精製された生成物を、ゲル抽出方法を用いて精製されたpET28B(+)のBamHI及びHindIII部位内にクローニングし、組み換え発現ベクターを調製した。調製された組み換えベクターは、“pPTD−PLC−δ1”と命名した。
(実施例2)
大腸菌(E.coli)形質転換剤の調製並びに融合タンパク質の発現及び精製
大腸菌BL21−DE3(ATCC No.53863)を、熱ショックによる形質転換により上記実施例1で調製した発現ベクター(pPTD−PLC−δ1)に形質転換し、形質転換した大腸菌の菌主を4mlのLB培地に接種して37℃で14時間攪拌しながら予備培養した。次いで、予備培養の培地を250mlのLB培地(10gのカゼイン膵液消化物、5gの酵母抽出物、10gの塩化ナトリウム)に接種し、37℃で3時間培養した。次に、1mMのIPTG(イソプロピルβ−D−チオガラクトピラノシド;ギブコ(Gibco)BRL cat.# 15529−019)を培養培地に加え、上記混合物を22℃で8時間培養して融合タンパク質の発現を誘導した。培養培地を4℃及び6,000rpmで20分間遠心分離し、上澄液を除去してペレットを獲得した。上記により獲得したペレットを10mlの緩衝液1(50mMのNaHPO, 300mMのNaCl, 10mMのイミダゾール, pH 8.0)に溶解し、氷上にて300Wの強度で超音波処理機(ヒートシステムズ、超音波処理機XL)により6秒間超音波処理後、冷却した。全体の超音波処理時間が8分に達するように超音波処理及び冷却段階を繰り返した。溶解物を、4℃及び12,000rpmで10分間遠心分離し、破砕した大腸菌の細胞を除去して純粋な溶解物だけを回収した。回収した溶解物に、0.5mlの50% Ni2+−NTAアガロースのスラリー(キアゲン、cat.#30230)を加え、上記懸濁液を4℃及び200rpmで1時間攪拌し、融合タンパク質及びNi2+−NTAアガロースを互いに結合させた。混合物を0.8×4cmのクロマトグラフィーカラム(バイオラッド(BioRad)cat.#731−1550)に通過させた。生成物質を4mlの緩衝液2(20mLのトリス−HCl, 500mMのNaCl, 20mMのイミダゾール, pH 7.9)で2回洗浄し、1mlの緩衝液3(50mMのNaHPO, 300mMのNaCl, 250mMのイミダゾール、pH8.0)及び1mlの緩衝液4(50mM NaHPO, 300mM NaCl, 500mM イミダゾール、pH8.0)で処理し、融合タンパク質を獲得した。上記分画をPD−10脱塩カラム(アメルシャムファーマシアバイオテック(Amersham−Pharmacia Biotech) cat.#17−0851−01)を用い、脱塩した。分離及び精製されたpPTD−PLC−δ1融合タンパク質をSDS−PAGEに適用した後、クマシーブルー染色で分析した結果を図1に示した。
(実施例3)
pPTD−PLC−δ1は心筋細胞における虚血を防止する
1乃至3日経ったシロネズミ各々の心臓を分離してPBSに加え、左心室だけ分離した後マイクロ切開用はさみを用い約1mmの大きさに切断し、ここに5mlのコラーゲナーゼII(0.8mg/ml, 262単位/mg, ギブコBRL)を添加した。上記懸濁液を37℃で5%のCO培養器に5分間放置し、浮遊するコラーゲナーゼIIを除去した。5mlの新しいコラーゲナーゼIIを加えて懸濁し、上記懸濁液を5分間更に放置した後、上澄液を新しいチューブに移した。5mlの細胞培養培地(10% FBS−含有 α−MEM, ギブコBRL)を加え、細胞溶液を1200rpmで4分間遠心分離して細胞を回収した。上記処置を、ほとんど組織が残らなくなるまで7乃至9回繰り返し、単一細胞として分離した細胞の懸濁液を一つのチューブに回収した。細胞を100mmの組織培養プレート上で1乃至3時間培養して繊維芽細胞だけがプレートに付着されるようにし、プレートに付着されない細胞を回収して5×10細胞/mlの濃度で接種して培養した。4乃至6時間後、新しい培地に交換した後、0.1mMのBrdUを加えて繊維芽細胞の成長を抑制すると同時に多様な濃度(対照群の場合は0μM、及び試験群の場合は0.1μM, 0.5μM及び 1.0μM)のPTD−PLC−δ1タンパク質を、培養した心筋細胞に加えた。次いで、細胞を低酸素条件で、12時間培養した。上記低酸素条件での培養は、密閉加湿チャンバー(嫌気性環境、サーモフォーマ(ThermoForma)、米国オハイオ州マリエッタ)で行われ、37度で維持し、10%のCO, 5%のH 85%のNの混合ガスを継続的に供給した。培養段階で培地として、1%のウシ胎児の血清だけを含有する培地を使用した。培養された細胞は、抗−PTD−PLC−δ1抗体を用い、ウエスタンブロット(Western blot)で分析を行った。
その結果、PTD−PLC−δ1タンパク質の伝達効果が、濃度に依存する形で増加したことを示した。低酸素条件下で12時間培養された心筋細胞で、PTD−PLC−δ1タンパク質が0乃至500nMの濃度勾配下に維持され、細胞の生存率が、残留しているPTD−PLC−δ1タンパク質の濃度勾配に応じて増加したことを確認することができる(図2a参照)。又、細胞の生存率は、残留するPTD−PLC−δ1タンパク質の濃度勾配に従って増えた(図2b参照)。
(実施例4)
PTD−PLC−δ1は虚血性心筋細胞においてカルシウムの過負荷を抑制する
細胞質内のフリーCa+の濃度測定は、共焦点顕微鏡分析によって行なわれた。低酸素条件下で心筋細胞に精製されたPTD−PLC−δ1を1μMの濃度で加えた後、細胞を12時間培養してカルシウム濃度を測定した。このため、ラミニン(5g/cm)でコーティングされた薄いガラス片の上で、新しく生まれたシロネズミの心筋細胞を0.1mMのBrdU含有の細胞培養培地で(10%のFBS−含有−MEM, ギブコ BRL)一日中培養した。培養完了後、細胞を0.265g/lのCaCl, 0.214g/lのMgCl, 0.2g/lのKCl, 8.0g/lのNaCl, 1g/lのグルコース、0.05 g/lのNaHPO及び1.0 g/lのNaHCOからなる変形したタイロード(Tyrode)溶液で洗浄した。上記変形タイロード溶液を、暗室において室温で2μMのフルオ−4アセトキシメチルエステル(フルオ(Fluo)−4 AM、分子プローブ(Molecular Probes)、オレゴン州、ユージーン)と共に20分間負荷させる。アルゴンレーザー共焦点顕微鏡(ライカ(Leica),ドイツ、solms)を用い、蛍光映像を獲得した。488nmで逆転するアルゴンレーザーを用い、蛍光色素を励起させ、510乃至560nm帯域の通過フィルターを通して蛍光放出を回収した。また、細胞内のフリーCa2+の相対的変化を蛍光強度測定によって測定した。
その結果、低酸素条件下で12時間培養した心筋細胞において、カルシウムの過負荷が、酸素条件下で培養された対照群よりも約3倍高いことが示された。しかし、低酸素条件下で心筋細胞を100nMのPTD−PLC−δ1タンパク質で処理する場合、細胞内カルシウムの過負荷が対照群とほぼ同じ水準に回復した(図3参照)。
(実施例5)
心筋梗塞の動物モデルにおいて心臓虚血部位治療時のPTD−PLC−δの効果
左前下行冠状動脈縫合後の再灌流によって、シロネズミにおいて心筋梗塞を誘導した。一般的な麻酔下で、8週目のスプラーグドーリー(Sprague−Dawley)、雄のラット(各々約205g計量)を、気管内チューブを用い挿管した後、陽の圧力(180m/l分)で通気し、ハーバード(Harvard)通風器を用い、酸素含有 (2L/分)の室内空気に通気を維持した。ラットの心臓を左側開胸術により露出させ、左前下行冠状動脈を5−0シルクの縫合糸で縫合後、1時間放置した。左前下行冠状動脈を1時間縫合した後、100nMのPTD−PLC−δ1をラットに静脈注射すると同時に縫合を解除した。
一つの群(n=3)において、心臓の虚血部位でPLC−δ1の量を測定するため、再灌流を3時間行い、組織内のPLC−δ1タンパク質の残留量を分析した。また、他の群(n=3)では、虚血部位で心筋細胞の生存に対するPTD−PLC−δ1の効果を測定するため、縫合解除後2週間再灌流を継続した。縫合を解除する際、動物を、飼育室においてその一般的な環境で2週間養育後、心臓を分離した。
分離された心臓を10%(v/v)中性に緩衝されているホルムアルデヒドで灌流し、ホルムアルデヒド中に固定し、同じ厚みを持つ4つの部分に横方向に切断した後、一般的な方法に従って、パラフィンに含浸させた。2μm厚の部分を、ゼラチンでコーティングされているガラスのスライドの上に置き、移植された組織部位の連続部分上に、染料が作用されるようにした。引き続き、パラフィン除去及び再水化後に、細胞学的細部事項、例えば核、細胞質及び結合組織を観察するため、部分をヘマトキシリンとエオシンで染色した。
PLC−δ1量の分析の結果、腎臓及び肝臓で、PTD−PLC−δ1が注入された試験群は対照群と差異がなかった。しかし、心臓には、注入されたPTD−PLC−δ1タンパク質が相当量存在しており、プロテインキナーゼCのリン酸化が極めて増加するということがわかった(図4参照)。
心筋細胞の生存に対するPTD−PLC−δ1の効果を分析した結果、PTD−PLC−δ1を静脈内注射した群において、心筋細胞の生存率が対照群よりもはるかに高いことがわかった(図5参照)。
発明の課題及び手段並びに要約書の部分だけではなく、発明の実施形態の部分は、請求の範囲を説明するために提供されるものであることを認知しなければならない。発明の課題及び手段並びに要約書の部分は、本発明の一以上、しかしながら全てではない例示に過ぎず、本発明及び添付した請求の範囲を制限することを意図するものではない。
図1は、ニッケルビードを用いたPTD−PLC−δ1の精製を示す図である。1列目は標準分子量のタンパク質を示し、2列目は融合タンパク質のPTD−PLC−δ1を示し、ヒトのPLC−δ1は長さ756個のアミノ酸で、約85kDAである。 図2aは、本発明による、低酸素症誘導の心筋細胞内へのPTD−PLC−δ1の浸透を示す図で、低酸素条件下で12時間培養された心筋細胞において0乃至500nM濃度の勾配下におけるPTD−PLC−δ1たんぱく質の量を示している。図2bは、本発明による、低酸素症誘導の心筋細胞内へのPTD−PLC−δ1の浸透を示す図で、このような条件下での細胞生存率を示し、CTLは対照群である。 図3は、酸素条件下で培養した対照群(1列目)と比較して、及び100nMのPTD−PLC−δ1タンパク質によって処理した際(3列目)、12時間の間、低酸素条件(低酸素症)下で(2列目)培養された心筋細胞内のカルシウムの過負荷を示し、細胞内のフリーCa2+の相対的変化は蛍光強度を測定することによって測定した。 図4は、内部臓器(心臓、腎臓及び肝臓)へのPTD−PLC−δ1の伝達及び浸透を示す図で、心臓において、プロテインキナーゼC(PKC)のリン酸化が認められる。1列目:正常;2列目:低酸素(1時間)及び再灌流(3時間);3列目:低酸素(1時間)及び再灌流(3時間)及びPTD−PLC−δ1。 図5は、動物の心筋梗塞モデルにおいて心臓の虚血部位治療に対するPTD−PLC−δ1の影響を示す図で、心筋細胞の生存は、PTD−PLC−δ1の不在及び存在下において可視化され、I/Rは虚血後の再灌流を意味する。

Claims (72)

  1. タンパク質導入ドメイン(PTD)及びホスホリパーゼCポリペプチドを含んでいる融合ポリペプチド。
  2. 請求項1に記載の融合ポリペプチドにおいて、
    前記ホスホリパーゼCポリペプチドは、配列番号:11のアミノ酸配列を含んでいる融合ポリペプチド。
  3. 請求項1に記載の融合ポリペプチドにおいて、
    前記ホスホリパーゼCポリペプチドは、配列番号:13のアミノ酸配列を含んでいる融合ポリペプチド。
  4. 請求項1に記載の融合ポリペプチドにおいて、
    前記ホスホリパーゼCポリペプチドは、配列番号:15のアミノ酸配列を含んでいる融合ポリペプチド。
  5. 請求項1に記載の融合ポリペプチドにおいて、
    前記タンパク質導入ドメイン(PTD)は、下記からなる群より選択されたアミノ酸配列を含んでいる融合タンパク質:
    (i)配列番号:1、
    (ii)配列番号:2、
    (iii)配列番号:3、
    (iv)配列番号:4、
    (v)配列番号:5、
    (vi)配列番号:6、
    (vii)配列番号:7、
    (viii) 配列番号:8、及び
    (ix)配列番号:9。
  6. 請求項1に記載の融合ポリペプチドにおいて、
    前記PTD及びホスホリパーゼCポリペプチドは、直接共有結合、ペプチド結合又はリンカーによって互いに結合されている融合タンパク質。
  7. 請求項6に記載の融合タンパク質において、
    前記リンカーは、1個乃至5個のアミノ酸を含んでいる非切断リンカーである融合タンパク質。
  8. 請求項7に記載の融合タンパク質において、
    前記リンカーは、Gly−Gly−Glyを含んでいる融合タンパク質。
  9. 請求項6に記載の融合タンパク質において、
    前記リンカーは切断リンカーである融合タンパク質。
  10. 請求項1に記載の融合タンパク質と、一つ以上の薬理学的に許容されている賦形剤とを混合して含んでいる医薬組成物。
  11. 請求項10に記載の医薬組成物において、
    前記医薬組成物は、一つ以上の抗血小板薬物、抗凝固薬物又は抗血栓薬物を更に含んでいる医薬組成物。
  12. タンパク質導入ドメイン(PTD)及びホスホリパーゼCポリペプチドと90%以上同じアミノ酸配列を含んでいる融合ポリペプチド。
  13. タンパク質導入ドメイン(PTD)及びホスホリパーゼCポリペプチドを含んでいる融合ポリペプチドの治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、対象においてカルシウムの過負荷を減少又は防ぐ方法。
  14. 請求項13に記載の方法において、
    前記ホスホリパーゼCポリペプチドは、ホスホリパーゼC−δポリペプチドである方法。
  15. 請求項13に記載の方法において、
    前記カルシウムの過負荷は、低酸素症、虚血、心血管疾患、心血管損傷、神経学的疾患又は神経学的損傷によって惹起される、方法。
  16. 請求項15に記載の方法において、
    前記低酸素症又は虚血は、血液供給不足の結果である方法。
  17. 請求項16に記載の方法において、
    前記血液供給の不足は、血管閉塞の結果である方法。
  18. 請求項13に記載の方法において、
    前記カルシウムの過負荷は、心臓又は脳において起こる方法。
  19. 請求項15に記載の方法において、
    前記低酸素症は、心筋梗塞によって惹起される方法。
  20. 請求項13に記載の方法において、
    前記方法は、神経細胞の死滅を減少又は抑制する方法。
  21. 請求項20に記載の方法において、
    前記神経細胞はニューロンである方法。
  22. 請求項15に記載の方法において、
    前記神経学的疾患は、虚血性又は出血性の脳卒中である方法。
  23. 請求項15に記載の方法において、
    前記方法は、心血管細胞の低酸素症誘導の細胞死を減少又は抑制する方法。
  24. 請求項23に記載の方法において、
    前記心血管細胞は、心臓の筋細胞,心室の筋細胞、心房の筋細胞、心臓の幹細胞、内皮細胞、血管の平滑筋細胞、ペースメーカー細胞、筋繊維芽細胞又は繊維芽細胞である方法。
  25. 請求項15に記載の方法において、
    前記心血管の疾患又は損傷は、心臓の低酸素症、心臓の低酸素症の再酸素化、心臓の虚血後再灌流、虚血性心疾患、心不全、心肥大、心臓手術、冠動脈造影術、血管欠損、先天性心臓欠陥、鬱血性心不全、心筋細胞再生、化学療法誘導の心筋症、心筋梗塞、心臓麻痺、心臓毒性、寄生虫感染による心臓損傷、突発性心臓アミロイド症、心臓移植、及び外傷性心臓損傷からなる群より選択される方法。
  26. 請求項25に記載の方法において、
    前記融合ポリペプチドは、虚血後再灌流より前、虚血後再灌流の開始時、又は虚血後再灌流中に投与される方法。
  27. 請求項25に記載の方法において、
    前記心血管損傷は心筋梗塞である方法。
  28. 請求項25に記載の方法において、
    前記心臓毒性は、ドキソルビシンによって惹起される方法。
  29. 請求項25に記載の方法において、
    前記寄生虫感染による心臓損傷は、梅毒又は慢性のクルーズトリパノソーマ感染によるものである方法。
  30. 請求項25に記載の方法において、
    前記外傷性心臓損傷は、貫通性若しくは鈍的心臓損傷又は大動脈弁破裂によるものである方法。
  31. 請求項25に記載の方法において、
    前記心不全を患っている対象において、脳卒中の開始を予防する方法。
  32. 請求項13に記載の方法において、
    前記カルシウムの過負荷は、前記対象の身体部位に限定される方法。
  33. 請求項32に記載の方法において、
    前記身体部位は、脳、脊髄、心臓、又は移植された臓器又は四肢である、方法。
  34. 請求項13に記載の方法において、
    前記融合ポリペプチドは、ピコモル濃度が適用される方法。
  35. 請求項13に記載の方法において、
    前記融合ポリペプチドは、静脈内に投与される方法。
  36. 請求項35に記載の方法において、
    前記投与は、心臓を標的とする方法。
  37. 請求項13に記載の方法において、
    前記融合ポリペプチドは、注射によって投与される方法。
  38. 請求項37に記載の方法において、
    前記注射は、心臓又は筋組織に直接行われる方法。
  39. 請求項13に記載の方法において、
    前記融合ポリペプチドは、経皮的に投与される方法。
  40. 請求項20に記載の方法において、
    前記細胞死は、壊死性又は自滅性である方法。
  41. タンパク質導入ドメイン(PTD)及びホスホリパーゼCポリペプチドを含んでいる融合ポリペプチドの治療有効量によって予め対象を治療することを含む、低体温症を患っている対象において虚血再灌流障害を予防する方法。
  42. 請求項41に記載の方法において、
    前記ホスホリパーゼCポリペプチドは、ホスホリパーゼC−δポリペプチドである方法。
  43. タンパク質導入ドメイン(PTD)及びホスホリパーゼCポリペプチドを含んでいる融合ポリペプチドの有効量を細胞に投与することを含む、細胞においてフリーカルシウムイオンの濃度を減少させる方法。
  44. 請求項43に記載の方法において、
    前記ホスホリパーゼCポリペプチドは、ホスホリパーゼC−δポリペプチドである方法。
  45. タンパク質導入ドメイン(PTD)及びホスホリパーゼCポリペプチドを含んでいる融合ポリペプチドを、一つ以上の臓器又は組織と、再灌流の前、再灌流時又は再灌流後に接触させることを含む、臓器又は組織移植時の臓器或いは組織の損傷を予防する方法。
  46. 請求項45に記載の方法において、
    前記ホスホリパーゼCポリペプチドは、ホスホリパーゼC−δポリペプチドである方法。
  47. 請求項45に記載の方法において、
    前記接触は、タンパク質導入ドメイン(PTD)及びホスホリパーゼCポリペプチドを含んでいる融合ポリペプチドを、臓器を除去する前又はそれと同時に臓器提供者に投与することによって行われる、方法。
  48. 請求項45に記載の方法において、
    前記臓器が提供者の心臓である方法。
  49. タンパク質導入ドメイン(PTD)及びホスホリパーゼCポリペプチドを含んでいる融合ポリペプチドの治療有効量を、それを必要とする対象に静脈内投与することを含む、心血管細胞の低酸素症誘導の細胞死を減少又は抑制する方法であり、この時、低酸素症が心筋梗塞によって惹起され、前記投与が、虚血後再灌流の前、虚血後再灌流の開始時又は虚血後再灌流中に行われる、方法。
  50. 請求項1に記載の融合ポリペプチドにおいて、
    前記ホスホリパーゼポリペプチドは、配列番号:16のアミノ酸配列を含んでいる融合ポリペプチド。
  51. 請求項1に記載の融合ポリペプチドにおいて、
    前記ホスホリパーゼポリペプチドは、配列番号:17のアミノ酸配列を含んでいる融合ポリペプチド。
  52. 請求項1に記載の融合ポリペプチドにおいて、
    前記ホスホリパーゼポリペプチドは、配列番号:18のアミノ酸配列を含んでいる融合ポリペプチド。
  53. 請求項1に記載の融合ポリペプチドにおいて、
    前記ホスホリパーゼポリペプチドは、配列番号:19のアミノ酸配列を含んでいる融合ポリペプチド。
  54. 請求項1に記載の融合ポリペプチドにおいて、
    前記ホスホリパーゼポリペプチドは、配列番号:20のアミノ酸配列を含んでいる融合ポリペプチド。
  55. 請求項1に記載の融合ポリペプチドにおいて、
    前記ホスホリパーゼポリペプチドは、配列番号:21のアミノ酸配列を含んでいる融合ポリペプチド。
  56. 請求項1に記載の融合ポリペプチドにおいて、
    前記ホスホリパーゼポリペプチドは、配列番号:22のアミノ酸配列を含んでいる融合ポリペプチド。
  57. 請求項1に記載の融合ポリペプチドにおいて、
    前記ホスホリパーゼポリペプチドは、配列番号:23のアミノ酸配列を含んでいる融合ポリペプチド。
  58. 請求項1に記載の融合ポリペプチドにおいて、
    前記ホスホリパーゼポリペプチドは、配列番号:24のアミノ酸配列を含んでいる融合ポリペプチド。
  59. タンパク質導入ドメイン(PTD)、及びホスホリパーゼCポリペプチドのカルシウム結合の領域(C2)を含んでいる融合ポリペプチド。
  60. 請求項59に記載の融合ポリペプチドにおいて、
    前記カルシウム結合の領域(C2)は、配列番号:25のアミノ酸配列を含んでいる融合ポリペプチド。
  61. 請求項59に記載の融合ポリペプチドにおいて、
    前記カルシウム結合の領域(C2)は、配列番号:26のアミノ酸配列を含んでいる融合ポリペプチド。
  62. 請求項59に記載の融合ポリペプチドにおいて、
    前記カルシウム結合の領域(C2)は、配列番号:27のアミノ酸配列を含んでいる融合ポリペプチド。
  63. 請求項59に記載の融合ポリペプチドにおいて、
    前記カルシウム結合の領域(C2)は、配列番号:28のアミノ酸配列を含んでいる融合ポリペプチド。
  64. 請求項59に記載の融合ポリペプチドにおいて、
    前記カルシウム結合の領域(C2)は、配列番号:29のアミノ酸配列を含んでいる融合ポリペプチド。
  65. 請求項59に記載の融合ポリペプチドにおいて、
    前記カルシウム結合の領域(C2)は、配列番号:30のアミノ酸配列を含んでいる融合ポリペプチド。
  66. 請求項59に記載の融合ポリペプチドにおいて、
    前記カルシウム結合の領域(C2)は、配列番号:31のアミノ酸配列を含んでいる融合ポリペプチド。
  67. 請求項59に記載の融合ポリペプチドにおいて、
    前記カルシウム結合の領域(C2)は、配列番号:32のアミノ酸配列を含んでいる融合ポリペプチド。
  68. 請求項59に記載の融合ポリペプチドにおいて、
    前記カルシウム結合の領域(C2)は、配列番号:33のアミノ酸配列を含んでいる融合ポリペプチド。
  69. 請求項59に記載の融合ポリペプチドにおいて、
    前記カルシウム結合の領域(C2)は、配列番号:34のアミノ酸配列を含んでいる融合ポリペプチド。
  70. 請求項59に記載の融合ポリペプチドにおいて、
    前記カルシウム結合の領域(C2)は、配列番号:35のアミノ酸配列を含んでいる融合ポリペプチド。
  71. 請求項59に記載の融合ポリペプチドにおいて、
    前記カルシウム結合の領域(C2)は、配列番号:36のアミノ酸配列を含んでいる融合ポリペプチド。
  72. 請求項9に記載の融合タンパク質において、
    前記リンカーは、配列番号:37のアミノ酸配列を含んでいる融合ポリペプチド。
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