JP2009504687A - 新生物に関する免疫系による認識のインビボでの増強のための、腫瘍崩壊ウイルスおよび免疫賦活剤による処置 - Google Patents

新生物に関する免疫系による認識のインビボでの増強のための、腫瘍崩壊ウイルスおよび免疫賦活剤による処置 Download PDF

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Abstract

本発明は、腫瘍崩壊ウイルスと免疫賦活剤との組合わせを使用することによって、哺乳動物において新生物を処置または軽減するための新規な方法を提供する。本発明はまた、腫瘍崩壊ウイルスと免疫賦活剤との組合わせを使用することによって、腫瘍崩壊ウイルスの効力を増強するための新規な方法を提供する。上記の方法は、レオウイルスを宿主に投与する工程;および免疫賦活剤(例えば、CpGオリゴデオキシヌクレオチド)または上記ウイルスの少なくとも1つの抗原(樹状細胞によって宿主に送達される)を添加することによって、免疫応答を増強させる工程;を包含する。

Description

(1.導入部)
(A.発明の分野)
本発明は、腫瘍崩壊ウイルスおよび免疫賦活剤を使用して、哺乳動物において増殖性障害を処置するための方法に関する。
(B.発明の背景)
癌は、米国単独において毎年100万人よりも多くの人において診断されている。医学的研究における多くの進歩にも関わらず、癌は、米国において2番目に多い死亡原因のままである。先進国においては、ほぼ5人のうちの1人が、癌で死亡する。新規なストラテジーに関する探究において、腫瘍崩壊ウイルス療法が、腫瘍細胞を特異的に殺すための実行可能なアプローチとして、最近出現した。従来の遺伝子療法とは異なり、上記腫瘍崩壊ウイルス療法は、ウイルス複製およびそれと同時に生じる細胞溶解によって腫瘍組織全体へと分布可能な、複製コンピテントウイルスを使用する。上記方法は、代替的な癌処置法を提供する。ウイルスは、現在、選択的に複製して癌細胞を殺すように操作されている。
腫瘍崩壊ウイルスは、癌細胞を殺すための複数の作用機構(細胞溶解、細胞アポトーシス、抗血管新生、および細胞壊死)を利用し得る。上記ウイルスは、上記腫瘍細胞に感染し、その後複製を開始する。上記ウイルスは、上記腫瘍細胞がそのウイルスをもはや含み得ずに宿主細胞膜を最終的に「溶解する」(破裂させる)まで、複製し続ける。上記腫瘍細胞は、破壊され、新たに生じたウイルスが、近傍の癌細胞へと伝播して、その周期を継続する。すべての腫瘍崩壊ウイルスは癌細胞においてのみ複製しかつ正常組織は損傷させずに通過するように意図されていることを記憶することが、重要である。従って、一旦すべての上記腫瘍細胞が根絶された後は、上記腫瘍崩壊ウイルスは、もはやその複製能力を有さず、免疫系がその腫瘍崩壊ウイルスを身体から排除する。
過去数年間にわたって、ウイルス細胞傷害性の分子機構に関する新たな洞察により、より有効な腫瘍崩壊ウイルスを設計するための科学的原理が提供された。分子生物学における最近の進歩によって、腫瘍細胞において特異的に複製してその腫瘍細胞を殺す、数種の遺伝子改変ウイルス(例えば、アデノウイルスおよび単純ヘルペスウイルス)の設計が可能になった。一方、固有の腫瘍崩壊能力を有するウイルスもまた、治療目的のために評価されている。腫瘍崩壊ウイルス療法の効力は、一般に、臨床前試験において実証されているが、臨床試験におけるその治療効力は、依然として最適であるわけではない。従って、条件付きで複製する(conditionally replicating)ウイルスの腫瘍崩壊能力をさらに増強し得るストラテジーが、評価される。
(C.発明の要旨)
患者に腫瘍崩壊ウイルスを投与するとその患者において抗ウイルス免疫応答を惹起し得ることが認識されているが、研究の焦点は、この先天免疫を回避することに置かれていた。一方、本発明は、新生物の死滅を増強するためにこの先天応答を利用する。腫瘍崩壊ウイルス療法による処置の後に患者に対して免疫賦活剤を投与することによって、その腫瘍細胞の死滅が増強され得る。上記腫瘍崩壊ウイルスに対して感受性である腫瘍細胞だけではなく、感染した腫瘍細胞(これは、その表面上にウイルス抗原を発現する)もまた、その賦活された免疫系によって「異物」として認識および攻撃され得る。さらに、上記腫瘍崩壊ウイルスによって溶解された腫瘍細胞は、その免疫系に対して曝露され、それによって、特に免疫賦活剤の非存在下においては、腫瘍抗原について免疫系が認識する機会が増加する。
本発明の一局面は、新生物に罹患している哺乳動物においてその新生物を処置するための方法を提供し、その方法は、腫瘍崩壊ウイルスおよび免疫賦活剤をその哺乳動物に投与する工程;を包含する。好ましくは、上記免疫賦活剤は、上記腫瘍崩壊ウイルスの後に、より好ましくは上記腫瘍崩壊ウイルスが新生物細胞に感染した後に、投与される。最も好ましくは、上記免疫賦活剤は、上記の感染した新生物細胞が上記腫瘍崩壊ウイルスの少なくとも1つの抗原を発現した後に投与される。好ましくは、上記免疫賦活剤は、合成オリゴデオキシヌクレオチド(例えば、シトシン−ホスフェート−グアノシン(CpG))である。好ましい実施形態において、上記腫瘍崩壊ウイルスは、レオウイルスであり、より好ましくは天然に存在するレオウイルスである。
別の局面において、本発明は、新生物に罹患している哺乳動物において腫瘍崩壊ウイルスの抗腫瘍活性を増強するための方法を提供し、その方法は、その腫瘍崩壊ウイルスをその哺乳動物に投与する工程に加えて、免疫賦活剤をその哺乳動物に投与する工程;を包含する。好ましくは、上記免疫賦活剤は、上記腫瘍崩壊ウイルスが投与された後に投与される。より好ましくは、上記免疫賦活剤は、上記感染した細胞が上記腫瘍崩壊ウイルスの少なくとも1つの抗原を発現した後に投与される。一実施形態においては、上記免疫賦活剤は、合成オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)(好ましくは、非メチル化シトシン−ホスフェート−グアノシン(CpG))である。
本発明のなお別の局面は、新生物に罹患している哺乳動物において腫瘍崩壊ウイルスの抗腫瘍活性を増強するための方法を提供し、その方法は、
(a)樹状細胞を上記腫瘍崩壊ウイルスと接触させる工程;
(b)上記樹状細胞を誘導して、上記腫瘍崩壊ウイルスの抗原を提示させる工程;および
(c)上記樹状細胞により提示された抗原に対する免疫応答を惹起し、それによって上記哺乳動物において上記腫瘍崩壊ウイルスに対する免疫応答を惹起する工程;
を包含する。好ましい一実施形態において、工程(a)は、インビボにおいて行われる。別の好ましい実施形態において、工程(a)は、エキソビボにおいて行われ、上記樹状細胞は、上記ウイルスと接触させた後に上記哺乳動物に投与される。
本発明の別の局面は、腫瘍崩壊ウイルス療法の効力を増強するための方法を提供し、その方法は、腫瘍崩壊ウイルスを哺乳動物に投与する工程;および免疫賦活剤をその哺乳動物に投与する工程;を包含する。好ましくは、上記免疫賦活剤は、上記腫瘍崩壊ウイルスの後に、より好ましくは上記腫瘍崩壊ウイルスが腫瘍細胞に感染した後に、投与される。最も好ましくは、上記免疫賦活剤は、上記感染した新生物細胞が上記腫瘍崩壊ウイルスの少なくとも1つの抗原を発現した後に投与される。好ましくは、上記免疫賦活剤は、合成オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)(例えば、非メチル化シトシン−ホスフェート−グアノシン(CpG))である。好ましい実施形態において、上記腫瘍崩壊ウイルスは、レオウイルスであり、より好ましくは天然に存在するレオウイルスである。
本発明の一局面は、新生物細胞の免疫認識を増加させるための方法を提供し、その方法は、
(a)その新生物細胞に腫瘍崩壊ウイルスを感染させる工程;ならびに
(b)その腫瘍崩壊ウイルスの抗原に対する免疫応答を惹起する工程;
を包含し、これにより、その腫瘍崩壊ウイルスに対する免疫応答は、その感染した新生物細胞により発現される腫瘍崩壊ウイルス抗原に応答する。上記免疫応答は、好ましくは、
(i)樹状細胞に上記腫瘍崩壊ウイルスを接触させる工程;
(ii)上記樹状細胞を誘導して、上記腫瘍崩壊ウイルスの抗原を提示させる工程;および
(iii)上記腫瘍崩壊ウイルスに対する免疫応答を惹起する工程;
を包含するプロセスによって、惹起される。好ましい一実施形態において、上記接触させる工程は、インビボにおいて行われる。別の好ましい実施形態において、上記接触させる工程は、エキソビボにおいて行われ、上記樹状細胞は、接触させた後に上記哺乳動物に投与される。
(II.詳細な説明)
(A.定義)
「投与する」とは、当業者にとって公知である、薬学的組成物の標準的な投与方法のうちのいずれかを意味する。例としては、経腸投与、経皮投与、静脈内投与、筋肉内投与、または腹腔内投与が挙げられるが、これらに限定はされない。被験体に対する「ウイルスの投与」とは、そのウイルスが標的新生物細胞と接触する様式で、被験体に対してそのウイルスを投与する動作を指す。そのウイルスが投与される経路、ならびにその処方、キャリア、もしくはビヒクルは、標的細胞の位置および型に依存する。
ウイルス感染に対する細胞の「抵抗性」とは、その細胞へのウイルス感染が、顕著なウイルス産生もウイルス生成も生じないことを示す。「感受性である」細胞とは、細胞障害効果、ウイルスタンパク質合成、および/またはウイルス産生の誘導を示す細胞である。
「新生物細胞」、「腫瘍細胞」、または「増殖性障害を有する細胞」とは、異常に高い速度で増殖する細胞を指す。新生物細胞を含む新たな増殖は、新生物(「腫瘍」としても公知である)である。腫瘍とは、異常な組織増殖であり、一般的には明瞭な塊を形成し、これは、正常な組織増殖よりも迅速に細胞増殖により増殖する。腫瘍は、正常な組織との構造的組織化および機能的協調について、部分的欠如または全体的欠如を示し得る。本明細書において使用される場合、腫瘍とは、造血性腫瘍および固形腫瘍を包含することが意図される。腫瘍は、良性(良性腫瘍)であっても、悪性(悪性腫瘍もしくは癌)であってもよい。悪性腫瘍は、3つの主要な型へと広く分類され得る。上皮構造から生じる悪性腫瘍は、癌腫と呼ばれる。結合組織(例えば、筋肉、軟骨、脂肪、または骨)に由来する悪性腫瘍は、肉腫と呼ばれる。(免疫系の成分を含む)造血構造(血球の形成に関与する構造)に罹患する悪性腫瘍は、白血病およびリンパ腫と呼ばれる。他の腫瘍としては、神経線維腫症が挙げられるが、これに限定はされない。上記新生物細胞は、好ましくは哺乳動物(特に、イヌ、ネコ、齧歯類、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒト、および非ヒト霊長類からなる群より選択される、哺乳動物)中に位置する。最も好ましくは、上記哺乳動物は、ヒトである。
「腫瘍崩壊ウイルス」とは、新生物細胞において優先的に複製してその新生物細胞を殺す、ウイルスである。腫瘍崩壊ウイルスは、天然に存在するウイルスであっても操作されたウイルスであってもよい。腫瘍崩壊ウイルスはまた、レオウイルスに関して詳細に記載されるような、免疫防御されたリアソータントウイルス(immunoprotected and reassortant virus)を包含する。
「腫瘍崩壊ウイルスによる感染」とは、細胞における腫瘍崩壊ウイルスの侵入および複製を指す。同様に、「腫瘍崩壊ウイルスによる腫瘍の感染」とは、その腫瘍の細胞における腫瘍崩壊ウイルスの侵入および複製を指す。
「有効量」とは、意図される効果を生じるために充分である、免疫賦活剤またはレオウイルスの量である。腫瘍を処置または軽減するために使用される腫瘍崩壊ウイルスに関して、有効量とは、その腫瘍の症状を軽減もしくは排除するため、またはその腫瘍の進行を遅くするために、充分な腫瘍崩壊ウイルスの量である。
「新生物を処置または軽減する」とは、新生物の症状を軽減もしくは排除すること、またはその新生物の進行を遅くすることを意味する。その軽減は、好ましくは少なくとも約10%であり、より好ましくは少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%である。
用語「核酸」と用語「オリゴヌクレオチド」とは、複数のヌクレオチドを含む分子を意味するために、互換可能に使用される。本明細書において使用される場合、これらの用語は、オリゴリボヌクレオチドおよびオリゴデオキシリボヌクレオチドを指す。これらの用語はまた、ポリヌクレオシド(すなわち、「ポリヌクレオチド」−「ホスフェート」)ならびに他の任意の有機塩基含有ポリマーを包含する。核酸とは、ベクター(例えば、プラスミド)およびオリゴヌクレオチドを包含する。核酸分子は、既存の核酸供給源から取得され得るが、好ましくは、合成核酸分子(例えば、オリゴヌクレオチド合成によって生成される)である。
「免疫賦活剤」とは、外因性抗原に対する免疫応答(抗体媒介性免疫応答および/または細胞媒介性免疫応答)を増強または増大させる、本質的に任意の物質を指す。
本明細書において使用される「免疫賦活核酸」とは、免疫応答を誘導する免疫賦活モチーフもしくは免疫賦活骨格を含む、任意の核酸である。その免疫応答は、Th1型免疫応答またはTh2型免疫応答として特徴付けられ得るが、これらに限定はされない。そのような免疫応答は、活性化免疫細胞によって惹起されるサイトカイン産生プロフィールおよび抗体産生プロフィールによって、定義される。
(B.新生物を処置するための方法)
本発明は、新生物に罹患している哺乳動物においてその新生物を処置するための方法を提供し、その方法は、腫瘍崩壊ウイルスおよび免疫賦活剤をその哺乳動物に投与する工程;を包含する。その腫瘍崩壊ウイルスは、その腫瘍崩壊ウイルスが最終的には標的新生物細胞と接触し得る様式で、投与される。その腫瘍崩壊ウイルスが投与される経路、その処方、キャリア、もしくはビヒクルは、標的細胞の位置および型に依存する。広範な種類の投与経路が、使用され得る。例えば、接近可能な固形新生物に関して、上記腫瘍崩壊ウイルスは、その新生物に対して直接的に注射することによって投与され得る。造血新生物に関して、例えば、上記腫瘍崩壊ウイルスは、静脈内投与または脈管内投与され得る。身体中にある容易には接近不能な新生物(例えば、転移)に関して、上記腫瘍崩壊ウイルスは、その腫瘍崩壊ウイルスが哺乳動物の身体全体にわたって全身輸送されてその新生物に到達し得る様式で(例えば、静脈内または筋肉内に)投与される。あるいは、上記腫瘍崩壊ウイルスは、単一の固形新生物に直接投与され得、その後、その腫瘍崩壊ウイルスは、身体全体にわたって転移するように全身に運ばれる。上記腫瘍崩壊ウイルスはまた、皮下投与、腹腔内投与、髄腔内投与(例えば、脳腫瘍に関して)、局所投与(例えば、黒色腫に関して)、経口投与(例えば、口腔新生物もしくは食道新生物に関して)、直腸投与(例えば、結腸直腸新生物に関して)、膣内投与(例えば、子宮頚部新生物もしくは膣新生物に関して)、鼻内投与、または吸入スプレーによる投与(例えば、肺新生物に関して)され得る。
上記腫瘍崩壊ウイルスは、単回投与または複数回投与(すなわち、1回よりも多くの投与)にて投与され得る。この複数回投与は、別々の部位において同時に投与されても、別々の経路によって同時に投与されても、または連続的に(例えば、数日間もしくは数週間にわたって)投与されてもよい。上記腫瘍崩壊ウイルスは、好ましくは、上記免疫賦活剤の前に投与される。本発明の一実施形態において、一連のウイルス/免疫賦活剤療法が、1回以上投与される。
上記腫瘍崩壊ウイルスは、好ましくは、単位投与量形態で処方され、その各々の投与量は、約10pfu〜約1013pfuのレオウイルスを含む。用語「単位投与量形態」とは、ヒト被験体および他の哺乳動物のための単位投与量として適切である物理的に別個の単位であって、適切な薬学的賦形剤と組み合わされており、各単位が、望ましい治療効果を生じるように計算された所定量の腫瘍崩壊ウイルスを含む、単位を指す。
本発明は、任意の動物被験体(好ましくは哺乳動物)に適用され得る。上記哺乳動物は、好ましくは、イヌ、ネコ、齧歯類、家畜(例えば、ヒツジ、ヤギ、ネコ、ウマ、およびブタ)、ヒト、および非ヒト霊長類からなる群より選択される。好ましくは、上記哺乳動物は、ヒトである。
本発明は、他の腫瘍療法(例えば、化学療法、放射線療法、手術、ホルモン療法、および/または免疫療法)と組み合わされ得ることが、企図される。
当業者は、本明細書中の開示および当該分野において利用可能な知識に従って、任意の腫瘍崩壊ウイルスを使用して本発明を実施し得る。上記腫瘍崩壊ウイルスは、ミオウイルス科、シフォビラーダ科(siphoviridae)、ポドウイルス科、テクティウイルス科(teciviridae)、コルチコウイルス科、プラズマウイルス科(plasmaviridae)、リポスリクスウイルス科(lipothrixviridae)、フセロウイルス科(fuselloviridae)、ポックスウイルス科、イリドウイルス科、フィコドナウイルス科(phycodnaviridae)、バキュロウイルス科、ヘルペスウイルス科、アデノウイルス科、パポバウイルス科、ポリドナウイルス科(polydnaviridae)、イノウイルス科、ミクロウイルス科、ジェミニウイルス科(geminiviridae)、サーコウイルス科(circoviridae)、パルボウイルス科、ヘパドナウイルス科、レトロウイルス科、シストウイルス科(cyctoviridae)、レオウイルス科、ビルナウイルス科、パラミクソウイルス科、ラブドウイルス科、フィロウイルス科、オルトミクソウイルス科、ブンヤウイルス科、アレナウイルス科、レヴィウイルス科、ピコルナウイルス科、セキウイルス科(sequiviridae)、コモウイルス科(comoviridae)、ポティウイルス科(potyviridae)、カリシウイルス科、アストロウイルス科、ノダウイルス科(nodaviridae)、テトラウイルス科、トンブスウイルス科(tombusviridae)、コロナウイルス科、グラヴィウイルス科(glaviviridae)、トガウイルス科、またはバルナウイルス科(barnaviridae)におけるメンバーであり得る。
レオウイルスが、特に好ましい腫瘍崩壊ウイルスである。レオウイルスは、二本鎖分節RNAゲノムを有するウイルスである。そのビリオンは、直径60nm〜80nmであり、2つの同心円状キャプシド殻を有し、それらの殻の各々は、正二十面体である。そのゲノムは、10個〜12個の別個の分節中にある二本鎖RNAからなり、その全ゲノムサイズは16kbp〜27kbpである。個々のRNA分節は、サイズが変動する。ヒトレオウイルスは、3つの血清型:1型(Lang株もしくはT1L)、2型(Jones株、T2J)、および3型(Dearing株もしくはAbney株、T3D)からなる。これらの3つの血清型は、中和アッセイおよび赤血球凝集素阻害アッセイに基づいて容易に同定可能である(例えば、Fields,B.N.ら、1996を参照のこと)。
本発明の別の実施において、上記腫瘍崩壊ウイルスは、弱毒化アデノウイルスもしくは改変型アデノウイルスである。弱毒化アデノウイルスもしくは改変型アデノウイルスは、活性化Ras経路を有する細胞において複製し得るが、活性化Ras経路を有さない細胞においては複製不能である。アデノウイルスは、約3.6kbの二本鎖DNAウイルスである。ヒトにおいて、アデノウイルスは、眼、気道、胃腸管、および尿管において、複製し得て疾患を引き起こし得る。その47種の公知のヒト血清型のうちの約3分の1が、ヒトアデノウイルス疾患のほとんどの症例の原因である。そのアデノウイルスは、宿主の抗ウイルス防御機構に対抗する数種の遺伝子産物をコードする。そのアデノウイルスのウイルス関連(virus−associated)RNA(VAI RNAまたはVA RNA)は、小さい構造化されたRNAであり、これは、アデノウイルス感染後の後期に細胞質中に高濃度で蓄積する。これらのVAI RNAは、PKRの二本鎖RNA(dsRNA)結合モチーフに結合し、自己リン酸化によりPKRのdsRNA依存性活性化をブロックする。従って、PKRは機能できず、上記ウイルスは、上記細胞内で複製し得る。ビリオンの過剰産生は、最終的には細胞死をもたらす。用語「弱毒化アデノウイルス」または「改変型アデノウイルス」とは、本明細書において使用される場合には、PKRの活性化を防ぐ遺伝子産物が欠損されているか、阻害されているか、もしくは変異されており、PKR活性化がブロックされないようになっていることを意味する。好ましくは、上記VAI RNAは、転写されない。そのような弱毒化アデノウイルスもしくは改変型アデノウイルスは、活性化Ras経路を有さない正常細胞においては複製不能であるが、活性化Ras経路を有する細胞に感染し得てその細胞において複製し得る。
ニューカッスル病ウイルス(NDV)は、悪性細胞において優先的に複製し、その最も一般的に使用される株は、73−Tである(Reichardら、1992;Zornら、1994;Bar−Eliら、1996)。PV701(ニューカッスル病ウイルスの弱毒化非組換え腫瘍崩壊株)は、インターフェロン媒介性抗ウイルス応答における腫瘍特異的欠損に基づいて、正常細胞に対して腫瘍細胞を選択的に溶解する。
パラポックスorfウイルスは、種々の哺乳動物種(ヒトを含む)における急性皮膚損傷を誘導するポックスウイルスである。パラポックスorfウイルスは、PKR活性をブロックすることに関与する遺伝子OV20.0Lをコードする。パラポックスorfウイルスは、活性化Ras経路を有さない細胞において複製不能である。本発明において使用するためにより好ましい腫瘍崩壊ウイルスは、「弱毒化パラポックスorfウイルス」または「改変型パラポックスorf」ウイルスであり、これらのウイルスにおいて、PRKの活性化を防止する遺伝子産物が欠損しているか、阻害されるか、または変異されており、PKR活性化がブロックされないようになっている。好ましくは、遺伝子OV20.0Lは、転写されない。そのような弱毒化パラポックスorfウイルスまたは改変型パラポックスorfウイルスは、活性化Ras経路を有さない正常細胞においては複製不能であるが、活性化Ras経路を有する細胞に感染可能でありかつその細胞において複製可能である。
リボヌクレオチドレダクターゼ発現が欠損している単純ヘルペスウイルス1(HSV−1)変異体(hrR3)は、結腸癌腫細胞において複製するが正常肝細胞においては複製しないことが示された(Yoonら、2000)。単純ヘルペスウイルス1型(HSV−1)ベクターは、特に有用である。なぜなら、それらのベクターは、腫瘍細胞において非常に選択的に複製および伝播するように遺伝子操作され得、かつまた複数の異種導入遺伝子を発現し得るからである。これらのベクターは、正常組織には損傷を与えることなく広範な種類の腫瘍型において細胞障害効果を示し得、その腫瘍内において増幅された遺伝子送達を提供し得、そして特異的な抗腫瘍免疫を誘導し得る。複数の組換えHSV−1ベクターが、脳腫瘍を有する患者および他の癌を有する患者において試験されている。これらのベクターは、ヒト器官(脳を含む)において複製コンピテントHSV−1ベクターを安全に投与することの実行可能性を示した。
他の多くの腫瘍崩壊ウイルスが、当業者にとって公知である。例えば、水疱性口内炎ウイルス(VSV)は、新生物細胞を選択的に殺す。脳炎ウイルスは、マウス肉腫において腫瘍崩壊効果を有することが示されたが、正常細胞においてその感染性を低減するように弱毒化することが、必要とされ得る。ワクシニアウイルスは、腫瘍細胞において複製するというその珍しい能力が原因で、本発明において有用な別の複製する腫瘍崩壊ウイルスを示す。さらに、特殊なウイルス機能が、抗腫瘍効力を増強し腫瘍細胞標的化を改善するために、増強または排除され得る。例えば、チミジンキナーゼのウイルス遺伝子およびワクシニア増殖因子のウイルス遺伝子を欠失すると、腫瘍標的化活性が増強したワクシニア変異体が生じる。好ましい実施において、上記腫瘍崩壊ウイルスは、米国特許出願公開第2002/0028195号に記載されるような、改変型ワクシニアウイルスであり、そのウイルスにおいては、E3LまたはK3Lが変異されている。麻疹ウイルス(MV)のワクチン株は、形質転換細胞を容易に溶解するが、複製および溶解が、正常ヒト細胞において限定される。従って、MVは、腫瘍崩壊因子として開発するために非常に適切である。腫瘍退縮はまた、帯状疱疹ウイルスに感染した患者、肝炎ウイルスに感染した患者、インフルエンザウイルスに感染した患者、水痘ウイルスに感染した患者、および麻疹ウイルスに感染した患者において、記載されている(概説に関して、Nemunaitis、1999を参照のこと)。任意の腫瘍崩壊ウイルスが、本願発明において使用され得る。
種々の腫瘍崩壊ウイルスが新生物細胞において選択的に複製する能力は、種々の機構に依存することが公知である。例えば、レオウイルスは、細胞において複製してその細胞を破壊するためには、活性化Rasシグナル伝達経路の存在を必要とする。他の数種の腫瘍崩壊ウイルスにおいては、腫瘍選択性は、必須ウイルス遺伝子を腫瘍特異的プロモーターの制御下に配置することによって達成される。特定のウイルスにおいて、そのE1A領域が、細胞性腫瘍サプレッサーRbへの結合およびRb機能の阻害を担い、それによって細胞増殖機構(従って、ウイルス複製)が制御されない様式で進行することが可能である。Δ24は、Rb結合領域における欠失を有し、Rbには結合しない(Fueyoら、2000)。従って、その変異体ウイルスの複製は、正常細胞においてはRbによって阻害される。しかし、Rbが不活化されて細胞が新生物になった場合には、Δ24はもはや阻害されない。従って、その変異体ウイルスは、Rb欠損性新生物細胞において効率的に複製してその細胞を溶解する。新生物細胞における選択的複製のための他の機構は、当該分野において公知である。本発明は、腫瘍崩壊ウイルスが正常細胞と比較して新生物細胞において選択的に複製する機構に関して、何の制限も課さない。
上記ウイルスは、遺伝子治療のために遺伝子を送達するためのビヒクルではないことが、好ましい。例えば、ウイルスは、アデノウイルスE1A遺伝子、p53腫瘍サプレッサー遺伝子、プロドラッグコード遺伝子(Chmuraら、1999;2001)、または放射性により誘導可能なプロモーターの制御下にある遺伝子を送達するように操作されている。実際には、これらのウイルスは、通常は、新生物細胞において優先的には複製せず、従って、腫瘍崩壊ウイルスであるとは見なされない。
上記腫瘍崩壊ウイルスは、天然に存在するウイルスであっても、改変型ウイルスであってもよい。上記腫瘍崩壊ウイルスは、そのウイルスが天然の供給源から単離され得、かつ実験室において人間によって意図的に改変されていない場合に、「天然に存在する」。例えば、上記腫瘍崩壊ウイルスは、「フィールドソース(field souce)」に由来し得、すなわち、その腫瘍崩壊ウイルスに感染したヒトに由来し得る。
上記腫瘍崩壊ウイルスは、2つ以上の遺伝的に別個の腫瘍崩壊ウイルスに由来するゲノムセグメントの組換え/遺伝子再集合(reassortment)から生じる、組換え腫瘍崩壊ウイルスであり得る。腫瘍崩壊ウイルスゲノムセグメントの組換え/遺伝子再集合(reassortment)は、少なくとも2種の遺伝的に別個の腫瘍崩壊ウイルスによって宿主生物が感染した後に、自然と生じ得る。組換えビリオンもまた、例えば、遺伝的に別個の腫瘍崩壊ウイルスを許容性(permissive)宿主細胞に同時感染させることによって、細胞培養中で生成され得る(Nibertら、1995)。本発明はさらに、2種以上の遺伝的に別個の腫瘍崩壊ウイルス由来のゲノムセグメントの遺伝子再集合(reassortment)から生じる組換えウイルスの使用を企図し、少なくとも1種の親ウイルスは、遺伝子操作されているか、化学合成されたゲノムセグメントを1つ以上含むか、化学的変異原もしくは物理的変異原で処理されているか、またはそれ自体が組換え事象の結果である。本発明はさらに、化学的変異原(ジメチルスルフェートおよび臭化エチジウムが挙げられるが、これらに限定されない)または物理的変異原(紫外光および他の形態の放射線が挙げられるが、これらに限定はされない)の存在下で組換えした組換え腫瘍崩壊ウイルスの使用を企図する。
本発明はさらに、1種以上のゲノムセグメントにおいて欠失もしくは重複を含む組換え腫瘍崩壊ウイルスの使用を企図し、それらの腫瘍崩壊ウイルスは、宿主細胞ゲノムとの組換えの結果としてさらなる遺伝情報を含むか、または合成遺伝子を含む。
上記腫瘍崩壊ウイルスは、改変型であり得るが、依然として新生物哺乳動物細胞に溶解感染可能であり得る。上記腫瘍崩壊ウイルスは、増殖中の細胞に投与される前に、化学的または生化学的に事前処理(例えば、プロテアーゼ(例えば、キモトリプシンもしくはトリプシン)による処理による)され得る。プロテアーゼによる事前処理は、上記ウイルスの外被もしくはキャプシドを除去し得、そのウイルスの感染性を増加し得る。上記腫瘍崩壊ウイルスは、リポソーム中またはミセル中にコートされ得る。例えば、そのビリオンが、ミセル形成濃度のアルキルスルフェート界面活性剤の存在下でキモトリプシン処理されて、新たな感染性サブビリオン(subvirion)粒子を生じ得る。
上記腫瘍崩壊ウイルスは、変異型コートタンパク質を、例えば、そのビリオンの外部キャプシド中に組み込むことによって、改変され得る。上記タンパク質は、置換、挿入、または欠失によって、変異され得る。置換とは、ネイティブアミノ酸の代わりに別のアミノ酸を挿入することを包含する。挿入とは、そのタンパク質中の1つ以上の位置にさらなるアミノ酸残基を挿入することを包含する。欠失とは、そのタンパク質中の1つ以上のアミノ酸残基を欠失することを包含する。そのような変異は、当該分野において公知である方法によって生成され得る。例えば、コートタンパク質のうちの1つをコードする遺伝子のオリゴヌクレオチド部位特異的変異誘発は、望ましい変異体コートタンパク質の生成をもたらし得る。腫瘍崩壊ウイルスに感染した哺乳動物細胞(例えば、COS1細胞)におけるインビトロでの上記変異型タンパク質の発現は、その腫瘍崩壊ウイルスのビリオン粒子中へのその変異型タンパク質の組込みをもたらし得る(TurnerおよびDuncan,1992;Duncenら、1991;Mahら、1990)。
特定の好ましい型の免疫賦活剤は、アジュバントを包含する。多くのアジュバントは、抗原が迅速な代謝から保護されるように設計された物質(例えば、水酸化アルミニウムもしくは鉱物油)と、免疫応答の賦活剤(例えば、脂質A、Bortadella pertussis由来タンパク質、もしくはMycobacterium tuberculosis由来タンパク質)とを含む。特定のアジュバントは、市販されており、それらは例えば、以下の通りである:フロイント不完全アジュバントおよびフロイント完全アジュバント(Difco Laboratories,Detroit,Mich.);Merck Adjuvant 65(Merck and Company,Inc.,Rahway,N.J.);AS−2(SmithKline Beecham,Philadelphia,Pa.);アルミニウム塩(例えば、水酸化アルミニウムゲル(ミョウバン)もしくはリン酸アルミニウム);カルシウム塩、鉄塩、もしくは亜鉛塩;アシル化チロシンの不溶性懸濁物;アシル化糖;カチオン誘導体化多糖もしくはアニオン誘導体化多糖;ポリホスファゼン;生分解性ミクロスフェア;モノホスホリル脂質A、QS21、アミノアルキルグルコサミニド4−ホスフェート、およびquil A。サイトカイン(例えば、GM−CSF、インターロイキン2、インターロイキン7、インターロイキン12、および他の同様の増殖因子)もまた、アジュバントとして使用され得る。
上記免疫賦活剤は、特定の組成物のために便利な様式で、一般的には緩衝化生理食塩水中に一単位用量として、宿主に投与される。必要に応じて、ブースター用量が、代表的には1週間後〜数週間後に、さらに経腸送達または非経口送達(例えば、皮下送達、皮膚送達、筋肉内送達、皮内送達、静脈内送達、動脈内送達、腹腔内送達、鼻内送達、経口送達、心臓内送達、膵臓内送達、関節内送達など)され得る。免疫賦活剤の初期用量もしくはブースター用量の位置決定は、当該分野において公知であるような、標的部位での投与、徐放性移植物の使用、非拡散粒子形態での送達などによって、達成され得る。上記免疫賦活剤の送達のための用量およびプロトコルは、選択される特定の因子に応じて変動する。代表的には、1用量またはそれよりも多い用量が、投与される。
本発明の一実施形態において、上記免疫賦活剤は、ポリクローナル活性化因子であり、これは、内毒素(例えば、リポ多糖(LPS))およびスーパー抗原(外毒素)を包含し得る(Hermanら(1991)Annu Rev Immunol 9:745〜72を参照のこと)。内毒素は、マクロファージ上にあるCD14レセプターと主に相互作用するが、スーパー抗原は、T細胞を優先的に活性化する。従って、両方の細胞型は、炎症誘発性サイトカインを放出するように誘発される。スーパー抗原(SAg)は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスII分子によって提示され、スーパー抗原は、特定のT細胞レセプターVβドメインを発現する多数のT細胞と相互作用する。
あるいは、免疫賦活核酸を使用し得る。免疫賦活核酸は、免疫賦活モチーフ(例えば、CpGモチーフおよびポリGモチーフ)を保有し得る。本発明のいくつかの実施形態においては、任意の核酸が、同定可能なモチーフをその核酸が保有するか否かには関わらず、免疫応答を惹起するために併用療法において使用され得る。一実施形態において、上記免疫賦活核酸は、配列CpG(好ましくは、式5’XCGX3’(CおよびGは非メチル化状態であり、X、X、XおよびXは、ヌクレオチドであり、GCGトリヌクレオチド配列は5’末端および3’末端にも、それらの近傍にも存在しない)によって示される、コンセンサスマイトジェンCpGモチーフ)を含む(1999年12月28日に発酵されたKriegら、米国特許第6,008,200号を参照のこと)。CpG免疫賦活核酸は、Th1型免疫応答を賦活することが公知である。CpG配列(ヒトDNAには比較的珍しいが)は、感染性生物(例えば、細菌)のDNAにおいて一般的に見出される。ヒト免疫系は、CpG配列を感染の初期警告徴候として認識するように、そして侵入する病原体に対する即時の強力な免疫応答を開始するが他の免疫賦活因子に関して頻繁に観察される有害な反応は引き起こさないように、明らかに進化している。従って、CpG含有核酸は、この先天免疫防御機構に依存して、免疫療法のために独自の天然経路を利用し得る。免疫調節に対するCpG核酸の効果は、米国特許第6,194,388号ならびに公開特許出願(例えば、PCT US95/01570、PCT US97/19791、PCT US98/03678、PCT US98/10408、PCT US98/04703、PCT US99/07355、およびPCT US99/09863)において広範に記載されている。
別の実施形態において、上記免疫賦活核酸は、ポリG免疫賦活核酸である。種々の参考文献(PisetskyおよびReich,1993,Mol Biol.Reportes,18:217〜221;KriegerおよびHerz,1994,Ann.Rev.Biochem.,63:601〜637;Macayaら,1993,PNAS,90:3745〜3749;Wyattら、1994,PNAS,91:1356〜1360;RandoおよびHogan,1998,Applied Antisense Oligonucleotide Technology,KrigeおよびStein編,p.335〜352;ならびにKimuraら、1994,J.Biochem.116,991〜994が挙げられる)が、ポリG核酸の免疫賦活特性を記載している。
上記免疫賦活核酸は、二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。一般的には、二本鎖分子が、インビボにおいては、より適切であるが、一本鎖分子は、増加した免疫活性を有する。従って、本発明のいくつかの局面においては、上記核酸が一本鎖であることが好ましく、他の局面においては、上記核酸が二本鎖であることが好ましい。免疫賦活核酸全体またはその部分は、非メチル化状態であり得るが、上記5’CpG3’のうちの少なくともCは、非メチル化状態でなければならない。
細胞中への取り込みを促進するために、上記免疫賦活核酸は、好ましくは、2塩基長〜100塩基長の範囲内にある。しかし、6ヌクレオチドよりも長い(数kb長もの長さでさえある)どんなサイズの核酸も、充分な免疫賦活モチーフが存在する場合には、免疫応答を誘導可能である。好ましくは、上記免疫賦活核酸は、サイズが8ヌクレオチド〜100ヌクレオチドであり、いくつかの実施形態においては、サイズが8ヌクレオチド〜50ヌクレオチド、または8ヌクレオチド〜30ヌクレオチドである。
本発明の方法における免疫賦活核酸の使用に関する特定の利点は、免疫賦活核酸が、比較的低い投与量でさえ、免疫賦活活性を発揮し得ることである。使用される投与量は、達成されるべき臨床目的に依存して変動するが、適切な投与量範囲は、一投与量中に約1Fg〜約10,000Fg(通常は少なくとも約1,000Fg)の免疫賦活核酸を提供する範囲である。あるいは、標的投与量の免疫賦活核酸は、その免疫賦活核酸の投与後の最初の24時間〜48時間以内に採取された一定体積の宿主血液において、約1フェムトモル濃度〜約10フェムトモル濃度の免疫賦活核酸を生じる。現在の研究に基づくと、免疫賦活核酸は、これらの投与量レベルにおいてほとんど毒性を有さないかまたは全く毒性を有さないと考えられる。
本発明の目的のために適した免疫賦活核酸は、ホスホジエステルの形態で、またはより安定であるようにホスホロチオエートの形態もしくはホスホジエステル/ホスホロチオエートハイブリッドの形態で、存在し得る。既存の核酸供給源(例えば、ゲノムDNAもしくはcDNA)に由来するオリゴヌクレオチドを使用することが可能ではあるが、合成オリゴヌクレオチドの使用が、優先される。従って、3’→5’アセンブリのためにβ−シアノエチルホスホロアミダイト法(Beaucage,S.L.およびCaruthers,M.H.,Tetrahedron Lettes 22,1859−1862(1981))を使用して固体支持体上にオリゴヌクレオチドを発達させることが可能であり、その後、pHを調整していない0.3M酢酸ナトリウム(最終0.3M)の存在下におけるエタノール中での沈殿が、実行される。次に、4容量の80%エタノールを用いる沈殿が実行され、その後、乾燥させた後で、純水中に上記沈殿物を溶解させる。上記のホスホロチオエート含有オリゴヌクレオチドにおいて、そのリン酸基を構成する酸素原子のうちの1つが、イオウ原子で置換される。その合成は、以前に記載された通りに実行され得るが、但し、ホスホジエステル結合の合成のために必要な酸化工程において使用されるヨウ素/水/ピリジンテトラヒドロフラン溶液が、TETD(テトラエチルチウラム(thiuram)ジスルフィド)溶液で置換される。この溶液は、ホスホロチオエート基の生成のための硫酸イオンを提供する。糖の塩基のうちのホスホジエステル結合の他の改変を想定して、特にその安定性を増加させるために使用されるオリゴヌクレオチドの特性を改変することもまた、可能である。
あるいは、核酸安定化は、骨格改変を介して達成され得る。本発明の好ましい安定化核酸は、改変型骨格を有する。上記核酸骨格の改変は、インビボで投与した場合に上記免疫賦活核酸の活性の増強を提供することが、実証されている。免疫賦活骨格としては、リン酸改変型骨格(例えば、ホスホロチオエート骨格)が挙げられるが、これらに限定はされない。これらの免疫賦活配列の使用は、当該分野において公知である。例えば、Bauerら(1999)Immunology 97(4):699〜705;Klinmanら(1999)Vaccine 17(1):19〜25;Hasanら(1999)J Immunol Methods 229(1〜2):1〜22などを参照のこと。そのような改変のうちの型の1つは、リン酸骨格改変である。例えば、そのオリゴヌクレオチドの5’末端に少なくとも2つのホスホロチオエート結合を含みかつ3’末端に複数の(好ましくは5個の)ホスホロチオエート結合を含む、免疫賦活核酸は、最大の活性を提供し得、かつ細胞内エキソヌクレアーゼおよび細胞内エンドヌクレアーゼによる分解からその核酸を保護し得る。他のリン酸改変核酸としては、ホスホジエステル改変型核酸、ホスホジエステル核酸とホスホロチオエート核酸との組み合わせ、メチルホスホネート、メチルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、およびそれらの組み合わせが挙げられる。免疫賦活核酸におけるこれらの組み合わせの各々および免疫細胞に対するこれらの特定の効果が、PCT公開特許出願PCT/US95/01570およびPCT/US97/19791において、より詳細に考察されている。
主にTh1型応答を惹起するために好ましい免疫賦活剤としては、例えば、モノホスホリル脂質A(好ましくは、3−de−O−アシル化モノホスホリル脂質A)とアルミニウム塩との組み合わせが挙げられる。CpG含有オリゴヌクレオチド(そのCpGジヌクレオチドは、非メチル化状態である)もまた、主にTh1応答を誘導する。別の好ましい免疫賦活剤としては、サポニン(例えば、Quil A)またはその誘導体(QS21およびQS7(Aquila Biopharmaceuticals Inc.,Framingham,Mass.);Escin;Digitoni;またはGypsophilaもしくはChenopodium quinoaサポニンが挙げられる)が挙げられる。他の好ましい処方物としては、1つよりも多いサポニン(例えば、QS21、QS7、Quil A、βescin、およびジギトニンからなる群より選択される少なくとも2つのメンバーの組合わせ)が挙げられる。
本発明の別の実施形態によると、上記免疫賦活剤は、抗原提示細胞(APC)(例えば、樹状細胞、マクロファージ、B細胞、単球、および効率的なAPCであるように操作され得る他の細胞)を介して宿主に送達される腫瘍崩壊ウイルスの少なくとも1つの抗原である。そのような細胞は、抗原を提示する能力を増加してT細胞応答の活性化および/または維持を改善するように遺伝子改変され得るが、必ずしもその必要はない。APCは、一般的には、種々の体液および器官(腫瘍組織および腫瘍周辺組織が挙げられる)のうちのいずれかから単離され得、APCは、自己由来細胞であっても、同種異系細胞であっても、同系細胞であっても、異種細胞であってもよい。
腫瘍関連抗原を負荷(load)された樹状細胞を使用する癌免疫療法は、腫瘍特異的免疫応答および抗腫瘍活性を生じることが示されている(Camptonら、2000;FongおよびEngelmann、2000)。有望な結果が、腫瘍抗原でパルス(pulse)した樹状細胞を使用してインビボにおける臨床試験において得られた(TarteおよびKlein、1999)。これらの研究は、癌抗原に対する免疫応答を生じるために樹状細胞を使用する効力を明らかに実証している。
本発明の特定の好ましい実施形態は、樹状細胞またはその前駆体を抗原提示細胞として使用する。樹状細胞は、非常に強力なAPCである(BanchereauおよびSteinman、Nature 392、245〜251、1998)。樹状細胞は、予防的抗腫瘍免疫または治療的抗腫瘍免疫を惹起するための生理学的アジュバントとして、有効であることが示されている(TimmermanおよびLevy、Ann.Rev.Med.50:507〜529,1999を参照のこと)。一般的には、樹状細胞は、その代表的な形状(インサイチュにおいて放射状であり、インビトロにおいては顕著な細胞質突起(樹状突起)が見える)、抗原を高効率に取り込んでプロセシングして提示する能力、およびナイーブT細胞応答を活性化する能力に基づいて、同定され得る。樹状細胞は、インビボまたはエキソビボにおいて樹状細胞においては一般的には見出されない特定の細胞表面レセプターもしくは細胞表面リガンドを発現するように操作され得る。そのような改変型樹状細胞は、本発明によって企図される。樹状細胞に対する代替選択肢としては、分泌型小胞抗原を負荷(load)した樹状細胞(エキソームと呼ばれる)が、使用され得る(Zitvogelら、Nature Med.4:594〜600,1998を参照のこと)。
樹状細胞および前駆体は、末梢血、骨髄、腫瘍浸潤細胞、腫瘍周辺組織浸潤細胞、リンパ節、脾臓、皮膚、臍帯血、または他の適切な任意の組織もしくは流体から、取得され得る。例えば、樹状細胞は、サイトカイン(例えば、GM−CSF、IL−4、IL−13および/またはTNFα)の組み合わせを、末梢血から採取された単球の培養物に添加することによって、エキソビボにて分化され得る。あるいは、末梢血から、臍帯血から、または骨髄から採取された、CD34陽性細胞が、GM−CSF;IL−3;TNFα;CD40リガンド;LPS;fit3リガンド;および/または樹状細胞の分化、成熟、および増殖を誘導する他の化合物;の組み合わせを上記培養培地に添加することによって、樹状細胞へと分化され得る。
(III.実施例)
(実施例I)
2つのグループの雌SCIDマウスに、1×10個の乳癌MDA−MB468細胞を両方の側腹部後部の上の2箇所の皮下部位に注射する。触知可能な腫瘍が、注射の約2週間後〜約4週間後に明らかである。非希釈型レトロウイルス血清型3(Dearing株)を、20μl体積において濃度1.0×10PFU/mlにて右側腫瘍塊中に注射する。グループ1の動物にはまた、10μgのODN1826(TCCATGACGTTCCTGACGTT)(CpG含有オリゴヌクレオチドである)を上記レオウイルスとともに注射する。2週間後、これらの動物に、再度、同量のODN1826を注射する。グループ2の動物には、上記CpGと同量の生理食塩水注射を同頻度で与える。これらの結果は、両方のグループにおいて、動物の左側にある腫瘍のサイズが動物の右側にある腫瘍のサイズよりも大きいことを示す。このことは、腫瘍崩壊ウイルス治療が新生物を処置することにおいて有効であることを示す。さらに、グループ1の動物の左側にある腫瘍のサイズは、グループ2の動物の左側にある腫瘍のサイズよりも小さい。このことは、腫瘍崩壊ウイルス療法と組合わせて免疫賦活剤を投与することのさらなる抗腫瘍効果を示す。

Claims (28)

  1. 新生物に罹患している哺乳動物において該新生物を処置または軽減するための方法であって、該方法は、
    (a)腫瘍崩壊ウイルスを該哺乳動物に投与する工程;および
    (b)免疫賦活剤を投与する工程;
    を包含する、方法。
  2. 請求項1に記載の方法であって、前記免疫賦活剤が前記腫瘍崩壊ウイルスの後に投与されることを特徴とする、方法。
  3. 請求項2に記載の方法であって、前記免疫賦活剤は、前記腫瘍崩壊ウイルスが腫瘍細胞に感染した後に投与されることを特徴とする、方法。
  4. 請求項3に記載の方法であって、前記免疫賦活剤は、前記感染した腫瘍細胞が前記腫瘍崩壊ウイルスの少なくとも1つの抗原または腫瘍特異的抗原を発現した後に投与されることを特徴とする、方法。
  5. 請求項2に記載の方法であって、前記免疫賦活剤が前記腫瘍崩壊ウイルスの24時間後に投与されることを特徴とする、方法。
  6. 請求項1に記載の方法であって、前記腫瘍崩壊ウイルスがレオウイルスであることを特徴とする、方法。
  7. 請求項6に記載の方法であって、前記レオウイルスが、天然に存在するレオウイルスであることを特徴とする、方法。
  8. 請求項1に記載の方法であって、前記免疫賦活剤が合成オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)であることを特徴とする、方法。
  9. 請求項8に記載の方法であって、前記免疫賦活剤が非メチル化シトシン−ホスフェート−グアノシン(CpG)であることを特徴とする、方法。
  10. 新生物に罹患している哺乳動物において腫瘍崩壊ウイルスの抗腫瘍活性を増強するための方法であって、該方法は、
    免疫賦活剤および腫瘍崩壊ウイルスを該哺乳動物に投与する工程;
    を包含する、方法。
  11. 請求項10に記載の方法であって、前記免疫賦活剤は、前記腫瘍崩壊ウイルスが腫瘍細胞に感染した後に投与されることを特徴とする、方法。
  12. 請求項10に記載の方法であって、前記免疫賦活剤は、前記感染した細胞が前記腫瘍崩壊ウイルスの少なくとも1つの抗原または腫瘍特異的抗原を発現した後に投与されることを特徴とする、方法。
  13. 請求項11に記載の方法であって、前記免疫賦活剤が前記腫瘍崩壊ウイルスの24時間後に投与されることを特徴とする、方法。
  14. 請求項10に記載の方法であって、前記腫瘍崩壊ウイルスがレオウイルスであることを特徴とする、方法。
  15. 請求項14に記載の方法であって、前記レオウイルスが、天然に存在するレオウイルスであることを特徴とする、方法。
  16. 請求項10に記載の方法であって、前記免疫賦活剤が合成オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)であることを特徴とする、方法。
  17. 請求項16に記載の方法であって、前記免疫賦活剤が非メチル化シトシン−ホスフェート−グアノシンであることを特徴とする、方法。
  18. 新生物に罹患している哺乳動物において腫瘍崩壊ウイルスの抗腫瘍活性を増強するための方法であって、該方法は、
    (a)樹状細胞を該腫瘍崩壊ウイルスと接触させる工程;
    (b)該樹状細胞を誘導して、該腫瘍崩壊ウイルスの抗原を提示させる工程;および
    (c)該哺乳動物において該腫瘍崩壊ウイルスに対する免疫応答を惹起する工程;
    を包含する、方法。
  19. 請求項18に記載の方法であって、前記接触させる工程がエキソビボにおいて行われ、前記樹状細胞が、接触後に前記哺乳動物に投与されることを特徴とする、方法。
  20. 腫瘍崩壊ウイルス療法の効力を増強するための方法であって、
    (a)腫瘍崩壊ウイルスを哺乳動物に投与する工程;および
    (b)免疫賦活剤を投与する工程;
    を包含する、方法。
  21. 請求項20に記載の方法であって、前記免疫賦活剤が前記腫瘍崩壊ウイルスの後に投与されることを特徴とする、方法。
  22. 請求項21に記載の方法であって、前記免疫賦活剤は、前記腫瘍崩壊ウイルスが腫瘍細胞に感染した後に投与されることを特徴とする、方法。
  23. 請求項21に記載の方法であって、前記免疫賦活剤が前記腫瘍崩壊療法の24時間後に投与されることを特徴とする、方法。
  24. 請求項20に記載の方法であって、前記腫瘍崩壊ウイルス療法がレオウイルスであることを特徴とする、方法。
  25. 請求項24に記載の方法であって、前記レオウイルスが、天然に存在するレオウイルスであることを特徴とする、方法。
  26. 請求項20に記載の方法であって、前記免疫賦活剤が合成オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)であることを特徴とする、方法。
  27. 請求項26に記載の方法であって、前記免疫賦活剤が非メチル化シトシン−ホスフェート−グアノシンであることを特徴とする、方法。
  28. 新生物細胞の免疫認識を増加させるための方法であって、
    (a)該新生物細胞に腫瘍崩壊ウイルスを感染させる工程;ならびに
    (b)(i)樹状細胞に該腫瘍崩壊ウイルスを接触させる工程;
    (ii)該樹状細胞を誘導して、該腫瘍崩壊ウイルスの抗原を提示させる工程;および
    (iii)該腫瘍崩壊ウイルスに対する免疫応答を惹起する工程;
    を包含するプロセスによって、該腫瘍崩壊ウイルスの抗原に対する免疫応答を惹起する工程;
    を包含し、これにより、該腫瘍崩壊ウイルスに対する免疫応答は、該感染した新生物細胞により発現される腫瘍崩壊ウイルス抗原に応答することを特徴とする、方法。
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