JP2009298681A - ルツボ保持部材及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】炭素繊維からなるストランドを軸線Lに対して斜めに織り合わせて中空のメッシュ体13を形成し、このメッシュ体13の軸線方向の一方側17を、一周部19を境に内方又は外方へ折り返し他方側と重ねて二重の開口部23を形成し、且つメッシュ体13の炭素繊維間にマトリクスを充填した。メッシュ体13は、軸線Lに対して傾斜する第一ストランドと、第一ストランドと同角度で逆方向に傾斜する第二ストランドとを有することが好ましい。また、メッシュ体13は、軸線Lと同一面内で織り合わされる縦ストランドを含むものであってもよい。
【選択図】図1
Description
また、等方性黒鉛材の製造工程では静水圧でのプレス工程が必要であり、黒鉛製品の直径の1.5倍程度のCIP(COLD ISOSTATIC PRESS)装置を必要とする。大型のルツボ保持部材に等方性黒鉛材を使用するには、従来のCIP装置では直径が足りず、より大きな装置が必要となる。
シリコンを溶融させると、ルツボ保持部材とそれに内挿される石英ルツボは軟化し、互いに密着する。
しかしながら、引き上げを開始した直後に停電等のトラブルによりシリコン融液が凝固すると、シリコンは凝固に伴い膨張する(約9.6%の体積膨張)性質があるため、石英ルツボ及びルツボ保持部材を押し広げる作用が働く。
(1) 炭素繊維からなるストランドを軸線に対して斜めに織り合わせて中空のメッシュ体を形成し、
該メッシュ体の軸線方向の一方側を、一周部を境に内方又は外方へ折り返し他方側と重ねて二重の開口部を形成し、且つ該メッシュ体の前記炭素繊維間にマトリクスを充填したことを特徴とするルツボ保持部材。
前記軸線である長軸に沿って中央の一周部を境に一方側が、他方側に入り込むように半分に重ね合わされたことを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1つのルツボ保持部材。
長軸に沿って該メッシュ体の中央の一周部を境に一方側が他方側に入り込むように半分に重ね合わせる工程と、
重ね合わせた該メッシュ体の前記炭素繊維間にマトリクスを充填する工程と、
を含むことを特徴とするルツボ保持部材の製造方法。
図1は本発明に係るルツボ保持部材を構成するメッシュ体の断面図、図2は図1に示したメッシュ体の要部拡大正面図である。
本実施の形態に係るルツボ保持部材100は、炭素繊維11で形成されたメッシュ体13と、メッシュ体13の炭素繊維11間に充填されたマトリックスとで構成されている。メッシュ体13は、略円筒形状の胴部12とボウル状の底部14とからなる、有底略カゴ形状を有している。このメッシュ体13は、複数の炭素繊維11を束ねてリボン状としたストランド15を組み糸として3軸織りに織り合わせて形成されている。即ち、メッシュ体13は、メッシュ体13の軸線Lに対して+θ度方向(0<θ<90)に傾斜配向する第一ストランド15Aと、−θ度方向に傾斜配向する第二ストランド15Bと、軸線Lと略平行に配向する縦ストランド15Cとから構成される3軸織り構造を有する。
なお、上記構成では、第一ストランド15Aと第二ストランド15Bをメッシュ体13の軸線Lに対して同角度で逆方向に傾斜配向したが、本発明においては必ずしも同角度である必要はない。但し、同角度に傾斜配向とすることで、製造が容易であると同時に、機械的強度バランスが得られ易い。
ストランド15の形状は、リボン状のほかに棒状等でもよい。また、ストランド15として、エポキシ樹脂等を含浸してサイジング処理したものを用いると、適度な弾力性が得られ、手作業で織り合わせる場合にも均等な周期で織り合わせやすい。
図3は実施の形態に係る製造方法の手順を表すフローチャート、図4は実施の形態に係る製造方法の手順を表す模式図である。
本実施の形態に係るルツボ保持部材100は、主に次の5工程、即ち、製織工程S1と、含浸工程S2と、硬化工程S3と、炭素化工程S4と、高純度化工程S5によって製造することができる。
まず、3軸織りのメッシュ体13(図1)を形成するための図4(a)に示す回転楕円形状の成形型(中子)25を用意する。中子25の材質は、特に限定されないが、後の取り出し工程等において除去することが容易なものを用いることが好ましい。中子25としては、例えば黒鉛、砂等の成形性・破壊性の良好な材料を成形したものの他、袋状に形成した弾性シート材に圧縮空気を封入したものであってもよい。大型のメッシュ体を形成する場合は、複数の黒鉛材片を接着剤で組み合わせて大型の中子25を形成してもよい。中空の中子25を使用すれば軽量であり、取り扱いや、除去が容易である。
また、ストランド15を平面状に織り合せた3軸織物を作製し、これを中子25の周囲に円筒形状に丸めて接着剤等で接合することによってメッシュ体13の胴部12を形成し、さらに、これに3次元ブレイディング法で作製した底部14を接着することによって、メッシュ体13を作製してもよい。
脱脂処理は、通常、非酸化性雰囲気下で150〜400℃程度に加熱することによって行う。なお、この脱脂処理は多量のエポキシ樹脂等を用いてサイジング処理を施したストランド15を使用した場合にのみ実施することが望ましい。
図4(e)に示すように、製織工程S1で形成されたメッシュ体13を、樹脂組成物等からなる未硬化のマトリックス前駆体中に浸して、メッシュ体13にマトリックス前駆体を含浸させた原材を得る。
含浸は常圧で実施しても、加圧して実施してもよい。炭素繊維が細く、含浸するマトリックス前駆体との濡れ性が悪い場合には加圧含浸が有効である。また、マトリックス前駆体が炭素繊維に対して濡れやすいものであれば、塗布や吹き付けるだけであっても十分にストランド中に含浸することができる。
なお、含浸前に真空引きを実施すると、ストランド15の内部に気孔が残りにくく、均質な原材を得ることができる。
次に、図4(f)に示すように、マトリックス前駆体を含浸させたメッシュ体(原材)13を加熱して硬化させる。硬化温度は、マトリックス前駆体の種類等によって適宜設定することができるが、硬化に伴うゲル化反応が激しく発生する温度(概ね100〜150℃前後)に設定する。ガスの拡散が十分にできるように、設定温度付近では昇温速度を落として発生ガスを十分に抜くことが重要である。
図4(g)に示すように、硬化工程S3で得られた原材に含まれる有機物を炭素化し、主に炭素からなるルツボ保持部材100を得る。炭素化工程における処理温度としては、少なくとも600℃程度(有機ガスの放出が収まり始める温度)であることが望ましく、900℃(寸法収縮、ガスの発生が収まる温度)以上であることが特に望ましい。
図4(h)に示すように、炭素化工程S4の方法で得られたルツボ保持部材100を、高純炭化処理して不純物を除去する。高純度化処理は公知の方法によって行うことができる。具体的には、ハロゲンガス、ハロゲン化炭化水素等の雰囲気ガス29中で1500〜3000℃、1時間以上での熱処理によって行うことができる。
接着剤としては、コプナ樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂、ポリイミド樹脂等の炭化収率の高い熱硬化性樹脂のほか、石油系、石炭系等から得られるピッチ等を用いることができる。ストランドの表面に付着したマトリックス接着剤として機能させても良いし、折り返し時に新たに塗布しても良い。
図5は実施の形態に係るルツボ保持部材を用いたシリコン単結晶引き上げ装置を表す断面図である。
シリコン単結晶引上げ装置31は、シリコン融液33を収容する石英ルツボ35と、石英ルツボ35の外周面を外側から取り囲むような状態で保持する、有底カゴ状のルツボ保持部材100とを備えており、これらがサポート37の上に置かれている。ルツボ保持部材100の外周にはヒータ39が配置されており、ヒータ39により石英ルツボ35及びルツボ保持部材100を介してシリコン融液33を加熱しながら、インゴット41を徐々に引き上げ、シリコン単結晶を作製する。
ここでのルツボ保持部材100は、周方向に拡張する力がかかった場合も拡張に追随することができるので、割れや割れに伴って起こる未凝固の融液が流出すること等を防止でき、信頼性を向上させることができる。
傾斜角度θを小さくした場合、シリコン融液33の膨張が起こり横方向(周方向)に伸びても、横方向の伸びに対する縦方向(高さ方向)の収縮率が小さいため、横方向の伸びに容易に追随することができるが、傾斜角度θを大きくした場合、シリコン融液33の膨張が起こり横方向に伸びても、横方向の伸びに対する縦方向の収縮率が大きくなるため、横方向の伸びに容易に追随することができず、各ストランドに強い力がかかり、第一あるいは第二ストランドが破断したり、縦ストランドが座屈しやすくなる。
熱伝導率の低いストランドを形成する炭素繊維としては、例えば一般的な炭素質の炭素繊維(黒鉛質の炭素繊維に対して)等が挙げられる。
また、このような炭素質あるいは黒鉛質のシートを介在させた場合は、石英ルツボ35とルツボ保持部材100が直接触れないため、ルツボ保持部材100が石英ルツボ35との反応による劣化がしにくく、炭素質あるいは黒鉛質のシートのみを交換することによって、繰り返し使用することができるというメリットがある。
本発明は上述した実施の形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施し得るものである。例えば、上記のメッシュ体13は、図6(a),(b)に示すように、軸線L方向の少なくとも一方側17の端部43を開放し、他方側21を閉塞した有底筒状のメッシュ体13A、メッシュ体13Bに形成し、端部43を図6(a)に示す内方又は図6(b)に示す外方へ折り返して構成してもよい。このメッシュ体13A、メッシュ体13Bによれば、筒状に形成されたメッシュ体13A,13Bの開放する端部43が折り返されることで、開口部23が二重構造となり、開口部23の強度が高められるとともに、単層構造の場合のように、ストランド15の切断端が開口部23に位置することによるほつれが生じなくなる。
まず、メッシュ体を作製するための中子を作製する。中子は、弾性シート材を袋状に形成し、内部に圧縮空気を封止し、軸線方向の両端が椀形状になる回転楕円形状(直径1200mm、高さ450mm)として製作した。
次に、24000本の炭素繊維フィラメント(東レ 社製、商品名:T800S24K)からなるリボン状のストランド(第一、第二、縦)をそれぞれ140本用いて中子の外周面に3軸織りのメッシュ体を形成する。中子の外周面がほぼ覆われた状態で、中子を破壊し、未被覆部の開口から破壊済みの中子(弾性シート材)を除去。未被覆部の開口が閉塞するまで3軸織りを完了させ、ストランドの終端を接着処理し、内部が中空となった回転楕円形状のメッシュ体を得た。
次いで、メッシュ体の上半分を内方に折り返すようにして下半分と重ね合わせ、無端状二重構造のカゴ状とした。
次に、非酸化性雰囲気下で、1000℃まで10℃/時間で炭素化した後、2000℃まで高温処理しさらに4時間塩素ガスで高純度化処理を行い、直径約1230mm、高さ550mmのルツボ保持部材を得た。
メッシュ体を作製するための成形型を作製した。黒鉛製の側面板(幅600mm、長さ850mm、厚さ200mm)を6枚用意し、それぞれコーナー部の角度が60°になるよう面取りし、黒鉛材用接着剤(COPNA樹脂)を用いて張り合わせ、中空六角柱を形成する。次に黒鉛製の底板(幅736mm、長さ1700mm、厚さ200mm)を2枚用意し、中空六角柱の端面に黒鉛材用接着剤(COPNA樹脂)を用いて張り合わせ、粗成形型を形成する。そして、この粗成形型の胴部外周面を円筒形状に、底部外周面を椀形状になるように研削加工して成形型(直径1400mm、高さ600mm)を作製する。
その上を、上記実施例1と同様のストランドを用いて形成した平織のクロスで覆う。その際、ストランドが縦方向及び周方向に配向するように配置する。さらに、実施例1と同様にフェノール樹脂形成材料を含浸、硬化、炭素化、高純炭化処理を行う。こうして得られるルツボ保持部材は、上記実施例1にはある斜め方向に配向するストランドがなく、横方向のストランド(以下、横ストランドという)が存在する。
上記実施例1のようにして得られる3軸織無端二重構造のルツボ保持部材の胴部に対して、両方向に歪を加えたときの応力分布状態をSolid works corporation社製Solid Works 2007(登録商標)にてモデリングし、Structura1 Research & Analsis Corporation社製Cosmos Works(登録商標)にて、静解析を実施した。なお、ストランドは、幅10mm、厚さ2mmとし、3軸織の重なり部分は、φ3mmのピンで固定されているものとして3軸織の最小の要素1単位をモデリングした。横方向の歪み量は0.3%、ストランドの弾性率は400GPa、ポアッソン比は0.2とした。
以上の条件にて、解析した応力の結果を図9に示す。横方向にかかった歪が、斜めの第一ストランド72A及び第二ストランド72Bで縦ストランド72Cにも伝達し、全体として応力は均等にかかっていることがわかる。
上記比較例1のようにして得られる平織り状の縦ストランド(高さ方向)と横ストランド(周方向)のメッシュ体からなるルツボ保持部材の胴部に対して周方向に歪を加えたときの応力分布状態について、試験例1と同様に静解析を実施した。なお、ストランドは、幅10mm、厚さ2mmとし、3軸織の重なり部分は、φ3mmのピンで固定されているものとして3軸織の最小の要素1単位をモデリングした。横方向の歪み量は0.3%、ストランドの弾性率は400GPa、ポアッソン比は0.2とした。
以上の条件にて、解析した応力の結果を図10に示す。横方向にかかった歪は、横ストランド82Aのみにかかり、縦ストランド82Cにはほとんど伝達していないことがわかる。このため横ストランド82Aには大きな(応力)張力がかかり、破損しやすいと考えられる。
13 メッシュ体
15 ストランド
15A 第一ストランド
15B 第二ストランド
15C 縦ストランド
17 一方側
19 一周部
21 他方側
23 開口部
25 中子
27 中空
45 接着剤
100 ルツボ保持部材
L 軸線
Claims (8)
- 炭素繊維からなるストランドを軸線に対して斜めに織り合わせて中空のメッシュ体を形成し、
該メッシュ体の軸線方向の一方側を、一周部を境に内方又は外方へ折り返し他方側と重ねて二重の開口部を形成し、且つ該メッシュ体の前記炭素繊維間にマトリクスを充填したことを特徴とするルツボ保持部材。 - 前記メッシュ体が、前記軸線に対して傾斜する第一ストランドと、該第一ストランドと逆方向に傾斜する第二ストランドとを有することを特徴とする請求項1記載のルツボ保持部材。
- 前記メッシュ体が、前記軸線と同一面内で織り合わされる縦ストランドを含むことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のルツボ保持部材。
- 前記メッシュ体が、回転楕円形状に形成され、
前記軸線である長軸に沿って中央の一周部を境に一方側が、他方側に入り込むように半分に重ね合わされたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項記載のルツボ保持部材。 - 前記メッシュ体が、軸線方向の少なくとも一方側の端部を開放する筒状に形成され、該端部が内方又は外方へ折り返されたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項記載のルツボ保持部材。
- 内方又は外方へ折り返された一方側の端部が、接着剤にて他方側に接合されたことを特徴とする請求項5記載のルツボ保持部材。
- 炭素繊維からなるストランドを軸線に対して斜めに織り合わせて回転楕円形状の中空のメッシュ体を形成する工程と、
長軸に沿って該メッシュ体の中央の一周部を境に一方側が他方側に入り込むように半分に重ね合わせる工程と、
重ね合わせた該メッシュ体の前記炭素繊維間にマトリクスを充填する工程と、
を含むことを特徴とするルツボ保持部材の製造方法。 - 中子の外周面にストランドを織り合わせて前記回転楕円形状のメッシュ体を形成した後、前記中子を除去して前記中空を形成することを特徴とする請求項7記載のルツボ保持部材の製造方法。
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