JP2009282460A - 光変調器 - Google Patents

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Abstract

【課題】動作波長帯域が広く、作用長が短く、コンパクトな光変調器を実現する。
【解決手段】光変調器1を、マッハツェンダ干渉計4の第1光導波路2又は第2光導波路3を伝搬する光が結合する位置に、リング共振器5を構成するリング光導波路6が設けられており、伝搬する光の位相が変化するようにリング光導波路6の屈折率を変化させるための電極7が、リング光導波路6に沿って設けられているものとする。
【選択図】図1

Description

本発明は、光変調器、光伝送システム、光変調方法に関する。
従来、光の干渉を利用した変調器としては、例えば図22に示すようなマッハツェンダ(Mach-Zehnder)型の変調器(MZ変調器)が一般的である。
MZ変調器は、図22に示すように、入力電気信号(光や熱等でも良い)に基づいて光導波路を構成する材料の屈折率を変化させ(即ち光路長を変化させ)、これによって得られる伝搬光の位相の変化をマッハツェンダ干渉計によって光の強度変化に変換することで、入力された連続光の強度を変調し、変調光として出力するものである。
このようなMZ変調器は、図22に示すように、マッハツェンダ干渉計を構成する2本のアームを備える。2本のアームは、それぞれ、分岐等のない一本の光導波路によって形成されている。そして、MZ変調器に入力された連続光は、分岐されて2本のアームを伝搬した後、再び結合(合波)され、出力される。
また、図22に示すように、2本のアームには、それぞれ、光導波路の屈折率を変化させるための電極が、ほぼ全領域にわたって設けられている。そして、各電極を介して各アームに電界を印加し、その光導波路の屈折率を変化させることで、各アームを伝搬する光の位相を変化させ、各アームを伝搬してきた光に位相差を生じさせ、これらを干渉させることで、出力される光の強度を変化させる。
ここで、各アームを伝搬してきた光の位相は、アームを構成する光導波路の等価屈折率をn、アームの長さをL、伝搬する光の波長をλとして、次式(1)によって表される。
2π・nL/λ・・・(1)
一方、リング共振器を用いた変調器(リング共振器型変調器)も検討されている。
リング共振器型変調器は、直線状光導波路にリング共振器を結合させて構成される。なお、直線状光導波路の一方の端部が入力ポートとなり、他方の端部が出力ポートとなる。
リング共振器型変調器では、リング共振器を構成するリング光導波路に与える変調電圧に応じて、リング共振器の透過スペクトル(強度スペクトル)における遮断波長帯の位置をシフトさせることで、光の変調動作を実現する。
例えば、リング共振器を構成するリング光導波路への印加電圧が0の場合に、動作波長が透過スペクトルの遮断帯(ディップ)上に位置するようにする。これにより、出力ポートから出力される光の強度をOFF状態とする。一方、リング共振器を構成するリング光導波路に電圧を印加すると、リング光導波路の屈折率がわずかに変化して、透過スペクトルの遮断帯がわずかにシフトする。このシフトによって、動作波長が、透過スペクトルの遮断帯から外れて、透過スペクトルの透過帯上に位置するようになる。これにより、出力ポートから出力される光の強度をON状態とする。
このように、リング共振器型変調器では、リング共振器の透過スペクトルの透過帯と遮断帯との境界の透過率が急峻に変化する領域を利用することで、リング光導波路のわずかな屈折率変化によって、大きな出力光強度の変化が得られるようにして、十分な消光比を実現している。
Ansheng Liu et al., "High-speed optical modulation based on carrier depletion in a silicon waveguide", Optics Express, vol. 15, No. 2, pp.660-668, 22 January 2007 Qianfan Xu et al., "Micrometre-scale silicon electro-optic modulator", Nature, vol. 435, pp.325-327, 19 May 2005
ところで、上述のMZ変調器において十分な消光比を得るためには、電界の印加によって得られる屈折率変化によって各アームを伝搬する光の位相がπ、あるいは、これに近いだけずれるように、アーム長(作用長)Lを決める必要がある。
ここで、各アームを構成する光導波路の屈折率の変化量は、各アームを構成する光導波路の材料によって、得られる値が概ね決まっている。
このため、MZ変調器では、各アームを構成する光導波路の材料によって、必要なアーム長Lが決まってしまう。
したがって、アーム長Lを大幅に短くすることは困難である。例えば、シリコン材料中のフリーキャリア・プラズマ効果を利用する場合、屈折率の変化量は5×10−5程度であり、この場合、3.8mm程度のアーム長が必要になる。
そこで、このようなMZ変調器において、十分な消光比を保ちつつ、アーム長(作用長;電極の長さ)を短くしてコンパクト化を図りたい。
一方、上述のリング共振器型変調器では、リング共振器の透過スペクトルを急峻にするために(即ち、リング共振器のQ値を大きくするために)、直線状光導波路とリング共振器との間の結合係数κを最適化する。このため、十分な消光比が得られるようにしながら、リング共振器を構成するリング光導波路の直径を小さくして、変調器を小型化することが可能である。例えば、リング光導波路の半径を5μm程度にすることができる。
しかしながら、リング共振器型変調器の透過スペクトルの遮断帯のシフト量(即ち、リング共振器の共振波長のシフト量;リング共振器型変調器の動作波長帯域)は、リング光導波路を構成する材料の屈折率変化の大きさによって決まってしまう。
ここで、リング共振器の共振波長λcは、次式(2)によって表される。
λc=2πR・n/m・・・(2)
なお、Rはリング共振器を構成するリング光導波路の半径(リング径)、nはリング共振器を構成するリング光導波路の等価屈折率、mは自然数である。
このように、リング共振器の共振波長λcは、リング共振器を構成するリング光導波路の等価屈折率nに比例する。つまり、リング共振器の共振波長λcのシフト量、即ち、リング共振器の透過スペクトルの遮断帯のシフト量は、リング共振器を構成するリング光導波路の屈折率の変化量に比例する。なお、リング光導波路の屈折率の変化量は、リング光導波路を構成する材料によって、得られる値が概ね決まってしまう。
例えば、シリコン中にキャリアを注入したものでは、屈折率の変化量は概ね10−4程度であり、これによって得られる透過スペクトルの遮断帯のシフト量(即ち、共振波長λcのシフト量)は0.1nm程度であり、非常に小さい。
このように透過スペクトルの遮断帯のシフト量、即ち、リング共振器型変調器の動作波長帯域が非常に小さい場合、変調器に入力する連続光の波長が、非常に小さい帯域(例えば0.1nmの範囲内)に入るようにしなければならない。このため、レーザの発振波長と変調器の動作波長との間の波長合わせ制御の精度に対する要求が非常に厳しくなり、実際の光伝送システムにおいて用いることは困難である。
したがって、リング共振器型変調器においては、動作波長帯域を広くしたい。
そこで、動作波長帯域が広く、作用長が短く、コンパクトな光変調器を実現したい。
このため、光変調器は、マッハツェンダ干渉計の第1光導波路又は第2光導波路を伝搬する光が結合する位置に、リング共振器を構成するリング光導波路が設けられており、伝搬する光の位相が変化するようにリング光導波路の屈折率を変化させるための電極が、リング光導波路に沿って設けられていることを要件とする。
したがって、光変調器によれば、動作波長帯域を広くし、作用長を短くし、コンパクト化を図ることができるという利点がある。
以下、図面により、本実施形態にかかる光変調器、光伝送システム、光変調方法について説明する。
[第1実施形態]
まず、第1実施形態にかかる光変調器について、図1〜図3を参照しながら説明する。
本実施形態では、光変調器として、光通信用の光変調器を例に挙げて説明する。
なお、本光変調器は、例えば光送信器に備えられ、この光送信器と、この光送信器に光伝送路を介して接続された光受信器とを含むものとして光伝送システムが構成される。
図1に示すように、本光変調器1は、2本のアーム(第1光導波路2及び第2光導波路3)を有するマッハツェンダ干渉計(MZ干渉計)4にリング共振器5を装荷したリング装荷型マッハツェンダ変調器(リング共振器アシスト型のMZ変調器)である。
本変調器1は、図1に示すように、MZ干渉計4を構成する第1光導波路2及び第2光導波路3と、リング共振器5を構成するリング光導波路(リング共振器型導波路)6と、伝搬する光の位相が変化するようにリング光導波路6の屈折率を変化させるための電極(リング電極)7とを備える。
ここで、リング光導波路6は、図1に示すように、第1光導波路2又は第2光導波路3(ここでは第1光導波路2)を伝搬する光が結合する位置に設けられる。
また、電極7は、図1に示すように、リング光導波路6に沿って設けられる。この電極7は、変調信号が供給される変調電極である。ここでは、リング光導波路6の実質的に全円周部分に、リング光導波路6の屈折率を高周波電気信号によって変調するための電極7が設けられている。
このようなリング装荷型MZ変調器1では、図1に示すように、通常のMZ変調器と同様に、MZ干渉計4に入力された連続光は、分岐されてMZ干渉計4を構成する2本のアーム2,3を伝搬した後、再び結合(合波)され、変調器出力光として出力される。
この際、アーム2に装荷されたリング共振器5に電界を印加し、リング光導波路6の屈折率を変化させることで、アーム2を伝搬する光の位相を変調する。
そして、アーム2を伝搬する際にリング共振器5によって位相変調された光を、アーム伝搬後にアーム3を伝搬してきた光と干渉させることで、光の強度を変調する。
つまり、本実施形態にかかる光変調方法では、MZ干渉計4を構成する2つのアーム2,3の少なくとも一方(ここではアーム2)を伝搬する光が結合する位置に設けられたリング共振器5によって、伝搬する光の位相を変化させた後、MZ干渉計4によって、伝搬する光の強度を変化させて、入力された連続光を変調する。
より具体的には、本光変調方法では、2つのアーム2,3の少なくとも一方(ここではアーム2)にリング共振器5を装荷されたMZ干渉計4に連続光を入力する。次に、リング共振器5を構成するリング光導波路6の屈折率を変化させることによって、2つのアーム2,3の少なくとも一方(ここではアーム2)を伝搬する光の位相スペクトルをシフトさせて位相を変化させる。これによって、2つのアーム2,3のそれぞれを伝搬する光に位相差を生じさせる。そして、MZ干渉計4によって、2つのアーム2,3のそれぞれを伝搬してきた光を干渉させて強度変調する。
また、本変調器1は、次のようにして製造される(本変調器の製造方法)。つまり、MZ干渉計4を構成する第1光導波路2及び第2光導波路3を形成し、リング共振器4を構成するリング光導波路6を、第1光導波路2又は第2光導波路3(ここでは第1光導波路2)を伝搬する光が結合する位置に形成し、伝搬する光の位相が変化するようにリング光導波路6の屈折率を変化させるための電極7を、リング光導波路6に沿って形成する。このようにして、本変調器1が製造される。
ここで、本変調器1におけるリング共振器5による位相変化を利用した変調の動作原理について、図2(A)〜(E)を参照しながら説明する。
本変調器1では、リング共振器5の出力光(リング出力光;リング共振器5に結合せずに伝搬する光も含む)の位相スペクトルのシフトを利用して変調を行なう。
まず、本変調器1では、MZ干渉計4のアーム2にリング共振器5が装荷されているため、アーム2を伝搬する光のうち、リング共振器5の共振波長帯域に含まれる波長の光は、リング光導波路6に結合し、リング光導波路6を伝搬した後、再びアーム2に結合して伝搬することになる。つまり、リング共振器5の共振波長帯域において、アーム2を伝搬する光の群遅延時間は大きくなる。これは、リング光導波路6が設けられている部分を通過した後、リング共振器5の共振波長帯域において、位相が波長によって大きく変化することになる(即ち、位相スペクトルに大きな傾きが生じる)ことと等価である。
このため、リング出力光の位相スペクトルは、図2(A)に示すように、リング共振器5の中心共振波長を含む広い共振波長帯域(リング共振波長帯域)において、傾き(波長の変化に対する位相の変化の割合)が大きくなっており、直線的に変化している。
なお、本変調器1では、リング出力光の強度スペクトルが、図2(D)に示すように、広いリング共振波長帯域の内外で比較的小さく変化し、その境界部分(リング共振波長帯域の端部)では比較的なだらかに変化するようになっている。
本変調器1を用いて、入力された連続光(入力連続光)を変調して変調光(変調器出力光)として出力する場合、変調のための電気信号を、電極7を介して、リング光導波路6に印加して、リング光導波路6の屈折率を変化させる(図1参照)。
この屈折率変化によって、図2(B)に示すように、リング出力光の位相スペクトルが波長軸方向へシフトする。
上述のように、リング共振器5の広いリング共振波長帯域では、図2(B)に示すように、位相スペクトルの傾きが大きくなっているため、わずかな屈折率変化で位相スペクトルがわずかにシフトすれば、リング出力光の位相が大きく変化する。このため、本変調器では、図2(B)に示すように、位相スペクトルのリング共振波長帯域内に動作波長を設定する。したがって、本変調器1では、動作波長帯域がリング共振器5の広いリング共振波長帯域とほぼ等しくなり、広い動作波長帯域が得られることになる。また、本変調器では、広い動作波長帯域において位相を変化させることができる。
なお、このようにしてリング出力光の位相スペクトルをシフトさせると、図2(E)に示すように、リング出力光の強度スペクトルも波長軸方向へ同じ幅だけシフトする。この結果、リング出力光の強度も変化することになる。しかしながら、本変調器の動作波長帯域においてリング出力光の強度変化は非常に小さいため、リング出力光の強度スペクトルがシフトしたとしても、変調器出力光の強度変化にはほとんど影響を与えない。
そして、本変調器1では、リング共振器5がMZ干渉計4の中に組み込まれているため、リング出力光に生じた位相変化は、MZ干渉計4によって、変調器出力光における強度変化に変換される。
このように、本変調器1では、リング共振器5によって位相変化を生じさせて、MZ干渉計4の2本のアーム2,3を伝搬する光に位相差を生じさせ、これらをMZ干渉計4によって干渉させることで強度変調を行なう。
したがって、図2(C)に示すように、本変調器1では、その広い動作波長帯域において所望の消光比(変調器出力光の強度変化)が得られることになる。この場合、MZ干渉計4による強度変調によって所望の消光比(変調器出力光の強度変化)が得られるように、リング共振器5によってある程度の位相変化を生じさせることができれば良く、それほど大きな位相変化を生じさせなくても良い。つまり、リング出力光の位相スペクトルの傾きをそれほど大きくしなくても良い。このため、広いリング共振波長帯域(広い動作波長帯域)を実現することができる。
このように、リング出力光の位相スペクトルのシフトを用いて変調を行なう場合には、広い動作波長帯域が得られることになる。
これに対し、従来のリング共振器型変調器では、リング共振器による強度変化を利用して変調を行なうようになっている。
つまり、従来のリング共振器型変調器では、図3(A)に示すように、入力された連続光を、リング共振器によって強度変調し、リング共振器からの出力光をそのまま変調器出力光として出力するようになっている。
この場合、リング共振器による強度変調は、変調のための電気信号を、電極を介してリング光導波路に印加し、リング光導波路の屈折率を変化させて、図3(C)に示すように、リング共振器の出力光(リング出力光;変調器出力光)の強度スペクトルを波長軸方向へシフトさせることによって行なわれる。
このため、従来のリング共振器型変調器では、図3(C)に示すように、わずかな屈折率変化で強度スペクトルがわずかにシフトするだけで、リング出力光(変調器出力光)の強度が大きく変化し、十分な消光比が得られるようにする必要がある。
そこで、リング出力光(変調器出力光)の強度スペクトルが、図3(B)に示すように、リング共振波長帯域において、急峻に、かつ、大きく変化するようにする。
そして、図3(C)に示すように、リング出力光(変調器出力光)の強度スペクトルの急峻な変化を利用して変調を行なうために、強度スペクトルのリング共振波長帯域の端部の傾き(波長の変化に対する強度の変化の割合)が大きい部分がわずかな屈折率変化でわずかにシフトする狭い帯域内に動作波長を設定する。
したがって、従来のリング共振器型変調器の動作波長帯域は、わずかな屈折率変化で強度スペクトルがシフトする狭い帯域幅とほぼ等しくなり、非常に狭い動作波長帯域となる。
ところで、本変調器1では、上述のように、MZ干渉計4にリング共振器5を装荷し、リング共振器5によってある程度の位相変化を生じさせることによって、所望の消光比を得ることができる。つまり、リング共振器5による位相変化を用いれば、従来のMZ変調器と同一の屈折率変化を利用して一定の大きさの消光比を得るのに、従来のMZ変調器よりも作用長を短くすることができる。また、リング共振器5の大きさは小さいため、MZ干渉計4の2本のアーム2,3の長さ(アーム長)を短くすることもできる。
したがって、本実施形態にかかる光変調器(リング装荷型MZ変調器)によれば、動作波長帯域を広くし、作用長を短くし、コンパクト化(小型化)を図ることができるという利点がある。
なお、上述の実施形態では、MZ干渉計を構成する2本のアームの一方にリング共振器を設けているが、これに限られるものではない。例えば、MZ干渉計を構成する2本のアームの両方に一つずつリング共振器を設けても良い。また、後述する各実施形態のように、MZ干渉計を構成する2本のアームのそれぞれに複数のリング共振器を設けても良い。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態にかかる光変調器(リング装荷型MZ変調器)について、図4〜図11を参照しながら説明する。
本実施形態にかかるリング装荷型MZ変調器は、上述の第1実施形態のリング共振器による位相変化を利用した変調の原理を用いるリング装荷型MZ変調器であって、図4に示すように、MZ干渉計4を構成する2本のアーム(第1光導波路2及び第2光導波路3)のそれぞれに複数のリング共振器(複数の第1リング共振器50及び複数の第2リング共振器51)が設けられており、複数の第1リング共振器50の相互間で、又は、複数の第2リング共振器51の相互間でリング径が変えられている。なお、図4では、上述の第1実施形態のもの(図1参照)と同一のものには同一の符号を付している。
本実施形態では、図4に示すように、複数の第1リング共振器50のそれぞれを構成する複数の第1リング光導波路60が、第1光導波路2を伝搬する光が結合する位置に設けられている。また、複数の第2リング共振器51のそれぞれを構成する複数の第2リング光導波路61が、第2光導波路3を伝搬する光が結合する位置に設けられている。
また、複数の第1リング光導波路60は、図4に示すように、互いにリング径が異なるように形成されている。つまり、複数の第1リング共振器50は、互いに共振波長が異なるように形成されている。なお、本実施形態では、複数の第1リング光導波路60の導波路幅は同一である。
同様に、複数の第2リング光導波路61は、図4に示すように、互いにリング径が異なるように形成されている。つまり、複数の第2リング共振器51は、互いに共振波長が異なるように形成されている。なお、本実施形態では、複数の第2リング光導波路61の導波路幅は同一である。
また、図4に示すように、複数の第1リング光導波路60のそれぞれに沿って複数の第1電極70が設けられている。さらに、複数の第2リング光導波路61のそれぞれに沿って複数の第2電極71が設けられている。
この場合、MZ干渉計4を構成する両方のアーム2,3間で同様の構成になるように第1リング共振器50及び第2リング共振器51を装荷するのが好ましい。つまり、第1光導波路2、第1リング光導波路60及び第1電極70と、第2光導波路3、第2リング光導波路61及び第2電極71とは、それぞれ、同一の構成になるようにするのが好ましい。
また、第1電極70及び第2電極71には、図4に示すように、それぞれ、高周波変調信号(電気信号)を供給するための変調電源(高周波電源)8,9が接続されている。つまり、本変調器10は、2つの変調電源8,9から供給される高周波変調信号によって駆動されるようになっている。
ここでは、第1電極8及び第2電極9には、互いに逆相で同一の振幅を有する高周波電気信号(ここでは電圧信号)が供給され、本変調器10がプッシュプル駆動されるようになっている。
つまり、本変調器10を駆動する場合、MZ干渉計4の2つのアーム2,3のそれぞれに装荷された第1リング共振器50及び第2リング共振器51に設けられる第1電極70及び第2電極71には、それぞれ、ハイとローからなる電圧信号が供給される。これらの電圧信号のハイとローとの間の電圧差がアーム2,3間で実質的に等しくなり、かつ、同一時間で見たときに電圧信号のハイとローがアーム2,3間で逆になるようにする。これにより、本変調器10がプッシュプル駆動されるようにしている。
また、これらの電極70,71に供給される電圧信号の直流成分は、リング光導波路60,61に形成されたpn接合[図11(B)参照]が、電圧信号のハイ又はローの状態に関わらず、常に逆バイアスを保つように設定される。
さらに、初期位相差を考慮して、電圧信号の直流成分は、本変調器1がON/OFF状態の光を出力する際に、2本のアーム2,3を伝搬してきた光の位相差が、それぞれ、極小/極大になるように調整される。
また、電圧信号の高周波成分の振幅は、電圧信号のハイ/ロー間の変化に伴うリング光導波路60,61の屈折率変化が5×10−5程度の値になるように定められており、概ね、2〜3V程度の値になっている。
次に、複数の第1リング共振器50の相互間で、又は、複数の第2リング共振器51の相互間でリング径を変えて(即ち、複数の第1リング共振器50の相互間で、又は、複数の第2リング共振器51の相互間で共振波長を変えて)、動作波長帯域を広くする原理を、図5を参照しながら説明する。
ここでは、リング径の異なる3つのリング共振器(1)〜(3)をMZ干渉計のアームに装荷して動作波長帯域を広くする場合を例に挙げて説明する。
リング共振器のリング径を変えると、リング共振器の共振波長が変わることになる。そこで、図5(A)に示すように、リング径の異なる3つのリング共振器(1)〜(3)は、個々のリング共振器の出力光(リング出力光)の強度スペクトルの共振波長帯域(リング共振波長帯域)の位置(中心共振波長の位置)が少しずつずれたものとし、これらのリング共振器(1)〜(3)をMZ干渉計のアームに装荷する。これにより、各リング共振器(1)〜(3)の出力光の強度スペクトルの共振波長帯域が波長軸方向で結合され、これらのリング共振器(1)〜(3)の全体からの出力光(リング出力光)の強度スペクトルは、図5(B)に示すように、広い共振波長帯域を有する箱型に近いスペクトル形状となる。
この場合、各リング共振器(1)〜(3)の出力光(リング出力光)の位相スペクトルの共振波長帯域も波長軸方向で結合され、これらのリング共振器(1)〜(3)の全体からの出力光(リング出力光)の位相スペクトルは、図5(C)に示すように、広い共振波長帯域を有するものとなる。つまり、各リング共振器(1)〜(3)の出力光の位相スペクトルの傾きが大きくなっている部分が連なるように直線状に結合され、これらのリング共振器(1)〜(3)の全体からの出力光の位相スペクトルは、図5(C)に示すように、傾きが大きくなっている部分の幅が波長軸方向に広くなる。なお、各リング共振器(1)〜(3)は、リング出力光の位相スペクトルの傾きが大きくなる部分の傾きが同一になるように構成されている。
これにより、各リング共振器(1)〜(3)を構成するリング光導波路の屈折率変化によって、必要な位相変化が、広い共振波長帯域内で均一に得られることになる。この結果、図5(D)に示すように、十分な大きさの消光比(変調器出力光の強度変化)が、広い動作波長帯域内で均一に得られることになる。
以下、本変調器10の具体的な構成例について、図4を参照しながら説明する。
例えば、2本のアーム2,3及び2つのYブランチ型光カプラ11,12を備えるMZ干渉計4を形成し、その両アーム2,3のそれぞれに、複数の第1リング共振器50及び複数の第2リング共振器51をアーム2,3間で同様の構成にて装荷した構成とする。
また、MZ干渉計4の両アーム2,3に装荷されるリング共振器50,51の個数Nは、それぞれ、10個とする。
また、アーム2,3と各リング共振器50,51(各リング光導波路60,61)との間の結合係数κは全て0.39とする。ここでは、アーム2,3と各リング光導波路60,61との間のギャップの幅を200nm以下の小さな値に設定して、アーム2,3と各リング光導波路60,61との間の結合係数κが全て0.393となるようにしている。
このように、本実施形態では、アーム2,3と各リング光導波路60,61との間のギャップの幅を、装荷された全てのリング光導波路60,61において共通の値とし、アーム2,3と各リング光導波路60,61との間の結合係数κも、装荷された全てのリング光導波路60,61において共通の値としている。
ここで、アーム2,3(第1光導波路2及び第2光導波路3)からリング光導波路60,61へのパワー移行率は、結合係数κを用いて|sin(κ)|と表わされる。
したがって、上述のように、結合係数κの値を0.39とした場合、パワー移行率は14.6%[|sin(κ)|=14.6%]となる。
さらに、上述のように、第1光導波路2に装荷される複数の第1リング共振器50(複数の第1リング光導波路60)のリング径(第1リング光導波路60の半径;導波路コアのリブ部分の半径)Rは、互いに異なるように、各第1リング共振器50間で若干ずらされている。つまり、隣り合う第1リング共振器50間で、リング径Rに一定の差ΔRを与えている。ここでは、アーム2の一端から他端へ向けて、リング径RがΔR=0.8nmずつ大きくなるように設定している。
具体的には、複数の第1リング共振器50のリング径Rの平均値が約8.7μmになるようにしている。このため、各第1リング共振器50のうち最もリング径の大きいもののリング径Rは8.7036μmとなり、最もリング径の小さいもののリング径Rは8.6964μmとなる。
ここでは、屈折率変化5×10−5を利用して、一定の大きさの消光比を得るために、10個の第1リング共振器50を設け、これらの第1リング共振器50のリング径Rの平均値を約8.7μmとしているが、この場合、総作用長は2π×8.7×10=546μmとなる。これに対して、従来のMZ変調器(図22参照)では、同じ屈折率変化を利用して、一定の大きさの消光比を得るために、大きな作用長(例えば3.8mm程度)が必要になる。このように、本変調器10によれば、従来のMZ変調器(図22参照)と比較して、作用長を約7分の1に低減することができる。
また、アーム2に装荷される複数の第1リング共振器50は、隣り合う第1リング共振器50の間隔が5μm間隔になるように設ける。これは、隣り合う第1リング共振器50同士が互いに共振器として結合しないようにするためである。
また、複数の第1リング光導波路60の導波路幅[導波路コアのリブ部分の幅;図11(B)参照]は、いずれも、約450nmになるようにしている。
同様に、第2光導波路3に装荷される複数の第2リング共振器51(複数の第2リング光導波路61)のリング径(第2リング光導波路61の半径)Rは、互いに異なるように、各第2リング共振器51間で若干ずらされている。つまり、隣り合う第2リング共振器51間で、リング径Rに一定の差ΔRを与えている。ここでは、アーム3の一端から他端へ向けて、リング径RがΔR=0.8nmずつ大きくなるように設定している。
具体的には、複数の第2リング共振器51のリング径Rの平均値が約8.7μmになるようにしている。このため、各第2リング共振器51のうち最もリング径の大きいもののリング径Rは8.7036μmとなり、最もリング径の小さいもののリング径Rは8.6964μmとなる。
ここでは、屈折率変化5×10−5を利用して、一定の大きさの消光比を得るために、10個の第2リング共振器51を設け、これらのリング共振器51のリング径Rの平均値を約8.7μmとしているが、この場合、総作用長は2π×8.7×10=546μmとなる。これに対して、従来のMZ変調器(図22参照)では、同じ屈折率変化を利用して、一定の大きさの消光比を得るために、大きな作用長(例えば3.8mm程度)が必要になる。このように、本変調器によれば、従来のMZ変調器(図22参照)と比較して、作用長を約7分の1に低減することができる。
また、アーム3に装荷される複数の第2リング共振器51は、隣り合う第2リング共振器51の間隔が5μm間隔になるように設ける。これは、隣り合う第2リング共振器51同士が互いに共振器として結合しないようにするためである。
また、複数の第2リング光導波路61の導波路幅[導波路コアのリブ部分の幅;図11(B)参照]は、いずれも、約450nmになるようにしている。
ところで、本実施形態では、リング共振器50,51の個数N、結合係数κ、リング共振器50,51のリング径R、隣接するリング共振器間のリング径の差ΔRといった設計パラメータは、以下に説明する指針にしたがって定めている。
まず、複数の第1リング共振器50の全体の中心共振波長[図5(B)〜(D)参照]、及び、複数の第2リング共振器51の全体の中心共振波長[図5(B)〜(D)参照]が、本変調器10の動作波長帯域の中心(中心動作波長;ここでは1.55μm)に合うように、異なるリング径を有する複数の第1リング共振器50(第1リング光導波路60)のリング径Rの平均値、及び、異なるリング径を有する複数の第2リング共振器51(第2リング光導波路61)のリング径Rの平均値を決める。なお、ここでは、リング光導波路50,51の等価屈折率は2.5としている。
ここで、リング径Rは、真空中における動作波長帯域の中心をλcとし、リング光導波路の等価屈折率をneffとして、次式(3)によって決められる。
2πR=m・(λc/neff)(mは自然数)・・・(3)
なお、リング径Rを小さくし、そのFSR(フリー・スペクトル・レンジ)を大きくするためには、mの値として、なるべく小さい値を用いれば良い。但し、リング径Rが小さくなりすぎて、リング光導波路50,51を伝搬する光の曲げ損失が大きくならないようにする。
次に、結合係数κ、及び、隣接するリング共振器間のリング径の差ΔRを決める。
ここで、図6,図7は、上述の本変調器10の構成において、結合係数κ、又は、隣接するリング共振器間のリング径の差ΔRの設定を変えた場合に本変調器10によって得られる消光比のスペクトルを示している。なお、図6、図7では、本変調器10の動作波長帯域の中心(中心動作波長)が、消光比のスペクトルの中心になるように波長軸を取っている。
まず、図6は、上述の本変調器10の構成のように、κ=0.39、ΔR=0.8nmの場合の出力光の消光比のスペクトルを示している。
図6に示すように、上述の本変調器10の構成(κ=0.39、ΔR=0.8nm)によれば、出力光の中心動作波長(ここでは1.55μm)において、12dB以上の大きな消光比が得られることがわかる。また、消光比が9dB以上となる波長帯域を、本変調器10の動作波長帯域とする場合、約1nmの動作波長帯域が得られることがわかる。つまり、動作波長1.55μm付近の1nmの波長帯域において消光比9dB以上が得られている。この動作波長帯域内においては、特に大きな消光比のディップは見られない。
このように、上述の本変調器10の構成(κ=0.39、ΔR=0.8nm)によれば、消光比9dB、動作波長帯域1nmを満たす特性を有する変調器を実現できることがわかる。
これに対し、従来のリング共振器型変調器では、動作波長帯域が0.1nm程度である。つまり、本変調器10によれば、従来のリング共振器型変調器と比較して、動作波長帯域を約10倍に拡大することができる。
一方、図7(A)は、上述の本変調器10の構成(κ=0.39、ΔR=0.8nm)に対して、ΔR=0.8nmは変化させず、結合係数を大きくしてκ=0.785とした場合の消光比のスペクトルを示している。
このように、結合係数を大きくしてκ=0.785とした場合、図7(A)に示すように、消光比のスペクトルはなだらかになり、全体的に消光比が小さくなることがわかる。
反対に、図7(B)は、上述の本変調器10の構成(κ=0.39、ΔR=0.8nm)に対して、ΔR=0.8nmは変化させず、結合係数を小さくしてκ=0.157とした場合の消光比のスペクトルを示している。
このように、結合係数を小さくしてκ=0.157とした場合、図7(B)に示すように、消光比のスペクトルは急峻になり、消光比のスペクトルの中心動作波長付近で大きなディップが顕著になり、中心動作波長付近において消光比が9dBよりも小さい波長が存在することがわかる。
また、図7(C)は、上述の本変調器10の構成(κ=0.39、ΔR=0.8nm)に対して、κ=0.39は変化させず、隣接するリング共振器間のリング径の差を小さくしてΔR=0.24nmとした場合の消光比のスペクトルを示している。
このように、隣接するリング共振器間のリング径の差を小さくしてΔR=0.24nmとした場合(隣接するリング共振器間で共振波長を近づけた場合)、図7(C)に示すように、中心動作波長において、得られる位相変化が大きくなりすぎてしまい、消光比は逆に小さくなり、かつ、消光比9dB以上となる動作波長帯域が、上述の本変調器10の構成の場合(図4参照)と比較して小さくなることがわかる。
逆に、図7(D)は、上述の本変調器10の構成(κ=0.39、ΔR=0.8nm)に対して、κ=0.39は変化させず、隣接するリング共振器間のリング径の差を大きくしてΔR=1.6nmとした場合の消光比のスペクトルを示している。
このように、隣接するリング共振器間のリング径の差を大きくしてΔR=1.6nmとした場合(隣接するリング共振器間で共振波長を遠ざけた場合)、図7(D)に示すように、消光比は全体的に小さくなり、消光比9dBを下回ることがわかる。
以上の結果から、本実施形態では、上述のように、消光比9dB、動作波長帯域1nmを満たす特性を有する変調器を実現しうるκ及びΔRの値として、κ=0.39、ΔR=0.8nmに設定している。
なお、上述のような消光比スペクトルのκ、ΔRに対する傾向(図6,図7参照)は、MZ干渉計の両方のアームのそれぞれに複数のリング共振器を装荷したリング装荷型MZ変調器において一般的に見られる傾向である。このため、上述のような傾向を考慮して、変調器の設計において、消光比、動作波長帯域に対する要求を満たすように、適宜、κ、ΔRの値を決めれば良い。
また、消光比、動作波長帯域に対する要求がより厳しい場合には、例えば、リング共振器の個数Nを多くすることが有効である。
ここで、図8は、上述の本変調器10の構成(κ=0.39、ΔR=0.8nm、N=10;図4参照)よりもリング共振器50,51の個数を増やしてN=20とした場合の消光比のスペクトルを示している。
このように、リング共振器50,51の個数を増やしてN=20とした場合、図8に示すように、中心動作波長付近の波長帯域2nmにおいて、消光比12dB以上という値が得られ、波長帯域、消光比共に性能を向上させることができることがわかる。
但し、リング共振器50,51の個数Nを増やすと、変調器全体のサイズの増大を招くため、コンパクト化の要求を満たすように、リング共振器50,51の個数Nを設定することになる。また、リング共振器50,51の個数Nを増やすと、変調器の総作用長(電極の合計長さ)が長くなり、寄生容量の増大を招くため、この点も考慮して、リング共振器50,51の個数Nを設定することになる。
なお、κ、ΔRに対する定性的な依存性は、上述のN=10の場合とほぼ同様であるため、κ、ΔRの値を調整することで、動作波長帯域、消光比に対する異なる要求に対応することも可能である。
また、例えば、動作波長帯域、消光比に対する要求を満たしながら、コンパクト化の要求を満たし、さらに、寄生容量の増大を招かないようにするためには、リング共振器50,51の個数Nをできるだけ少なくするのが望ましい。
ところで、図9は、上述の本変調器10の構成において、アーム3を伝搬する光の位相スペクトル、及び、強度スペクトルの計算結果(図4中、A点での値)を示したものである。
なお、図9では、初期状態、即ちΔn=0の場合の位相スペクトル及び強度スペクトルを実線で示し、Δn=5×10−5の屈折率変化を生じさせた場合の位相スペクトル及び強度スペクトルを破線で示している。また、強度スペクトルの計算をするにあたり、リング光導波路61にα=3.5dB/cmの伝搬損失を与えている。
図9(A)に示すように、1.55μmの共振波長付近で、即ち、位相スペクトルの中心付近で、曲線の傾きが大きくなっていることがわかる。
そして、リング光導波路61に沿って設けられた電極71を介して、リング光導波路61に変調のための電界を印加して、リング光導波路61の屈折率を変化させると(ここではΔn=5×10−5の屈折率変化を生じさせると)、図9(A),(B)に示すように、強度スペクトル及び位相スペクトルは波長軸方向にシフトする。なお、ここでは、屈折率変化が小さいため、シフト量はあまり大きくなく、図9(A),(B)ではほとんど重なって見える。
特に、図9(B)に示すように、強度スペクトルのシフトに伴う各波長での強度変化は殆ど無視できる程度であることがわかる。
一方、図10に示すように、位相スペクトルのシフトに伴って、リング共振器の共振波長帯域において、一定量の位相変化が得られる。これは、図9(A)に示すように、リング共振器の共振波長付近で位相スペクトルの傾きが大きくなっていることに起因している。
本変調器10では、この位相変化を、MZ干渉計4によって強度変化に変換することで、光導波路の屈折率変化が小さい場合でも、十分に大きな消光比の変調を実現できる。
ところで、リング共振器50,51における位相スペクトルの急峻さ(位相スペクトルの傾きが大きくなっている部分の傾きの大きさ)、即ち、リング共振器50,51のQ値は、リング径とは独立に、リング光導波路60,61とアーム2,3との間の結合係数κを変化させることで制御することができる。なお、リング光導波路60,61とアーム2,3との間のギャップの大きさ又はリング光導波路60,61とアーム2,3とが近接している部分の長さを変えることによって、結合係数κを変化させることができる。
このため、リング光導波路60,61の曲がりによる伝搬損失が大きくならない範囲でリング径を小さくする(リング光導波路60,61の円周を小さくする)とともに、結合係数κの値を小さくして、リング共振器50,51のQ値を高めることで、共振波長付近における群遅延時間を大きくし、導波路の屈折率変化に伴う位相変化を大きくすることができる。つまり、本変調器10では、電界を印加することによって生じる導波路の屈折率変化が小さい場合であっても、比較的小さな作用長で、リング共振器50,51の共振波長付近において十分に大きな位相変化を生じさせることができ、これにより、十分に大きな消光比での変調を実現することができる。
ここで、十分に大きな位相変化を得るために、リング共振器50,51のQ値をある程度大きくして、共振波長付近における群遅延時間を大きくすると、単一のリング共振器の共振波長帯域が狭くなる。つまり、リング出力光(即ち、アーム伝搬後の光)の位相スペクトルの傾きが大きくなる波長帯域が狭くなる。これは、各アームに単一のリング共振器を装荷した構成で、十分に大きな位相変化を得ようとすると、変調器の動作波長帯域が狭くなることを意味する。
そこで、本実施形態では、上述のように、リング出力光の位相スペクトルの共振波長帯域が少しずつずれるように、リング径が変えられている複数の第1リング共振器50及び複数の第2リング共振器51を、各アーム2,3のそれぞれに装荷した構成を採用している。
ここでは、複数の第1リング共振器50及び複数の第2リング共振器51は、結合係数κが同一(各リング共振器のQ値が同一;リング出力光の位相スペクトルの共振波長帯域における傾きが同一)になるようにしている。なお、複数の第1リング共振器50の間で結合係数κが変えられていても良いし、複数の第2リング共振器51の間で結合係数κが変えられていても良い。
このような構成とすることで、各リング共振器50,51のQ値を十分に大きくし、リング出力光の位相スペクトルの共振波長帯域における傾きを十分に大きくすることで、各リング共振器50,51の共振波長帯域において十分に大きな位相変化が得られるようにする。
また、複数の第1リング共振器50の相互間でリング径を変えて共振波長帯域を少しずつずらし、各第1リング共振器50の位相スペクトルの共振波長帯域における傾きが大きくなっている部分が波長軸方向に直線的に結合されるようにする。同様に、複数の第2リング共振器51の相互間でリング径を変えて共振波長帯域を少しずつずらし、各第2リング共振器51の位相スペクトルの共振波長帯域における傾きが大きくなっている部分が波長軸方向に直線的に結合されるようにする。
これにより、十分に大きな位相変化が得られる共振波長帯域を広げることができる。この結果、リング光導波路60,61の屈折率変化が小さい場合であっても、十分に大きな位相変化が、広い共振波長帯域内で均一に得られることになる。
この場合、装荷するリング共振器50,51の個数N、及び、各リング共振器間のリング径の差ΔRを適切に設計することで、変調器の動作波長帯域を要求仕様に応じて広くすることができる。
このように、本変調器10では、リング共振器50,51を通過した光の位相変化を利用しており、この位相変化をMZ干渉計4によって強度変化に変換する構成になっているため、複数のリング共振器50,51を、共振波長をずらして装荷することで、変調器の動作波長帯域を広くすることができる。
これに対し、従来のリング共振器型変調器では、導波路の屈折率変化に伴う強度スペクトルのシフトを直接利用して変調を行なう。このリング共振器型変調器では、強度スペクトルが急激に変化する部分(エッジ)を利用して変調を行なうため、装荷されるリング共振器の個数等の構成に関わらず、強度スペクトルのシフト量が動作波長帯域と概ね一致する。このため、従来のリング共振器型変調器では、リング共振器の個数等の構成に関わらず、小さな屈折率変化によって大きな動作波長帯域を得ることはできない。
このように、本変調器10では、同じ材料の屈折率変化を利用した場合、従来のMZ変調器よりも、作用長を短くし、アームの長さを短くすることができるとともに、従来のリング共振器型変調器と比較して、十分な動作波長帯域が得られることになる。
次に、本リング装荷型MZ変調器の断面構造について、図11(A),(B)を参照しながら説明する。
まず、図11(A),(B)に示すように、基板としては、シリコン基板13上にシリコン酸化膜(埋め込み酸化膜)14を挟んでシリコン薄膜層15が形成された基板[SOI(Silicon On Insulator)基板]を用いる。
ここでは、最上部のシリコン薄膜層(SOI層)15の厚さ、その下の埋め込み酸化膜(BOX層)14の厚さは、それぞれ、250nm、2μmとなっている。
次に、このSOI基板を加工し、図11(A),(B)に示すような断面構造の導波路を形成する。つまり、図11(A),(B)に示すように、SOI層15を加工して、MZ干渉計4のアーム2,3を構成する直線光導波路の導波路コア[図11(A)参照]、及び、これに装荷されるリング共振器50,51を構成するリング光導波路60,61の導波路コア[図11(B)参照]として、リブ型光導波路(シリコン材料を含むリブ型光導波路)の導波路コア(リブ型導波路コア)15Xを形成する。
ここでは、図11(A),(B)に示すように、リブ型導波路コア15Xのリブ部分(Siコア)15Aの幅は450nmである。また、リブ型導波路コア15Xのリブ部分15Aの厚さは250nmであり、リブ型導波路コア15Xの両側へ延びるスラブ部分(Siスラブ)15Bの厚さは50nmである。
ここで、リング光導波路60,61のリブ型導波路コア15Xは、図11(B)に示すように、リブ部分15Aのキャリア濃度を変調できるように、リブ部分15Aの両脇に接しているスラブ部分15Bの一方にp型不純物材料がドーピングされてp型領域15Baが形成されており、他方にn型不純物材料がドーピングされてn型領域15Bbが形成されている。これにより、アンドープのシリコンからなるリブ部分15Aの内部にpn接合が形成されるようになっている。
ここでは、p型不純物材料、n型不純物材料のドーピングは、それぞれ、ボロン(B)、リン(P)のイオン・インプランテーションによって行なわれる。ドーピング濃度は、いずれも1019cm−3としている。
次に、上述のリブ型導波路コア15Xが埋め込まれるように、SiOオーバクラッド層16を形成する。
なお、図11(A),(B)には図示していないが、リブ部分15Aから離れた場所において、これらのドーピングされたスラブ部分15Ba,15Bbの表面に金属電極が形成されている。
このように、本実施形態では、リング装荷型MZ変調器を構成する素子(リング共振器やMZ干渉計など)の全てが、同一基板13上に集積され、一体形成されている。
したがって、本実施形態にかかる光変調器(リング装荷型MZ変調器)によれば、動作波長帯域を広くし、作用長を短くし、コンパクト化(小型化)を図ることができるという利点がある。つまり、本リング装荷型MZ変調器によれば、従来のMZ変調器よりも作用長を小さくし、変調器をコンパクトにすることができるとともに、従来のリング共振器型変調器よりも十分に広い動作波長帯域を得ることができるという利点がある。
なお、上述の実施形態では、具体的な変調器の構成例について説明しているが、本発明は、これらの具体的な構成例に限定されるものではない。
例えば、上述の実施形態では、シリコン基板上にシリコン材料を主に用いて本変調器を形成する場合を例に挙げて説明しているが、これに限られるものではない。例えば、InP基板やGaAs基板を用い、これらの基板に格子整合する材料を用いて本変調器を形成しても良い。また、ニオブ酸リチウムやポリマなどの電界光学効果を有する他の誘電体材料を用いて本変調器を形成しても良い。
また、上述の実施形態では、本変調器が利用する電界光学効果として、導波路コア内に形成したpn接合を逆バイアスに保った上で、コア内に存在するキャリアの密度を、変調のための電圧信号によって変化させることによって生じるフリー・キャリアプラズマ効果を利用して、導波路の屈折率を変化させる場合を例に挙げて説明しているが、これに限られるものではない。
例えば、pn接合を順バイアスに保った上で、キャリア注入によって屈折率を変化させても良い。また、半導体材料の吸収端位置の電界による変化によって誘起される屈折率の変化を利用しても良い。また、電界によって誘起される線形の屈折率変化(ポッケルス効果)を利用しても良い。
また、上述の実施形態では、リング共振器を構成するリング光導波路として、リブ型で横方向にpn接合を形成した断面構造を持つものを例に挙げて説明しているが、これに限られるものではなく、例えば、チャネル型の導波路とし、縦方向にpn接合を形成したものとしても良い。
また、上述の実施形態では、リング共振器のリング径が、アームの一端から他端へ向けて、少しずつ大きくなるようにしているが、これに限られるものではなく、例えば、アームの一端から他端へ向けて、少しずつ小さくなるようにしても良いし、リング径を変えたものをランダムに配置するようにしても良い。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態にかかる光変調器(リング装荷型MZ変調器)について、図12を参照しながら説明する。
本実施形態にかかるリング装荷型MZ変調器は、上述の第1実施形態のリング共振器による位相変化を利用した変調の原理を用いるリング装荷型MZ変調器であって、上述の第2実施形態のものが、複数の第1リング共振器の相互間で、又は、複数の第2リング共振器の相互間でリング径を変えているのに対し、本実施形態のものは、複数の第1リング共振器の相互間で、又は、複数の第2リング共振器の相互間で導波路幅を変えている点が異なる。
特に、図12に示すように、本変調器10Aでは、複数の第1リング光導波路60Aは、互いに導波路幅が異なるように形成されている。つまり、複数の第1リング共振器50Aは、互いに共振波長が異なるように形成されている。なお、本実施形態では、複数の第1リング光導波路60Aのリング径は同一である。また、図12では、上述の第2実施形態のもの(図4参照)と同一のものには同一の符号を付している。
また、複数の第2リング光導波路61Aは、互いに導波路幅が異なるように形成されている。つまり、複数の第2リング共振器51Aは、互いに共振波長が異なるように形成されている。なお、本実施形態では、複数の第2リング光導波路61Aのリング径は同一である。
次に、複数の第1リング共振器50Aの相互間で、又は、複数の第2リング共振器51Aの相互間で、リング光導波路60A,61Aの導波路幅を変えて(即ち、複数の第1リング共振器50Aの相互間で、又は、複数の第2リング共振器51Aの相互間で共振波長を変えて)、動作波長帯域を広くする原理を説明する。
リング共振器を構成するリング光導波路の導波路幅を変えると、リング共振器の共振波長が変わることになる。
そこで、導波路幅の異なる複数の第1リング共振器50Aは、個々のリング共振器の出力光(リング出力光)の強度スペクトルの共振波長帯域(リング共振波長帯域)の位置が少しずつずれたものとし[図5(A)参照]、これらの第1リング共振器50AをMZ干渉計4のアーム2に装荷する。これにより、各第1リング共振器50Aの出力光の強度スペクトルの共振波長帯域が波長軸方向で結合され、これらの第1リング共振器50Aの全体からの出力光(リング出力光)の強度スペクトルは、広い共振波長帯域を有する箱型のスペクトル形状となる[図5(B)参照]。
この場合、各第1リング共振器50Aの出力光(リング出力光)の位相スペクトルの共振波長帯域が波長軸方向で結合され、これらの第1リング共振器50Aの全体からの出力光(リング出力光)の位相スペクトルは、広い共振波長帯域を有するものとなる[図5(C)参照]。つまり、各第1リング共振器50Aの出力光の位相スペクトルの傾きが大きくなっている部分が連なるように直線状に結合され、これらの第1リング共振器50Aの全体からの出力光の位相スペクトルは、傾きが大きくなっている部分の幅が波長軸方向に広くなる[図5(C)参照]。なお、各第1リング共振器50Aは、リング出力光の位相スペクトルの傾きが大きくなる部分の傾きが同一になるように構成されている。
同様に、導波路幅の異なる複数の第2リング共振器51Aは、個々のリング共振器の出力光(リング出力光)の強度スペクトルの共振波長帯域(リング共振波長帯域)の位置が少しずつずれたものとし[図5(A)参照]、これらの第2リング共振器51AをMZ干渉計4のアーム3に装荷する。これにより、各第2リング共振器51Aの出力光の強度スペクトルの共振波長帯域が波長軸方向で結合され、これらの第2リング共振器51Aの全体からの出力光(リング出力光)の強度スペクトルは、広い共振波長帯域を有する箱型のスペクトル形状となる[図5(B)参照]。
この場合、各第2リング共振器51Aの出力光(リング出力光)の位相スペクトルの共振波長帯域が波長軸方向で結合され、これらの第2リング共振器51Aの全体からの出力光(リング出力光)の位相スペクトルは、広い共振波長帯域を有するものとなる[図5(C)参照]。つまり、各第2リング共振器51Aの出力光の位相スペクトルの傾きが大きくなっている部分が連なるように直線状に結合され、これらの第2リング共振器51Aの全体からの出力光の位相スペクトルは、傾きが大きくなっている部分の幅が波長軸方向に広くなる[図5(C)参照]。なお、各第2リング共振器51Aは、リング出力光の位相スペクトルの傾きが大きくなる部分の傾きが同一になるように構成されている。
これにより、各第1リング共振器50Aを構成する第1リング光導波路60Aの屈折率変化、及び、各第2リング共振器51Aを構成する第1リング光導波路61Aの屈折率変化によって、必要な位相変化が、広い共振波長帯域内で均一に得られることになる。この結果、十分な大きさの消光比(変調器出力光の強度変化)が、広い動作波長帯域内で均一に得られることになる[図5(D)参照]。
次に、本変調器10Aの具体的な構成例について、図12を参照しながら説明する。
本実施形態では、図12に示すように、第1光導波路2に装荷される複数(ここでは10個)の第1リング共振器50Aを構成する第1リング光導波路60Aの導波路幅Wは、互いに異なるように、各第1リング共振器50A間で若干ずらされている。つまり、隣り合う第1リング共振器50A間で、導波路幅Wに一定の差ΔWを与えている。ここでは、アーム2の一端から他端へ向けて、導波路幅WがΔW=0.3nmずつ大きくなるように設定している。なお、図12では、説明の便宜上、複数のリング共振器として、3つのリング共振器を示している。
具体的には、複数の第1リング共振器50Aを構成する第1リング光導波路60Aの導波路幅Wの平均値が約449.85nmになるようにしている。このため、各第1リング共振器50Aのうち最も導波路幅の広いもの導波路幅Wは451.35nmとなり、最も導波路幅の狭いものの導波路幅Wは448.35nmとなる。
ここでは、屈折率変化5×10−5を利用して、一定の大きさの消光比を得るために、10個の第1リング共振器50Aを設け、これらの第1リング共振器50Aのリング径Rをいずれも8.7μmとしている。この場合、総作用長は2π×8.7×10=546μmとなる。これに対して、従来のMZ変調器(図22参照)では、同じ屈折率変化を利用して、一定の大きさの消光比を得るために、大きな作用長(例えば3.8mm程度)が必要になる。このように、本変調器10Aによれば、従来のMZ変調器(図22参照)と比較して、作用長を約7分の1に低減することができる。
同様に、図12に示すように、第2光導波路3に装荷される複数(ここでは10個)の第2リング共振器51Aを構成する第2リング光導波路61Aの導波路幅Wは、互いに異なるように、各第2リング共振器51A間で若干ずらされている。つまり、隣り合う第2リング共振器51A間で、導波路幅Wに一定の差ΔWを与えている。ここでは、アーム3の一端から他端へ向けて、導波路幅WがΔW=0.3nmずつ大きくなるように設定している。なお、図12では、説明の便宜上、複数のリング共振器として、3つのリング共振器を示している。
具体的には、複数の第2リング共振器51Aを構成する第2リング光導波路61Aの導波路幅Wの平均値が約449.85nmになるようにしている。このため、各第2リング共振器51Aのうち最も導波路幅の広いもの導波路幅Wは451.35nmとなり、最も導波路幅の狭いものの導波路幅Wは448.35nmとなる。
ここでは、屈折率変化5×10−5を利用して、一定の大きさの消光比を得るために、10個の第2リング共振器51Aを設け、これらの第2リング共振器51Aのリング径Rをいずれも8.7μmとしている。この場合、総作用長は2π×8.7×10=546μmとなる。これに対して、従来のMZ変調器(図22参照)では、同じ屈折率変化を利用して、一定の大きさの消光比を得るために、大きな作用長(例えば3.8mm程度)が必要になる。このように、本変調器10Aによれば、従来のMZ変調器(図22参照)と比較して、作用長を約7分の1に低減することができる。
このように、本実施形態では、リング出力光の位相スペクトルの共振波長帯域が少しずつずれるように、導波路幅が変えられている複数の第1リング共振器50A及び複数の第2リング共振器51Aを、各アーム2,3のそれぞれに装荷した構成を採用している。
ここでは、複数の第1リング共振器50A及び複数の第2リング共振器51Aは、結合係数κが同一(各リング共振器のQ値が同一;リング出力光の位相スペクトルの共振波長帯域における傾きが同一)になるようにしている。なお、複数の第1リング共振器50Aの間で結合係数κが変えられていても良いし、複数の第2リング共振器51Aの間で結合係数κが変えられていても良い。
このような構成とすることで、各リング共振器50A,51AのQ値を十分に大きくし、リング出力光の位相スペクトルの共振波長帯域における傾きを大きくすることで、各リング共振器50A,51Aの共振波長帯域において十分に大きな位相変化が得られるようにする。
また、複数の第1リング共振器50Aの相互間で導波路幅を変えて共振波長帯域を少しずつずらし、各第1リング共振器50Aの共振波長帯域における傾きが大きくなっている部分が波長軸方向に直線的に結合されるようにする。同様に、複数の第2リング共振器51Aの相互間で導波路幅を変えて共振波長帯域を少しずつずらし、各第2リング共振器51Aの位相スペクトルの共振波長帯域における傾きが大きくなっている部分が波長軸方向に直線的に結合されるようにする。
これにより、十分に大きな位相変化が得られる共振波長帯域を広げることができる。この結果、リング光導波路60A,61Aの屈折率変化が小さい場合であっても、十分に大きな位相変化が、広い共振波長帯域内で均一に得られることになる。
なお、その他の詳細は、上述の第2実施形態のものと同様であるため、ここでは説明を省略する。この場合、上述の第2実施形態の「リング共振器間のリング径の差」は、本実施形態の「リング共振器間の導波路幅の差」に対応する。
したがって、本実施形態にかかる光変調器(リング装荷型MZ変調器)によれば、動作波長帯域を広くし、作用長を短くし、コンパクト化(小型化)を図ることができるという利点がある。
なお、上述の実施形態では、一のアームに装荷される複数のリング共振器のリング径を同一にし、これらの導波路幅を変える場合を例に挙げて説明しているが、これに限られるものではない。例えば、一のアームに装荷される複数のリング共振器のリング径及び導波路幅を変えるようにしても良い。つまり、上述の第2実施形態のものと本実施形態のものとを組み合わせても良い。
また、上述の実施形態では、リング共振器の導波路幅が、アームの一端から他端へ向けて、少しずつ大きくなるようにしているが、これに限られるものではなく、例えば、アームの一端から他端へ向けて、少しずつ小さくなるようにしても良いし、導波路幅を変えたものをランダムに配置するようにしても良い。
[第4実施形態]
次に、第4実施形態にかかる光変調器(リング装荷型MZ変調器)について、図13,図14を参照しながら説明する。
本実施形態にかかるリング装荷型MZ変調器は、上述の第1実施形態のリング共振器による位相変化を利用した変調の原理を用いるリング装荷型MZ変調器であって、上述の第2実施形態のものが、複数の第1リング共振器の相互間で、又は、複数の第2リング共振器の相互間でリング径を変えているのに対し、本実施形態のものは、複数の第1リング共振器の相互間で、又は、複数の第2リング共振器の相互間で温度が変えられている点が異なる。
特に、図13に示すように、本変調器10Bでは、複数の第1リング共振器50Bは、互いに温度が異なるようにしている。これにより、複数の第1リング共振器50Bを構成する第1リング光導波路60Bは、互いに等価屈折率が異なるようにしている。このようにして、複数の第1リング共振器50Bは、互いに共振波長が異なるようにしている。なお、本実施形態では、複数の第1リング光導波路60Bの導波路幅及びリング径は同一である。なお、図13では、上述の第2実施形態のもの(図4参照)と同一のものには同一の符号を付している。
同様に、複数の第2リング共振器51Bは、互いに温度が異なるようにしている。これにより、複数の第2リング共振器51Bを構成する第2リング光導波路61Bは、互いに等価屈折率が異なるようにしている。このようにして、複数の第2リング共振器51Bは、互いに共振波長が異なるようにしている。なお、本実施形態では、複数の第2リング光導波路61Bの導波路幅及びリング径は同一である。
次に、複数の第1リング共振器50Bの相互間で、又は、複数の第2リング共振器51Bの相互間で温度を変えて(即ち、複数の第1リング共振器50Aの相互間で、又は、複数の第2リング共振器51Aの相互間で共振波長を変えて)、動作波長帯域を広くする原理を説明する。
リング共振器の温度を変えると、リング共振器を構成するリング光導波路の等価屈折率が変わり、これによって、リング共振器の共振波長が変わることになる。
そこで、MZ干渉計4のアーム2に装荷される複数の第1リング共振器50Bのそれぞれの温度を、個々のリング共振器の出力光(リング出力光)の強度スペクトルの共振波長帯域(リング共振波長帯域)の位置が少しずつずれるように調整する[図5(A)参照]。これにより、各第1リング共振器50Bの出力光の強度スペクトルの共振波長帯域が波長軸方向で結合され、これらの第1リング共振器50Bの全体からの出力光(リング出力光)の強度スペクトルは、広い共振波長帯域を有する箱型のスペクトル形状となる[図5(B)参照]。
この場合、各第1リング共振器50Bの出力光(リング出力光)の位相スペクトルの共振波長帯域が波長軸方向で結合され、これらの第1リング共振器50Bの全体からの出力光(リング出力光)の位相スペクトルは、広い共振波長帯域を有するものとなる[図5(C)参照]。つまり、各第1リング共振器50Bの出力光の位相スペクトルの傾きが大きくなっている部分が連なるように直線状に結合され、これらの第1リング共振器50Bの全体からの出力光の位相スペクトルは、傾きが大きくなっている部分の幅が波長軸方向に広くなる[図5(C)参照]。なお、各第1リング共振器50Bは、リング出力光の位相スペクトルの傾きが大きくなる部分の傾きが同一になるように構成されている。
同様に、MZ干渉計4のアーム3に装荷される複数の第2リング共振器51Bのそれぞれの温度を、個々のリング共振器の出力光(リング出力光)の強度スペクトルの共振波長帯域(リング共振波長帯域)の位置が少しずつずれるように調整する[図5(A)参照]。これにより、各第2リング共振器51Bの出力光の強度スペクトルの共振波長帯域が波長軸方向で結合され、これらの第2リング共振器51Bの全体からの出力光(リング出力光)の強度スペクトルは、広い共振波長帯域を有する箱型のスペクトル形状となる[図5(B)参照]。
この場合、各第2リング共振器51Bの出力光(リング出力光)の位相スペクトルの共振波長帯域が波長軸方向で結合され、これらの第2リング共振器51Bの全体からの出力光(リング出力光)の位相スペクトルは、広い共振波長帯域を有するものとなる[図5(C)参照]。つまり、各第2リング共振器51Bの出力光の位相スペクトルの傾きが大きくなっている部分が連なるように直線状に結合され、これらの第2リング共振器51Bの全体からの出力光の位相スペクトルは、傾きが大きくなっている部分の幅が波長軸方向に広くなる[図5(C)参照]。なお、各第2リング共振器51Bは、リング出力光の位相スペクトルの傾きが大きくなる部分の傾きが同一になるように構成されている。
これにより、各第1電極70Aを介して電圧を印加して各第1リング光導波路60Bの屈折率を変化させるとともに、各第2電極71Aを介して電圧を印加して各第1リング光導波路61Bの屈折率を変化させることによって、必要な位相変化が、広い共振波長帯域内で均一に得られることになる。この結果、十分な大きさの消光比(変調器出力光の強度変化)が、広い動作波長帯域内で均一に得られることになる[図5(D)参照]。
次に、本変調器10Bの具体的な構成例について、図13,図14を参照しながら説明する。
本実施形態では、図13,図14(A)に示すように、複数(ここでは10個)の第1リング共振器50Bのそれぞれの温度を変化させるための複数の第1ヒータ(ヒータ素子)17Aが、複数の第1リング光導波路60Bのそれぞれに沿って設けられている。なお、図13では、説明の便宜上、複数のリング共振器として、3つのリング共振器を示している。
ここでは、図14(B)に示すように、複数の第1リング光導波路60Bのそれぞれの上部(ここでは直上)に、例えば厚さ100nm、幅1μmのチタン(Ti)からなる第1ヒータ(チタンヒータ)17Aが別個に設けられている。なお、図14(B)では、上述の第2実施形態のもの[図11(B)参照]と同一のものには同一の符号を付している。
また、各第1ヒータ17Aには、図13,図14(A)に示すように、第1直流電源18Aが接続されており、この第1直流電源18Aから各第1ヒータ17Aに供給される電流の大きさによって、各第1ヒータ17A及び各第1リング共振器50Bの温度がそれぞれ独立に制御されるようになっている。
特に、本実施形態では、複数の第1ヒータ17Aのそれぞれによって、複数の第1リング共振器50Bのそれぞれの温度が互いに異なるように制御される。これにより、複数の第1リング光導波路60Bの等価屈折率が互いに異なるようにし、この結果、複数の第1リング共振器50Bの共振波長が互いに異なるようにしている。
同様に、図13,図14(A)に示すように、複数(ここでは10個)の第2リング共振器51Bのそれぞれの温度を変化させるための複数の第2ヒータ(ヒータ素子)17Bが、複数の第2リング光導波路61Bのそれぞれに沿って設けられている。
ここでは、図14(B)に示すように、複数の第2リング光導波路61Bのそれぞれの上部(ここでは直上)に、例えば厚さ100nm、幅1μmのチタン(Ti)からなる第2ヒータ(チタンヒータ)17Bが別個に設けられている。
また、各第2ヒータ17Bには、図13,図14(A)に示すように、第2直流電源18Bが接続されており、この第2直流電源18Bから各第2ヒータ17Bに供給される電流の大きさによって、各第2ヒータ17B及び各第2リング共振器51Bの温度がそれぞれ独立に制御されるようになっている。
特に、本実施形態では、複数の第2ヒータ17Bのそれぞれによって、複数の第2リング共振器51Bのそれぞれの温度が互いに異なるように制御される。これにより、複数の第2リング光導波路61Bの等価屈折率が互いに異なるようにし、この結果、複数の第2リング共振器51Bの共振波長が互いに異なるようにしている。
例えば、第1ヒータ17A及び第2ヒータ17Bとしてのチタンヒータは、第33回European Conference and Exhibition on Optical Communication(ECOC2007)の予稿集のセッション1.2の論文”Tunable, Fourth-Order Silicon Microring-Resonator Add-Drop Filters”に記載されているものを用いれば良い。
なお、本実施形態では、第1ヒータ17A及び第2ヒータ17Bとして、チタンヒータを例に挙げて説明しているが、これに限られるものではない。例えば、抵抗金属又は半導体からなるヒータを用いれば良い。
特に、本実施形態では、第1光導波路2に装荷される複数(ここでは10個)の第1リング共振器50Bの温度Tは、互いに異なるように、各第1リング共振器50B間で若干ずらされている。つまり、隣り合う第1リング共振器50B間で、温度Tに一定の差ΔTを与えている。ここでは、アーム2の一端から他端へ向けて、温度TがΔTずつ高くなるように設定している。具体的には、複数の第1リング共振器50Bの温度Tの平均値が所定値になるようにしている。
ここでは、屈折率変化5×10−5を利用して、一定の大きさの消光比を得るために、10個の第1リング共振器50Bを設け、これらの第1リング共振器50Bのリング径Rをいずれも8.7μmとしている。この場合、総作用長は2π×8.7×10=546μmとなる。これに対して、従来のMZ変調器(図22参照)では、同じ屈折率変化を利用して、一定の大きさの消光比を得るために、大きな作用長(例えば3.8mm程度)が必要になる。このように、本変調器によれば、従来のMZ変調器(図22参照)と比較して、作用長を約7分の1に低減することができる。
同様に、第2光導波路3に装荷される複数(ここでは10個)の第2リング共振器51Bの温度Tは、互いに異なるように、各第2リング共振器51B間で若干ずらされている。つまり、隣り合う第2リング共振器51B間で、温度Tに一定の差ΔTを与えている。ここでは、アーム3の一端から他端へ向けて、温度TがΔTずつ大きくなるように設定している。具体的には、複数の第2リング共振器51Bの温度Tの平均値が所定値になるようにしている。
ここでは、屈折率変化5×10−5を利用して、一定の大きさの消光比を得るために、10個の第2リング共振器51Bを設け、これらの第2リング共振器51Bのリング径Rをいずれも8.7μmとしている。この場合、総作用長は2π×8.7×10=546μmとなる。これに対して、従来のMZ変調器(図22参照)では、同じ屈折率変化を利用して、一定の大きさの消光比を得るために、大きな作用長(例えば3.8mm程度)が必要になる。このように、本変調器によれば、従来のMZ変調器(図22参照)と比較して、作用長を約7分の1に低減することができる。
このように、本実施形態では、リング出力光の位相スペクトルの共振波長帯域が少しずつずれるように、温度が変えられている複数の第1リング共振器50B及び複数の第2リング共振器51Bを、各アーム2,3のそれぞれに装荷した構成を採用している。
ここでは、複数の第1リング共振器50B及び複数の第2リング共振器51Bは、結合係数κが同一(各リング共振器のQ値が同一;リング出力光の位相スペクトルの共振波長帯域における傾きが同一)になるようにしている。なお、複数の第1リング共振器50Bの間で結合係数κが変えられていても良いし、複数の第2リング共振器51Bの間で結合係数κが変えられていても良い。
このような構成とすることで、各リング共振器50B,51BのQ値を十分に大きくし、リング出力光の位相スペクトルの共振波長帯域における傾きを大きくすることで、各リング共振器50B,51Bの共振波長帯域において十分に大きな位相変化が得られるようにする。
また、複数の第1リング共振器50Bの相互間で温度を変えて共振波長帯域を少しずつずらし、各第1リング共振器50Bの共振波長帯域における傾きが大きくなっている部分が波長軸方向に直線的に結合されるようにする。同様に、複数の第2リング共振器51Bの相互間で温度を変えて共振波長帯域を少しずつずらし、各第2リング共振器51Bの位相スペクトルの共振波長帯域における傾きが大きくなっている部分が波長軸方向に直線的に結合されるようにする。
これにより、十分に大きな位相変化が得られる共振波長帯域を広げることができる。この結果、リング光導波路60B,61Bの屈折率変化が小さい場合であっても、十分に大きな位相変化が、広い共振波長帯域内で均一に得られることになる。
なお、その他の詳細は、上述の第2実施形態のものと同様であるため、ここでは説明を省略する。この場合、上述の第2実施形態の「リング共振器間のリング径の差」は、本実施形態の「リング共振器間の温度の差」に対応する。
したがって、本実施形態にかかる光変調器(リング装荷型MZ変調器)によれば、動作波長帯域を広くし、作用長を短くし、コンパクト化(小型化)を図ることができるという利点がある。
なお、上述の実施形態では、一のアームに装荷される複数のリング共振器のリング径を同一にし、これらの温度を変える場合を例に挙げて説明しているが、これに限られるものではない。
例えば、複数のリング共振器のリング径を変えるとともに、複数のリング共振器の温度を変えるようにしても良い。つまり、上述の第2実施形態のものと本実施形態のものとを組み合わせても良い。
また、例えば、複数のリング共振器のリング径を同一にし、複数のリング共振器を構成するリング光導波路の導波路幅を変え、複数のリング共振器の温度を変えるようにしても良い。つまり、上述の第3実施形態のものと本実施形態のものとを組み合わせても良い。
また、上述の実施形態では、各リング共振器は一定の温度に制御されるようにしているが、これに限られるものではない。
例えば、ヒータに供給される電流量を制御して(即ち、ヒータの出力を制御して)、各リング共振器の温度を変化させることで、各リング共振器の共振波長を調整できるようにしても良い。これにより、変調器の動作波長帯域を、入力する連続光の波長に合わせてダイナミックに変化させることが可能となる。この場合、入力する連続光の波長をモニタするためのモニタ機構や各ヒータに供給される電流量を制御するための制御回路(コントローラ)を設けることになる。
これにより、製造の際に生じたリング共振器のリング径の設計に対する誤差を、ヒータを用いた温度調整によって補償することができる。この結果、設計どおりの動作波長帯域、消光比が得られるようにすることができる。
また、リング共振器の温度調整によって、変調器が置かれている環境の温度によらず、温度を一定に保つことができる。これにより、変調器が置かれている環境の温度が変化しても、リング共振器の共振波長を一定に維持し、動作波長帯域や消光比が一定の安定した動作を実現することができる。
なお、ここでは、上述の実施形態の構成において、各リング共振器の温度を制御して、各リング共振器の共振波長を調整できるようにすることを説明しているが、これに限られるものではない。例えば、上述の第2実施形態の構成において、本実施形態のようにヒータを設け、各リング共振器の温度を制御して、各リング共振器の共振波長を調整できるようにしても良い。また、例えば、上述の第3実施形態の構成において、本実施形態のようにヒータを設け、各リング共振器の温度を制御して、各リング共振器の共振波長を調整できるようにしても良い。
また、上述の実施形態では、リング共振器の温度が、アームの一端から他端へ向けて、少しずつ高くなるようにしているが、これに限られるものではなく、例えば、アームの一端から他端へ向けて、少しずつ低くなるようにしても良いし、リング共振器の温度をランダムに変えるようにしても良い。
[第5実施形態]
次に、第5実施形態にかかる光変調器(リング装荷型MZ変調器)について、図15,図16を参照しながら説明する。
本実施形態にかかるリング装荷型MZ変調器は、上述の第1実施形態のリング共振器による位相変化を利用した変調の原理を用いるリング装荷型MZ変調器であって、上述の第2実施形態のものが、複数の第1リング共振器の相互間で、又は、複数の第2リング共振器の相互間で共振波長を変えているのに対し、本実施形態のものは、複数の第1リング共振器の相互間で、又は、複数の第2リング共振器の相互間で共振波長を同一にしている点が異なる。
特に、図15に示すように、本変調器10Cでは、複数の第1リング光導波路60Cは、互いにリング径が同一になるように形成されている。また、複数の第1リング光導波路60Cは、互いに導波路幅が同一になるように形成されている。このように、複数の第1リング共振器50Cは、互いに共振波長が同一になるように形成されている。なお、図15では、上述の第2実施形態のもの(図4参照)と同一のものには同一の符号を付している。
同様に、複数の第2リング光導波路61Cは、互いにリング径が同一になるように形成されている。また、複数の第2リング光導波路61Cは、互いに導波路幅が同一になるように形成されている。このように、複数の第2リング共振器51Cは、互いに共振波長が同一になるように形成されている。
次に、複数の第1リング光導波路60C又は複数の第2リング光導波路61Cのリング径及び導波路幅を同一にして(即ち、複数の第1リング共振器50C又は複数の第2リング共振器51Cの共振波長を同一にして)、動作波長帯域を広くする原理を、図16を参照しながら説明する。
上述の第1実施形態において説明したように、本変調器10Cの動作波長帯域は、装荷されているリング共振器の共振波長帯域にほぼ等しい。
このため、まず、図16(A),図16(B)中、点線で示すように、単一のリング共振器の共振を弱くして、リング出力光の強度スペクトル及び位相スペクトルのリング共振波長帯域における変化をなだらかにし(即ち、リング共振器のQ値を小さくし)、リング共振波長帯域を広げることで、本変調器10Cの動作波長帯域を広くする。
しかしながら、この場合、図16(B)中、点線で示すように、リング出力光の位相スペクトルの共振波長帯域における傾き(スロープ)が小さくなってしまう。
このため、屈折率を変化させて位相スペクトルをシフトさせる際に、設定した動作波長における位相変化が小さくなってしまう。
ここで、図16(C)中、点線は、上述のように構成した場合に得られる消光比のスペクトルを示している。なお、図16(C)では、変調器の動作波長帯域の中心(中心動作波長)が、消光比のスペクトルの中心になるように波長軸を取っている。
図16(C)中、点線で示すように、上述のように構成した場合、変調器の動作波長帯域は広くなるものの、大きな消光比は得られないことがわかる。
そこで、本実施形態では、各リング共振器の出力光(リング出力光)の強度スペクトルの共振波長帯域(リング共振波長帯域)の位置(中心共振波長の位置)が一致する複数のリング共振器を、MZ干渉計4の各アーム2,3に装荷する。このため、複数のリング共振器全体の共振波長帯域は、単一のリング共振器の共振波長帯域と同一である。
これにより、各リング共振器の出力光の強度スペクトルが強度軸方向で結合され(各リング共振器の出力光の強度スペクトルが足し合わされ)、これらのリング共振器の全体からの出力光(リング出力光)の強度スペクトルは、図16(A)中、実線で示すように、広い共振波長帯域を有するなだらかなスペクトル形状となる。
この場合、各リング共振器の出力光の位相スペクトルの共振波長帯域も強度軸方向で結合され(各リング共振器の出力光の位相スペクトルも足し合わされ)、これらのリング共振器の全体からの出力光(リング出力光)の位相スペクトルは、図16(B)中、実線で示すように、広い共振波長帯域において傾きが大きくなる。
これにより、各リング共振器を構成するリング光導波路の屈折率変化によって、必要な位相変化が、広い共振波長帯域内で均一に得られることになる。この結果、図16(C)中、実線で示すように、十分な大きさの消光比(変調器出力光の強度変化)が、広い動作波長帯域内で得られることになる。
次に、本変調器10Cの具体的な構成例について、図15を参照しながら説明する。
本実施形態では、屈折率変化5×10−5を利用して、一定の大きさの消光比を得るために、10個の第1リング共振器50Cを設け、これらの第1リング共振器50Cのリング径Rをいずれも8.7μmとしている。この場合、総作用長は2π×8.7×10=546μmとなる。これに対して、従来のMZ変調器(図22参照)では、同じ屈折率変化を利用して、一定の大きさの消光比を得るために、大きな作用長(例えば3.8mm程度)が必要になる。このように、本変調器によれば、従来のMZ変調器(図22参照)と比較して、作用長を約7分の1に低減することができる。なお、図15では、説明の便宜上、複数のリング共振器として、3つのリング共振器を示している。
同様に、屈折率変化5×10−5を利用して、一定の大きさの消光比を得るために、10個の第2リング共振器51Cを設け、これらの第2リング共振器51Cのリング径Rをいずれも8.7μmとしている。この場合、総作用長は2π×8.7×10=546μmとなる。これに対して、従来のMZ変調器(図22参照)では、同じ屈折率変化を利用して、一定の大きさの消光比を得るために、大きな作用長(例えば3.8mm程度)が必要になる。このように、本変調器によれば、従来のMZ変調器(図22参照)と比較して、作用長を約7分の1に低減することができる。
なお、その他の詳細は、上述の第2実施形態のものと同様であるため、ここでは説明を省略する。
したがって、本実施形態にかかる光変調器(リング装荷型MZ変調器)によれば、動作波長帯域を広くし、作用長を短くし、コンパクト化(小型化)を図ることができるという利点がある。
なお、上述の実施形態の構成において、上述の第4実施形態のようにヒータを設け、各リング共振器の温度を制御して、各リング共振器の共振波長を調整できるようにしても良い。
[第6実施形態]
次に、第6実施形態にかかる光変調器(リング装荷型MZ変調器)について、図17を参照しながら説明する。
本実施形態にかかるリング装荷型MZ変調器は、上述の第1実施形態のリング共振器による位相変化を利用した変調の原理を用いるリング装荷型MZ変調器であって、上述の第2実施形態のものに対し、MZ干渉計のアーム(第1光導波路及び第2光導波路)に装荷される複数のリング共振器の配置が異なる。
図17に示すように、本変調器10Dでは、複数(ここでは5個)の第1リング共振器50Dのそれぞれを構成する複数の第1リング光導波路60Dが、MZ干渉計4のアーム(第1光導波路)2を伝搬する光が結合する位置に設けられている。なお、図17では、説明の便宜上、複数のリング共振器として、3つのリング共振器を示している。
なお、図17では、上述の第2実施形態のもの(図4参照)と同一のものには同一の符号を付している。また、図17では、説明の便宜上、複数の第1リング光導波路60Dの相互間を、又は、複数の第2リング光導波路61Dの相互間を、同一のリング径として表わしているが、実際には、上述の第2実施形態と同様に、複数の第1リング光導波路60Dの相互間で、又は、複数の第2リング光導波路61Dの相互間で、リング径は異なる。
特に、本実施形態では、図17に示すように、これらの第1リング光導波路60Dのそれぞれに一つずつ第3リング共振器52がアーム2から離れる方向(アーム2に直交する方向)に直列に接続されている。つまり、複数の第3リング共振器52を構成する第3リング光導波路62が、第1リング光導波路60Dを伝搬する光が結合する位置にそれぞれ設けられている。
同様に、図17に示すように、複数(ここでは5個)の第2リング共振器51Dのそれぞれを構成する複数の第2リング光導波路61Dが、MZ干渉計4のアーム(第2光導波路)3を伝搬する光が結合する位置に設けられている。
特に、本実施形態では、図17に示すように、これらの第2リング光導波路61Dのそれぞれに一つずつ第4リング共振器53がアーム3から離れる方向(アーム3に直交する方向)に直列に接続されている。つまり、複数の第4リング共振器53を構成する第4リング光導波路63が、第2リング光導波路61Dを伝搬する光が結合する位置にそれぞれ設けられている。
また、図17に示すように、複数の第3リング光導波路62のそれぞれに沿って複数の第3電極72が設けられている。さらに、複数の第4リング光導波路63のそれぞれに沿って複数の第4電極73が設けられている。
また、第1電極70A及び第2電極71Aと同様に、第3電極72及び第4電極73には、図17に示すように、それぞれ、高周波変調信号(電気信号)を供給するための変調電源(高周波電源)8,9が接続されている。
次に、本変調器10Dの具体的な構成例について、図17を参照しながら説明する。
本実施形態では、図17に示すように、2つのリング共振器50D,52(51D,53)を直列に結合して構成される5組の直列結合リング共振器54が、MZ干渉計4の2つのアーム2,3のそれぞれに装荷された構造となっている。
ここで、MZ干渉計4の両アーム2,3に装荷される直列結合リング共振器54の個数Nは、それぞれ、5個とする。なお、MZ干渉計4の両アーム2,3に装荷されるリング共振器50D,51D,52,53の全個数は、それぞれ、10個であり、上述の第2実施形態の場合と同じである。
また、直列結合されている2つのリング共振器は、リング径Rを同一にしている。つまり、第3リング光導波路62のリング径は、直列結合されている第1リング光導波路60Dのリング径と同一になっている。また、第4リング光導波路63のリング径は、直列結合されている第2リング光導波路61Dのリング径と同一になっている。
また、アーム2,3と各リング共振器50D,51D(各リング光導波路60D,61D)との間の結合係数κは、全て0.589としている。このため、アームを構成する第1光導波路2及び第2光導波路3からリング共振器50D,51Dを構成するリング光導波路60D,61Dへのパワー移行率は、30.9%[|sin(κ)|=30.9%]となる。
また、直列結合されている2つのリング共振器50D,52(51D,53)[2つのリング光導波路60D,62(61D,63)]の間の結合係数κは、全ての直列結合リング共振器54において、0.196としている。このため、一方のリング共振器50D(51D)を構成するリング光導波路60D(61D)から他方のリング共振器52(53)を構成するリング光導波路62(63)へのパワー移行率は、3.8%[|sin(κ)|=3.8%]となる。
なお、その他の詳細は、上述の第2実施形態のものと同様であるため、ここでは説明を省略する。
したがって、本実施形態にかかる光変調器(リング装荷型MZ変調器)によれば、動作波長帯域を広くし、作用長を短くし、コンパクト化(小型化)を図ることができるという利点がある。
特に、本実施形態では、直列結合リング共振器を用いるため、MZ干渉計のアームに垂直な方向の素子の大きさは大きくなるものの、アームに平行な方向の素子の大きさ(長さ)は小さくすることができる。一方、上述の第2実施形態では、MZ干渉計のアームに並行な方向の素子の大きさ(長さ)は大きくなるものの、アームに垂直な方向の素子の大きさは小さくすることができる。このため、本実施形態のリング共振器の配置と上述の第2実施形態のリング共振器の配置とを適宜選択し、組み合わせることで、変調器の大きさ、形状等に対する異なった要求を満たすことができることになる。
なお、上述の実施形態は、上述の第2実施形態の変形例として説明しているが、これに限られるものではなく、例えば、上述の第1実施形態、第3実施形態〜第5実施形態の変形例として構成することもできる。つまり、本実施形態の構成と、上述の第1実施形態、第3実施形態〜第5実施形態のいずれかの構成とを組み合わせることもできる。
また、上述の実施形態の構成において、上述の第4実施形態のようにヒータを設け、各リング共振器の温度を制御して、各リング共振器の共振波長を調整できるようにしても良い。
[第7実施形態]
次に、第7実施形態にかかる光変調器(リング装荷型MZ変調器)について、図18を参照しながら説明する。
本実施形態にかかるリング装荷型MZ変調器は、上述の第1実施形態のリング共振器による位相変化を利用した変調の原理を用いるリング装荷型MZ変調器であって、上述の第2実施形態のものに対し、変調器を構成する材料が異なる。
本実施形態では、リブ型導波路コアを埋め込むオーバクラッド層の材料が異なる。つまり、上述の第2実施形態[図11(B)参照]では、リブ型導波路コア15X[特にリブ部分(Siコア)15Aの周り]を覆うオーバクラッド層をSiOオーバクラッド層16としているのに対し、本実施形態では、図18に示すように、ポリマからなるオーバクラッド層16Aとしている点が異なる。なお、図18では、上述の第2実施形態のもの[図11(B)参照]と同一のものには同一の符号を付している。
つまり、本実施形態では、MZ干渉計4の両アーム2,3(第1光導波路2及び第2光導波路3)、及び、リング共振器50,51を構成するリング光導波路60,61は、コア15Xが屈折率の温度変化係数(dn/dT)が正の値である半導体材料(ここではシリコン)によって形成されており、このコア15Xを覆うクラッド16Aが屈折率の温度変化係数(dn/dT)が負の値であるポリマ材料によって形成されている。
ここで、ポリマ材料としては、例えば、”Influence of humidity on refractive index of polymers for optical waveguide and its temperature dependence”, Applied Physics Letters, vol. 72, No. 13, pp.1533-1535, 1998に記載されているdeuterated polymethylmethacrylate(d−PMMA)を用いれば良い。このポリマ材料は、1.48付近の屈折率を有しているため、シリコン導波路コア15Aのクラッド材料として、SiOの代わりに用いることが可能である。
特に、このポリマ材料は、屈折率の温度変化係数(dn/dT)の符号が、シリコンなどの半導体材料と異なっているという特徴がある。つまり、シリコンの屈折率の温度変化係数(dn/dT)は1.8×10−4(dn/dT=1.8×10−4)であるのに対し、上記のポリマ材料の屈折率の温度変化係数(dn/dT)は約−10−4(dn/dT=−10−4)である。
これにより、変調器が置かれている環境温度によらず、変調器の動作波長帯域を比較的一定に保つことができることになる。
これは、上述のように、ポリマ材料の屈折率の温度に対する変化の方向が、シリコンの屈折率の温度に対する変化の方向に対して逆向きであることに起因している。
つまり、コア15Xとクラッド16Aの温度に対する屈折率の変化が互いに打ち消しあうことになり、導波路全体として見た場合、温度変化に対する等価屈折率の変化が小さくなる。これにより、温度変化に対するリング共振器50,51の共振波長の変化が小さくなり、その結果、温度変化に対する本変調器10の動作波長帯域の変化が小さくなる。したがって、上述のような構成にすることで、本変調器10の動作波長帯域を比較的一定に保つことができることになる。
また、本実施形態では、リブ型導波路コア15Xのリブ部分15Aの厚さ(リブ部分15Aのシリコン薄膜層の厚さ)を150nmとしている。このように、本実施形態において、リブ型導波路コア15Xのリブ部分15Aの厚さを、上述の第2実施形態のもの(250nm)よりも薄くしているのは、導波光のコア15Xにおける光閉じ込め係数を小さくし、オーバクラッド層16Aの等価屈折率に対する影響を大きくするためである。
なお、その他の詳細は、上述の第2実施形態のものと同様であるため、ここでは説明を省略する。
したがって、本実施形態にかかる光変調器(リング装荷型MZ変調器)によれば、動作波長帯域を広くし、作用長を短くし、コンパクト化(小型化)を図ることができるという利点がある。
特に、本実施形態では、上述のような構成を採用することで変調器の動作波長帯域を温度によらず一定に保つことができるため、例えばヒータ、ペルチェ素子、制御回路、共振波長モニタ機構等を設けなくても良く、簡便な構成の光変調器を実現できるという効果もある。
なお、上述の実施形態では、MZ干渉計4の両アーム2,3(第1光導波路2及び第2光導波路3)、及び、リング共振器50,51を構成するリング光導波路60,61の全ての部分において、コア15Xが、屈折率の温度変化係数(dn/dT)が正の値である半導体材料によって形成され、このコア15Xを覆うクラッド16Aが屈折率の温度変化係数(dn/dT)が負の値であるポリマ材料によって形成される場合を例に挙げて説明しているが、これに限られるものではない。
例えば、MZ干渉計4を構成する第1光導波路2及び第2光導波路3、及び、リング光導波路60,61において、コア15Xを、屈折率の温度変化係数(dn/dT)が正の値である誘電体材料によって形成し、このコア15Xを覆うクラッド16Aを、屈折率の温度変化係数(dn/dT)が負の値であるポリマ材料によって形成しても良い。
また、例えば、リング共振器50,51を構成するリング光導波路60,61の部分のみにおいて、コア15Xを、屈折率の温度変化係数(dn/dT)が正の値である半導体材料又は誘電体材料によって形成し、このコア15Xを覆うクラッド16Aが屈折率の温度変化係数(dn/dT)が負の値であるポリマ材料によって形成しても良い。この場合、少なくとも、リング共振器50,51を構成するリング光導波路60,61のコア15Xのリブ部分(Siコア)15Aが覆われるように、屈折率の温度変化係数(dn/dT)が負の値であるポリマ材料によってクラッドを形成すれば良い。
なお、上述の実施形態は、上述の第2実施形態の変形例として説明しているが、これに限られるものではなく、例えば、上述の第3実施形態〜第6実施形態の変形例として構成することもできる。つまり、本実施形態の構成と、上述の第3実施形態〜第6実施形態のいずれかの構成とを組み合わせることもできる。
また、上述の実施形態の構成において、上述の第4実施形態のようにヒータを設け、各リング共振器の温度を制御して、各リング共振器の共振波長を調整できるようにしても良い。
[第8実施形態]
次に、第8実施形態にかかる光変調器(リング装荷型MZ変調器)について、図19を参照しながら説明する。
本実施形態にかかるリング装荷型MZ変調器は、上述の第1実施形態のリング共振器による位相変化を利用した変調の原理を用いるリング装荷型MZ変調器であって、上述の第2実施形態のものに対し、図19に示すように、MZ干渉計4を構成する2つの光カプラが、いずれも、2つの入力ポート及び2つの出力ポートを有する2入力2出力(2x2)型光カプラ19,20である点が異なる。
なお、図19では、上述の第2実施形態のもの(図4参照)と同一のものには同一の符号を付している。また、図19では、説明の便宜上、複数の第1リング光導波路60の相互間を、又は、複数の第2リング光導波路61の相互間を、同一のリング径として表わしているが、実際には、上述の第2実施形態と同様に、複数の第1リング光導波路60の相互間で、又は、複数の第2リング光導波路61の相互間で、リング径は異なる。
特に、図19に示すように、本変調器10Eでは、上述の第2実施形態のMZ干渉計4を構成するYブランチ(1×2)型光カプラ11,12に代えて、2×2型多モード干渉(MMI)カプラ19,20を用いている。
なお、その他の詳細は、上述の第2実施形態のものと同様であるため、ここでは説明を省略する。
したがって、本実施形態にかかる光変調器(リング装荷型MZ変調器)によれば、動作波長帯域を広くし、作用長を短くし、コンパクト化(小型化)を図ることができるという利点がある。
ところで、上述の本変調器10Eによって、図19に示すように、特定の波長の光を選択的に変調する変調器としての機能と、特定の波長の光信号を波長多重信号(WDM信号)に追加(アド)するアド素子としての機能とを合わせ持つ光送信器を、簡便な構成で実現することができる。
この場合、本変調器(本光送信器)10Eでは、図19に示すように、光入力側の光カプラ19の一方の入力ポートから一の波長λiの連続光が入力され、図示しない光伝送路を介して他方の入力ポートから一の波長λiの信号光を含まない波長多重信号光が入力される。
そして、一方の入力ポートに入力された一の波長λiの連続光が信号光に変調され、変調された一の波長λiの信号光(変調光)が、他方の入力ポートに入力された波長多重信号光にアドされ、一の波長λiの信号光を含む波長多重信号光が、光出力側の光カプラ20の一方の出力ポートから光伝送路へ出力される。
つまり、本変調器(本光送信器)10Eは、一方の入力ポートに入力された一の波長λiの連続光を信号光に変調するとともに、光伝送路を介して他の入力ポートに入力された波長多重信号光に一の波長λiの信号光をアドする機能を有する。なお、本変調器10Eの動作波長はλiである。
なお、本変調器10Eでは、光出力側の光カプラ20も2×2型光カプラを用いているため、一の波長λiの変調光は両方の出力ポートから、互いに逆相の関係で出力されることになる。つまり、光出力側の光カプラ20の他方の出力ポートから、一の波長λiの変調光に対して逆相の変調光(λi逆相変調光)が出力される。この場合、一方の出力ポートからの出力光が光のON状態の時に、他方の出力ポートからの出力光が光のOFF状態となる。このため、他方の出力ポートから出力された変調光をモニタ等に使用することができる。
また、ここでは、本変調器(本光送信器)10Eを、一の波長を含まない一つ以上の波長の信号光を含む波長多重信号光に一の波長の信号光をアドする機能を有するものとして説明しているが、これに限られるものではなく、一の波長と異なる他の波長の信号光に一の波長の信号光をアドする機能を有するものであれば良い。
したがって、本実施形態にかかる光変調器(リング装荷型MZ変調器)を用いることで、一の波長の光のみを選択的に変調し、それ以外の波長からなるWDM信号に付け加える(アドする)機能を有する光送信器を、簡便な構成で実現できるという利点がある。
また、このような光送信器10Eを用いて、図20に示すようなアド・ドロップ型ノードを含むWDMシステム(光伝送システム)を実現することもできる。
つまり、図20に示すように、上述の本変調器(本光送信器)10Eを含むものとしてアド・ドロップ型のノード21を構成し、このノード21に光伝送路22,23を接続して、アド・ドロップ型ノード21を含むWDMシステム24を構成することができる。
ここで、WDMシステム24に含まれるアド・ドロップ型の各ノード21は、図20に示すように、光伝送路22を伝搬してきた波長多重(WDM)信号光から、特定の波長λiの信号光(ドロップ信号光)のみをドロップ素子25を用いて取り出し(ドロップし)、光受信器26で電気信号に変換して受信し、出力電気信号として出力すると同時に、アドしたい信号(入力電気信号)を光送信器27で特定の波長λiの信号光(アド信号光)に変換し、アド素子28を用いて特定の波長λiの信号光以外の波長多重信号光に追加(アド)し、光伝送路23に戻す機能を有する。
このようなアド・ドロップ型ノード21に含まれるアド素子28及び光送信器27を、上述の本変調器(本光送信器)10E(図19参照)を用いて簡便に構成することができる。
この場合、上述の本変調器(本光送信器)10E(図19参照)の光入力側の光カプラ19の一方の入力ポートに、アドする波長λiの連続光が入力される。
また、他方の入力ポートに、ドロップ素子25をパスしてきた波長多重信号光[このノード21でドロップされる波長λiの信号光(ドロップ信号光)を含まない波長多重信号光]が入力される。
そして、一方の入力ポートに入力された一の波長λiの連続光は、上述の本変調器(本光送信器)10E(図19参照)によって十分な消光比を有する信号光に変調され、変調された一の波長λiの信号光(変調光)が、他方の入力ポートに入力された波長多重信号光にアドされ、一の波長λiの信号光(アド信号光)を含む波長多重信号光が、光出力側の光カプラ20の一方の出力ポートから光伝送路23へ出力される。
つまり、本実施形態にかかる光伝送方法では、図19に示すように、2つの入力ポートを有するMZ干渉計4の一の入力ポートに一の波長の連続光を入力するとともに、他の入力ポートに他の波長の信号光(ここでは波長多重信号光)を入力する。そして、MZ干渉計4を構成する2つのアーム2,3の少なくとも一方(ここでは両方)を伝搬する光が結合する位置に設けられたリング共振器50,51及びMZ干渉計4によって、連続光を変調して一の波長の信号光が生成されるとともに、他の波長の信号光に一の波長の信号光がアドされることになる。
また、本変調器10の動作波長は1.55μmであるため、一の波長λiは1.55μmを含むチャネルの波長となる。
また、一の波長λiの信号光以外の本ノード21をパスする波長(パス波長)の信号光は、本変調器10Eにおける消光比のスペクトル(図6参照)から分かるように、変調を受けず、損失を受けないで通過する[図9(B)参照]。このため、入力された波長多重信号光のうち一の波長以外の波長の信号光は、信号波形の形を変えずに、入力されたポートに対してMZ干渉計4の中心線を挟んで反対側のポートから出力されることになる。
このように、本変調器(本光送信器)10Eを用いることで、特定の波長(チャネル)λiの連続光を選択的に変調すること、及び、その変調光を特定の波長λi以外の波長の信号光からなるWDM信号光に付け加える(アド)することを同時に実現することが可能となる。これにより、上述の本光送信器(本変調器)10Eを用いて、アド・ドロップ型ノード21を含むWDMシステム24を簡便な構成で実現することができる。
ところで、本変調器10Eを構成するリング共振器50,51のフリー・スペクトル・レンジ(FSR)は、リング共振器50,51を構成するリング光導波路60,61の実効屈折率Ne、リング径R、共振波長λcを用いて、次式によって求めることができる。
λc/(Ne・2πR)
ここで、実効屈折率Neは導波路の等価(位相)屈折率をneffとした場合、次式で定義される。
Figure 2009282460
上述のように、本変調器10Eのリング光導波路60,61の実効屈折率Neは約4.0であり、リング径Rは8.7μmであり、共振波長λcは1.55μmであるため、本リング共振器のFSRは約10.9nmである。
本ノード21において、ドロップする波長とそれ以外の波長の全てを合わせた波長の帯域は、リング共振器50,51のFSRによって決まる。
また、波長チャネル間隔は、本変調器10Eにおける動作波長帯域によって決まる。上述の第1実施形態において説明したように、本変調器10Eの動作波長帯域は約1nmである。
したがって、波長チャネル間隔に少し余裕を与え、1nmより若干大きな値、例えば1.6nmに設定すると、本ノード21は、1.55μmを中心に6程度のチャネル数を用いることができる。
したがって、本実施形態にかかる光変調器(リング装荷型MZ変調器)を用いることで、ノードに割り当てられた波長の光のみを選択的に変調し、それ以外の波長からなるWDM信号に付け加える(アドする)機能を有するアド・ドロップ型ノード21、及び、これを備えるWDMシステム24を簡便な構成で実現できるという利点がある。また、アド・ドロップ型ノード21の動作波長帯域を広くし、作用長を短くし、コンパクト化(小型化)を図ることができる。
なお、上述の実施形態では、MZ干渉計を構成する2つの光カプラがいずれも2入力2出力型光カプラである場合を例に挙げて説明しているが、これに限られるものではない。例えば、光入力側の光カプラのみを2入力2出力型光カプラとし、光出力側の光カプラをYブランチ(1×2)型光カプラとする等、MZ干渉計を構成する2つの光カプラの少なくとも一方を2入力2出力型光カプラとすれば良い。
また、上述の実施形態は、上述の第2実施形態の変形例として説明しているが、これに限られるものではなく、例えば、上述の第1実施形態、第3実施形態〜第7実施形態の変形例として構成することもできる。つまり、本実施形態の構成と、上述の第1実施形態、第3実施形態〜第7実施形態のいずれかの構成とを組み合わせることもできる。
また、上述の実施形態の構成において、上述の第4実施形態のようにヒータを設け、各リング共振器の温度を制御して、各リング共振器の共振波長を調整できるようにしても良い。
なお、上述の実施形態では、本変調器(本光送信器;動作波長1.55μm)を、一の波長λiの信号光をアド・ドロップするアド・ドロップ型ノードに適用する場合を例に挙げて説明したが、これに限られるものではない。
例えば、動作波長の異なる本変調器(本光送信器)を、他の波長の信号光をアド・ドロップするアド・ドロップ型ノードに適用することも可能である。この場合、アド及びドロップする波長はそのノードに割り当てられた波長に合わせる必要がある。この波長の調整は、本変調器(本光送信器)において、MZ干渉計のアームに装荷するリング共振器の共振波長を、ノードに割り当てられた波長に一致させるように行なわれる。
また、上述の実施形態において、本変調器(本光送信器)を、WDMシステムのアド・ドロップ型ノードに含まれるアド素子及び光送信器に適用する場合、WDMシステムのアド・ドロップ型ノードに含まれるドロップ素子として、上述の本変調器を構成する光素子を用いても良い。
[第9実施形態]
次に、第9実施形態にかかる光変調器(リング装荷型MZ変調器)について、図21を参照しながら説明する。
本実施形態にかかるリング装荷型MZ変調器(光送信器)は、上述の第1実施形態のリング共振器による位相変化を利用した変調の原理を用いるリング装荷型MZ変調器であって、上述の第2実施形態のリング装荷型MZ変調器10(図4参照)を複数備え、これらが縦属接続された多波長入出力変調器である。
つまり、本実施形態にかかる光変調器は、図21に示すように、上述の第2実施形態のリング装荷型MZ変調器10を複数備える光変調器(縦属接続リング装荷型MZ変調器;光集積素子)であって、これらのリング装荷型MZ変調器10が、光伝搬方向に沿って直列に接続されており、複数のリング装荷型MZ変調器10は、互いに動作波長帯域が異なるように構成されている。つまり、複数のリング装荷型MZ変調器10のそれぞれに備えられるリング共振器の共振波長は互いに異なるように構成されている。
なお、図21では、上述の第2実施形態のもの(図4参照)と同一のものには同一の符号を付している。また、図21では、説明の便宜上、複数のリング装荷型MZ変調器として、4つのリング装荷型MZ変調器を示している。
ここでは、隣り合うリング装荷型MZ変調器10の出力ポートと入力ポートとが光導波路29を介して接続されている。
また、各リング装荷型MZ変調器10を構成するMZ干渉計4に装荷されるリング共振器50,51の共振波長を、各リング装荷型MZ変調器10間で変化させることによって、各リング装荷型MZ変調器10の動作波長帯域が互いに異なるようにしている。
例えば、各リング装荷型MZ変調器10を構成するMZ干渉計に装荷されるリング共振器50,51のリング径を調整することで、リング共振器50,51の共振波長を、各リング装荷型MZ変調器10間で変化させ、各リング装荷型MZ変調器10の動作波長帯域が互いに異なるようにすれば良い。
なお、リング共振器50,51の共振波長を、各リング装荷型MZ変調器10間で変化させる方法は、これに限られるものではない。例えば、リング共振器50,51の導波路幅を調整したり、リング共振器50,51の温度を変えたりするなどの方法によって、リング共振器50,51の共振波長を、各リング装荷型MZ変調器10間で変化させるようにしても良い。
これにより、図21に示すように、各リング装荷型MZ変調器10のそれぞれにおいて、異なる波長の連続光が波長毎に独立に変調されることになる。つまり、各リング装荷型MZ変調器10は、入力される波長多重連続光(λ〜λ)のうち、特定の波長の連続光のみを変調して出力し、その他の波長に対しては実質的に変化を与えずに、スルーして出力することになる。
この場合、入力する連続光の波長多重度に応じて(波長多重された連続光の波長数に応じて)、本変調器を構成するリング装荷型MZ変調器10の数を設定し、これらを直列に接続すれば良い。また、入力される波長多重連続光の波長ラインナップは、縦属接続される各リング装荷型MZ変調器10の動作波長ラインナップと一致するようにすれば良い。
ここで、変調する波長とスルーする波長との全てを合わせた波長の帯域は、リング共振器50,51のFSRによって決まる。上述の第8実施形態で説明したように、本変調器を構成するリング装荷型MZ変調器10に装荷されるリング共振器50,51のFSRは10.9nmである。一方、変調する波長とスルーする波長とを含む全波長における各波長の間隔は、リング装荷型MZ変調器10の動作波長帯域によって決まる。上述の第1実施形態において説明したように、リング装荷型MZ変調器10の動作波長帯域は約1nmである。したがって、各波長の間隔に少し余裕を与え、1nmより若干大きな値、例えば1.6nmに設定すると、本変調器は、1.55μmを中心に6程度のチャネル数を用いることができる。つまり、本実施形態では、波長チャネル間隔を1.6nmとして、波長多重されうる波長数(波長多重度)は6つ(6チャネル)である。
なお、本変調器を構成する各リング装荷型MZ変調器10は、互いに動作波長帯域がずらされているだけであり、基本的な構成は上述の第2実施形態のもの(図4参照)と同様であるため、ここではその詳細な説明は省略する。
また、本変調器に入力される多波長の連続光(波長多重連続光)としては、例えば、発振波長の異なるDFBレーザからの連続光をカプラによって多重化した波長多重連続光を用いても良いし、あるいは、SLD(Super Luminescent Diode)による広波長帯域連続光を用いても良い。
次に、本変調器の動作(光変調方法)について説明する。
まず、本変調器では、図21に示すように、一のポート(入力ポート)から波長多重された連続光(波長多重連続光;λ〜λ)が入力される。つまり、入力ポートから最入力側のリング装荷型MZ変調器10を構成するMZ干渉計4に複数の波長の連続光(波長多重連続光;λ〜λ)が入力される。
各リング装荷型MZ変調器10には、それぞれ、別個の電気信号(入力電気信号)が入力され、各リング装荷型MZ変調器10のそれぞれにおいて、異なる波長の連続光がそれぞれ独立に変調される。つまり、入力された波長多重連続光は、それぞれ別々のリング装荷型MZ変調器10によって変調される。
この場合、複数のリング装荷型MZ変調器10に含まれる一のリング装荷型MZ変調器10においては、一のリング装荷型MZ変調器10を構成するMZ干渉計4の2つのアーム2,3のそれぞれに設けられた複数のリング共振器50,51が、複数の波長の連続光に含まれる一の波長の連続光の位相を変化させた後、一のリング装荷型MZ変調器10を構成するMZ干渉計4が、一の波長の連続光の強度を変化させて、一の波長の連続光が変調される。
そして、各リング装荷型MZ変調器10において変調された信号光が波長多重されて、入力ポートとは異なる他のポート(出力ポート)から波長多重信号光として出力される。
このため、本変調器を、多波長入出力型変調器と言う。
したがって、本実施形態にかかる光変調器(リング装荷型MZ変調器)によれば、動作波長帯域を広くし、作用長を短くし、コンパクト化(小型化)を図ることができるという利点がある。
なお、上述の実施形態は、上述の第2実施形態の変形例として説明しているが、これに限られるものではなく、例えば、上述の第1実施形態、第3実施形態〜第8実施形態の変形例として構成することもできる。つまり、本実施形態の構成と、上述の第1実施形態、第3実施形態〜第8実施形態のいずれかの構成とを組み合わせることもできる。
ここで、本実施形態の構成と第1実施形態の構成と組み合わせる場合には、以下のように動作する。
つまり、入力ポートから最入力側のリング装荷型MZ変調器を構成するMZ干渉計(一のMZ干渉計)に複数の波長の連続光(波長多重連続光)を入力し、一のMZ干渉計を構成する2つのアームの少なくとも一方を伝搬する光が結合する位置に設けられた少なくとも1つのリング共振器によって、一の波長の連続光の位相を変化させた後、一のMZ干渉計によって、一の波長の連続光の強度を変化させて、一の波長の連続光を変調する。
次に、一のMZ干渉計に縦属接続された他のMZ干渉計を構成する2つのアームの少なくとも一方を伝搬する光が結合する位置に設けられた少なくとも1つのリング共振器によって、他の波長の連続光の位相を変化させた後、他のMZ干渉計によって、他の波長の連続光の強度を変化させて、他の波長の連続光を変調する。
ここで、本実施形態の構成と第8実施形態の構成とを組み合わせる場合には、少なくとも最も入力側又は最も出力側のリング装荷型MZ変調器の入力側の光カプラを2×2型光カプラとすれば良い。
また、上述の実施形態の構成において、上述の第4実施形態のようにヒータを設け、各リング共振器の温度を制御して、各リング共振器の共振波長を調整できるようにしても良い。
[その他]
なお、上述の各実施形態では、リング径R、リング径の差ΔR、導波路幅W、導波路幅の差ΔW、結合係数κ、リング共振器の個数Nなどについて、具体的な数値を記載しているが、これらは、変調器に要求される消光比、動作波長帯域、総作用長等によって、適宜、変更しても良い。
例えば、上述の第2実施形態〜第9実施形態では、複数のリング共振器間で結合係数κを全て同一にしているが、これに限られるものではなく、例えば、消光比のスペクトルが、動作波長帯域において、より箱型の関数になるように、結合係数κをリング共振器毎に変えても良い。
また、本発明は、上述した各実施形態及びその変形例に記載した構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
以下、上述の各実施形態及びその変形例に関し、更に、付記を開示する。
(付記1)
マッハツェンダ干渉計を構成する第1光導波路及び第2光導波路と、
前記第1光導波路又は前記第2光導波路を伝搬する光が結合する位置に設けられ、リング共振器を構成するリング光導波路と、
前記リング光導波路に沿って設けられ、伝搬する光の位相が変化するように前記リング光導波路の屈折率を変化させるための電極とを備えることを特徴とする光変調器。
(付記2)
前記リング光導波路は、複数の第1リング共振器のそれぞれを構成する複数の第1リング光導波路、及び、複数の第2リング共振器のそれぞれを構成する複数の第2リング光導波路であり、
前記複数の第1リング光導波路は、前記第1光導波路を伝搬する光が結合する位置に設けられており、
前記複数の第2リング光導波路は、前記第2光導波路を伝搬する光が結合する位置に設けられており、
前記電極は、前記複数の第1リング光導波路のそれぞれに沿って設けられた複数の第1電極、及び、前記複数の第2リング光導波路のそれぞれに沿って設けられた複数の第2電極であることを特徴とする、付記1記載の光変調器。
(付記3)
前記複数の第1リング共振器は、互いに共振波長が異なり、
前記複数の第2リング共振器は、互いに共振波長が異なることを特徴とする、付記2記載の光変調器。
(付記4)
前記複数の第1リング光導波路は、互いにリング径が異なり、
前記複数の第2リング光導波路は、互いにリング径が異なることを特徴とする、付記2又は3記載の光変調器。
(付記5)
前記複数の第1リング光導波路は、互いに導波路幅が異なり、
前記複数の第2リング光導波路は、互いに導波路幅が異なることを特徴とする、付記2〜4のいずれか1項に記載の光変調器。
(付記6)
前記複数の第1リング共振器は、互いに共振波長が同一であり、
前記複数の第2リング共振器は、互いに共振波長が同一であることを特徴とする、付記2記載の光変調器。
(付記7)
前記複数の第1リング光導波路のそれぞれに沿って設けられ、前記複数の第1リング共振器のそれぞれの温度を変化させるための複数の第1ヒータと、
前記複数の第2リング光導波路のそれぞれに沿って設けられ、前記複数の第2リング共振器のそれぞれの温度を変化させるための複数の第2ヒータとを備えることを特徴とする、付記2〜6のいずれか1項に記載の光変調器。
(付記8)
前記第1光導波路、前記第1リング光導波路及び前記第1電極と、前記第2光導波路、前記第2リング光導波路及び前記第2電極とは、それぞれ、同一の構成になっており、
前記第1電極及び前記第2電極は、プッシュプル駆動するための電極であることを特徴とする、付記2〜7のいずれか1項に記載の光変調器。
(付記9)
前記リング光導波路は、シリコン材料を含むリブ型光導波路であり、
前記リブ型光導波路の両側へ延びるスラブ部分の一方はp型不純物材料がドーピングされており、他方はn型不純物材料がドーピングされていることを特徴とする、付記1〜8のいずれか1項に記載の光変調器。
(付記10)
前記リング光導波路は、コアが屈折率の温度変化係数(dn/dT)が正の値である半導体材料又は誘電体材料によって形成されており、前記コアを覆うクラッドが屈折率の温度変化係数(dn/dT)が負の値であるポリマ材料によって形成されていることを特徴とする、付記1〜9のいずれか1項に記載の光変調器。
(付記11)
前記リング光導波路を伝搬する光が結合する位置に設けられ、リング共振器を構成する他のリング光導波路を備えることを特徴とする、付記1〜10のいずれか1項に記載の光変調器。
(付記12)
前記マッハツェンダ干渉計を構成する2つの光カプラの少なくとも一方は、2つの入力ポート及び2つの出力ポートを有する2入力2出力型光カプラであることを特徴とする、付記1〜11のいずれか1項に記載の光変調器。
(付記13)
前記電極は、変調信号が供給される変調電極であることを特徴とする、付記1〜12のいずれか1項に記載の光変調器。
(付記14)
付記1〜13のいずれか1項に記載の光変調器を複数備え、
前記複数の光変調器は、光伝搬方向に沿って直列に接続されており、
前記複数の光変調器のそれぞれに備えられる前記リング共振器の共振波長が互いに異なることを特徴とする、光変調器。
(付記15)
付記1〜14のいずれか1項に記載の光変調器を備えることを特徴とする光送信器。
(付記16)
付記15記載の光送信器と、
前記光送信器に光伝送路を介して接続された光受信器とを備えることを特徴とする光伝送システム。
(付記17)
付記1〜14のいずれか1項に記載の光変調器を備えるノードと、
前記ノードに接続された光伝送路とを備え、
前記光変調器が、一の入力ポートに入力された一の波長の連続光を信号光に変調するとともに、前記光伝送路を介して他の入力ポートに入力された他の波長の信号光に前記一の波長の信号光をアドする機能を有することを特徴とする光伝送システム。
(付記18)
マッハツェンダ干渉計を構成する2つのアームの少なくとも一方を伝搬する光が結合する位置に設けられたリング共振器によって、伝搬する光の位相を変化させた後、前記マッハツェンダ干渉計によって、伝搬する光の強度を変化させて、入力された連続光を変調することを特徴とする光変調方法。
(付記19)
一のマッハツェンダ干渉計に複数の波長の連続光を入力し、
前記一のマッハツェンダ干渉計を構成する2つのアームの少なくとも一方を伝搬する光が結合する位置に設けられた少なくとも1つのリング共振器によって、前記複数の波長に含まれる一の波長の連続光の位相を変化させた後、前記一のマッハツェンダ干渉計によって、前記一の波長の連続光の強度を変化させて、前記一の波長の連続光を変調し、
前記一のマッハツェンダ干渉計に縦属接続された他のマッハツェンダ干渉計を構成する2つのアームの少なくとも一方を伝搬する光が結合する位置に設けられた少なくとも1つのリング共振器によって、前記複数の波長に含まれる他の波長の連続光の位相を変化させた後、前記他のマッハツェンダ干渉計によって、前記他の波長の連続光の強度を変化させて、前記他の波長の連続光を変調することを特徴とする、付記18記載の光変調方法。
(付記20)
2つの入力ポートを有するマッハツェンダ干渉計の一の入力ポートに一の波長の連続光を入力するとともに、他の入力ポートに他の波長の信号光を入力し、
前記マッハェンダ干渉計を構成する2つのアームの少なくとも一方を伝搬する光が結合する位置に設けられたリング共振器及び前記マッハツェンダ干渉計によって、前記連続光を変調して一の波長の信号光を生成するとともに、前記他の波長の信号光に前記一の波長の信号光をアドすることを特徴とする光伝送方法。
本発明の第1実施形態にかかる光変調器(リング共振器装荷型MZ変調器)の構成を示す模式図である。 (A)〜(E)は、本発明の第1実施形態にかかる光変調器(リング共振器装荷型MZ変調器)におけるリング共振器による位相変化を利用した変調の原理を説明するための図である。 (A)〜(C)は、従来のリング共振器型変調器におけるリング共振器による強度変化を利用した変調の原理を説明するための図である。 本発明の第2実施形態にかかる光変調器(リング共振器装荷型MZ変調器)の構成を示す模式図である。 (A)〜(D)は、本発明の第2実施形態にかかる光変調器(リング共振器装荷型MZ変調器)におけるリング共振器のリング径を変えて動作波長帯域を広くする原理を説明するための図である。 本発明の第2実施形態にかかる光変調器(リング共振器装荷型MZ変調器)の構成によって得られる消光比のスペクトルを示す図である。 (A)〜(D)は、本発明の第2実施形態にかかる光変調器(リング共振器装荷型MZ変調器)の構成において、結合係数κ又はリング径の差ΔRを変えた場合に得られる消光比のスペクトルを示す図である。 本発明の第2実施形態にかかる光変調器(リング共振器装荷型MZ変調器)の構成よりもリング共振器の個数Nを増やした場合(N=20)の消光比のスペクトルを示す図である。 (A)は、本発明の第2実施形態にかかる光変調器(リング共振器装荷型MZ変調器)の構成において、アームを伝搬する光の位相スペクトルの計算結果を示す図であり、(B)は、その強度スペクトルの計算結果を示す図である。 本発明の第2実施形態にかかる光変調器(リング共振器装荷型MZ変調器)の構成において、アームを伝播した光の屈折率変化に伴う位相変化を示す図である。 (A),(B)は、本発明の第2実施形態にかかる光変調器(リング共振器装荷型MZ変調器)の構造を示す模式的断面図であって、(A)はMZ干渉計のアーム部分(直線導波路部分)の断面構造を示す図であり、(B)はリング共振器部分の断面構造を示す図である。 本発明の第3実施形態にかかる光変調器(リング共振器装荷型MZ変調器)の構成を示す模式図である。 本発明の第4実施形態にかかる光変調器(リング共振器装荷型MZ変調器)の構成を示す模式図である。 (A),(B)は、本発明の第4実施形態にかかる光変調器(リング共振器装荷型MZ変調器)のヒータの構成を示す模式図であって、(A)はその平面図であり、(B)はその断面図である。 本発明の第5実施形態にかかる光変調器(リング共振器装荷型MZ変調器)の構成を示す模式図である。 (A)〜(C)は、本発明の第5実施形態にかかる光変調器(リング共振器装荷型MZ変調器)におけるリング共振器の共振波長を同一にして動作波長帯域を広くする原理を説明するための図である。 本発明の第6実施形態にかかる光変調器(リング共振器装荷型MZ変調器)の構成を示す模式図である。 本発明の第7実施形態にかかる光変調器(リング共振器装荷型MZ変調器)の構成を示す模式的断面図である。 本発明の第8実施形態にかかる光変調器(リング共振器装荷型MZ変調器)の構成を示す模式図である。 一般的なアド・ドロップ型ノードを備えるWDMシステム(光伝送システム)の構成を示す模式図である。 本発明の第9実施形態にかかる光変調器(リング共振器装荷型MZ変調器)の構成を示す模式図である。 従来のMZ変調器の構成を示す模式図である。
符号の説明
1,10,10A,10B,10C,10D,10E 光変調器
2 第1光導波路(アーム)
3 第2光導波路(アーム)
4 マッハツェンダ干渉計
5 リング共振器
6 リング光導波路
7 電極
8,9 変調電源
11,12 光カプラ
13 シリコン基板
14 シリコン酸化膜
15 シリコン薄膜層
15X 導波路コア(リブ型導波路コア)
15A リブ部分(Siコア)
15B スラブ部分(Siスラブ)
15Ba p型領域
15Bb n型領域
16 SiOオーバクラッド層
16A ポリマ・オーバクラッド層
17A 第1ヒータ
17B 第2ヒータ
18A 第1直流電源
18B 第2直流電源
19,20 2x2型光カプラ
21 アド・ドロップ型のノード
22,23 光伝送路
24 WDMシステム
25 ドロップ素子
26 光受信器
27 光送信器
28 アド素子
29 光導波路
50,50A,50B,50C,50D 第1リング共振器
51,51A,51B,51C,51D 第2リング共振器
52 第3リング共振器
53 第4リング共振器
54 直列結合リング共振器
60,60A,60B,60C,60D 第1リング光導波路
61,61A,61B,61C,61D 第2リング光導波路
62 第3リング光導波路
63 第4リング光導波路
70,70A 第1電極
71,71A 第2電極
72 第3電極
73 第4電極

Claims (5)

  1. マッハツェンダ干渉計を構成する第1光導波路及び第2光導波路と、
    前記第1光導波路又は前記第2光導波路を伝搬する光が結合する位置に設けられ、リング共振器を構成するリング光導波路と、
    前記リング光導波路に沿って設けられ、伝搬する光の位相が変化するように前記リング光導波路の屈折率を変化させるための電極とを備えることを特徴とする光変調器。
  2. 前記リング光導波路は、複数の第1リング共振器のそれぞれを構成する複数の第1リング光導波路、及び、複数の第2リング共振器のそれぞれを構成する複数の第2リング光導波路であり、
    前記複数の第1リング光導波路は、前記第1光導波路を伝搬する光が結合する位置に設けられており、
    前記複数の第2リング光導波路は、前記第2光導波路を伝搬する光が結合する位置に設けられており、
    前記電極は、前記複数の第1リング光導波路のそれぞれに沿って設けられた複数の第1電極、及び、前記複数の第2リング光導波路のそれぞれに沿って設けられた複数の第2電極であることを特徴とする、請求項1記載の光変調器。
  3. 前記複数の第1リング共振器は、互いに共振波長が異なり、
    前記複数の第2リング共振器は、互いに共振波長が異なることを特徴とする、請求項2記載の光変調器。
  4. 前記複数の第1リング共振器は、互いに共振波長が同一であり、
    前記複数の第2リング共振器は、互いに共振波長が同一であることを特徴とする、請求項2記載の光変調器。
  5. 前記複数の第1リング光導波路のそれぞれに沿って設けられ、前記複数の第1リング共振器のそれぞれの温度を変化させるための複数の第1ヒータと、
    前記複数の第2リング光導波路のそれぞれに沿って設けられ、前記複数の第2リング共振器のそれぞれの温度を変化させるための複数の第2ヒータとを備えることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか1項に記載の光変調器。
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