JP2009295788A - 圧電素子および圧電素子を用いた力センサならびに力センサを用いた流量計 - Google Patents

圧電素子および圧電素子を用いた力センサならびに力センサを用いた流量計 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、パラレル型バイモルフ素子のように高出力を得、かつシリーズ型バイモルフ素子のように差動アンプ回路での同相ノイズの除去が容易な、圧電素子を提供する。
【解決手段】複数の電極層と圧電体とから構成される2つの積層体の間に、絶縁性の材料からなるシム材を挟んで固着することで、電荷の取り出し面を広く確保する。また、侵入したノイズが電気的に2個の極性間で等しくなるような電極構造とする。
【選択図】図1-A

Description

本発明は、水などの流体の流量を測定するためのカルマン渦流量計に関わり、特に、当該流量計の入力回路を構成する際に用いられる圧電素子および圧電素子を用いた力センサならびに力センサを用いた流量計に関するものである。
流体の流量を測定する装置の一つにカルマン渦式流量計がある。この流量計は、渦発生体によって発生させた渦に起因して、流速に応じた信号を発信する力センサを備えており、当該力センサは圧電素子によって構成されている。
現在、広く利用されている圧電素子にバイモルフ圧電素子がある。このバイモルフ圧電素子は、セラミックスや水晶などからなる2枚の平板状の圧電体により、中間に補強板としてのシム材を挟持した構造を有する。前記シム材は中間電極としての機能も兼ねており、導電性の金属板などが一般的に使用される。
従来のバイモルフ圧電素子は、シリーズ型バイモルフ素子とパラレル型バイモルフ素子に分類される。図2-Aはシリーズ型バイモルフの素子構造を、図3-Aはパラレル型バイモルフの素子構造を、それぞれ示している。
なお、以下の説明では、従来のバイモルフ圧電素子を力センサとして利用する場合を例にしているが、バイモルフ圧電素子の用途は力センサに限定されるものではなく、同様の構成でアクチュエータとしても利用される。また、本明細書中で「分極している」とは圧電性を有していることと同じ意味であり、「分極処理」とは、外部から電界を加えてドメイン・スイッチングを生じさせることで圧電性を持たせる処理を意味する。さらに、「分極方向」とは、力センサの場合において、圧電体に変形を加えた場合に発生する電荷の極性方向を意味するものとする。
図2-Aにおいて、2枚の平板状の圧電体120,122は、一方の主面にそれぞれ電
極層102,104が形成され、もう一方の主面でシム材と呼称される平板状部材140に接合される。圧電体120,122は、厚み方向に分極しており、互いの分極方向Pが逆向きになるように積層されている。なお、図中の記号Tは圧電体の変形方向を示している。
圧電体120,122の材料としては、一般に分極処理をして圧電性を持たせたチタン酸バリウム、チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛、ニオブ酸鉛などのセラミックスや、単結晶の圧電材料である水晶やニオブ酸リチウム、高分子材料であるPVDFなどが用いられている。また、シム材140は中間電極層としての機能も兼ねており、材料としては、チタン,ステンレス,りん青銅等の金属が用いられている。
図3-Aにおいて、2枚の平板状の圧電体220,222は、一方の主面にそれぞれ電
極層202,204が形成され、もう一方の主面側でシム材と呼称される平板状部材240に接合される。圧電体220,222は、厚み方向に分極しており、互いの分極方向Pが同じ向きになるように積層されている。また、電極層202,204は、導線等によって電気的に接続される。
なお、図中の記号Tは圧電体の変形方向を示している。また、圧電体及びシム材の材料に関しては、シリーズ型バイモルフ素子と同様である。
以下に、シリーズ型バイモルフ素子とパラレル型バイモルフ素子から得られる電荷量について説明する。図2-Bはシリーズ型バイモルフ素子における発生電荷量を、図3-Bはパラレル型バイモルフ素子における発生電荷量を、それぞれ模式的に示したものである。なお、以下の説明において、前記2つのバイモルフ素子は、同材料および同形状の圧電体を備えるものとする。
前記2つのバイモルフ素子の圧電体内に同じ応力を生じさせた場合に得られる電荷量は、パラレル型バイモルフ素子の方が多い。これは、シリーズ型バイモルフ素子ではシム材140から電荷を取り出すことができないのに対し、パラレル型バイモルフ素子ではシム材240からも電荷を取り出せる構造となっているためである。例えば、図2-Bおよび
図3-Bにおいて、シリーズ型バイモルフ素子から得られる電荷量を4とした場合に、パ
ラレル型バイモルフ素子から得られる電荷量は8となる。
次に、シリーズ型バイモルフ素子とパラレル型バイモルフ素子におけるノイズ侵入量について説明する。図2-Cはシリーズ型バイモルフ素子におけるノイズ侵入量を、図3-Cはパラレル型バイモルフ素子におけるノイズ侵入量を、それぞれ模式的に示したものである。なお、以下の説明において、電極層102,104,202,204は同一形状であるものとし、またシム材140と240も同一形状であるものとする。
渦流量計に用いられた圧電素子において、ノイズは、電圧を帯びた測定流体と電極層との間に電気容量が発生することで電極層へ侵入する。電気容量は、電極層と測定流体とが近接する部分の面積に比例するから、一方の主面が露出する上面および下面の電極層と、両方の主面が圧電体などに固着される中間の電極層とでは、ノイズ侵入量は異なる。
例えば、図2-Cにおいて、測定流体と電極層との電位差をV、測定流体と電極層10
2,104との間の電気容量をそれぞれC102,C104、電極層102,104から侵入するノイズ量をそれぞれN102,N104とすると、
N102=V×C102
N104=V×C104
の関係式が成立し、
C102≒C104
であるから、
N102≒N104
となり、電極層102,104から侵入するノイズ量は略同一となる。
一方、図3-Cにおいて、測定流体と電極層との電位差をV、測定流体と電極層202
,204との間の電気容量をそれぞれC202,C204、中間電極層も兼ねるシム材240との間の電気容量をC240、電極層202,204から侵入するノイズ量をそれぞれN202、シム材240から侵入するノイズ量をN240とすると、
N202=V×(C202+C204)
N240=V×C240
の関係式が成立し、
C202≒C204≠C240
であるから、
N202≠N240
となり、電極層202とシム材240から侵入するノイズ量は異なる。
圧電素子において、各極性における同相ノイズの侵入量が略同一であれば、差動アンプ回路において同相ノイズをキャンセルすることができる。例えば、特許文献1には、圧電
素子を備えた渦流量計の入力回路において、同相ノイズが差動アンプ回路によりキャンセルされるように構成された入力回路が開示されている。
特開平11−258017号公報 特開平4−346034号広報
しかしながら、シリーズ型バイモルフ素子では、各極性におけるノイズ侵入量が略同一となるため、前記差動アンプ回路によって同相ノイズのキャンセルが容易であるが、一方、パラレル型バイモルフ素子では、各極性におけるノイズ侵入量が異なるため、前記差動アンプ回路での同相ノイズのキャンセルは困難である。
このため、特許文献2には、パラレル型バイモルフ素子を備えたカルマン渦流量計において、圧電体をシールドすることによってノイズを除去する手段が、本出願人によって開示されている。しかし、特許文献2に記載のノイズ除去手段は、用途によってはシールドを設けられない場合がある。
本発明は、パラレル型バイモルフ素子のように高出力を得、かつシリーズ型バイモルフ素子のように差動アンプ回路での同相ノイズの除去が容易な、圧電素子を提供することを目的とする。
本発明は、前述したような従来技術における課題および目的を達成するために発明されたものであって、本発明の圧電素子は、
2つの積層体と当該2つの積層体の主面間に挟まれて固着されるシム材とから構成される圧電素子であって、
前記シム材は絶縁性の材料からなり、
前記積層体は、少なくとも1つ以上の圧電体と、当該圧電体の両主面を挟持するように電極層が積層して構成され、
前記シム材が前記2つの積層体に挟まれて固着された状態において、
圧電体またはシム材を介して隣り合って対向する電極層の電気的極性が各々逆となるように、前記圧電体が配置されていることを特徴とする。
上記発明において、前記圧電体は厚み方向に分極していることが好ましい。
また、上記発明において、本発明の圧電素子は、
前記シム材が前記2つの積層体に挟まれて固着された状態において、
電極層または電極層とシム材を介して隣り合って対向する圧電体の分極方向が各々逆方向となるように前記圧電体が配置されることで、圧電体またはシム材を介して隣り合って対向する電極層の電気的極性が各々逆となることを特徴とする。
さらに、上記発明において、本発明の圧電素子は、
前記シム材が前記2つの積層体に挟まれて固着された状態において、
電極層を介して隣り合って対向する圧電体の分極方向が各々逆方向で、かつ電極層とシム材を介して隣り合って対向する圧電体の分極方向が同じ方向となるように前記圧電体が配置されることで、圧電体またはシム材を介して隣り合って対向する電極層の電気的極性が各々逆となることを特徴とする。
上記発明において、前記2つの積層体が備える圧電体を各々1つとすることで、素子全体として2つの圧電体を備えたバイモルフ素子を構成することができる。
また、上記発明において、前記シム材は圧電体と同材料で構成されているのが好ましく、特にセラミックスまたは単結晶の圧電材料または高分子材料からなることが好ましい。
さらに、上記発明において、前記電極層の主面の面積は略同一であることが好ましく、特に前記電極層の形状も略同一であることが好ましい。また、前記電極層が前記圧電体または前記シム材に印刷されることにより形成されることが好ましく、さらに、前記シム材が前記2つの積層体に挟まれて固着された状態において、前記シム材の主面に接する電極層の一部が露出していることが好ましい。
また、上記発明において、前記電極層の各々が、圧電体またはシム材を介して隣り合って対向する電極層とは導通されず、かつ、圧電体またはシム材を介して隣り合って対向する電極層以外の電極層に導通されることで、全体として、陽極電極層群と陰極電極層群との2つの電極層のグループを形成することが好ましい。
また、本発明の力センサは、
2つのチャージアンプ回路と、
前記チャージアンプ回路からの信号を受ける差動アンプ回路とを備え、
前記圧電素子の陽極電極層群と陰極電極層群からの信号をそれぞれチャージアンプ回路に入力するように構成されていることを特徴とする。
また、本発明の渦流量計は、
管状の流路内に設けられた渦発生体と、
前記渦発生体で発生した渦を検知する受力体と、
前記受力体内に埋設された上記発明にかかる力センサとを備えることを特徴とする。
本発明によれば、発生した電荷の取り出し面を広くとることができるので、パラレル型バイモルフ素子のような高出力を得ることができる。また、電極層の面積および形状を略同一とすることで、各極性におけるノイズ侵入量が同じになるため、シリーズ型バイモルフのように差動アンプ回路での同相ノイズの除去が容易となり、S/N(シグナル−ノイズ比)を向上させることができる。
以下、図面を参照しながら本発明について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明では、本発明にかかる圧電素子を力センサとして利用する場合を想定しているが、本発明の圧電素子の用途は力センサに限定されるものではない。本発明の圧電素子と同様の構成とすれば、アクチュエータとしても利用することができる。
図1-Aは、本発明における圧電素子1aの素子構造を示す図である。
平板状の圧電体20は、一方の主面に電極層2、もう一方の主面に電極層4が形成され、全体として1つの積層体32を構成する。同様に、平板状の圧電体22は、一方の主面に電極層6、もう一方の主面に電極層8が形成され、全体としてもう1つの積層体34を構成する。なお、電極層は、圧電体の主面に例えばメッキ法やスクリーン印刷法などによって形成されるが、圧電体が電極層に挟んで固着されていればよく、その形成方法は特に限定されない。
前記2つの積層体32,34の主面間に、絶縁性の材料からなる平板状のシム材40を挟さんで固着する。積層体32,34とシム材40とは接着剤などによって固着すること
が可能であるが、例えば絶縁物を積層体の一方の主面にスクリーン印刷することによってシム材40を形成することも可能であり、その方法は特に限定されない。なお、圧電体20,22は、厚み方向に分極しており、前記2つの積層体を圧電体の分極方向Pが逆向きになるように積層する。また、互いに電極層または電極層とシム材を介して隣接して対向していない電極層2と6、および4と8とを導線等によって電気的に接続して、互いに導通された極性の異なる2つの電極層のグループ、すなわち、陽極電極層群と陰極電極層群を形成する。なお、図中の記号Tは圧電体の変形方向を示している。
圧電体20,22の材料としては、従来のバイモルフ素子と同様に、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛、ニオブ酸鉛などのセラミックスや、単結晶の圧電材料である水晶やニオブ酸リチウム、高分子材料であるPVDFなどを用いることができるが、これら以外でも圧電性を有する物質であればよく、特に限定されない。また、シム材の材料も絶縁性の物質であればよく特に限定されないが、圧電体と同じ材料を用いることが、圧電体とシム材の熱膨張係数が等しくなり、圧電素子の耐熱性を向上させ得るため、好ましい。例えば、圧電体にセラミックスを用いる場合は、シム材には分極処理をしていないセラミックスを用いることができ、圧電体に単結晶の圧電材料を用いる場合は、シム材には圧電体と結晶方位(分極方向)が異なるように前記圧電材料を配置して用いることができる。
図1-Bは、本発明における圧電素子の発生電荷量を模式的に示したものである。なお
、以下の説明において、図1-Bにおける圧電体の材料および形状は、図2-Bおよび図3-Bの圧電体と同材料、同形状であるものとする。
本発明にかかる圧電素子の圧電体内に、図2-Bおよび図3-Bの圧電体内と同じ応力を生じさせた場合に得られる電荷量は、図3-Bと同じく8である。これは、シム材40と
接する電極層4,6からも電荷を取り出すことができるためであり、本発明の圧電素子は、パラレル型バイモルフ素子と同様の高出力を得ることができる。
図1-Cは、本発明における圧電素子のノイズ侵入量を模式的に示したものである。な
お、以下の説明において、電極層2,4,6,8の形状は、全て同一形状であるものとする。
図1-Cにおいて、測定流体と電極層との電位差をV、測定流体と電極層2,4,6,
8との間の電気容量をそれぞれC2,C4,C6,C8、電極層2および6から侵入するノイズ量をN2、電極層4および8から侵入するノイズ量をN4とすると、
N2=V×(C2+C6)
N4=V×(C4+C8)
の関係式が成立し、
C2≒C8およびC4≒C6
であるから、
N2≒N4
となり、電極層2および6と、電極層4および8から侵入するノイズ量は略同一となる。したがって、本発明の圧電素子は、シリーズ型バイモルフ素子と同様に差動アンプ回路での同相ノイズの除去が容易である。
図4〜図6は、本発明の圧電素子にかかる圧電体の変形方向Tと分極方向Pとの関係を示したものである。図4(A)は作用力Fによって圧電素子1bが主面水平方向に曲げ変形した状態を、図5(A)は作用力Fによって主面垂直方向に圧電素子1cが圧縮変形した状態を、図6(A)は作用力Fによって圧電素子1dが主面垂直方向に引張変形した状態を、それぞれ示している。なお、以下の説明において、圧電体の分極方向Pは圧電体の
厚み方向とするが、特に厚み方向に限定されるものではない。
図4の圧電素子1bが主面水平方向に曲げ変形した状態において、圧電体20は主面水平方向に伸長変形が生じ、一方、圧電体22は主面水平方向に圧縮変形が生ずる。このとき、図4(B)に示すように、伸長変形が生じる圧電体20では、分極方向P側の電極層4が陰極となり、分極方向Pの逆側の電極層2が陽極となる。一方、圧縮変形が生じる圧電体22では、分極方向P側の電極層6が陽極となり、分極方向Pの逆側の電極層8が陰極となる。
図5の圧電素子1cが主面垂直方向に圧縮変形した状態においては、圧電体20,22ともに主面水平方向に伸長変形が生じる。このとき、図5(B)に示すように、分極方向P側の電極層4,8が陰極となり、分極方向Pの逆側の電極層2,6が陽極となる。
図6の圧電素子1dが主面垂直方向に引張変形した状態においては、圧電体20,22ともに主面水平方向に圧縮変形が生じる。このとき、図6(B)に示すように、分極方向P側の電極層4,8が陽極となり、分極方向Pの逆側の電極層2,6が陰極となる。
図7〜図9は、3つの圧電体を備える積層体を有する圧電素子にかかる圧電体の変形方向Tと分極方向Pとの関係を示したものである。図7は、図4(B)と同様に、圧電素子1eが主面水平方向に曲げ変形した状態における圧電体の変形方向Tと分極方向Pの関係を、図8は、図5(B)と同様に、圧電素子1fが主面垂直方向に圧縮変形した状態における圧電体の変形方向Tと分極方向Pの関係を、図9は、図6(B)と同様に、圧電素子1gが主面垂直方向に引張変形した状態における圧電体の変形方向Tと分極方向Pの関係を、それぞれ示したものである。
図7の圧電素子1eが主面水平方向に曲げ変形した状態において、圧電体20,22,24は水平方向に伸長変形が生じ、一方、圧電体26,28,30は主面水平方向に圧縮変形が生ずる。このとき、伸長変形が生じる圧電体20,22,24では、分極方向P側の電極層4,8が陰極となり、分極方向Pの逆側の電極層2,6が陽極となる。一方、圧縮変形が生じる圧電体26,28,30では、分極方向P側の電極層10,14が陽極となり、分極方向Pの逆側の電極層12,16が陰極となる。
すなわち、圧電素子1eが主面水平方向に曲げ変形した状態においては、電極層4,6,12,14または電極層8,10とシム材40を介して隣り合って対向する圧電体20と22,22と24,24と26,26と28,28と30の分極方向Pが各々逆方向となるように圧電体が配置されることで、圧電体20,22,24,26,28,30またはシム材40を介して隣り合って対向する電極層2と4,4と6,6と8,8と10,10と12,12と14,14と16の電気的極性が各々逆となる。
図8の圧電素子1fが主面垂直方向に圧縮変形した状態においては、圧電体20,22,24,26,28,30ともに主面水平方向に伸長変形が生じる。このとき、分極方向P側の電極層4,8,12,16が陰極となり、分極方向Pの逆側の電極層2,6,10,14が陽極となる。
図9の圧電素子1gが主面垂直方向に引張変形した状態においては、圧電体20,22,24,26,28,30ともに主面水平方向に圧縮変形が生じる。このとき、分極方向P側の電極層4,8,12,16が陽極となり、分極方向Pの逆側の電極層2,6,10,14が陰極となる。
すなわち、圧電素子1fが主面垂直方向に圧縮変形した状態、および圧電素子1gが主
面垂直方向に引張変形した状態においては、電極層4,6,12,14を介して隣り合って対向する圧電体20と22,22と24,26と28,28と30の分極方向Pが各々逆方向で、かつ電極層8、10とシム材40を介して隣り合って対向する圧電体24と26の分極方向が同じ方向となるように、圧電体20,22,24,26,28,30が配置されることで、圧電体20,22,24,26,28,30またはシム材40を介して隣り合って対向する電極層2と4,4と6,6と8,8と10,10と12,12と14,14と16の電気的極性が各々逆となる。
なお、ここでは圧電素子の変形状態の代表的な例として、曲げ変形、圧縮変形、引張変形を挙げたが、本発明はこれに限定されるものではない。圧電素子の変形状態に応じて、圧電体またはシム材を介して隣り合って対向する電極層の電気的極性が各々逆となるように、圧電体が配置されていればよい。
図10(A)は本発明における力センサ50の等価回路図、図10(B)は圧電素子1
aの説明図である。力センサ50は、センサ部52と差動増幅部54とに大別される。センサ部52は、本発明の圧電素子を備え、例えば、後述する渦発生体によって生ずるカルマン渦に起因して発生する変動圧力を検出するよう構成されている。差動増幅部54は、圧電素子1aの陽極電極層群と陰極電極層群からの信号をそれぞれ受ける2つのチャージアンプ回路60,70と、この2つのチャージアンプ回路60,70の出力の差分をとる差動アンプ回路80とを備えている。
チャージアンプ回路60は、反転入力端子が圧電素子1aに接続され、非反転入力端子が接地された演算増幅器62と、演算増幅器62の出力端子と反転入力端子との間に接続されたコンデンサ64、抵抗66により構成されている。チャージアンプ回路70も、チャージアンプ回路60と同様の構成となっており、共に圧電素子1aで発生した電荷を電圧に変換するものである。
差動アンプ回路80は、反転入力端子が抵抗83を介してチャージアンプ回路60に接続され、非反転入力端子が抵抗84を介してチャージアンプ回路70に接続された演算増幅器82と、演算増幅器82の出力端子と反転入力端子との間に接続された抵抗85と、演算増幅器82の非反転入力端子と接地との間に接続された抵抗86により構成されている。
上記のとおり、圧電素子1aからの信号(電荷)をそれぞれチャージアンプ回路60,70で受けることで、リード線50やシム材40による電荷の損失を回避でき、高精度の信号を得ることができる。また、チャージアンプ回路からの信号を受ける差動アンプ回路80を備えることで、同相ノイズをキャンセルすることができ、低ノイズの出力信号81を得ることができる。
図11は、本発明における渦流量計の縦断面図である。渦流量計90は、測定管路92と、その管路内に渦発生体94および受力体96を備え、受力体96には穴が設けられており、その中に本発明の圧電素子が埋設されている。また、受力体96は弾性体からなり、渦発生体94で発生した渦を検知できるように渦発生体94の下流側に所定の間隔をおいて配置される。なお、受力体は発生した渦を検知できる配置および構造であれば、例えば渦発生体と一体構造であってもよい。以上の構成において、測定管路に測定流体が流されると渦発生体94によりカルマン渦が発生する。このカルマン渦に起因して受力体96に変動圧力を作用させ、圧電素子(圧電体)に応力を生じさせる。そして、圧電素子(圧電体)に発生した電荷を検出信号としてリード線55で取り出し、図10(A)に示す回路50の差動増幅部54に入力するよう構成されている。
表1は、図10(A)および図11において、渦流量計90の受力体96に本発明の圧電素子1a、および従来のバイモルフ素子100,200を埋設した場合に得られた出力信号81の測定結果である。実施例では本発明の圧電素子1aを、比較例1では従来のシリーズ型バイモルフ素子100を、比較例2では従来のパラレル型バイモルフ素子200を、それぞれ埋設している。
試験1では、渦流量計90の測定管路92に所定の流量を流した場合に得られる出力信号81の振幅を測定した。試験2では、測定管路92に所定のノイズを印加した場合に得られる出力信号81の振幅を測定した。なお、実施例と比較例1および比較例2とでは、埋設した圧電素子を除いて、全て同じ条件下で試験を行っている。
試験1および試験2の測定結果を表1に示す。なお、試験1では、測定値が大きい方が高出力を得られることを意味し、試験2では、測定値が小さい方が差動アンプ回路で同相ノイズがキャンセルされていることを意味する。
Figure 2009295788
試験1の結果より、実施例の測定値が1.36Vrmsなのに対して比較例2の測定値が1.23Vrmsであった。一方、比較例1の測定値は0.56Vrmsと実施例の半
分以下となっており、本発明の圧電素子は、パラレル型バイモルフ素子と同等もしくはそれ以上の高出力が得られることを確認した。また、試験2の結果より、実施例の測定値が2.03mVrmsなのに対して比較例1の測定値が4.12mVrmsであった。一方、実施例2の測定値は33.34Vrmsと実施例の約16倍となっており、本発明の圧電素子は、シリーズ型バイモルフ素子と同程度もしくはそれ以上に同相ノイズの除去が容易に行えることを確認した。
このように、本発明の圧電素子を用いた流量計は、高出力であり、かつ、ノイズの低減された信号を得ることができるため、S/Nを向上させることができ、精度の高い流量計とすることができる。
図12、図13は、本発明における圧電素子の実施例である。電気的に接続された2つの電極層のグループ(図12、図13では電極層2,6と4,8)と外部との容量結合が同じになるように、電極層の面積および形状が同じになるように構成している。なお、実施例では圧電素子の形状を矩形としているが、圧電素子の形状は例えば円形などであってもよく、特に形状は限定されない。
このように、陽極電極層群及び陰極電極層群と外部との容量結合を揃えることによって、容量結合に起因するノイズをキャンセルし、信号精度の高い圧電素子とすることができる。このため、S/Nを向上させることができ、本発明の圧電素子を力センサや流量計に用いた場合にも、精度を向上させることができる。
図14は、本発明における圧電素子の別の実施例である。圧電体20,22およびシム材40の主面に、銀などを含むペースト状の電極材料をスクリーン印刷により印刷し、焼
成することで、電極層を形成している。なお、電極層2,4,6,8とリード線55a,55b,55c,55dとは半田付けにより接続され、リード線55aと55c、および55bと55dとは導通されている。この際、シム材の主面に形成された電極層4及び6は、リード線55b,55cとの接続を容易にするため、その一部の面が圧電体20,22からはみ出て露出している。
このように、電極層を印刷して形成することにより、金属製の電極板を接着して電極層を形成する場合と比べて、電極層を含む積層体の剛性を小さくすることができる。このため、外部からの作用力を効率よく圧電体に伝達することができるため、圧電素子から得られる電荷量が増加し、高出力の信号を得ることができる。したがって、S/Nを向上させることができ、本発明の圧電素子を力センサや流量計に用いた場合にも、精度を向上させることができる。
図15、図16は、本発明における圧電素子の更に別の実施例である。図1、図12、図13、図14は、2つの電極層と1つの圧電体とを備えた積層体で構成された圧電素子を例にしたが、本発明にかかる圧電素子の積層体が備える圧電体の数は2つ以上であってもよい。図15は、2つの圧電体を備える積層体にかかる圧電素子を、図16は、3つの圧電体を備える積層体にかかる圧電素子を示している。
このように、積層体が備える圧電体の数を増やすことによって、圧電素子から得られる電荷量が増加し、高出力の信号を得ることができる。このため、S/Nを向上させることができ、本発明の圧電素子を力センサや流量計に用いた場合にも、精度を向上させることができる。
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明はこれに限定されることなく、例えば、流量計のみならず、自動車のカーナビゲーションやエアバッグシステムなどに用いられる傾斜計、自動車のバック・コーナーセンサー、歩数計のカウント源、医用診断装置やマッサージ器などの超音波発生源、魚群探知機やソナーなどの水中探査源などに用いてもよいなど、本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
図1-Aは、本発明における圧電素子の素子構造を示す図である。 図1-Bは、本発明における圧電素子の発生電荷量を模式的に示した図である。 図1-Cは、本発明における圧電素子のノイズ侵入量を模式的に示した図である。 図2-Aは、従来のシリーズ型バイモルフの素子構造を示す図である。 図2-Bは、従来のシリーズ型バイモルフ素子の発生電荷量を模式的に示した図である。 図2-Cは、従来のシリーズ型バイモルフ素子のノイズ侵入量を模式的に示した図である。 図3-Aは、従来のパラレル型バイモルフの素子構造を示す図である。 図3-Bは、従来のパラレル型バイモルフ素子の発生電荷量を模式的に示した図である。 図3-Cは、従来のパラレル型バイモルフ素子のノイズ侵入量を模式的に示した図である。 図4は、本発明の圧電素子が主面水平方向に曲げ変形した状態における圧電体の変形方向Tと分極方向Pとの関係を示した図である。 図5は、本発明の圧電素子が主面垂直方向に圧縮変形した状態における圧電体の変形方向Tと分極方向Pとの関係を示した図である。 図6は、本発明の圧電素子が主面垂直方向に引張変形した状態における圧電体の変形方向Tと分極方向Pとの関係を示し図である。 図7は、本発明における3つの圧電体を備える積層体を有する圧電素子が、主面垂直方向に圧縮変形した状態における圧電体の変形方向Tと分極方向Pとの関係を示した図である。 図8は、本発明における3つの圧電体を備える積層体を有する圧電素子が、主面垂直方向に圧縮変形した状態における圧電体の変形方向Tと分極方向Pとの関係を示した図である。 図9は、本発明における3つの圧電体を備える積層体を有する圧電素子が、主面垂直方向に引張変形した状態における圧電体の変形方向Tと分極方向Pとの関係を示した図である。 図10は、本発明における力センサの等価回路図である。 図11は、本発明における渦流量計の縦断面図である。 図12は、本発明における圧電素子の実施例を示した図である。 図13は、本発明における圧電素子の実施例を示した図である。 図14は、本発明における圧電素子の別の実施例を示した図である。 図15は、本発明における圧電素子の更に別の実施例を示した図である。 図16は、本発明における圧電素子の更に別の実施例を示した図である。
符号の説明
1a,1b,1c,1d,1e,1f,1g,1h,1i,1j,1k,1l 本発明にかかる圧電素子
2,4,6,8,10,12,14,16 電極層
20,22,24,26,28,30 圧電体
32,34 積層体
40 シム材
50 力センサ
52 センサ部
54 差動増幅部
55,55a,55b,55c,55d リード線
60,70 チャージアンプ回路
62,72,82 演算増幅器
64,74 コンデンサ
66,76,83,84,85,86 抵抗
80 差動アンプ回路
81 出力信号
90 渦流量計
92 測定管路
93 流路方向
94 渦発生体
96 受力体
100 シリーズ型バイモルフ素子
200 パラレル型バイモルフ素子
102,104,202,204 電極層
120,122,220,222 圧電体
140,240 シム材
F 作用力
P 分極方向
T 変形方向

Claims (14)

  1. 2つの積層体と当該2つの積層体の主面間に挟まれて固着されるシム材とから構成される圧電素子であって、
    前記シム材は絶縁性の材料からなり、
    前記積層体は、少なくとも1つ以上の圧電体と、当該圧電体の両主面を挟持するように電極層が積層して構成され、
    前記シム材が前記2つの積層体に挟まれて固着された状態において、
    圧電体またはシム材を介して隣り合って対向する電極層の電気的極性が各々逆となるように、前記圧電体が配置されていることを特徴とする圧電素子。
  2. 前記圧電体が厚み方向に分極していることを特徴とする請求項1に記載の圧電素子。
  3. 前記シム材が前記2つの積層体に挟まれて固着された状態において、
    電極層または電極層とシム材を介して隣り合って対向する圧電体の分極方向が各々逆方向となるように前記圧電体が配置されることで、圧電体またはシム材を介して隣り合って対向する電極層の電気的極性が各々逆となることを特徴とする請求項1または2に記載の圧電素子。
  4. 前記シム材が前記2つの積層体に挟まれて固着された状態において、
    電極層を介して隣り合って対向する圧電体の分極方向が各々逆方向で、かつ電極層とシム材を介して隣り合って対向する圧電体の分極方向が同じ方向となるように前記圧電体が配置されることで、圧電体またはシム材を介して隣り合って対向する電極層の電気的極性が各々逆となることを特徴とする請求項1または2に記載の圧電素子。
  5. 前記2つの積層体が備える圧電体が各々1つであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の圧電素子。
  6. 前記シム材が前記圧電体と同じ材料で構成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の圧電素子
  7. 前記シム材がセラミックスまたは単結晶の圧電材料または高分子材料からなることを特徴とする請求項6に記載の圧電素子。
  8. 前記各々の電極層の主面の面積が略同一であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の圧電素子。
  9. 前記各々の電極層の形状が略同一であることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の圧電素子。
  10. 前記電極層が前記圧電体または前記シム材に印刷されることにより形成されることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の圧電素子。
  11. 前記シム材が前記2つの積層体に挟まれて固着された状態において、
    前記シム材の主面に接する電極層の一部が露出していることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の圧電素子。
  12. 前記電極層の各々が、圧電体またはシム材を介して隣り合って対向する電極層とは導通されず、かつ、圧電体またはシム材を介して隣り合って対向する電極層以外の電極層に導通されることで、全体として、陽極電極層群と陰極電極層群との2つの電極層のグループ
    を形成することを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の圧電素子。
  13. 請求項12に記載の圧電素子を有する力センサであって、
    2つのチャージアンプ回路と、
    前記チャージアンプ回路からの信号を受ける差動アンプ回路とを備え、
    前記圧電素子の陽極電極層群と陰極電極層群からの信号をそれぞれチャージアンプ回路に入力するように構成されていることを特徴とする力センサ。
  14. 流路内に設けられた渦発生体と、
    前記渦発生体で発生した渦を検知する受力体と、
    前記受力体内に埋設された請求項13に記載の力センサとを備えることを特徴とする渦流量計。
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