JP2009283347A - 光電変換素子及びその製造方法、太陽電池 - Google Patents

光電変換素子及びその製造方法、太陽電池 Download PDF

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Abstract

【課題】光電変換効率が高く、高耐久性の光電変換素子及びその製造方法、その光電変換素子を用いた太陽電池を提供することにある。
【解決手段】基板の上に形成されている対向電極間に、少なくとも、カルボキシル基を有する芳香族アミン化合物を担持させてなる半導体層及び電解質層が設けられている色素増感型の光電変換素子の製造方法において、前記半導体層を100℃以上200℃以下で加熱処理し、かつ前記半導体層を加水分解性の金属化合物溶液で処理することを特徴とする光電変換素子の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は光電変換素子に関し、特に色素増感型の光電変換素子及びその製造方法、その光電変換素子を用いた太陽電池に関する。
近年、無限で有害物質を発生しない太陽光の利用が精力的に検討されている。このクリーンエネルギー源である太陽光利用として現在実用化されているものは、住宅用の単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン及びテルル化カドミウムやセレン化インジウム銅等の無機系太陽電池が挙げられる。
しかしながら、これらの無機系太陽電池の欠点としては、例えば、シリコン系では、非常に純度の高いものが要求され、当然精製の工程は複雑でプロセス数が多く、製造コストが高いことが挙げられる。
その一方で、有機材料を使う太陽電池も多く提案されている。有機太陽電池としては、p型有機半導体と仕事関数の小さい金属を接合させるショットキー型光電変換素子、p型有機半導体とn型無機半導体、あるいはp型有機半導体と電子受容性有機化合物を接合させるヘテロ接合型光電変換素子等があり、利用される有機半導体は、クロロフィル、ペリレン等の合成色素や顔料、ポリアセチレン等の導電性高分子材料、またはそれらの複合材料等である。これらを真空蒸着法、キャスト法、またはディッピング法等により、薄膜化し電池材料が構成されている。有機材料は低コスト、大面積化が容易等の長所もあるが、変換効率は1%以下と低いものが多く、また耐久性も悪いという問題もあった。
こうした状況の中で、良好な特性を示す太陽電池がスイスのグレッツェル博士らによって報告された(非特許文献1参照)。提案された電池は色素増感型太陽電池であり、ルテニウム錯体で分光増感された酸化チタン多孔質薄膜を作用電極とする湿式太陽電池である。この方式の利点は酸化チタン等の安価な金属半導体を高純度まで精製する必要がないこと、従って安価で、さらに利用できる光は広い可視光領域にまでわたっており、可視光成分の多い太陽光を有効に電気へ変換できることである。
光励起により生じた電子は増感色素から半導体を経て透明電極へ伝達する。400〜600℃で半導体薄膜を焼成することにより、半導体粒子間の結合力が強まり、電子の伝達が効率的に行われる。しかし、耐熱性の劣る樹脂基板を用いた場合には、樹脂基板の耐熱温度以下で焼成することになるので、焼成後の半導体粒子間の結合力が不十分となり、電子伝達能が低下する。低温処理で半導体粒子間の結合力を上げることができれば、この問題を解決できる。
また、色素増感型太陽電池の多くでは資源的制約があるルテニウム錯体が使われているため、この太陽電池が実用化された場合にルテニウム錯体の供給が危ぶまれる。このルテニウム錯体は高価であるとともに、経時での安定性にも問題があるので、安価で安定な有機色素へ変更することが検討されており、例えば芳香族アミン系の色素を用いた色素増感型太陽電池が報告されている(特許文献1、2参照)。しかし、光電変換効率、耐久性については不十分であった。
特開2005−123033号公報 特開2006−79898号公報 B.O’Regan,M.Gratzel,Nature,353,737(1991)
本発明の目的は、光電変換効率が高く、高耐久性の光電変換素子及びその製造方法、その光電変換素子を用いた太陽電池を提供することにある。
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
1.基板の上に形成されている対向電極間に、少なくとも、カルボキシル基を有する芳香族アミン化合物を担持させてなる半導体層及び電解質層が設けられている色素増感型の光電変換素子の製造方法において、前記半導体層を100℃以上200℃以下で加熱処理し、かつ前記半導体層を加水分解性の金属化合物溶液で処理することを特徴とする光電変換素子の製造方法。
2.基板の上に形成されている対向電極間に、少なくとも、カルボキシル基を有する芳香族アミン化合物を担持させてなる半導体層及び電解質層が設けられている色素増感型の光電変換素子において、前記半導体層が100℃以上200℃以下で加熱処理され、かつ前記半導体層が加水分解性の金属化合物溶液で処理されていることを特徴とする光電変換素子。
3.前記基板が樹脂を主成分とする基板であることを特徴とする前記2に記載の光電変換素子。
4.前記半導体層を形成する半導体が酸化チタンであることを特徴とする前記2または3に記載の光電変換素子。
5.前記金属化合物溶液を構成する金属化合物が四塩化チタンであることを特徴とする前記2〜4のいずれか1項に記載の光電変換素子。
6.前記芳香族アミン化合物がトリアリールアミン化合物であることを特徴とする前記2〜5のいずれか1項に記載の光電変換素子。
7.前記芳香族アミン化合物がシアノ基を有することを特徴とする前記2〜6のいずれか1項に記載の光電変換素子。
8.前記芳香族アミン化合物のモル吸光係数が20000以上であることを特徴とする前記2〜7のいずれか1項に記載の光電変換素子。
9.前記2〜8のいずれか1項に記載の光電変換素子を有することを特徴とする太陽電池。
本発明により、変換効率が高く、高耐久性の光電変換素子及びその製造方法、その光電変換素子を用いた太陽電池を得ることができた。
本発明をさらに詳しく説明する。
本発明の光電変換素子について、図をもって説明する。
図1は、本発明の光電変換素子の一例を示す構成断面図である。
図1に示すように、基板1、1′、透明導電膜2、7、半導体層(半導体薄膜ともいう)3、増感色素4、電解質層5、隔壁9等から構成されている。
本発明の光電変換素子は、半導体電極10として、透明導電膜2を付けた基板1(導電性支持体とも言う。)上に、半導体3−1の粒子を付着形成した後、焼結して形成した空孔を有する半導体層3を有し、その空孔表面に増感色素4を吸着させたものが用いられる。このときの焼成温度または焼成後の加熱温度の高い温度が、本発明でいう加熱処理温度である。
焼成温度は、昇温後の恒温条件温度設定の場合はその設定温度を、温度をプロセスで制御する場合は制御温度上限を意味する。この場合の上限温度には、全温度制御時間の10%以下のピーク的に高い温度は除かれる。
一般に半導体薄膜の作製において、低温処理では膜厚10μm以上の丈夫で均一な薄膜を作ることは困難である。公知のルテニウム錯体はモル吸光係数が比較的小さいので、充分な光電変換性能を発現するには、半導体薄膜の膜厚が20μm程度で必要となるが、本発明に用いる芳香族アミン系色素のモル吸光係数は大きいので、膜厚5μm程度でも充分な光電変換性能を発現することができ、低温処理での半導体薄膜に適した色素である。
対向電極6としては、基板1′上に透明導電膜7が形成され、その上に白金8を蒸着したものが用いられ、両極間には電解質層5として電解質が充填されている。
本発明は、この光電変換素子に用いられる半導体層の改質に関するものである。
光励起により生じた電子は増感色素から半導体を経て透明電極へ伝達する。本発明では、200℃以下という、従来よりも非常に低い温度で行えるようにすることで、樹脂基板の耐熱温度以下で焼成を行っても、半導体粒子間の結合力が十分得られ、良好な電子伝達能が発現できることを見出した。
太陽電池としての実用面を考慮すると、基板1及び1′としては軽量で可撓性のある樹脂を主成分とする基板(樹脂基板)を用いるのが好ましい。しかし、樹脂基板は耐熱性に劣り、耐熱温度以下(通常は200℃以下)で焼成することになるので、焼成後の半導体粒子間の結合性が不十分となり電子伝達能が低下する。本発明者らは、加水分解性の金属化合物溶液でこの半導体薄膜を処理することにより、半導体粒子間の結合性の改善につながり、200℃を超えて加熱することなく光電変換特性を向上させることができた。
半導体薄膜の作製において、低温処理ではペーストの重ね塗りが難しく、膜厚10μm以上の丈夫で均一な薄膜を得ることは困難である。膜厚5μm程度でも充分な可視光吸収能を確保できる色素が好ましく、一般に芳香族アミン系色素のモル吸光係数はルテニウム錯体色素に比べて大きいので、加水分解性の金属化合物処理した上記の半導体薄膜と組み合わせることにより、変換効率の高い光電変換素子を得ることができた。
本発明の光電変換素子において、半導体としては、周期表(元素周期表ともいう)の第3族〜第5族、第13族〜第15族系の元素を有する化合物、金属のカルコゲニド(例えば、酸化物、硫化物、セレン化物等)、金属窒化物等を使用することができる。
好ましい金属のカルコゲニドとして、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、またはタンタルの酸化物、カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモンまたはビスマスの硫化物、カドミウムまたは鉛のセレン化物、カドミウムのテルル化物等が挙げられる。他の半導体としては、亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物、ガリウム−ヒ素または銅−インジウムのセレン化物、銅−インジウムの硫化物、チタンの窒化物等が挙げられる。
具体例としては、TiO、ZrO、SnO、Fe、WO、ZnO、Nb、Ta、CdS、ZnS、PbS、Bi、CdSe、CdTe、GaP、InP、GaAs、CuInS、CuInSe、Ti等が挙げられるが、好ましく用いられるのは、TiO、ZnO、SnO、Fe、WO、Nb、CdS、PbSであり、より好ましく用いられるのは、TiOまたはSnOであるが、中でも特に好ましく用いられるのはTiOである。
光電極に用いる半導体は、上述した複数の半導体を併用して用いてもよい。例えば、上述した金属酸化物もしくは金属硫化物の数種類を併用することもでき、また酸化チタン半導体に20質量%の窒化チタン(Ti)を混合して使用してもよい。また、J.Chem.Soc.Chem.Commun.,15(1999)記載の酸化亜鉛/酸化錫複合としてもよい。このとき、半導体として金属酸化物もしくは金属硫化物以外に成分を加える場合、追加成分の金属酸化物もしくは金属硫化物半導体に対する質量比は30%以下であることが好ましい。
また、半導体層(半導体でもよい)1m当たりの芳香族アミン化合物の総含有量は0.01〜100ミリモルの範囲が好ましく、さらに好ましくは0.1〜50ミリモルであり、特に好ましくは0.5〜20ミリモルである。
〔光電変換素子〕
本発明の光電変換素子は、導電性支持体上の半導体層に色素を吸着させてなる半導体電極と対向電極とを電解質層を介して対向配置してなる。以下、半導体電極、電解質層、対向電極について説明する。
《半導体電極》
本発明に係る半導体電極(図1の10)の作製方法について説明する。
本発明に係る半導体電極の一態様としては、導電性支持体上に上記の半導体を焼成により形成する等の方法が挙げられる。本発明で加熱温度の温度とは、焼成温度または焼成後の加熱温度の高い温度と定義し、100℃以上200℃以下で行うことを特徴とする。
本発明に係る半導体が焼成により作製される場合には、上記の色素や増感色素を用いての半導体の増感(吸着、多孔質への入り込み等)処理は、焼成後に実施することが好ましい。焼成後、半導体に水が吸着する前に素早く色素の吸着処理を実施することが特に好ましい。
本発明に係る半導体が粒子状の場合には、半導体を導電性支持体に塗布あるいは吹きつけて、半導体電極を作製するのがよい。また、本発明に係る半導体が膜状であって、導電性支持体上に保持されていない場合には、半導体を導電性支持体上に貼合して半導体電極を作製することが好ましい。
(導電性支持体)
本発明の光電変換素子や本発明の太陽電池に用いられる導電性支持体には、金属板のような導電性材料や、ガラス板やプラスチックフィルムのような非導電性材料に導電性物質を設けた構造のものを用いることができる。導電性支持体に用いられる材料の例としては、金属(例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム)あるいは導電性金属酸化物(例えば、インジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの)や炭素を挙げることができる。導電性支持体の厚さは特に制約されないが、0.3〜5mmが好ましい。
また、導電性支持体は実質的に透明であることが好ましい。実質的に透明であるとは光の透過率が10%以上であることを意味し、50%以上であることがより好ましく、80%以上であることが最も好ましい。透明な導電性支持体を得るためには、ガラス板またはプラスチックフィルムの表面に、導電性金属酸化物からなる導電性層を設けることが好ましい。透明な導電性支持体を用いる場合、光は支持体側から入射させることが好ましい。
導電性支持体は、表面抵抗が50Ω/cm以下であることが好ましく、10Ω/cm以下であることがさらに好ましい。
(半導体微粉末含有塗布液の調製)
まず、半導体の微粉末を含む塗布液を調製する。この半導体微粉末はその1次粒子径が微細な程好ましく、その1次粒子径は1〜5000nmが好ましく、さらに好ましくは2〜50nmである。半導体微粉末を含む塗布液は、半導体微粉末を溶媒中に分散させることによって調製することができる。溶媒中に分散された半導体微粉末は、その1次粒子状で分散する。溶媒としては半導体微粉末を分散し得るものであればよく、特に制約されない。
前記溶媒としては、水、有機溶媒、水と有機溶媒との混合液が包含される。有機溶媒としては、メタノールやエタノール等のアルコール、メチルエチルケトン、アセトン、アセチルアセトン等のケトン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素等が用いられる。有機溶媒の沸点は100℃以下であることが好ましい。溶媒中の半導体微粉末濃度の範囲は0.1〜70質量%が好ましく、さらに好ましくは0.1〜30質量%である。
(半導体微粉末含有塗布液の塗布と形成された半導体層の焼成処理)
上記のようにして得られた半導体微粉末含有塗布液を、導電性支持体上に塗布または吹きつけ、乾燥等を行った後、空気中または不活性ガス中で焼成して、導電性支持体上に半導体層(半導体膜)を形成する。
導電性支持体上に塗布液を塗布、乾燥して得られる皮膜は、半導体微粒子の集合体からなるもので、その微粒子の粒径は使用した半導体微粉末の1次粒子径に対応するものである。
このようにして導電性支持体等の基板上に形成された半導体微粒子集合体膜は、導電性支持体との結合力や微粒子相互の結合力が弱く、機械的強度の弱いものであることから、前記半導体微粒子集合体膜の焼成処理は、機械的強度を高め、基板に強く固着した焼成物膜とするため好ましく行われる。
本発明においては、この焼成物膜はどのような構造を有していてもよいが、多孔質構造膜(空隙を有する、ポーラスな層ともいう)であることが好ましい。
ここで、本発明に係る半導体薄膜の空隙率は10体積%以下が好ましく、さらに好ましくは8体積%以下であり、特に好ましくは0.01〜5体積%以下である。なお、半導体薄膜の空隙率は誘電体の厚み方向に貫通性のある空隙率を意味し、水銀ポロシメーター(島津ポアライザー9220型)等の市販の装置を用いて測定することができる。
多孔質構造を有する焼成物膜になった半導体層の膜厚は、少なくとも10nm以上が好ましく、さらに好ましくは100〜10000nmである。
焼成処理時、基板の耐熱温度よりも低く、かつ上記の空隙率を有する焼成物膜を得る観点から、焼成温度は200℃以下で処理し、好ましくは100〜150℃の範囲である。
見かけ表面積に対する実表面積の比は、半導体微粒子の粒径及び比表面積や焼成温度等によりコントロールすることができる。半導体粒子の比表面積を増大させ、半導体粒子間の結合性を高めて色素から半導体粒子を経て透明導電膜への電子伝達能を高める目的で、加水分解性の金属化合物溶液で処理を行う。加水分解性の金属化合物溶液で処理とは、加水分解性の金属化合物を水や有機溶媒で希釈した溶液に浸漬し、あるいは溶液中で加熱することである。処理温度は20〜100℃が好ましく、さらに好ましくは60〜80℃の範囲である。処理時間は、1〜120分が好ましく、さらに好ましくは20〜40分の範囲である。
上記加水分解性を有する金属化合物としては、常圧、150℃において1Pa以上の蒸気圧を有する金属アルコキシド、金属アセチル化物、金属錯体、金属ハロゲン化物、金属アルキル化物、金属アルキル化物、金属アミノ化物、金属水素化物またはそれらの複合化物が挙げられる。具体的な金属化合物としては、例えばチタンの金属化合物の場合、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラノルマルプロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラノルマルブトキシチタン、テトライソブトキシチタン、テトラセカンダリーブトキシチタン、テトラターシャリーブトキシチタン、テトラキス(1−メトキシ−2−メチル−2−プロポキシ)チタン、テトラキスジメチルアミノチタン、テトラジエチルアミノチタン、シクロペンタジエニルシクロオクタテトラエニルチタン、ジシクロペンタジエニルビスジメチルアミノチタン、四塩化チタン、四臭化チタン、ジ(イソプロキシ)ビス(ジアセチルアセトネート)チタン、ジ(ノルマルブトキシ)ビス(ジアセチルアセトネート)チタン、ジ(イソプロポキシ)ビス(ジピロバイルメタネート)チタン等が挙げられ、反応性の観点で中でも四塩化チタンが好ましい。加水分解性の金属化合物溶液としては、加水分解後の化合物を溶液に溶解ないしは分散させたものであってもよい。
本発明に係る半導体層は、有機塩基を用いて表面処理してもよい。前記有機塩基としては、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、ピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン、キノリン、ピペリジン、アミジン等が挙げられるが、中でもピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジンが好ましい。
上記の有機塩基が液体の場合は、そのまま固体の場合は有機溶媒に溶解した溶液を準備し、本発明に係る半導体層を液体アミンまたはアミン溶液に浸漬することで、表面処理を実施できる。
(増感色素)
本発明では、半導体層にカルボキシル基を有する芳香族アミン化合物を増感色素として担持させている。以下に、カルボキシル基を有する芳香族アミン化合物(以下、本発明の増感色素とも言う。)の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2009283347
Figure 2009283347
Figure 2009283347
上記増感色素は、トリアリールアミン化合物であることが好ましく、また、電子吸引基を有するシアノ基を有することが好ましい。半導体薄膜の膜厚が5μm以下でも充分な可視光吸収能を確保できる色素が好ましく、具体的には増感色素のモル吸光係数が20000以上であることが好ましい。本発明でのモル吸光係数とは、可視域(400〜700nm)における増感色素の吸光度の極大値をモル濃度ならびに光路長で除算した値として定義されるものである。測定溶媒はエタノールが好ましく用いられる。測定濃度は吸光度が測定できれば特に規定はないが、ピーク吸光度の値が0.2〜2.0となるような濃度であることがバックグランドの誤差の観点から好ましい。
(半導体の増感処理)
半導体の増感処理は上記のように色素を適切な溶媒に溶解し、その溶液に前記半導体を焼成した基板を浸漬することによって行われる。その際には、半導体層(半導体膜ともいう)を焼成により形成させた基板を、予め減圧処理や加熱処理して膜中の気泡を除去し、本発明の増感色素が半導体層(半導体膜)内部深くに進入できるようにしておくことが好ましく、半導体層(半導体膜)が多孔質構造膜である場合には特に好ましい。
本発明の増感色素を溶解するのに用いる溶媒は、前記色素を溶解することができ、かつ半導体を溶解したり半導体と反応したりすることのないものであれば格別の制限はないが、溶媒に溶解している水分及び気体が半導体膜に進入して、前記色素の吸着等の増感処理を妨げることを防ぐために、予め脱気及び蒸留精製しておくことが好ましい。
好ましく用いられる溶媒は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、t−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒、塩化メチレン、1,1,2−トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒であり、混合溶媒を用いてもよい。特に好ましくはエタノール、t−ブチルアルコール、アセトニトリルである。
(増感処理の温度、時間)
半導体を焼成した基板を本発明の増感色素を含む溶液に浸漬する時間は、半導体層(半導体膜)に前記色素が深く進入して吸着等を十分に進行させ、半導体を十分に増感させ、かつ溶液中で前記色素の分解等により生成した分解物が色素の吸着を妨害することを抑制する観点から、25℃では1〜48時間が好ましく、さらに好ましくは3〜24時間である。この効果は、特に半導体膜が多孔質構造膜である場合において顕著である。ただし、浸漬時間については25℃での値であり、温度条件を変化させて場合にはこの限りではない。
浸漬しておくに当たり、本発明の増感色素を含む溶液は、前記色素が分解しない限り、沸騰しない温度にまで加熱して用いてもよい。好ましい温度範囲は10〜100℃であり、さらに好ましくは25〜80℃であるが、前記の通り溶媒が前記温度範囲で沸騰する場合はこの限りでない。
本発明の増感色素を用いて増感処理を行う場合、本発明の増感色素を単独で用いてもよいし、複数を併用することもできる。
また、本発明の増感色素と他の色素を併用して用いることもできる。併用して用いることのできる色素としては、本発明に係る半導体層を分光増感しうるものならばいずれの色素も用いることができる。光電変換の波長域をできるだけ広くし、かつ変換効率を上げるため2種類以上の色素を混合することが好ましい。また、目的とする光源の波長域と強度分布に合わせるように混合する色素とその割合を選ぶことができる。
特に、本発明の光電変換素子の用途が後述する太陽電池である場合には、光電変換の波長域をできるだけ広くして太陽光を有効に利用できるように、吸収波長の異なる二種類以上の色素を混合して用いることが好ましい。
併用して用いる色素の中では、光電子移動反応活性、光耐久性、光化学的安定性等の総合的な観点から、金属錯体色素、フタロシアニン系色素、ポルフィリン系色素、ポリメチン系色素が好ましく用いられる。
本発明の増感色素と併用して用いることのできる色素としては、例えば、米国特許第4,684,537号明細書、同4,927,721号明細書、同5,084,365号明細書、同5,350,644号明細書、同5,463,057号明細書、同5,525,440号明細書、特開平7−249790号公報、特開2000−150007号公報等に記載の色素を挙げることができる。
半導体層に本発明の増感色素を含ませるには、前記化合物を適切な溶媒(エタノール等)に溶解し、その溶液中によく乾燥した半導体を長時間浸漬する方法が一般的である。
本発明の増感色素を複数種類併用したり、その他の増感色素を併用して増感処理する際には、各々の色素の混合溶液を調製して用いてもよいし、それぞれの化合物について溶液を用意して、各溶液に順に浸漬して作製することもできる。各化合物について別々の溶液を用意し、各溶液に順に浸漬して作製する場合は、半導体層に前記化合物や増感色素等を含ませる順序がどのようであっても、本発明に記載の効果を得ることができる。また、前記化合物を単独で吸着させた半導体微粒子を混合する等することにより作製してもよい。
吸着処理は半導体層が粒子状の時に行ってもよいし、支持体上に膜を形成した後に行ってもよい。吸着処理に用いる化合物を溶解した溶液はそれを常温で用いてもよいし、該化合物が分解せず溶液が沸騰しない温度範囲で加熱して用いてもよい。また、後述する光電変換素子の製造のように、半導体微粒子の塗布後に前記色素の吸着を実施してもよい。また、半導体微粒子と本発明の増感色素とを同時に塗布することにより、色素の吸着を実施してもよい。また、未吸着の色素は洗浄によって除去することができる。
また、本発明に係る半導体層の増感処理については、半導体を本発明の増感色素を含むことにより増感処理が行われるが、増感処理の詳細については、後述する光電変換素子のところで具体的に説明する。
また、空隙率の高い半導体薄膜を有する半導体層の場合には、空隙に水分、水蒸気等により水が半導体薄膜上、並びに半導体薄膜内部の空隙に吸着する前に、前記増感色素の吸着処理(半導体層の増感処理)を完了することが好ましい。
《電解質層》
本発明に用いられる電解質層(電荷移動層ともいう)について説明する。
電荷移動層にはレドックス電解質が好ましく用いられる。ここで、レドックス電解質としては、I/I 系や、Br/Br 系、キノン/ハイドロキノン系等が挙げられる。このようなレドックス電解質は従来公知の方法によって得ることができ、例えば、I/I 系の電解質はヨウ素のアンモニウム塩とヨウ素を混合することによって得ることができる。電荷移動層はこれらレドックス電解質の分散物で構成され、それら分散物は溶液である場合に液体電解質、常温において固体である高分子中に分散させた場合に固体高分子電解質、ゲル状物質に分散された場合にゲル電解質と呼ばれる。電荷移動層として液体電解質が用いられる場合、その溶媒としては電気化学的に不活性なものが用いられ、例えば、アセトニトリル、炭酸プロピレン、エチレンカーボネート等が用いられる。固体高分子電解質の例としては、特開2001−160427号公報記載の電解質が、ゲル電解質の例としては「表面科学」21巻、第5号288〜293頁に記載の電解質が挙げられる。
《対向電極》
本発明に用いられる対向電極について説明する。
対向電極は導電性を有するものであればよく、任意の導電性材料が用いられるが、I イオン等の酸化や他のレドックスイオンの還元反応を十分な速さで行わせる触媒能を持ったものの使用が好ましい。このようなものとしては、白金電極、導電材料表面に白金メッキや白金蒸着を施したもの、ロジウム金属、ルテニウム金属、酸化ルテニウム、カーボン等が挙げられる。
〔太陽電池〕
本発明の太陽電池について説明する。
本発明の太陽電池は、本発明の光電変換素子の一態様として太陽光に最適の設計並びに回路設計が行われ、太陽光を光源として用いたときに最適な光電変換が行われるような構造を有する。即ち、色素増感された半導体に太陽光が照射されうる構造となっている。本発明の太陽電池を構成する際には、前記半導体電極、電荷移動層及び対向電極をケース内に収納して封止するか、あるいはそれら全体を樹脂封止することが好ましい。
本発明の太陽電池に太陽光または太陽光と同等の電磁波を照射すると、半導体に吸着された本発明に係る色素は、照射された光もしくは電磁波を吸収して励起する。励起によって発生した電子は半導体に移動し、次いで導電性支持体を経由して対向電極に移動して、電荷移動層のレドックス電解質を還元する。一方、半導体に電子を移動させた本発明に係る色素は酸化体となっているが、対向電極から電荷移動層のレドックス電解質を経由して電子が供給されることにより、還元されて元の状態に戻り、同時に電荷移動層のレドックス電解質は酸化されて、再び対向電極から供給される電子により還元されうる状態に戻る。このようにして電子が流れ、本発明の光電変換素子を用いた太陽電池を構成することができる。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明これらに限定されない。
実施例1
〔光電変換素子1の作製〕
市販の低温焼成用酸化チタンペースト(粒径18nmの酸化チタン粒子を有機溶媒に分散したもの)を、酸化インジウムスズ(ITO)導電性膜でコーティングしたポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルム基板へスキージ法(塗布面積5×5mm)により塗布した。150℃で5分間加熱乾燥を行い、厚さ3μmの酸化チタン薄膜を得た。このフィルム基板を70℃の0.1モル/l四塩化チタン水溶液中で30分浸漬し、充分に水洗後、再度150℃で5分間加熱乾燥を行った。
色素(1)をアセトニトリル:t−ブチルアルコール=1:1の混合溶媒に溶解し、5×10−4モル/lの溶液を作製した。酸化チタンを塗布焼結したPETフィルム基板をこの溶液に室温で3時間浸漬して、色素の吸着処理を行い、半導体電極を作製した。
電荷移動層(電解液)には、ヨウ化1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウム0.6モル/l、ヨウ化リチウム0.1モル/l、ヨウ素0.1モル/l、4−(t−ブチル)ピリジン0.5モル/lを含むアセトニトリル溶液を用いた。対極にはITO導電性膜でコーティングしたPETフィルム基板に白金を蒸着したものを用い、電解液を注入して、先に作製した半導体電極並びに対極を紫外線硬化樹脂フィルムで貼り合わせることにより光電変換素子1を作製した。
〔光電変換素子2〜15の作製〕
光電変換素子1で用いた色素(1)の代わりに色素(2)〜(5)及び色素(R1)を用いた他は、光電変換素子1と同様にして光電変換素子2〜5及び8を作製した。光電変換素子1において、加熱乾燥温度を50℃、100℃、200℃、250℃とした他は同様にして、それぞれ光電変換素子9、6、7及び10を作製した。光電変換素子1〜5の作製において、四塩化チタン水溶液処理をしなかった他は同様にして、それぞれ光電変換素子11〜15を作製した。
Figure 2009283347
〔光電変換素子の評価〕
得られた各光電変換素子について下記の評価を行った。
作製した光電変換素子を、ソーラーシミュレータ(英弘精機製)を用い、AMフィルター(AM−1.5)を通したキセノンランプから100mW/cmの擬似太陽光を照射することにより行った。半導体電極に5×5mmのマスクをかけた条件下で光電変換特性の測定を行った。即ち、I−Vテスターを用いて室温にて電流−電圧特性を測定し、短絡電流(Jsc)、開放電圧(Voc)、及び形状因子(FF)を求め、これらから光電変換効率(η(%))を求めた。さらに、擬似太陽光を100時間曝露させた前後での光電変換効率の変化を比較した。なお、光電変換素子の光電変換効率(η(%))は下記式(A)に基づいて算出した。
式(A) η=100×(Voc×Jsc×FF)/P
ここで、Pは入射光強度[mW・cm−2]、Vocは開放電圧[V]、Jscは短絡電流密度[mA・cm−2]、FFは形状因子を示す。
評価の結果を、色素のモル吸光係数(日本分光製V−530を用いエタノール溶液中で測定した値)及び半導体層の加熱処理温度と併せて表1に示す。なお、光電変換素子10では基板の熱劣化のため酸化チタンの一部が剥離していた。また、光電変換素子9及び11〜15では酸化チタンの基板への接着性、ならびに酸化チタン粒子間の接着性が不十分のため酸化チタンの一部が剥離していた。
Figure 2009283347
表より、カルボキシル基を有する芳香族アミン化合物である色素(1)〜(5)を用いた本発明の光電変換素子の光電変換効率は、比較色素(R1)を用いた比較の光電変換素子の光電変換効率を上回っており、さらに、増感色素がシアノ基を有しているトリアリールアミン化合物で、かつモル吸光係数が20000以上である色素(1)及び(2)は、光電変換効率が3%以上であり、より好ましいことが分かる。
また、擬似太陽光照射において、本発明の色素を用いた光電変換素子は、いずれも比較色素を用いた光電変換素子に比べ、高い耐光性を有することが分かる。
本発明の光電変換素子に、半導体電極の作製過程で四塩化チタン水溶液処理を行うことにより、酸化チタンの基板への接着性、及びこれに伴う光電変換効率の向上が観測された。
光電変換素子1、6、7、9及び10の比較により、半導体層の加熱処理温度が100℃以上200℃以下のときに本発明の効果が発現することが分かる。
本発明の光電変換素子の一例を示す構成断面図である。
符号の説明
1、1′ 基板
2、7 透明導電膜
3 半導体層
4 増感色素
5 電解質層
6 対向電極
8 白金
9 隔壁
10 半導体電極

Claims (9)

  1. 基板の上に形成されている対向電極間に、少なくとも、カルボキシル基を有する芳香族アミン化合物を担持させてなる半導体層及び電解質層が設けられている色素増感型の光電変換素子の製造方法において、前記半導体層を100℃以上200℃以下で加熱処理し、かつ前記半導体層を加水分解性の金属化合物溶液で処理することを特徴とする光電変換素子の製造方法。
  2. 基板の上に形成されている対向電極間に、少なくとも、カルボキシル基を有する芳香族アミン化合物を担持させてなる半導体層及び電解質層が設けられている色素増感型の光電変換素子において、前記半導体層が100℃以上200℃以下で加熱処理され、かつ前記半導体層が加水分解性の金属化合物溶液で処理されていることを特徴とする光電変換素子。
  3. 前記基板が樹脂を主成分とする基板であることを特徴とする請求項2に記載の光電変換素子。
  4. 前記半導体層を形成する半導体が酸化チタンであることを特徴とする請求項2または3に記載の光電変換素子。
  5. 前記金属化合物溶液を構成する金属化合物が四塩化チタンであることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  6. 前記芳香族アミン化合物がトリアリールアミン化合物であることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  7. 前記芳香族アミン化合物がシアノ基を有することを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  8. 前記芳香族アミン化合物のモル吸光係数が20000以上であることを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  9. 請求項2〜8のいずれか1項に記載の光電変換素子を有することを特徴とする太陽電池。
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