JP2009292724A - 低水分六フッ化リン酸リチウムの製造方法 - Google Patents

低水分六フッ化リン酸リチウムの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】特別な後処理等を必要とすることなく効率良く低水分の六フッ化リン酸リチウムを製造できる方法を提供すること。
【解決手段】フッ化リチウムの無水フッ化水素溶液、またはフッ化リチウムを六フッ化リン酸リチウムの製造工程において循環使用する濾液に溶解させた溶液を、該溶液中のフッ化リチウムと五フッ化リンとを反応させる前にまたは反応させた後に、フッ素化する。
【選択図】なし

Description

本発明は、リチウム二次電池用電解質をはじめ、有機合成反応用触媒として有用な低水分の六フッ化リン酸リチウムを効率的に製造する方法に関する。
六フッ化リン酸リチウムの製造方法については従来から種々の方法が提唱されている。
しかしながら、何れの製造方法にも共通する問題として挙げられるのが、濾液の循環使用による製品への水分の混入の問題である。即ち、何れの製造方法においても、六フッ化リン酸リチウムを濾過分離した後の濾液に新たに反応原料のフッ化リチウムを溶解してバッチ反応を繰り返し継続するが、この際、反応原料である五塩化リンやフッ化リチウムの含有水分、操作による外気からの混入水分等により、濾液中の水分が次第に上昇する結果、製品である六フッ化リン酸リチウム中の水分も徐々に増加していくという問題がある。
六フッ化リン酸リチウムをリチウム電池の電解質として使用する場合、その含有水分により電解質自体の加水分解が起き、生成するフッ化水素やオキシフッ化リン酸化合物により電池性能の劣化を来たすため、六フッ化リン酸リチウムの含有水分はできるだけ低減しなければならない。
従来から六フッ化リン酸リチウムの水分低減法として提案されている方法としては、六フッ化リン酸リチウム結晶を沸点が100℃以上の含酸素有機溶媒に溶解させ、この溶液中の含酸素有機溶媒を蒸留により全て留出させることにより水分を除去する方法(特許文献1)がある。
しかし、この方法では、その都度多量の溶媒を留出除去しなければならず、また、溶媒中の不純物濃縮による汚染が懸念される。
その他の方法としては、六フッ化リン酸リチウム結晶を不活性ガス中でフッ素処理する方法(特許文献2)や、六フッ化リン酸リチウム結晶をフッ素に不活性な溶剤に再溶解した後、フッ素処理する方法(特許文献3)等がある。
しかし、これらの処理法では、一度単離した六フッ化リン酸リチウム結晶を改めて別装置でフッ素処理する必要があり、操作上繁雑で時間を要し、工業上実用的な方法とは言い難い。
特開昭61−254216号公報 特公平4−16406号公報 特公平4−16407号公報
従って、本発明の目的は、上記従来法の欠点を排除した低水分六フッ化リン酸リチウムの製造方法、即ち特別な後処理等を必要とすることなく効率良く低水分の六フッ化リン酸リチウムを製造できる方法を提供することにある。
本発明者等は、上記目的を達成するため、鋭意検討した結果、フッ化リチウムの無水フッ化水素溶液と五フッ化リンとを用いて六フッ化リン酸リチウムを製造するに際し、反応初回のフッ化リチウムの無水フッ化水素溶液および循環使用する結晶濾液にフッ化リチウムを溶解させた溶液をフッ素化することにより、容易に且つ極めて効率的に水分の少ない六フッ化リン酸リチウムが製造できることを知見した。
本発明は、上記知見に基づきなされたもので、フッ化リチウムの無水フッ化水素溶液、またはフッ化リチウムを六フッ化リン酸リチウムの製造工程において循環使用する濾液に溶解させた溶液を、フッ素化した後、上記溶液に五フッ化リンを添加し、上記溶液中のフッ化リチウムと五フッ化リンとを反応させることを特徴とする低水分六フッ化リン酸リチウムの製造方法(以下、第1発明という)を提供するものである。
また、本発明は、フッ化リチウムの無水フッ化水素溶液、またはフッ化リチウムを六フッ化リン酸リチウムの製造工程において循環使用する濾液に溶解させた溶液に、五フッ化リンを添加し、上記溶液中のフッ化リチウムと五フッ化リンとを反応させた後、反応液をフッ素化することを特徴とする低水分六フッ化リン酸リチウムの製造方法(以下、第2発明という)を提供するものである。
本発明の六フッ化リン酸リチウムの製造方法によれば、特別な後処理等を必要とすることなく効率良く低水分の六フッ化リン酸リチウムを製造できる。
以下、本発明の低水分六フッ化リン酸リチウムの製造方法について詳述する。
先ず、第1発明について説明する。
上記のフッ化リチウムの無水フッ化水素溶液またはフッ化リチウムを濾液に溶解させた溶液のフッ素化は、フッ素ガスを用いて行われる。該フッ素化は、六フッ化リン酸リチウム製造用の反応器中に直接フッ素ガスを導入して実施しても良く、また該反応器とは別の容器内で実施したり、あるいは気液を効率的に接触させるための装置を別に設けて実施した後、処理後の溶液を上記反応器に戻しても良い。上記フッ素化に使用するフッ素ガスは、コストおよび環境への配慮上、循環使用することが好ましい。
上記フッ素化は、常圧下、加圧下、減圧下の何れでも行うことができる。上記フッ素化の反応温度は、水分とフッ素との反応を考慮すれば、加圧下でできるだけ高くすることが望ましいが、上限温度は、装置の耐圧性を考慮して50℃以下、好ましくは30℃以下である。下限温度は、フッ化リチウムや六フッ化リン酸リチウム等の溶質が析出しない温度迄低くできるが、フッ素化の効率を考慮すれば、−20℃以上とすることが望ましい。即ち、上記フッ素化の反応温度は、−20〜+30℃の範囲とすることが好ましい。
また、上記フッ素化を加圧下で行う場合は、反応器内圧を10〜20kPa(G)の範囲とすることが好ましく、また上記フッ素化を減圧下で行う場合は、反応器内圧を−80〜−30kPa(G)の範囲とすることが好ましい。
また、上記フッ素化に使用するフッ素ガスの濃度は任意で良い。即ち、100容積%フッ素を用いても、あるいは希釈用として不活性ガス類(窒素、ヘリウム、アルゴン、ネオン等)や四フッ化炭素、六フッ化エタン、三フッ化窒素、六フッ化硫黄等のフッ素系ガスにより任意に希釈して使用しても良いが、効率を考えれば10容積%以上の濃度のフッ素ガスを使用することが望ましい。
また、上記フッ素化に要するフッ素化時間は、使用するフッ素ガスの濃度にもよるが、通常は数秒〜数時間である。フッ素化の効率を考えれば、1分間〜1時間でフッ素化が終了するようにフッ素ガスの濃度を調整することが望ましい。
また、上記フッ素化後の溶液中のフッ化リチウムと、五フッ化リンとの反応は、従来法と同様に行うことができ、好ましくは上記溶液に対し−30〜0℃の温度で五フッ化リンを添加、反応させると良い。
また、上記溶液は、無水フッ化水素/フッ化リチウムのモル比が10〜35であるものが好ましく、また、五フッ化リンの添加量は、上記溶液中のフッ化リチウム1モルに対し1.0〜1.1モルが好ましい。
反応液からの六フッ化リン酸リチウムの取得は、反応液を冷却して六フッ化リン酸リチウムの結晶を析出させ、該結晶を不活性ガス中で加熱乾燥することにより行うことができる。
本発明の方法により得られる六フッ化リン酸リチウムは、水分10ppm未満の低水分のものである。
次に、第2発明について説明する。
第2発明は、フッ素化を、フッ化リチウムと五フッ化リンとの反応後に行う以外は、第1発明と同様に実施される。
即ち、第2発明におけるフッ素化前の溶液中のフッ化リチウムと、五フッ化リンとの反応は、第1発明におけるフッ素化後の溶液中のフッ化リチウムと、五フッ化リンとの反応と同様に行えば良く、また、第2発明における反応液のフッ素化は、第1発明における溶液のフッ素化と同様に行えば良い。
以下、本発明の実施例を比較例とともに挙げるが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
〔実施例1〕
3リットル容量の撹拌機および冷却ジャケット付ハステロイC製反応器に無水フッ化水素(以下、HFと略記する)1600gを仕込み、−35℃に冷却後、これにフッ化リチウム75gを撹拌しながら溶解して、フッ化リチウムの無水フッ化水素溶液を調製した。該溶液の液温は−19℃であった。次に、反応器中に、窒素で希釈した濃度50容積%のフッ素ガスを800ml/minの速度で撹拌しながら1時間導入し、上記溶液の脱水(フッ素化)を行った。続いて、五フッ化リン500gを撹拌しながら反応器内に導入し、反応させた後、反応液を−50℃に冷却して結晶を析出させた。結晶を濾別後、50℃の窒素気流中で乾燥し、直径1〜2mmの粒径の揃った六フッ化リン酸リチウムの結晶220gを得た。この結晶中の水分は3ppmであった(該水分の測定はカールフィッシャー法により行った。以下の実施例および比較例でも同じ。)。
〔実施例2〕
実施例1の「結晶を濾別後の濾液」に新たにHFを加えて1800gとし、これにフッ化リチウム37gを溶解した。この溶液を用いて、実施例1と同じ条件で、フッ素化による脱水後、五フッ化リン230gを導入して反応を行い、六フッ化リン酸リチウムの結晶239gを得た。この結晶中の水分は4ppmであった。
〔実施例3〕
実施例2と同様の操作を40回繰り返した。40回目に生成した六フッ化リン酸リチウムの結晶中の水分は6ppmであった。
〔実施例4〕
3リットル容量の撹拌機および冷却ジャケット付ハステロイC製反応器にHF1600gを仕込み、これにフッ化リチウム80gを溶解して、フッ化リチウムの無水フッ化水素溶液を調製した。該溶液の液温を−10℃にした後、別のハステロイC製反応器で五塩化リンとHFとの反応で合成した五フッ化リンを撹拌しながら500g導入し、反応させた。反応終了後の温度は13℃であった。この反応液を0℃に冷却した後、濃度100容積%のフッ素ガスを300ml/minの速度で撹拌しながら40分間導入し、上記反応液の脱水(フッ素化)を行った。次に、反応液を−50℃に冷却して結晶を析出させた。結晶を濾別後、50℃の窒素気流中で乾燥し、六フッ化リン酸リチウムの結晶188gを得た。この結晶中の水分は4ppmであった。
〔比較例1〕
脱水(フッ素化)操作を省略した以外は、実施例1と同様にして実施し、六フッ化リン酸リチウムの結晶251gを得た。この六フッ化リン酸リチウムの結晶は、粒径の揃ったものであったが、結晶中の水分は11ppmであった。
〔比較例2〕
脱水(フッ素化)操作を行うことなく、比較例1の「結晶を濾別後の濾液」を繰り返し使用して40回反応を行った。40回目に生成した六フッ化リン酸リチウムの結晶中の水分は26ppmであった。
〔比較例3〕
脱水(フッ素化)操作を省略した以外は、実施例4と同様にして実施し、六フッ化リン酸リチウムの結晶184gを得た。この結晶中の水分は26ppmであった。

Claims (4)

  1. フッ化リチウムの無水フッ化水素溶液、またはフッ化リチウムを六フッ化リン酸リチウムの製造工程において循環使用する濾液に溶解させた溶液を、フッ素化した後、上記溶液に五フッ化リンを添加し、上記溶液中のフッ化リチウムと五フッ化リンとを反応させることを特徴とする低水分六フッ化リン酸リチウムの製造方法。
  2. フッ化リチウムの無水フッ化水素溶液、またはフッ化リチウムを六フッ化リン酸リチウムの製造工程において循環使用する濾液に溶解させた溶液に、五フッ化リンを添加し、上記溶液中のフッ化リチウムと五フッ化リンとを反応させた後、反応液をフッ素化することを特徴とする低水分六フッ化リン酸リチウムの製造方法。
  3. フッ素化を、濃度10〜100容積%の範囲のフッ素ガスを用いて行う請求項1または2記載の低水分六フッ化リン酸リチウムの製造方法。
  4. フッ素化温度が−20〜+30℃の範囲であり、フッ素化時間が1分間〜1時間の範囲である請求項1〜3の何れかに記載の低水分六フッ化リン酸リチウムの製造方法。
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