JP2009520070A - ポリオルガノシロキサン組成物及び関連する方法 - Google Patents

ポリオルガノシロキサン組成物及び関連する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】硫黄官能線状ポリオルガノシロキサンを提供すること。
【解決手段】上記課題は、不飽和エラストマーと反応できる、化学的に保護された硫黄基を含む、硫黄官能線状ポリオルガノシロキサンを含んでなる組成物により解決する。特定の条件下で、硫黄基は、不飽和エラストマーと反応してもよい。前記硫黄官能線状ポリオルガノシロキサンが更にフィラー表面とカップリングできる官能基を含むことが好ましい。本発明は、硫黄官能線状ポリオルガノシロキサンを製造・使用する方法に関する実施形態を含んでもよい。
【選択図】なし

Description

本発明は、化学的に保護された硫黄基を有する硫黄官能線状ポリオルガノシロキサンを有する組成物に関する実施形態を含んでもよい。また、本発明は、エラストマー組成物における硫黄官能線状ポリオルガノシロキサンを製造・使用する方法に関する実施形態を含んでもよい。
未加硫状態における天然又は合成ゴム(又はエラストマー)は、高い引張強度を必要とする用途に使用されることを妨げる本質的に低い機械的特性を有することがある。エラストマーは、弾性率と引張特性を最大にするため、化学的に架橋(加硫)されることを必要としてもよい。硫黄元素は、天然又は合成ゴムを加硫するための「一次」架橋剤として使用されることができる。
また、二次架橋をエラストマーに与えるため、メルカプトシランのような付加的な架橋剤が使用されてもよい。また、メルカプトシランは、強化フィラーを含むゴム組成物用の相溶化剤として使用されてもよい。しかしながら、メルカプトシランは、高い化学的活性を有し、ゴム処方の配合の際に、エラストマーと初期硬化(スコーチ)をすることがある。このスコーチをする反応は、粘度の不都合な上昇と望ましくないフィラー分散を生じ、乏しい加工性と低い強化作用をもたらすことがある。
エラストマーと初期硬化をすることなく、必要により、フィラーの相溶化剤として機能し得る硫黄含有の二次架橋剤を有することが望まれることがある。種々の用途に現在利用できるもの以外の特性を供えた加硫ゴム組成物を有することが望まれることがある。
1つの実施形態において、本組成物は、硫黄官能線状ポリオルガノシロキサンを含んでもよい。硫黄官能線状ポリオルガノシロキサンは、化学的に保護された硫黄基を含んでもよい。硫黄官能線状ポリオルガノシロキサンは、不飽和エラストマーと反応してもよい。
1つの実施形態において、本方法は、硫黄官能線状ポリオルガノシロキサンを製造することを含んでもよい。硫黄官能線状ポリオルガノシロキサンは、化学的に保護された硫黄基を含んでもよい。アルケン基を含んでもよい線状ポリオルガノシロキサンとチオ酸との反応は、硫黄官能線状ポリオルガノシロキサンを生成することができる。
1つの実施形態は、線状ポリオルガノシロキサンとチオ酸の反応生成物を提供してもよい。線状ポリオルガノシロキサンは、アルケン基を含んでもよい。
チオ酸は、式(IV)によって規定される構造を有してもよく、
(IV) ((R27OC(=O))t−(L)jk−(Q)zJ(=E)SH
ここに、R27は、脂肪族基、脂環式基、又は芳香族基であり、Lは、各場合において独立して、脂肪族基、脂環式基、又は芳香族基の置換に由来する一価基又は多価基であり、Qは、酸素、硫黄、又はNR29基であり、ここに、R29は、脂肪族基、脂環式基、又は芳香族基であり、Jは、炭素、硫黄、リン、又はスルホニル基であり、Eは、酸素又は硫黄であり、Sは、1又は複数の硫黄原子を含み、tは、0、1、2、3、4、又は5の整数であり、jは、0又は1であり、kは、Jが炭素、硫黄、又はスルホニルならば1であり、Jがリンならばkは2であり、zは、0、1、又は2である。
1つの実施形態において、本組成物は、フィラー表面とカップリングできる官能基、及び化学的に保護された硫黄基を有する硫黄官能線状ポリオルガノシロキサンを含んでもよい。
本発明は、硫黄官能線状ポリオルガノシロキサンを含む組成物に関する実施形態を含んでもよい。硫黄官能線状ポリオルガノシロキサンは、化学的に保護された硫黄基を含んでもよい。特定の条件下で、硫黄基は、不飽和エラストマーと反応してもよい。本発明は、硫黄官能線状ポリオルガノシロキサンを製造・使用する方法に関する実施形態を含んでもよい。
以下の本願明細書と特許請求の範囲におけるいくつかの用語について、次の意味を有するものと言及する。単数形の「1つ」、「ある」、「その」は、文脈が明確に別のものを示さない限り、複数の対象を含む。本願における明細書と特許請求の範囲の全体を通して、概略的な用語は、それが関係する基本的機能を変化させることなく許容範囲で変わり得る定量的表現を修飾するために用いられることがある。したがって、「約」のような用語で修飾された値は、特定の厳密な値に限定されるものではない。場合により、概略的な用語は、その値を測定するための装置の精度に対応してもよい。同様に、「ない」は、ある用語と組み合わせて用いられてよく、その修飾された用語のものが存在しないと考えられるにしても、実体のない数又は痕跡量を含んでもよい。「線状」は、その修飾された用語のものの分岐を除外する。
ある実施形態による組成物は、硫黄官能線状ポリオルガノシロキサンを含んでもよい。硫黄官能線状ポリオルガノシロキサンは、架橋又は分岐構造なしに、線状の仕方で一緒に連結したオルガノシロキサン繰り返し単位を含んでもよい。硫黄官能線状ポリオルガノシロキサンは、1又は複数の化学的に保護された硫黄基を含んでもよい。1つの実施形態において、化学的に保護された硫黄基は、線状ポリオルガノシロキサンの1つの末端に存在してもよい。1つの実施形態において、化学的に保護された硫黄基は、線状ポリオルガノシロキサンの両方の末端に存在してもよい。1つの実施形態において、線状ポリオルガノシロキサンの化学的に保護された硫黄基は、線状ポリオルガノシロキサンの骨格から離れた1又は複数の懸垂基として存在してもよい。
適切な化学的に保護された硫黄基は、官能基によって保護された1又は複数の硫黄原子を含んでもよい(即ち、可逆的にブロックされる)。官能基は、硫黄の1又は複数の原子を化学的に潜在化することができる。化学的に保護された硫黄基は、その化学的に保護された硫黄基が、ブロックを外される、保護を外される、又は活性化されるときまで、比較的低い活性状態にあることができる。活性化すると、その活性化された硫黄基は、別の有機成分と化学的に反応することができる。こうした反応には、例えば、不飽和エラストマーへの架橋が挙げられる。
1つの実施形態において、本組成物は、フィラー表面とカップリングし得る官能基を含んでもよい。本組成物のフィラー表面とのカップリングは、物理的もしくは弱いカップリング(例えば、本組成物とフィラー表面の間の水素結合の生成による)又は化学的カップリング(例えば、本組成物とフィラー表面の間の共有化学結合の生成による)によって生じてもよい。
1つの実施形態において、本組成物は、式(I)、(II)、又は(III)の構造を有してもよく、
Figure 2009520070

(I)
Figure 2009520070

(II)
Figure 2009520070

(III)
ここに、Aは、多価基((R27OC(=O))t−(L)jk−(Q)zJ(=E)であり、R1〜R27は、各場合に独立して、水素原子、脂肪族基、脂環式基、又は芳香族基であり、Gは、結合、二価の脂肪族基、二価の脂環式基、又は二価の芳香族基であり、R28は、ヒドロキシル基、ハロゲン、シリルアルコキシ基、アルコキシ基、又はアリールオキシ基であり、Sは、1又は複数の硫黄原子であり、Lは、各場合に独立して、脂肪族基、脂環式基、又は芳香族基の置換に由来する一価基又は多価基であり、Qは、酸素、硫黄、又はNR29基であり、R29は、脂肪族基、脂環式基、又は芳香族基であり、Jは、炭素、硫黄、リン、又はスルホニル基であり、Eは、酸素又は硫黄であり、mとnは、独立して、0であり、又は0より大きい整数であり、pは、0より大きく、tは、0、1、2、3、4、又は5の整数であり、jは、0又は1であり、kは、Jが炭素、硫黄、又はスルホニルならば1であり、Jがリンならばkは2であり、zは、0、1、又は2の整数である。
脂肪族基、脂環式基、及び芳香族基は、次のように規定され、即ち、脂肪族基は、少なくとも1つの炭素原子と少なくとも1つの価を有する有機基であり、原子の線状配列であってもよい。脂肪族基は、窒素、硫黄、ケイ素、セリウム、及び酸素のようなヘテロ原子を含んでもよく、あるいは、炭素と水素のみからなってもよい。脂肪族基には、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えば、エステル類とアミド類のようなカルボン酸誘導体)、アミン基、ニトロ基などの広範囲な官能基が挙げられる。例えば、4−メチルペンタ−1−イル基は、メチル基を含むC6脂肪族基であることができ、メチル基は官能基であり、これはアルキル基であってもよい。同様に、4−ニトロブタ−1−イル基は、ニトロ基を含むC4脂肪族基であることができ、ニトロ基は官能基である。脂肪族基は、1又は同一又は相違してよい複数のハロゲン原子を含んでもよいハロアルキル基であってもよい。ハロゲン原子には、例えば、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素が挙げられる。1又は複数のハロゲン原子を有する脂肪族基には、ハロゲン化アルキル、即ち、トリフルオロメチル、ブロモジフルオロメチル、クロロジフルオロメチル、ヘキサフルオロイソプロピリデン、クロロメチル、ジフルオロビニリデン、トリクロロメチル、ブロモジクロロメチル、ブロモエチル、2−ブロモトリメチレン(例、−CH2CHBrCH2−)などが挙げられる。脂肪族基のさらなる例には、アリル、アミノカルボニル(−CONH2)、カルボニル、ジシアノイソプロピリデン−CH2C(CN)2CH2−)、メチル(−CH3)、メチレン(−CH2−)、エチル、エチレン、ホルミル(−CHO)、ヘキシル、ヘキサメチレン、ヒドロキシメチル(−CH2OH)、メルカプトメチル(−CH2SH)、メチルチオ(−SCH3)、メチルチオメチル(−CH2SCH3)、メトキシ、メトキシカルボニル(CH3OCO−)、ニトロメチル(−CH2NO2)、チオカルボニル、トリメチルシリル((CH33Si−)、t−ブチルジメチルシリル、トリメトキシシリルプロピル((CH3O)3SiCH2CH2CH2−)、ビニル、ビニリデンなどを挙げることができる。さらなる例として、「C1〜C30脂肪族基」は、1以上で30以下の炭素原子を含む。メチル基(CH3−)は、C1脂肪族基の例であってもよい。デシル基(CH3(CH29−)は、C10脂肪族基の例であってもよい。
脂環式基は、少なくとも1つの価を有する基であってもよく、環状であってもよいが芳香族でなくてもよい原子の配列を有する。脂環式基は、1又は複数の非環状成分を含んでもよい。例えば、シクロヘキシルメチル基(C611CH2−)は、シクロヘキシル環(原子の配列、環状であってもよいが芳香族でなくてもよい)とメチレン基(非環式成分)を含んでもよい脂環式基であってもよい。脂環式基は、窒素、硫黄、セレン、ケイ素、及び酸素のようなヘテロ原子を含んでもよく、あるいは、全く炭素と水素のみからなってもよい。脂環式基は、1又は複数の官能基、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えば、エステル類とアミド類のようなカルボン酸誘導体)、アミン基、ニトロ基などを含んでもよい。例えば、4−メチルシクロペンタ−1−イル基は、メチル基を含むC6脂環式基であってもよく、メチル基は官能基であり、これはアルキル基であってもよい。同様に、2−ニトロシクロブタ−1−イル基は、ニトロ基を含むC4脂環式基であってもよく、ニトロ基は官能基である。脂環式基は、1又は複数のハロゲン原子を含んでもよく、これらは、同一又は相違してもよい。ハロゲン原子には、例えば、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素が挙げられる。1又は複数のハロゲン原子を有する脂環式基には、2−トリフルオロメチルシクロヘキサ−1−イル、4−ブロモジフルオロメチルシクロオクタ−1−イル、2−クロロジフルオロメチルシクロヘキサ−1−イル、ヘキサフルオロイソプロピリデン2,2−ビス(シクロヘキサ−4−イル)(−C610C(CF32610−)、2−クロロメチルシクロヘキサ−1−イル、3−ジフルオロメチレンシクロヘキサ−1−イル、4−トリクロロメチルシクロヘキサ−1−イルオキシ、4−ブロモジクロロメチルシクロヘキサ−1−イルチオ、2−ブロモエチルシクロペンタ−1−イル、2−ブロモプロピルシクロヘキサ−1−イルオキシ(例、CH3CHBrCH2610−)などが挙げられる。脂環式基のさらなる例には、4−アリルオキシシクロヘキサ−1−イル、4−アミノシクロヘキサ−1−イル(H2NC610−)、4−アミノカルボニルシクロペンタ−1−イル(NH2COC58−)、4−アセチルオキシシクロヘキサ−1−イル、2,2−ジシアノイソプロピリデンビス(シクロヘキサ−4−イルオキシ)(−OC610C(CN)2610O−)、3−メチルシクロヘキサ−1−イル、メチレンビス(シクロヘキサ−4−イルオキシ)(−OC610CH2610O−)、1−エチルシクロブタ−1−イル、シクロプロピルエテニル、3−ホルミル−2−テトラヒドロフラニル、2−ヘキシル−5−テトラヒドロフラニル、ヘキサメチレン−1,6−ビス(シクロヘキサ−4−イルオキシ)(−OC610(CH26610O−)、4−ヒドロキシメチルシクロヘキサ−1−イル(4−HOCH2610−)、4−メルカプトメチルシクロヘキサ−1−イル(4−HSCH2610−)、4−メチルチオシクロヘキサ−1−イル(4−CH3SC610−)、4−メトキシシクロヘキサ−1−イル、2−メトキシカルボニルシクロヘキサ−1−イルオキシ(2−CH3OCOC610O−)、4−ニトロメチルシクロヘキサ−1−イル(NO2CH2610−)、3−トリメチルシリルシクロヘキサ−1−イル、2−t−ブチルジメチルシリルシクロペンタ−1−イル、4−トリメトキシシリルエチルシクロヘキサ−1−イル(例、(CH3O)3SiCH2CH2610−)、4−ビニルシクロヘキセン−1−イル、ビニリデンビス(シクロヘキシル)などが挙げられる。用語「C3〜C30脂環式基」には、3以上で10以下の炭素原子を有する脂環式基が挙げられる。脂環式基の2−テトラヒドロフラニル(C47O−)は、C4脂環式基を表す。シクロヘキシルメチル基(C611CH2−)は、C7脂環式基を表す。
芳香族基は、少なくとも1価を有し、かつ少なくとも1つの芳香族基を有する原子配列であってもよい。これは、窒素、硫黄、セレン、ケイ素、及び酸素のようなヘテロ原子を含んでもよく、あるいは、全く炭素と水素のみからなってもよい。適切な芳香族基には、フェニル、ピリジル、フラニル、チエニル、ナフチル、フェニレン、及びビフェニル基が挙げられる。芳香族基は、4n+2の「非局在化」電子を有する環状構造であってもよく、ここに、nは、1又はそれ以上の整数であってもよく、フェニル基(n=1)、チエニル基(n=1)、フラニル基(n=1)、ナフチル基(n=2)、アズレニル基(n=2)、アントラセニル基(n=3)などが例証される。また、芳香族基は、非芳香族成分を含んでもよい。例えば、ベンジル基は、芳香族基であってもよく、これは、フェニル環(芳香族基)とメチレン基(非芳香族成分)を含んでもよい。同様に、テトラヒドロナフチル基は、非芳香族成分−(CH24−に融合した芳香族基(C63)を含む芳香族基であってもよい。芳香族基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、ハロ芳香族基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えば、エステル類とアミド類のようなカルボン酸誘導体)、アミン基、ニトロ基などのような1又は複数の官能基を含んでもよい。例えば、4−メチルフェニル基は、メチル基を含むC7芳香族基であってもよく、メチル基は官能基であり、これはアルキル基であってもよい。同様に、2−ニトロフェニル基は、ニトロ基を含むC6芳香族基であってもよく、ニトロ基は官能基である。芳香族基には、トリフルオロメチルフェニル、ヘキサフルオロイソプロピリデンビス(4−フェン−1−イルオキシ)(−OPhC(CF32PhO−)、クロロメチルフェニル、3−トリフルオロビニル−2−チエニル、3−トリクロロメチルフェン−1−イル(3−CCl3Ph−)、4−(3−ブロモプロパ−1−イル)フェン−1−イル(BrCH2CH2CH2Ph−)などのハロゲン化芳香族基が挙げられる。芳香族基のさらなる例には、4−アリルオキシフェン−1−オキシ、4−アミノフェン−1−イル(H2NPh−)、3−アミノカルボニルフェン−1−イル(NH2COPh−)、4−ベンゾイルフェン−1−イル、ジシアノイソプロピリデンビス(4−フェン−1−イルオキシ)(−OPhC(CN)2PhO−)、3−メチルフェン−1−イル、メチレンビス(フェン−4−イルオキシ)(−OPhCH2PhO−)、2−エチルフェン−1−イル、フェニルエテニル、3−ホルミル−2−チエニル、2−ヘキシル−5−フラニル、ヘキサメチレン−1,6−ビス(フェン−4−イルオキシ)(−OPh(CH26PhO−)、4−ヒドロキシメチルフェン−1−イル(4−HOCH2Ph−)、4−メルカプトメチルフェン−1−イル(4−HSCH2Ph−)、4−メチルチオフェン−1−イル(4−CH3SPh−)、3−メトキシフェン−1−イル、2−メトキシカルボニルフェン−1−イルオキシ(例、メチルサリシル)、2−ニトロメチルフェン−1−イル(−PhCH2NO2)、3−トリメチルシリルフェン−1−イル、4−t−ブチルジメチルシリルフェン−1−イル、4−ビニルフェン−1−イル、ビニリデンビス(フェニル)などが挙げられる。用語「C3〜C30芳香族基」には、3〜30の炭素原子を含む芳香族基が挙げられる。適切なC3芳香族基には、1−イミダゾリル(C322−)が挙げられる。ベンジル基(C77−)は、C7芳香族基を表す。
構造(I)、(II)、又は(III)において、下部構造「A−S−」は、化学的に保護された硫黄基を示してもよい。ここに「A」は、上記に規定した多価基((R27OC(=O))t−(L)jk−(Q)zJ(=E)であってもよい。1つの側で、基J(不飽和ヘテロ原子Eに結合)は、基((R27OC(=O))t−(L)jk−(Q)zに結合してもよく、他方の側で、基Jは、硫黄原子に結合してもよく、これは、基Gを介してケイ素原子に連結してもよい。
適切な化学的に保護された硫黄基は、単一の硫黄原子を含んでもよく、あるいは、複数の硫黄原子を含んでもよい。複数の硫黄原子は、硫黄鎖を形成してもよい。1つの実施形態において、化学的に保護された硫黄基は、チオカルボキシレートエステル(−C(=O)S−)、ジチオカルボキシレート(−C(=S)S−)、チオカルボナートエステル(−O−C(=O)S−)、ジチオカルボナートエステル(−S−C(=O)S−又は−O−C(=S)S−)、トリチオカルボナートエステル(−S−C(=S)S−)、チオスルホナートエステル(−S(=O)2S−)、チオサルフェートエステル(−O−S(=O)2S−)、チオスルファマートエステル、チオスルフィナートエステル(−S(=O)S−)、チオスルフィットエステル(−O−S(=O)S−)、チオスルフィメートエステル、チオホスフェートエステル(P(=O)(O−)2(S−))、ジチオホスフェートエステル(P(=O)(O−)(S−)2又はP(=S)(O−)2(S−))、トリチオホスフェートエステル(P(=O)(S−)3又はP(=S)(O−)(S−)2)、テトラチオホスフェートエステル(P(=S)(S−)3)、チオホスファマートエステル、ジチオホスファマートエステル、チオホスホルアミダートエステル、ジチオホスホルアミダートエステル、又はトリチオホスホルアミダートエステルの1又は複数を含んでもよい。
別の適切な化学的に保護された硫黄基には、チオカルボキシレートエステル(−C(=O)S−)が挙げられる。1つの実施形態において、チオカルボキシレートエステルは、複数のメチル又はオクチル基を含んでもよく、化学的に保護された硫黄基は、1又は複数のチオアセテート基又はチオオクタノエート基を含んでもよい。さらに別の適切な化学的に保護された硫黄基には、チオカルバメート又はジチオカルバメートが挙げられる。
上述のように、化学的に保護された硫黄基は、線状ポリオルガノシロキサンの末端に接続してもよい。末端接続の化学的に保護された硫黄基は、構造(II)に示すように、1つの末端に存在してもよく、あるいは、構造(I)に示すように、線状ポリオルガノシロキサンの両方の鎖端に存在してもよい。1つの化学的に保護された硫黄基は、キャッピング剤として存在してもよく、あるいは、他の反応基もまた存在するならば、化学的に保護された硫黄基は、加硫の際に、間接的に架橋してもよい。1つの実施形態において、化学的に保護された硫黄基は、構造(II)と(III)に示すように、線状ポリオルガノシロキサンの主鎖に垂れ下がってもよい。構造(I)、(II)、及び(III)において、2又はそれ以上の化学的に保護された硫黄基は、互いに同じであってもよく、あるいは、実施形態と実施形態とで、互いに相違してもよい。
活性化率及び/又は反応速度は、本組成物の化学的に保護された硫黄基の種類、合計数、及び/又は比の選択によって制御されてもよい。例えば、本組成物は、チオアセテート官能基とチオオクタノエート官能基の双方を含んで作成することができる。基の合計数、基の種類、及び互いの基の比は、活性化速度と以降のエラストマーとの反応を調節することができる。
随意の表面カップリング基が、本組成物に含められてもよい。構造(I)、(II)、又は(III)において、R28は、フィラー表面上の対応する反応基にカップリングすることができる官能基を示す。1つの実施形態において、官能基R28は、加水分解性であってもよい。反応の際、こうした加水分解性基は、無機フィラー表面の反応基、例えば、シリカ粒子表面上のシラノール基とカップリングしてもよい。R28とシラノールとのカップリングは、物理的結合と化学的結合の一方又は両方を形成してもよい。
28カップリング基として適切な基には、1又は複数のC1〜C20アルコキシ基が挙げられる。1つの実施形態において、R28には、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピロキシ基、イソブトキシ基、又はアセトキシ基が挙げられる。構造(I)、(II)、及び(III)において、下付文字mが1より大きいとき、複数のR28基が存在してもよい。複数のR28基は、互いに同一でもよく、あるいは、互いに相違してもよい。例えば、本組成物は、メトキシとイソプロピロキシの官能基の両方を含んでもよい。基の合計数、基の種類、及び互いの基の比は、フィラー表面との以降の反応と接着を調節することができる。
構造(I)、(II)、又は(III)におけるGとしての適切な基には、脂肪族基が挙げられる。G基は、ケイ素原子に対して硫黄原子を、R28カップリング基に対してケイ素原子を連結することができる。1つの実施形態において、Gには、二価のC2〜C20脂肪族基が挙げられる。1つの実施形態において、Gには、(−CH2CH2−)、(−CH2CH2CH2−)、(−CH2CH2CH2CH2−)、(−CH(CH3)−)、(−CH2CH(CH3)−、(−C(CH32−)、(−CH(C25)−)、(−CH2CH2CH(CH3)−)、(−CH2CH(CH3)CH2−)、(−CH2CH264CH2CH2−)、ジエチレンシクロヘキサン、又は1,2,4−トリエチレンシクロヘキサンの1又は複数が挙げられる。1つの実施形態において、G基中の炭素原子の合計は、約3から約18までの範囲であってもよい。炭素原子の数の増加は、配合の際の有機エラストマーマトリックス内のフィラー分散の容易性を高めることができる。
式(I)、(II)、又は(III)における繰り返し単位の合計数(m+n+p)は、約0に等しい又はそれ以上であってもよい。1つの実施形態において、式(I)、(II)、又は(III)における繰り返し単位の合計数(m+n+p)は、約10に等しい又はそれ以上であってもよい。1つの実施形態において、硫黄官能線状ポリオルガノシロキサンにおける繰返し単位の合計数は、約0から約15まで、約15から約25まで、約25から約35まで、又は約35から約50までの範囲であってもよい。1つの実施形態において、本組成物における繰返し単位の合計数は、約50より大きくてもよい。
式(I)、(II)、及び(III)によって示される組成物は、所定の分子量分布(MWD)を有することができる。1つの実施形態において、MWDは広くてもよく、指数のmとnは、本組成物の平均を表すことができる。1つの実施形態において、分子量分布は、約1.5より大きくてもよい。1つの実施形態において、分子量分布は、約1から約1.5までの範囲であってもよい。異なるオルガノシロキサン単位の分布は、互いに対して、ランダム又はブロックであってもよい。
本組成物は、1モルあたり約250グラムより大きい範囲の分子量を有してもよい。1つの実施形態において、本組成物は、1モルあたり約250グラムから1モルあたり約1000グラムまで、1モルあたり約1000グラムから1モルあたり約2000グラムまで、1モルあたり約2000グラムから1モルあたり約5000グラムまで、又は1モルあたり約5000グラムから1モルあたり約10000グラムまでの範囲の分子量を有してもよい。1つの実施形態において、本組成物の分子量は、1モルあたり約10000グラムより高くてもよい。
本発明の1つの態様によると、ゴム組成物を提供してもよい。このゴム組成物は、不飽和エラストマー、及び本願明細書に規定する硫黄官能線状ポリオルガノシロキサンを含む本組成物を含んでもよい。本組成物は、不飽和エラストマー上の反応基と反応(例、架橋)し得る1又は複数の化学的に保護された硫黄基を含んでもよい。本願明細書における用語「反応」は、架橋、化学的結合、及びキャップすることを含み、用語「不飽和エラストマー」は、1又は複数の反応性炭素−炭素二重結合又は炭素−炭素三重結合を含んでもよい。
適切な不飽和エラストマーは、天然ゴムと合成ゴムの一方又は双方を含んでもよい。適切な合成ゴムの代表的な例は、溶液のスチレン−ブタジエンゴム(sSBR)、エマルジョンのスチレン−ブタジエンゴム(eSBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム、イソプレンゴム(IR)、イソプレン−イソブチレンゴム(IIR)、ポリブタジエン(BR)、エチレン−プロピレンコポリマー(EP)、エチレン−プロピレンターポリマー(EPDM)、及びアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)の1又は複数を含んでもよい。
適切なジエンベースの合成ゴムは、ジエンモノマー、即ち、共役か否かによらず、2つの炭素−炭素二重結合を有するモノマーから少なくとも部分的に誘導することができる(ホモポリマー又はコポリマーとして)。1つの実施形態において、ジエンベースの合成ゴムは、少なくとも1つの共役ジエンモノマーから誘導することができる。1つの実施形態において、ジエンベースの合成ゴムは、少なくとも1つの共役ジエンモノマーと少なくとも1つの芳香族ビニル化合物から誘導することができる。1つの実施形態において、ジエンベースの合成ゴムは、少なくとも1つの共役ジエンモノマーと少なくとも1つのエチレンモノマーと少なくとも1つのアルキレンモノマーから誘導することができる。
適切な共役ジエンには、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジ(C1〜C5−アルキル)−1,3−ブタジエン、例えば、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジエチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−3−エチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−3−イソプロピル−1,3−ブタジエン、フェニル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2,4−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、エチリデンノルボルネン、又はジシクロペンタジエンの1又は複数が挙げられる。
適切な芳香族ビニル化合物には、スチレン又はスチレン誘導体(「スチレン」と総称)が挙げられる。適切なスチレン誘導体には、アルキルスチレン、アルコキシスチレン、又はハロゲン化スチレンの1又は複数が挙げられる。適切なアルキルスチレンには、例えば、メチルスチレン又はパラ−tert−ブチルスチレンが挙げられる。適切なメチルスチレンには、オルト−メチルスチレン、メタ−メチルスチレン、パラ−メチルスチレン、又は2,4,6−トリメチルスチレン(即ち、ビニルメシチレン)の1又は複数が挙げられる。適切なアルコキシスチレンには、例えば、メトキシスチレンが挙げられる。適切なハロゲン化スチレンには、例えば、クロロスチレンが挙げられる。その他の適切な芳香族ビニル化合物には、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、又はビニルナフタレンが挙げられる。
適切な不飽和エラストマー(例、ゴム)には、シス−1,4−ポリイソプレンゴム(天然及び/又は合成)、エマルジョン重合で製造したスチレン/ブタジエンコポリマーゴム、有機溶液重合で製造したスチレン/ブタジエンゴム、3,4−ポリイソプレンゴム、イソプレン/ブタジエンゴム、スチレン/イソプレン/ブタジエンターポリマーゴム、シス−1,4−ポリブタジエン、中位のビニルポリブタジエンゴム(約35%〜約50%のビニル)、高ビニルポリブタジエンゴム(約50%〜約75%のビニル)、スチレン/イソプレンコポリマー、エマルジョン重合で製造したスチレン/ブタジエン/アクリロニトリルのターポリマーゴム、又はブタジエン/アクリロニトリルコポリマーゴムの1又は複数が挙げられる。
溶液重合で製造したSBR(sSBR)は、約5%から約60%までの範囲で結合スチレン含有量を有してもよい。スチレン/ブタジエンに由来する適切なエマルジョン重合(eSBR)は、例えば、約20%〜約28%の結合スチレンのスチレン含有量を有してもよい。1つの実施形態において、中位から比較的高い結合スチレン含有量、即ち、約30%〜約45%の結合スチレン含有量を有するeSBRが使用されてもよい。エマルジョン重合で製造したスチレン/ブタジエン/アクリロニトリルのターポリマーゴムは、ターポリマー中に約2重量%から約40重量%までの結合アクリロニトリルを含んでもよく、これは、不飽和エラストマーとして使用してもよい。適切なポリブタジエンのエラストマーは、約90重量%又はそれ以上のシス−1,4−の含有量を有してもよい。上記ゴムの配合は、材料の最終用途を参照して選択されたエラストマー含有量と比を有して選択されてもよい。
1つの実施形態において、不飽和エラストマーは、ゴム組成物の約5重量%を超える量で存在してもよい。1つの実施形態において、不飽和エラストマーは、約5重量%から約25重量%まで、約25重量%から約50重量%まで、約50重量%から約75重量%まで、又は約75重量%から約90重量%までの範囲の量で存在してもよい。1つの実施形態において、不飽和エラストマーは、約90重量%を超える量で存在してもよい。
1つの実施形態において、このゴム組成物は、フィラーを含んでもよい。適切なフィラーには、強化用フィラーとして機能するフィラーが挙げられる。フィラーは、炭素とケイ素の一方又は両方を含んでもよい。1つの実施形態において、フィラーは、無機フィラーであってもよい。適切な無機フィラーは、金属酸化物と金属水酸化物の一方又は両方を含んでもよい。適切な金属酸化物又は水酸化物には、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、又はチタニウムの1又は複数の酸化物又は水酸化物が挙げられる。1つの実施形態において、アルミニウムの酸化物(アルミナ)又は水酸化物をフィラーとして使用することもできる。1つの実施形態において、ケイ素の二酸化物(シリカ)又は水酸化物をフィラーとして使用することもできる。使用されるシリカには、沈降シリカ又は焼成シリカが挙げられる。1つの実施形態において、シリカはコロイダルシリカであってもよい。
1つの実施形態において、フィラーは、無機フィラーであってもよく、合成ケイ酸塩、天然ケイ酸塩、又はガラス繊維の1又は複数が挙げられる。合成ケイ酸塩の適切な例には、ケイ酸マグネシウム又はケイ酸カルシウムが挙げられる。天然ケイ酸塩の適切な例には、カオリン、クレー、又はタルクが挙げられる。
シリカの適切な例には、市販のシリカ、例えば、PPGインダストリーズから商標HI−SIL、記号表示HI−SIL210、HI−SIL243として入手可能なもの、ZEOSIL1165MPの記号表示を有するローヌ・プーランから入手可能なシリカ、VN2又はVN3の記号表示を有するDegussaから入手可能なシリカ、及びHUBERSIL8745の記号表示を有するHuberから入手可能なシリカが挙げられる。
1つの実施形態において、フィラーは、有機フィラーであってもよく、カーボンブラックが挙げられる。適切なカーボンブラックには、種類HAF、ISAF、又はSAFが挙げられる。こうしたカーボンブラックの適切な例には、限定されるものではないが、Degussa Engineered Carbonsから入手可能なN115、N121、N134、N234、N339、N347、又はN37が挙げられる。
1つの実施形態において、フィラー、例えば、シリカは、窒素ガスを用いた測定で、約40m2/gを超えるBET表面積を有してもよい。1つの実施形態において、表面積は、約40m2/gから約100m2/gまで、約100m2/gから約250m2/gまで、約250m2/gから約500m2/gまで、約500m2/gから約600m2/gまで、又は約600m2/gを超える範囲であってもよい。BET比表面積は「The Journal of the American Chemical Society、60巻、309頁、1938年2月」に記載のBrunauer、Emmett、及びTeller(BET)の方法にしたがって測定することができる。また、シリカは、約100から約200までの範囲、又は約200から約300までの範囲のジブチルフタレート(DBP)吸収値を有することによって特性分析してもよい。さらに、シリカのみならず上記のアルミナ、アルミノケイ酸塩などは、約100から約220までの範囲のCTAB表面積を有することができる。CTAB表面積は、9のpHを持つセチルトリメチルアンモニウムブロミドによって評価される外部表面積であってもよく、ASTMD3849にしたがって測定することができる。
水銀気孔評価にしたがったシリカ、アルミナ、及びアルミノケイ酸塩についての適切な気孔サイズ分布を、本願明細書において考慮することができ、即ち、気孔の5%以下が約10ナノメートル未満の直径を有し、気孔の60%〜90%が約10ナノメートルから約100ナノメートルまでの範囲の直径を有し、気孔の10%〜30%が約100ナノメートルから約1000ナノメートルまでの範囲の直径を有し、及び気孔の5%〜20%が約1000ナノメートルを超える直径を有する。水銀気孔表面積は、水銀圧入法によって測定される比表面積であってもよい。こうした技術について、水銀は、揮発分を除去する熱処理の後、サンプルの気孔に侵入させることができる。設定条件は、100ミリグラムのサンプルを用い、105℃と環境大気圧で2時間にわたって揮発分を除去し、環境大気圧から2000バール(20MPa)の圧力測定範囲と、適切に記載することができる。こうした評価は、DIN66133に記載の方法にしたがってもよい。シリカについての平均の水銀気孔表面積は、約100m2/gから約300m2/gまでの範囲であってもよい。
フィラーの適切な合計量は、約10重量部を(100重量部のゴム又は不飽和エラストマーあたり)超えてもよい。1つの実施形態において、フィラーの合計量は、約10重量部から約40重量部まで、約40重量部から約80重量部まで、約80重量部から約120重量部まで、又は約120重量部から約200重量部までの範囲であってもよい。1つの実施形態において、フィラーは、約200重量部を超える量で存在してもよい。フィラーの合計量の最適値は、意図する最終用途、本組成物とフィラーの特徴と相互作用、及び必要な強化レベルによって異なってもよい。
ゴム組成物が、無機フィラーと有機フィラーの両方を含む場合、無機フィラーと有機フィラーの比は、所定の特性を達成するように選択してもよい。上述のように、無機材料には、シリカを挙げてもよく、有機フィラーには、カーボンブラック強化用顔料を挙げてもよく、そして、シリカ/カーボンブラックの予め選択された比の例は、重量で、少なくとも約3/1、少なくとも約10/1、又は約30/1以下であってもよい。1つの実施形態において、フィラー混合物は、約5重量%から約50重量%までの沈降シリカと対応する約95重量%から約50重量%までのカーボンブラックを含んでもよい。1つの実施形態において、フィラー混合物は、約50重量%から約95重量%までのシリカと対応する約50重量%から約5重量%までのカーボンブラックを含んでもよい。このため、フィラー混合物の合計重量は、40重量部であってもよい。フィラー混合物は、ゴム組成物中の16重量部の沈降シリカと24重量部のカーボンブラックに対応する40重量%の沈降シリカと60重量%のカーボンブラックを含んでもよい。無機フィラーとカーボンブラックは、予備配合してもよく、あるいは、別々に添加し、ゴム組成物の製造の際に、一緒に配合してもよい。
ゴム組成物は、さらに硬化剤を含んでもよい。硬化剤は、集合的に、硫黄加硫剤と加硫促進剤に言及することができる。適切な硫黄加硫剤には、例えば、元素硫黄(遊離硫黄)又は約140℃〜約190℃の温度で硫黄を加硫に利用可能にする硫黄供給加硫剤が挙げられる。硫黄供給加硫剤の適切な例には、アミノジスルフィド、ポリマーのポリスルフィド、又は硫黄オレフィン付加物が挙げられる。
ゴム組成物は、さらに加硫促進剤を含んでもよい。加硫促進剤は、加硫に必要な時間及び/又は温度を制御し、加硫物の特性に影響を与えることができる。加硫促進剤は、一次促進剤又は二次促進剤と分類してもよい。適切な促進剤には、メルカプトベンゾチアゾール、テトラメチルチウラムジスルフィド、ベンゾチアゾールジスルフィド、ジフェニルグアニジン、亜鉛ジチオカルバメート、アルキルフェノールジスルフィド、ブチルキサントゲン酸亜鉛、N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシジエチレンベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N,N−ジフェニルチオ尿素、ジチオカルバミルスルフェンアミド、N,N−ジイソプロピルベンゾチオゾール−2−スルフェンアミド、亜鉛−2−メルカプトトルイミダゾール、ジチオビス(N−メチルピペラジン)、ジチオビス(N−β−ヒドロキシエチルピペラジン)、及びジチオビス(ジベンジルアミン)の1又は複数が挙げられる。その他の加硫促進剤には、例えば、チウラム及び/又はモルホリン誘導体が挙げられる。
硫黄添加の量及び/又は種類は、硫黄官能線状ポリオルガノシロキサンなどの上記組成物の添加に関する以外は、相対的に独立して制御又は操作してもよい。1つの実施形態において、付加的な硫黄源が硬化剤の成分として存在するならば、本発明の実施形態による組成物は、二次架橋剤として機能することができる。
1つの実施形態において、本組成物は、一次加硫剤の添加から得られる架橋とは異なる二次化学架橋を提供することができる。二次架橋は、連続相の弾性率を高めることができ、機械的特性に影響を及ぼすことができる。こうした機械的特性には、引張弾性率、硬度、履歴現象、及び磨耗/裂け/摩滅の耐久性の1又は複数が挙げられる。所与の処方に添加される一次と二次の架橋剤の相対的量を調節することにより、最終的な配合物の弾性率と同時に加硫プロセスの速度を制御することができる。
ゴム組成物は、さらに脱保護剤を含んでもよい。脱保護剤は、化学的に保護された硫黄基を活性化又は脱保護することができる。本組成物に最初に存在する保護基は、実質的に不活性な状態から、硫黄基がエラストマーの不飽和部分に反応するのに利用できる活性状態に切り換えることにより、脱保護剤に対して応答することができる。
化学的に保護された硫黄基の部位に水素原子が移動し得るように、適切な脱保護剤は、十分に不安定な水素原子を含む求核剤を含んでもよい。化学的に保護された硫黄基の部位は、水素の移動に応答し、例えば、メルカプト官能化線状ポリオルガノシロキサンと求核剤の対応誘導体を形成することができる。引き換えに、求核剤誘導体は、保護基を受け戻すことができる。こうした引き換えは、例えば、最初の反応物質(硫黄官能化線状ポリオルガノシロキサンと求核剤)に対する生成物(メルカプト官能化線状ポリオルガノシロキサンと保護基含有求核剤)のより大きい熱力学的安定性によって促進することができる。例証として、アミンとの反応によって脱保護されるカルボニル保護基は、アミドを生成することができ、アミンによって脱保護されるスルホニル保護基は、スルホンアミドを生成することができ、アミンによって脱保護されるスルフィニル保護基は、スルフィンアミドを生成することができ、アミンによって脱保護されるホスホニル保護基は、ホスホンアミドを生成することができ、及びアミンによって脱保護されるホスフィニル保護基は、ホスフィンアミドを生成することができる。
適切な脱保護剤には、求核物質が挙げられる。求核物質の例には、酸化物、水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、アルコキシド、フェノキシド、スルファンアミド塩、アセチルアセトネート、高酸性C−N結合から誘導される炭素アニオン、マロン酸エステル、シクロペンタジエン、フェノール、スルホンアミド、亜硝酸化合物、フルオレン、テトラアルキルアンモニウム塩、及びテトラアルキルホスホニウム塩が挙げられる。特定処方の加硫度を制御するために、硫黄官能線状ポリオルガノシロキサンの一部のみを脱保護するならば、求核剤の部分量(即ち、化学量論的に不足)、又はさらには弱い求核剤を使用してもよい。1つの実施形態において、トリメチロールプロパンが脱保護剤であってもよい。1つの実施形態において、脱保護剤は、加硫促進剤と同じであってもよい。
1つの実施形態において、本方法は、硫黄官能線状ポリオルガノシロキサンを含む組成物を製造してもよい。本方法は、硫黄含有線状ポリオルガノシロキサンにおける硫黄のエステル化を伴ってもよく、あるいは、線状ポリオルガノシロキサンの中にチオエステル基を直接取り込むことを含んでもよい。直接取り込みは、適切な離脱基の置換による、あるいは、炭素−炭素二重結合をまたがる付加によることができる。
1つの実施形態において、本方法は、アルケン基を有する線状ポリオルガノシロキサンを、式(IV)で規定される構造を有するチオ酸と反応させることを含んでもよく、
(IV) ((R27OC(=O))t−(L)jk−(Q)zJ(=E)SH
ここに、R27は、脂肪族基、脂環式基、又は芳香族基であり、Lは、各場合において独立して、脂肪族基、脂環式基、又は芳香族基の置換に由来する一価基又は多価基であり、Qは、酸素、硫黄、又はNR29基であり、ここに、R29は、脂肪族基、脂環式基、又は芳香族基であり、Jは、炭素、硫黄、リン、又はスルホニル基であり、Eは、酸素又は硫黄であり、Sは、1又は複数の硫黄原子を含み、tは、0、1、2、3、4、又は5の整数であり、jは、0又は1であり、kは、Jが炭素、硫黄、又はスルホニルならば1であり、Jがリンならばkは2であり、zは、0、1、又は2である。
1つの実施形態において、チオ酸はチオカルボン酸R30C(=O)SHであってもよく、ここに、R30は脂肪族基であってもよい。1つの実施形態において、チオカルボン酸は、チオ酢酸又はチオオクタン酸の1つであってもよい。
アルケン基を有する線状ポリオルガノシロキサンとチオ酸の間の反応は、ヒドロシリル化反応であってもよい。ヒドロシリル化反応は、1又は複数のヒドロシリル化触媒の使用によって触媒することができる。適切なヒドロシリル化触媒は、ロジウム、白金、パラジウム、ニッケル、レニウム、ルテニウム、オスミウム、銅、コバルト、又は鉄の1又は複数を含んでもよい。適切な白金触媒は、式(PtCl2オレフィン)又はH(PtCl3オレフィン)を有することができる。別の適切な白金触媒には、シクロプロパン錯体、又は1グラムあたり2モル以下の白金を有する塩化白金酸と1又は複数のアルコール、エステル、又はアルデヒドから生成した錯体が挙げられる。
線状ポリオルガノシロキサンのアルケン基は、線状ポリオルガノシロキサンの1つの末端(生成構造(II))、線状ポリオルガノシロキサンの両方の末端(生成構造(I))、又は線状ポリオルガノシロキサン骨格の1又は複数の箇所での側鎖(生成構造(III))に存在することができる。
1つの実施形態において、硫黄官能線状ポリオルガノシロキサンは、フィラー表面にカップリングし得る官能基(構造I、II、又はIIIのR)をさらに含んでもよい。官能基R28は、アルケン基を有する線状ポリオルガノシロキサンに最初に存在してもよく(例えば、ヒドロキシル又はハロゲン)、あるいは、線状ポリオルガノシロキサンに取り込んでもよい(例えば、アルコキシ又はアリールオキシ)。1つの実施形態において、官能基R28は、適切なアルコールを、1又は複数の−SiH基を有する線状ポリオルガノシロキサンと反応させることによって取り込むことができる。適切なアルコールには、1又は複数の一価の線状アルカノールが挙げられる。適切なアルカノールには、メタノール、エタノール、イソプロパノール、又はブタノールの1又は複数が挙げられる。
1又は複数のアルケン基と、随意に1又は複数の−SiH基とを有する適切な線状ポリオルガノシロキサンには、式(V)、(VI)、又は(VII)の構造が挙げられる。
Figure 2009520070

(V)
Figure 2009520070

(VI)
Figure 2009520070

(VII)
ここに、R31〜R56は、各場合に独立して、水素原子、脂肪族基、脂環式基、又は芳香族基であってもよく、mとnは、独立して、0であり、又は0より大きい整数であり、pは、0より大きく、Xは、式(VIII)で規定される構造を有する基であり、
Figure 2009520070
(VIII)
57は、脂肪族基、脂環式基、又は芳香族基であってもよく、R58〜R60は、各場合に独立して、水素原子、脂肪族基、脂環式基、又は芳香族基であってもよく、qは、1から約10までの整数であってもよい。
1つの実施形態において、アルケン基は、エチレン基であってもよい。エチレン基は、一般式(VIII)の範囲に入り、qが0であってもよく、かつR58〜R60がいずれも水素原子であってもよい場合を表す。1つの実施形態において、アルケン基はアリル基である。アリル基は、一般式(VIII)の範囲に入り、qが1であってもよく、R57がメチレン基であってもよく、かつR58〜R60がいずれも水素原子であってもよい場合を表す。1つの実施形態において、アルケン基は、メタリル基であってもよい。メタリル基は、一般式(VIII)の範囲に入り、qが1であってもよく、R57がメチレン基であってもよく、R58がメチル基であってもよく、かつR59とR60の両方が水素原子であってもよい場合を表す。
1つの実施形態において、線状ポリオルガノシロキサンとチオ酸の反応生成物を含む組成物が提供される。線状ポリオルガノシロキサンは、アルケン基を含んでもよく、チオ酸は、上記の式(IV)によって規定される構造を有してもよい。
本組成物を不飽和エラストマー(即ち、ゴム)と混合し、ゴム組成物を作成してもよい。フィラー、硬化剤、又は脱保護剤の1又は複数をゴム組成物に添加してもよい。ゴム組成物は、加硫又は架橋の前に、例えば、成形又は押出によって加工してもよい。ゴム組成物は、加硫して、加硫ゴム物品を作成することができる。
ゴム組成物の製造の間、予備的混合又は非生産的混合は、硬化剤又は脱保護剤の添加前の混合を含んでもよく、架橋を軽減又は排除するために、比較的低い温度で行ってもよい。こうした予備的混合は、約120℃から約150℃まで、約150℃から約180℃まで、又は約180℃から約200℃までの範囲の温度で行ってもよい。
1つの実施形態において、ゴム組成物は、熱機械的混合によって製造又は配合することができる。熱機械的混合は、高せん断条件下で、ゴム組成物、フィラー、及び添加剤を混合することを含んでもよい。これらの条件下で、ゴム組成物は、せん断と付随の摩擦によって温度上昇することがある。
予備的混合の後、生産的混合を採用してもよい。生産的混合は、脱保護剤、硬化剤、又は添加剤の1又は複数をゴム組成物に添加することを含んでもよい。混合温度は、反応性に基づいて決めてもよいが、約50℃から約130℃までの範囲でもよい。低い混合温度は、硫黄硬化性ゴムの早期加硫を防止又は遅延することができる。加硫処理したゴム組成物は、放冷してもよい。
ゴム組成物は、加硫の際に処理し(例えば、成形又は押出)、加硫ゴム物品を製造することができる。ゴム組成物を成形するため、ゴム組成物を型の中に入れ、架橋を開始するのに十分な温度まで加熱してもよい。成形は、組成物上の非保護硫黄基を不飽和エラストマーと反応させることによって、ゴム組成物を加硫してもよい。
化学反応が、混合と硬化のプロセスの際に、区別できるステップで生じてもよい。第1反応は、比較的迅速な反応であってもよく、フィラーと組成物の間で生じてもよい。本組成物が、フィラーにカップリングする適切な基、例えば、構造(I)、(II)、及び(III)のR28基を含むならば、第1反応が生じてもよい。フィラーのカップリングは、予備的混合段階の際に、例えば、約120℃のような比較的低い温度で生じてもよい。
第2反応は、本組成物の化学的に保護された硫黄基を脱保護してもよく、生産的混合段階で生じてもよい。脱保護は、硫黄基を暴露し、それらをエラストマー上の不飽和基との反応のために用意する。
第3反応は、硫黄基をエラストマー上の不飽和基と反応させることを含んでもよい。架橋密度は、化学的に保護された硫黄基、エラストマーの不飽和の程度、及び添加剤(例えば、付加的硬化剤など)の数と種類、並びに、硬化温度の選択によって調節することができる。本発明の実施形態による組成物は、比較的低い加工粘度、望ましいフィラー分散、スコーチへの比較的低い傾向、及び比較的低い臭気の1又は複数を有してもよい。
1つの実施形態において、本組成物のR28基は、予備的混合段階の際に、フィラーと反応してもよい。不飽和エラストマーに対するフィラー/組成物のカップリングは、スコーチ及び/又は粘度上昇を最小限にする又は除去するために、一時的に排除してもよい。その後に加硫された物品において、スコーチのこの低減又は除去は、弾性率と耐磨耗性の所望のバランスを提供することができる(例えば、硬度)。
加硫したゴム組成物は、ASTMD412による約19.5MPaを超える引張強度を有してもよい。1つの実施形態において、加硫ゴム組成物は、約19.5MPaから約20MPaまで、約20MPaから約21MPaまで、約21MPaから約22MPaまで、又は約22MPaから約22.5MPaまでの範囲の引張強度を有してもよい。1つの実施形態において、加硫ゴム組成物は、約22.5MPaを超える引張強度を有してもよい。
加硫ゴム組成物は、ASTMD412による約400%を超える破断伸びを有してもよい。1つの実施形態において、加硫ゴム組成物は、約400%から約500%まで、約500%から約550%まで、約550%から約600%まで、又は約600%から約650%までの範囲の破断伸びを有してもよい。1つの実施形態において、加硫ゴム組成物は、約650%を超える破断伸びを有してもよい。
加硫ゴム組成物は、ASTMD2240による約56ショアAを超える硬度を有してもよい。1つの実施形態において、加硫ゴム組成物は、約55ショアAから約57ショアAまで、約57ショアAから約59ショアAまで、約59ショアAから約61ショアAまで、又は約61ショアAから約62ショアAまでの範囲の硬度を有してもよい。1つの実施形態において、加硫ゴム組成物は、約62ショアAを超える硬度を有してもよい。
加硫ゴム組成物は、ASTMD412による約7MPaを超える300%歪みでの引張弾性率を有してもよい(1MPa=1×107ダイン/cm2)。1つの実施形態において、加硫ゴム組成物は、約7MPaから約9MPaまで、約9MPaから約11MPaまで、約11MPaから約13MPaまで、又は約13MPaから約16MPaまでの範囲の300%歪みでの引張弾性率を有してもよい。1つの実施形態において、加硫ゴム組成物は、約16MPaを超える300%歪みでの引張弾性率を有してもよい。
加硫ゴム組成物は、ASTMD412による約1.5MPaを超える100%歪みでの引張弾性率を有してもよい。1つの実施形態において、加硫ゴム組成物は、約1.5MPaから約1.8MPaまで、約1.8MPaから約2.1MPaまで、約2.1MPaから約2.4MPaまで、又は約2.4MPaから約2.7MPaまでの範囲の100%歪みでの引張弾性率を有してもよい。1つの実施形態において、加硫ゴム組成物は、約2.7MPaを超える100%歪みでの引張弾性率を有してもよい。
加硫ゴム組成物から得られる加硫ゴム物品には、ケーブルシース、ホース、伝動ベルト、コンベヤーベルト、ローラーコーティング、パッキンリング、減衰素子、又は靴底の1又は複数が挙げられる。
提示の実施例は、本出願の教示に寄与する仕事を代表するものに過ぎない。したがって、これらの実施例は、本特許請求の範囲に規定する本発明を限定するものではない。
[実施例1] チオアセテート末端キャップを持つポリジメチルシロキサン(PDMS)の調製
浸漬可能なテフロン(登録商標)コーティングの熱電対、大きい磁気攪拌子、水冷のストレートボアコンデンサー、及びセプタム入口を備えた1リットルの三口丸底フラスコに、ビニル末端のPDMS流体(312グラム、GEシリコーンズ81865、分子量約1670グラム/モル)を充填する。磁気スターラーは、PDMS混合物を攪拌し、流体の中に下げ入れたファインゲージのテフロン(登録商標)導管を用いて、少量の空気の流れをPDMS流体の中にバブリングする。化学量論的に5%過剰のチオ酢酸を、ファインゲージのテフロン(登録商標)カニューレを通して、3時間にわたって滴状で添加する。添加速度は、反応混合物の温度が、40℃に近づくようにするが、激しい反応発熱によりその温度より高くならないように制御する。次いで、連続した空気バブリングをしながら、混合物を終夜にわたってそのまま攪拌する。100℃における動的真空下での強い攪拌によって揮発性不純物と未反応チオ酢酸を混合物から除去し、液体窒素冷却トラップで揮発分をトラップし、チオアセテート基で末端をキャップしたPDMSを314.8グラム単離する。NMR分光法は、出発物質におけるビニル基の98%の転換と、9:1に相当するチオアセチル基についての概算のβ対αの付加比を示す。以下、実施例1に記載の方法によって製造したチオアセテート末端キャップを持つポリジメチルシロキサンをS−PDMSと称する。
[実施例2] サンプル1の調製
表1に記載の処方を用い、S−PDMSを含むゴム処方を配合し、以下、このゴム処方をサンプル1と称する。2工程の混合プロセスを用い、これらの材料を配合する。第1の混合工程において、エラストマー(天然ゴム)、カーボンブラック(N121)、ステアリン酸、酸化亜鉛、ワックス、オゾン劣化防止剤、酸化防止剤、及び脱保護剤を、50℃の温度に予熱したブラベンダーのバッチミキサーに添加する。ミキサーの速度は、80rpmまで段階的な仕方で高められ、温度は、成分の添加の後、150℃まで高められる。冷却の後、S−PDMSと促進剤(随意)を含む加硫パッケージが、第2混合工程において、40rpmで回転するミキサーに50℃の温度で添加される。また、第2混合工程において、若干量のカーボンブラックが(液体の)PDMSを密度上昇させるために添加され、それによりボウル内の混合物へのその添加を助長する。ミキサーの温度が100℃まで高められ、その後ゴム処方がミキサーから取り出される。
[比較例1] サンプル2の調製
表1に記載の処方を用い、硫黄を含まないゴム処方を配合し、以下、このゴム処方をサンプル2と称する。このゴム処方を配合する方法は、S−PDMSを添加しないことを除き、実施例2の記載と同じである。
[比較例2] サンプル3の調製
表1に記載の処方を用い、メチル末端キャップを持つポリジメチルシロキサン(M−PDMS)を含むゴム処方を配合し、以下、このゴム処方をサンプル3と称する。このゴム処方を配合する方法は、第2混合工程の際に、メチル末端キャップを持つポリジメチルシロキサンを添加する以外は、実施例2の記載と同じである。
[比較例3] サンプル4の調製
表1に記載の処方を用い、メチル末端キャップを持つポリジメチルシロキサン(M−PDMS)と元素硫黄を含むゴム処方を配合し、以下、このゴム処方をサンプル4と称する。このゴム処方を配合する方法は、第2混合工程の際に、メチル末端キャップを持つポリジメチルシロキサンと元素硫黄を添加する以外は、実施例2の記載と同じである。この処方中の硫黄のモル量は、実施例2のもの(サンプル1)と同じである。
[実施例3] 硬化の結果
平行板レオメータを使用し、サンプル1、2、3及び4の硬化特性を検討する。レオメータで試験した試料は、直径25mmで厚さ1.6〜2mmである。試験中は常時、100グラムの垂直力をサンプルに与える。試験は、160℃、10ラジアン/秒の周波数、2%の歪みで、30分間又は60分間にわたって行う。レオメータの2つの圧盤を鋸歯状にし、サンプルと圧盤表面の間の接触面で試料がスリップするのを防止する。硬化時間の関数として、サンプル1、2、3、及び4について、貯蔵弾性率を測定する。
表1は、サンプル1、2、3、及び4についてのレオロジー結果を示す。実施例2(サンプル1)についての最終的な貯蔵弾性率は、比較例1(サンプル2)よりも大きい。実施例2(サンプル1)についての最終的な貯蔵弾性率は、比較例2(サンプル3)のものと同等であり、比較例3(サンプル4)よりも大きい。
表1 サンプル1〜4についてのゴム処方とレオロジー結果
Figure 2009520070
[実施例4] サンプル5の調製
表2に記載の処方を用い、チオアセテート末端キャップを持つポリジメチルシロキサン(S−PDMS)と元素硫黄を含むゴム処方を配合し、以下、このゴム処方をサンプル5と称する。このゴム処方を配合する方法は、第2混合工程の際に、元素硫黄もまた添加する以外は、実施例2の記載と同じである。
[実施例5] サンプル6の調製
表2に記載の処方を用い、チオアセテート末端キャップを持つポリジメチルシロキサン(S−PDMS)と元素硫黄を含むゴム処方を配合し、以下、このゴム処方をサンプル6と称する。このゴム処方を配合する方法は、第2混合工程の際に、元素硫黄もまた添加し、促進剤(CBS)と元素硫黄の量を変える以外は、実施例2の記載と同じである。
[実施例6] サンプル7の調製
表2に記載の処方を用い、チオアセテート末端キャップを持つポリジメチルシロキサン(S−PDMS)と元素硫黄を含むゴム処方を配合し、以下、このゴム処方をサンプル7と称する。このゴム処方を配合する方法は、第2混合工程の際に、元素硫黄もまた添加し、促進剤(CBS)と元素硫黄の量を変える以外は、実施例2の記載と同じである。
[実施例7] サンプル8の調製
表2に記載の処方を用い、チオアセテート末端キャップを持つポリジメチルシロキサン(S−PDMS)と元素硫黄を含むゴム処方を配合し、以下、このゴム処方をサンプル8と称する。このゴム処方を配合する方法は、第2混合工程の際に、元素硫黄もまた添加し、促進剤(CBS)と元素硫黄の量を変える以外は、実施例2の記載と同じである。
[比較例4] サンプル9の調製
表2に記載の処方を用い、元素硫黄のみを含むゴム処方を配合し、以下、このゴム処方をサンプル9と称する。このゴム処方を配合する方法は、元素硫黄のみを添加し、S−PDMSを添加しない以外は、実施例2の記載と同じである。
[比較例5] サンプル10の調製
表2に記載の処方を用い、元素硫黄のみを含むゴム処方を配合し、以下、このゴム処方をサンプル10と称する。このゴム処方を配合する方法は、元素硫黄のみを添加し、S−PDMSを添加せず、促進剤(CBS)と元素硫黄の量を変える以外は、実施例2の記載と同じである。
[比較例6] サンプル11の調製
表2に記載の処方を用い、元素硫黄のみを含むゴム処方を配合し、以下、このゴム処方をサンプル11と称する。このゴム処方を配合する方法は、メチル末端キャップを持つポリジメチルシロキサンを元素硫黄とともに添加する以外は、実施例2の記載と同じである。
[比較例7] サンプル12の調製
表2に記載の処方を用い、元素硫黄のみを含むゴム処方を配合し、以下、このゴム処方をサンプル12と称する。このゴム処方を配合する方法は、メチル末端キャップを持つポリジメチルシロキサンを元素硫黄とともに添加し、促進剤(CBS)と元素硫黄の量を変える以外は、実施例2の記載と同じである。
[実施例8] 物理的試験
サンプル5〜12の硬化ゴム組成物を、ASTMD412による引張強度、破断伸び、300%歪みでの引張弾性率、100%歪みでの引張弾性率について試験する。ΔG’(時間掃引)及びΔG’(歪み掃引)(ASTMD6601−02参照)サンプル5〜12の硬化ゴム組成物を、ASTMD2240によるショア硬度について試験する。得られた結果を表3に一覧にする。
表2 サンプル5〜12についてのゴム処方
Figure 2009520070
表3 サンプル5〜12についての物理的試験結果
Figure 2009520070
上述の実施例は、本発明のいくつかの特徴を説明するのに役立つに過ぎない。本特許請求の範囲は、本発明の着想と同等に広く本発明を請求する意図であり、本願明細書で提示された実施例は、多様な全てのあり得る実施形態から選択された実施形態を例証する。したがって、本出願人の意図は、本発明の特徴を例証するために利用する実施例の選択によって本特許請求の範囲が限定されるものではないことである。特許請求の範囲における用語「含む」とその文法的変形は、論理的にも範囲を定め、例えば、限定されるものではないが、「本質的にからなる」及び「からなる」のようないろいろな異なる範囲の言い回しを包含する。必要により、範囲が与えられており、それらの範囲は、それらの間の部分的範囲を包含する。これらの範囲における変化は、当業者にそれら自体を示唆するものと考えられ、未だ公知でないものは、それらの変化は、可能であれば、本特許請求の範囲に及ぶと解釈するべきである。また、科学と技術における進歩は、現在は言葉の不正確のために考えられない均等と置換を可能にすると予想され、これらの変化は、可能であれば、本特許請求の範囲に及ぶと解釈するべきである。

Claims (20)

  1. 不飽和エラストマーと反応できる、化学的に保護された硫黄基を含む、硫黄官能線状ポリオルガノシロキサンを含んでなる組成物。
  2. 前記硫黄官能線状ポリオルガノシロキサンが更にフィラー表面とカップリングできる官能基を含む、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記硫黄官能線状ポリオルガノシロキサンが以下の式(I)、(II)又は(III)
    Figure 2009520070
    (I)
    Figure 2009520070
    (II)
    Figure 2009520070
    (III)
    [式中、Aは、多価基((R27OC(=O))t−(L)jk−(Q)zJ(=E)であり、R1〜R27は、各場合に独立して、水素原子、脂肪族基、脂環式基、又は芳香族基であり、Gは、結合、二価の脂肪族基、二価の脂環式基、又は二価の芳香族基であり、R28は、ヒドロキシル基、ハロゲン、シリルアルコキシ基、アルコキシ基、又はアリールオキシ基であり、Sは、1又は複数の硫黄原子であり、Lは、各場合に独立して、脂肪族基、脂環式基、又は芳香族基の置換に由来する一価基又は多価基であり、Qは、酸素、硫黄、又はNR29基であり、R29は、脂肪族基、脂環式基、又は芳香族基であり、Jは、炭素、硫黄、リン、又はスルホニル基であり、Eは、酸素又は硫黄であり、mとnは、独立して、0であり、又は0より大きい整数であり、pは、0より大きく、tは、0、1、2、3、4、又は5の整数であり、jは、0又は1であり、kは、Jが炭素、硫黄、又はスルホニルならば1であり、Jがリンならばkは2であり、zは、0、1、又は2の整数である。]の構造を有する、請求項1に記載の組成物。
  4. m+n+pは0以上である、請求項3に記載の組成物。
  5. 構造「A−S−」は、化学的に保護された硫黄基である、請求項3に記載の組成物。
  6. 構造「A−S−」は、チオカルボキシレートエステル、ジチオカルボキシレート、チオカルボナートエステル、ジチオカルボナートエステル、トリチオカルボナートエステル、チオスルホナートエステル、チオサルフェートエステル、チオスルファマートエステル、チオスルフィナートエステル、チオスルフィットエステル、チオスルフィメートエステル、チオホスフェートエステル、ジチオホスフェートエステル、トリチオホスフェートエステル、テトラチオホスフェートエステル、チオホスファマートエステル、ジチオホスファマートエステル、チオホスホルアミダートエステル、ジチオホスホルアミダートエステル、又はトリチオホスホルアミダートエステルのうちの1種以上である、請求項3に記載の組成物。
  7. 構造「−G−R28」はフィラー表面にカップリングすることができる官能基である、請求項3に記載の組成物。
  8. 28は、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピロキシ基、イソブトキシ基、又はアセトキシ基のうちの1種以上である、請求項3に記載の組成物。
  9. 前記硫黄官能線状ポリオルガノシロキサンが1モルあたり約250グラムより大きい範囲の分子量を有する、請求項1に記載の組成物。
  10. 前記化学的に保護された硫黄基は、線状ポリオルガノシロキサンの末端に接続する、請求項1に記載の組成物。
  11. アルケン基を含む線状ポリオルガノシロキサンと、式(IV)
    (IV) ((R27OC(=O))t−(L)jk−(Q)zJ(=E)SH
    [式中、R27は、脂肪族基、脂環式基、又は芳香族基であり、Lは、各場合において独立して、脂肪族基、脂環式基、又は芳香族基の置換に由来する一価基又は多価基であり、Qは、酸素、硫黄、又はNR29基であり、ここで、R29は、脂肪族基、脂環式基、又は芳香族基であり、Jは、炭素、硫黄、リン、又はスルホニル基であり、Eは、酸素又は硫黄であり、Sは、1又は複数の硫黄原子を含み、tは、0、1、2、3、4、又は5の整数であり、jは、0又は1であり、kは、Jが炭素、硫黄、又はスルホニルならば1であり、Jがリンならばkは2であり、zは、0、1、又は2である。]によって規定される構造を有するチオ酸と、を反応し、化学的に保護された硫黄基を含む硫黄官能線状ポリオルガノシロキサンの製造を含んでなる方法。
  12. 前記アルケン基は前記線状ポリオルガノシロキサンの末端に結合する、請求項11に記載の方法。
  13. 更にフィラーを添加することを含む、請求項11に記載の方法。
  14. 更に硬化剤を添加することを含む、請求項11に記載の方法。
  15. 化学的に保護された硫黄基を活性化するように反応する脱保護剤を添加することを更に含む、請求項11に記載の方法。
  16. 前記硫黄官能線状ポリオルガノシロキサンがフィラー表面と反応できる官能基を含み、前記方法が前記硫黄官能線状ポリオルガノシロキサンの前記フィラー表面へのカップリングを更に含む、請求項11に記載の方法。
  17. アルケン基と、式(IV)
    (IV) ((R27OC(=O))t−(L)jk−(Q)zJ(=E)SH
    [式中、R27は、脂肪族基、脂環式基、又は芳香族基であり、Lは、各場合において独立して、脂肪族基、脂環式基、又は芳香族基の置換に由来する一価基又は多価基であり、Qは、酸素、硫黄、又はNR29基であり、ここで、R29は、脂肪族基、脂環式基、又は芳香族基であり、Jは、炭素、硫黄、リン、又はスルホニル基であり、Eは、酸素又は硫黄であり、Sは、1又は複数の硫黄原子を含み、tは、0、1、2、3、4、又は5の整数であり、jは、0又は1であり、kは、Jが炭素、硫黄、又はスルホニルならば1であり、Jがリンならばkは2であり、zは、0、1、又は2である。]によって規定される構造を有するチオ酸と、を含む線状ポリオルガノシロキサンの反応生成物を含む組成物。
  18. 前記反応生成物が、チオカルボキシレートエステル、ジチオカルボキシレート、チオカルボナートエステル、ジチオカルボナートエステル、トリチオカルボナートエステル、チオスルホナートエステル、チオサルフェートエステル、チオスルファマートエステル、チオスルフィナートエステル、チオスルフィットエステル、チオスルフィメートエステル、チオホスフェートエステル、ジチオホスフェートエステル、トリチオホスフェートエステル、テトラチオホスフェートエステル、チオホスファマートエステル、ジチオホスファマートエステル、チオホスホルアミダートエステル、ジチオホスホルアミダートエステル、又はトリチオホスホルアミダートエステルのうちの1以上を含む、請求項17に記載の組成物。
  19. 前記反応生成物が、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピロキシ基、イソブトキシ基、又はアセトキシ基のうちの1種以上を含む、請求項17に記載の組成物。
  20. フィラー表面とカップリングできる官能基及び化学的に保護された硫黄基を含む硫黄官能線状ポリオルガノシロキサンを含む組成物。
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