JP6948250B2 - Larファミリーホスファターゼの活性を阻害する組成物及び方法 - Google Patents

Larファミリーホスファターゼの活性を阻害する組成物及び方法 Download PDF

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Description

本出願は、その主題が全体として参照によって本明細書に組み入れられる2012年4月9日に出願された米国仮特許出願番号61/621,623に由来する優先権を主張する。
本出願は、白血球共通抗原関連(LAR)ファミリーのホスファターゼの活性、シグナル伝達及び/又は機能を阻害する又は低減する組成物及び方法、並びにLARファミリーホスファターゼの活性、シグナル伝達及び/又は機能に関連する疾患、障害及び/又は状態を治療する方法及び組成物に関する。
脊髄損傷及び他の中枢神経系(CNS)の損傷は、永続的な身体障害又は障害の部位から下の運動の喪失(麻痺)及び感覚の喪失の原因となり得る。CNS損傷後の回復は最少であり、この難題を克服する潜在的な戦略における実質的な目下の関心に繋がる。損傷後のニューロン機能を改善する試みに立ち向かう基本的な障壁は、成熟したCNSが再生できないことである。
2つの周知のクラスの再生阻害物質は、ミエリン関連の阻害物質(MAG、Nogo及びOMGP)及び障害部位でのグリアによって形成される瘢痕組織における阻害物質(たとえば、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPG))である。CSPGは、外傷性障害だけでなく、神経変性を含む多数の他のCNS疾患にも関与する。ミエリン関連の阻害物質の受容体の例にはPirB及びNgRが挙げられる。
CSPGは軸索の再生に対してバリアを提示するけれども、CSPGの阻害効果に対する特異的な受容体はこれまで特定されてこなかった。さらに具体的には、CSPGは、瘢痕組織の細胞外マトリクスの中で及び切断された軸索のさらに遠い標的内のニューロン周囲網にての双方で、神経損傷後、劇的な上方調節を示す。CSPGの阻害性の性質は、病変を介して再生することができない栄養障害性の軸索収縮バルブの形成に反映されるだけでなく、免れた繊維の付随する発芽についての限定された能力にも反映される。硫酸化プロテオグリカンがグリア瘢痕の反発性への主な寄与因子であることがほぼ20年間知られているが、正確な阻害のメカニズムはほとんど理解されていない。従ってCSPGの機能を調節するメカニズムに対する緊急のニーズが残っている。
本明細書で記載される実施形態は、プロテオグリカンによって誘導される対象の細胞における白血球共通抗原関連(LER)ファミリーのホスファターゼの活性、シグナル伝達及び/又は機能を阻害する又は低減する方法に関する。方法には、プロテオグリカンによるLARファミリーのホスファターゼへの結合又はその活性化を阻害することなくLARファミリーのホスファターゼ触媒活性、シグナル伝達及び機能の1以上を阻害する治療剤を細胞に投与することが含まれる。
一部の実施形態では、LARファミリーのホスファターゼは受容体タンパク質チロシンホスファターゼシグマ(PTPσ)であり、治療剤には、PTPσのくさび形ドメインの約10〜約20の連続するアミノ酸に対して少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%相同であるアミノ酸配列を有する治療用ペプチドが含まれる。たとえば、治療剤は配列番号9〜33から成る群から選択される治療用ペプチドを含むことができる。
他の実施形態では、LARファミリーのホスファターゼは受容体タンパク質チロシンホスファターゼシグマ(PTPσ)であり、治療剤は、配列番号37のアミノ酸配列に対して少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%相同である治療用ペプチドを含むことができる。治療用ペプチドは、たとえば、配列番号37の残基4、5、6、7、9、10、12又は13の少なくとも1、2、3又は4のアミノ酸の保存的置換を含むことができる。
一部の実施形態では、細胞は、神経細胞、グリア細胞、グリア前駆細胞又は神経前駆細胞である。
他の実施形態では、治療剤は治療用ペプチドと連結され、細胞による治療用ペプチドの取り込みを促進する輸送部分を含む。たとえば、輸送部分はHIVのTat輸送部分であることができる。
さらに他の実施形態では、細胞は治療される対象にあり、治療剤は治療される対象に局所的に又は全身性に投与される。
さらに他の実施形態では、治療用ペプチドは細胞にて発現される。
本明細書における実施形態はまた、LARファミリーのホスファターゼの活性化及びシグナル伝達に関連する疾患、障害及び/又は状態を治療する方法にも関する。方法には、プロテオグリカンによるLARファミリーのホスファターゼへの結合又はその活性化を阻害することなくLARファミリーのホスファターゼ触媒活性、シグナル伝達及び機能の1以上を阻害する治療剤を対象の細胞に投与することが含まれる。
一部の実施形態では、疾患、障害及び/又は状態には、神経系の疾患、障害及び/又は状態の少なくとも1つが含まれる。
他の実施形態では、神経系の疾患、障害及び/又は状態には、神経障害、神経精神障害、神経損傷、神経毒性障害、神経障害痛、及び神経変性障害の少なくとも1つが含まれる。
たとえば、神経障害には、末梢神経又は頭蓋神経、脊髄又は脳、頭蓋神経に対する外傷性又は毒性の損傷、外傷性の脳損傷、卒中、脳動脈瘤、及び脊髄損傷の少なくとも1つを挙げることができる。神経障害にはまた、アルツハイマー病、アルツハイマー病に関連する認知症、パーキンソン病、びまん性レビー小体病、老人性認知症、ハンチントン病、トゥレット症候群、多発性硬化症、筋委縮性側索硬化症、遺伝性の運動神経障害及び感覚神経障害、糖尿病性神経障害、進行性核上麻痺、癲癇、又はクロイツフェルト・ヤコブ病の少なくとも1つを挙げることもできる。
一部の実施形態では、神経損傷は、癲癇、脳血管系疾患、自己免疫疾患、睡眠障害、自律神経障害、膀胱障害、異常な代謝状態、筋肉系の障害、感染性疾患及び寄生虫疾患、腫瘍、内分泌疾患、栄養性及び代謝性の疾患、免疫疾患、血液及び血液形成臓器の疾患、精神疾患、神経系の疾患、感覚器官の疾患、循環系の疾患、呼吸器系の疾患、消化器系の疾患、尿生殖器系の疾患、皮膚及び皮下組織の疾患、筋骨格系及び結合組織の疾患、先天性異常、又は周産期を起源とする状態が原因で起こり得る、又はそれに関連し得る。
本明細書に記載されるさらに他の実施形態は、神経細胞の増殖、運動性、生存性及び可塑性の少なくとも1つを促進するための治療剤に関する。PTPσのくさび形ドメインの約10〜約20の連続するアミノ酸に対して少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%相同であるアミノ酸配列を有する治療用ペプチドが含まれる。たとえば、治療剤は配列番号9〜33から成る群から選択される治療用ペプチドを含むことができる。
他の実施形態では、治療剤は、配列番号37のアミノ酸配列に対して少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%相同である治療用ペプチドを含むことができる。治療用ペプチドは、たとえば、配列番号37の残基4、5、6、7、9、10、12又は13の少なくとも1、2、3又は4のアミノ酸の保存的置換を含むことができる。
本明細書に記載されるさらに他の実施形態は医薬組成物に関する。医薬組成物は、配列番号37に対して少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%相同である合成の治療用ペプチドと治療用ペプチドと連結され、細胞による治療用ペプチドの取り込みを促進する輸送部分とを含む治療剤を含む。
一部の実施形態では、治療用ペプチドは、たとえば、配列番号37の残基4、5、6、7、9、10、12又は13の少なくとも1つのアミノ酸の保存的置換を含む。
他の実施形態では、治療用ペプチドは配列番号9〜33及び37から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む。
さらに他の実施形態では、治療剤は配列番号42〜66及び70から成る群から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドである。
CSPGの勾配に5日間暴露した後のスポットアッセイにおける成熟感覚DRGニューロンを示す写真である。 (A〜D)CSPGの勾配に暴露したスポットアッセイにおける成熟感覚DRGニューロンの成長円錐を示す写真である。 正常の及び栄養障害性の軸索及び成長円錐のPTPσ密度を示すグラフである。 LARファミリーの膜貫通ホスファターゼ、LAR、RPTPσ、RPTPδ及びそれらのシグナル伝達構成成分を示す模式図である。 CSPGの勾配に暴露し、溶媒対照又はISPで処理したスポットアッセイにおける成熟感覚DRGニューロンを示す写真である。 CSPGの勾配に暴露し、溶媒対照又はISPで処理したスポットアッセイにおける成熟感覚DRGニューロンの成長円錐の交差を示すグラフである。 (A〜B)CSPGの勾配に暴露し、溶媒対照又はISPで処理したスポットアッセイにおける感覚DRGニューロンの成長円錐の運動性を示す写真である。 1〜77日目の間での溶媒処理した脊髄損傷(SCI)動物及びLARペプチド処理したSCI動物のSCI後の自発運動についてのバッソ、ビーティーとブレスナハンのスコアのプロットを示す図である。 11週目における溶媒処理したSCI動物及びLARペプチド処理したSCI動物のSCI後の自発運動についての後肢のバッソ、ビーティーとブレスナハンのスコアを示すグラフである。 溶媒処理したSCI動物及びLARペプチド処理したSCI動物における踏み外し/メートルを示すグラフである。 溶媒処理したSCI動物及びLARペプチド処理したSCI動物における足滑り/メートルを示すグラフである。 溶媒処理したSCI動物及びISP処理したSCI動物における排尿回数及び容量を示すグラフである。 溶媒処理したSCI動物及びLARペプチド処理したSCI動物における排尿回数を示すグラフである。 溶媒処理したSCI動物及びLARペプチド処理したSCI動物における排尿回数を示すグラフである。 溶媒処理したSCI動物及びISP処理したSCI動物の腰部脊髄における5HTの発現(軸索密度)を示す写真である。 溶媒処理したSCI動物及びISP処理したSCI動物における腰部5HTの発現を示すグラフである。
本明細書に記載される実施形態は、特定の方法論、プロトコール及び試薬等に限定されず、そのようなものとして変わり得る。本明細書で記載される用語は特定の実施形態を記載する目的のみのためのものであり、特許請求の範囲によってのみ定義される本発明の範囲を限定することを意図するものではない。操作する例における以外又は指示される場合以外、本明細書で使用される成分又は反応条件の量を表す数はすべて用語「約」によってあらゆる場合、修飾されるように理解されるべきである。
特定される特許及び他の出版物はすべて、たとえば、本発明との関連で使用され得るそのような出版物で記載された方法論を記載し、開示する目的で参照によって本明細書に明らかに組み入れられる。これらの出版物は本出願の出願日に先立ってそれらの開示のために単に提供される。以前の発明を理由にして又は任意の他の理由で本発明者らがそのような開示に先行する権利を与えられないという承認として解釈すべきものは、この点で何もない。これらの文書の内容に関する日付又は表現に関する言及はすべて出願者に利用可能な情報に基づくものであり、これらの文書の日付又は内容の正確さに関する承認を構成するものではない。
定義されない限り、本明細書で使用される科学用語及び専門用語は当業者によって一般に理解される意味を有するべきである。さらに文脈によって要求されない限り、単数形態は複数を含むべきであり、複数形態は単数を含むべきである。一般に、本明細書で記載される細胞及び組織の培養、分子生物学、及びタンパク質及びオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの化学及びハイブリッド形成と関連して利用される命名法、並びにそれらの技法は、当該技術で周知であり、一般に使用されるものである。
本明細書で使用されるとき、「a、b及びcの1以上」はa、b、c、ab、ac、bc又はabcを意味する。本明細書での「又は」の使用は、包含的な又はである。
本明細書で使用されるとき、患者に「投与する」という用語には、脳脊髄液への又は脳血管関門を横切った投与、非経口又は経口の経路のいずれかによる送達、筋肉内注射、皮下又は経皮注射、静脈内注射、頬内投与、経皮送達、及び直腸、結腸、膣又は呼吸器の経路による投与を含む、対象における所望の位置に活性化合物を送達する(たとえば、それによって所望のニューロンのような所望の細胞に接触させるために)ために好適な経路によって対象に医薬製剤中の活性化合物を分配すること、送達すること又は適用することが含まれる。剤は、たとえば、静脈内注射を介して意識がない、麻酔下の若しくは麻痺した対象に投与され得るし、又は妊娠した対象に静脈内注射で投与されて胎児の軸索成長を刺激し得る。投与の特定の経路には、局所投与(たとえば、点眼剤、まぶたの下につけるクリーム又は浸食性の製剤、水性体液又は硝子体液への眼内注射、結膜下注射又は眼球鞘下注射を介するような眼の外層への注射、非経口投与又は経口経路を介した投与が挙げられ得る。
本明細書で使用されるとき、用語「抗体」には、ヒト及び動物のmAb、及びポリクローナル抗体、組換え抗体(抗血清)、ヒト化抗体、抗イディオタイプ抗体及びその誘導体を含むキメラ抗体を含む合成抗体が挙げられる。抗体の一部又は断片は、特定されるエピトープに結合する能力(結合の特異性及び親和性)の少なくとも一部を保持する抗体の領域を指す。用語「エピトープ」又は「抗原決定基」は抗体のパラトープが結合する抗原上の部位を指す。隣接するアミノ酸によって形成されるエピトープは通常、変性溶媒への暴露の際、保持されるが、三次折り畳みによって形成されるエピトープは通常、変性溶媒による処理の際に失われる。エピトープは通常、独特の空間配置にて少なくとも3、少なくとも5又は8〜10、又は約13〜15のアミノ酸を含む。エピトープの空間配置を決定する方法には、たとえば、X線結晶学及び二次元核磁気共鳴が挙げられる。たとえば、66、EPITOPE MAPPING PROTOCOLS IN METS.IN MOLECULAR BIO.(Morris,ed.,1996);Burkeら、170、J.Inf.Dis.1110−19(1994);Tiggesら、156、J.Immunol.3901−10)を参照のこと。
本明細書で使用されるとき、軸索の「成長」又は「伸長」(本明細書では「ニューロンの伸長」とも呼ぶ)という用語は、軸索又は樹状突起がニューロンから伸びる過程を含む。伸長は新しい神経突起にて又は前に存在している細胞突起の拡張にて生じる。軸索の伸長には、5細胞径以上までの軸索突起の線状の拡張が含まれ得る。神経突起生成を含むニューロンの成長突起は、免疫染色のような方法によって検出されるGAP−43の発現によって証拠付けることができる。「軸索成長を刺激すること」は軸索の伸長を促進することを意味する。
本明細書で使用されるとき、「中枢神経系(CNS)のニューロン」には脳、頭蓋神経及び脊髄のニューロンが含まれる。
本明細書で使用されるとき、用語「軸索退縮」は、軸索への外傷の結果生じる軸索の退縮を指す。
本明細書で使用されるとき、「キメラタンパク質」又は「融合タンパク質」は、ポリペプチドをコードする第1のアミノ酸配列の、第1のポリペプチドのドメインに対して外来性であり、実質的に相同ではないドメイン(たとえば、ポリペプチドの一部)を規定する第2のアミノ酸配列との融合体である。キメラタンパク質は外来性のドメインを提示してもよく、それは、生物で見いだされ(異なるタンパク質ではあるが)、第1のタンパク質も発現し、又はそれは、異なる種類の生物によって発現されるタンパク質構造の「種間」、「遺伝子間」等の融合体であってもよい。
本明細書で使用されるとき、用語「ニューロンに接触すること」又は「ニューロンを治療すること」は、剤がニューロンにてその医薬効果を示すことが可能である細胞又は生物全体への剤の送達又は「投与」の任意の様式を指す。「ニューロンに接触すること」には、生体内での及び試験管内での双方の、本発明の剤をニューロンの近傍にもたらす方法が含まれる。投与の好適な様式は、当業者が決定することができ、投与のそのような様式は剤の間で変化し得る。たとえば、ニューロンの軸索成長を生体外で刺激する場合、たとえば、形質移入、リポフェクション、エレクトロポレーション、ウイルスベクターの感染によって、又は増殖培地への添加によって剤を投与することができる。
本明細書で使用されるとき、剤又は治療用ペプチドの有効量は、所望の治療効果又は医薬効果を達成するのに十分な量、たとえば、ニューロンの成長を活性化することが可能である量である。本明細書で定義されるとき、剤の有効量は、たとえば、対象の疾患の状態、年齢及び体重、並びに対象において所望の応答を引き出す剤の能力のような因子に従って変化し得る。投与計画を調整して最適な治療応答を提供し得る。有効量はまた、治療上の有益な効果が活性化合物の毒性効果又は有害効果に勝るものでもある。本明細書で使用されるとき、用語「治療上有効な量」は、所望の治療成績を達成するのに必要な投与及び時間にて有効な量を指す。治療成績は、たとえば、症状の減少、生存の延長、改善された運動性等であり得る。治療成績は「治癒」である必要はない。
本明細書で使用されるとき、用語「発現」は、核酸がペプチドに翻訳される又はペプチド、ポリペプチド若しくはタンパク質に翻訳することができるRNAに転写される過程を指す。核酸がゲノムDNAに由来するのであれば、発現は、適当な真核宿主細胞又は生物が選択される場合、mRNAのスプライシングを含む。宿主細胞にて発現される非相同の核酸については、それは先ず細胞に送達され、次いでいったん細胞に入って、最終的に核に存在しなければならない。
本明細書で使用されるとき、用語「遺伝子治療」には、治療又は診断が求められる障害又は状態にある哺乳類、特にヒトの細胞への非相同のDNAの移入が含まれる。非相同のDNAが発現され、それによってコードされた治療用産物が産生されるような方法で選択された標的細胞にDNAが導入される。或いは、非相同のDNAは治療用産物をコードするDNAの発現に何らかの形で介在し;それは、治療用産物の発現に何らかの形で直接的に又は間接的に介在するペプチド又はRNAのような産物をコードし得る。遺伝子治療を用いて遺伝子産物をコードする核酸を送達して欠陥のある遺伝子を置き換えてもよいし、又はそれが導入される哺乳類又は細胞によって産生される遺伝子産物を補完してもよい。導入される核酸は、通常哺乳類宿主では産生されない又は治療上有効な量で若しくは治療上有用な時間、産生されない、たとえば、成長因子又はその阻害物質、腫瘍壊死因子又はその阻害物質、たとえば、それらのための受容体のような治療用化合物をコードし得る。治療用産物をコードする非相同のDNAは、産物又はその発現を強化する又はさもなければ変えるために、患った宿主の細胞に導入する前に修飾され得る。
本明細書で使用されるとき、用語「遺伝子」又は「組換え遺伝子」はエクソン及び(任意で)イントロンの配列双方を含むポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含む核酸を指す。
本明細書で使用されるとき、用語「非相同性の核酸配列」は通常、それが発現される細胞によって生体内では通常産生されないRNA及びタンパク質をコードするDNA、又は転写、翻訳若しくは他の調節性の生物過程に影響を及ぼすことによって内在性のDNAの発現を変更するメディエータに介在する若しくはそれをコードするDNAである。非相同性の核酸配列はまた外来性のDNAとも呼ばれる。それが発現される細胞に対して非相同性又は外来性であると当業者が認識する又は見なすDNAは本明細書では非相同性DNAによって包含される。非相同性DNAの例には、たとえば、薬剤耐性を付与するタンパク質のような追跡可能なマーカータンパク質をコードするDNA、たとえば、抗癌剤、酵素及びホルモンのような治療上有効な物質をコードするDNA、並びに抗体のような他の種類のタンパク質をコードするDNAが挙げられる。非相同性のDNAによってコードされる抗体は非相同性のDNAが導入されている細胞の表面にて分泌され得る又は発現され得る。
本明細書で使用されるとき、用語「相同性」及び「同一性」は、全体を通して同義的に使用され、2つのペプチド間の又は2つの核酸分子間の配列類似性を指す。相同性は、比較の目的で並べられ得る各配列における位置を比較することによって決定することができる。比較した配列における位置が同一の塩基又はアミノ酸で占められれば、その位置で分子は相同又は同一である。配列間の相同性又は同一性の程度は配列によって共有される一致する又は相同性の位置の数の関数である。
本明細書で使用されるとき、用語「神経障害」には、対象の神経系の正常な機能又は生体構造に直接又は間接的に影響する疾患、障害又は状態が含まれる。用語「卒中」は当該技術で認識されており、脳の動脈の破裂又は閉塞(たとえば、血栓による)が原因で生じる意識、感覚及び随意運動の突然の減衰又は喪失を含む。「外傷性脳損傷」は当該技術で認識されており、頭部への外傷性の打撃が、頭蓋骨を貫通することを伴って又は伴わずに脳又は接続する脊髄への損傷を引き起こす状態を含む。普通、当初の外傷は、拡張する血腫、クモ膜下出血、脳浮腫、頭蓋内圧の上昇、及び脳低酸素を生じることができ、それは、低い脳血流のために順に重篤な二次的事象をもたらす。
本明細書で使用されるとき、用語「ニューロン移動」は、軸索移動又は樹状突起移動のように移動するニューロン細胞又は移動するニューロン突起の能力を指す。
本明細書で使用されるとき、語句「非経口投与」及び「非経口で投与される」は本明細書で使用されるとき、腸内投与及び局所投与以外の普通注射による投与の様式を意味し、それには、限定しないで、静脈内、筋肉内、動脈内、脳室内、関節包内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、関節包下、脊髄内、及び胸骨内の注射及び注入が挙げられる。
本明細書で使用されるとき、語句「全身性投与」及び「全身性に投与される」は本明細書で使用されるとき、標的組織(たとえば、中枢神経系)への直接投与以外の化合物、薬剤又はその他の物質の投与を意味するので、それは動物の全身に入り、従って代謝及び他の類似の過程、たとえば、皮下投与の対象となる。
本明細書で使用されるとき、用語「患者」又は「対象」又は「動物」又は「宿主」は任意の哺乳類を指す。対象はヒトであり得るが、獣医治療を必要とする哺乳類、たとえば、愛玩動物(たとえば、イヌ、ネコ等)、家畜(たとえば、ウシ、ヒツジ、ニワトリ、ブタ、ウマ等)及び実験動物(たとえば、ラット、マウス、モルモット等)でもあり得る。
本明細書で使用されるとき、「末梢神経系(PNS)のニューロン」には、CNSの外側に存在する又は伸びるニューロンが含まれる。PNSは、感覚ニューロン及び運動ニューロンを含む末梢神経系にて分類されるように一般的に理解されるニューロンを含むように意図される。
本明細書で使用されるとき、用語「ポリヌクレオチド配列」及び「ヌクレオチド配列」は本明細書では相互交換可能にも使用される。
本明細書で使用されるとき、用語「ペプチド」及び「ポリペプチド」は本明細書では相互交換可能にも使用され、約2〜約90のアミノ酸残基から成る化合物を指し、1つのアミノ酸のアミノ基がペプチド結合によって別のアミノ酸のカルボキシル基に連結されることが含まれる。ペプチドはたとえば、酵素切断又は化学切断によってネイティブのタンパク質から導き出す又は取り出すことができ、従来のペプチド合成法(たとえば、固相合成)又は分子生物学的な技法によって調製することができる(Sambrook et al., MOLECULAR CLONING: LAB. MANUAL (Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989)を参照)。「ペプチド」は、好適なL−及び/又はD−アミノ酸、たとえば、一般のα−アミノ酸(たとえば、アラニン、グリシン、バリン)、非α−アミノ酸(たとえば、P−アラニン、4−アミノ酪酸、6−アミノカプロン酸、サルコシン、スタチン)及び稀なアミノ酸(たとえば、シトルリン、ホモシトルリン、ホモセリン、ノルロイシン、ノルバリン、オルニチン)を含むことができる。ペプチド上のアミノ基、カルボキシル基及び/又は他の官能基は遊離であることができ(たとえば、修飾されない)、又は好適な保護基で保護することができる。アミノ基及びカルボキシル基の好適な保護基、及び保護基を付加する又は取り外す手段は当該技術で既知である。たとえば、Green &Wuts,PROTECTING GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS (John Wiley &Sons,1991)を参照のこと。ペプチドの官能基も技術で既知の方法を用いて誘導体化すること(たとえば、アルキル化)ができる。
ペプチドを合成することができ、2、3から多数の別個の分子種を含むライブラリに組み立てることができる。そのようなライブラリはコンビナトリアル化学の周知の方法を用いて調製することができ、本明細書で記載されるように、又はCSPG/PTPσの相互作用に拮抗することができるペプチドをライブラリが含むかどうかを測定する好適な他の方法を用いて、スクリーニングすることができる。次いで好適な手段によってそのようなペプチドの拮抗剤を単離することができる。
本明細書で使用されるとき、用語「ペプチド模倣体」は、ペプチドを模倣するように設計されたタンパク質様分子を指す。ペプチド模倣体は通常、既存のペプチドの修飾から、又はペプチドを模倣する類似の系、たとえば、ペプトイド及びβ−ペプチドを設計することによって生じる。アプローチに関わりなく、変化した化学構造を設計して安定性又は生物活性のような分子特性を有利に調整する。これらの修飾には、天然に存在しないペプチドに対する変更(たとえば、変化した骨格及び非天然のアミノ酸の取り込み)が関与する。
本明細書で使用されるとき、用語「前駆細胞」はその最終的に分化した子孫の特徴の全部ではない一部を有する幹細胞の分化の間に生成される細胞である。たとえば、「神経前駆細胞」のような定義された前駆細胞は系列に関係付けられているが、特定の又は最終的に分化した細胞型には関係付けられない。
本明細書で使用されるとき、用語「幹細胞」は、自己再生を受けることができ(すなわち、同じ分化能を持つ子孫)、分化能にてさらに拘束される子孫細胞を生じることができる細胞を意味する。本発明の文脈の範囲内では、幹細胞は、たとえば、核移入によって、さらに原始的な幹細胞との融合によって、特定の転写因子の導入によって、又は特定の条件下での培養によって脱分化しているさらに分化した細胞も包含する。たとえば、Wilmutら、Nature,385:810−813(1997);Yingら、Nature,416:545−548(2002);Guanら、Nature,440:1199−1203(2006);Takahashiら、Cell,126:663−676(2006);Okitaら、Nature,448:313−317(2007);及びTakahashiら、Cell,131:861−872(2007)を参照のこと。
本明細書で使用されるとき、用語「退縮」は、損傷の部位から、たとえば、グリア瘢痕が形成する部位からの軸索の後退を指す。ここでは、再生している軸索の末端が伸長を止め、栄養障害性になる。これらの栄養障害性の末端が次いでグリア瘢痕及び損傷の部位からさらに後退し得る。
ポリヌクレオチド配列(DNA、RNA)は、発現制御配列がポリヌクレオチド配列の転写及び翻訳を制御し、調節する場合、発現制御配列に「操作可能に連結される」。用語「操作可能に連結される」には、発現されるポリヌクレオチド配列の前で適当な開始シグナル(たとえば、ATG)を有すること、及び正しいリーディングフレームを維持して発現制御配列の制御下でポリヌクレオチド配列の発現を可能にし、ポリヌクレオチド配列によってコードされる所望のポリペプチドの産生を可能にすることが含まれる。
本明細書で使用されるとき、本明細書で使用されるような用語「組換え」はタンパク質が原核発現系又は真核発現系に由来することを意味する。
本明細書で使用されるとき、用語「組織特異的なプロモータ」は、プロモータとして役立つ、すなわち、プロモータに操作可能に連結された選択された核酸配列の発現を調節し、上皮細胞の細胞のような組織の特定の細胞にて選択された核酸配列の発現に影響する核酸配列を意味する。用語はまた1つの組織で主として選択された核酸の発現を調節するが、同様に他の組織で発現を引き起こすいわゆる「漏出」プロモータも網羅する。用語「形質移入」は細胞による外来性DNAの取り込みを指すのに使用される。外因性DNAが細胞膜の内側に導入されている場合、細胞は形質移入されている。多数の形質移入の方法が当該技術で一般に知られている。たとえば、Grahamら、Virology、52:456(1973);Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(1989);Davisら、Basic Methods in Molecular Biology(1986);Chuら、Gene、13:197(1981)を参照のこと。そのような技法を用いて、たとえば、ヌクレオチド統合ベクター及び他の核酸分子のような1以上の外来性DNA部分を好適な宿主細胞に導入することができる。用語は化学的な、電気的な、及びウイルスが介在する形質移入の手順を捉える。
本明細書で使用されるとき、用語「転写調節配列」は、それらが操作可能に連結されるタンパク質をコードする配列の転写を誘導する又は制御する開始シグナル、エンハンサ及びプロモータのような核酸配列を指すのに明細書全体を通して使用される一般的な用語である。一部の例では、組換え遺伝子の転写はプロモータ配列(又は他の転写調節配列)の制御のもとにあり、それは、発現が意図される細胞型にて組換え遺伝子の発現を制御する。組換え遺伝子は、これらの配列と同一である又は異なる、タンパク質の天然に存在する形態の転写を制御する転写調節配列の制御のもとにあり得ることも理解されるであろう。
本明細書で使用されるとき、用語「ベクター」はそれが連結されている別の核酸を輸送することが可能である核酸分子を指す。好ましいベクターは、それらが結合する核酸の自律複製及び発現の1以上が可能であるものである。それらが操作可能に連結される遺伝子の発現を指示することが可能であるベクターは本明細書では「発現ベクター」と呼ばれる。
本明細書で使用されるとき、用語「野生型」は、生体内でそれが正常に存在するような、それぞれ、タンパク質、又はその一部、又はタンパク質配列、又はその一部をコードする天然に存在するポリヌクレオチドを指す。本明細書で使用されるとき、用語「核酸」はデオキシリボ核酸(DNA)、及び適宜、リボ核酸(RNA)のようなポリヌクレオチドを指す。用語は、ヌクレオチド類似体から作られ、所望である実施形態に適用可能なRNA又はDNAの同等物、類似体、一本鎖(センス又はアンチセンス)及び二本鎖のポリヌクレオチドを含むように理解されるべきである。
本明細書で記載される方法で使用される剤、化合物、組成物、抗体等は使用前に精製される及び/又は単離されることが検討される。精製された物質は通常、「実質的に純粋」であり、核酸、ポリペプチド、又はそれらの断片、又は他の分子が天然ではそれに伴う成分から分離されていることを意味する。通常、それが天然に会合するタンパク質及び他の有機分子を重量で少なくとも60%、70%、80%、90%、95%又はさらに99%含まない場合、ポリペプチドは実質的に純粋である。たとえば、実質的に純粋なポリペプチドは、天然の供給源からの抽出によって、正常ではそのタンパク質を発現しない細胞における組換え核酸の発現によって、又は化学合成によって得られ得る。「単離された物質」はその天然の位置及び環境から取り出されている。単離された又は精製されたドメイン又はタンパク質断片の場合、ドメイン又は断片は、天然に存在する配列にてタンパク質に隣接するアミノ酸配列を実質的に含まない。用語「単離されたDNA」は、DNAが天然に存在するゲノムにおける所与のDNAに隣接する遺伝子を実質的に含んでいないことを意味する。従って、用語「単離されたDNA」は、たとえば、cDNA、クローニングされたゲノムDNA及び合成DNAを包含する。
本明細書で使用されるとき、用語「一部」、「断片」、「変異体」、「誘導体」及び「類似体」は、本発明のポリペプチドを指す場合、本明細書で参照される少なくとも一部の生物活性(たとえば、結合のような相互作用の阻害)を保持するポリペプチドを含む。本明細書で記載されるようなポリペプチドには、ポリペプチドがその機能を依然として役立てる限り、限定せずに一部、断片、変異体、又は誘導体分子が含まれ得る。本発明のポリペプチド又はその一部には、タンパク分解断片、欠失断片、及び特に、又は動物に送達された際、作用部位にさらに容易に達する断片が含まれ得る。
本出願は、白血球共通抗原関連(LAR)のファミリーのホスファターゼ、たとえば、LAR及び受容体タンパク質チロシンホスファターゼシグマ(PTPσ)の活性、シグナル伝達及び/又は機能を阻害する及び/又は低減する組成物及び方法、並びにLARファミリーのホスファターゼ、たとえば、LAR及びPTPσの活性化及びシグナル伝達に関連する疾患、障害及び/又は状態を治療する方法に関する。
LARファミリーのホスファターゼは、3つのメンバー:LAR自体、受容体タンパク質チロシンホスファターゼシグマ(PTPσ)及び受容体タンパク質チロシンホスファターゼデルタ(PTPδ)から成る。PTPσ及びPTPf(LAR自体)は、グリア瘢痕及びニューロン周囲網の主要な構成成分であるコンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPG)の受容体として関与している。CSPGの糖側鎖は神経細胞のような細胞によって発現されたLAR及びPTPσに結合することができ、神経細胞の増殖、可塑性、再生及び神経細胞における発芽不全を阻害することができる。
PTPσノックアウトニューロンは、種々のCSPGが介在するアッセイにて阻害の低下を示し、たとえば、脊髄損傷及び眼神経挫滅の後のような、神経損傷の後での再生の増加を示すことが見いだされた。LARノックアウトにおける成績は、再生表現型の増減双方が見いだされて結論に達しないままだった。CSPGは損傷した成熟神経系にて再生及び可塑性を妨害する主要なものなので、これらLARファミリーのホスファターゼの機能的な阻害物質を治療剤として用いて神経細胞の増殖、可塑性、再生及び発芽を促進することができる。
従って、本明細書で記載される一部の実施形態は、たとえば、CSPGのようなプロテオグリカンによって活性化される及び/又は潜在的に活性化することができる、LARファミリーのホスファターゼを発現する細胞(すなわち、神経細胞、神経前駆細胞、神経幹細胞、又は内皮細胞)の増殖、運動性、生存性及び/又は可塑性を促進する方法に関する。方法は、LARファミリーのホスファターゼの触媒活性、シグナル伝達及び/又は機能を阻害するのに有効な量の治療剤を細胞に投与することを含むことができる。LARファミリーのホスファターゼの活性、シグナル伝達及び/又は機能の阻害を用いてこれらの細胞の細胞増殖、運動性、生存性及び可塑性を促進することができる。
特定の実施形態では、LARファミリーのホスファターゼを発現する細胞には神経細胞及びグリア細胞が挙げられる。細胞の他の例には内皮細胞が挙げられる。プロテオグリカンによって活性することができる、LARファミリーのホスファターゼを発現する細胞のさらに他の例は、既知のアッセイを用いて容易にスクリーニングすることができる。
LARファミリーのホスファターゼの活性、シグナル伝達及び/又は機能は、LARファミリーのホスファターゼの細胞内ドメインの活性の直接的な阻害(たとえば、小分子、タンパク質模倣体、又は優性阻害ポリペプチドを用いることによって);LARファミリーのホスファターゼの細胞内ドメインの活性、シグナル伝達及び/又は機能の1以上を阻害する遺伝子及び/又はタンパク質の活性化(たとえば、遺伝子及び/又はタンパク質の発現又は活性を高めることによって);LARファミリーのホスファターゼの下流のメディエータである遺伝子及び/又はタンパク質の阻害(たとえば、メディエータ遺伝子及び/又はタンパク質の発現及び/又は活性の遮断によって);LARファミリーのホスファターゼの活性、シグナル伝達及び/又は機能の1以上を負に調節する遺伝子及び/又はタンパク質の誘導(たとえば、組換え遺伝子の発現ベクター、組換えウイルスベクター又は組換えポリペプチドを用いて);又は、たとえば、LARファミリーのホスファターゼの低形質変異体による遺伝子の置換(たとえば、相同組換え、組換え遺伝子発現又はウイルスベクターを用いた過剰発現、又は変異誘発によって)を含む幾つかの方法にて抑制し、阻害し、及び/又は遮断することができる。
LARファミリーのホスファターゼの活性、シグナル伝達及び/又は機能の1以上を阻害する又は低減する治療剤には、CSPGのようなプロテオグリカンによるLARファミリーのホスファターゼの結合又は活性化を阻害することなく、LARファミリーのホスファターゼの活性、シグナル伝達及び/又は機能を低下させる及び/又は抑制する剤を挙げることができる。そのような剤は細胞内に送達することができ、いったん細胞内に送達されると、ニューロンのような細胞の固有の増殖能力を助長し、ニューロンの増殖経路(たとえば、CNS)を活性化し、神経有益効果を生じることが可能である。
神経有益効果には、ニューロン、神経系の一部、又は神経系一般の健康又は機能に有益な応答又は結果を挙げることができる。そのような効果の例には、ニューロン又は神経の一部の損傷に耐える、再生する、所望の機能を維持する、増殖する又は生存する能力における改善が挙げられる。神経有益効果には、神経系の構成成分の中での機能又は回復力にてそのような応答又は改善を生じること又は達成することを挙げることができる。神経有益効果を生じることの例には、ニューロンへの損傷後、軸索伸長を刺激すること;ニューロンをアポトーシスに耐性にすること;たとえば、β−アミロイド、アンモニア又は他の神経毒素のような毒性化合物に対して神経を耐性にすること;加齢に関連するニューロンの委縮又は機能の喪失を反転すること;加齢に関連するコリン作動性の神経支配の喪失を反転すること;軸索退縮を反転する及び/又は軽減すること、及び/又は神経発芽を促進することが挙げられる。
LARファミリーのホスファターゼの調節、調整、及び/又は阻害について可能性のあるメカニズムの1つには、LARファミリーのホスファターゼの細胞内部分の二量体化が関与する。二量体として活性があり、単量体としては不活性である受容体チロシンキナーゼとは対照的に、幾つかのタンパク質チロシンホスファターゼ(PTPσ)は二量体化した状態で不活性であり、単量体として活性がある。これらには、PTPα、PTP1B及びCD45が挙げられる。これらの分子のそれぞれは、活性のある単量体形態及び不活性の二量体形態の双方にて結晶化することができる。加えて、LAR及びCD45は特定の酸化条件下で同種結合を示す一方で、PTPσはリガンド結合に応答して二量体化することができる。このことは、LARファミリーのホスファターゼに対するリガンドが、LAR及びPTPσのようなLARファミリーのホスファターゼの活性化状態を指示することができることを示唆している。従って、細胞内を標的とする治療法によって二量体化を模倣することは、細胞内マトリクス又は他のリガンドを変更することなく、LARファミリーのホスファターゼを直接不活化することができる。
我々は、LARファミリーのホスファターゼの細胞内部分のペプチド模倣体がCSPGの活性化によって誘導されるLAR活性を阻害する及び/又は低減することができることを見いだした。CSPGの活性化に応答したLARファミリーの活性、シグナル伝達及び/又は機能の細胞内の阻害は、成長円錐の運動性の回復、突起の伸長、発芽及び神経細胞の生存及び可塑性の促進を含む神経細胞の伸長を促進し、同様に神経細胞の軸索退縮を阻害することが見いだされた。
一実施形態では、LARファミリーのホスファターゼの活性、シグナル伝達及び/又は機能の1以上を阻害する又は低減する治療剤には、少なくとも1つのLARファミリーのホスファターゼの細胞内ドメインに結合し、及び/又はそれと複合体形成してLARファミリーのホスファターゼの活性、シグナル伝達及び/又は機能を阻害する治療用ペプチド又は小分子を挙げることができる。従って、神経細胞の少なくとも1つのLARファミリーのホスファターゼの細胞内ドメインに結合する、及び/又はそれと複合体形成する治療用ペプチド又は小分子を用いてこれらの細胞の細胞増殖、運動性、生存性及び可塑性を促進することができる。
一部の実施形態では、治療剤は、LARファミリーのホスファターゼの細胞内触媒ドメインのくさび形形状のドメイン(すなわち、くさび形ドメイン)のペプチド模倣体であることができる。構造的及び配列の解析は、LARファミリーのメンバーすべてが、同種/異種受容体の相互作用に潜在的に介在することができる第1の細胞内触媒ドメインにて保存された24アミノ酸のくさび形形状のらせん/ループ/らせんモチーフを含有する。表1は、くさび形ドメインを含有するLARファミリーのホスファターゼのメンバーの細胞内部分のアミノ酸配列を列記する。LARファミリーのホスファターゼのこれらの細胞内部分の24アミノ酸のくさび形ドメインは下線で特定する。くさび形ドメインの特定の構造がLARファミリーのくさび形ドメインのほとんどで保存されている一方で、くさび形ドメインを構成する正確なアミノ酸は個々のタンパク質及びサブファミリーの間で変化する。
Figure 0006948250
特定のLARファミリーのメンバーのくさび形ドメインはその特定のLARファミリーのメンバーとの同種の相互作用又は結合に携わることが見いだされた。たとえば、プルダウンアッセイにて、LARのくさび形ドメインは完全長のLARと特異的に相互作用することができたが、PTPσのような他のファミリーメンバーとはできなかった。加えて、試験管内の結合アッセイは、PTPmu及びLARのくさび形ドメインペプチド(くさび形ドメイン+HIV−TAT)は、でたらめに互いに結合する代わりに同種で特異的に凝集した。特に興味深いことに、LARのくさび形ドメインがシグマに結合することができなかったということは、類似のファミリーのメンバー間でさえ特異性を示している。
従って、細胞(たとえば、神経細胞)で発現される場合又は細胞内の輸送部分に抱合される場合の、LARファミリーのホスファターゼのこれらくさび形ドメインのペプチド模倣体を用いて、CSPGによって活性化された神経細胞におけるLARファミリーのシグナル伝達を消滅させることができ、細胞の増殖、運動性及び生存性を促進することができる。その特異的なPTPのインタクトなくさび形ドメインへのこれら治療用ペプチドの結合は、潜在的に(i)ホスファターゼ標的のような標的タンパク質と相互作用するそのPTPの能力を妨害し;(ii)PTPと、触媒として不活性の第2のホスファターゼドメインD2のようなPTPに含有される別のドメインとの間の分子間相互作用を促進する活性を妨害し;活性のあるホスファターゼの部位へのタンパク質のアクセスを妨げ;(iii)くさび形ドメインの正常なインタラクタと相互競合し;及び/又はホスファターゼ活性を立体的に阻害する。
一部の実施形態では、ペプチド模倣体(すなわち、治療用ペプチド)は、約10〜約20アミノ酸を含み、から本質的に成り、及び/又はから成ることができ、LARファミリーのホスファターゼのくさび形ドメインのアミノ酸配列の約10〜約20の連続するアミノ酸部分に対して少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%相同であるアミノ酸配列を有する。
他の実施形態では、ペプチド模倣体は約10〜約20アミノ酸を含み、から本質的に成り、及び/又はから成ることができ、PTPσのくさび形ドメインの約10〜約20の連続するアミノ酸部分に対して少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%又は100%相同であるアミノ酸配列を有する。我々は、細胞質のキャリアを伴ったPTPσのくさび形ドメインに相当する又は実質的に相同であるペプチド模倣体(たとえば、治療用ペプチド)は、CSPGが介在する阻害を取り除くことができ、典型的な阻害の代わりにニューロンがCSPG基質上を進むのを可能にすることを見いだした。この効果は容量依存性であり、PTPσを発現する応答細胞に依存した。タンパク質レベルでPTPσを発現しない星状細胞はペプチドの不活化に応答しないが、PTPσを発現する衛星グリアはペプチドに応答する。さらに、このペプチドは全身性に与えられて重篤な脊髄損傷後の可塑性及び機能回復を促進することができる。
表2に示すように、PTPσのくさび形ドメインの配列は高等哺乳類の間では高度に保存されており、マウスとラットでたった1つのアミノ酸の変化(6位におけるスレオニンからメチオニンへ)が100%相同を妨げている。
Figure 0006948250
Figure 0006948250
表2に示すように、PTPσのくさび形ドメインの第1のαらせんは、アミノ酸1〜10を含み、ターン領域はアミノ酸11〜14を含み、第2のαらせんはアミノ酸15〜24を含む。たとえば、ヒトPTPσのくさび形ドメインの第1のαらせんは、DMAEHTERLK(配列番号67)のアミノ酸配列を有し、ターンはANDS(配列番号68)のアミノ酸配列を有し、第2のαらせんはLKLSQEYESI(配列番号69)を有する
くさび形ドメインはまた、LARファミリーの他のメンバー、LAR及びPTPδと配列相同性を共有する。これらのアミノ酸はくさび形ドメインの構造全体に必要であると思われる。保存されたアミノ酸には13位のアラニンが含まれ、それは第1のαらせんの末端及びターンの開始に印を付け、一般的なくさび形のサイズ及び構造に必要であることをもっともらしくしている。
くさび形ドメインの二次構造及び三次構造がほとんどの受容体PTPで一貫したままなので、PTPσを標的とする治療用ペプチドに対して幾つかの保存的置換を行って類似の結果を得ることができる。保存的置換の例には、たとえば、イソロイシン、バリン、ロイシン又はメチオニンのような非極性(疎水性)残基同士の置換、一方の極性(親水性)残基の他方への置換、たとえば、アルギニンとリジンの間、グルタミンとアスパラギンの間、グリシンとセリンの間の置換、たとえば、リジン、アルギニン又はヒスチジンのような塩基性残基同士の置換、及び/又はたとえば、アスパラギン酸又はグルタミン酸のような酸性残基同士の置換が挙げられる。
これらの保存的置換は、αらせん又はターンにおける独特ではないドメイン、特に第1のαらせんにおける1〜3位及び7〜10位;ターンにおける12及び13位;並びに第2のαらせんにおける15、16、18〜24位にて存在することができる。これらのアミノ酸はくさび形ドメインの構造全体に対して必要であり得るが、PTPσへのくさび形の結合の特異性には必要ではない。
PTPσに対する独特のアミノ酸、特にPTPσとLARで差次的に発現されるアミノ酸は、くさび形ドメインの結合の特異性に必要であることが見いだされた。これらには、第1のαらせんの4位及び5位それに続く6位のスレオニン又はメチオニン(ラットとマウスでの置換)におけるEHドメインが挙げられる。ターンでは、高等哺乳類すべてにおいて14位の独特のセリンがある。最後に第2のαらせんでは17位にて独特のロイシンがある。これらの独特のアミノ酸の考えられる役割を以下で議論する。
14位でのターンにおけるセリン残基はくさび形ドメインのその位置のために特に興味深い。αらせん間のターンに位置するこのアミノ酸は、PTPσの一般的な二次構造及び三次構造からやや伸びて、結合の相互作用にそれを利用できるようにしている。加えて、セリンは、そのヒドロキシル基及びそれが含有する極性のために、たとえば、隣接するセリン間の水素結合のような幾つかの同種及び異種の結合事象を促進することが知られている。セリンはまたリン酸化のような種々の修飾を受けることも知られ、特異性のためのその必要性の可能性を高くしている。くさび形ドメインのターンに焦点を置き、保存されたセリンを含む小さなペプチドが類似の機能と共にさらに大きな安定性を提供し得ることは可能である。そのようなペプチドは、システインのいずれかの末端と共にループとして合成されてジスルフィド結合を創ることができる。
第1のαらせんにおける独特のアミノ酸には、4位のグルタミン酸、5位のヒスチジン及び6位のスレオニン又はメチオニンが挙げられる。ヒスチジンはコンセンサスくさび形ドメインに関与するが、それはLAR、PTPδ、PTPmu又はCD45には見つからない。これらのアミノ酸3つはすべて荷電しているか又は極性なので、この配列又はその成分の1つがPTPσのくさび形の特異性に必要であると思われる。
さらに、第2のαらせんは17位で独特のロイシンを含有する。ロイシンは、ロイシンジッパーの三次元構造にとって決定的な接着性分子に関係があるとされている。くさび形ドメインに構造的に類似するこれらの分子では、ほぼ7間隔で位置する、対向するαらせんのロイシンは対向するαらせんの疎水性領域と相互作用する。第1のαらせんには9位に位置するロイシンもあるので、この独特のロイシンはPTPσのくさび形の三次構造の統合性全体に必要であると考えられる。
従って、他の実施形態では、治療用ペプチドは、約14〜約20のアミノ酸を含む、から本質的に成る、又はから成ることができ、アミノ酸配列EHXERLKANDSLKL(配列番号37)を含み、配列中、XはT又はMである。配列番号37を含む治療用ペプチドは、治療用ペプチドが配列番号37に対して少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%相同であるアミノ酸配列を有するように少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、又は少なくとも5の保存的置換を含むことができる。
一部の実施形態では、保存的置換は、配列番号37のアミノ酸残基4E、5R、6L、7K、9N、10D、12L、又は13Kのものである。例として、アミノ酸残基4EをD又はQで置換することができ、アミノ酸残基5RをH,L又はKで置換することができ、アミノ酸残基6LをI、V又はMで置換することができ、アミノ酸残基7KをR又はHで置換することができ、アミノ酸残基9NをE又はDで置換することができ、アミノ酸残基10DをE又はNで置換することができ、アミノ酸残基12LをI、V又はMで置換することができ、及び/又はアミノ酸残基13KをR又はHで置換することができる。
本明細書で記載される治療用ペプチドは、そのような変更がその使用で特定の利点を提供する他の種々の変更、置換、挿入、及び欠失の対象とすることができる。この点で、LARファミリーのホスファターゼのくさび形ドメインに結合する及び/又はそれと複合体形成する治療用ペプチドは、1以上の変更が行われ、それがLARファミリーのホスファターゼの活性、シグナル伝達及び/又は機能の1以上を阻害する又は低減する能力を保持する引用されたポリペプチドの配列に一致するというよりはむしろ、相当する又は実質的に相同であることができる。
治療用ペプチドは、アミド、タンパク質との抱合体、環化ポリペプチド、重合ポリペプチド、類似体、断片、化学的に修飾されたポリペプチド、及び類似の誘導体を含む種々の形態のポリペプチド誘導体のいずれかであることができる。
保存的置換は、そのようなペプチドが必要な結合活性を提示するという条件で非誘導体化残基の代わりに化学的に誘導体化した残基を使用することも含むことができることが十分に理解されるであろう。
「化学的な誘導体」は、官能側基の反応によって化学的に誘導体化された1以上の残基を有する主題にポリペプチドを指す。そのような誘導体化された分子には、たとえば、遊離のアミノ基が誘導体化されてアミン塩酸塩、p−トルエンスルホニル基、カルボベンジル基、t−ブトキシカルボニル基、クロロアセチル基、又はホルミル基を形成する分子が挙げられる。遊離のカルボキシル基は誘導体化されて塩、メチルエステル及びエチルエステル、又は他の種類のエステル又はヒドラジドを形成し得る。遊離のヒドロキシル基は誘導体化されてO−アシル又はO−アルキル誘導体を形成し得る。ヒスチジンのイミダゾール窒素は誘導体化されてN−im−ベンゼンヒスチジンを形成し得る。また、化学的な誘導体として包含されるのは、20の標準アミノ酸の1以上の天然に存在するアミノ酸誘導体を含有するポリペプチドである。4−ヒドロキシプロリンはプロリンについて置換されてもよく;5−ヒドロキシリジンはリジンにについて置換されてもよく;3−メチルヒスチジンはヒスチジンについて置換されてもよく;ホモセリンはセリンについて置換されてもよく;オルニチンはリジンについて置換されてもよい。本明細書で記載されるポリペプチドはまた、必要な活性が維持される限り、その配列が本明細書で示されるポリペプチドの配列に対する1以上の付加及び/又は欠失又は残基を有する任意のポリペプチドも含む。
さらに他の実施形態では、治療剤は、LARファミリーのホスファターゼによって活性化される下流のタンパク質の模倣体又は競合阻害剤であることができる。幾つかの下流のタンパク質及び経路は、ホスファターゼ活性の外側のLARファミリーの下流で作用することが示されている。これらのうちで、カスキン(Ckn)及びLAR相互作用タンパク質(リプリン−α)はシナプス形成及び軸索ガイダンスの双方にて役割を有する。
酵母2ハイブリッド相互作用系にて、mCkn1はmLAR及びmPTPRδを直接結合し、mCkn2はmLAR及びmPTPσを直接結合する。LARファミリーのホスファターゼとのCknの相互作用は、表現型を構成する2つのステライルαモチーフ(SAM)ドメインを含有する領域にマッピングされた。第1のSAMドメインはCknファミリーメンバーの間で保存されている。
従って、一部の実施形態では、治療剤は、LARファミリーのホスファターゼ/Ckn結合を阻害し、下流のLARファミリーのシグナル伝達を緩和するCknのペプチド模倣体又は競合阻害剤であることができる。ペプチドは、mCkn1及びmCkn2の部分の約10〜約30の連続するアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%相同であるアミノ酸配列を有することができる。mCkn1及びmCkn2の部分の約10〜約30の連続するアミノ酸配列に対して実質的に相同であるアミノ酸配列を有するペプチドの例は、配列番号38、配列番号39及び配列番号40である。
他の実施形態では、治療剤は、LARファミリーのホスファターゼ/リプリン−αの結合を阻害し、下流のLARファミリーのシグナル伝達を緩和するリプリン−αのペプチド模倣体又は競合阻害剤であることができる。リプリンのファミリーメンバーはシナプスの発達及び維持にて決定的な役割を担う。リプリン−αはLARホスファターゼの下流でのシグナル伝達にて作用し得る。酵母2ハイブリッド相互作用スクリーニングは、LARホスファターゼのファミリーメンバーの結合領域としてのリプリン−αファミリーメンバーの第1のSAMドメインを暗示している。ペプチドは、リプリン−αの一部の約10〜約30の連続するアミノ酸に対して実質的に相同であるアミノ酸配列を有することができる。リプリン−αの一部の約10〜約30の連続するアミノ酸に対して実質的に相同であるアミノ酸配列を有するペプチドの例は配列番号41である。
くさび形ドメインに結合する又はそれと複合体形成する上述の治療用ペプチドと同様に、mCkn1、mCkn2又はリプリン−αの模倣体又は競合阻害剤である治療用ポリペプチドは、そのような変更がその使用で特定の利点を提供する種々の変更、置換、挿入及び欠失の対象とすることができる。たとえば、治療用ポリペプチドは、アミド、タンパク質との抱合体、環化ポリペプチド、重合ポリペプチド、類似体、断片、化学的に修飾されたポリペプチド、及び類似の誘導体を含む種々の形態のポリペプチド誘導体のいずれかであることができる。
本明細書で記載される治療用ペプチドの1以上のペプチドを、たとえば、当該技術で既知である翻訳後プロセッシング及び/又は化学修飾法のような自然過程によって修飾することができる。修飾は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖、及びアミノ末端又はカルボキシ末端を含むペプチドに存在し得る。同じ種類の修飾が所与のペプチドの幾つかの部位にて同じ又は異なる程度で存在し得ることが十分に理解されるであろう。修飾は、たとえば、限定しないで、アセチル化、アシル化、アセトミドメチル(Acm)基の付加、ADP−リボシル化、アミド化、フラビンへの共有結合、ヘム部分への共有結合、ヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質又は脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合の形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、γ−カルボキシル化、グリコシル化、ヒドロキシル化、ヨード化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク分解処理、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アルギニル化及びユビキチン化のような転移RNAが介在するタンパク質へのアミノ酸の付加を含む(参照には、たとえば、Protein-structure and molecular properties, 2nd Ed., T. E. Creighton, W. H. Freeman and Company, New-York, 1993を参照のこと)。
本明細書で記載されるペプチド及び/又はタンパク質は、たとえば、生物学的に活性のある突然変異体、変異体、断片、キメラ及び類似体を含んでもよく;1以上のアミノ酸の切り詰めを有するアミノ酸配列を包含し、その際、切り詰めは、アミノ末端(N末端)、カルボキシ末端(C末端)、又はタンパク質の内部を起源とし得る。本発明の類似体には1以上のアミノ酸の挿入又は置換が関与する。変異体、突然変異体、断片、キメラ及び類似体はLARファミリーのホスファターゼの阻害剤として機能し得る(本発明の例に拘束されることなく)。
本明細書で記載される治療用ポリペプチドは、当業者に既知の方法によって調製され得る。ペプチド及び/又はタンパク質は組換えDNAを用いて調製され得る。たとえば、調製の1つには、細胞の中でペプチド及び/又はタンパク質の発現を提供する条件下で宿主(細菌又は真核細胞)を培養することが含まれ得る。
ポリペプチドの精製は、アフィニティ法、イオン交換クロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、疎水性、又はタンパク質精製に通常使用される他の精製法によって行われ得る。精製工程は非変性条件下で実施することができる。一方、変性工程が必要であるならば、当該技術で既知の技法を用いてタンパク質が復元され得る。
一部の実施形態では、本明細書で記載される治療用ペプチドは、ポリペプチドが他のポリペプチド、タンパク質、検出可能な部分、標識、固体マトリクス又はキャリアに好都合に連結され得る及び/又は取り付けられ得るリンカーを提供する目的でポリペプチドのいずれかの末端で付加され得る追加の残基を含むことができる。
アミノ酸残基のリンカーは普通、少なくとも残基1つであり、40以上の残基であることができ、1〜10の残基であることがさらに多い。連結に使用される典型的なアミノ酸残基は、グリシン、チロシン、システイン、リジン、グルタミン酸及びアスパラギン酸等である。加えて、主題のポリペプチドは、末端−NHアシル化、たとえば、アセチル化によって又は末端カルボキシルアミド化、たとえば、アンモニア、メチルアミン等の末端修飾によるチオグリコール酸のアミド化によって修飾されている配列によって異なることができる。末端修飾は、周知のように、プロテイナーゼ消化による感受性を低減するのに有用であるので、プロテアーゼが存在し得る溶液、特に生体液におけるポリペプチドの半減期を延ばすように役立つ。この点で、ポリペプチドの環化も有用な末端修飾であり、環化によって形成される安定な構造のために及び本明細書で記載されるようなそのような環状ペプチドで認められる生物活性の視点で特に好ましい。
一部の実施形態では、リンカーは、治療用ペプチドを他のポリペプチド、タンパク質及び/又は検出可能な部分のような分子、標識、固体マトリクス又はキャリアに連結する柔軟性のペプチドリンカーであることができる。柔軟性のペプチドリンカーは長さ約20以下のアミノ酸であることができる。たとえば、ペプチドリンカーは約12以下のアミノ酸残基、たとえば、3、4、5、6、7、8、9、10、11及び12を含有することができる。場合によっては、ペプチドリンカーは2以上の以下のアミノ酸:グリシン、セリン、アラニン及びスレオニンを含む。
一部の実施形態では、本明細書で記載される治療用ペプチドを含む治療剤は、治療用ペプチドに連結される少なくとも輸送用のサブドメイン又は部分(すなわち、輸送部分)を含む抱合タンパク質又は薬剤送達構築物の形態で提供され得る。輸送部分は、治療用ポリペプチドの哺乳類(すなわち、ヒト又は動物)の組織又は細胞(たとえば、神経細胞)への取り込みを促進することができる。輸送部分は治療用ポリペプチドに共有結合することができる。共有結合にはペプチド結合及び不安定結合(たとえば、容易に切断可能な又は内部の標的細胞環境で化学変化にさらされる結合)が挙げられ得る。さらに、輸送部分は治療用ポリペプチドに架橋する(たとえば、化学架橋、UV架橋)ことができる。輸送部分は本明細書で記載される連結するポリペプチドと共に治療用ポリペプチドに連結することもできる。
輸送部分は治療用ポリペプチドにて1回を超えて反復することができる。輸送部分の反復は所望の細胞によるペプチド及び/又はタンパク質の取り込みに影響し得る(たとえば、増やす)。輸送部分は、治療用ペプチドのアミノ末端又はそのカルボキシ末端の領域のいずれか、又は双方の領域にも位置し得る。
一実施形態では、輸送部分は、いったん輸送部分に連結されると治療用ポリペプチドが受容体に無関係なメカニズムによって細胞に浸透することを可能にする少なくとも1つの輸送用ペプチドを含むことができる。一例では、輸送用ペプチドは、Tatが介在する送達配列と、配列番号9〜33及び37〜41の少なくとも1つを含有する合成ペプチドである。これらのペプチドはそれぞれ、配列番号42〜66及び70〜74のアミノ酸配列を有することができる。
既知の輸送用の部分、サブドメイン等の他の例は、たとえば、そのすべてが全体として参照によって本明細書に組み入れられる、カナダ特許文書番号2,301,157(アンテナペディアのホメオドメインを含有する抱合体)、並びに米国特許第5,652,122号、同第5,670,617号、同第5,674,980号、同第5,747,641号、及び同第5,804,604(TatHIVタンパク質;単純性ヘルペスウイルス−1DNA結合タンパク質VP22のアミノ酸;4〜30のヒスチジン反復の長さの範囲のヒスチジンタグ、又は受容体に無関係な方法によって活性のあるカーゴ部分の取り込みを促進することが可能であるその変異誘導体又は類似体を含有する抱合体)に記載されている。
アンテナペディアのホメオドメインの第3αらせんの16アミノ酸の領域は、タンパク質(融合タンパク質として作られた)が細胞膜を横切るのを可能にすることが示されている(PCT国際公開番号WO99/1809及びカナダ特許出願番号2,301,157)。同様に、HIVのTatタンパク質も細胞膜を横切ることができることが示された。
加えて、輸送部分は、活性剤部分(たとえば、細胞内ドメインを含有する断片阻害物質ペプチド)に共有結合された塩基性アミノ酸が豊富な領域を有するポリペプチドを含むことができる。本明細書で使用されるとき、用語「塩基性アミノ酸が豊富な領域」は、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン、グルタミン、リジンのような塩基性アミノ酸の含量が高いタンパク質の領域に関する。「塩基性アミノ酸が豊富な領域」は、たとえば、15%以上の塩基性アミノ酸を有し得る。場合によっては、「塩基性アミノ酸が豊富な領域」は、15%未満の塩基性アミノ酸を有し得るが、依然として輸送剤領域として機能する。他の例では、塩基性アミノ酸領域は30%以上の塩基性アミノ酸を有するであろう。
輸送部分はさらにプロリンが豊富な領域を含み得る。本明細書で使用されるとき、用語、プロリンが豊富な領域は、その配列に5%以上(100%までの)プロリンを伴うポリペプチドの領域を指す。場合によっては、プロリンが豊富な領域は、5%〜15%の間のプロリンを有し得る。さらに、プロリンが豊富な領域は、天然に存在するタンパク質で一般に観察されるものより多いプロリンを含有するポリペプチドの領域を指す。本出願のプロリンが豊富な領域は輸送剤領域として機能することができる。
一実施形態では、本明細書で記載される治療用ペプチドは伝達剤に非共有結合することができる。非共有結合するポリペプチド伝達剤の例は、Chariotタンパク質送達系(すべてその全体が参照によって本明細書に組み入れられる米国特許第6,841,535号、J Biol. Chem. 274(35):24941-24946; and Nature Biotec. 19:1173-1176,を参照のこと)である。
他の実施形態では、治療用ペプチドは遺伝子治療を用いて治療される細胞にて発現することができ、それによってLARファミリーのシグナル伝達を阻害することができる。遺伝子治療は、治療用ペプチドをコードするヌクレオチドを含むベクターを使用することができる。「ベクター」(遺伝子送達又は遺伝子移送用の「媒体」とも呼ばれることがある)は、細胞に送達されるポリヌクレオチドを含む高分子又は分子の複合体を指す。送達されるポリヌクレオチドは遺伝子治療における当該コーディング配列を含み得る。ベクターには、たとえば、ウイルスベクター(たとえば、アデノウイルス(Ad)、アデノ関連ウイルス(AAV)及びレトロウイルス)、リポソーム及び他の脂質含有複合体、及び標的細胞へのポリヌクレオチドの送達に介在することが可能である他の高分子複合体が挙げられる。
ベクターはまた、遺伝子送達及び/又は遺伝子発現をさらに調節する、又は標的細胞に有益な特性を提供する他の成分又は官能基を含むことができる。そのような他の成分には、細胞への結合又はターゲティングに影響を与える成分(細胞型又は組織に特異的な結合に介在する成分を含む);細胞によるベクター核酸の取り込みに影響を与える成分;取り込み後、細胞内でのポリヌクレオチドの局在に影響を与える成分(たとえば、核での局在に介在する剤);及びポリヌクレオチドの発現に影響を与える成分が挙げられる。そのような成分はまた、ベクターによって送達された核酸を取り込み、発現している細胞を選択し、検出するのに使用することができる検出可能な及び/又は選択可能なマーカーのようなマーカーも含み得る。そのような成分は、ベクターの天然の特徴として提供されることができ(たとえば、結合及び取り込みに介在する成分又は官能性を有する特定のウイルスベクターの使用)、又はベクターは修飾されてそのような官能基を提供することができる。
選択可能なマーカーは、陽性、陰性、又は二官能性であることができる。陽性の選択可能なマーカーはマーカーを運ぶ細胞の選択を可能にするが、陰性の選択可能なマーカーはマーカーを運ぶ細胞が選択的に除去されるのを可能にする。二官能性(すなわち、陽性/陰性)のマーカー(たとえば、1992年5月29日に公開されたLupton,S.のWO92/08796;及び1994年12月8日に公開されたLupton,S.のWO94/28143を参照)を含む種々のそのようなマーカー遺伝子が記載されている。そのようなマーカー遺伝子は、遺伝子治療の文脈で有利であることができる制御の追加の基準を提供することができる。多種多様なそのようなベクターが当該技術で既知であり、一般に利用可能である。
本明細書で使用するためのベクターには、本明細書で記載される治療用ペプチドをコードするヌクレオチドを標的細胞に送達することが可能であるウイルスベクター、脂質系ベクター及び他の非ウイルスベクターが挙げられる。ベクターは、標的化されたベクター、特にニューロンに優先的に結合する標的化されたベクターであることができる。本出願で使用するためのベクターには、標的細胞に対して低い毒性を示し、治療上有用な量の治療用ペプチドの細胞特異的な産生を誘導するものが挙げられる。
ウイルスベクターの例は、アデノウイルス(Ad)又はアデノ関連ウイルス(AAV)に由来するものである。ヒト及び非ヒトのウイルスベクター双方を使用することができ、組換えウイルスベクターはヒトでは複製欠損であり得る。ベクターがアデノウイルスである場合、ベクターは治療用ペプチドをコードする遺伝子に操作可能に連結されるプロモータを有するポリヌクレオチドを含むことができ、ヒトでは複製欠損である。
本明細書で使用することができる他のウイルスベクターには単純性ヘルペスウイルス(HSV)に基づくベクターが挙げられる。1以上の前初期遺伝子(IE)を欠失させたHSVベクターは、一般に非毒性であり、潜伏に似た状態で生き残り、効率的な標的細胞への形質導入を提供するので有利である。組換えHSVベクターはおよそ30kbの非相同性の核酸を組み入れることができる。
C型レトロウイルス及びレンチウイルスのようなレトロウイルスも本出願で使用され得る。たとえば、Hu及びPathak,Pharmacol.Rev.52:493−511,2000並びにFongら、Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Syst.17:1−60,2000を参照のこと。MLV系ベクターはウイルス遺伝子の代わりに5kbまでの非相同性(治療用)のDNAを含有し得る。非相同性のDNAは組織特異的なプロモータ及び治療用ペプチドをコードする核酸を含み得る。神経細胞への送達方法では、それは組織特異的な受容体に対するリガンドもコードし得る。
使用され得る追加のレトロウイルスベクターはヒト免疫不全ウイルス(HIV)に基づくベクターを含む複製欠損のレンチウイルス系ベクターである。たとえば、Vigna及びNaldini,J.Gene Med.5:308−316,2000並びにMiyoshiら、J.Virol.72:8150−8157,1998を参照のこと。レンチウイルスベクターは、活発に分裂している細胞及び分裂しない細胞の双方に感染することが可能であるという点で有利である。
本出願で使用するためのレンチウイルスはヒト及び非ヒト(SIVを含む)のレンチウイルスに由来し得る。レンチウイルスベクターの例は、ベクターの増殖に必要とされる核酸配列と同様に治療用ペプチドをコードする核酸に操作可能に連結される組織特異的なプロモータを含む。これら前者はウイルスLTR、プライマー結合部位、ポリプリン配列、att部位及びカプシド形成部位を含み得る。
一部の態様では、レンチウイルスベクターを採用することができる。レンチウイルスは、異なる種類のCNSニューロンに形質導入するのが可能であることが判明しており(Azzouz et al., (2002) J Neurosci. 22: 10302-12)、その大きなクローニング許容量のために一部の実施形態にて使用され得る。
レンチウイルスベクターは任意のレンチウイルスのカプシドにパッケージされ得る。1つの粒子タンパク質を異なるウイルスに由来する別の粒子タンパク質で置き換えることを「シュードタイピング」と呼ぶ。ベクターカプシドは、マウス白血病ウイルス(MLV)又は水泡性口内炎ウイルス(VSV)を含む他のウイルスに由来するウイルスエンベロープを含有し得る。VSVのGタンパク質の使用は高いベクター力価を生じ、ベクターウイルス粒子の高い安定性を生じる。
セムリキ森林熱ウイルス(SFV)及びシンドビスウイルス(SIN)から作製されるもののようなアルファウイルス系ベクターも本出願で使用され得る。アルファウイルスの使用は、Lundstrom,K.,Intervirology、43:247−257,2000及びPerriら、Journal of Virology、74:9802−9807,2000に記載されている。
組換えの複製欠損のアルファウイルスベクターは、高レベルの非相同性(治療用)の遺伝子の発現が可能であり、広い範囲の標的細胞を感染させることができるので有利である。同族の結合相手を発現している標的細胞への選択的な結合を可能にする機能的な非相同性のリガンド又は結合ドメインをそのビリオン表面に表示させることによってアルファウイルスのレプリコンが特定の細胞型に対して標的化され得る。アルファウイルスのレプリコンは潜伏を成立させ得るので、標的細胞における長期の非相同性の核酸の発現を成立させ得る。レプリコンはまた標的細胞にて一時的な非相同性の核酸の発現も示し得る。
本出願の方法に適合するウイルスベクターの多数では、1を超えるプロモータをベクターに導入して1を超える非相同性の遺伝子がベクターによって発現させられるのを可能にすることができる。さらに、ベクターは、標的細胞からの治療用ペプチドの発現を促進するシグナルペプチド又は他の部分をコードする配列を含むことができる。
2つのウイルスベクターの系の有利な特性を組み合わせるために、ハイブリッドウイルスベクターを使用して治療用ペプチドをコードする核酸を標的のニューロン、細胞又は組織に送達し得る。ハイブリッドベクターの構築の標準的な技法は当業者に周知である。そのような技法は、たとえば、Sambrookら、In Molecular Cloning:A laboratory manual.Cold Spring Harbor,N.Y又は組換えDNA技法を議論する多数の実験室マニュアルにて見いだすことができる。AAVとアデノウイルスITRの組み合わせを含有するアデノウイルスのカプシドにおける二本鎖AAVゲノムを用いて細胞に形質導入し得る。別の変異では、AAVベクターが「パワー不足の」、「ヘルパー依存性の」又は「高い許容量」のアデノウイルスベクターに入れられ得る。アデノウイルス/AAVのハイブリッドベクターはLieberら、J.Virol.73:9314−9324,1999にて議論されている。レトロウイルス/アデノウイルスのハイブリッドベクターはZhengら、Nature Biotechnol.18:176‐186,2000にて議論されている。アデノウイルスの中に含有されるレトロウイルスのゲノムは標的細胞のゲノムに統合し、安定な遺伝子発現を達成し得る。
治療用ペプチドの発現及びベクターのクローニングを促進する他のヌクレオチド配列要素がさらに熟考される。たとえば、プロモータの上流のエンハンサ又はコーディング領域の下流のターミネータの存在は、たとえば、発現を促進することができる。
別の実施形態によれば、本明細書で記載される治療用ペプチドをコードするヌクレオチドに組織特異的なプロモータを融合することができる。アデノウイルス構築物の中でそのような組織特異的なプロモータを融合することによって、導入遺伝子の発現は特定の組織に限定される。本出願の組換えアデノウイルスの系を用いて、組織特異的なプロモータによって提供される遺伝子発現の有効性及び特異性の程度を判定することができる。たとえば、血小板由来増殖因子β鎖(PDGF−β)のプロモータのようなニューロン特異的なプロモータ及びベクターは当該技術で周知である。
ウイルスベクターに基づく方法に加えて、非ウイルス性の方法を用いて治療用ペプチドをコードする核酸を標的細胞に導入し得る。遺伝子送達の非ウイルス性の方法の概説は、Nishikawa及びHuang,Human Gene Ther.12:861−870,2001にて提供されている。本出願に係る非ウイルス性の遺伝子送達法の例は、プラスミドDNAを採用して治療用ペプチドをコードする核酸を標的細胞に導入する。プラスミドに基づく遺伝子送達法は当該技術で一般に知られている。
合成の遺伝子導入分子を設計してプラスミドDNAとの多分子凝集体を形成することができる。標的細胞に結合するようにこれらの凝集体を設計することができる。リポポリアミン及びカチオン性脂質を含むカチオン性両親媒性物質を用いて標的細胞への受容体とは独立した核酸導入を提供することができる。
加えて、事前に形成されたカチオン性リポソーム又はカチオン性脂質をプラスミドDNAと混合して細胞に形質移入する複合体を生成し得る。カチオン性脂質の形成に関与する方法は、Felgnerら、Ann.N.Y.Acad.Sci.772:126−139,1995並びにLasic及びTempleton,Adv.Drug Delivery Rev.20:221−266,1996にて概説されている。遺伝子送達については、DNAも両親媒性のカチオン性ペプチドに結合され得る(Fominaya et al., J. Gene Med.2:455‐464, 2000)。
本出願に従って、ウイルスに基づく及びウイルスに基づかない成分を含む方法を使用し得る。たとえば、治療用の遺伝子送達のためのエプスタイン・バーウイルス(EBV)に基づくプラスミドはCuiら、Gene Therapy、8:1508−1513,2001に記載されている。さらに、アデノウイルスに結合させたDNA/リガンド/ポリカチオン性の付加体は、Curielら、Nat.Immun.13:141−164,1994に記載されている。
さらに、エレクトロポレーション法を用いて標的細胞に形質移入することによって治療用ペプチドをコードする核酸を標的細胞に導入することができる。エレクトロポレーション法は周知であり、プラスミドDNA用いた細胞の形質移入を促進するのに使用することができる。
必要に応じて、たとえば、生理食塩水のような薬学上許容可能なキャリアを含有する注射可能な製剤の形態で、治療用ペプチドの発現をコードするベクターを生体内で標的細胞に送達することができる。本出願に従って、他の医薬キャリア、製剤及び調剤を使用することもできる。
標的細胞が、静止ニューロン又は休眠ニューロンのような治療されるニューロンを含む場合、高度に有効な治療を可能にする程度に治療用ペプチドが発現されるのに十分な量での直接注入によってベクターを送達するこができる。ニューロンの末梢に直接又はそのそばにベクターを注入することによって、ベクターの形質移入を予想以上に効果的に標的とすることができ、組換えベクターの損失をできるだけ抑えることができる。この種の注入は、特にCNS損傷の部位にて所望の数の細胞の局所の形質移入を可能にし、それによって遺伝子導入の治療有効性を最大化し、ウイルスタンパク質に対する炎症反応の可能性を最少化する。標的細胞にベクターを投与する他の方法を用いることができ、それは採用される特定のベクターに左右されるであろう。
一時的な発現及び安定した長期的な発現を含めて、標的細胞の中で所望の長さの時間、治療用ペプチドを発現させることができる。本出願の1つの態様では、治療用ペプチドをコードする核酸は、形質移入された細胞の活性及び増殖を誘導するのに有効な治療上の量で定義された長さの時間発現されるであろう。本出願の別の態様では、治療用ペプチドをコードする核酸は、CNS損傷の後、標的とされるニューロンにおける失われた機能を回復するのに有効な治療上の量で定義された長さの時間発現されるであろう。
治療上の量は、治療された動物又はヒトにて医学的に望ましい成績を生じることが可能である量である。医療技術で周知のように、動物又はヒトのいずれか1体に対する投与量は、対象の大きさ、体表面積、年齢、投与される特定の組成物、性別、投与の時間及び経路、全身状態、及び同時に投与される他の薬剤を含む多数の因子に左右される。タンパク質及び核酸の特定の投与量は、以下に記載される実験方法を用いて当業者が容易に決定することができる。
本明細書で記載される治療剤はさらに修飾され得る(たとえば、化学的に修飾される)。そのような修飾を考案して分子の操作及び精製を円滑にし、分子の溶解性を高め、投与を円滑にし、所望の位置を標的とし、半減期を増減し得る。多数のそのような修飾が当該技術で既知であり、技量のある実践者によって応用され得る。
一部の実施形態では、本明細書で記載される治療剤及び治療剤を含む医薬組成物がCNS及び/又はPNSのニューロンに送達され得る。そのようなニューロンは損傷され得る又は病み得る。或いは、そのようなニューロンは健常で、損傷されていないニューロンであり得る。そのようなニューロンは損傷の部位又は損傷に伴う部位に位置し得る。本明細書で記載される剤及び組成物の治療投与、送達/接触の標的とされるニューロンは、ニューロンの伸長が対象にとって有益であると分かると考えられるニューロンであろう。そのような決定は、わずかな日常の実験を介した技量のある実践者の能力の範囲内である。
本明細書で記載される治療剤及び治療用の医薬組成物はまたCNS及び/又はPNSの、たとえば、神経細胞に支えを提供する非ニューロン細胞のような非ニューロン細胞にも送達され得る。そのような細胞には、限定しないで、グリア細胞(たとえば、CNSにおける星状細胞、オリゴ樹状細胞、上衣細胞、放射状グリア細胞;及びPNSにおけるシュワン細胞、衛星グリア細胞、腸管グリア細胞)が挙げられる。
本明細書で開示される治療方法では、治療上有効な量の治療剤が対象に投与される。一実施形態では、治療剤を含む製剤は、損傷が生じた後、神経系への損傷の時刻から約100時間までの期間、たとえば、損傷の時刻から24、12又は6時間以内に、対象に投与される。
一実施形態では、投与は対象の神経系の範囲内で1以上の特定の位置に特異的である。好ましい投与の様式は選択される特定の剤及び特定の標的に応じて変化し得る。
治療剤が対象に送達される場合、たとえば、経口で(たとえば、カプセル、懸濁液又は錠剤で)、全身性に、又は非経口での投与を含む好適な経路によってそれらを投与することができる。非経口投与には、たとえば、筋肉内、静脈内、関節内、動脈内、クモ膜下、皮下又は腹腔内の投与が挙げられる。剤はまた、経口で、経皮で、局所に、吸入によって(たとえば、気管内、鼻内、経口吸入、又は点鼻剤)、又は直腸内に投与することもできる。投与は適応があれば、局所性又は全身性であることができる。
局所投与及び全身性投与の双方が本明細書で熟考される。局所投与の望ましい特徴には、治療剤の有効な局所濃度を達成することと同様に治療剤の全身性投与に由来する有害な副作用を回避することが挙げられる。一実施形態では、対象の脳脊髄液への導入によって治療剤を投与することができる。特定の態様では、治療剤は、脳室、腰椎領域又は大槽に導入することができる。別の態様では、治療剤は、神経又は脊髄の損傷の部位に、疼痛又は神経変性の部位に、又は神経網膜細胞に接触する眼内に導入することができる。
薬学上許容可能な製剤を水性溶媒に懸濁し、従来の皮下注射の針を介して又は注入ポンプを用いて導入することができる。
別の実施形態では、対象のクモ膜下に治療剤を投与することができる。本明細書で使用されるとき、用語「クモ膜下投与」は、穿頭孔又は大槽穿刺又は腰椎穿刺を介した側脳室への注入を含む技法によって対象の脳脊髄液に直接治療剤を送達することを含むように意図される(その内容が参照によって本明細書に組み入れられるLazorthesら、1991,及びOmmaya,1984にて記載された)。用語「腰部領域」は、第3腰椎から第4腰椎(腰部)の間の領域を含むように意図される。用語「大槽」は後頭部にて頭蓋骨が終わり、脊髄が開始する領域を含むように意図される。用語「脳室」は脊髄中心管に続く空洞を含むように意図される。上述の部位のいずれかへの治療剤の投与は治療剤の直接注入又は注入ポンプの使用によって達成することができる。埋め込み可能な又は外部のポンプ又はカテーテルが使用され得る。
注入のために、治療剤は液体溶液、通常、たとえば、ハンクス溶液又はリンガー溶液のような生理的に適合性の緩衝液にて製剤化することができる。加えて、治療剤は固形形態で製剤化され、使用の直前に再溶解又は懸濁され得る。凍結乾燥された形態も含まれる。注入は、たとえば、治療剤のボーラス注射の形態又は連続点滴(たとえば、注入ポンプを用いて)の形態であることができる。
一実施形態では、治療剤は、損傷(中枢神経系のニューロンの軸索の異常な伸長を特徴とする状態を結果的に生じる)が生じたときの普通100時間以内(たとえば、損傷の時間から6、12、24又は100時間以内を含む)に対象の脳への側脳室注射によって投与することができる。注射は、対象の頭蓋骨に作られた穿頭孔を介して行うことができる。別の実施形態では、治療剤は、損傷が生じたときの普通100時間以内(たとえば、損傷の時間から6、12、又は24時間以内を含む)に対象の脳室に外科的に挿入されたシャントを介して投与することができる。たとえば、第3及び第4の小脳室への注射も行うことができるとしても、注射はさらに大きな側脳室に対して行うことができる。さらに別の実施形態では、治療剤は、損傷が生じたときの100時間以内(たとえば、損傷の時間から6、12、又は24時間以内を含む)に対象の大槽又は腰部領域への注射によって投与することができる。
頭蓋内組織への投与の追加の手段には、その後の嗅球への伝達及び脳のさらに近傍部分への移行を伴った嗅覚上皮への塗布が含まれる。そのような投与は、霧状化した又は噴霧化した製剤によって可能である。
別の実施形態では、治療剤は、損傷が生じたときの普通100時間以内(たとえば、損傷の時間から6、12、又は24時間以内を含む)に損傷の部位にて対象に投与することができる。
さらなる実施形態では、本明細書で記載される治療剤の眼科組成物を使用して網膜組織及び視神経頭組織への損傷を防ぐ又は軽減すると同様に眼組織への損傷後の機能的な回復を向上させる。治療され得る眼科症状には、網膜症(糖尿病性網膜症及び後水晶体繊維増殖症を含む)、黄斑変性症、眼科虚血、緑内障が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の方法によって治療される他の状態には、虚血潅流傷害のような眼科組織への傷害に関連する損傷、光化学的傷害、及び眼科手術に関連する傷害、特に光又は手術機器への暴露による網膜又は視神経頭への傷害が挙げられる。眼科組成物はまた、たとえば、眼科手術に続く硝子体注射又は結膜下注射によるような、眼科手術に対する付属物としても使用され得る。治療剤は、一時的な状態の急性の治療に使用されてもよいし、特に変性疾患の場合、慢性的に使用されてもよい。眼科組成物は、予防的に、特に眼科手術又は非侵襲性の眼科処置又は他の種類の手術に先立って、使用されてもよい。
一部の実施形態では、治療剤を対象に長い間投与して最適な軸索の伸長又は発芽を生じ及び/又は軸索退縮を抑制することができる。たとえば、1週間、数週間、1ヵ月以上のような期間にわたる活性化合物の繰り返し投与によって活性化合物との持続した接触を達成することができる。治療剤を投与するのに使用される薬学上許容可能な製剤を製剤化して対象への持続する送達を提供することもできる。たとえば、対象への最初の投与に続いて少なくとも1、2、3又は4週間を含めて製剤は活性化合物を送達し得る。たとえば、本発明に従って治療される対象は少なくとも30日間活性化合物によって治療される(繰り返し投与又は持続送達系の使用のいずれか又は双方によって)。
治療剤の持続送達は、たとえば、長時間にわたる治療剤の連続する治療効果によって明らかにすることができる(たとえば、剤の持続送達は対象におけるCNSニューロンの軸索の連続する伸長によって明らかにすることができる)。或いは、治療剤の持続送達は、長時間にわたって生体内での治療剤の存在を検出することによって明らかにされ得る。
持続送達へのアプローチには、高分子カプセル、製剤を送達するためのミニポンプ、生分解性インプラント又は移植導入遺伝子自己細胞の使用が挙げられる(米国特許第6,214,622号を参照のこと)。埋め込み可能な注入ポンプシステム(INFUSAID pumps(ペンシルベニア州、トワンダ));Zierskiら、1988;Kanoff,1994を参照)及び浸透圧ポンプ(Alza Corporationによって販売)が市販されており、当該技術で既知である。投与の別の様式は、埋め込み可能で外部プログラム可能な注入ポンプを介する。注入ポンプシステム及びリザーバシステムはまた米国特許第5,368,562号及び同第4,731,058号にも記載されている。
治療用ペプチドをコードするベクターは他の型の治療剤に比べてあまり頻繁に投与されないことが多い。たとえば、そのようなベクターの有効量は、約0.01mg/kg〜約5又は10、g/kgを含む範囲であり、毎日、毎週、二週に1回、毎月又はさらに少ない頻度で投与される。
治療用ペプチドを送達する又は発現させる能力は多数の異なる細胞型にて細胞の活性調節を可能にする。治療用ペプチドは、たとえば、心臓の収縮(又は興奮性)を調節する心臓特異的なプロモータを介して心臓細胞にて、脊髄損傷後の運動ニューロンの活性を調節するHB9プロモータを介して脊髄にて発現させることができ、及び、たとえば、パーキンソン病のような変性疾患に冒された脳領域の神経細胞にて発現させて選択した神経細胞の脳領域にて興奮性を制御することができる。
一部の実施形態では、中枢神経系又は末梢神経系に由来するニューロンを生体外で治療剤に接触させて試験管内での軸索の伸長を促進することができる。従って、対象からニューロンを単離し、当該技術で周知の技法を用いて試験管内で増殖させ、次いで治療して軸索の伸長を調節することができる。手短には、好適な基材(たとえば、培養皿)に付着している神経組織の断片からニューロンが移動するのを可能にして、又は機械的に若しくは酵素的に組織をバラバラにしてニューロンの浮遊液を生じることによってニューロンの培養物を得ることができる。たとえば、酵素トリプシン、コラゲナーゼ、エラスターゼ、ヒアルロニダーゼ、DNA分解酵素、プロナーゼ、又はそれらの種々の組み合わせを使用することができる。ニューロン組織を単離し、組織をバラバラにして単離された細胞を得る方法は、Freshney,CULTURE OF ANIMAL CELLS, A MANUAL OF BASIC TECHNIQUE,(第3版、1994)に記載されている。そのような細胞をその後、上述のような量及び時間にて治療剤と接触させることができる。ニューロンにていったん軸索の伸長の調節が達成されると、たとえば、移植によってこれらの細胞を対象に再投与することができる。
対象にて神経再生を促進する剤の能力は、種々の既知の手順及びアッセイのいずれかを用いて評価することができる。たとえば、損傷後、神経の接続性及び/又は機能を再成立させる剤の能力は、組織学的に(ニューロン組織の切片を作り、ニューロンの分岐を見ることによって又は色素の細胞質輸送を示すことによって)判定し得る。神経網膜若しくは視神経に対する損傷後、網膜電図を完全に又は部分的に回復させる、又は損傷された眼における光に対する瞳孔反射を完全に又は部分的に回復させる剤の能力をモニターすることによっても剤を評価し得る。
使用され得る他の試験には、脊髄損傷のヒト対象又は動物モデルにおける神経機能の標準試験(たとえば、標準の反射試験、泌尿器試験、尿流動態試験、深部及び浅部の痛覚試験、後肢の固有感覚放置、歩行試験及び誘発電位試験)が挙げられる。加えて、たとえば、神経有益効果の作出の指標として伝導活動電位を測定することによって、対象にて神経インパルス伝導を測定することができる。
本明細書で使用することができる動物モデルには、ほぼ完全に横に切断した脊髄の残りの無傷な断片の生き残り及び発芽を化合物がどのように上手く高めることができるかを調べる部分処理のラットモデルが挙げられる。従って、候補剤の投与の後、これらの動物は、特定の機能の回復について、たとえば、ラットがその前肢で餌ペレットをどのように上手く操作し得るかについて評価され得る(関連の脊髄は97%切断されている)。
アッセイで使用することができる別の動物モデルには、卒中のラットモデルが挙げられる。これらの動物への剤の投与を用いて、所与の化合物、投与経路又は投与量が、たとえば、試験動物における機能のレベルの上昇、又は機能の再獲得率の上昇、又は機能の保持の程度の上昇のような神経再生効果を提供するかどうかを評価することができる。
卒中後のヒト患者における進行を評価するのに使用される標準の神経評価を用いて対象にて神経有益効果を生じる剤の能力を評価し得る。そのような標準の神経評価は医療技術では日常的であり、たとえば、“Guide to Clinical Neurobiology”Edited by Mohr and Gautier(Churchill Livingstone Inc.1995)に記載されている。
一部の実施形態では、治療剤を用いて、神経系の中枢成分、体細胞成分、自律成分、交感成分及び副交感成分、眼、耳、鼻、口又は他の器官の中での神経感覚組織、同様にニューロンの細胞及び構造に関連するグリア組織を含む神経系の要素に関連する疾患、障害又は状態を治療することができる。神経障害は、たとえば、機械的な損傷若しくは毒性化合物による損傷のようなニューロンへの損傷によって、ニューロンの異常な増殖若しくは発達によって、又はたとえば、ニューロンの活性の下方調節のような誤調節によって引き起こされ得る。一実施形態では、治療剤は損傷した神経、神経損傷の部位又は神経損傷の修復の部位に適用することができる。一部の実施形態では、治療剤は一次神経修復の部位に適用される。神経に対する損傷は、神経の離断(神経断裂症)と同等であり得、その際、神経は部分的に又は完全に断ち切られ、又は小さな領域が損傷され、外科的に取り除かれる。
神経障害は、たとえば、感覚機能(体内及び環境外の変化を感知する能力);統合機能(変化を解釈する能力)及び運動能力(筋肉の収縮又は顆粒の分泌のような作用を開始することによって解釈に応答する能力)のような神経系の機能に有害に影響を及ぼすことができる。
神経障害の例には、末梢神経又は頭蓋神経、脊髄又は脳、頭蓋神経に対する外傷性又は毒性の傷害、外傷性の脳損傷、卒中、脳動脈瘤、及び脊髄損傷が挙げられる。他の神経障害には、たとえば、アルツハイマー病、アルツハイマー病に関連する認知症(たとえば、ピック病)、パーキンソン病、及び他のびまん性レビー小体病、老人性認知症、ハンチントン病、ジル・ド・ラ・トゥレット症候群、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、遺伝性運動感覚神経障害(シャルコー・マリー・トゥース病)、糖尿病性神経症、進行性核上麻痺、癲癇及びクロイツフェルト・ヤコブ病が挙げられる。自律神経機能障害には高血圧症及び睡眠障害が挙げられる。
本明細書で記載される治療剤によって治療されるのはまた、たとえば、鬱病、統合失調症、統合失調症感情障害、コルサコフ精神病、躁病、不安性障害又は恐怖性障害、学習又は記憶の障害(たとえば、記憶喪失及び加齢性記憶喪失)、多動症候群、気分変調性障害、大鬱病性障害、躁病、強迫神経症、神経活性物質使用障害、不安症、病的恐怖症、パニック障害、双極性気分障害、心因性疼痛症候群、及び摂食障害のような神経精神障害である。神経障害の他の例には、感染性疾患(たとえば、髄膜炎、種々の病因による高熱、HIV、梅毒、又はポリオ後症候群)による神経系の損傷、及び電気(電気又は照明との接触、電導性の精神医学療法の合併症を含む)による神経系への損傷が挙げられる。眼科症状に関連する神経障害には、網膜及び視神経の損傷、緑内障、及び加齢性黄斑変性症が挙げられる。
発達している脳は、妊娠中と同様に乳児及び幼児の多くの段階で中枢神経系を発達させることにおいて神経毒性についての標的であり、神経の出生時欠損を持つ者を含めて、そのような治療を必要とする子宮における胚又は胎児、未熟な乳児、又は幼児における神経欠損を防ぐ又は治療するのに本発明の方法が利用され得る。さらなる神経障害には、たとえば、HARRISON’S PRINCIPLES OF INTERNAL MEDICINE (Braunwaldら、McGraw−Hill,2001)及びin the AMERICAN PSYCHIATRIC ASSOCIATION’S DIAGNOSTIC AND STATISTICAL MANUAL OF MENTAL DISORDERS DSM−IV(American Psychiatric Press,2000)に列記されたものが挙げられる。
本明細書で記載される治療剤を、神経損傷に関連する医学的状態を治療する方法で使用することができる。医学的状態は、任意の運動障害、癲癇、脳血管疾患、自己免疫疾患、睡眠障害、自律神経障害、膀胱障害、異常な代謝状態、筋肉系の障害、感染性及び寄生性の疾患腫瘍、内分泌障害、栄養性疾患及び代謝性疾患、免疫疾患、血液及び血液形成臓器の疾患、精神障害、神経系の疾患、感覚器官の疾患、循環器系の疾患、呼吸器系の疾患、消化器系の疾患、尿生殖器系の疾患、皮膚及び皮下組織の疾患、筋骨格系及び結合組織の疾患、先天異常、周産期を起源とする特定の状態、及び症状、兆候及び定義されていない状態を指すことができる。
治療可能な脳血管障害は動脈瘤、卒中、不整脈、心筋梗塞、虚血潅流傷害、及び脳出血を含むが、これらに限定されない状態が原因で生じ得る。
治療可能な自己免疫疾患には多発性硬化症が挙げられるが、これらに限定されない。
本出願によって治療可能な睡眠障害は、睡眠時無呼吸及び睡眠時随伴症を含むが、これらに限定されない状態が原因で生じ得る。
本出願によって治療可能な自律神経障害は、消化器運動障害、嘔吐、吐き気、下痢、慢性{まんせい}の吃逆、胃食道逆流疾患、及び胃酸の過剰分泌を含むが、これらに限定されない消化器障害、自律神経不全症、過剰なエピフォレシス、過剰な鼻漏、及び心臓の脈拍不全及び不整脈、高血圧症及び頸動脈洞疾患を含むが、これらに限定されない循環器疾患を含むが、これらに限定されない状態が原因で生じ得る。
本出願によって治療可能な膀胱障害は、脊髄損傷及び痙性膀胱又は弛緩性膀胱を含むが、これらに限定されない状態が原因で生じ得る。
本出願によって治療可能な異常な代謝状態は、甲状腺機能亢進又は甲状腺機能低下を含むが、これらに限定されない状態が原因で生じ得る。本出願によって治療可能な筋肉系の障害は、筋ジストロフィ、及び上気道及び顔面の痙攣を含むことができるが、これらに限定されない。
治療剤を用いて、前兆を伴った片頭痛、前兆を伴わない片頭痛、月経性片頭痛、片頭痛の変形、異型片頭痛、合併症の片頭痛、片麻痺性片頭痛、変換片頭痛、慢性毎日片頭痛、一時的な緊張性頭痛、鎮痛性の反跳性頭痛、一時的な群発性頭痛、慢性の群発性頭痛、群発性の変形、慢性発作性片頭痛、持続性片側頭痛、外傷後頭痛、外傷後首痛、頭部及び顔面を含むヘルペス後神経痛、骨粗鬆症に付随する脊髄骨折に由来する疼痛、脊髄における関節炎の疼痛、脳血管障害及び卒中に関連する疼痛、血管障害による頭痛、反射性交感神経ジストロフィ、前頚部痛(関節炎、体位関連、転移を含む筋肉、椎間板起因の又は変性性の原因を含むが、これらに限定されない種々の原因により得る)、舌痛、頸動脈圧痛、輪状軟骨痛、中耳病変による耳痛、胃痛、坐骨神経痛、上顎神経痛、喉頭痛、首筋肉の筋肉痛、三叉神経痛(疼痛性チックとも呼ばれることがある)、腰椎穿刺後の頭痛、低圧脳脊髄液による頭痛、顎関節障害、異型顔面痛、繊毛神経痛、傍三叉神経痛(リーダーズ症候群とも呼ばれることがある)、錐体神経痛、イーグル症候群、特発性頭蓋内圧亢進症、口腔顔面痛、頭部、頚部及び肩を含む筋肋膜性疼痛症候群、群発頭痛、頚部頭痛、傍三叉神経麻痺、SPG神経痛(下半片頭痛、下顔面痛症候群、スルダー神経痛、及びスルダー症候群とも呼ばれることがある)、頸動脈圧痛、ビディアン神経痛、灼熱痛及び/又は上記の組み合わせを含むが、これらに限定されない状態が原因で生じる神経障害痛を治療することもできる。
本明細書で使用されるとき、用語「頭痛」は、片頭痛、緊張性頭痛、群発性頭痛、三叉神経痛、二次性頭痛、緊張型頭痛、慢性の及び一時的な頭痛、薬剤誘発性頭痛/反跳性頭痛、慢性発作性片頭痛、持続性片側頭痛、外傷後頭痛、ヘルペス後頭痛、血管性頭痛、反射性交感神経性ジストロフィ関連の頭痛、頚部痛頭痛、内頸動脈瘤頭痛、坐骨神経痛頭痛、三叉神経痛頭痛、後頭部頭痛、上顎頭痛、睡毛性頭痛、傍三叉神経痛頭痛、錐体頭痛、スルダー頭痛、ビディアン頭痛、低CSF圧頭痛、TMJ頭痛、灼熱痛頭痛、肋膜頭痛、原発性頭痛すべて(たとえば、原発性の突き刺すような頭痛、原発性の咳頭痛、原発性の労作性頭痛、性的活動に関連する原発性の頭痛、睡眠時頭痛、及び新しい毎日持続する頭痛)、三叉神経・自律神経性頭痛(たとえば、一時的な発作性片側頭痛、SUNCT、考えられるTACすべて及びSUNA)、慢性毎日頭痛、後頭部神経痛、異型顔面痛、神経障害性の三叉神経痛、及び他の型の頭痛を指すことができる。
さらに他の実施形態では、治療剤を用いて幹細胞又は前駆細胞の生存性、可塑性及び/又は増殖性を促進することができる。幹細胞は、神経の幹細胞又は前駆細胞を含むLARホスファターゼ受容体を発現する幹細胞を含むことができる。生体外、試験管内又は生体内にて治療剤を幹細胞又は前駆細胞に投与することができる。生体外又は試験管内にて幹細胞又は前駆細胞に投与する場合、治療適用のために幹細胞又は前駆細胞を対象に移植することができる。
神経の幹細胞/前駆細胞については、再生医学の分野で一般に使用される所望の領域に神経の幹細胞/前駆細胞を移植する方法が細胞又は領域への治療剤の投与と併せて採用され得る。さらに具体的には、たとえば、神経の幹細胞/前駆細胞を治療剤と共にリン酸緩衝化生理食塩水に浮遊させ、得られた細胞浮遊液をその領域に加える/注射することによって当該領域に神経の幹細胞/前駆細胞を移植する方法を例示することができる。
他の実施形態では、本明細書で記載される治療剤を神経移植片に適用することができる。移植片にはヒト又は動物の中に移植することを対象とする組織を挙げることができる。たとえば、自己移植片、同系移植片、同種移植片及び異種移植片のような種々の型の移植片が主題の発明の範囲内で熟考される。移植片の大きさ(たとえば、長さ及び直径)は重要ではない。たとえば、神経移植片の長さは約1センチメートルから約10センチメートル又は約10センチメートルを超え得る。神経移植片の直径は必要に応じて損傷した神経又は神経の一部の直径に合わせることができる。神経移植片は、レシピエントの神経の長さに沿って又は遠位末端を置き換えるために、すなわち、末端間移植のために隙間を架橋する構造的に完全な神経の断片であることができる。或いは、神経移植片は、一部の構造的破壊を有するが、その物理的連続性を保持する裂けた神経を再構築するように意図される部分的な神経断片又は偏心した形状の断片(たとえば、神経フラップ)であることができる。
治療剤が神経移植片に適用される場合、移植片全体が処理される。治療剤は神経移植片全体に一括で適用することができる。一括処理を生の(新鮮な)又は予め凍結された神経移植片に適用することができる。移植の前、途中又は後に治療剤を神経移植片に適用することもできる。たとえば、損傷した神経の基部に接合される片端又は両端のような移植片の任意の部分に治療剤を適用することができる。治療剤を損傷した神経に適用するのであれば、たとえば、損傷部位にて又は損傷部位に隣接して、損傷した神経の修復を促進する損傷した神経の領域に治療剤を適用することができる。
神経移植片への適用のために治療剤を培養培地に入れることができる。培養培地は、定義されない培地、定義された培地、又はたとえば、血清で補完した定義された培地であることができる。本明細書で記載される実施形態は移植に先立って神経移植片を保存するための保存溶液も含む。保存溶液は培養培地と少なくとも1つの治療剤を含有する。保存溶液は以下に記載する増殖因子のような他の生物学的に活性のある剤も含むことができる。
他の実施形態では、C2の片側切断のような脊髄損傷は、片側切断と同側の、しかし、脊髄病変に対して遠位での細胞外マトリクス及び神経細胞周囲網の中にて横隔膜運動核のレベルで阻害性プロテオグリカンの上昇を招くことが知られている。参照によって本明細書に組み入れられる米国特許出願10/754,102で議論されたように、コンドロイチナーゼABC(chABC)による処理は強く阻害するこれらマトリクス分子を分解する。
治療剤の投与と併用してPNNを取り囲む運動ニューロンにおいて阻害性細胞外マトリクスを酵素的に(コンドロイチナーゼ(chABC)を介して)修飾することは残りの神経繊維の発芽能及び機能的影響を最大化することができることが本明細書で熟考される。ニューロン自体の生理的な出力を高めることと組み合わせてはるかに多い繊維の総発芽を増強する及び/又はもたらすことは脊髄損傷を改善するように相乗的に作用することがさらに熟考される。従って、別の実施形態では、対象は本明細書で記載される治療剤に加えてコンドロイチナーゼABCを投与されて単独で使用される治療のそれぞれよりもさらに増強された回復をもたらすことができる。一部の実施形態では、CNS病変の近傍へのChABCのボーラス注射が対象における運動機能を改善することができる。
本明細書で記載される方法はさらに、再生阻害物質を遮断する剤、たとえば、神経生成のミエリンに由来する遮断を阻害する化合物と共に細胞を投与すること又はそれに細胞を接触させることを含むことができる。ニューロンの伸長(たとえば、CNS損傷部位での再生の)の既知の阻害物質は、ミエリン−由来の阻害物質(たとえば、Nogo−A、MAG、OMgp、EhprinB3、Sema4D及びSema5A)、星状細胞由来の阻害物質(たとえば、CSPG、KSPG、EphrinB2及びSlit)、線維芽細胞由来の阻害物質(たとえば、Sema3A)である。第2の剤はこれら阻害物質のいずれかに対する拮抗剤であり得る。一実施形態では、細胞はさらに1以上のそのような剤に接触させられる。一実施形態では、剤は神経再生のミエリン阻害物質(たとえば、ミエリン関連の糖たんぱく質)MAG)、Nogo、オリゴ樹状細胞ミエリン糖たんぱく質(OMgp))を阻害する。MAGの阻害物質は米国特許第5,932,542号にて開示されている。Nogoの阻害物質は米国特許出願公開番号2009/215691にて開示されている。OMgpの阻害物質は米国特許出願公開番号2008/188411にて開示されている。細胞を、PTPσとのCSPGの相互作用を阻害する剤の前に、後に、及び/又はと同時にこの剤に接触させることができる。
一部の実施形態では、ニューロンの増殖経路(たとえば、CNS)を活性化する剤に細胞を接触させることもできる。一部の剤には、Liら、23、J.Neurosci.7830(2003);Chenら、99、PNAS、1931(2002);及びBenowitzら、273、J.Biol.Chem.29626(1998)に記載されたようなイノシン、マンノース、グロース又はグルコース−6−リン酸のような神経栄養因子が挙げられるが、これらに限定されない。TGF#946及びYinら、23、J.Neurosci.2284(2003)に記載されたようなオンコモジュリンも剤である。加えて、BDNF、NGF、NT−3、CNTF、LIF、及びGDNFのようなポリペプチド増殖因子も使用することができる。一実施形態では、ニューロンの伸長を刺激する剤を含む方法はさらに、細胞内cAMP(たとえば、cAMP)の濃度を高めるcAMP調節剤及び/又はポリアミン(Cai et al., 35 Neuron 711 (2002))にニューロン(たとえば、CNS)を接触させることを含む。たとえば、成熟ラットの神経節細胞のマンノースに応答する能力はcAMPの上昇を必要とする(Li et. al., 2003)。
特許請求の範囲の範囲を限定することを意図するものではない以下の実施例によって本発明をさらに説明する。
実施例1
この実施例は、CSPGへの長期の暴露は成長円錐を崩壊させ、安定化させ、過剰接着させることを示す。この実施例では、CSPGを測定するのに使用したスポットアッセイが成熟感覚ニューロンの安定化を誘導した。
方法
成熟メスラットの感覚後根神経節(DRG)ニューロンを入手し、以前記載されたようにコンドロイチン硫酸プロテオグリカンアグレカンの勾配上で増殖させた。ガラス底のデルタTコマ撮りディッシュをポリ−L−リジン(PLL)でコーティングし、室温で一晩インキュベートした。カルシウム及びマグネシウムを含まないハンクス平衡塩溶液(HBSS)に2mg/mlのアグレカンを溶解することによってスポットを創った。8つの2μlのドットを各ディッシュの半分に置き、たっぷりの時間を与えてガラス上で乾燥させた。最終的に10μg/mlのラミニンで37℃にて3時間ディッシュをコーティングした。インキュベートの後、Glutamax、Penn/strep及びB27で補完した神経基礎A培地にて各ディッデュに6000の成熟解離DRGニューロンを加えた。細胞を4〜6日間増殖させた。
コマ撮りの開始の直前に、デルタTディッシュをガラス製のカバースリップで封止した。物体及び試料台を温めて細胞を37℃で保ちながら、100倍の顕微鏡コマ撮りを行った。30秒ごとに画像を得て、一緒にとじてコマ撮り映画を創った。成長円錐及び糸状仮足の動態を追跡し、Metamorphによって手動で定量した。
結果
図1及び図2(A〜D)は、CSPGアグレカンの勾配に暴露された成熟感覚ニューロンがスポットの縁の特定の領域で安定化し、基材に過剰に付着することが、成長円錐の形成、糸状仮足の伸長及び運動性の欠如をもたらすことを示す。調べた24の成長円錐のうち22(92パーセント)が試験管内での4〜6日間で定位置で動けなくなり、運動性をなくした。
実施例2
この実施例は、LARの発現が運動性の円錐よりも安定化された成長円錐で高いことを示す。この実施例では、顕微鏡コマ撮りで使用した技法をわずかに変えて、ガラス製のカバースリップ上でスポットアッセイを行った。PLL処理の後、カバースリップを乾燥させ、少量のニトロセルロースをコーティングしてスポット形成に必要な付着相互作用を高めた。ニトロセルロースの乾燥後、HBSSに溶解した700μg/mlのアグレカン、5μg/mlのラミニンを用いて各カバースリップ(各4つ組にて1つ)上で4つのスポットを作った。乾燥の後、37℃にて3時間5μg/mlのラミニンでカバースリップをコーティングした。Glutamax、Penn/strep及びB27で補完した神経基礎A培地にて各カバースリップに2,000の分離した成熟後根神経節ニューロンを加えた。加えて、プレートに播く時間で必要とされる濃度にてペプチドを加えた。細胞を5日間増殖させた後、4%パラホルムアルデヒドで固定した。
スライドを固定し、ヤギ抗PTPσ(1:100、R&D Systems)及びマウス抗B3チューブリン(1:500、Invitrogen)で染色した。軸索及び成長円錐を100倍で撮影した。各異栄養性及び非異栄養性のニューロンについてImageJ(N=40)にて成長円錐及び軸索区分におけるPTPσの密度を解析した。
図3は、PTPσの密度がラミニン上の運動性の成長円錐に比べて異栄養性で安定化された成長円錐で有意に濃縮されたことを示す。
実施例3
図4にて模式的に説明するように、ホスファターゼの白血球共通抗原関連(LAR)ファミリーは3つのメンバー:LAR自体、受容体タンパク質チロシンホスファターゼシグマ(RPTPσ)及び受容体タンパク質チロシンホスファターゼデルタ(RPTPδ)から成る。最近の研究は、神経の成長、可塑性及び再生に対して高度に阻害性である分子であるコンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPG)の糖側鎖とLAR又はRPTPσとの間の結合相互作用を示している。さらに、結晶学及び配列解析が3つファミリーメンバーすべてが正確に同一の結合ドメイン及び結合ポケットを含有することを示していることは、RPTPδもCSPGの機能的受容体であり得る証拠を提供している。構造解析及び配列解析は、LARファミリーのメンバーすべてが、同種/異種の受容体相互作用に介在する第1の細胞内触媒ドメインにてくさび形のらせん/ループ/らせんモチーフを含有することを明らかにした。細胞質に局在するTAT配列にタグとして付けられたこのくさび形ドメインのペプチド模倣体を用いて、神経栄養因子のシグナル伝達のパラダイムにてLAR活性を上手く消滅させた。我々は、NIHのBLASTを利用してRPTPσ及びRPTPδのオーソロガス配列を特定し、各標的についてくさび形ドメインのペプチドを設計した。ペプチドは、新しく作られた細胞内LAR遮断ペプチド(ILP)、細胞内シグマ遮断ペプチド(ISP)及び細胞内デルタ遮断ペプチド(IDP)であった。興味深いことに、このドメインが高等脊椎動物で高度に保存されているということは、機能的に重要な領域であることを示している。
ラット及びマウスのPTPσのくさび形:DMAEHMERLKANDSLKLSQEYESI(配列番号20及び21)
ヒトのPTPσのくさび形:DMAETMERLKANDSLKLSQEYESI(配列番号33)
ペプチドはタグとしてHIV−TATに抱合されて機能遮断ペプチドを創る。
HIV−TAT
NH GRKKRRQRRRCDMAEHMERLKANDSLKLSQEYESI−NH PTPσマウス/ラット(配列番号53)
NH GRKKRRQRRRCDMAETMERLKANDSLKLSQEYESI−NHPTPσヒト(配列番号54)
NH GRKKRRQRRRCDLADNIERLKANDGLKFSQEYESI−NH LAR(配列番号55)
NH GRKKRRQRRRCELADHIERLKANDNLKFSQEYESI−NHPTPデルタ(配列番号56)
NH GRKKRRQRRRCIREDDSLMLYALAQEKKESNMHES−NH混合したシグマ(配列番号57)
これらのペプチドはGenscriptから注文され、水に溶解し、−80℃で長期保存した。ニューロンをプレートに播くときにペプチドを培地を加えた。
試験管内で5日後、細胞を固定し、マウス抗Bチューブリンで染色した(緑色)。勾配を完全に橋渡しする突起の数を数え、各個々のスポットにおける神経細胞体の数に対して基準化した。
結果
図5〜7は、PTPσ(ISP)のくさび形ドメインのペプチドがCSPGの勾配を横断する突起をニューロンが伸ばすのを可能にすることを示す。処理は用量依存性であり、最適な横断は2.5μmだった。加えて、LARペプチド(ILP)もニューロンがCSPGを横断するのを可能にした(図6)。溶媒対照もごちゃ混ぜにしたISP/TATも勾配を横切るニューロンの伸長を可能にしなかった。コマ撮りにて、ISPによる処理が軸索の安定化及び過剰な付着を防いだということは、成長円錐が糸状仮足を伸ばすのを可能にし、運動性をそのままにするのを可能にする。解析した成長円錐の65%は、対照条件における8%とは対照的に試験管内での4〜6日で依然として運動性だった。
実施例4
この実施例は、実施例5〜8で使用される脊髄損傷(SCI)アッセイのために成熟メス、スプラーグ・ドーリー系ラットにおいてInfinite Horizon装置によって中程度/重度の打撲により脊髄損傷を生成する方法を記載する。手短には、ケタミン/キシラジンのカクテルによってラットを深く麻酔した。麻酔下で直ちに、背部を剃毛し、ヨウ素とエタノールで消毒した。背面から入って、皮膚切開により7〜10番目の腰部の椎骨を露出させ、第8及び9分節で椎弓切除を行って無傷の脊髄を露出した。打撲衝撃に先立って脊柱及び脊髄を定位の枠に固定した。最終的に、ラットは滞留時間なしで正中に合わせた250kdのInfinite Horizonによる挫傷を受けた。筋肉を縫合し、皮膚を閉じた後、動物を37℃のホットパッドに置き、手術から覚醒すると自由に餌と水を与えた。疼痛をモニターし、苦痛のある動物には注射部位にて低用量のマルカインを与えた。生理食塩水及びゲンタマイシン(抗生剤)を術後5日間与えて膀胱感染を防いだ。この実験は最初から最後まで3回行った。N=15、ISP;N=11、溶媒;N=6、ILP
動物を無作為に3つの群:溶媒対照、ISP又はILPに分けた。凍結乾燥したISP又はILPを先ず2.5mMの濃度で滅菌水に溶解した。各動物について個々の処理を行うために、滅菌生理食塩水中5%DMSOの溶媒溶液にて5μMの濃度にペプチドをさらに希釈した。25mlの各処理(ILP、ISP又は溶媒)を50本の個々のエッペンドルフチューブに分注し、各500μl含有した。薬剤を−20℃で保存し、使用直前に融解した。損傷後1日目から開始して7週間続けて、各動物は溶媒、5μMのISP又は5μMのILPのいずれかの皮下投与を毎日病変上の背部にて受けた(49回の処理、11μg/ラット/日)。
実施例5
この実施例は、溶媒処理したSCI動物及びLARペプチド処理したSCI動物のSCI後の自発運動についてのバッソ・ビーティ・ブレスナハンの尺度に従った後肢の動き及び自発運動パターンを示す。
方法
動物を3分間卓上で自由にうろつかせる一方で、その後肢の動き及び自発運動パターンがSCI後の自発運動についてのバッソ・ビーティ・ブレスナハンの尺度(Basso et al, 1995))に従って盲検化した観察者によってスコア化された。損傷後、1、4、7日目、次いでさらに10週間、毎週、行動検査を行った。繰り返し測定の二元分散分析によって統計的解析を行った。
図8及び9は、脊髄の衝撃の当初の期間に続いて、処理群はすべて損傷後2週間までに基本的な後肢の動きを回復し、平均BBBスコアは9(足踏みすることなく後肢で重量を支える)だった。次の10週間の経過にわたって、溶媒処理した動物及びLARペプチド処理した動物は双方とも、この点を超えてわずかに回復したにすぎず、平均して時折荷重をかけて歩を進める能力を再び得た。平均して、ISP処理した動物は、回復し続け、6週目で12のスコアに達し(時折後肢前肢の調和を伴って一貫した足踏み)、7週までに13を超えた(頻繁な調和と一貫した調和の間)。個々には、動物は19のスコアに達したが、それは、ほぼ完ぺきな自発運動であり、高く上げた尾、足踏みでの一貫したトウクリアランス及び足の正しい配置を伴う。追加の動物は18.5及び18のほぼ正常なスコアに達した。15動物のうち7匹は少なくとも頻繁な調和した足踏みを再び得た。
実施例6
この実施例は、溶媒処理したSCI動物及びLARペプチド処理したSCI動物の格子歩行試験の結果を示す。
方法
脊髄損傷の12週間後、ワイヤ格子(100cm×75cm、ワイヤにて1cmの間隙)上で動物を自由にうろつかせた。頭上のカメラが追跡し、移動した総距離を算出した(Ethovision)一方で、盲検化した観察者によって踏み外しの数が手動で計測された。データは移動したメートル当たりの左右の踏み外しの総数として表す。格子歩行試験は1回だけ行って動物が訓練し、人工的に改善する(リハビリテーション現象)を防いだ。
結果
格子歩行試験を用いて感覚運動の調和及び平衡の回復を測定した。図10及び11は、溶媒処理した動物が平均で、格子上で移動したメートル当たり6回の踏み外しを行ったことを示す。ILP処理は、格子歩行試験にて踏み外しの非常にささやかな有意ではない改善を導いた。ISP処理は平均で溶媒処理及びILP処理の動物よりも有意に少ない踏み外しを行った。加えて、数匹の動物が3回未満の踏み外しを行うということはこの行動のほぼ完全な回復を示唆している。
実施例7
この実施例は、溶媒処理したSCI動物及びISPペプチド処理したSCI動物の排尿機能の回復を示す。
方法(代謝ケージ)
動物を暗サイクル(16時間)で一晩代謝ケージに入れた。尿を分離し、力変換器に連結したシリンジに回収した。個々の各排尿に相当する力の上昇をスパイク2にプロットした。グラフをエクセルに抽出し、排尿の総数及び各排尿の平均容量を計測するように手動で確認した。
尿力学
最終実験では、損傷後14週目にて動物をウレタンで麻酔した。この麻酔は過剰な動きを防ぐ一方で、膀胱反射を保護する。尿道を介して膀胱にカテーテルを挿入し、生理食塩水による緩慢な潅流を可能にした。加えて、膣を介して2つの電極を外尿道括約筋に挿入し、筋肉活動性を測定した。筋肉活動性及び筋肉圧(カテーテルを介して測定した)をスパイク2にプロットした。
結果
排尿行動の回復を代謝ケージで測定した。損傷後4、8及び12週目での暗サイクルで、力変換器によって排尿を測定する代謝ケージに動物を入れた。図12は、4又は8週目では平均で有意な回復は見られなかったが、ISPは損傷後12週目で排尿回数の有意な増加を導いたことを示す。未処理の動物は平均で1時間当たり2回排尿する一方で、溶媒処理及びILP処理の動物は、有意に増加した容量/排尿を伴って有意に低下した回数、2時間ごとに1回を有する。ISP処理は、平均で2倍までの損傷後の排尿回数を有意に増やし、複数の動物が正常の(未処理の)排尿回数レベルに達した。
動物が膀胱筋及び括約筋の収縮性の完全な制御を有したかどうかを調べるために、損傷後14週目で動物は末端尿力学解析を受けた。尿力学及び生理食塩水の膀胱への緩慢な潅流のもとで、未処理の動物はその膀胱筋を収縮させ、膀胱における圧にて鋭い上昇をもたらした(上のトレース)。圧力の低下は外尿道括約筋の放圧に相当し、動物の放尿を助ける。これらの挙動双方が脊髄損傷の後、完全に失われ、その際、膀胱における圧力の穏やかな上昇は最終的に達する最大値をもたらし、生理食塩水は漏出する。外尿道括約筋は時折放圧するが、不適当な排尿を招く膀胱排尿筋の収縮とは相関しない。図13(A〜B)は、ISP処理の後、多数の動物がパターン化した外尿道括約筋の放圧(赤い矢印によって印を付けた)と調和した膀胱の収縮を回復したことを示す。
溶媒処理動物のそれを超える回復は、溶媒平均値(排尿及びBBB)よりも標準偏差の2倍を超えて良好であるとして定義した。動物を各群に入れた。15匹の動物のうち13匹が有意な行動の改善を示し、4匹は3つの行動すべてにて有意な機能の範囲にあった。
実施例8
この実施例は、溶媒処理SCI動物及びISPペプチド処理SCI動物の5HTの発現を示す。
方法
4%のパラホルムアルデヒドで動物を経心腔で潅流し、脊柱を切除した。PFAにおける追加の1日後、脊柱を取り出し、30%スクロースで3〜7日凍結防止した。L1〜L3の相当する分節を包埋し、20μmの横断切片をスライドに載せた。
スライドを5%ヤギ血清でブロックし、5HTに対する一次抗体(1:500、Immunostar)で探査した。洗浄及び適当な二次抗体とのインキュベートに続いて、スライドをカバースリップで覆い、封止した。同一の露出、ゲイン、ガンマ及びオフセットのもとで2×にて蛍光顕微鏡で画像を撮影し、スライド間の比較を行った。
軸索密度解析については、灰白質の輪郭を描き、ImageJにて平均画素強度を算出した。脊髄後索では最少限の染色しか見られないので、この領域の画素強度を各個々の切片の内部背景として差し引いた。いったん切片を無作為に選択すると、2cmの総距離にわたって200μmごとに解析した(10の分節)。最高と最低の画素強度を除き、残りの8つを平均した。
結果
5HTは、その役割が運動ネットワークの獲得と興奮性を制御することである脊髄における重要な神経伝達物質である。他の治療と併用した場合、5HTアゴニストは脊髄損傷後の運動行動を有意に高めることができる。我々は、腰部脊髄及び損傷の高さから下の複数の分節にて5HTの発現について染色した。腰部脊髄は、後肢自発運動及び膀胱制御のためのペースメーカーを含有し、足及び膀胱の筋肉のための運動ニューロンを含有する。図14は未処理の動物にて、左右の灰白質にて5HTの発現又は軸索密度は均一な染色パターンを伴って非常に高かった。高拡大では、白質に浸透する繊維を見ることができる。脊髄損傷の14週後、5HTの発現は溶媒対照の動物で有意に低く、2、3の小さなパッチだけが灰白質に残っている。ISP処理は灰白質全体にわたって5HT染色で劇的な上昇をもたらした。染色は顕著に堅牢であり、灰白質全体にわたって離散した不均一なパッチにて切片ごとに大きく異なった。このパターンは免れた運動出力中心に対する5HTの発芽及び/又は再生を示唆している。2匹のISP非レスポンダーが5HT発現の劇的な上昇を示さなかったので、5HTの発現の上昇は行動の回復に良く相関した。定量は再び、灰白質全体にわたる5HTの発現が有意に上昇することを示した(図15)。
実施例9
ホスフェート活性の外側のLARファミリーの下流で作用する幾つかのタンパク質及び経路を特定した(図4)。これらのうち、カスキン(Ckn)及びLAR相互作用タンパク質α(リプリン−α)はシナプス形成及び軸索ガイダンスの双方で重要な役割を有する。酵母2ハイブリッド相互作用系にてmCkn1はmLAR及びmPTPRδを直接結合し、mCkn2はmLAR及びmPTPσを直接結合する。LARファミリーのホスファターゼとのCknの相互作用は、表現型を構成する2つのステライルαモチーフ(SAM)ドメインを含有する領域にマッピングされた。我々は、表3に示すタンパク質の受入配列を並べるBLASTを用いてショウジョウバエ、マウス、ラット及びヒトのCknのついて相同性マップを創った。
表3は第1のSAMドメインがCknファミリーメンバーの間で保存されていることを示す。我々は、我々がLARファミリーホスファターゼ/Ckn結合に対して小分子競合体として作用し、LARファミリーのシグナル伝達の下流に移動すると仮説を立てている20アミノ酸のペプチドを設計した。ショウジョウバエの系での作業によって下流のシグナル伝達事象に必要なものとしてdCknのC末端領域が特定される。我々は、それらの標的ではあるが、標的の下流に対する小分子競合体として作用する可能性があり得るmCkn1及びmCkn2双方についての20アミノ酸のペプチドを設計した。
Figure 0006948250
リプリンファミリーメンバーはシナプスの発達及び維持で重要な役割を担う(我々はリプリン−αがLARホスファターゼの下流のシグナル伝達で作用し得ると仮説を立てている)。酵母2ハイブリッド相互作用スクリーニングは、LARホスファターゼファミリーメンバーの結合領域としてのリプリン−αファミリーメンバーの第1のSAMドメインを関係させている。我々は、リプリン−αファミリーの4メンバーすべての第1のSAMドメイン内での同一の領域に相当する20アミノ酸のペプチドを設計した(表4)。リプリン−αの4つのオルソログが進化を通してこの同一の領域を保持していることは興味深いことであり、機能的に重要なものとしてのこの領域を暗示している。我々は、この小分子競合体を用いてLAR/リプリン−α1〜4の相互作用を破壊することができ、LARホスファターゼのファミリーメンバーの下流のシグナル伝達を破壊することができると仮説を立てている。
Figure 0006948250
本発明は、その好ましい実施形態を参照して特に示され、記載されてきたが、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細にて種々の変更がその中で為され得ることが当業者によって理解されるであろう。前述の明細書で引用された特許、出版物及び参考文献はすべてその全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
本願は以下の発明をも包含する。
(1)
対象の細胞にてプロテオグリカンによって誘導される白血球共通抗原関連(LAR)ファミリーのホスファターゼの活性、シグナル伝達、及び/又は機能を阻害する及び/又は低減する方法であって、
プロテオグリカンによるLARファミリーホスファターゼのへの結合又はその活性化を阻害することなく、LARファミリーホスファターゼの触媒活性、シグナル伝達及び機能の1以上を阻害する治療剤を細胞に投与することを含む方法。
(2)
LARファミリーホスファターゼが受容体タンパク質チロシンホスファターゼシグマ(PTPσ)であり、治療剤が治療用ペプチドを含み、治療用ペプチドがPTPσのくさび形ドメインの約10〜約20の連続するアミノ酸に対して少なくとも約65%相同であるアミノ酸配列を有する(1)の方法。
(3)
LARファミリーホスファターゼが受容体タンパク質チロシンホスファターゼシグマ(PTPσ)であり、治療剤が治療用ペプチドを含み、治療用ペプチドがPTPσのくさび形ドメインの約10〜約20の連続するアミノ酸に対して少なくとも約75%相同であるアミノ酸配列を有する(1)の方法。
(4)
LARファミリーホスファターゼが受容体タンパク質チロシンホスファターゼシグマ(PTPσ)であり、治療剤が治療用ペプチドを含み、治療用ペプチドがPTPσのくさび形ドメインの約10〜約20の連続するアミノ酸に対して少なくとも約85%相同であるアミノ酸配列を有する(1)の方法。
(5)
LARファミリーホスファターゼが受容体タンパク質チロシンホスファターゼシグマ(PTPσ)であり、治療剤が治療用ペプチドを含み、治療用ペプチドがPTPσのくさび形ドメインの約10〜約20の連続するアミノ酸に対して少なくとも約95%相同であるアミノ酸配列を有する(1)の方法。
(6)
LARファミリーホスファターゼが受容体タンパク質チロシンホスファターゼシグマ(PTPσ)であり、治療剤が配列番号9〜33から成る群から選択される治療用ペプチドを含む(1)の方法。
(7)
LARファミリーホスファターゼが受容体タンパク質チロシンホスファターゼシグマ(PTPσ)であり、治療剤が配列番号37から成る治療用ペプチドを含む(1)の方法。
(8)
LARファミリーホスファターゼが受容体タンパク質チロシンホスファターゼシグマ(PTPσ)であり、治療剤が配列番号37に対して少なくとも約65%相同である治療用ペプチドを含む(1)の方法。
(9)
治療用ペプチドが、配列番号37の残基4、5、6、7、9、10、12又は13の少なくとも1つのアミノ酸の保存的置換を含む(8)の方法。
(10)
細胞が、神経細胞、グリア細胞、グリア前駆細胞又は神経前駆細胞である(2)〜(8)のいずれかの方法。
(11)
治療剤が、治療用ペプチドに連結され、細胞による治療用ペプチドの取り込みを円滑にする輸送部分を含む(2)〜(8)のいずれかの方法。
(12)
輸送部分がHIVのTat輸送部分である(11)の方法。
(13)
細胞が治療される対象にあり、治療剤が治療される対象に全身性に投与される(11)の方法。
(14)
細胞が治療される対象にあり、治療剤が細胞に局所的に投与される(11)の方法。
(15)
治療剤が細胞で発現される(2)〜(8)のいずれかの方法。
(16)
LARファミリーホスファターゼの活性化及びシグナル伝達に関連する疾患、障害及び/又は状態を治療する方法であって、
LARファミリーホスファターゼを発現している対象の細胞に、プロテオグリカンによるLARファミリーホスファターゼのへの結合又はその活性化を阻害することなく、LARファミリーホスファターゼの触媒活性、シグナル伝達及び/又は機能の1以上を阻害する治療剤を投与することを含む方法。
(17)
疾患、障害及び/又は状態が神経系の疾患、障害及び/又は状態の少なくとも1つを含む(16)の方法。
(18)
神経系の疾患、障害及び/又は状態が神経障害、神経精神障害、神経損傷、神経毒性障害、神経障害痛、及び神経変性障害の少なくとも1つを含む(17)の方法。
(19)
神経障害が、末梢神経又は頭蓋神経、脊髄又は脳、頭蓋神経に対する外傷性又は毒性の損傷、外傷性の脳損傷、卒中、脳動脈瘤、及び脊髄損傷の少なくとも1つを含む(18)の方法。
(20)
神経障害が、アルツハイマー病、アルツハイマー病に関連する認知症、パーキンソン病、びまん性レビー小体病、老人性認知症、ハンチントン病、トゥレット症候群、多発性硬化症、筋委縮性側索硬化症、遺伝性の運動神経障害及び感覚神経障害、糖尿病性神経障害、進行性核上麻痺、癲癇、又はヤコブ・クロイツフェルト病の少なくとも1つを含む(18)の方法。
(21)
神経損傷が、癲癇、脳血管系疾患、自己免疫疾患、睡眠障害、自律神経障害、膀胱障害、異常な代謝状態、筋肉系の障害、感染性疾患及び寄生虫疾患、腫瘍、内分泌疾患、栄養性及び代謝性の疾患、免疫疾患、血液及び血液形成臓器の疾患、精神疾患、神経系の疾患、感覚器官の疾患、循環系の疾患、呼吸器系の疾患、消化器系の疾患、尿生殖器系の疾患、皮膚及び皮下組織の疾患、筋骨格系及び結合組織の疾患、先天性異常、又は周産期を起源とする状態の少なくとも1つが原因で起こる、又はそれに関連する(18)の方法。
(22)
LARファミリーホスファターゼが受容体タンパク質チロシンホスファターゼシグマ(PTPσ)であり、治療剤が治療用ペプチドを含み、治療用ペプチドがPTPσのくさび形ドメインの約10〜約20の連続するアミノ酸に対して少なくとも約65%相同であるアミノ酸配列を有する(18)の方法。
(23)
LARファミリーホスファターゼが受容体タンパク質チロシンホスファターゼシグマ(PTPσ)であり、治療剤が治療用ペプチドを含み、治療用ペプチドがPTPσのくさび形ドメインの約10〜約20の連続するアミノ酸に対して少なくとも約75%相同であるアミノ酸配列を有する(18)の方法。
(24)
LARファミリーホスファターゼが受容体タンパク質チロシンホスファターゼシグマ(PTPσ)であり、治療剤が治療用ペプチドを含み、治療用ペプチドがPTPσのくさび形ドメインの約10〜約20の連続するアミノ酸に対して少なくとも約85%相同であるアミノ酸配列を有する(18)の方法。
(25)
LARファミリーホスファターゼが受容体タンパク質チロシンホスファターゼシグマ(PTPσ)であり、治療剤が治療用ペプチドを含み、治療用ペプチドがPTPσのくさび形ドメインの約10〜約20の連続するアミノ酸に対して少なくとも約95%相同であるアミノ酸配列を有する(18)の方法。
(26)
LARファミリーホスファターゼが受容体タンパク質チロシンホスファターゼシグマ(PTPσ)であり、治療剤が配列番号9〜33から成る群から選択される治療用ペプチドを含む(18)の方法。
(27)
LARファミリーホスファターゼが受容体タンパク質チロシンホスファターゼシグマ(PTPσ)であり、治療剤が配列番号37から成る治療用ペプチドを含む(18)の方法。
(28)
LARファミリーホスファターゼが受容体タンパク質チロシンホスファターゼシグマ(PTPσ)であり、治療剤が配列番号37に対して少なくとも約65%相同である治療用ペプチドを含む(18)の方法。
(29)
治療用ペプチドが、配列番号37の残基4、5、6、7、9、10、12又は13の少なくとも1つのアミノ酸の保存的置換を含む(28)の方法。
(30)
細胞が、神経細胞、グリア細胞、グリア前駆細胞又は神経前駆細胞である(22)〜(29)のいずれかの方法。
(31)
治療剤が、治療用ペプチドに連結され、細胞による治療用ペプチドの取り込みを円滑にする輸送部分を含む(22)〜(29)のいずれかの方法。
(32)
輸送部分がHIVのTat輸送部分である(31)の方法。
(33)
治療剤が治療される対象に全身性に投与される(31)の方法。
(34)
治療剤が細胞に局所的に投与される(31)の方法。
(35)
治療剤が細胞で発現される(22)〜(19)のいずれかの方法。
(36)
対象にて神経損傷を治療する方法であって、
プロテオグリカンによるLARファミリーホスファターゼのへの結合又はその活性化を阻害することなく、LARファミリーホスファターゼの触媒活性、シグナル伝達及び/又は機能の1以上を阻害する治療剤を対象の損傷した神経細胞に投与することを含む方法。
(37)
神経損傷が、末梢神経又は頭蓋神経、脊髄又は脳、頭蓋神経に対する外傷性又は毒性の損傷、外傷性の脳損傷、卒中、脳動脈瘤、及び脊髄損傷の少なくとも1つを含む(36)の方法。
(38)
治療剤が治療用ペプチドを含み、治療用ペプチドがPTPσのくさび形ドメインの約10〜約20の連続するアミノ酸に対して少なくとも約65%相同であるアミノ酸配列を有する(36)の方法。
(39)
治療剤が治療用ペプチドを含み、治療用ペプチドがPTPσのくさび形ドメインの約10〜約20の連続するアミノ酸に対して少なくとも約75%相同であるアミノ酸配列を有する(36)の方法。
(40)
治療剤が治療用ペプチドを含み、治療用ペプチドがPTPσのくさび形ドメインの約10〜約20の連続するアミノ酸に対して少なくとも約85%相同であるアミノ酸配列を有する(36)の方法。
(41)
治療剤が治療用ペプチドを含み、治療用ペプチドがPTPσのくさび形ドメインの約10〜約20の連続するアミノ酸に対して少なくとも約95%相同であるアミノ酸配列を有する(36)の方法。
(42)
治療剤が配列番号9〜33から成る群から選択される治療用ペプチドを含む(36)の方法。
(43)
治療剤が配列番号37から成る治療用ペプチドを含む(36)の方法。
(44)
治療剤が配列番号37に対して少なくとも約65%相同である治療用ペプチドを含む(36)の方法。
(45)
治療用ペプチドが、配列番号37の残基4、5、6、7、9、10、12又は13の少なくとも1つのアミノ酸の保存的置換を含む(44)の方法。
(46)
治療剤が、治療用ペプチドに連結され、細胞による治療用ペプチドの取り込みを円滑にする輸送部分を含む(38)〜(45)のいずれかの方法。
(47)
輸送部分がHIVのTat輸送部分である(36)の方法。
(48)
治療剤が治療される対象に全身性に投与される(36)の方法。
(49)
治療剤が細胞に局所的に投与される(36)の方法。
(50)
治療剤が細胞で発現される(38)〜(45)のいずれかの方法。
(51)
神経細胞の増殖、運動性、生存性及び可塑性の少なくとも1つを促進する治療剤であって、配列番号9〜33から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む合成ペプチドを含む治療剤。
(52)
治療用ペプチドに連結され、細胞による治療用ペプチドの取り込みを円滑にする輸送部分をさらに含む(51)の治療剤。
(53)
輸送部分がHIVのTat輸送部分である(52)の治療剤。
(54)
神経細胞の増殖、運動性、生存性及び可塑性の少なくとも1つを促進する治療剤であって、配列番号37に対して少なくとも約65%相同である合成の治療用ペプチドを含む治療剤。
(55)
治療用ペプチドが、配列番号37の残基4、5、6、7、9、10、12又は13の少なくとも1つのアミノ酸の保存的置換を含む(54)の治療剤。
(56)
治療用ペプチドが、配列番号37を含む(54)の治療剤。
(57)
治療用ペプチドに連結され、細胞による治療用ペプチドの取り込みを円滑にする輸送部分をさらに含む(54)〜(56)の治療剤。
(58)
輸送部分がHIVのTat輸送部分である(57)の治療剤。
(59)
医薬組成物であって、
配列番号37に対して少なくとも約65%相同である合成の治療用ペプチドと治療用ペプチドに連結され、細胞による治療用ペプチドの取り込みを円滑にする輸送部分とを含む治療剤を含む医薬組成物。
(60)
治療用ペプチドが、配列番号37の残基4、5、6、7、9、10、12又は13の少なくとも1つのアミノ酸の保存的置換を含む(59)の医薬組成物。
(61)
治療用ペプチドが配列番号9〜33及び37から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む(59)の医薬組成物。
(62)
輸送部分がHIVのTat輸送部分である(59)の医薬組成物。
(63)
治療用剤が配列番号42〜66及び70から成る群から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドである(59)の医薬組成物。

Claims (10)

  1. 治療剤であって、配列番号37のアミノ酸配列または配列番号37と少なくとも75%の同一性を有し、配列番号37の残基4、5、6、7、9、10、12又は13の少なくとも1つのアミノ酸の保存的置換を有するアミノ酸配列を含む治療用ペプチドを含む、治療剤であって、
    前記治療用ペプチドが、タンパク質チロシンホスファターゼシグマ(PTPσ)の触媒活性、シグナル伝達及び機能の1以上を阻害する、治療剤
  2. 前記治療用ペプチドが、配列番号37の残基4、5、6、7、9、10、12又は13の少なくとも1つのアミノ酸の保存的置換を含む、請求項1に記載の治療剤。
  3. アミノ酸残基4EがD又はQで置換され、アミノ酸残基5RがH,L又はKで置換され、アミノ酸残基6LがI、V又はMで置換され、アミノ酸残基7KがR又はHで置換され、アミノ酸残基9NがE又はDで置換され、アミノ酸残基10DがE又はNで置換され、アミノ酸残基12LがI、V又はMで置換され、及び/又はアミノ酸残基13KがR又はHで置換されている、請求項1に記載の治療剤。
  4. 前記治療用ペプチドに連結され、細胞による前記治療用ペプチドの取り込みを円滑にする輸送部分をさらに含む、請求項1に記載の治療剤。
  5. 前記輸送部分がHIVのTat輸送部分である請求項4に記載の治療剤。
  6. 前記治療用ぺプチドが、配列番号9〜33および37から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の治療剤。
  7. 前記治療用ペプチドが、配列番号42〜66及び70から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の治療剤。
  8. 前記輸送部分が、ペプチドリンカーによって前記治療用ペプチドに連結されている、請求項5に記載の治療剤。
  9. 抹消神経損傷または末梢神経障害の治療用の、請求項1〜のいずれか一項に記載の治療剤。
  10. 神経障害の治療用の、請求項1〜のいずれか一項に記載の治療剤であって、
    前記神経障害が、アルツハイマー病、アルツハイマー病に関連する認知症、パーキンソン病、びまん性レビー小体病、老人性認知症、ハンチントン病、トゥレット症候群、多発性硬化症、筋委縮性側索硬化症、遺伝性の運動神経障害及び感覚神経障害、糖尿病性神経障害、進行性核上麻痺、癲癇、又はヤコブ・クロイツフェルト病の少なくとも1つを含む、治療剤。
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