JP2009507086A - 非シアヌル酸塩ポリエポキシドで架橋された粉体塗装組成物における及びに関する改良 - Google Patents

非シアヌル酸塩ポリエポキシドで架橋された粉体塗装組成物における及びに関する改良 Download PDF

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Abstract

本発明は、迅速硬化計画に適し優れた耐戸外老化性を有する、被覆組成物及びその中に組み込むための構成要素及び成分に関する。カルボキシル化ポリエステル樹脂の特性がカルボン酸の総モル数に対して少なくとも30モル%の芳香族酸から形成され、カルボキシル末端ポリエステルの鎖が1,4シクロヘキサンジカルボン酸から誘導される1つの部分も組み込むことを条件に、非イソシアヌル酸塩ポリエポキシド架橋剤を用い得る。粉体塗装組成物は、触媒の存在下、250℃の温度において90秒間で又は270℃において55秒間で又は誘導加熱オーブン中の300℃の温度において20秒間で硬化し得る。

Description

本発明は、迅速硬化計画に適し優れた耐戸外老化性を有する、粉体塗装組成物並びにその中に組み込むための構成要素及び成分に関する。
粉体塗装技術は一般に、周知で良く定義された技術であり、塗装及び吹付けのための「湿式」技術に対して重要な利点を有する。熱硬化性粉体塗装装飾の背景にある原理は、粉体塗装が、着色剤又は顔料を架橋性材料のマトリックス内に分散し、該材料を粉末に粉砕し、粉末を被覆する表面に塗布した後、加熱又は焼付けして粉末粒子を融合させることにより装飾する表面上に層を形成し、その後硬化又は架橋を起こし又は起こさせて熱硬化層を形成させることにより形成されることである。これらの原理に基づいて、当業者は常に硬化/製造速度と熱硬化性配合物の外観との間の最良の妥協点を探している。
しかしながら、粉体塗装の開発における主要な課題は、対立するように見える数多くの要件を満たすことの必要性である。粉体塗装の必須要件の1つは、硬化性/架橋性であるべきことである。大部分の場合において、これは架橋剤の組み込みを意味する。架橋剤の比率は、焼付けの比較的短時間の後の被覆の保全性を確保するのに十分である必要がある。焼付けはその速度をできるだけ速くして、エネルギー・コストを最小限に抑えるべきことが望ましい。架橋剤の比率が高すぎて、迅速な架橋反応が誘発される場合、架橋が焼付け過程の早すぎる段階で起こり得、その結果粉末粒子が十分に融合されないまま「平均化」される、というジレンマがある。この結果、通常「ゆず肌」で特徴付けられる、又はひどい場合は、架橋が焼き付け過程終了後も続き、それによるクラッキングの程度により特徴付けられる、仕上げが不合格の物品の製造をもたらす。
架橋剤の濃度が比較的高い場合、又は反対に架橋に対して低い閾値である場合、一般に製造上及び貯蔵上の問題が生じる傾向がある。粉体塗装材料を製造する方法の1つは、顔料と着色材料との混合物を粉体塗装樹脂と一緒に押し出した後、得られる混合物を押し出して、顔料又は着色材料が樹脂内に実質的に均質に分散した分散体を製造する方法である。押出し物を冷却した後、微細粉末に圧潰し又は粉砕する。押出し段階は、押出しスクリューへの供給材料を加熱することを含む。押出しの作用によりマトリックス材料を構成するポリマー材料の加工をもたらし、その結果、追加の熱が発生して、この熱は局所架橋を発生させる又は開始させるのに十分であり得る。この結果、ゲル粒子が生成し得る。この反応がいずれかの著しい程度まで進行すると、生じる粉砕粉末は焼成過程に供されたとき、障害なしに融合して被覆を形成することはできず、再び凝集する傾向にあり、その結果、仕上がりが不合格な製品製造をもたらす。
外装末端用途のための抜群の特性を有する熱硬化性粉体塗装は通常、ポリエステル樹脂に基づく。ポリエステル粉体塗装は通常、ポリエポキシド及びベータ−ヒドロキシアルキルアミド型架橋剤化合物を用いて処方される。これらの材料を取り巻く技術は一般に周知であり、数多くの論文及び従来の特許明細書中で検討され、考案されてきた。
架橋剤としてカルボキシル末端ポリエステル及びイソシアヌル酸トリグリシジル(TGIC)を含む粉体塗装組成物は、良好な結果を得ている。このような組成物は、貯蔵の間の良好な安定性を提供するための粉末の比較的高いガラス転移温度と硬化開始前の粒子の完全な融合との所望の組み合わせを提供することが判っている。TGICの商用アプリケーションは今や、この材料が特に毒性が高いことが判っているので、疑問の余地のあるところである。TGICは、欧州立法に従って、毒性、刺激性及び変異誘発性分類2物質として分類されている。それは、水域環境において長期間悪影響を及ぼす可能性があるため、水生生物に対する有害物として分類されている。TGIC及びそれを組み込んだ粉末組成物は現在、「どくろマーク」のシンボルを用いて毒物として標識付けすることが必要である。一般に毒性物質の取り扱いに関する作業場での予防策により、ヨーロッパの大部分において、このような粉体塗装材料の魅力は著しく低減された。
従って、TGICをカルボキシル基含有ポリエステル用の他の架橋剤と取り替えようとする試みがなされてきた。それらのうち、エポキシ基含有アクリルコポリマーが用いられてきた。しかしながら、これら2つの種類の化合物を含むバインダーは、その衝撃強さ及び柔軟性が、コイル被覆技術として知られている焼成後被覆の金属板に用いるにはあまりに低すぎる被覆を生成する。カルボキシル基含有ポリエステル用架橋剤としてベータ−ヒドロキシアルキルアミドを用いる試みも行われてきた。アミド基に対してベータ位に位置するヒドロキシル基は、ポリエステル中のカルボキシル基のエステル化において反応性が高く、それがこの種の架橋剤を含む組成物の架橋速度に関する問題につながる。この速度が高いので、被覆が融解した場合に正確に広がるための十分な時間がなく、それがゆず肌の生成などの表面欠陥につながる。加えて、このエステル化反応は水の放出を伴ない、この水が被覆が硬化するときに被覆から脱出するための時間がなく、やはり表面欠陥につながる。
例えば、特許EP0322834は、基板に塗布され、160から200℃の温度で架橋される、カルボキシル基含有ポリエステル及びベータ−ヒドロキシアルキルアミドを本質的に含む熱硬化性粉末組成物を記載している。脱ガス剤として添加されるこれらの組成物中にベンゾインが存在するにもかかわらず、水及び空気の泡は硬化した被覆中にそれが融解し架橋された後も、特に被覆が比較的厚いものである場合に捕捉されたままである。更に、粉末の流動性はそれが融解した場合、最適ではない。
特許出願WO91/14745は、カルボキシル基含有非晶質ポリエステル、カルボキシル基含有半結晶質ポリエステル及び架橋剤を含む熱硬化性粉末組成物を記載している。好ましくは、ポリエステル全体に対して、この半結晶質ポリエステルの10から40重量パーセントが用いられ、架橋剤はベータ−ヒドロキシアルキルアミドであり得る。これらの組成物中における半結晶質ポリエステルの存在は、それらが提供する被覆の機械的特性を向上させる。しかしながら、これらの半結晶質ポリエステルの存在は又、これらの組成物の硬化速度を増大し、そのことはこれらの組成物が融解したときのそれらの良好な流動性及び脱気を妨害する要因ともなり得、それが被覆中の表面欠陥につながる。
特許出願EP0668895も又、カルボキシル基含有ポリエステル及びベータ−ヒドロキシアルキルアミドを含む熱硬化性粉末組成物を記載している。この特許出願のポリエステルは、ポリエステル合成の間に一官能価の酸又はアルコールを添加して得られる2未満のカルボキシル基の官能価を有する。この低減された官能価のために、ポリエステルがより低反応性であり、それにより特許出願EP0322834及びWO91/14745中の組成物と異なり、粉末が溶融したときのその流動性がより良好になり、空気及び水蒸気の泡が、それが硬化する前に被覆から脱出することが可能になる。しかしながら、ポリエステルは反応基を有さない鎖末端を含むので、これらの末端は粉末の架橋化の際の三次元網目構造の形成には協力せず、従って得られる被覆の耐溶媒性及び柔軟性を低減する。
EP1054917は、架橋剤としてベータ−ヒドロキシアルキルアミドを用いることの上記欠点を、ポリエステル樹脂中に反応基として三級カルボキシル基を組み込むことにより解決する特許請求をしている。前記組成物は、その低反応性による優れた表面外観、良好な柔軟性及び劣悪な気象条件に対する良好な抵抗性を有し、より長い硬化計画をもたらす被覆を提供する。
全てが短い硬化時間で得られるような、良好な貯蔵安定性、ゆず肌又は泡を有しない平滑で光沢のある外観を提供するための溶融時の良好な流動性、良好な柔軟性及び良好な表面硬度、と同時に溶媒に対する及び過酷な気象への曝露に対する良好な抵抗性などの、その中に見出されるのが望ましいような全ての品質をそれ自身が兼ね備える熱硬化性粉末組成物を見出すことが容易でないことを、理解されたい。
US6,284,845は他のポリエポキシド硬化剤の使用を提案しているが、この明細書に記載されている配合物によると、得られる粉末組成物の性能パラメーターは、イソシアヌル酸トリグリシジルを用いて可能だった程は良好でない。,845の主要な目的は、低い硬化温度、特に121℃程度に低い硬化温度を有する材料を製造することである。
本発明は、高い硬化温度を示すが短時間で劇的に硬化し、及び流動性、柔軟性及びHSE法などの被覆の品質要件を満たす粉体塗装組成物を提供することを目的とする。
我々は驚くべきことに、カルボキシル化ポリエステル樹脂の特性がカルボン酸の総モル数に対して少なくとも30モル%の芳香族酸から形成され、カルボキシル末端ポリエステルの鎖が1,4シクロヘキサンジカルボン酸から誘導される少なくとも1つの部分も組み込むことを条件に、非イソシアヌル酸塩ポリエポキシド架橋剤を用い得ることを見出した。
本発明の1つの態様によれば、
(1)18から60の範囲の酸価及び2000から11000の範囲の数平均分子量を有するカルボキシル化ポリエステル樹脂のポリマービヒクルの重量に対する84から97重量パーセント、(2)非イソシアヌル酸塩ポリエポキシド又はベータ−ヒドロキシアルキルアミドのポリマービヒクルの重量に対する3から15重量パーセント、及び(3)触媒としての、例えばオニウム触媒の0.05から2.0重量パーセント、
を含む、粉体塗装組成物用のビヒクルとして用いるために適したポリマー組成物であり、カルボキシル化ポリエステル樹脂がその鎖中に芳香族二酸の少なくとも30モル%を含むこと、及び各成分1から3において、その割合が250℃の温度において硬化時間を90秒より短くするために選択されることを特徴とする、前記ポリマー組成物が提供される。
本発明の1つの更なる態様において、それの少なくとも30モルパーセントが芳香族酸であるジカルボン酸と95モルパーセントまでの量のジオール、酸化物又は炭酸塩とのエステル化反応又は濃縮反応により、及びその反応生成物を5モルパーセントから20モルパーセントの量の二酸と更に反応させてカルボン酸ポリエステルを生成させることにより生成される、粉体塗装組成物の処方に用いるために適したカルボキシル末端ポリエステルであり、ジカルボン酸及び/又は無水二酸が1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を、そのカルボキシル末端ポリエステル中の総含有量が0.1から25モルパーセントとなるように、及びそれが得られる樹脂の酸価を23から40の範囲内、好ましくは25から36の範囲内とし、粘度を200℃で測定して4000から16000m.Pa.s.の範囲内とし、及びガラス転移温度(Tg)を57℃以上とするように、含むことにより特徴付けられる、前記カルボキシル末端ポリエステルが提供される。
本発明の更なる実施形態によれば、二酸とジオールとの縮合により製造されるポリエステルは又、トリメチロールプロパン又はペンタエリスリトールなどのポリオールの4モルパーセントまでを含む。
本発明の1つの更なる態様において、触媒の存在下、250℃の温度において90秒間で又は270℃において55秒間で又は誘導加熱オーブン中の300℃の温度において20秒間で硬化し得る粉体塗装組成物用のポリマービヒクルが提供される。
本発明のポリマービヒクルは、望ましい硬度、柔軟性、耐溶媒性、耐腐食性、対候性及び光沢を有する被覆バインダーを提供するように処方される。これらの特性の強化は、モノマー組成、樹脂のTg、架橋剤の種類と用量、硬化条件、硬化触媒、並びに顔料、充填剤及び添加剤の種類と量を含む因子の最適化及びバランス化に依存する。硬化の反応性及び速度は、化学的貯蔵安定性を犠牲にすることなく又は硬化化合物とポリエステル樹脂との予備反応に起因するフィルム流動性の悪化を生じることなく増大する。
更に、本発明による熱硬化性粉体塗装組成物は、架橋剤としてTGICを含む組成物の全ての利点を維持する。本発明の被覆組成物は、経時においても維持される顕著な貯蔵安定性、平滑な表面外観、高い光沢度、及び優れた機械特性を発揮する。本発明による組成物の使用により付与される耐候性、機械特性及び外観の間の優れたバランスが、商業上の重要性の重要な因子であることは、粉体塗装工業界の当業者には理解されるであろう。
本発明中に用いるカルボキシル化ポリエステル組成物は、ヒドロキシル末端ポリエステルと、アジピン酸、アゼライン酸、クロレンド酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジメチルカルボン酸、ジグリコール酸、ジメチルテレフタル酸、ドデカン二酸、フマル酸、グルタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、イソフタル酸、マレイン酸、コハク酸、tert−ブチルイソフタル酸、ナジック酸、ジカルボン酸ナフタレン、フタル酸、セバシン酸、テトラクロロフタル酸、これらの対応する無水物、及びこれらの混合物からなる群より選択される二酸との反応生成物であり得る。該ヒドロキシル末端ポリエステルは、イソフタル酸、テレフタル酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジメチルカルボン酸、アジピン酸、及びこれらの混合物からなる群より選択される二酸(好ましくは、芳香族酸の少なくとも30モルパーセントが、テレフタル酸である。)と、ジオール、酸化物又は炭酸塩とのエステル化反応生成物であり得る。該ジオールは、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、2−ブチル−2−エチルジオール、1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、水素化ビスフェノールA、1,3−ペンタンジオール、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピル−3−ヒドロキシ−2,2−ジメチル−プロパノエート、メチルプロパンジオール、2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ビニルシクロヘキサンジオール及びこれらの混合物からなる群より選択され得る。該酸化物は、酸化エチレン、酸化プロピレン、酸化1,2−ブチレン、酸化シクロヘキサン及びこれらの混合物からなる群より選択され得る。炭酸塩は、炭酸エチレン、炭酸プロピレン及びこれらの混合物からなる群より選択され得る。場合により、エステル化反応は、非芳香族二酸の約3から約10モルパーセント、ポリ酸の2から5モルパーセント、及びポリオールの0.01から4モルパーセント(モルパーセントは、各々総酸又は総アルコールに基づく。)を更に含み得る。
ポリエポキシドは、少なくとも2の、しかしながら4以下の平均エポキシ官能価及び80から300の範囲の平均エポキシ当量を有し得る。
オニウム触媒は、250℃の温度において硬化時間を90秒より短くするために効果的である必要がある。明らかに、硬化温度が高ければ高いほど硬化時間は短くて済む。硬化時間は、270℃において55秒間、誘導加熱オーブン中の300℃の温度において20秒間である。
本発明の得られるポリマービヒクルは、57℃超過の及び好ましくは60℃超過のT、200℃において4000m.Pa.s超過のしかしながら16000m.Pa.s以下の粘度を有し、このポリマービヒクルは、架橋されたとき、約60から80マイクロメーターのバインダー厚において少なくとも約HBの鉛筆硬度、100kg.cmの耐衝撃性及び0T曲げ特性を有する被覆バインダーを提供する。
本発明のもう1つの態様において、本発明は、本明細書中に記載するようなカルボキシル化ポリエステルをエポキシ化合物及びオニウム触媒及び場合により粉末塗料の製造に従来から用いられている助剤物質と混合することを含む処方された粉体塗装組成物の調製方法により形成される。
本明細書中において、「被覆バインダー」は、焼き付け後及び架橋後の被覆フィルムのポリマー部分である。
「ポリマービヒクル」は、配合された(即ち、成膜前の)被覆中の架橋剤を含む全てのポリマー成分及び樹脂成分を意味する。顔料及び添加剤は、ポリマービヒクルと混合して配合された粉体塗装組成物を提供し得る。
「ジオール」は、2つのヒドロキシル基を有する化合物である。「ポリオール」は、2つ以上のヒドロキシル基を有する化合物である。
「二酸」は、2つのカルボキシル基を有する化合物である。「ポリ酸」は、2つ以上のカルボキシル基を有する化合物である。
本明細書中においては、「ポリマー」は、本明細書中で定義するようなモノマー繰り返し単位を有するポリマーを意味する。
「フィルム」は、配合された被覆組成物を基材又は基板に塗布することにより形成され、架橋される。
「オリゴマー」は、ポリマーであるが、モノマー繰り返し単位を有する又は有しない約11,000以下の数平均分子量を有する化合物を意味する。
酸価は、樹脂1g中に存在する遊離酸の中和に必要な水酸化カリウムのミリグラム数を意味する。アセチル価とも称されるヒドロキシル価数は、物質をアセチル化し得る程度を示す数であり、アセチル化サンプルの1gを鹸化する際遊離する酢酸の中和に必要な水酸化カリウムのミリグラム数である。
本発明の実施に有用なポリエステルは、非イソシアヌル酸塩エポキシド含有化合物を用いる熱硬化性粉体塗装の処方に適した熱硬化性カルボキシル末端ポリマーである。このことは、ポリエステルが十分高いガラス転移温度を有していて、通常遭遇する環境条件に粉末形態で付された場合に焼成に耐え得ることを意味する。本発明のポリエステルは、窒素雰囲気中の10℃/分の加熱速度を用いる示差走査熱量測定(値は、2回目の試験操作時の値を採用する)で測定した場合の57℃以上のガラス転移温度Tgを有する。
樹脂のTg及び溶融粘度の両方がモノマーの選択により大きく影響される。本発明の1つの重要な態様において、カルボキシル化ポリエステル樹脂は、2段階法により製造される。段階1において、ヒドロキシル末端ポリエステルを調製し、段階2において、ヒドロキシル末端ポリエステルを二酸及び/又は無水物と反応させてカルボキシル化ポリエステルを生成する。
好ましい段階1において、ヒドロキシル末端ポリエステルは、
(1)イソフタル酸(IPA)、テレフタル酸(TPA)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(CHDA)、1,4−シクロヘキサンジメチルカルボン酸、及びこれらの混合物からなる群より選択されるジカルボン酸(芳香族酸の少なくとも約30モルパーセントはテレフタル酸である。)、及び
(2)ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、2−ブチル−2−エチルジオール、1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、水素化ビスフェノールA、1,3−ペンタンジオール、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピル−3−ヒドロキシ−2,2−ジメチル−プロパノエート、メチルプロパンジオール、2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ビニルシクロヘキサンジオール及びこれらの混合物からなる群より選択されるジオール、
とのエステル化反応又は縮合反応により形成される。
本発明のもう1つの態様において、芳香族酸は、酸化物又は炭酸塩と反応し得る。酸化物は、酸化エチレン、酸化プロピレン、酸化1,2−ブチレン、酸化シクロヘキサン及びこれらの混合物からなる群から選択され得る。炭酸塩は、炭酸エチレン、炭酸プロピレン及びこれらの混合物であり得る。
本発明の1つの重要な態様は、高いTgによるカルボキシル末端ポリエステルの非常に優れた機械的特性であり、これはポリマー主鎖に1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(CHDA)を導入することにより得られ得る。ポリエステルを構成する全ての他の酸のモルパーセントで表されるCHDAの用量は、約10から約40の範囲内である。本発明による高Tgポリエステルにより、トリグリシジルトリメリテート、ジグリシジルテレフタレート、ジグリシジルイソフタレート、及びPT−910及びPT912(HUNTSMAN社から市販の)のような相対的混合物などの非シアヌル酸塩ポリエポキシド化合物を用いる安定な粉末塗料の製造が可能になる。
本発明のもう1つの重要な態様によれば、ポリマービヒクルのTgは、組成物中に存在するジオールの比率を制御することにより最適化され得る。組成物のジオールは、ネオペンチルグリコール、並びにシクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、2−ブチル−2−エチルジオール、1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、水素化ビスフェノールA、1,3−ペンタンジオール、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピル−3−ヒドロキシ−2,2−ジメチル−プロパノエート、メチルプロパンジオール、2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ビニルシクロヘキサンジオール及びこれらの混合物からなる群より選択されるジオールを含む。ジオール部分としての約70/30のモル比のネオペンチルグリコールと1,3−プロパンジオールとの組み合わせにより、許容できるTgを有するポリマービヒクルが得られる。
本発明の1つの代替の態様において、ネオペンチルグリコールは、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(BEPD)、1,4−ブタンジオール、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピル−3−ヒドロキシ−2,2−ジメチル−プロピオネート、unoxol6ジオール、メチルプロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール(MPD)、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレート(HPHP)、水素化ビスフェノールA及びこれらの混合物からなる群より選択されるジオールで、及びトリメチロールプロパン(TMP)、トリメチロールエタン(TME)、ペンタエリスリトール(PE)、ジトリメチロールプロパン(DI−TMP)などのポリオールの添加で置き換えられ得る。
場合により、エステル化反応又は縮合反応のための出発混合物は、
(a)無水トリメリット酸(TMA)、クエン酸及びこれらの混合物からなる群より選択されるポリ酸の0.01から5モルパーセント、及び
(b)トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン及びこれらの混合物から選択されるポリオールの0.01から4モルパーセント
を更に含み得る。
ポリ酸又はポリオールの組み込みは、本樹脂の調製の第1段階又は第2段階の間に実施され得ることは理解されるであろう。
更に、粉体塗装の性能特徴は、追加のモノマーの組み込みにより改良され得る。例えば、非芳香族酸の比率を増大して用いることにより、芳香族二酸と比べて柔軟性及び耐黄変(紫外線曝露の結果としての)性を改良し得る。
段階1で調製するヒドロキシル末端ポリエステルは通常、約15から約100の範囲の、および好ましくは約25から約80の間のヒドロキシル価を有する。
段階2において、段階1で調製したヒドロキシル末端ポリエステルを二酸と反応させて、カルボキシル化ポリエステルを生成する。本明細書中において、二酸は、脂肪族又は芳香族二酸、飽和又は不飽和の酸又はこれらの無水物を意味する。適した二酸は、アジピン酸、アゼライン酸、クロレンド酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、ジメチルテレフタル酸、ドデカン二酸、フマル酸、グルタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、イソフタル酸、マレイン酸、コハク酸、tert−ブチルイソフタル酸、ナジック酸、ジカルボン酸ナフタレン、フタル酸、セバシン酸、テトラクロロフタル酸、これらの対応する無水物、及びこれらの混合物を含む。
カルボキシル化ポリエステルの数平均分子量及びヒドロキシル末端ポリエステルのヒドロキシル価が変化するに従い、ヒドロキシル末端ポリエステルと反応するために必要な二酸の当量数も又、変化する。得られるカルボキシル末端ポリエステルは、18から60の範囲の酸価及び2000から11000の範囲の数平均分子量を有する。
本発明による熱硬化性粉末組成物の調製のために用いられ得るポリエポキシ化合物は、組成物のこれらの種類に用いられる従来の非イソシアヌル酸塩含有ポリエポキシド化合物である。ポリエポキシドは、少なくとも2であるが約4以下の平均エポキシ官能価及び約80から約300のエポキシ当量を有し得る。そのようなエポキシ樹脂の例としては、トリグリシジルトリメリテート、ジグリシジルテレフタレート、ジグリシジルイソフタレート、及びPT−910及びPT912(HUNTSMAN社から市販の)のような市販の混合物が挙げられる。
本発明の1つのより好ましい態様において、ポリエポキシ化合物はPT912であり得、それはポリマービヒクルの重量に対して約3から約11重量パーセントの量で、好ましくはカルボキシル末端ポリエステル中のカルボキシル基1当量当たりエポキシ基の約0.8から約1.2当量の量で用いられる。カルボキシル末端ポリエステルの酸価が増大するに従い、より多くのポリエポキシドが、適した硬化被覆フィルムを提供するために必要となる。
触媒の種類及び濃度は、所定の温度における反応時間を短くするための重要な因子である。カルボキシル末端ポリエステルをポリエポキシドで硬化する温度を低減するために、オニウム化合物を触媒として用いる。その例としては、臭化テトラブチルホスホニウム、臭化トリフェニルエチルホスホニウム、塩化ブチルトリフェニルホスホニウム、ヨウ化トリフェニルエチルホスホニウム、ホルミルメチレントリフェニルホスホラン、塩化ホルミルメチルトリフェニルホスホニウム、ベンゾリメチレントリフェニルホスホラン、臭化フェニルトリエチルホスホニウム、臭化メトキシカルボニルメチルホスホニウム、エチルトリフェニルホスホラニリデンアセテート、メチルトリフェニルホスホラニリデンアセテート、臭化エトキシカルボニルメチルトリフェニルホスホニウム、エチルトリフェニルホスホニウムアセテート−酢酸錯体、及びこれらの混合物の1つ以上が挙げられる。触媒のもう1つの重要な分類は、一級、二級及び三級アミン官能基又はそのアンモニウム誘導体を含むものである。
用いる触媒の量は、用いる反応物及び特定の触媒に依存する。いずれかの事象において、オニウム触媒は250℃の温度における硬化時間を90秒より短くするために効果的な量で添加される。触媒の濃度は硬化時間の低減において重要な因子であり、ポリマービヒクルの重量に対して0.05重量パーセントから1.0重量パーセントのオニウム触媒の濃度が効果的であることが見出された。本発明の1つの好ましい態様において、本発明の温度パラメーター/時間パラメーター内の硬化は、ポリマービヒクルの重量に対して0.2重量パーセントから約0.5重量パーセントのオニウム触媒の濃度を用いて達成される。好ましくは、触媒は粉末の調製に先立ってカルボキシル末端ポリエステル成分の溶融液に添加される。本発明のもう1つの態様において、触媒は配合物の3.0重量パーセントまでの量で塗料配合物に添加され得、引き続き押出され得る。
グリシジルトリメリテート反応物、ジグリシジルテレフタレート反応物、ジグリシジルイソフタレート反応物及びこれらのブレンドについての1つの重要な利点は、極低毒性粉体塗装の製造を可能にする例外的に清浄な毒物学的特性である。そのような等級の市販製品は、Araldite PT 910(トリグリシジルトリメリテート(25%)ジグリシジルテレフタレート(75%))及びAraldite PT 912(トリグリシジルトリメリテート(40%)ジグリシジルテレフタレート(60%))に代表される。エポキシ官能価は、各々2.25及び2.4である。しかしながら、室温で液体であるトリグリシジルトリメリテートの存在により、貯蔵安定性はTGICを用いる場合と比べてより悪い(粉末のより多い焼結、より多い障害)。従って、当業者にとっての難題は、ポリエステル樹脂の反応性、粘度、Tg間の正確なバランスを設計することであり、それが安定な配合粉末につながり、柔軟で良好な流動性の硬化フィルムにつながる。
本発明の熱硬化性粉末組成物の調製のために、カルボキシル末端ポリエステル及びポリエポキシド化合物及び従来粉末塗料及びワニスの製造に用いられている種々の助剤物質を均質に混合する。この均質化は、例えばポリエステル、ポリエポキシド化合物及び種々の助剤物質を90から100℃の範囲内の温度で、好ましくは例えばBuss−Ko−Kneader押出し機又はWerner−Pfleiderer若しくはBaker Perkins型の二軸押出し機中で溶融することにより行われる。次に、押出し物を放冷して粉砕し、篩にかけて10から120マイクロメーターの粒子径を有する粉末を得る。
粘度及び流動性に影響するもう1つの因子は、系内の顔料及び充填剤の濃度である。顔料及び/又は充填剤の濃度が高いと、溶融粘度が増大し、それにより系の流動性が損なわれる。
本発明による熱硬化性組成物に加え得る助剤物質は、Tinuvin 928(CIBA−Specialties Chemicals社製)などの紫外線吸収化合物、立体的に込み合ったアミンに基づく光安定剤(例えば、CIBA−Specialties Chemicals社製のTinuvin 144)、フェノール系酸化防止剤(例えば、CIBA−Specialties Chemicals社製のIrganox 1010)、及びホスホナイト又はホスファイト型の安定化剤(例えば、CIBA−Specialties Chemicals社製のIrgafos 168又はP−EPQ)(Tinuvin、Irganox、Irgafosは商標である。)を含む。多様な顔料も又、本発明による熱硬化性組成物に添加され得る。本発明に用いられ得る顔料の例は、二酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛などの金属酸化物;金属水酸化物;金属粉末;硫化物;硫酸塩;炭酸塩;ケイ酸アルミニウムなどのケイ酸塩;カーボンブラック;タルク;チャイナクレー;バライト;紺青;鉛青;有機食紅;有機栗色などである。助剤物質としては、Fluidep F 630(COMIEL社製)、Resiflow PV 88(WORLEE社製)、Modaflow(Cytec社製)、Acronal 4F(BASF社製)(以上、Fluidep、Resiflow、Modaflow、Acronalは商標である。)などの流れ調整剤;フタル酸ジシクロヘキシル、リン酸トリフェニルなどの可塑化剤;ベンゾインなどの脱ガス剤;及び充填剤なども含み得る。これらの助剤物質は従来の用量で添加されるが、本発明の熱硬化性組成物を透明被覆として用いる場合は、不透明化助剤物質は外すべきであることを理解されたい。
粉砕粉末塗料組成物は、塗布の公知の手段のいずれかにより基材に塗布され得る。被覆後、付着層は、オーブン中で加熱することにより硬化する。通常、硬化は、十分な架橋を達成して必要な被覆特性を提供するために250℃の温度で90秒間実施する一方、本発明の組成物は、より低い温度で、例えば20分のオーダーの長時間にわたって温度160℃を維持しながら硬化し得る。温度が高ければ高いほど硬化時間は短くなるので、被覆の許容できる硬化のためには時間と温度との間のバランスが必要であることが、当業者には理解されるであろう。従って、例えば180℃の温度においては、硬化時間を10分に短縮する。
硬化時間の短縮は、経済的であり技術的に有利であるが、それは、より短い反応時間で、ひいては工業用オーブン中でより短い保持時間で(速度がより速い又は寸法がより小さい)作業を行える可能性を提供するからである。本発明のもう1つの利点は、硬化剤としてPT912を用いるCoil Coating Bakingサイクルにおいて良好な被覆特性を達成できる可能性である。
本発明のもう1つの利点は、本発明によるポリエステルを含む組成物から調製される被覆が抜群の特性の組み合わせを有することである。粉末として塗布される被覆の外観を最高品質の液体被覆仕上げに匹敵するように改良することは重要な考え方であり、本発明は優れた外観を有する被覆を提供する。従来の被覆は、比較的低粘度の液体として塗布して水及び/又は溶媒の除去後に平滑なフィルムを提供し得る一方で、塗布された粉末粒子は、連続的なフィルムを形成するために、溶融し、流れ、基材を濡らして融着し、平滑になる必要がある。本発明のポリマービヒクルは、安定な溶融粘度及び溶融流動性を提供するために効果的である。
溶媒/水系被覆が室温より幾分低いTgを有するポリマー系を利用し得る一方で、被覆粉末樹脂のTgは、許容できる非焼成特性を有するために45℃より高い必要がある。被覆のTgが十分に高ければ、焼成は回避し得る。しかしながら、できるだけ低い温度での融着及び平滑化はTgを低減することにより促進される。部分硬化をせずに貯蔵中に維持されるべき処方された組成物の安定性のためには、Tgは十分な水準、即ち57℃より高い水準に保つ必要がある。本発明は、Tgを他の因子との組み合わせで最適化し、処方された粉体塗装の貯蔵安定性を犠牲にすることなく硬化前の被覆の良好な融着及び平滑化を提供する。
以下の実施例は、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲を例示するものであるが、それらに限定するものではないことを理解されたい。
段階1−ヒドロキシル末端オリゴマーの調製
反応物質 重量
ネオペンチルグリコール 5396g
テレフタル酸 6726g
イソフタル酸 897g
モノブチル錫オキシド 6.5g
この混合物を235℃に加熱し、酸価を11及び200℃におけるICIコーン/プレート粘度を720m.Pa.sとした。このオリゴマーのヒドロキシル価は63であった。
段階2−カルボン酸末端ポリエステルの調製
上記オリゴマーを200℃に冷却し、1,4シクロヘキサンジカルボン酸の1345g及びモノブチル錫オキシドの1gを加えた。温度を225℃に上げた。40.5の酸価及び1480m.Pa.sの200℃におけるICI粘度が得られた時点で、トリフェニルホスファイトの3gを加え、真空度が徐々に75mmHgに到達するまで30分の時間をかけてゆっくり真空にした。反応を、サンプルを採取し酸価及び200℃におけるICIコーン/プレート粘度を測定してモニターした。28.1の酸価及び8000m.Pa.sの200℃におけるICI粘度が得られた後、溶融物を200℃に冷却し、臭化トリフェニルエチルホスホニウム触媒の37.6g及びトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトの37.6gを加えて30分混合し樹脂とした。この時間の後、樹脂をフラスコから取り出した。樹脂の色は淡黄色であった。最終的に、樹脂は27の酸価、8000m.Pa.sの200℃におけるICIコーン/プレート粘度、DSC測定による62℃のガラス転移温度、及び1未満のGardner Holdt色(50重量パーセント樹脂N−メチル−2−ピロリドン溶液として)を有していた。
段階1−ヒドロキシル末端オリゴマーの調製
反応物質 重量
ネオペンチルグリコール 6832g
トリメチロールプロパン 30g
テレフタル酸 8559g
1,4シクロヘキサンジカルボン酸 1812g
モノブチル錫オキシド 14.3g
この混合物を235℃に加熱し、酸価を16.9及び200℃におけるICIコーン/プレート粘度を940m.Pa.sとした。このオリゴマーのヒドロキシル価は41であった。
段階2−カルボン酸末端ポリエステルの調製
上記オリゴマーを200℃に冷却し、イソフタル酸の1141g及びモノブチル錫オキシドの4.8gを加えた。温度を225℃に上げた。46.1の酸価及び1080m.Pa.sの200℃におけるICI粘度が得られた時点で、トリフェニルホスファイトの3.8gを加え、真空度が徐々に約75mmHgに到達するまで30分の時間をかけてゆっくり真空にした。反応を、サンプルを採取し酸価及び200℃におけるICIコーン/プレート粘度を測定してモニターした。27.6の酸価及び8000m.Pa.sの200℃におけるICI粘度が得られた後、溶融物を200℃に冷却し、臭化トリフェニルエチルホスホニウム触媒の47.7g及びトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトの47.7gを加えて30分混合し樹脂とした。この時間の後、樹脂をフラスコから取り出した。樹脂の色は淡黄色である。最終的に、樹脂は27.6の酸価、7800m.Pa.sの200℃におけるICIコーン/プレート粘度、DSC測定による61.6℃のガラス転移温度、及び1未満のGardner Holdt色(50重量パーセント樹脂N−メチル−2−ピロリドン溶液として)を有していた。
段階1−ヒドロキシル末端オリゴマーの調製
反応物質 重量
ネオペンチルグリコール 6334g
テレフタル酸 7988g
1,4シクロヘキサンジカルボン酸 1692g
トリフェニルホスファイト 3.7g
モノブチル錫オキシド 10.7g
この混合物を235℃に加熱し、酸価を15.2及び200℃におけるICIコーン/プレート粘度を1980m.Pa.sとした。このオリゴマーのヒドロキシル価は、37であった。
段階2−カルボン酸末端ポリエステルの調製
上記オリゴマーを200℃に冷却し、イソフタル酸の1188g及びトリメチロールプロパンの36gを加えた。温度を225℃に上げた。44.5の酸価及び2140m.Pa.sの200℃におけるICI粘度が得られた時点で、トリフェニルホスファイトの3.4gを加え、真空度が徐々に約75mmHgに到達するまで30分の時間をかけてゆっくり真空にした。反応を、サンプルを採取し酸価及び200℃におけるICIコーン/プレート粘度を測定してモニターした。35.1の酸価及び4900m.Pa.sの200℃におけるICI粘度が得られた後、溶融物を200℃に冷却し、臭化トリフェニルエチルホスホニウム触媒の44.9g及びトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトの44.9gを加えて30分混合し樹脂とした。この時間の後、樹脂をフラスコから取り出した。樹脂の色は淡黄色である。最終的に、樹脂は35.0の酸価、5000m.Pa.sの200℃におけるICIコーン/プレート粘度、DSC測定による61.1℃のガラス転移温度、及び1未満のGardner Holdt色(50重量パーセント樹脂N−メチル−2−ピロリドン溶液として)を有していた。
比較例
実施例1を現在の「従来技術の状況」と比較するために、実施例4のポリマーを、この特定の用途における市販のポリエステルを試験するために、実施例1の手順に従って同じ実験装置を用いて合成した。
段階1−ヒドロキシル末端オリゴマーの調製
反応物質 重量
ネオペンチルグリコール 6985g
トリメチロールプロパン 70g
テレフタル酸 9490g
アジピン酸 393g
モノブチル錫オキシド 13.7g
トリフェニルホスファイト 9.1g
この混合物を245℃に加熱し、酸価を8.7及び200℃におけるICIコーン/プレート粘度を450m.Pa.sとした。
段階2−カルボン酸末端ポリエステルの調製
上記オリゴマーを220℃に冷却し、トリフェニルホスファイトの11.7g、イソフタル酸の1744g及びモノブチル錫オキシドの5.9gを加えた。温度を225℃に上げた。38の酸価及び1280m.Pa.sの200℃におけるICI粘度が得られた後、溶融物を200℃に冷却し、真空度が徐々に75mmHgになるまで30分の時間をかけてゆっくり真空にした。反応を、サンプルを採取し酸価及び200℃におけるICIコーン/プレート粘度を測定してモニターした。24.9の酸価及び8000m.Pa.sの200℃におけるICI粘度が得られた後、溶融物を200℃に冷却し、臭化トリフェニルエチルホスホニウム触媒の48.8g及びトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトの48.7gを加えて30分混合し樹脂とした。この時間の後、樹脂をフラスコから取り出した。樹脂の色は淡黄色であった。最終的に、樹脂は24.4の酸価、8100m.Pa.sの200℃におけるICIコーン/プレート粘度、DSC測定による63.3℃のガラス転移温度、及び1未満のGardner Holdt色(50重量パーセント樹脂N−メチル−2−ピロリドン溶液として)を有していた。
粉体塗装の調製
一連の粉体塗装を、実施例1から4で得られたポリエステルから、1つはバインダー対架橋剤の比が93:7である処方(処方A)、もう1つはバインダー対架橋剤の比が91:9である処方(処方B)の次の異なる2つの処方に従って調製する。全てのポリエステルを、次の方法により評価した。粒状のポリエステル樹脂(バインダー)を、Araldite PT 912、8.8gのFluidep F 630、2.5gのベンゾイン、及び二酸化チタン(Kronos2160)168gと乾式混合し、これを続いて押出し機(APV mod MP 30)中に導入した。押し出し物を冷却し、粉砕しふるい分けした。105μより小さいふるい分け断片を収集し、粉体塗装として用いた。この粉体塗装を鋼パネル上に静電吹付けした。処方された粉体塗装の物性を、1分30秒の硬化後250℃で60から80μmの被覆厚において測定する。これらの粉体塗装の組成及び試験結果を、表1に示す。
焼き付け工程:250℃で1分30秒
実施例1、2及び4用の処方A(重量パーセント)
ポリエステル樹脂 298.2
PT 912 22.5
Fluidep F 630 8.8
ベンゾイン 2.5
二酸化チタン 168
実施例3用の処方B(重量パーセント)
ポリエステル樹脂 295.7
PT 912 29.3
Fluidep F 630 8.8
ベンゾイン 2.5
二酸化チタン 168
Figure 2009507086
これらの結果から明らかなように、本発明による熱硬化性粉末組成物は、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸をそのポリマー構造中に組み込んでいないカルボキシル末端ポリエステルに基づく従来技術の組成物から得られる特徴に比べ有利な特徴を有する。
市販のポリエステル樹脂は、0T曲げ試験及び耐衝撃性の結果から明らかなように、いずれかの温度において硬化に失敗している。
本発明の前記の詳細な記述を考慮するとき、本発明の実施における数多くの変更及び多様化がおこることが当業者には予測される。従って、そのような変更及び多様化は、上記の特許請求の範囲内に含まれるものである。

Claims (11)

  1. (1)18から60の範囲の酸価、3000から11000の範囲の数平均分子量、及び57℃以上のガラス転移温度を有するカルボキシル化ポリエステル樹脂をポリマー組成物の重量に対して84から97重量パーセント、
    (2)非イソシアヌル酸塩ポリエポキシド又はベータ−ヒドロキシアルキルアミドをポリマー組成物の重量に基づいて3から15重量パーセント、及び
    (3)250℃の温度において硬化時間を90秒より短くするために効果的な触媒を0.05から2.0重量パーセント
    を含む、粉体塗装組成物用のビヒクルとして用いるために適したポリマー組成物。
  2. ポリエポキシドが、4以下の平均エポキシ官能価及び80から300の範囲の平均エポキシ当量を有する、請求項1の組成物。
  3. カルボキシル化ポリエステル樹脂が、ポリエステルの生成に用いる総酸含有量の少なくとも30モル%の割合の芳香族酸から誘導される、ポリマー鎖内の芳香族部分を含む、請求項1又は請求項2の組成物。
  4. カルボキシル化ポリエステル樹脂が、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の0.1から25モル%の割合から誘導される、ポリマー鎖内の脂肪族部分を含む、請求項1から3のいずれか一項の組成物。
  5. エポキシ化合物が、トリグリシジルトリメリテート、ジグリシジルテレフタレート、及びジグリシジルイソフタレートの1つ以上から選択される、請求項1から4のいずれか一項の組成物。
  6. 触媒が、臭化テトラブチルホスホニウム、臭化トリフェニルエチルホスホニウム、塩化ブチルトリフェニルホスホニウム、ヨウ化トリフェニルエチルホスホニウム、ホルミルメチレントリフェニルホスホラン、塩化ホルミルメチルトリフェニルホスホニウム、ベンゾリメチレントリフェニルホスホラン、臭化フェニルトリエチルホスホニウム、臭化メトキシカルボニルメチルホスホニウム、エチルトリフェニルホスホラニリデンアセテート、メチルトリフェニルホスホラニリデンアセテート、臭化エトキシカルボニルメチルトリフェニルホスホニウム、エチルトリフェニルホスホニウムアセテート−酢酸錯体、及びこれらの混合物などのオニウムの1つ以上から選択される、請求項1から5のいずれか一項の組成物。
  7. ヒドロキシル末端ポリエステルが、イソフタル酸、テレフタル酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジメチルカルボン酸、アジピン酸、及びこれらの混合物からなる群より選択される二酸(芳香族酸の少なくとも約30モルパーセントがテレフタル酸である)と、ジオール、酸化物又は炭酸塩とのエステル化反応生成物である、請求項1から6のいずれか一項の組成物。
  8. エステル化反応生成物が、3から10モルパーセントの芳香族二酸、0.01から5モルパーセントのポリ酸、及び0.01から4モルパーセントのポリオールを更に含む、請求項7の組成物。
  9. ジカルボン酸とジオール、酸化物及び/又は炭酸塩とのカルボキシル化反応生成物を含む粉体塗装配合物中に用いるためのカルボキシル化ポリエステル組成物であり、ジカルボン酸が少なくとも30重量%の芳香族酸及び0.1から25%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を含み、酸価が23から40の範囲内であり、200℃における粘度が4000から16000m.Pa.sであり、及びガラス転移温度が57℃以上であることを特徴とする前記カルボキシル化ポリエステル組成物。
  10. 硬化フィルム中に請求項1から8のポリマー組成物を含む被覆物品。
  11. 請求項9のカルボキシル化ポリエステル組成物が組み込まれた、組成物で被覆された請求項10の被覆物品。
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