JP2009291798A - 異形条材の製造方法及び異形条材 - Google Patents

異形条材の製造方法及び異形条材 Download PDF

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Abstract

【課題】スリットカッタの幅方向位置の変動がなく厚板部や薄板部の幅方向長さ、位置が長手方向で安定した異形条材を製出できるとともに、スリット加工時に発生する残留応力を抑えることができる異形条材の製造方法及び異形条材を提供する。
【解決手段】長手方向に直交する断面において板厚が互いに異なる厚板部11と薄板部12とを備えた異形条材10の製造方法であって、厚板部11及び薄板部12を有する製品部16と、製品部16の幅方向端部に連設された非製品部17と、を成形する成形工程と、成形された製品部16と非製品部17とを長手方向に切断分離するスリット工程と、を有し、前記成形工程では、非製品部17を、隣接する製品部16よりも板厚が薄くなるように成形し、製品部16の幅方向端面に段差壁部18を形成し、前記スリット工程では、段差壁部18によって一組のスリットカッタ20の幅方向位置が案内されることを特徴とする。
【選択図】図5

Description

本発明は、長手方向に直交する断面において板厚が互いに異なる厚板部と薄板部とを有する異形条材の製造方法、および、異形条材に関するものである。
前述の異形条材は、従来、切削加工(例えば引用文献1)、金型加工(例えば引用文献2)、金型圧延加工(例えば引用文献3)、異形圧延ロールによる圧延加工(例えば引用文献4)等によって成形されている。
このような様々な成形方法によって厚板部及び薄板部を有する製品部が成形され、幅方向長さを所定の寸法とした異形条材を得るためにスリット加工が施される。
スリット加工は、例えば特許文献1の第3図に示すように、条材の上下にスリットカッタがそれぞれ配設され、このスリットカッタの間に条材を通過させることによってせん断によって切断するものである。
特開2007−7834号公報 特開昭48−4605号公報 特開昭48−32763号公報 特開2003−71502号公報
ところで、スリット加工を行う場合には、スリットカッタと製品部との幅方向の相対位置を精度良く一致させる必要がある。すなわち、スリット加工を行っている間にスリットカッタと製品部との幅方向の相対位置にずれが生じた場合には、厚板部や薄板部の幅方向長さ、位置が長手方向で変動してしまい、製品として使用できなくなるおそれがあった。
また、異形条材の製品部の板厚が厚い場合には、スリット加工時のせん断力によって製品部の幅方向端部に大きな残留応力が生じてしまうおそれがあった。
本発明は、前述の事情に鑑みてなされたものであって、スリット加工において、スリットカッタの幅方向位置の変動がなく厚板部や薄板部の幅方向長さ、位置が長手方向で安定した異形条材を製出できるとともに、スリット加工時に発生する残留応力を抑えることができる異形条材の製造方法及び異形条材を提供することを目的とする。
この課題を解決するために、本発明に係る異形条材の製造方法は、長手方向に直交する断面において板厚が互いに異なる厚板部と薄板部とを備えた異形条材の製造方法であって、前記厚板部及び前記薄板部を有する製品部と、前記製品部の幅方向端部に連設された非製品部と、を成形する成形工程と、成形された前記製品部と前記非製品部とを長手方向に切断分離するスリット工程と、を有し、前記成形工程では、前記非製品部を、隣接する前記製品部よりも板厚が薄くなるように成形し、前記製品部の幅方向端面に段差壁部を形成し、前記スリット工程では、前記段差壁部によって一組のスリットカッタの幅方向位置が案内され、前記一組のスリットカッタにより前記製品部と前記非製品部とを切断分離することを特徴としている。
本発明に係る異形条材の製造方法によれば、成形工程によって前記厚板部及び前記薄板部を備えた製品部と、この製品部よりも板厚の薄い非製品部と、が設けられ、前記製品部の幅方向端面に段差壁部が画成されており、スリット工程では、前記段差壁部によって一組のスリットカッタの幅方向位置が案内される構成とされているので、製品部と一組のスリットカッタとの幅方向相対位置の変動が防止され、長手方向における前記厚板部及び前記薄板部の幅方向長さ、位置が安定した異形条材を製出することができる。
また、製品部よりも板厚の薄い非製品部をスリットカッタによって切断しているので、スリット加工による残留応力を小さく抑えることができる。
なお、成形工程においては、前記厚板部及び前記薄板部と前記非製品部とを同時に成形してもよいし、別々に成形してもよい。
ここで、前記成形工程において、前記厚板部及び前記薄板部と、前記非製品部とが、異形圧延ロールによる圧延加工によって成形されている構成を採用することが好ましい。
この場合、異形圧延ロールによる圧延加工によって、前記厚板部及び前記薄板部と前記非製品部とを同時に成形することが可能となる。これにより、工程数を減らして異形条材の製造コストを削減することができる。
また、前記長手方向に直交する断面において、前記段差壁部を、前記非製品部側に向かうにしたがい漸次板厚が薄くなるように傾斜する構成とすることが好ましい。
この場合、スリットカッタと製品部との幅方向相対位置が僅かに変動しても、傾斜した段差壁部によって適切な位置に案内されることになり、前記厚板部と前記薄板部の幅方向長さ、位置をさらに安定させることができる。
さらに、前記製品部が幅方向に複数設けられており、隣接する前記製品部同士の間に前記非製品部が設けられている構成を採用してもよい。
この場合、成形工程で複数の製品部及び非製品部が成形され、スリット工程によって複数の製品部が製出されることになり、異形条材を効率良く生産でき、製造コストの削減を図ることができる。
ここで、隣接する前記製品部同士の間に設けられた前記非製品部に、一のスリットカッタを配置し、隣接する前記製品部に、それぞれ他のスリットカッタを配置することが好ましい。
この場合、一のスリットカッタと他のスリットカッタとによって製品部と非製品部とが切断されるが、隣接する製品部の切断面には同一方向へのせん断力が作用することになり、発生するバリの方向を全て同一にすることができる。
本発明に係る異形条材は、長手方向に直交する断面において板厚が互いに異なる厚板部と薄板部とを備えた異形条材であって、幅方向端面には、塑性加工によって形成された塑性加工面と、スリット加工によって形成された切断面と、が板厚方向に連設されていることを特徴としている。
この構成の本発明に係る異形条材は、スリット加工によって切断された切断面が板厚の一部に抑えられているので、スリット加工によって発生する残留応力が小さい。
ここで、前記塑性加工面が、切断面側に向かうにしたがい漸次幅方向外方に向かうように、板厚方向に対して傾斜していてもよい。
本発明によれば、スリット加工において、スリットカッタの幅方向位置の変動がなく厚板部や薄板部の幅方向長さ、位置が長手方向で安定した異形条材を製出できるとともに、スリット加工時に発生する残留応力を抑えることができる異形条材の製造方法及び異形条材を提供することができる。
以下に、本発明の実施形態である異形条材の製造方法及び異形条材について添付した図面を参照して説明する。
まず、本発明の第1の実施形態である異形条材の製造方法及び異形条材について説明する。本実施形態である異形条材10は、例えば銅又は銅合金で構成されており、リードフレーム材や端子材として使用されるものである。この異形条材10は、長手方向に直交する断面において、板厚の厚い厚板部11と、この厚板部11よりも板厚の薄い薄板部12とを備えており、本実施形態では、図1に示すように、異形条材10の幅方向中央部分に薄板部12が設けられ、幅方向両端側に厚板部11が設けられている。
厚板部11の板厚t1と薄板部12の板厚t2との板厚比t1/t2は、1.1≦t1/t2≦20の範囲となるように設定されている。なお、具体的には、厚板部11の板厚t1が1.3mm、薄板部12の板厚t2が0.4mmとされており、板厚比t1/t2は3.25に設定されている。
この異形条材10の幅方向端面、つまり、幅方向両端側に設けられた厚板部11の側面には、図2に示すように、塑性加工によって形成された塑性加工面13と、スリット加工によって形成された切断面14と、が板厚方向(図1及び図2において上下方向)に連設されている。
塑性加工面13は、長手方向に直交する断面において、図1に示すように、切断面14側(図1において下側)に向かうにしたがい漸次幅方向外方に向かうように、板厚方向に対して傾斜している。また、切断面14は板厚方向に平行に延びている。ここで、塑性加工面13と切断面14(板厚方向)との交差角度αは、0°≦α≦60°の範囲内に設定されている。
次に、この異形条材10の製造方法について説明する。図3にフロー図を示す。
まず、板厚が0.8〜4.0mm、本実施形態では2.5mmの平板状の素材を準備し、この素材に対して異形圧延ロールを用いて圧延を行い、長手方向に直交する断面において幅方向に板厚が異なる部分を成形する(異形ロール圧延工程S11)。その後、 熱処理によって軟化させる(焼鈍工程S12)。そして、焼鈍によって酸化膜等が形成された表面を洗浄し(表面洗浄工程13)、再度、異形圧延ロールによる圧延を行い、所定寸法、所定硬さに仕上げる(仕上圧延工程S14)。
これら異形ロール圧延工程S11、焼鈍工程S12、表面洗浄工程13、仕上圧延工程S14が本実施形態における成形工程S1とされており、この成形工程S1によって、図4に示すように、厚板部11及び薄板部12を有する製品部16が成形される。なお、この成形工程S1により、製品部16の幅方向端部(本実施形態では、幅方向両端側に設けられた厚板部11の側方)に、隣接する製品部16(板厚部11)よりも板厚が薄くされた非製品部17が成形される。ここで、非製品部17の板厚t3は、隣接する製品部16(板厚部11)の板厚t1に対して0.06×t1≦t3≦0.9×t1の範囲内に設定されている。
このように非製品部17の板厚t3が隣接する製品部16(板厚部11)の板厚t1よりも薄く形成されることによって、製品部16(厚板部11)の幅方向端面には段差壁部18が画成される。なお、この段差壁部18は、前述の塑性加工面13となる部分であって、板厚方向に対して交差角度α(0°≦α≦60°)で交差するように傾斜している。
そして、スリット工程S2によって、上下に配置された一組のスリットカッタ20によって製品部16と非製品部17とが切り分けられ、厚板部11及び薄板部12を有する異形条材10が製出されることになる。
ここで、スリットカッタ20は、図5及び図6に示すように、円板状をなしており、それぞれ軸部21を中心として回動可能な構成とされている。上下に配置されたスリットカッタ20は、上下方向に僅かに重なり合うとともに、幅方向に僅かな隙間が画成されるように配設されている。なお、本実施形態では、上下方向のオーバラップ量が0〜0.15mmの範囲とされ、幅方向の隙間が0〜0.1mmの範囲とされている。
また、下方に位置するスリットカッタ20が製品部16(板厚部11)の幅方向端部に配置され、上方に位置するスリットカッタ20が非製品部17に配置されており、非製品部17を下方に向けて切断除去するように構成されている。これにより、スリット工程において発生するバリは、下方側に延びるように形成されることになる。
このスリット工程においては、上方に位置するスリットカッタ20が、製品部16(厚板部11)の幅方向端面に画成された段差壁部18に案内され、その幅方向位置が安定するように構成されている。
このような構成とされた本実施形態である異形条材10及び異形条材10の製造方法によれば、成形工程S1によって厚板部11及び薄板部12を備えた製品部16と非製品部17とが成形され、製品部16(厚板部11)の幅方向端面に段差壁部18が画成されており、スリット工程においては、段差壁部18によって上方に位置するスリットカッタ20の幅方向位置が案内されるので、製品部16と一組のスリットカッタ20との相対的な幅方向位置の変動が防止され、長手方向における厚板部11及び薄板部12の幅方向長さ、位置が安定した異形条材10を製出することができる。
また、製品部16よりも板厚の薄い非製品部17をスリットカッタ20によって切断しているので、スリット加工による残留応力を小さく抑えることができる。
さらに、厚板部11及び薄板部12と非製品部17とが、異形圧延ロールによる圧延加工S11及び仕上圧延工程S14によって成形されるので、別途、非製品部17を成形する工程を設ける必要がなくなり、工程数を減らして異形条材10の製造コストを削減することができる。
また、長手方向に直交する断面において、段差壁部18が板厚方向に対して傾斜しているので、スリットカッタ20と製品部16の幅方向位置が僅かに変動しても、スリットカッタ20が傾斜した段差壁部18によって適切な位置に案内されることになり、厚板部11と薄板部12の幅方向長さ、位置をさらに安定させることができる。ここで、本実施形態では、段差壁部18と板厚方向との交差角度αが0°以上とされているので、スリットカッタ20を非製品部17の部分に容易に配置することができる。また、段差壁部18と板厚方向との交差角度αが60°以下とされているので、非製品部17に位置するスリットカッタ20が段差壁部18に沿って非製品部17から製品部16側へと逆方向に案内されるおそれがない。
さらに、本実施形態においては、非製品部17の板厚t3が、隣接する製品部16(板厚部11)の板厚t1に対してt3≦0.9×t1とされているので、段差壁部17の高さを確保してスリットカッタ20を確実に案内することができるとともにスリット工程による残留応力を確実に低減させることができる。また、非製品部17の板厚t3が、t3≧0.06×t1とされているので、非製品部17の剛性を確保することができ、スリット加工を良好に行うことができる。
次に、本発明の第2の実施形態である異形条材の製造方法及び異形条材について説明する。
この第2の実施形態である異形条材30の製造方法においては、成形工程S1によって幅方向に製品部36が複数設けられており、本実施形態では、図7に示すように、3つの製品部36が成形されている。
そして、製品部36同士の間、及び、幅方向端部に、それぞれ製品部36よりも板厚が薄い非製品部37が成形されている。製品部36の幅方向端面には段差壁部38が画成されており、この段差壁部38は、板厚方向に対して傾斜している。
スリット工程においては、図8に示すように、製品部36同士の間の非製品部37を切断除去して3つの製品部36を切り分けるとともに、幅方向端部の非製品部37を切断除去する。
ここで、製品部36同士の間の非製品部37を切断するスリットカッタ40は、上方に1つ、下方に2つ配設されており、3つのスリットカッタ40で一組とされている。上方に位置するスリットカッタ40が非製品部37に配置され、下方に位置するスリットカッタ40が非製品部37の両脇に隣接する製品部36にそれぞれ配置されている。
また、幅方向端部の非製品部37を切断するスリットカッタ40は、上方に1つ、下方に1つ配設されており、2つのスリットカッタ40で一組とされており、上方に位置するスリットカッタ40が非製品部37に配置され、下方に位置するスリットカッタ40が製品部36に配置されている。
このような構成とされた本実施形態である異形条材30及び異形条材30の製造方法においては、成形工程S1で幅方向に複数(本実施形態では3つ)の製品部36と、製品部36同士の間及び幅方向端部に非製品部37が成形されているので、スリット工程によって複数の製品部36が一度に製出されることになり、異形条材30を効率良く生産でき、製造コストのさらなる削減を図ることができる。
また、製品部36同士の間の非製品部37を切断するスリットカッタ40が、上方に1つ下方に2つの3つのスリットカッタ40で一組とされていて、上方に位置するスリットカッタ40が非製品部37に配置され、下方に位置するスリットカッタ40が非製品部37の両脇に隣接する製品部36にそれぞれ配置されているので、この3つ一組のスリットカッタ40によって製品部36を切り分けることができる。また、非製品部37の上方にスリットカッタ40が配置されているので、隣接する製品部36の切断面(スリット面)には下方向に向けてせん断力が作用し、発生するバリも下方向に向くことになり、3つの製品部36の切断面(スリット面)に発生するバリの方向を統一させることができる。
次に、第3の実施形態である異形条材の製造方法及び異形条材について説明する。
この第3の実施形態である異形条材50の製造方法においては、成形工程S1によって厚板部51及び薄板部52を有する製品部56と非製品部57とが成形されるが、図9に示すように、幅方向両端側に設けられた厚板部51に対して、薄板部52は下方側に設けられ、非製品部57は上方側に設けられている。
そして、スリット工程S2においては、上下に配置された一組のスリットカッタ60は、図10に示すように、上方に位置するスリットカッタ60が製品部56(板厚部51)の幅方向端部に配置され、下方に位置するスリットカッタ60が非製品部57に配置されており、非製品部57を上方に向けて切断除去するように構成されている。
このような構成とされた本実施形態である異形条材50及び異形条材50の製造方法においては、切断面(スリット面)に発生するバリが上方を向くようにスリットされることになる。つまり、非製品部57の位置を設計することによってバリの発生方向を制御することが可能となるのである。よって、切断面(スリット面)のバリの方向を一定とした異形条材50を、要求される仕様に応じて提供することができる。
以上、本発明の実施形態である異形条材及び異形条材の製造方法について説明したが、本発明はこの記載に限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
図1に示すように、厚板部を幅方向端部に設け、薄板部を設けたものとして説明したが、これに限定されることはなく、異形条材の長手方向に直交する断面において板厚が互いに異なる厚板部と薄板部を備えていればよい。例えば、厚板部を幅方向中央部に設け、幅方向端部に薄板部を幅方向端部に設けて、薄板部に隣接するように非製品部を設けても良い。この場合、非製品部の板厚は、隣接する薄板部よりも薄く設定されることになる。
また、異形条材が銅又は銅合金で構成されたものとして説明したが、これに限定されることはなく、鉄やアルミニウム等で構成されていてもよい。ただし、銅又は銅合金で構成された異形条材は、リードフレーム材や端子材として広く使用されることになる。なお、具体的な材質としては、無酸素銅(C1020)、りん脱酸銅(C1220)、Cu−0.1%Fe−0.03%P、Cu−0.15%Sn−0.006%P,Cu−2.3%Fe−0.12%Zn−0.03%P、Cu−0.02%Zr、Cu−0.75%Mg−0.005%P、Cu−0.5%Sn−1.0%Zn−2.0%Ni−0.5%Si、Cu−0.3%Cr−0.1%Zr−0.02%Si、等が挙げられる。
さらに、異形ロール圧延によって厚板部及び薄板部と非製品部とを成形するものとして説明したが、これに限定されることはなく、金型加工、金型圧延加工等によって成形してもよい。
また、スリットカッタの上下方向のオーバラップ量、幅方向の隙間等は、本実施形態に限定されることはなく、材質、板厚等を考慮して適宜設定することが好ましい。
以下に、本発明の効果を確認すべく行った確認実験の結果を説明する。
<幅方向寸法精度>
図11に示すように、幅方向両端部に厚板部が設けられ、幅方向中央部に薄板部が設けられた異形条材において、幅方向端面から薄板部までの距離A,Bをそれぞれ測定し、両端の前記距離の差の絶対値|A−B|を評価した。スリット工程においてスリットカッタが幅方向にずれた場合には、一方側の幅方向端面から薄板部までの距離A(B)が大きくなり、他方側の幅方向端面から薄板部までの距離B(A)が小さくなるので、前記距離の差の絶対値|A−B|が大きくなる。
Cu−0.1%Fe−0.03%Pの素材を異形圧延ロールで圧延して成形し、従来例は、非製品部を設けず厚板部をそのままスリットした。本発明例は、前述した第1の実施形態のように非製品部を設けてスリットした。評価結果を図12に示す。
従来例においては、前記距離の差の絶対値|A−B|の値が大きく、かつ、長手方向において変動が大きいことが確認される。つまり、スリットを行っている間にスリットカッタが幅方向にずれているのである。
一方、本発明例においては、前記距離の差の絶対値|A−B|の値が小さく抑えられ、かつ、長手方向においても変動がほとんど認められない。スリットを行っている間、スリットカッタの幅方向位置が安定していることが確認される。
<残留応力>
スリットして得られた異形条材の残留応力について評価した。板材のスリット時に発生する残留応力の測定方法としては、図12に示すようにスリット面の近傍に切り込みを入れて、スリット面側の部分の変位を評価するものが提案されている(伸銅技術研究会誌第39巻1号(2000)、37−44頁、参照)。なお、切り込み長さについては、100mmとした。
変位は、図13に示すように、曲がり(幅方向への変位ΔB)、反り(板厚方向への変位δ)、ねじれ(θ)で評価した。なお、図13において、符号Lは切り込みの幅を示している。曲がり(幅方向への変位ΔB)については、切り込みの幅Lを考慮して測定する必要がある。評価結果を表1に示す。
Figure 2009291798
従来例と本発明例とを比較すると、曲がり(幅方向への変位ΔB)については差が認められないものの、反り(板厚方向への変位δ)、ねじれθについて従来例の方が大きく変位している。この結果から、本発明例は、従来例に比較して残留応力が抑えられているのが確認される。
以上の確認実験の結果から、本発明によれば、スリットカッタの幅方向位置の変動がなく、幅方向長さ、位置が長手方向で安定し、かつ、スリットによる残留応力が抑えられた異形条材を提供することが可能であることが確認された。
本発明の第1の実施形態である異形条材の長手方向に直交する断面図である。 図1に示す異形条材の側面図である。 本発明の第1の実施形態である異形条材の製造方法を示すフロー図である。 スリット工程に提供される素材の長手方向に直交する断面図である。 スリット工程を示す説明図である。 スリット工程を示す説明図である。 本発明の第2の実施形態である異形条材の製造方法において、スリット工程を行う前の状態を示す図である。 スリット工程を示す説明図である。 本発明の第3の実施形態である異形条材の製造方法において、スリット工程を行う前の状態を示す図である。 スリット工程を示す説明図である。 幅方向寸法精度を評価したグラフである。 残留応力の測定方法を示す説明図である。 残留応力の測定方法を示す説明図である。
符号の説明
10、30、50 異形条材
11、31、51 厚板部
12、32、52 薄板部
13 塑性加工面
14 切断面
16、36、56 製品部
17、37、57 非製品部
18、38、58 段差壁部
20、40、60 スリットカッタ

Claims (7)

  1. 長手方向に直交する断面において板厚が互いに異なる厚板部と薄板部とを備えた異形条材の製造方法であって、
    前記厚板部及び前記薄板部を有する製品部と、前記製品部の幅方向端部に連設された非製品部と、を成形する成形工程と、成形された前記製品部と前記非製品部とを長手方向に切断分離するスリット工程と、を有し、
    前記成形工程では、前記非製品部を、隣接する前記製品部よりも板厚が薄くなるように成形し、前記製品部の幅方向端面に段差壁部を形成し、
    前記スリット工程では、前記段差壁部によって一組のスリットカッタの幅方向位置が案内され、前記一組のスリットカッタにより前記製品部と前記非製品部とを切断分離することを特徴とする異形条材の製造方法。
  2. 前記成形工程においては、前記厚板部及び前記薄板部と、前記非製品部とが、異形圧延ロールによる圧延加工によって成形されていることを特徴とする請求項1に記載の異形条材の製造方法。
  3. 前記長手方向に直交する断面において、前記段差壁部は、前記非製品部側に向かうにしたがい漸次板厚が薄くなるように傾斜していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の異形条材の製造方法。
  4. 前記製品部が幅方向に複数設けられており、隣接する前記製品部同士の間に前記非製品部が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の異形条材の製造方法。
  5. 隣接する前記製品部同士の間に設けられた前記非製品部に、一のスリットカッタが配置され、隣接する前記製品部に、それぞれ他のスリットカッタが配置されていることを特徴とする請求項4に記載の異形条材の製造方法。
  6. 長手方向に直交する断面において板厚が互いに異なる厚板部と薄板部とを備えた異形条材であって、
    幅方向端面には、塑性加工によって形成された塑性加工面と、スリット加工によって形成された切断面と、が板厚方向に連設されていることを特徴とする異形条材。
  7. 前記塑性加工面が、切断面側に向かうにしたがい漸次幅方向外方に向かうように、板厚方向に対して傾斜していることを特徴とする請求項6に記載の異形条材。
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