JP2008275052A - シールリング - Google Patents

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健 渡邉
Rie Saito
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Abstract

【課題】摺動抵抗の低減を図ることができるシールリングを提供する。
【解決手段】2部材間3、4の環状隙間5をシールするシールリング1であって、リング本体の非密封流体側Aには、密封流体による潤滑膜を介して環状溝40の非密封流体側Aの側壁面41に摺動接触する摺動面11aを備えたシール部11と、シール部11よりも環状溝40の溝底側に、環状溝40の非密封流体側Aの側壁面41に当接しないように構成された非当接部12と、がリング本体全周に渡り周方向に沿って設けられたシールリング1において、シール部11は、摺動面11aの非当接部12側の端部に、端部の縁を部分的に切り欠いた構成の凹部13が設けられており、摺動面11aと凹部13との境目14は、R状に形成されていることを特徴とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、2部材間の環状隙間をシールするためのシールリングに関するものである。
従来、この種のシールリングは、自動車用の自動変速機や無断変速機、各種油圧機器、空圧機器等の軸シールとして用いられている。
図5を参照して、従来のシールリングについて説明する。図5は、従来技術に係るシールリングの装着状態を示す模式的断面図である。
シールリング100は、ハウジング200とハウジング200の軸穴に挿入される軸300との間の環状隙間400を密封するためのものである。
シールリング100は、軸300の外周面に設けられた環状溝301に装着され、密封流体側Oから受ける圧力Pにより、その外周面111がハウジング200の軸穴内周面に密着し、非密封流体側の側面110が環状溝301の側壁面310に密着する。これにより、密封流体の非密封流体側Aへの漏れを防止している。
シールリング100は、ハウジング200と軸300とが相対回転を生じると、環状溝301の側壁面310に密着する側面110が軸300の回転により環状溝301の側壁面310に対して摺動する構成である。そこで、係る摺動によるフリクションの低減を図るべく、側面110に非当接部112を設けた構成が従来から用いられている(特許文献1及び特許文献2参照)。これにより、シールリング100の側壁面310に対する受圧面積(摺動面積)の低減を図っている。
また、環状溝の側壁面と摺動するシールリングの側面に潤滑油用のポケットを設けて潤滑状態の向上を図った構成もある(特許文献3参照)。
WO03/100301A1 特開2004−28273号公報 実開平4−84864号公報
しかしながら、自動車の自動変速機や無断変速機等の各種機器においてはさらなる燃費向上が求められており、上記従来技術よりもさらに低トルクなシールリングが求められている。
本発明は上記の従来技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、摺動抵抗の低減を図ることができるシールリングを提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明におけるシールリングは、
軸孔を有するハウジングと前記軸孔に挿入される軸のうちの一方の部材に設けられた環状溝に装着され、
これら2部材のうちの他方の部材の表面に密着するとともに、前記環状溝の非密封流体側の側壁面に摺動接触することにより、前記2部材間の環状隙間をシールするシールリングであって、
リング本体の非密封流体側には、密封流体による潤滑膜を介して前記環状溝の非密封流体側の側壁面に摺動接触する摺動面を備えたシール部と、前記シール部よりも前記環状溝の溝底側において前記環状溝の非密封流体側の側壁面に当接しないように構成された非当接部と、がリング本体全周に渡り周方向に沿って設けられたシールリングにおいて、
前記シール部は、前記摺動面の前記非当接部側の端部に、前記端部の縁を部分的に切り欠いた構成の凹部が設けられており、
前記摺動面と前記凹部との境目は、R状に形成されていることを特徴とする。
これにより、凹部と環状溝の非密封流体側の側壁面とによって形成される空間に密封流体が保持されるとともに、凹部と摺動面との境目をR状に形成することで、凹部に保持された密封流体が摺動面に導入され易くなり、密封流体による良好な潤滑膜の形成が可能となる。
すなわち、周方向に沿って設けられたシール部の摺動面の端部に切り欠き状の凹部を設けることで、シール部の摺動面において周方向、すなわち、シールリングの摺動方向に対して角度を持った領域が形成される。これにより、摺動時に密封流体がシール部の摺動面に導入され易くなり、潤滑膜の形成が容易となる。
また、凹部と摺動面との境目をR状に形成することで、係る境目と環状溝の非密封流体側の側壁面との間の空間が、摺動面に近づくにつれて徐々に狭まっていく略楔状に形成される。これにより、この空間を摺動面に向かって流れる密封流体の流れによって、シールリングが環状溝の非密封流体側側壁から離れる方向に作用する動圧が発生する(楔効果)。その結果、シール部の摺動面と環状溝の非密封流体側側壁との間の面圧が低下して、シール部と環状溝側壁との間に密封流体による適度な潤滑膜を介在させることが可能となり、摺動抵抗が低減される。
前記凹部の深さは、前記摺動面に近い領域程浅くなるように構成されてもよい。
これにより、凹部と環状溝の非密封流体側の側壁面との間の空間は、R状に形成された凹部と摺動面との境目と、環状溝の非密封流体側の側壁面との間の領域だけでなく、係る空間全体が楔状の形状に構成され、楔効果が高められる。
以上説明したように、本発明により、摺動抵抗の低減を図ることができる。
以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
(実施例)
図1〜図4を参照して、本発明の実施例に係るシールリング1について説明する。図1は、本実施例に係るシールリング1の全体を示す模式図であり、シールリング1を軸方向からみた様子を示している。図2は、本実施例に係るシールリング1の装着状態を示す模式的断面図であり、図1のA−A断面に対応している。図3は、本実施例に係るシールリング1の装着した状態を示す模式的一部破断斜視図である。図4は、本実施例に係るシールリング1の一部を示す模式図であり、(a)は図3のB部(点線で囲った部分)の拡大図であり、(b)は図3のC部(点線で囲った部分)の拡大図である。
図2に示すように、本実施例に係るシールリング1は、軸孔が設けられたハウジング3と、この軸孔に挿入された軸4との間の環状隙間5をシールするためのものである。シールリング1は、PTFE、PEEK等の樹脂材料からなる環状部材であり、軸4に設けられた環状溝40に装着されて使用される。
シールリング1は、ハウジング3に設けられた軸孔の内周面30をシールするための第1シール部10と、軸4に設けられた環状溝40の非密封流体側の側壁面41をシールするための第2シール部11と、を備えている。
シールリング1は、密封流体側O(図中左側)から矢印P方向に圧力が作用すると、非密封流体側A(図中右側)に押される。そして、第1シール部10がハウジング3の軸孔内周面30に密着し、第2シール部11は、図3においてハッチングで示した摺動面11aが環状溝40の側壁面41に密着する。これにより、密封流体の非密封流体側Aへの漏れが抑制される。ここで、密封流体は、例えば潤滑油であり、特に自動車の自動変速機の場合はATFを指している。
シールリング1は、リング本体の周方向の一箇所に分離部2が設けられている。このような分離部2を設けることで、シールリング1の環状溝40への装着を容易にしている。分離部2の形態としては様々なものが知られているが、本実施例では周囲温度の変化に対して安定したシール性を発揮することが可能な特殊ステップカットを採用している。
また、シールリング1は、リング本体の非密封流体側Aにおける内周側(第2シール部11よりも環状溝40の溝底側)に非当接部12が全周に渡り周方向に沿って設けられている。非当接部12は、シールリング1の非密封流体側Aにおいて、環状溝40の側壁面41に当接しないように第2シール部11に対して軸方向に後退した構成となっている。
すなわち、シールリング1は、リング本体の非密封流体側Aの側面部分全てが環状溝40の側壁面41に当接するわけではなく、これにより、環状溝40の側壁面41に対するシールリング1の受圧面積を低減し、回転摺動抵抗の低減を図っている。
また、本実施例に係るシールリング1においては、第2シール部11の摺動面11aの非当接部12側の端部に、該端部の縁を部分的に切り欠いたように構成された凹部13が設けられている。凹部13は、第2シール部11の摺動面11aの非当接部12側の端部に、リング本体の全周に渡って等間隔で複数設けられている。
本実施例に係るシールリング1においては、周方向に沿って設けられた第2シール部11に切り欠き状の凹部13を設けることで、第2シール部11において環状溝40の非密封流体側Aの側壁面41と摺動接触する摺動部分(摺動面11a)への密封流体の導入がスムーズとなる。
すなわち、図5に示す従来技術のように、環状溝の側壁面との摺動面が周方向に倣って全周に設けられている構成に対し、本実施例においては、図4(b)に示すように、第2シール部11の摺動面11aに周方向(シールリング1の摺動方向。図中の矢印S)に対して角度を持った領域(凹部13と摺動面11aとの境目14)が形成される。これにより、シールリング1の摺動時に密封流体が第2シール部11の摺動面11aに導入され易くなり、潤滑油膜の形成が容易となる。なお、図4中の黒塗り矢印は密封流体の流れを示している。
したがって、従来技術と比して、シールリング1の摺動時により多くの潤滑油を摺動面11aに導くことができ、良好な潤滑油膜の形成が可能となる。
また、図4(a)に示すように、凹部13と摺動面11aとの境目14は、R状に形成されている。したがって、凹部13と環状溝40の側壁面41との間に形成される空間は、凹部13と摺動面11aとの境目の領域において、摺動面11aに近づくにつれて徐々に狭まっていく略楔状に形成される。
これにより、この空間を第2シール部11の摺動面11aに向かって流れる密封流体の流れによって、図4の矢印Dで示すように、シールリング1が環状溝40の側壁面41から離れる方向に作用する動圧が発生する(楔効果)。
その結果、摺動面11aと環状溝40の非密封流体側の側壁面41との間の面圧が低下し、摺動面11aと側壁面41との間に密封流体による適度な潤滑油膜を介在させることが可能となる。
このように、本実施例に係るシールリング1によれば、環状溝40の側壁面41との摺動部分にシールリング1の摺動方向に対して角度を持った領域が形成され、さらに係る領域における摺動部分と摺動しない部分との境目14がR状に形成されることで、第2シール部11の摺動面11aに良好な潤滑油膜の形成が可能となる。したがって、シールリング1の摺動抵抗が低減される。
また、凹部13は、摺動面11aの非当接部12側の端部の縁を略半楕円形状に切り欠いたような構成となっており、その深さが摺動面11aに近い領域程浅くなる構成となっている。
これにより、凹部13と環状溝40の側壁面41との間の形成される空間が、凹部13と摺動面11aとの境目14と環状溝40の側壁面41との間の領域だけでなく、凹部13と環状溝40の側壁面41との間の空間全体が楔状の形状に構成される。したがって、楔効果がさらに高められる。
なお、本実施例では、凹部の形状として半楕円形状のものを採用したが、これに限られるものではない。すなわち、環状溝の側壁面との摺動部分にシールリングの摺動方向に対して角度を持った領域が形成され、かつ、摺動部分との境目がR状に形成されるものであれば、凹部の形状は自由に設定することができる。
また、本実施例では、シールリング1が軸4に設けられた環状溝40に装着される構成について説明したが、ハウジング3の軸孔内周面30に設けられた環状溝に装着され、係る環状溝の側壁面と軸4の外周面とに当接して環状隙間5を密封する構成であってもよい。
本実施例に係るシールリングの全体を示す模式図。 本実施例に係るシールリングの装着状態を示す模式的断面図。 本実施例に係るシールリングの装着状態を示す模式的一部破断斜視図。 本実施例に係るシールリングの一部を示す模式図。 従来技術に係るシールリングの装着状態を示す模式的断面図。
符号の説明
1 シールリング
10 第1シール部
11 第2シール部
11a 摺動面
12 非当接部
13 凹部
14 境目
2 分離部
3 ハウジング
30 内周面
4 軸
40 環状溝
41 側壁面
5 環状隙間

Claims (2)

  1. 軸孔を有するハウジングと前記軸孔に挿入される軸のうちの一方の部材に設けられた環状溝に装着され、
    これら2部材のうちの他方の部材の表面に密着するとともに、前記環状溝の非密封流体側の側壁面に摺動接触することにより、前記2部材間の環状隙間をシールするシールリングであって、
    リング本体の非密封流体側には、密封流体による潤滑膜を介して前記環状溝の非密封流体側の側壁面に摺動接触する摺動面を備えたシール部と、前記シール部よりも前記環状溝の溝底側において前記環状溝の非密封流体側の側壁面に当接しないように構成された非当接部と、がリング本体全周に渡り周方向に沿って設けられたシールリングにおいて、
    前記シール部は、前記摺動面の前記非当接部側の端部に、前記端部の縁を部分的に切り欠いた構成の凹部が設けられており、
    前記摺動面と前記凹部との境目は、R状に形成されていることを特徴とするシールリング。
  2. 前記凹部の深さは、前記摺動面に近い領域程浅くなるように構成されることを特徴とする請求項1に記載のシールリング。
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