JP2009282460A - 光変調器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】光変調器1を、マッハツェンダ干渉計4の第1光導波路2又は第2光導波路3を伝搬する光が結合する位置に、リング共振器5を構成するリング光導波路6が設けられており、伝搬する光の位相が変化するようにリング光導波路6の屈折率を変化させるための電極7が、リング光導波路6に沿って設けられているものとする。
【選択図】図1
Description
MZ変調器は、図22に示すように、入力電気信号(光や熱等でも良い)に基づいて光導波路を構成する材料の屈折率を変化させ(即ち光路長を変化させ)、これによって得られる伝搬光の位相の変化をマッハツェンダ干渉計によって光の強度変化に変換することで、入力された連続光の強度を変調し、変調光として出力するものである。
また、図22に示すように、2本のアームには、それぞれ、光導波路の屈折率を変化させるための電極が、ほぼ全領域にわたって設けられている。そして、各電極を介して各アームに電界を印加し、その光導波路の屈折率を変化させることで、各アームを伝搬する光の位相を変化させ、各アームを伝搬してきた光に位相差を生じさせ、これらを干渉させることで、出力される光の強度を変化させる。
2π・nL/λ・・・(1)
一方、リング共振器を用いた変調器(リング共振器型変調器)も検討されている。
リング共振器型変調器は、直線状光導波路にリング共振器を結合させて構成される。なお、直線状光導波路の一方の端部が入力ポートとなり、他方の端部が出力ポートとなる。
例えば、リング共振器を構成するリング光導波路への印加電圧が0の場合に、動作波長が透過スペクトルの遮断帯(ディップ)上に位置するようにする。これにより、出力ポートから出力される光の強度をOFF状態とする。一方、リング共振器を構成するリング光導波路に電圧を印加すると、リング光導波路の屈折率がわずかに変化して、透過スペクトルの遮断帯がわずかにシフトする。このシフトによって、動作波長が、透過スペクトルの遮断帯から外れて、透過スペクトルの透過帯上に位置するようになる。これにより、出力ポートから出力される光の強度をON状態とする。
Ansheng Liu et al., "High-speed optical modulation based on carrier depletion in a silicon waveguide", Optics Express, vol. 15, No. 2, pp.660-668, 22 January 2007 Qianfan Xu et al., "Micrometre-scale silicon electro-optic modulator", Nature, vol. 435, pp.325-327, 19 May 2005
ここで、各アームを構成する光導波路の屈折率の変化量は、各アームを構成する光導波路の材料によって、得られる値が概ね決まっている。
したがって、アーム長Lを大幅に短くすることは困難である。例えば、シリコン材料中のフリーキャリア・プラズマ効果を利用する場合、屈折率の変化量は5×10−5程度であり、この場合、3.8mm程度のアーム長が必要になる。
一方、上述のリング共振器型変調器では、リング共振器の透過スペクトルを急峻にするために(即ち、リング共振器のQ値を大きくするために)、直線状光導波路とリング共振器との間の結合係数κを最適化する。このため、十分な消光比が得られるようにしながら、リング共振器を構成するリング光導波路の直径を小さくして、変調器を小型化することが可能である。例えば、リング光導波路の半径を5μm程度にすることができる。
ここで、リング共振器の共振波長λcは、次式(2)によって表される。
λc=2πR・n/m・・・(2)
なお、Rはリング共振器を構成するリング光導波路の半径(リング径)、nはリング共振器を構成するリング光導波路の等価屈折率、mは自然数である。
このように透過スペクトルの遮断帯のシフト量、即ち、リング共振器型変調器の動作波長帯域が非常に小さい場合、変調器に入力する連続光の波長が、非常に小さい帯域(例えば0.1nmの範囲内)に入るようにしなければならない。このため、レーザの発振波長と変調器の動作波長との間の波長合わせ制御の精度に対する要求が非常に厳しくなり、実際の光伝送システムにおいて用いることは困難である。
そこで、動作波長帯域が広く、作用長が短く、コンパクトな光変調器を実現したい。
[第1実施形態]
まず、第1実施形態にかかる光変調器について、図1〜図3を参照しながら説明する。
本実施形態では、光変調器として、光通信用の光変調器を例に挙げて説明する。
図1に示すように、本光変調器1は、2本のアーム(第1光導波路2及び第2光導波路3)を有するマッハツェンダ干渉計(MZ干渉計)4にリング共振器5を装荷したリング装荷型マッハツェンダ変調器(リング共振器アシスト型のMZ変調器)である。
ここで、リング光導波路6は、図1に示すように、第1光導波路2又は第2光導波路3(ここでは第1光導波路2)を伝搬する光が結合する位置に設けられる。
このようなリング装荷型MZ変調器1では、図1に示すように、通常のMZ変調器と同様に、MZ干渉計4に入力された連続光は、分岐されてMZ干渉計4を構成する2本のアーム2,3を伝搬した後、再び結合(合波)され、変調器出力光として出力される。
そして、アーム2を伝搬する際にリング共振器5によって位相変調された光を、アーム伝搬後にアーム3を伝搬してきた光と干渉させることで、光の強度を変調する。
つまり、本実施形態にかかる光変調方法では、MZ干渉計4を構成する2つのアーム2,3の少なくとも一方(ここではアーム2)を伝搬する光が結合する位置に設けられたリング共振器5によって、伝搬する光の位相を変化させた後、MZ干渉計4によって、伝搬する光の強度を変化させて、入力された連続光を変調する。
本変調器1では、リング共振器5の出力光(リング出力光;リング共振器5に結合せずに伝搬する光も含む)の位相スペクトルのシフトを利用して変調を行なう。
まず、本変調器1では、MZ干渉計4のアーム2にリング共振器5が装荷されているため、アーム2を伝搬する光のうち、リング共振器5の共振波長帯域に含まれる波長の光は、リング光導波路6に結合し、リング光導波路6を伝搬した後、再びアーム2に結合して伝搬することになる。つまり、リング共振器5の共振波長帯域において、アーム2を伝搬する光の群遅延時間は大きくなる。これは、リング光導波路6が設けられている部分を通過した後、リング共振器5の共振波長帯域において、位相が波長によって大きく変化することになる(即ち、位相スペクトルに大きな傾きが生じる)ことと等価である。
なお、本変調器1では、リング出力光の強度スペクトルが、図2(D)に示すように、広いリング共振波長帯域の内外で比較的小さく変化し、その境界部分(リング共振波長帯域の端部)では比較的なだらかに変化するようになっている。
この屈折率変化によって、図2(B)に示すように、リング出力光の位相スペクトルが波長軸方向へシフトする。
このように、本変調器1では、リング共振器5によって位相変化を生じさせて、MZ干渉計4の2本のアーム2,3を伝搬する光に位相差を生じさせ、これらをMZ干渉計4によって干渉させることで強度変調を行なう。
これに対し、従来のリング共振器型変調器では、リング共振器による強度変化を利用して変調を行なうようになっている。
つまり、従来のリング共振器型変調器では、図3(A)に示すように、入力された連続光を、リング共振器によって強度変調し、リング共振器からの出力光をそのまま変調器出力光として出力するようになっている。
このため、従来のリング共振器型変調器では、図3(C)に示すように、わずかな屈折率変化で強度スペクトルがわずかにシフトするだけで、リング出力光(変調器出力光)の強度が大きく変化し、十分な消光比が得られるようにする必要がある。
そして、図3(C)に示すように、リング出力光(変調器出力光)の強度スペクトルの急峻な変化を利用して変調を行なうために、強度スペクトルのリング共振波長帯域の端部の傾き(波長の変化に対する強度の変化の割合)が大きい部分がわずかな屈折率変化でわずかにシフトする狭い帯域内に動作波長を設定する。
ところで、本変調器1では、上述のように、MZ干渉計4にリング共振器5を装荷し、リング共振器5によってある程度の位相変化を生じさせることによって、所望の消光比を得ることができる。つまり、リング共振器5による位相変化を用いれば、従来のMZ変調器と同一の屈折率変化を利用して一定の大きさの消光比を得るのに、従来のMZ変調器よりも作用長を短くすることができる。また、リング共振器5の大きさは小さいため、MZ干渉計4の2本のアーム2,3の長さ(アーム長)を短くすることもできる。
なお、上述の実施形態では、MZ干渉計を構成する2本のアームの一方にリング共振器を設けているが、これに限られるものではない。例えば、MZ干渉計を構成する2本のアームの両方に一つずつリング共振器を設けても良い。また、後述する各実施形態のように、MZ干渉計を構成する2本のアームのそれぞれに複数のリング共振器を設けても良い。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態にかかる光変調器(リング装荷型MZ変調器)について、図4〜図11を参照しながら説明する。
また、複数の第1リング光導波路60は、図4に示すように、互いにリング径が異なるように形成されている。つまり、複数の第1リング共振器50は、互いに共振波長が異なるように形成されている。なお、本実施形態では、複数の第1リング光導波路60の導波路幅は同一である。
また、図4に示すように、複数の第1リング光導波路60のそれぞれに沿って複数の第1電極70が設けられている。さらに、複数の第2リング光導波路61のそれぞれに沿って複数の第2電極71が設けられている。
ここでは、第1電極8及び第2電極9には、互いに逆相で同一の振幅を有する高周波電気信号(ここでは電圧信号)が供給され、本変調器10がプッシュプル駆動されるようになっている。
さらに、初期位相差を考慮して、電圧信号の直流成分は、本変調器1がON/OFF状態の光を出力する際に、2本のアーム2,3を伝搬してきた光の位相差が、それぞれ、極小/極大になるように調整される。
次に、複数の第1リング共振器50の相互間で、又は、複数の第2リング共振器51の相互間でリング径を変えて(即ち、複数の第1リング共振器50の相互間で、又は、複数の第2リング共振器51の相互間で共振波長を変えて)、動作波長帯域を広くする原理を、図5を参照しながら説明する。
リング共振器のリング径を変えると、リング共振器の共振波長が変わることになる。そこで、図5(A)に示すように、リング径の異なる3つのリング共振器(1)〜(3)は、個々のリング共振器の出力光(リング出力光)の強度スペクトルの共振波長帯域(リング共振波長帯域)の位置(中心共振波長の位置)が少しずつずれたものとし、これらのリング共振器(1)〜(3)をMZ干渉計のアームに装荷する。これにより、各リング共振器(1)〜(3)の出力光の強度スペクトルの共振波長帯域が波長軸方向で結合され、これらのリング共振器(1)〜(3)の全体からの出力光(リング出力光)の強度スペクトルは、図5(B)に示すように、広い共振波長帯域を有する箱型に近いスペクトル形状となる。
以下、本変調器10の具体的な構成例について、図4を参照しながら説明する。
また、MZ干渉計4の両アーム2,3に装荷されるリング共振器50,51の個数Nは、それぞれ、10個とする。
このように、本実施形態では、アーム2,3と各リング光導波路60,61との間のギャップの幅を、装荷された全てのリング光導波路60,61において共通の値とし、アーム2,3と各リング光導波路60,61との間の結合係数κも、装荷された全てのリング光導波路60,61において共通の値としている。
したがって、上述のように、結合係数κの値を0.39とした場合、パワー移行率は14.6%[|sin(κ)|2=14.6%]となる。
さらに、上述のように、第1光導波路2に装荷される複数の第1リング共振器50(複数の第1リング光導波路60)のリング径(第1リング光導波路60の半径;導波路コアのリブ部分の半径)Rは、互いに異なるように、各第1リング共振器50間で若干ずらされている。つまり、隣り合う第1リング共振器50間で、リング径Rに一定の差ΔRを与えている。ここでは、アーム2の一端から他端へ向けて、リング径RがΔR=0.8nmずつ大きくなるように設定している。
ここでは、屈折率変化5×10−5を利用して、一定の大きさの消光比を得るために、10個の第1リング共振器50を設け、これらの第1リング共振器50のリング径Rの平均値を約8.7μmとしているが、この場合、総作用長は2π×8.7×10=546μmとなる。これに対して、従来のMZ変調器(図22参照)では、同じ屈折率変化を利用して、一定の大きさの消光比を得るために、大きな作用長(例えば3.8mm程度)が必要になる。このように、本変調器10によれば、従来のMZ変調器(図22参照)と比較して、作用長を約7分の1に低減することができる。
また、複数の第1リング光導波路60の導波路幅[導波路コアのリブ部分の幅;図11(B)参照]は、いずれも、約450nmになるようにしている。
ここでは、屈折率変化5×10−5を利用して、一定の大きさの消光比を得るために、10個の第2リング共振器51を設け、これらのリング共振器51のリング径Rの平均値を約8.7μmとしているが、この場合、総作用長は2π×8.7×10=546μmとなる。これに対して、従来のMZ変調器(図22参照)では、同じ屈折率変化を利用して、一定の大きさの消光比を得るために、大きな作用長(例えば3.8mm程度)が必要になる。このように、本変調器によれば、従来のMZ変調器(図22参照)と比較して、作用長を約7分の1に低減することができる。
また、複数の第2リング光導波路61の導波路幅[導波路コアのリブ部分の幅;図11(B)参照]は、いずれも、約450nmになるようにしている。
まず、複数の第1リング共振器50の全体の中心共振波長[図5(B)〜(D)参照]、及び、複数の第2リング共振器51の全体の中心共振波長[図5(B)〜(D)参照]が、本変調器10の動作波長帯域の中心(中心動作波長;ここでは1.55μm)に合うように、異なるリング径を有する複数の第1リング共振器50(第1リング光導波路60)のリング径Rの平均値、及び、異なるリング径を有する複数の第2リング共振器51(第2リング光導波路61)のリング径Rの平均値を決める。なお、ここでは、リング光導波路50,51の等価屈折率は2.5としている。
2πR=m・(λc/neff)(mは自然数)・・・(3)
なお、リング径Rを小さくし、そのFSR(フリー・スペクトル・レンジ)を大きくするためには、mの値として、なるべく小さい値を用いれば良い。但し、リング径Rが小さくなりすぎて、リング光導波路50,51を伝搬する光の曲げ損失が大きくならないようにする。
ここで、図6,図7は、上述の本変調器10の構成において、結合係数κ、又は、隣接するリング共振器間のリング径の差ΔRの設定を変えた場合に本変調器10によって得られる消光比のスペクトルを示している。なお、図6、図7では、本変調器10の動作波長帯域の中心(中心動作波長)が、消光比のスペクトルの中心になるように波長軸を取っている。
図6に示すように、上述の本変調器10の構成(κ=0.39、ΔR=0.8nm)によれば、出力光の中心動作波長(ここでは1.55μm)において、12dB以上の大きな消光比が得られることがわかる。また、消光比が9dB以上となる波長帯域を、本変調器10の動作波長帯域とする場合、約1nmの動作波長帯域が得られることがわかる。つまり、動作波長1.55μm付近の1nmの波長帯域において消光比9dB以上が得られている。この動作波長帯域内においては、特に大きな消光比のディップは見られない。
これに対し、従来のリング共振器型変調器では、動作波長帯域が0.1nm程度である。つまり、本変調器10によれば、従来のリング共振器型変調器と比較して、動作波長帯域を約10倍に拡大することができる。
このように、結合係数を大きくしてκ=0.785とした場合、図7(A)に示すように、消光比のスペクトルはなだらかになり、全体的に消光比が小さくなることがわかる。
このように、結合係数を小さくしてκ=0.157とした場合、図7(B)に示すように、消光比のスペクトルは急峻になり、消光比のスペクトルの中心動作波長付近で大きなディップが顕著になり、中心動作波長付近において消光比が9dBよりも小さい波長が存在することがわかる。
このように、隣接するリング共振器間のリング径の差を小さくしてΔR=0.24nmとした場合(隣接するリング共振器間で共振波長を近づけた場合)、図7(C)に示すように、中心動作波長において、得られる位相変化が大きくなりすぎてしまい、消光比は逆に小さくなり、かつ、消光比9dB以上となる動作波長帯域が、上述の本変調器10の構成の場合(図4参照)と比較して小さくなることがわかる。
このように、隣接するリング共振器間のリング径の差を大きくしてΔR=1.6nmとした場合(隣接するリング共振器間で共振波長を遠ざけた場合)、図7(D)に示すように、消光比は全体的に小さくなり、消光比9dBを下回ることがわかる。
なお、上述のような消光比スペクトルのκ、ΔRに対する傾向(図6,図7参照)は、MZ干渉計の両方のアームのそれぞれに複数のリング共振器を装荷したリング装荷型MZ変調器において一般的に見られる傾向である。このため、上述のような傾向を考慮して、変調器の設計において、消光比、動作波長帯域に対する要求を満たすように、適宜、κ、ΔRの値を決めれば良い。
ここで、図8は、上述の本変調器10の構成(κ=0.39、ΔR=0.8nm、N=10;図4参照)よりもリング共振器50,51の個数を増やしてN=20とした場合の消光比のスペクトルを示している。
但し、リング共振器50,51の個数Nを増やすと、変調器全体のサイズの増大を招くため、コンパクト化の要求を満たすように、リング共振器50,51の個数Nを設定することになる。また、リング共振器50,51の個数Nを増やすと、変調器の総作用長(電極の合計長さ)が長くなり、寄生容量の増大を招くため、この点も考慮して、リング共振器50,51の個数Nを設定することになる。
また、例えば、動作波長帯域、消光比に対する要求を満たしながら、コンパクト化の要求を満たし、さらに、寄生容量の増大を招かないようにするためには、リング共振器50,51の個数Nをできるだけ少なくするのが望ましい。
なお、図9では、初期状態、即ちΔn=0の場合の位相スペクトル及び強度スペクトルを実線で示し、Δn=5×10−5の屈折率変化を生じさせた場合の位相スペクトル及び強度スペクトルを破線で示している。また、強度スペクトルの計算をするにあたり、リング光導波路61にα=3.5dB/cmの伝搬損失を与えている。
そして、リング光導波路61に沿って設けられた電極71を介して、リング光導波路61に変調のための電界を印加して、リング光導波路61の屈折率を変化させると(ここではΔn=5×10−5の屈折率変化を生じさせると)、図9(A),(B)に示すように、強度スペクトル及び位相スペクトルは波長軸方向にシフトする。なお、ここでは、屈折率変化が小さいため、シフト量はあまり大きくなく、図9(A),(B)ではほとんど重なって見える。
一方、図10に示すように、位相スペクトルのシフトに伴って、リング共振器の共振波長帯域において、一定量の位相変化が得られる。これは、図9(A)に示すように、リング共振器の共振波長付近で位相スペクトルの傾きが大きくなっていることに起因している。
ところで、リング共振器50,51における位相スペクトルの急峻さ(位相スペクトルの傾きが大きくなっている部分の傾きの大きさ)、即ち、リング共振器50,51のQ値は、リング径とは独立に、リング光導波路60,61とアーム2,3との間の結合係数κを変化させることで制御することができる。なお、リング光導波路60,61とアーム2,3との間のギャップの大きさ又はリング光導波路60,61とアーム2,3とが近接している部分の長さを変えることによって、結合係数κを変化させることができる。
ここでは、複数の第1リング共振器50及び複数の第2リング共振器51は、結合係数κが同一(各リング共振器のQ値が同一;リング出力光の位相スペクトルの共振波長帯域における傾きが同一)になるようにしている。なお、複数の第1リング共振器50の間で結合係数κが変えられていても良いし、複数の第2リング共振器51の間で結合係数κが変えられていても良い。
また、複数の第1リング共振器50の相互間でリング径を変えて共振波長帯域を少しずつずらし、各第1リング共振器50の位相スペクトルの共振波長帯域における傾きが大きくなっている部分が波長軸方向に直線的に結合されるようにする。同様に、複数の第2リング共振器51の相互間でリング径を変えて共振波長帯域を少しずつずらし、各第2リング共振器51の位相スペクトルの共振波長帯域における傾きが大きくなっている部分が波長軸方向に直線的に結合されるようにする。
この場合、装荷するリング共振器50,51の個数N、及び、各リング共振器間のリング径の差ΔRを適切に設計することで、変調器の動作波長帯域を要求仕様に応じて広くすることができる。
これに対し、従来のリング共振器型変調器では、導波路の屈折率変化に伴う強度スペクトルのシフトを直接利用して変調を行なう。このリング共振器型変調器では、強度スペクトルが急激に変化する部分(エッジ)を利用して変調を行なうため、装荷されるリング共振器の個数等の構成に関わらず、強度スペクトルのシフト量が動作波長帯域と概ね一致する。このため、従来のリング共振器型変調器では、リング共振器の個数等の構成に関わらず、小さな屈折率変化によって大きな動作波長帯域を得ることはできない。
次に、本リング装荷型MZ変調器の断面構造について、図11(A),(B)を参照しながら説明する。
ここでは、最上部のシリコン薄膜層(SOI層)15の厚さ、その下の埋め込み酸化膜(BOX層)14の厚さは、それぞれ、250nm、2μmとなっている。
ここで、リング光導波路60,61のリブ型導波路コア15Xは、図11(B)に示すように、リブ部分15Aのキャリア濃度を変調できるように、リブ部分15Aの両脇に接しているスラブ部分15Bの一方にp型不純物材料がドーピングされてp型領域15Baが形成されており、他方にn型不純物材料がドーピングされてn型領域15Bbが形成されている。これにより、アンドープのシリコンからなるリブ部分15Aの内部にpn接合が形成されるようになっている。
次に、上述のリブ型導波路コア15Xが埋め込まれるように、SiO2オーバクラッド層16を形成する。
このように、本実施形態では、リング装荷型MZ変調器を構成する素子(リング共振器やMZ干渉計など)の全てが、同一基板13上に集積され、一体形成されている。
例えば、上述の実施形態では、シリコン基板上にシリコン材料を主に用いて本変調器を形成する場合を例に挙げて説明しているが、これに限られるものではない。例えば、InP基板やGaAs基板を用い、これらの基板に格子整合する材料を用いて本変調器を形成しても良い。また、ニオブ酸リチウムやポリマなどの電界光学効果を有する他の誘電体材料を用いて本変調器を形成しても良い。
また、上述の実施形態では、リング共振器を構成するリング光導波路として、リブ型で横方向にpn接合を形成した断面構造を持つものを例に挙げて説明しているが、これに限られるものではなく、例えば、チャネル型の導波路とし、縦方向にpn接合を形成したものとしても良い。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態にかかる光変調器(リング装荷型MZ変調器)について、図12を参照しながら説明する。
次に、複数の第1リング共振器50Aの相互間で、又は、複数の第2リング共振器51Aの相互間で、リング光導波路60A,61Aの導波路幅を変えて(即ち、複数の第1リング共振器50Aの相互間で、又は、複数の第2リング共振器51Aの相互間で共振波長を変えて)、動作波長帯域を広くする原理を説明する。
そこで、導波路幅の異なる複数の第1リング共振器50Aは、個々のリング共振器の出力光(リング出力光)の強度スペクトルの共振波長帯域(リング共振波長帯域)の位置が少しずつずれたものとし[図5(A)参照]、これらの第1リング共振器50AをMZ干渉計4のアーム2に装荷する。これにより、各第1リング共振器50Aの出力光の強度スペクトルの共振波長帯域が波長軸方向で結合され、これらの第1リング共振器50Aの全体からの出力光(リング出力光)の強度スペクトルは、広い共振波長帯域を有する箱型のスペクトル形状となる[図5(B)参照]。
本実施形態では、図12に示すように、第1光導波路2に装荷される複数(ここでは10個)の第1リング共振器50Aを構成する第1リング光導波路60Aの導波路幅Wは、互いに異なるように、各第1リング共振器50A間で若干ずらされている。つまり、隣り合う第1リング共振器50A間で、導波路幅Wに一定の差ΔWを与えている。ここでは、アーム2の一端から他端へ向けて、導波路幅WがΔW=0.3nmずつ大きくなるように設定している。なお、図12では、説明の便宜上、複数のリング共振器として、3つのリング共振器を示している。
ここでは、屈折率変化5×10−5を利用して、一定の大きさの消光比を得るために、10個の第1リング共振器50Aを設け、これらの第1リング共振器50Aのリング径Rをいずれも8.7μmとしている。この場合、総作用長は2π×8.7×10=546μmとなる。これに対して、従来のMZ変調器(図22参照)では、同じ屈折率変化を利用して、一定の大きさの消光比を得るために、大きな作用長(例えば3.8mm程度)が必要になる。このように、本変調器10Aによれば、従来のMZ変調器(図22参照)と比較して、作用長を約7分の1に低減することができる。
ここでは、屈折率変化5×10−5を利用して、一定の大きさの消光比を得るために、10個の第2リング共振器51Aを設け、これらの第2リング共振器51Aのリング径Rをいずれも8.7μmとしている。この場合、総作用長は2π×8.7×10=546μmとなる。これに対して、従来のMZ変調器(図22参照)では、同じ屈折率変化を利用して、一定の大きさの消光比を得るために、大きな作用長(例えば3.8mm程度)が必要になる。このように、本変調器10Aによれば、従来のMZ変調器(図22参照)と比較して、作用長を約7分の1に低減することができる。
ここでは、複数の第1リング共振器50A及び複数の第2リング共振器51Aは、結合係数κが同一(各リング共振器のQ値が同一;リング出力光の位相スペクトルの共振波長帯域における傾きが同一)になるようにしている。なお、複数の第1リング共振器50Aの間で結合係数κが変えられていても良いし、複数の第2リング共振器51Aの間で結合係数κが変えられていても良い。
また、複数の第1リング共振器50Aの相互間で導波路幅を変えて共振波長帯域を少しずつずらし、各第1リング共振器50Aの共振波長帯域における傾きが大きくなっている部分が波長軸方向に直線的に結合されるようにする。同様に、複数の第2リング共振器51Aの相互間で導波路幅を変えて共振波長帯域を少しずつずらし、各第2リング共振器51Aの位相スペクトルの共振波長帯域における傾きが大きくなっている部分が波長軸方向に直線的に結合されるようにする。
なお、その他の詳細は、上述の第2実施形態のものと同様であるため、ここでは説明を省略する。この場合、上述の第2実施形態の「リング共振器間のリング径の差」は、本実施形態の「リング共振器間の導波路幅の差」に対応する。
なお、上述の実施形態では、一のアームに装荷される複数のリング共振器のリング径を同一にし、これらの導波路幅を変える場合を例に挙げて説明しているが、これに限られるものではない。例えば、一のアームに装荷される複数のリング共振器のリング径及び導波路幅を変えるようにしても良い。つまり、上述の第2実施形態のものと本実施形態のものとを組み合わせても良い。
[第4実施形態]
次に、第4実施形態にかかる光変調器(リング装荷型MZ変調器)について、図13,図14を参照しながら説明する。
リング共振器の温度を変えると、リング共振器を構成するリング光導波路の等価屈折率が変わり、これによって、リング共振器の共振波長が変わることになる。
本実施形態では、図13,図14(A)に示すように、複数(ここでは10個)の第1リング共振器50Bのそれぞれの温度を変化させるための複数の第1ヒータ(ヒータ素子)17Aが、複数の第1リング光導波路60Bのそれぞれに沿って設けられている。なお、図13では、説明の便宜上、複数のリング共振器として、3つのリング共振器を示している。
特に、本実施形態では、複数の第1ヒータ17Aのそれぞれによって、複数の第1リング共振器50Bのそれぞれの温度が互いに異なるように制御される。これにより、複数の第1リング光導波路60Bの等価屈折率が互いに異なるようにし、この結果、複数の第1リング共振器50Bの共振波長が互いに異なるようにしている。
ここでは、図14(B)に示すように、複数の第2リング光導波路61Bのそれぞれの上部(ここでは直上)に、例えば厚さ100nm、幅1μmのチタン(Ti)からなる第2ヒータ(チタンヒータ)17Bが別個に設けられている。
特に、本実施形態では、複数の第2ヒータ17Bのそれぞれによって、複数の第2リング共振器51Bのそれぞれの温度が互いに異なるように制御される。これにより、複数の第2リング光導波路61Bの等価屈折率が互いに異なるようにし、この結果、複数の第2リング共振器51Bの共振波長が互いに異なるようにしている。
なお、本実施形態では、第1ヒータ17A及び第2ヒータ17Bとして、チタンヒータを例に挙げて説明しているが、これに限られるものではない。例えば、抵抗金属又は半導体からなるヒータを用いれば良い。
ここでは、複数の第1リング共振器50B及び複数の第2リング共振器51Bは、結合係数κが同一(各リング共振器のQ値が同一;リング出力光の位相スペクトルの共振波長帯域における傾きが同一)になるようにしている。なお、複数の第1リング共振器50Bの間で結合係数κが変えられていても良いし、複数の第2リング共振器51Bの間で結合係数κが変えられていても良い。
また、複数の第1リング共振器50Bの相互間で温度を変えて共振波長帯域を少しずつずらし、各第1リング共振器50Bの共振波長帯域における傾きが大きくなっている部分が波長軸方向に直線的に結合されるようにする。同様に、複数の第2リング共振器51Bの相互間で温度を変えて共振波長帯域を少しずつずらし、各第2リング共振器51Bの位相スペクトルの共振波長帯域における傾きが大きくなっている部分が波長軸方向に直線的に結合されるようにする。
なお、その他の詳細は、上述の第2実施形態のものと同様であるため、ここでは説明を省略する。この場合、上述の第2実施形態の「リング共振器間のリング径の差」は、本実施形態の「リング共振器間の温度の差」に対応する。
なお、上述の実施形態では、一のアームに装荷される複数のリング共振器のリング径を同一にし、これらの温度を変える場合を例に挙げて説明しているが、これに限られるものではない。
また、例えば、複数のリング共振器のリング径を同一にし、複数のリング共振器を構成するリング光導波路の導波路幅を変え、複数のリング共振器の温度を変えるようにしても良い。つまり、上述の第3実施形態のものと本実施形態のものとを組み合わせても良い。
例えば、ヒータに供給される電流量を制御して(即ち、ヒータの出力を制御して)、各リング共振器の温度を変化させることで、各リング共振器の共振波長を調整できるようにしても良い。これにより、変調器の動作波長帯域を、入力する連続光の波長に合わせてダイナミックに変化させることが可能となる。この場合、入力する連続光の波長をモニタするためのモニタ機構や各ヒータに供給される電流量を制御するための制御回路(コントローラ)を設けることになる。
また、リング共振器の温度調整によって、変調器が置かれている環境の温度によらず、温度を一定に保つことができる。これにより、変調器が置かれている環境の温度が変化しても、リング共振器の共振波長を一定に維持し、動作波長帯域や消光比が一定の安定した動作を実現することができる。
[第5実施形態]
次に、第5実施形態にかかる光変調器(リング装荷型MZ変調器)について、図15,図16を参照しながら説明する。
次に、複数の第1リング光導波路60C又は複数の第2リング光導波路61Cのリング径及び導波路幅を同一にして(即ち、複数の第1リング共振器50C又は複数の第2リング共振器51Cの共振波長を同一にして)、動作波長帯域を広くする原理を、図16を参照しながら説明する。
このため、まず、図16(A),図16(B)中、点線で示すように、単一のリング共振器の共振を弱くして、リング出力光の強度スペクトル及び位相スペクトルのリング共振波長帯域における変化をなだらかにし(即ち、リング共振器のQ値を小さくし)、リング共振波長帯域を広げることで、本変調器10Cの動作波長帯域を広くする。
このため、屈折率を変化させて位相スペクトルをシフトさせる際に、設定した動作波長における位相変化が小さくなってしまう。
ここで、図16(C)中、点線は、上述のように構成した場合に得られる消光比のスペクトルを示している。なお、図16(C)では、変調器の動作波長帯域の中心(中心動作波長)が、消光比のスペクトルの中心になるように波長軸を取っている。
そこで、本実施形態では、各リング共振器の出力光(リング出力光)の強度スペクトルの共振波長帯域(リング共振波長帯域)の位置(中心共振波長の位置)が一致する複数のリング共振器を、MZ干渉計4の各アーム2,3に装荷する。このため、複数のリング共振器全体の共振波長帯域は、単一のリング共振器の共振波長帯域と同一である。
この場合、各リング共振器の出力光の位相スペクトルの共振波長帯域も強度軸方向で結合され(各リング共振器の出力光の位相スペクトルも足し合わされ)、これらのリング共振器の全体からの出力光(リング出力光)の位相スペクトルは、図16(B)中、実線で示すように、広い共振波長帯域において傾きが大きくなる。
次に、本変調器10Cの具体的な構成例について、図15を参照しながら説明する。
したがって、本実施形態にかかる光変調器(リング装荷型MZ変調器)によれば、動作波長帯域を広くし、作用長を短くし、コンパクト化(小型化)を図ることができるという利点がある。
[第6実施形態]
次に、第6実施形態にかかる光変調器(リング装荷型MZ変調器)について、図17を参照しながら説明する。
図17に示すように、本変調器10Dでは、複数(ここでは5個)の第1リング共振器50Dのそれぞれを構成する複数の第1リング光導波路60Dが、MZ干渉計4のアーム(第1光導波路)2を伝搬する光が結合する位置に設けられている。なお、図17では、説明の便宜上、複数のリング共振器として、3つのリング共振器を示している。
特に、本実施形態では、図17に示すように、これらの第2リング光導波路61Dのそれぞれに一つずつ第4リング共振器53がアーム3から離れる方向(アーム3に直交する方向)に直列に接続されている。つまり、複数の第4リング共振器53を構成する第4リング光導波路63が、第2リング光導波路61Dを伝搬する光が結合する位置にそれぞれ設けられている。
また、第1電極70A及び第2電極71Aと同様に、第3電極72及び第4電極73には、図17に示すように、それぞれ、高周波変調信号(電気信号)を供給するための変調電源(高周波電源)8,9が接続されている。
本実施形態では、図17に示すように、2つのリング共振器50D,52(51D,53)を直列に結合して構成される5組の直列結合リング共振器54が、MZ干渉計4の2つのアーム2,3のそれぞれに装荷された構造となっている。
ここで、MZ干渉計4の両アーム2,3に装荷される直列結合リング共振器54の個数Nは、それぞれ、5個とする。なお、MZ干渉計4の両アーム2,3に装荷されるリング共振器50D,51D,52,53の全個数は、それぞれ、10個であり、上述の第2実施形態の場合と同じである。
また、アーム2,3と各リング共振器50D,51D(各リング光導波路60D,61D)との間の結合係数κは、全て0.589としている。このため、アームを構成する第1光導波路2及び第2光導波路3からリング共振器50D,51Dを構成するリング光導波路60D,61Dへのパワー移行率は、30.9%[|sin(κ)|2=30.9%]となる。
したがって、本実施形態にかかる光変調器(リング装荷型MZ変調器)によれば、動作波長帯域を広くし、作用長を短くし、コンパクト化(小型化)を図ることができるという利点がある。
また、上述の実施形態の構成において、上述の第4実施形態のようにヒータを設け、各リング共振器の温度を制御して、各リング共振器の共振波長を調整できるようにしても良い。
[第7実施形態]
次に、第7実施形態にかかる光変調器(リング装荷型MZ変調器)について、図18を参照しながら説明する。
本実施形態では、リブ型導波路コアを埋め込むオーバクラッド層の材料が異なる。つまり、上述の第2実施形態[図11(B)参照]では、リブ型導波路コア15X[特にリブ部分(Siコア)15Aの周り]を覆うオーバクラッド層をSiO2オーバクラッド層16としているのに対し、本実施形態では、図18に示すように、ポリマからなるオーバクラッド層16Aとしている点が異なる。なお、図18では、上述の第2実施形態のもの[図11(B)参照]と同一のものには同一の符号を付している。
これは、上述のように、ポリマ材料の屈折率の温度に対する変化の方向が、シリコンの屈折率の温度に対する変化の方向に対して逆向きであることに起因している。
つまり、コア15Xとクラッド16Aの温度に対する屈折率の変化が互いに打ち消しあうことになり、導波路全体として見た場合、温度変化に対する等価屈折率の変化が小さくなる。これにより、温度変化に対するリング共振器50,51の共振波長の変化が小さくなり、その結果、温度変化に対する本変調器10の動作波長帯域の変化が小さくなる。したがって、上述のような構成にすることで、本変調器10の動作波長帯域を比較的一定に保つことができることになる。
したがって、本実施形態にかかる光変調器(リング装荷型MZ変調器)によれば、動作波長帯域を広くし、作用長を短くし、コンパクト化(小型化)を図ることができるという利点がある。
なお、上述の実施形態では、MZ干渉計4の両アーム2,3(第1光導波路2及び第2光導波路3)、及び、リング共振器50,51を構成するリング光導波路60,61の全ての部分において、コア15Xが、屈折率の温度変化係数(dn/dT)が正の値である半導体材料によって形成され、このコア15Xを覆うクラッド16Aが屈折率の温度変化係数(dn/dT)が負の値であるポリマ材料によって形成される場合を例に挙げて説明しているが、これに限られるものではない。
また、例えば、リング共振器50,51を構成するリング光導波路60,61の部分のみにおいて、コア15Xを、屈折率の温度変化係数(dn/dT)が正の値である半導体材料又は誘電体材料によって形成し、このコア15Xを覆うクラッド16Aが屈折率の温度変化係数(dn/dT)が負の値であるポリマ材料によって形成しても良い。この場合、少なくとも、リング共振器50,51を構成するリング光導波路60,61のコア15Xのリブ部分(Siコア)15Aが覆われるように、屈折率の温度変化係数(dn/dT)が負の値であるポリマ材料によってクラッドを形成すれば良い。
また、上述の実施形態の構成において、上述の第4実施形態のようにヒータを設け、各リング共振器の温度を制御して、各リング共振器の共振波長を調整できるようにしても良い。
[第8実施形態]
次に、第8実施形態にかかる光変調器(リング装荷型MZ変調器)について、図19を参照しながら説明する。
なお、その他の詳細は、上述の第2実施形態のものと同様であるため、ここでは説明を省略する。
ところで、上述の本変調器10Eによって、図19に示すように、特定の波長の光を選択的に変調する変調器としての機能と、特定の波長の光信号を波長多重信号(WDM信号)に追加(アド)するアド素子としての機能とを合わせ持つ光送信器を、簡便な構成で実現することができる。
そして、一方の入力ポートに入力された一の波長λiの連続光が信号光に変調され、変調された一の波長λiの信号光(変調光)が、他方の入力ポートに入力された波長多重信号光にアドされ、一の波長λiの信号光を含む波長多重信号光が、光出力側の光カプラ20の一方の出力ポートから光伝送路へ出力される。
なお、本変調器10Eでは、光出力側の光カプラ20も2×2型光カプラを用いているため、一の波長λiの変調光は両方の出力ポートから、互いに逆相の関係で出力されることになる。つまり、光出力側の光カプラ20の他方の出力ポートから、一の波長λiの変調光に対して逆相の変調光(λi逆相変調光)が出力される。この場合、一方の出力ポートからの出力光が光のON状態の時に、他方の出力ポートからの出力光が光のOFF状態となる。このため、他方の出力ポートから出力された変調光をモニタ等に使用することができる。
したがって、本実施形態にかかる光変調器(リング装荷型MZ変調器)を用いることで、一の波長の光のみを選択的に変調し、それ以外の波長からなるWDM信号に付け加える(アドする)機能を有する光送信器を、簡便な構成で実現できるという利点がある。
つまり、図20に示すように、上述の本変調器(本光送信器)10Eを含むものとしてアド・ドロップ型のノード21を構成し、このノード21に光伝送路22,23を接続して、アド・ドロップ型ノード21を含むWDMシステム24を構成することができる。
この場合、上述の本変調器(本光送信器)10E(図19参照)の光入力側の光カプラ19の一方の入力ポートに、アドする波長λiの連続光が入力される。
そして、一方の入力ポートに入力された一の波長λiの連続光は、上述の本変調器(本光送信器)10E(図19参照)によって十分な消光比を有する信号光に変調され、変調された一の波長λiの信号光(変調光)が、他方の入力ポートに入力された波長多重信号光にアドされ、一の波長λiの信号光(アド信号光)を含む波長多重信号光が、光出力側の光カプラ20の一方の出力ポートから光伝送路23へ出力される。
また、一の波長λiの信号光以外の本ノード21をパスする波長(パス波長)の信号光は、本変調器10Eにおける消光比のスペクトル(図6参照)から分かるように、変調を受けず、損失を受けないで通過する[図9(B)参照]。このため、入力された波長多重信号光のうち一の波長以外の波長の信号光は、信号波形の形を変えずに、入力されたポートに対してMZ干渉計4の中心線を挟んで反対側のポートから出力されることになる。
λc2/(Ne・2πR)
ここで、実効屈折率Neは導波路の等価(位相)屈折率をneffとした場合、次式で定義される。
また、波長チャネル間隔は、本変調器10Eにおける動作波長帯域によって決まる。上述の第1実施形態において説明したように、本変調器10Eの動作波長帯域は約1nmである。
したがって、本実施形態にかかる光変調器(リング装荷型MZ変調器)を用いることで、ノードに割り当てられた波長の光のみを選択的に変調し、それ以外の波長からなるWDM信号に付け加える(アドする)機能を有するアド・ドロップ型ノード21、及び、これを備えるWDMシステム24を簡便な構成で実現できるという利点がある。また、アド・ドロップ型ノード21の動作波長帯域を広くし、作用長を短くし、コンパクト化(小型化)を図ることができる。
また、上述の実施形態の構成において、上述の第4実施形態のようにヒータを設け、各リング共振器の温度を制御して、各リング共振器の共振波長を調整できるようにしても良い。
例えば、動作波長の異なる本変調器(本光送信器)を、他の波長の信号光をアド・ドロップするアド・ドロップ型ノードに適用することも可能である。この場合、アド及びドロップする波長はそのノードに割り当てられた波長に合わせる必要がある。この波長の調整は、本変調器(本光送信器)において、MZ干渉計のアームに装荷するリング共振器の共振波長を、ノードに割り当てられた波長に一致させるように行なわれる。
[第9実施形態]
次に、第9実施形態にかかる光変調器(リング装荷型MZ変調器)について、図21を参照しながら説明する。
つまり、本実施形態にかかる光変調器は、図21に示すように、上述の第2実施形態のリング装荷型MZ変調器10を複数備える光変調器(縦属接続リング装荷型MZ変調器;光集積素子)であって、これらのリング装荷型MZ変調器10が、光伝搬方向に沿って直列に接続されており、複数のリング装荷型MZ変調器10は、互いに動作波長帯域が異なるように構成されている。つまり、複数のリング装荷型MZ変調器10のそれぞれに備えられるリング共振器の共振波長は互いに異なるように構成されている。
ここでは、隣り合うリング装荷型MZ変調器10の出力ポートと入力ポートとが光導波路29を介して接続されている。
例えば、各リング装荷型MZ変調器10を構成するMZ干渉計に装荷されるリング共振器50,51のリング径を調整することで、リング共振器50,51の共振波長を、各リング装荷型MZ変調器10間で変化させ、各リング装荷型MZ変調器10の動作波長帯域が互いに異なるようにすれば良い。
ここで、変調する波長とスルーする波長との全てを合わせた波長の帯域は、リング共振器50,51のFSRによって決まる。上述の第8実施形態で説明したように、本変調器を構成するリング装荷型MZ変調器10に装荷されるリング共振器50,51のFSRは10.9nmである。一方、変調する波長とスルーする波長とを含む全波長における各波長の間隔は、リング装荷型MZ変調器10の動作波長帯域によって決まる。上述の第1実施形態において説明したように、リング装荷型MZ変調器10の動作波長帯域は約1nmである。したがって、各波長の間隔に少し余裕を与え、1nmより若干大きな値、例えば1.6nmに設定すると、本変調器は、1.55μmを中心に6程度のチャネル数を用いることができる。つまり、本実施形態では、波長チャネル間隔を1.6nmとして、波長多重されうる波長数(波長多重度)は6つ(6チャネル)である。
また、本変調器に入力される多波長の連続光(波長多重連続光)としては、例えば、発振波長の異なるDFBレーザからの連続光をカプラによって多重化した波長多重連続光を用いても良いし、あるいは、SLD(Super Luminescent Diode)による広波長帯域連続光を用いても良い。
まず、本変調器では、図21に示すように、一のポート(入力ポート)から波長多重された連続光(波長多重連続光;λ1〜λN)が入力される。つまり、入力ポートから最入力側のリング装荷型MZ変調器10を構成するMZ干渉計4に複数の波長の連続光(波長多重連続光;λ1〜λN)が入力される。
この場合、複数のリング装荷型MZ変調器10に含まれる一のリング装荷型MZ変調器10においては、一のリング装荷型MZ変調器10を構成するMZ干渉計4の2つのアーム2,3のそれぞれに設けられた複数のリング共振器50,51が、複数の波長の連続光に含まれる一の波長の連続光の位相を変化させた後、一のリング装荷型MZ変調器10を構成するMZ干渉計4が、一の波長の連続光の強度を変化させて、一の波長の連続光が変調される。
このため、本変調器を、多波長入出力型変調器と言う。
したがって、本実施形態にかかる光変調器(リング装荷型MZ変調器)によれば、動作波長帯域を広くし、作用長を短くし、コンパクト化(小型化)を図ることができるという利点がある。
ここで、本実施形態の構成と第1実施形態の構成と組み合わせる場合には、以下のように動作する。
ここで、本実施形態の構成と第8実施形態の構成とを組み合わせる場合には、少なくとも最も入力側又は最も出力側のリング装荷型MZ変調器の入力側の光カプラを2×2型光カプラとすれば良い。
[その他]
なお、上述の各実施形態では、リング径R、リング径の差ΔR、導波路幅W、導波路幅の差ΔW、結合係数κ、リング共振器の個数Nなどについて、具体的な数値を記載しているが、これらは、変調器に要求される消光比、動作波長帯域、総作用長等によって、適宜、変更しても良い。
また、本発明は、上述した各実施形態及びその変形例に記載した構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
(付記1)
マッハツェンダ干渉計を構成する第1光導波路及び第2光導波路と、
前記第1光導波路又は前記第2光導波路を伝搬する光が結合する位置に設けられ、リング共振器を構成するリング光導波路と、
前記リング光導波路に沿って設けられ、伝搬する光の位相が変化するように前記リング光導波路の屈折率を変化させるための電極とを備えることを特徴とする光変調器。
前記リング光導波路は、複数の第1リング共振器のそれぞれを構成する複数の第1リング光導波路、及び、複数の第2リング共振器のそれぞれを構成する複数の第2リング光導波路であり、
前記複数の第1リング光導波路は、前記第1光導波路を伝搬する光が結合する位置に設けられており、
前記複数の第2リング光導波路は、前記第2光導波路を伝搬する光が結合する位置に設けられており、
前記電極は、前記複数の第1リング光導波路のそれぞれに沿って設けられた複数の第1電極、及び、前記複数の第2リング光導波路のそれぞれに沿って設けられた複数の第2電極であることを特徴とする、付記1記載の光変調器。
前記複数の第1リング共振器は、互いに共振波長が異なり、
前記複数の第2リング共振器は、互いに共振波長が異なることを特徴とする、付記2記載の光変調器。
(付記4)
前記複数の第1リング光導波路は、互いにリング径が異なり、
前記複数の第2リング光導波路は、互いにリング径が異なることを特徴とする、付記2又は3記載の光変調器。
前記複数の第1リング光導波路は、互いに導波路幅が異なり、
前記複数の第2リング光導波路は、互いに導波路幅が異なることを特徴とする、付記2〜4のいずれか1項に記載の光変調器。
(付記6)
前記複数の第1リング共振器は、互いに共振波長が同一であり、
前記複数の第2リング共振器は、互いに共振波長が同一であることを特徴とする、付記2記載の光変調器。
前記複数の第1リング光導波路のそれぞれに沿って設けられ、前記複数の第1リング共振器のそれぞれの温度を変化させるための複数の第1ヒータと、
前記複数の第2リング光導波路のそれぞれに沿って設けられ、前記複数の第2リング共振器のそれぞれの温度を変化させるための複数の第2ヒータとを備えることを特徴とする、付記2〜6のいずれか1項に記載の光変調器。
前記第1光導波路、前記第1リング光導波路及び前記第1電極と、前記第2光導波路、前記第2リング光導波路及び前記第2電極とは、それぞれ、同一の構成になっており、
前記第1電極及び前記第2電極は、プッシュプル駆動するための電極であることを特徴とする、付記2〜7のいずれか1項に記載の光変調器。
前記リング光導波路は、シリコン材料を含むリブ型光導波路であり、
前記リブ型光導波路の両側へ延びるスラブ部分の一方はp型不純物材料がドーピングされており、他方はn型不純物材料がドーピングされていることを特徴とする、付記1〜8のいずれか1項に記載の光変調器。
前記リング光導波路は、コアが屈折率の温度変化係数(dn/dT)が正の値である半導体材料又は誘電体材料によって形成されており、前記コアを覆うクラッドが屈折率の温度変化係数(dn/dT)が負の値であるポリマ材料によって形成されていることを特徴とする、付記1〜9のいずれか1項に記載の光変調器。
前記リング光導波路を伝搬する光が結合する位置に設けられ、リング共振器を構成する他のリング光導波路を備えることを特徴とする、付記1〜10のいずれか1項に記載の光変調器。
(付記12)
前記マッハツェンダ干渉計を構成する2つの光カプラの少なくとも一方は、2つの入力ポート及び2つの出力ポートを有する2入力2出力型光カプラであることを特徴とする、付記1〜11のいずれか1項に記載の光変調器。
前記電極は、変調信号が供給される変調電極であることを特徴とする、付記1〜12のいずれか1項に記載の光変調器。
(付記14)
付記1〜13のいずれか1項に記載の光変調器を複数備え、
前記複数の光変調器は、光伝搬方向に沿って直列に接続されており、
前記複数の光変調器のそれぞれに備えられる前記リング共振器の共振波長が互いに異なることを特徴とする、光変調器。
付記1〜14のいずれか1項に記載の光変調器を備えることを特徴とする光送信器。
(付記16)
付記15記載の光送信器と、
前記光送信器に光伝送路を介して接続された光受信器とを備えることを特徴とする光伝送システム。
付記1〜14のいずれか1項に記載の光変調器を備えるノードと、
前記ノードに接続された光伝送路とを備え、
前記光変調器が、一の入力ポートに入力された一の波長の連続光を信号光に変調するとともに、前記光伝送路を介して他の入力ポートに入力された他の波長の信号光に前記一の波長の信号光をアドする機能を有することを特徴とする光伝送システム。
マッハツェンダ干渉計を構成する2つのアームの少なくとも一方を伝搬する光が結合する位置に設けられたリング共振器によって、伝搬する光の位相を変化させた後、前記マッハツェンダ干渉計によって、伝搬する光の強度を変化させて、入力された連続光を変調することを特徴とする光変調方法。
一のマッハツェンダ干渉計に複数の波長の連続光を入力し、
前記一のマッハツェンダ干渉計を構成する2つのアームの少なくとも一方を伝搬する光が結合する位置に設けられた少なくとも1つのリング共振器によって、前記複数の波長に含まれる一の波長の連続光の位相を変化させた後、前記一のマッハツェンダ干渉計によって、前記一の波長の連続光の強度を変化させて、前記一の波長の連続光を変調し、
前記一のマッハツェンダ干渉計に縦属接続された他のマッハツェンダ干渉計を構成する2つのアームの少なくとも一方を伝搬する光が結合する位置に設けられた少なくとも1つのリング共振器によって、前記複数の波長に含まれる他の波長の連続光の位相を変化させた後、前記他のマッハツェンダ干渉計によって、前記他の波長の連続光の強度を変化させて、前記他の波長の連続光を変調することを特徴とする、付記18記載の光変調方法。
2つの入力ポートを有するマッハツェンダ干渉計の一の入力ポートに一の波長の連続光を入力するとともに、他の入力ポートに他の波長の信号光を入力し、
前記マッハェンダ干渉計を構成する2つのアームの少なくとも一方を伝搬する光が結合する位置に設けられたリング共振器及び前記マッハツェンダ干渉計によって、前記連続光を変調して一の波長の信号光を生成するとともに、前記他の波長の信号光に前記一の波長の信号光をアドすることを特徴とする光伝送方法。
2 第1光導波路(アーム)
3 第2光導波路(アーム)
4 マッハツェンダ干渉計
5 リング共振器
6 リング光導波路
7 電極
8,9 変調電源
11,12 光カプラ
13 シリコン基板
14 シリコン酸化膜
15 シリコン薄膜層
15X 導波路コア(リブ型導波路コア)
15A リブ部分(Siコア)
15B スラブ部分(Siスラブ)
15Ba p型領域
15Bb n型領域
16 SiO2オーバクラッド層
16A ポリマ・オーバクラッド層
17A 第1ヒータ
17B 第2ヒータ
18A 第1直流電源
18B 第2直流電源
19,20 2x2型光カプラ
21 アド・ドロップ型のノード
22,23 光伝送路
24 WDMシステム
25 ドロップ素子
26 光受信器
27 光送信器
28 アド素子
29 光導波路
50,50A,50B,50C,50D 第1リング共振器
51,51A,51B,51C,51D 第2リング共振器
52 第3リング共振器
53 第4リング共振器
54 直列結合リング共振器
60,60A,60B,60C,60D 第1リング光導波路
61,61A,61B,61C,61D 第2リング光導波路
62 第3リング光導波路
63 第4リング光導波路
70,70A 第1電極
71,71A 第2電極
72 第3電極
73 第4電極
Claims (5)
- マッハツェンダ干渉計を構成する第1光導波路及び第2光導波路と、
前記第1光導波路又は前記第2光導波路を伝搬する光が結合する位置に設けられ、リング共振器を構成するリング光導波路と、
前記リング光導波路に沿って設けられ、伝搬する光の位相が変化するように前記リング光導波路の屈折率を変化させるための電極とを備えることを特徴とする光変調器。 - 前記リング光導波路は、複数の第1リング共振器のそれぞれを構成する複数の第1リング光導波路、及び、複数の第2リング共振器のそれぞれを構成する複数の第2リング光導波路であり、
前記複数の第1リング光導波路は、前記第1光導波路を伝搬する光が結合する位置に設けられており、
前記複数の第2リング光導波路は、前記第2光導波路を伝搬する光が結合する位置に設けられており、
前記電極は、前記複数の第1リング光導波路のそれぞれに沿って設けられた複数の第1電極、及び、前記複数の第2リング光導波路のそれぞれに沿って設けられた複数の第2電極であることを特徴とする、請求項1記載の光変調器。 - 前記複数の第1リング共振器は、互いに共振波長が異なり、
前記複数の第2リング共振器は、互いに共振波長が異なることを特徴とする、請求項2記載の光変調器。 - 前記複数の第1リング共振器は、互いに共振波長が同一であり、
前記複数の第2リング共振器は、互いに共振波長が同一であることを特徴とする、請求項2記載の光変調器。 - 前記複数の第1リング光導波路のそれぞれに沿って設けられ、前記複数の第1リング共振器のそれぞれの温度を変化させるための複数の第1ヒータと、
前記複数の第2リング光導波路のそれぞれに沿って設けられ、前記複数の第2リング共振器のそれぞれの温度を変化させるための複数の第2ヒータとを備えることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか1項に記載の光変調器。
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