JP2009295822A - 有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス素子 Download PDF

Info

Publication number
JP2009295822A
JP2009295822A JP2008148508A JP2008148508A JP2009295822A JP 2009295822 A JP2009295822 A JP 2009295822A JP 2008148508 A JP2008148508 A JP 2008148508A JP 2008148508 A JP2008148508 A JP 2008148508A JP 2009295822 A JP2009295822 A JP 2009295822A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
organic
layer
cathode
electron injection
electron
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2008148508A
Other languages
English (en)
Inventor
Kenji Okumoto
健二 奥本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Panasonic Corp
Original Assignee
Panasonic Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Panasonic Corp filed Critical Panasonic Corp
Priority to JP2008148508A priority Critical patent/JP2009295822A/ja
Publication of JP2009295822A publication Critical patent/JP2009295822A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Electroluminescent Light Sources (AREA)

Abstract

【課題】高発光効率及び低駆動電圧を実現し、かつ、製造性と安定性に優れた陰極バッファ層を有する有機EL素子を提供する。
【解決手段】陽極12と、金属酸化物からなる透明陰極14と、当該両電極の間に形成された有機層13とを備えた有機EL素子1であって、透明陰極14と有機層13との間に形成され、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のうち少なくとも一方を主成分とする金属であり、有機層13へ電子を注入する電子注入層15と、電子注入層15と透明陰極14との間に形成され、電子輸送性の有機物質からなり膜厚が5nm以上10nm以下である陰極バッファ層16とを備える。
【選択図】図1

Description

本発明は有機エレクトロルミネッセンス素子に関し、特に、ディスプレイデバイス又は照明に用いられる有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
有機物の薄膜を2つの電極で挟み、電圧印加により発光(エレクトロルミネッセンス)が得られる素子は、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と記す)と呼ばれる。有機低分子材料を用いる有機EL素子は1960年代に見出され(非特許文献1)、1980年代に実用的なプロセスと特性の素子構造が開発された(非特許文献2)。低分子材料を用いる有機EL素子は、真空蒸着法によりその有機薄膜を形成することができ、真空プロセスでの不純物やダストの混入が少ない条件下での素子作成が可能であり、長寿命で画素欠陥が少ないという特徴がある。その後1990年代前半には、高分子を用いた有機EL素子が報告されている(非特許文献3)。高分子材料を用いる有機EL素子は、高分子を溶媒に溶解して得られる溶液あるいは分散液を湿式法により塗布することによりその有機薄膜を得ることが可能であり、大気圧下において簡便で材料のロスが少ないプロセスが可能という特徴を有している。いずれの有機EL素子も、自発光で明るい、視野角依存性が小さい、大面積化や微細アレイ化が容易、などの特徴を有しており、ディスプレイの発光源や照明用光源として近年開発が進められている。
図6は、非特許文献2に記載された従来の有機EL素子の構造断面図である。図6に記載された有機EL素子600は、透明基板601と、透明ボトム電極602と、有機層603と、不透明トップ電極604とを備える。透明基板601の上に透明ボトム電極602が積層され、有機層603からの発光が基板側から取り出される構造である。不透明トップ電極604としては金属電極などが用いられ、有機層603からの発光が反射される。以下、有機EL素子600と同様の構造を有する有機EL素子をボトムエミッション有機EL素子と記す。
一方、図7は、有機層からの発光がトップ電極側から取り出される構造を有する従来の有機EL素子(特許文献1等)の構造断面図である。図7に記載された有機EL素子700は、不透明基板701と、不透明ボトム電極702と、有機層703と、透明トップ電極704とを備える。不透明基板701の上に不透明ボトム電極702が積層され、有機層703からの発光が透明トップ電極704から取り出される構造である。以下、有機EL素子700と同様の構造を有する有機EL素子をトップエミッション有機EL素子と記す。
有機EL素子とそれを駆動する薄膜トランジスタ(以下TFTと記す)とからなるアクティブマトリックス型有機ELディスプレイへの適用性を考えた場合、トップエミッション有機EL素子が、ボトムエミッション有機EL素子よりも適性に優れる。なぜならば、ボトムエミッション有機EL素子の場合、発光は基板側から取り出されるので、画素面積に占める有機EL発光部の面積は、基板上の不透明なTFTや電気配線以外の面積に制限されてしまうからである。同時に、画素内のTFTや電気配線の面積は、有機ELの面積確保が優先されるため、なるべく小さくする必要があり、設計の自由度が制約される。
これに対して、トップエミッション有機EL素子の場合、発光は基板と逆側から取り出されるので、基板側のTFT層に重ねて有機EL素子を形成することができ、TFT層の面積を画素面積まで広げることが可能である。これによって、TFTのチャネル幅が拡大されるので有機EL素子に供給される電流量が増大し、あるいは、TFTの数を増加させ電流補償回路を形成することができるので、ディスプレイの面内輝度分布が均一化される。加えて、画素面積に占める有機EL素子の面積の割合が増加するので、単位素子あたりの発光負荷が減少し、ディスプレイの寿命が向上する。
特に、ディスプレイへの応用において利益が大きいトップエミッション有機EL素子では、透明トップ電極704用の電極として、可視光透過性と良好な電導性をあわせもつインジウムスズ酸化物(以下ITOと記す)電極などの金属酸化物系の電極が用いられる。
また、一般に、有機EL素子構造は、ボトム電極が陽極、トップ電極が陰極となる。特に有機高分子材料を用いる有機EL素子の場合には、高分子層はスピンコート法やインクジェット法といった湿式法により形成される。電子を供給する機能を有する陰極として使用されているアルカリ金属やアルカリ土類金属あるいはそれらの塩は、水や酸素と反応し、不安定な状態となりやすい。よって、陰極をボトム電極とした場合、ボトム電極を構成しているアルカリ金属やアルカリ土類金属あるいはそれらの塩が、成膜初期が液層である有機層と反応し、積層界面にて相互溶出や相互拡散が発生するため、積層界面の制御が困難となってしまう。この観点からも、陰極がトップ電極である構造がとられる。
しかし、透明陰極をトップ電極としたトップエミッション有機EL素子には、以下のような問題点がある。
ITOなどの金属酸化物系の透明電極は、その高い仕事関数から、正孔注入特性には優れるが、電子注入は容易ではない。したがって、本来電子注入が容易でないITOなどの金属酸化物系の透明電極から電子を注入するためには、この電極と発光層との間に電子注入を促進する電子注入層を設けることが必要である。
この電子注入層として、アルカリ金属及びアルカリ土類金属が有効に機能することが知られている。ここでアルカリ金属とは、リチウム、ナトリウム、カルシウム、ルビジウム、セシウム、フランシムを指し、アルカリ土類金属とは、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウムを指す。例えば、特許文献2では、高分子発光層上にバリウムからなる金属膜を用いることが開示されている。しかしながら、単純にバリウムからなる電子注入層をITO層と接触させて積層構造にした場合、ITOが酸化性の物質であるために、このITO層に接触するバリウムが酸化されてしまい、電子注入性が著しく低下し、デバイスとして機能しない。
これらの課題を解決するためには、電子注入金属とITOに代表される金属酸化物電極との間に何らかの緩衝層(以後、陰極バッファ層と記す)を設けることが有用である。
この陰極バッファ層の性能要件としては、以下の項目が挙げられる。
(1)金属酸化膜製膜時における下地有機層の保護
(2)金属酸化膜から電子注入層への効率的な電子輸送
(3)EL発光を外部に取り出すための透明性
(4)ITOと電子注入層間の物質拡散防止
特に電子注入層のアルカリ・アルカリ土類金属がITOにより酸化されることを防ぐ。
(5)製造の容易性
従来のトップエミッション有機EL素子用の陰極バッファ層として、例えば特許文献2が開示されている。特許文献2では、低仕事関数の金属が混合された電子輸送性の有機物が透明電極の下に陰極バッファ層として用いられている。低仕事関数の金属が混合されることにより、電子輸送性の有機物質が還元されて(nドープされて)ラジカルアニオン状態を生じ、膜内に自由電子が生じる。よって、透明陰極からの電子注入性が促進されるとともに、陰極バッファ層自体の電導度が高くなる。これは、上記陰極バッファ層の性能要件のうち、(2)を満たすことを意味する。
また、上記陰極バッファ層は、良好な透明性を有する。これは、多くの電子輸送性の有機物質が透明性に優れると共に、混合した金属は酸化されて陽イオン性となっているので、透明性が増すことによる。このことは、上記陰極バッファ層の性能要件のうち、(3)を満たすことを意味する。
さらに、電導度と透明度が高いので、駆動電圧の増大と発光効率の大きな低下がなく膜厚を厚くすることができるので、透明陰極成膜時のプロセスダメージから電子注入層および発光層を守ることができる。これは、上記陰極バッファ層の性能要件のうち、(1)を満たすことを意味する。
M. Popeら、Journal of Chemical Physics 38号 2042〜2043ページ、1963年 C. W. TangとS. A. Vanslyke、Applied Physcs Letters 51号、913〜915ページ、1987年 J. H. Burroughesら、Nature 347号、539〜541ページ、1990年 特開平10−162959号公報 特開2004−127740号公報
しかしながら、特許文献2に記載されたようなnドープ電子輸送層は、nドーパントと電子輸送材料を別々の蒸着源から蒸着する、共蒸着プロセスが必要であり、蒸着レートの不安定性によってドーパント濃度が変化し、デバイス性能を変化させる製造上の問題がある。
また、上記問題を防ぐため、時間をかけて蒸着レートを安定化させる場合、失われる材料の量と時間の浪費が問題となる。nドープ電子輸送層は、前述した性能要件のうち(1)〜(4)に優れるが、(5)に問題がある。
つまり、陰極バッファ層として、従来、電子輸送性の有機物質に還元性の物質を混合した層構成が提案されているが、共蒸着による膜形成が必要であり、製造安定性、材料使用効率および製造時間などの製造上の問題がある。
上記課題に鑑み、本発明は、高発光効率及び低駆動電圧を実現し、かつ、製造性と安定性に優れた陰極バッファ層を有する有機EL素子を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極と、金属酸化物からなる陰極と、前記両電極の間に形成された有機発光層とを備えた有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記陰極と前記有機発光層との間に形成され、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のうち少なくとも一方を主成分とする電子注入層と、前記電子注入層と前記陰極との間に形成され、電子輸送性の有機物質からなり膜厚が5nm以上10nm以下である陰極バッファ層とを備えることを特徴とする。
電子輸送性の有機物質からなる陰極バッファ層から、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のうち少なくとも一方を主成分とする電子注入層への電子注入のエネルギー障壁は小さく、容易に電子注入ができるが、ITOに代表される金属酸化物からなる陰極から、当該陰極バッファ層への注入障壁は非常に大きいため、電子注入は容易でない。当該陰極から当該陰極バッファ層への電子注入を可能とするためには、この界面に電界をかけて、トンネル注入を起こすことが必要であるが、このトンネル注入を起こすためには、電子輸送性の有機物質からなる陰極バッファ層の膜厚が5nm以上10nm以下の条件が最適である。この陰極バッファ層の構成により、電子注入層と陰極との間にnドープされた電子輸送層を形成する必要がないので、nドーパントと電子輸送材料を別々の蒸着源から蒸着する共蒸着プロセスを必要としない。また上記陰極バッファ層は、単一蒸着源を用いた簡便な蒸着プロセスにて形成することができ、当該陰極バッファ層をバリア層とするトンネル注入により陰極から電子注入層への電子輸送性を実現することができる。さらに、膜厚が薄いため、電子注入に必要な電界を形成するための電圧を低く抑えることが可能となる。よって、高発光効率及び低駆動電圧を維持しつつ、製造の容易性と安定性に優れた有機EL素子を実現することができる。
また、前記電子輸送性の有機物質は、ドープされていないことが好ましい。
これにより、電子注入層と陰極との間にドープされた電子輸送層を形成する必要がないので、ドーパントと電子輸送材料を別々の蒸着源から蒸着する、共蒸着プロセスを必要としない。よって、製造の容易性に優れた有機EL素子を実現することができる。
また、前記電子輸送性の有機物質は、有機化合物の金属錯体Alq(アルミキノリノール錯体)、フェナントロリン誘導体であるBCP(バソキュプロイン)、芳香族の含窒素複素環化合物であるTPBI(1,3,5−トリス(N−フェニルベンズイミダゾリル)ベンゼン)、または有機化合物である2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリンであることが好ましい。
これにより、通常有機発光層に使用されている材料を陰極バッファ層として用いることができるので、製造プロセスの簡略化および安定化を実現することができる。
また、前記電子注入層は、前記有機発光層の表面に接して積層されることが好ましい。
これにより、有機発光層の直上に電子輸送機能を有する有機層を積層する必要がないので、材料コストの低減及び成膜工程の簡略化が図られる。
また、前記有機発光層は、高分子有機化合物からなってもよい。
これにより、有機高分子を溶媒に溶解して得られる溶液又は分散液を湿式法により塗布することで有機発光層が得られるので、大気圧下での簡便プロセスを用いることができ、また、材料ロスを低減できる。よって、生産性の向上が図られる。
また、前記陽極、前記有機発光層、前記電子注入層、前記陰極バッファ層および前記陰極は、基板上にこの順で積層され、前記陰極は、光を透過する透明電極であり、前記電子注入層の膜厚は、1nm以上20nm以下であることが好ましい。
これにより、有機発光層の上層側から発光が取り出されるトップエミッション有機EL素子において、有機発光層からの発光が電子注入層で反射されることがなく、かつ、陰極で吸収されることがないので、高い発光効率を得ることが可能となる。
また、本発明は、上記のような特徴を有する有機エレクトロルミネッセンス素子として実現することができるだけでなく、このような有機エレクトロルミネッセンス素子を備えるディスプレイパネルとしても、同様の構成と効果がある。
また、本発明は、このような特徴的な手段を備える有機エレクトロルミネッセンス素子として実現することができるだけでなく、有機エレクトロルミネッセンス素子に含まれる特徴的な手段をステップとする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法として実現することができる。
本発明の有機EL素子およびその製造方法によれば、陰極バッファ層をバリア層とした電子のトンネル注入が実現されるので、低駆動電圧・高発光効率・長寿命といった特性を満たすと共に、製造性に優れた有機EL素子を提供することができる。
本実施の形態における有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と記す)は、陽極と、金属酸化物からなる陰極と、当該両電極の間に形成された有機発光層と、前記陰極と前記有機発光層との間に形成されアルカリ金属又及びアルカリ土類金属のうち少なくとも一方を主成分とする金属であり前記有機発光層へ電子を注入する電子注入層と、前記電子注入層と前記陰極との間に形成され電子輸送性の有機物質からなり膜厚が5nm以上10nm以下である陰極バッファ層とを備える。これより、上記陰極バッファ層は、単一蒸着源を用いた簡便な蒸着プロセスにて形成することができ、当該陰極バッファ層をバリア層とするトンネル注入により陰極から電子注入層への電子輸送性を実現することができる。よって、高発光効率及び低駆動電圧を維持しつつ、製造の容易性と安定性に優れた有機EL素子を実現することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態における有機EL素子の構造断面図である。同図における有機EL素子1は、基板11と、陽極12と、有機層13と、透明陰極14と、電子注入層15と、陰極バッファ層16とを備える。
基板11としては、特に限定されるものではないが、例えば、ガラス基板、石英基板などが用いられる。また、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルホンなどのプラスチック基板を用いて、有機EL素子に曲げ性を付与することもできる。本発明の構造は、これまで述べたように、特に、トップエミッション有機EL素子に対して効果が大きいので、不透明プラスチック基板や金属基板を用いることが可能である。また、基板上に有機ELを駆動するための金属配線やトランジスタ回路が形成されていてもよい。
陽極12としては、特に限定されるものではないが、反射性の金属を用いることが可能である。例えば、銀、アルミニウム、ニッケル、クロム、モリブデン、銅、鉄、白金、タングステン、鉛、錫、アンチモン、ストロンチウム、チタン、マンガン、インジウム、亜鉛、バナジウム、タンタル、ニオブ、ランタン、セリウム、ネオジウム、サマリウム、ユーロピウム、パラジウム、コバルト、シリコンのうちのいずれかの金属、これらの金属の合金、またはそれらを積層したものを用いることが可能である。
有機層13としては、特に限定されるものではないが、陽極12側から順に、正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層が形成されている。正孔注入層は、陽極12から注入された正孔を安定的に、又は正孔の生成を補助して正孔輸送層へ注入する機能を有する。また、正孔輸送層は、正孔注入層から注入された正孔を有機発光層内へ輸送する機能を有する。有機発光層は、正孔と電子が注入され再結合されることにより励起状態が生成され発光する機能を有する。
なお、有機層13は、有機発光層一層でもよく、また、有機発光層を少なくとも一層含む多層が積層されたものでもよい。また、有機層13は、有機発光層を少なくとも一層含めば、無機層を含んでいても良い。また、有機層13は、低分子有機化合物でも、高分子有機化合物でも良い。低分子有機材料は、特に限定されるものではないが、好ましくは抵抗加熱蒸着法で形成される。高分子有機材料は、特に限定されるものではないが、好ましくは、溶液からのスピンキャスト法などに代表されるキャスト法やディップコートなどに代表されるコート法、インクジェット法などに代表される湿式印刷法により形成される。
有機層13として高分子有機化合物を用いることにより、有機高分子を溶媒に溶解して得られる溶液又は分散液を湿式法により塗布することで有機層が得られるので、大気圧下での簡便プロセスを用いることができ、また、材料ロスを低減できる。よって、生産性の向上が図られる。
電子注入層15は、電子の生成を補助して有機層13の有する有機発光層へ電子を注入する機能を有する。また、電子注入層15は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のうち少なくとも一方を主成分とする金属の層であり、アルカリ金属及びアルカリ土類金属を2種類以上含有していてもよい。これには、アルカリ金属とアルカリ土類金属の双方を含有する場合を含む。また、電子注入層15は、特に限定されるものではないが、好ましくはリチウム、ルビジウム、セシウム、カルシウム、バリウムを用いることが可能である。
この層の膜厚としては、好ましくは1nm以上20nm以下、より好ましくは3nm以上7nm以下である。電子注入層15が薄すぎると、電子注入層15の上層の蒸着時、元来潜在している、あるいは外部から侵入する水や酸素によって容易に劣化してしまい、低電圧、高効率の特性を得ることが困難となる。これら水や酸素は、上記上層の蒸着時、あるいは膜内の吸着などの潜在、あるいは外部から侵入してくる経路が考えられ、一般に完全に取り除くことはできない。一方、この層が厚すぎると、これらは基本的に光を透過しない金属膜であるため、有機層で生成した発光を吸収あるいは素子内部に閉じ込めてしまうために、高い発光効率を得ることが困難となる。
なお、電子注入層15には必要に応じて、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素以外に他の材料を混ぜても良い。例えば、アルミニウムなどを含有させて合金化することは電極の安定性を高めることに寄与する。これらは、特に限定されるものではないが、好ましくは、抵抗加熱蒸着法又は電子ビーム蒸着法により形成される。
なお、上記有機発光層の直上に電子注入層15が積層されることにより、電子輸送機能を有する有機層の積層が省略されるので、材料コストの低減及び成膜工程の簡略化が図られる。この構造は、湿式製法による簡略化で低コスト化に利点のある高分子有機発光層を用いる有機エレクトロルミネッセンス素子において特に効果がある。
陰極バッファ層16は、電子輸送性の有機物質を含有する。電子輸送性の有機物質とは、電子アクセプター性を有し陰イオンになりやすい性質と、発生した電子を分子間の電荷移動反応により伝達する性質を併せ持つ。これにより、透明陰極14から電子注入層15までの電荷輸送機能に対して適性がある。また、無ドープ状態の電子輸送性の有機物質は、空気中で一般に安定であり、取り扱いが容易である。
図2(a)は、電子輸送性の有機物質を陰極バッファ層としたときのエネルギーバンド図であり、図2(b)は、正孔輸送性または絶縁性の有機物質を陰極バッファ層としたときのエネルギーバンド図である。図2において、電子注入層15としてバリウムが、また、透明陰極14としてITO(Indium Tin Oxide:インジウムスズ酸化物)が用いられている。
図2(a)において、電子輸送性の有機物質を陰極バッファ層としたときのLUMO(最低非占有分子軌道のエネルギー準位)レベルが、バリウムの仕事関数と、ITOの仕事関数との間に位置するため、電子注入層−透明陰極間に電界をかけたとき、電子が陰極バッファ層をトンネル通過するための障壁高さφ1は、図2(a)の下図のようになる。トンネル注入は、この障壁φ1が低いほど、また、電界をかけるほど発生しやすくなる。
一方、図2(b)において、正孔輸送性または絶縁性の有機物質を陰極バッファ層としたときのLUMOレベルは、バリウムの仕事関数よりも高い準位となる。このため、電子注入層−透明陰極間に電界をかけたとき、電子が陰極バッファ層をトンネル通過するための障壁高さφ2は、図2(b)の下図のようになる。この場合、φ2の障壁が高いため、図2(a)に記載された場合と同様の電界ではトンネル効果が発生せず、さらに大きな電界をかけなければ、トンネル注入は発生しない。
上記比較より、低駆動電圧および良好な電子注入性を有する有機EL素子を実現するためには、陰極バッファ層16として電子輸送性の有機物質が好適であることがわかる。
また、陰極バッファ層16層としては、特に限定されるものではないが、好ましくは可視光の吸収が少ない電子輸送性の有機物質を用いることができる。この例としては、以下の式
Figure 2009295822
で表される有機化合物Alq(アルミキノリノール錯体)のような金属錯体、以下の式
Figure 2009295822
で表される有機化合物(2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン)、フェナントロリン誘導体であるBCP(バソキュプロイン)、及び以下の式
Figure 2009295822
で表される化合物ベンズイミダゾール誘導体であるTPBI(1,3,5−トリス(N−フェニルベンズイミダゾリル)ベンゼン)のような芳香族の含窒素複素環化合物などが挙げられる。
また、その他の電子輸送性の有機物質の例としては、フタロシアニン誘導体、ペリレン誘導体、アントラセン誘導体、イミド誘導体、芳香族シロール誘導体、およびトリアリールボロン誘導体が挙げられる。
また、陰極バッファ層16の膜厚は、化合物によらず、2nm以上15nm以下であることが好ましく、さらに5nm以上10nm以下の範囲であること最適である。5nm以下となると、アルカリ金属またはアルカリ土類金属層を十分に被覆できない可能性が生じ、穴が所々に存在するために、この穴を通して金属酸化物とアルカリ金属またはアルカリ土類金属層が直接接触してしまい金属層が酸化されてしまう可能性がある。すなわち、膜厚5nm以上であることが、透明電極14と電子注入層15との間の拡散防止を満たすための条件として最適である。一方、10nm以上に厚いと、本発明にかかる陰極バッファ層16は、従来例のようにnドープされていないために、電子を透明陰極14から電子注入層15へ注入する効率が低下してしまう。この低下を防止するためには、駆動電圧の大幅な増加が必要である。あるいは、電子注入効率が低下すると、有機EL素子内の正孔と電子の数のバランスが崩れるので発光効率が低下する。
図3は、バリウム、Alq、およびITOをこの順にて積層した場合のエネルギーバンド図である。同図からわかるように、Alqからバリウムへの電子注入のエネルギー障壁は小さく、容易に電子注入ができるが、ITOからAlq層への注入障壁は非常に大きいため、電子注入は容易でない。ITOからAlq層への電子注入を可能とするためには、この界面に所定の電界をかけて、トンネル注入を起こすことが必要である。発明者は、電子輸送性の有機物質を陰極バッファ層16として用いた場合、トンネル注入を起こすためには、10nm以下の条件が最適であることを見出した。すなわち、10nm以下の条件は、金属酸化物である透明陰極14から電子注入層15への効率的な電子輸送を実現するための条件である。
従来では、電子輸送性の有機物質は上記膜厚条件にてトンネル注入を発生させることは見出されていない。
透明陰極14としては、特に限定されるものではないが、ITOやインジウム亜鉛酸化物が用いられる。透明陰極14の製膜方法は特に限定されるものではないが、本発明の陰極バッファ層16は非常に薄いために、前述した陰極バッファ層の性能要件のうち、金属酸化膜である透明陰極14製膜時における下地有機層の保護を満たすことが難しい。したがって、下地層への影響が少ない透明陰極14の形成方法と本発明の構造との親和性が必要となる。このような透明陰極14の製造方法として、対向ターゲットスパッタ法やプラズマアシスト蒸着法などが挙げられる。これらの製造方法を用いることにより、下地の陰極バッファ層が5nm以上10nm以下という極薄膜でも、当該陰極バッファ層にダメージを与えることなく、電子注入層への良好なトンネル注入が実現される。
本発明の有機EL素子の構造について、電子注入層15、陰極バッファ層16、および透明陰極14が、それぞれの単一蒸着源を用いて順次真空蒸着法で製膜される製造方法を適用することができ、この場合には共蒸着による同時製膜工程がないので、製造性を向上させることが可能となる。
なお、本発明の有機EL素子の構造において、電子注入層への良好な電子輸送が生じる基本原理として、電子注入層15と透明陰極14とを両電極とし、陰極バッファ層16をバリア層としたトンネル効果による電子注入を説明した。しかしながら、陰極バッファ層16での当該電子輸送は、トンネル効果による電子注入以外に、トンネル効果による電子注入ではない通常の電子注入、および陰極バッファ層16内での電荷移動によるものを含んでいてもよい。
次に、実施例及び比較例を挙げながら本発明を説明する。
(実施例1)
図4は、本発明に係る実施例1における有機EL素子の製造方法を説明する工程図である。まず、ガラス基板111(松浪ガラス製平坦ガラスを使用)表面上に、スパッタ法によりモリブデン97%、クロム3%からなる膜厚100nmの合金電極121を形成した。そして、合金電極121を所定の陽極形状にフォトリソグラフィ法によりパターニングした。次に、パターニングされた合金電極121表面上に、スパッタ法により膜厚60nmのインジウムスズ酸化物電極を補助陽極122として形成し、所定の陽極形状となるようフォトリソグラフィ法によりパターニングした(図4(a))。パターニングされた合金電極121及び補助陽極122は、陽極としての機能を有する。
次に、有機層として、以下の3層を形成した。まず、パターニングされた補助陽極122表面上にスピンコート法によりポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT:ティーエーケミカル製Baytron P AI 4083)を形成した後、ホットプレート上で200℃、10分間加熱して膜厚60nmの正孔注入層131を形成した。次に、正孔注入層131の表面上に、スピンコート法によりHT12(サメイション製)のトルエン溶液を形成した後、窒素中ホットプレート上で200℃、30分間加熱して膜厚20nmの正孔輸送層132を形成した。次に、正孔輸送層132の表面上に、スピンコート法によりLumation Green(サメイション製)のキシレン溶液を形成した後、ホットプレート上で130℃、10分加熱して膜厚70nmの有機発光層133を形成した(図4(b))。
次に、有機発光層133の表面上に、真空蒸着法によりバリウム(アルドリッチ製、純度99%以上)を蒸着することにより、膜厚5nmの電子注入層151を形成した(図4(c))。
次に、電子注入層151の表面上に真空蒸着法により化1に記載されたAlq(新日鐵化学製)を蒸着することにより、膜厚5nmの陰極バッファ層161を形成した(図4(d))。
次に、陰極バッファ層161の表面上に、プラズマアシストの蒸着法(住友重工業製製膜装置を使用)によりインジウムスズ酸化物層を蒸着し、膜厚100nmの透明陰極141を形成した(図4(e))。
最後に、図4には図示していないが、透明陰極141が形成された有機EL素子の空気中での評価を可能とするために、水および酸素濃度が1ppm以下の窒素ドライボックス中で素子のガラス缶封止を行った。
(実施例2)
本発明に係る実施例2における有機EL素子の製造方法は、図4に記載された陰極バッファ層161の膜厚を5nmから10nmへ変更して陰極バッファ層として形成したこと以外は、実施例1と同様にして形成した。
(実施例3)
本発明に係る実施例3における有機EL素子の製造方法は、図4に記載された陰極バッファ層161の代わりに、化2に記載された化合物BCP(アルドリッチ製)を真空蒸着法により膜厚5nmの陰極バッファ層として形成したこと以外は、実施例1と同様にして形成した。
(実施例4)
本発明に係る実施例4における有機EL素子の製造方法は、図4に記載された陰極バッファ層161の代わりに、化2に記載された化合物BCP(アルドリッチ製)を真空蒸着法により膜厚10nmの陰極バッファ層として形成したこと以外は、実施例1と同様にして形成した。
(実施例5)
本発明に係る実施例5における有機EL素子の製造方法は、図4に記載された陰極バッファ層161の代わりに、化3に記載された化合物TPBI(Sensient Imaging Technologies製)を真空蒸着法により膜厚5nmの陰極バッファ層として形成したこと以外は、実施例1と同様にして形成した。
(実施例6)
本発明に係る実施例6における有機EL素子の製造方法は、図4に記載された陰極バッファ層161の代わりに、化3に記載された化合物TPBI(Sensient Imaging Technologies製)を真空蒸着法により膜厚10nmの陰極バッファ層として形成したこと以外は、実施例1と同様にして形成した。
(比較例1)
比較例1における有機EL素子の製造方法は、図4に記載された陰極バッファ層161を積層しないで(図4(d)を実行せずに)、電子注入層であるバリウム層表面上に透明電極であるITOを直接形成したこと以外は、実施例1と同様にして形成した。
(比較例2)
本発明に係る比較例2における有機EL素子の製造方法は、図4に記載された陰極バッファ層161の膜厚を5nmから2nmへ変更して陰極バッファ層として形成したこと以外は、実施例1と同様にして形成した。
(比較例3)
本発明に係る比較例3における有機EL素子の製造方法は、図4に記載された陰極バッファ層161の膜厚を5nmから15nmへ変更して陰極バッファ層として形成したこと以外は、実施例1と同様にして形成した。
(比較例4)
本発明に係る比較例4における有機EL素子の製造方法は、図4に記載された陰極バッファ層161の膜厚を5nmから20nmへ変更して陰極バッファ層として形成したこと以外は、実施例1と同様にして形成した。
(実施例及び比較例の評価)
以上の実施例1〜6及び比較例1〜4では、合金電極121及び補助陽極122を正、透明陰極141を負として10mA/cm2の電流を素子に流したときの駆動電圧と輝度とを測定することにより、このときの駆動電圧及び発光効率を求めた。さらに、これらの素子を4000cd/m2で発光させ、一定電流で駆動し続けたときの輝度の減衰を測定し、輝度が半減(2000cd/m2)したときの時間を素子寿命とした。表1は、実施例1〜6及び比較例1〜4のそれぞれの評価結果である。
Figure 2009295822
表1において、合金電極の膜厚は全て100nm、補助電極の膜厚は全て60nm、正孔注入層の膜厚は全て80nm、正孔輸送層の膜厚は全て20nm、有機発光層の膜厚は全て75nm、電子注入層の膜厚は全て5nm、透明電極の膜厚は全て100nmである。
比較例1における陰極バッファ層161を省略した有機EL素子は、素子作製直後は中程度の発光効率で発光するものの、透明陰極であるITOによって電子注入層であるBaが短時間で酸化されてしまい、1時間程度で発光輝度は半減してしまう。従って、本発明の効果を得るためには、陰極バッファ層は欠かせない。
実施例1において、Alqを5nm積層した有機EL素子は、比較例1の有機EL素子よりも高い発光効率で発光し、かつ素子寿命が非常に長くなり、良好な発光効率および長寿命特性を有する。
実施例2において、Alqを10nmまで厚くした有機EL素子においても、駆動電圧が実施例1よりも1V程度高くなるものの、発光効率は同程度であり、寿命は比較例1よりも若干長くなり、良好な発光効率および長寿命特性を有する。
実施例3〜6において、Alq以外の電子輸送材料としてBCPあるいはTPBIを用いた場合も、実施例1および2におけるAlqと同等の結果が得られた。
これらの実施例では、本発明の陰極バッファ層の範囲の上限と下限の値での検討を行ったが、その中間の値では、その中間程度の特性を有するものと推察される。
陰極バッファ層Alqの膜厚を本発明の領域よりも薄くした比較例2においては、実施例1と比較して駆動電圧は同程度であるものの、発光効率は半分程度になる。これは、陰極バッファ層Alqの膜厚が5nmよりも薄い場合、このバッファ層がBa層を完全に被覆することができず、所々穴があいている可能性があり、陰極のITOとBaが直接接触する箇所の存在によるものと推察される。この穴を通ってITOの酸素がBaを徐々に酸化していくために素子の寿命が比較的短いと推察される。
陰極バッファ層Alqの膜厚を本発明の領域よりも厚くした比較例3と4においては、実施例1と比較して駆動電圧がこの順で高くなり、また発光効率が低下していく。これは、陰極バッファ層Alqの膜厚が10nmよりも厚い場合、陰極のITO電極からBa電極への電子注入効率が極端に下がってしまい、駆動電圧を引き上げ、また正孔と電子のバランスが崩れるために発光効率は低下してしまう。発光効率の低下は、同輝度を得るための電流値の増加を意味する。有機ELの寿命は、流れる電流量に依存するので、輝度半減寿命は低下する。
実施例1および2と比較例2〜4の結果から、有機ELの低駆動電圧、高発光効率と長寿命の観点から、陰極バッファ層の膜厚は、5nm以上10nm以下が最適であることがわかる。
ディスプレイデバイスとしての有機EL素子にとっては、その性能評価項目である発光効率、駆動電圧の初期性能を維持して、経時劣化を極力抑制することが必要である。よって、比較例1のように、陰極バッファ層が設けられず、電子注入層のみが、有機発光層と透明陰極との間に形成されている素子は、発光効率が十分でなく、経時劣化が大きいので、ディスプレイデバイスとしての有機EL素子の要求性能を満足しない。
一方、実施例1〜6のように、有機発光層と透明陰極との間に、上述した電子注入層と陰極バッファ層とがこの順で形成されている場合に、初期性能を維持して経時劣化が極力抑制された有機EL素子が、簡便な製膜プロセスにより実現される。
以上のように、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、陰極をトップ電極とする構造の場合に、下層である有機発光層と上層である陰極との間に、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のうち少なくとも一方を主成分とする電子注入層と、膜厚が5nm以上10nm以下である電子輸送性の有機物質からなる陰極バッファ層とがこの順で積層される構成をとる。この構成をとることにより、電子注入層と陰極との間にnドープされた電子輸送層を形成する必要がないので、nドーパントと電子輸送材料を別々の蒸着源から蒸着する、共蒸着プロセスを必要としない。また上記陰極バッファ層は、単一蒸着源を用いた簡便な蒸着プロセスにて形成することができ、当該陰極バッファ層をバリア層とするトンネル注入により陰極から電子注入層への電子輸送性を実現することができる。さらに、膜厚が薄いため、電子注入に必要な電界を形成するための電圧を低く抑えることが可能となる。よって、高発光効率及び低駆動電圧を維持しつつ、製造の容易性と安定性に優れた有機EL素子を実現することができる。
なお、本発明の実施の形態において、正孔注入層、正孔輸送層および有機発光層に高分子有機材料が用いられた例を示したが、これらに低分子有機材料が用いられても、本検討と同様な効果が得られる。
また、有機層の組み合わせとしては、本実施の形態で例示されたものに限定されるものではなく、たとえば、正孔注入層が省略されることや電子輸送層が挿入されてもよい。
また、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属からなる電子注入層と有機発光層との間にさらに別の層が設けられても良い。例えば、電子輸送性の有機材料からなる層が挿入されることが挙げられる。
なお、これまでの本発明の構成は、トップエミッション用有機EL素子の構成として述べてきたが、ボトムエミッション用有機EL素子のトップ電極が陰極である場合の構成の一部としても好適に用いることができる。例えば、有機発光層の上のBa/Alq/Alなどの構成が挙げられる。この場合、有機発光層より上層の陰極側には透明性は要求されないが、電子注入機能、電子輸送機能、及びAl成膜時のダメージから有機発光層を防御する機能が要求される。よって、本発明の電子注入層及び陰極バッファ層は、トップエミッション用有機EL素子として使用される場合と同様、ボトムエミッション用有機EL素子として使用される場合にも十分な効果を奏する。
なお、本発明の有機EL素子の有する電極は、基板上の全面あるいは大部分に一様に形成されていてもよい。この場合は、大面積発光が得られるので照明などの用途に用いることができる。あるいは、この電極は、特定の図形や文字を表示できるようにパターン化されていても良い。この場合は、特性のパターン状の発光が得られるので広告表示などに用いることができる。あるいは、この電極は、行列状に多数配置されていても良い。この場合は、パッシブ駆動のディスプレイパネルなどの用途に用いることができる。あるいは、この電極は、トランジスタアレイを並べた基板上で、このトランジスタアレイに対応する形で電気的な接続を得られるように形成されていてもよい。この場合は、図5に記載されたTVに代表されるように、アクティブ駆動のディスプレイパネルなどの用途に用いることができる。
以上、本発明の有機EL素子及びその製造方法について、実施の形態及び実施例に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施の形態及び実施例に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものも、本発明の範囲内に含まれる。
本発明にかかる有機EL素子は、低駆動電圧、高効率、長寿命、および製造コストが低いことから、ディスプレイデバイスの画素発光源、液晶ディスプレイのバックライト、各種照明用光源、光デバイスの光源等として有用であり、特に、TFTと組み合わせたアクティブマトリックス有機ELディスプレイへの応用に適性がある。
本発明の実施の形態における有機EL素子の構造断面図である。 (a)は電子輸送性の有機物質を陰極バッファ層としたときのエネルギーバンド図である。(b)は、正孔輸送性または絶縁性の有機物質を陰極バッファ層としたときのエネルギーバンド図である。 バリウム、Alq、およびITOをこの順にて積層した場合のエネルギーバンド図である。 本発明に係る実施例1における有機EL素子の製造方法を説明する工程図である。 本発明の有機EL素子が用いられるTVの外観図である。 非特許文献2に記載された従来の有機EL素子の構造断面図である。 有機層からの発光がトップ電極側から取り出される構造を有する従来の有機EL素子の構造断面図である。
符号の説明
1、600、700 有機EL素子
11 基板
12 陽極
13、603、703 有機層
14、141 透明陰極
15、151 電子注入層
16、161 陰極バッファ層
111 ガラス基板
121 合金電極
122 補助陽極
131 正孔注入層
132 正孔輸送層
133 有機発光層
601 透明基板
602 透明ボトム電極
604 不透明トップ電極
701 不透明基板
702 不透明ボトム電極
704 透明トップ電極

Claims (9)

  1. 陽極と、金属酸化物からなる陰極と、前記両電極の間に形成された有機発光層とを備えた有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
    前記陰極と前記有機発光層との間に形成され、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のうち少なくとも一方を主成分とする電子注入層と、
    前記電子注入層と前記陰極との間に形成され、電子輸送性の有機物質からなり膜厚が5nm以上10nm以下である陰極バッファ層とを備える
    ことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  2. 前記電子輸送性の有機物質は、ドープされていない
    ことを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  3. 前記電子輸送性の有機物質は、有機化合物の金属錯体Alq(アルミキノリノール錯体)、フェナントロリン誘導体であるBCP(バソキュプロイン)、芳香族の含窒素複素環化合物であるTPBI(1,3,5−トリス(N−フェニルベンズイミダゾリル)ベンゼン)、または有機化合物である2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリンである
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  4. 前記電子注入層は、前記有機発光層の表面に接して積層される
    ことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  5. 前記有機発光層は、高分子有機化合物からなる
    ことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  6. 前記陽極、前記有機発光層、前記電子注入層、前記陰極バッファ層および前記陰極は、基板上にこの順で積層され、
    前記陰極は、光を透過する透明電極であり、
    前記電子注入層の膜厚は、1nm以上20nm以下である
    ことを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  7. 請求項1〜6のうちいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備える
    ことを特徴とするディスプレイパネル。
  8. 基板上に、陽極と、有機発光層と、陰極とが順次積層された有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
    前記有機発光層の上に、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のうち少なくとも一方を主成分とする金属を、単一蒸着源を用いて真空蒸着法で製膜することにより、前記有機発光層に電子を注入する電子注入層を積層する電子注入層積層ステップと、
    前記電子注入層の上に、電子輸送性の有機物質を、単一蒸着源を用いて真空蒸着法で製膜することにより、膜厚が5nm以上10nm以下である陰極バッファ層を積層する陰極バッファ層積層ステップと、
    前記陰極バッファ層の上に、金属酸化物を製膜することにより前記陰極を積層する陰極積層ステップとを含む
    ことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  9. 前記陰極積層ステップでは、
    前記金属酸化物を、対向ターゲットスパッタ法またはプラズマアシスト蒸着法により製膜する
    ことを特徴とする請求項8記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
JP2008148508A 2008-06-05 2008-06-05 有機エレクトロルミネッセンス素子 Pending JP2009295822A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008148508A JP2009295822A (ja) 2008-06-05 2008-06-05 有機エレクトロルミネッセンス素子

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008148508A JP2009295822A (ja) 2008-06-05 2008-06-05 有機エレクトロルミネッセンス素子

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2009295822A true JP2009295822A (ja) 2009-12-17

Family

ID=41543739

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008148508A Pending JP2009295822A (ja) 2008-06-05 2008-06-05 有機エレクトロルミネッセンス素子

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2009295822A (ja)

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2012039294A1 (ja) * 2010-09-21 2012-03-29 三井金属鉱業株式会社 電極箔および有機デバイス
CN102976960A (zh) * 2012-11-14 2013-03-20 华南理工大学 含有线性共轭单元的阴极缓冲层分子型材料及其制备方法与应用
JP2014503944A (ja) * 2010-12-07 2014-02-13 フオン・アルデンネ・アンラーゲンテヒニク・ゲゼルシヤフト・ミト・ベシユレンクテル・ハフツング 有機発光体を製造するための方法
KR101371407B1 (ko) * 2010-04-27 2014-03-12 포항공과대학교 산학협력단 전면 발광형 유기 발광 다이오드 및 그 제조 방법
JP2014049696A (ja) * 2012-09-03 2014-03-17 Nippon Hoso Kyokai <Nhk> 有機電界発光素子
JP2020024980A (ja) * 2018-08-06 2020-02-13 日本放送協会 有機薄膜および有機薄膜の製造方法、有機エレクトロルミネッセンス素子およびその製造方法、表示装置、照明装置、有機薄膜太陽電池、薄膜トランジスタ

Cited By (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR101371407B1 (ko) * 2010-04-27 2014-03-12 포항공과대학교 산학협력단 전면 발광형 유기 발광 다이오드 및 그 제조 방법
WO2012039294A1 (ja) * 2010-09-21 2012-03-29 三井金属鉱業株式会社 電極箔および有機デバイス
JP2012069286A (ja) * 2010-09-21 2012-04-05 Mitsui Mining & Smelting Co Ltd 電極箔および有機デバイス
US8586976B2 (en) 2010-09-21 2013-11-19 Mitsui Mining & Smelting Co., Ltd. Electrode foil and organic device
JP2014503944A (ja) * 2010-12-07 2014-02-13 フオン・アルデンネ・アンラーゲンテヒニク・ゲゼルシヤフト・ミト・ベシユレンクテル・ハフツング 有機発光体を製造するための方法
US8741669B2 (en) 2010-12-07 2014-06-03 Von Ardenne Anlagentechnik Gmbh Method for the production of an organic light emitting illuminant
JP2014049696A (ja) * 2012-09-03 2014-03-17 Nippon Hoso Kyokai <Nhk> 有機電界発光素子
CN102976960A (zh) * 2012-11-14 2013-03-20 华南理工大学 含有线性共轭单元的阴极缓冲层分子型材料及其制备方法与应用
JP2020024980A (ja) * 2018-08-06 2020-02-13 日本放送協会 有機薄膜および有機薄膜の製造方法、有機エレクトロルミネッセンス素子およびその製造方法、表示装置、照明装置、有機薄膜太陽電池、薄膜トランジスタ
JP7108493B2 (ja) 2018-08-06 2022-07-28 日本放送協会 有機薄膜および有機薄膜の製造方法、有機エレクトロルミネッセンス素子およびその製造方法、表示装置、照明装置、有機薄膜太陽電池、薄膜トランジスタ

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5624459B2 (ja) 有機エレクトロルミネッセンス素子
JP2011522391A (ja) 有機エレクトロルミネッセンス素子
JP4736890B2 (ja) 有機エレクトロルミネッセンス素子
TWI445445B (zh) 有機發光裝置及其製造方法
JP4852660B2 (ja) 有機エレクトロルミネッセンス表示装置及びその製造方法
EP1801882B1 (en) Organic luminescence display device and method of manufacturing the same
JP5180369B2 (ja) 有機エレクトロルミネッセント素子
US8497497B2 (en) Organic electroluminescent element, method for manufacturing the organic electroluminescent element, and light emitting display device
WO2007123061A1 (ja) 有機発光素子
JP2005032618A (ja) 有機el素子
JP3943548B2 (ja) エレクトロルミネセンス・デバイス
US8962382B2 (en) Fabrication method for organic light emitting device and organic light emitting device fabricated by the same method
JP2009295822A (ja) 有機エレクトロルミネッセンス素子
JP5254208B2 (ja) 発光装置
JP2006114844A (ja) 有機el素子材料の選択方法、有機el素子の製造方法及び有機el素子
KR100796588B1 (ko) 유기전계발광소자의 제조방법
WO2011030378A1 (ja) 有機el素子及びその製造方法
KR20090098930A (ko) 유기 발광 메모리 소자
KR20080011623A (ko) 전계발광소자 및 그 제조방법
JP4817755B2 (ja) 発光素子および発光装置
JPWO2004068913A1 (ja) 発光素子およびその作製方法
KR100747310B1 (ko) 유기전계발광소자
WO2018211776A1 (ja) 有機エレクトロルミネッセンス素子およびその製造方法
JP2005235564A (ja) 有機elデバイス
JP2007035932A (ja) 有機el素子