JP2009293753A - シールリングおよびこれを有するシール構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】カット部より油を意図的にリークさせたりシールリングと一方の部材との接触面積を低減させたりすることなく、シールリングの放熱性を向上させることができ、もってシールリングの摺動摩耗を抑制する。
【解決手段】互いに相対回転可能に組み付けられる二部材のうちの一方の部材に設けた環状の装着溝に装着され、前記装着溝の非密封流体側の側壁および他方の部材にそれぞれ摺動可能に密接し、これら二部材間の環状隙間をシールするシールリングであって、当該シールリングにおける摺動面以外の面に開口する凹部を設けることにより当該シールリングの表面積を拡大し、これにより摺動発熱に対する放熱面積を拡大する。
【選択図】図1

Description

本発明は、シールリングおよびシールリングを有するシール構造に関するものである。本発明のシールリングおよびシール構造は例えば、自動車用AT・CVTの分野に用いられ、あるいは各種油圧機器の分野などにおいて用いられる。
従来から、図5に示すように、円周上一箇所で切断された構造のカット部2を有する樹脂製のシールリング1であって、互いに相対回転可能に組み付けられる二部材のうちの一方の部材(例えば回転軸)11に設けた環状の装着溝12に装着され、その周面1aをもって他方の部材(例えばハウジング)21の周面21aに摺動可能に密接するとともにその非密封流体側の側面1bをもって装着溝12の非密封流体側の側壁12aに摺動可能に密接するシールリング1が知られている(特許文献1,2参照)。
近年におけるAT・CVTの高機能化に伴い、この種のシールリング1は使用環境が厳しくなってきており、特に圧力・回転数はシールリング1の摩耗に大きく影響する。すなわち圧力・回転数が大きくなることで、主にシールリング1の側面1bの摺動発熱が大きくなって摩耗が助長されるが、従来、摺動発熱を小さくする方法としては、例えば下記が挙げられる。
(1)円周上一箇所のカット部2に油のリーク経路を設け、リークする油によって摺動面を冷却する(特許文献1参照)。
(2)図6(A)に示すようにシールリング1の側面1bに段差部3を設けたり、あるいは図6(B)に示すようにシールリング1の側面1bに傾斜面4を設けたりしてシールリング1と一方の部材11との接触面積を低減させ、これにより摺動発熱を抑制する(特許文献2参照)。
しかしながら、上記(1)のカット部2よりリークさせる方法は、油を意図的にリークさせるものであることから、シールリング1の使用条件としてリーク許容値が小さい場合は適用することができない。また、上記(2)のシールリング1と装着部材11との接触面積を低減させる方法については、接触面積は減少しても接触面圧が高くなることから、やはり条件によっては適用することができない場合がある。
特開2007−239954号公報 特開平08−219292号公報
本発明は以上の点に鑑みて、カット部より油を意図的にリークさせたりシールリングと一方の部材との接触面積を低減させたりすることなく、シールリングの放熱性を向上させることができ、もってシールリングの摺動摩耗を抑制することができるシールリングおよびシール構造を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の請求項1によるシールリングは、互いに相対回転可能に組み付けられる二部材のうちの一方の部材に設けた環状の装着溝に装着され、前記装着溝の非密封流体側の側壁および他方の部材にそれぞれ摺動可能に密接し、これら二部材間の環状隙間をシールするシールリングであって、当該シールリングにおける摺動面以外の面に開口する凹部を設けることにより当該シールリングの表面積を拡大し、これにより摺動発熱に対する放熱面積を拡大したことを特徴とするものである。
また、本発明の請求項2によるシール構造は、互いに相対回転可能に組み付けられる二部材のうちの一方の部材に設けた環状の装着溝に装着され、前記装着溝の非密封流体側の側壁および他方の部材にそれぞれ摺動可能に密接し、これら二部材間の環状隙間をシールするシールリングを有するシール構造であって、前記一方の部材における装着溝の非密封流体側の側壁の近傍部位に段差部および/または凹部を設けることにより前記一方の部材の表面積を拡大し、これにより摺動発熱に対する放熱面積を拡大したことを特徴とするものである。
上記構成を有する本発明のシールリングにおいては、当該シールリングにおける摺動面以外の面に開口する凹部を有する立体構造が設けられ、これによりシールリングの表面積が拡大され、これにより摺動発熱に対する放熱面積が拡大されている。したがって、この拡大された放熱面を利用して、摺動発熱を多量に放出することが可能とされている。
また、上記構成を有する本発明のシール構造においては、一方の部材における装着溝の非密封流体側の側壁の近傍部位に段差部および/または凹部を有する立体構造が設けられ、これにより一方の部材の表面積が拡大され、これにより摺動発熱に対する放熱面積が拡大されている。したがって、この拡大された放熱面を利用して、摺動発熱を多量に放出することが可能とされている。
したがって、何れの場合も、シールリングの放熱性が改良されることから、シールリングの摺動摩耗を抑制し、シールリングの耐久性を向上させることができる。また何れの場合も、カット部より油を意図的にリークさせたりシールリングと一方の部材との接触面積を低減させたりするものではないことから、リーク許容値が小さい場合や接触面圧の増大が許容されない場合にも本発明を利用することができる。
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
図1に示すように、当該実施例に係るシールリング1は、樹脂製のシールリング1であって、互いに相対回転可能に組み付けられる二部材のうち一方の部材である軸11の周面に設けた環状の装着溝12に装着され、その外周面1aをもって他方の部材であるハウジング21の軸孔内周面21aに摺動可能に密接するとともにその一方の側面(非密封流体側の側面)1bをもって装着溝12の一方の側壁(非密封流体側の側壁)12aに摺動可能に密接する構成とされている。したがってシールリング1は、その外周面1aおよび一方の側面1bが摺動面とされている。密封流体(例えばATF)は図1(B)の断面図において左方向に存在し、その圧力Pがシールリング1に作用する。シールリング1としては、円周上一箇所で切断された構造のカット部2を有するものが図示されているが、カット部2を有しない全周連続状のものであっても良い。
装着溝12は、一方の側壁12aのほかに他方の側壁(密封流体側の側壁)12bおよび底面12cを有して断面矩形状(長方もしくは正方形状)に形成されている。シールリング1は、外周面1aおよび一方の側面1bのほかに摺動面以外の面として内周面1cおよび他方の側面(密封流体側の側面)1dを有し、これも断面矩形状に形成されている。図1(B)の装着状態図に示すように、シールリング1が装着されてシールリング1の外周面1aがハウジング21の軸孔内周面21aに密接するとともにシールリング1の一方の側面1bが装着溝12の一方の側壁12aに密接した状態において、シールリング1の内周面1cと装着溝12の底面12cとの間には所定の径方向間隙が設定されるとともにシールリング1の他方の側面1dと装着溝12の他方の側壁12bとの間には所定の軸方向間隙が設定される。
また、当該実施例では特に、図1(B)に示すように、シールリング1の内周面1cに開口する凹部5が設けられてシールリング1の表面積が拡大され、これにより摺動発熱に対する放熱面積が拡大されている。
凹部5は、図1(C)に示すように、シールリング1の他方の側面1dに開口するものであっても良く、図示はしないが、シールリング1の内周面1cおよび他方の側面1dの双方に開口するものであっても良い。したがって凹部5はシールリング1の摺動面(外周面1aおよび一方の側面1b)以外の面に開口するものである。
また、凹部5は、図1(B)(C)では共に断面矩形状に形成されているが、その断面形状は特に限定されず、例えば図2に示すものであっても良い。図2(A)では、凹部5の断面形状が長底辺をシールリング1の内周面1cに配置した台形状とされている。図2(B)では、凹部5の断面形状が短底辺をシールリング1の内周面1cに配置した台形状とされている。図2(C)では、長底辺がシールリング1の軸方向幅と同じ寸法に設定されている。図2(D)では、短底辺がシールリング1の内周面1cに対して平行でないように設定され、摺動面であるシールリング1の一方の側面1bに近付くほど凹部5の高さが高くなる形状とされている。
また、凹部5は、図1の例ではカット部2を除くシールリング1の全周に亙って環状ないし略環状に設けられているが、これだとシールリング1の寸法によっては断面強度が低下して強度不足となることがある。したがってこれに対策するには、凹部5を円周上不連続とし、多数の凹部5を円周方向に並べて配置することが考えられる。図3はこの例を示し、シールリング1の内周面1cに開口する凹部5が多数円周方向に並べて配置されている。各凹部5の開口形状は、図3(A)では矩形状、図3(B)では円形状とされているが、特に限定されるものではない。これらの構成によると、互いに隣り合う凹部5同士の間に仕切り部6が形成されるために、シールリング1に必要な強度を確保することができる。
図4の例では、シールリング1ではなく、一方の部材である回転軸11の周面に段差部13および凹部14を有する立体構造が設けられて回転軸11の表面積が拡大され、これにより摺動発熱に対する放熱面積が拡大されている。
すなわち、回転軸11の周面に断面矩形状の装着溝12が設けられるとともに装着溝12の一方の側壁12aから所定の軸方向間隔Lをあけて所定の高さ寸法Hを有する環状の段差部13が設けられ、この段差部13における立ち上がり面13aおよび大径側の周面13bに開口するようにして凹部14が多数円周方向に並べて配置され、これにより回転軸11の表面積が拡大され、これにより摺動発熱に対する放熱面積が拡大されている。
したがって、上記何れの実施例の場合も放熱性が改良されることから、シールリング1の摺動摩耗を抑制し、シールリング1の耐久性を向上させることができる。また何れの場合も、カット部2より油を意図的にリークさせたりシールリング1と一方の部材である回転軸11との接触面積を低減させたりするものではないことから、リーク許容値が小さい場合や接触面圧の増大が許容されない場合でも本発明を利用することができる。
尚、上記各実施例では、一方の部材として軸11に装着溝12を設けた場合について説明したが、これに限られず、ハウジング21に装着溝を設ける場合にも本発明は適用されるものである。
本発明の実施例に係るシールリングを示す図で、図1(A)はカット部の形状例を示す斜視図、図1(B)は同シールリングの装着状態を示す断面図、図1(C)は凹部の他の形状例を示す断面図 図2(A)(B)(C)(D)ともそれぞれ凹部の他の形状例を示す断面図 図3(A)(B)ともそれぞれ凹部の他の形状例を示す斜視図 本発明の実施例に係るシール構造を示す斜視図 従来例に係るシールリングを示す図で、図5(A)は同シールリングの一部切欠きした側面図、図5(B)は同シールリングの正面図、図5(C)は同シールリングの装着状態を示す断面図 図6(A)(B)ともそれぞれ他の従来例に係るシールリングの装着状態を示す断面図
符号の説明
1 シールリング
1a 外周面
1b 一方の側面
1c,21a 内周面
1d 他方の側面
2 カット部
5,14 凹部
6 仕切り部
11 回転軸(一方の部材)
12 装着溝
12a 一方の側壁
12b 他方の側壁
12c 底面
13 段差部
13a 立ち上がり面
13b 大径側周面
21 ハウジング(他方の部材)

Claims (2)

  1. 互いに相対回転可能に組み付けられる二部材のうちの一方の部材に設けた環状の装着溝に装着され、前記装着溝の非密封流体側の側壁および他方の部材にそれぞれ摺動可能に密接し、これら二部材間の環状隙間をシールするシールリングであって、
    当該シールリングにおける摺動面以外の面に開口する凹部を設けることにより当該シールリングの表面積を拡大し、これにより摺動発熱に対する放熱面積を拡大したことを特徴とするシールリング。
  2. 互いに相対回転可能に組み付けられる二部材のうちの一方の部材に設けた環状の装着溝に装着され、前記装着溝の非密封流体側の側壁および他方の部材にそれぞれ摺動可能に密接し、これら二部材間の環状隙間をシールするシールリングを有するシール構造であって、
    前記一方の部材における装着溝の非密封流体側の側壁の近傍部位に段差部および/または凹部を設けることにより前記一方の部材の表面積を拡大し、これにより摺動発熱に対する放熱面積を拡大したことを特徴とするシールリングを有するシール構造。
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Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
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CN113236781A (zh) * 2021-04-15 2021-08-10 大连理工大学 一种端面具有减摩散热结构的密封环及其加工方法

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