このような酪農システムは、当該分野では周知である。図1はこのような酪農システムの一例を概略ブロック図で示すもので、このシステムは、酪農システムの運用に関わる作業を実施するように配備され、かつネットワーク12を介して相互に接続された複数の装置またはシステム11a〜11eを備える。参照符号11aは給餌ワゴンを示し、11bは給餌システムを示し、11cは搾乳場所の搾乳装置を示し、11dはプラント制御システムを示し、11eは処理制御装置を示す。
給餌ワゴン11aは、IRリンク13a−cを介して他の装置11b〜11eに接続可能であり、給餌ワゴン端末装置11a−1と給餌ワゴンモータコントロール11a−2を備える。典型的には、給餌ワゴンは、充電場所、1つまたは複数の給餌場所、および飼料搭載位置に達する天吊りレールに沿って可動のバッテリ駆動携帯機器である。これらの場所の1つ、好ましくは充電場所において、給餌ワゴンは、IRリンク13a〜eを介してネットワーク12に接続され、処理制御装置11eから給餌命令を受信する。充電場所を離れているときは、給餌ワゴンンはもはや他の装置11b〜eに接続されていない。給餌ワゴンが給餌後に充電場所に戻ると、IRリンク13a〜cを介した通信が再開されうる。
給餌システム11bは、給餌ステーション11b−1、11b−2、および11b−3と、カーフフィーダー11b−4を備える。
搾乳装置11cは、ティートカップ、真空ホース、脈動真空ホースなどを含み、これらは、種々の搾乳場所で様々な動物に搾乳を行う搾乳装置を使用することができるように天井のレールから吊るされており、様々な搾乳場所に移動可能である。
作業中、搾乳装置11cは所望の搾乳場所に移動される。真空ホースと脈動真空ホースは、搾乳場所にある真空コネクタに酪農従事者によって手動で接続される。同様に、通信リンクは、搾乳場所に固定的に配備される、ネットワーク12のコネクタ14aに搾乳装置11cのコネクタ14bを酪農従事者が接続することによって手動で確立される。搾乳装置11cは、搾乳場所に居る動物を識別する動物識別装置11c−1と、その動物から搾られるミルクを測定する乳量計11c−2とを備える。この動物識別情報と乳生産量情報は、コネクタ14a−bによって確立されたネットワーク12への接続を介して、処理制御装置11eに送信される。搾乳が終了した後、真空ホースと脈動真空ホースは搾乳場所で真空コネクタから手動で外され、コネクタ14bはコネクタ14から手動で外され、その後、搾乳装置は別の搾乳場所に居る動物に搾乳を行うためにその搾乳場所に移動されてもよい。
プラント制御システム11dは、洗浄システム11d−1、レシーバ11d−2、真空供給システム11d−3、冷却タンク11d−4を備える。
処理制御装置11eは、酪農システムの制御に関与し、一般に、マイクロコンピュータ、適合するソフトウェア、および酪農場の各動物についての情報、たとえば、各動物の前回の搾乳時点、その前回の給餌時点、その乳生産、その健康状態などの情報を含むデータベースを含む。処理制御装置11eは、一般に、別のコンピュータの形態などをとる酪農管理装置11e−1に接続され、この装置によって管理情報が検索されて処理されてもよく、また、この装置によって管理命令が処理制御装置11eに送信されてもよい。
上記酪農システムの1つの欠点は、給餌ワゴンと処理制御装置との間のIRリンクが必ずしも適切に機能していない場合があることである。酪農環境は非衛生的で浸食性の環境であり、汚れがIRコネクタ装置の表面に付着しやすく、これが通信を不能にするおそれがある。さらに、IRリンクは給餌ワゴンが特定の位置、すなわち、充電場所に停止している間にのみ確立されうる。つまり、給餌ワゴンは、他の場所で作動中、たとえば、動物に給餌中に万一停止した場合は、不完全な通信を一切確立することができない。処理制御装置は、何ら情報を得ることができず、そのために動物に給餌が行われているか否かが分らない。
上記酪農システムのもう1つの欠点は、搾乳装置と処理制御装置との間のコネクタ間の接続が非衛生的で浸食性の環境のため信頼性が低下し、この状況は搾乳場所の動物のごく近くにおいては一層悪化する。汚れが搾乳場所でコネクタに付着する場合があり、コネクタ間の接続が信頼できない状態になる。さらに、手動接続は、作業工程または作業段階での酪農従事者の仕事の負担を増やす。この作業は、搾乳手順の時間、すなわち、コストを必然的に増加させ、当然ながら望ましくない。
したがって、本発明の目的は、従来技術によるシステムに関する前述の欠点の少なくとも一部を有しない酪農システムおよび酪農システムにおける通信方法を提供することである。
本発明の別の目的は、さらに信頼性の高い給餌が実施されうる上記酪農システムおよび上記方法を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、より信頼性の高い動物に個別な乳生産データの記録が実施されうる上記酪農システムおよび上記方法を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、柔軟性があり、効率がよく、信頼性が高く、正確であり、堅牢であり、保守作業や問題発生時の解決処理が容易であり、安価で低コストな上記酪農システムおよび上記の方法を提供することである。
上記の目的は、とれわけ、本発明による追加の特許請求の範囲に記載の酪農システムおよび通信方法によって達成される。
本発明の態様によると、酪農システムの運用に関わる作業を実施する複数の装置を備える酪農システムが提供される。装置はネットワークに接続され、装置の少なくとも1台は移動可能であり、短距離無線リンク、好ましくはブルートゥースリンクを介してネットワークに無線接続可能である。
前述の作業は、好ましくは乳畜の搾乳および」/または給餌に関する。
本発明のシステムは、動物が繋留され、あるいは動物が固定された畜舎で飼育される繋留式の畜舎設備に特に適している。比較的簡素な環境において最新の通信装置を使用することにより、酪農従事者は大きな恩恵を受けることができる。
移動可能な装置は、有利には、酪農畜舎内のレールに沿って移動可能な給餌ワゴンなどの給餌装置であるか、もしくは搾乳場所に居る動物に搾乳を行う搾乳装置である。
給餌装置は、短距離無線リンクを介してネットワーク内で常に接続されていてもよく、処理制御装置などの他の装置からの給餌命令を受信し、かつ給餌状態情報をその装置に伝達して返すように配備されていてもよい。給餌装置の作動にエラーが発生した場合、給餌装置は処理制御装置に警報を発するようにしてもよく、給餌を開始、終了、または中断した場合は処理制御装置に知らせてもよく、中断した場合は給餌のいずれの段階で中断が発生したかを知らせてもよい。したがって、酪農システムは、給餌装置によって実施される給餌の詳しい情報を得て、信頼性の高い給餌を行う。
さらに、酪農システムは、短距離無線リンクを介して給餌装置に無線接続可能な携帯機器を備えてもよい。このような携帯機器は、給餌装置からデータを読み取り、または給餌装置に命令を与え、あるいはこれらの両方を行うように配備され、これによって、酪農システムがより柔軟に機能するように配備されてもよい。
一実施形態において、少なくとも1台の給餌装置と1台または複数台の搾乳装置を含む複数の可動装置があり、各々は短距離無線リンクを介してネットワークに無線接続可能である。給餌と搾乳が同時に実施されない場合は、たとえば、複数の可動装置に短距離無線リンクを1つずつ確立するネットワーク内にわずか1個の短距離無線コネクタまたはトランシーバが固定的に接続されていてもよい。他の実施形態において、たとえば、可動装置の数とそれらの移動範囲に応じてネットワーク内に固定的に接続される複数の短距離無線コネクタは、種々の位置に設けられてもよい。一部の実施形態において、単一の可動装置は、ネットワーク内に常に接続された状態とするために複数の短距離無線コネクタを接続する必要となる場合がある。
現在のブルートゥース規格によると、1つのマスタと最大7つのスレーブを有するブルートゥースピコネットには、最大8個のモジュールが無線接続されうる。ブルートゥースまたは他の無線接続のいずれを使用するにせよ、本発明によるシステムがさらに多くのモジュールを受け入れるために、データが装置からネットワークに転送されない時間中は、1台または複数台の装置が切断される必要となる場合がある。好ましくは、リンクは、データが送信される必要があるときに確立され、データが送信した後に切断される。
本発明の他の態様によると、装置がネットワーク内で接続され少なくとも1台の装置が可動である、酪農システムの運用に関わる作業を実施する複数の装置を備える酪農システムにおける通信方法が提供される。この方法は、短距離無線リンク、好ましくはブルートゥースリンクを確立することによって可動装置をネットワークに無線接続するステップと、可動装置から装置の他の1つに短距離無線リンクを介してデータを送信するステップとを含む。
本発明の別の特徴とその利点は、本明細書で以下に記載される本発明の実施形態の詳細な説明ならびに添付の図2および図3とから明らかであるが、これらは例示的なものにすぎず本発明に限定されるものではない。
詳細な説明において、ミルクを生産する動物は畜牛である。ただし、本発明は、畜牛の搾乳システムに限定されず、通常、集合的に乳畜と呼ばれる羊、山羊、水牛、馬、など、多量のミルクの生産能力を有するいかなる動物の搾乳システムにも適用可能である。
図2および3は、酪農畜舎の天井に取り付けられたレール22に沿って移動可能なバッテリ駆動給餌ワゴンを備える繋留牛用の酪農システムを示す。給餌ワゴン21は、第1の位置22aと多数の第2の位置22bとの間を自動的に移動する。第1の位置22aは給餌ワゴンのバッテリを充電する充電器を含む充電場所であってもよく、または給餌ワゴン21が飼料供給装置から飼料を供給されうる位置であってもよく、あるいはこれらの両方であってもよい。第2の位置22bは、給餌ワゴン21が干し草、サイロに貯蔵された飼料、または濃厚飼料などの飼料を酪農システムの畜牛に供給するために配備される給餌場所であってもよい。好都合には、給餌台や飼い葉おけなどの装置は、給餌ワゴン21によって供給される飼料を受ける第2の位置の下に配備される。
給餌ワゴン21は、ローカルCANバス上で相互接続される、給餌ワゴン端末装置11a−1と給餌ワゴンモータコントロール11a−2とを備える(給餌ワゴン端末装置11a−1と給餌ワゴンモータコントロール11a−2は、図3にのみ示される)。
給餌ワゴン21は、ブルートゥースまたは、たとえば、Zigbee、WLAN(無線ローカルエリアネットワーク)、LPR(小電力無線)、およびUWB(超広帯域無線)の各技術のいずれかに基づくその他の短距離無線リンク23a〜23cを介して処理制御装置11eに無線接続される。処理制御装置11eは、酪農場の制御に関与する従来技術を参照して前述した処理制御装置と同等のもので、一般に、マイクロコンピュータ、適合するソフトウェア、および酪農システムに居る畜牛の各々の情報を含むデータベースを含み、イーサネット(登録商標)リンクなどを介して酪農管理装置11e−1に接続される。
ブルートゥースリンク23a〜23cは、CANバス12と、給餌ワゴン21に配備され、直接またはRS232ケーブルを介して給餌ワゴン21のローカルCANバスに接続されるブルートゥーストランシーバ、またはCAN−ブルートゥースインタフェース23bとを介して処理制御装置11eに接続されるブルートゥーストランシーバまたはCAN−ブルートゥースインタフェース23aを備え、2つのブルートゥーストランシーバ23a〜23bは無線チャネル23cを介して相互に通信するように配備される。それによって、給餌ワゴン21は、給餌ワゴンがレール22に沿っていずれにあっても処理制御装置11eに常に接続された状態となりうる(給餌ワゴン21が処理制御装置11eに接続されたブルートゥーストランシーバ23aからの無線受信範囲内にある限り)。レール22が非常に長い場合は、給餌ワゴン21を処理制御装置11eに常に接続された状態とすることができる複数のブルートゥーストランシーバ23aが種々の位置で必要とされる場合がある。ブルートゥースの範囲は、トランスミッタ電力および環境に応じて約5m〜約100mの間で変化させてもよい。
ブルートゥースは、79の異なる周波数の間で周波数ホッピングを使用して他のISMバンドトラヒックを同時に発生することができ、さらに擾乱をほとんど受けないため好ましい。また、ブルートゥースは暗号化されたデータ伝送を提供する。
酪農従事者によって設置され稼働されうる短距離無線ネットワークまたは接続は、GSMまたは3Gネットワークなどの既存のネットワークに比べて好ましい。既存のネットワークの場合、酪農従事者は自分に代わる第三者による運用に頼らなければならないからである。
給餌ワゴン21は処理制御装置11eからの給餌命令を受信し、短距離無線リンク23a−cを介して給餌状態の情報を処理制御装置11eに伝達して返すように配備されることが好ましい。
さらに、給餌ワゴン21は、給餌ワゴン21内または給餌ワゴン21の作動中にエラーが発生した場合に処理制御装置11eに警報を発するように配備されてもよい。
酪農従事者24は、畜舎内に居てブルートゥース通信機能を備えたPDAなどの携帯機器25を装着または所持していてもよい。このような携帯機器25と給餌ワゴン21は、酪農従事者が給餌ワゴン21にデータを要求し給餌ワゴン21からデータを受信して給餌ワゴン21に指定の作業を実施するように命令しうるように、無線通信チャネル25aを装備していてもよい。
このような設備によって、給餌ワゴン21と酪農システム全体の作動は大幅に改善される。ブルートゥース通信リンクは、畜牛が必然的に作り出す非衛生的な環境によって汚損されない信頼性の高い接続を提供する。
リンクは、さらに、所与の給餌ワゴンに関係なく常時接続を実現する。酪農システムの処理制御装置11eは、エラーが発生した場合に、畜牛に給餌が行われているか否かの情報を得ることができる。したがって、本発明は、畜牛が過不足なく給餌が行われる効率的な酪農システムを提供する重要な一歩である。
さらに、給餌ワゴン21のブルートゥース通信機能は、ブルートゥースの通信機能性を備えたPDAまたは他の携帯機器を介してデータを読み取り、給餌ワゴンを制御する機能を酪農従事者に提供する。
また、酪農システムは上記の種類の給餌ワゴン、あるいはその他の可動給餌装置または配備をさらに備えてもよいことは理解される。
酪農システムは、さらに1〜10の番号を付与された多数の搾乳場所を備える。ただし、さらにいくつかの搾乳場所があってもよい。典型的には、酪農場に居る畜牛と同数の搾乳場所があってもよい。さらに、複数の搾乳装置26〜28があり、それらの各々は、レールシステムに沿ってそれぞれの搾乳場所1〜10に移動可能であり、それぞれの搾乳場所1〜10に居る畜牛に搾乳を行うように配備される。搾乳装置26〜28の各々は、ティートキャップ、真空ホース、脈動真空ホースなどを含み、それぞれの所望の搾乳場所に移動される。真空ホースと脈動真空ホースの各々は、酪農従事者によってそれぞれの搾乳場所にある真空コネクタに手動で接続され、これらのコネクタは真空源に接続されている(図2および3には図示せず)。
搾乳装置26〜28の各々は、搾乳場所に居る畜牛を識別する畜牛識別装置11c−1と畜牛から搾られるミルクを測定する乳量計11c−2とを備える(識別装置11c−1と乳量計11c−2は、搾乳装置26に関する図3にのみ示されている)。乳量計は、搾乳装置と一体であってもよく、搾乳装置から分離されていてもよい。乳量計は、流速と流量などの乳生産量情報を提供することになる。また、現在入手可能な乳量計を用いて、ミルクの導電率値、色(RGB分析を使用)、および他のミルクパラメータを測定することが可能である。色分析は乳中の血液の存在を検出する場合に使用されうる。これらのデータのすべては、酪農従事者が自分の家畜を適切に管理できるように無線でネットワークに伝送されうる。
搾乳装置の各々は、それぞれのブルートゥースまたは他の短距離無線リンク26a〜26c、27a〜27c、28a〜28cを介して処理制御装置11eに無線接続され、それぞれの短距離無線リンク26a〜26c、27a〜27c、28a〜28cを介して処理制御装置11eに畜牛の識別情報と乳生産量情報を伝達するよう配備される。
ブルートゥースリンク26a〜26c、27a〜27c、28a〜28cの各々は、CANバス12と、それぞれの搾乳装置26〜28に配備された同様のブルートゥーストランシーバまたはCAN−ブルートゥースインタフェース26b、27b、28bとを介して処理制御装置11eに接続されたブルートゥーストランシーバまたはCAN−ブルートゥースインタフェース26a、27a、28aとを備え、ブルートゥーストランシーバの各対26a〜26b、27a〜27b、28a〜28bは個々の無線チャネル26c、27c、28cを介して相互に通信するように配備される。
搾乳装置26〜28の各々は、可動搾乳装置26〜28の作動中にエラーが発生した場合にそれぞれのブルートゥースリンク26a〜26c、27a〜27c、28a〜28cを介して処理制御装置11eに警報を発するか、またはエラーを通知するように配備されてもよい。
このような設備によって、搾乳装置26〜28および酪農システム全体の作動は大幅に改善される。ブルートゥース通信リンク26a〜26c、27a〜27c、28a〜28cは、酪農場における非衛生的な環境によって汚損されない信頼性の高い接続を提供する。
酪農システムは、給餌ステーション11b−1、11b−2、および11b−3とローカルCANバス上で相互に接続されるカーフフィーダー11b−4とを備える別の給餌システム11b、ならびに洗浄システム11d−1、レシーバ11d−2、真空供給システム11d−3、およびローカルCANバス上で相互に接続される冷却タンク11d−4を備えるプラント制御システム11dをさらに備える(図3に示されるように)。
図2は3台の搾乳装置26〜28のみを示し図3は1台の搾乳装置26のみを示すが、酪農システムは、たとえば、8台などのさらに多くの搾乳装置を含んでもよいことは理解されよう。利用可能な搾乳装置が8台あるものと仮定すると、ある搾乳場所、たとえば、搾乳場所1での搾乳が終了すると、搾乳装置はその搾乳場所の真空コネクタから外され、別の所望の搾乳場所で畜牛に搾乳を行うために、たとえば、搾乳場所9に移動される。搾乳場所2での搾乳が終了すると、その搾乳場所で使用された搾乳装置は搾乳場所10などに移動され、すべての搾乳場所に居る畜牛の搾乳が完了するまで、以下同様に移動される。
ブルートゥーストランシーバまたはCAN−ブルートゥースインタフェース23a、26a、27a、28aの数は1から任意の自然数の範囲であってよいことは理解されよう。比較的小規模の酪農場においては、複数の給餌ワゴン21と搾乳装置26〜28として、すなわち、ブルートゥースIEEE規格で設定される最大7つが通信用に1つの共通のブルートゥーストランシーバまたはCAN−ブルートゥースインタフェースをCANバス12上で共有してもよい。比較的大規模の酪農場においては、単一の可動酪農装置がかなり長い距離、すなわち、単一のブルートゥーストランシーバまたはCAN−ブルートゥースインタフェースの範囲を超えて移動される場合、この可動酪農装置に対して複数のブルートゥーストランシーバまたはCAN−ブルートゥースインタフェースが要求されてもよい。
現在のブルートゥース規格は、ブルートゥース「ピコネット」に接続されうるブルートゥースで使用可能なユニットの数を1台のマスタユニットと最大7台のスレーブに制限している。場合によっては、さらに多くのユニットを相互に接続することが望ましい。本発明において、搾乳装置、給餌装置、および携帯機器がすべてネットワークに無線接続される必要がある場合、ユニットの総数が8台を超える場合がある。その場合、通信するデータがあるときのみ接続を確立するために装置がネットワークに無線接続し、データが転送された後は切断することが好ましい。公知のブルートゥースの場合、典型的にはアドレス接続に通常1秒かかり、データ転送速度は約400kpsである。酪農システムの環境では、衝突の確率は小さく、たとえ衝突が起きても接続が確立されるまで操作者はわずか数秒間待つだけでよい。
搾乳装置の例が図4および5にさらに詳しく示される。参照符号100によって一般的に示される装置は、フック102によってレール101に取り付けられ、脈動真空ホース103と搾乳クラスタ105を含む。送乳パイプはレール101に平行に設置されており、脈動真空ホースはレールに沿った様々な地点で送乳パイプに接続可能である。
装置は図5に別途示されるユーザインタフェースを有し、これによって、動物識別データが入力されうるうえに、パラメータが調整されうる。あるいは、この入力と調整は、本明細書の他の部分に記載したようなPDAなどの遠隔機器置を使って実行されうる。
本発明によるシステムにおいて、下記を含む数多くのパラメータが管理装置11eによって好都合に設定可能である。
可動装置とネットワークとの間の双方向通信が牛群管理に多くの可能性をもたらす。たとえば、乳量計のデータは、動物が乳腺炎やほかの乳腺感染症に罹患していることを示す場合がある。これは、ミルクの導電率や色から判断されうる。その場合、その動物を通常よりも長い間搾乳することは感染症からの回復を促進するため好ましい。したがって、乳流量が一定の閾値未満まで低下した後、搾乳は、通常、停止することになるが、動物が感染症に罹患している場合は、この閾値が低く設定されてもよい。感染症の動物の不快症状が少なくなるように、真空および/または脈動パラメータは変更されてもよい。真空および/または脈動パラメータは感染症でない動物に対しても変更されてもよい。
また、本発明のシステムに動物運動量計(animal activity meter)が含まれてもよい。これは、排卵周期のタイミングだけでなく動物の健康全般に関する徴候も示すことになる。搾乳および/または給餌パラメータを運動量計のデータに応じて調整すると好都合な場合がある。さらに、動物の乳生産量は給餌量の調整に利用されうる。
システムは、給餌および/または搾乳パラメータの調整に利用されうる、動物の健康状態に関する格納データを含んでいてもよい。それゆえ、動物識別データはシステムに正しく入力されることが重要である。搾乳および/または給餌は必ずしも同じ順序で行われないため、動物識別データは携帯機器25を使って入力/更新されうる。