JP2009500041A6 - 抗αVβ6抗体およびその使用 - Google Patents

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Abstract

本発明は、細胞生物学、免疫学及び腫瘍学の分野に属する。特に、本発明は、非ヒト起源の可変領域及びヒト起源の免疫グロブリンの少なくとも一部分を含むv6インテグリンを認識するヒト化抗体に関する。本発明は又、これらの抗体を調製するプロセス、これらの抗体を含む薬学的組成物、及びヒト化抗v6抗体を投与することにより種々の疾患を処置する方法にも関する。本発明は又、腫瘍細胞及び組織の表面におけるインテグリンαβの差次的発現の特定、腫瘍細胞の転移の可能性を測定することにおけるこの差次的発現の使用、並びにインテグリンαβに結合するリガンド、特に抗体を使用して、腫瘍転移を診断及び処置/予防する、及び残存する転移腫瘍細胞を排除する方法にも関する。

Description

(発明の分野)
本発明は、細胞生物学、免疫学及び腫瘍学の分野に属する。特に、本発明は、非ヒト起源の可変領域及びヒト起源の免疫グロブリンの少なくとも一部分を含むv6インテグリンを認識するヒト化抗体に関する。本発明は又、これらの抗体を調製するプロセス、これらの抗体を含む薬学的組成物、及びヒト化抗v6抗体を投与することにより種々の疾患を処置する方法にも関する。本発明は又、腫瘍細胞及び組織の表面におけるインテグリンαβの差次的発現の特定、腫瘍細胞の転移の可能性を測定することにおけるこの差次的発現の使用、並びにインテグリンαβに結合するリガンド、特に抗体を使用して、腫瘍転移を診断及び処置/予防する、及び残存する転移腫瘍細胞を排除する方法にも関する。
(関連技術)
インテグリンは、細胞外マトリックスタンパク質を結合し、細胞−細胞及び細胞−細胞外マトリックスの相互作用(一般的には細胞接着事象と呼ばれる)を媒介する細胞表面糖タンパク質受容体である(Ruoslahti, E., J. Clin. Invest. 87:1−5 (1991); Hynes, R.O., Cell 69:11−25 (1992))。これらの受容体は、互いに組み合わさると、異なる細胞特異性及び接着特異性を有する種々のヘテロ2量体タンパク質が生じる、非共有結合により会合したアルファ(α)及びベータ(β)鎖からなる(Albeda, S.M., Lab. Invest. 68:4−14 (1993))。最近の試験では、細胞接着、遊走、浸潤、分化、増殖、アポトーシス及び遺伝子発現を含めた細胞プロセスの調節において特定のインテグリンが関与していることが示唆されている(Albeda, S.M., Lab. Invest. 68:4−14 (1993); Juliano, R., Cancer Met. Rev. 13:25−30 (1994); Ruoslahti, E. and Reed, J.C., Cell 77:477−478 (1994);及びRuoslahti, E. and Giancotti, F.G., Cancer Cells 1:119−126 (1989); Plow, Haas, et al., 2000;van der Flier and Sonnenberg 2001)。
αβ受容体は、細胞表面へテロ2量体タンパク質として発現されるインテグリンファミリーの1つのメンバーである(Busk, M., et al., J. Biol. Chem. 267(9):5790−5796 (1992))。αvサブユニットは、種々のβサブユニット(β、β、β、β及びβ)とヘテロ2量体を形成できるのに対して、β6サブユニットは、αvサブユニットとヘテロ2量体として発現されるのみである。αβインテグリンは、フィブロネクチン結合、潜時関連ペプチド(LAP)結合、及びテナシンC結合細胞表面受容体であることが知られており、これらのRGDトリペプチド結合部位を介して細胞外マトリックスと相互作用する(Busk, M., et al., J. Biol. Chem. 267:5790−5796 (1992); Weinacker, A., et al., J. Biol. Chem. 269:6940−6948 (1994); Prieto, AX., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:10154−10158 (1993))。αβインテグリンは10年以上前に最初に特定され、配列決定されたが、特に疾患におけるαβの生物学的重要性は依然として調査中である。αβの発現は上皮細胞に制限されており、これらの細胞においてαβは、健常組織において比較的低レベルで発現され、発達、傷害及び創傷治癒時には有意にアップレギュレートされる(Breuss, J.M., et al., J. Histochem. Cytochem. 41:1521−1527 (1993); Breuss, J.M., et al., J. Cell Sci. 108:2241−2251 (1995); Koivisto, L., et al., Cell Adhes. Communic. 7:245−257 (1999); Zambruno, G., et al., J. Cell Biol. 129(3):853−865 (1995); Hakkinen, L., et al., J. Histochem. Cytochem. 48(6):985−998 (2000))。最近増えつつある報告では、αβが、例えば、結腸癌腫(Niu, J., et al., Int. J. Cancer 92:40−48 (2001); Bates, R.C., et al., J. Clin. Invest. 115:339−347 (2005))、卵巣癌(Ahmed, N., et al., J. Cell Biochem. 84:675−686 (2002); Ahmed, N., et al., J. Histochem. Cytochem. 50:1371−1379 (2002); Ahmed, N., et al., Carcinogen. 23:237−244 (2002))、扁平上皮細胞癌腫(Koivisto, L., et al., Exp. Cell Res. 255:10−17 (2000); Xue, H., et al., Biochem. Biophys. Res. Comm. 288:610−618 (2001); Thomas, G.J., et al., J. Invest. Dermatol. 117:67−73 (2001); Thomas, GJ., et al., Int. J. Cancer 92:641−650 (2001); Ramos, D.M., et al., Matrix Biol. 21:297−307 (2002); (Agrez, M., et al., Br. J. Cancer 81:90−97 (1999); Hamidi, S., et al., Br. J. Cancer 82(8):1433−1440 (2000); Kawashima, A., et al., Pathol. Res. Pract. 99(2):57−64 (2003))及び乳癌(Arihiro, K., et al., Breast Cancer 7:19−26 (2000))を含めた上皮起源の癌においてアップレギュレートされることが示されている。又、αvサブユニットは、腫瘍転移に関与する場合があり、このサブユニットを阻害することで転移が予防される場合があることも報告されている(例えば、Imhof, B.A., et al., “Attempts to Understand Metastasis Formation I,” U. Gunthert and W. Birchmeier, eds., Berlin: Springer−Verlag, pp. 195−203 (1996)を参照)。
αβインテグリンは、腫瘍細胞の生物学において複数の調節機能を有する場合がある。最近の研究では、β6サブユニットの細胞外及び原形質ドメインが種々の細胞活性を媒介することが示されている。これらの細胞外及び膜貫通ドメインは、TGF−βの活性化及び接着を媒介することが示されている(Sheppard, D., Cancer and Metastasis Rev. 24:395−402 (2005); Munger, J.S., et al., Cell 96:319−328 (1999))。β6サブユニットの原形質ドメインは、αβ調節細胞の増殖、MMPの生成、遊走及び生存促進の媒介において重要となる固有の11アミノ酸配列を含有する(Li, X., et al., J. Biol. Chem. 278(43):41646−41653 (2003); Thomas, G.J., et al., J. Invest. Derm. 117(1):61−73 (2001); Thomas, G.J., et al., Br. J. Cancer 87(8):859−867 (2002); Janes, S.M. and Watt, F.M., J. Cell Biol 166(3):419−431 (2004))。β6サブユニットは、既にクローニング、発現及び精製されており(開示内容が全体が参考として本明細書で援用される、Sheppard等の特許文献1)、αβインテグリンに選択的に結合する機能阻害抗体が報告されている(開示内容が全体が参考として本明細書で援用される、Weinreb, et al., J. Biol. Chem. 279:17875−17877 (2004))。αβの拮抗物質(特定のモノクローナル抗体を含む)も又、急性の肺傷害及び線維症の特定の型を処置する可能性が示唆されている(開示内容が全体が参考として本明細書で援用される、特許文献2及び特許文献3を参照)。
αβは、フィブロネクチン、テネイシン、潜時関連ペプチド−1及び−3(LAP1及びLAP3)、即ちアルギニン−グリシン−アスパルテート(RGD)モチーフとの直接の相互作用を介したTGF−β1の潜伏性前駆体型のN末端278アミノ酸を含めた、幾つかのリガンドに結合することができる(Busk, M., et al., J. Biol. Chem. 267(9):5790−5796 (1992); Yokosaki, Y., et al., J. Biol. Chem. 271(39):24144−24150 (1996); Huang, X.Z., et al., J. Cell Sci. 111:2189−2195 (1998); Munger, J.S., et al., Cell 96:319−328 (1999))。TGF−βサイトカインは、成熟活性C末端TGF−βサイトカインに非共有結合により会合したN末端LAPを有する潜伏性複合体として合成される。この潜伏性TGF−β複合体は、その同属体受容体に結合することができず、従って活性型に変換されるまでは生物学的活性を有さない(Barcellos−Hoff, M.H., J. Mamm. Gland Biol. 1(4):353−363 (1996); Gleizes, P.E., et al., Stem Cells 15(3):190−197 (1997); Munger, J.S., et al., Kid. Int. 51:1376−1382 (1997); Khalil, N., Microbes Infect. 1(15):1255−1263 (1999))。LAP1又はLAP2へのαβの結合によって、TGF−β1及びTGF−β3の潜伏性前駆体型の活性化がもたらし(Munger, J.S., et al., Cell 96:319−328 (1999))、これは、TGF−βによるその受容体への結合を可能にする潜伏性複合体の構造変化によるものであることが提案されている。即ち、αβのアップレギュレートされた発現によってTGF−βの局所的な活性化がもたらされ、ひいては下流の事象が連鎖的に活性化される可能性がある。
TGF−β1サイトカインは、細胞の増殖、分化及び免疫応答を調節する多面発現性の成長因子である(Wahl, S.M., J. Exp. Med. 180:1587−1590 (1994); Massague, J., Annu. Rev. Biochem. 67:753−791 (1998); Chen, W. and Wahl, S.M., TGF−β: Receptors, Signaling Pathways and Autoimmunity, Basel:Karger, pp. 62−91 (2002); Thomas, D.A. and Massague, J., Cancer Cell 8:369−380 (2005))。癌においてTGF−β1が果たす役割は2つの側面がある。TGF−βは腫瘍抑制物質及び生育抑制活性と認識されているが、多くの腫瘍がTGF−β1の生育抑制活性に対して耐性を発生させている(Yingling, J.M., et al., Nature Rev. Drug Discov. 3(12):1011−1022 (2004); Akhurst, R.J., et al., Trends Cell Biol. 11(11):S44−S51 (2001); Balmain, A. and Akhurst, R.J., Nature 428(6980):271−272 (2004))。樹立された腫瘍において、TGF−β1の発現及び活性は、腫瘍の生存、進行及び転移の促進において関与している(Akhurst, R.J., et al., Trends Cell Biol. 11(11):S44−S51 (2001); Muraoka, R.S., et al., J. Clin. Invest. 109(12):155l (2002); Yang, Y.A., et al., J. Clin. Invest. 109(12):1607−1615 (2002))。これは、免疫監視機構、血管形成及び腫瘍間質圧力の増大に対するTGF−βの作用を含めた、局所的な腫瘍−支質環境におけるオートクリン及びパラクリンの両作用により媒介されていると仮定されている。現在、幾つかの研究で、TGF−β1を抑制する抗腫瘍及び抗転移作用が示されている(Akhurst, R.J., J. Clin. Invest. 109(12):1533−1536 (2002); Muraoka, R.S., et al., J. Clin. Invest. 109(12):l55l (2002); Yingling, J.M., et al., Nat. Rev. Drug Discov. 3(12):1011−1022 (2004); Yang, Y.A., et al., J. Clin. Invest. 109(12):l607−1615 (2002); Halder, S.K., et al., Neoplasia 7(5):509−521 (2005); Iyer, S., et al., Cancer Biol. Ther. 4(3):26l−266 (2005))。
腫瘍における、特に腫瘍−支質の界面におけるαβの発現の増大は、TGF−β1の局所的活性化に固有な機序、並びに腫瘍の生存、浸潤及び転移を促進する能力を反映する場合がある。ヒト転移における高レベルの発現は、転移の樹立におけるαβの潜在的な役割を示しており、これはαβが、上皮から間葉への転移、in vitroにおける腫瘍細胞の浸潤、及び転移と相関する発現をマウスモデルにおいて媒介することができるという以前の報告と合致している(Bates, R.C., et al., J. Clin. Invest. 115(2):339−347 (2005); Thomas, G.J., et al., Br. J. Cancer 87(8):859−867 (2002); Morgan, M.R., et al., J. Biol. Chem. 279(25):26533−26539 (2004))。
以前に本発明者等は、αβのヒト及びマウスの両型に結合し、αβのそのリガンドへの結合及びTGF−β1のαβ媒介活性化を阻害する、強力且つ選択的な抗αβモノクローナル抗体(mAb)の生成について報告している(Weinreb, P.H., et al., J. Biol. Chem. 279(17):17875−17887 (2004))。全体が参考として本明細書で援用される特許文献4にも記載の通り、αβに対する高親和性抗体は、このような抗体の相補性決定領域(CDR)における重要アミノ酸残基の同定及び分析を含め、発見及び特徴付けされている。特にこれらの高親和性抗体は、(a)αβに特異的に結合し;(b)αβのそのリガンド、例えばIC50値が10D5の値よりも低いLAP、フィブロネクチン、ビトロネクチン及びテナシンとの結合を抑制し(特許文献3);(c)TGF−βの活性化を阻害し;(d)αβへの結合特異性をもたらすCDR中の特定のアミノ酸配列を含有し;(e)β6サブユニットに特異的に結合し;及び/又は(f)免疫染色操作法、例えばパラフィン包埋組織の免疫染色でαβ認識する。
特許文献4には又、αβに結合する抗体を生物物理学的に異なるクラス及びサブクラスに分類できるという発見についても記載している。抗体の1つのクラスは、リガンド(例えばLAP)のαβへの結合を阻害する能力を示す(ブロッカー)。このクラスの抗体は、更にカチオン依存性ブロッカー及びカチオン非依存性ブロッカーのサブクラスに分割することができる。カチオン依存性ブロッカーの一部は、アルギニン−グリシン−アスパルテート(RGD)ペプチド配列を含有するのに対し、カチオン非依存性ブロッカーは、RGD配列を含有しない。別のクラスの抗体は、αβに結合する能力を示すが、αβのリガンドへの結合は阻害しない(非ブロッカー)。
更に、特許文献4は、相補性決定領域(CDR)1、2及び3が、αβへの結合特異性をもたらす特定のアミノ酸配列からなる重軽鎖を含む抗体も開示している。第WO03/100033号は又、αβに特異的に結合するが潜時関連ペプチド(LAP)へのαβの結合を抑制しない抗体、並びに同じエピトープに結合する抗体も提示している。
特許文献4は更に、ハイブリドーマ細胞6.1A8、6.2B10、6.3G9、6.8G6、6.2Bl、6.2Al、6.2E5、7.1G10、7.7G5及び7.1C5、コード配列を含む単離された核酸、及び抗αβ抗体のアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドも開示している。特に特許文献4は、ハイブリドーマ6.1A8、6.3G9、6.8G6、6.2Bl、6.2B10、6.2Al、6.2E5、7.1G10、7.7G5又は7.1C5により生成される抗体として重軽鎖ポリペプチド配列を含む抗αβ抗体を開示している。ハイブリドーマの数種は、ブダペスト条約に基づきAmerican Type Culture Collection(“ATCC”;P.O. Box 1549, Manassas, VA 20108, USA)に寄託されている。特にハイブリドーマクローン6.3G9及び6.8G6は、2001年8月16日に寄託され、それぞれ受入番号ATCC PTA−3649及びPTA−3645を有する。ハイブリドーマ6.3G9及び6.8G6により生成されるマウス抗体は、ヒト化抗体として開発する可能性に関して、本出願において更に検討する。
マウスモノクローナル抗体3G9は、ヒト可溶性αβで免疫化されたβインテグリン−/−マウス(Huang, et al., J. Cell Biol. 133:921−928 (1996))から単離されたマウスIgG1 κ抗体である。3G9抗体は、傷害、線維症及び癌の間にアップレギュレートされたレベルで発現されるαβインテグリンエピトープを特異的に認識する(例えば、Thomas, et al., J. Invest. Dermatology 117:67−73 (2001); Brunton, et al., Neoplasia 3:215−226 (2001); Agrez, et al., Int. J. Cancer 81:90−97 (1999); Breuss, J. Cell Science 108:2241−2251 (1995)を参照)。これはその他のαインテグリンには結合せず、ヒト及びマウスの両分子に対して交差反応性を有する。マウスモノクローナル抗体3G9は、精製されたヒト可溶性αβへの、又はβ発現細胞へのリガンドの結合を阻害することから判断される通り、αβのLAPへの結合を阻害し、これによりTGF−β受容体活性化の線維症促進活性を抑制することが報告されている(特許文献4を参照)。又、既知のαβ抗体の1つである10D5よりもIC50値が低いTGF−βのαβ媒介活性化を抑制することも示されている(Huang, et al., J CeIl Sci. 111:2189 −2195 (1998))。
マウスモノクローナル抗体8G6は、特許文献4に記載の通り、αβインテグリンエピトープも認識するマウスIgG1 κ抗体である。マウスモノクローナル抗体8G6は、10D5よりもIC50値が低いTGF−βのαβ媒介活性化を抑制する能力を示す、αβのカチオン依存性高親和性ブロッカーである(特許文献4を参照)。
3G9及び8G6の両マウス抗体は、特許文献4に記載の通り、腎臓及び肺の線維症を予防するのに有効であった。更に、マウス抗体3G9は、ヒト腫瘍異種移植片モデルにおいて腫瘍成長を効果的に抑制することができ、癌の病理におけるαβの潜在的な役割、及びαβに指向された抗体を使用するこのような阻害の有効性が示唆されている。
従って、ヒトにおいてより抗原性が低く、αβ経路に関与する疾患の処置において有用な場合があるαβ抗体を開発することが必要とされている。組換えDNA法の出現により、抗体遺伝子を構造的に操作し、ハイブリドーマ技術では得られない特性を有する修飾された抗体分子を生成することが可能となった。治療現場において、本方法の1つの目的は、ヒトにおけるげっ歯類モノクローナル抗体の免疫原性を、それらの一次アミノ酸構造を修飾することによって低減することであった。免疫応答の誘導により、治療用抗体の排除の増進とそれに伴う薬効の損失から、極端な場合は致命的なアナフィラキシーにまで至る、一連の患者における有害作用を引き起こす可能性があることから、治療用抗体の免疫原性を低下させることが望まれている。
外来性モノクローナル抗体の免疫原性を低減する1つの方策は、モノクローナル抗体の軽鎖及び重鎖定常ドメインをヒト起源の類似ドメインで置き換えて、外来性抗体の可変領域ドメインに影響が及ばないようにすることであった。重軽鎖の可変領域ドメインは、抗体と抗原の間の相互作用を担っている。ヒト定常ドメインに連結したマウス可変ドメインを有するキメラ抗体分子は、通常キメラの由来元のマウス抗体と同じ親和性定数を有する抗原に結合する。このようなキメラ抗体は、その完全なマウス対応型よりもヒトにおける免疫原性が低い。それにもかかわらず、マウス可変ドメイン全体を維持する抗体は、患者のかなりの割合において免疫応答を誘発する傾向がある。
ヒトが全マウス可変ドメインに対して免疫応答を示すことは予測されたことであり、従って、より多いヒト特性を有する可変ドメインを得る取組みが、このような標準的なキメラ抗体の臨床試験結果が報告されるよりも前から開始されていた。「ヒト化」と呼ばれることが多い方法の1つの区分は、マウスとヒトの両特性を有する抗体可変ドメインを組換え構築することにより、マウスモノクローナル抗体の可変ドメインをよりヒト型に変換することを目的としている。ヒト化の方策は、抗体構造データの幾つかの合意された理解に基づいている。第1に、可変ドメインは、種内で保存されているが、進化的に遠い種同士(例えばマウスとヒト)の間では異なるペプチド配列の隣接地帯を含有する。第2に、その他の隣接地帯は、種内で保存されていないが、同じ個体内の抗体生成細胞の間でさえも異なる。第3に、抗体と抗原の接触は、主に可変ドメインの非保存領域を介して起こる。第4に、抗体可変ドメインの分子アーキテクチャーは、種の間で十分に類似することから、種間で対応するアミノ酸残基の位置が、実験データを使用せずに位置のみに基づいて特定される場合がある。
ヒト化の方策は、マウス配列に特徴的なアミノ酸残基をヒト抗体の対応する位置に存在する残基で置き換えることで、結果として得られる抗体のヒトにおける免疫原性を低下させることができるという前提に基づいている。しかしながら、種間の配列の置き換えると、通常は抗体によるその抗原への結合を低下させることになる。そのため、ヒト化の技術は、免疫原性を低下させるための元のマウス配列の置き換えと、ヒト化分子が抗原結合の治療的有用性を維持する必要性とのバランスを取ることにある。このバランスは2つの手法を使用して取られている。
特許文献5に例示されている1つの手法では、特徴的な点として、ヒト型である残基が、(i)抗原との相互作用において有意な化学的役割を果たさず、(ii)側鎖が溶媒内に突出して配置されていることが判明している又は予測されているマウス可変ドメイン残基で置き換えられている。即ち、抗原結合部位から遠い外部残基をヒト化されるのに対して、内部残基、抗原結合残基、並びに可変ドメイン間の界面を形成する残基は、マウス型のままである。この手法の1つの欠点は、残基が抗原結合において有意な化学的役割を果たさず、特定の3次元抗体構造において溶媒内に配置されるかどうかを判定するために、かなり広範な実験データが必要となる点である。
特許文献6に例示されている別のより一般的な手法では、保存されていると考えられるマウス可変ドメインペプチド配列の隣接地帯が、ヒト抗体の対応する地帯で置換される。このより一般的な手法では、抗原結合に関与する非保存の領域を除いて、全ての可変ドメイン残基がヒト化される。置き換えに適切な隣接地帯を決定するに当たり、特許文献6では、Wu and Kabat, J Exp Med. 132(2):211−250 (1970)にて以前に開発されている抗体可変ドメイン配列の分類を利用している。
Wu及びKabatは、抗体ペプチド配列のアライメントを開拓しており、この点における両者の寄与は数倍にも及んでいる。第一に、Kabat及びWuは、可変ドメイン間の配列類似性の研究を通して、全脊椎動物種の全抗体にわたってある程度は相同である対応する残基を同定した。これらは、同様の三次元構造を採用し、同様の機能的役割を果たし、近隣残基と同様に相互作用し、同様の化学的環境に存在することから、同定が可能であった。第2に、Kabat及びWuは、相同の免疫グロブリン残基が同じ位置番号に割り付けられているペプチド配列番号付け系を考案した。当業者であれば、配列そのものを超えた何れかの実験データに依存することなく、通常Kabat番号付けと呼ばれるものを何れかの可変ドメイン配列に明白に割り付けることができる。第3に、Kabat番号を有する配列位置のそれぞれについて、Kabat及びWuは可変性を計算した。この可変性とは、可変ドメイン配列がアラインされる場合における多少の可能なアミノ酸の発見を意味する。Kabat及びWuは、4つの低可変性の隣接領域内に埋め込んだ3つの高可変性の隣接領域を同定した。その他の研究者等は、概ねこれらの領域(超可変領域)における可変性を以前に報告しており、高可変性領域が、抗原結合に使用されるアミノ酸残基を表すと提唱している。Kabat及びWuは、これらの可変地帯を構成する残基を以前に区分けしており、これらを、抗体と抗原の間の化学的相補性を指す「相補性決定領域」(CDR)と呼んだ。抗原認識ではなく可変ドメインの3次元折り畳みにおける役割は、残余の低可変領域に起因するとされており、これは現在では「フレームワーク領域」と呼ばれている。第4に、Kabat及びWuは、抗体ペプチド及び核酸配列の公的データベースを確立しており、これは現在でも継続して維持され、当業者に周知である。
Kabatの分類の使用において特許文献6に開示されるヒト化の方法は、1つの抗体由来のCDR、及び種、起源、特異性、サブクラス又はその他の特徴が異なる別の抗体由来のフレームワーク領域を含むキメラ抗体をもたらす。しかしながら、何れの特定の配列又は特性も、フレームワーク領域に起因するとはされておらず、実際に特許文献6では、何れのセットのフレームワークも何れのセットのCDRと組み合わせることができると教示している。以来、フレームワーク配列は、良好な抗原結合を維持するのに必要な抗体の可変領域の三次元構造を与える上で重要であると認識されている。その後のこの分野の進歩は、対応するマウス抗体のアビディティと相対比較した場合の一部のヒト化抗体を使用した場合に観察される抗原に対するアビディティの喪失を取り扱う特許文献6の適用範囲内における改良となっている。
特許文献7は、抗体をヒト化するための特許文献6の1つの改良を開示しており、立体的又はその他の化学的な不適合成のためにマウス抗体内に存在する結合可能な構造へのCDRの折り畳みを妨害するヒト化フレームワークにおける構造モチーフにおける問題点がアビディティ喪失の原因であるとする前提に基づいている。この問題を論じるために、特許文献7は、ヒト化するマウス抗体のフレームワーク配列に対して直鎖ペプチド配列において緊密に相同であるヒトフレームワーク配列を使用することを教示している。従って、特許文献7の方法は、種間のフレームワーク配列を比較することに焦点を置いている。一般的には、全ての使用可能なヒト可変ドメイン配列を特定のマウス配列と比較し、対応するフレームワーク残基の間の同一性パーセントを計算する。ヒト可変ドメインは、ヒト化プロジェクトのためのフレームワーク配列が提供されるように、最高パーセントを有するものが選択される。特許文献7は又、結合可能な構造においてCDRを支持するのに重要なマウスフレームワーク由来の特定のアミノ酸残基を、ヒト化フレームワーク内で保持することが重要であるとも教示している。
その他の手法では、Riechmann, et al., Nature 332(6162):323−327 (1988)に記載の通り、低アビディティのヒト化コンストラクトが得られた後に、単一残基をマウス配列に先祖返りさせ、抗原結合を試験することにより、特定のフレームワークアミノ酸残基の重要性が実験的に測定されている。フレームワーク配列におけるアミノ酸の重要性を同定する別の例の手法は、特許文献8及び特許文献9に開示されている。これらの参考文献は、ヒト化抗体においてはアビディティを維持するために対応するマウスアミノ酸との置換を必要とする場合があるフレームワーク内の特定のKabat残基位置を開示している。従って、一部がヒト型であり一部がマウス型である結果として構築されたフレームワークは、依然としてヒト免疫原性又は低下した抗原結合を示すことが多く、このため、治療的使用に好適なフレームワークを得るには、フレームワークの構築において数多くの反復が必要となる。
従って、ヒトにおいてより抗原性が低いαβ抗体を開発することが当該技術分野で必要とされている。本発明は、αβに対する特異的な反応性を有するヒト化抗体の生成を提供する。本発明は又、このようなヒト化抗体を作成する方法であって、好適なヒトフレームワーク配列を確実に同定するヒト化抗体を提供することで、非ヒトCDR領域をサポートし、更にヒトにおいて高い抗原結合性と低い免疫原性を維持するヒト化抗体を提供することにより行われる方法も提供する。本発明は又、種々の疾患及び障害の処置、診断及び/又は予防における、このようなαβに対する反応性を有するヒト化抗体の使用も提供する。
米国特許第6,787,322B2号明細書 米国特許第6,692,741B2号明細書 国際公開第99/07405号パンフレット 国際公開第03/100033号パンフレット 米国特許第5,869,619号明細書 米国特許第5,225,539号明細書 米国特許第5,693,761号明細書 米国特許第5,821,337号明細書 米国特許第5,859,205号明細書
本発明は、αβに対する高親和性ヒト化抗体の発見及び特徴付け、例えばこのような抗体の相補性決定領域(CDR)における中核的なアミノ酸の同定及び分析、並びにフレームワーク配列における重要なアミノ酸残基の同定及び分析に少なくとも部分的に基づいている。
一実施形態において、本発明は、αβインテグリンに対する結合特異性を有するヒト化モノクローナル抗体であって、該抗体がそれぞれ配列番号1及び配列番号2の重軽鎖可変ドメインを含む抗体に関する。このようなヒト化抗体は、マウス3G9抗体のヒト化に由来する。特定の実施形態において、ヒト化抗体は、相補性決定領域(CDR)1、2及び3が配列番号1のアミノ酸残基31〜35、50〜65及び98〜109によりそれぞれ定義される重鎖を含む。特定の実施形態において、ヒト化抗体は、CDR1、2及び3が配列番号2のアミノ酸残基24〜35、51〜57及び90〜98によりそれぞれ定義される軽鎖を含む。特定の実施形態において、ヒト化抗体は、フレームワーク領域(FR)1、2、3及び4が配列番号1のアミノ酸残基1〜30、36〜49、66〜97及び110〜120によりそれぞれ定義される重鎖を含む。特定の実施形態において、ヒト化抗体は、フレームワーク領域(FR)1、2、3及び4が配列番号2のアミノ酸残基1〜23、36〜50、58〜89及び99〜108によりそれぞれ定義される軽鎖を含む。
特定の実施形態において、ヒト化抗体は、配列番号1のQ3M及びN74Sからなる重鎖アミノ酸置換のうちの少なくとも1つを含む。特定の実施形態において、ヒト化抗体は、配列番号2のE1Q、L47W、I58V、A60V及びY87Fからなる軽鎖アミノ酸置換のうちの少なくとも1つを含む。
特定の実施形態において、ヒト化抗体は、重鎖が配列番号1のアミノ酸置換Q3M及びN74Sからなる重鎖型1(「HV1」)を含む。特定の実施形態において、ヒト化抗体は、重鎖が配列番号1のアミノ酸置換N74Sからなる重鎖型2(「HV2」)を含む。特定の実施形態において、ヒト化抗体は、重鎖が配列番号1からなる重鎖3型(「HV3」)を含む。
特定の実施形態において、ヒト化抗体は、軽鎖が配列番号2のアミノ酸置換L47W、I58V、A60V及びY87Fからなる軽鎖型1(「LV1」)を含む。特定の実施形態において、ヒト化抗体は、軽鎖が配列番号2のアミノ酸置換L47W及びI58Vからなる軽鎖型2(「LV2」)を含む。特定の実施形態において、ヒト化抗体は、軽鎖が配列番号2のアミノ酸置換L47Wからなる軽鎖3型(「LV3」)を含む。特定の実施形態において、ヒト化抗体は、軽鎖が配列番号2のアミノ酸置換E1Q及びL47Wからなる軽鎖型4(「LV4」)を含む。特定の実施形態において、ヒト化抗体は、軽鎖が配列番号2からなる軽鎖5型(「LV5」)を含む。
特定の実施形態において、ヒト化抗体は、重鎖が配列番号1からなるHV3、及び軽鎖が配列番号2からなるLV5を含む重軽鎖可変ドメインを含む。
特定の実施形態において、ヒト化抗体は、マウス6.3G9抗体に由来するCDRを有する(ATCC受入番号PTA−3649)。
関連する実施形態において、本発明は又、αβインテグリンに対する結合特異性を有するヒト化モノクローナル抗体であって、抗体が配列番号3及び配列番号4の重軽鎖可変ドメインを含む抗体にも関する。このようなヒト化抗体は、マウス8G6抗体のヒト化に由来する。特定の実施形態において、ヒト化抗体は、相補性決定領域(CDR)1、2及び3が配列番号3のアミノ酸残基(即ち一部の保存された変異を除く)31〜35、50〜66及び99〜115によりそれぞれ定義される重鎖を含む。特定の実施形態において、ヒト化抗体は、CDR1、2及び3が配列番号4のアミノ酸残基24〜38、54〜60及び93〜101によりそれぞれ定義される軽鎖を含む。特定の実施形態において、ヒト化抗体は、フレームワーク(FR)1、2、3及び4が配列番号3のアミノ酸残基1〜30、36〜49、67〜98及び116〜126によりそれぞれ定義される重鎖を含む。特定の実施形態において、ヒト化抗体は、FR1、2、3及び4が配列番号4のアミノ酸残基1〜23、39〜53、61〜92及び102〜111によりそれぞれ定義される軽鎖を含む。
特定の実施形態において、ヒト化抗体は配列番号3のA24G、G26S、Q39L、M48I、V68A、R72V及びT74Kからなる重鎖アミノ酸置換のうちの少なくとも1つを含む。特定の実施形態において、ヒト化抗体は配列番号4のE1D、L46F及びY49Kからなる軽鎖アミノ酸置換のうちの少なくとも1つを含む。
特定の実施形態において、ヒト化抗体は重鎖型1(「HV1’」)を含み、重鎖は配列番号3のアミノ酸置換A24G、G26S、Q39L、M48I、V68A、R72V及びT74Kからなる。特定の実施形態において、ヒト化抗体は重鎖型2(「HV2’」)を含み、重鎖は配列番号3のアミノ酸置換M48I、V68A、R72V及びT74Kからなる。特定の実施形態において、ヒト化抗体は重鎖3型(「HV3’」)を含み、重鎖は配列番号3のアミノ酸置換V68A、R72V及びT74Kからなる。
特定の実施形態において、ヒト化抗体は軽鎖型1(「LV1’」)を含み、軽鎖は配列番号4のアミノ酸置換E1D、L46F及びY49Kからなる。特定の実施形態において、ヒト化抗体は軽鎖型2(「LV2’」)を含み、軽鎖は配列番号4のアミノ酸置換L46F及びY49Kからなる。特定の実施形態において、ヒト化抗体は軽鎖3型(「LV3’」)を含み、軽鎖は配列番号4のアミノ酸置換Y49Kからなる。
特定の実施形態において、ヒト化抗体は、マウス6.8G6抗体に由来するCDRを有する。特定の実施形態において、ヒト化抗体は、αβへの結合においてマウス8G6抗体と競合することができる。
本発明は又、上述の抗体の何れかと同じエピトープに結合するヒト化抗体を包含する。
本発明は又、ヒト化抗体をコードする核酸を含む組換えベクターにより生成される該抗体を包含する。特定の実施形態において、組換えベクターはpKJS195(配列番号5)、pKJS189(配列番号6)及びpKJS196(配列番号7)からなる群より選択されるプラスミドである場合がある。
本発明は又、配列番号1〜7の何れか1つのコード配列を含む、単離された核酸及び配列番号1〜7の何れか1つのアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチドを包含する。
本発明は又、上述のヒト化抗体の何れかの核酸を含む組換えベクターを包含する。
本発明は又、上述のヒト化抗体の何れかの核酸を含む組換えベクターを含む宿主細胞を包含する。
本発明は又、本発明のヒト化抗体1つ以上及び薬学的に許容される担体を含む組成物を包含する。これらの組成物の一部においては、ヒト化抗体は毒素又は放射性核種のような細胞毒性因子(即ち細胞の生存性及び/又は機能を損傷させる薬剤)にコンジュゲートする。組成物は疾患を処置(例えば軽減、緩和、低減、予防、発症延期)するためにαβにより媒介される疾患を有する、又は有する危険性がある被験体(例えばヒトのような哺乳動物)に投与できる。このような疾患の例には、線維症(例えば硬皮症、瘢痕化、肝線維症、肺線維症又は腎線維症);乾癬;癌(本明細書において別途記載、例えば上皮癌;口腔癌、皮膚癌、子宮頚癌、卵巣癌、咽頭癌、喉頭癌、食道癌、肺癌、乳癌、腎臓癌、膵臓癌、前立腺癌又は結腸直腸癌);アルポート症候群;肺、肝臓、腎臓及び他の内臓の急性及び慢性の傷害;及び肺、肝臓、腎臓及び他の内臓の硬化症が含まれるが、これらに限定されない。このような疾患を有する危険性は、遺伝的素因;特定の生活様式、例えば喫煙及びアルコール症;アスベストのような環境汚染物質への曝露;生理学的病態、例えば糖尿病、肝炎、ウィルス感染(例えばC型肝炎ウィルス感染)、自己免疫疾患;及び医療処置、例えば放射線処置に起因するものである場合がある。
本発明は又、ヒト化抗体の発現に適切な条件下で上記宿主細胞の何れかを培養することにより、上記ヒト化抗体の何れかを調製する方法であって、ヒト化抗体鎖が発現され、ヒト化抗体が生成される、方法も包含する。特定の実施形態において、本方法は、ヒト化抗体を単離する手順を更に含む。特定の実施形態において、宿主細胞はCHO細胞である。
ハイブリドーマクローン6.3G9及び6.8G6は、ブダペスト条約に基づきAmerican Type Culture Collection(“ATCC”;P.O. Box 1549, Manassas, VA 20108, USA)に2001年8月16日に寄託されており、それぞれ受入番号ATCC PTA−3649及び−3645を有する。
本発明のヒト化抗体は、完全な抗体、例えば2重鎖及び2軽鎖を含む抗体を指すか、又は完全な抗体の抗原結合フラグメント、例えばFabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)フラグメント又はF(v)フラグメントを指す。本発明のヒト化抗体は、何れかのアイソタイプ及びサブタイプ、例えばIgA(例えばIgAl及びIgA2)、IgG(例えばIgGl、IgG2、IgG3及びIgG4)、IgE、IgD、IgMであってもよく、この場合、免疫グロブリンの軽鎖は、κ型である場合もあれば、λ型である場合もある。
幾つかの実施形態において、本発明のヒト化抗体は、抗体の抗原結合能力に影響することなく抗体のエフェクター機能(例えばFc受容体又は補体因子に結合する抗体の能力)が改変されるように重鎖の特定の位置の1つ以上(例えば2つ、3つ、4つ、5つ又は6つ)において突然変異(例えば欠失、置換又は付加)を含む場合がある。
他の実施形態において、本発明のヒト化抗体は、グリコシル部位が排除されるようにグリコシル化のための部位であるアミノ酸残基において突然変異を含有する場合がある。このようなヒト化抗体は、臨床上有益な低減されたエフェクター機能又は他の望ましくない機能を有するが、抗原結合親和性は保持する。グリコシル化部位の突然変異は又、プロセスの開発(例えばタンパク質発現及び精製)にも有益である。
本発明の特定の実施形態において、ヒト化抗体は、自身のCDRがマウス3G9抗体に由来するアグリコシル軽鎖を含む。特定の実施形態において、ヒト化3G9抗体はCDR1領域が配列番号2のアミノ酸残基26においてアスパラギン(N)からセリン(S)への置換を含有する軽鎖可変ドメインを含有する。マウス3G9CDR1領域はこのアミノ酸部位においてアスパラギンを含有する。しかしながら、3G9抗体のヒト化型においては、5種類の軽鎖型(LV1、LV2、LV3、LV4及びLV5)が全て、この位置において3G9CDR1内にセリンを含有する。ヒト化3G9抗体の全軽鎖型におけるこの部位のアグリコシル化はタンパク質発現及び軽鎖精製の両方のために有益であることが解っている。特定の実施形態において、ヒト化3G9抗体は正常なFc受容体結合のために通常は必要であるグリコシル化部位において突然変異を含有する。特定の実施形態において、ヒト化3G9抗体はアスパラギン(N)からグルタミン(Q)へのアミノ酸置換を含有する。特定の実施形態において、ヒト化3G9抗体はプラスミドpKJS196(配列番号7)を含む組換えベクターにより生成される重鎖3型(HV3)においてNからQへのアミノ酸置換を含有する。特定の実施形態において、NからQへのアミノ酸置換は配列番号7のアミノ酸残基319において起こる。ヒト化3G9抗体の重鎖3型(HV3)におけるコン部位のアグリコシル化はヒト化抗体の抗原結合親和性に影響することなく正常なFc受容体結合に必要なグリコシル化シグナルを除去することがわかっている。特定の実施形態において、ヒト化3G9抗体はプラスミドpKJS189(配列番号6)を含む組換えベクターにより生成される重鎖3型(HV3)及びプラスミドpKJS195(配列番号5)を含む組換えベクターにより生成される軽鎖5型(LV5)を含む。特定の実施形態において、ヒト化3G9抗体はプラスミドpKJS196(配列番号7)を含む組換えベクターにより生成されるアグリコシル重鎖3型(a−HV3)及びプラスミドpKJS195(配列番号5)を含む組換えベクターにより生成される軽鎖5型(LV5)を含む。
更に別の実施形態において、重鎖又は軽鎖は親和性又は力価を増大させる突然変異を含有できる。
本発明のヒト化抗体はαβのそのリガンド、例えばLAP及びフィブロネクチンへの結合により媒介される何れかの臨床的に望ましくない病態又は疾患(本明細書において考察する通り)を処置するのに有用である。これらのヒト化抗体は、より高い親和性又はアビディティ、及びリガンドへの結合のカチオン依存性又は非依存性により、以前より知られているαβ抗体よりも強力であってもよい。マウスモノクローナル抗体とは対照的に、本発明のヒト化抗体は被験体、特にヒトの身体において抗マウス免疫グロブリン抗体生成を誘発せず、むしろ、延長された血半減期を示し、有害作用の頻度が低下しており、このため、αβにより媒介される疾患の処置における薬効においてマウスモノクローナル抗体よりも優秀であることが期待される。
別の態様において、本発明は、αβ結合抗体のようなαβ結合リガンドを使用した癌を診断、処置及び予防する方法に関する。一実施形態において、本発明は、患者における原発腫瘍の二次的な位置への転移を低減又は予防する方法であって、原発腫瘍内の1つ以上の細胞上のインテグリンαβの1つ以上のサブユニットに結合する1つ以上のリガンドの治療有効量を患者に投与する工程を含み、リガンドのインテグリンへの結合は腫瘍細胞の死滅、化学的感受性又は浸潤性の低下をもたらす、方法を提供する。関連する実施形態において、本発明は、患者における転移前腫瘍から転移腫瘍への進行を低減又は予防する方法であって、転移前腫瘍内の1つ以上の細胞上のインテグリンαβの1つ以上のサブユニットに結合する1つ以上のリガンドの治療有効量を患者に投与する工程を含み、リガンドのインテグリンへの結合は原発腫瘍を囲む組織区域内への転移前癌細胞の浸潤の低減又は予防をもたらす、方法を提供する。本発明の特定のこのような実施形態において、腫瘍細胞は癌腫、例えば腺癌である。より特定される実施形態において、癌腫は乳癌腫、子宮内膜癌腫、膵臓癌腫、結腸直腸癌腫、肺癌腫、卵巣癌腫、子宮頚癌腫、前立腺癌腫、肝臓癌腫、食道癌腫、頭頚部癌腫、胃癌腫及び脾臓癌腫である。より特定すれば、癌腫は乳癌(例えば限定しないが上皮内乳癌腫(in situ breast carcinoma)、例えば上皮内腺管癌(DCIS)又は上皮内小葉癌(LCIS))、子宮内膜癌腫、膵臓癌腫、結腸直腸癌腫、子宮頚癌腫又は肺癌腫である。
本発明のこの態様による好適な実施形態は、αβ結合抗体又はそのαβエピトープ結合フラグメントであるαβインテグリン結合リガンドを使用する。特定のこのような実施形態によれば、抗体はモノクローナル抗体(キメラ、霊長類化又はヒト化である場合がある)、例えば全体が参考として本明細書で援用される米国特許出願公開第2005/0255102Al号に開示されているものである。好適なこのような抗体には、1A8、3G9、8G6、2Bl、2B10、2Al、2E5、1G10、7G5、1C5、10D5(ATCC寄託番号HB12382)及びCSβ6と標記されたαβ結合モノクローナル抗体並びにそのフラグメント、キメラ及びハイブリッドが含まれるが、これらに限定されない。本発明のこのような実施形態における使用に特に好適なものは、モノクローナル抗体3G9及び8G6である。又、本発明のこのような実施形態における使用に同様に特に好適なものは、ヒト化モノクローナル抗体、例えばhu3G9(BG00011)と呼ばれるヒト化3G9抗体、及びhu8G6と呼ばれるヒト化8G6抗体である。
本発明のこのような特定の治療実施形態において、αβ結合リガンド(例えばαβ結合抗体)は、細胞又は組織上の1つ以上のαβインテグリンへのαβ結合リガンド−毒性化合物コンジュゲートの結合時に細胞又は組織の死滅をもたらす、又は誘発する1つ以上の細胞毒性化合物又は薬剤とコンジュゲート又は結合させる。本発明の追加の治療実施形態において、αβ結合リガンド(例えばαβ結合抗体)は、1つ以上のこのような細胞毒性化合物又は薬剤と組み合わせて患者に投与される。本発明のこれらの態様に従って好適に使用することができる細胞毒性の化合物又は薬剤には、細胞毒性因子(例えばシスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、メルファラン、ドキソルビシン、メトトレキセート、5−フルオロウラシル、エトポシド、メクロレタミン、シクロホスファミド、ブレオマイシン、カリケアマイシン、マイタンシン、トリコテネ(trichothene)、CC1065、ジフテリアA鎖、緑膿菌外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシン(modeccin)A鎖、α−サルシン、Aleuritesfordiiタンパク質、ジアンシン(dianthin)タンパク質、Phytolaca americanaタンパク質、モモルジカ・チャランティア(momordicacharantia)阻害物質、クルシン(curcin)、クロチン(crotin)、サポナリア・オフィシナリス(sapaonaria officinalis)阻害物質、ゲロニン(gelonin)、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)、トリコテセン(tricothecene)、リボヌクレアーゼ及びデオキシリボヌクレアーゼ)、放射性同位体(例えば211At、131I、125I、90Y、186Re、188Re、153Sm、212Bi、32P、並びにLuの放射性同位体)及びプロドラッグ活性化酵素(例えばアルカリホスファターゼ、アリールスルファターゼ、シトシンデアミナーゼ、プロテアーゼ、D−アラニルカルボキシペプチダーゼ、炭水化物開裂酵素、P−ラクタマーゼ及びペニシリンアミダーゼ)が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、αβインテグリン結合1つ以上のリガンドは、αβインテグリン結合1つ以上のリガンドの有効量及び1つ以上の薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む薬学的組成物の形態で患者に投与する。αβインテグリン結合1つ以上のリガンド、及び/又はαβインテグリン結合1つ以上のリガンドを含む薬学的組成物は、薬学的組成物を投与する何れかの好適な様式、例えば限定しないが経口投与、非経口投与(例えば筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内又は皮下の経路による)、頭蓋内投与、経皮投与、肺内投与及び鼻内投与により患者に投与できる。
別の実施形態において、本発明は、浸潤性癌腫に進行する可能性がより高い、及び/又は、インテグリンαβの1つ以上のサブユニットに結合するリガンドを使用した処置に応答する可能性がより高い、腺癌のような癌腫を診断又は発見する方法を提供する。このような好適な方法は、例えば、(a)腫瘍又はその一部分を含む癌性上皮組織試料、及び非癌性上皮組織試料を患者から得る;(b)インテグリンαβの1つ以上のサブユニットに結合する1つ以上のリガンドに組織試料を接触させる;及び(c)組織試料におけるインテグリンαβの発現レベルを測定することを含む場合があり、非癌性組織試料におけるインテグリンαβの発現レベルに比べて癌性組織試料におけるインテグリンαβの発現レベルが増大していることは、(a)in situ又は非浸潤性の形態から浸潤性の転移性形態に進行する可能性がより癌種;及び/又は(b)αβ結合リガンド、特に、上述のような1つ以上の細胞毒性化合物又は薬剤にコンジュゲートされるかこれと組み合わせて投与されるαβ結合リガンドの結合に依存している上述の処置方法の1つ以上による処置に応答する可能性がより高い癌腫が患者に存在することを示す。このような方法は、種々の癌腫、例えば限定しないが上述の上皮組織が関与するものを診断又は発見するのに好適である。特定のこのような実施形態において、インテグリンαβの1つ以上のサブユニットに結合するリガンドはαβインテグリン結合抗体(上述のようなモノクローナル抗体である場合がある)又はそのαβエピトープ結合フラグメントである。本発明のこのような診断方法における使用に特に好適なものは、検出可能に標識された、即ち、発色原標識(例えばジアミノベンジジン又は4−ヒドロキシアゾベンゼン−2−カルボン酸)、酵素標識(例えばリンゴ酸デヒドロゲナーゼ、スタフィロコッカスヌクレアーゼ、δ−5−ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、α−グリセロールリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ又はアセチルコリンエステラーゼ)、放射性同位体標識(例えばH、111In、125I、131I、32P、35S、14C、51Cr、57To、58Co、59Fe、75Se、152Eu、90Y、67Cu、217Ci、211At、212Pb、47Sc又は109Pd)、非放射性同位体標識(例えば157Gd、55Mn、162Dy、52Tr、56Fe、99mTc又は112In)、蛍光標識(例えば152Eu標識、フルオレセイン標識、イソチオシアネート標識、ローダミン標識、フィコエリスリン標識、フィコシアニン標識、アロフィコシアニン標識、緑色蛍光タンパク質(GFP)標識、o−フタルデヒド標識又はフルオレサミン標識)、毒性標識(例えばジフテリア毒素標識、リシン標識又はコレラ毒素標識)、化学発光標識(例えばルミノール標識、イソルミノール標識、芳香族アクリジニウムエステル標識、イミダゾール標識、アクリジニウム塩標識、シュウ酸エステル標識、ルシフェリン標識、ルシフェラーゼ標識又はエクオリン標識)、X線撮影用標識(例えばバリウム又はセシウム)、スピンラベル(例えば重水素)及び核磁気共鳴造影剤標識(例えばGd、Mn及び鉄)のような少なくとも1つの検出可能な標識を含むか、それにコンジュゲートされるか、又はそれに結合された、αβ結合リガンド(例えば抗体)である。
別の実施形態において、本発明は、患者におけるαβ陽性転移腫瘍細胞を排除する方法であって、1つ以上のαβ陽性転移腫瘍細胞上のインテグリンαβの1つ以上のサブユニットに結合する1つ以上のリガンドの治療有効量を患者に投与する工程を含み、リガンドのインテグリンへの結合は転移腫瘍細胞の死滅、化学的感受性又は浸潤性の低下をもたらす、方法を提供する。このような方法は、転移性の癌腫、例えば限定しないが上述の上皮組織が関与するものから生じるもののような、患者における種々の転移腫瘍細胞を排除するのに好適である。本発明のこの態様による好適な実施形態は、上述のαβ結合抗体又はそのαβエピトープ結合フラグメント、特にモノクローナル抗体又はその変異型又はフラグメントであるαβインテグリン結合リガンドを使用する。本発明の特定のこのような治療実施形態において、αβ結合リガンド(例えばαβ結合抗体)は細胞又は組織上の1つ以上のαβインテグリンへのαβ結合リガンド−毒性化合物コンジュゲートの結合時に細胞又は組織の死滅をもたらす、又はそれを誘発する1つ以上の細胞毒性化合物又は薬剤とコンジュゲート又は結合させる。本発明の別の治療実施形態において、αβ結合リガンド(例えばαβ結合抗体)は1つ以上の細胞毒性化合物又は薬剤と組み合わせて患者に投与する。本発明のこれらの態様に従って好適に使用することができる細胞毒性の化合物又は薬剤には、上述の細胞毒性因子、放射性同位体及びプロドラッグ活性化酵素が含まれるが、これらに限定されない。本発明のこの態様によれば、αβインテグリン結合リガンド又はリガンド及び1つ以上の薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む薬学的組成物は、上述の投与様式に従って患者に投与できる。
別の実施形態において、本発明は、患者の組織又は臓器から腫瘍を外科的に摘出した後に前記患者から残存するαβ陽性腫瘍細胞を排除する方法であって、前記組織又は臓器に残存する1つ以上の腫瘍細胞上のインテグリンαβの1つ以上のサブユニットに結合する1つ以上のリガンドの治療有効量を前記患者に投与する工程を含み、前記リガンドの前記インテグリンへの結合が、前記腫瘍細胞の死滅、化学的感受性又は浸潤性の低下をもたらす、方法を提供する。このような方法は、癌腫、例えば限定しないが上述の上皮組織が関与するものから生じるもののような、種々の患者組織における種々の転移腫瘍細胞を排除するのに好適である。本発明のこの態様による好適な実施形態は、上述のαβ結合抗体又はそのαβエピトープ結合フラグメント、特にモノクローナル抗体又はその変異型又はフラグメントであるαβインテグリン結合リガンドを使用する。本発明の特定のこのような治療実施形態において、αβ結合リガンド(例えばαβ結合抗体)は細胞又は組織上の1つ以上のαβインテグリンへのαβ結合リガンド−毒性化合物コンジュゲートの結合時に細胞又は組織の死滅をもたらす、又はそれを誘発する1つ以上の細胞毒性化合物又は薬剤とコンジュゲート又は結合させる。本発明のこれらの態様に従って好適に使用することができる細胞毒性の化合物又は薬剤には、上述の細胞毒性因子、放射性同位体及びプロドラッグ活性化酵素が含まれるが、これらに限定されない。
本発明のその他の好ましい実施形態は、以下の図面及び本発明の説明及び特許請求の範囲を鑑みれば、当業者に明らかになるであろう。
本明細書で特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者が通常理解するのと同じ意味を有する。本明細書に記載したものと同様又は同等である如何なる方法及び物質も、本発明の実施又は試験で使用することができるが、好ましい方法及び物質を以下に説明する。以下には例示的な方法及び物質を記載するが、本明細書に記載のものと同様又は同等である方法及び材料も、本発明の実施で使用することができる。本明細書に記載する全ての刊行物及びその他の参考文献は全て、全体が参考として援用される。矛盾がある場合は、本明細書が定義を含めて優先される。物質、方法及び実施例は、単に例示するものであり、限定するものとは意図されない。本明細書全体を通して、「含む(comprise)」という用語、或いは「含む(comprises)」又は「含む(comprising)」等の変化形は、記載した整数又は整数群を包含することを意味し、その他何れかの整数又は整数群を除外することを意味しないものとして理解されるであろう。
定義
「約」:何れかの数値を指す場合に本明細書で使用する場合、「約」という用語は、記載した値の±10%の値を意味する(例えば「約50℃」とは両端を含む45℃〜55℃の温度範囲を包含し;同様に「約100mM」とは両端を含む90mM〜110mMの濃度範囲を包含する)。
「拮抗物質」:本明細書で使用される「拮抗物質」という用語は、細胞、組織又は生物中のαβインテグリンの生物学的及び/又は生理学的作用を低減、実質的に低減又は完全に抑制する化合物、分子、部分又は複合体を指す。αβに対するリガンドである場合がある拮抗物質は、種々の方法でこのような作用を発揮する場合があり、これらの方法には、細胞表面上のαβへの結合において他のリガンドと競合する方法;その他のリガンドに結合するインテグリンの能力を低減、実質的に低減又は抑制するようにαβと相互作用する方法;その他のリガンドがもはや結合できない(又は低減又は実質的に低減した親和性及び/又は効率においてのみ結合できる)構造をインテグリンが採るように細胞表面αβに結合するかその構造変化を誘導する方法;その他のリガンドの結合又はこのようなリガンドにより細胞上のαβへの結合時に誘導される生理学的シグナルが低減、実質的に低減又は完全に抑制されるように、細胞、組織又は生物において、生理学的変化(例えば、細胞内シグナル伝達複合体の増大;転写阻害物質の増大;細胞表面αβ発現の低減等)を誘導する方法;及び当業者が熟知するであろう、拮抗物質がその活性を実行するその他の機序、が含まれるが、これらに限定されない。当業者が理解する通り、拮抗物質は、それが拮抗する別のαβ結合部分(例えばαβ結合リガンド)と同様の構造を有する場合もあれば(例えば、拮抗物質は作動物質のムテイン、変異型、フラグメント又は誘導体である場合がある)、完全に無関係の構造を有する場合もある。
「結合」:本明細書で使用される「結合した」という用語は、共有結合、例えば化学共役によるもの、又は非共有結合、例えばイオン性相互作用、疎水性相互作用、水素結合等である場合がある結合又は連結を指す。共有結合は、例えばエステル、エーテル、ホスホエステル、チオエステル、チオエーテル、ウレタン、アミド、アミン、ペプチド、イミド、ヒドラゾン、ヒドラジド、炭素−硫黄結合、炭素−リン結合等であってもよい。「結合」という用語は、「共役」、「コンジュゲート」及び「連結」等のような用語よりも広義であり、これらを包含する。
「コンジュゲート/コンジュゲーション」:本明細書で使用される「コンジュゲート」とは、αβに結合するリガンド、例えばαβ結合抗体又はそれらのフラグメントへのある部分、例えば化学物質又は放射性同位体の共有結合による産物を指す。「コンジュゲーション」とは、前文において定義したコンジュゲートの形成を指す。タンパク質又はポリペプチド(抗体を含む)のような生物学的活性物質への化学物質又は放射性同位体のコンジュゲーションの技術分野における当業者により通常使用される方法は何れも、本発明で使用することができる。
「疾患、障害、病態」:本明細書で使用される「疾患」又は「障害」という用語は、腫瘍、癌、アレルギー、依存症、自己免疫、感染、中毒又は最適な精神又は身体の機能の減損を含めたヒト又は動物の何れかの有害病態を指す。本明細書で使用される「病態」は、疾患及び障害を含むが、生理学的病態も指す。例えば生殖性は生理学的病態であるが、疾患又は障害ではない。従って、生殖性を減少させることによる妊娠の予防に好適な本発明の組成物は、病態(生殖性)の処置として記載されるが、障害又は疾患の処置とは記載されない。その他の病態については、当業者の知る通りである。
「有効量」:本明細書で使用される「有効量」という用語は、所望の生物学的作用を実現するために必要又は十分である所定の化合物、コンジュゲート又は組成物の量を指す。本発明の方法による所定の化合物、コンジュゲート又は組成物の有効量は、この選択された結果を達成する量であると考えられ、このような量は、不必要な実験を必要とすることなく、当該技術分野で既知の及び/又は本明細書に記載の試験を使用して、当業者が日常的に決定することができる。例えば、癌の転移を処置又は予防するのに有効な量は、in vivoにおける腫瘍細胞の基底膜又は内皮層への遊走及び浸潤を予防するのに必要な量であると考えられる。本用語は又、「十分な量」とも同義である。何れかの特定の用途に有効な量は、処置する疾患、障害又は病態、投与する特定の組成物、投与経路、被験体の体格、及び/又は疾患又は病態の重症度のような因子により異なる可能性がある。本発明の特定の化合物、コンジュゲート又は組成物の有効量は、不必要な実験を必要とすることなく、本明細書に示す指針に従って、当業者が経験的に決定することができる。
「1つ」:本開示内容において「1つ」という用語を使用する場合、特に記載がない限り、「少なくとも1つ」又は「1つ以上」を意味する。即ち、「1つ」、「1つ以上」及び「少なくとも1つ」という用語は、本明細書で交換可能に使用できる。
「ペプチド、ポリペプチド、タンパク質」:本明細書で使用される「ポリペプチド」という用語は、単一の「ポリペプチド」並びに複数の「ポリペプチド」を包含することを意図しており、アミド結合(ペプチド結合としても知られている)により線状に連結された単量体(アミノ酸)から構成される分子を指す。「ポリペプチド」という用語は、複数のアミノ酸の何れかの鎖を指し、特定の長さの産物を指すわけではない。従って、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」又は複数のアミノ酸の鎖を指すために使用されるその他何れかの用語は、「ポリペプチド」の定義に包含され、「ポリペプチド」という用語は、これらの用語の何れかの代わりに、又はそれと交換可能に使用される場合がある。「ポリペプチド」という用語は又、ポリペプチドの発現後の修飾、例えば限定しないが、グリコシル化、アセチル化、ホスホリル化、アミド化、既知保護/阻害基による誘導体化、タンパク質分解開裂、又は非天然のアミノ酸による修飾の産物を指すことも考慮する。ポリペプチドは天然の生物学的原料に由来する場合もあれば、組換え技術により生成される場合もあるが、所定の核酸配列から必ずしも翻訳されるわけではない。これは、化学合成を含めた何れかの様式で生成される場合がある。この定義によれば、本発明で使用されるポリペプチドは、約3以上、5以上、10以上、20以上、25以上、50以上、75以上、100以上、200以上、500以上、1000以上、又は2000以上のアミノ酸のサイズのものである場合がある。ポリペプチドは、所定の3次元構造を有する場合があるが、このような構造を必ずしも有するわけではない。所定の3次元構造を有するポリペプチドは、折り畳まれているとも呼ばれ、所定の3次元構造を有さず、むしろより多くの数の異なる構造を採用することができるポリペプチドは、折り畳まれていないと呼ばれる。本明細書で使用される糖タンパク質という用語は、アミノ酸残基、例えばセリン残基又はアスパラギン残基の酸素含有又は窒素含有側鎖を介してタンパク質に連結している少なくとも1つの炭水化物部分に共役されたタンパク質を指す。本発明に従って使用される好ましいポリペプチドには、αβ上の1つ以上のエピトープを認識してそれに結合する抗体(特にモノクローナル抗体)を含むがこれに限定されない、リガンドであるポリペプチド、又は細胞表面上のαβインテグリンに結合するポリペプチドが含まれる。
「単離された」ポリペプチド又はそのフラグメント、変異型又は誘導体とは、その天然の存在域周囲にはないポリペプチドを考慮する。精製の特定のレベルは必要とされない。例えば、単離されたポリペプチドは、そのネイティブ又は天然の環境から取り出してもよい。組換えより生成されるポリペプチド及び宿主細胞に発現されるタンパク質は、何れかの好適な技法により分離、分画又は部分的又は実質的に精製されている天然又は組換えポリペプチドと同様に、本発明において単離されたと考えられる。
同様に本発明のポリペプチドとして含まれるものには、上述のポリペプチドのフラグメント、誘導体、類縁体又は変異型及び何れかのこれらの組み合わせがある。「フラグメント」、「変異型」、「誘導体」及び「類縁体」という用語には、抗αβ抗体又は抗体ポリペプチドを指す場合、対応する天然抗体又はポリペプチドの抗原結合特性の少なくともある程度を保持する何れかのポリペプチド、即ち、αβインテグリンの1つ以上のエピトープに結合する能力を保持するポリペプチドが含まれる。本発明のポリペプチドのフラグメントには、本明細書で別途考察する特定の抗体フラグメントに加えて、タンパク質分解フラグメント、並びに欠失フラグメントが含まれる。本発明に従って有用な抗αβ抗体及び抗体ポリペプチドの変異型には、上述のようなフラグメント、更にはアミノ酸の置換、欠失又は挿入によりアミノ酸配列が改変されているポリペプチドも含まれる。変異型は天然である場合もあれば、非天然である場合もある。非天然の変異型は、当該技術分野で既知の突然変異誘発法を使用して生成される場合がある。変異型のポリペプチドは、保存又は非保存アミノ酸の置換、欠失又は付加を含む場合がある。本発明に従って有用な抗αβ抗体及び抗体ポリペプチドの誘導体には、天然ポリペプチドに存在しない追加の特徴を示すように改変されているポリペプチドがある。例としては融合タンパク質が含まれる。変異型ポリペプチドは又、本明細書において「ポリペプチド類縁体」と呼ばれる場合もある。本明細書で使用される、抗αβ抗体又は抗体ポリペプチドの「誘導体」とは、官能性側鎖基の反応により化学的に誘導された1つ以上の残基を有する目的のポリペプチドを指す。又、「誘導体」として含まれるものには、20の標準アミノ酸の1つ以上の天然のアミノ酸誘導体を含有するペプチドもある。例えば、4−ヒドロキシプロリンはプロリンで置換される場合があり;5−ヒドロキシリジンはリジンで置換される場合があり;3−メチルヒスチジンはヒスチジンで置換される場合があり;ホモセリンはセリンで置換される場合があり;オルニチンはリジンで置換される場合がある。
「実質的に、実質的な」:本明細書で使用されるタンパク質のコンジュゲーションは、コンジュゲートしたタンパク質の受容体への結合の速度及び/又は量が、コンジュゲートしていない対応するサイトカイン、ケモカイン、成長因子又はポリペプチドホルモンの結合の速度及び/又は量の少なくとも約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約100以上である場合に、タンパク質がその受容体に結合する能力を「実質的に」妨害していないとされる。
「処置」:本明細書で使用される「処置」、「処置する」、「処置された」又は「処置すること」という用語は、特に目的が望ましくない生理学的変化又は障害、例えば多発性硬化症の進行を予防又は緩徐化(低減)するような、予防及び/又は施療を指す。有益な又は望ましい臨床的結果には、症状の軽減、疾患の範囲の低減、疾患の安定化された(即ち悪化しない)病態、疾患の進行の遅延又は緩徐化、疾患状態の改善又は緩和、及び緩解(部分的又は完全)が、検知可能か不可能かにかかわらず含まれるが、これらに限定されない。「処置」は又、処置を受けない場合に予測される生存と比較した場合の延長された生存を意味してもよい。処置を要するものには、病態又は障害を既に有するもの、並びに病態又は障害を有し易いもの、又は病態又は障害を予防するものが含まれる。「被験体」又は「個体」又は「動物」又は「患者」又は「哺乳動物」とは、診断、予後又は処置が望ましい何れかの被験体、特に哺乳動物被験体を意味する。哺乳動物被験体には、ヒト及びその他の霊長類、家畜動物、牧場動物、及び動物園、競技又はペット用の動物、例えばイヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ウシ、乳牛等が含まれる。
概要
本発明は、インテグリンαβに対して特異的なヒト化抗体を特徴とする。本明細書には、本発明の抗体を製造する種々の方法を記載する。当該技術分野で既知であるが、本明細書に具体的に記載していない方法も本発明の適用範囲に含まれる。
本発明は又、インテグリンαβは、それが非転移性であるかより転移能が低い腫瘍細胞上で観察される発現レベルと比べて転移性であるかより転移能が高い腫瘍細胞上で増量されて発現されるという点において、腫瘍細胞表面上で差次的に発現されるという発見に少なくとも部分的に基づいている。この差次的発現を分析するために、本発明は、インテグリンαβに結合するリガンド、特に抗体(更に具体的には、本発明により提供されるヒト化抗体)を使用する。他の実施形態において、本発明は、腫瘍細胞の浸潤性及び/又は転移性の能力の測定において、及び進行性又は転移性の癌腫に進行する可能性がより高い特定の腺癌及びin situ癌腫(DCIS及びLCISを含む)のような癌腫の発見において、この差次的発現の同定を使用する方法を提供する。本発明は又、腫瘍を構成している細胞がインテグリンαβに結合する1つ以上のリガンドを使用した処置に応答する可能性がより高い腫瘍を同定する方法を提供する。本発明は又、腫瘍の転移の診断及び処置/予防、及び腫瘍の外科的摘出後の残存する転移腫瘍細胞を排除する方法も提供する。
ヒト化抗体
一実施形態において、本発明により提供される抗体はモノクローナル抗体であり、これは好ましい実施形態においては他の種に由来する同属体抗αβ抗体のヒト化型である。ヒト化抗体は、抗原結合に必要ではないヒト免疫グロブリンの軽鎖又は重鎖のアミノ酸の一部又は全て(例えば定常領域及び可変ドメインのフレームワーク領域)を使用して同属体、非ヒト抗体の軽鎖又は重鎖から対応するアミノ酸を置換する組換えDNA技術により生成された抗体である。一例として、所定の抗原に対するマウス抗体のヒト化型はその重軽鎖の両方において、(1)ヒト抗体の定常領域;(2)ヒト抗体の可変ドメイン由来のフレームワーク領域;及び(3)マウス抗体由来のCDRを有する。必要に応じて、ヒトフレームワーク領域の1つ以上の残基をマウス抗体の対応する位置における残基に変化させることにより、抗原に対するヒト化抗体の結合親和性を維持することができる。この変化を「復帰突然変異」と称する場合がある。ヒト化抗体は一般的に、キメラヒト抗体と比べて、前者がかなり少量の非ヒト成分を含有することから、ヒトにおいて免疫応答を誘発する可能性がより低い。
本発明のヒト化抗体を製造するのに好適な方法は、例えば、Winter EP0239400;Jones, et al., Nature 321:522−525 (1986); Riechmann, et al., Nature 332:323−327 (1988); Verhoeyen, et al., Science 239:1534−1536 (1988); Queen, et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA86:10029 (1989); 米国特許第6,180,370号;及びOrlandi, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA86:3833 (1989)に記載されており、その開示内容は全体が参考として本明細書で援用される。一般的にヒト化抗体へのマウス(又は他の非ヒト)CDRの移植は、以下の通り行う。重軽鎖可変ドメインをコードするcDNAをハイブリドーマから単離する。CDRを含む可変ドメインのDNA配列を配列決定により決定する。CDRをコードするDNAは、部位指向性突然変異誘発によりヒト抗体の重鎖又は軽鎖の可変ドメインコード配列の対応する領域に転移させる。次に所望のアイソタイプ(例えばCの場合はγ1、Cの場合はκ)のヒト定常領域遺伝子セグメントを付加する。ヒト化重軽鎖遺伝子を哺乳動物宿主細胞(例えばCHO又はNSO細胞)中で同時発現することにより可溶性ヒト化抗体を製造する。抗体の大規模製造を容易にするには、このようなヒト化抗体を抗体発現細胞の入ったバイオリアクター中で生成するか、或いは乳汁中に抗体を発現するトランスジェニック哺乳動物(例えばヤギ、ウシ又はヒツジ)を生成する(例えば米国特許第5,827,690号を参照)ことが望ましい場合が多い。
一方、ヒトフレームワークへのCDRの直接転移は、得られる抗体の抗原結合親和性を消失させる。その理由は一部の同属体抗体において、フレームワーク領域内の特定のアミノ酸がCDRと相互作用し、これにより抗体の全体的抗原結合親和性に影響する。このような場合、同属体抗体の抗原結合活性を保持するには、アクセプター抗体のフレームワーク領域において「復帰突然変異」(前掲)を導入することが重要である。
復帰突然変異を起こす一般的な手法は、当該技術分野で既知である。例えば、Queen, et al.(前掲)、Co, et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA88:2869−2873 (1991)及び国際特許第WO90/07861号(Protein Design Labs Inc.)は、2つの重要な段階を含む手法を記載している。まず、ヒト可変フレームワーク領域を、同属体マウス抗体の可変領域フレームワークとの最適タンパク質配列相同性を目標にコンピュータ分析により選択する。次に、マウス可変領域の3次構造をコンピュータでモデル化することによりマウスCDRと相互作用する可能性があるフレームワークアミノ酸残基を可視化し、次にこれらのマウスアミノ酸残基を相同ヒトフレームワーク上に重ね合わせる。
この2段階手法では、ヒト化抗体の設計に関する基準が幾つか存在する。第1の基準は、非ヒトドナー免疫グロブリンに通常は相同である特定のヒト免疫グロブリン由来のフレームワークをヒトアクセプターとして使用すること、或いは多くのヒト抗体由来のコンセンサスフレームワークを使用することである。第2の基準は、ヒトアクセプター残基が通常ではなく、ドナー残基がフレームワークの特定の残基におけるヒト配列に一般的である場合に、アクセプターではなくドナーのアミノ酸を使用することである。第3の基準は、CDRに直ぐ隣接する位置において、アクセプターではなくドナーフレームワークアミノ酸残基を使用することである。
又、例えばTempest, Biotechnology 9:266−271 (1991)に記載のような異なる手法を使用する場合もある。この手法では、それぞれNEWM及びREI重軽鎖に由来する可変領域フレームワークを、マウス残基のラジカルな導入を行うことなくCDRグラフティングに使用する。この手法を使用する利点は、NEWM及びREI可変領域の3次元構造がX線結晶学的分析により判明し、このためCDRと可変領域フレームワーク領域残基の間の特定の相互作用が容易にモデル化できる点である。
本発明者等は、WO03/100033に記載の通りハイブリドーマ6.3G9及び6.8G6から単離したmRNAから、抗体重鎖可変領域cDNA及び軽鎖可変領域cDNAを調製した。これらのハイブリドーマは、αβインテグリンに結合するIgG1クラスのマウスモノクローナル抗体を生成する。キメラヒト抗体発現ベクターは、ヒト抗体重鎖定常領域又はヒト抗体軽鎖定常領域をコードする配列を含有する発現ベクター内にcDNAを挿入することにより構築した。次に、このようなベクターを動物細胞に導入することにより抗αβキメラヒト抗体の生成を行う。生成したキメラ抗体の内、抗αβキメラヒト抗体3G9及び8G6はαβインテグリンと反応し、阻害活性を示すことが見出されている。
上述の手法を使用して、キメラ抗体3G9及び8G6のヒト化型を作成した。3G9抗体については、本明細書に記載する実施例において説明する通り、マウス3G9可変重軽鎖領域のクローニングを行う。次に重軽鎖のマウス3G9可変領域をコードするcDNAを使用して、本明細書に記載する実施例において説明する通り、マウス3G9可変領域をヒトIgG1(重鎖の場合)及びヒトκ(軽鎖の場合)の定常領域に連結したマウス−ヒトキメラの発現のためのベクターを構築する。293−EBNA細胞内へのトランスフェクションの後の重軽鎖の3G9発現ベクターの発現は、キメラ3G9トランスフェクト細胞は重軽鎖を効率的に組み立て、抗体を分泌したことを示していた(実施例2を参照)。更に、キメラ3G9抗体のアグリコシル突然変異型も作成した。3G9の軽鎖の最初のCDRのN連結グリコシル化部位内のアスパラギン(N)からセリン(S)へのアミノ酸置換は、結合親和性を改変することなくタンパク質の発現及び精製を大幅に向上させることが示されている(図1)。
ヒト化3G9抗体を生成するために、ヒト生殖細胞配列との相同性マッチングによりヒトアクセプターフレームワークドメインを選択した。実施例3に記載する通り、軽鎖については、ヒトL6アクセプターフレームワークは最も相同であることが見出され、重鎖についてはヒト3−7アクセプターフレームワークが最も相同であることが見出された。これらの選択されたヒトアクセプターフレームワークを使用しながら、重軽鎖可変ドメインを設計し、それぞれの変異型/型の多くを作成し、発現させた(実施例4)。
本発明は、配列番号1の重鎖可変ドメイン及び配列番号2の軽鎖可変ドメインを含むものとしてヒト化3G9抗体を記載する。
Figure 2009500041
3G9重軽鎖の異なる変異型/型を種々の程度の復帰突然変異で作成することによりどの組み合わせがαβに対して優れた結合親和性及び阻害活性を有する最良のヒト化抗体をもたらすか調べた。生成した5種類の軽鎖型及び3種類の重鎖型のうち、3G9重鎖3型(HV3)と3G9軽鎖5型(LV5)の対が最良のヒト化抗体をもたらした(実施例4)。このヒト化3G95型(H3/L5)抗体は、プラスミドpKJS189(配列番号6)を含む重鎖3型(H3)に関する組換えベクターをプラスミドpKJS195(配列番号5)を含む軽鎖5型(LV5)に対する組換えベクターと組み合わせて発現することにより生成される。
Figure 2009500041
Figure 2009500041
正常なFc受容体結合に必要であることが示されている定常領域のグリコシル化部位が除去されるように重鎖が突然変異しているヒト化3G95型(H3/L5)の別の型も作成した(実施例5)。ヒト化3G9抗体のこのアグリコシル型(a−H3/L5)は、重鎖3型(H3)の定常領域においてアミノ酸残基アスパラギン(N)をグルタミン(Q)と置換することにより生成される。アグリコシルヒト化3G9(a−H3/L5)抗体は、プラスミドpKJS196(配列番号7)を含むアグリコシル重鎖3型(a−H3)に関する組換えベクターをプラスミドpKJS195(配列番号5)を含むアグリコシル軽鎖5型(a−L5)に関する組換えベクターと組み合わせて発現することにより生成される(配列番号5;上記を参照)。
Figure 2009500041
Figure 2009500041
同様の手法をヒト化8G6抗体の設計に使用した(実施例7)。8G6可変軽鎖及び可変重鎖の3つの型が設計されており、第1の型が最大の復帰突然変異を含有し、第3の型が最小の復帰突然変異を含有した(最大「ヒト化」)(実施例5)。
Figure 2009500041
Figure 2009500041
その他の部分
以下に更に詳述する通り、本発明のヒト化モノクローナル抗体は、その他の部分を更に含むことにより、所望の機能を作用させる場合がある。例えば、ヒト化抗体は、抗体がターゲティングする細胞を殺傷するために毒素部分(例えば破傷風トキソイド又はリシン)又は放射性核種(例えば111In又は90Y)を含む場合がある(例えば米国特許第6,307,026号を参照)。ヒト化抗体は、単離又は検出を容易にするための部分(例えばビオチン、蛍光部分、放射性部分、ヒスチジンタグ又は他のペプチドタグ)を含む場合がある。ヒト化抗体は又、その血清半減期を延長することができる部分、例えばポリエチレングリコール(PEG)部分を含む場合もある。
種々の化学療法剤は、ターゲティングヒト化抗体に共役してもよい。好ましくは、結合時に内在化するヒト化抗体が最良であるが、非内在化ヒト化抗体の使用は除外されない。例えば、腫瘍細胞表面に結合し、腫瘍又は腫瘍細胞近接部内に薬剤を放出する抗体−薬剤コンジュゲートの使用、及び細胞内への拡散又は輸送により、使用薬剤に応じて抗腫瘍活性が得られる場合がある。コンジュゲートを調製するために使用できる薬剤の一覧は広範であり、所望の化合物に化学修飾を行うことによりその化合物の反応を本発明のコンジュゲートを調製する目的のためにより好都合なものとする方法は、当業者に既知であろう。例えば、薬剤は、血清中では差次的により安定しているが腫瘍細胞内部では活性剤を放出する「放出性」リンカーを介して共役すると考えられる。数種の放出機序を特定の薬剤に応じて使用できる。これらの放出機序の例には、酸感受性ヒドラゾン、レドックス感受性リンカー、例えばジスルフィド及びタンパク質分解開裂されたペプチドリンカーの使用が含まれる。以下に示すものは、数種の異なるクラスに由来する一部の代表的な薬剤である:
(A)アルキル化剤:これらの薬剤の一部の特定の例には、シクロホスファミド、クロラムブシル、ブスルファン、メルファラン及びニトロソ尿素がある;
(B)代謝拮抗物質及び抗増殖材、例えばアントラサイクリン、ビンカ薬剤、マイトマイシン、ブレオマイシン、ヌクレオシド、プテリジン、エンジイン:例としては、アドリアマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、アミノプテリン、メトトレキセート、マイトマイシンC、アクチノマイシン−D、5−フルオロウラシル、6−メルカプトプリン、シトシンアラビノシド、タキソール、タキサン、シトカラシンB、コルヒチン及びピューロマイシンエトポシド、メルファラン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、カリケアマイシン、マイタンシノイド誘導体及びドリスタチン誘導体がある;
(C)ホルモン及びホルモン拮抗物質、例えばコルチコステロイド、プロゲスチン及びエストロゲン。
プロドラッグは、抗体に連結されている場合「低効力の」化学的形態において存在するが、内在化時には酵素的に分解して高効力の薬剤形態を生じさせる薬剤として定義される。これと同じ応用を内在化しない抗体コンジュゲートに対しても行うことができ、例えば酵素的分解は、腫瘍細胞表面上で起こり、薬剤が隣接する腫瘍環境内に放出され、腫瘍細胞により同化される。この一部の例には、リン酸、スルフェート及びペプチドを含有する薬剤がある。
生物学的活性を有するタンパク質毒素、例えばリシンA鎖、ジフテリア毒素、シガトキシン、破傷風又は毒性酵素の連結は本発明で考慮される抗体−コンジュゲートの別の形態である。このようなコンジュゲートは、化学的コンジュゲート法を使用して、又は抗体−毒性コンストラクトの直接の発現が可能な遺伝子操作法を使用して調製することができ、これらの方法は当業者が容易に知るところである。
本発明のヒト化モノクローナル抗体は又、放射性核種のようなその他の部分を含む場合もある。放射線免疫療法において、癌を処置するために治療用放射性同位体を特異的にターゲティングするためのヒト化αβ抗体の使用は、本発明により考慮される。関連する同位体の一覧には、90Y、125I、131I、123I、111In、105Rh、153Sm、67Cu、67Ga、166Ho、177Lu、186Re及び188Reが含まれる場合があるが、これらに限定されない。同様に考慮されるものには、α放射同位体、例えば211At、212Biがある。同位体連結の方法は変動し、使用する特定の同位体により異なる。何れかの特定の同位体の連結のコンジュゲーション化学の方法は、当業者が熟知し、決定できるであろう。
放射線免疫診断において、ヒト化αβ抗体は、ターゲティングされた癌及び/又は何れかの特定の疾患の罹患臓器/組織に対する画像化及び線量算定を実施する機会を与える。このことは既知腫瘍部位に対して局在化を確認する、並びに治療薬投与の最適投薬を可能にするのに有用である。特に、純粋なγ同位体99MTcに追加して、陽電子放射線同位体(例えば86Y)を治療薬投与時に与えることができる。
上述の放射線免疫療法/放射線免疫診断の適用は非内在化抗体の使用に限定されない。特に異化後にキレートとして細胞内に保持される同位体を使用して放射性同位体をターゲティングするための内在化抗体の効果的な使用の例が存在する。例えば、90Y標識抗体は、MX−DIPA又はCHX−DTPAのような高親和性キレート剤を使用して調製される。
上述の抗体コンジュゲートの何れかには、フラグメントFab、F(ab’)2、scFv、ミニボディー、CH2ドメイン欠失抗体コンストラクト及びFcRn−突然変異型の使用も含まれる。これらのAbフラグメント又は遺伝子的に修飾されたコンストラクトは特定の用途において利点をもたらす未損傷のIgGとは異なる薬物動態、腫瘍浸透性及び腫瘍局在性を有する。例えば、より急速に浄化されるFabは、放射線免疫診断等の診断の用途に有用である場合がある。一方、放射線免疫療法又は薬剤ターゲティングのためには、より長い血清中t1/2を有するターゲティングビヒクルを選択することがより効果的である場合がある。
疾患病態及び動物モデル
本発明のヒト化抗体は、αβ媒介疾患の予防を含む診断及び処置において有用である。例えば、これらのヒト化抗体は、TGF−βの活性化を阻害すること、又はフィブロネクチン、ビトロネクチン及びテナシンのようなその他何れかのリガンドへのαβの結合を阻害することにより、線維症(例えば肺線維症、急性肺傷害、腎線維症、肝線維症、Alport症候群及び硬皮症)及び本明細書に別途記載するその他の疾患及び障害を処置するために使用することができる。特に、本発明のヒト化抗体は、傷害/線維症に関連する肺疾患(例えば、特発性肺線維症、放射線誘導線維症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、硬皮症、ブレオマイシン誘導線維症、慢性喘息、珪肺症、アスベスト誘導線維症、急性肺傷害及び急性呼吸窮迫症(例えば細菌性肺炎誘導性、外傷誘導性、ウィルス性肺炎誘導性、換気装置誘導性、非肺敗血症誘導及び吸引誘導性)が含まれるがこれらに限定されない)を処置するために使用することができる。本発明のヒト化抗体は又、傷害/線維症に関連する慢性腎症(例えば、狼瘡、糖尿病、硬皮症、糸球体腎炎、巣状分節状糸球体硬化症、IgG腎症、高血圧、自家移植片及びAlport疾患が含まれるがこれらに限定されない)を処置するためにも使用することができる。ヒト化抗体は又、腸の線維症、硬皮症、放射線誘導線維症を処置するにも有用である。本発明のヒト化抗体は、肝線維症、例えば限定しないが胆管傷害誘導線維症を処置するためにも使用することができる。本発明のヒト化抗体が処置に有用である可能性があるその他の適応症には、頭頚部線維症、放射線誘導線維症、角膜瘢痕形成、LASIX、角膜移植、柵状織切除術、肥大性瘢痕形成、熱傷誘導線維症、外科的線維症、サルコイドーシス、乾癬及び脊髄傷害/線維症が含まれる。
以下で詳述する通り、線維性の疾患又は病態以外に、本発明のヒト化抗体は癌又は癌の転移(腫瘍の成長及び浸潤を含む)、特に上皮癌を処置するのに有用である。上皮癌のサブセットは、扁平上皮癌腫、例えば頭頚部(口腔、喉頭、咽頭、食道)、乳房、肺、前立腺、子宮頚部、結腸、膵臓、皮膚(基底細胞癌腫)及び卵巣の癌である。新規のαβモノクローナル抗体を使用する本発明者等の試験によれば、αβは、多くの上皮癌において、特に腫瘍のリーディングエッジ上において高度に発現している。新規の抗体は又、αβにより媒介されるその他何れかの疾患、例えば乾癬に対しても使用することができる。
本発明の抗体の薬効は、種々の動物モデルにおいて試験することができ、その一部は後述する非限定的な実施例において説明する。肺線維症のマウスモデルには、ブレオマイシン(Pittet, et al., J. Clin. Invest. 107(12):1537−1544 (2001); 及びMunger, et al.,前掲)及び照射誘導性の肺線維症(Franko, et al., Rad. Res. 140:347−355 (1994))が含まれる。ブレオマイシン投与マウスにおいて、肺の上皮肺胞細胞においてαβの発現が増大する。しかし、β6ノックアウトマウスは、ブレオマイシン誘導傷害及び線維症から保護された。
腎線維症のマウスモデルには、COL4A3−/− マウス(例えばCosgrove, et al., Amer. J. Path. 157:1649−1659 (2000)を参照)、アドリアマイシン誘導傷害マウス(Wang, et al., Kidney International58:1797−1804 (2000); Deman, et al., Nephrol Dial Transplant 16:147−150 (2001)), db/db マウス(Ziyadeh, et al., PNAS USA 97:8015−8020 (2000))、並びに片側性尿管閉塞マウス(Fogo, et al., Lab Investigation 81:189A (2001);及びFogo, et al., Journal of the American Society of Nephrology 12:819A (2001))が含まれる。これらの全モデルにおいて、マウスは、腎不全にまで進行する腎傷害及び線維症を発症している。αβは、COL4A3−/−マウス、アドリアマイシン投与マウス、及び片側性尿管閉塞を発症しているマウスの腎の上行及び下行細管のin situ層において、αβがアップレギュレートされている。αβ発現は又、種々の腎傷害モデルにおいても増大する。
同じく後に詳述する通り、抗αβモノクローナル抗体は、標準的なin vivoの腫瘍成長及び転移のモデルのような動物モデルにおいて、腫瘍の成長、進行及び転移を抑制するその能力についても試験することができる。例えば、Rockwell, et al., J. Natl. Cancer Inst. 49:735 (1972); Guy, et al., Mol. Cell Biol. 12:954 (1992); Wyckoff, et al., Cancer Res. 60:2504 (2000);及びOft, et al., Curr. Biol. 8:1243 (1998)を参照されたい。癌における重要なαβリガンドには、転移に関与するTGF−β(Akhurst, et al., Trends in Cell Biology 11:S44−S51 (2001)を参照)、フィブロネクチン及びビトロネクチンが含まれる。
本発明の処置の薬効は、多くの使用可能な診断ツール、例えば身体測定、血液検査、尿タンパク質測定、クレアチン濃度及びクレアチンクリアランス、肺機能試験、血漿血中尿素態窒素(BUN)濃度、瘢痕形成又は線維性患部の観察及び採点、コラーゲン、平滑筋アクチン及びフィブロネクチンのような細胞外マトリックスの付着、腎機能試験、超音波、磁気共鳴画像化(MRI)及びCTスキャンにより測定される場合がある。
薬学的組成物
本発明は又、本発明の1つ以上のヒト化抗体又はその薬学的に許容される誘導体を場合により何れかの薬学的に許容される担体と共に含む薬学的組成物を提供する。本明細書で使用される「担体」という用語には、既知の許容されるアジュバント及びビヒクルが含まれる。
本発明によれば、薬学的組成物は、滅菌注射用調製品の形態、例えば滅菌注射用水性又は油性懸濁液である場合がある。この懸濁液は、当該技術分野で既知の技法に従い、好適な分散剤、水和剤及び懸濁剤を使用して配合される場合がある。
本発明の薬学的組成物は、所望により経口、局所、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内、骨髄内、動脈内、滑液包内、胸骨内、髄腔内、肝内又は頭蓋内に投与される場合もあれば、単に炎症又は腫瘍成長部位に局所的に投与される場合もある。本発明の薬学的組成物は又、例えばネブライザー、ドライパウダー吸入器又は計量投薬吸入器の使用を介して吸入により投与される場合もある。
所望の作用をもたらすために有効な本発明の抗体の用量及び投薬比率は、処置する疾患の性質、被験体の体格、処置の目標、使用する特定の薬学的組成物、及び担当医師の判断のような種々の因子に応じたものとなる。一日当たり約0.001〜約100mg/kg体重、例えば一日当たり約0.01〜約50mg/kg体重の活性成分化合物の用量レベルが有用である。例えば、本発明の抗体は約0.01mg/kg体重/日〜約20mg/kg体重/日の範囲、例えば約0.1mg/kg体重/日〜約10mg/kg体重/日の範囲の用量において、1〜14日毎の間隔で投与される。別の実施形態において、抗体は、腹腔内投与される場合に約0.3〜1mg/kg体重の用量で投与される。更に別の実施形態において、抗体は、静脈内投与される場合に約5〜12.5mg/kg体重の用量で投与される。一実施形態において、抗体組成物は、少なくとも1mg/kgの抗体の血漿中濃度を得るのに有効な量で投与される。
その他の好適な用量及び投与の計画及び様式は、当業者が熟知しており;更に他のものは、本明細書で以下に更に詳述する。
インテグリンαβに対するリガンドの結合
別の実施形態において、本発明は又、細胞によるインテグリンαβの発現レベルを測定することによって、転移癌細胞を同定する、又は腫瘍内の細胞の転移能力(即ち腫瘍内の細胞が原発腫瘍部位から二次的、又は転移性の部位にin vivo転移する可能性)を予測する方法であって、αβの細胞表面発現の増大が、癌細胞が転移する可能性がより高いことを示す、方法も対象とする。関連する実施形態において、本発明は、腫瘍を除去するための医療介入(例えば腫瘍の外科的切除、又は化学療法又は放射線療法による腫瘍の低減又は剥離)の後にαβを発現する残存腫瘍細胞、特に転移性の腫瘍細胞を排除する方法を対象とする。別の関連する実施形態において、本発明は、浸潤性又は転移性の形態への進行の可能性がより高い癌腫、特に腺癌又はin situ癌腫(例えば乳房の上皮内腺管癌(DCIS)又は上皮内小葉癌(LCIS))の非浸潤性の形態を発見する方法を提供する。特定のこのような実施形態は、癌腫の細胞中、又は癌腫を包囲する筋肉上皮中、このような癌腫に罹患しする患者から得た組織切片中におけるインテグリンαβの発現レベルを測定することを含み、非腫瘍組織試料(理想的には同じ患者の同じ臓器に由来)と比べてインテグリンαβの発現レベルが上昇していることは、癌腫が近い将来の何れかの時点において浸潤性又は転移性の形態の癌に進行する可能性がより高いことを示す。このような実施形態のそれぞれにおいて、本発明は、腫瘍細胞中のαβの増大した発現の同定又は利用に依存しており、その同定は、組織、腫瘍又は腫瘍細胞中のインテグリンαβに結合する1つ以上のリガンドに組織、腫瘍又は腫瘍細胞を接触させることにより達成される。特定の実施形態において、組織、腫瘍又は腫瘍細胞は、癌腫の組織、腫瘍又は腫瘍細胞、例えば腺癌のような癌腫に由来するものである。より特定の実施形態において、癌腫は、乳癌腫、子宮内膜癌腫、膵臓癌腫、結腸直腸癌腫、肺癌腫、卵巣癌腫、子宮頚癌腫、前立腺癌腫、肝臓癌腫、食道癌腫、頭頚部癌腫、胃癌腫又は脾臓癌腫である。より具体的には、癌腫は乳癌腫(上皮内乳癌腫、例えば上皮内腺管癌(DCIS)及び上皮内小葉癌(LCIS)を含むがこれらに限定されない)、子宮内膜癌腫、膵臓癌腫、結腸直腸癌腫、子宮頸癌腫又は肺癌腫である。
本発明の特定の実施形態において、αβに結合するリガンドは、αβの拮抗物質である。このような拮抗物質には、αβに特異的に結合する抗体;βに特異的に結合する抗体;αに結合する抗体;αβに対するリガンドに結合する抗体;αβに対するリガンド;アンチセンス核酸;及びこのようなリガンドのペプチド、非ペプチド及びペプチドミメティック類縁体が含まれるが、これらに限定されない。
本発明の特定のこのような実施形態において、インテグリンαβに結合するリガンドは、インテグリンαβに結合する抗体、又はそのインテグリンαβ結合フラグメント、変異型又は誘導体である。このような抗体は、インテグリンの一方のサブユニット(例えばαサブユニット上に位置するエピトープに、又はβサブユニット上に位置するエピトープに結合する抗体)に結合する場合もあれば、両方のサブユニット(α及びβの両方を架橋するインテグリンへテロ2量体の領域に位置するエピトープに結合する抗体)に結合する場合もある。天然の抗体のような完全サイズの抗体に特に言及しない限り、「αβ抗体」という用語は、完全サイズの抗体、並びにこのような抗体のαβ結合フラグメント、変異型、類縁体又は誘導体、例えば抗体分子と同様の様式で抗原に結合する天然の抗体又は免疫グロブリン分子又は操作された抗体の分子又はフラグメントを包含する。抗体は合成、モノクローナル又はポリクローナル抗体であってもよければ、当該技術分野で周知の技法により作成してもよい。治療用途において、抗体に対する患者の免疫応答を最小限にするには、ヒトの定常及び可変領域を有する「ヒト」モノクローナル抗体が好ましい場合が多い。このような抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子を含有するトランスジェニック動物を免疫化することにより作成することができる(例えば、Jakobovits, et al., Ann. N.Y. Acad. Sci. 764:525−535 (1995)を参照)。合成及び半合成の抗体との関連において、このような用語は、抗体フラグメント、アイソタイプスイッチ抗体、ヒト化抗体(例えばマウス−ヒト、ヒト−マウス等)、ハイブリッド、複数の特異性を有する抗体、完全合成抗体様分子等を網羅することが意図されるが、これらに限定されない。
「抗体」及び「免疫グロブリン」という用語は、本明細書で交換可能に使用される。抗体又は免疫グロブリンは重鎖の少なくとも可変ドメインを含み、通常は少なくとも重鎖及び軽鎖の可変ドメインを含む。脊椎動物系統における基本的な免疫グロブリンの構造は比較的よく理解されている。例えばHarlow, et al., Antibodies:A Laboratory Manual, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd ed. 1988)を参照されたい。当業者が理解する通り、「抗体」及び「免疫グロブリン」という用語は、生化学的に区別することができる種々の広範なクラスのポリペプチドを含む。重鎖はガンマ、ミュー、アルファ、デルタ又はイプシロン(γ、μ、α、δ又はε)として分類され、それらには一部のサブクラス(例えばγ1〜γ4)が存在することを理解するであろう。抗体の「クラス」をそれぞれIgG、IgM、IgA、IgG又はIgEとして決定するのは、この鎖の性質である。免疫グロブリンのサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG、IgG、IgG、IgG、IgA等は、機能的な特化を付与するために、適切に特徴付けられ、周知となっている。これらのクラス及びアイソタイプそれぞれの修飾型は、本開示内容を鑑みれば当業者が容易に知りえるものであり、従って本発明の適用範囲に含まれる。
本発明における使用に好適である、αβに結合する抗体、又はそれらのαβ結合フラグメント、変異型又は誘導体には、ポリクローナル、モノクローナル、多重特異性、ヒト、ヒト化、霊長類化又はキメラ抗体、1本鎖抗体、エピトープ結合フラグメント、例えばFab、Fab’及びF(ab’)、Fd、Fvs、1本鎖Fvs(scFv)、1本鎖抗体、ジスルフィド結合Fvs(sdFv)、V又はVドメインの何れかを含むフラグメント、Fab発現ライブラリにより生成されるフラグメント、及び抗特発性(抗Id)抗体(例えば本明細書に開示される抗αβ抗体の抗Id抗体を含む)が含まれるが、これらに限定されない。ScFv分子は、当該技術分野で既知であり、例えば米国特許第5,892,019号に記載されている。本発明の免疫グロブリン又は抗体の分子は、免疫グロブリン分子の何れかの型(例えばIgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、クラス(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)又はサブクラスのものであってもよい。
1本鎖抗体を含めた抗体フラグメントは、可変領域を単独で、又は以下のもの、即ちヒンジ領域、C1、C2及びC3ドメインの全体又は一部分と組み合わせて含む場合がある。又、本発明には、ヒンジ領域、C1、C2及びC3ドメインと可変領域の何れかの組み合わせも含む抗原結合フラグメントも含まれる。本明細書に開示した診断及び処置の方法において使用するための抗体又はその免疫特異的フラグメントは、トリ及び哺乳動物を含めた何れかの動物起源由来のものである場合がある。好ましくは、抗体は、ヒト、マウス、ラット、ロバ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ラマ、ウマ、ウシ又はニワトリの抗体である。より好ましくは、抗体は、ヒト、ヒト化又は霊長類化の抗体、又はキメラ抗体、特にモノクローナル抗体である。本明細書で使用される「ヒト」抗体には、後述する通り、及び例えばKucherlapati等の米国特許第5,939,598号に記載の通り、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体を包含し、ヒト免疫グロブリンライブラリから、又は1つ以上のヒト免疫グロブリンに関しトランスジェニックであり、内因性免疫グロブリンを発現しない動物から単離した抗体が含まれる。本明細書で使用される「キメラ抗体」という用語は、免疫反応性の領域又は部位が第1の種から得られるかこれに由来し、定常領域(未損傷であるか、本明細書に従って部分であるか、修飾される場合がある)が第2の種から得られる何れかの抗体を意味するものとする。好ましい実施形態において、標的結合領域又は部位は、非ヒト原料(例えばマウス又は霊長類)に由来し、定常領域はヒトである。
本発明に従った使用に特に好ましい抗体は、抗αβモノクローナル抗体、例えばWeinreb, et al., J. Biol. Chem. 279(17):17875−17877 (2004)(開示内容は全体が参考として本明細書で援用される)に開示されているもの、例えば前記参考文献に開示されるモノクローナル抗体6.8G6(「8G6」)及び6.3G9(「3G9」)である。αβに結合し、そのため本発明による使用に好適な別の抗体には、インテグリンαβのβサブユニットに結合する(このため「抗β抗体」と見なされる)抗体(又はそのフラグメント、変異型又は誘導体)、例えば全体が参考として本明細書で援用されるWeinacker, et al., J. Cell Biol. 269:1−9 (1994)及び全体が参考として本明細書で援用される米国特許第6,692,741B2号の特にコラム2〜3及び7〜8に開示されているもの、例えば10D5と標記されるモノクローナル抗体(ATCC寄託番号HB12382,1997年8月6日寄託、American type Culture Collection, P.O. Box 1549, Manassas, VA20108)(米国特許第6,692,741号のコラム3,7−13行及びコラム7−8を参照)及びCSβ6(米国特許第6,692,741号、コラム7−8を参照)が含まれる。本発明のこの態様による好適な実施形態は、αβ結合抗体又はそのαβエピトープ結合フラグメントであるαβインテグリン結合リガンドを使用する。本発明のこの態様に従って使用するのに好適な更なる抗体には、開示内容全体が参考として本明細書で援用される米国特許出願公開第2005/0255102A1号に開示されるαβ結合モノクローナル抗体、例えば、3G9、8G6、1A8、2Bl、2B10、2Al、2E5、IG1O、7G5、1C5、並びにそれらのフラグメント、キメラ及びハイブリッドが含まれるが、これらに限定されない。本発明に従った使用に特に好適な抗体は、モノクローナル抗体2B1、3G9及び8G6である。
幾つかの実施形態において、抗体はハイブリドーマ6.1A8、6.3G9、6.8G6、6.2B1、6.2B10、6.2A1、6.2E5、7.1G10、7.7G5又は7.1C5により生成される抗体と同じ重軽鎖ポリペプチド配列を含む。本発明に従った使用に特に好適な抗体は、ハイブリドーマ6.2B1により生成される2B1抗体(ATCC寄託番号PTA−3646、2001年8月16日寄託、American Type Culture Collection, P.O. Box 1549, Manassas, VA 20108)、ハイブリドーマ6.8G6により生成される8G6抗体(ATCC寄託番号PTA−3645、2001年8月16日寄託、American Type Culture Collection, P.O. Box 1549, Manassas, VA 20108)及びハイブリドーマ6.3G9により生成される3G9抗体(ATCC寄託番号PTA−3649、2001年8月16日寄託、American Type Culture Collection, P.O. Box 1549, Manassas, VA 20108)(全体が参考として本明細書で援用される米国特許出願公開第2005/0255102Al号の、特に1ページのパラグラフ0008;2ページのパラグラフ0032及び0036;及び6〜14ページの実施例を参照)、及び10D5と標記される抗体(この抗体を分泌するハイブリドーマは1977年8月6日にATCC寄託番号HB12382として寄託、American Type Culture Collection, P.O. Box 1549, Manassas, VA 20108)(全体が参考として本明細書で援用される米国特許第6,692,741号(特にコラム3、7〜13行、及びコラム7〜8)を参照)と同じ重軽鎖ポリペプチド配列を含むモノクローナル抗体である。
幾つかの実施形態において、抗体は、自身の相補性決定領域(CDR)1、2及び3が以下の表1に示す配列より本質的になる(即ち一部の保存された変異を除く)重鎖を含む。特定の実施形態において、抗体は、CDR1が本質的に配列番号101〜105の何れか1つからなり;CDR2が本質的に配列番号106〜111の何れか1つからなり;CDR3が本質的に配列番号112〜117の何れか1つからなる重鎖;及び/又はCDR1、2及び3が本質的にそれぞれ配列番号118〜123、124〜127及び128〜133の何れか1つからなる軽鎖を含む。
Figure 2009500041
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他の関連する実施形態において、本発明により使用されるモノクローナル抗体は、キメラ抗体、即ち、1つの種(例えばマウス、ラット又はウサギ)由来の同属体抗体が、ヒンジ及び/又は重鎖及び/又は軽鎖の定常領域の部分又は全てが他の種(例えばヒト)に由来する抗体の対応する成分で置き換えられるように、組換えDNA技術により改変されているものである。一般的に、操作された抗体の可変ドメインは、同属体抗体の可変ドメインに対して同一のままであるか、又は実質的に同一である。このような操作された抗体は、キメラ抗体と呼ばれ、ヒンジ及び/又は定常領域の由来元の種(例えばヒト)の個体に投与した場合に、同属体抗体よりも抗原性が低い。キメラ抗体を製造する方法は、当該技術分野で周知である。
他の関連する実施形態において、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、完全にヒト抗体である。このような完全ヒトモノクローナル抗体を作成する方法は、当該技術分野で周知である(例えば、参考として本明細書で援用される米国特許出願第2005/0255102A1号の4ページ、パラグラフ0069〜0070を参照)。
他の関連する実施形態において、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、その他の種に由来する同属体抗αβ抗体のヒト化型である。ヒト化抗体は、抗原結合に必要ではないヒト免疫グロブリンの軽鎖又は重鎖のアミノ酸の一部又は全て(例えば、定常領域及び可変ドメインのフレームワーク領域)を使用して同属体、非ヒト抗体の軽鎖又は重鎖から対応するアミノ酸を置換する、組換えDNA技術により生成された抗体である。一例として、所定の抗原に対するマウス抗体のヒト化型は、その重軽鎖の両方において、(a)ヒト抗体の定常領域;(b)ヒト抗体の可変ドメイン由来のフレームワーク領域;及び(c)マウス抗体由来のCDRを有する。必要に応じて、ヒトフレームワーク領域の残基1つ以上を、マウス抗体の対応する位置における残基に変化させることにより、抗原に対するヒト化抗体の結合親和性を維持することができる。この変化は「復帰突然変異」と呼ばれる場合がある。一般的にヒト化抗体は、キメラヒト抗体と比べると、前者の方がかなり少ない非ヒト成分を含有することから、ヒトにおいて免疫応答を誘発する可能性がより低い。このようなヒト化モノクローナル抗体を生成する方法は、当該技術分野で周知である(例えば、参考として本明細書で援用される米国特許出願第2005/0255102A1号の4〜5ページ、パラグラフ0072〜0077を参照)。
このような抗体に加えて、ヒト化抗体は、異なる抗体の重鎖及び/又は軽鎖の対応するCDRに由来する重鎖及び/又は軽鎖のCDRを1つ以上含む。このような抗体の1つの好適な非限定的例には、寄託した3G9抗体の軽鎖CDR1の配列(配列番号21)の代わりに2B1抗体に由来する軽鎖CDR1の配列(配列番号20)を有する軽鎖CDR1含むヒト化3G9抗体がある。配列番号20に示す軽鎖CDR1配列を有するこのようなヒト化3G9抗体は、本明細書においてhu3G9(又はBG00011)と呼ぶ。このような抗体の別の好適な非限定的例には、寄託した8G6抗体の軽鎖CDR1の配列(配列番号18)の代わりに2B1抗体に由来する軽鎖CDR1の配列(配列番号20)を有する軽鎖CDR1を含むヒト化8G6抗体がある。配列番号20に示す軽鎖CDR1配列を有するこのようなヒト化8G6抗体は、本明細書においてhu8G9と呼ぶ。重鎖及び/又は軽鎖のCDRの1つ以上が別の抗体由来の1つ以上の対応する重鎖及び/又は軽鎖CDRにより置き換えられており、且つ本発明による使用に好適である、このような誘導体抗体の更なる例は、表1に記載する配列及び本明細書に示す指針を鑑みれば、当業者に容易に明らかになるであろう。このようなヒト化抗体、例えばこのような誘導体ヒト化抗体を調製するのに好適な方法は、当業者が熟知しており、例えば、開示内容全体が参考として本明細書で援用される米国特許出願第2005/0255102A1号に記載されている。
αβ結合リガンドのコンジュゲート及びその他の修飾
特定の実施形態において、αβに結合するリガンド、例えば抗体は、未コンジュゲートの形態で使用することができる。他の実施形態において、αβに結合するリガンド、例えば抗体は、例えば検出可能な標識、薬剤、プロドラッグ又は同位体にコンジュゲートすることができる。
以下に更に詳述する本発明の特定の方法、例えば、腫瘍細胞の転移能の指標として、又は組織内のin situ癌腫(例えばDCIS又はLCIS)を同定する手段として、細胞又は組織におけるαβの発現を検出する方法では、αβ結合リガンド(例えば抗体)が、1つ以上の検出可能な標識にコンジュゲートされる。このような用途において、αβ結合リガンド、例えばαβ結合抗体は、発色原、酵素、放射性同位体、同位体、蛍光、毒性、化学発光、核磁気共鳴造影剤又はその他の標識の共有結合又は非共有結合による連結により、検出可能に標識される場合がある。
好適な発色原標識の例には、ジアミノベンジジン及び4−ヒドロキシアゾベンゼン−2−カルボン酸が含まれる。
好適な酵素標識の例には、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、スタフィロコッカスヌクレアーゼ、δ−5−ステロイドイソメラーゼ、コウボアルコールデヒドロゲナーゼ、α−グリセロールリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ及びアセチルコリンエステラーゼが含まれる。
好適な放射性同位体標識の例には、H、111In、1251、1311、32P、35S、14C、51Cr、57To、58Co、59Fe、75Se、152Eu、90Y、67Cu、217Ci、211At、212Pb、47Sc、109Pd等が含まれる。111Inは、in vivo画像化を使用する場合には、肝臓による125I又は131I標識αβ結合リガンドの脱ハロゲン化の問題を回避できるため、好ましい同位体となる。更に、この放射性核種は、画像化により望ましいガンマ放射エネルギーを有する(Perkins, et al., Eur. J. Nucl. Med. 10:296−301 (1985);Carasquillo, et al., J. Nucl. Med. 25:281−287 (1987))。例えば、1−(P−イソチオシアナトベンジル)−DPTAでモノクローナル抗体にカップリングした111Inは、非腫瘍製の組織、特に肝臓における取り込みがわずかであることが示されており、このため、腫瘍局在化の特異性を増強する(Esteban, et al., J. Nucl. Med. 28:861−870 (1987))。
好適な非放射性同位体標識の例には、157Gd、55Mn、162Dy、52Tr及び56Feが含まれる。
好適な蛍光標識の例には、152Eu標識、フルオレセイン標識、イソチオシアネート標識、ローダミン標識、フォコエリスリン標識、フィコシアニン標識、アロフィコシアニン標識、緑色蛍光タンパク質(GFP)標識、o−フタルデヒド標識及びフルオレサミン標識が含まれる。
好適な毒素標識の例には、ジフテリア毒素、リシン及びコレラ毒素が含まれる。
ケミルミネセント標識の例には、ルミノール標識、イソルミノール標識、芳香族アクリジニウムエステル標識、イミダゾール標識、アクリジニウム塩標識、シュウ酸エステル標識、ルシフェリン標識、ルシフェラーゼ標識及びエクオリン標識が含まれる。
核磁気共鳴造影剤の例には、Gd、Mn及び鉄が含まれる。
上述の標識をαβ結合リガンド、例えばαβ結合抗体に結合させる一般的な技法は、Kennedy, et al., Clin. Chim. Acta 70:1−31 (1976);及びSchurs, et al., Clin. Chim. Acta 81:1−40 (1977)に記載されている。後者で言及されているカップリング法は、グルタルアルデヒド法、過ヨウ素酸エステル法、ジマレイミド法、m−マレイミドベンジル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル法であり、これらの方法は全て参考として本明細書で援用される。
手術後の残存腫瘍剥離又は転移の予防のような本発明の特定の治療法で使用するために、αβ結合リガンドは、1つ以上の薬剤、プロドラッグ又は同位体とコンジュゲートするできる。好ましいこのようなコンジュゲートは、1つ以上の細胞毒性剤にコンジュゲートしたαβに結合する1つ以上のリガンド、例えば1つ以上の抗体又はそれらのフラグメント、誘導体又は変異体を含み;このようなコンジュゲートは、本発明により提供される腫瘍転移の処置及び予防の方法において有用である。本発明の特定のこのような実施形態によれば、αβ結合リガンド、例えば抗体は、細胞毒性剤にコンジュゲートされる。αβ結合リガンド−細胞毒性剤コンジュゲートの作成において有用な細胞毒性剤、例えば化学療法剤は、当該技術分野で周知であり、これには、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、メルファラン、ドキソルビシン、メトトレキセート、5−フルオロウラシル、エトポシド、メクロレタミン、シクロホスファミド、及びブレオマイシンが含まれるが、これらに限定されない。本発明のこの態様に従って使用するのに好適なその他の化学療法剤は、当該技術分野で周知であり、当業者が熟知するであろう。
1つ以上のαβ結合リガンド、例えば1つ以上のαβ結合抗体、及び小分子毒素、例えばカリケアマイシン、マイタンシノイド(米国特許第5,208,020号)、トリコテン及びCC1065のコンジュゲートの使用も本発明において考慮される。本発明の一実施形態において、αβ結合リガンドは、1つ以上のマイタンシノイド分子(例えば、αβリガンド当たり約1〜約10マイタンシノイド分子)にコンジュゲートされる。マイタンシノイドは、例えば、May−SS−Meに変換される場合があり、これはMay−SH3に還元され、修飾されたαβ結合リガンドと反応させる(Chari, et al., Cancer Research 52:127−131 (1992)))ことにより、マイタンシノイド−αβ結合リガンドコンジュゲートを作成する場合がある。
或いは、αβ結合リガンドは、1つ以上のカリケアマイシン分子にコンジュゲートすることができる。抗生物質のカリケアマイシンファミリーは、2本鎖DNA切断をピコモル未満の濃度で誘発することができる。使用される場合があるカリケアマイシンの構造類縁体には、γ 、a 、α 、N−アセチル−γ 、PSAG及びΦ が含まれるが、これらに限定されない(Hinman, et al., Cancer Research 53:3336−3342 (1993);及びLode, et al., Cancer Research 58:2925−2928 (1998))。
1つ以上のαβ結合リガンド、例えば1つ以上のαβ結合抗体とのコンジュゲートの生成に使用できる酵素活性を有する毒素及びそれらのフラグメントには、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性フラグメント、エキソトキシンA鎖(緑膿菌由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ−サルシン、Aleuritesfordiiタンパク質、ジアンシンタンパク質、Phytolac americanaタンパク質(PAPI、PAPII及びPAP−S)、モモルジカ・チャランティア阻害物質、クルシン、クロチン、サポナリア・オフィシナリス阻害物質、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン及びトリコテセンが含まれる。例えば、全体が参考として本明細書で援用される1993年10月28日に英語で公開された国際特許第WO93/21232号を参照されたい。マイタンシノイドは又、1つ以上のαβ結合リガンド、例えば1つ以上のαβ結合抗体とコンジュゲートされる場合もある。
本発明は更に、核分解活性を有する化合物(例えば、デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)のようなリボヌクレアーゼ又はDNAエンドヌクレアーゼ)にコンジュゲートされるαβ結合リガンドも考慮する。
種々の放射性同位体も又、本発明の治療方法において使用するための放射性コンジュゲートαβ遺伝子都合リガンドの生成に利用可能である。例としては、211At、131I、125I、90Y、186Re、188Re、153Sm、212Bi、32P及びLuの放射性同位体が含まれる。
αβ結合リガンドと細胞毒性剤のコンジュゲートは、種々の2官能性のタンパク質カップリング剤、例えばN−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル−4−(N−マレイイミドメチル)シクロヘキサン−I−カルボキシレート、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば塩酸ジメチルアジピミデート)、活性エステル(例えばジスクシンイミジルズベレート)、アルデヒド(例えばグルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えばビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス−ジアゾニウム誘導体(例えばビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えばトリエン2,6−ジイソシアネート)及びビス活性フッ素化合物(例えばl,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)を使用して作成される場合がある。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta, et al., Science 238:1098 (1987)に記載の通り調製することができる。14炭素標識1−イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX−DPTA)は、αβ結合リガンドに放射性ヌクレオチドをコンジュゲートするための例示的なキレート剤である。国際特許第WO 94/11026号を参照されたい。リンカーは、細胞内における細胞毒性剤の放出を促進する「開裂可能なリンカー」である場合がある。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチド感受性リンカー、ジメチルリンカー、又はジスルフィド含有リンカー(Chari, et al., Cancer Research 52:127−131 (1992))が使用される場合がある。
或いは、αβ結合リガンド及び細胞毒性剤を含む融合タンパク質は、例えば組換え法又はペプチド合成により作成される場合がある。
更に別の実施形態において、αβ結合リガンドは、「プレターゲティング」で利用する「受容体」(例えばストレプトアビジン)にコンジュゲートされる場合があり、この場合、αβ結合リガンド−受容体コンジュゲートは、患者に投与された後、浄化剤を使用して循環系から未結合のコンジュゲートを除去され、次いで細胞毒性剤(例えば放射性ヌクレオチド)にコンジュゲートされた「リガンド」(例えばアビジン)が投与される。
本発明のαβ結合リガンドは又、プロドラッグ(例えばペプチジル化学療法剤;国際特許第WO 81/01145号を参照)を活性剤に変換するプロドラッグ活性化酵素とコンジュゲートされる場合もある。例えば、国際特許第WO 88/07378号及び米国特許第4,975,278号を参照されたい。このようなコンジュゲートの酵素成分には、プロドラッグに作用してこれをより活性を有する細胞毒性形態に変換することができる何れかの酵素が含まれる。
本発明の方法において有用な酵素には、ホスフェート含有プロドラッグを遊離薬剤に変換するのに有用なアルカリホスファターゼ;スルフェート含有プロドラッグを遊離薬剤に変換するのに有用なアリールスルファターゼ;非毒性の5−フルオロシトシンを抗癌剤5−フルオロウラシルに変換するのに有用なシトシンデアミナーゼ;ペプチド含有プロドラッグを遊離薬剤に変換するのに有用なペプチダーゼ、例えばセラチアプロテアーゼ、テルモリシン、スブチリシン、カルボキシペプチダーゼ及びカテプシン(例えばカテプシンB及びL);D−アミノ酸置換基を含有するプロドラッグを変換するのに有用なD−アラニルカルボキシペプチアーゼ;グリコシル化されたプロドラッグを遊離薬剤に変換するのに有用な炭水化物分解酵素、例えばO−ガラクトシダーゼ及びノイラミニダーゼ;P−ラクタムで誘導体化された薬剤を遊離薬剤に変換するのに有用なP−ラクタマーゼ;及び自身のアミン窒素においてフェノキシアセチル又はフェニルアセチル基それぞれで誘導体化されている薬剤を遊離薬剤に変換するのに有用なペニシリンアミダーゼ、例えばペニシリンVアミダーゼ又はペニシリンGアミダーゼが含まれる。
酵素は、ヘテロ二官能性交差結合試薬の使用といった当該技術分野で周知の技法によりαβ結合リガンドに共有結合することができる。或いは、酵素の少なくとも機能的活性を有する部分に連結された本発明のαβ結合リガンドの少なくとも抗原結合領域を含む融合タンパク質を、当該技術分野で周知の組換えDNA法を使用して構築することができる(例えば、Neuberger, et al., Nature 312:604−608 (1984)を参照)。
疾患の診断及び予後
今回、転移性の特定の腫瘍に由来する細胞が、低転移性又は非転移性の細胞に比べて、インテグリンαβの有意に増大したレベルを発現することを見出した。更に、本発明者等は、in situ癌腫の特定の形態、例えば乳房の上皮内腺管癌(DCIS)又は上皮内小葉癌(LCIS))において、腫瘍を包囲する筋肉上皮が、癌腫の腫瘍細胞と比べて、及び正常な乳房組織と比べて、有意に増大したレベルのインテグリンαβを発現することも発見した。従って、本発明は、腺癌のような癌腫由来の腫瘍を含めた腫瘍細胞の転移能を診断するのに有用な方法を提供する。より特定の実施形態において、癌腫は、乳癌腫、子宮内膜癌腫、膵臓癌腫、結腸直腸癌腫、肺癌腫、卵巣癌腫、子宮頚癌腫、前立腺癌腫、肝臓癌腫、食道癌腫、頭部頚部癌腫、胃癌腫及び脾臓癌腫である。より具体的には、癌腫は、乳癌腫(例えば上皮内乳癌腫、例えば上皮内腺管癌(DCIS)又は上皮内小葉癌(LCIS))、子宮内膜癌腫、膵臓癌腫、結腸直腸癌腫、子宮頚癌腫又は肺癌腫である。
本発明のこの特徴による方法は、腫瘍細胞中又は組織試料中の筋肉上皮中のαβの発現レベルを試験する、及びこれらの発現レベルを標準的なαβ発現レベル(例えば正常細胞、非転移細胞又は正常組織、好まくは同じ動物、例えばヒト患者から得られたもの)と比較することを伴い、腫瘍又はその細胞のけるαβの発現の増大は、その腫瘍又はその細胞の高値の浸潤性及び/又は転移性の能力を示すか、或いは腫瘍を包囲する筋肉上皮又は組織切片中の上皮細胞クラスターにおけるαβの発現の増大は、浸潤性になり、潜在的に転移を形成する可能性がより高いin situ癌腫、例えばDCIS又はLCISの存在を示す。
癌の診断が従来の方法により既に行われている場合、本発明は予後のインジケーターとして有用であり、これにより増大したレベルのαβ発現を呈している腫瘍細胞は、浸潤性となって原発腫瘍部位から遠位の転移部位まで転移する可能性がより高いと予測されることになる。同様に、in situ癌腫の疑惑の診断が従来の方法(例えば乳房の石灰化した結節のマンモグラフィーによる検出)により行われている場合、本発明は確認のためのインジケーターとして有用であり、これにより筋肉上皮におけるαβの発現の増大したレベルを呈している石灰化の領域に由来する生検組織は、浸潤性となりαβmAb投与に応答する可能性があるin situ癌腫、例えばDCIS又はLCISの存在を示している。このような予後及び診断の転帰に基づいて、次に、治療担当医師は治療の計画を適宜調節し、これにより転移前又は前癌病態の早期の検出、そしてその結果としての、患者にとってより望ましい臨床転帰を可能とすることができる。
「αβの発現レベルを試験する」とは、第1の生物学的試料(例えば腫瘍試料、組織生検又は吸引物等)中のαβのレベルを、直接的(例えば試料中のαβの絶対量を測定又は推定することによる)に、又は相対的(例えば、第1の生物学的試料中のαβの発現レベルを第2の生物学的試料中のものと比較することによる)に、定性的又は定量的に測定又は推定することを考慮する。好ましくは、第1の生物学的試料中のαβのレベルを測定又は推定し、癌又は前癌性の患部を有さない個体から得た第2の生物学的試料から得た標準値と比較する。当該分野で知られる通り、標準αβ発現レベルが所定の非癌性組織に関して判明すれば、それを比較のための標準値として反復して使用できる。
「生物学的試料」とは、個体(例えば患者)、細胞系統、組織培養物、又は細胞又は細胞外マトリックスのような細胞産物を含有する可能性のある他の原料から得られた何れかの生物学的試料を考慮する。このような生物学的試料には、αβを発現する白血球、卵巣、前立腺、心臓、胎盤、膵臓、肝臓、脾臓、肺、乳房、頭頚部の組織(例えば口腔、咽頭、舌及び喉頭の組織)、子宮内膜、結腸(又は結腸直腸)、子宮頚部、胃及び臍帯組織を含めた哺乳動物の身体の組織又は細胞が含まれる。組織生検及び体液を哺乳動物から得るための方法は、当該技術分野で周知である。好ましい哺乳動物には、サル、類人猿、ネコ、イヌ、ウシ、ブタ、ウマ、ウサギ及びヒトが含まれる。特に好ましくはヒトである。
生物学的試料におけるαβの発現レベルの試験は、何れかの当該技術分野で既知の方法を使用して行うことができる。生物学的試料におけるαβの発現レベルの試験には、免疫学的技法が好ましい。例えば、組織におけるαβの発現は、古典的な免疫組織学的方法により試験することができる。これらの方法では、αβに結合する一次リガンド、例えば抗体(ポリクローナル又はモノクローナル)により特異的認識が行われる。この一次リガンドは、例えば蛍光、ケミルミネセント、りん光、酵素又は放射性同位体の標識により標識することできる。或いは、本発明のこれらの方法は、二次的な検出系を使用することもでき、この場合、αβ結合リガンドを認識してこれに結合する二次リガンド、例えば第1のαβ結合抗体を認識してこれに結合するいわゆる「二次」抗体は、上述の通り検出可能に標識される。その結果、病理学的検査のための組織切片の免疫組織学的染色が得られる。或いは、αβの発現レベルがより低いことが知られる標準的な組織又は細胞試料と比べて、直接定量化するために、ウェスタンブロット又はドット/スロット試験(Jalkanen, M., et al., J. Cell. Biol. 101:976−985 (1985);Jalkanen, M., et al., J. Cell. Biol. 105:3087−3096 (1987))用にαβタンパク質を遊離させるために、組織及び細胞の試料を例えば尿素及び中性洗剤で抽出することもできる。
上述の通り、本発明の方法は、哺乳動物における転移癌を検出する、腫瘍細胞の転移能を測定する(即ち、所定の腫瘍細胞が原発腫瘍部位から遠位の転移部位に転移する可能性を予測する)、及び非浸潤性又はin situ癌腫が浸潤性又は転移性の癌腫に進行する可能性を測定するのに有用である。特に、本発明の方法は、上皮組織の浸潤性及び/又は転移性癌(即ち、浸潤性及び/又は転移性癌腫)、例えば乳房、卵巣、前立腺、肝臓、肺、膵臓、結腸(又は結腸直腸)、頭頚部組織(例えば口腔、咽頭、舌及び喉頭組織)、子宮内膜、子宮頚部、胃及び脾臓の癌を検出するのに有用である。本発明の方法による検出に特に好適なものは、浸潤性及び/又は転移性の表現型に進行する可能性が高い浸潤性及び/又は転移性腺癌であり、これには、乳癌腫、膵臓癌腫、結腸直腸癌腫、子宮頸癌腫、肺癌腫、及びin situ癌腫(例えば乳房の特定の上皮内腺管癌(DCIS)又は上皮内小葉癌(LCIS))が含まれるが、これ等に限定されない。このような癌腫の早期の発見及び処置は、患者の良好な長期の予後に関連している。例えば、未処置のままの場合、DCIS腫瘍がかなりの比率で浸潤性となり、更に予後不良の転移癌をもたらす可能性があることが報告されている(Sakorafas, G.H., and Tsiotou, A.G.H., Cancer Treatment Rev. 26:103−125 (2000)を参照)。
従って、本発明は、患者における未浸潤性の患部又は癌腫を同定し、患者を処置することで未浸潤性患部が浸潤性形態まで発展する機会を得るよりも前にこれを排除することによって、転移癌を処置又は予防する方法を考慮する。このような方法は、例えば、(a)癌又は未浸潤性の患部を含有することが疑われる組織試料、及び癌又は未浸潤性の患部を含有しない組織試料(好ましくは癌又は未浸潤性の患部を含有することが疑われるものと同じ組織又は臓器に由来)を得る;(b)組織試料を1つ以上のαβ結合リガンド、例えば1つ以上のαβ結合抗体又はそれらのフラグメントに、(存在する場合)組織内のαβインテグリンへの1つ以上のαβ結合リガンドの結合に好都合な存在下で、接触させる;並びに(c)組織へのαβ結合リガンドの結合のレベル又はパターンを検出することを含み、過形成(例えば腫瘍)を包囲する筋肉上皮におけるαβ結合リガンドの局在化結合が、過形成自体(又はその細胞)における結合と比べて増大していること、或いは癌性又は未浸潤性の患部を含有する組織試料におけるαβ結合リガンドの結合のレベルが、非癌性の組織試料(又はその細胞)における結合と比べて増大していることが、浸潤性となり潜在的に転移する可能性がより高い癌腫を示している。他の関連する実施形態において、本発明は、患者における未転移又は未浸潤腫瘍の転移又は浸潤性腫瘍への進行を低減又は予防する方法であって、未転移又は未浸潤腫瘍における1つ以上の細胞上のインテグリンαβの1つ以上のサブユニットに結合する1つ以上のリガンドの治療有効量を患者に投与する工程を含み、リガンドのインテグリンへの結合が、原発腫瘍を囲む組織領域への未転移又は未浸潤の癌の細胞の浸潤の低減又は予防をもたらす、方法を考慮する。
本発明の方法に従って使用するために試料の入手元となりえる好適な組織及び臓器には、本明細書に別途記載する上皮組織が含まれるが、これらに限定されない。本発明のこのような方法により好都合に処置又は予防される場合がある癌及び腫瘍には、癌腫、特に腺癌、例えば本明細書に別途詳述する癌腫及び腺癌が含まれるが、これらに必ずしも限定されない。このような癌腫が本発明の方法により検出されれば、次にそれを、外科的、化学療法、放射線、又は当該技術分野で周知であり当業者が熟知するであろうその他の癌治療方法を介して患者から除去することができる。或いは、このような癌腫は、本発明の処置方法を使用して、1つ以上のαβ結合リガンド、例えば1つ以上のαβ結合抗体又はそれらのフラグメントを、患者に又は患者の臓器又は組織に投与することにより、排除することができる。このような実施形態の特定の非限定的例において、1つ以上のαβ結合リガンドは、上に詳述した通り、1つ以上の細胞毒性化合物又は薬剤とコンジュゲートされている。このような実施形態の更なる非限定的例において、1つ以上のαβ結合リガンド、例えば1つ以上のαβ結合抗体又はそれらのフラグメントは、上に詳述した通り、1つ以上の細胞毒性化合物又は薬剤と組み合わせて被験体、例えば患者に投与される。
関連する実施形態において、本発明は、腫瘍又は癌細胞によるαβの発現を測定することにより腫瘍又は癌細胞の転移能を測定することを考慮する。このような実施形態において、腫瘍又は細胞の試料は、上述のような患者より入手し、腫瘍又は癌細胞上のαβの発現レベルについて本明細書に記載の方法に従い試験する。このような好ましい方法には、本明細書に記載したもののようなαβ結合抗体(又はそれらのフラグメント、変異体又は誘導体)を使用した免疫組織化学分析が含まれる。本発明のこれらの方法によれば、腫瘍又は癌細胞によるαβの発現レベルと腫瘍又は癌細胞の転移能との間には、直接的な相関関係が存在しており:即ち、腫瘍又は癌細胞によるαβの発現の増大は、腫瘍又は癌細胞が原発腫瘍部位から二次的場所に転移する可能性がより高いことを指す。従って、腫瘍又は癌細胞によるαβの発現レベルは、腫瘍又は癌細胞の転移能の予後インジケーターとして使用することができ、これは癌患者及びその医師が現在又は予想される将来の癌の攻撃性又は浸潤性に基づき適切な処置を決定するに当たって役立つ可能性がある。
個体から得られた生物学的試料、例えば組織又は腫瘍細胞の試料中のαβ発現レベルを試験することに加えて、αβの発現レベル及びパターンは又、画像化によりin vivoで検出することもできる。本発明のこのような方法において、1つ以上のαβ結合リガンド、例えば1つ以上のαβ結合抗体は、in vivo画像化に好適な1つ以上の標識で検出可能に標識される。in vivo画像化に好適な標識又はマーカーには、X線撮影、NMR又はESRにより検出可能なものが含まれる。X線撮影の場合、好適な標識には、検出可能な放射線を発射するが、被験体に悪影響を与えない放射性同位体、例えばバリウム又はセシウムが含まれる。NMR及びESRに好適なマーカーには、重水素のような検出可能な特徴的スピンを有するものが含まれる。
放射性同位体(例えば131I、112In、99mTc)、放射線不透明物質又は核磁気共鳴により検出可能な物質のような適切で検出可能な画像化部分で標識されているαβ結合リガンド、例えばαβ結合抗体又は抗体フラグメントは、in situで癌又は癌腫に関して検査する哺乳動物内に導入(例えば非経腸、皮下又は腹腔内)される。被験体の体格及び使用する画像化システムにより診断画像を作成するのに必要な画像化部分の量が決定されることは、当該技術分野で理解されるであろう。放射性同位体部分の場合、ヒト被験体において、注入される放射能の量は、通常の場合99mTc約5〜20ミリキューリーの範囲となる。その後、αβ結合リガンド、例えばαβ結合抗体又は抗体フラグメントは、αβインテグリンを含有又は発現する細胞又は組織の位置に優先的に蓄積する。次に、in vivo腫瘍画像化が、S.W. Burchiel, et al., “Immunopharmacokinetics of Radiolabelled Antibodies and Their Fragments” (Chapter 13, Tumor Imaging: The Radiochemical Detection of Cancer, S.W. Burchiel and B.A. Rhodes, eds., Masson Publishing Inc. (1982))に記載の通り実施される。
αβ結合リガンドの治療的使用
本発明の別の実施形態において、αβ結合リガンド、例えばαβ結合抗体又はそれらのフラグメントは、特定の疾患、特に特定の癌腫、例えば本明細書に別途記載するものに罹患した哺乳動物を処置する治療計画において使用される場合がある。本発明のこのような方法は、癌及び関連する事象、例えば腫瘍の生育、転移及び血管形成を処置するのに有用である。このような方法に特に好適なものは、疾患に罹患した哺乳動物の組織又は細胞におけるαβ発現レベルの増大を特徴とし、且つαβ発現レベルの増大を示す組織又は細胞をターゲティングし、これらの組織又は細胞を排除する処置に応答するような疾患又は癌である。これらの方法により特に処置が可能な疾患には、乳房、卵巣、前立腺、肝臓、肺、膵臓、結腸、頭頚部組織(例えば口腔、咽頭、舌及び喉頭組織)、子宮内膜、子宮頚部、胃及び脾臓を含めた上皮組織の転移癌(即ち、転移癌腫及び/又は腺癌)が含まれる。本発明のこれらの方法による処置に特に好適なものには、子宮内膜、膵臓、結腸(例えば結腸直腸癌腫)、子宮頚部、肺及び乳房(上皮内腺管癌(DCIS)及び上皮内小葉癌(LCIS)を含む)の癌腫がある。処置に好ましい哺乳動物には、サル、類人猿、ネコ、イヌ、ウシ、ブタ、ウマ、ウサギ及びヒトが含まれる。特に好ましくはヒトである。
特定のこのような治療計画において、本発明の方法は、異なる方法による腫瘍の除去、処置又は根絶の後の、例えば残存転移細胞の残存腫瘍細胞を排除するのに好適である。例えば、本発明のこのような方法は、腫瘍の外科的切除、又は放射線照射、化学療法等のような方法による腫瘍の根絶の後に、患者に残存している場合がある残存腫瘍細胞又は転移細胞を排除するのに使用することができる。このような治療計画において、本発明の方法は、外科的、放射線的及び/又は化学療法的な腫瘍の除去の前、その間、及び/又は、後に、患者にαβ結合リガンド、例えばαβ結合抗体又はそれらのフラグメントを投与することを含む場合がある。
関連する実施形態において、本発明は、患者における転移腫瘍への未転移腫瘍の進行を低減又は予防する方法であって、未転移の腫瘍における1つ以上の細胞上のインテグリンαβの1つ以上のサブユニットに結合する1つ以上のリガンドの治療有効量を患者に投与する工程を含み、インテグリンへのリガンドの結合が、原発腫瘍を囲む組織領域への未転移癌の細胞の浸潤の低減又は予防をもたらす、方法を提供する。
本発明のこれらの治療方法を実施する場合、αβ結合リガンド、例えばαβ結合抗体又はそれらのフラグメントは、治療用製剤(本明細書においては交換可能及び同等に薬学的組成物とも呼ばれる)の形態で患者に投与される場合がある。本発明に従って使用されるαβ結合リガンドの治療用製剤は、例えば凍結乾燥した製剤又は水溶液の形態で、任意の薬学的に許容される担体、賦形剤又は安定化剤と所望純度のαβ結合リガンドを混合することにより調製して保存に付される(Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980))。αβ結合リガンドのような薬理学的活性を有する化合物の他に、本発明の治療方法で使用される組成物は、薬学的に使用できる調製品への活性化合物の加工を容易にする賦形剤及び補助剤を含む1つ以上の好適な薬学的に許容される担体を含有してもよい。本発明の薬学的調製品は、それ自体既知の様式で、例えば従来の混合、顆粒化、糖衣錠製造、溶解又は凍結乾燥の加工法により製造される。即ち、経口用途の薬学的調製品は、活性化合物を固体賦形剤と組み合わせて、場合により得られた混合物を粉砕し、必要に応じて好適な補助剤を添加した後に、顆粒混合物を下行することにより、錠剤又は糖衣錠のコアを得る。
好適な賦形剤は、特に、充填剤、例えば糖類、例えば乳糖又はスクロース、マンニトール又はソルビトール、セルロース調製品及び/又はリン酸カルシウム、例えばリン酸3カルシウム又はリン酸水素カルシウム、並びに結合剤、例えば澱粉ペースト、例えばトウモロコシ澱粉、コムギ澱粉、コメ澱粉、バレイショ澱粉、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び/又は、ポリビニルピロリドン使用のものである。所望により、錠剤崩壊剤、例えば上述の澱粉及びカルボキシメチル澱粉、交差結合ポリビニルピロリドン、寒天又はアルギン酸又はその塩、例えばアルギン酸ナトリウムを添加することができる。補助剤は、とりわけ、流動調節剤及び潤滑剤、例えばシリカ、タルク、ステアリン酸又はその塩、例えばステアリン酸マグネシウム又はステアリン酸カルシウム及び/又はポリエチレングリコールである。糖衣錠のコアは、所望により胃液に対して耐性を有する好適なコーティングが施される。この目的では、濃縮糖溶液を使用することができ、これは場合によりアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液及び好適な有機溶媒又は溶媒混合物を含有する場合がある。胃液に対して耐性を有するコーティングを作成するには、好適なセルロース調製品、例えばアセチルセルロースフタレート又はヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートの溶液が使用される。染料及び顔料を、例えば識別のため、又は活性化合物用量の組合せを特徴付けるために、錠剤又は糖衣錠コーティングに添加することができる。
経口使用できるその他の薬学的調製品には、ゼラチンから作成したプッシュフィットカプセル、並びにゼラチン及び可塑剤、例えばグリセロール又はソルビトールから作成したソフトシールカプセルが含まれる。プッシュフィットカプセルは、乳糖のような充填剤、澱粉のような結合剤、及び/又はタルク又はステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、及び場合により安定化剤と混合される場合がある顆粒の形態で活性化合物を含有してもよい。ソフトカプセルの場合、活性化合物は、好ましくは好適な液体、例えば油脂又は流動パラフィンに溶解又は懸濁される。更に、安定化剤が添加される場合もある。
非経口投与に好適な製剤には、水溶性形態の活性化合物の水溶液、例えば水溶性の塩及びアルカリの溶液が含まれる。アルカリ塩には、例えばトリス、水酸化コリン、ビストリスプロパン、N−メチルグルカミン又はアルギニンを使用して調製されたアンモニウム塩が含まれてもよい。更には、適切な油性の注射用懸濁液としての活性化合物の懸濁液を投与することもできる。好適な親油性の溶媒又はビヒクルには、油脂類、例えばゴマ油又は合成の脂肪酸エステル、例えばオレイン酸エチル又はトリグリセリド又はポリエチレングリコール−400(これらの化合物はPEG400に可溶である)が含まれる。水性注射用懸濁液は、懸濁液の粘度を増大させる物質、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール及び/又はデキストランを含有してもよい。場合により懸濁液は、安定化剤も含有する場合がある。
本発明の化合物は、点眼液として、又は軟膏、ゲル、リポソーム又は生物学的適合性を有する重合体ディスク、ペレットとして動物及びヒトの眼に投与される場合もあれば、コンタクトレンズ内に担持される場合もある。眼内組成物は又、当業者が従来の基準を使用して選択できる通り、生理学的適合性を有する眼科用のビヒクルを含有する場合がある。ビヒクルは、既知の眼科用ビヒクルから選択される場合があり、これには、水、ポリエーテル(例えばポリエチレングリコール400)、ポリビニル(例えばポリビニルアルコール)、ポビドン、セルロース誘導体(例えばカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース)、石油誘導物(例えば鉱物油及び白色ワセリン)、動物性脂肪(例えばラノリン)、植物性脂肪(例えばピーナツ油)、アクリル酸の重合体(例えばカルボキシルポリメチレンゲル)、多糖類(例えばデキストラン及びグリコサミノグリカン、例えば塩化ナトリウム及び塩化カリウム)、塩化亜鉛、及び緩衝物質(例えば重炭酸ナトリウム又は乳酸ナトリウム)が含まれるが、これらに限定されない。高分子量の分子も使用することができる。組成物中の本発明の化合物を不活性化しない生理学的適合性を有する保存料には、アルコール、例えばクロロブタノール、塩化ベンザルコニウム及びEDTA、又は等業者に既知のその他何れかの適切な保存料が含まれる。
皮下投与に採用される抗体の凍結乾燥製剤は、全体が参考として本明細書で援用される米国特許第6,267,958号に記載されている。このような凍結乾燥された製剤は、高いタンパク質含有量となるように好適な希釈剤で再構成される場合があり、再構成された製剤は、本明細書において処置する患者に皮下投与される場合がある。
αβ結合リガンドは又、例えばコアセルベーション法により、又は界面重合法により調製されたマイクロカプセル、例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンのマイクロカプセル、及びポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中で、コロイド状の薬物送達系(例えばリポソーム、アルブミン微小球、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)中で、又はマクロエマルジョン中で捕獲される場合もある。このような技法は、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)に開示されている。
αβ結合リガンドの除放性調製品が調製される場合がある。除放性調製品の好適な例には、αβ結合リガンドを含有する固体疎水性重合体の半透性のマトリックスであって、形状付与された物品、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態であるマトリックスが含まれる。除放性マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えばポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸とγ−エチル−L−グルタメートの共重合体、非分解性エチレン−酢酸ビニル、分解性の乳酸−グリコール酸共重合体、例えばLUPRONDEPOTTM(乳酸−グリコール酸重合体及び酢酸ロイプロリドよりなる注射用微小球)及びポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が含まれる。
in vivo投与に使用される製剤は、滅菌されていなければならない。これは、滅菌濾過膜で濾過することにより容易に達成される。
αβ結合リガンドは、何れかの好適な手段、例えば非経腸、肺内、頭蓋内、経費及び鼻内投与により被験体又は患者に投与される場合がある。非経腸の注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内又は皮下投与が含まれる。更に、αβ結合リガンドは、パルス注入により、例えばαβ結合リガンドの漸減用量を使用して適宜投与される場合がある。好ましくは、投薬は、投与が短期であるか長期であるかに部分的に応じて、注射、最も好ましくは静脈内又は皮下注射により行われる。
本発明の特定の例示される実施形態において、αβ結合リガンドは、約1mg/m〜約500mg/mの用量において患者に(例えば静脈内に)投与される。例えば、αβ結合リガンドは、約1mg/m、2mg/m、3mg/m、4mg/m、5mg/m、10mg/m、15mg/m、20mg/m、25mg/m、30mg/m、35mg/m、40mg/m、45mg/m、50mg/m、55mg/m、60mg/m、65mg/m、70mg/m、75mg/m、80mg/m、85mg/m、90mg/m、95mg/m、100mg/m、110mg/m、115mg/m、120mg/m、125mg/m、130mg/m、135mg/m、140mg/m、145mg/m、150mg/m、155mg/m、160mg/m、165mg/m、170mg/m、175mg/m、180mg/m、185mg/m、190mg/m、195mg/m、200mg/m、210mg/m、215mg/m、220mg/m、225mg/m、230mg/m、235mg/m、240mg/m、245mg/m、250mg/m、255mg/m、260mg/m、265mg/m、270mg/m、275mg/m、280mg/m、285mg/m、290mg/m、295mg/m、300mg/m、305mg/m、310mg/m、315mg/m、320mg/m、325mg/m、330mg/m、335mg/m、340mg/m、345mg/m、350mg/m、355mg/m、360mg/m、365mg/m、370mg/m、375mg/m、380mg/m、385mg/m、390mg/m、395mg/m又は400mg/mの用量において投与される場合がある。
αβ結合リガンドは、広範な種類の投薬日程に従って投与できる。例えばαβ結合リガンドは、所定時間量(例えば4〜8週間又はそれ以上)にわたり一日一回、又は所定時間量(例えば4〜8週間又はそれ以上)にわたり、週当たりの日程に従って(例えば週に1日、週に2日、週に3日、週に4日、週に5日、週に6日又は週に7日)投与することができる。「週1回」の投薬日程の特定の例は、投与期間の第1、8、15及び22日におけるαβ結合リガンドの投与である。代替の実施形態において、αβ結合リガンドは、数ヶ月の期間にわたり間歇的に投与される場合がある。例えば、αβ結合リガンドは、年2回3週連続で毎週投与(即ち、週当たり投薬日程を6ヶ月毎に反復)される場合がある。このような投与様式は、初期の処置により得られる有益な治療作用が維持されるように長期間(数年)継続される場合があることが理解されるであろう。更に他の実施形態において、このような維持治療は、癌性、転移性又はin situ癌腫の病態の急性期の症状を低減するように設計された急性期用量計画に従って行われる場合もある。
処置期間を通して各時点で投与されるαβ結合リガンドの量は、同じであってもよければ;或いは、処置期間の各時点で投与される量は異なってもよい(例えば、所定時点において投与される量は、以前に投与された量よりも増減してよい)。例えば、維持療法の間の用量は、処置の急性期に投与されたものより少なくてもよい。特定の状況に応じた適切な用量日程については、当業者に明らかになるであろう。
本発明の特定の実施形態においては、αβ結合リガンドの複数の型又は種を互いに組み合わせて患者に投与することにより、1つ以上の癌性、転移性又はin situ癌腫の病態が処置される。例えば、本発明は本明細書に開示したもののようなαβ結合抗体2種以上の患者への投与を考慮する。複数のαβ結合リガンドを患者に投与する場合、異なるαβ結合リガンドは、単一の薬学的組成物内で共に投与することができ、又はより好ましくは、別個の投薬において逐次的に投与できる。このような他剤の有効量は製剤中に存在するαβ結合リガンドの量、処置する疾患又は障害の型、及びその他の因子により異なる。
本発明は又、癌性、転移性又はin situ癌腫の病態を処置する方法であって、第1の薬剤を第2の薬剤と組み合わせて患者に投与する工程を含み、第1の薬剤がαβ結合リガンドであり、第2の薬剤が1つ以上の癌性、転移性又はin situ癌腫の病態の処置に有用であるが、必ずしもαβ結合リガンドでなくてもよい薬剤である、方法も含む。第1の薬剤を第2の薬剤と「組み合わせて」投与するとは、第1の薬剤を第2の薬剤の患者への投与よりも前、同時又は後に、患者に投与することにより、両薬剤を治療計画において患者に投与することができることを意味している。例えば、本発明の特定のこのような実施形態によれば、αβ結合リガンドは、患者に対するその他1つ以上のインテグリン受容体(例えばαβ、αβ、αβ、αβ、αβ等)の拮抗物質、例えば当該技術分野で既知の1つ以上のインテグリン受容体(例えばαβ、αβ、αβ、αβ、αβ等)に対して特異的な抗体、ポリペプチド拮抗物質及び/又は小分子の投与と組み合わせて(即ち、該投与の前、同時又は後に)、患者に投与される。
本発明のこの特徴の特定の実施形態において、αβ結合リガンドと組み合わせて投与される第2の薬剤には、例えばステロイド、細胞毒性化合物(本明細書に別途記載したものを含む)、放射性同位体(本明細書に別途記載したものを含む)、プロドラッグ活性化剤(本明細書に別途記載したものを含む)、コルヒチン、酸素、又は抗酸化剤(例えばN−アセチルシステイン)、金属キレート形成剤(例えばテトラチオモリブデート)、IFN−β、IFN−γ、α−抗トリプシン等がある。本発明のこの態様による治療目的のために1つ以上のαβ結合リガンドのような1つ以上の第1の薬剤と組み合わせて患者に投与できる更なる第2の薬剤又は化合物は、当業者が熟知するはずであり;従って、このような更なる第1の薬剤又は化合物の使用は、本発明により包含されるとみなされる。
本明細書に記載した方法及び用途のその他の好適な改変及び応用は自明であり、従って、本発明又は本発明の何れかの実施形態の適用範囲から逸脱することなく行われることが、当業者に容易に明らかになるであろう。以上において本発明を詳述してきたが、本発明は、以下の実施例を参照することにより更に明確に理解されるであろう。但し、これらの実施例は、単に本発明の例示を目的としたものであり、限定を目的としたものではない。
実施例1 mu3G9可変領域のクローニング
製造業者の推奨するプロトコルに従い、Qiagen RNeasyミニキットを使用し、3G9マウスのハイブリドーマ細胞由来の総細胞RNSを調製した。重鎖及び軽鎖の可変領域をコードする相補的DNAは、Amersham/Pharmacia First Strand cDNA合成キットを使用し、プライミングのためにランダム六量体を使用し、製造業者の推奨するプロトコルに従い、総細胞RNAからRT−PCRによってクローン化した。
マウス3G9免疫グロブリン重鎖可変ドメインのPCR増幅のために使用したプライマーは次の通りである。
Figure 2009500041
この反応は、95℃での2.5分間の初回溶解後に94℃での30秒間の溶解×10サイクル、60℃−1℃/サイクルでの45秒間のアニーリング後、Clotech社のAdvantage Taq DNAポリメラーゼを使用して68℃での1分間の伸長からなる。この反応に続き、追加的な94℃での30秒間の溶解×10サイクル、55℃での45秒間のアニーリング、68℃での1分間の伸長及び最終の68℃での9分間の伸長を実施した。この反応はQiagen Qiaquick PCR精製キットを使用し、製造業者の推奨するプロトコルに従って精製した。過剰dNTP’s存在下で、Advantage Taq増幅DNAの末端を平滑にし、T7 DNAポリメラーゼによって平滑末端を生成した。精製され、平滑にした3G9重鎖可変領域遺伝子PCR生成物は、TOPOクローニングキットを使用して、製造業者の推奨するプロトコルに従い、InvitrogenのpCR4Blunt−TOPOクローニングベクターにサブクローニングした。重鎖RT−PCRサブクローンは、pKJS062と名付けた。
3G9軽鎖可変ドメイン遺伝子は、プライマーを使用して、次の配列を増幅させた。
Figure 2009500041
この反応は、95℃での2.5分間の初回溶解後に94℃での30秒間の溶解×6サイクル、60℃−1℃/サイクルでの45秒間のアニーリング後、Clotech社のAdvantage Taq DNAポリメラーゼを使用して68℃での2分間の伸長からなる。この反応に続き、追加的な94℃での30秒間の溶解×24サイクル、54℃での45秒間のアニーリング、68℃での2分間の伸長及び最終の68℃での10分間の伸長を実施した。10回に1回の反応は、第2ラウンドのPfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)による増幅のための鋳型として使用した。この反応は、95℃での2.5分間の初回溶解後に94℃での30秒間の溶解×20サイクル、55℃での45秒間のアニーリング後、72℃での1分間の伸長からなる。この反応生成物は、Qiagen Qiaquickゲル抽出キットを使用し、製造業者の推奨するプロトコルに従って精製されたゲルであった。精製3G9軽鎖可変領域遺伝子PCR生成物は、TOPOクローニングキットを使用して、InvitrogenのpCR4Blunt−TOPOクローニングベクターにサブクローニングした。この軽鎖RT−PCRサブクローンはpKJS054と名付けた。
pKJS054及びpKJS062両者の多重独立サブクローンのインサートの配列を決定した。両者とも、多重独立サブクローンの挿入部分の配列は同一であった。可変ドメイン配列のBlast分析は両者の免疫グロブリン同一性を確認した。3G9重鎖可変ドメインは、マウスサブグループIIIDのメンバーである。3G9軽鎖可変領域は、マウスκサブグループIVのメンバーである。
実施例2 ch3G9の構築及び発現
cDNAsは、マウス−ヒトキメラ(ch3G9)を発現するためのベクターを構築するために使用された重鎖及び軽鎖のマウス3G9可変領域をコードしており、ここでは、mu3G可変領域とヒトIgG1及びκ定常領域とが結合している。
重鎖キメラを構築するため、3G9重鎖可変領域ドメインプラスミドpKJS062の508bp EcoRIフラグメントを線状化脱リン酸化したpUC由来クローニングベクターpNN09のEcoRI部位にサブクローニングした。この段階に、この結果生じたプラスミドpKJS093の隣接NotI部位を加えた。プラスミドpKJS093の重鎖配列は、DNA配列決定によって確認した。スプライスドナー部位の直後にHindIII制限部位を加え、この部位を可変領域のちょうど下流のプラスミドpKJS093に加え、変異原性オリゴヌクレオチドの部位指定変異導入により、次のように配列をコードする。
Figure 2009500041
ここでは、製造業者の推奨するプロトコルに従ってStratageneのQuickchange突然変異誘発キットを使用した。この段階はプラスミドpKJS116を発現させた。プラスミドpKJS136を生成するpCEP4(Invitrogen)EBV発現ベクター由来プラスミドpCH269のNotI部位に、pKJS116の0.48kb NotI−HindIII重鎖変異ドメインフラグメント及びヒトIgG1定常領域を含むプラスミドpEAG964の1.22kb HindIII−NotIフラグメントをサブクローニングした。
軽鎖キメラの構造に関しては、結果として生じたプラスミドpKJS112の隣接NotI部位を加えて線状化脱リン酸化したクローニングベクターpNN09のEcoRI部位に、3G9軽鎖可変ドメインプラスミドpKJS054の474塩基対EcoRIフラグメントをサブクローニングした。プラスミドpKJS112の軽鎖配列はDNA配列決定によって確認した。BgIII制限部位を可変領域のちょうど下流のプラスミドpKJS112に加え、変異原性オリゴヌクレオチドの部位指定変異導入により、次のように配列をコードする。
Figure 2009500041
ここでは、プラスミドpKJS132を発現させるStratageneのQuickchange突然変異誘発キットを使用した。プラスミドpKJS141を発現するpCEP4(Introgen)EBV発現ベクター由来プラスミドpCH269のNotI部位に、pKJS132の453bp NotI−BgIII軽鎖可変ドメインフラグメント及びヒトκ軽鎖定常ドメイを含むプラスミドpEAG963の678bp BcII−NotIフラグメントをサブクローニングした。mu3G9のクローニング中に、軽鎖の最初のCDRにグルコシル化シグナル配列(NXT/S)が含まれていることに注意した。単回のQuickchangeによるオリゴヌクレオチドの部位指定変異導入によって、次のようにNSSからSSSへとモチーフ配列が変換され、ベクターpKJS157の発現が生じ、このグリコシル化シグナル配列が除去された。pKJS157の軽鎖可変領域配列は、DNA配列決定によって確認した。
Figure 2009500041
発現ベクター(軽鎖pKJS141又はpKJS157及び重鎖pKJS136)を293−EBNA細胞に同時移入し、移入細胞を抗体分泌及び特異性に関して試験した。エンプティベクター移入細胞及びEBV発現ベクターと共にchM92に同時移入細胞胞(分子クローニングしたCD154特異的mAb)を対照群とした。Pierce Easy滴定キットを使用し、製造業者の推奨するプロトコルに従ったならし培地の抗体力価分析及びウェスタンブロット分析(抗ヒト重鎖及び軽鎖抗体を使用して開発された)では、ch3G9−移入細胞が合成され、重鎖、軽鎖及び分泌抗体を効率的に集合させたことが示された。αβに対するELISA試験では、αβと結合したch3G9はmu3G9と類似しているが、chM92は類似していないことを示した。
図1に示す通り、キメラ3G9(ch3G9; 三角形の記号で示される)及び軽鎖の最初のCDRのN結合グリコシル化部位内でのNからSへの置換が含まれる大規模で一過性の遺伝子導入によって生成したキメラ3G9のアグリコシル突然変異型については、精製した後、ELISA試験でαβへの類似の結合が示された。軽鎖可変ドメインのCDR1内のグリコシル化部位の除去が、抗体の結合親和性に影響を及ぼすことも変化させることもなく、タンパク質発現及び精製を改善することが示されている。
実施例3 hu3G9変異型1、2及び3の構築
ヒト化3G9(hu3G9)を発現させるために再形成された可変ドメインの設計は以下の通りに実施した。3G9軽鎖可変ドメインをヒトκ3に、重鎖可変ドメインをヒト重鎖サブグループ3に対応させた。ヒト受容体フレームワークの選択は、プログラムIgBLAST:軽鎖のヒトL6(ヒトJK4由来J領域を使用する)及び重鎖のヒト3−7(ヒトJH4由来J領域を使用する)を使用して、ヒト生殖細胞系列配列への相同性マッチングによって実施した。表1に示す通り、再形成された可変軽鎖及び可変重鎖それぞれにつき3種類の変異型を設計した。第1変異型ではマウスドナー配列に突然変異を最も多く取り入れ、第3変異型では最も突然変異を最も少なくした(即ち、最も「ヒト化」した)。重鎖及び軽鎖可変ドメインのCDR領域は、下の表1に示す通り、従来のKabatナンバリング分類システムによって定義されている。しかし、下に示した配列のナンバリングは、互いに関連する種々の配列の相対線形位置決め方式に基づいている。
Figure 2009500041
hu3G9重鎖変異型1及び軽鎖変異型1、2及び3は、リン酸化上位鎖オリゴヌクレオチドの合成を連結反応することによって合成により生成され、Taq DNAリガーゼ(New England Biolab)と共に下位短鎖オリゴヌクレオチドによる並列位に保持される。この反応では94℃での1分間×15サイクルによって培養した後、55℃−1℃/サイクルでの1分間及び65℃での4分間によって、5’制限部位(NotI及びBamHI)、単一配列、可変ドメインを含む単鎖鋳型DNAを生成し、定常ドメインの最初の特異領域へ向かっての伸長(軽鎖)又は特異領域にまで及ぶ伸長(重鎖)(軽鎖のBsi WI及び重鎖のAgeI)を実施した。これらの合成遺伝子のプライマーについては、以下に記載する。これらの遺伝子鋳型は、オリゴ糖を使用したPfu DNAポリメラーゼによるPCR(Stratagene)によって:
Figure 2009500041
重鎖の
Figure 2009500041
及び
Figure 2009500041
軽鎖の
Figure 2009500041
を増幅し、
二重鎖DNAを生成した。この反応は、95℃での2.5分間の初回溶解後に94℃での30秒間の溶解×16サイクル、64℃での30秒間のアニーリング後、72℃での1分間の伸長からなる。この反応はQiagen Qiaquick ゲル抽出キットを使用し、製造業者の推奨するプロトコルに従って精製した。
重鎖変異型1は、次の上位鎖5’リン酸化オリゴヌクレオチドから合成により生成した。
Figure 2009500041
これらのオリゴ糖は、並列位の上位鎖オリゴヌクレオチドと約15bp重複する次の下位鎖非リン酸化オリゴヌクレオチドによって並置に保持されていた。この下位鎖オリゴヌクレオチドは、以下の通りである。
Figure 2009500041
重鎖変異型2は、次の上位鎖5’リン酸化オリゴヌクレオチドから合成により生成した。
Figure 2009500041
このようなオリゴ糖は、並列位の上位鎖オリゴヌクレオチドと約15bp重複する次の下位鎖非リン酸化オリゴヌクレオチドによって並置に保持されていた。この下位鎖オリゴヌクレオチドは、以下の通りである。
Figure 2009500041
hu3G9重鎖変異型1及び2の発現ベクターは、合成により生成されたヒト化変異体及びヒトIgG1定常領域の残基を含有する919bpのプラスミドpKJS160由来AgeI/BamHIフラグメントのヒトIgG1定常領域の最初の105bpを含む538bpのNotI−AgeI重鎖可変ドメインフラグメントを重鎖発現ベクターpKJSq166(変異型1)及びpKJS167(変異型2)を生成するNotI/BamHI分解pKJS160(EBV発現ベクターpCH269由来pCEP4(Invitrogen)と同一)にサブクローニングすることによって生成した。
重鎖変異3型は、オリゴヌクレオチドを使用し、プラスミドpKJS167で1ラウンドのQuickchange部位指向性突然変異を実施することによって発現させた。
Figure 2009500041
この結果生じた変異3型重鎖プラスミドをpKJS168とした。この結果生じたプラスミドの可変領域のcDNA配列は、DNA配列決定によって確認した。
軽鎖変異型1は、次の上位5’リン酸化オリゴヌクレオチドから合成により発現させた。
Figure 2009500041
このようなオリゴ糖は、並置されている上位鎖オリゴヌクレオチドと約15bp重複する次の下位鎖非リン酸化オリゴヌクレオチドによって、並置に保持されていた。この下位鎖オリゴヌクレオチドは以下の通りである。
Figure 2009500041
軽鎖変異型2は、次の上位鎖5’リン酸化オリゴヌクレオチドから合成により発現させた。
Figure 2009500041
このようなオリゴ糖は、並置されている上位鎖オリゴヌクレオチドと約15bp重複する次の下位鎖非リン酸化オリゴヌクレオチドによって、並置に保持されていた。この下位鎖オリゴヌクレオチドは、以下の通りである。
Figure 2009500041
軽鎖変異3型は、次の上位鎖5’リン酸化オリゴヌクレオチドから合成により発現させた。
Figure 2009500041
このようなオリゴ糖は、並置されている上位鎖オリゴヌクレオチドと約15bp重複する次の下位鎖非リン酸化オリゴヌクレオチドによって、並置に保持されていた。この下位鎖オリゴヌクレオチドは以下の通りである。
Figure 2009500041
hu3G9軽鎖変異型1、2及び3の発現ベクターは、合成により発現されたヒト化変異体及びヒト免疫グロブリンκ定常領域を含有する324bpのpKJS162由来BsiWI/BamHIフラグメントをNotI/BamHI分解pKJS161(EBV発現ベクターpCH269由来pCEP4(Invitrogen)と同一)にサブクローニングすることによって生成させた。この結果生じたプラスミドはpKJS172(変異型1)、pKJS173(変異型2)及びpKJS174(変異3型)と名付けた。
実施例4 hu3G9変異型1、2及び3の発現、並びに変異型4及び5の構築
ヒト化キメラ重鎖発現ベクターと軽鎖ベクターとの可能性のある全ての組み合わせを293−EBNA細胞に同時移入した(16通りの組み合わせ)。移入細胞胞は抗体分泌及び特異性について試験した。ならし培地のウェスタンブロット分析(抗ヒト重鎖及び軽鎖抗体を使用して検出する)及び簡易滴定(Pierce)分析から、hu3G9移入細胞が合成され、重鎖及び軽鎖を効率的に分泌し、発現のレベルが抗体ヒト化の増大を伴って増大している思われることが示された。図2に示す通り、軽鎖変異型1を含有する変異体は、これよりも高レベルで発現する軽鎖変異型2を含有する変異体の発現量が乏しく、このことは、ヒト化が増大すると高次の発現を引き起こす傾向があることを示唆している。
移入細胞のならし培地で染色したαβ発現SW480細胞のFACS分析から、3G9重鎖のヒト化は、抗体のαβ発現細胞との結合能力にマイナスの影響を及ぼさず、重鎖変異3型(CDR移植変異型)には変異型1及び変異型2と比べて結合活性の増大が見られることが示された(図3)。又、FACS分析からは、変異3型を含有するhu3G9 mAb変異体の結合能が、hu3G9軽鎖変異型2を含有する変異体よりもやや低いものの、両者の変異体は少なくともキメラ3G9とは結合すると思われることが示された(図3)。軽鎖変異型2及び変異3型とCDR移植3G9との間にはそれぞれ、わずか2個及び1個のアミノ酸の差しか見られない。このような軽鎖変異型には、αβに対してキメラ3G9と類似の結合活性が見られるため、2つの追加的変異型は、結合活性を改善できる可能性があるか又はCDR移植変異型を機能的にできるかどうかを明らかにするために作成した。
変異型4では、軽鎖の位置1でのグルタミンのグルタミン酸置換に対する作用を探求した後、変異5型では完全なCDR移植3G9軽鎖となった(表1)。このような各変化の個々の寄与因子を検討するため、新しい軽鎖発現ベクターを構築した。変異3型軽鎖のE1Q変異体であるプラスミドpKJS186は、StratageneのQuickchange突然変異生成キットを使用し、オリゴヌクレオチド:
Figure 2009500041
Figure 2009500041
を使用したプラスミドpKJS174の部位指向性突然変異生成によって生成し、軽鎖変異型4とした。CDR移植3G9軽鎖であるプラスミドpKJS188は、オリゴヌクレオチド:
Figure 2009500041
を使用したプラスミドpKJS174の部位指向性突然変異によって生成し、軽鎖変異5型とした。これらの軽鎖変異型については、配列を確認した後、重鎖変異型2又は3を293−EBNA細胞に同時移入した。FACS分析からは、完全CDR移植対である重鎖変異3型及び軽鎖変異5型が、他のヒト化変異体対と同程度か更に強力にαβ発現細胞と結合することが示された(図4)。このpKJS168及びpKJS188対合は、hu3G9変異5型(H3/L5)として設計した。
ch3G9及びhu3G9変異型2〜5の293−EBNA細胞の同時移入は規模が拡大し、ならし培地が採取可能となった。抗体をProtein A−Sepharose上で精製し、精製されたmAbsを活性について評価した。αβへの結合は、細胞株FDCP1−β6(図5)、ELISA(図6)、及びLAPに対するビオチン化αβの遮断(図7)に関するFACS分析によって測定した。結合活性の等級序列は、変異5型(H3/L5)>変異3型(H3/L3)=ch3G9=変異型2(H2/L2)であった。LAPに対するαβ媒介FDCP1−β6細胞接着の遮断は、図8に示す。生体活性の等級序列は、ch3G9=変異5型(H3/L5)=変異型2(H2/L2)>変異3型(H3/L3)であった。変異5型は、変異型2よりもヒト化されていたため、安定したCHO細胞株の生成のために選択した。
hu3G9重鎖(変異型1、2、3及び5)並びに軽鎖(変異型1〜5)可変ドメインの種々の変異型に関するDNA及び対応するタンパク質配列を表2に示した。重鎖変異型ドメインの場合は、配列は以下を含む:
(a)VH3〜7のFR1由来ヒトFR1;
(b)マウス3G9 CDR1重鎖配列;
(c)VH3〜7のFR2由来ヒトFR2;
(d)マウス3G9 CDR2重鎖配列;
(e)VH3〜7のFR3由来ヒトFR3;
(f)マウス3G9 CDR3重鎖配列;及び
(g)大多数のヒト抗体に存在し、WGQGTLVTVSSという配列を有するコンセンサスフレームワーク配列由来のヒトFR4。
軽鎖可変ドメインの場合、配列は以下を含む:
(a)L6のFR1由来ヒトFR1;
(b)アスパラギン(N)からセリン(S)へのアミノ酸置換を有するマウス3G9 CDR1軽鎖配列;
(c)L6のFR2由来ヒトFR2;
(d)マウス3G9 CDR2軽鎖配列;
(e)L6のFR3由来ヒトFR3;
(f)マウス3G9 CDR3軽鎖配列;及び
(g)大多数のヒト抗体に存在し、FGGGTKVEIKという配列を有するコンセンサスフレームワーク配列由来のヒトFR4。
Figure 2009500041
Figure 2009500041
Figure 2009500041
Figure 2009500041
実施例5 野生型及びアグリコシル−hu3G9変異5型の安定CHO発現ベクターの構築
上述のEBVベクターは、望ましくない外来5’並びに3’ UTRsを含有する。hu−3G9重鎖変異3型及び軽鎖変異5型(H3/L5)のために安定CHO発現ベクターを生成し、集合的に変異5型とし、この中から外来配列を除去した。更に、発現した3G9抗体とFcガンマ受容体との間に生じる可能性のある相互作用を除去するために、アグリコシル重鎖ベクターを生成した。
図9に示した通り、pKJS188の723塩基対BamH1フラグメントをpKJS077(PDM−64−02−13)生成プラスミドpKJS195の6188塩基対新規含有BamH1消化ベクターフラグメントに連結させることによって、軽鎖安定CHO発現ベクターを生成した。
重鎖コード配列に隣接し、pKJS171を生成するNot1制限部位を除去するため、最初にpKJS168の1449塩基対BamH1フラグメントをpKJS078(PDM−64−02−13)の6051塩基対BamH1消化ベクターフラグメントに連結させることによって、重鎖安定CHO発現ベクターを生成した。C末端リジン残基をpKJA171によってコードされた重鎖から遺伝子学的に除去し、2190塩基対BsrG1〜PKJS171のXbalフラグメントをPKJS189を生じさせる2187塩基対BsrG1〜PKJS078のXbalフラグメント(PDM−64−02−13)に置換した。プラスミドpKJS189は、図10に示した通り、dhfr含有野生型hu−3G9安定CHO発現ベクターである。重鎖のアグリコシル型を生成するため、pKJS189の587塩基対Agel/BsrG1フラグメントを、pKJS196を生じさせるpCR076の587塩基対Agel/BsrG1フラグメントに置換した。このベクターは、図11に示した通り、dhfr含有アグリコシルhu−3G9安定CHO発現ベクターであり、正常なFc受容体結合に必要なグリコシル化信号を除去するN319Q置換反応を含有する。
pKJS189、pKJS196及びpKJS195において、BamHI cDHAインサートのDNA配列を確認した。発現ベクターは、CHO細胞に同時移入し、移入細胞は抗体分泌について試験した。図12に示した通り、ならし培地の簡易滴定(Pierce)ヒト抗体検出試験は、移入細胞が合成され、CHO発現ベクターから効率的に重鎖及び軽鎖を分泌したことを示した。
従って、抗体の結合親和性に影響を及ぼすことなく、hu−3G9抗体で修飾される可能性のある次の2種類のグリコシル化部位が存在すると思われる:(1)タンパク質発現及び精製を改善するグリコシル化部位(この部位は軽鎖可変ドメイン配列の5種類全ての変異型で修飾される)を除去するアスパラギン(N)からセリン(S)への置換反応が見られる領域である配列番号2のアミノ酸残基26におけるCDR1領域内のhu−3G9軽鎖可変ドメインにあるグリコシル化部位(2)Fc受容体結合に必要なグリコシル化部位を除去するアスパラギン(N)からグルタミン(Q)への置換が見られる領域であるhu−3G9重鎖変異3型定常領域にあるグリコシル化部位。
実施例6 CHO細胞株発現hu3G9変異5型
hu3−G9変異5型の発現プラスミドpKJS189、pKJS196及びpKJS195をCHO細胞に移入した。αβへの結合特異性を示す抗体分泌の見られる移入細胞胞のhu−3G9変異5型(H3/L5)及びアグリコシル化したhu−3G9変異5型(a−H3/L5)の発現が観察された。
実施例7 8G6抗αβ抗体のヒト化設計
ヒト化抗体の設計においては、相補性決定領域(CDRs)には抗体と最も結合する可能性の高い残基が含まれ、再形成された抗体の中に保存されていると考えられる。CDRsは、Kabat, et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest. 5th Edition, U.S. Dept. Health and Human Services, U.S. Govt. Printing Office (1991)に従った配列によって定義した。CDRsは、重要な残基がCDRループの広範囲の立体構造を決定する標準クラス(Chothia, et al., Nature, 342:877−883 (1989))に分類した。このような残基は、殆どの場合、再形成された抗体に保存されている。このCDRsの重鎖及び軽鎖は、以下の通り標準クラスに分類した。
軽鎖: 重鎖:
L1:15残基 クラス4 H1:5残基 クラス1
L2:7残基 クラス1 H2:17残基 クラス2
L3:9残基 クラス1 H3:17残基 標準クラスなし
このようなクラスに重要な標準的な残基を表3に示した。何れの標準的な残基もルールに従って記載している。ループH3には標準クラスは見られない。
Figure 2009500041
Figure 2009500041
プログラムFASTAを使用して、この可変軽鎖及び可変重鎖とマウスグループ及びヒトサブグループのコンセンサス配列とを比較した(Kabat, et al., 1991)。
8G6可変軽鎖は112アミノ酸重複部分に見られる特異度81.250%のマウスサブグループκ3のメンバーであり、8G6可変重鎖は129aa重複部分に見られる特異度71.318%のマウスサブグループ2aのメンバーである。8G6可変軽鎖は113 aa重複領域でヒトサブグループκ4と特異度65.487%で一致している。8G6可変重鎖は134 aa重複領域でヒトサブグループ1と特異度58.955%で一致している。(配列番号4の)軽鎖のアミノ酸配置10にある特異アミノ酸F及び(配列番号3の)重鎖のアミノ酸配置39にある特異アミノ酸Lを除き、VH/VLパッキング界面残基が保存されている。
可変領域の構造のモデリングは次のように実施した。軽鎖及び重鎖は最新のPDBデータベースの部位コピーと対照させて配列させ、軽鎖及び重鎖の三次元モデルを構築するために使用する構造的フレームを決定した。FASTAを使用したところ、111aa重複部位では、8G6軽鎖がマウスN10 Fabと90.991%の配列同一性を有することがわかった(INSN;解像度2.9A)。126アミノ酸重複部位では、8G6重鎖がマウスJEL42Fabと80.952%の配列同一性を有することがわかった(2JEL;(解像度2.9A)。2JELの重鎖と1NSNの軽鎖とを組み合わせることによって、完全な構造的鋳型が得られた。分子モデリングパッケージモデラー5.0(Accelrys Inc.)を使用し、鋳型構造を使用して、軽鎖及び重鎖の三次元構造を構築した。10個の相同モデルを作成し、分子エネルギーに関して最適な一つを選択した。Procheck分析から、phi/psiマップの有効性の見られない領域では残基が認められないことが示された。
再形成された可変領域の設計においては、抗体フレームワークとして使用するため、最も類似したヒト発現抗体配列を発見しようと試みた。最も近い発現配列を見つけるため、NCBI NRデータベースで、TrEMBLデータベース及びKabatデータベースで、最も相同性のある発現ヒトフレームワークの検索を実施した。重鎖及び軽鎖配列については、(マスキングありのCDR及びマスキングなしのCDRによって)2通りの検索を実施した。最も適した発現配列の選択は、標準的な残基及び界面残基の配列相同性に関する検査及びCDRループ長における類似性に関する検査等で実施した。又、抗体の発生源も決定因子の一つであった。以前にヒト化された抗体は除外した。NCBI NR及びTrBMBLデータベース検索についてはBLASTを使用し、Kabatデータベース検索についてはFASTAを使用した。
最も類似している発現軽鎖は、Kabatデータベースで発見された(Kabat id 026520 AC21B’CL; Ohlin, et al., Mol. Immunol., 33:47−56 (1996))。これはファージ提示法からのPCR増幅scFvであるが、フレームワーク領域のL6生殖細胞系列と100%同一である。重鎖については、NCBIのNRデータベースからのヒトフレームワークgi|392715を選択した。これは、フレームワーク領域の生殖細胞系列VH1−2と100%同一である。両配列とも生殖細胞系列の配列のデータベースを検索し(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/)、この検索結果が次の選択された生殖細胞系列:軽鎖に関してはL6、重鎖に関しては1〜2をもたらした。
モノクローナル抗体のヒト化における最も重要な手技は、ヒトフレームワーク残基からマウスへの復帰突然変異の同定である。経験から、このことが結合部位に近い標準的な残基、界面パッケージ残基及び特異マウス残基を保存するためには特に重要であることが示されている。更に、CDRsの立体配座に及ぼす潜在的な影響については、何れかのCDR残基の6A内に位置する残基を綿密に分析する必要がある。
これまでに8G6再形成可変軽鎖の3つの変異型及び8G6再形成可変重鎖の3つの変異型が設計されている。変異型1には復帰突然変異が最も多く含まれ、変異3型には最も少ない(即ち、最も「ヒト化」している)。表4では、ヒト化8G6(hu8G6)抗体の重鎖及び軽鎖可変ドメイン配列を示す。
Figure 2009500041
表5は、hu8G6重鎖(変異型1、2及び3)及び軽鎖(変異型1、2及び3)可変ドメインタンパク質配列を示す。重鎖可変ドメインの場合、配列は以下を含む:
(a)VH1〜2のFR1由来のヒトFR1;
(b)マウス8G6 CDR1重鎖配列;
(c)VH1〜2のFR2由来のヒトFR2;
(d)マウス8G6 CDR2重鎖配列;
(e)VH1〜2のFR3由来のヒトFR3;
(f)マウス8G6 CDR3重鎖配列;及び
(g)NRデータベースからのヒトフレームワークgi|392715と100%同一であり、WGQGTLVTVSSという配列を有する大多数のヒト抗体に存在するコンセンサスフレームワーク配列由来のヒトFR4。
軽鎖可変ドメインの場合、配列は以下を含む:
(a)L6のFR1由来のヒトFR1;
(b)マウス8G6 CDR1軽鎖配列;
(c)L6のFR2由来のFR2由来のヒトFR2;
(d)マウス8G6 CDR2軽鎖配列;
(e)L6のFR3由来のヒトFR3;
(f)マウス8G6 CDR3軽鎖配列;及び
(g)FGGGTKVEIKという配列を有する大多数のヒト抗体に存在するコンセンサスフレームワーク配列由来のヒトFR4。
Figure 2009500041
Figure 2009500041
以下は再形成可変軽鎖の復帰突然変異についての記載である:
E1D: これはCDR立体構造/抗原結合(Kolbinger, et al., Protein Eng., 8.971−980 (1993))を示す。モデルでは、このE1DとCDRs L1及びL3のS26、Q27及び又はE93の骨格又は側鎖との間に相互作用が見られる可能性がある。このE1Dは変異型2及び変異3型では、置換反応が保存的であることから、除去している。
L46F: これはVH/VLパッキング界面残基である。これも、CDR−L2残基E55の真下に存在すると思われる。このL46Fは変異3型では除去している。
Y49K: この物質はCDR−L2に隣接し、モデルでは残基E55との間に相互作用が見られると思われる。このY49Kは、極めて重要な復帰突然変異である可能性が高いため、除去しない。
以下は再形成可変重鎖の復帰突然変異を説明している:
A24G: この物質はCDR−H1の標準残基である。保存的突然変異。変異型2では除去している。
G26S: この物質はCDR−H1の標準残基である。保存的突然変異。変異型2では除去している。
Q39L: この物質はパッキング界面残基である。このQ39Lは軽鎖と間の相互作用がきわめて少ないため、変異型2では除去している。
M48I: この物質はよく見られる復帰突然変異である。モデルでは、この物質とCDR−H2のY59及びF63との間に相互作用が見られる可能性がある。変異3型では除去している。
V68A: この残基はCDR−H2の下部に位置し、Y59及びF63との間に相互作用が見られる可能性がある。
R72V: この物質はCDR−H2の標準残基である。
T74K: この残基はCDR−H2の下部に位置し、Y53との間に相互作用が見られるか又は接触抗原との間に直接の相互作用が見られる可能性がある。
実施例8 αβ抗体インターナリゼーション
細胞によって取り込まれる抗体は、癌細胞を選択的に標的とし、癌細胞の増殖を阻害するための毒素、放射性化合物又は他の抗癌剤に抱合される可能性があるため、癌等の臨床適用に特定の利益をもたらす可能性がある。抗αβ抗体が取り込まれる能力については、以前に国際特許第WO 03/100033号に記載されていることから、ここでは参考としてそのまま転載する。国際特許第WO 03/100033号では、6.8G6及び6.1A8等のカチオン非依存的モノクローナル抗体(RGD含有リガンド模倣剤)に関してインターナリゼーション(取り込み化)が観察されたことを発表した。しかし、6.3G9、7.1C5及び6.4B4等のカチオン依存性mAbsにはインターナリゼーションは観察されなかった。8G6等の抗体が細胞によって取り込まれる能力は、取り込まれる抗体と治療的成分/治療薬との結合を有利にし、成分/薬剤の細胞内への送達を可能にする。例えば、薬剤又は毒素の成分は8G6取り込み抗体と接合する可能性がある。しかし、この同じ用法が3G9等の非取り込み抗体に適用できる可能性があり、その場合には、化学成分をこのような抗体と接合させ、標的の細胞表面(例えば、腫瘍細胞表面等)に送達させることが可能であると思われる。
実施例9 αβは原発性腫瘍よりも転移性腫瘍で多く発現する
この実験では、上皮性起源の種々の癌でのαβの発現及び転移性部位での発現を試みた他、αβmAbsを遮断する機能がin vivoでのαβ発現腫瘍の増殖を阻害するかどうかを明らかにした。本発明者等は、ヒト咽頭癌、Detroit62に及ぼす自験の抗ヒトαβmAbsのin vitro及びin vivo抗抗体活性を評価した他、これとTβRII:Fcのin vivo抗腫瘍活性とを比較した。自験データは、ヒト癌におけるαβの役割の他、αβmAbsの機能的遮断による治療的介入の可能性を裏付けている。
A. 材料及び方法:
免疫組織化学のために、組織切片は蒸留水で再水和したキシレン及びエタノール中で脱パラフィン化した後、0.45%HO含有のメタノールに浸漬した。この組織をペプシン(00−3009、Zymed[米国カリフォルニア州サンフランシスコ])で培養し、アビジン及びビオチン(SP−2001; Vector Laboratories[米国カリフォルニア州バーリンゲーム])で阻害した。一次抗体を0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)含有のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で希釈し、その組織を4℃にて一晩培養した。マウス異種移植組織での免疫染色β6については、切片を抗αβmAb、2A1(Weinreb, P.H., et al., J. Biol. Chem. 279(17): 17875−17887 (2004))のヒト/マウスキメラ型及び抗ヒトビオチン化二次抗体(PK−6103、Vector Laboratories[米国カリフォルニア州バーリンゲーム])で培養した。ヒト組織での免疫染色β6については、切片をマウス2A1及び抗マウスビオチン化二次抗体(PK−6102、Vector Laboratories)で培養した。この切片にアビジン−ビオチン複合ホースラディッシュ(セイヨウワサビ)ペルオキシダーゼ(Vector Kit、PK−6102)を使用して、室温にて30分間培養した後、製造業者の指示通りに3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)基質を準備し(SK−4100、Vector Laboratories)、切片に室温にて5分間使用した。組織切片をMayerのヘマトキシリンで1分間染色した後、水及びPBS中で洗い流した。
B. 結果:
I. 転移腫瘍におけるαβ発現
αβ免疫染色を種々の転移腫瘍で評価した。転移腫瘍の78%(43/55)が陽性に免疫染色されたことは、転移腫瘍の大多数が強度の染色であることを示す(図13A〜F;図14A〜I)。この結果から、頭頸部腫瘍のみで陽性の免疫染色率が増大し、子宮頸部腫瘍と膵臓腫瘍とは同程度の発現が見られることがわかった(表1)。
Figure 2009500041
2. 子宮内膜腫瘍及び患者を対応させた転移腫瘍におけるαβの発現
上の表1に示した通り、αβ免疫染色は試験した子宮内膜腫瘍の53%で陽性であった。少数の例外はあるが、染色は高悪性度の腫瘍の浸潤性の高い領域になるほど、有意に認められた。一次腫瘍の3例をリンパ節転移腫瘍と対応させた。この内2例では、リンパ節転移腫瘍における免疫染色率は対応させた一次腫瘍と比較して有意に高値であった(図15Aと図15Bとの比較、図15Cと図15Dとの比較)。3例目では、免疫染色率はリンパ節転移腫瘍及び対応させた一次腫瘍の両者で高値であった(データなし)。αβ陽性腫瘍上皮染色率は、3例の一次腫瘍でそれぞれ10%、20%及び90%であったが、対応させた転移リンパ節でのαβ陽性腫瘍上皮の割合は、それぞれ80%、100%及び100%であった。正常な子宮内膜では、嚢胞と同じように、染色が表面層の一部の細胞に限局していた。
3. 浸潤性ヒト乳房腫瘍サンプルにおけるαβの発現
免疫組織化学を用い、上記の「材料及び方法」で記載した方法に従って、αβ発現の程度に関してヒト乳癌細胞の100サンプル以上を評価した。原位置での幾つかの腺管癌の症例(DCIS)において、αβ発現は腫瘍を囲む筋上皮に限局され、腫瘍そのものは観察できなかった(例えば、BrCa19;図16A)。しかし、幾つかの浸潤性乳癌では、同じように腫瘍でαβが発現されていた(例えば、BrCa23;図16B)。
乳房組織の細胞(上皮細胞、筋上皮細胞及び線維芽細胞)における特異的な遺伝子の発現が、DCIS等の非浸潤性腫瘍を含む乳房組織、浸潤性乳癌を含む乳房組織では正常な乳房組織と比較して変化しているという証拠が見られる(Alinen, M, et al., Cancer Cell 6:17−32 (2004); Burstein, H.J, et al., N. Engl. J. Med. 350:1430−1441 (2004))。このような遺伝子発現の変化の多くは、筋上皮細胞で発見されてきている。(正常組織及びDCIS組織の両者の)筋上皮でのαβインテグリンの発現が、おそらくは限局的なTGF−β活性化を通して微小環境をもたらすと思われ、このことが腫瘍の生存能力を支援し、浸潤性腫瘍の進行を促進する可能性がある。MCF10DCIS.com(Miller, F.R, et al., J. Natl. Canc. Inst. 92:1185−1186 (2000))等の浸潤性癌の進行を促進する可能性のあるDCISのin vivoモデルは、乳房腫瘍の進行過程でのavb6の発現を評価する一つの方法を提供していると思われる。腫瘍の非浸潤性初期段階の筋上皮でのαβの発現及びin vivoでの浸潤性表現型への腫瘍進行期としてのαβの発現については、評価できるのではないかと思われる。又、このモデルでは、αβmAbs遮断を使用してαβの機能的役割を試験できる他、共役αβmAbsの有効性も試験できる可能性があると思われる。
4. ヒト膵臓腫瘍サンプルでのαβ発現、患者を対応させた転移及び浸潤性膵臓腫瘍のマウス異種移植モデル
上の表1に示す通り、αβ免疫染色は試験した膵臓腫瘍の80%で陽性であった。8名の別々の患者からの一次膵臓腫瘍のサンプルを免疫組織化学法によって試験したところ、高悪性度腫瘍の浸潤性領域で染色が著明であった(図17A〜17C; 18A〜18E)。この一次腫瘍サンプルは、リンパ節転移細胞とも対応しており(図17D〜17F; 18F〜18J)、この領域でも強力なαβ染色が示されたことは、αβ陽性細胞が一次腫瘍部位から播種されたものであるという考えを裏付けている。正常な膵臓(図17G〜17H; 18K〜18L)では、染色は表面層の一部の細胞に限局していた。
本発明者等は、αβ発現が腫瘍細胞浸潤に及ぼす影響をさらに試験するため、浸潤性ヒト膵臓腺癌のモデルとして、BxPC−3マウス腫瘍異種移植を使用した。動物の脇腹皮下に0.1ml/1匹の輸液を使用して、滅菌生理食塩水に懸濁させた5×10細胞/1匹を移植した(0日目)。30日目に、何れの試験についても、株腫瘍(60〜100mm)の見られるマウスを一対のペアとして、3つの治療群にそれぞれ割り付けた(PBS; mAb 3G9; 可溶性TGF−β受容体II−Ig融合タンパク質(solTGFβRII−Fc))。試験薬は週3回の治療スケジュールでマウスの腹腔内に投与した。マウスに対し、用量10mg/kgの3G9、用量2mg/kgのsolTGFβRII−Fc又はPBS(負の調節)の何れかを注入した。腫瘍増殖は週2回測定し、腫瘍容積は[(幅)×長さ]/2という計算式に従って推定した。治療群の腫瘍は切除し、10%パラホルムアルデヒドで固定し、パラフィン包埋した後、非阻害v6キメラmAb 6.2A1を使用して免疫組織化学的分析のための切片にした。
抗αβmAb 3G9による治療は、腫瘍増殖に直接の影響をもたらし(図19B、19C)、この抗体による治療の約48日後に腫瘍増殖の有意な減少が観察された。観察されたsolTGFβRII−Fcによる増殖阻害の程度は、3G9に関して観察された場合よりも幾分低かった。このような結果は、ヒト膵臓癌の異種移植モデルで抗αβmAb 3G9が腫瘍増殖を阻害することを示している他、このような遮断抗体が腫瘍増殖を阻害するのに有用であり、腫瘍浸潤を拡張することによって、原発性ヒト腺癌においても有用である可能性を示唆している。
実施例10 αβ機能遮断mAbsが腫瘍細胞遊走、浸潤の他、αβ発現腫瘍細胞のMMP生成を阻害する
In vitroで、β移入細胞の浸潤、遊走及びマトリックスメタロプロテアーゼ9(MMP−9)を生成する能力を遮断する能力について、αβ遮断モノクローナル抗体(mAb)3G9(Weinreb, P.H., et al., J. Biol. Chem. 279(17): 17875−17887 (2004))及び可溶性組換え型TGF−βRII−Ig(Cosgrove, D, et al., Am. J. Pathol. 157(5): 1649−1659 (2000))を評価した。このような活性はそれぞれ、腫瘍細胞浸潤並びに遊走と関連付けてモニターした。3G9及びTGF−βRII−Igの効果は、非移入親細胞(C1)及びC1細胞のβ移入誘導体(VB6)を使用して評価した。
遊走並びに浸潤試験
既述の通り、C1及びVB6ヒト口腔扁平癌細胞はKGM培地の中で増殖した(Thomas, G.J., et al., J. Invest. Derm. 117(1):67−73 (2001)。本発明者等は遊走を測定するため、製造業者の指示に従ってFLUROBLOKTMプレート(平板培地)及びインサート(BD Biosciences[米国マサチューセッツ州ベッドフォード])を使用した。手短に言えば、空のウェルにKGM培地を満たしたものか又は無血清KGMを陰性対照とした。細胞を回収し、抗体を使用して無血清培地で前培養した。50,000細胞をインサートに加え、これをウェルに入れ、組織培養器の37℃にて24時間培養した。培養後、細胞及び培地をインサートの上部から除去した。フィルター底部に遊走した細胞は2μg/mLのカルセイン(Invitrogen Corpn.[米国カリフォルニア州カールズバッド])で1時間標識化し、底部読み取りモードの蛍光性を測定することによって、定量化した。阻害率は、抗体の存在下で遊走した細胞数を培地のみの場合と比較した減少率として計算した。浸潤度についても同じような方法で、MATRIGEL(登録商標)でコーティングされたFLUROBLOCKインサートを使用し、48時間培養して測定した。
MMP生成の定量化
1% FBSを含有する培地の細胞は、記載の時間にわたりMATRIGELコーティングウェル(BD Biosciences)中で培養した。上澄みを採取し、細胞残渣を遠心分離で除去した後、試験まで凍結させた。MMP濃度をELISA(R&D, Systems[米国ミネソタ州ミネアポリス])によって定量化した。
結果:
図20A〜20Cに示す通り、αβ遮断mAb 3G9はin vitroで遊走、浸潤及びVB6細胞によるMMP−9の生成を有意に阻害した。又、可溶性組換え可溶性TGF−βRII−IgによるTGF−β活性の遮断も、浸潤及びVB6細胞によるMMP−9の生成を阻害したが(図20B及び20C)、このような細胞の遊走には作用を及ぼさなかった(図21A)。このようなデータは、αβ機能の遮断とTGF−β活性の遮断とを比較して、明白な機能的差異を示している。この結論は、αβにはフィブロネクチンへの結合を通じての細胞接着及び遊走の両者を媒介する他、潜在的な前駆物質TGF−βの活性化を媒介する能力(Sheppard, D., Cancer Metast. Rev. 24:395−402 (2005))と一致している。
実施例11 αβmAbはヒト結腸直腸癌の異種移植モデル(LIM1863)における間質浸潤を阻止する
1. 背景
新規結腸癌モデルであるLIM1863は、最近になって特徴が明らかにされた(Bates, R.C. and Mercurio, A.M., Mol. Biol. Cell 14:1790−1800 (2003); Bates, R.C., et al., J. Clin. Invest. 115(2):339−347 (2005))。In vitroでは、LIM1893細胞は懸濁培養中で増殖し、高分化型の3D球状体(奇形)となった。しかし、TGF−β及びTNFαへの曝露後、この細胞株は、典型的にはE−カドヘリンの損失が見られる上皮から間葉への移行(EMT)を特徴とする形態学的変化を伴う移行性単分子層表現型に変換した。この移行はαβ発現の有意な増大を伴う。In vivoでは、ヌードマウスの脇腹に皮下注入する場合、LIM1863細胞は発癌性である(Bates, R.C., et al., J. Clin. Invest. 115(2): 339−347 (2005))。図6に示した通り、LIM1863細胞はαβ発現の著明なパターンを示している(上述)。具体的に言えば、αβの発現は一次腫瘤から腫瘍間質内への浸潤が見られる細胞において特に著明である。この所見は、先に記載した通り、このような細胞が上皮から間葉への移行(EMT)を経ているという考えと一致している(上述を参照)。
このため、本発明者等は、ヒト結腸直腸癌の異種移植モデルとしてLIM1863細胞を使用することを選択し、このモデルでの間質浸潤におけるαβの関与の可能性を試験した。
2. 材料及び方法
LIM1863細胞はRPMI−1640(GIBCO; Invitrogen Corp.[米国カリフォルニア州ラホイヤ])のオルガノイドとして増殖させ、5%ウシ胎仔血清(FCS)で補完した。LIM1863オルガノイド(約8×10細胞)は、雌のヌードマウスの脇腹に皮下的に接種した。試験した何れのマウスもBiogen IdecのInstitutional Animal Care and Use Committee(IACUC)の許可を得ていた。このマウス集団に10mg/kgの抗αβ特異的マウスモノクローナル抗体3G9(Weinreb, P.H., et al., J. Biol. Chem. 279(17):17875−17887 (2004))、2mg/kgの組み替え可溶性TGF−βRII−Ig融合タンパク質(Cosgrove, D., et al., Am. J. Pathol. (157(5):1649−1659 (2000))又はビヒクルの対照物質(PBS)を週3回腹腔内投与した。腫瘍容積は、測径器を使用して対応する時点に測定し、その腫瘍用量を計算式(L×W)/2を使用して計算した。異種移植片は7週間後に採取し、これをホルマリンで固定し、パラフィンに埋め込んだ切片を上記実施例9(図21)で記載した通りに実施された免疫組織化学法に使用した。
結果
抗αβmAb 3G9及び/又は可溶性の組み替えTGF−βRII−Igは、腫瘍増殖に直接的な作用を及ぼさなかった(図22A、22B)。しかし、このようなリガンドは、治療に対して盲検であった病理学者によって実施された間質内のαβ陽性腫瘍細胞領域(図22〜22F)の定量化から評価した通り、LIM1863細胞の間質浸潤を約80%と有意に阻害した(図22C)。
実施例12 非ヒト霊長類細胞で発現したαβインテグリンに関するマウス6.3G9(m3G9)の親和性及び生物活性
概要
非ヒト霊長類(NHP)αβインテグリン上の抗αβ遮断モノクローナル抗体6.3G9(m3G9)に関する親和性及び生物活性は、種々のin vitro方法によって測定した。蛍光活性化細胞分類(FACS)を使用したところ、高濃度のαβを発現するNHP細胞株は、2種類の動物種から同定された(アフリカミドリザルからは12MBr6、アカゲザルからは4MBr5)。m3G9は12MBr6及び4MBr5で発現したαβと結合し、ED50値はそれぞれ0.30μg/mL及び0.38μg/mLであった。又、m3G9は12MBr6及び4MBr5がそれぞれのIC50値0.22μg/mL及び0.29μg/mLで、TGFβ1潜伏関連ペプチド(LAP)と結合するのを阻害した。最終的に、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1プロモーター(TMLC)の一部を安定して発現するTGFβ応答性ミンク肺上皮レポーター細胞による共培養試験を使用して、IC50値0.31μg/mLで測定した通り、m3G9は4MBr5細胞株が潜在TGFβを活性化する能力を遮断した。
緒言
この試験の目的は、非ヒト霊長類(NHP)細胞で発現するαβインテグリンのためのαβモノクローナル抗体6.3G9(m3G9)の親和性及び生物活性を測定することであった。m3G9は、ヒト化モノクローナル抗体hu3G9(BG00011)のマウス前駆物質である。このマウス抗体は高親和性の特異的αβインテグリン標的試薬である。m3G9はその標的である高親和性(K=16pM)のαβインテグリンと結合し、細胞発現αβとリガンド(TGFβ潜伏関連ペプチド(LAP)及びフィブリネクチン)との結合を阻害し、αβが潜伏TGFβ1を活性化する能力を遮断する。この抗体が結合するためにはα及びβの両者のサブユニットの存在が必要であり、他の関連インテグリン(αβ、αβ3、αβ、αβ及びαIIbβ)との交差反応性は観察されておらず、このことはm3G9がαβに対して高度に特異的であることを示している
マウスとヒトβ6インテグリンとは(相同性89.5%)、マウスとヒトαvインテグリンとがそうであるように(相同性92.8%)、配列相同性が高度である。NHPからのαβの配列は、まだ決定されていないが、これも高度な配列相同性を有すると予測される。
NHPαβのためのm3G9の親和性を決定するために、FACSによって結合性を測定した。ヒトTGFβ1 LAPへの細胞接着を阻害するm3G9の能力は、細胞接着試験で評価した。最終的に、潜伏TGFβのNHPαβ媒介活性化を阻害するm3G9の能力は、共培養試験を使用して決定した。
材料及び方法:
試薬
マウスモノクローナル抗体6.3G9(m3G9)及び6.4B4は、参考文献1及び本明細書で上に記載した通り、生成及び精製した。組換えヒトLAP(LAP)はR&D Systems(カタログ番号246−LP)から購入した。ヒトβ6移入SW480(ヒト結腸直腸腺癌)細胞株(SW480β6)はDean Sheppard(UCSF)から提供された。
NHP細胞株
次の細胞株はAmerican Type Culture Collection(ATCC)から入手した:
Figure 2009500041
蛍光活性化細胞分類(FACS)
細胞はトリプシン処理によって採取し、リン酸緩衝生理食塩水で1回洗浄後、FC緩衝液中(PBS、2% FBS、0.1% NaN、1 mM CaCl、及び1mM MgCl)で再懸濁させた。次に、1×10細胞に10μg/mL m3G9を加え、氷上の計50μLのFC緩衝液中で0.5時間培養した。培養後の細胞は氷温のFACS緩衝液(PBS、2% FBS、0.1% NaN)で2回洗浄し、Alexa488−共役ヤギ抗マウスIgG(Jackson ImmunoResearch)の1:200の希釈物を含有する100μLのFC緩衝液中で再懸濁させた後、氷上で30分間培養した。次に、細胞を氷温のFC緩衝液で2回洗浄し、100μLのFC緩衝液及び50μLのパラホルムアルデヒド中で再懸濁させた。標識した二次抗体の結合は、フローサイトメトリー(Biogen Idec Research core facility)でモニターした。
細胞接着試験
96ウェルマイクロタイタープレートを重炭酸ナトリウム50mM中で希釈した0.5μg/mL LAPの50μL/ウェルでコーティングし、pH9.2の4℃にて一晩保存した。このプレートをPBS(100μL/ウェル)で2回洗浄し、PBS(100μL/ウェル)中の1%BSAにより、25℃にて1時間、活性を遮断した後、分析緩衝液(50mMトリス、pH 7.5、150mM NaCL、1mM CaCl、1mM MgCl)の100μL/ウェルで2回洗浄した。分析緩衝液中の12MBr6又は4MBr5細胞(4〜12×10細胞/mL)に2μM蛍光染料(BCECF−AM、Molecular Probes)加え、37℃の水槽で15分間静かに振盪培養し、遠心分離によって採取した後、4〜12×10細胞/mLになるまで分析緩衝液中に再懸濁させた。洗浄したプレートの各ウェルに25μLの2倍濃度のm3G9及び標識細胞25μLを加え、25℃にて0.5時間培養した。このプレートを分析緩衝液(100μL/ウェル)で4〜6回洗浄し、プレート上で捕捉した細胞に起因する蛍光発光を96ウェル蛍光プレート読み取り器(CytoFluor Series 4000、Perseptive Biosystems)に記録した。最終洗浄段階の前(即ち、全細胞数を加えたもの)と後(結合した細胞)との蛍光発光と比較することによって、結合率を決定した。
共培養試験
TMLC(プラスミノーゲン−アクチベーター阻害剤1タンパク質の一部を安定的に導入されたミンク肺上皮細胞株Mv 1 Lu)を2mLのLグルタミン、ペニシリン−ストレプトマイシン及び200μg/mLのG418を加えたDMEM+10%ウシ胎仔血清中で増殖させた。細胞をPBS+5mM EDTAによってフラスコから引き上げ、PBS+0.1% BSA中で洗浄し、血球計算板によってカウントした後、96ウェルプレートに平板培養した。DMEM+0.1%FBS中の96ウェルプレートに10細胞/ウェルでTMLCを植え込んでいる間、αβ発現細胞は氷上で2時間保存し、37℃にしてから接着させ、その後、結合したTMLCをDMEM+0.1%BSAで1回洗浄した。モノクローナル抗体はαβ発現細胞に加えてDMEM+0.1%BSAで希釈した後、室温にて20分間、前培養した。次に、DMEM+0.1%BSA中で、このαβ発現細胞を4×10細胞/ウェルのTMLCに加えた(100μL/ウェル)。プレートを加湿状態の二酸化炭素を強化した培養器で、37℃、20時間培養した。上澄み液は廃棄し、代わりに100μL PBS+1mM Ca+2及び1mM Mg+2を補充した。細胞を溶解させ、マイクロプレート照度計(Tropix TR717マイクロプレート照度計、Perkin Elmer Life Sciences)を使用して、LucLite kit(Perkin Elmer Life Sciences[米国マサチューセッツ州ボストン])でルシフェラーゼ(発光酵素)を検出した。
結果:
1. 霊長類αβインテグリンのためのマウス6.3G9(m3G9)の結合親和性及び遮断効力
非ヒト霊長類(NHP)αβインテグリンのm3G9の親和性を試験するため、ATCCから4種類のNHP細胞株を入手した。初回スクリーン(図23)では、12MBr6並びに4MBr5細胞株でαβ発現量が最も高かったため、この2種類の細胞株をm3G9の特性決定のために使用した。αβ非遮断抗体である6.4B4も又、m3G9に関して観察された強度とほぼ同じ平均蛍光強度で12MBr6及び4MBr5と結合した。
1.1 細胞発現インテグリン(FACS)との結合
m3G9と12MBr6及び4MBr5との結合は、材料及び方法の項で記載した通り、蛍光活性化細胞分類(DACS)を使用して測定した。各細胞株にm3G9の完全滴定を実施し、非線形回帰を使用して、ED50(半最大信号をもたらす抗体の濃度)を測定した。12MBr6及び4MBr5のED50値はそれぞれ0.30μg/mL(図24A)及び0.38μg/mL(図24B)であった。
1.2 LAPに対する細胞接着
12MBr6及び4MBr5がLAPと結合する能力は、細胞接着試験を使用して明らかにした。この接着はm3G9によって遮断されるが、対照用タンパク質(BSA)又はαβ非遮断抗体(6.4B4)によっては遮断されなかった(図25)。この相互作用を遮断するm3G9の効力は、各細胞株に及ぼす阻害の濃度依存性を測定することによって評価した(図26)。このような実験から、IC50値(半最大阻害をもたらす抗体の濃度)を決定した。12MBr6及び4MBr5のIC50値はそれぞれ0.220μg/mL及び0.29μg/mLであった。
1.3 TGFβ活性化(共培養試験)
12MBr6及び4MBr5が潜在的TGFβを活性化する能力は、共培養試験を使用して明らかにした。この試験では、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1プロモーター(TMLC)の一部を安定的に発現するTGFβ応答性ミンク肺上皮レポーター細胞と共に細胞を培養した(図27)。この試験では、細胞内シグナル伝達及び/又は潜在的TGFβの生成の差も活性化に影響を及ぼすと思われることから、αβの発現量はTGFβ活性化を促進するには十分ではない。このような2種類の細胞株の内、4MBr5のみが潜在的TGFβの活性化において効果的であり、一方の12MBr6は作用を示さなかった。又、ヒトαβを安定的に発現するβ6−移入ヒト結腸癌細胞株である陽性対照細胞株SW480β6を使用した場合にも、活性化が観察された。非移入対照親細胞株(SW 480)は、予測通りに活性化を示さなかった。
4MBr5によるTGFβ活性化を遮断するm3G9の能力は、同じ実験で測定した。TGFβ活性化は、1μg/mL又は10μg/mLの何れかをm3G9を加えることによって遮断されたが、非遮断抗αβ抗体6.4B4を加えても遮断されなかった。このような濃度でのm3G9の4MBr5細胞に及ぼす阻害作用は、SW480β6細胞株を使用して観察された場合と類似していた。個々の実験において、4MBr5媒介性TGFβ活性化に関するm3G9阻害の用量依存性が明らかにされた(図28)。4MBr5及びSW480β6のIC50値はそれぞれ0.31μg/mL及び0.37μg/mLであった。
2. m3G9の親和性に関する動物種間の比較
マウス、NHP及びヒトαvβ6に関するm3G9の結合及び活性について得られたデータを次の表にまとめている。この表の最初の欄は、FACSによって測定した結合ED50sを示している。各場合の測定したED50は0.38μg/mL(2.5nM)以下であった。表の2番目の欄は、細胞接着のm3G9による阻害に関するIC50値を示している。各場合のm3G9による細胞接着は、IC50≦0.29μg/mL(1.9nM)で阻害されている。表の3番目の欄は、共培養試験を使用して明らかにしたように、αβ媒介性TGFβ活性化の阻害に関するIC50値を示している。NHP細胞株4MBr5は、ヒト細胞株SW480β6と類似の活性を示した(IC50値はそれぞれ0.40μg/mL及び0.24μg/mL)。
Figure 2009500041
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実施例13 アルポート症候群を来したマウス(Col4A3−/−)におけるマウス抗αvβ6モノクローナル抗体の作用
要約:
αvβ6は、上皮のリモデリングの部位に優先的に発現し、潜在的前駆体であるTGF−βと結合して活性化することが明らかになっているTGF−βを誘導インテグリンである。本明細書では、αvβ6が、膜性糸球体腎炎、糖尿病、IgA腎症、グッドパスチャー症候群及びアルポート症候群においてヒト腎上皮で過剰発現することを明らかにする。腎疾患におけるαvβ6の果たしうる調節の役割を評価するため、αvβ6モノクローナル抗体(mAb)の阻害機能の作用及び、アルポート症候群のマウスモデルであるCol4A3−/−マウスにおける腎線維症に対するβ6サブユニットの遺伝子除去を試験した。アルポート症候群マウス腎におけるαvβ6の発現は、主として皮質尿細管上皮細胞に認められ、線維症の進行と相関した。αvβ6阻害mAbの投与により、活性化線維芽細胞の蓄積及び間質性コラーゲンマトリックスの沈着を阻害した。同様に、腎線維症の阻害がβ6欠損アルポート症候群マウスで認められた。腎組織の転写プロファイルは、αvβ6阻害mAbが線維性及び炎症性媒介物質の発現の疾患関連変化を有意に阻害したことを明らかにした。組換えの可溶性TGF−β RIIの投与により同様の転写調節パターンが得られ、αvβ6及びTGF−βの調節機能が分担していることが示唆された。これらの所見は、αvβ6が腎線維症の調節に寄与することができることを示し、このインテグリンが治療標的としての可能性を有することを示唆している。
緒言:
進行性線維症は、末期の腎疾患にいたる共通のプロセスであり、上皮リモデリング、線維芽細胞の活性化、炎症及び細胞外マトリックス(ECM)との細胞の相互関係の再構築によって助長される。これらの事象に寄与する分子的機序は複雑で、TGF−β軸の調節不全、ECMリモデリング異常及びインテグリンスーパーファミリーの細胞接着受容体の発現及び機能の変化を含む1〜5。近年の試験で、腎上皮及び間葉細胞において幾つかのインテグリン及び関連分子が重要な制御機能を有することが明らかにされた3、6〜8
インテグリンの中でも、腎疾患でその発現が強度に促進されるのは、TGF−β誘導性インテグリンαvβ6である5、9、10。αvβ6の発現は一般に上皮細胞に限定され、そこで正常な成人組織では低レベルで発現し、成長、外傷及び新生物があればレベルが上昇する9、11〜13。αvβ6は健常な成人腎では比較的低レベルで発現するが、その発現は成長中のマウスの腎、特に近位尿細管、ヘンレ係蹄及び集合管で顕著である11、12、14。近年、ヒトの種々の腎疾患において、αvβ6の発現レベルが上昇することが報告されている。
組織リモデリング中にin vivoでαvβ6の発現レベルが上昇することと一貫して、培養上皮細胞中のαvβ6インテグリンの発現は、EGF及びTGF−βをはじめとする上皮リモデリングを制御するサイトカインによって誘導することができる5、9。更に、トランスジェニックマウスの皮膚におけるβ6の過剰発現は、自発性慢性創傷の形成を惹起することが明らかになり15、αvβ6が上皮組織のリモデリングを調節する重要な役割を担っていることが示唆された。
αvβ6の既知のリガンドには、フィブロネクチン、テネイシン及び潜在性関連ペプチド1及び3(LAP1及びLAP3)、TGF−β1及びβ3の潜在的前駆体のN末端フラグメントが含まれる16〜19。これらのリガンドに結合した結果、αvβ6は細胞接着、細胞伸展、細胞移動及び潜在的TGF−βを媒介することができる。TGF−βは、潜在的タンパク質として合成され、分割されて、成熟した活性C末端TGF−βサイトカインと非共有結合的に関連するN末端LAPと共に分泌される。この潜在的TGF−β複合体は、その固有の受容体と結合することができず、従ってプロテアーゼによる分割、低pH又はイオン化照射への曝露及び潜在的複合体の構造転換といった固有の受容体への結合を可能にするような幾つかの機序の一つによって活性型に変換されない限り、生物学的に不活性のままである20〜22。活性化をもたらす構造転換は、LAP1及びLAP3に含まれるRGDモチーフへの、αvβ6が関与するインテグリンの直接結合によって誘導される可能性がある。この結合により、TGF−β前駆体が、受容体への結合が可能な状態へと変換される17,19。これらの所見は、上皮細胞表面のαvβ6の発現を促進することが、局所的なTGF−β活性化につながり、バイスタンダー細胞におけるTGF−β依存性事象がパラ分泌性に活性化されることを示唆するものである。これには、αvβ6の発現部位で炎症及び線維症が最初に変化することによってTGF−β活性が間接的に低下したという可能性も含まれる。
TGF−βは腎線維症の中心的な調節物質として関与しているため、そのαvβ6による局所的な活性化が腎疾患の発症及び進行において重要なプロセスになっており、αvβ6機能を阻害することにより腎線維症の発現を抑制できるという仮説を立てた。本明細書に記載の試験で、αvβ6がマウス腎線維症モデル及び線維症を来したヒト腎試料において高度にアップレギュレートされることを明らかにする。ヒトのアルポート症候群で認められるのと同じ進行性腎疾患のモデルであるCol4A3−/−マウスを使用して、モノクローナル抗体によるαvβ6のリガンド結合及びTGF−β活性化機能の阻害23並びにβ6の遺伝子除去が、糸球体及び尿細管間質性線維症の両方を抑制し、腎組織構造の破壊を遅延させることができることを示す。αvβ6インテグリンの発現は腎においては尿細管上皮細胞に限定されるが、組織の遠位部でも保護作用を示すことを明らかにする。これらの所見は、抗線維症作用も、尿細管上皮細胞でのαvβ6の直接的な阻害作用に加えて、間接的な腎外での作用によって媒介される可能性を示している。遅延投与試験では、αvβ6の治療的阻害が腎線維症の進行を抑制するだけでなく、既存の線維症病変を治癒させる可能性も有していることが示されている。腎疾患進行に関連し、αvβ6阻害によって影響を受ける分子署名を解析したところ、αvβ6を阻害する抗体の治療的影響は、全身性のTGF−β阻害のそれと同じであり、TGF−β活性の低下に機械的に関与することが示された。これらのデータは、αvβ6が腎線維症の調節に関与しており、その治療的制御において新しい分子標的となりうることを示唆している。
材料及び方法
1. 試薬
αvβ6モノクローナル抗体を、本明細書及び過去の刊行物23に記載の通りに生成した。ヒト/マウスキメラ2A1及び3G9 cDNAを、First Strand cDNA合成キット(Amersham/Pharmacia[米国ニュージャージー州ピスカタウェイ])を使用して、重鎖には定常領域プライマーCDL−739を、軽鎖にはCDL−738と共に個々の親ハイブリドーマの全RNAから生成した。重鎖及び軽鎖の可変領域遺伝子を、cDNA合成に使用したのと同じ3'プライマー及び殆どのマウス抗体遺伝子シグナル配列(請求により入手可能な配列)に特異的な縮重プライマーのプール及びPfu DNAポリメラーゼ(Stratagene[米国カリフォルニア州ラホイヤ])を使用してポリメラーゼ連鎖反応により増幅した。クローン化した重鎖及び軽鎖の可変領域を、ヒトIgG1定常領域と共に哺乳類発現ベクターに結合させた。組換え可溶性マウスTGF−β受容体II−Ig型融合タンパク質(rsTGF−βRII−Ig)を、過去の刊行物に記載の通り、R&D Systems(532−R2、米国ミネソタ州ミネアポリス)から購入した。抗体は下記の通り購入した。FITC抱合汎抗サイトケラチンモノクローナル抗体(C−11)、Sigma−Aldrich(F3418、米国ミズーリ州セントルイス);抗ラミニンB1鎖モノクローナル抗体(LT3)、Chemicon(MAB1928、米国カリフォルニア州テメキュラ);フィコエリトリン(PE)抱合抗αvモノクローナル抗体(RMV7)、Chemicon(CBL1346P);ウサギ抗αv、Chemicon(AB1930);PE−ラットIgG1、BD Biosciences(553925、米国カリフォルニア州サンホゼ);及び抗平滑筋アクチン(SMA)−Cy3、Sigma−Aldrich(C−6198)。潜在的TGF−βを発現する293細胞の異種移植部位に比べて、本質的に活性なTGF−βを発現する293細胞の異種移植部位に優先的に結合する抗体として24、ウサギポリクローナル抗TGF−β、Santa Cruz Biotechnology(sc−146、米国カリフォルニア州サンタクルーズ)を同定した。
2. 動物
遺伝的背景129Sv/Jを有するCol4A3+/−マウスを、Dr. Domonique Cosgrove(Boy's Town National Research Hospital、米国ネブラスカ州オハマ)から入手し、注射試験用に交配してCol4Ad−/−マウスを作成した。遺伝的背景129SVを有するβ6−/−マウスを、Dr. Dean Sheppard(カリフォルニア大学[米国カリフォルニア州サンフランシスコ])から入手し、Col4A3+/−マウスと交配させた。全ての動物はBiogen Idecで飼育し、全ての動物試験は承認され、Institutional Animal Care and Use Committee(研究機関内の動物の管理及び使用に関する委員会)に従って実施した。
3. フローサイトメトリー
マウスβ6安定トランスフェクトNIH3T3細胞(NIH3T3b6)を、過去の刊行物23に記載の通り作成した。細胞をトリプシン処理により回収し、PBSで洗浄し、FC緩衝液(1×PBS、2%FBS、0.1% NaN3、1mM CaCl2及び1mM MgCl2)で再懸濁させた。細胞0.2×105を、精製一次抗体を含有する合計容量100μLのFC緩衝液中で、氷上で1時間培養した。培養後、細胞を氷冷したFC緩衝液で2回洗浄し、5μg/mLのPE抱合ロバ抗マウスIgG(Jackson ImmunoResearch)を含有するFC緩衝液100μLで再懸濁し、氷上で30分間培養した。αvの発現を監視するため、細胞をPE抱合ラット抗マウスαvモノクローナル抗体(RMV−7)及び対照のPE抱合ラットIgG1と共に培養した。細胞を氷冷したFC緩衝液で2回洗浄し、標識二次抗体の結合をフローサイトメトリーで監視した。
4. 免疫組織化学
組織切片をキシレン及びエタノール中で脱パラフィン処理し、蒸留水で再水和して、0.45% H2Oを含有するメタノールに浸漬した。組織をペプシン(00−3009, Zymed[米国カリフォルニア州サンフランシスコ])と共に培養し、アジビン及びビオチン(SP−2001; Vector Laboratories[米国カリフォルニア州バーリンゲーム])で阻害した。一次抗体を0.1%BSA含有PBSで希釈し、組織を一晩4℃にて培養した。マウス組織にβ6による免疫染色を施すため、切片をヒト/マウスキメラ型抗αvβ6モノクローナル抗体2A123及び抗ヒトビオチン化二次抗体(PK−6103, Vector Laboratories[米国カリフォルニア州バーリンゲーム])と共に培養した。ヒト組織にβ6による免疫染色を施すため、切片をマウス2A123及び抗マウスビオチン化二次抗体(PK−6102、Vector Laboratories)と共に培養した。アビジン−ビオチン複合体−西洋ワサビペルオキシダーゼ(Vector Kit、PK−6102)を切片に塗布し、30分間室温にて培養し、3,3'−ジアミノベンジジン(DAB)マトリックスを指示通りに調製し(SK−4100、Vector Laboratories)、室温にて5分間切片に塗布した。組織切片をMayer's Hematoxylinで1分間染色し、水及びPBSで洗い流した。
O.C.T.化合物(カタログ番号4583、Sakura[日本東京])に包埋した凍結組織切片をアセトン中で固定して、PBS中の0.5%カゼイン/0.05%チメロサールで阻害した。ヒト組織にβ6による免疫染色を施すため、切片をマウス2A123及び抗マウスAlexa fluor 594二次抗体(A−11032、Molecular Probes)と共に培養した。又、マウス組織にβ6による免疫染色を施すため、切片を2A1のヒト/マウスキメラ型及び抗ヒトAlexa fluo 594二次抗体(A−11014、Molecular Probes)と共に培養した。ラミニン及びαvの免疫染色については、抗ラットAlexa fluor 488抱合二次抗体(A−11006、Molecular Probes)を使用した。その他全ての抗体は前記の通り直接抱合した。画像は全て20倍で撮影したが、図2Aのみは40倍で撮影した。ヒト組織試料は全て、当地の施設内審査委員会の承認及び患者の承認を得てから入手した。
5. 免疫組織化学の定量化
MetaMorph v5.0(Universal Imaging Corporation[米国カリフォルニア州サニーベール])を使用して、SMA免疫染色を定量化し、全体の画像サイズに対する陽性の百分率として表した。各動物について、少なくとも皮質切片5つ及び髄質切片1〜2つの20倍画像を解析した。投与群の統計学的解析をANOVAを使用して実施した。
6. mAbs及びrsTGF−βII−IgによるCol4A3−/−マウスの処置
遺伝的背景129Sv/Jを有するCol4A3−/−マウスを交配して、Col4A3−/−マウスを作成した。マウスにはタンパク質を1週間に3回、3週齢から7又は8.5週齢になるまで指示通り腹腔内注射した。モノクローナル抗体は4mg/kg、rsTGF−βRII−Igは2mg/kg腹腔内注射した。マウスを安楽死させ、RNA採取及び免疫染色のため腎を回収した。全ての動物試験は承認され、Institutional Animal Care and Use Committee(研究機関内の動物の管理及び使用に関する委員会)に従って実施した。
7. 全RNAの精製及びcDNAの合成
腎をTRIzol(155−96−018、Invitrogen[米国カリフォルニア州カールズバッド])中で直接ホモジナイズし、製造業者のプロトコルに従いつつも、1mLの酸フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール25:24:1 pH6.6抽出物を追加して、RNAを抽出した。精製された全RNAをH2O(Ambion Inc.[米国テキサス州オースチン])で処理したジエチルピロカーボネート(DEPC)に再懸濁して、260及び280を記録した(Spectra max Plus、Molecular devices[米国カリフォルニア州サニーベール])。残留DNAをDnase I amplification grade(カタログ番号18068−015、Invitrogen)5単位を20℃にて15分使用して除去した。高性能cDNAアーカイブキット(カタログ番号4322171、Applied Biosystems Inc.[米国カリフォルニア州フォスターシティ])を製造業者のプロトコル通りに使用して、cDNAを作成した。
8. Taqman用のプライマー、プローブ及びオリゴヌクレオチド標準テンプレートの設計
オリゴヌクレオチドプライマー及びTaqman MGBプローブをAffymetrix共通配列から、Primer Express version 2.0.0(Applied Biosystems Inc.)を使用して設計した。Taqman MGBプローブは、5'共有結合の蛍光受容体染料(FAM)と共に設計し、副溝結合剤/非蛍光クエンチャー(MGBNF)が3'末端に共有結合した。オリゴヌクレオチド標準テンプレートは、アンプリコンの5'及び3'末端に10bpの遺伝子特異的配列を追加することによって設計した。逆相HPLCでプライマーを精製し、オリゴヌクレオチド標準テンプレートはBiosearch technologies Inc.(米国カリフォルニア州ノバト)から購入した。HPLCで精製されたマウスグリセラルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)用のプライマー及びプローブを、Biogen Idecで合成した[CATGGCCTTCCGTGTTCCTA, GCGGCACGTCAGATCC, 6FAM−CCCCAATGTGTCCGTC]。
9. Taqman熱サイクリング
下記の条件で、7900HT(Applied Biosystems Inc.)サーマルサイクラーで、試料及び標準品の4連のPCR反応を処理した。50℃にて2分間(ウラシルN−デグリコシラーゼ消化物)、95℃にて10分間(Taq熱安定ポリメラーゼの活性化)及び95℃にて15秒間及び60℃にて60秒間を40サイクル。各反応ウェルについて操作期間中7秒毎に蛍光を測定した。Sequence Detection Software(Applied Biosystems Inc.)を使用してオリゴヌクレオチド標準曲線との比較によって、各試料の相対的転写量を決定した。
10. プローブの標識、ハイブリダイゼーション及び転写プロファイルのスキャニング
Genechip(登録商標) Expression Analysis(Affymetrix[米国カリフォルニア州サンタクララ])のAffymetrix Technical Manual(701021 rev 1)に記載のEukaryotic Target Preparationプロトコルに従って、試料の標識、ハイブリダイゼーション及び染色を実施した。要約すれば、精製した全RNA 5μgを、200UのSuperScript II(カタログ番号18064−022、Invitrogen)及び0.5μgの(dT)−T7プライマー[5'−GGCCAGTGAATTGTAATACGACTCACTATAGGGAGGCGG(T)24]が入った20μLの第一鎖反応液で42℃にて1時間使用した。第二鎖の合成は、40Uの大腸菌DNAポリメラーゼ(カタログ番号18010−025、Invitrogen)、2Uの大腸菌RNase H(カタログ番号18021−071、Invitrogen)及び10Uの大腸菌DNAリガーゼ(カタログ番号18052−019、Invitrogen)を添加した後に、16℃にて2時間培養することによって実施した。この第二鎖合成反応液を、Genechip(登録商標) Sample Cleanup Module(カタログ番号900371、Affymetrix[米国カリフォルニア州サンタクララ)を使用して製造業者のプロトコルに従って精製した。精製したcDNAを、BioArray high yield RNA transcription labeling kit(カタログ番号42655−40、Enzo Life Sciences, Inc.[米国ニューヨーク州パーミンデール])を使用して製造業者のプロトコルに従って増幅し、70〜120μgのビオチン標識cRNA(相補的RNA)を作成した。マウスMgU74Av2、MgU74Bv2及びMgU74Cv2 GeneChip(登録商標)プローブアレイを、製造業者のプロトコルに従って、GeneChip(登録商標) Hybridization Oven 640(Affymetrix[米国カリフォルニア州サンタクララ)の中でプレハイブリダイズした。フラグメント化した標識cRNAを、100mMの2−モルホリノエタンスルホン酸、1Mの[Na+]、20mMのEDTA、0.01% Tween 20、0.5mg/mLのアセチル化BSA、0.1mg/mLのニシン精子DNA、対照オリゴB2及び対照転写産物bioB 1.5pM、bioC 5pM、bioD 25pM及びcre 100pMを含有する1×ハイブリダイゼーション緩衝液300μL中で再懸濁させ、製造業者のプロトコルに従って、Genechip(登録商標)プローブアレイ(Affymetrix[米国カリフォルニア州サンタクララ)とハイブリダイズした。ハイブリダイズしたGeneChip(登録商標)プローブアレイを洗浄し、Streptavidin−Phycoerythrinin(カタログ番号S866、Molecular Probes[米国オレゴン州ユージーン])を使用して染色し、GeneChip(登録商標) Fluidics Station 400(Affymetrix[米国カリフォルニア州サンタクララ)を使用して、ビオチン化抗ストレプトアビジン(BA−0500, Vector Laboratories[米国カリフォルニア州バーリンゲーム])で増幅した。GeneChip(登録商標)プローブアレイをGeneArray Scanner(Hewlett Packard[米国オレゴン州コーバリス])を使用してスキャンした。
11. 転写プロファイルデータ解析
アレイスキャンデータをAffymetrixの.CELファイルに変換し、結果として得られたデータセット(全実験を代表する.CELファイル群)を、Robust Microarray Average(RMA)法を使用して正規化した。GeneSpring(Agilent)及びSpotfire(Spotfire)データマイニングツールを使用して、統計学的及びクラスタリング解析を実施した。二段階式ANOVA及びFold changeフィルタリングを使用して、シグナル強度が実験的投与により、非投与Col4A3−/−群に比べてp<0.05及び2倍以上変化したプローブセットを同定した。同様に、疾患関連転写産物を、非投与Col4a3−null及び未感作野生型群の間での発現の差から、統計学的カットオフ値をp<0.01、シグナルfold−changeカットオフ値を2として選択した。結果として得られた遺伝子群及び実験条件群のプロファイルを、階層的クラスタリングによって解析し描出した。Ingenuity Pathway Analysis database(Ingenuity Systems)を使用して、バーチャル経路解析を実施した。
結果:
1. 線維症を来したヒト腎試料におけるαvβ6の発現
炎症性/線維性病理に起因する数種類のヒト腎疾患では、腎組織においてTGF−βの発現の亢進が対応して認められることが明らかになっている25〜27。免疫組織化学的解析を使用して、TGF−βの活性化の亢進につながりうる機序として、慢性炎症及び線維症に起因するヒト腎生検試料のαvβ6の発現を調査した(図29A及び29B)。膜性糸球体腎炎、糖尿病、IgA腎症、グッドパスチャー症候群、アルポート症候群及び狼瘡の組織試料では全て、拡大し損傷を受けた尿細管の上皮内膜に有意なαvβ6の染色が認められた。対照的に、形態学的に正常な腎試料(腎癌及び正常組織)では、尿細管にわずかな免疫染色が時に認められた。糸球体の染色は解析した腎試料全てで認められなかった。この所見は、αvβ6が健常な成人の上皮には低レベルでしか発現しないが、組織の外傷及び修復時にはアップレギュレートされるとした過去の報告と一致する10、11、13、15、17
2. Col4A3−/−マウスの腎におけるαvβ6の発現は、腎線維症の進行と相関する
ヒトアルポート症候群のマウスモデルであるCol4A3−/−マウスは、線維症の多数の標準的マーカー発現の増加を伴う、腎の糸球体及び間質の両方におけるECMの蓄積につながる進行性糸球体腎炎を発症する28、29。Col4A3−/−マウスにrsTGF−βRII−Igを投与すると、腎線維症が抑制されるという過去の報告がある。Col4A3−/−マウスの腎は、約5〜6週齢から線維症の組織学的徴候を呈し始めた。疾患は年齢と共に迅速に進行し、マウスは約11週間で腎不全のため死亡した。ヘテロ接合体Col4A3+/−は糸球体腎炎を発症せず、その腎は野生型の同腹子のそれと組織学的に鑑別不可能である。年齢を経たCol4A3+/−及びCol4A3−/−(アルポート)マウスの腎におけるαvβ6の発現の力学を確認するため、4、7及び8週齢のマウスから単離した腎におけるαvβ6の発現に関して免疫組織化学的解析を実施した(図30A〜C)。4週齢では、Col4A3+/−及びCol4A3−/−マウスの両方の尿細管に時にαvβ6の発現が認められた。7週齢までに、αvβ6の発現はCol4A3−/−マウスの尿細管上皮細胞で有意に増加したが、Col4A3+/−の腎ではこの増加は認められなかった。このαvβ6発現量の増加は、Col4A3−/−マウスで8週齢を超えても持続していた。又、6週齢を超えたCol4A3−/−(アルポート)マウスの拡大し損傷のある尿細管の上皮細胞におけるαvβ6の染色の強度が増加し、αvβ6の強い発現を示す腎組織の面積が有意に増加した。7〜8週齢の期間中の発現量の増加は、Col4A3−/−マウスにおける腎線維症の迅速な進行と一致した。一方、Col4A3+/−マウスの腎では、全ての期間にわたって、わずかなαvβ6の発現及び年齢依存性の免疫染色の強度のわずかな上昇しか検出されなかった。Col4A3−/−マウスの腎のαvβ6発現量は線維症の進行と相関したため、αvβ6機能の阻害が線維症病変の開始及び進行を阻害できるのかどうかを確認することにした。
3. Col4A3−/−マウス腎におけるαvβ6へのモノクローナル抗体(mAb)結合の特異性
本発明者等は過去に、リガンドへの結合能を損なうことなしにαvβ6に結合するmAb(非阻害mAb)及び、リガンド結合及びαvβ6媒介性のTGF−β活性化の両方を阻害するmAb(阻害mAb)をはじめとする強力且つ選択的な抗αvβ6モノクローナル抗体の作成について報告した23。in vivo試験で使用したαvβ6を阻害するmAbがαvβ6インテグリンに選択的に結合しているのかどうかを確認するため、αvβ6とmAbとの結合を、トランスフェクトしていない親NIH3T3細胞及びマウスβ6 cDNAをトランスフェクトしたNIH3T3細胞(NIH3T3b6)を比較するFAC解析を実施した(図31A)。対照の抗αvモノクローナル抗体であるRMV7では未トランスフェクト及びαvβ6を発現している両方のNIH3T3細胞が染色されたのに対し、抗αvβ6モノクローナル抗体は選択的にNIH3T3b6細胞のみに結合した。腎におけるαvβ6の結合の特異性を確認するため、阻害αvβ6モノクローナル抗体の一つである3G9のヒト/マウスキメラ型を作成し、ウサギ抗αvポリクローナル抗体で作成した免疫染色パターンを比較した(図31B及び31C)。3G9のキメラ型及び元来のマウス型は、FACS及びELISAで測定した場合(データなし)、標的との結合親和性が同等であった。3G9のキメラ型は、Col4A3−/−マウスの腎において尿細管上皮細胞を特異的に免疫染色し、β6−/−マウスと交配させたCol4A3−/−マウス(Col4A3−/−;β6−/−)の腎切片は免疫染色しなかった。抗αv抗体による腎の免疫染色では、Col4A3−/−マウスとCol4A3−/−;β6−/−マウスとに有意な差は認められなかった。
4. Col4A3−/−(アルポート)マウスに対する抗αvβ6モノクローナル抗体の投与は、腎線維症を抑制する
腎線維症の制御においてαvβ6が果たしうる機能的関与を調べるため、αvβ6モノクローナル抗体の進行線維症病変の開始及び進行を阻害するための阻害能力を試験した。αvβ6による阻害の予防的作用を評価するため、Col4A3−/−マウスを3週齢から7週齢まで、又は3週齢から8.5週齢まで、2種類の阻害αvβ6モノクローナル抗体である3G9及び8G6、非阻害αvβ6モノクローナル抗体の6.8B3又はアイソタイプでマッチさせた陰性対照モノクローナル抗体の1E6を投与した。表現型の参照として、又TGF−βの全身性の阻害作用を監視するため、これらの試験には、rsTGFβRII−Igを投与するCol4A3−/−マウスも含めた。腎を回収して、組織学的評価を行い、RNAを単離した。線維症並びにSMA発現の組織学的特徴は、週齢でマッチさせたCol4A3+/−マウスの腎に比べて、7及び8.5週齢のCol4A3−/−マウスの腎で劇的に増加した。陰性対照のmAbを投与したCol4A3−/−マウスの腎では、糸球体のメサンギウムの拡大及び線維症及びボーマン嚢の半月体形成が認められた(図32A、1E6)。又、これらの腎では有意な筋線維芽細胞の活性化及び尿細管上皮の外傷及び拡張に起因する間質の線維症が認められた。阻害αvβ6モノクローナル抗体6.3G9又は6.8G6を投与したCol4A3−/−では、糸球体及び間質の外傷及び線維症が有意に抑制され、相当量の腎構造が保持された(図32A、3G9及び8G6)。これらの阻害αvβ6 mAbの作用は、SMAの発現の糸球体では>65%、間質領域では>90%の抑制を伴った(図32B及び32C)。糸球体のSMA発現に対する阻害mAbの作用は、αvβ6インテグリンの発現は尿細管上皮細胞に限定されるが、その機能を阻害すれば組織の遠位部にも作用を及ぼすことができることを示唆している。それは少なくとも部分的には阻害αvβ6 mAbの間接的な全身作用を介するものであると考えられる。非阻害αvβ6 mAbである8B3を注射したCol4A3−/−マウスの腎では、線維症の進行に対する作用は全く認められなかった。TGF−βの阻害を介して腎線維症が抑制されたとする過去の報告と矛盾することなく7、30〜33、Col4A3−/−マウスに対するrsTGFβRII−Igの投与は、組織学的外観の変化及び腎組織中のSMAの量が裏付けるように、阻害αvβ6 mAbにより生じるのと同様の腎線維症の抑制をもたらした。SMA発現に対するαvβ6阻害mAbの作用は、腎全組織におけるコラーゲン1α1及びコラーゲン1α2 mRNAの減少と並行した(図33A及び33B)。Col4A3−/−マウスに3G9、8G6又はrsTGF−βII−Igを投与したところ、コラーゲン1α1及びコラーゲン1α2 mRNA量が有意に減少したのに対し、非阻害αvβ6 mAb及び対照アイソトープmAbは、これらの転写産物の量に有意な作用を及ぼさなかった。
αvβ6阻害が進行性腎線維症に与える作用を試験するため、6週齢のCol4A3−/−マウスにおける、その時点で腎に計測可能な外傷及びSMA陽性の活性化線維芽細胞の蓄積が認められる腎線維症に対するαvβ6阻害mAbの作用を試験した。マウスには、αvβ6阻害mAbである3G9又は対照アイソトープmAbの1E6を2.5週間投与し、その後8.5週齢で屠殺した。SMA免疫染色の定量化により、対照アイソトープmAbの投与群に比べて、3G9を投与したCol4A3−/−マウス群の腎では、SMA陽性の線維芽細胞の量が減少していることが明らかになった(図34A)。又同様に重要であるのは、3G9の長期投与によりSMA免疫染色の強度及び面積が、投与開始時に認められたSMAレベルに比べて減弱していることであった(6週間)。Col4A3−/−マウスに対する3G9の長期投与は、1E6を投与されたCol4A3−/−マウスの腎に比べて、尿細管の損傷及び間質の線維症を有意に抑制したことをはじめとして、疾患を有意に回復させた。
これらの結果は、αvβ6を治療的に阻害することにより、腎線維症の進行が阻害されるだけでなく、既存の線維症病変の治癒も可能であることを示唆している。
5. 抗αvβ6 mAbによる腎での遺伝子発現の制御
αvβ6の機能に起因する疾患の機序を更に理解するため、野生型及びアルポート症候群マウスの腎組織における遺伝子発現のAffymetrix GeneChip解析を実施した。Col4a3−/−の腎において発現が変化した遺伝子の一群を、7週齢のCol4a3−/−腎と週齢でマッチした野生型の腎とで正規化したシグナル強度にp<0.01で2倍以上の平均差が認められた395のGeneChipプローブセットとして同定した(図35)。異なる発現をみせた遺伝子の機能注釈を、Ingenuity Pathway Analysis(IPA)ツールを使用して実施し、Col4a3−/−の腎で過剰発現している遺伝子は、第一に炎症及び白血球機能の制御に関連しているのに対し、その発現が減少した遺伝子は主として代謝制御に関連していたことが示された(図36)。
αvβ6阻害mAbの投与は、Col4A3−/−の腎において遺伝子のサブセットの特異な発現を緩和した。分散分析(Welch ANOVA)を使用して、p<0.05で実験的投与によって影響を受けた転写産物を同定し、更に結果として得られたプローブセットをふるいにかけ、投与に反応してシグナル強度が2倍以上変化したものを選択した。この手順により、3G9、8G6及びTGFβRII−Fcによってそれぞれ有意に影響を受けた56、42及び28プローブセットが得られた。これらのプローブセットの一群には、有意な重複が認められ、各プローブセットが、Col4a3−/−の腎で特異的に発現する転写産物に対応した395の全て含まれたサブセットであった(図37A)。過去の刊行物23で2つの異なる生化学分類に属することが明らかになったαvβ6阻害mAbの3G9及び8G6でも、同様の遺伝子発現の変化が認められた(図35、図37A)。非阻害抗αvβ6 mAbである8B3でも、対照アイソトープmAbである1E6でも、遺伝子発現に対する有意な作用は認められなかった。このため、腎の遺伝子発現に対するαvβ6 mAbの影響は、インテグリンシグナル伝達の活性化のためでも非特異的事象のためでもなく、αvβ6機能の阻害に起因する可能性が高かった。正常な野生型の腎組織における遺伝子発現に対して、阻害αvβ6 mAbである3G9の有意な作用は認められなかった。この所見は、本実験で認められたαvβ6阻害mAbの作用が、主としてαvβ6の疾患特異的な制御機能を反映するものであることを示唆した。
αvβ6 mAbにより調節された遺伝子と主要な制御経路との関係を明らかにするため、IPAソフトウェアを使用して、個々の遺伝子リストに対してバーチャルな制御ネットワーク解析を行った(図37)。IPAは入力された遺伝子リストを、遺伝子及びタンパク質間の既知の物理的及び制御的相互作用の監督されたデータベース(curated database)と比較する。この解析では、変化がみられた遺伝子の所定の一覧を反映する可能性が最も高い制御経路の順位一覧及び個々の構成が得られる。しかし、3G9及び8G6によって変化させられた遺伝子の一覧は完全に同一ではなかった。IPAにより、3G9(図37A)並びに8G6(図37B)によって影響を受ける最高スコア制御ネットワークとしてのTGFβ依存性ネットワークが明らかになった。この所見と合致して、実験群の平均的遺伝子発現プロファイリングの階層的クラスタリングは、αvβ6 mAb及びrsTGFβRII−Igによる遺伝子の変化パターンが同一であることを明らかにした(図35)。
6. αvβ6の阻害はCol4A3−/−の腎においてTGFβの発現を抑制する
3G9及び8G6mAbの投与により明らかになった腎線維症の減少が、TGF−β発現量の減少に起因しているのかどうかを明らかにするため、腎切片を抗TGF−β1 mAbで免疫染色した(図38A)。免疫染色に使用したmAbは、潜在的TGF−βに比べて本質的に活性のTGF−βを発現する組織切片に優先的に結合するものであった(データなし)24。3G9又は8G6をこのマウスに投与すると、腎の間質領域でも糸球体領域でもTGF−β1の免疫染色が有意に減少した。TGF−β発現量のこれらの変化は、TGF−βmRNAの全腎組織レベルの類似の変化を伴っていた(図38B)。TGF−β1免疫染色パターンは、αvβ6の発現が尿細管の内膜上皮に制限されているものの、αvβ6機能の阻害は、αvβ6発現部位に直接隣接しない糸球体領域のような遠位部でもTGF−βの発現量を減少させることができることを示した。これは、αvβ6が局所性のTGF−βの活性化の初回のトリガーとして働くが、TGF−βを広範囲にわたって制御する作用も示すことを示唆している。このような広範囲の作用の一つの考えられる機序とは、TGF−βが自らの発現を自己分泌性又はパラ分泌性に活性化することができ、TGF−βの発現組織部位の拡大につながることに基づくものである。又、これには、αvβ6の阻害によるTGF−βの活性化の初回の局所性阻害が、炎症及び線維症のプロセスに干渉し、その後間接的にTGF−βの活性を更に抑制するという可能性も含む。
7. Col4A3−/−マウスのβ6遺伝子の遺伝子除去
mAbの実験から得られた所見を裏付けるため、Col4A3及びβ6のダブルノックアウトマウス(Col4A3−/−;β6−/−)を作成した。週齢でマッチさせたCol4A3−/−;β6+/−マウス及びCol4A3−/−;β6−/−マウスの腎の組織学的検査は、αvβ6阻害mAbを使用した試験で得られた結果を裏付けた。7〜10週齢のCol4A3−/−;β6−/−の腎では、週齢でマッチさせたCol4A3−/−;β6+/−マウスに比べて、SMA免疫染色の有意な抑制が認められた(データなし)。これは腎の糸球体及び間質領域における線維症の劇的な抑制を伴った(図39)。これは、コラーゲン発現の抑制及び週齢でマッチさせたCol4A3−/−;β6+/−マウスの腎に比べて、10週齢のCol4A3−/−;β6−/−マウスのトリクロム・マッソン染色で認められたように良好に保持された腎構造により示されている。β6機能の遺伝子除去に比べて阻害αvβ6 mAbの投与により認められた抗線維症作用の合致性は、in vivoにおけるαvβ6機能の阻害に対してはmAb投与が効率的な手法であることを示している。
7. Col4A3−/−マウスにおける腎線維症の3G9による抑制の用量反応性
Col4A3−/−マウスに、3G9の濃度を上昇させながら1週間に3回投与を行った。3週齢から7週齢までのマウスに投与を行い、その後屠殺した。SMAの免疫組織化学的分析を、腎の皮質及び髄質の両方で行った。用量漸増法により、3G9はCol4A3−/−マウスにおいてED50が0.3〜0.4mg/kgでSMAの発現を抑制した(図40)。
考察:
腎疾患の進行には、集中的な組織リモデリング、炎症及び線維症病変の形成が伴い、最終的には腎組織構造の破壊及び腎機能の低下につながる。線維症はこのプロセスの中心にあり、線維芽細胞の活性化及び拡大、罹患組織の血管新生及び細胞外マトリックスの大量な沈着に関与する。これらの事象の主要な要因として関与する分子機序には、細胞が集まる線維症病変におけるECMタンパク質及びその受容体の発現の変化を伴うTGF−β軸の調節不全が含まれる34〜36。TGF−βの発現亢進は線維症したヒト組織の特徴であり25〜27、組織の線維症の促進におけるTGF−βの機能的重要性は、in vitroでも動物疾患モデルでも確認されてきた。TGF−βの過剰発現は、in vivoにおける線維芽細胞の活性化及び血管新生を惹起し、器官培養及び細胞培養におけるECMの過剰生成を活性化するのに十分である34,37,38。これに対して、TGF−βシグナル伝達の遺伝的又は薬理学的破壊は、肺、皮膚及び腎の線維症モデルにおいて線維症からの効率的な保護をもたらす30,32,33,39〜41
TGF−βの機能を全身レベルで抑制することを目指した幾つかの試験では(阻害mAb、rsTGF−βRII−Ig、TGF−β受容体キナーゼ阻害剤)、動物疾患モデルにおいて線維症を緩和することを明らかにしてきた。しかし、これらの手法は全て、活性化型のTGF−βを阻害することを目標にしてきたのに対し、TGF−βの活性化を阻害することのできる物質の治療的可能性はそれほど研究されていない。TGF−βは潜在的前駆体として発現し、反応性酸素種、pH、トロンボスポンジン−1、細胞外プロテアーゼ及びインテグリンをはじめとする多数の機序を介して、生物学的に活性なサイトカインに変換されることができる21,42〜44。インテグリンの中でも特に興味をそそるのは、上皮リモデリング部位に発現し、潜在的TGF−βの受容体及びアクチβーとして機能することが明らかになっている、TGF−β誘導可能なインテグリンであるαvβ6である11,17,45。β6サブユニットは、幾つかの腎疾患ではアップレギュレートされ10、その遺伝子除去は一側性尿管閉塞(UUO)のマウスモデルにおける外傷が誘導する腎線維症からの有意な保護を提供することが明らかになった46。β6欠損モデルの線維症からの同様の保護は、ブレオマイシン肺線維症モデルでも認められており、αvβ6が種々の組織で線維症を媒介することができることを示唆している17,47。興味深いことに、TGF−βのシグナル伝達の中心的媒介物質であるSMAD2の、UUOが惹起するリン酸化はβ6欠損の腎において有意に抑制され、αvβ6が実際にin vivoでTGF−β制御回路の一部として働いていることを示した46
β6ノックアウトマウスを使用した過去の試験では、αvβ6が線維症の発症に役割を果たしているという確認が得られ、このインテグリンが新しい治療標的になりうることを示唆した。そこで、阻害mAbによるαvβ6機能の薬理学的阻害が、常染色体劣性疾患であるアルポート症候群の動物モデルであるCol4A3−/−マウスにおいて腎線維症を緩和するかどうかを明らかにしようとした28,29。アルポート症候群は、Col4A3、Col4A4又はCol4A5遺伝子の突然変異によって引き起こされる遺伝性疾患である48。これらの遺伝子における欠損は、コラーゲンIVネットワークの組立てに異常を生じさせ、糸球体及び尿細管の基底膜の異常形成を引き起こす。アルポート症候群の患者は、末期の腎疾患へとつながる進行性の糸球体腎炎を発症する。ヒトのアルポート症候群でも、Col4A3−/−マウスでも、腎組織にαvβ6の有意なアップレギュレーションが認められた。Col4A3−/−マウス腎では、αvβ6の発現亢進は尿細管上皮で特に顕著であり、そこではSMA陽性細胞の広範な拡大及びコラーゲンの沈着がその後に認められるか随伴した。この発現パターンに基づき、αvβ6が外傷に対する上皮の反応サイクルにおいて早期にアップレギュレートされるようになり、持続的な上皮の損傷という状況において線維症の発症及び維持の両方において重要なメディエーターであるという仮説を立てた。本発明者等の試験の結果は、抗体が媒介するαvβ6の阻害が、腎線維症の発症並びに早期の進行を阻害し、その維持を抑制することを明らかにしている。β6欠損のUUOマウスモデルから得られた過去の所見46と矛盾することなく、本発明者等の実験で認められたαvβ6阻害mAbの抗線維症作用は、TGF−βの活性及び発現の低下と相関した。興味深いことに、αvβ6 mAbの投与後のTGF−β及びSMAの発現のみかけの減少は、αvβ6陽性細胞の隣接領域にのみ生じるのではなく、比較的遠位の組織領域でも検出することができた。この所見は、αvβ6がTGF−β軸の活性化に直接的にも、TGF−β発現のパラ分泌性自己活性化を介するといった間接的にも寄与する可能性があることを示唆しているが、αvβ6の阻害が、全身の免疫機能の変化をはじめとする腎外の作用を介して保護を提供したという可能性も除外できない。本発明者等は、αvβ6 mAb投与から4週間後のマウスにおける多数のケモカイン及びサイトカインの血漿レベル及び末梢血分画を評価し、有意な変化はないことを確認した。但し、αvβ6 mAbの投与又はβ6遺伝子の遺伝学的ノックアウトにより、Col4A3−/−の腎における単球のわずかな変化のみが免疫組織化学的に検出された。αvβ6 mAbの投与又は移植による免疫系の機能状態を評価するような更なる試験が、この問題により完全に取り組むことができると考えられる。
TGF−β経路の調節不全及び過活動は、Col4A3−/−マウスにおける腎疾患の進行に関与する顕著な機序であると目されてきた。このサイトカインが線維性疾患でみかけは主要な役割を果たすことの裏付けとなるTGF−β回路の興味深い特性の一つは、TGF−βの自らの発現を誘導する能力である。これにより、αvβ6阻害の抗繊維化作用が少なくとも部分的には間接的な機序によって媒介されているという可能性が浮上する。これには、炎症及び線維症の状況を局所的に変化させ、続くTGF−βの活動亢進に干渉することによって、TGF−βの発現を抑制することも含まれる。αvβ6はTGF−βによって誘導され、潜在性TGF−βの活性化を促進するため、Col4A3−/−の腎の病理の媒介におけるTGF−β及びαvβ6の機能的関係を調査した。Col4A3−/−マウスの腎における疾患関連転写産物の発現に対するαvβ6 mAb及びrsTGF−βRII−Igの作用を比較した。この比較により、αvβ6依存性遺伝子とTGF−βの明らかな機能的因果関係及びαvβ6 mAb及びrsTGF−βRII−Igによる遺伝子の調節パターンの密接な類似性が明らかになった。更に、Col4A3−/−マウスにαvβ6阻害mAbを投与した場合、TGF−βの腎での発現が阻害された。これらの所見は、阻害性αvβ6 mAbの疾患改善作用が、おそらくは罹患組織の潜在的TGF−βのαvβ6を介する活性化の抑制を介して、TGF−βの機能が阻害されることによるものであることを示している。上記のデータの興味をそそる一側面は、αvβ6又はTGF−βの阻害を介した起炎症性(pro−inflammatory)遺伝子発現の阻害の阻害である。TGF−βは、よく知られた抗炎症性及び免疫抑制機能を有するが、本発明者等の実験でrsTGF−βRII−Ig及び抗αvβ6 mAbによる遺伝子調節パターンは、アルポート疾患モデルにおけるTGF−βの起炎症性機能を示すものであった。このみかけの起炎症性作用の実際の機序については更なる調査が必要であるが、TGF−βの上皮細胞の成長停止及び死を誘導する既知の能力に基づくものと考えられる31,49〜51。上皮の損傷は組織外傷に対する早期の先天免疫反応の活性化のための重要な機序を提供するため、本発明者等のデータが示唆するTGF−βのみかけの起炎症性機能は間接的なもので、腎上皮へのTGF−βが促進する外傷によって媒介されたものである可能性がある。このモデルに基づけば、αvβ6は、上皮リモデリングのTGF−β依存性機序の重要な構成要素として機能しており、疾患におけるその機能の調節不全は更に疾患に起因する組織の損傷及び炎症を助長すると考えられる。
本発明者等の試験の結果は、αvβ6がヒトの腎疾患において高度にアップレギュレートされ、機能阻害抗体によるαvβ6のターゲティングは腎線維症の治療的改善への効果的な新しい手法を提供する場合があることを示している。αvβ6の発現は罹患組織において上皮細胞に大幅に制限されるため、この手法はTGF−β機能の選択的な局所的抑制を考慮に入れたものである。TGF−βは種々の細胞及び組織に発現し、多数の種々のホメオスタシスプロセスを調節する重要な役割を果たしていることから、αvβ6機能の阻害は、インテグリンαvβ6がアップレギュレートされる疾患において、TGF−βを全身性に阻害するよりも安全な代替法になりうる。
結論
αvβ6は炎症及び線維症を伴うヒトの腎疾患において過剰発現する。
αvβ6阻害mAbは、腎線維症の(アルポート)モデルであるCol4A3−/−において、線維症を抑制する。
長期投与試験により、αvβ6の治療的阻害が腎線維症の進行を阻害するだけでなく、既存の線維症を治癒させることもできることが示されている。
β6の遺伝子ノックアウトはCol4A3−/−マウスを保護する。
腎組織の転写産物プロファイルは、αvβ6阻害mAbが、線維症及び炎症メディエーターの発現における疾患に起因する変化を有意に抑制することを明らかにした。
同様の転写産物の変化パターンは、組換え可溶性TGF−βRIIの投与によっても認められ、αvβ6及びTGF−βの制御機能は分担されたものであることが示唆された。
Figure 2009500041
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実施例14 腎線維症のマウス一側尿管結紮モデルにおけるマウス3G9(mu3G9)の有効性
要約
一側尿管結紮(UUO)は尿細管間質性線維症へと急激にいたる確立された腎の外傷動物モデルである。尿管結紮により尿管及び尿細管内の内腔圧が上昇し、腎実質性損傷を来す。UUOは、水腎症、尿細管拡大、尿細管アポトーシス、進行性腎萎縮、間質性細胞浸潤、腎TGF−βの増加及び腎間質線維症を特徴とする[1]。インテグリンαvβ6の機能は、TGF−βの活性化及び上皮間葉移行のプロセスの両方に関与することができる。これらのプロセスは疾患の進行に寄与するため、UUOモデルを、抗αvβ6モノクローナル抗体mu3G9及び組換え可溶性マウスTGF−β受容体II−Ig型融合タンパク質(rsTGF−βRII−Ig)の、迅速に進行する腎線維症に対する有効性を評価するのに使用した。用量4m/kgのmu3G9を週3回、10日間にわたって腹腔内投与したところ、平滑筋アクチン染色の平均阻害率は32%であった。
緒言
進行性線維症は、末期の腎疾患にいたる共通のプロセスであり、上皮リモデリング、線維芽細胞の活性化、炎症及び細胞外マトリックス(ECM)との細胞の相互関係の再構築によって助長される。これらの事象に寄与する分子的機序は複雑で、TGF−β軸の調節不全、ECMリモデリング異常及びインテグリンスーパーファミリーの細胞接着受容体の発現及び機能の変化を含む2〜9。近年の試験で、腎上皮及び間葉細胞において幾つかのインテグリン及び関連分子が重要な制御機能を有することが明らかにされた8、10〜13
インテグリンの中でも、腎疾患でその発現が強度に促進されるのは、TGF−β誘導性インテグリンαvβ6である3、14、15。αvβ6の発現は一般に上皮細胞に限定され、そこで正常な成人組織では低レベルで発現し、成長、外傷及び新生物があればレベルが上昇する14、16〜18。αvβ6は健常な成人腎では比較的低レベルで発現するが、その発現は成長中のマウスの腎、特に近位尿細管、ヘンレ係蹄及び集合管で顕著である16、17、19。近年、ヒトの種々の腎疾患において、αvβ6の発現レベルが上昇することが報告されている15
組織リモデリング中にin vivoでαvβ6の発現レベルが上昇することと一貫して、培養上皮細胞中のαvβ6インテグリンの発現は、EGF及びTGF−βをはじめとする上皮リモデリングを制御するサイトカインによって誘導することができる3、14。更に、トランスジェニックマウスの皮膚におけるβ6の過剰発現は、自発性慢性創傷の形成を惹起することが明らかになり20、αvβ6が上皮組織のリモデリングを調節する重要な役割を担っていることが示唆された。
αvβ6の既知のリガンドには、フィブロネクチン、テネイシン及び潜在性関連ペプチド1及び3(LAP1及びLAP3)、TGF−β1及びβ3の潜在的前駆体のN末端フラグメントが含まれる21〜25。これらのリガンドに結合した結果、αvβ6は細胞接着、細胞伸展、細胞移動及び潜在的TGF−βを媒介することができる。TGF−βは、潜在的タンパク質として合成され、分割されて、成熟した活性C末端TGF−βサイトカインと非共有結合的に関連するN末端LAPと共に分泌される。この潜在的TGF−β複合体は、その固有の受容体と結合することができず、従ってプロテアーゼによる分割、低pH又はイオン化照射への曝露及び潜在的複合体の構造転換といった固有の受容体への結合を可能にするような幾つかの機序の一つによって活性型に変換されない限り、生物学的に不活性のままである26〜29。活性化をもたらす構造転換は、LAP1及びLAP3に含まれるRGDモチーフへの、αvβ6が関与するインテグリンの直接結合によって誘導されうる。この結合により、TGF−β前駆体が、受容体への結合が可能な状態へと変換される22、25。これらの所見は、上皮細胞表面のαvβ6の発現を促進することが、局所的なTGF−β活性化につながり、バイスタンダー細胞におけるTGF−β依存性事象がパラ分泌性に活性化されることを示唆するものである。
TGF−βは腎線維症の中心的な調節物質として関与しているため、そのαvβ6による局所的な活性化が腎疾患の発症及び進行において重要なプロセスになっており、αvβ6機能を阻害することにより腎線維症の発現を抑制できるという仮説を立てた。本明細書に記載の試験で、αvβ6がマウス腎線維症モデルにおいて有意にアップレギュレートされることを明らかにする。又、このモデルで、リガンド結合及びαvβ6によるTGF−βの活性化機能を阻害するmAb30が線維症を阻害することを明らかにする。
材料及び方法
1. 動物
雄で8〜12週齢の25.5±0.2gのウィルス抗原フリーのC57BLマウス(Jackson Laboratories[米国メーン州バーハーバー])を本試験に使用した。動物はBiogen Idecウイルスフリー研究所動物施設において、換気型アイソレーターケージラックに収容し、試験の開始の7日前から飼育した。マウスには飼育及び実験期間を通じて、照射済み標準マウス飼料(LabDiet Prolab(登録商標) 5P75 Isopro(登録商標) RMH 3000)及び滅菌水を自由に摂取させた。マウスの健康のモニタリングの一環として定期的に体重を測定した。
2. 抗体及び試薬
αvβ6 mAbsを、本明細書及び過去の刊行物30に記載の通りに生成した。ヒト/マウスキメラ2A1及び3G9 cDNAを、First Strand cDNA synthesis kit(Amersham/Pharmacia[米国ニュージャージー州ピスカタウェイ])を使用して、重鎖には定常領域プライマーCDL−739を、軽鎖にはCDL−738と共に個々の親ハイブリドーマの全RNAから生成した。重鎖及び軽鎖の可変領域遺伝子を、cDNA合成に使用したのと同じ3'プライマー及び殆どのマウス抗体遺伝子シグナル配列(請求により入手可能な配列)に特異的な縮重プライマーのプール及びPfu DNAポリメラーゼ(Stratagene[米国カリフォルニア州ラホイヤ])を使用してポリメラーゼ連鎖反応により増幅した。クローン化した重鎖及び軽鎖の可変領域を、ヒトIgG1定常領域と共に哺乳類発現ベクターに結合させた。組換え可溶性マウスTGF−β受容体II−Ig型融合タンパク質(rsTGF−βRII−Ig)を、過去の刊行物11に記載の通り作成し、R&D Systems(532−R2、米国ミネソタ州ミネアポリス)から購入した。
3. 免疫組織化学
組織切片をキシレン及びエタノール中で脱パラフィン処理し、蒸留水で再水和して、0.45% H2Oを含有するメタノールに浸漬した。組織をペプシン(00−3009, Zymed[米国カリフォルニア州サンフランシスコ])と共に培養し、アジビン及びビオチン(SP−2001; Vector Laboratories[米国カリフォルニア州バーリンゲーム])で阻害した。一次抗体を0.1%BSA含有PBSで希釈し、組織を一晩4℃にて培養した。マウス組織にβ6による免疫染色を施すため、切片を抗αvβ6 mAb、2A130及び抗ヒトビオチン化二次抗体のヒト/マウスキメラ型と共に培養した(PK−6103、Vector Laboratories[米国カリフォルニア州バーリンゲーム])。アビジン−ビオチン複合体−西洋ワサビペルオキシダーゼ(Vector Kit、PK−6102)を切片に塗布し、30分間室温にて培養し、3,3'−ジアミノベンジジン(DAB)マトリックスを指示通りに調製し(SK−4100、Vector Laboratories)、室温にて5分間切片に塗布した。組織切片をMayer's Hematoxylinで1分間染色し、水及びPBSで洗い流した。
4. 一側尿管結紮による腎線維症の誘発
試験のための手術を2日間かけて行い、マウスへの投与スケジュールを尿管結紮日に応じて決定した。ケタミン:キシラジン(1000:10mg/kg、皮下投与)による麻酔下で、正中左側の開腹により左側尿管を無菌的に取り出した。腎下極の位置で尿管を6−0絹縫合糸で2箇所結紮し、その間で尿管を切断した。腹壁を4−0ビクリル縫合糸で閉鎖し、皮膚を4−0ナイロン縫合糸で閉鎖した。ヒーティングパッドの上でマウスを回復させ、ブプレノルフィン0.05mg/kgを0日目及び1日目に1日2回皮下投与した。手術の前日からmu3G9を週3回又はsTGF−βRII−Igを週2回投与した。手順は以前に記載した報告書31から適用した。
5. 組織試料の収集及び疾患の指標の組織学的分析
結紮から10日目に、マウスを二酸化炭素で安楽死させた。両側の腎(左結紮、右未結紮)を摘出し、腎盂の中心から横に二等分した。各腎の半分を10%中性緩衝ホルマリンに入れて固定組織染色した。残る半分の腎は15%スクロース液、その後30%スクロース液に入れ、平滑筋アクチンの免疫組織化学的染色を行った。
ホルマリンで固定した腎切片のコラーゲン成分にマッソン・トリクローム染色を施し、解剖学的構造にH&E染色を施した。トリクロームで染色された切片を、ライカQwin画像解析システムを使用して、明視野顕微鏡で捕捉した画像で形態計測的に定量化した。画像を標準化した照明条件及びデジタルカメラの露出設定を使用して捕捉し、バックグラウンド補正を行い、距離標準で較正を行った。
閾値を設定して、マッソン・トリクローム染色スライドのコラーゲン染色のダークブルーを検出した。コラーゲンの領域を200倍で撮影した画像で解析した。全ての動物で、左腎の切片全体が写るような連続野を撮影して定量化した。
6. 統計学的分析
各測定野のコラーゲン含量を、200倍以内の全組織における百分率(白い空白は除く)として、即ち、青い面積の%として表した。各腎につき16〜35視野を測定した。これらには、切片の皮質及び髄質組織の全てを含め、腎乳頭は除外した。左側結紮腎の全ての視野で得られた平均の青い面積%を、各マウスで算出し、統計学的検定のためにそのマウスの線維症スコアとして取り扱った。幾つかの投与群における投与に起因する青い面積%の差の統計学的有意性を、一元配置分散分析により決定し、その後、Student−Newman−Keuls検定で対の多重比較を行った。p<0.05の場合に差を統計学的有意とした。
結果
1. UUO後の腎におけるαvβ6の発現
UUO後の腎におけるαvβ6インテグリンの発現を免疫組織化学的解析で調査した。無外傷(正常)の腎では検出されたαvβ6の発現がわずかであったのに対し、UUOから7、10及び14日後では有意な発現亢進が明らかになった(図41)。検出可能な発現は、UUOから3日後から測定された。
2. mu3G9の投与によるUUO腎における平滑筋アクチン免疫染色の阻害
マウスUUOモデルにおける線維症の広がりを、免疫組織化学的α平滑筋アクチン染色(褐色の染色)又はマッソン・トリクロームコラーゲンマトリックス染色(青色の染色)の組織形態計測による解析で測定した。各試験で、線維症で占められた組織面積の比率を、担体又は対照アイソタイプmAbを投与したUUOマウス群(陰性対照群)、被験物質を投与したUUOマウス群及び無結紮の正常マウス群で測定した。陰性対照群と被験物質投与群との間の染色面積の差の、陰性対照群と無結紮正常マウス群の差に対する比率を算出することにより、治療効果をマッソン・トリクロームコラーゲンマトリックス(青)染色又は平滑筋アクチン(褐色)染色の阻害率として表した。
複数の試験間で結果を関連付けるため、治療効果はα平滑筋アクチン染色の阻害率として表した。mu3G9 4mg/kgを週に3回、10日間にわたって腹腔内投与した場合の、平滑筋アクチン染色の平均阻害率は32.8%であった。一方、rsTGF−βRII−Ig 2mg/kgの平均阻害率は13.2%であった(表14.1)。
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実施例15 放射線誘発肺線維症のマウスモデルにおける抗αvβ6阻害物質の使用
緒言
肺線維症は、肺外傷の後に異常なマトリックスリモデリングが続いた場合に発症する(Chapman 2004)。肺線維症において異常制御される多くのシグナル因子の中でも、TGFβは特に重要な役割を果たす。動物モデルでは、TGFβのシグナル伝達を阻害すると、肺、腎、肝及び皮膚の線維症が予防できる。
細胞内プロセシング後、TGFβ及びそのプロドメインは、非共有結合複合体として分泌される(Annes, Munger, et al., 2003)。そのプロドメインに結合したTGFβは潜在性で、即ちTGFβ受容体に結合できない。このため、このプロドメインは潜在性関連ペプチド(LAP)と呼ばれる。TGFβ阻害物質として働くと共に、LAPは潜在性TGFβ結合タンパク質(LTBP)ファミリーのタンパク質と、ジスルフィド結合を介して相互作用する。LTBPはマトリックスタンパク質であり、ECMに潜在TGFβを係留する。LAPからのTGFβの放出は、潜在TGFβの活性化と呼ばれるプロセスであり、TGFβシグナル伝達経路において必要な段階である。この活性化段階が、TGFβシグナル伝達を低減する戦略の標的になりうる。
インテグリンαvβ6及びαvβ8は、個々のLAPのC末端近傍に位置するRGDアミノ酸配列と相互作用することによって、潜在性TGFβ及びTGFβ3を活性化する(Munger, Huang, et al., 1999; Annes, Rifkin, et al., 2002; Mu, Cambier, et al., 2002)。(最終のTGFβアイソフォームであるTGFβ2はRGD配列を有さず、これらのインテグリンによって活性化されない)。肺内で、インテグリンαvβ6によるTGFβの活性化は、ホメオスタシス及び外傷への反応で非重複的役割を果たしている。αvβ6は正常な肺上皮では少量でしか発現しないが、外傷後迅速にアップレギュレートされる。β6遺伝子(Itgb6−/−)の欠損したマウスは、TGFβのシグナル伝達が抑制された結果として、肺の炎症及び気腫を発症する。マウスの肺をブレオマイシンに曝露すると、αvβ6の発現量の大幅な増加を伴う急性肺外傷を来し、その後TGFβ依存性の肺線維症が発現する。これに対しItgb6−/−マウスは、ブレオマイシン投与後に肺線維症を発現しない。
イオン化放射線は肺線維症を引き起こす(Franko and Sharplin 1994; Movsas, Raffin, et al., 1997; Martin, Lefaix, et al., 2000; Abratt, Morgan, et al., 2004)。線維症が肺外傷の数日後以内から始まるブレオマイシンによる肺線維症モデルと異なり、放射線誘発肺線維症(RILF)は外傷から数ヵ月後に発症する。マウスRILFは系統依存性である。実験に使用するC57BL/6は敏感である。マウスRILFモデルでは、線維症の発症時期周囲で実質的な遅延死亡が見られる。この死亡は肺血流の低下による可能性が高い(Franko, Nguyen, et al., 1996; Haston, Zhou, et al., 2002)。阻害物質の抗αvβ6 mAb(3G9)が開発された(Weinreb, Simon, et al., 2004)。これらの試験の目標は、(1)胸部への放射線照射に対するItgb6+/+及びItgb6−/−の反応を比較することによって、感受性マウス系統におけるRILFのαvβ6依存性を確立すること、(2)照射済みマウスにTGFβ拮抗物質(可溶性TGFβ受容体)を投与することにより、マウスRILFモデルのTGFβ依存性を確認すること、及び(3)種々の用量の3G9を照射済みマウスに投与した場合の作用を評価することである。
材料及び方法
1. 動物
使用したマウスは全て雌であった。Itgb6−/−マウスはUCSFのDean Sheppard氏から寄贈され、本発明者等の施設で遺伝的背景をC57BL/6として交配した。野生型マウスは、Jackson Laboratory(米国メーン州バーハーバー)から購入したC57BL/6であり、到着時に7〜9週齢で、照射前に本発明者等の動物施設で1週間馴化した。全ての動物取り扱い手順及び実験は、ニューヨーク医科大学の動物ケア委員会により承認され、実験動物のケア及び使用のNIHガイドラインに合致した。動物施設のプロトコルにより、1ケージにつき5匹までの飼育とした。マウスの罹患及び死亡を毎日監視した。瀕死のマウスは屠殺した。
2. 抗体
2種類の抗体をBiogen Idec(米国マサチューセッツ州ケンブリッジ)から入手し、本明細書の他の場所に記載の通りに調製した。最初の被験抗体である3G9は、αvβ6を媒介するTGFβの活性化を阻害する抗αvβ6 mAbである。これはIgG1サブタイプであり、αvβ6をカチオン非依存性に結合する。対照のAb(1E6)は、マウスLFA−3と相互作用しないマウス抗ヒトLFA−3 IgG1モノクローナル抗体とした。この対照抗体の最大用量200mg/kg/週を4週間にわたって正常なマウスに投与したところ、毒性は全く認められなかった(Biogen Idecのデータ)。滅菌PBSでの希釈により、用量0.3、1、3、6及び10mg/kgで総用量200μLとして抗体の画分を調製した。実験に応じて右側腹部への皮下注射又は腹腔内注射を、照射の15週間後から開始した。
3. 照射プロトコル
マウスには8〜10週齢で照射を行った。照射前に、Avertin(2,2,2−トリブロモエタノール;Acros Organics[米国ニュージャージー州])の2.5%溶液15μL/gを腹腔内に送達して麻酔を施した。その後、マウスを仰臥位にしてテープでプレキシガラス表面に貼り付けた。遮蔽用の鉛を適切に配置して、照射が胸部に限局するようにした。肺尖部から剣状突起までの照射野は1.8cmであった。60Co線源を使用して、14Gyの放射線を送達した。線源から皮膚までの距離は65cmであった。この線源への曝露時間は11分までであった。放射線への曝露後、マウスをケージの中に戻し、顔面を上にして寝かせ、回復を監視した。
4. 屠殺マウスからの試料の収集
照射後、規定の時点まで生存したマウス(抗体試験では26、28又は32週間)を屠殺して、下記の方法で処理した。Avertinで深い麻酔をかけた後、70%エタノールを胸部及び腹部の皮膚に噴霧した。胸腔を横隔膜を介して開いた。心室から直接400〜500μLの血液を吸引した。気管を露出させ、22ゲージの血管カテーテルを挿入した。1回につきPBS 700μLで2回、肺を洗浄した。右側の主気管支を肺門で結紮し、各肺葉を摘出して別々の試験管に入れ、液体窒素で迅速に凍結し、−80℃にて保存した。左肺は10%ホルマリン400μLで充満させ、10%ホルマリンに一晩漬け、パラフィンに包埋した。屠殺時に入手した気管支肺胞洗浄(BAL)液を200μLとその残りの2つに分けた。両方の試験管を2000RPMで3分間遠心分離した。両方の試験管の上清液を合わせ、液体窒素で凍結させ、−80℃にて保存した。大きな試験管の沈殿細胞を凍結標本にし、同じ方法で保存した。沈殿細胞200μLの画分を赤血球溶解緩衝液200μLで再懸濁し、十分に混合した。50μLは血球計での血球計算に使用した。残りの150μLは、サイトスピンの準備に使用した。心穿刺により得た血液を使用して、下記のように血清又は血漿を作成した。Capiject試験管又はヘパリン加1.5ccマイクロ遠心分離管で初回の混合を行った後、試料を14000RPMで20分間遠心分離した。上清液を除去し、即刻−80℃にて凍結した。
5. 死亡又は瀕死のマウスからの試料収集
屠殺日までに死亡若しくは瀕死の状態であったマウスを解剖して肺標本を得た。瀕死のマウスは解剖前にAvertinで安楽死させた。胸腔を横隔膜を介して開いた。気管までの解剖は完全に露出させて実施した。気管に22ゲージの血管カテーテルを挿入した。肺を10%ホルマリン800〜1000μLで充満させた。胸腔の内容物を一塊に摘出し、10%ホルマリンに24時間以上漬けてから、肺を分離してパラフィン包埋を行った。
6. 細胞分画
サイトスピン用調製物をDiffQuik法(Fixative、1%Eosin−Y、1%Azure A及び脱イオン水の順番で15秒ずつの浸漬)により染色した。その後脱水しスライド上に乗せた。好中球、リンパ球及びマクロファージの数を、2つの個別の強拡大(400倍)視野で徒手的に計数した。
7. 免疫組織化学
幾つかのホルマリン固定試料を、β6の免疫組織化学的検出のために使用した。内因性ペルオキシダーゼ活性をメタノール中の3%過酸化水素で15分間停止させ、Digest−All 3 Pepsin(Zymed[米国カリフォルニア州サウスサンフランシスコ])を5〜7分間使用して抗原を回収した。アビジン/ビオチンブロック溶液(Vector Laboratories[米国カリフォルニア州バーリンゲーム])を製造業者の指示書に従って使用した。0.5%カゼイン溶液を使用して15分間阻害した。ヒトIgG内にクローン化したマウス抗β6 mAbの種々の領域からなる抗β6モノクローナル抗体ch2A1(Biogen Idec)を、0.1% BSAで1:500で希釈し室温にて1時間使用した。Vectastain ABC kit(Vector Laboratories)を使用して、抗ヒト二次抗体で、製造業者の指示に従い検出を実施した。DAB kit(Sigma[米国ミズーリ州セントルイス])で発色を行い、ヘマトキシリンによるカウンター染色を行った。並行して取り扱われた切片の一次抗体を除外することがルーチンに行われ、Itgb6−/−マウスの肺切片に対する予備試験の結果が陰性であったことから、この手順の特異性が確認された。
8. 肺切片、三重染色及び線維症の割合の測定
ホルマリン固定パラフィン包埋肺を横方向に5ミクロンの厚さに切断した。肺の切片は、視覚的推定により肺門又はその近傍で採取した。スライド標本を脱イオン水まで脱パラフィン処理した(キシレン浴で各3分間2回、100%エタノールで各3分間2回、95%エタノールで各3分間2回、70%エタノールで3分間、脱イオン水で3分間)。切片をマッソン三重染色で染色した(媒染処理のためにブアン液一晩、Weigertの鉄ヘマトキシリン5分間、BiebrichのScarlet−酸性フクシン5分間、リンタングステン/リンモリブデン酸溶液5分間、アニリンブルー溶液5分間、間の脱イオン水洗浄、及び酢酸1% 2分間)。次いで、スライド標本を脱水し(70%エタノール、95%エタノール、100%エタノール及びキシレン)、Permountを使用してマウントした。
Haston, et al.(Cancer Res 2002, 62:372−8)に記載のパーセント線維症法(percent fibrosis technique)を使用した。三重染色肺切片の低倍率(2〜3倍)像を得、デジタル形式で保存した。肺切片の高倍率(100〜200倍)でのマニュアル検査を光学顕微鏡により実施して、線維症の領域(コラーゲン沈着の増大及び構造の喪失により規定される)を特定した。NIH Image 1.62ソフトウェアを使用して線維症の断面積を肺切片の総断面積と共にデジタル画像上にその輪郭を描いた。線維症の面積の和を肺の総面積で割って、線維症の割合を求めた。肺の1つのランダムな横断切片は、10枚のランダム切片と比較したとき、肺全体の線維症の割合を反映していることが示された(Haston, Amos, et al., 1996)。
9. ヒドロキシプロリン試験
ヒドロキシプロリン含量の測定は、Reddy and Enwememkaの方法の変法によった。右肺を除去し、重量を測定した。肺組織(湿重量が約20mg)を400μLの2N NaOH中で12時間培養し(室温にて)、次いで、ホモジナイズした。ホモジネート及び標準ヒドロキシプロリン溶液を120℃に30分間加熱して加水分解した。クロラミンT溶液(0.056M、450μL)を50μLの加水分解物に加え、酸化を25分間進行させた。エールリッヒ試薬(1M、500μL)を加え、冷却して65℃にて20分間発色させた。次いで、550nmでの吸光度を測定した。最終濃度をμgヒドロキシプロリン/mg湿肺組織として表わす。
10. RV/LV質量比の測定
この実験に使用したマウスは、照射後32週目に屠殺したコホートに属していた。7匹の別の非照射C57BL/6マウスを対照として使用した。照射マウスからの心臓は、28〜32週目に死亡したマウス又は32週目の屠殺まで生存していたマウスからのものであった。心臓は、ホルマリンで固定した。解剖顕微鏡下で、心房を摘出し、壁を含まない右心室(RV)を左心室及び中隔(LV)から切り離した。心室組織の各断片の重量を測定し、比率を計算した。7匹の非照射C57BL/6マウスを対照として使用した。
11. 統計処理
群間の線維症の割合の差の統計的有意性の検定は、ノンパラメトリックデータに関するMann−Whitney検定を使用して行った。死亡の日を記録し、Kaplan−Meier曲線を作製するのに使用した。Kaplan−Meier曲線の個々の群比較並びに総比較を対数順位(Mantel−Cox)検定を使用して行った。測定の平均値を平均値の対応する標準誤差又は標準偏差と共に報告する。RV/LV質量比の測定値の平均値の比較については、Studentのt検定(対応のない、両側)を使用した。Itgb6−/−マウスとItgb6+/+マウスとの間の線維症の有無の比較にはFisherの直接確率法を使用した。統計的有意性をp<0.05と定義した。
結果
1. マウスRILFはαvβ6発現を必要とする:胸郭照射後のItgb6−/−及びItgb6+/+マウスの比較
この実験は、ベースライン及び照射後のαvβ6発現を比較し、αvβ6の非存在が線維症を予防したかどうかを判断するために設計された。本発明者等はItgb6−/−及びItgb6+/+マウスを照射し、28週目の前の種々の時点及び28週目に屠殺した。
(a) β6は照射後18〜20週目にアップレギュレートされる。
照射後18週目の前に屠殺したマウスは、免疫組織化学により測定した場合、正常な低いαvβ6発現を有する。しかし、18週目には、肺胞上皮全体にわたるβ6の発現のび漫性の増大が認められる(図42)。
(b) 高αvβ6発現は線維症性領域で持続する。
本発明者等は、照射後の時間に関わりなく、線維症性病変部内の内皮細胞における高レベルのαvβ6発現を一貫して認めた(図43)。しかし、18週目に認められるαvβ6の発現のび漫性の増大は、後の時点にはしばしばさほど明らかでない(図43、24週及び27週と比較)。
(c) αvβ6を欠くマウスはRILFを発現しない。
対照マウスでは、線維症の部位を識別することができた最も早い時点は、照射後20〜22週目であった(図示なし)。線維症性部位は、一般的に十分に境界が明らかで、胸膜下にある。本発明者等は、照射後27週目に屠殺したItgb6−/−マウス(N=17)の肺の切片に線維症の部位を発見しなかった。これと対照的に、本発明者等は23匹中21匹のItgb6+/+マウスの切片に線維症の部位を発見した。これは統計的に有意な差である(p<0.001、両側Fisher直接確率法)(図44)。Itgb6+/+マウスの切片(照射後27週目)の線維症性部位の割合(%)の平均値は、17%±3%であった。本発明者等は、照射後27週目のItgb6+/+及びItgb6−/−マウスの肺のヒドロキシプロリン含量を測定することによって組織学的所見を確認した(図45)。
(d) αvβ6の非存在は肺照射後の生存に影響しない。
14Gy胸郭照射後、死亡は、照射後18週目まで無視でき、照射後ほぼ25週目に50%に達した。Itgb6+/+及びItgb6−/−マウスの生存曲線の間に有意差はなかった(図46)。
2. マウスRILFモデルにおける3G9(0.3、1及び1mg/kg/週IP投与)及び可溶性TGFβRの効果
以前の結果は、RILFがαvβ6インテグリンの発現に依存し、αvβ6の欠乏は照射後死亡率を悪化させないことを示している。αvβ6の必要性は、潜在性TGFβ1のアクチベーターとしてのその既知の機能と一致している。これらの結果は、抗線維症戦略としてのαvβ6阻害の実現可能性も示唆している。この着想を検定し、RILFのマウスモデルがTGFβ依存性であることを確認するために、本発明者等は照射マウスに対照Ab、可溶性TGFβ受容体又は3G9の3用量の内の1つを投与した(1群当たりN=27)。より少数のマウス(N=15)にPBS注射液(200μL)のみを投与した。3G9は0.3、1及び10mg/kgの用量で使用し、照射Abは10mg/kgで使用し、可溶性TGFβ受容体は5mg/kgで使用した。投与は、照射後15週目(αvβ6アップレギュレーションの約3週間前)に開始し、照射後26週目の屠殺まで週1回継続した(詳細については方法の項を参照)。
(a) 3G9及び可溶性TGFβ受容体は線維症を低減する。
0.3mg/kg群は対照群と比較して線維症の割合の低下を示さなかったが、1mg/kg群は線維症の有意な低減を示した。可溶性TGFβ受容体及び10mg/kg群も対照より少ない線維症を示したが、屠殺マウスのみの解析における結果は統計的有意性に達しなかった(図47)。計画屠殺時点の前に死亡したマウスは生存マウスと生物学的に異なっていた可能性がある。従って、本発明者等は試験期間中に死亡又は屠殺した全てのマウスにおける同様な解析を行った。全てのマウス(屠殺したマウス及び屠殺の前に死亡したマウス)を考慮した場合、対照と比較して有意に少ない線維症が1mg/kg、10mg/kg及び可溶性TGFβ受容体群に存在していた。0.3mg/kg群は、再び対照と比較して有意差を示さなかった(図48)。
(b) 10mg/kgの用量の3G9は好中球性及びリンパ球性肺胞隔炎を引き起こす。
全ての屠殺マウスにおいて実施したBALで、対照と比較して10mg/kg群の好中球及びリンパ球の割合の増加率(%)が明らかにされた(図49)。他の群は、同様な増加を示さなかった。
(c) 低用量の抗体によるαvβ6遮断は肺照射後の生存に影響を及ぼさない。
全群を比較した場合、生存の有意差はなかった(p=0.088; 対数順位Mantel−Cox検定による全群の比較)。しかし、10mg/kg群の死亡の増加の傾向は明白であった(図50)。10mg/kg群/週群と対照群のみを比較した場合(即ち、多重比較の補正なし)、生存曲線間の差は統計的に有意である。
3. マウスRILFモデルにおける3G9(1、3、6及び10mg/kg/週SC投与)の効果
以前の結果は、マウスモデルにおけるRILFはTGFβ媒介性であり、1mg/kg及び10mg/kgの用量の3G9により有意に低減することを示している。しかし、肺胞炎症の増加、及び死亡の増加の傾向が10mg/kgの用量で存在する。この実験では、本発明者等は3G9の投与はRILFを予防するのではなく、RILFの発症を単に数週間遅延させるという可能性を検定するために、より後の時点(照射後32週目まで)に線維症を評価した。又、1mg/kg用量と10mg/kg用量との間の肺胞炎症及び生存の差をより十分に明らかにするために、本発明者等は1mg/kgと10mg/kgの間の追加の用量を試験した。本発明者等は270匹のマウスを照射し、それらを3G9の4用量(1、3、6及び10mg/kg)の内の1つ又は対照Ab(10mg/kg)の投与を受ける等しい群に分けた。投与は、照射後15週目に開始し、後の屠殺まで週1回継続した。実験は、約1ヵ月の間隔をあけて照射したマウスの2群を使用して行った。1つの群では、マウスが照射後28週目まで生存していた場合(群1)投与を開始したマウスを屠殺し、他の群では、マウスが32週目まで生存していた場合(群2)屠殺した。抗体は、皮下に投与した(以前の実験におけるようにIPではない)。
(a) 1、3、6及び10mg/kgの用量の3G9は線維症を低減する。
対照と比較して有意に低いレベルの線維症が3G9を投与した全ての群に認められた(p<0.01)。これらの差は、死亡又は瀕死が認められたマウス、最終時点に屠殺したマウス、及び合わせた全てのマウスで有意であった(図51)。
(b) 高用量の3G9は好中球性及びリンパ球性肺胞隔炎を引き起こす。
全ての屠殺マウス(N=101)において実施したBALsで、3mg/kg、6mg/kg及び10mg/kg群で対照と比較して高い割合(p<0.02)の好中球及びリンパ球が示された(図52)。又、1mg/kg群と比較して有意に高い割合が存在した(p<0.001)。定性的には、「泡沫」マクロファージ(Itgb6−/−マウスで認められたのと同一)及び細胞破片の数の増加がより高用量で認められる(図53)。
(c) 6mg/kgの用量の3G9は生存率の低下に関連する。
1mg/kg及び3mg/kg群と比較した対照群との間の死亡率の差はなかった(図54及び55)。しかし、対照と比較して6mg/kg群の死亡率は有意に高かった(p<0.05)。10mg/kg群は、対照マウスと比較して生存率の低下を示さなかった。差は28週群でより顕著であったが、6mg/kg/週3G9群は28週屠殺(群1)及び32週屠殺(群2)コホートの両方でより不良な生存率を有していた(図54及び55)。
(d) RV/LV質量比及び肺潅流に対する肺照射の影響
以前の試験で、肺照射後の線維症相中の死亡は空気間隙(airspace)閉塞(主として線維症に起因する)と肺胞潅流の喪失の組合せに起因する呼吸困難によることが示唆された(Sharplin and Franko 1989)。潅流の喪失は肺動脈高血圧及び右心室肥大の原因となるはずであり、RV質量の増加がこのモデルで報告された。本発明者等は32週目まで生存していたマウス及び28週目から32週目までの間に死亡したマウスのRV/LV質量比を測定した。死亡したマウスは、生存していたマウスと比較して、又非照射マウスと比較して有意に高いRV/LV比を有していた(図56)。更に、死亡した一部のマウスで、肺胞潅流が完全に喪失したことを示唆する所見である、肺胞壁に赤血球が完全に存在しない明瞭な部位が認められた(図57)。
考察
TGFβは、線維症誘発性メディエーターであることが知られている。以前の試験で、インテグリンαvβ6が潜在性TGFβ1及びTGFβ3を活性化し、Itgb6−/−マウスはブレオマイシン誘発性肺線維症から保護されることが示された。ここに示す結果は、Itgb6−/−マウスは放射線誘発性肺線維症からも保護されることを示している。これらの結果は、αvβ6インテグリンを標的とする抗線維症療法の根拠を提供する。
これらの試験において、本発明者等は1mg/kg/週及びより高用量で投与した3G9はRILFを一貫して、且つ効果的に低減したことを見出した。より高用量、特に6〜10mg/kg/週の用量は、BAL液中の好中球及びリンパ球の割合の増加と関連していた。これらの変化は、Itgb6−/−マウスの表現型と一致しており、3G9のこれらの用量が、動物がノックアウトを表現型模写するような程度までαvβ6媒介性TGFβ活性化を阻害していることを示唆している。
更に、3G9のより高用量は、マウスRILFモデルにおける生存率の低下に可変的に関連している。最初の試験では、10mg/kg/週の用量で死亡率の増加の強い傾向があったが、1又は0.3mg/kg/週を投与したマウスではなかった。2回目の試験では、6mg/kg/週群に死亡率の増加があったが、他の群(10mg/kg/週を含む)にはなかった。用量/反応の不一致の理由は不明であるが、一般的な結果は、試験した最高用量で生存率が低いという傾向である。
RILFモデルに発生する死亡は、呼吸困難に起因すると思われる。死亡は、系統依存性且つ性依存性である(Haston, Zhou, et al., 2002)。マウスRILFモデルにおける肺機能不全及び死亡の原因が広範に研究された(Sharplin and Franko 1989)。この研究の著者らは、照射後に肺潅流が減少し、この障害が死亡の一因であった可能性があると結論付けた。放射線誘発性肺線維症に対して抵抗性であるマウスも放射線誘発性肺線維症モデルにおいて低い生存率を有する。これらのマウスにおける肺潅流の低下がこのモデルにおけるそれらの死亡に寄与する主要な因子であることが認められた。潅流障害のパターンは、系統に依存する。線維症に罹患しやすいマウスでは、潅流の完全な喪失(屠殺の30秒前に静脈内注射したコロイド状炭素の存否により判断される)は、線維症の部位及び線維症政病変に隣接する偶発的な小部位に限定されている。更に、照射マウスの潅流部位には非照射対照より大きい炭素量の領域間の変動があり、潅流が低いが、非存在でない実質的な部位が存在していたことが示唆される。マウスの複数の系統で認められる肺潅流の喪失の他の証拠は、病変のない肺における小血管の数の低下、及びRV/LV厚比により評価されるRV肥大であった。肺胞壁における赤血球の数(潅流を評価する異なる方法)も照射マウス(A/J系)で低かった。殆どのC57BL/6マウスは、胸水を有さなかった。C57BL/10J系を除いて、照射の結果として心筋損傷は起こらなかった。
死亡に関する本発明者等の所見は、Sharplin and Frankoのより広範な所見と一致している。対照マウスでは、線維症の量は屠殺まで生存していたマウスより死亡したマウスで大きく(図51)、より大きい肺機能不全が死亡に関連することが示唆される。死亡するマウスは左心室肥大(RV/LV質量指数の増加と定義)を有するが、屠殺まで生存しているマウスは有さず(図56)、この所見は、肺潅流の喪失が死亡に関連することを示唆している。死亡していたことが認められた一部のマウスでは、肺胞壁における赤血球を欠く肺の部位が組織学的切片に認められ(図57)、それらの部位における潅流の完全な喪失と一致し、以前の記述(Sharplin and Franko 1989)と一致している。本発明者等は、死亡の原因となるような食道機能不全(瘢痕化、穿孔)の証拠を認めず、又心筋壊死も認めなかった。従って、以前の試験に照らして解釈した本発明者等の証拠は、線維症が予防された場合でさえも肺潅流の喪失がC57BL/6マウスで起こり、線維症ではなく、肺潅流の喪失が死亡の原因であることを示唆している。本発明者等は又、注射(対照Ab又は3G9の)後2日間の内にマウスが死亡した可能性がより高かったことを認めたことから、取扱いのストレス及び注射によるおそらく余分の液量がわずかなマウスの死亡を促進したことが示唆される。
遺伝子切除によるαvβ6の喪失はこのモデルにおける死亡に影響を及ぼさないが、3G9の高用量(6〜10mg/kg/週)は、より低用量の3G9又は対照Abを投与したマウスと比較して早期死亡に関連していた。最も明白な解釈は、より高用量の3G9が死亡率を悪化するということである。しかし、本発明者等は、対照Ab及びより低用量の3G9が生存率を実際に改善するという可能性を排除することはできない。3つの実験における50%の生存率までの時間の比較により、2つの群の存在が示されたように思われる。野生型及びItgb6−/−マウス(図46)、IP実験においてPBS投与及び10mg/kg/週 3G9投与マウス(図50)並びにSC実験において6mg/kg/週 3G9投与マウス(図54)は約22.5〜25週間の生存時間中央値を有するが、他の全ての投与群は約24.5〜30週間の生存時間中央値を有する(図50及び54)。実験条件が異なっており、他の条件が実験の間に異なり、ベースライン死亡率の変化をもたらしていた可能性があるため、この点に関する決定的な結論は可能ではない。6〜10mg/kg/週の3G9を投与したマウスでは、本発明者等は解剖時のマウスの肉眼的検査又は肺組織学的検査時の生存率の変化の原因となるような新たな異常(肺炎症以外の)を認めなかった。RILFモデルにおける3G9の低用量と高用量との間の生存率の差の理由は不明である。
これらの試験は、αvβ6媒介性TGFβ活性化をおそらく最大限に低下させない3G9のより低用量がマウスRILFモデルにおける肺線維症を安全に予防するという結論を裏付けている。
Figure 2009500041
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実施例16 肺線維症のブレオマイシンモデルにおける抗αvβ6インテグリンモノクローナル抗体の有効性
概要
肺線維症の現行の療法は大部分が無効であり、新規の治療薬を開発することが極めて必要である。線維芽細胞の活性化と増殖、及び細胞外マトリックス分子の発現等の肺線維症を特徴付ける多くの病理学的過程の推進にTGF−βが中心的役割を果たしているため、TGF−β経路を遮断する薬剤に特に関心が払われている。その線維症誘発活性に加えて、TGF−βは重要な抗炎症性サイトカインであり、従って、TGF−βの治療的阻害は、過度の炎症を促進せずに、線維症を理想的に阻止するはずである。以前の試験で、インテグリンαvβ6はin vivo、特に肺におけるTGF−βの活性化の重要なメディエーターであることが示された。αvβ6は細胞外間隙における潜在性TGF−β複合体に直接結合し、この結合は、多くの場合、活性形の遊離を必要とする。αvβ6を欠くマウスは、肺におけるTGF−βシグナリングの障害のため軽度の肺炎症を有し、ブレオマイシン誘発性肺線維症に対して抵抗性である。本発明者等は、潜在性TGF−βへのαvβ6の結合を阻止し、TGF−βの活性化とその後のシグナリングを阻害するモノクローナル抗体を開発した。ここに本発明者等は、これらの抗体がマウスにおけるブレオマイシン誘発性線維症の減弱に有効であることを示す。本発明者等は更に、肺コラーゲン発現の減弱のほぼ最大の有効性が、気管支肺胞洗浄液中の炎症細胞の数により測定される付加的な炎症をもたらさない用量で達成することができることを示す。一方、線維症も減弱するより高用量の抗体は、αvβ6欠乏マウスで認められるものと一致する炎症を誘発することができる。これらの所見は、αvβ6媒介性TGF−βの阻害の炎症誘発及び抗線維症効果はこのモデルにおいて分離可能であり、炎症誘発効果より線維症の抑制がより低用量で起こることを示している。
緒言
TGF−β1サイトカインは、罹患組織の過剰細胞外マトリックス(ECM)による置換によって特徴付けられ、最終的に臓器瘢痕化及び不全の原因となる病理学的過程である線維症の開始及び維持に中心的なものである。TGF−β1は、ECMの分泌及び線維症過程の進行の維持を担っている線維芽細胞増殖及び筋線維芽細胞の活性化を促進する[1−6]。TGF−β1は、創傷治癒時に起こる組織リモデリング事象における十分に制御された役割を果たしている。しかし、多くの疾患において、この組織リモデリングの過程は、異常になり、長時間にわたるアップレギュレートされたTGF−βシグナリング、過剰な線維芽細胞蓄積、ECM沈着及び瘢痕化によって特徴付けられる。in vivoでの線維症の進行におけるTGF−β1の重要性は、機能の獲得試験並びに遮断により示された[1、7〜12]。肺における様々なサイトカインのアデノウイルス及びトランスジェニック過剰発現は、TGF−β1が著しい炎症の非存在下で線維症を促進するその能力が特有であることを示すものであった。線維症を促進する他のサイトカインは、組織におけるTGF−β1発現をアップレギュレートすることによってしばしば線維症を促進する。更に、試験により、TGF−βシグナリングのメディエーターであるSMAD3が欠乏したノックアウトマウスは、肺線維症の発現に対して抵抗性であることが示された[13]。抗TGF−β薬を使用した多くの試験で、疾患モデルにおける線維症からの顕著な保護が示されている[8、9、11、14〜17]。従って、TGF−β1は、線維症の病理学に関連する疾患の治療の潜在的治療標的として特定された。
αvβ6インテグリンは、TGF−β1活性化の重要なレギュレータとして特定された。TGF−β1は、成熟活性C末端TGF−βサイトカインと非共有結合により結合したN末端LAPにより開裂され、分泌される潜在タンパク質として合成される。潜在TGF−β1複合体は、その同族受容体の結合することができず、従って、プロテアーゼによる開裂、低pH又は電離放射線への曝露、その同族受容体への結合を可能にする潜在複合体の立体配座の変化を含む幾つかの代替機序の1つにより活性形に変換されるまで、生物学的に不活性の状態に留まる[18〜21]。αvβ6インテグリンは、潜在TGF−β1複合体におけるRGDモチーフに結合し、それを活性形に変換する[18、22〜25]。TGF−β1の活性化の他の幾つかの機序が確認されたが、β6インテグリン欠乏マウス(β6ヌルマウス)における試験で、肺及び腎臓における線維症の発生にはTGF−βのαvβ6媒介性活性化が必要であることが示唆されている[18、26]。αvβ6は、正常成体組織において低レベル又は検出不能レベルで発現するが、炎症性/線維症性疾患において高度にアップレギュレートされ、一般的に上皮細胞に限られている[27〜30]。従って、組織損傷時の上皮細胞におけるαvβ6のアップレギュレートされた発現は、TGF−βの局所活性化の増大及びバイスタンダー細胞における後続のTGF−β依存性事象の機序をもたらす。αvβ6[31]リガンド結合の遮断は、特にαvβ6のアップレギュレートされた発現が存在する組織におけるTGF−βの活性化の局所的阻害の方法を提供する。この手法は、TGF−β経路の全体的な阻害に伴う臨床的安全性のリスクを低減する可能性がある。
本明細書に記載する試験において、本発明者等は、特発性肺線維症(IPF)を含む、炎症性及び線維症性病状を伴うヒト肺疾患においてαvβ6が有意にアップレギュレートされることを示す。以前の試験で、αvβ6機能を欠くβ6ヌルマウスがブレオマイシン誘発性肺線維症から保護されることが示された[18]。ここでは本発明者等は、αvβ6のリガンド結合及びTGF−β活性化機能を遮断するモノクローナル抗体がブレオマイシン誘発性肺線維症を強力に抑制することを種々のマウス系統において、線維症の多くの各種の尺度により示す。本発明者等は更に、肺胞細胞集団はブレオマイシン損傷肺において低い有効量では変化せず、従って、抗線維症作用の機序は、予想通り、炎症を抑制することによって媒介されないことを示す。高い頻繁な投与によってのみ、このモデルにおいて付加的な炎症が認められ、β6ヌルマウスにおける付加的な炎症の所見と一致している。
材料及び方法
1. 試薬
αvβ6mAbsを本明細書における他所に記載又は以前に記載した[31]ように生成した。ヒト/マウスキメラ2A1及び3G9 cDNAsを、重鎖の定常領域プライマーCDL−739及び軽鎖のCDL−738を含む各親ハイブリドーマ総RNAsからFirst Strand cDNA合成キット(Amersham/Pharmacia[米国ニュージャージー州ピスカタウェイ])を使用して生成した。重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子は、cDNA合成に使用した同じ3’プライマー及び大部分のマウス抗体遺伝子シグナル配列(請求あり次第入手可能な配列)に特異的な縮重プライマーのプール及びPfu DNAポリメラーゼ(Stratagene[米国カリフォルニア州ラホイヤ])を使用してポリメラーゼ連鎖反応により増幅した。クローン化した重鎖及び軽鎖可変領域を、ヒトIgG1定常領域を含む哺乳動物発現ベクターに結合させた。組換え可溶性マウスTGF−β受容体II−Ig型融合タンパク質(sTGF−bRII−Ig)を以前に記載した[32]ように生成した。研究用mu3G9、1E6及びsTGF−bRII−Ig(リン酸緩衝生理食塩水中精製タンパク質)を全ての実験に使用した。
2. 動物
マウス
肺ヒドロキシプロリンをエンドポイントとした実験にはSV129マウスを使用した(Sheppard Laboratory[カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)])。組織形態計測又はBAL収集及び解析をエンドポイントとした実験にはC57B16マウスを使用した(Biogen Idec)。エンドポイントとしてのコラーゲン遺伝子発現の定量分析には、トランスジェニックリポーターマウスを使用した(Biogen Idec)。colIα2遺伝子プロモーターの17kb領域の制御下のルシフェラーゼリポーター遺伝子を運ぶトランスジェニックマウスは、以前に記載した[33]。これらのマウスは、トランスジェニック雄をC57B1/6XDBA/2 F1ハイブリッド雌と交配させて維持する(Jackson Laboratories)。外来遺伝子陽性の子孫(テールルシフェラーゼ発現により評価)を下に概要を示すブレオマイシンチャレンジ実験のために選択した。
ハムスター(Giri Laboratory)
体重が90〜110gの雄ゴールデンシリアンハムスターをSimonsens, Inc.(米国カリフォルニア州ギルロイ)から購入した。ハムスターは、ろ過空気を供給し、温度及び湿度を一定とした施設に4匹の群で収容した。全ての管理は、動物福祉法に関する国立衛生研究所ガイドに準拠した。ハムスターを投与前に1週間施設内で馴化させた。12時間の明/暗サイクルを維持した。
3. 免疫組織化学
マウス肺を採取し、10%緩衝ホルマリンに入れ、一般的手法に従ってパラフィン組織学検査用に処理した。線維症性病状を伴う肺疾患を有する患者の肺のパラフィン組織切片は、G. Davis(バーモント大学)、R. Lafyatis(ボストン大学)、Ardais Corp.(米国マサチューセッツ州レキシントン)及びAsterand Inc.(米国ミシガン州デトロイト)から入手した。組織切片をキシレン及びエタノールで脱パラフィン処理し、蒸留水で再水和し、次いで、0.45% Hを含むメタノールに浸漬した。組織をペプシン(00−3009、Zymed[米国カリフォルニア州サンフランシスコ])と共に培養し、アビジン及びビオチン(SP−2001; Vector Laboratories[米国カリフォルニア州バーリンゲーム])で遮断した。一次抗体を0.1%BSA含有PBSで希釈し、組織を4℃にて一晩培養した。切片を、抗αvβ6 mAbのヒト/マウスキメラ型、2A1[31]、及びマウス組織に対する抗ヒトビオチニル化二次抗体(PK−6103、Vector Laboratories[米国カリフォルニア州バーリンゲーム])と共に培養した。
切片を、2A1[31]、及びヒト組織に対する抗マウスビオチニル化二次抗体(PK−6102、Vector Laboratories)と共に培養した。アビジン−ビオチン複合体−西洋ワサビペルオキシダーゼ(Vector Kit、PK−6102)を切片に塗布し、室温にて30分間培養し、3,3−ジアミノベンジジン(DAB)基質を指示通りに調製し(SK−4100、Vector Laboratories)、切片に室温にて5分間塗布した。組織切片をマイアーのヘマトキシリンで1分間染色し、水及びPBSで洗い流した。全てのヒト組織試料は、現地施設内審査の承認及び患者承認の元に入手した。
3.1 マウスにおけるブレオマイシンの滴注
SV129系(D. Sheppard[UCSF])
マウスには以前に記載した[18]ようにブレオマイシン又は生理食塩水を気管内に滴注した。簡単に述べると、年齢及び性をマッチさせた129/terSVEMS系の8〜12週齢のマウスを特定病原体のない環境で飼育管理した。ブレオマイシン(Mead Johnson[米国ニュージャージー州プリンストン])を滅菌生理食塩水に溶解した(60mL中0.03又は0.05単位)。ブレオマイシン又は生理食塩水は、直接切開によりメトキシフルラン麻酔下で経気管投与した。
C57B1/6系及びコラーゲンリポーターマウス(Biogen IDEC)
100mg/kgケタミン及び10mg/kgキシラジンのIP注射によりマウスを麻酔した。滅菌#15メスを使用して頚部に0.5〜1.0cmの正中線切開を施して、視覚化のために気管を露出させた。気管を露出させ、口腔を経て気管内に噴霧チップを入れた後に、Penn Century微量噴霧装置を使用してブレオマイシンを滴注した。生理食塩水は、対照動物に滴注した。滴注後、滅菌創傷クリップで手術部位を閉じた。術後疼痛に対してブプレノルフィン0.05mg/kgを皮下投与した.
これらのマウスブレオマイシン試験において複数の治療プロトコルを使用して被験物質を評価したため、結果の項で述べるものとする。
3.2 ハムスターにおけるブレオマイシンの滴注
ペントバルビタール麻酔下で、ハムスターに0、7及び14日目に生理食塩水(SA;4mL/kg)又はブレオマイシン(BL;6.5U/4mL/kg)をIT滴注した。動物を次の6つの実験群に無作為に分けた。即ち、SA滴注、PBS投与(SA+PBS);BL滴注、PBS投与(BL+PBS);BL滴注、0日目に開始してmu3G9投与(BL+Ab1);BL滴注、7日目に開始してmu3G9投与(BL+Ab2);BL滴注、14日目に開始してmu3G9投与(BL+Ab3);及びBL滴注、0日目に開始して1E6投与(BL+1E6)。動物を28日目に屠殺し、それらの肺を除去し、ヒドロキシプロリン及び脂質過酸化の分析のために処理した。
4. コラーゲン含量を得るためのヒドロキシプロリン分析
肺をガラス管(Fisher #14961)に入れた1mLのdHO中でホモジナイズした。125μLの50%トリクロロ酢酸(TCA)をホモジネートに加え、氷上で20分間培養した。試料を1000rpmで4℃にて5分間遠心分離した。上清を捨て、1mLの12N HClをガラス管中のペレットに加えた。次いで、試料を110℃にて24時間焼いた(ガラスビーカー中)。乾燥ペレットを2mLのdHOで再構成した。6つのヒドロキシプロリン標準(Sigma−H6002)を0.25mg/mLから開始して調製した。500μLのクロラミンT(0.5M 酢酸Na及び10%イソプロパノール中1.4%クロラミンT)を含む1.5mL Eppedorf管に、200μLの試料を加え、室温にて20分間培養した。次いで、500μLのEhrlich’s/pDMBA(70%イソプロパノール及び30%過塩素酸中1M p−DMBA(p−ジメチルアミノベンズアルデヒド))を加え、65℃にて15分間培養した。100μLの最終反応溶液を96ウェルプレートに移し、各試料について3回の測定を行い、2時間後に試料を550nmで読み取った。
5. 組織学指標
組織形態計測をエンドポイントとした実験では、屠殺時に各マウスの肺全体を組織学的に評価した。横断切片を切り出し、標準的手順によりマッソンの三色で染色した。各マウスの肺の複数の葉を含む横断切片を選択した。三重染色切片全体を対象として含む高倍率(100倍)視野を写真撮影した(マウスにつき平均約30視野)。各写真を、Metamorph 6.0.5ソフトウェアによりコラーゲン含量(三重染色組織学的切片において青色に見える)について評価した。青色の部位を色閾値により選択し、総組織面積の割合として表した。
6. ルシフェラーゼ分析
肺を採取し、1mLの溶解緩衝液(0.1M KH2PO4−pH7.8及び1mM DL−ジチオトレイトール)中でホモジナイズした。次いで、試料を氷上に10分間置き、4℃にて12000rpmで10分間遠心分離し、次いで、100μLの各試料をWallac Isoplatterに移した。次いで、試料を再び氷上に15分間置いた後、100μLのLuclite基質(Perkin Elmer #601911)を加えた。次いで、ルシフェラーゼ活性をルミノメーターで読み取った。
7. 気管支肺胞(BAL)採取及びBAL細胞の分染
Inactin(Sigma)の腹腔内注射(IP)によりマウスを安楽死させた。主として鈍的剥離により気管を露出させた。次いで、気管を鋏で2つの軟骨輪の間で開き、23ゲージ鈍端針を気管に挿入した。Schwartz一時クリップ(Roboz)で軽く締め付けて針を所定の位置に保持した。0.8mLのCa2+又はMg2+不含有リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を肺に注入して、BALを実施した。大きい圧力を加えずに液を注射器中に吸引し、氷上の15mLポリプロピレンFalcon管に移した。次いで、処置を繰り返し、過度の陰圧をかけずにBAL液を注射器中に吸引した。試料を氷上で保存し、細胞数の計測、分染のために処理し、BALペレット及び液を採取し、−80℃にて保存した。
1. 次いで、BALを卓上遠心分離機で4℃にて180g、1000rpm(Beckman GPR)で10分間遠心分離した。次いで、上清(BAL液)を除去し、−80℃にて凍結した。1.0mLのRBC溶解溶液(Sigma)をペレットに加え、ボルテックスミキサーで20秒間混合した。次いで、細胞数の計測及びサイトスピン(cytospins)を行った。
2. 試料を氷上に保存し、血球計を使用し、細胞を血球計に加えた後1分間置き、読み取りの前に細胞を沈降させて計数した。
3. 100μLの細胞懸濁液を室温にて500RPMで5分間サイトスピンした(ThermoShandon)。細胞溶液を細胞遠心分離装置に入れ、500rpmで5分間サイトスピンすることにより、サイトスピン標本を調製した。細胞濃度を調べて、スライド標本上の濃度が高すぎないことを確認した。スライド標本を一晩乾燥させ、DiffQuik(Fisher)で染色した。染色は、製造業者の(DiffQuik)プロトコルに従って行った。スライド標本を乾燥させたら、Permount(Fisher)を使用してカバーグラスをのせ、細胞を種類により分類し、100個の無作為に選択した細胞を実験用細胞計(Fisher)を使用してカウントした。
8. 統計解析
ビヒクル対照及び/又はアイソタイプ対照と被験物質との統計的比較を分散分析(ANOVA)を使用して行った。ANOVAを使用してp<0.05の確率で統計的有意差が立証された場合、群間の有意差をDunnetの多重比較検定により評価した。
結果
1. ヒト肺疾患及びブレオマイシンモデルにおけるαvβ6の発現
アップレギュレートしたTGF−β発現及びシグナリングは、線維症性又は炎症性病状を伴う様々なヒト肺疾患において記載された[20、34]。しかし、αvβ6の発現は、線維性炎症性肺疾患の小試料においてのみ記載された[28]。本発明者等は、線維症性及び/又は炎症性変化を有すると特徴付けられた肺疾患を有する患者からの41個の肺組織試料におけるαvβ6の発現を評価した(表16−1)。更に、本発明者等は、癌患者からの肺生検検体の直示的に正常な領域からの肺組織アレイを染色した(Imgenex)。正常肺におけるαvβ6の発現は、免疫組織化学によって殆ど検出されなかった。「正常」肺組織アレイにおける一部の組織切片は、陽性αvβ6染色を示したが、それらの切片のそれぞれが近傍に炎症性病状も有していた。41個の肺試料の全てにおいて、線維症及び/又は炎症性変化を有する領域はαvβ6発現の強いアップレギュレーションを示した(図58)。αvβ6は、顕性線維症の領域の上にある表皮表細胞又は炎症性浸潤巣に隣接する領域に限局化していた。アップレギュレートしたαvβ6の存在は、特発性肺線維症、強皮症性肺疾患及び慢性閉塞性肺疾患を含む線維性炎症性疾患のスペクトルにわたって認められた。
発現と特定の病理学的変化との相関関係をより十分に明らかにするために、本発明者等は染色組織試料を外部の訓練を積んだ肺病理学者に送った。購入した試料の多くの病理学的診断を検証することはできなかった(Ardais and Asterand)ものの、より低い線維症とより良好な予後を伴う病状である非特異的間質性肺炎(NSIP)と比較して線維症及び進行性疾患を伴う病状である「通常の間質性肺炎ではるかに高い強度のαvβ6染色が認められた」ことを一貫して示した。UIPを有する患者からの生検検体の全てにおいて、II型及びI型の肺胞管及び肺胞を裏打ちする肺細胞内に強い染色が認められるが、大気道は大部分陰性であり、肺胞内マクロファージは陰性である。要約すると、「高レベルの染色は線維症性部位及びUIPに関連しており」、同様のパターンの強度がより低い染色がNSIPを含む線維症の他の例に認められた。UIPは特発性肺線維症(IPF)を有する患者における主要な病状であるため、この病状を有する患者における線維症誘発サイトカインTGF−βのアクチベーターであるαvβ6の強い過剰発現は、それが線維症の進行の推進における機能的役割を有する可能性があることを示唆している。
2. マウスブレオマイシンモデルにおけるαvβ6の発現
αvβ6が肺線維症のブレオマイシンマウスモデルにおいてもアップレギュレートされたことを確認するために、本発明者等はブレオマイシンの滴注後1、5及び15日目に採取した組織切片上のαvβ6タンパク質の存在を検討するために免疫染色した。5日目には、ブレオマイシンチャレンジにより損傷した肺の領域全体にわたる肺胞上皮でαvβ6発現がアップレギュレートしている(図59)。顕著な線維症の領域が顕在化する15日目には、これらの線維症性部位における肺胞上皮でαvβ6がより強くアップレギュレートされる。
3. SV129マウスにおけるヒドロキシプロリンによる線維症の評価
αvβ6(β6ヌル)が遺伝的に欠乏したマウスは、SV129マウス系統におけるブレオマイシン誘発性肺線維症から保護されることが以前に示された[18]。本発明者等は、この同じ系統におけるブレオマイシン誘発性肺線維症の減弱における抗αvβ6モノクローナル抗体、即ちmu3G9の有効性を評価することを追求した。本発明者等の共同研究者であるUCSFのDean Sheppardの施設において一連の4つの実験を行った(表16−2)。0日目にSV129マウスの気管にブレオマイシンを滴注し、ブレオマイシンの滴注後0、15又は30日目に開始して週3回4mg/kgのmu3G9をIP注射した。対照マウスにはPBS又は陰性対照抗体1E6を注射した。1E6は、ヒトLFA−3に対するマウスIgG1抗体であり、マウス抗原に結合しない。マウスを30又は60日目に屠殺し、総組織コラーゲンの尺度であるヒドロキシプロリン含量により線維症を評価した。4つの内の3つの実験において、ブレオマイシン誘発性線維症の減弱における有効性を示唆する、mu3G9投与マウスにおけるヒドロキシプロリンの統計的に有意な減少が認められた(図60)。投与をブレオマイシンの滴注後30日目まで遅延させた場合(図60C)にのみ、mu3G9投与マウスの肺におけるヒドロキシプロリン含量がPBS又はアイソタイプ対照投与マウスと比較して有意に低下しなかった。
4. 46日間治療したブレオマイシンチャレンジマウスの生存の評価
ブレオマイシンモデルにおける抗線維症有効性が生存率の改善と一般的に相関しないため、本発明者等はmu3G9投与マウスの生存率が改善すると予想しなかった。しかし、これらのマウスには本発明者等が試験した最長治療期間(46日)であった15日目から60日目まで週3回4mg/kgのmu3G9を投与した(図60D)ため、本発明者等はその実験で試験した群に生存率の差があったかどうかを確認するために解析した。mu3G9を投与したマウスとPBS及び4B4非遮断対照抗体を投与したマウスと比較したところ、総生存率の有意差はなかった(表16−2)。
5. C57Bl6マウスにおける線維症の組織形態計測分析
異なるマウスの系統及び異なる施設におけるmu3G9の抗線維症有効性を検証するために、Biogen Idecにおける一連の実験においてC57Bl6マウス系を使用してmu3G9を評価した。この系統は、ブレオマイシンモデルに頻繁に使用され、滴注後14日目に測定することができる迅速な線維症を発現する。最初の3つの実験で、マウスに0日目にブレオマイシンを気管内に滴注し、ブレオマイシンチャレンジの1日前(−1日目)から開始してmu3G9を週3回投与し、肺の採取のために14日目に安楽死させた。第4の実験では、投与を14日目まで遅延させ、28日目に肺を採取した。これらの実験のそれぞれ(図61)において、mu3G9は、マッソン三重染色組織切片における青色染色領域として組織形態計測により測定した線維症肺組織の割合をPBS投与対照と比較して一貫して低下させた。1E6 mAbを陰性IgG対照として使用した2つの実験の内の1つにおいて、1E6 mAbも線維症組織の割合を有意に低下させた(図61A)。1E6 mAbのこの作用は、ヒドロキシプロリンをエンドポイントとして使用した以前の実験(図60)においても遅延投与(14〜28日目)実験(図61D)においても認められなかった。要約すると、複数の実験で、C57Bl6マウスにおいてブレオマイシンにより誘発される線維症組織の割合の低下におけるmu3G9の有効性が実証された。しかし、組織形態計測エンドポイントの労働集約性のため、本発明者等は線維症を測定するためのより迅速且つ定量的な方法を探求した。
6. 定量的エンドポイントとしてのコラーゲン−ルシフェラーゼリポーター外来遺伝子の使用
線維症モデルにおけるコラーゲンの発現の定量的読み取りを得るために、ルシフェラーゼリポーター遺伝子がコラーゲンIα2プロモーターの制御下で発現する外来遺伝子を運ぶトランスジェニックマウスを以前に使用した[33];[35]。14日目に、生理食塩水対照と比較したブレオマイシンチャレンジマウスの肺ルシフェラーゼレベルの増加は約10倍であり、このことから、肺ルシフェラーゼレベルはヒドロキシプロリン測定よりはるかに感度が高いエンドポイントである。このシステムを使用して、本発明者等は週1回の投与を使用して3G9抗体の用量調節を行ったが、ヒドロキシプロリン及び三色組織形態計測をエンドポイントとして使用した実験で使用した週3回投与法で4mg/kgを投与したマウスの群を含めた。用量調節を3つの実験で評価し、各実験でPBS投与対照群を設けた(n=6、5及び6、合計n=17)。ルシフェラーゼ測定の実験間の変動を補正するために、各実験における全ての群のルシフェラーゼ値をPBS対照の平均値に対して標準化した。ブレオマイシンチャレンジリポーターマウスのmu3G9投与は、コラーゲンルシフェラーゼリポーターの用量依存的な減少をもたらし(図62)、0.3mg/kgの週1回の投与で有意な有効性が認められ、1〜3mg/kgで最大の有効性が認められた。
7. 気管支肺胞洗浄細胞組成の分析
本発明者等は線維症の抑制が肺における炎症細胞の主要な亜集団における炎症又は変化の減少に起因していたかどうかを判断するために、ブレオマイシンモデルの2、5、8及び11日目の気管支肺胞洗浄(BAL)細胞集団を分析した。予想通り、生理食塩水滴注マウスと比較すると、ブレオマイシンの気管内投与に起因したBAL細胞数の上昇があった。しかし、時間的経過を通して、アイソタイプ対照抗体1E6を投与したマウスと比較して3G9の0.3、1.0及び3mg/kgの有効量を投与したマウスに認められたBAL細胞の総数、マクロファージ、好中球又はリンパ球の数若しくは割合の有意差はなかった。次に本発明者等は、ヒドロキシプロリン及び組織形態計測エンドポイントを使用して有効性を実証するために最初に使用した週3回の投与を使用して、はるかに高い用量を試験した。マウスに、ブレオマイシンチャレンジに対して−1、+1及び+3日目にm3G9の4、20及び40mg/kgの3用量を投与した。5日目にマウスを安楽死させ、BAL細胞数を分析した。4mg/kgの用量(総投与量12mg/kg)では、再びBAL細胞の総数、マクロファージ、好中球又はリンパ球の数若しくは割合の有意な変化はなかった。20及び40mg/kgの用量(合計60及び120mg/kg)では、PBS対照と比較してマクロファージの数の有意な増加があったが、IgG1対照と比較した場合にはそうでなかった(図62)。40mg/kgの用量で、好中球の総数の変化は有意性に達しなかったが、PBS及びIgG対照と比較してBAL中の好中球の割合の有意な増加があった。非常に高い用量(合計120mg/kg)で起こる好中球の増加は、放射線線維症モデル(実施例15参照)における高用量長期投与(6及び10mg/kg投与、3〜4ヵ月)で認められたものと同様である。要約すると、抗αvβ6抗体は0.3mg/kgと低い用量での週1回の投与でブレオマイシン誘発コラーゲン発現を減弱することができるが、合計12mg/kgまでの用量はこのモデルにおけるBAL細胞集団の有意な変化を有意な変化をもたらさない。より高い用量は、総マクロファージ数及び好中球の割合の増加をもたらすことができる。
8. 複数回ブレオマイシン投与ハムスターモデルにおける評価
本発明者等は、0、7及び14日目に3連続ブレオマイシン投与を気管内に行う、ハムスター肺線維症モデルにおけるmu3G9の有効性を検討した。3群のハムスターに0、7及び14日目に開始して5mg/kgのmu3G9を週3回投与した(週当たり合計15mg/kg)。28日目に動物を屠殺し、ヒドロキシプロリン(図65A)及び脂質過酸化分析(図65B)により線維症について評価した(U. California−Davs[米国カリフォルニア州デービス]で実施された)。意外にも、このモデルにおける線維症の減弱の有効性は認められなかった。7及び14日目に開始してmu3G9を投与したハムスターの群の1群において、ハムスターはPBS及びIgG対照群と比較してヒドロキシプロリンの統計的に有意な増加を示した。脂質過酸化値は、IgG対照群と比較して有意に上昇しなかった。本発明者等は、この明らかな増悪がハムスターの生存に影響を及ぼすかどうかを確認するために、種々の投与群の生存曲線を解析した。0日目に開始して投与したmu3G92マウス(図65CのBL+Ab1群)は、PBS及びIgG対照よりわずかに早期に死亡し始めた。しかし、BL+Ab1生存曲線をPBS及びIgG対照と個別に比較したとき、差は有意でなかった(対数順位検定:p=0.15対PBS及びp=0.25対IgG対照mAb)。mu3G92モノクローナル抗体がハムスターと交差反応するかどうかは不明であり、ハムスターがこのモデルに使用したマウス抗体に対して抗体反応を起こした可能性がある。このモデルにおける転帰の解釈は困難であるため、2つの異なるマウス肺線維症モデル(ブレオマイシン及び放射線誘発)で一貫した有効性が認められたため、有効性に関する異なる用量の評価は遂行しなかった。
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結論
mu3G9は、線維症のブレオマイシンモデルにおける重症疾患の強力な抑制物質である。このシリーズの実験により以下のことが示された。
(a)αvβ6発現は、線維症及び/又は炎症性病状を伴う広いスペクトルのヒト肺疾患における上皮細胞上でアップレギュレートされる。αvβ6は、マウスブレオマイシン線維症モデルにおいて同様にアップレギュレートされる。
(b)mu3G9は、解析のための複数のエンドポイントを使用した複数の実験においてブレオマイシン誘発性線維症を有意に低減した。有効性は、試験したマウスの全ての系統、即ち、SV129、C57B16及びC57B16XDBA雑種で認められた。コラーゲン発現を抑制するという点の有効性は、週1回0.3mg/kgと低用量で認められた。
(c)mu3G9の作用機序は、抗炎症特性を有する線維症誘発サイトカインであるTGF−βの阻害によるものである。予想通り、線維症の抑制は、炎症の減弱を伴わずに生じる。mu3G9の高用量での頻繁な投与(20及び40mg/kgを隔日に投与)は、5日目にブレオマイシンチャレンジマウスの気管支肺胞洗浄液中の総BAL細胞、マクロファージ及び好中球のPBS対照と比較してわずかな増加を誘発することができるが、IgG対照と比較したときこれはみられない。
(d)mu3G9は、ハムスターのブレオマイシンモデルにおける複数回投与で有効でなかった。1つのmu3G9投与群における線維症の増悪が被験物質に関連していたかどうかは不明である。
(e)46日間にわたる週3回の4mg/kgの用量のmu3G9の投与は、ブレオマイシンモデルの生存に影響を及ぼさなかった。
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実施例17 正常及び罹患マウス肺における抗αvβ6インテグリンモノクローナル抗体の効果の分子的解析
概要
肺線維症の動物モデルは、ヒト特発性肺線維症(IPF)の線維症病理の幾つかの側面をモデル化するのに有効である。しかし、どの動物モデルもIPFの精密な病理を正確に模擬しない。更に、IPFにおける疾患の発症及び進行の機序の理解は不完全であるため、複数の疾患モデルにおいて潜在的な治療薬を試験し、線維症の病状の改善の点だけでなく、ヒト疾患に関連すると考えられている分子的経路への介入の点についてもそれらの有効性を評価することは重要である。TGF−β経路は、IPFにおける重要な経路として暗示された。ヒトIPF肺の包括的転写プロファイリングにより、この疾患の主要な特徴が、線維芽細胞の活性化及び増殖並びに細胞外マトリックス分子の発現を含む肺線維症を特徴付ける多くの病理学的過程の推進におけるTGF−βの既知の役割と一致する、活性化TGF−β経路の1つであることが示された。その線維症誘発活性に加えて、TGF−βは重要な抗炎症サイトカインであり、従って、TGF−βの治療的阻害によって、過度の炎症が促進されることなく、線維症が理想的に阻止されるはずである。インテグリンαvβ6は、潜在TGF−β複合体に直接結合し、TGF−βの活性状態への変換に必要である。しかし、αvβ6媒介性TGF−β活性化は一部の組織においてのみ重要であるため、αvβ6機能を完全に欠くマウスは肺にのみ病状を示し、一方、TGF−β欠乏マウスは複数の器官系に炎症を示す。従って、ここで概説する治療戦略は、TGF−β経路の完全な阻害を避けるようにαvβ6機能を遮断し、TGF−βシグナリングの増加に関連する線維症の病状を阻止する有効性を、TGF−βの完全な喪失に伴う炎症を引き起こさない用量で達成することができることを示すことである。こでは、本発明者等は、線維症及び炎症性病状に関連するmRNA及びタンパク質レベルでの分子的変化を特徴付ける。本発明者等は、高用量の抗αvβ6インテグリンモノクローナル抗体mu3G9(臨床候補BG00011のマウス親)が、αvβ6欠乏マウスと一致する肺における炎症性マーカーのmRNA及びタンパク質変化をもたらすことを示す。本発明者等は更に、線維症の減弱に有効な低用量のmu3G9はマウスにおけるこれらの炎症性変化をもたらさないことを示す。
緒言
TGF−βサイトカインは、線維芽細胞が最終的に臓器瘢痕化及び不全につながる過剰な細胞外マトリックス(ECM)を産生することを刺激することが知られている線維症誘発性サイトカインである(Roberts 1986)。肺における様々なサイトカインのアデノウイルス及び外来遺伝子過剰発現は、TGF−β1は有意な炎症の非存在下で線維症を促進する能力が独特であることを示すものであった。TGF−β経路における遺伝子のノックアウトマウスモデル(Bonniaud 2004、Munger 1999)及び抗TGF−β剤を使用した多くの試験により、線維症の減弱の尺度としてのTGF−βの阻害の有効性が示された(George, J. 1999; Sharma, K. 1996; Bonnidaud, P. 2004; Zheng, H. 2000; Kasuga, H. 2001; Ziyadeh, F.N. 2000; Laping, N.J. 2003)。2つのサブユニット、即ち、αv及びβ6インテグリンからなるαvβ6インテグリンは、特に肺におけるTGF−β1活性化の重要なレギュレータである。αvβ6インテグリンは、損傷、炎症及び線維症時に上皮細胞上でアップレギュレートされ、潜在TGF−β1複合体に結合してそれを活性形に変換する(Huang 1998; Munger 1999; Busk 1992; Yokoaski 1996; Annes 2002)。αvβ6が潜在TGF−β1に結合することを遮断することは、αvβ6のアップレギュレートされた発現の部位におけるTGF−βの活性化の局所的抑制とそれによる全ての組織におけるTGF−β経路の完全な阻害の潜在的臨床的安全性リスクの回避の方法を提供する。
上記の実施例において、本発明者等は、2つのマウス肺線維症モデル、即ち、ブレオマイシン誘発性線維症(実施例16)及び放射線誘発性線維症(実施例15)におけるマウス抗αvβ6モノクローナル抗体mu3G9の有効性を明らかにした。更に、正常マウスにおけるmu3G9の投与の影響は、毒性報告書に詳細に記載されている。この実施例では、本発明者等は、正常マウス及び肺線維症の疾患モデルにおけるmu3G9の投与の肺におけるmRNA及びタンパク質レベルに対する影響を明らかにする。
肺組織の転写プロファイリングにより、αvβ6の遮断はブレオマイシン誘発性肺線維症に関連するTGF−β標的遺伝子を減少させ、変化させることが示されている。これらのデータは、αvβ6が肺線維症の調節に関与しており、その治療的調節のための新規の分子的標的となり得ることを示唆している。
材料及び方法
1. 試薬
αvβ6mAbsを本明細書における他所に記載及び以前に記載した[29]ように生成した。ヒト/マウスキメラ2A1及び3G9 cDNAsを、重鎖の定常領域プライマーCDL−739及び軽鎖のCDL−738を含む各親ハイブリドーマ総RNAsからFirst Strand cDNA合成キット(Amersham/Pharmacia[米国ニュージャージー州ピスカタウェイ])を使用して生成した。重鎖及び軽鎖可変領域は、cDNA合成に使用した同じ3’プライマー及び大部分のマウス抗体遺伝子シグナル配列(請求あり次第入手可能な配列)に特異的な縮重プライマーのプール及びPfu DNAポリメラーゼ(Stratagene[米国カリフォルニア州ラホイヤ])を使用したポリメラーゼ連鎖反応により増幅した。クローン化した重鎖及び軽鎖可変領域を、ヒトIgG1定常領域を含む哺乳動物発現ベクターに結合させた。組換え可溶性マウスTGF−β受容体II−Ig型融合タンパク質(sTGF−βRII−Ig)を以前に記載した[10]ように生成した。研究用mu3G9、1E6及びsTGF−bRII−Ig(リン酸緩衝生理食塩水中精製タンパク質)を全ての実験に使用した。
2. 動物
(a)RNA分析のための正常マウスにおけるmu3G9の投与: 正常C57B16マウスに5mg/kgの可溶性TGFbRII−Ig、FBS又は次の用量のmu3G9を4週間にわたり週1回(1、8、15及び22日目)投与した:0.3、1、3、10及び30mg/kg。投与マウスの1コホートを29日目(最終投与の1週後=無回復)に採取したが、他のコホートは78日目(最終投与の8週後=7週間回復)に採取した。これらの実験は、CD−1系のマウスを試験し、8週間の回復を使用した、mu3G9マウス毒性報告書に記載されている実験と独立して実施した。
(b)BALタンパク質の複数の分析対象物のプロファイリングのための正常マウスにおけるmu3G9の投与: 正常C57B16マウスにFBS又は次の用量のmu3G9を4週間にわたり週1回(1、8、15及び22日目)投与した:0.1、0.3、1、3及び10mg/kg。気管支肺胞洗浄(BAL)採取のためにマウスを29日目(最終投与の1週後)に採取した。これらの実験もCD−1系のマウスを試験したmu3G9マウス毒性報告書に記載されている実験と独立して実施した。
(c)放射線線維症モデルにおけるmu3G9の投与: 放射線誘発性線維症の減弱の有効性の評価に使用した投与群及びエンドポイントの詳細は、BIIB報告書#Rsch−2006−007に含まれている。簡単に述べると、マウスに胸郭照射を行い、照射後15週目から開始して0.3〜10mg/kgのmu3G9の異なる用量を投与した3つの試験をNew York School of MedicineのJohn Mungerの施設で実施した。試験中に死亡したことが認められた場合、組織学的検査/線維症の測定のためにマウスの肺を採取した。生存マウスは、照射後26、28及び32週目に採取した。BAL液を1つの肺葉から採取してBiogen IDECに送ったが、他の肺葉は組織学的検査/線維症の測定のために処理した。Biogen IDECでmu3G9を投与した正常マウスからのBAL液の分析との比較を可能にするために、BAL液タンパク質の分析をこの報告に含める。
3. 気管支肺胞洗浄採取
過剰量のInactin(Sigma)の腹腔内注射(IP)によりマウスを安楽死させた。主として鈍的剥離により気管を露出させた。次いで、気管を鋏で2つの軟骨輪の間で開き、23ゲージ鈍端針を気管に挿入した。Schwartz一時クリップ(Roboz)で軽く締め付けて針を所定の位置に保持した。0.8mLのCa2+又はMg2+不含有リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を肺に注入して、BALを実施した。大きい圧力を加えずに液を注射器中に吸引し、氷上の15mLポリプロピレンFalcon管に移した。次いで、処置を繰返し、過度の陰圧をかけずにBAL液を注射器中に吸引する。試料を氷上で保存し、細胞数の計測、分染のために処理し、BALペレット及び液を採取し、−80℃にて保存する。
1. 次いで、BALを卓上遠心分離機で4℃にて180g(1000rpm)(Beckman GPR)で10分間遠心分離する。次いで、上清(BAL液)を除去し、−80℃にて凍結する。1.0mLのRBC溶解溶液(Sigma)をペレットに加え、ボルテックスミキサーで20秒間混合した。次いで、細胞数の計測及びサイトスピンを行う。
2. 試料を氷上に保存し、血球計を使用してカウントした。細胞を血球計に加えた後1分間置き、読み取りの前に細胞を沈降させる。
3. 100μLの細胞懸濁液を室温にて500rpmnで5分間サイトスピンする(ThermoShandon)。細胞溶液を細胞遠心分離装置に入れ、500rpmで5分間サイトスピンすることにより、サイトスピン標本を調製する。細胞濃度がスライド標本上で高すぎないことを確認した。細胞濃度が高すぎる場合、試料を再遠心分離する。スライド標本を一晩乾燥させ、DiffQuik(Fisher)で染色する。染色は、製造業者の(DiffQuik)プロトコルに従って行う。スライド標本が乾燥させたならば、Permount(Fisher)を使用してカバーグラスをのせ、細胞を種類により分類し、100個の無作為に選択した細胞を実験用細胞計(Fisher)を使用してカウントする。
4. RNA用の肺の採取
過剰量のInactin(Sigma)の腹腔内注射(IP)によりマウスを安楽死させた。動物に70%ETOHを噴霧し、滅菌鋏を使用して胸骨から頭部に向かって皮膚を切り取る。皮膚を除去したならば、胸骨及び肋骨を切り取り、心臓及び肺を露出させる。肺を摘出し、滅菌ガーゼ片の上にのせて血液産物を除去し、14mLポリプロピレン丸底管17×100mm(Fisher)に速やかに入れる。液体窒素を肺を含むポリプロピレン管に加え、ドライアイス上に置く。肺を−80℃にて保存する。
5. RNA調製
製造業者のプロトコルに従ってQiazol試薬(Qiagen)を使用して急速凍結肺組織から総RNAを精製した。RNAの質は、Bioanalyzer 2000(Agilent)を使用したキャピラリー電気泳動により確認した。
6. プローブ標識、ハイブリッド形成及び転写物プロファイリングのためのスキャニング
試料の標識、ハイブリッド形成及び染色は、GeneChip(登録商標)発現分析に関するAffymetrix技術マニュアル(701021 rev 1)(Affymetrix[米国カリフォルニア州サンタクララ])における真核標的調製(Eukaryotic Target Preparation)プロトコルに従って行った。要約すると、5μgの精製総RNAを、200U SuperScript II(カタログ番号18064−022、Invitrogen)及び0.5μgの(dT)−T7プライマー[5’−GGCCAGTGAATTGTAATACGACTCACTATAGGGAGGCGG(T)24]を使用した45℃にて1時間の20μL第一鎖反応に使用した。第二鎖合成は、40U大腸菌DNAポリメラーゼ(カタログ番号18010−025、Invitrogen)、2U大腸菌RNアーゼH(カタログ番号18021−071、Invitrogen)及び10U大腸菌DNAリガーゼ(カタログ番号18052−019、Invitrogen)を加えた後、16℃にて2時間培養して行った。第二鎖合成反応物を製造業者のプロトコルに従ってGeneChip(登録商標) Sample Cleanup Module(カタログ番号900371、Affymetrix[米国カリフォルニア州サンタクララ])を使用して精製した。BioArray高収率RNA転写標識キット(カタログ番号42655−40、Enzo Life Sciences, Inc.[米国カリフォルニア州バーリンゲーム])を使用して、製造業者のプロトコルに従って精製cDNAを増幅して、70〜120μgのビオチン標識cRNA(相補的RNA)を生成させた。マウスMgU74Av2、MgU74Bv2及びMgU74Cv2 GeneChip(登録商標)プローブアレイを、GeneChip(登録商標)ハイブリッド形成オーブン640(Affymetrix[米国カリフォルニア州サンタクララ])中で製造業者のプロトコルに従って前ハイブリッド形成させた。フラグメント化標識cRNAを、100mM 2−モルホリノエタンスルホン酸、1M [Na+]、20mM EDTA、0.01% Tween 20、0.5mg/mLアセチル化BSA、0.1mg/mLニシン精子DNA、対照オリゴB2並びに対照転写物bioB 1.5pM、bioC 5pM、BioD 25pM及びcre 100pMを含む300μLの1Xハイブリッド形成緩衝液に再懸濁し、製造業者のプロトコルに従ってGeneChip(登録商標)プローブアレイ(Affymetrix[米国カリフォルニア州サンタクララ])とハイブリッド形成させた。ハイブリッド形成GeneChip(登録商標)プローブアレイを洗浄し、ストレプトアビジン−フィコエリトリニン(カタログ番号S866、Molecular Probes[米国オレゴン州ユージーン])を使用して染色し、GeneChip(登録商標) Fluidics Station 400(Affymetrix[米国カリフォルニア州サンタクララ])を使用してビオチニル化抗ストレプトアビジン(BA−0500、Vector Laboratories[米国カリフォルニア州バーリンゲーム])で増幅した。GeneChip(登録商標)プローブアレイをGeneArrayスキャナー(Hewlett Packard[米国オレゴン州コーバリス])を使用してスキャンした。
7. 転写物プロファイリングデータ解析
アレイスキャンをAffymetrix .CELファイルに変換し、得られたデータセット(完全な実験を表す.CELファイルの群)をRobust Microarray Average(RMA)法を使用して標準化した。統計及びクラスタリング解析は、BRB Array Tools v. 3.4.0 - Beta 2 (NCI)、GeneSpring (Agilent)及びSpotfire (Spotfire)データマイニングツールを使用して行った。マイクロアレイの有意性解析(SAM)を使用して、偽発見率(FDR)閾値を0.95信頼限界(CL)で0.01を超えないように設定してPBS投与群と比較して実験的投与の何れかによってシグナル強度が変化したプローブセットを特定した。シグナル強度の少なくとも2倍の変化を示した有意に影響を受けた(FDR<0.01、CL 0.95)プローブセットを選択することにより、必要な場合に更なるフィルタリングを行った。得られた遺伝子の群のプロファイル及び実験条件の分類を解析し、階層的クラスタリングにより視覚化した。Ingenuity経路解析データベース(Ingenuity Systems)を使用して仮想経路(Virtual pathway)解析を行った。
8. BAL液タンパク質レベルの多重分析
上述の通り採取したBAL液から200μLの分割試料を採取した。これらの分割試料をRules Based Medicine, Inc.(米国テキサス州オースチン)に送り、当社でLuminexに基づく技術を使用してマウスタンパク質の標準パネルについて分析した。
9. 統計解析
転写物プロファイリング分析の統計解析は、上述の通りである。BAL液中のタンパク質レベルの分析の統計的比較は、ビヒクル対照及び/又はアイソタイプ対照と被験物質の種々の用量との間で一元配置分散分析(ANOVA)を使用して行った。ANOVAを使用してp<0.05の確率で統計的有意差が立証された場合、Dunnetの多重比較検定により群間の有意差を評価した。
結果
1. 正常マウスへのmu3G9の投与の影響:肺転写物分析
CD−1マウスにおける毒性試験の結果により、肺がmu3G9の毒性の標的臓器として特定された。それらの試験で詳細に述べられたように、(αvβ6インテグリンが欠乏している)インテグリンβ6ヌルマウスにおける所見と一致する肺の炎症がmu3G9を投与したマウスで認められる。組織病理検査により評価したこの炎症は、1mg/kgの用量でまれに認められるが、週1回の10mg/kgの用量で一貫して認められる。C57B16系(実施例15及び16において上述した有効性試験に使用した系統)におけるこのような炎症を評価するために、マウスに週1回0.3〜30mg/kgの用量でmu3G9を投与し、RNA及びマイクロアレイ分析のために肺を処理した。
0.01のFDR閾値及び0.95のCLを使用したマイクロアレイの有意性解析(SAM)を使用して、PBS投与対照群と3G9投与群及びsTGFbRII−Ig群を含む実験的投与群のそれぞれとの一連の対比較で発現量の異なる遺伝子を検索した。このような対SAM解析は、投与群と回復群についてそれらの各PBS対照を使用して別個に行った。シグナル強度がPBS対照と投与群の何れかの間で2倍以上異なる有意に影響を受けたプローブセットを特定するために、得られた遺伝子リストを更なるフィルタリング段階にかけた。結果を表17−1〜17−6に要約する。上の選択基準を満たす遺伝子発現の有意な変化は、投与群の10mg/kg及び30mg/kgサブグループに認められた(表17−1及び17−2)。選択したプローブセットの遺伝子発現のプロファイルは、10mg/kg及び30mg/kg 3G9投与群における対応する遺伝子の発現レベルの強い両方向変化を示した(図66)。
遺伝子発現の統計的に有意な変化は、他の何れの投与サブグループにおいても、又回復群においても認められなかった(表17−1及び17−2)。しかし、MMP12、及びそれらの発現プロファイルとMMP12のそれとの0.95を超えるピアソン相関のために選択された25の他の遺伝子は、3mg/kg 3G9投与群において検出できる上向きの傾向を示した(図67、表17−7)。
3G9による有意な影響を受けた遺伝子の機能アノテーションをIngenuity Pathway Analysis(IPA)データベースを使用して行ったところ、これらの遺伝子と免疫応答及び免疫調節サイトカインシグナリングとの強い関連が示された(図68)。同様に、仮想調節経路解析により、3G9により誘発された遺伝子発現の変化とサイトカイン、TGF−β及びインターフェロンシグナリングの変化との関連が示唆された。これらの関連は、2つの最高のスコアのネットワークの構成の結果である(図69A、69B)。
2. MMP−12転写物の定量的PCR分析
MMP−12は、mu3G9投与マウスの肺における転写物の最大倍率のアップレギュレーションを示す(表17−3)。MMP−12は、β6ヌルマウスの肺における最も高度にアップレギュレートされた転写物として以前に報告された。MMP−12発現とmu3G9の投与との関係を更に解明するために、本発明者等はβ6ヌルマウスの肺から調製したRNAを含むMMP−12転写物の相対的レベルを定量的PCRにより分析した。mu3G9の投与は、10及び30mg/kgで有意であった、MMP−12転写物の用量依存的増加をもたらした。MMP−12の発現の変化倍率は、それらの用量でβ6ヌルマウスで認められたものと同等であった。マイクロアレイ分析の上述した結果と同様に、qPCRによるMMP−12レベルは、3mg/kgでは上昇傾向であったが、0.3及び1mg/kgの用量では変化がなかった。
3. mu3G9を投与した正常マウスの肺のBALのタンパク質分析
mu3G9の投与に起因する肺における分子的変化を更に特定するために、本発明者等は0.1〜10mg/kgのmu3G9の用量を4週間投与したマウスの他のコホートのBAL液中の60種のタンパク質のレベルを分析した(表17−8)。タンパク質の分析は、Rules Based Medicine, Inc.(米国テキサス州オースチン)においてluminex(多重タンパク質分析)アッセイにより行った。転写レベルの所見と一致して、肺炎症に関連した複数のタンパク質が10mg/kgの用量を投与したマウスのBAL液中で増加した(表17−9)。更に、これらの変化の幾つかは3mg/kgの用量においてもANOVAにより有意であった。しかし、パネルにおける何れのタンパク質も1 mg/kgの用量まで増加しなかった。
4. 放射線誘発性線維症モデルのBAL液タンパク質の分析
放射線誘発性肺線維症の減弱におけるmu3G9の有効性は、上の実施例15において述べた。それらの試験において採取したBAL液(BALF)試料は、mu3G9を投与した正常マウスのBALFに使用したのと同じマウスパネルを使用した多分析対象タンパク質プロファイリングにより分析した。28週目(13週間投与)及び32週目(17週間投与)時点のBALF分析をここで解析する。ANOVAにより判断したとき有意に変化したタンパク質を表17−11に要約する。正常マウスにおける転写物プロファイリング及びタンパク質結果と同様に、放射線線維症モデルにおいて変化しているタンパク質の大多数は、(3mg/kgで一部は有意であり、全てが傾向を示すが)10mg/kgの用量でのみ有意性に達する。これらのタンパク質の大多数は、肺線維症に関連することが知られているサイトカイン又はケモカインである。10mg/kg mu3G9を投与した正常マウスにおいて2倍以上アップレギュレートされた20種のタンパク質の内の14種(表17−10)は、放射線モデルにおいても一貫してアップレギュレートされている。mu3G9の投与期間及び損傷/炎症状態が異なるにもかかわらず、正常マウスと照射マウスにおける所見の間の一致は顕著である。タンパク質の多くは放射線モデルにおけるより長い投与期間と一致したわずかに高い倍率のアップレギュレーションを示している(表17−12)が、全般的所見はこれらの2つの非常に異なる状況で一致している。更に、正常マウスと照射マウスとでベースラインレベルが異なる(放射線損傷はこれらのタンパク質の大部分をアップレギュレートする)にもかかわらず、これらの炎症マーカーがアップレギュレートされる用量範囲は正常マウスと照射マウスとで同じである。具体的には、それらは正常及び罹患マウスで3及び10mg/kgの用量でアップレギュレートされるが、1mg/kgの用量ではされない(図70で28週目に4つの最も高度にアップレギュレートされたタンパク質により例証される)。従って、放射線モデルにおける薬物標的の発現がはるかにより高い(上の実施例15を参照)にもかかわらず、mu3G9の投与に特異的なBALタンパク質の変化をもたらす用量は両状況で同じである。mu3G9によって誘導されるタンパク質の全てが炎症誘発及び/又は線維症誘発作用を有すると考えられているとは限らないことに注意することは重要である。例えば、CXCLケモカインIP−10/CXCL10はマウスモデルにおいて強力な抗線維症効力を示し、IP−10又はその受容体が欠乏したマウスはブレオマイシンに対して過度の線維症反応を示す。しかし、1mg/kg用量のほぼ最大有効量でこのサイトカイン又は他のサイトカインの一貫した変化は認められず、従って、肺のサイトカイン環境のこれらの変化の何れかがmu3G9の投与の有効性に必要であるということはあり得ない。
正常マウスにおいてアップレギュレートされたが、放射線モデルにおいてはされなかったタンパク質は、ApoA1、フィブリノーゲン及びTIMP−1等である。これらのタンパク質及び第4のタンパク質ヘパトグロブリンのレベルは、正常マウスと比べて照射マウスのBAL液中で増加しているが、mu3G9の投与により低下する(図71)。従って、有効量でこれらのタンパク質のレベルが正常化することから、それらが28週時点の有効性の代用マーカーとしての機能を果たす可能性があることが示唆される(図72)。低用量で有意に変化したパネル上の唯一のタンパク質は、投与によって低下したもの、即ちTIMP−1及びヘパトグロブリンであった。TIMP−1は、既知のTGF−β標的であり、線維症性疾患においてしばしば上昇する。そのダウンモジュレーションは、mu3G9の作用機序、即ち、αvβG9媒介性TGF−β活性化と一致している。
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結論
正常マウスに対するmu3G9投与の効果は、転写産物の発現量解析及びタンパク質の多項目同時解析の結果において特徴が見られる。
(a)mu3G9高用量処置群における肺転写産物の発現量解析において、肺炎症に関連する多数の転写産物で有意な変動が見られる。この変動は、インテグリンβ6(αvβ6)欠損マウスにおける転写産物の解析結果と一致する。また、mu3G9の作用機序により、標的遺伝子群において特異的に調節不全が起こり、肺におけるTGF−βシグナルの伝達が減少する。
(b)同様にタンパク質の発現解析結果においても、mu3G9の作用機序に関連するサイトカイン及びケモカインの一部に発現上昇が見られる。
(c)転写産物の発現差について有意な変動が見られるのは10mg/kg群のみであるが、3mg/kg群においても、多数の転写産物で発現量の上昇傾向が見られる。タンパク質については、3mg/kg群の一部を除き、10mg/kg群において有意な変動が見られる。タンパク質及び転写産物とも、1mg/kg群においては有意な変動はみられない。
放射線誘発線維症モデルに対するmu3G9投与の効果は、タンパク質の多項目同時解析において特徴が見られる。
(a)正常マウスのmu3G9高用量群で発現上昇が見られるサイトカイン及びケモカインの多くで、放射線誘発線維症モデルのmu3G9高用量群においても同様に発現上昇が見られる。
(b)mu3G9の標的分子であるインテグリンαvβ6の発現差がかなりあるにもかかわらず、放射線誘発線維症モデル及び正常マウスの各用量群において、肺炎症マーカーに同様の変化が見られる。即ち、3mg/kg群及び10mg/kg群では上昇が見られるが、放射線誘発線維症モデルの最大有効量に近い1mg/kg群では上昇がみられない(実施例15を参照)。
線維症に関連するタンパク質の一部、特にTIMP−1及びハプトグロビンにおいて、mu3G9有効用量での投与による正常化が、28週の時点で見られる。
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本発明は、理解の明瞭さのために説明及び実施例により十分に説明されてきたが、特定の変更及び改変が実施されることは当業者に明らかである。従って、この説明及び実施例は、添付の特許請求の範囲により表される本発明の適用範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
本明細書で記載された文献、特許及び特許出願は、本発明の関連分野の当業者にとって例示的な技術であり、参考として刊行物、特許及び特許出願を個別に明記した場合と同程度の参考として本明細書で援用されている。
図1は、αβに対する精製されたキメラ化された3G9変異型の結合ELISA試験である。可溶性αβでコーティングしたプレートをマウス3G9抗体に由来する精製ハイブリドーマ(m3G9)、精製されたキメラ3G9抗体(ch3G9)又は軽鎖の第1CDR中のN−連結グリコシル化部位内にNからSへの置換を含有する精製キメラ3G9抗体(ch3G9S)の何れかと共に培養した。洗浄緩衝液で洗浄した後、プレートをパーオキシドコンジュゲート抗マウスIgG(ハイブリドーマ誘導物質に対して)又は抗ヒトIgG(キメラ抗体に対して)と共に培養し、その後洗浄緩衝液で洗浄した。プレートをTMB溶液で発色させ、反応を硫酸で停止させ、プレートリーダーを使用してA450で試験した。キメラ3G9抗体の2形態の間には検出可能な有意差はなかった。 図2は、Easy Titer Assay(Pierce)を使用したトランスフェクトされた293E細胞由来の3G9ヒト化変異型の発現を示す結果である。一過性にトランスフェクトした293E細胞由来の上澄みを、Easy Titer法により製造元のプロトコル(Pierce)に従って抗体力価について試験した。ヒト化3G9抗体の種々の変異型の発現を分析した。軽鎖型1を含有する3G9の変異型は発現が乏しいのに対し、軽鎖型2を含有する変異型はより高いレベルで発現されている。高度なヒト化ほど発現が高くなる傾向がある。 図3は、フローサイトメトリー試験により測定したαβインテグリン発現SW480細胞へのhu−3G9抗体変異型のFACS分析の結果を示す。SW480細胞をトリプシン処理により回収し、洗浄し、FACS緩衝液中に再懸濁した。次に2x10細胞を指定したトランスフェクション体上澄みを含有するFACS緩衝液中1時間氷上で培養し、その力価をEasy Titer法により製造元のプロトコル(Pierce)に従って測定した。インキュベーションの後、細胞をFACS緩衝液で洗浄し、フィコエリスリンコンジュゲート抗ヒトIgG(Jackson ImmunoResearch)を含有するFACS緩衝液中に再懸濁し、30分間氷上で培養した。次に細胞を洗浄し、FACS緩衝液200μL中に再懸濁した。標識された二次抗体の結合はフローサイトメトリーでモニタリングした。試験した全てのヒト化型は少なくともキメラ3G9と同程度にSW480細胞に結合した。軽鎖型2を含有する変異型はキメラ3G9の活性を有意に超過した。抗リンホトキシンベータ受容体抗体HuBHA10を陰性対照として使用した。 図4は、FDCP1−β6細胞へのhu−3G9抗体型2〜5の結合のFACS分析を示す。FACS分析は、SW480細胞の代わりにFDCP1−β6細胞を使用した以外、図3に記載した通り実施した。完全ヒト化変異5型(H3/L5)は、全ての他のヒト化型よりも有意に良好にFDCP1−β6に結合した。 図5は、FDCP1−β6細胞への精製したhu−3G9抗体型2〜5の結合のFACS分析を示す。FACS分析は、精製した3G9ヒト化変異型を使用しながら図4に記載した通り実施した。完全ヒト化変異5型(H3/L5)は、全ての他のヒト化型よりも有意に良好にFDCP1−β6に結合した。 図6は、αβへの精製hu−3G9抗体型2〜5の結合の結合ELISA試験である。結合ELISAは、図1に記載した通り実施した。ヒト化3G95型(H3/L5)は、抗体の他の誘導体よりもわずかに良好にαβに結合したように観察された。 図7は、αβへの精製hu−3G9抗体型2〜5の結合の阻害ELISA試験である。プレートをLAP0.3μg/mL又はLAP−Fc融合タンパク質2.5μg/mLの何れかでコーティングし、一晩4℃で培養した。コーティング溶液を除去し、プレートを阻害し、洗浄し、カルシウム及びマグネシウムの存在下、図面の凡例に示す通り、ビオチニル化αβ及び3G9誘導体の混合物と共に培養した。プレートを再度洗浄し、エキストラビジン−セイヨウワサビペルオキシダーゼコンジュゲート(Sigma)と共に培養した。結合したタンパク質はTMB基質を使用して検出し、その後A450でプレートリーダー中で検出した。ヒト化3G95型(H3/L5)は抗体の他の誘導体よりもわずかに良好にLAPへのαβの結合を阻害したように観察された。 図8は、精製hu−3G9抗体型2〜5の細胞接着試験の結果を示す。マイクロプレートを一晩4℃にて50μL/ウェルの0.5μg/mLLAPでコーティングした。次にプレートを洗浄し、阻害した。FDCP1−β6細胞(5×10細胞/mL)を培養フラスコから脱着させ、蛍光染料(Calcein−AM、Molecular Probes[米国オレゴン州ユージーン])で標識し、試験緩衝液に再懸濁した。プレートをカルシウム及びマグネシウムの存在下、上述の精製抗体及び標識FDCP1−β6細胞と共に培養した。プレートを洗浄し、プレート上に捕獲された細胞による蛍光を記録した。パーセント結合は全細胞の蛍光を結合細胞のものと比較することにより測定した。ヒト化3G95型(3H/5L)は抗体の他の誘導体よりもわずかに良好にLAPへのαβ発現細胞の結合を阻害したように観察された。 図9は、pKJS195のプラスミドマップ及び3G95型軽鎖配列の模式図である。このプラスミドは3G95型軽鎖(LV5)及びネオマイシン耐性遺伝子を含有する。軽鎖発現カセットはヒトCMV最初期プロモーター及び第1のイントロン(小欠失含有)並びにヒト成長ホルモンポリアデニル化配列を含有する。 図10は、pKJS189のプラスミドマップ及び3G9重鎖3型の配列の模式図である。このプラスミドは、3G9重鎖3型(HV3)及びデヒドロフォレート還元酵素(dhfr)遺伝子を含有する。重鎖発現カセットはヒトCMV最初期プロモーター及び第1のイントロン(小欠失含有)並びにヒト成長ホルモンポリアデニル化配列を含有する。dhfr発現カセットはSV40初期プロモーター及びSV40ポリアデニル化配列を含有する。 図11は、pKJS196のプラスミドマップ及びアグリコシル3G9重鎖3型の配列の模式図である。このプラスミドは、アグリコシル3G9重鎖3型(a−HV3)及びdhfr遺伝子を含有する。このコンストラクトは重鎖定常領域におけるN連結グリコシル化部位を消失させるN319Q置換以外はpKJS189と同一である。 図12は、Easy Titer試験(Pierce)を使用してCHO細胞に一過性にトランスフェクトしたhu−3G9CHO発現ベクターの組立及び発現の結果を示す。Easy Titer試験は製造元のプロトコルに従って図2に記載する通り実施した。野生型(H3/L5)及びアグリコシル(a−H3/L5)ヒト化3G95型ベクターをCHO細胞に一過性にトランスフェクトし、効率的な組立及びこれらの細胞からのヒト化3G9の分泌を明らかにした。両方の形態のhu3G9抗体は等しく組み立てられ、CHO細胞内で発現された。 図13は、記載した原発腫瘍部位からリンパ節(図13A〜13D)又は肺(図13E〜13F)の何れかに転移した特定のヒト癌腫におけるαβ発現(陰影部)のレベルを示す顕微鏡写真の合成図である。 図14は、記載した原発腫瘍部位から記載した転移腫瘍部位に転移した特定のヒト癌腫におけるαβ発現(陰影部)のレベルを示す顕微鏡写真の合成図である。 図15は、原発子宮内膜癌の腫瘍(図15A、15C)において、及び該当リンパ節の転移(図15B、15D)において観察されたαβ発現(陰影部)のレベルを示す顕微鏡写真の合成図である。 図16は、ヒト乳房腫瘍試料中で観察されたαβ発現(陰影部)のレベルを示す顕微鏡写真の合成図である。図16A:上皮内腺管癌(DCIS)を有する患者由来の原発腫瘍試料における発現。図16B:浸潤性乳房癌腫を有する患者由来の原発腫瘍試料における発現。 図17は、3人の異なる患者由来の原発及び転移の膵臓腺管腺癌腫瘍の該当試料において観察されたαβ発現(陰影部)のレベルを示す顕微鏡写真の合成図である。図17A〜17C:3人の異なる患者由来の原発腫瘍試料における発現。図17D〜17F:これらの同じ3患者由来の該当リンパ節転移における発現。図17G〜17H:3患者のうち2人より得られた正常膵臓組織における発現。 図18は、5人の異なる患者由来の原発及び転移の膵臓腺癌腫瘍の該当試料において観察されたαβ発現(陰影部)のレベルを示す顕微鏡写真の合成図である。図18A〜18E:5人の異なる患者由来の原発腫瘍試料における発現、3人は腺扁平上皮癌として特徴付けられる腫瘍を有し(図18A〜18C)、2人は低分化を特徴とする腫瘍を有する(図18D〜18E)。図18F〜18J:これらの同じ5患者由来の該当リンパ節転移における発現。図18K〜18L:5患者のうち2人より得られた正常膵臓組織における発現。 図19は、ヒト膵臓癌のBxPC−3マウス異種移植片モデルにおける腫瘍成育を抑制する抗αβモノクローナル抗体(3G9)の能力を示す。図19A:ンαβモノクローナル抗体(3G9)による免疫組織化学試験により染色された異種移植片腫瘍の切片の顕微鏡写真。図19B:αβmAb3G9投与中のBxPC−3異種移植片腫瘍生育曲線(▲)、可溶性TGFbRII−Fc−Ig融合タンパク質(▼)、又はビヒクルPBS(■)。図19C:試験終了時(第66日)における個体別腫瘍サイズの散布図。 図20は、βを発現しているVB6細胞(βでトランスフェクト)により、そして擬似トランスフェクト細胞による経マトリックス遊走、浸潤及びマトリックスメタロプロテイナーゼ9(MMP−9)生成に対する抗αβモノクローナル抗体(3G9)及び可溶性TGF−β受容体抗体フラグメントコンジュゲート(sTGF−βRII−Fc)の作用を示す一連の棒グラフである。図20A及び20B:細胞外マトリックスを通過する細胞の遊走(図20A)又は浸潤(図20B)。“Unt”:未投与細胞;“3G9”:10μg/mL3G9抗−αβモノクローナル抗体投与細胞;“sTGFbR−Fc”:10μg/mL可溶性TGF−βRII−Fcコンジュゲート投与細胞。白棒:β6インテグリン(VB6細胞)でトランスフェクト去れこれを発現している細胞;黒棒:β6インテグリンを発現していない擬似トランスフェクト細胞(Cl細胞)。図2OC:未投与(白棒)、10μg/mL3G9投与(斜線)又は10μg/mLsTGF−βRII−Fcコンジュゲート投与(黒棒)のCl又はVB6細胞によるMMP9の生成(ng/mL)。 図21は、LIM1863異種移植片モデルにおける支質内に浸潤している腫瘍細胞上のαβ発現(陰影部)を示す免疫組織化学的切片の顕微鏡写真である。連続切片に対する抗ヒトケラチン染色(図示なし)により、これらの細胞がヒト上皮(即ちLIM1863)腫瘍に由来することが確認された。 図22A〜22Fは、LIM1863異種移植片モデルにおける腫瘍生育及び支質浸潤に対するαβmAb3G9及び組換え可溶性TGFbRII−Fc−Ig融合タンパク質の作用を示す。図22A:αβmAb3G9(▲)、可溶性TGFbRII−Fc−Ig融合タンパク質(▼)又はビヒクルPBS(■)投与中のLIM1863異種移植片腫瘍成育曲線。図22B:試験終了時(第52日)における個体別腫瘍サイズの散布図。図22C:全腫瘍切片に渡るαβ陽性域の定量。図22D〜22F:各記載処置群から採取された腫瘍における代表的αβ染色を示す顕微鏡写真。 図22A〜22Fは、LIM1863異種移植片モデルにおける腫瘍生育及び支質浸潤に対するαβmAb3G9及び組換え可溶性TGFbRII−Fc−Ig融合タンパク質の作用を示す。図22A:αβmAb3G9(▲)、可溶性TGFbRII−Fc−Ig融合タンパク質(▼)又はビヒクルPBS(■)投与中のLIM1863異種移植片腫瘍成育曲線。図22B:試験終了時(第52日)における個体別腫瘍サイズの散布図。図22C:全腫瘍切片に渡るαβ陽性域の定量。図22D〜22F:各記載処置群から採取された腫瘍における代表的αβ染色を示す顕微鏡写真。 図22A〜22Fは、LIM1863異種移植片モデルにおける腫瘍生育及び支質浸潤に対するαβmAb3G9及び組換え可溶性TGFbRII−Fc−Ig融合タンパク質の作用を示す。図22A:αβmAb3G9(▲)、可溶性TGFbRII−Fc−Ig融合タンパク質(▼)又はビヒクルPBS(■)投与中のLIM1863異種移植片腫瘍成育曲線。図22B:試験終了時(第52日)における個体別腫瘍サイズの散布図。図22C:全腫瘍切片に渡るαβ陽性域の定量。図22D〜22F:各記載処置群から採取された腫瘍における代表的αβ染色を示す顕微鏡写真。 図22A〜22Fは、LIM1863異種移植片モデルにおける腫瘍生育及び支質浸潤に対するαβmAb3G9及び組換え可溶性TGFbRII−Fc−Ig融合タンパク質の作用を示す。図22A:αβmAb3G9(▲)、可溶性TGFbRII−Fc−Ig融合タンパク質(▼)又はビヒクルPBS(■)投与中のLIM1863異種移植片腫瘍成育曲線。図22B:試験終了時(第52日)における個体別腫瘍サイズの散布図。図22C:全腫瘍切片に渡るαβ陽性域の定量。図22D〜22F:各記載処置群から採取された腫瘍における代表的αβ染色を示す顕微鏡写真。 図22A〜22Fは、LIM1863異種移植片モデルにおける腫瘍生育及び支質浸潤に対するαβmAb3G9及び組換え可溶性TGFbRII−Fc−Ig融合タンパク質の作用を示す。図22A:αβmAb3G9(▲)、可溶性TGFbRII−Fc−Ig融合タンパク質(▼)又はビヒクルPBS(■)投与中のLIM1863異種移植片腫瘍成育曲線。図22B:試験終了時(第52日)における個体別腫瘍サイズの散布図。図22C:全腫瘍切片に渡るαβ陽性域の定量。図22D〜22F:各記載処置群から採取された腫瘍における代表的αβ染色を示す顕微鏡写真。 図22A〜22Fは、LIM1863異種移植片モデルにおける腫瘍生育及び支質浸潤に対するαβmAb3G9及び組換え可溶性TGFbRII−Fc−Ig融合タンパク質の作用を示す。図22A:αβmAb3G9(▲)、可溶性TGFbRII−Fc−Ig融合タンパク質(▼)又はビヒクルPBS(■)投与中のLIM1863異種移植片腫瘍成育曲線。図22B:試験終了時(第52日)における個体別腫瘍サイズの散布図。図22C:全腫瘍切片に渡るαβ陽性域の定量。図22D〜22F:各記載処置群から採取された腫瘍における代表的αβ染色を示す顕微鏡写真。 図23A〜23Dは、マウス3G9mAb又は対照mAbを投与した種々の細胞系統の蛍光活性化細胞ソーター(FACS)分析から得られたヒストグラムであり、NHPαβ発現細胞系統に対するm3G9の結合のレベルを示す(A、Vero;B、LLC−MK2;C、12MBr6;D、4MBr5)。 図24A〜24Bは、NHPαβ発現細胞系統に対するマウス3G9の結合のレベルを示す滴定曲線である(A、12MBr6;B、4MBr5)。 図25は、LAPへのNHPαβ発現細胞系統の接着を示す棒グラフである(A、12MBr6;B、4MBr5)。 図26A〜26Bは、LAPへのNHPαβ発現細胞系統の接着のm3G9による抑制を示す滴定曲線である(A、12MBr6;B、4MBr5)。 図27は、ヒト及び霊長類のαβ発現細胞系統による潜伏性THFβの活性化を示す棒グラフである。 図28は、SW480β6及び4MBr5細胞系統におけるm3G9によるTGFβ活性化の抑制を示す滴定曲線である。 図29は、ヒト腎疾患におけるαβ免疫染色を示す一連の顕微鏡写真である。(A)αβmAb(赤)及び全サイトケラチンmAb(緑)で免疫染色した凍結ヒト腎切片。(B)αβmAbで免疫染色したパラフィン包埋ヒト腎切片。 図30は、Col4A3+/−及びCol4A3−/−マウス腎のαβ免疫染色を示す。図30A:αβmAb(赤)及び全サイトケラチンmAb(緑)で免疫染色した7週齢のCol4A3+/−マウス及びCol4A3−/−マウス由来の凍結腎切片の顕微鏡写真。図30B:αβmAbで免疫染色した4〜8週齢のCol4A3+/−及びCol4A3−/−マウス由来のパラフィン包埋腎切片。図30C:4、7及び8週齢のCol4A3+/−及びCol4A3−/−マウス(n=3)由来の腎におけるαβ免疫染色の定量を示す棒グラフ。 図30は、Col4A3+/−及びCol4A3−/−マウス腎のαβ免疫染色を示す。図30A:αβmAb(赤)及び全サイトケラチンmAb(緑)で免疫染色した7週齢のCol4A3+/−マウス及びCol4A3−/−マウス由来の凍結腎切片の顕微鏡写真。図30B:αβmAbで免疫染色した4〜8週齢のCol4A3+/−及びCol4A3−/−マウス由来のパラフィン包埋腎切片。図30C:4、7及び8週齢のCol4A3+/−及びCol4A3−/−マウス(n=3)由来の腎におけるαβ免疫染色の定量を示す棒グラフ。 図30は、Col4A3+/−及びCol4A3−/−マウス腎のαβ免疫染色を示す。図30A:αβmAb(赤)及び全サイトケラチンmAb(緑)で免疫染色した7週齢のCol4A3+/−マウス及びCol4A3−/−マウス由来の凍結腎切片の顕微鏡写真。図30B:αβmAbで免疫染色した4〜8週齢のCol4A3+/−及びCol4A3−/−マウス由来のパラフィン包埋腎切片。図30C:4、7及び8週齢のCol4A3+/−及びCol4A3−/−マウス(n=3)由来の腎におけるαβ免疫染色の定量を示す棒グラフ。 図31は、αβmAb結合の特異性を示す。図31A:NIH3T3及びNIH3T3b6細胞へのαβmAb(3G9、8G6、8B6)、抗αβ(RMV−7)、陰性対照mAb(1E6及びMOPC21)及びアイソタイプ対照(ラットIgG1)の結合のフローサイトメトリー分析。図31B:抗αβmAb(ヒト/マウスキメラ3G9)によるCol4A3−/−及びCol4A3−/−;β6−/−腎切片の免疫染色。図31C:抗αvポリクローナル抗体によるCol4A3−/−及びCol4A3−/−;β6−/−腎切片の免疫染色。 図31は、αβmAb結合の特異性を示す。図31A:NIH3T3及びNIH3T3b6細胞へのαβmAb(3G9、8G6、8B6)、抗αβ(RMV−7)、陰性対照mAb(1E6及びMOPC21)及びアイソタイプ対照(ラットIgG1)の結合のフローサイトメトリー分析。図31B:抗αβmAb(ヒト/マウスキメラ3G9)によるCol4A3−/−及びCol4A3−/−;β6−/−腎切片の免疫染色。図31C:抗αvポリクローナル抗体によるCol4A3−/−及びCol4A3−/−;β6−/−腎切片の免疫染色。 図31は、αβmAb結合の特異性を示す。図31A:NIH3T3及びNIH3T3b6細胞へのαβmAb(3G9、8G6、8B6)、抗αβ(RMV−7)、陰性対照mAb(1E6及びMOPC21)及びアイソタイプ対照(ラットIgG1)の結合のフローサイトメトリー分析。図31B:抗αβmAb(ヒト/マウスキメラ3G9)によるCol4A3−/−及びCol4A3−/−;β6−/−腎切片の免疫染色。図31C:抗αvポリクローナル抗体によるCol4A3−/−及びCol4A3−/−;β6−/−腎切片の免疫染色。 図32は、種々の投与によるCol4A3−/−腎のSMA免疫染色。図32A:3週齢〜8.5週齢まで投与したCol4A3−/−マウス及び未投与の齢該当Col4A3+/−マウスについて腎の免疫染色SMA(赤)及びラミニン(緑)を示す。核処置群の代表的切片の免疫染色(皮質及び髄質)を示す(群当たりn=8)。図32B及び32C:未投与のCol4A3+/−マウス及び3週齢〜7週齢まで、又は3週齢〜8.5週齢まで種々の薬剤を投与したCol4A3−/−マウスの腎におけるSMA定量。総画像サイズと相対比較した皮質(32B)及び髄質(32C)のパーセント陽性染色を示す。各処置群のN値は散布図で示す(陰性対照mAbである投与1E6に処置群を比較した場合*=p<0.01、**=p<0.05、***=p<0.001)。 図32は、種々の投与によるCol4A3−/−腎のSMA免疫染色。図32A:3週齢〜8.5週齢まで投与したCol4A3−/−マウス及び未投与の齢該当Col4A3+/−マウスについて腎の免疫染色SMA(赤)及びラミニン(緑)を示す。核処置群の代表的切片の免疫染色(皮質及び髄質)を示す(群当たりn=8)。図32B及び32C:未投与のCol4A3+/−マウス及び3週齢〜7週齢まで、又は3週齢〜8.5週齢まで種々の薬剤を投与したCol4A3−/−マウスの腎におけるSMA定量。総画像サイズと相対比較した皮質(32B)及び髄質(32C)のパーセント陽性染色を示す。各処置群のN値は散布図で示す(陰性対照mAbである投与1E6に処置群を比較した場合*=p<0.01、**=p<0.05、***=p<0.001)。 図32は、種々の投与によるCol4A3−/−腎のSMA免疫染色。図32A:3週齢〜8.5週齢まで投与したCol4A3−/−マウス及び未投与の齢該当Col4A3+/−マウスについて腎の免疫染色SMA(赤)及びラミニン(緑)を示す。核処置群の代表的切片の免疫染色(皮質及び髄質)を示す(群当たりn=8)。図32B及び32C:未投与のCol4A3+/−マウス及び3週齢〜7週齢まで、又は3週齢〜8.5週齢まで種々の薬剤を投与したCol4A3−/−マウスの腎におけるSMA定量。総画像サイズと相対比較した皮質(32B)及び髄質(32C)のパーセント陽性染色を示す。各処置群のN値は散布図で示す(陰性対照mAbである投与1E6に処置群を比較した場合*=p<0.01、**=p<0.05、***=p<0.001)。 図33A及び33Bは、コラーゲン1α1(図33A)及びコラーゲン1α2(図33B)のmRNAレベルのTaqman分析を示す散布図である。RNAは7週齢の未投与及び投与Col4A3−/−マウス及び7週齢の未投与Col4A3+/+マウスの腎から単離した。 図34は、遅延mAb投与によるSMA免疫染色Col4A3−/−腎を示す散布図の対である。未投与8.5週齢Col4A3+/−;未投与6週齢Col4A3−/−;未投与8.5週齢Col4A3−/−;及び6週齢〜8.5週齢に1E6及び3G9を投与された8.5週齢Col4A3−/−。N値は散布図で示す。*=p<0.0005、処置群を陰性対照1E6投与Col4A3−/−マウスと比較。**=p<0.02、処置群を未投与6週齢Col4A3−/−マウスと比較。 図35は、7週齢のCol4A3−/−マウスの腎における遺伝子発現及びモジュレーションのパターンを示す。p<0.01における野生型(WT)及び未投与Alport(UN)群の間の2倍超の変動について選択された395GeneChipプローブセットを示す。熱マップのコラムは個々の実験群に関する相対的な遺伝子発現レベルのパターンを示す。各コラムは5匹のマウスの単一の実験群に関する395の正規化平均プローブセットシグナル強度値を示す。実験条件に全体に渡って遺伝子発現が変化することは着色棒により示される着色変動において反映される。二次元ヒエラルヒークラスタリングを実施することにより、実験群間の関係(樹状図で示す)を調べた。 図36A〜36Dは、Col4A3−/−腎における腎疾患に関連するαβ依存性遺伝子の機能的アノテーションを示す棒グラフである。野生型と比べてAlport腎において過剰又は過少発現される遺伝子に対応するプローブセットの一覧に対し、別個にIngenuityPathways分析(IPA)を実施した。IPAのために使用した一覧はAlportと野生型の群の間で有意(2倍超、p<0.01)な変動について当初選択されていた395のプローブセットのサブセットとした。7週齢のマウスのAlport腎における遺伝子の過剰発現(A、B)及びダウンモジュレーション(C、D)に関連する生物学的機能(A、C)及び標準的な経路(B、D)の順位付け一覧を示す。 図37A〜37Cは、Col4A3−/−腎において差次的に発現され、αβmAb投与を阻害することによりモジュレートされた遺伝子のサブセット及びネットワーク分析の模式図である。図37A:プローブセット一覧のベン図。ベン図の円の面積、その和集合及び積集合は対応する一覧におけるプローブセット数に比例する。図37B、37C:αβ阻害mAb3G9(図37B)及び8G6(図37C)により有意(投与及びナイーブのAlport腎の間で2倍超の変動)に影響を受けたプローブセットの一覧から推論された最高得点の調節ネットワーク。ネットワークの端縁はノードとして示され、その細胞局在化に従って配置された遺伝子内の相互作用の方向を示す。 図38は、TGF−β1発現の免疫組織化学的及びTaqman分析を示す。図38A:TGF−β1発現について免疫染色された指定の薬剤を投与したCol4A3+/−及びCol4A3−/−マウス由来の腎切片。各処置群の代表切片について染色を示す。図38B:処置群におけるTGF−β1mRNAレベルのTaqman分析。 図39は、腎におけるコラーゲン発現に関するトリクローム染色を示す。10週齢のCol4A3+/+;β6+/+、Col4A3−/−;β6+/+、及びCol4A3−/−;β6−/−マウスの染色。腎の皮質(図39A)及び髄質(図39B)の領域について代表的な組織切片を示す。 図40A及び40Bは、3G9投与の用量滴定によるSMA免疫染色を示す散布図である。3〜7週齢において週3回、指定の用量のmu3G9又は10mg/kgのmu1E6(IgG対照)を投与した後の腎の糸球体(皮質)(図40A)及び間質(髄質)(図40B)の領域について、SMA免疫染色の定量的分析を示す。皮質のED50=0.4mg/kg;髄質のED50=0.3mg/kg。水平線は平均値を示す。 図40A及び40Bは、3G9投与の用量滴定によるSMA免疫染色を示す散布図である。3〜7週齢において週3回、指定の用量のmu3G9又は10mg/kgのmu1E6(IgG対照)を投与した後の腎の糸球体(皮質)(図40A)及び間質(髄質)(図40B)の領域について、SMA免疫染色の定量的分析を示す。皮質のED50=0.4mg/kg;髄質のED50=0.3mg/kg。水平線は平均値を示す。 図41は、正常腎及びUUO後の腎における免疫組織学的分析のαβ発現を示す一連の顕微鏡写真である。図41A:正常未傷害腎;図41B:UUO後7日;図41C:UUO後10日;図41D:UUO後14日。 図42は、照射後18週においてαβアップレギュレーションが起こることを示す一連の顕微鏡写真である。14Gyを照射したC57BL/6マウスを指定の時点において屠殺し、肺切片を抗β6抗体で染色した。 図43は、線維症の域においてアップレギュレートされたαβ発現が持続することを示す対の顕微鏡写真である。肺切片を図1と同様にβ6発現について染色した。切片は14Gy照射後24時間(左)又は27時間(右)に屠殺したマウスより得た。両方の切片とも、高レベルのαβを発現している多くの上皮細胞を伴った線維性の患部を示す。隣接する非線維性の上皮では、αβ発現は24週まで高いレベルが維持されたが、27週までには著明さが大きく低減している。 図44は、Itgb6−/−マウスが放射線誘導肺線維症から保護されていることを示す一連の顕微鏡写真である。Itgb6+/+及びItgb6−/−マウス(C57BL/6バックグラウンド)を14Gy胸部照射に曝露した。27週間後、マウスを屠殺し、左肺をMassonのトリクロームで染色した。代表的な肺を示し;全体で21/23のItgb6+/+マウスが顕著な線維症を有していたのに対し、17匹のItgb6−/−マウスの何れも線維症を有していなかった。 図45は、ヒドロキシプロリンにより測定した場合、Itgb6−/−マウスが放射線誘導線維症から保護されていることを示す棒グラフである。照射Itgb6+/+肺のコラーゲン含有量は未照射のItgb6+/+肺及び照射及び未照射のItgb6−/−肺のものより有意に高い(照射Itgb6+/+の場合はp<0.03、各群につきN=5〜6)。 図46は、αβインテグリンの非存在は肺照射後の生存に影響しないことを示す折れ線グラフである。Itgb6+/+及びItgb6−/−マウスの群に14Gyを照射した。2群に関する生存曲線に有意差はなかった(WT=Itgb6+/+、KO=Itgb6−/−)。 図47は、照射後26週において屠殺した3G9、可溶性TGFβR又は対照AbをIP投与されたマウスにおける肺線維症測定を示す散布図である。肺線維症は1mg/kg/週の3G9を投与されたマウスにおいて予防されている。各点は個々のマウスを示し、棒は平均を示す。0.3mg/kg群と対照群との間には線維症に差はなかった。1mg/kg群は対照より有意に低値の線維症であった。10mg/kg及び可溶性TGFβ受容体群は低値の線維症を示したが、対照群との差は有意ではなかった。 図48は、(照射後26週において屠殺した)3G9、可溶性TGFβR又は対照AbをIP投与された全マウス(照射後20〜26週における屠殺されたマウス、瀕死状態のマウス及び死亡状態で発見されたマウス)における肺線維症測定を示す散布図である。データは図47と同様に示した。0.3mg/kg群と対照群との間には線維症に差はなかった。1mg/kg群、10mg/kg及び可溶性TGFβ受容体群は対照より有意に低値の線維症であった。 図49は、照射後26週において屠殺した3G9、可溶性TGFβR又は対照AbをIP投与されたマウスのBAL分画細胞計数を示す棒グラフである。 図50は、IP3G9抗体注射を受けた14Gy照射マウスは対照と同様の生存性を有したことを示す折れ線グラフである。複合分析として全群に対して生存分析を実施した(p=0.088、C=対照、0.3=0.3mg/kg、1=lmg/kg、SoIR=可溶性TGFβ受容体、10=10mg/kg)。 図51は、3G9(1、3、6又は10mg/kg)を毎週SC投与されたマウスにおける肺線維症測定を示す棒グラフである。全マウス(死亡/瀕死発見マウス及び屠殺マウス)、28〜32週に屠殺したマウス、及び死亡/瀕死発見マウスに関する別個の結果を示す。全抗体群と比べて対照群において有意に増大した線維症が存在する(全投薬vs対照でp<0.05)。 図52は、照射後28又は32週において屠殺した3G9又は対照AbをSC投与されたマウスのBAL分画細胞計数を示す棒グラフである。3、6及び10mg/kgの3G9投薬は好中球及びリンパ球の両方の有意に増大したパーセンテージをもたらした(全比較につきp<0.05)。 図53は、対照vs3G9投与マウスにおけるBAL細胞の出現を示す一連の顕微鏡写真である。正常肺胞マクロファージが対照のサイトスピンに観察される。1mg/kgの3G9を投与したマウスに由来するBAL細胞は対照と同様である。3mg/kgの用量において、多くの大型の泡状のマクロファージが顕在化している。(同様のマクロファージはItgb6−/−マウスにおいても観察される)。より高用量(6mg/kg及びここで示す10mg/kg)においては、増大した数の好中球(矢尻)及びリンパ球並びに一部の細胞破砕物が著明となっている。 図54は、照射後28週において屠殺したマウスコホートに関するKaplan−Meier生存曲線を示す折れ線グラフである。 図55は、照射後32週において屠殺したマウスコホートに関するKaplan−Meier生存曲線を示す折れ線グラフである。 図56は、照射後32週まで生存したマウスと比較した場合に照射後29〜32週に死亡したマウスにおいてRV/LV質量比が増大していることを示す棒グラフである。マウスの心臓をホルマリンに固定した。右心室(RV)を左心室+隔壁(LV)から分離し、組織を計量した。同じ系統の7匹の未照射マウスを対照として使用した。棒は平均±SDを表す。照射マウスに関するデータは、全マウス(1E6対照抗体又は他の用量の3G9を投与)、対照抗体1E6投与マウス、及び何れかの用量の3G9を投与したマウスにつき示す。マウスの数は以下の通り、即ち:未照射マウス、N=7;1E6投与マウスm:生存N=10、死亡N=5;3G9投与マウス:生存、N=8、死亡N=9であった。RV/LV比は生存したマウスにおいては未照射対照との有意差はなかった。これとは対照的に、未照射マウスと比べて死亡マウス(全マウス及び1E6及び3G9サブセット)においてRV/LV比は有意に増大していた(P<0.02)。更に、生存したマウスの同等な群と比べて死亡マウス(全マウス及び1E6及び3G9サブセット)においてRV/LV比は有意に増大していた(P<0.0007)。 図57は、対照抗体(1E6)、左、又は抗αβ抗体(3G9、1mg/kg/週)、右、を投与した死亡状態発見マウス由来の肺を示す顕微鏡写真の対である。肺胞壁における赤血球非存在の末梢域が観察される。この外観は灌流の消失と合致している。 図58は、ヒト肺疾患においてαβ発現が強力にアップレギュレートされることを示す、ヒト肺疾患におけるαβの発現を示す一連の顕微鏡写真である。ヒト及びマウスの肺のパラフィン組織切片をαβ特異的抗体で免疫染色することにより正常(図58A)及び疾患:特発性肺線維症(図58B)、広汎性間質性肺疾患(図58C)及び広汎性間質性肺疾患(図58D)の肺における発現の相対的レベルを可視化した。染色は表16−1(実施例16)において後述する41人の異なる患者の試料中において観察されたアップレギュレーションのレベルの代表例である。 図59は、ブレオマイシン誘導肺線維症のマウスモデルにおいてαβ発現が強力にアップレギュレートされることを示す、ブレオマイシン肺線維症におけるαβの発現を示す一連の顕微鏡写真である。マウス肺のパラフィン組織切片をαβ特異的抗体で免疫染色することによりブレオマイシン滴注肺における発現の相対的レベルを可視化した。 図60は、ブレオマイシン投与SV129マウスにおける肺のヒドロキシプロリン含有量に対するmu3G9投与の作用を示す一連の棒グラフである。記載した種々の投与期間に関して示す最初の3つの実験では、各マウスに4mg/kgのmu3G9(阻害αβmAb)、1E6(対照IgG1)を投与した。第4の実験では、ブレオマイシン投与後15〜60日に週当たり3回、各マウスに4mg/kgのmu3G9(阻害αβmAb)、4B4(非阻害αβmAb)又は8G6(第2の阻害αβmAb)を投与した。エラーバーは標準誤差を示す。群平均及び標準偏差は実施例16の付録Aに示す。 図61は、ブレオマイシン投与C57B16マウスにおけるコラーゲン含有量(組織形態学的検査)に対するmu3G9投与の作用を示す一連の棒グラフである。マウスに週当たり3投薬のmu3G9(阻害αβmAb)、8G6(第2の阻害αβmAb)、8B3(非阻害αβmAb)、1E6(対照IgG1mAb)又はsTGFbR(TGF−β阻害に関する可溶性TGF−β受容体陽性対照)を投与した。示した最初の3実験(図61A、61B及び61C)においては、ブレオマイシン攻撃前1日からマウスに投与し、第14日に安楽死させた。最初の2つの実験(図61A及び61B)では、各薬剤の用量は4mg/kgとし、第3の実験(図61C)では、mu3G9の用量を図示する通り変動させた。第4の実験(図61D)では、ブレオマイシン攻撃後14日からマウスに投与し、第28日に安楽死させた。組織学的切片をトリクローム染色し、画像化し、青色染色(コラーゲン含有)組織の面積をMetamorphソフトウェアを使用して全組織面積のパーセンテージとして計算した。エラーバーは標準誤差を示す。群平均及び標準偏差は実施例16の付録Bに示す。*=ANOVAによりPBS処置群と有意差有り。 図62は、コラーゲンレポーターマウスを使用したブレオマイシン肺線維症におけるmu3G9を示す棒グラフである。ブレオマイシンをコラーゲン−ルシフェラーゼレポーターマウス内に気管内滴注した。マウスには、PBS、5mg/kgの可溶性TGFbRII−Ig又は0.1、0.3、1.0、3及び10mg/kgの用量のmu3G9を2週間、週一回、ブレオマイシン傷害の前日から投与した。mu3G94mg/kgを週3回投与したマウスの別の群も設けた(3x4mg/kg)。シャムマウスには気管内食塩水滴注し、PBSを投与した。肺ルシフェラーゼ含有量を第14日に測定した。エラーバーは標準誤差を示す。群平均及び標準偏差は実施例16の付録Cに示す。*=ANOVAによりPBS処置群と有意差有り。 図63は、ブレオマイシン攻撃マウスにおける主要なBAL細胞の集団に対するmu3G9の低有効性用量の作用を評価するための経時変化を示す一連の折れ線グラフである。マウスには第0日に肺内にブレオマイシンを滴注した。マウスには第−1日及び第+6日において、PBS、0.3、1.0及び3.0mg/kgのmu3G9、又は1.0mg/kgの対照IgG1(1E6)を投与した。第2、5、8及び11日にマウスを屠殺し、肺を採取し、総BAL細胞数を評価した。マクロファージ、好中球及びリンパ球の集団をサイトスピンの分画染色により分析した。群平均及び標準偏差は実施例16の付録Cに示す。 図64は、ブレオマイシン攻撃マウスにおける第5日の主要なBAL細胞の集団に対するmu3G9の高用量の作用を示す一連の棒グラフである。マウスには第0日に肺内にブレオマイシンを滴注した。マウスには第−1日、第+1日及び第+3日において、PBS、4、20及び40mg/kgのmu3G9、又は20及び40mg/kgの対照IgG1mAb(1E6)を投与した。第5日にマウスを屠殺し、肺を採取し、総BAL細胞数を評価した。マクロファージ、好中球及びリンパ球の集団をサイトスピンの分画染色により分析した。群平均及び標準偏差は実施例16の付録Dに示す。*=p<0.05ではPBS投与のブレオマイシン攻撃対照に対して有意であるが1E6IgG1mAbを投与した対照に対しては有意でない。 図65は、ハムスターにおいては多重用量のブレオマイシンモデルにおけるmu3G9の作用が欠如していることを示す。ハムスターには第0、7及び14日に肺内にブレオマイシン(BL)又は食塩水(SA)を滴注した。第0日よりハムスターにPBS、mu3G9(Ab1)又は対照IgG1(1E6)を投与した。追加の群では、第7日(Ab2)及び第14日(Ab3)にmu3G9を投与した。全抗体とも5mg/kgの用量で週当たり3回投与した。生存ハムスターは第28日に屠殺し、肺を採取し、ヒドロキシプロリン含有量(図65AA)及び脂質の過酸化(図65B)について評価した。エラーバーは標準誤差を示す。多重用量ブレオマイシン試験中を通して生存したマウス(図65C)。PBS又はIgG投与対照群と比較した場合に、mu3G9投与ハムスターの生存性に有意差はなかった。群平均及び標準偏差は実施例16の付録Cに示す。 図65は、ハムスターにおいては多重用量のブレオマイシンモデルにおけるmu3G9の作用が欠如していることを示す。ハムスターには第0、7及び14日に肺内にブレオマイシン(BL)又は食塩水(SA)を滴注した。第0日よりハムスターにPBS、mu3G9(Ab1)又は対照IgG1(1E6)を投与した。追加の群では、第7日(Ab2)及び第14日(Ab3)にmu3G9を投与した。全抗体とも5mg/kgの用量で週当たり3回投与した。生存ハムスターは第28日に屠殺し、肺を採取し、ヒドロキシプロリン含有量(図65AA)及び脂質の過酸化(図65B)について評価した。エラーバーは標準誤差を示す。多重用量ブレオマイシン試験中を通して生存したマウス(図65C)。PBS又はIgG投与対照群と比較した場合に、mu3G9投与ハムスターの生存性に有意差はなかった。群平均及び標準偏差は実施例16の付録Cに示す。 図65は、ハムスターにおいては多重用量のブレオマイシンモデルにおけるmu3G9の作用が欠如していることを示す。ハムスターには第0、7及び14日に肺内にブレオマイシン(BL)又は食塩水(SA)を滴注した。第0日よりハムスターにPBS、mu3G9(Ab1)又は対照IgG1(1E6)を投与した。追加の群では、第7日(Ab2)及び第14日(Ab3)にmu3G9を投与した。全抗体とも5mg/kgの用量で週当たり3回投与した。生存ハムスターは第28日に屠殺し、肺を採取し、ヒドロキシプロリン含有量(図65AA)及び脂質の過酸化(図65B)について評価した。エラーバーは標準誤差を示す。多重用量ブレオマイシン試験中を通して生存したマウス(図65C)。PBS又はIgG投与対照群と比較した場合に、mu3G9投与ハムスターの生存性に有意差はなかった。群平均及び標準偏差は実施例16の付録Cに示す。 図66は、実験投与により有意に影響を受けるものとして発見された遺伝子に関する正規化されたシグナル強度のプロファイルを示す。マウスには5mg/kgのsTGFbRII−Ig(sR)又はPBS又は0.3〜30mg/kgの特定用量のmu3G9を第1、8、15及び22日に投与し、第29日(回復期無し)又は第78日(7週間回復期)に安楽死させた。RNAを投与マウスの肺から調製し、転写産物を分析した。 図67は、処置群における3mg/kgの3G9で上昇傾向を示す遺伝子に関する遺伝子発現のプロファイルを示す。マウスには5mg/kgのsTGFbRII−Ig(sR)又はPBS又は0.3〜30mg/kgの特定用量のmu3G9を第1、8、15及び22日に投与し、第29日(回復期無し)又は第78日(7週間回復期)に安楽死させた。RNAを投与マウスの肺から調製し、転写産物を分析した。 図68は、mu3G9により有意に影響を受ける遺伝子のIPAアノテーションを示す対の棒グラフである。 図69A及び69Bは、マウス肺におけるmu3G9により影響を受ける調節ネットワークを模式的に示すネットワークマップである。 図69A及び69Bは、マウス肺におけるmu3G9により影響を受ける調節ネットワークを模式的に示すネットワークマップである。 図70は、mu3G9投与に対するMMP−12転写産物の用量応答を示す棒グラフである。 図71は、正常及び照射マウスにおけるBAL液タンパク質レベルの一連の散布図である。 図72は、28週において、照射誘導線維症によりアップレギュレートされる、及びmu3G9投与によりダウンレギュレートされるタンパク質を示す一連の散布図である。
(配列表)
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Claims (244)

  1. 配列番号1の重鎖可変ドメイン配列及び配列番号2の軽鎖可変ドメインを含む、αβに特異的に結合するヒト化抗体。
  2. 前記重鎖可変ドメインが、配列番号1のアミノ酸残基31〜35(CDR1)、50〜65(CDR2)及び98〜109(CDR3)により規定される相補性決定領域(CDR)を含む、請求項1に記載のヒト化抗体。
  3. 前記軽鎖可変ドメインが、配列番号2のアミノ酸残基24〜35(CDR1)、51〜57(CDR2)及び90〜98(CDR3)により規定される相補性決定領域(CDR)を含む、請求項1に記載のヒト化抗体。
  4. 前記重鎖可変ドメインが、配列番号1のアミノ酸残基1〜30(FR1)、36〜49(FR2)、66〜97(FR3)及び110〜120(FR4)により規定されるフレームワーク領域(FR)を含む、請求項1に記載のヒト化抗体。
  5. 前記軽鎖可変ドメインが、配列番号2のアミノ酸残基1〜23(FR1)、36〜50(FR2)、58〜89(FR3)及び99〜108(FR4)により規定されるフレームワーク領域(FR)を含む、請求項1に記載のヒト化抗体。
  6. 前記抗体が、前記CDR1配列、CDR2配列、CDR3配列又はフレームワーク配列の重鎖又は軽鎖可変ドメインに少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、請求項1〜5の何れか1項に記載のヒト化抗体。
  7. 前記抗体が、前記重鎖可変ドメインに、配列番号1のQ3M及びN74Sからなるアミノ酸置換のうちの少なくとも1つを含む、請求項6に記載のヒト化抗体。
  8. 前記抗体が、前記重鎖可変ドメイン(HV1)に、配列番号1のQ3M及びN74Sからなるアミノ酸置換を含む、請求項7に記載のヒト化抗体。
  9. 前記抗体が、前記重鎖可変ドメイン(HV2)に、配列番号1のN74Sからなるアミノ酸置換を含む、請求項7に記載のヒト化抗体。
  10. 前記抗体が、前記重鎖可変ドメイン(HV3)に配列番号1の配列を含む、請求項7に記載のヒト化抗体。
  11. 前記抗体が、前記軽鎖可変ドメインに、配列番号2のE1Q、L47W、I58V、A60V及びY87Fからなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、請求項6に記載のヒト化抗体。
  12. 前記抗体が、前記軽鎖可変ドメイン(LV1)に、配列番号2のL47W、I58V、A60V及びY87Fからなるアミノ酸置換を含む、請求項11に記載のヒト化抗体。
  13. 前記抗体が、前記軽鎖可変ドメイン(LV2)に、配列番号2のL47W及びI58Vからなるにアミノ酸置換を含む、請求項11に記載のヒト化抗体。
  14. 前記抗体が、前記軽鎖可変ドメイン(LV3)に、配列番号2のL47Wからなるアミノ酸置換を含む、請求項11に記載のヒト化抗体。
  15. 前記抗体が、前記軽鎖可変ドメイン(LV4)に、配列番号2のE1Q及びL47Wからなるアミノ酸置換を含む、請求項11に記載のヒト化抗体。
  16. 前記抗体が、前記軽鎖可変ドメイン(LV5)に、配列番号2の配列を含む、請求項11に記載のヒト化抗体。
  17. 配列番号1の重鎖可変ドメイン配列(HV3)及び配列番号2の軽鎖可変ドメイン(LV5)を含む、αβに特異的に結合するヒト化抗体。
  18. 前記相補性決定領域(CDR)がマウス3G9抗体に由来する、請求項1又は17に記載のヒト化抗体。
  19. 前記抗体がαβへの結合においてマウス3G9抗体と競合することができる、請求項1に記載のヒト化抗体。
  20. 前記抗体が該抗体をコードする核酸を含む組換えベクターにより生成される、請求項1又は17に記載のヒト化抗体。
  21. 前記組換えベクターがpKJS195、pKJS189及びpKJS196からなる群より選択されるプラスミドである、請求項20に記載のヒト化抗体。
  22. 前記プラスミドpKJS195が配列番号5を含む、請求項21に記載のヒト化抗体。
  23. 前記プラスミドpKJS189が配列番号6を含む、請求項21に記載のヒト化抗体。
  24. 前記プラスミドpKJS196が配列番号7を含む、請求項21に記載のヒト化抗体。
  25. 請求項1及び17に記載の抗体の何れか1つにより認識されるエピトープに対する特異性を有するヒト化抗体。
  26. αβを特異的に結合するヒト化抗体であって、
    (a)マウス3G9抗体由来の3つの軽鎖相補性決定領域(CDR)及びヒト免疫グロブリン軽鎖由来の軽鎖可変領域フレームワーク(FR)配列を含む、ヒト化軽鎖;ならびに
    (b)マウス3G9抗体由来の3つの重鎖相補性決定領域(CDR)及びヒト免疫グロブリン重鎖由来の重鎖可変領域フレームワーク(FR)配列を含む、ヒト化重鎖;
    を含む、ヒト化抗体。
  27. 配列番号1〜5の何れか1つのコード配列を含む、単離された核酸分子。
  28. 配列番号1〜5の何れか1つのアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチド。
  29. 請求項27に記載の核酸分子を含む、組換えベクター。
  30. ヒト化免疫グロブリン軽鎖をコードする融合遺伝子を更に含み、該遺伝子が、αβに対する結合特異性を有する非ヒト抗体の軽鎖に由来するCDR及びヒト起源の軽鎖に由来するフレームワーク領域をコードするヌクレオチド配列を含む、請求項29に記載の組換えベクター。
  31. 前記非ヒト抗体がマウス3G9抗体である、請求項30に記載の組換えベクター。
  32. 前記ベクターがプラスミドpKJS195である、請求項30に記載の組換えベクター。
  33. ヒト化免疫グロブリン重鎖をコードする融合遺伝子を更に含み、該遺伝子が、αβに対する結合特異性を有する非ヒト抗体の重鎖に由来するCDR及びヒト起源の重鎖に由来するフレームワーク領域をコードするヌクレオチド配列を含む、請求項29に記載の組換えベクター。
  34. 前記非ヒト抗体がマウス3G9抗体である、請求項33に記載の組換えベクター。
  35. 前記ベクターがプラスミドpKJS189である、請求項33に記載の組換えベクター。
  36. 前記ベクターがプラスミドpKJS196である、請求項33に記載の組換えベクター。
  37. 請求項29〜36の何れか1項に記載の組換えベクターを含む宿主細胞。
  38. 哺乳動物においてαβにより媒介される疾患を予防又は処置するための組成物であって、請求項1、17及び26の何れか1項に記載の抗体及び薬学的に許容される担体を含む、組成物。
  39. 前記抗体が細胞毒性因子にコンジュゲートされる、請求項38に記載の組成物。
  40. ヒト化抗体を調製する方法であって、ヒト化抗体の発現に適切な条件下で請求項37に記載の宿主細胞を培養する工程を含み、ヒト化抗体鎖が発現され、ヒト化抗体が生成される、方法。
  41. 前記ヒト化抗体を単離する工程を更に含む、請求項40に記載の方法。
  42. 前記宿主細胞がCHO細胞である、請求項40に記載の方法。
  43. αβにより媒介される疾患を有する、又は有する危険性がある被験体を処置する方法であって、該被験体に請求項38に記載の組成物を投与し、それによって該疾患の発症を軽減又は延期する工程を含む、方法。
  44. 前記被験体がヒトである、請求項43に記載の方法。
  45. 前記疾患が線維症である、請求項43に記載の方法。
  46. 前記線維症が硬皮症、瘢痕化、肝線維症、腎線維症又は肺線維症である、請求項45に記載の方法。
  47. 前記疾患が乾癬である、請求項43に記載の方法。
  48. 前記疾患が癌である、請求項43に記載の方法。
  49. 前記癌が上皮癌である、請求項48に記載の方法。
  50. 前記癌が口腔癌、皮膚癌、子宮頚癌、卵巣癌、喉頭癌(pharyngeal cancer)、喉頭癌(laryngeal cancer)、食道癌、肺癌、乳癌、腎臓癌又は結腸直腸癌である、請求項48に記載の方法。
  51. 前記疾患がアルポート症候群である、請求項48に記載の方法。
  52. αβに特異的に結合するヒト化抗体であって、配列番号3の重鎖可変ドメイン配列及び配列番号4の軽鎖可変ドメインを含む、ヒト化抗体。
  53. 前記重鎖可変ドメインが、配列番号3のアミノ酸残基31〜35(CDR1)、50〜66(CDR2)及び99〜115(CDR3)により規定される相補性決定領域(CDR)を含む、請求項52に記載のヒト化抗体。
  54. 前記軽鎖可変ドメインが、配列番号4のアミノ酸残基24〜38(CDR1)、54〜60(CDR2)及び93〜101(CDR3)により規定される相補性決定領域(CDR)を含む、請求項52に記載のヒト化抗体。
  55. 前記重鎖可変ドメインが、配列番号3のアミノ酸残基1〜30(FR1)、36〜49(FR2)、67〜98(FR3)及び116〜126(FR4)により規定されるヒトフレームワーク領域(FR)を含む、請求項52に記載のヒト化抗体。
  56. 前記軽鎖可変ドメインが、配列番号4のアミノ酸残基1〜23(FR1)、39〜53(FR2)、61〜92(FR3)及び102〜111(FR4)により規定されるヒトフレームワーク領域(FR)を含む、請求項52に記載のヒト化抗体。
  57. 前記抗体が、前記CDR1配列、CDR2配列、CDR3配列又はフレームワーク配列の重鎖又は軽鎖可変ドメインに少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、請求項52〜56の何れか1項に記載のヒト化抗体。
  58. 前記抗体が、前記重鎖可変ドメインに、配列番号3のA24G、G26S、Q39L、M48I、V68A、R72V及びT74Kからなるアミノ酸置換のうちの少なくとも1つを含む、請求項57に記載のヒト化抗体。
  59. 前記抗体が、前記重鎖可変ドメイン(HV1’)に、配列番号3のA24G、G26S、Q39L、M48I、V68A、R72V及びT74Kからなるアミノ酸置換を含む、請求項58に記載のヒト化抗体。
  60. 前記抗体が、前記重鎖可変ドメイン(HV2’)に、配列番号3のM48I、V68A、R72V及びT74Kからなるアミノ酸置換を含む、請求項58に記載のヒト化抗体。
  61. 前記抗体が、前記重鎖可変ドメイン(HV3’)に、配列番号3のV68A、R72V及びT74Kからなるアミノ酸置換を含む、請求項58に記載のヒト化抗体。
  62. 前記抗体が、前記軽鎖可変ドメインに、配列番号4のE1D、L46F及びY49Kからなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、請求項57に記載のヒト化抗体。
  63. 前記抗体が、前記軽鎖可変ドメイン(LV1’)に、配列番号4のE1D、L46F及びY49Kからなるアミノ酸置換を含む、請求項62に記載のヒト化抗体。
  64. 前記抗体が、前記軽鎖可変ドメイン(LV2’)に、配列番号4のL46F及びY49Kからなるアミノ酸置換を含む、請求項62に記載のヒト化抗体。
  65. 前記抗体が、前記軽鎖可変ドメイン(LV3’)に、配列番号4のY49Kからなるアミノ酸置換を含む、請求項62に記載のヒト化抗体。
  66. 前記相補性決定領域(CDR)がマウス8G6抗体に由来する、請求項52〜56の何れか1項に記載のヒト化抗体。
  67. 前記抗体がαβへの結合においてマウス8G6抗体と競合することができる、請求項52〜56の何れか1項に記載のヒト化抗体。
  68. 配列番号3〜4の何れか1つのコード配列を含む、単離された核酸分子
  69. 配列番号3〜4の何れか1つのアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチド。
  70. 請求項68に記載の核酸分子を含む、組換えベクター。
  71. ヒト化免疫グロブリン軽鎖をコードする融合遺伝子を更に含み、該遺伝子が、αβに対する結合特異性を有する非ヒト抗体の軽鎖に由来するCDR及びヒト起源の軽鎖に由来するフレームワーク領域をコードするヌクレオチド配列を含む、請求項70に記載の組換えベクター。
  72. 前記非ヒト抗体がマウス8G6抗体である、請求項71に記載の組換えベクター。
  73. ヒト化免疫グロブリン重鎖をコードする融合遺伝子を更に含み、該遺伝子が、αβに対する結合特異性を有する非ヒト抗体の重鎖に由来するCDR及びヒト起源の重鎖に由来するフレームワーク領域をコードするヌクレオチド配列を含む、請求項70に記載の組換えベクター。
  74. 前記非ヒト抗体がマウス8G6抗体である、請求項73に記載の組換えベクター。
  75. 請求項70〜74の何れか1項に記載の組換えベクターを含む宿主細胞。
  76. 哺乳動物においてαβにより媒介される疾患を予防又は処置するための組成物であって、請求項52〜56の何れか1項に記載の抗体及び薬学的に許容される担体を含む、組成物。
  77. 前記抗体が細胞毒性因子にコンジュゲートされる、請求項76に記載の組成物。
  78. ヒト化抗体を調製する方法であって、ヒト化抗体の発現に適切な条件下で請求項75に記載の宿主細胞を培養する工程を含み、ここで、ヒト化抗体鎖が発現され、ヒト化抗体が生成される、方法。
  79. 前記ヒト化抗体を単離する工程を更に含む、請求項78の方法。
  80. 前記宿主細胞がCHO細胞である、請求項78に記載の方法。
  81. αβにより媒介される疾患を有する、又は有する危険性がある被験体を処置する方法であって、該被験体に請求項76に記載の組成物を投与し、それによって、該疾患の発症を軽減又は延期する工程を含む、方法。
  82. 前記被験体がヒトである、請求項81に記載の方法。
  83. 前記疾患が線維症である、請求項81に記載の方法。
  84. 前記疾患が癌である、請求項81に記載の方法。
  85. 前記疾患がアルポート症候群である、請求項81に記載の方法。
  86. プラスミドpKJS189(配列番号6)を含む組換えベクターにより生成される重鎖可変ドメイン3型(HV3)及びプラスミドpKJS195(配列番号5)を含む組換えベクターにより生成される軽鎖可変ドメイン5型(HV5)を含む、ヒト化抗体。
  87. プラスミドpKJS196(配列番号7)を含む組換えベクターにより生成されるアグリコシル重鎖可変ドメイン3型(a−HV3)及びプラスミドpKJS195(配列番号5)を含む組換えベクターにより生成される軽鎖可変ドメイン5型(HV5)を含む、ヒト化抗体。
  88. 患者における原発腫瘍の二次的な位置への転移を低減又は予防する方法であって、該原発腫瘍内の1つ以上の細胞上のインテグリンαβの1つ以上のサブユニットに結合する1つ以上のリガンドの治療有効量を該患者に投与する工程を含み、該リガンドの該インテグリンへの結合が、該腫瘍細胞の死滅、化学的感受性又は浸潤性の低下をもたらす、方法。
  89. 前記腫瘍が癌腫である、請求項88に記載の方法。
  90. 前記癌腫が腺癌である、請求項89に記載の方法。
  91. 前記癌腫が、乳癌腫、子宮内膜癌腫、膵臓癌腫、結腸直腸癌腫、肺癌腫、卵巣癌腫、子宮頚癌腫、前立腺癌腫、肝臓癌腫、食道癌腫、頭頚部癌腫、胃癌腫及び脾臓癌腫からなる群より選択される、請求項89に記載の方法。
  92. 前記癌腫が乳癌腫である、請求項89に記載の方法。
  93. 前記乳癌腫が上皮内乳癌腫(in situ breast carcinoma)である、請求項92に記載の方法。
  94. 前記上皮内乳癌腫が、上皮内腺管癌(DCIS)及び上皮内小葉癌(LCIS)からなる群より選択される、請求項93に記載の方法。
  95. 前記癌腫が子宮内膜癌腫である、請求項89に記載の方法。
  96. 前記癌腫が膵臓癌腫である、請求項89に記載の方法。
  97. 前記癌腫が結腸直腸癌腫である、請求項89に記載の方法。
  98. 前記癌腫が子宮頚癌腫である、請求項89に記載の方法。
  99. 前記癌腫が肺癌腫である、請求項89に記載の方法。
  100. αβインテグリンに結合する前記リガンドが、抗体又はそのαβエピトープ結合フラグメントである、請求項88に記載の方法。
  101. 前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項100に記載の方法。
  102. 前記モノクローナル抗体が、キメラ、霊長類化又はヒト化モノクローナル抗体である、請求項101に記載の方法。
  103. 前記モノクローナル抗体が、2A1、2E5、1A8、2B10、2B1、1G10、7G5、1C5、8G6、3G9、10D5及びCSβ6からなる群より選択される、請求項101に記載の方法。
  104. 前記モノクローナル抗体が3G9である、請求項101に記載の方法。
  105. 前記モノクローナル抗体が8G6である、請求項101に記載の方法。
  106. 前記モノクローナル抗体がヒト化モノクローナル抗体である、請求項101に記載の方法。
  107. 前記ヒト化モノクローナル抗体がhu3G9(BG00011)である、請求項106に記載の方法。
  108. 前記ヒト化モノクローナル抗体がhu8G6である、請求項106に記載の方法。
  109. 前記リガンドが少なくとも1つの細胞毒性化合物にコンジュゲートされる、請求項88に記載の方法。
  110. 前記リガンドが、少なくとも1つの細胞毒性化合物の前記患者への投与と組み合わせて該患者に投与される、請求項88に記載の方法。
  111. 前記細胞毒性化合物が、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、メルファラン、ドキソルビシン、メトトレキセート、5−フルオロウラシル、エトポシド、メクロレタミン、シクロホスファミド、ブレオマイシン、カリケアマイシン、マイタンシン、トリコテネ、CC1065、ジフテリアA鎖、緑膿菌外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α−サルシン、Aleuritesfordiiタンパク質、ジアンシンタンパク質、Phytolaca americanaタンパク質、モモルジカ・チャランティア阻害物質、クルシン、クロチン、サポナリア・オフィシナリス阻害物質、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、トリコテセン、リボヌクレアーゼ及びデオキシリボヌクレアーゼからなる群より選択される、請求項109又は110に記載の方法。
  112. 前記細胞毒性化合物が、放射性同位体及びプロドラッグ活性化酵素からなる群より選択される、請求項109又は請求項110に記載の方法。
  113. 前記放射性同位体が、211At、131I、125I、90Y、186Re、188Re、153Sm、212Bi、32P、並びにLuの放射性同位体からなる群より選択される、請求項112に記載の方法。
  114. 前記プロドラッグ活性化酵素が、アルカリホスファターゼ、アリールスルファターゼ、シトシンデアミナーゼ、プロテアーゼ、D−アラニルカルボキシペプチダーゼ、炭水化物開裂酵素、P−ラクタマーゼ及びペニシリンアミダーゼからなる群より選択される、請求項112に記載の方法。
  115. 前記リガンドが、該リガンド及び1つ以上の薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む薬学的組成物の形態で前記患者に投与される、請求項88に記載の方法。
  116. 前記リガンド又は組成物が、経口投与、非経口投与、頭蓋内投与、肺内投与及び鼻内投与からなる群より選択される経路を介して前記患者に投与される、請求項88又は請求項115に記載の方法。
  117. 前記リガンド又は組成物が、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与及び皮下投与からなる群より選択される非経腸経路を介して前記患者に投与される、請求項116に記載の方法。
  118. 前記非経腸経路が、注射を介して前記患者に前記リガンド又は組成物を投与することを含む、請求項117に記載の方法。
  119. 浸潤性癌腫に進行する可能性がより高い癌腫を診断する方法であって、
    (a)腫瘍又はその一部分を含む癌性上皮組織試料、及び非癌性上皮組織試料を患者から得る工程;
    (b)インテグリンαβの1つ以上のサブユニットに結合する1つ以上のリガンドと該組織試料とを接触させる工程;及び、
    (c)該組織試料におけるインテグリンαβの発現レベルを測定する工程
    を含み、
    該非癌性組織試料におけるインテグリンαβの発現レベルに比べて該癌性組織試料におけるインテグリンαβの発現レベルが増大していることが、浸潤性癌腫に進行する可能性がより高い癌腫が該患者に存在することを示す、方法。
  120. 前記腫瘍が癌腫である、請求項119に記載の方法。
  121. 前記癌腫が腺癌である、請求項120に記載の方法。
  122. 前記癌腫が、乳癌腫、子宮内膜癌腫、膵臓癌腫、結腸直腸癌腫、肺癌腫、卵巣癌腫、子宮頚癌腫、前立腺癌腫、肝臓癌腫、食道癌腫、頭頚部癌腫、胃癌腫及び脾臓癌腫からなる群より選択される、請求項120に記載の方法。
  123. 前記癌腫が乳癌腫である、請求項122に記載の方法。
  124. 前記乳癌腫が上皮内乳癌腫である、請求項123に記載の方法。
  125. 前記上皮内乳癌腫が、上皮内腺管癌(DCIS)及び上皮内小葉癌(LCIS)からなる群より選択される、請求項124に記載の方法。
  126. 前記癌腫が子宮内膜癌腫である、請求項124に記載の方法。
  127. 前記癌腫が膵臓癌腫である、請求項120に記載の方法。
  128. 前記癌腫が結腸直腸癌腫である、請求項120に記載の方法。
  129. 前記癌腫が子宮頚癌腫である、請求項120に記載の方法。
  130. 前記癌腫が肺癌腫である、請求項120に記載の方法。
  131. αβインテグリンに結合する前記リガンドが、抗体又はそのαβエピトープ結合フラグメントである、請求項119に記載の方法。
  132. 前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項131に記載の方法。
  133. 前記モノクローナル抗体が、キメラ、霊長類化又はヒト化モノクローナル抗体である、請求項132に記載の方法。
  134. 前記モノクローナル抗体が、2A1、2E5、1A8、2B10、2B1、1G10、7G5、1C5、8G6、3G9、10D5及びCSβ6からなる群より選択される、請求項132に記載の方法。
  135. 前記モノクローナル抗体が3G9である、請求項132に記載の方法。
  136. 前記モノクローナル抗体が8G6である、請求項132に記載の方法。
  137. 前記モノクローナル抗体がヒト化モノクローナル抗体である、請求項132に記載の方法。
  138. 前記ヒト化モノクローナル抗体がhu3G9(BG00011)である、請求項137に記載の方法。
  139. 前記ヒト化モノクローナル抗体がhu8G6である、請求項137に記載の方法。
  140. 前記リガンドが少なくとも1つの検出可能な標識にコンジュゲートされる、請求項119に記載の方法。
  141. 前記検出可能な標識が、発色原標識、酵素標識、放射性同位体標識、非放射性同位体標識、蛍光標識、毒性標識、化学発光標識、X線撮影用標識、スピンラベル及び核磁気共鳴造影剤標識からなる群より選択される、請求項140に記載の方法。
  142. 前記発色原標識が、ジアミノベンジジン及び4−ヒドロキシアゾベンゼン−2−カルボン酸からなる群より選択される、請求項141に記載の方法。
  143. 前記酵素標識が、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、スタフィロコッカスヌクレアーゼ、δ−5−ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、α−グリセロールリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ及びアセチルコリンエステラーゼからなる群より選択される、請求項141に記載の方法。
  144. 前記放射性同位体標識が、H、111In、125I、131I、32P、35S、14C、51Cr、57To、58Co、59Fe、75Se、152Eu、90Y、67Cu、217Ci、211At、212Pb、47Sc及び109Pdからなる群より選択される、請求項141に記載の方法。
  145. 前記非放射性同位体標識が、157Gd、55Mn、162Dy、52Tr、56Fe、99mTc及び112Inからなる群より選択される、請求項141に記載の方法。
  146. 前記蛍光標識が、152Eu標識、フルオレセイン標識、イソチオシアネート標識、ローダミン標識、フィコエリスリン標識、フィコシアニン標識、アロフィコシアニン標識、緑色蛍光タンパク質(GFP)標識、o−フタルデヒド標識及びフルオレサミン標識からなる群より選択される、請求項141に記載の方法。
  147. 前記毒性標識が、ジフテリア毒素標識、リシン標識及びコレラ毒素標識からなる群より選択される、請求項141に記載の方法。
  148. 前記化学発光標識が、ルミノール標識、イソルミノール標識、芳香族アクリジニウムエステル標識、イミダゾール標識、アクリジニウム塩標識、シュウ酸エステル標識、ルシフェリン標識、ルシフェラーゼ標識及びエクオリン標識からなる群より選択される、請求項141に記載の方法。
  149. 前記X線撮影用標識がバリウム又はセシウムである、請求項141に記載の方法。
  150. 前記スピンラベルが重水素である、請求項141に記載の方法。
  151. 前記核磁気共鳴造影剤標識が、Gd、Mn及び鉄からなる群より選択される、請求項141に記載の方法。
  152. 患者におけるαβ陽性転移腫瘍細胞を排除する方法であって、1つ以上のαβ陽性転移腫瘍細胞上のインテグリンαβの1つ以上のサブユニットに結合する1つ以上のリガンドの治療有効量を該患者に投与する工程を含み、該リガンドの該インテグリンへの結合が、該転移腫瘍細胞の死滅、化学的感作又は浸潤性の低下をもたらす、方法。
  153. 前記腫瘍細胞が転移癌腫に由来する、請求項152に記載の方法。
  154. 前記癌腫が腺癌である、請求項153に記載の方法。
  155. 前記癌腫が、乳癌腫、子宮内膜癌腫、膵臓癌腫、結腸直腸癌腫、肺癌腫、卵巣癌腫、子宮頚癌腫、前立腺癌腫、肝臓癌腫、食道癌腫、頭頚部癌腫、胃癌腫及び脾臓癌腫からなる群より選択される、請求項153に記載の方法。
  156. 前記癌腫が乳癌腫である、請求項153に記載の方法。
  157. 前記乳癌腫が上皮内乳癌腫である、請求項156に記載の方法。
  158. 前記上皮内乳癌腫が、上皮内腺管癌(DCIS)及び上皮内小葉癌(LCIS)からなる群より選択される、請求項157に記載の方法。
  159. 前記癌腫が子宮内膜癌腫である、請求項153に記載の方法。
  160. 前記癌腫が膵臓癌腫である、請求項153に記載の方法。
  161. 前記癌腫が結腸直腸癌腫である、請求項153に記載の方法。
  162. 前記癌腫が子宮頚癌腫である、請求項153に記載の方法。
  163. 前記癌腫が肺癌腫である、請求項153に記載の方法。
  164. αβインテグリンに結合する前記リガンドが、抗体又はそのαβエピトープ結合フラグメントである、請求項152に記載の方法。
  165. 前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項164に記載の方法。
  166. 前記モノクローナル抗体が、キメラ、霊長類化又はヒト化モノクローナル抗体である、請求項165に記載の方法。
  167. 前記モノクローナル抗体が、2A1、2E5、1A8、2B10、2B1、1G10、7G5、1C5、8G6、3G9、10D5及びCSβ6からなる群より選択される、請求項165に記載の方法。
  168. 前記モノクローナル抗体が3G9である、請求項165に記載の方法。
  169. 前記モノクローナル抗体が8G6である、請求項165に記載の方法。
  170. 前記モノクローナル抗体がヒト化モノクローナル抗体である、請求項165に記載の方法。
  171. 前記ヒト化モノクローナル抗体がhu3G9(BG00011)である、請求項170に記載の方法。
  172. 前記ヒト化モノクローナル抗体がhu8G6である、請求項170に記載の方法。
  173. 前記リガンドが少なくとも1つの細胞毒性化合物にコンジュゲートされる、請求項152に記載の方法。
  174. 前記リガンドが、少なくとも1つの細胞毒性化合物の前記患者への投与と組み合わせて該患者に投与される、請求項152に記載の方法。
  175. 前記細胞毒性化合物が、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、メルファラン、ドキソルビシン、メトトレキセート、5−フルオロウラシル、エトポシド、メクロレタミン、シクロホスファミド、ブレオマイシン、カリケアマイシン、マイタンシン、トリコテネ、CC1065、ジフテリアA鎖、緑膿菌外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α−サルシン、Aleuritesfordiiタンパク質、ジアンシンタンパク質、Phytolaca americanaタンパク質、モモルジカ・チャランティア阻害物質、クルシン、クロチン、サポナリア・オフィシナリス阻害物質、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、トリコテセン、リボヌクレアーゼ及びデオキシリボヌクレアーゼからなる群より選択される、請求項173又は請求項174に記載の方法。
  176. 前記細胞毒性化合物が、放射性同位体及びプロドラッグ活性化酵素からなる群より選択される、請求項173又は請求項174に記載の方法。
  177. 前記放射性同位体が、211At、131I、125I、90Y、186Re、188Re、153Sm、212Bi、32P、並びにLuの放射性同位体からなる群より選択される、請求項176に記載の方法。
  178. 前記プロドラッグ活性化酵素が、アルカリホスファターゼ、アリールスルファターゼ、シトシンデアミナーゼ、プロテアーゼ、D−アラニルカルボキシペプチダーゼ、炭水化物開裂酵素、P−ラクタマーゼ及びペニシリンアミダーゼからなる群より選択される、請求項176に記載の方法。
  179. 前記リガンドが、該リガンド及び1つ以上の薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む薬学的組成物の形態で前記患者に投与される、請求項152に記載の方法。
  180. 前記リガンド又は組成物が、経口投与、非経口投与、頭蓋内投与、肺内投与及び鼻内投与からなる群より選択される経路を介して前記患者に投与される、請求項152又は請求項179に記載の方法。
  181. 前記リガンド又は組成物が、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与及び皮下投与からなる群より選択される非経腸経路を介して前記患者に投与される、請求項180に記載の方法。
  182. 前記非経腸経路が、注射を介して前記患者に前記リガンド又は組成物を投与することを含む、請求項181に記載の方法。
  183. 患者の組織又は臓器から腫瘍を外科的に摘出した後に該患者から残存するαβ陽性腫瘍細胞を排除する方法であって、該組織又は臓器に残存する1つ以上の腫瘍細胞上のインテグリンαβの1つ以上のサブユニットに結合する1つ以上のリガンドの治療有効量を該患者に投与する工程を含み、該リガンドの該インテグリンへの結合が、該腫瘍細胞の死滅、化学的感受性又は浸潤性の低下をもたらす、方法。
  184. 前記腫瘍細胞が転移癌腫に由来する、請求項183に記載の方法。
  185. 前記癌腫が腺癌である、請求項184に記載の方法。
  186. 前記癌腫が、乳癌腫、子宮内膜癌腫、膵臓癌腫、結腸直腸癌腫、肺癌腫、卵巣癌腫、子宮頚癌腫、前立腺癌腫、肝臓癌腫、食道癌腫、頭頚部癌腫、胃癌腫及び脾臓癌腫からなる群より選択される、請求項184に記載の方法。
  187. 前記癌腫が乳癌腫である、請求項184に記載の方法。
  188. 前記乳癌腫が上皮内乳癌腫である、請求項187に記載の方法。
  189. 前記上皮内乳癌腫が、上皮内腺管癌(DCIS)及び上皮内小葉癌(LCIS)からなる群より選択される、請求項188に記載の方法。
  190. 前記癌腫が子宮内膜癌腫である、請求項184に記載の方法。
  191. 前記癌腫が膵臓癌腫である、請求項184に記載の方法。
  192. 前記癌腫が結腸直腸癌腫である、請求項184に記載の方法。
  193. 前記癌腫が子宮頚癌腫である、請求項184に記載の方法。
  194. 前記癌腫が肺癌腫である、請求項184に記載の方法。
  195. αβインテグリンに結合する前記リガンドが、抗体又はそのαβエピトープ結合フラグメントである、請求項183に記載の方法。
  196. 前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項195に記載の方法。
  197. 前記モノクローナル抗体が、キメラ、霊長類化又はヒト化モノクローナル抗体である、請求項196に記載の方法。
  198. 前記モノクローナル抗体が、2A1、2E5、1A8、2B10、2B1、1G10、7G5、1C5、8G6、3G9、10D5及びCSβ6からなる群より選択される、請求項196に記載の方法。
  199. 前記モノクローナル抗体が3G9である、請求項196に記載の方法。
  200. 前記モノクローナル抗体が8G6である、請求項196に記載の方法。
  201. 前記モノクローナル抗体がヒト化モノクローナル抗体である、請求項196に記載の方法。
  202. 前記ヒト化モノクローナル抗体がhu3G9(BG00011)である、請求項201に記載の方法。
  203. 前記ヒト化モノクローナル抗体がhu8G6である、請求項201に記載の方法。
  204. 前記リガンドが少なくとも1つの細胞毒性化合物にコンジュゲートされる、請求項183に記載の方法。
  205. 前記リガンドが、少なくとも1つの細胞毒性化合物の前記患者への投与と組み合わせて該患者に投与される、請求項183に記載の方法。
  206. 前記細胞毒性化合物が、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、メルファラン、ドキソルビシン、メトトレキセート、5−フルオロウラシル、エトポシド、メクロレタミン、シクロホスファミド、ブレオマイシン、カリケアマイシン、マイタンシン、トリコテネ、CC1065、ジフテリアA鎖、緑膿菌外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α−サルシン、Aleuritesfordiiタンパク質、ジアンシンタンパク質、Phytolaca americanaタンパク質、モモルジカ・チャランティア阻害物質、クルシン、クロチン、サポナリア・オフィシナリス阻害物質、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、トリコテセン、リボヌクレアーゼ及びデオキシリボヌクレアーゼからなる群より選択される、請求項204又は205に記載の方法。
  207. 前記細胞毒性化合物が、放射性同位体及びプロドラッグ活性化酵素からなる群より選択される、請求項204又は請求項205に記載の方法。
  208. 前記放射性同位体が、211At、131I、125I、90Y、186Re、188Re、153Sm、212Bi、32P、並びにLuの放射性同位体からなる群より選択される、請求項207に記載の方法。
  209. 前記プロドラッグ活性化酵素が、アルカリホスファターゼ、アリールスルファターゼ、シトシンデアミナーゼ、プロテアーゼ、D−アラニルカルボキシペプチダーゼ、炭水化物開裂酵素、P−ラクタマーゼ及びペニシリンアミダーゼからなる群より選択される、請求項207に記載の方法。
  210. 前記リガンドが、該リガンド及び1つ以上の薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む薬学的組成物の形態で前記患者に投与される、請求項183に記載の方法。
  211. 前記リガンド又は組成物が、経口投与、非経口投与、頭蓋内投与、肺内投与及び鼻内投与からなる群より選択される経路を介して前記患者に投与される、請求項183又は請求項210に記載の方法。
  212. 前記リガンド又は組成物が、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与及び皮下投与からなる群より選択される非経腸経路を介して前記患者に投与される、請求項211に記載の方法。
  213. 前記非経腸経路が、注射を介して前記患者に前記リガンド又は組成物を投与することを含む、請求項212に記載の方法。
  214. 患者における原発性の前転移性又は前浸潤性腫瘍の転移性又は浸潤性腫瘍への進行を低減又は予防する方法であって、該前転移性又は前浸潤性腫瘍内の1つ以上の細胞上のインテグリンαβの1つ以上のサブユニットに結合する1つ以上のリガンドの治療有効量を該患者に投与する工程を含み、該リガンドの該インテグリンへの結合が、該患者における該原発腫瘍を囲む組織領域への該前転移性又は前浸潤性癌細胞の浸潤の低減又は予防をもたらす、方法。
  215. 前記前転移性又は前浸潤性腫瘍が癌腫である、請求項214に記載の方法。
  216. 前記癌腫が腺癌である、請求項215に記載の方法。
  217. 前記癌腫が、乳癌腫、子宮内膜癌腫、膵臓癌腫、結腸直腸癌腫、肺癌腫、卵巣癌腫、子宮頚癌腫、前立腺癌腫、肝臓癌腫、食道癌腫、頭頚部癌腫、胃癌腫及び脾臓癌腫からなる群より選択される、請求項215に記載の方法。
  218. 前記癌腫が乳癌腫である、請求項215に記載の方法。
  219. 前記乳癌腫が上皮内乳癌腫である、請求項218に記載の方法。
  220. 前記上皮内乳癌腫が、上皮内腺管癌(DCIS)及び上皮内小葉癌(LCIS)からなる群より選択される、請求項219に記載の方法。
  221. 前記癌腫が子宮内膜癌腫である、請求項215に記載の方法。
  222. 前記癌腫が膵臓癌腫である、請求項215に記載の方法。
  223. 前記癌腫が結腸直腸癌腫である、請求項215に記載の方法。
  224. 前記癌腫が子宮頚癌腫である、請求項215に記載の方法。
  225. 前記癌腫が肺癌腫である、請求項215に記載の方法。
  226. αβインテグリンに結合する前記リガンドが、抗体又はそのαβエピトープ結合フラグメントである、請求項214に記載の方法。
  227. 前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項226に記載の方法。
  228. 前記モノクローナル抗体が、キメラ、霊長類化又はヒト化モノクローナル抗体である、請求項227に記載の方法。
  229. 前記モノクローナル抗体が、2A1、2E5、1A8、2B10、2B1、1G10、7G5、1C5、8G6、3G9、10D5及びCSβ6からなる群より選択される、請求項227に記載の方法。
  230. 前記モノクローナル抗体が3G9である、請求項227に記載の方法。
  231. 前記モノクローナル抗体が8G6である、請求項227に記載の方法。
  232. 前記モノクローナル抗体がヒト化モノクローナル抗体である、請求項227に記載の方法。
  233. 前記ヒト化モノクローナル抗体がhu3G9(BG00011)である、請求項232に記載の方法。
  234. 前記ヒト化モノクローナル抗体がhu8G6である、請求項232に記載の方法。
  235. 前記リガンドが少なくとも1つの細胞毒性化合物にコンジュゲートされる、請求項214に記載の方法。
  236. 前記リガンドが、少なくとも1つの細胞毒性化合物の前記患者への投与と組み合わせて該患者に投与される、請求項214に記載の方法。
  237. 前記細胞毒性化合物が、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、メルファラン、ドキソルビシン、メトトレキセート、5−フルオロウラシル、エトポシド、メクロレタミン、シクロホスファミド、ブレオマイシン、カリケアマイシン、マイタンシン、トリコテネ、CC1065、ジフテリアA鎖、緑膿菌外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α−サルシン、Aleuritesfordiiタンパク質、ジアンシンタンパク質、Phytolaca americanaタンパク質、モモルジカ・チャランティア阻害物質、クルシン、クロチン、サポナリア・オフィシナリス阻害物質、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、トリコテセン、リボヌクレアーゼ及びデオキシリボヌクレアーゼからなる群より選択される、請求項235又は236に記載の方法。
  238. 前記細胞毒性化合物が、放射性同位体及びプロドラッグ活性化酵素からなる群より選択される、請求項235又は請求項236に記載の方法。
  239. 前記放射性同位体が、211At、131I、125I、90Y、186Re、188Re、153Sm、212Bi、32P、並びにLuの放射性同位体からなる群より選択される、請求項238に記載の方法。
  240. 前記プロドラッグ活性化酵素が、アルカリホスファターゼ、アリールスルファターゼ、シトシンデアミナーゼ、プロテアーゼ、D−アラニルカルボキシペプチダーゼ、炭水化物開裂酵素、P−ラクタマーゼ及びペニシリンアミダーゼからなる群より選択される、請求項238に記載の方法。
  241. 前記リガンドが、該リガンド及び1つ以上の薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む薬学的組成物の形態で前記患者に投与される、請求項214に記載の方法。
  242. 前記リガンド又は組成物が、経口投与、非経口投与、頭蓋内投与、肺内投与及び鼻内投与からなる群より選択される経路を介して前記患者に投与される、請求項214又は請求項241に記載の方法。
  243. 前記リガンド又は組成物が、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与及び皮下投与からなる群より選択される非経腸経路を介して前記患者に投与される、請求項242に記載の方法。
  244. 前記非経腸経路が、注射を介して前記患者に前記リガンド又は組成物を投与することを含む、請求項243に記載の方法。
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