JP2009541446A - フェニルアラニンを含む吸入用粉末 - Google Patents

フェニルアラニンを含む吸入用粉末 Download PDF

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Abstract

本発明は、タンパク質、少なくとも30%(w/w)、または少なくとも40%(w/w)なる量のフェニルアラニンを含む、粉末に関する。フェニルアラニンを含む粉末が、特に噴霧乾燥後に、空気力学的挙動およびタンパク質の安定性に関して、改善された空気力学的特性を持つ粉末またはタンパク質組成物を製造する上で、著しく適していることが示された。主構成成分は、フェニルアラニンであり、また他の随意の成分は、フェニルアラニンと比較して、著しく水溶性の高い、補助的薬剤、好ましくは糖またはポリオールである。

Description

本発明は、少なくとも1種のフェニルアラニンおよびタンパク質を含む、フェニルアラニン-含有粉末、特に噴霧乾燥された粉末に関するものである。ここで、該タンパク質は、好ましくは活性物質、および特に医薬的に活性な物質である。本発明の粉末は、少なくとも30%(w/w)、好ましくは少なくとも40%(w/w)のフェニルアラニン画分および場合により該タンパク質の安定性を高める、少なくとも1種の第二の医薬上許容される賦形剤、即ち糖を含有する。本発明は、更にこれらのフェニルアラニン-含有粉末の製造方法並びに特に吸入性医薬組成物としての、該粉末の使用にも関連する。好ましい該タンパク質は、気道の局所的な治療、または全身的な治療のための医薬的に活性な物質、例えば抗体、抗体の一部、抗体または抗体の一部分を含む融合タンパク質、ホルモン、成長因子、酵素、サイトカイン、インターフェロン等である。
水性溶液として処方された、タンパク質製剤または活性物質/活性物質製剤は、幾つかの場合において不安定であることが明らかにされており、この不安定性は、低い効力または生体活性、および高い毒性または非-相溶性に導く可能性がある。このことは従来の医薬およびタンパク質並びに特にペプチドまたはタンパク質を含有する活性物質両者に当てはまる。タンパク質または医薬的に活性な物質の安定性は、それらの構造を変更することによって、あるいは適当な賦形剤(外用)を添加することにより、有利に影響される可能性がある。
タンパク質または医薬的に活性な物質を、外部から安定化する従来の方法は、適当な賦形剤を使用することである。賦形剤は、大雑把に以下のカテゴリーに分割することができる:糖およびポリオール、アミノ酸、アミン、塩、ポリマーおよび界面活性剤。
糖およびポリオールは、しばしば非-特異的な安定剤として使用される。タンパク質または生物学的に活性な物質における、これらの安定化作用は、主として「選択的な排除(preferential exclusion)」によるものである(Xie & Timasheff, 1997, Biophysical Chemistry, 64(1-3), 25-43; Xie & Timasheff, 1997, Protein Science, 6(1), 211-221; Timasheff, 1998, タンパク質化学における進歩(Advances in protein chemistry), 51, 355-432)。糖を選択する場合に、還元糖は、タンパク質または生物学的に活性な物質の場合には、通常回避される。非-還元糖であるサッカロースおよびトレハロースが、好ましく使用される。適当な賦形剤の更なる例は、グルコース、ソルビトール、グリセロール(Boctor & Mehta, 1992, Journal of Pharmacy and Pharmacology, 44 (7), 600-3; Timasheff, 1993, 生物物理および生体分子構造の年刊評論(Annual review of biophysics and biomolecular structure), 22, 67-97; Chang等, 1993, Pharmaceutical Research, 10(10), 1478-83)およびマニトール(Hermann等, 1996, Pharmaceutical Biotechnology, 9 [タンパク質薬物の処方、特徴付けおよび安定性(Formulation, Characterization, and Stability of protein Drugs)], 303-328; Chan等, 1996, Pharmaceutical Research, 13(5), 756-761)である。同様に、あらゆる種類のポリマーが、タンパク質または医薬的に活性な物質、例えば抗体に対して安定化作用を持つことも、公知である。過去において頻繁に使用されてきた、ヒト血清アルブミン(HAS)は、事実極めて良好な安定化特性を持つが、「血液に起因する(blood-borne)」病原体によるその潜在的な汚染のために、その使用は、逆に不適当である。これまでに知られているポリマーの中で、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HP-β-CD)は、特に適していることが立証されている。というのは、このものが、安全に腸管外投与できるからである。その他の例は、高分子量でキストラン(18〜82kD)、ポリビニルピロリドン(PVP)、へパリン、タイプAおよびタイプBゼラチン、並びにヒドロキシエチルデンプン(HES)、へパリン、デキストランサルフェート、ポリリン酸、ポリ-L-グルタミン酸、ポリ-L-リジンである。
糖およびポリオールに加えて、アミノ酸も、それ自体で、または他の賦形剤との組合せで、安定剤として使用することができる。好ましくは、アミノ酸は、タンパク質の安定化において使用される。例えば、ヒスチジン、グリシン、アスパラギン酸ナトリウム(Na-Asp)、グルタメートおよびリジン塩酸塩(Lys-HCl)は、5%のマニトールを含む、10mMリン酸ナトリウムバッファー(pH 7.0)中で、rhKGFの凝集を阻害する(Zhang等, 1995, Biochemistry, 34 (27), 8631-41)。アミノ酸とプロピレングリコールとの組合せは、例えばrhCNTFの構造安定性を改善する(Dix等, 1995, Pharmaceutical Research (追補), 12, S97)。リジンおよびアルギニンは、IL-1Rの熱安定性(Tmの増加)を高めるが、グリシンおよびアラニンは、不安定化作用を持つ(Remmele等, 1998, Pharmaceutical Research, 15(2), 200-208)。
その上、タンパク質または医薬的に活性な物質を含有する粉末の安定性は、様々な乾燥工程によっても高めることができる。この乾燥は、通常、該タンパク質または該活性な物質の安定性を維持し、かつ該生成する乾燥粉末の諸特性を改善すべき、賦形剤の存在下で行われる。乾燥により安定化する際の、決定的な因子は、該タンパク質または該活性な物質のアモルファスマトリックス中での固定化である。該アモルファス状態は、低い分子移動度および低い反応性と共に、高い粘度を持つ。従って、有利な賦形剤は、該タンパク質または該活性な物質が包埋される、可能な最大のガラス転移点を持つ、アモルファスマトリックスを形成し得るものでなければならない。従って、該賦形剤の選択は、特にその安定化特性に依存する。しかしながら、更に、該賦形剤の医薬上の許容性および粒子形成性、分散性および流動特性に及ぼすその影響等の因子が、特に噴霧乾燥工程においては、決定的な役割を演じる。
タンパク質またはペプチド/タンパク質型の、医薬的に活性な物質の、化学的および物理的な安定性を高めるためには、噴霧乾燥法は、特に適した方法である(cf. Maa等, 1998, Pharmaceutical Research, 15(5), 768-775)。特に、肺疾患の治療分野においては、噴霧乾燥が、ますます利用されるようになってきている(米国特許第5,626,874号; 同第5,972,388号; Broadhead等, 1994, J. Pharm. Pharmacol., 46(6), 458-467)が、その理由は、吸入による投与が、今や全身性の諸疾患の治療における別法となっているからである(WO 99/07340)。これに関する必要条件は、該粉末粒子の平均空気力学的粒径(MMAD=質量中央値空気力学的粒径)が、1〜10μmなる範囲、好ましくは1〜7.5μmなる範囲内にあり、従って、該粒子は、肺の深部にまで侵入することができ、その結果血流中に入ることができる。例えば、DE-A-179 22 07は、対応する噴霧乾燥された粒子の製造を記載している。ところで、これまでに数多くの対応する粉末の製造方法が、提案されている(WO 95/31479; WO 96/09814; WO 96/32096; WO 96/32149; WO 97/41833; WO 97/44013; WO 98/16205; WO 98/31346; WO 99/66903; WO 00/10541; WO 01/13893; Maa等, 1998, 上記文献; Vidgren等, 1987, Int. J. Pharmaceutics, 35, 139-144; Niven等, 1994, Pharmaceutical Research, 11(8), 1101-1109)。
糖およびそのアルコール、例えばトレハロース、ラクトース、サッカロースまたはマニトールおよび様々なポリマーが、賦形剤として適していることが立証されている(Maa等, 1997, Pharm. Development and Technology, 2(3), 213-223; Maa等, 1998, 上記文献; Dissertation Adler, 1998, エルランゲンユニバーシティー(University of Erlangen); Costantino等, 1998, J. Pharm. Sci., 87(11), 1406-1411)。
しかし、主として用いられる該賦形剤は、様々な欠点を持っている。例えば、トレハロースおよびマニトールの添加は、噴霧乾燥した処方物の流動性を悪化させる(C. Bosquillon等, 2001 Journal of Controlled Release, 70(3), 329-339)。噴霧乾燥したトレハロースは、しばしば生成する該粒子の重大な粘着を引き起こす(L. Mao等, 2004, 呼吸器系への薬物送達(Respiratory Drug Delivery), IX, S. 653-656)。これは、粉末の収率および該工程の大変さ、並びに得ることのできる微細粒子画分の低減に起因する、肺疾患用途用の粉末の、生物学的利用性の低下と関連する技術的処理の問題である。更に、マニトールは、20質量%を越える量において再結晶化する傾向を有し(Costantino等, 1998, 上記文献)、その結果、この物質の安定化作用は、劇的に低下する。しばしば使用される賦形剤であるラクトースは、噴霧乾燥した処方物の流動性を改善するが(C. Bosquillon等, 2001, 上記文献)、タンパク質またはペプチド/タンパク質-含有活性物質を含む処方物において特に問題となり、その理由は、ラクトースが、その還元性のために、ペプチド/タンパク質と、不活性化メイラード(Maillard)反応を引き起こす可能性があることにある。
しかし、賦形剤を用いたタンパク質の安定化に加えて、噴霧乾燥した粉末の物性の最適化が、製法開発の目標となっている。特に、粉末、とりわけ噴霧乾燥した粉末は、凝集し、また接着性を持つ傾向にある。この点に関する一つの大きな理由は、経肺投与に必要とされる、<10μmという粒径にある。これらの小さな粒径において、粒子の相互作用、例えばファンデルワールス力、双極子相互作用および静電相互作用等が、重力作用を越えて支配的なものとなる[I. Zimmermann, Pharmazeutische Industrie, スプリンガーフェアラグ(Springer-Verlag)]。水蒸気の凝集によって生じる毛管力は、該粉末を低湿度条件下で適切に保存することによって調節することができるが、該(噴霧乾燥された)粒子間のファンデルワールス力および静電相互作用が、主な課題であることが明らかとなっている。
該粒子間相互作用は、該粒子表面を疎水性とすることにより低減できる。これは、該タンパク質または該活性物質および他の適当な賦形剤と共に、添加剤として疎水性物質を溶解し、これらを噴霧乾燥することによって行うことができる。表面を疎水性にするための現状は、特に疎水性アミノ酸L-ロイシンを使用することである(L. Mao等, 2004, 呼吸器系への薬物送達(Respiratory Drug Delivery), IX, S. 653-656, AR. Najafabadi等, 2004, Int. J. Pharm., 2004 Nov. 5;285 (1-2):97-108)。該表面被覆のみが、この工程において変性されることになるので、必要とされるL-ロイシンの量は、僅かに5〜10質量%(%w/w)に過ぎない。アミノ酸の割合を高めると、しばしば望ましからぬ結晶化作用を引き起こし、該タンパク質を損傷する(Richard Fuhrherrによる論文, 2005, LMU Uni, Munich)。該タンパク質および好ましくは該噴霧用液への、他のアミノ酸、例えばDL-アスパラギン、DL-アルギニン、DL-メチオニン、DL-フェニルアラニンおよびDL-トリプトファンの添加(N.Y.K. Chew等, 2002, 呼吸器系への薬物送達(Respiratory Drug Delivery), VIII, S. 743-745)は、該粒子の空気力学的な特性に有利な効果を及ぼすことができる。該タンパク質および特に該噴霧用液への、該疎水性物質の直接的な添加以外に、該粉末粒子を、更なる工程において、添加剤で被覆することができる。この目的のために特に適した物質は、L-ロイシン、リン脂質およびMg-ステアレートである(WO 2004-093848)。有力な塗布法では、重力ミキサ、例えばタンブルミキサを使用する(US 2005/152849)が、機械的混合法、例えばジェット粉砕法(WO 2004-093848)も利用される。
タンパク質およびペプチドを投与する公知の方法は、腸管外投与である。該活性物質は、例えば静脈内、筋肉内および皮下経路で投与することができる。現状では、該医薬は、カニューレを介して、例えば注射器と組合せたカニューレを介して、ペンまたは注入バッグを用いた注入液として投与される。これに係る一欠点は、粉末処方物を投与する前に、これらを液体中で再生する必要があることにある。更に、腸管外投与は、共通の苦情としての針に対する恐怖のために、一般的な受けが良くない。これらの理由のために、腸管外治療は、しばしば医師によって行われなければならない。これとは対照的に、全身的な吸入性処方物は、患者自身によって投与できる。
タンパク質/ペプチドは、受動的な拡散によって、あるいは肺を介する能動的な輸送によって血流中に入ることができる。受動的な輸送において、吸収率は、該活性物質の分子径の関数である[J.S. Patton, Nature Biotechnology, 16, 141ff, 1998]。
インシュリン等の小さなタンパク質を使用した場合には、例えば良好な生物学的利用性が見出されているが(J.S. Patton, 1999, アドバンストドラッグデリバリーレビュー(Advanced Drug Delivery Review), 35, 235-247)、大きなタンパク質および特に抗体は、一般的に極めて低い吸収率を有する。この代わりに、薬物投与の効果的な形式を開発するために、大きなタンパク質は、特定のメカニズムにより、肺の上皮を介して能動的に輸送される必要がある。
該肺の上皮を介する抗体の能動的な輸送の一つの可能性は、新生児のFc-レセプタである(A. Bitonti, 2004, 呼吸器系への薬物送達(Respiratory Drug Delivery), IX.79-85)。これらレセプタは、新生児のみならず、子供および成人においてさえも、肺中に、十分に大量に存在し、また能動的に活性物質を輸送するために、利用できることが分かっている。
医学的用途用の、タンパク質含有粉末、特に噴霧乾燥された粉末またはタンパク質組成物を製造する場合、特定の課題は、良好なタンパク質の安定性に加えて、可能な最も有利な空気力学的特性を達成し、結果として、該粉末またはその粒子、特に噴霧乾燥した粉末および粒子を、肺の深部にまで浸透させ、結果的に容易に血流中に侵入させることである。
近年、様々な疾患を治療するために、益々多数の吸入性薬物が開発され(Aradigm, MannkindまたはKos, K. Corkery等により製造された、発展的製品としての吸入性インシュリン, レスピラトリーケア(Respiratory Care), 45, 831ff, 2000)、あるいは既に市販されている(例えば、組換えヒトデオキシリボ核酸I(rhDNase)としてのパルモジム(PulmozymeTM)または吸入型のヒトインシュリンとしてのイクシュベラ(Exubera)(US5997848参照)。幾つかの薬物は、容易に肺胞を介して肺に吸収され、直接血流中に入る。吸入による投与は、他の経路(例えば、経口)によって投与することが困難な、巨大分子、例えばタンパク質、ポリペプチドおよび核酸を投与するのに、特に見込みのある方法である。吸入によるこの投与は、肺の局部的な疾患および全身的な疾患両者に対して、効果的に利用することができる。
肺疾患の薬物投与は、様々な方法、例えば液体ネブライザー、噴射剤を基本とする吸入器(エーロゾルを基本とする定量吸入器:MDI)、および乾燥粉末分散装置を用いて行うことができる。噴射剤を主成分とする処方物の開発は、一定範囲の問題と関連する。即ち、確立されたクロロフルオロカーボン(CFC's)は、そのオゾン-破壊特性を勘案すれば、最早使用することはできない。代替品としては、別の噴射ガスを使用することができる(HFA-143a/HFA227)。しかし、該代用噴射ガスは、しばしば該CFC'sに比して、該活性物質の低い溶解度を示す。更に、該懸濁液の安定性は、懸濁液を製造する際の決定的な因子となり、更なる賦形剤の使用が、該噴射ガスと該粒子との間の媒介体として必要となる、という結果をもたらす。抗体の場合にしばしば必要とされるような、高い用量設定を、MDI'sを使用して行うことは困難である。これらの因子は、MDI'sが、ペプチドおよび蛋白質処方箋にとって、益々好ましいものとなることを意味している。噴射ガスエーロゾル技術に依存することのない、乾燥粉末分散装置は、乾燥粉末として容易に処方することのできる医薬の適用において、見込みがある。
多くの他の不安定な巨大分子は、それ自体として、あるいは適当な賦形剤と共に、粉末、特に凍結乾燥粉末または噴霧乾燥粉末として安定化することができる。しかし、医薬組成物の乾燥粉末としての投与可能性は、それ自体問題点を含んでいる。多くの医薬組成物の計量は、しばしば決定的なこととなる。そのために、乾燥粉末を投与するための何れの装置も、実際に正確に、高精度で、かつ高信頼度にて、意図した容量を投与するものであることが必須である。このことは、これまでに知られている装置では、高い信頼度にて保証されてはいない。更に、多くの薬物は、極めて高価である。従って、該乾燥粉末が、効率良く放出し得るべきことが重要である。同様に、該粉末が、患者によって吸入される前に、これが容易に分散し得(飛翔可能)、結果として十分な分布および組織による吸収を保証することも重要である。これらの点は、タンパク質または医薬的に活性な物質を含有する従来の粉末の大多数において、完全には満足されていない。
従って、所定量のタンパク質、特に医薬的に活性な物質を含有する噴霧乾燥された粉末またはタンパク質組成物を含有する、これまで使用されている粉末にあっては、効率的かつ最適な肺への投与が、不可能であるという問題が生じる。一般的に認められているように、これまでに使用されている粉末においては、良好なタンパク質の安定性を達成することは可能であるが、最適な空気力学的な諸特性を達成することは不可能であった。例えば、該粉末、特に該噴霧乾燥された粉末における大量の抗体は、該一次粒子の重大な凝集を引き起こす。これらの凝集体は、分散することが困難であり、またこのことは、該粉末の空気力学的諸特性に、悪影響を及ぼす(Stefanie Schuleの博士論文, Uni LMU 2005)。
かくして、投与すべき該タンパク質または医薬的に活性な物質は、実際に必要とされる以上の、かなり大量にて投与される必要がある。というのは、使用された該活性物質の、僅かに一部分のみが、肺の標的サイトに達するに過ぎないからである。副作用の恐れも、投与量が効果的である場合よりも、一層高くなる。
従って、十分なタンパク質の安定性を持つことに加えて、極めて良好なまたは改善された空気力学的諸特性をも持つ、代りとなる粉末、特に噴霧乾燥された粉末またはタンパク質組成物を提供しなければならないという課題が発生する。
更なる本発明の目的は、吸入によって使用し、特に薬学的または医学的な用途で使用するために、対応する代りの粉末、特に噴霧乾燥された粉末またはタンパク質組成物を提供することにある。
本発明が基礎とする、これらの課題は、以下の態様および添付する特許請求の範囲において詳述される、対象物および方法によって、解決される。
本発明は、タンパク質およびフェニルアラニン、並びに場合により糖を含む粉末、特に噴霧乾燥された粉末であって、該粉末が、少なくとも30%(w/w)のフェニルアラニン、好ましくは少なくとも40%(w/w)のフェニルアラニンを含むことを特徴とする、該粉末に関するものである。
本発明は、更にタンパク質およびフェニルアラニン並びに場合により更に賦形剤、例えば糖またはポリオールを含む粉末であって、該粉末が、少なくとも30%(w/w)のフェニルアラニン、好ましくは少なくとも40%(w/w)のフェニルアラニンを含むことを特徴とする、該粉末に関するものである。
本発明は、更に粉末の製造方法にも係わり、該方法は、以下の諸工程を含むことにより特徴付けられる:
a) フェニルアラニン溶液を調製する工程;
b) 少なくとも1種のタンパク質および場合により少なくとも1種の更なる賦形剤、例えば糖またはポリオールを添加する工程;
c) かくして得た該溶液または懸濁液を、好ましくは90〜200℃なる範囲の流入温度および好ましくは40〜150℃なる範囲の流出温度にて、噴霧する工程;および
d) 該形成された粒子を、該乾燥ガスから分離する工程。
本発明は、また上記粉末の、医薬としての、および特に吸入用の医薬としての使用、並びに該粉末の、吸器系疾患または全身的疾患、例えば肺癌、肺の炎症、嚢胞性線維症、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、喘息、抗-炎症性諸疾患、例えば呼吸器合胞体ウイルス(RSV)によって引き起こされる疾患の治療用の、医薬を製造するための使用にも関連する。
タンパク質を含む、二成分および三成分粉末が、その空気力学的諸特性および噴霧乾燥後のタンパク質の安定化に関して、例外的な空気力学的諸特性を持つ代替品、好ましくは噴霧乾燥された粉末またはタンパク質組成物の製造にとって、極めて適していることが示された。その主成分は、フェニルアラニンであり、また随意の更なる成分は、フェニルアラニンと比較して良好な水溶性を持つ賦形剤、例えば糖またはポリオールである。
高い比率でのフェニルアラニンが、該粉末の製造にとって重要である。その低い溶解度および高い疎水性の結果として、該フェニルアラニンは、該粒子の表面上に蓄積され、結果的にその表面構造および粒子の形態に大きく影響する。従って、容易に水に溶解する成分、例えば糖類のラクトスクロース(LS90P)またはサッカロースおよびタンパク質は、主としてコア内部に析出し、またアモルファスなマトリックスを形成するはずである。
疎水性および溶解度に関して同様な性質を持つ他のアミノ酸(例えば、バリン、ロイシンまたはイソロイシン)は、該粉末の、対応する良好な空気力学的諸特性を生じることがなく、また結果として少なくとも30%(w/w)のフェニルアラニン、好ましくは少なくとも40%(w/w)のフェニルアラニン、または上記の他のフェニルアラニン含有率(%(w/w))にてフェニルアラニンを含む、粉末処方物の調製にとっては、不適当であることが示された。
また、該粒子の形態は、該噴霧乾燥された粉末のフェニルアラニン含有率に大きく依存することも示された。50%(w/w)、40%(w/w)および30%(w/w)なるフェニルアラニン含有率において、高度に皺の形成された、干しブドウ-様の粒子が得られる(図10a〜10c)。該フェニルアラニン含有率が20%まで減じられた場合、該皺形成の度合いは、急激に減少する。該粒子の形態における変化は、該粉末の空気力学的な諸特性における劣化と相関している。このことは、噴霧用溶液を噴霧乾燥した場合の、該フェニルアラニンの正の効果が、30%(w/w)以上においてのみ明らかになることを意味する。
他の芳香族アミノ酸に関するテストは、以下のような結果を生じた:
チロシンは、水に対する溶解度が低過ぎて、処方用の成分の一つとして考えることができない。
トリプトファンを使用した場合、20%なるトリプトファン含有率を持つ粉末処方物のみが、調製できた。これらを少量で使用した場合、該噴霧乾燥された粉末および特に空気力学的諸特性においては、該トリプトファン使用の技術的な利点は、全く検知できなかった。
ヒスチジン-含有粉末は、フェニルアラニン-含有粉末と比較して、空気中における湿分に対して極めて敏感である。従って、ヒスチジン-含有粉末を越える、該フェニルアラニン-含有粉末の主な利点は、その低い水分に対する感受性である。一方、ヒスチジン-含有粉末のFPFは、相対湿度50%に暴露された後低減され、該フェニルアラニン-含有粉末の場合には、そのFPFは湿分に暴露した後に、寧ろ改善される。対応する諸特性も、その吐出される質量との関連で観測することができる。ヒスチジン-含有粉末の場合、該吐出される質量は、湿分に暴露した際に減少するが、該フェニルアラニン-含有粉末の場合、その値は増大する。
まとめると、噴霧乾燥に及ぼすフェニルアラニンの該能動的な特性は、他の芳香族アミノ酸を用いて達成することはできないものと、結論付けることができる。
更に、結晶化阻害剤、例えばHASは、粉末の粒子特性を改善できる。結晶化阻害剤は、該粒子のコア内でのアモルファスマトリックスの形成を助け、ここで該コアには、上記糖およびタンパク質等の易水溶性の成分が配置されている。
賦形剤の巧みな選択によって、該噴霧乾燥工程に及ぼすフェニルアラニンの該正の効果を、更に改善できることも示された。この更なる賦形剤は、一部類の物質に限定されるものではない。該賦形剤は、この例においては、糖および糖アルコール、アミノ酸またはポリマーであり得る。該更なる賦形剤の使用にとって重要なことは、噴霧乾燥中のタンパク質の安定化である。フェニルアラニンとIgG1との二成分混合物と比較して、もう一つの賦形剤の添加により、該タンパク質が安定化できることも明らかである。
本発明は、公知技術から発生したものではない。
特に、噴霧乾燥によって、肺に投与するための医薬的粉末の粒子特性を改善する目的で、様々な方法が当分野において公知であり、例えば以下の方法があげられる:US 6,372,258およびUS 2005/0152849における、該粒子表面を疎水性にする試み。US 6,372,258では、噴霧乾燥された粉末を製造するために、フェニルアラニンを含む疎水性のアミノ酸を使用している。
この方法において、疎水性アミノ酸は、該タンパク質または活性物質に加えて、該噴霧用液に添加され、溶解された状態で噴霧され、乾燥される。該アミノ酸の疎水性のために、該噴霧された滴中の該アミノ酸の富化が、該滴の表面で起こり、最終的に該粒子表面における富化をもたらす。この疎水性被膜は、該粉末に対する水のアフィニティーを減じる。このことは、より低い水蒸気凝集によって引き起こされる毛管力の減少および双極子相互作用における減少と関連する。
しかし、US 6,372,285は、ロイシンまたはトリプトファン等の他の疎水性アミノ酸と比較して、30%(w/w)なる最少量、または40%(w/w)なる量のフェニルアラニンによる、上記の特に有利な空気力学的な効果も、30%(w/w)なる量、好ましくは40%(w/w)なる量のフェニルアラニン、更なる賦形剤、好ましくは糖またはポリオール、およびタンパク質、特にタンパク活性物質を含む三成分複合体の、特に有利な効果をも記載していない。
WO 970364またはUS 2005/0152849において、重大なことは、該活性物質と所謂接着防止剤との混合である。
これらの特許出願は、特にロイシンの接着防止物質としての使用を記載しており、該接着防止物質は、該粒子が相互に凝集するのを防止すべく、該粒子の被覆のために使用される。しかしながら、US 2005/0152849によれば、該粉末の10%以下が、該賦形剤からなるはずである。
EP 0913177は、対流式乾燥、特に噴霧乾燥による、生物学的に活性な物質を含む、乾燥状態にあるアモルファス製品の製造方法を記載している。しかし、タンパク質(EPO)、糖およびアミノ酸を含む、ここに記載された混合物(幾つかの場合には、ツイーン(Tween) 20をも含む)においては、該糖の割合が常に該アミノ酸の割合を越えている。更に、2種のアミノ酸が常に使用されている。その上、EP 0913177の実験とは対照的に、本発明においては、該アミノ酸を、その等電点まで滴定していない。本発明による粉末の、特に有利な空気力学的な諸特性(FPF、吐出し質量)は、フェニルアラニンの等電点に制限されない。様々なpH値において調製された該粉末は、各場合において部分的に結晶状態にある。従って、該噴霧用液のpH値は、該粉末の諸特性(分散性/吸入性)および該フェニルアラニンの噴霧性にとって決定的なものではない。事実、該タンパク質の安定化は、該噴霧用液のpHには依存しない(使用する抗体は、低pHにおいてより安定である)が、タンパク質の安定化は、また特に二成分組成物と比較して、9.0という高いpHにおいても達成し得る。
WO 0033811においては、特に低密度(0.1 g/cm以下)の、アミノ酸含有粒子が製造されている。一つの可能な方法は噴霧乾燥である。しかし、一方でアミノ酸含有率は、20%(境界)を越えず、また他方でWO 0033811の開示する要点は、ロイシンである。WO 0033811においてフェニルアラニンは述べられていない。
JP 62281847において、噴霧乾燥は、純粋なフェニルアラニンを用いて行われている。しかし、吸入には着眼されていなかった。得られる粒子の粒径は、従ってかなり大きい。
従来技術は、またアミノ酸である、アスパラギン、アルギニン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニンおよびトリプトファンを、タンパク質と共に噴霧することを教示している(N.Y.K. Chew等, 2002, 呼吸による薬物送達(Respiratory Drug Delivery),VIII, S. 743-745)。該アミノ酸の含有率は、一般に5%(w/w)であった。例外はロイシンであり、この場合には更に10%(w/w)なる含有率のアミノ酸が噴霧された。流量および装置に依存して、該FPFにおける改善が、全てのアミノ酸について見出された。しかし、最良の効果は、ロイシンを用いて得られた。ディンキヘイラー(Dinkihaler)および120L/分なる流量を用いて、フェニルアラニンについても、55-60%(w/w)なる範囲のFPFを測定できた。該発明を越える限定が、フェニルアラニンの割合において見出されることになる。更に、三成分混合物は、Chew等の研究においては使用されなかった。
以下の説明で記載される全ての百分率は、乾燥固形分、特に噴霧乾燥により得られた粉末中の乾燥固形分(w/w)の、濃度のデータおよび組成物を基準とするものである。
定義:
本明細書の範囲内において使用する用語および名称は、以下に定義される、以下のような意味を持つ。質量部および質量%の詳細は、特に述べない限り、該組成物の乾燥質量または溶液/懸濁液の固形分含有量を基準とするものである。
一般的な表現「含む(containing)」または「含む(contains)」とは、より具体的な用語「からなる(consisting of)」を包含する。更に、「一(one)」および「多数(many)」は、限定的に使用されない。
「粉末」とは、極めて細かく微粉砕された物質を表す。「噴霧乾燥(された)粉末」とは、噴霧乾燥処理によって製造した粉末を意味する。
「粒子」とは、ある物質の小さなフラグメントを表す。本発明において、粒子なる用語は、本発明による粉末中の粒子を意味する。これらの用語、粒子および粉末は、本発明において、しばしば互換的に使用される。粉末なる用語は、またその構成成分、その粒子をも含む。従って、粒子(複数)とは、全ての粒子、即ち粉末を意味する。
本発明における意味において、用語「混合物(単数および複数)」とは、全ての成分を含む真の溶液から、あるいは該成分の一種またはそれ以上が懸濁されている溶液から生成された混合物両者を意味する。しかし、本発明の意味において、該用語「混合物(複数)」とは、これら成分の固体粒子から、物理的な混合処理によって製造された、あるいはこれら成分の溶液または懸濁液を、一種またはそれ以上の固体成分に適用することによって形成された混合物をも意味する。
用語「組成物」とは、少なくとも2種の出発物質を含む、液体、半-固体または固体混合物を意味する。
用語「医薬組成物」とは、患者に投与するための組成物を意味する。
用語「医薬上許容される賦形剤」とは、本発明の範囲内の処方物中に存在することのできる賦形剤を意味する。該賦形剤は、例えば投与対象または該対象の肺に対して、如何なる有意な毒物学的に有害な効果を及ぼすこともなしに、経肺経路で投与することができる。
用語「医薬上許容される塩」とは、例えば以下のような塩を含むが、これらに限定されない:無機酸の塩、例えば塩化物、硫酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、臭化物、および硝酸塩。同様に有機酸の塩、例えばマレイン酸塩、フマール酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、エチルコハク酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、メタンスルホン酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、パルモエート(palmoate)、サリチル酸塩およびステアリン酸塩、並びにエストレート(estolate)、グルセプテート(gluceptate)およびラクトビアネート(lactobianate)塩をも含む。
「活性物質」なる用語によって、生体内で活性を呈しあるいは反応を生じる物質を意味する。活性物質が、治療の目的でヒトまたは動物の身体に投与された場合に、該物質は、医薬組成物または医薬と呼ばれる。
「タンパク(質)活性物質」なる用語により、本発明においては、構造上タンパク質として存在し、あるいは構造的にタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを構成する、活性物質を意味する。
活性物質の例は、インシュリン、インシュリン-様成長因子、ヒト成長ホルモン(hGH)および他の成長因子、組織プラスミノーゲン活性化物質(tPA)、エリスロポエチン(EPO)、サイトカイン、例えばIL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18等のインターロイキン(IL)、インターフェロン(IFN)-α、-β、-γ、-ω、または-τ、腫瘍壊死因子(TNF)、例えばTNF-α、-βまたは-γ、TRAIL、G-CSF、GM-CSF、M-CSF、MCP-1およびVEGFである。活性物質のその他の例は、モノクローナル、ポリクローナル、多重特異的および単鎖抗体およびそのフラグメント、例えばFab、Fab'、F(ab')2、FcおよびFc'フラグメント、その軽(L)および重(H)免疫グロブリン鎖、定常、可変または高頻度可変領域並びにFvおよびFdフラグメントである(Chamov等, 1999)。これらの抗体は、ヒトまたは非-ヒト起源のものであり得る。ヒト化またはキメラ抗体も可能である。同様に、該活性物質は、例えば放射性物質または化学的に定義された医薬と結合した、接合タンパク質および抗体に関連する。
Fabフラグメント(フラグメント抗原結合部位=Fab)は、隣接する定常領域によって一緒に保持されている、2つの鎖の可変領域からなっている。これらは、例えばパパイン等のプロテアーゼで処理することにより、あるいはDNAクローニングによって、従来の抗体から製造できる。他の抗体フラグメントは、ペプシンによるタンパク質分解消化によって製造できる、F(ab')2フラグメントである。
遺伝子クローニングにより、重鎖(VH)および軽鎖(VL)の可変領域のみからなる、短い抗体フラグメントを製造することも可能である。これらは、Fvフラグメント(可変フラグメント=可変部分のフラグメント)として知られている。該定常鎖のシステイン残基を介する共有結合は、これらのFvフラグメントにおいては不可能であるので、これらはしばしばある他の方法で安定化される。この目的のために、該重鎖および軽鎖の可変領域が、しばしば約10〜30個のアミノ酸、好ましくは15個のアミノ酸を含む、短いペプチドフラグメントによって、一緒に結合される。これは、単一のペプチド鎖を生成するが、そこでは、VHおよびVLは、ペプチドリンカーによって一緒に結合されている。このような抗体フラグメントは、また一本鎖Fvフラグメント(scFv)と呼ばれている。scFv抗体の例は公知であり、例えばHuston等, 1988に記載されている。
過去において、マルチマー型のscFv誘導体を製造するための、様々な戦略(方法)が開発されている。その意図は、改善された薬物動態学的特性と高い結合親和性とを持つ、組換え抗体を製造することである。該scFvフラグメントのマルチマー化を達成するために、これらを、マルチマー化ドメインを持つ融合タンパク質として製造する。該マルチマー化ドメインは、例えばIgGまたはへリックス構造(「コイルドコイル構造」)のCH3領域、例えばロイシンジッパー(Leucine Zipper)ドメインであり得る。他の方法では、該scFvフラグメントの該VHおよびVL領域間の相互作用を、マルチマー化(例えば、ダイマー(dia)-、トリマー-およびペンタマー-体)のために使用される。ダイマー-体なる用語は、二価のホモダイマー型scFv誘導体を表すために、当分野において使用される。該scFv分子における該ペプチドリンカーの、5〜10アミノ酸までの短分子化は、VH/VL鎖の重なり合いにより、ホモダイマーの形成をもたらす。該ダイマー-体は、挿入されたジスルフィドブリッジによって、さらに安定化することができる。ダイマー-体の例は、文献、例えばPerisic等(1994)の文献に見出すことができる。
該用語ミニ体(minibody)とは、当分野において、二価のホモダイマー型scFv誘導体を表すために使用される。これは、融合タンパク質からなり、該融合タンパク質は、ダイマー化領域として、免疫グロブリン、好ましくはIgG、最も好ましくはIgG1のCH3領域を含む。これは、ヒンジ領域、同様にIgGおよびリンカー領域によって、該scFvフラグメントを結合する。このようなミニ体の例は、Hu等(1996)によって記載されている。
該用語トリマー(体)とは、当分野において、二価のホモダイマー型scFv誘導体を表すために使用される(Kortt等, 1997)。リンカー配列を使用することなしの、VH-VLの直接的な融合は、トリマーの形成に導く。
二価、三価または四価構造を持つミニ抗体として、当分野において知られている該フラグメントも、scFvフラグメントの誘導体である。このマルチマー化は、ダイマー、トリマーまたはテトラマー型コイルドコイル構造によって達成される(Pack等, 1993および1995; Lovejoy等, 1993)。
該用語「賦形剤」とは、本発明において、粉末、特に噴霧乾燥された粉末において、処方物に添加される物質を意味する。賦形剤は、通常それ自体活性、特に医薬的な活性を持たず、上記活性成分、例えば有効物質を含む処方物を改善し、かつその特定の特徴(例えば、保存安定性)を最適化するのに役立つ。
医薬上の「賦形剤」は、医薬または医薬組成物の一部であり、また特に活性物質が作用すべきサイトに到達し、そこに放出されることを保証する。賦形剤は、以下の3つの基本的な働き:担体としての機能、該活性物質の放出を制御する機能、および該物質の安定性を高める機能を持つ。賦形剤は、また薬剤の形態を形成し、結果としてその持続性または効果の速さを変更するためにも使用される。
上記用語「アミノ酸」とは、少なくとも一つのアミノ基と少なくとも一つのカルボキシル基とを含む化合物を意味する。該アミノ基は、通常該カルボキシル基のα-位にあるが、該分子における任意の他の配列も考えることもできる。該アミノ酸は、他の官能基、例えばアミノ、カルボキサミド、カルボキシル、イミダゾール、チオ基または他の基を含むことも可能である。天然または合成起源の、様々な割合で立体異性を含むラセミ体または光学的に活性な(D-またはL-)アミノ酸を使用することも可能である。例えば、イソロイシンなる用語は、D-イソロイシン、L-イソロイシン、ラセミ型イソロイシンおよび様々な比率の2種のエナンショマーを包含する。
上記用語「ペプチド」、「ポリペプチド」または「タンパク質」とは、2個を越えるアミノ酸残基からなるアミノ酸のポリマーを意味する。
更に、該用語「ペプチド」、「ポリペプチド」または「タンパク質」とは、10個を越えるアミノ酸残基からなるアミノ酸のポリマーを意味する。
ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質なる用語は、変名として使用され、ホモ-およびポリ-両者、即ち同一のまたは異なるアミノ酸残基からなるアミノ酸のポリマーを包含する。従って、「ジ-ペプチド」は、2個のペプチド結合したアミノ酸で形成され、「トリ-ペプチド」は、3個のペプチド結合されたアミノ酸で構成されている。
ここで使用する「タンパク質」なる用語は、20を越える、および特に100個を越えるアミノ酸残基を含むアミノ酸のポリマーを意味する。
上記用語「小(さな)タンパク質」とは、50kD以下または30kD以下、または5-50kDなる範囲のタンパク質を意味する。該「小(さな)タンパク質」なる用語は、更に500未満のアミノ酸残基または300未満のアミノ酸残基を含む、アミノ酸のポリマー、または50-500個なる範囲のアミノ酸残基を持つポリマーを意味する。好ましい小タンパク質は、例えば「ヒト成長ホルモン/その因子」等の成長因子、インシュリン、カルシトニン等である。
上記の「オリゴ糖」または「多糖」なる用語は、少なくとも3個のモノマー型糖分子からなるポリサッカライド(多糖)を意味する。
上記用語「%(w/w)」とは、上記噴霧乾燥された粉末中の活性物質または賦形剤の、質量基準での、百分率で表された量を意味する。述べられている割合は、該粉末の乾燥物質の質量を基準とする。従って、該粉末中の残留水分は、考慮されていない。
上記の「アモルファス」なる用語は、該粉末化された処方物が、10%未満の、好ましくは7%未満のより好ましくは5%未満の、および最も好ましくは4、3、2または1%未満の結晶画分を含むことを意味する。
上記用語「吸入性(可能な)」とは、該粉末が、肺への投与に適していることを意味する。吸入性粉末は、吸入器によって分散させ、また吸入することができるので、該粒子は、肺に入り、また場合により肺胞を介して全身性の活性を発現できる。吸入性の粒子は、例えば0.4-30μmなる範囲(MMD=質量中央値粒径(mass medium diameter))、通常0.5-20μmなる範囲、好ましくは1-10μmなる範囲の平均粒径、および/または0.5-10μmなる範囲、好ましくは0.5-7.5μmなる範囲、より好ましくは0.5-5.5μmなる範囲、より一層好ましくは1-5μmなる範囲、および最も好ましくは1-4.5μmなる範囲または3-10μmなる範囲の、平均空気力学的粒径(MMAD=質量中央値空気力学的粒径(mass median aerodynamic diameter))を持つことができる。
「質量中央粒径」または「MMD」は、本発明による粉末が、一般的に多分散性であることから、平均粒子径分布の一尺度である。これらの結果は、全スルーフロー(throughflow)の50%における、全体積分布の径として表される。該MMDの値は、例えばレーザー回折法(laser diffractometry)により測定できるが、勿論如何なる他の公知の方法(例えば、電子顕微鏡法、遠心沈降法)を利用して測定することも可能である。
該用語「平均空気力学的粒径」(=質量中央値空気力学的粒径(MMAD))は、該径において、該粉末の質量を基準として、その粒子の50%が、より小さな空気力学的径を持つ、該空気力学的粒径を示す。疑いのある場合、該MMADを測定するための基準法は、本明細書において特定された方法である。
MMDおよびMMADは相互に異なっており、例えば噴霧乾燥によって生成される中空の球は、MMADの値よりも大きなMMD値を持つ可能性がある。
上記用語「微細粒子画分」(FPF)とは、≦5μmなるMMADに相当する粒径を持つ粒子からなる粉末の、吸入可能な部分を表す。容易に分散し得る粉末において、該FPFは、20%を越え、好ましくは30%を越え、より特定的には40%を越え、またより好ましくは50%を越え、より一層好ましくは55%を越える。本明細書において使用される表現「遮断(除外)径(Cut Off Diameter)」は、当該粒子が、該FPFを決定する際に考慮されることを示す。5μmなる遮断径(FPF5)を持つ、30%なるFPFは、該粉末中の全粒子の少なくとも30%が、5μm未満の平均空気力学的粒径を持つことを意味する。
用語「飛翔時間」とは、以下の実施例の部分においてより一層詳しく説明されるような、標準的な測定方法の名称である。飛翔時間の測定において、該MMADは、規定された測定距離を越える、粒子の飛翔時間を測定することによって決定される。該MMADは、該飛翔時間と相関する。このことは、より大きなMMADを持つ粒子が、対応するより小さな粒子(この課題の一つ:〔実施例〕、方法を参照のこと)よりも長い飛翔時間を要することを意味する。
上記用語「吐出し質量」とは、吸入器を用いた場合の、送達される粉末の量を言う。この送達量は、この場合においては、例えばカプセルを用いて、該吐出し前後の該カプセルを秤量することによって決定される。該吐出し質量は、該吐出し前後の該カプセルの重さにおける差に相当する。
用語「分散性(し得る)」とは、飛翔の可能性を意味する。粉末の飛翔能力に関する前提条件は、粉末の個々の粒子への解凝集(離解)、および空気中における該個々の粒子の分布である。粒子の凝集塊は、大き過ぎて、肺に入ることができず、またその結果吸入療法にとって不適当である。
用語「周囲温度」とは、約20-25℃(±10%)なる温度を表す。この周囲温度なる用語は、特に25℃なる温度を表す。
用語「モノマー含有率」または「モノマー」とは、タンパク質の単一のサブユニットからなる該タンパク質の百分率による割合を表す。該モノマー含有率と、該モノマーおよびダイマーまたは数個のサブユニットからなるオリゴマーの小さなフラグメントからなる画分とは、明確に区別されなければならない。該モノマー含有率は、例えば排除クロマトグラフィーによって測定される。
上記用語「凝集体(物)」とは、固有の状態にある単一のサブユニットからなるタンパク質の、ダイマーおよびオリゴマーの割合を意味する。
本発明による組成物
該噴霧乾燥された粉末(ここでは、微細粒子画分FPFが関係する)の飛翔特性を決定する因子は、該粒子のサイズ(飛翔時間の測定により決定される、MMDまたは特にMMAD)および該粉末の分散特性である。該粒子表面の化学的組成および該粒子の形態は、該粉末の分散特性にとって決定的である。従って、該粉末の分散特性は、該粉末の成分、特に該賦形剤の慎重な選択により、決定的な影響を受ける恐れがある。
該粒子のサイズおよび形態は、以下のようにして、噴霧乾燥機内で噴霧された後に、個々の液滴を乾燥した場合に得られる:
吸入性の粉末は、通常2-物質ノズルを用いて製造される。後の粒径の出発点として関連する該液滴のサイズ(MMD)は、該アトマイザーガスの割合に依存して、約8-20μmなる範囲にある。該液滴は、2段階に渡って乾燥される。その第一の段階において、水が、如何なる固形分をも生成しないように蒸発される。該溶液に含まれる物質の溶解度限界に達した後に、固/液の二重相が生成され、最終的に封入された固体層が形成される。該粒子を形成する核は、水および既に析出した該物質よりも、相対的に高い溶解度を持つ溶解物質をも含有する。
該粒子形成の該第二段階は、該封入された固体層の形成後に、開始する。該水の蒸発速度は、該固体層により急激に低下される。該第二段階において、該水の蒸発速度は、該粒子層を介する該水の拡散速度に依存する。該蒸気の拡散が、かなり阻害されると、形成中の該粒子の核における温度の上昇が、高い蒸気圧をもたらす。その釣合いを保つために、該粒子は膨張し、結果として中空球を形成する。該水の蒸発後、または該粒子の冷却中に、該粒子核内で、低圧が生じる。該粒子層の安定性に依存して、該粒子は、その膨張した状態のまま固化するか、あるいは該粒子は圧潰(破壊)される。
該粒子が破壊される傾向は、物質のサイズまたはその製法のみに依存するものではない。寧ろ、該破壊は、該固体の疎水性、到達される溶解度限界および該噴霧用液の固体画分の複雑な関数である。該噴霧用液の溶解度限界および固体画分の組合せも、該粒子層の厚みを制御する。他の影響を及ぼす変数、例えばガラス転移点およびこれに起因する該噴霧用液中の該粉末の粘度も、該破壊傾向に影響する恐れがある。
まとめると、大雑把に言うと、上記の生成しつつある粒子の膨張傾向は、該賦形剤の低下する溶解度およびその疎水性と共に増大する。他方において、該膨張した粒子の該破壊傾向は、物質-特異的性質であると考えられる。この点に関連して、フェニルアラニンは、該粉末、特にタンパク質-含有粉末および噴霧乾燥した粉末における、驚くほどに良好で、予想外の該粉末の形態をもたらす。この効果は、このような粉末の吸入にとって、特に有利である。
同様な疎水性および溶解度を持つ賦形剤(バリン、イソロイシン)は、これに匹敵する形態を示さず、また結果的に匹敵する空気力学的な諸特性を全く示さなかった。
本発明は、タンパク質およびフェニルアラニンを含有する粉末に係り、該粉末が、少なくとも30%(w/w)のフェニルアラニンを含有する(少なくとも2成分複合体)ことを特徴とする。
本発明は、特にタンパク質、フェニルアラニンおよび少なくとも1種の他の賦形剤、例えば糖またはポリオールを含有する粉末に係り、該粉末が、少なくとも30%(w/w)のフェニルアラニンを含有する(少なくとも3成分複合体)ことを特徴とする。
本発明は、タンパク質およびフェニルアラニンを含有する粉末に係り、該粉末が、少なくとも40%(w/w)のフェニルアラニンを含有する(少なくとも2成分複合体)ことを特徴とする。
本発明は、特にタンパク質、フェニルアラニンおよび少なくとも1種の更なる賦形剤、例えば糖またはポリオールを含有する粉末に係り、該粉末が、少なくとも40%(w/w)のフェニルアラニンを含有する(少なくとも3成分複合体)ことを特徴とする。
好ましい一態様において、該本発明の粉末(少なくとも2成分または3成分)は、噴霧乾燥された粉末である。
一特定の態様において、本発明は、タンパク質またはタンパク-活性物質および賦形剤としてのフェニルアラニンおよび場合により糖またはポリオール等の更なる賦形剤を含む粉末に係り、しかも該粉末は、少なくとも30%(w/w)のフェニルアラニン、好ましくは少なくとも40%(w/w)のフェニルアラニンを含むことを特徴とする。場合により他の物質、特に賦形剤を、該粉末中に含むことができる。更に、本発明のこの特別な態様は、またタンパク質またはタンパク-活性物質および賦形剤としてのフェニルアラニンおよび場合により糖またはポリオール等の更なる賦形剤からなる粉末を含み、しかも該粉末が、少なくとも30%(w/w)のフェニルアラニン、好ましくは少なくとも40%(w/w)のフェニルアラニンからなっていることを特徴とする、医薬組成物に係る。
更なる態様において、本発明の粉末は、少なくとも30%(w/w)、31%(w/w)、32%(w/w)、33%(w/w)、34%(w/w)、35%(w/w)、36%(w/w)、37%(w/w)、38%(w/w)、39%(w/w)、40%(w/w)、41%(w/w)、42%(w/w)、43%(w/w)、44%(w/w)、45%(w/w)、46%(w/w),47%(w/w),48%(w/w),49%(w/w),50%(w/w),51%(w/w)、52%(w/w),53%(w/w)、54%(w/w)、55%(w/w)、56%(w/w)、57%(w/w)、58%(w/w)、59%(w/w)、60%(w/w)、61%(w/w)、62%(w/w)、63%(w/w)、64%(w/w)、65%(w/w)、66%(w/w)、67%(w/w)、68%(w/w)、69%(w/w)、70%(w/w)、75%(w/w)、80%(w/w)、85%(w/w)、90%(w/w)、95%(w/w)、99%(w/w)、または99.99%(w/w)のフェニルアラニンを含む。高率でのフェニルアラニンの使用は、著しく効力のあるタンパク質、例えばサイトカインおよびインターフェロン(IFN-α、IFN-β、IFN-γ、IFN-ω、ペジレート化(pegylated) IFN等)において特に好ましい。というのは、ほんの少量(0.01%(w/w)〜10%(w/w)なる範囲、特に0.01%(w/w)〜5%(w/w)なる範囲および特に0.01%(w/w)〜1%(w/w)なる範囲)の、このタンパク質が、必要とされるに過ぎないからである。
好ましい一態様において、本発明の粉末は、30%(w/w)〜99.99%(w/w)なる範囲、好ましくは40%(w/w)〜99.99%(w/w)なる範囲、好ましくは40%(w/w)〜70%(w/w)なる範囲、60%〜90%または特に好ましくは60%〜80%なる範囲の、一定割合のフェニルアラニンを含む。
更なる態様において、本発明の粉末は、二糖およびオリゴ糖から選択される非-還元性の糖を含む。好ましい該二糖は、サッカロースまたはトレハロースであり、該オリゴ糖は、三糖、例えばラクトスクロースである。
もう一つの態様において、該糖の割合は、多くとも50%(w/w)、好ましくは5%(w/w)、10%(w/w)、15%(w/w)、20%(w/w)、25%(w/w)、30%(w/w)、35%(w/w)、40%(w/w)、45%(w/w)および特に好ましくは10〜20%(w/w)なる範囲内にある。
更なる態様において、本発明の粉末は、ポリオールを含む。好ましくは、該ポリオールは、マニトールである。
更なる態様において、糖対蛋白質の質量比は、1:10〜10:1なる範囲、好ましくは1:3〜5:1なる範囲内にある。
更に好ましい態様において、本発明の粉末は、HSA(ヒト血清アルブミン)等の結晶化阻害剤を含む。好ましくは、該粉末は、0.1%(w/w)のHSA、少なくとも0.5%(w/w)のHSA、少なくとも1%(w/w)のHSA、少なくとも5%(w/w)のHSA、少なくとも10%(w/w)のHSA、少なくとも15%(w/w)のHSAを含む。更に、本発明の粉末は、好ましくは0.1 %(w/w)〜60%(w/w)なる範囲のHSA、0.5%(w/w)〜60%(w/w)なる範囲のHSA、1%(w/w)〜60%(w/w)なる範囲のHSA、10%(w/w)〜60%(w/w)なる範囲のHSA、0.1%(w/w)〜40%(w/w)なる範囲のHSA、0.5%(w/w)〜40%(w/w)なる範囲のHSA、1%(w/w)〜40%(w/w)なる範囲のHSA、10%(w/w)〜40%(w/w)なる範囲のHSA、0.1%(w/w)〜20%(w/w)なる範囲のHSA、0.5%(w/w)〜20%(w/w)なる範囲のHSA、1%(w/w)〜20%(w/w)なる範囲のHSA、10%(w/w)〜20%(w/w)なる範囲のHSA、0.1%(w/w)〜1%(w/w)なる範囲のHSA、0.5%(w/w)〜1%(w/w)なる範囲のHSA、0.1%(w/w)〜0.90%(w/w)なる範囲のHSA、0.5%(w/w)〜0.9%(w/w)なる範囲のHSA、0.1%(w/w)〜3%(w/w)なる範囲のHSA、0.5%(w/w)〜3%(w/w)なる範囲のHSAを含む。更に、該粉末は、1%(w/w)未満のHSA、0.9%(w/w)未満のHSAを含む。
更に好ましい態様において、該本発明の粉末は、> 6.0、>6.5、>7.0、>7.4、>8なるpHを持つ。6.0〜9.0なる範囲、または7.0〜8.0なる範囲のpHが、特に好ましい。
更なる特に好ましい態様において、該本発明の粉末は、生理的pH値にある。更に、とりわけ好ましい態様において、該本発明の粉末のpHは、7.0〜7.4なる範囲にある。更に好ましい態様において、該本発明の粉末は、フェニルアラニンの等電点に相当しないpHにある。
好ましい一態様において、該タンパク質は、活性物質、好ましくは医薬的に活性な物質、例えば抗体、抗体フラグメント、抗体の一部分との融合タンパク質、または接合抗体、成長因子、ホルモン、酵素、サイトカインまたはインターフェロンである。特に好ましい態様において、該医薬的に活性な物質は、インシュリンまたはカルシトニンである。
更なる態様において、該医薬的に活性な物質は、新生児のFc-レセプタと結合する、抗体フラグメントまたはタンパク質である。
更なる態様において、該タンパク質の含有率は、0.01-70%(w/w)、0.01-60%(w/w)、0.01-50%(w/w)、0.01-40%(w/w)、1-50%(w/w)、10-50%(w/w)および好ましくは30-50%(w/w)なる範囲内にある。
好ましい一態様において、フェニルアラニン/糖/タンパク質の比は、40/10/50、99.89/0.1/0.01、90/9/1、90/1/9、80/10/10、30/10/60、好ましくは60/10/30または50/10/40である。
特に好ましい態様において、該粉末は、60/10/30なる質量比にある、フェニルアラニン/ラクトスクロースまたはサッカロース/少量のタンパク質からなる。
更なる態様において、該粉末粒子の平均空気力学的粒径(MMAD=質量中央値空気力学的粒径)は、10μm未満、好ましくは7.5μm未満、より一層好ましくは1-6μmなる範囲または3-6μmなる範囲または5-7μmなる範囲内にある。
更なる態様において、本発明は、医薬組成物に係り、該組成物は、本発明による粉末を含む。
更なる態様において、該医薬組成物は、更に医薬上許容される賦形剤または医薬上許容される賦形剤、例えば医薬上許容される塩、バッファー、洗浄剤等を含む。
本発明は、更に本発明による粉末の製造方法に関連し、ここで該方法は、以下の諸工程を含む:
a) フェニルアラニン溶液を調製する工程;
b) 少なくとも1種のタンパク質および場合により少なくとも1種の更なる賦形剤、例えば糖またはポリオールを添加する工程;
c) かくして調製した該溶液または懸濁液を、好ましくは90〜200℃なる範囲の流入温度および好ましくは40〜150℃なる範囲の流出温度にて、噴霧する工程;および
d) 該形成された粒子を、該乾燥ガスから分離する工程。
本発明による方法の好ましい一態様において、該溶媒は、水、エタノール、イソプロパノール等である。
本発明の方法の特に好ましい態様においては、該タンパク質は、医薬的に活性な物質である。該医薬的に活性な物質は、好ましくは小タンパク質、抗体、抗体フラグメント、抗体の一部を持つ融合タンパク質、または接合抗体、成長因子、ホルモン、酵素、サイトカインまたはインターフェロンである。特に好ましい態様において、該医薬的に活性な物質は、インシュリン、カルシトニンである。更にとりわけ最も好ましい態様において、該医薬的に活性な物質は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4群の抗体、抗体フラグメント、インターフェロン等である。
本発明の方法の更に好ましい態様において、該工程b)においては、先ず糖またはポリオール等の更なる賦形剤を添加し、次いで該活性物質を添加する。
本発明の方法の更なる態様において、以下の工程を、該工程a)と工程b)との間において実施する:
-該フェニルアラニン溶液を、好ましくは80℃まで加熱する工程;および
-該フェニルアラニン溶液を、各場合において添加すべき該特定のタンパク質の変性温度以下まで冷却する工程、ここで、該冷却は、好ましくは周囲温度までである。
本発明の方法の好ましい態様において、該溶液または懸濁液は、少なくとも一つの加圧ノズルまたは少なくとも一つのロータリーエバポレータまたは少なくとも一つのベンチュリノズルまたは少なくとも一つの超音波ネブライザーまたは少なくとも一つの2-物質ノズルによって、該工程c)において噴霧される。特に好ましい態様において、該溶液または懸濁液は、少なくとも一つの2-物質ノズルを用いて、該工程c)において噴霧される。
本発明の方法の更に好ましい態様において、該工程d)における該粒子の分離は、少なくとも一つの粒子分離器、好ましくは少なくとも一つのサイクロンを用いて行われる。
本発明は、更に本発明による粉末または本発明による医薬組成物の、医薬としての使用に関する(第一の医学的効能)。
好ましい医学的利用において、該医薬は、本発明による噴霧乾燥された粉末を含む。
本発明は、更に本発明による粉末または本発明による医薬組成物の、吸入用医薬としての利用に関する。
好ましい医学的利用において、該吸入用医薬組成物は、本発明による噴霧乾燥された粉末を含む。
本発明は、更に本発明による粉末または本発明による医薬組成物の、呼吸器系疾患または全身的疾患を治療するための、医薬の製造における利用に関する(第二の医学的効能)。
好ましい一態様において、呼吸器系疾患または全身的疾患を治療するための、医薬の製造において利用される本発明の該粉末、または本発明により使用される該医薬組成物は、噴霧乾燥される。
特に好ましい態様において、該呼吸器系疾患または全身的疾患は、肺癌、肺の炎症、嚢胞性線維症、COPD(閉塞性肺疾患)、喘息、抗-炎症性諸疾患、ウイルス疾患、例えば呼吸器合胞体ウイルス(RSV)によって引き起こされるウイルス疾患からなる群から選択される。
本発明の好ましい一態様は、発明に関連する粉末、好ましくは噴霧乾燥された粉末に係り、該粉末は、添加されたステアリン酸マグネシウムを全く含まない。ステアリン酸マグネシウムは、噴霧乾燥によって粒子表面を疎水性にするには不適当である。というのは、該物質は、事実上水に不溶であり、従ってステアリン酸マグネシウム懸濁液を使用する必要があるからである。この場合、所定の粒子被覆を保証するためには、高いステアリン酸マグネシウム濃度が必要とされる。従って、より適した方法は、別の処理工程、例えば該(噴霧乾燥された)粉末と、ステアリン酸マグネシウムとを混合する工程である。
更に好ましい態様において、好ましくは噴霧乾燥された本発明の粉末、あるいは本発明の医薬組成物は、フェニルアラニン以外のアミノ酸を含まない。該(噴霧乾燥された)粉末は、また好ましくは排他的にアミノ酸としてのフェニルアラニンを含む。この態様は、他のアミノ酸が、該フェニルアラニンの驚くべき空気力学的効果を減じ、または弱めるからである。
本発明のもう一つの好ましい態様は、添加されたバリンを含まない、本発明の粉末、好ましくは噴霧乾燥された粉末に係る。この好ましい粉末は、バリンを全く含まない。
本発明のもう一つの好ましい態様は、添加されたイソロイシンを含まない、本発明の粉末、好ましくは噴霧乾燥された粉末に関する。この好ましい粉末は、イソロイシンを全く含まない。
本発明のもう一つの好ましい態様は、添加されたロイシンを含まない、本発明による粉末、好ましくは噴霧乾燥された粉末に関する。この好ましい粉末は、ロイシンを全く含まない。
更に好ましい態様において、本発明の粉末、好ましくは噴霧乾燥された粉末は、ツイーン(Tween) 20等の添加された界面活性剤を含まない。この態様は、界面活性剤が、タンパク質粉末、特に噴霧乾燥されたタンパク質粉末に対して、不安定化作用を持つ傾向があることから、好ましいものである。
本発明のもう一つの好ましい態様は、添加されたデキストランを含まない、本発明による粉末、好ましくは噴霧乾燥された粉末に関する。この好ましい粉末は、デキストランを全く含まない。デキストラン-含有粉末は、低い分散性を有し、また結果的により好ましくないものとなる。
以下の実施例から、より高い疎水性を持つアミノ酸が、該粒子の膨張を引き起こすことは明らかである。他方、含まれているアミノ酸の機能として、粒子が破壊される傾向は、予想できず、また如何なる構造に基く法則にも従わない。以下の実施例において、この破壊は、驚くべきことに、バリン、イソロイシン、フェニルアラニンの順に増大する。バリンは、丸い粒子を形成するが、フェニルアラニン-含有粒子は、殆ど完全に破壊される。該フェニルアラニン-含有粉末は、驚くべきことに、極めて良好な空気力学的特性を持つ。65-72%なる範囲の部再粒子画分(FPF)を、該アミノ酸の飽和度とは無関係に、達成することができる。
該フェニルアラニン-含有粉末を用いて達成された該最大のFPFは、フェニルアラニンを含まないが、他の賦形剤を含む粉末、特に噴霧乾燥された粉末に比して、極めて高いことも、強調すべきである。達成可能な最大のFPFは、インパクター段階により決定され、該FPFおよび該飛翔時間の測定によって決定される、粒径5μm以下の割合との比較によって示される。これによれば、容易に分散し得る粉末に関して、該インパクター段階のFPFと、飛翔時間の測定によって決定される粒径<5μmの画分との間には、極僅かなずれのみが存在する。他方、低分散性の粉末を用いた場合、該インパクター段階を介して得ることのできるFPFが、実質上より低い値であることは明らかである。その理由は、該インパクター工程において、該微細粒子画分が、全ての画分に対して決定されることにある。このことは、例えばカプセル、吸入器およびサンプル導入口における残留粉末によって生じる損失が、該測定されたFPFを低下することを意味する。他方において、該飛翔時間の測定に関連して、釣合は、専ら既に分散された粉末を通して得られ、このことは、上記損失がこれらの測定に入り込まないことを意味している。
該粒子の空気力学的諸特性が、該粒子の形態およびその表面の特性に著しく依存するものと推定される。従って、フェニルアラニン-含有粒子の場合におけるような、該粒子または著しく破壊された粒子内の多数の窪みが、吸入にとって理想的なものとなる。
該破壊およびこれに関連する不均一な形状は、ファンデルワールス力を弱める。その上、該フェニルアラニン-含有粒子は、該バリン-含有およびイソロイシン-含有粒子とは違って、実質上より粗い表面構造を持つ。この粗い表面構造は、結晶化によって生じたものである。
以下の実施例において、フェニルアラニン単独で、および特に糖との組合せで、とりわけ噴霧乾燥後に、極めて良好な粉末の空気力学的諸特性をもたらすことを示すことができた。しかし、フェニルアラニン単独では、あらゆるタンパク質、例えば実施例1および2において使用したIgG1-抗体を安定化することはできない。しかし、このようなタンパク質に対して、糖の添加により安定化することが可能である。
以下の実施例は、該タンパク質が、殆ど完全に安定な状態で、1ヶ月、2カ月および3ヶ月間に及ぶテストした保存期間に渡り、25℃および40℃両者において、乾燥保存条件下で、保存できることを示している。湿潤条件下では、実施例において使用した該抗体においてみられたように、該タンパク質は幾分か損傷される可能性がある。
以下の実施例は、また該フェニルアラニン-含有粉末が、デキストラン-含有粉末と比較して、実質的により良好なFPF(33.7%に対して59.6%)を持つことも示される。これら2種の粉末の空気力学的粒径は、ほんの僅かに異なっているに過ぎず、あるいは該フェニルアラニン-含有粉末は、僅かに高いMMADを有しているが、これら粉末は、該カプセルから排除されるので、該FPFにおける差は、該粉末の分散特性によるものとすることができる。このことは、該フェニルアラニン-含有粉末が、対応するデキストラン-含有粉末に比して、実質的に良好に分散でき、また結果として粒子間相互作用が減じられることを意味している。
以下の実施例は、またデキストラン-含有粉末に比して、該フェニルアラニン-含有粉末が、該保存期間全体に渡り、該FPFにおいて、実質的により小さな破壊性を持つことをも示している。フェニルアラニンは、より高い湿度(例えば、25℃/60%相対湿度)において特に有利である。デキストラン-含有粉末においては、該FPFはその初期値の45-49%に減少するが、該フェニルアラニン-含有粉末は、寧ろ25℃/60%相対湿度において2ヶ月間の保存後に、該FPFにおける増加を示し、また保存の3ヶ月後には、その初めの値の僅かに89%に低下したに過ぎない。
これら実施例の結果は、特に高い湿度における該三成分粉末組成物の適性を強調している。従来の粉末、特に噴霧乾燥して粉末は、一般に高い湿度条件に暴露した際に、その空気力学的諸特性における多大な劣化を示す。他方、フェニルアラニンは、高い湿度下(例えば、相対湿度60%)で保存した際に、該空気力学的特性の安定化をもたらし、あるいは以下の実施例において示すように、これら特性を寧ろ改善する。
該粉末の形態学
以下の実施例によって示されるように、粉末、フェニルアラニン-含有粉末も、またデキストラン-含有粉末も、粉末の大きな凝集体を全く含まない。その上、多数の窪みを、該処方物中に見ることができる。これら2種の形態間の本質的な差は、該フェニルアラニン-含有粉末の高い表面粗さである。この高い表面粗さは、該粉末のより良好な分散特性の原因であると考えられる。
実施例1:二成分複合体
IgG1および溶解度および疎水性において異なる様々なアミノ酸から、二成分溶液を調製した。該噴霧溶液中のアミノ酸の濃度は、使用した該アミノ酸については50%であり、また他の一連のテストにおいては、特定のアミノ酸の達成し得る最大の濃度の90%であった(以下の表1参照のこと)。IgG1とアミノ酸との間の質量比は95/5であった。該アミノ酸の異なる溶解度のために、これに対応して異なる固体画分が得られた。
Figure 2009541446
これらの溶液を、以下の噴霧条件下で、噴霧乾燥した:
噴霧乾燥器: SD-ミクロ(Micro)[メサーズニロ(Messrs. Niro)]
入口温度: 120 ℃
出口温度: 90 ℃
アトマイザーガス流量: 5 kg/h
乾燥ガス流量: 28 kg/h
より疎水性の高いアミノ酸が、粒子の膨張を引き起こすことが分かった。粒子の破壊傾向は、バリン、イソロイシンおよびフェニルアラニンの順に増大した。バリンは丸い粒子を形成したが、フェニルアラニンは、殆ど完全に破壊された(図1a-1c参照のこと)。該フェニルアラニン-含有粉末は、驚いたことに極めて良好な空気力学的特性を有していた。該アミノ酸の飽和度とは無関係に、65-72%なる微細粒子画分(FPF)を達成することができた(表2参照のこと)。
また、該フェニルアラニン-含有粉末について達成可能な最大のFPFは、表1に掲載した賦形剤を含む、噴霧乾燥した粉末と比較して、極めて高いことも強調すべきである。該達成可能な最大のFPFは、該インパクター段階により決定されたFPFと、該飛翔時間を測定することにより決定された、粒径5μm以下の割合とを比較することにより得られる。該APS法は、図5/6の説明において詳しく説明されている。これによれば、容易に分散し得る粉末に対して、該インパクター段階により決定されたFPFと、該飛翔時間を測定することにより決定された、粒径5μm以下の割合との間には、ほんの僅かな差が存在するに過ぎない。他方で、低分散性の粉末の場合には、該インパクター段階を介して得られたFPFは、実質的に小さいことが明らかである。その理由は、該インパクター法においては、該微細粒子画分が、全ての画分に対して決定されることにある。このことは、該カプセル中、吸入器中および該サンプル導入口に残留する粉末によって、損失、例えば決定されるFPFの低下が発生することを意味する。他方、該飛翔時間の測定に関連して、釣合は、専ら既に分散されている粉末を通して得られ、このことは、上記損失がこれらの測定に入り込まないことを意味している。
該粒子の空気力学的諸特性が、該粒子の形態およびその表面特性に著しく依存するものと推定される。従って、フェニルアラニン-含有粒子の場合におけるような、該粒子または著しく破壊された粒子内の多数の窪みが、吸入にとって理想的なものとなる。
該破壊およびこれに関連する不均一な形状は、ファンデルワールス力を弱める。その上、該フェニルアラニン-含有粒子は、該バリン-含有粒子およびイソロイシン-含有粒子とは違って、実質上より粗い表面構造を持つ。この粗い表面構造は、結晶化によって生じたものである。
Figure 2009541446
上記表2の注a:該MMADは飛翔時間の測定(TOF)を利用して決定した。そのために、該粉末を、サンプル導入口(SIP)を介し、39.0L/分なる流量にて、ハンディヘイラー(HandiHalar)を用いて吐出させる。該SIPを通過させた後、該エーロゾル粉末を、分割する。該粒子集団の99.8%に相当する部分を、一段インパクターに通す。0.2%部分を、毛管を介して該TOF測定セルに送る。
上記表2の注b:該FPFは、一段インパクターを用いて測定する。該インパクターの遮断は、39.0L/分なる流量にて、5.0μmにて行う。
上記表2の注c:該達成し得る最大のFPFは、該TOF測定セルにおいて決定した粒径<5μmを持つ粒子の割合に等しい。該インパクター段階を直接通過する該粉末エーロゾルは、該TOF測定セルにて測定する。従って、該TOF測定値は、該測定装置内に予め堆積している粒子部分との関連性はない(カプセル、ハンディヘイラー、SIP)。他方、該FPFは、該カプセル中の質量に依存する。これは、該インパクター段階に達する前に堆積している粒子部分を含む。該FPFが、該TOF測定セル内で見出された粒径<5μmを持つ粒子部分と等しい場合には、結果的に該粉末は、完全に分散されており、また該ハンディヘイラーおよびSIPには、粉末堆積物はない。
図2は、噴霧乾燥後の該抗体のモノマー含有率を示す。このことから、該疎水性の低いアミノ酸(グリシン、アスパラギン)は、該抗体に及ぼす安定化効果を持つことは明らかである。該疎水性アミノ酸(バリン、イソロイシンおよびフェニルアラニン)は、これとは対照的に、該抗体に対する十分な安定化能力を有していなかった。
実施例2:三成分複合体
実施例1に基いて、三成分混合物を、IgG1、フェニルアラニンおよび他の賦形剤から製造した。該第三の成分は、極めて易水溶性の三糖であるラクトスクロースLS90Pであった。
4種の噴霧用溶液を調製した(表3を参照のこと)。該溶媒は、精製水であった。該噴霧溶液中の固体画分は、各場合において3.83%(w/v)であった。
Figure 2009541446
これらの溶液を、以下の噴霧条件下で、噴霧乾燥した:
噴霧乾燥器: SD-ミクロ(Micro)[メサーズニロ]
入口温度: 120 ℃
出口温度: 90 ℃
アトマイザーガス流量: 4 kg/h
乾燥ガス流量: 28 kg/h
図3a〜3bは、様々な三成分粉末のSEM写真を示す。これら4種の粉末は、フェニルアラニンおよびIgG1を含む粉末組成物(実施例1参照)と同様の折目(皺)を示している。該4種の三成分粉末は、相互間の有意な差を示さない。
表4は、該4種の粉末の空気力学的特性を示す。ラクトスクロースを添加した結果として、そのFPFは、上記二成分組成物と比較して、ほんの僅かに低下する。他方、該三成分粉末組成物の噴霧乾燥後の、タンパク質の安定化は、極めて良好である。これら全ての処方物に関するモノマー含有率は、98-99%なる範囲内にあった(表5参照)。
表4:APS*を用いて測定した、噴霧乾燥した粉末の空気力学的特性
Figure 2009541446
*:測定は、エアロダイナミックパーティクルサイザー(Aerodynamic Particle Sizer)を用いて得た。
表5:三成分粉末組成物のモノマー含有率
Figure 2009541446
実施例3:保存安定性
前の実施例において、フェニルアラニン自体、および特に糖との組合せが、噴霧乾燥後に、粉末の極めて良好な空気力学的特性を生じることが明らかになった。しかし、フェニルアラニン自体は、あらゆるタンパク質、例えば実施例1および2で使用したIgG1-抗体を安定化することはできない。しかし、このようなタンパク質に対しては、糖の添加による安定化が可能である。本実施例においては、噴霧乾燥後の保存安定性を、検討した。一方で、該フェニルアラニンの含有率を、変化させた(該粉末を基準として80-60%)。他方、該タンパク質の安定性に及ぼす、LS90Pの割合の影響をも検討した。様々なタンパク質対糖の比を使用した(表5および6参照)。
Figure 2009541446
該フェニルアラニンは、溶液中で加熱(80℃)することにより溶解させた。該溶液を周囲温度まで冷却した後、該タンパク質および該糖を添加した。
Figure 2009541446
該溶液は、以下の噴霧条件下で、噴霧乾燥した:
噴霧乾燥器: SD-ミクロ(Micro)[メサーズニロ]
入口温度: 150 ℃
出口温度: 90 ℃
アトマイザーガス流量: 4 kg/h
乾燥ガス流量: 28 kg/h
保存条件:該粉末を、様々な保存条件下(25℃/乾燥、40℃/乾燥、25℃/60%RH)にて、3ヶ月間保存した。25℃/乾燥および40℃/乾燥なる保存条件に対して、該粉末は、乾燥条件下(<30%RH)にあるガラス瓶に移し、ゴム栓およびフランジ付きのキャップで封止した。
25℃および60%RH保存条件は、デシケータ内で、飽和塩水を用いて生成した。該デシケータは、乾燥カップボード内で、調節された。
Figure 2009541446
該MMADは、該装入材料と該保存条件との間に如何なる有意な依存性も示さない。
Figure 2009541446
製造直後のFPF、即ち保存前のFPFは、46%(粉末3)〜60%'粉末1)である。該フェニルアラニンの含有率の、80%(粉末2)から60%(粉末3)への低下は、該微細粒子画分に悪影響を及ぼす。
Figure 2009541446
噴霧乾燥および保存後のタンパク質の安定性を、表9に示した。表9は、該IgG1抗体の、百分率で表したモノマー含有率を示す。図4は、初期値を基準とした、相対的なモノマー含有率を示す。
本実施例は、該タンパク質が、殆ど完全に安定化された状態で、25℃および40℃両者における乾燥保存条件下で、該テストした保存期間全体に渡り、保存可能であることを示している。湿潤条件下では、本実施例において使用した該抗体に対して、幾分か害を及ぼす。
従って、該三成分粉末は、良好な微細粒子画分を持ち、また更に良好な保存安定性をも持つ。
実施例4:比較による保存安定性(デキストラン-およびフェニルアラニン-含有粉末)
フェニルアラニン-含有粉末の諸特性を、他の公知の粉末の諸特性と比較した(表10参照)。これら粉末両者に関連して、該保存期間全体に渡り、その空気力学的粒径における僅かな変動のみが観測される(表11)。
Figure 2009541446
Figure 2009541446
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該フェニルアラニン-含有粉末は、デキストラン-含有粉末と比較して、実質的により良好なFPFを持つ(33.7%に対して59.6%;表12/図5参照)。該2種の粉末の空気力学的粒径は、ほんの僅かに異なっているか、あるいは該フェニルアラニン-含有粉末は、寧ろ僅かに高いMMAD(表11参照)を持つので、このFPFにおける差は、該粉末が該カプセルから吐出されることから、該粉末の分散特性に起因するものとすることができる。このことは、該フェニルアラニン-含有粉末が、対応する該デキストラン-含有粉末と比較して、実質的により良好に分散でき、また結果として粒子間相互作用が減じられることを意味する。
図6は、該安定性の初期値に基く相対的なFPFを示す。ここでは、該フェニルアラニン-含有粉末が、該保存期間全体に渡り、該FPFにおける実質的により低い減衰を示すことは明らかである。フェニルアラニンは、高い湿度条件下で、特に有利である。デキストラン-含有粉末においては、該FPFは、その初期値の45-49%まで低下するが、該フェニルアラニン-含有粉末は、寧ろ2ヶ月間の保存後に該FPFにおける増加を示し、また3ヶ月後においても、該初期値の僅かに89%まで低下するに過ぎない。
この結果は、特に高湿条件における該三成分粉末組成物の安定性を強調するものである。一般に、従来の噴霧乾燥された粉末は、その空気力学的諸特性における多大な低下を示す。他方、フェニルアラニンは、該空気力学的特性の安定化、または本例において示したように、これらを寧ろ改善する。
該粉末の形態学:
図7および図8に示したように、何れの粉末(実施例7のフェニルアラニン-含有粉末、実施例8のデキストラン-含有粉末)も、粉末の如何なる大きな凝集体をも含まない。その上、多数の窪みを、これら両処方物において見ることができる。これら2つの形態間の本質的な差は、該フェニルアラニン-含有粉末のより高い表面粗さにある。この高い表面粗さは、より良好な分散特性の原因ともなっているものと思われる。
該疎水性アミノ酸(イソロイシンまたはフェニルアラニン)の添加は、これら粉末両者において、該粒子の表面を、少なくとも部分的に疎水性にするはずである。ここでは、再度、該表面の単なる疎水化が、フェニルアラニンを用いた場合に見られるように、粗い表面構造の生成よりも、該粉末の空気力学的特性の改善にとって、より効果的であるとは全くいえないことを明らかにする。
実施例5:様々なpH値における噴霧乾燥
本例においては、規定された組成を持つ噴霧溶液(表13参照)のpHを、様々な値に調節し、次いで噴霧した。
該噴霧条件を、以下の表14に示す。
Figure 2009541446
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上記表15に示した、該粉末の空気力学的特性(FPF、吐出し質量)は、何ら本質的な差を示さない。該調製された粉末は、各場合において、部分的に結晶性であった。従って、該噴霧用液のpH値は、該粉末の特性(分散性/吸入性)および該フェニルアラニンの噴霧特性にとって決定的なものではない。
該タンパク質の安定化は、該噴霧溶液のpH値に依存する。使用した該抗体は、低pH値においてより安定である。しかし、特に二成分組成物と比較した際のタンパク質溶液の安定化(図2参照)も、9.0という高いpH値において達成し得る。
実施例6:様々な量のフェニルアラニンを用いた、噴霧乾燥
本例においては、該噴霧乾燥粉末中のフェニルアラニン含有率を、50%(w/w)から20%(w/w)に減じる。該粉末中の組成を、以下の表16にまとめた。また噴霧条件を、以下の表17に示す。
Figure 2009541446
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図9は、該粉末中のフェニルアラニンの含有率の関数として、該噴霧乾燥した粉末の空気力学的特性を示す。本図によれば、該噴霧乾燥した粉末中の該フェニルアラニン含有率を、30%(w/w)まで減じることを可能とする。該フェニルアラニン含有率が、更に20%(w/w)まで減じられた場合には、該微細粒子画分および該吐出し質量両者が、実質的に減じられる。
該粒子の形態学は、該噴霧乾燥した粉末中の該フェニルアラニン含有率に大きく依存する。50%(w/w)、40%(w/w)および30%(w/w)なるフェニルアラニン含有率において、著しく折目(皺)の付いた、レーズン-様の粒子が得られる(図10a-10c)。該フェニルアラニン含有率が20%まで下げられると、該皺形成の度合いは、急激に低下する。該粒子の形態における変化は、該粉末の空気力学的特性における劣化と相関する。このことは、噴霧溶液を噴霧乾燥する際の、該フェニルアラニンの正の効果が、30%(w/w)以上においてのみ明らかになることを意味する。
実施例7:様々なタンパク質の噴霧乾燥
本例においては、IgG型の抗体に加えて、ホルモンとしてのカルシトニンおよび酵素としてのリゾチームを噴霧乾燥した。調製した該粉末の組成は、以下の表18に示されており、また該噴霧乾燥条件は、以下の表19に指定されている。
Figure 2009541446
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図11は、該噴霧乾燥された粉末1-3の微細粒子画分およびその吐出し質量を示す図である。従って、該タンパク質の性質は、該噴霧乾燥された粉末の空気力学的特性にとって決定的なものではない。
実施例8:様々な追加の賦形剤を含む噴霧乾燥粉末の製造
これら一連の実験においては、LS90Pの代わりに、他の賦形剤を、フェニルアラニンおよびIgG1抗体と共に噴霧乾燥した。該好ましい粉末の組成を、以下の表20に示し、その噴霧乾燥条件を、以下の表21に示す。
Figure 2009541446
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図12は、微細粒子画分および吐出し質量を示す。該微細粒子画分は、テストした賦形剤(サッカロース:46%;マニトール:60%;グリシン:62%;PVP:63%)を用いた場合には、極めて高い。同様に、賦形剤を上手に選択することにより、該噴霧乾燥工程に及ぼす、フェニルアラニンの正の効果を、更に改善することが可能であることが示された。該追加の賦形剤は、特定のカテゴリーに属する物質に限定されない。本例におけるように、該賦形剤は、糖または糖アルコール、アミノ酸またはポリマーであり得る。該追加の賦形剤の使用にとって決定的なことは、噴霧乾燥中の該タンパク質の安定化である。表22は、使用した抗体のモノマー含有率を示す。他の賦形剤を添加することにより、該タンパク質は、フェニルアラニンおよびIgG1を含む二成分混合物と比較して、安定化できることは明白である(図2参照)。
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実施例9:結晶化阻害剤を用いた噴霧乾燥
本実施例は、該噴霧乾燥された粉末が、結晶化阻害剤を使用することにより、最適化できることを立証するためのものである。この目的のために、以下の表23におけるような粉末を製造した。
Figure 2009541446
ブッヒB191およびSDミクロにおける該噴霧乾燥条件は、以下の表24にまとめられている。
Figure 2009541446
LS90Pの水性溶液を凍結乾燥する目的は、X-線解析においてアモルファスな粉末を調製するためであった。そのため、低固体画分(5g/100mL)を持つ水性溶液を調製し、以下の表25に記載されているように、凍結乾燥した。
Figure 2009541446
図13は、DSC装置(DSC821/メトラートレド(Mettler Toledo))内で該粉末を加熱した後の、LS90Pの再結晶化エンタルピーを示す。使用したタンパク質の質量基準での割合に基く結晶化エンタルピーが、該タンパク質に大きく依存することが分かる。即ち、該結晶化エンタルピーは、IgG1(6.8J/g)、リゾチーム(13.9J/g)、カルシトニン(21.3J/g)なる順序で増大し、また噴霧乾燥後の該LS90Pのアモルファス画分も増大する。問題とする該粉末処方物中の該LS90Pは、該粉末中のタンパク質-安定化成分であるから、該粉末においては、LS90Pの高いアモルファス画分を持つことが望ましい。従って、更なる一連の実験において、結晶化阻害剤として、HSAを、該噴霧溶液に添加した。該噴霧乾燥は、表26に示された方法と同様にして行った。該粉末の組成は以下の通りであった:60%フェニルアラニン/30% LS90P/1% HSA/9% IgG1。
LS90Pの結晶化エンタルピーは、24.3J/gであり、これはX-線解析においてアモルファスのLS90P(23.8J/g)に相当するものであった。IgG1-含有粉末2を基にして、該粉末のアモルファス特性に基く、該粉末の諸特性は、少量のHSAの添加により最適化することができる。
Figure 2009541446
実施例10:様々な芳香族アミノ酸の比較
本実施例は、芳香族アミノ酸であるトリプトファンおよびヒスチジンと、匹敵するフェニルアラニン-含有粉末とを比較するために与えられる。芳香族アミノ酸であるチロシンは、このアミノ酸が十分に水溶性ではないことから、噴霧乾燥用の有力な賦形剤としては除外される。トリプトファンも、フェニルアラニンと比較して、極めて水溶性の低いものであり、従って20%(w/w)以下のトリプトファン含有率が、医薬的に有用な粉末の製造のために使用できる。該芳香族アミノ酸の噴霧乾燥特性を比較するために、各場合において、20%のアミノ酸を含有する粉末を製造した。以下の表27は、該粉末の組成を示し、また表28は、その噴霧条件を示す。
Figure 2009541446
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該微細粒子画分は、該フェニルアラニン-含有粉末を用いた場合、噴霧乾燥後に、僅かに良好となった(図14参照)。
該ヒスチジン-含有粉末を越える、該フェニルアラニン-含有粉末の主な利点は、その低い湿分-感受性にある。該ヒスチジン-含有粉末のFPFは、50%相対湿度に暴露した後に低下するが、該フェニルアラニン-含有粉末の場合には、該FPFは、湿分に暴露した後に、寧ろ改善される。対応する諸特性も、その吐出し質量との関連で観測できる。該ヒスチジン-含有粉末の場合、その吐出し質量は、水分に暴露した際に減少し、一方で該フェニルアラニン-含有粉末の場合、その吐出し質量は増大する。
トリプトファン-含有粉末は、湿分に暴露しても、該FPFおよび吐出し質量に何の変化をも示さない。フェニルアラニンと比較した場合の、このアミノ酸の欠点の一つは、既に前に記載した通り、このものの極めて低い水に対する溶解度である。
ヒスチジンを、更に対応するフェニルアラニン-含有粉末と比較した(表29参照)。その製造方法は、上記表28に指定した噴霧乾燥条件と同様であった。
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該粉末4および5は、同様な空気力学的特性を持つが、フェニルアラニン-含有粉末7は、対応するヒスチジン-含有粉末5と比較して、実質的により良好な微細粒子画分を示す(表30参照)。
特に顕著なことは、水分に暴露した後の該空気力学的特性における差である(表31参照)。水分の影響の結果として、該FPFは、テストした該ヒスチジン-含有粉末においては、ほぼ完全に低下される。他方において、該フェニルアラニン-含有粉末は、その空気力学的特性における僅かな改善を示す。
Figure 2009541446
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まとめると、噴霧乾燥に及ぼすフェニルアラニンの正の特性は、他の芳香族アミノ酸を使用して達成することはできないものということができる。
IgG1抗体およびアミノ酸を含む噴霧乾燥された粉末のSEM写真である。 これらの顕微鏡写真は、走査型電子顕微鏡(スプラ(SUPRA) 55VP、メッサーズツアイス(Messrs. Zeiss)、オーベルコッヘン(Oberkochen)製)を用いて撮影した。そのために、該粉末サンプルを、適当なサンプルプレート上に直接散布した。過剰量の物質を払落し、かつ吹飛ばした。次いで、該サンプルを、10nmの金/パラジウムで被覆し、十分な電導性を確保した。 画像を表示するための検出は、二次電子を用いて行った。a) 該噴霧乾燥粉末の組成:90%バリン/10%IgG1; 倍率:5000x; 粉末-カソード間距離:8mm; シャッターサイズ:20μm; 加速電圧:6kV; 真空度:5.73e-005Pab) 該噴霧乾燥粉末の組成:90%イソロイシン/10%IgG1; 倍率:3000x; 粉末-カソード間距離:8mm; 加速電圧:6kV; 真空度:5.47e-005Pac) 該噴霧乾燥粉末の組成:90%フェニルアラニン/10%IgG1; 倍率:5000x; 粉末-カソード間距離:8mm; 加速電圧:6kV; 真空度:5.73e-005Pa 様々なアミノ酸の疎水性および二成分混合物の噴霧乾燥後の、該噴霧用液中の固形分濃度の関数としての、タンパク質のモノマー含有率(50%および90%なる、該アミノ酸の達成された溶解度限界)の比較: 本図において、噴霧乾燥後の該タンパク質の安定性を、使用した該アミノ酸の疎水性画分と比較する。アミノ酸の疎水性を表す、幾つかの方法がある(P. Andrew Karplus, 回復された疎水性(Hydrophobicity regained), Protein science (1997), 6: 1302-1307)。一般的な一つの方法は、ある物質を溶媒から水に移した際の自由エンタルピー(例えば、ΔGo trans oct/水)を指定することである。この方法の欠点は、得られる結果が、その測定条件(例えば、溶媒の選択)に強く依存するという事実である。特に極性物質を用いた場合、該結果にかなり大きな差が生じる可能性がある。他方、該疎水性表面の純然たる観測は、該測定条件には無関係である。従って、この図においては、該アミノ酸基の疎水性部分または領域のみが考慮される。脂肪族CH2基には、25cal/Å2なるエンタルピーが、また芳香族CH基には、16cal/Å2なるエンタルピーが割当てられる。この観測は、如何なる極性部分またはその電気陰性度によって発生する誘導効果をも考慮していない。 タンパク凝集体を生成する傾向は、排除クロマトグラフィー(HP-SEC)によって決定した。この際、該排除は、該タンパク質またはその凝集体(例えば、ダイマー)の分子サイズを用いて行った。凝集体の生成が、タンパク質の不安定化と関連していることは公知である。該噴霧乾燥粉末の組成:装入材料1: 10% IgG1/90%イソロイシン、固体画分:3.5 %装入材料2: 10% IgG1/90%グリシン、固体画分:20.2 %装入材料3: 10% IgG1/90%バリン、固体画分:5.8 %装入材料4: 10% IgG1/90%フェニルアラニン、固体画分:3.2 %装入材料5: 10% IgG1/90%アスパラギン、固体画分:2.4 %装入材料6: 10% IgG1/90%グリシン、固体画分:11.18 %装入材料7: 10% IgG1/90%イソロイシン、固体画分:1.95 %装入材料8: 10% IgG1/90%バリン、固体画分:3.21%装入材料9: 10% IgG1/90%フェニルアラニン、固体画分:1.79 %装入材料10: 10% IgG1/90%アスパラギン、固体画分:1.3 %バー:該アミノ酸の疎水性;菱形:該IgG1抗体のモノマー含有率。 フェニルアラニン、ラクトスクロースおよびIgG1-抗体を含む、種々の三成分粉末混合物のSEM-写真である。 これらの顕微鏡写真は、図1について記載したようにして撮影した。a) 該噴霧乾燥粉末の組成:80%フェニルアラニン/10%LS90P/10%IgG1; 倍率:5000x; 粉末-カソード間距離:9mm; シャッターサイズ:10μm; 加速電圧:3kV; 真空度:1.72e-005Pab) 該噴霧乾燥粉末の組成:80%フェニルアラニン/15%LS90P/5%IgG1; 倍率:5000x; 粉末-カソード間距離:7mm; シャッターサイズ:10μm; 加速電圧:4kV; 真空度:9.18e-005Pac) 該噴霧乾燥粉末の組成:60%フェニルアラニン/30%LS90P/10%IgG1; 倍率:5000x; 粉末-カソード間距離:8mm; シャッターサイズ:10μm; 加速電圧:4kV; 真空度:9.18e-005Pad) 該噴霧乾燥粉末の組成:70%フェニルアラニン/25%LS90P/5%IgG1; 倍率:5000x; 粉末-カソード間距離:8mm; シャッターサイズ:9μm; 加速電圧:4kV; 真空度:9.3e-005Pa 初期値を基準とする相対的なモノマー含有率を示す。該モノマー含有率は、図2において記載したように測定した。該モノマー含有率は、100%に設定した該初期値を基準としている。本図は、該初期値からの該モノマー含有率の変化を示しており、従って保存期間全体に渡るその変化を反映している。菱形:噴霧乾燥粉末:60%フェニルアラニン/10%LS90P/30%IgG1;四角:噴霧乾燥粉末:80%フェニルアラニン/10%LS90P/10%IgG1;三角:噴霧乾燥粉末:60%フェニルアラニン/30%LS90P/10%IgG1。 様々な粉末組成物の微細粒子画分を比較したものである。 該微細粒子画分は、エアロダイナミックパーティクルサイザー(Aerodynamic Particle Sizer)(APS、TSI)と比較して、1-段階インパクター(インパクターインレット(Impactor Inlet)、TSI)を用いて測定した。該インパクターノズルの分離閾値は、5.0μmであった。該微細粒子画分に加えて、空気力学的粒径をも、該APSを使用して測定し、またその粒度分布を、飛翔時間を測定することにより決定した。これを実施するために、該サンプル導入口を通した後に分割した。0.2%の部分を、等速条件下で小さな毛管に吸引し、飛翔時間測定装置を導入した。残りの部分は、該微細粒子画分を測定するために使用した。 測定のために、該粉末をサイズ3のカプセルに詰め、吸入器[ハンディーヘイラー(HandiHalerTM)、ベーリンガーインゲルハイム(Boehringer Ingelheim)]を用いて吐出させた。該粉末吐出しの流量は、4kPaなる圧力降下が、該ハンディーヘイラーを通して見られるように調節した。該空気体積は、ファームユウ(PharmEur)に従って、4Lとした。該インパクター段階において堆積した粒子の「跳ね返り」を防止するために、該インパクターのプレートを、測定用の著しく粘稠なブリー(Brij)溶液で被覆されている。黒色のバー: 噴霧乾燥粉末: 65%デキストラン1/5%イソロイシン/30% IgG1;白色のバー: 噴霧乾燥粉末: 60%フェニルアラニン/10% LS90P/30% IgG1。 様々な粉末組成物の相対的微細粒子画分の比較を示す。該相対的微細粒子画分は、該微細粒子画分の初期値を基準とするものであり、従って保存中の該FPFにおける変動を反映している。従って、該微細粒子画分は、図5に関する説明と同様にして決定される。黒色のバー: 噴霧乾燥粉末: 65%デキストラン1/5%イソロイシン/30% IgG1;白色のバー: 噴霧乾燥粉末: 60%フェニルアラニン/10% LS90P/30% IgG1。 フェニルアラニンまたはイソロイシンを含む噴霧乾燥粉末のSEM写真である。これらの顕微鏡写真は、図1について説明した如く撮影した。a) 該噴霧乾燥粉末の組成:60%フェニルアラニン/10%LS90P/10%IgG1; 倍率:250x; 粉末-カソード間距離:7mm; シャッターサイズ:10μm; 加速電圧:6kV; 真空度:5.35e-005Pab) 該噴霧乾燥粉末の組成:60%フェニルアラニン/10%LS90P/10%IgG1; 倍率:5000x; 粉末-カソード間距離:7mm; シャッターサイズ:10μm; 加速電圧:6kV; 真空度:5.60e-005Pa 65%のデキストラン1、5%のイソロイシンの30%のIgG1で構成される、噴霧乾燥粉末のSEM写真を示す。 これらの顕微鏡写真は、図1について説明した如く撮影した。a) 該噴霧乾燥粉末の組成:65%デキストラン1/5%イソロイシン/30%IgG1; 倍率:250x; 粉末-カソード間距離:9mm; シャッターサイズ:10μm; 加速電圧:4kV; 真空度:6.70e-005Pab) 該噴霧乾燥粉末の組成:65%デキストラン1/5%イソロイシン/30%IgG1; 倍率:7500x; 粉末-カソード間距離:5mm; シャッターサイズ:10μm; 加速電圧:5kV; 真空度:7.17e-005Pa 様々な割合でフェニルアラニンを含む、噴霧乾燥粉末の微細粒子画分(FPF)およびその吐出し質量の測定を示す。 該微細粒子画分は、エアロダイナミックパーティクルサイザー(Aerodynamic Particle Sizer)(APS、TSI)と組合せた、1-段階インパクター(インパクターインレット(Impactor Inlet)、TSI)を用いて測定した(図5の説明をも参照)。該吐出し質量は、該インパクターインレット/APSを介する吐出し前後の、使用したカプセルの質量と関連する。該カプセルの質量における差は、該吐出し質量に対応する。この吐出し方法は、実施例5に記載されている。バー:該カプセル内の質量を基準とする、%で表した微細粒子画分(FPF);菱形:該インパクターインレット/TSIへの送出の際の、粉末の吐出し質量。粉末1:以下の組成を持つ噴霧溶液から、噴霧乾燥により調製した粉末:組成:29g/100mLのフェニルアラニン;1.15g/100mLのIgG1;383mg/100mLのLS90P;バッファー:1.6mMのグリシン、25mMのヒスチジン、pH 4.2粉末2:以下の組成を持つ噴霧溶液から、噴霧乾燥により調製した粉末:組成:29g/100mLのフェニルアラニン;1.15g/100mLのIgG1;383mg/100mLのLS90P;バッファー:25mMのトリス(TRIS)、pH 7.4粉末3:以下の組成を持つ噴霧溶液から、噴霧乾燥により調製した粉末:組成:29g/100mLのフェニルアラニン;1.15g/100mLのIgG1;383mg/100mLのLS90P;バッファー:25mMのトリス(TRIS)、pH 9.0 噴霧乾燥粉末のSEM-写真である。 これらの顕微鏡写真は、図1について説明した如く撮影した。a) 該噴霧乾燥粉末の組成:50%フェニルアラニン/20%LS90P/30%IgG1; 倍率:2000x; 粉末-カソード間距離:10mm; シャッターサイズ:10μm; 加速電圧:5kV; 真空度:2.23e-004Pab) 該噴霧乾燥粉末の組成:40%フェニルアラニン/30%LS90P/30%IgG1; 倍率:3000x; 粉末-カソード間距離:10mm; シャッターサイズ:10μm; 加速電圧:5kV; 真空度:2.23e-004Pac) 該噴霧乾燥粉末の組成:30%フェニルアラニン/40%LS90P/30%IgG1; 倍率:3000x; 粉末-カソード間距離:10mm; シャッターサイズ:10μm; 加速電圧:5kV; 真空度:2.23e-004Pad) 該噴霧乾燥粉末の組成:20%フェニルアラニン/50%LS90P/30%IgG1; 倍率:3000x; 粉末-カソード間距離:8mm; シャッターサイズ:10μm; 加速電圧:5kV; 真空度:2.26e-004Pa 噴霧乾燥粉末の微細粒子画分(FPF)およびその吐出し質量の測定を示す。 該微細粒子画分は、エアロダイナミックパーティクルサイザー(Aerodynamic Particle Sizer)(APS、TSI)と組合せた、1-段階インパクター(インパクターインレット(Impactor Inlet)、TSI)を用いて測定した(この課題に関する、図5の説明をも参照)。該吐出し質量は、該インパクターインレット/APSを介する吐出し前後の、使用したカプセルの質量と関連する。該カプセルの質量における差は、該吐出し質量に対応する。この吐出し方法は、実施例5に記載されている。バー:該カプセル内の質量を基準とする、%で表した微細粒子画分(FPF);菱形:該インパクターインレット/TSIへの送出の際の、粉末の吐出し質量。粉末1:噴霧乾燥粉末:60%フェニルアラニン、10%IgG1、30%LS90P;粉末2:噴霧乾燥粉末:60%フェニルアラニン、10%リゾチーム、30%LS90P;粉末3:噴霧乾燥粉末:60%フェニルアラニン、10%カルシトニン、30%LS90P 噴霧乾燥粉末の微細粒子画分(FPF)およびその吐出し質量の測定を示す。 該微細粒子画分は、エアロダイナミックパーティクルサイザー(Aerodynamic Particle Sizer)(APS、TSI)と組合せた、1-段階インパクター(インパクターインレット(Impactor Inlet)、TSI)を用いて測定した(この課題に関する、図5の説明をも参照)。該吐出し質量は、該インパクターインレット/APSを介する吐出し前後の、使用したカプセルの質量と関連する。該カプセルの質量における差は、該吐出し質量に対応する。この吐出し方法は、実施例5に記載されている。バー:該カプセル内の質量を基準とする、%で表した微細粒子画分(FPF);菱形:該インパクターインレット/TSIへの送出の際の、粉末の吐出し質量。粉末1:噴霧乾燥粉末:60%フェニルアラニン、10%IgG1、30%サッカロース;粉末2:噴霧乾燥粉末:60%フェニルアラニン、10%IgG1、30%マニトール;粉末3:噴霧乾燥粉末:60%フェニルアラニン、10%IgG1、30%グリシン;粉末4:噴霧乾燥粉末:60%フェニルアラニン、10%IgG1、30%PVP 該LS90Pの結晶化エンタルピーを決定するための、DSC測定。 該結晶化エンタルピーは、該粉末の加熱中における熱の流れを測定することによって決定した。アモルファス粉末を加熱する場合、該粒子の成分は、そのガラス転移点を通過した後には、高い移動度を持ち、また結晶化する可能性がある。該ガラス転移点の通過は、吸熱過程である。他方、その後の結晶化は、発熱過程である。該粉末が、更に加熱されると、該粉末は溶融するか、あるいは分解する可能性がある。 該DSC測定のために、数ミリグラムの粉末を、坩堝内で僅かに圧縮して、できる限り均質かつ緻密な粉末の床を形成した。次いで該坩堝を、低温溶接によって封止した。これらの測定は、孔の開けられていない坩堝を用いて行った。その他のパラメータは、以下の通りであった: 測定装置: DSC 821/メトラートレド(Mettler Toledo); 評価用ソフトウエア: スター(STAR) バージョン4.20; 炉ガス: 窒素/40mL/分; フラッシングガス: 窒素/150mL/分; 坩堝: アルミニウム坩堝、40μL; 走査速度: 温度10℃/分粉末1:噴霧乾燥粉末:60%フェニルアラニン/40%LS90P;粉末2:噴霧乾燥粉末:60%フェニルアラニン/30%LS90P/10%IgG1;粉末3:噴霧乾燥粉末:60%フェニルアラニン/30%LS90P/10%リゾチーム;粉末4:噴霧乾燥粉末:60%フェニルアラニン/30%LS90P/10%カルシトニン;粉末5:凍結乾燥粉末:100%LS90P 噴霧乾燥粉末の微細粒子画分(FPF)の測定。 該微細粒子画分は、エアロダイナミックパーティクルサイザー(Aerodynamic Particle Sizer)(APS、TSI)と組合せた、1-段階インパクター(インパクターインレット(Impactor Inlet)、TSI)を用いて測定した(この課題に関する、図5の説明をも参照)。該吐出し質量は、吸入器[ハンディーヘイラー(HandiHalerTM)、ベーリンガーインゲルハイム(Boehringer Ingelheim)]を介する吐出し前後の、該カプセルの質量における差から得られる。白抜きのバー:噴霧乾燥直後の、該FPFの測定;陰影を付したバー:湿分への暴露(20時間に渡る、周囲温度、50%RHへの暴露)後におけるFPFの測定;三角:噴霧乾燥直後の、吐出し質量;四角:湿分への暴露(20時間に渡る、周囲温度、50%RHへの暴露)後の吐出し質量。粉末1:噴霧乾燥粉末:20%トリプトファン/50%LS90P/30%IgG1;粉末2:噴霧乾燥粉末:20%ヒスチジン/50%LS90P/30%IgG1;粉末3:噴霧乾燥粉末:20%フェニルアラニン/50%LS90P/30%IgG1。

Claims (26)

  1. タンパク質およびフェニルアラニンを含む粉末であって、該粉末が、少なくとも30%(w/w)のフェニルアラニン、好ましくは少なくとも40%(w/w)のフェニルアラニンを含むことを特徴とする、前記粉末。
  2. タンパク質、フェニルアラニンおよび少なくとも1種の更なる賦形剤、例えば糖またはポリオールを含む粉末であって、該粉末が、少なくとも30%(w/w)のフェニルアラニン、好ましくは少なくとも40%(w/w)のフェニルアラニンを含むことを特徴とする、前記粉末。
  3. 前記粉末が、噴霧乾燥されている、請求項1または2記載の粉末。
  4. 少なくとも35%(w/w)、40%(w/w)、45%(w/w)、50%(w/w)、55%(w/w)、60%(w/w)、65%(w/w)、70%(w/w)、75%(w/w)、80%(w/w)、85%(w/w)、90%(w/w)または95%(w/w)および99%(w/w)または99.99%(w/w)のフェニルアラニンが、前記粉末中に含まれている、請求項1〜3の何れか1項に記載の粉末。
  5. 前記フェニルアラニンの割合が、30%(w/w)〜99.99%(w/w)なる範囲、好ましくは40%(w/w)〜99.99%(w/w)なる範囲、40%(w/w)〜70%(w/w)なる範囲、60%〜90%なる範囲または特に好ましくは60%〜80%なる範囲内にある、請求項1〜4の何れか1項に記載の粉末。
  6. 前記糖が、二糖およびオリゴ糖からなる群から選択される非-還元糖である、請求項1〜3の何れか1項に記載の粉末。
  7. 前記二糖が、スクロースまたはトレハロースである、請求項6記載の粉末。
  8. 前記オリゴ糖が、三糖、例えばラクトスクロースである、請求項6記載の粉末。
  9. 前記ポリオールが、マニトールである、請求項1〜3の何れか1項に記載の粉末。
  10. 前記糖の割合が、多くとも50%(w/w)、好ましくは5,10、15、20、25、30、35、40、45%(w/w)および特に好ましくは10〜20%(w/w)なる範囲内にある、請求項6記載の粉末。
  11. 前記糖対蛋白質の質量比が、1:10〜10:1なる範囲、好ましくは1:3〜5:1なる範囲内にある、請求項1〜10の何れか1項に記載の粉末。
  12. 前記蛋白質が、活性物質、好ましくは医薬的に活性な物質、例えば抗体、抗体フラグメント、抗体の一部分を含む融合タンパク質または接合抗体、成長因子、ホルモンまたは酵素である、請求項1〜3の何れか1項に記載の粉末。
  13. 前記蛋白質の含有率が、0.01〜70%(w/w)、0.01〜60%(w/w)、0.01〜50%(w/w)、0.01〜40%(w/w)、1〜50%(w/w)、10〜50%(w/w)および好ましくは30〜50%(w/w)なる範囲内にある、請求項1〜12の何れか1項に記載の粉末。
  14. 前記フェニルアラニン/糖/蛋白質の質量比が、40/10/50、99.89/0.1/0.01、90/9/1、90/1/9、80/10/10、30/10/60、好ましくは60/10/30または50/10/40である、請求項2〜13の何れか1項に記載の粉末。
  15. 前記粉末が、60/10/30なる質量比の、フェニルアラニン/ラクトスクロースまたはサッカロース/および小タンパク質、例えば成長因子、インシュリン、インターフェロン、またはカルシトニンからなる、請求項2〜13の何れか1項に記載の粉末。
  16. 前記粉末粒子の平均空気力学的粒径(MMAD=質量中央値空気力学的粒径)が、10μm未満、好ましくは7.5μm未満、より好ましくは1〜6μmなる範囲、または3〜6μmなる範囲または5〜7μmなる範囲内にある、請求項1〜14の何れか1項に記載の粉末。
  17. 請求項1〜16の何れか1項に記載の粉末を含有することを特徴とする、医薬組成物。
  18. 請求項1〜16の何れか1項に記載の粉末の製造方法であって、
    a) フェニルアラニン溶液を調製する工程;
    b) 少なくとも1種のタンパク質および場合により少なくとも1種の更なる賦形剤、例えば糖またはポリオールを添加する工程;
    c) かくして調製した前記溶液または懸濁液を、好ましくは90〜200℃なる範囲の流入温度および好ましくは40〜150℃なる範囲の流出温度にて、噴霧する工程;および
    d) 前記形成された粒子を、前記乾燥ガスから分離する工程、
    を含むことを特徴とする、前記方法。
  19. 前記タンパク質が、医薬的に活性な物質である、請求項18記載の方法。
  20. 以下の追加の工程を、前記工程a)およびb)の間において実施する、請求項18または19記載の方法:
    -前記フェニルアラニン溶液を、好ましくは80℃まで加熱する工程;
    -該フェニルアラニン溶液を、各場合において添加すべき前記特定のタンパク質の変性温度以下まで冷却する工程、ここで、該冷却は、好ましくは周囲温度までである。
  21. 前記溶液または懸濁液を、前記工程c)において、少なくとも一つの加圧ノズルまたは少なくとも一つのロータリーエバポレータまたはベンチュリノズルまたは少なくとも一つの超音波ネブライザーまたは少なくとも一つの2-物質ノズルによって噴霧する、請求項18〜20の何れか1項に記載の方法。
  22. 前記工程d)の前記粒子の分離を、少なくとも一つの粒子分離器、好ましくは少なくとも一つのサイクロンを使用して実施する、請求項18〜21の何れか1項に記載の方法。
  23. 請求項1〜16の何れか1項に記載の粉末または請求項17記載の医薬組成物の、薬剤としての使用。
  24. 請求項1〜16の何れか1項に記載の粉末または請求項17記載の医薬組成物の、吸入用薬剤としての使用。
  25. 請求項1〜16の何れか1項に記載の粉末または請求項17記載の医薬組成物の、呼吸器系疾患または全身的疾患の治療用医薬製造のための使用。
  26. 前記疾患が、肺癌、肺の炎症、嚢胞性線維症、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、喘息、抗-炎症性諸疾患、ウイルス疾患、例えば呼吸器合胞体ウイルス(RSV)によって引き起こされるウイルス疾患からなる群から選択される、請求項25記載の使用。
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